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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】制御可能な高流動性コンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20220302BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20220302BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20220302BHJP
   B28C 5/42 20060101ALI20220302BHJP
   B28C 7/02 20060101ALI20220302BHJP
   C08L 1/08 20060101ALI20220302BHJP
   C08L 101/06 20060101ALI20220302BHJP
   E01C 5/06 20060101ALI20220302BHJP
   E04B 5/32 20060101ALI20220302BHJP
   E04B 2/84 20060101ALI20220302BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/38 Z
C04B24/38 D
C04B24/26 E
C04B24/26 H
C04B24/26 B
C04B24/26 F
B28C5/42
B28C7/02
C08L1/08
C08L101/06
E01C5/06
E04B5/32 Z
E04B2/84 C
E04B1/16 A
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019520000
(86)(22)【出願日】2017-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 US2017056122
(87)【国際公開番号】W WO2018071529
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】62/525,718
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/408,481
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515150265
【氏名又は名称】ジーシーピー・アプライド・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】トレッガー,ネイサン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】小谷田 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】クオ,ローレンス・エル
(72)【発明者】
【氏名】リーダー,クラウス-アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,マーク・エフ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ,デイビッド
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-517308(JP,A)
【文献】特開2016-056081(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105293987(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/02
C04B 24/38
C04B 24/26
B28C 5/42
B28C 7/02
C08L 1/08
C08L 101/06
E01C 5/06
E04B 5/32
E04B 2/84
E04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高流動性コンクリートを打設ゾーンに打設する方法であって、
(A) 1ないし16立方ヤードの総流し込み体積を有する、少なくとも1台のコンクリート配送ミキサー車の積載量のコンクリートを配送先の現場で提供すること、ここで積載コンクリート混合物は、
(i)該積載コンクリート混合物の全体積に基づいて立方ヤードあたり少なくとも1550ポンドの量の粗骨材(該粗骨材の少なくとも30%は、ASTM C33/C33M-16に規定する標準ふるい試験により測定されるマス目0.5インチのふるいに保持される)と、
(ii)前記積載コンクリート混合物の立方ヤードあたり376ないし752ポンドの量のセメント質結合材と、
(iii)前記積載コンクリート混合物中にセメント質結合材100ポンドあたり0.0003ないし0.003ポンドの量で存在する、ウェラン、ディウタン、キサンタン、グア-・ゴムまたはこれらの混合物からなる群から選択される多糖類生体高分子と、
(iv)前記積載コンクリート混合物中にセメント質結合材100ポンドあたり0.0005ないし0.005ポンドの量で存在する、改変セルロースと、
(v)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、または、これらの混合物から選択されるペンダント(ポリ)オキシアルキレン基を有する、少なくとも2種類のセメント分散剤ポリカルボキシレート櫛形ポリマー(該少なくとも2種類の櫛形ポリマーは、それぞれ、前記積載コンクリート混合物中にセメント質結合材100ポンドあたり0.02ないし0.12ポンドの量存在し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第1櫛形ポリマーは、エステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基の0ないし6%未満のモル分率を有し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第2櫛形ポリマーは、エステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基の6%以上のモル分率を有し、第2櫛形ポリマーは、第1櫛形ポリマーより少なくとも2%多く加水分解可能な基を有する)と
を含み、および
(B)舗装道路、スラブ、フロア、高架デッキ(elevated decks)、基礎(foundations)、ブリッジデッキ、壁、カラム、ダムまたはこれらの部分を形成するために、13-30インチの範囲内のスランプフローを有する前記積載コンクリート混合物を打設ゾーンに注入することを含む、方法。
【請求項2】
前記打設ゾーンは、前記配送車の積載量の流し込み体積を上回る体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記積載コンクリート混合物は、天然砂、人工(砕石)砂またはこれらの混合物から選択される細骨材を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細骨材はコンクリート積載混合物中の全細骨材の重量に基づいて少なくとも50%の人工(砕石)砂を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2種類のセメント分散剤櫛形ポリマーは、両方とも、3種類のモノマー成分A、BおよびCから得られ、
ここで成分Aは、以下の構造式1で表される不飽和カルボン酸モノマーであり、
【化1】
成分Bは、以下の構造式2で表されるポリオキシアルキレンモノマーであり、
【化2】
成分Cは、以下の構造式3で表される不飽和カルボキシレートエステルまたはアミドモノマーであり、
【化3】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ個別に、水素原子か、C1ないしC4アルキル基か、-COOM基かを表し、Mは水素原子またはアルカリ金属を表し、Yは-(CH2p-を表し、pは0ないし6の整数を表し、Zは、-O-、-COO-、-OCO-、-COHN-、または-NHCO-基を表し、-(AO)nは反復エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、ブチレンオキシド基またはこれらの混合物を表し、nは、反復する-(AO)-基の平均数を表し、10から250までの整数であり、Wは酸素原子または-NH-基を表し、R11はC1-C10アルキル基またはC2-C10ヒドロキシアルキル基を表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーの第1ポリマーは、コンクリート積載混合物におけるスランプ増強を提供し、成分AおよびBを(A:B+C)のモル比で2:1ないし5:1の範囲内で有し、成分Cを0ないし0.2未満[反復単位のモル比]の量で含み、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーの第2ポリマーは、コンクリート積載混合物におけるスランプ保持を増強し、成分A、BおよびCを(A:B+C)のモル比範囲0.3:1ないし3:1で有し、成分Cは少なくとも0.2[反復単位のモル比]の量で含み、さらに第1ポリマーおよび第2ポリマーは9:1ないし1:9の範囲内で存在する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コンクリート積載混合物は、少なくとも3種類の異なるセメント分散剤ポリカルボキシレート櫛形ポリマーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
6%以上のモル分率のエステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基を有する1種類の櫛形ポリマーが使用され、該第1の櫛形ポリマーより少なくとも2%多い加水分解可能な基を2種類の櫛形ポリマーは有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記コンクリートはICARPlusによって測定されるとき、1500Pa未満の静的降伏応力と、40Paを超えるビンガム降伏応力と、100Pa s未満の塑性粘度とを有し、ここで、容器は装填され、1/3、2/3および満杯のときにタップされる、(羽根が撹拌機に挿入され、静的降伏応力の測定が0.05rad/sで実施され、ピークトルクが読み取られ、静的降伏応力に変換され、その直後に、最高剪断速度から始めて、例えば、1、0.85、0.7、0.55、0.4、0.25、0.1rad/sの剪断速度のそれぞれでの撹拌についてトルクが測定され、剪断速度対剪断応力のプロットが作成され、データがビンガムモデルに従って直線にフィッティングされ、ICAR(商標)ソフトウェアによって直線フィッティングの傾きから塑性粘度が変換され、ビンガム降伏応力がReiner-Rivlin等式に従ってy切片から外挿され、測定は各タイプのコンクリートの2つまたは3つのバッチについて実施され、結果は平均される)、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コンクリートは、ICAR(商標)Plusレオメーターによって測定されるとき、ただし該レオメーターの容器が装填され、1/3、2/3および満杯のときにタップされる、1000Pa未満の静的降伏応力と、50Paを超えるビンガム降伏応力と、80Pa s(パスカル×秒)未満の塑性粘度とを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記生体高分子はディウタンで、前記改変セルロースはヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記改変セルロースは、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記コンクリート積載混合物は、凝結遅延剤、急結剤、空気脱連行剤、空気連行剤、仕上げまたはポンピング助剤(a finishing or pumping aid)、収縮低減混和剤、膨張剤、繊維、腐食防止剤、顔料、粘土軽減剤(a clay mitigating agent)またはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の追加の化学混和剤成分をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記コンクリート積載混合物は16ないし24インチのスランプフローで流し込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記打設ゾーンはACI CT-16で定義されるコンクリート型枠のために用意され、流し込みが、コンクリート舗装道路、土間(slab-on-grade)、マット基礎、フロア、架橋デッキまたはこれらの一部を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ACI CT-16で定義されるコンクリート型枠のために用意された領域に流し込まれるコンクリートは、ASTM C1611/C1611M-14に従うスランプフロー試験を実行した結果としてのスランプフロー半径Rと、ASTM C1611/C1611M-14に従うスランプフロー試験を実行した結果としてのコンクリート塊の最大高さHを有し、Vがスランプコーンの体積として、Hが以下の関係式
【数1】
を満たす、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ACI CT-16で定義されるコンクリート型枠を有する領域に流し込まれる前記コンクリートは、ASTM C1611/C1611M-14に従うスランプフロー試験に供されるとき、流し込まれたコンクリートの最も上の領域と比較した湾曲を有するエッジ前縁を有し、広がり半径の関数としての高さh(r)が、rについてのh(r)の第1導関数が-1に等しく、ASTM C1611/C1611M-14に従うスランプフロー試験を実行した結果のコンクリート塊の最大高(H)によって正規化され、Hは0.05の臨界高hcrit以上である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
バッチ工場での前記コンクリート積載混合物のバッチ処理中に、前記少なくとも2種類のセメント分散剤ポリカルボキシレートポリマーと、多糖類生体高分子と、改変セルロースとが、前記コンクリート積載混合物に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
バッチ工場から配送先へのコンクリートの輸送中か、配送先でか、あるいは、これらの組み合わせかで前記コンクリート積載混合物に導入される、少なくとも1種類のセメント分散剤ポリカルボキシレートポリマーのさらなる量を前記コンクリート積載混合物はさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記コンクリート混合物積荷は、車載スランプモニタリングシステム、スランプフローモニタリングシステムまたはこれらの組み合わせを有するコンクリート配送ミキサー車から流し込まれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
輸送中は9インチ未満のスランプが維持され、配送先に到着後に9インチを超えるスランプに増大される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記車載スランプモニタリングシステムは、コンクリート混合物積荷の配送に使用する回転可能なコンクリートミキサードラムに連結した油圧駆動の加圧および放圧の両方をモニタリングするための配送車上の油圧センサーの使用を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記積載コンクリート混合物の全体積に基づいて立方ヤードあたり少なくとも1600ポンドの量の粗骨材を前記積載コンクリート混合物が含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記積載コンクリート混合物の立方ヤードあたり376ないし708ポンドの量のセメント質結合材を前記積載コンクリート混合物が含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記コンクリート積載混合物は、5ないし8インチのスランプを達成するのに有効な量の高性能減水混和剤を含む第1の成分を導入すること、および、前記少なくとも2種類のセメント分散剤ポリカルボキシレートポリマーと、前記多糖類生体高分子と、前記改変セルロースとを含む第2の成分を添加することによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
混和剤組成物であって、
(A)ウェラン、ディウタン、キサンタン、グア-・ゴムまたはこれらの混合物からなる群から選択され、前記混和剤組成物の総重量に基づいて0.02ないし0.2重量%の量で存在する、多糖類生体高分子と、
(B)前記混和剤組成物の全重量に基づいて0.04ないし0.4重量%の量で存在する、改変セルロースと、
(C)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、または、これらの混合物から選択されるペンダント(ポリ)オキシアルキレン基を有する、少なくとも2種類のセメント分散剤ポリカルボキシレート櫛形ポリマーとを含み、
該少なくとも2種類の櫛形ポリマーは、前記混和剤組成物の全重量に基づいて2ないし20重量%の量存在し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第1櫛形ポリマーは、エステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基を0ないし6%未満のモル分率有し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第2櫛形ポリマーは、エステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基を6%以上のモル分率有し、第2櫛形ポリマーは第1櫛形ポリマーより少なくとも2%多く加水分解可能な基を有する、
混和剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高スランプおよびスランプフロー特性の面で高い流動性を有するコンクリートに関し、さらに具体的には、少なくとも2種類のポリカルボキシレート櫛形ポリマーセメント分散剤を特定の粘度改変剤とともに含む高流動性(highly fluid)コンクリート組成物が、制御可能なスランプフロー特性と、自己充填コンクリート(self-consolidating concrete(SCC))および従来の生コンクリート(ready-mix concrete)の両方と比較したときの長所とを備える、方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート混合物は、セメント系結合剤(例えば、石灰石、フライアッシュ、高炉水砕および/または、その他のポゾランと配合されることがしばしばである、普通のポルトランドセメント)と、細骨材(例えば、天然砂および/または砕砂)と、粗骨材(例えば、砕石砂利、石(crushed gravel, stone))と、水と、場合により、典型的ではあるが、コンクリートの特性を可塑的または硬化状態で改変するための1種類または2種類以上の化学混合剤とを含むのが典型的である。可塑性状態でのコンクリートの所望の流動性を得るために必要な混合水の量を減らして、これにより、硬化状態でのコンクリート強度を増大させるために、可塑剤および超可塑剤のような、セメント粒子分散用化学混合剤を添加することが普及している。
【0003】
「減水」セメント分散剤の添加量が増大すると、初期粘度(スランプ)増大か、対応する可塑性コンクリートの降伏応力の低下かが得られるのが常である。単数または複数の分散剤のタイプに応じて、粗骨材および細骨材が分離しないでスランプが経時的に保持される場合があることも知られている。しかし、より長いスランプ寿命を発生しようとの試みで分散剤の添加量が過剰量まで増大すると、コンクリート混合物がもはや安定でなくなところまで初期流動性が増大する結果をもたらす可能性がある。安定性の喪失は、コンクリートの水に溶けたセメントペースト部分からの、砂および/または石の骨材構成成分の深刻な分離として現れる。この安定性は、いったん分散剤の効果が消滅すると、回復する保証はない。さらに、過剰な分散剤添加量は、凝結(setting)時間が長くなるという望ましくない結果をもたらす場合がある。
【0004】
コンクリートの流動性または粘度は、円錐台であるスランプコーンから外したときのコンクリートの垂直降下に対応する、「スランプ」として定量的に説明される(例えば、ASTM C143/C143M-15aを参照せよ。)。非常に高い流動性は、コーンが持ち上げられてコンクリートが型から外れて表面に広がることが許された後の水平の広がりとして計測可能な「スランプフロー」として説明される(例えば、ASTM C1611/C1611M-14を参照せよ。)。
【0005】
「生コンクリート」(ready-mix concrete、RMC)という用語は、典型的には、垂直降下法により測定される8インチ未満のスランプ値を有するコンクリート混合物を指すためにこれまで用いられてきた。RMCがフロアを作るための型枠のような打設ゾーンに注がれるとき、振動またはスクリード法を用いるか、骨材粒子を表面の下に包埋して、その後、こてまたは刷毛で塗って最終的な表面仕上げを達成すること等により、RMCは正しい位置で固化されなければならない。これらの作業は労働および時間集約的である。これらの作業は、スチール補強または複雑な型枠が関与するかどうかに応じて、より困難になる可能性がある。
【0006】
設置および仕上げ作業を容易にするために建設プロジェクト現場で水を添加することがときどきあるが、水の添加はコンクリートを弱体化して分離のリスクを増大させ、それにより、骨材粒子が沈降し水およびセメントがコンクリート表面に浮遊して、結果として得られる構造を弱体化させる場合がある。
【0007】
自己充填コンクリート(SCC)への関心が高まってきている。SCCとは、流動性またはスランプフローがとても高いので、流し込まれるとその場に文字通り流れていく、セルフレベリング性があるコンクリートをいう。SCCは、微粉度が150ミクロン以下で、立方ヤードあたり880~950ポンドの範囲内で用いられる粒子を非常に大量含むのが常である。例えば、非特許文献1を参照せよ。SCC混合物に要求される流動性が高いほど、安定な混合物を作るために必要な微細材料の量は多いであろう。SCC混合物の設計において分離のリスクを最小化するために、セメントおよびポゾランと、粘度改変剤(viscosity modifying agents(VMAs))とは増量しなければならないのが普通である。
【0008】
したがって、SCC配合設計は無数の問題を提供する。SCC配合設計の成分間のばらつきおよび相互作用の可能性のため、一貫した流動性を得ることは困難である。上記で言及したとおり、SCC中のセメント量は非常に多い(例えば、コンクリート立方ヤードあたりセメント700-800ポンドにも達する)ので、セメント/骨材(粗骨材および細骨材の両方)の比も非常に大きい傾向にある。セメント量が多いことは、過剰な熱の発生と収縮という問題をもたらす。例えば、SCCでは、粗骨材:細骨材:セメントの比は1:1:0.5かもしれないが、RMCについては、比は、粗骨材は20%より多く、セメントは20-40%より少なくてもよい(例えば、1.2:1:0.4-0.3)。さらに、SCCは0.5インチ未満の平均サイズの粗骨材(例えば、砂利)、したがって生コンクリート(RMC)に典型的に用いられる骨材より小さい骨材を必要とする傾向がある。また、SCCは水のように流動する傾向があり、頑丈で水密性がある型枠を必要とし、SCCが型枠の上および下から流れ出す可能性があるため、水平でない打設ゾーンから流れ出る傾向があるだろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Design and Control of Concrete Mixtures、第15版、Kosmatka、Steven H.およびWilson、Michelle L.、(Portland Cement Association, Washington、DC).
【発明の概要】
【0010】
従来技術の短所を克服するために、本発明は、自己充填コンクリート(SCC)配合設計を想起させる高い流動特性を提供するが、生コンクリート(RMC)をより想起させる配合設計を用いることにより分離のリスクを低減させる能力を提供する、製法、コンクリート組成物および混和剤組成物を提供する。
【0011】
特に、粗骨材(例えば、砕石、石)の量が石の含有量を高くし、コンクリート立方ヤードあたり1550ポンドを超え(より好ましくは、1600ポンドを超え)、かつ、セメントの量がコンクリート立方ヤードあたり658ポンド未満になるようにセメントの含有量を低くし、細骨材(例えば、砂)の含有量も少なくすることにより、本発明の配合設計はRMCに類似するであろう。
【0012】
本発明の実施例のコンクリート配合設計は、13~30インチのスランプフロー、より好ましくは、15~25インチのスランプフローの範囲の流動性を有し、打設現場での強化作業は最小限しか必要ないであろう。さらに本発明は、工場から作業現場までの長い距離が配送業務にとって問題がより少ないように、少なくとも1時間持続する流動性を提供する。
【0013】
これらの実施例のコンクリートの流動性は、物性論的な技術によって特徴付けることが可能である。German Instruments製ICAR(商標)と、Calmetrix社製Pheso(商標)レオメーターを含む、さまざまな商業的なコンクリートレオメーターが入手可能である。コンクリートは、降伏応力材料であると説明され、十分な応力が加えられない限り流れださない。降伏応力材料は、Binghamモデルか、当該基本モデルの精密化モデルかによって説明されるのが典型的である。コンクリートは、流動開始に必要な応力を説明する静的な降伏応力と、流動中の塑性粘度と、コンクリートが停止するときを決定するBingham降伏応力とによって特徴付けることが可能である。実施例のコンクリートは、SCCの静的降伏応力に近い静的降伏応力値と、いったん流れだしたときのSCCより低い塑性粘度と、コンクリートはセルフレベリング性がないことを意味する、小さいが測定可能なBingham降伏応力とを有する。これは、4つの点で有用である:流動開始に必要なエネルギーがより少なく、コンクリートをポンプでくみ上げるのに必要なエネルギーがより少なく(塑性粘度がより低く)、ニュートン挙動にほぼ近く(剪断粘稠化を起こさないので、高流速でポンプを用いてくみ上げるときでさえ流動性がある)、最小限の強化が必要なだけで十分な品質を維持する能力がある。
【0014】
本発明の配合設計の別の長所は、過剰量の水および/または化学混和剤を現場で用いないで、分離またはコンクリート圧縮強度低下のリスクを実質的に高めることなく、コンクリートの粘度を予想可能なやり方で増大させることができる点である。
【0015】
本発明の実施例のコンクリート配合設計、混和剤組成物および方法は、2種類のセメント分散剤ポリマーと、2種類の特定の粘性改変剤とを併用することを伴う。複数の分散剤または粘度改変剤の使用はコンクリート業界で以前から教示されてきているが、本発明は、コンクリートの打設および仕上げを容易にするために水および/または混和剤が配送先建設現場で添加されるときであっても、(RMCを想起させる)従来の骨材のタイプおよび量と類似するが、(SCCを想起させる)非常に高い流動性と、流動性の経時的に優れた保持と、分離耐性とを提供する、新規なコンクリート配合設計を可能にする。
【0016】
従来のRMCと比較して150ミクロン未満の微細な骨材粒子の量を増大させることなく粘度および流動性が向上したコンクリートをもたらす、かかるコンクリート混合物およびこれを可能にする混和剤の組み合わせを提供することが本発明の目的である。
【0017】
コンクリートが早く流れ流動性を提供するが、制御可能で、SCCと比較して大量のセメントまたは大量の細骨材を必要としないという、RMCおよびSCCの有用な特性を組み合わせることが本発明のさらなる目的である。
【0018】
SCCと比較してセメントの必要量を減少させ、骨材使用の柔軟性を可能にさせることによって、従来のSCCと比較して、本発明は、コンクリート製造業者のコストおよび複雑さを減らし、コンクリート内での収縮および熱発生を減少させ、二酸化炭素排出量を減少させる。
【0019】
打設制御性が向上した高流動性コンクリートを打設するための本発明の実施例の方法は、
(A)打設ゾーンへの1ないし16立方ヤードの総流し込み体積を有する、少なくとも1台のコンクリート配送ミキサー車に積載されるコンクリートを配送先の現場で提供すること、
および
(B)舗装道路、スラブ、フロア、高架デッキ(elevated decks)、基礎(foundations)、ブリッジデッキ、壁、カラム、ダムまたはこれらの部分を形成するために、13-30インチの範囲内のスランプフローを有する前記積載コンクリート混合物を打設ゾーンに注入することを含み、
ここで積載コンクリート混合物は、
(i)該積載コンクリート混合物の全体積に基づいて立方ヤードあたり少なくとも1550ポンドの量の粗骨材(該粗骨材の少なくとも30%は、ASTM C33/C33M-16に規定する標準ふるい試験により測定されるマス目0.5インチのふるいに保持される)と、
(ii)前記積載コンクリート混合物の立方ヤードあたり376ないし752ポンド(より好ましくは、376-708ポンド)の量のセメント質結合材と、
(iii)前記積載コンクリート混合物中にセメント質結合材100ポンドあたり0.0003ないし0.003ポンドの量で存在する、ウェラン、ディウタン、キサンタン、グア-・ゴムまたはこれらの混合物からなる群から選択される多糖類生体高分子と、
(iv)前記積載コンクリート混合物中にセメント質結合材100ポンドあたり0.0005ないし0.005の量で存在する、改変セルロースと、
(v)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、または、これらの混合物から選択されるペンダント(ポリ)オキシアルキレン基を有する、少なくとも2種類のセメント分散剤ポリカルボキシレート櫛形ポリマー(該少なくとも2種類の櫛形ポリマーは、それぞれ、前記積載コンクリート混合物中にセメント質結合材100ポンドあたり0.02ないし0.12ポンドの量存在し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第1櫛形ポリマーは、エステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基を0ないし6%未満のモル分率有し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第2櫛形ポリマーは、エステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基の6%以上のモル分率を有し、第2櫛形ポリマーは、第1櫛形ポリマーより少なくとも2%多く加水分解可能な基を有する)と
を含む。
【0020】
したがって、本発明の実施例の混和剤組成物は、
(A)該混和剤組成物の全重量に基づいて0.02ないし0.2重量%の量で存在する、ウェラン、ディウタン、キサンタン、グア-・ゴムまたはこれらの混合物からなる群から選択される多糖類生体高分子と、
(B)前記混和剤組成物の全重量に基づいて0.04ないし0.4重量%の量で存在する、改変セルロースと、
(C)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、または、これらの混合物から選択されるペンダント(ポリ)オキシアルキレン基を有する、少なくとも2種類のセメント分散剤ポリカルボキシレート櫛形ポリマーとを含み、
前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーは、それぞれ、前記混和剤組成物の全重量に基づいて2ないし20の量存在し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第1櫛形ポリマーは、エステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基を0ないし6%未満のモル分率有し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第2櫛形ポリマーは、6%以上のモル分率のエステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基を有し、第2櫛形ポリマーは第1櫛形ポリマーより少なくとも2%多く加水分解可能な基を有する。
【0021】
本発明は、前記方法および混和物組成物から製造されるコンクリート組成物および構造体も提供する。
【0022】
さらなる本発明の長所およびメリットは、詳細に以下に説明する。
【0023】
本発明のメリットおよび特徴は、以下の好ましい実施態様の説明を図面とともに考慮するときより容易に理解できる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】水平な底面または水平な表面上でない型枠か、打設ゾーンを規定する型枠の壁面の1つが他の型枠の壁面より低い型枠かに注入される場合には制御不能に流動する可能性がある、従来技術の自己充填コンクリート(SCC)の略図。
図2】所望のグレードを保つためには、振動を加えて打設し、スクリードのような処理によって仕上げなければならない、従来技術の生コンクリート(RMC)の略図。
図3】コンクリートがSCCと類似の高い流動特性を有しながら、制御可能な流動性を提供し、RMCに通常必要な振動はほとんど不要な、水平スラブ用途に用いられる本発明の実施例のコンクリート組成物の略図。
図4図4a:(完璧なエッジ安定性がどのようなものか示唆する)理論的に完璧な垂直なエッジを有する理論的に完璧な水平面が達成される、スランプフロー試験の図。図4b:(エッジ安定性の完全な欠如がどのようなものか示唆する)二等辺三角形が形成される、スランプフロー試験の理論的な例の図。
図5】標準的なスランプフロー試験がさまざまなコンクリート混合物に適用されるときの高さの最大値と半径最大値との関係のグラフ。
図6図6a:コンクリートが本発明に従って調製され、注入される、スランプフロー試験の結果得られるコンクリート塊の断面の写真。図6b:エッジが強調された、スランプフロー試験の結果得られるコンクリート塊の横断面二値化図。
図7】本発明に従って調製され、注入されたコンクリートのエッジのグラフ。
図8】従来技術のコンクリート(スランプ6-8インチ)と、実施例のコンクリートと、自己充填コンクリートという3種類のコンクリートについての剪断速度対トルクのグラフ。
図9】従来技術のコンクリートと、実施例のコンクリートと、自己充填コンクリートとについての、動的な降伏応力に対してプロットされた塑性粘度を示すレオグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施例の実施態様の詳細な説明
本明細書で用いられる用語「セメント」は、水硬性ケイ酸カルシウム類、アルミン酸塩およびアルミノフェライト類とからなるクリンカーと、相互磨砕添加物(interground additive)としての硫酸カルシウムの1種類または2種類以上の形態(例えばジプサム)とを粉砕することにより製造される、ポルトランドセメントのような水和可能なセメントを含む。典型的には、ポルトランドセメントは、フライアッシュ、高炉水砕、石灰岩、天然ポゾランまたはこれらの混合物のような1種類または2種類以上のセメント質材料添加物と組み合わされ、混合物として提供される。したがって、「セメント」および「セメント結合剤」は、製造中にポルトランドセメントと相互磨砕されているセメント質材料添加物をも含む場合がある。用語「セメント質」は、ポルトランドセメントを構成する材料か、コンクリートを構成するために用いられる細骨材(例えば砂)および粗骨材(例えば砕石砂利、石)を一緒に保持する結合剤として機能するその他の材料かを指すものとして本明細書で用いられる場合がある。
【0026】
本明細書で使用される用語「水和可能な」は、水との化学的相互作用によって硬化するセメントまたはセメント質材料を指すことを意図する。ポルトランドセメントクリンカーは、主に水和性ケイ酸カルシウムから構成される部分的に融解した塊である。ケイ酸カルシウムは本質的にケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO2、または、セメント化学者の
表示法で“C3S”)およびケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO2、“C2S”)の混
合物であり、その中で前者が優勢の形態であり、より少量のアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al23、“C3A”)および鉄アルミン酸四石灰(4CaO・Al23・Fe23、“C4AF”)を含む。例えばDodson,Vance H.著,Concrete Admixtures(Van Nostrand Reinhold,New York NY 1990)、1頁を参照せよ。
【0027】
したがって、用語「コンクリート」は、典型的には、セメントと、細骨材として砂と、通常は、砕石砂利、石のような粗骨材と、場合によって、1種類または2種類以上の化学的混和剤とを含む、水和可能なセメント質混合物を指す。化学的混和剤は、水の必要性の低減(例えば可塑化、流動性増大)、コンクリートの凝結制御(例えば、凝結加速、凝結遅延)、空気含量および品質の管理(例えば、空気連行剤、脱気剤)、収縮低減、腐食阻害その他の目的を例示として含む、さまざまな特性を改変する目的でコンクリートに添加される。
【0028】
本明細書で使用される用語「骨材」は、コンクリート、モルタルおよびアスファルトのような建設材料用の砂または石の粒子を意味し、かつ、指すものとし(shall mean and refer to)、これは典型的には平均サイズ0ないし50mmの顆粒状粒子を含む。骨材は、炭酸カルシウム性、ケイ酸質またはケイ酸質石灰石材料を含む場合がある。かかる骨材は、天然の砂(例えば典型的には風化して粒子が滑らかな表面を有する、氷成、沖積または海成堆積物に由来する砂)の場合か、あるいは機械的粉砕機または磨砕装置を用いて作られる「人造」型の場合がある。
【0029】
より具体的には、用語「細骨材」または「砂」は、ASTM C33/C33M-16またはAASHTO M6-13/M43-05の規定を満たす建設材料用骨材を指すものとする。これらの規定は、例えば、細骨材の100%が3/8インチのふるいを通過することを要件とする粒度限界(grading limits)を含む。
【0030】
さらに用語「粗骨材」または「石」は、ASTM C33/C33M-16またはAASHTO M80-13の規定を満たす建設材料用骨材を指すものとする。これらの要件も特定の粒度限界を含む。
【0031】
用語「平らな(flatwork)コンクリート」または「水平型枠」は、ACI CT-16に定める仕上げ作業を必要とするコンクリートフロアおよびスラブに適用可能な一般用語を意味し、指すものとする。これは、土間(slab-on-grade)、舗装、フロア、基礎、高架デッキ、ブリッジデッキ、フロアデッキ、歩道(sidewalks)を含む場合がある。
【0032】
用語「エッジ安定性」は、平らなコンクリート用に用意された領域に注入された後または注入時のコンクリート塊のエッジ前縁の説明とする。より高い安定性は、注入されたコンクリート塊の最大高と比べてより高い垂直エッジ前縁を支持できる。ASTM C1611/C1611M-14(または「Lボックス試験」、例えば“Specification and Guidelines for Self-Compacting Concrete,”(EFNARC (European Federation of
National Trade Associations)、Surrey、UK、2002年2月)を参照せよ。)に従うスランプフロー試験のような試験を行うとき、エッジ安定性は、エッジ前縁の形状を調べるためのさまざまな手段を通じて定量化できる。
【0033】
好ましくは、本発明の製法およびコンクリート混合物は、スランプその他の物性論的特性を管理するためのコンクリートスランプ管理(モニタリング)システムを用いて連続的にモニタリングされる、回転可能なミキサードラムを有するコンクリート・ミキサー・トラックからバッチ処理され、配送され、モニタリングされ、注入される。かかるスランプモニタリングシステムは、Verifi LLC(62 Whittemore Avenue, Cambridge, Massachusetts, USA)から商業的に入手可能であり、米国特許第8,020,431号、第8,118,473号、第8,311,678号、第8,491,717号、第8,727,604号、第8,764,273号、第8,989,905号、第9,466,203号、第9,550,312号と、米国特許出願第11/834,002号(米国特許出願公開第2009/0037026 A1号)、米国特許出願第258,103号(米国特許出願公開第2012/0016523 A1号)、国際特許出願PCT/US2015/025054号(国際公開第WO 2015/160610 A1号パンフレット)および国際特許出願PCT/US2014/065709号(国際公開第WO2015073825 A1号パンフレット)のような特許文献にVerifi LLCはさまざまな自動コンクリートモニタリング方法およびシステムを開示してきた。
【0034】
代替的には、スランプモニタリングシステムは、ドラムに設置される圧力センサー(または歪みゲージ)の使用に基づく場合がある。例は、Berman(GCP Applied Technologies Inc.社(Cambridge MA USA)の関連会社であるSensocrete Inc.社)の米国特許第8,848,061号および米国特許出願公開第2015/0051737 A1号、Denis Beaupreら(I.B.B. Rheologie Inc.社)の米国特許第9,199,391号、または、Benegasの米国特許出願公開第2009/0171595号および国際公開第WO 2007/060272号に開示されている。
【0035】
用語「打設ゾーン(placement zone)」は、その中にコンクリートが建設現場で注入される、いずれかの領域、容器(receptacle)、型枠(例えば、板で区切られた空胴または容器)またはモールドであり、これは、水平型枠(または前述のスラブ、フロア、デッキ等についての「平らなコンクリート(flatwork)」)または垂直型枠(ブロック、壁、パネル、カラムまたはこれらより高い構造体に流し込むのに十分高い側面を有する)を含む場合がある。
【0036】
図1~3は、用意された路床の表面が傾斜しており、所望のスラブ(またはフロアまたはデッキ)の表面が該傾斜した路床と平行であるはずのような平らなコンクリートに用意された領域に設置される場合に異なるコンクリートがどのような性能を発揮するかを示す。軽い傾斜を有する表面は、降雨または降雪の際の適切な排水を可能にするために傾斜が必要とされる道路舗装では特に珍しくない。特に図1は、自己充填コンクリート(SCC)その他のセルフレベリングコンクリート(符号20で表す)を用いることの短所を示す。図1に示すとおり、コンクリート20のセルフレベリング性が、水平でない地面(符号10で表す)か、(符号16で表される図1~3の水平な点線によって示唆されるとおり)水平でない打設ゾーン(地面10および型枠板12および14で表す)の水平な地面平行性を維持したいという願望を打ち破る。SCC(符号20で表す)は、符号14で示される固定された板のような型枠12/14の上または下を流れる傾向がある。典型的には、スランプがより制御可能な5ないし8インチの生コンクリート(RMC)が、平行でない地面の状況で使用されるであろう。
【0037】
図2に示すとおり、従来技術のRMC(符号22で表す)の頂面は、型枠(符号12および14で表す)内で区切られた打設ゾーン内で、水平でない地面(10)か、使用される場合は底の型枠かに平行にすることができる。しかし、これは振動の注意深い使用を必要とする。(水または超可塑化剤を添加することを含む)流動性を増大するための従来技術が用いられる場合には、振動の量または程度は低減されるが、コンクリート22内の骨材はコンクリート22の体積内で分離する傾向を示すであろう。
【0038】
図3は、振動または仕上げの努力をほとんどしなくても、その上面を水平でない地面または傾斜(10)と平行にできる、本発明の実施例の高流動性コンクリート24を図示する。さらに本発明の好ましい方法および組成物では、本発明の高流動性コンクリート24は、特に水平な土間またはフローリング(または高架デッキ)の用途で用いられるとき、コンクリートが型枠12/14の上または下を流れるのを防ぎつつ、コンクリート塊が打設ゾーン内を容易に移動できるようなエッジ安定性を示す。
【0039】
打設ゾーン内に高流動性コンクリートを打設するための本発明の実施例の方法は、
(A)打設ゾーンに1ないし16立方ヤードの総注入体積を有する、コンクリート配送ミキサー車少なくとも1台分のコンクリートを配送先の現場で提供すること
および
(B)舗装道路、スラブ、フロア、基礎、ブリッジデッキ、壁、カラム、ダムまたはこれらの部分を形成するために、(ASTM C1611/C1611M-14か、ASTM
C1611/C1611M-14に較正される自動コンクリートモニタリングシステムかに従うスランプフローコーン試験を用いて確認される場合がある)13ないし30インチの範囲内のスランプフローを有する前記積載コンクリート混合物を打設ゾーンに注入することを含み、
ここで前記積載コンクリート混合物は、
(i)該積載コンクリート混合物の全体積に基づいて立方ヤードあたり少なくとも1550ポンド、より好ましくは少なくとも1600、1700、最も好ましくは少なくとも1800ポンドの量の(例えばASTM C33/C33M-16またはAASHTO M80-13に説明される専門用語である)粗骨材であって、該粗骨材の少なくとも40%は、ASTM C33/C33M-16に規定する標準ふるい試験により測定されるマス目0.5インチのふるいに保持される(表3)、粗骨材と、
(ii)前記積載コンクリート混合物の立方ヤードあたり376ないし752ポンド(より好ましくは423-658、最も好ましくは423-564ポンド)の量の(石灰石、フライアッシュ、高炉水砕その他ポゾラン材料を含むか、または含まない、ポルトランドセメントを含む)セメント質結合材と、
(iii)前記積載コンクリート混合物中にセメント質結合材100ポンドあたり0.0003ないし0.003の量で存在する、ウェラン、ディウタン、キサンタン、グア-・ゴムまたはこれらの混合物からなる群から選択される、多糖類生体高分子と、
(iv)前記積載コンクリート混合物中にセメント質結合材100ポンドあたり0.0005ないし0.005の量で存在する、改変セルロースと、
(v)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、または、これらの混合物から選択されるペンダント(ポリ)オキシアルキレン基を有する、少なくとも2種類のセメント分散剤ポリカルボキシレート櫛形ポリマーとを含み、
該少なくとも2種類の櫛形ポリマーは、それぞれ、前記積載コンクリート混合物中にセメント質結合材100ポンドあたり0.02ないし0.12(より好ましくは0.03ないし0.10、最も好ましくは0.04ないし0.08)ポンドの量存在し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第1櫛形ポリマーは、エステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基を0ないし6%未満のモル分率有し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第2櫛形ポリマーは、エステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基の6%以上のモル分率を有し、第2櫛形ポリマーは、第1櫛形ポリマーより少なくとも2%多く加水分解可能な基を有する。
【0040】
したがって本発明は、上述の方法から製造されたコンクリート組成物または構造体と、前記ポリマーおよび粘度改変剤を含む混和剤組成物とをも提供する。
【0041】
驚くべきことに、スランプフロー直径およびT20(ここで20は20インチを指す)またはT50(ここで50は50cmを指す)を含む同一のスランプフローパラメーターについて異なる前縁エッジ形状(またはエッジ安定性)を達成することが可能であることを本発明の発明者は発見した。特にコンクリート注入エッジ安定性に関して本発明のメリットをより容易に理解するために、2つの理論的な事例が検討可能である。第1の理論的な事例では、スランプフロー試験(例えばASTM C1611/C1611M-14)は、完璧に水平なコンクリート表面と、完璧に垂直な側面エッジとをもたらす。換言すると、得られる形状は、高さHおよび半径Rcylの円筒状である。2次元投影が図4aの理論的図に示される。円筒の体積は、
【0042】
【数1】
【0043】
ここでVは、円の円周および直径の比πと、円筒の半径Rcylの2乗と、円筒の高さHとに基づいて算出される円筒の体積である。これは、完璧なエッジ安定性を有する流動可能なコンクリートについての限界事例を表す。第2の事例では、スランプコーン試験が実行され、得られた形状は、第1の事例と同じ高さHおよび半径Rconeの円錐である。これが2次元で考察されるとき、図4bの理論図に示されるとおり二等辺三角形になる。その体積は以下の関係式で示される。
【0044】
【数2】
【0045】
両方の理論的事例において、等量のコンクリートが用いられると、それぞれの事例で体積および高さが同じであれば、第2の事例での円錐の半径Rconeについて式を解くと以下のとおりである。
【0046】
【数3】
【0047】
したがって、エッジ安定性は半径方向の流動性の増大の犠牲になる。これまでに論じた2つの極限の事例(limit cases)の中間である第3の事例を想定することができる。この実施例で得られる形状は、水平な表面を有さないが、垂直なエッジを保持する。これは、図4cに示されるとおり、円筒の上の円錐が載り、両方が半径Rintを有すると説明できる。第1の事例と同じく全高をHとすると、垂直なエッジの高さはHの比αと記載できる。このやり方で、ともに半径Rintおよび全高Hを有する円錐および円筒の体積を足した後で、体積は以下の式で表される。
【0048】
【数4】
【0049】
α=1のとき、エッジ高さはHとなり、第1の事例を表すが、α=0のとき、エッジ高さは0となり、第2の事例を現す。第1の事例における円筒の半径は以下の式で表される。
【0050】
【数5】
【0051】
本発明の発明者は、本発明が、優れたエッジを可能にし、例えば、(ASTM C1611/C1611M-14に従うような)スランプフロー試験の結果から定量化できることを発見した。前記結果に基づいて、半径方向の広がり最大値Rと、全高Hとは容易に測定できる。上述の3つの事例と、各スランプフロー試験について同一体積のコンクリートが製造されることとを考慮すると、スランプフロー試験(ASTM C1611/C1611M-14)の結果のコンクリート塊の高さHは図5に示すとおり半径方向の広がり最大値Rの関数としてプロットできる。本発明について、(コンクリートが水平な流し込みゾーンに流し込まれるときに最もよく理解される)優れたエッジ安定性の面での驚くべき制御は、図5の網掛け領域に図示される。この領域は、以下の式
【0052】
【数6】
【0053】
で説明される完全に垂直なエッジを有するコンクリートの体積と一致する下限と、以下の式
【0054】
【数7】
【0055】
(ここでλは定数)で説明される上限という2本の線の間の領域として定義できる。これは、RおよびHが以下の式
【0056】
【数8】
【0057】
を満足する、代替的なやり方で表現できる。本発明の発明者は、λが2.5、より好ましくは2であることを見いだした。垂直エッジがないコンクリートの体積と一致する絶対的な上限は以下の式で記載される。
【0058】
【数9】
【0059】
これらの等式において、スランプコーンの体積は約352立方インチである。定数λは、以下の式でαと関係づけられる。
【0060】
【数10】
【0061】
そこで、2.5のλに対してα=0.1で、2.0のλに対してα=0.25である。理論的な観点からは、α=0はエッジがゼロに対応し、α=1は完全に垂直なエッジに対応するので、αは物理学的に意味深い。しかし、垂直エッジが本技術分野では測定が困難な場合があるのに対し、最終的な半径方向の広がり最大値Rと、最大高Hとだけから計算できるλはあるコンクリート混合物のエッジ安定性を迅速に決定する方法を提供する。
【0062】
本発明の発明者は、αおよびλがコンクリート混合物のチキソトロピー性を示唆すると信じる。高チキソトロピー性のコンクリート混合物は、撹乱後非常に迅速にその微細構造を再構築できる。本発明のコンクリート混合物が(スランプフロー試験の最中のように)その半径方向の広がり最大値に到達するにつれて、優れた外向きのエッジを保持するためにその微細構造が実測に再構築される。したがって、αまたはλが1に近く、特定スランプフロー(またはスランプ)が最小のコンクリートは高チキソトロピー性に依存する用途に特に向いている場合がある。実例は、型枠の圧力を最小化するために高チキソトロピー性を必要とするコラムまたは壁(“Evaluation of SCC Formwork Pressure”、 Concrete International、2010年6月を参照せよ。)と、スリップフォーム舗装(slip-form paving、例えば“Self-Consolidating Concrete - Appli
cations for Slip-Form Paving: Phase II”,
Report No. DTFH61-06-H-00011 (Work Plan
6)を参照せよ。)と、分離抵抗(segregation resistance、例えば米国特許第8,764,272号を参照せよ。)との高流動可能性コンクリートを含む。新規な組み合わせの特定のVMAが、特定の半径方向の広がり最大値について最適なエッジ品質を可能にすると、本発明の発明者は信じる。
【0063】
本発明の発明者は、コンクリートの広がりのエッジ前縁の形状の観点からも本発明を説明できると信じる。例えば、スランプフロー試験(ASTM C1611/C1611M-14)の考察において、2次元プロフィールが例えばデジタルカメラで撮影できる。得られた画像は、図6aおよび図6bに示されるとおり、コンクリート流のエッジを測定するために解析できる。多数の数学的関数がコンクリートのエッジを定義するためにたぶん使用できるはずであり、その一例として、コンクリートの高さhを、フィッティング(form-fitting)定数aおよびbを有する関数形式を通じて、広がり半径rの関数に関連づける以下の形式の関数が使用できる。
【0064】
【数11】
【0065】
上述のとおりRは半径方向の広がり最大値を指す。特定のエッジ前縁についてさまざまな特性が算出可能である。例えば、導関数が前記関数から容易に計算でき、関数が与えられない場合には数値計算で算出できる。
【0066】
図7では、コンクリート流のエッジは、(例えば水平な型枠用途内で見るとき)最も外側の流し込まれたコンクリートの半径での正規化された高さおよび半径距離についての関数h(r)と、h(r)の1次導関数であるdh/drとのプロットを用いて図示される。半径距離および高さは半径方向の広がり最大値Rによって正規化されていることに留意せよ。本発明の発明者は、エッジ前縁の湾曲を記述する1つの方法は、第1次導関数(または傾き)がある閾値以下に下がるときがいつかを考慮することであると信じる。例えば、傾きが(角度45°に対応する)-1未満に下がる点は、対応する広がり半径および高さに沿って見つけることができる。典型的には、-1の傾きが達成された後は、傾きは速やかに(垂直エッジを示す)負の無限大に発散する。優れたエッジ安定性を有するコンクリートについては、この傾きが達成される高さは、劣悪なエッジ安定性のコンクリートと比較して有意であろう。数学的には、以下の式で表される。
【0067】
【数12】
【0068】
ここで、
【0069】
【数13】
【0070】
は、関係式H(r)の傾きdh/drが傾きの臨界値Scritと等しく、Hが最大高さで、hcritが0から1までの高さの臨界値であるときの高さを表す。上記の事例では、Scritが-1で、hcritは、0.05、より好ましくは0.1、最も好ましくは0.2である。
【0071】
流し込まれたコンクリートのエッジ前縁の独特な特徴の上述した議論は、積載コンクリート混合物がミキサー車から、土間、フローリングその他の型枠用途のような水平用途へと流し込まれ、得られたコンクリート構造体の、厚さ(または深さ)対幅または上向き表面積についてのアスペクト比が高いとき、最もよく理解される。例えば流し込みゾーンの体積が、ミキサー車のミキサードラムの積載体積よりよりもっと大きいとき、本発明のコンクリート配合設計は、コンクリートの上向き表面積の大部分がほとんどまたは全く圧縮(またはこて作業)を要せず、前記上向き表面積の過半数と比較して湾曲がある流し込みエッジ前縁を有するであろう点で、同一の流し込みゾーンにその後積載物を流し込むのが容易になるような流し込み形状を有するであろう。
【0072】
したがって本発明の以後の実施例の方法では、打設ゾーンの体積はミキサー車積載量の体積を超える。コンクリート積載量は、打設ゾーンの体積に自由に流れ出して、例えば図3、6aおよび6bによって一般的に図示されるとおりエッジ前縁が湾曲しているので、積載コンクリートはその高いスランプフロー特性のため、連続セグメントとなるのに圧縮または振動をほとんど必要としない。
【0073】
本発明のコンクリート配合設計の管理可能な高い流動特性は、高配合比の人工(砕石)骨材が使用されるとしても達成可能である。したがって実施例のコンクリート配合設計は、天然砂、人工(砕石)砂またはこれらの混合物から選択される細骨材を含む。本発明の実施例の方法および混合物組成物では、細骨材がコンクリート積載混合物中の全細骨材の重量に基づいて少なくとも50%の人工(砕石)砂を含む場合があると本発明の発明者は信じる。
【0074】
以下の範囲は、Germann Instrucments社から販売される羽根レオメーター(vane rheometer)ICAR(商標)Plusによって測定され、提供される。実施例のコンクリートおよび自己充填コンクリートは250ないし1500パスカル(Pa)の(流動開始に伴う)静的降伏応力を有するが、従来のコンクリートは1500Paを超える静的降伏応力を有する。自己充填コンクリートは30未満のビンガム降伏応力を有し、しばしば自己充填コンクリートが障害物に達するまで流れつづけることを示す。実施例のコンクリートは、SCCより高いが、500Paを超えるビンガム降伏応力の従来のコンクリートよりはるかに低い、約100Paの(流動停止に伴う)ビンガム降伏応力を有する。これは、実施例のコンクリートが、容易に流れるけれども、SCCよりも容易に流動を停止するであろうことを意味する。したがって、得られるコンクリートが容易に流れるが、あまりにも容易に流れるわけではないときに実施例の混和剤の利点が現れる。
【0075】
少なくとも2種類のセメント分散剤のポリカルボキシレート櫛形ポリマーを説明するについて、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーの1つが初期スランプ増強のために選択され、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーの2つめがスランプ保持の増強のために選択されることを本発明の発明者は意図する。好ましい実施態様では、前記少なくとも2種類のセメント分散剤櫛形ポリマーは、両方とも、3種類のモノマー成分A、BおよびCから得られる。ここで成分Aは、以下の構造式1で表される不飽和カルボン酸モノマーである。
【0076】
【化1】
【0077】
成分Bは、以下の構造式2で表されるポリオキシアルキレンモノマーである。
【0078】
【化2】
【0079】
成分Cは、以下の構造式3で表される不飽和カルボキシレートエステルまたはアミドモノマーである。
【0080】
【化3】
【0081】
、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ個別に、水素原子、C1ないしC4アルキル基を表し、-COOM基(Mは水素原子またはアルカリ金属)を表し、Yは-(CH-を表し(pは0ないし6の整数)、Zは、-O-、-COO-、-OCO-、-COHN-、または-NHCO-基を表し、-(AO)nは反復エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、ブチレンオキシド基またはこれらの混合物を表し(nは反復する-(AO)-基の平均数を表し、10から250までの整数)、Wは酸素原子または-NH-基を表し、R11はC-C10アルキル基またはC-C10ヒドロキシアルキル基を表す。
【0082】
なおさらなる実施態様では、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーの第1ポリマーは、コンクリート積載混合物における(初期)スランプ増強を提供し、成分AおよびBを(A:B+C)のモル比で2:1ないし5:1の範囲内で有し、成分Cを0ないし0.2未満[反復単位のモル比]の量で含み、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーの第2ポリマーは、コンクリート積載混合物におけるスランプ保持を増強し、成分A、BおよびCを(A:B+C)のモル比範囲0.3:1ないし3:1で有し、ここで成分Cは少なくとも0.2[反復単位のモル比]の量で含む。好ましくは、第1ポリマーおよび第2ポリマーは9:1ないし1:9(より好ましくは5/1ないし1/5、最も好ましくは2/1ないし1/1)の範囲内で存在する。
【0083】
ポリカルボキシレートの組成物は、本分野で周知のとおり、HのNMRの積分により測定される場合がある。例えば、Plank, Johann、Li, Huiqun、Ilg, Manuel、Pickelmann, Julia、Eisenreich, Wolfgang、Yao, Yan、Wang, Ziming、Cement and Concrete Research (2016)84巻20-29頁は1つのありふれた手順を説明する。
【0084】
本発明の他の実施例の組成物および方法では、コンクリート混合積載物は、少なくとも3種類の異なるセメント分散剤ポリカルボキシレート櫛形ポリマーを含む。
【0085】
本発明の好ましい組成物および方法では、多糖類ポリマーはディウタンで、改変セルロースは、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはこれらの混合物である。ディウタンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースの組み合わせが最も好ましい。
【0086】
コンクリートを打設するための好ましい方法では、スランプフローが16ないし24インチの範囲内のコンクリート積載混合物が流し込まれる。他の実施例の方法では、打設ゾーンは、ACI CT-16で定義されるコンクリート型枠を用いて区切られ、流し込みは、コンクリート舗装道路、土間、マット基礎、フロア、架橋デッキまたはこれらの一部を提供する。本発明の好ましい方法では、ACI CT-16で定義されるコンクリート型枠のために用意された領域に流し込まれるコンクリート積載混合物は、ASTM C1611/C1611M-14のスランプフロー試験に従うスランプフロー半径Rと、ASTM C1611/C1611M-14のスランプフロー試験に従うスランプフロー試験を実行した結果としてのコンクリート塊の最大高さHを有し、Vがスランプコーンの体積(より好ましくは1ないし2)として以下の関係式を満たす。
【0087】
【数14】
【0088】
本発明の別の実施例の方法では、コンクリートはACI CT-16で定義されるコンクリート型枠を有する領域に流し込まれ、前記コンクリートは、流し込まれたコンクリートの最も上の領域と比較した湾曲を有するエッジ前縁を有し、前記コンクリートは、ASTM C1611/C1611M-14に従うスランプフロー試験に供されるとき、広がり半径の関数としての高さh(r)が、rについてのh(r)の第1導関数が-1に等しく、ASTM C1611/C1611M-14に従うスランプフロー試験を実行した結果のコンクリート塊の最大高によって正規化され、Hは0.05(より好ましくは0.10で、最も好ましくは0.20)の臨界高hcrit以上であることで特徴付けられる。
【0089】
本発明のまたさらなる実施例の方法では、前記少なくとも2種類のセメント分散剤ポリカルボキシレートポリマーと、前記多糖類生体高分子と、改変セルロースとは、バッチ工場でのコンクリート積載混合物のバッチ処理中にコンクリート積載混合物に導入される。
【0090】
他の実施例の方法では、セメント分散剤ポリカルボキシレート櫛形ポリマーの一方または両方が、(前記粘度改変剤とは別に)バッチ工場から配送先へのコンクリートの輸送中か、配送先でか、またはバッチ処理中および輸送中の両方かに前記積載混合物に導入される場合がある。本発明の最も好ましい方法では、前記コンクリート混合物積荷は、車載スランプモニタリングシステム、スランプフローモニタリングシステムまたはこれらの組み合わせを有するコンクリート配送ミキサー車から流し込まれる。かかる自動コンクリートモニタリングシステムは、前記コンクリート混合物積荷を輸送中は9インチ未満のスランプで輸送し、配送先に到着後にコンクリート積荷を9インチ超のスランプに増大させることを可能にするであろう。前記コンクリートモニタリングシステムは、配送トラックに積載された前記コンクリート混合物積荷をモニタリングするために使用される、回転可能なコンクリートミキサードラムに連結した油圧駆動の加圧および放圧の両方をモニタリングするための油圧センサーの使用を伴う車載スランプモニタリングシステムであることが最も好ましい。
【0091】
本発明のまたさらなる実施例の方法では、前記コンクリート積載混合物は、5ないし8インチのスランプを達成するのに有効な量の高性能減水混和剤を含む第1の混和剤成分を導入し、前記少なくとも2種類のセメント分散剤ポリカルボキシレートポリマーと、前記多糖類生体高分子と、前記改変セルロースとを含む第2の成分とを添加することによって調製される。
【0092】
代替的には、(他の混和剤を含む,または、含まない)従来の可塑化剤はバッチ工場から配送先までの輸送中に最初にバッチ処理され、および/または、積荷に添加される一方で、前記少なくとも2種類のセメント分散剤ポリカルボキシレートポリマーと、前記多糖類生体高分子と、改変セルロースとは、建設配送先でコンクリート積載混合物に添加される。
【0093】
高範囲減水混和剤に加えて、前記コンクリート積載混合物は、バッチ処理、輸送または排出の作業中に、空気連行剤、空気脱連行剤、凝結遅延剤、急結剤またはこれらの組み合わせからなる群から選択される1種類以上の追加の化学混和剤で改変される場合もある。
【0094】
したがって本発明は、上記の方法で形成されるコンクリートおよびコンクリート構造体と、混和剤組成物とを提供する。
【0095】
実施例の混和剤組成物は、(A)ウェラン、ディウタン、キサンタン、グア-・ゴムまたはこれらの混合物からなる群から選択され、前記混和剤組成物の総重量に基づいて0.02ないし2重量%(wt%)の量で存在する、多糖類生体高分子と、(B)前記混和剤組成物の全重量に基づいて0.4-4重量%の量で存在する、改変セルロースと、(C)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、または、これらの混合物から選択されるペンダント(ポリ)オキシアルキレン基を有する、少なくとも2種類のセメント分散剤ポリカルボキシレート櫛形ポリマーとを含み、該少なくとも2種類の櫛形ポリマーは、前記混和剤組成物の全重量に基づいて2ないし20重量%の量存在し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第1櫛形ポリマーは、エステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基を0ないし6%未満のモル分率有し、前記少なくとも2種類の櫛形ポリマーのうち第2櫛形ポリマーは、6%以上のモル分率のエステル、アミドまたはこれらの混合物から選択される加水分解可能な基を有し、第2櫛形ポリマーは第1櫛形ポリマーより少なくとも2%多く加水分解可能な基を有する。
【0096】
本発明は限られた数の実施態様を用いて説明されるが、これらの具体的な実施態様は、補正前の明細書の他の箇所で説明され、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定することは意図しない。説明された前記実施態様の改変および変形は存在する。より具体的には、以下の実施例が本願に係る発明の具体的な実施態様の例示として提供される。本発明は実施例に示される具体的な詳細には限定されないことを理解すべきである。
【実施例1】
【0097】
以下の実施例では、互いに異なる少なくとも2種類の分散剤ポリカルボキシレート櫛形ポリマーを含む実施例のコンクリート組成物および混和剤組成物は、米国特許第8,080,875号公報に従って入手されるか、または、製造される場合がある。
【0098】
本願と共通の譲受人に所有される米国特許第8,070,875号公報に定義されるスランプ増強(SE)およびスランプ保持(SR)ポリマーは、意図されるセメント分散剤機能について適切なポリマーであると信じられており、グルコン酸ナトリウムのようなグルコン酸塩が、所望の場合には、SEポリマーの効果を緩和するために用いられる場合がある。
【0099】
前記875号特許公報では、実施例の材料SE-1は日本触媒からのAqualoc(登録商標)HS-1分散剤で、実施例の材料SR-1はKao PolymersからのMighty(登録商標)21RS分散剤である。多くの他のポリマーが超可塑化剤として販売され、高性能減水剤(High Range Water Reducers (HRWR))その他の混和剤に配合される。SRポリマーを含む重要な成分の水溶液が本発明の実施例に添加されるとともに、比較例の目的に用いられる。当業者は、これらが、殺生物剤、消泡剤、グルコン酸塩のような遅延剤を最終的な配合物に添加される場合のある成分と認識するであろう。
【0100】
さらに、本発明の水和性セメント質組成物を製造するために以下の実施例は2種類の液状混和剤を利用するが、成分のそれぞれは、固体としてか、水に溶かしてかで、個別に添加される場合がある。
【0101】
上記の溶液とともに、商業的な混和剤も以下の実施例に使用される。これらは、GCP アプライド・テクノロジー社(マサチューセッツ州、ケンブリッジ)から入手可能なADVA(登録商標)198高性能減水剤(HRWR)を含み、該高性能減水剤は、スランプ増強ポリマーと、同じくGCPから入手可能なDarex(登録商標)II空気連行剤(AEA)とを含む。必要な場合には、スランプ値はASTM C143/C143M-15aに従って測定され、スランプフローおよびVSI(可視分離指数(visual segregation index))はASTM C1611/C1611M-14に従って測定される。
【0102】
実施例1は、3種類の異なるコンクリート混合物間の比較からなる。混合物1は、典型的な中程度の流動性の典型的なHRWR混合物である。混合物2は、前記HRWRの添加量を増大させるという従来の手段を通じて流動性を増大させる試みである。混合物3は、本発明の実施例の配合物の使用を実証する。3種類の混合物の全ては、粗骨材の最大寸法(nominal maximum size)が0.75インチの石を立方ヤードあたり1200ポンド(lbs/yd)と、粗骨材の最大寸法が0.375インチの石を490lbs/ydと、砂を1350lbs/ydと、ASTM タイプI/IIセメントを611lbs/ydと、水を280lbs/ydとを含む、同一の基本コンクリート配合設計を含む。混合物1は(スランプ増強ポリマーを含む)ADVA(登録商標)198のHRWRを5oz/100cwt(すなわち、100ポンドのセメント質材料または“cwt”あたり5オンス)含み、混合物2はADVA(登録商標)198のHRWRを8oz/100cwt含み、混合物3は、ADVA(登録商標)198のHRWRを5oz/100cwtと、ポリカルボキシレートエーテル1(PCE-1)を0.037lbs/cwtと、PCE-2を0.037lbs/cwtと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.0021lbs/cwtと、ディウタン・ゴムを0.0011lbs/cwtとを含んだ。全ての混合物は以下のプロトコールに従って撹拌された。石と、砂と、水の80%とを2分間高速で撹拌し、セメントを添加して2分間高速での撹拌を継続し、前記HRWR(および、存在する場合には本発明の溶液)を添加して2分間高速での撹拌を継続し、撹拌機の電源を切って3分間静置し、3分間高速での撹拌を再開する。
【0103】
この時点で、コンクリートの一部をサンプリングし、前記3種類の混合物のそれぞれについて、スランプ、スランプフローおよびVSIが測定された。この時点の後、コンクリートは戻され、コンクリートは15分間低速で撹拌された。それからコンクリートは再びサンプリングおよび試験され、その後、コンクリートは撹拌機に戻されてさらに30分間低速で再び撹拌された。撹拌後、サンプルが最後の組の測定のために採取された。結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
9分では、混合物1はHRWR配合設計で典型的なスランプを示す。ADVA(登録商標)198HRWRを添加した混合物2は、より高い流動性を達成することができたが、VSIが1.5と、合格ラインすれすれの分離特性を示した。しかし混合物3は、ほぼ同じ流動性(25.5インチの流動性と、より良好な分離抵抗性(より低いVSI)を達成することができた。時間の経過とともに、混合物3が混合物2より優れたスランプ寿命を有することが理解できる。さらに、VSIは数値0に速やかに到達するが、混合物2は30分でもなお分離の徴候を示す。時間間隔のそれぞれで、半径方向の広がりR(スランプフローを2で除算した数値)と、コンクリート塊の高さH(12インチからスランプ値を減算した数値)との比を検定することが可能である。これらの計算を表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
下線を施した数値は、図a、6bおよび7に示すとおりの許容できるR/Hの範囲内である。そこで、混合物3は、少なくとも60分間の優秀なスランプ寿命を示すばかりでなく、驚異的に制御可能なエッジ前縁も示す。
【実施例2】
【0108】
本実施例では、少し異なる性能を有するPCE-1およびPCE-2という2種類のPCEポリマーを使用するメリットが実証される。全て基本HRWRにSEポリマーを含む3種類の異なるコンクリート混合物が比較された。混合物4はPCE-2ポリマーおよび粘度改変パッケージとともに高性能減水剤超可塑化セメント分散剤ポリマー(以下、「HRWR」という)を含むコンクリート混合物であり、混合物5は、PCE-1ポリマーおよび粘度改変パッケージとともにHRWRを含むコンクリート混合物で、混合物6は、SEポリマーを含むHRWRと、PCE-1およびPCE-2ポリマーの両方と、粘度改変パッケージとを含むコンクリート混合物であり、混合物6が本発明の実施例である。
【0109】
サンプル採取は、9分、30分および60分に加えて、45分および75分にも行われることを除いて、実施例1に用いたのと同じプロトコールに従って、全ての混合物が撹拌され試験された。3種類の混合物全てについての基本コンクリート設計は、粗骨材の最大寸法が0.75インチの石を1570lbs/ydと、粗骨材の最大寸法が0.50インチの石を280lbs/ydと、人工砂を1195lbs/ydと、ASTMタイプI/IIセメントを611lbs/ydと、水を318lbs/ydと、Darex(登録商標)II空気連行剤を9.2oz/ydとからなった。混合物4は、SEポリマーを含むADVA(登録商標)198HRWRを2oz/cwtと、PCE-2を0.046lbs/cwtと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.0026lbs/cwtと、ディウタンゴムを0.0017lbs/cwtとを含んだ。混合物5は、ADVA(登録商標)198HRWRを2oz/cwtと、PCE-1を0.046lbs/cwtと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.0026lbs/cwtと、ディウタンゴムを0.0017lbs/cwtとを含んだ。混合物6は、PCE-2を0.046lbs/cwtと、PCE-1を0.046lbs/cwtと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.0026lbs/cwtと、ディウタンゴムを0.0017lbs/cwtとを含んだ。
【0110】
結果は表3に示される。
【0111】
【表3】
【0112】
混合物4および6の比較からSEポリマーの有効性が実証され、混合物5および6の比較からSRポリマーの有効性が実証される。まとめると、これらの比較は、米国特許第8,070,875号公報に示されるとおり、SEおよびSRタイプのポリマーの両方を含むコンクリートのメリットを、この事例ではグルコン酸塩のようなスランプ制御成分を用いないで示す。
【実施例3】
【0113】
本実施例では、本発明と従来技術との重要な相違点を強調するために比較されるであろう。米国特許第8,070,875号公報では、水の添加に関して自己充填コンクリート(SCC)のロバスト性を増大させるために、配合物が調整された。SCCは、分離をもたらす場合がある建設現場での水の添加に敏感なのが典型的である。米国特許第8,070,875号公報が教示する配合物は、SCCのロバスト性を増大させ、建設現場での水の添加が流動性を増大させず、これにより、分離抵抗性を維持するのを助ける。本発明は、建設現場または輸送中に水が添加されるときに、水がスランプフローを増大させることを可能にすると信じられる配合物を含む。配送中にコンクリートをモニタリングおよび添加できるように、(Verifiの)米国特許第8,020,431号公報、(Sensocrete, Inc.の)米国特許第8,848,061号公報、および、(I.B.B. Rheologie, Inc.の)米国特許第9,199,391号公報に説明されるような多数のスランプモニタリング装置が、コンクリート配送ミキサー車上での使用のために教示されてきた。
【0114】
2種類の異なる増粘剤の組み合わせの少ない添加量を含む混合物7と、2種類の異なる増粘剤の組み合わせの多い添加量を含む混合物8と、米国特許第8,070,875号公報の実施例3からとった混合物9という、3種類の異なる混合物が比較された。
【0115】
3種類の混合物の全てが、粗骨材の最大寸法が0.75インチの石を1300lbs/ydと、粗骨材の最大寸法が0.375インチの石を460lbs/ydと、砂を1280lbs/ydと、ASTMタイプI/IIのセメントを611lbs/ydと、水を257lbs/ydと、ADVA(登録商標)198を5oz/cwtと含む同一の基本コンクリート混合物で試験された。混合物7は、PCE-1を0.0268lbs/cwtと、PCE-2を0.0537lbs/cwtと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.0027lbs/cwtと、ディウタンゴムを0.0013lbs/cwtと含んだ。混合物8は、PCE-1を0.0403lbs/cwtと、PCE-2を0.0805lbs/cwtと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.0040lbs/cwtと、ディウタンゴムを0.0020lbs/cwtと含んだ。サンプルを30分に採取しないことを除いて、実施例1と同一の混合プロトコールが3種類の混合物全てについて用いられた。さらに、60分後に各混合物に水が添加され、均一な混和を達成するために再撹拌された。表4に結果が示される。
【0116】
【表4】
【0117】
米国特許第8,070,875号公報は、経時的なスランプ維持に2種類のポリカルボキシレートポリマーの使用が必要だと教示したが、本発明の発明者らは過剰でない量の水の添加によってスランプが調整可能なコンクリートを製造することができたという点で上記の結果は驚異的である。これは、少量の水が打設地点でのスランプを増大させ、得られるコンクリートを弱体化するであろう大量の水の使用を防止することが望ましい、強固なコンクリートを打設するのに有用である。これは、たった1種類の粘度改変剤(VMA)だけの使用を開示する米国特許第8,070,875号公報の従来技術の教示と比較して、2種類の特定の粘度改変剤(VMAs)を含む本発明の配合物の進歩性を強調する。予想どおり、過剰な量の水なしに、コンクリートの「再焼戻し(re-tempered)」を可能にするのは、前記特定の粘度改変剤の使用である。
【実施例4】
【0118】
本実施例は、HRWRと、SRポリマーの水溶液と、粘度改変剤とを含む2部システムの有用性を説明する。このような2部システムは、流動性および分離抵抗性の両方の調整を可能にする点で、コンクリート製造者により多くの柔軟性を可能にする。これら2つの機能は、典型的には関連するが、砂、石およびセメントによって異なるやり方で影響を受ける場合がある。したがって、それぞれを別々に調整できることによって、最終的なコンクリート製品への制御がより容易になる。HRWRは、例えば、(異なる量のセメントを含む場合がある)配合設計に基づいて、選択または調整可能である。PCEポリマーおよび粘度改変剤を含む別の溶液が、最終的な流動性および分離抵抗性への制御を可能にする。本実施例では、基本HRWRを同じ量含むが、本発明の成分を含む溶液を異なる量含む3種類のコンクリート混合物が比較される。溶液ごとに、個々の成分の比は(一定の配合物における場合と同様に)一定に保たれる。
【0119】
3種類の混合物全てが、粗骨材の最大寸法(nominal maximum size)が0.75インチの石を立方ヤードあたり1300ポンド(lbs/yd)と、粗骨材の最大寸法が0.375インチの石を460lbs/ydと、砂を1280lbs/ydと、ASTM タイプI/IIセメントを611lbs/ydと、水を257lbs/ydと、ADVA(登録商標)198HRWRを2oz/cwtとを含む、を含む同一の基本コンクリート混合物を用いて試験された。混合物10は、PCE-1を0.0376lbs/cwtと、PCE-2を0.0376lbs/cwtと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.0013lbs/yd と、ディウタンゴムを0.0011lbs/cwtと含んだ。混合物1は、PCE-1を0.0470lbs/cwtと、PCE-2を0.0470lbs/cwtと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.00270lbs/cwtと、ディウタンゴムを0.0013lbs/cwtと含んだ。混合物1は、PCE-1を0.0564lbs/cwtと、PCE-2を0.0564lbs/cwtと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.00320lbs/cwtと、ディウタンゴムを0.0016lbs/cwtと含んだ。9、30、45、60および75分にサンプル採取および試験を行うことも含めて、実施例2と同じ混合プロトコールが3種類の混合物全てについて用いられた。
【0120】
結果は表5に示される。
【0121】
【表5】
【0122】
表5の結果は、最小限の分離を維持しつつスランプフローを変化できることを実証する。
【実施例5】
【0123】
本実施例は、本発明の成分の水溶液を含むコンクリートの広がりのエッジ前縁特性を決定しうる2つの方法を説明する。本実施例では2種類のコンクリート混合物が比較される。両方の混合物が、粗骨材の最大寸法が0.75インチの石を1300lbs/ydと、粗骨材の最大寸法が0.375インチの石を460lbs/ydと、砂を1280lbs/ydと、ASTMタイプI/IIのセメントを611lbs/ydと、水を257lbs/ydと、ADVA(登録商標)198のHRWRを2oz/cwtと含む同一の基本コンクリート混合物で試験された。混合物13は、PCE-1を0.0470lbs/cwtと、PCE-2を0.0470lbs/cwtと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.00270lbs/cwtと、ディウタンゴムを0.0013lbs/cwtと含んだ。混合物14は、HRWR混合物のスランプを増大させるための典型的な建設現場での行動をシミュレーションするために、さらに水を20lbs/yd含んだ。実施例1と同一の混合プロトコールを用いて、9分ではたった1個のサンプルだけが採取された。混合物13を用いて調製されたコンクリートサンプルを用いて、スランプフロー試験が実施され、側面の画像が取得された(図6.a)。次の画像は、2値化画像(黒がコンクリートを表し、白は背景を表す。)に変換され、側面の輪郭が図6bに示とおり決定された。図7ではスランプフローの半分の輪郭が、関数
【0124】
【数15】
【0125】
(本関数において、半径方向の距離rの関数としてのコンクリートの高さhは、半径方向の広がり最大値Rと、外形フィッティング定数aおよびbと関係づけられる)を用いる最良フィッティングに沿ってプロットされる。図7には、h(r)の一次導関数もプロットされる。図7において、半径方向の距離と高さとは、半径方向の広がり最大値によって正規化されていることに留意せよ。図7の関係式を用いて、2種類の異なる特性がエッジ前縁を定量化するのに用いることができる。第1の特性は、比R/H(ここで、Rは半径方向の広がり最大値、Hは半径方向の広がりr=0での高さ)を用いる。混合物13について、前記比は8.2で、これは図5に示した範囲内であって、優秀なエッジ安定性を示す。混合物14について、前記比は4.3で、図5に示した範囲外である。混合物13のスランプフローは22インチで、混合物14のスランプフローは22.5インチであるから、これは、実際のスランプフロー値だけでなく、エッジ前縁が重要であるという認識をさらに強める。
【0126】
エッジ前縁を定量化するのに使用できる第2の特性は、導関数(または傾き)がある一定値未満に下がる高さhを決定する。この時点でエッジは速やかに形成され、最終的なエッジを示す。優秀なエッジ安定性を有するコンクリートでは、この時点の高さのほうがより高い。この場合では、限界勾配Scrit
【0127】
【数16】
【0128】
とされる。混合物13について、傾きの割合が-1を下回る高さは0.19(すなわち、最大高さの19%)である。混合物14について、傾きの割合が-1を下回る高さは実際的には0である。これは、エッジ安定性が優れているために混合物13は混合物14に比べて顕著なエッジを有することを示す。類似のスランプフロー値が達成されても、驚くべきことにエッジ安定性ははっきりと異なることをもう一度指摘すべきである。これは、降伏応力および粘度とは異なる物性論的パラメーターが、本発明の進歩性のある組み合わせによって影響されて、エッジ安定性を増大できることを示唆する。
【実施例6】
【0129】
物性論的測定:従来技術のコンクリートおよび実施例のコンクリートが、粗骨材の最大寸法が0.75インチの石を立方ヤードあたり1200ポンド(lbs/yd)と、粗骨材の最大寸法が0.375インチの石を490lbs/ydと、砂を1350lbs/ydと、ASTM タイプI/IIセメントを611lbs/ydと、水を280lbs/ydとで製造された。自己充填コンクリートが、粗骨材の最大寸法が0.375インチの石を立方ヤードあたり1450ポンドと、砂を1334lbs/ydと、ASTM タイプI/IIセメントを846lbs/ydと、水を338lbs/ydとで製造された。
【0130】
全ての混合物は以下のプロトコールに従って撹拌された。石と、砂と、水の80%とを2分間高速で撹拌し、セメントを添加して2分間高速での撹拌を継続し、前記HRWR(および、存在する場合には本発明の溶液)を添加して2分間高速での撹拌を継続し、撹拌機の電源を切って3分間静置し、3分間高速での撹拌を再開する。この時点で、コンクリートの一部が撹拌機から取り出され、スランプ、スランプフローおよびVSIが測定され、物性論的データが取得された。
【0131】
物性論的測定には、ICAR(商標)Plusレオメーターの容器が装填され、1/3、2/3および満杯のときにタップされた。それから、羽根が撹拌機に挿入され、静的降伏応力の測定が0.05rad/sで実施された。ピークトルクが読み取られ、静的降伏応力に変換される。その直後に、最高剪断速度から始めて、剪断速度のそれぞれでの撹拌についてトルクが測定された。本実験で使用される剪断速度は、1、0.85、0.7、0.55、0.4、0.25、0.1(rad/s)であった。これは、剪断速度対剪断応力のプロット(図7参照)の作成を可能にした。データは、ビンガムモデルに従って直線にフィッティングされ、ICAR(商標)ソフトウェアによって直線フィッティングの傾きから塑性粘度が変換され、ビンガム降伏応力がReiner-Rivlin等式に従ってy切片から外挿される。測定は、各タイプのコンクリートの2つまたは3つのバッチについて実施され、結果は平均された。
【0132】
さらなる実施例の態様では、コンクリートはICAR(商標)Plusレオメーターによって測定されるとき、約1500Pa未満の静的降伏応力と、約40Paを超えるビンガム降伏応力と、約100Pa s未満の塑性粘度とを有するが、ここで、容器は装填され、1/3、2/3および満杯のときにタップされた(羽根が撹拌機に挿入され、静的降伏応力の測定が0.05rad/sで実施され、ピークトルクが読み取られ、静的降伏応力に変換され、その直後に、最高剪断速度から始めて、例えば、1、0.85、0.7、0.55、0.4、0.25、0.1rad/sの剪断速度のそれぞれでの撹拌についてトルクが測定され、剪断速度対剪断応力のプロット(図7参照)が作成され、データはビンガムモデルに従って直線にフィッティングされ、ICAR(商標)ソフトウェアによって直線フィッティングの傾きから塑性粘度が変換され、ビンガム降伏応力がReiner-Rivlin等式に従ってy切片から外挿され、測定は各タイプのコンクリートの2つまたは3つのバッチについて実施され、結果は平均される)。
【0133】
データは図8にプロットされ、表6に示される。
【0134】
【表6】
【0135】
実施例のコンクリートは容易に流動し、静的降伏応力は従来技術のコンクリートよりはるかに低いことをデータは明確に示す。さらに、自己充填コンクリートのビンガム降伏応力(流動停止の指標)は非常に低く、自己充填コンクリートは障害物に遭遇するまで流動を停止しないこともしばしばである(セルフレベリング性)。実施例のコンクリートはビンガム降伏応力が小さく、よく流動するが、流動を停止するであろうことを示す。
【0136】
以上の実施例および実施態様は、例示の目的のためのみに提供されたのであって、本発明の範囲を限定することは意図されなかった。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9