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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】肺静脈隔離バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019536596
(86)(22)【出願日】2018-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 US2018012308
(87)【国際公開番号】W WO2018129133
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2019-09-02
(31)【優先権主張番号】62/443,228
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タオ グエン
(72)【発明者】
【氏名】ティム ラー
(72)【発明者】
【氏名】アラン デ ラ ラマ
(72)【発明者】
【氏名】キャリー ハタ
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-538932(JP,A)
【文献】特表2016-523147(JP,A)
【文献】特表2015-501162(JP,A)
【文献】国際公開第2016/210437(WO,A1)
【文献】特表2016-528977(JP,A)
【文献】特表2003-533268(JP,A)
【文献】特表2013-501587(JP,A)
【文献】特表2013-529109(JP,A)
【文献】特表2011-519699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 5/24
A61M 25/00-25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位部と遠位部とを含むカテーテルシャフトと、
近位端と遠位端とを含むアブレーションバルーンであって、前記アブレーションバルーンの前記近位端が前記カテーテルシャフトの遠位部に結合され、前記アブレーションバルーンが、
非コーティング領域であって、前記アブレーションバルーンと前記非コーティング領域に接触する組織との間のエネルギー伝達を促進させるように構成されて配置される、非コーティング領域と、
コーティング領域であって、前記アブレーションバルーンと前記コーティング領域に接触する組織との間のエネルギー伝達を軽減するように構成されて配置される、コーティング領域と、
を含むアブレーションバルーンと、
前記非コーティング領域と接触する組織をアブレーションするために前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域を通じて高周波を送信するように構成されて配置される前記アブレーションバルーン内の高周波コイルと、
前記アブレーションバルーンの少なくとも一部分に結合されて前記一部分を横切って延在するフレキシブル電子回路であって、前記アブレーションバルーンの周囲で周方向に分配される複数の診断電極と、前記診断電極を前記カテーテルシャフトの長さにわたって延在するリード配線に電気的に結合させる電気トレースとを含む、前記フレキシブル電子回路と、
を備え、
複数の前記診断電極は、前記アブレーションバルーンの前記コーティング領域に配置されており、かつ、前記コーティング領域と前記非コーティング領域との間の境界に沿って配置されている、アブレーションバルーンカテーテル装置。
【請求項2】
前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域は、
肺静脈と係合する、及び、
前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域と接触する前記肺静脈の周囲の周辺領域に沿って組織をアブレーションする、
ように構成されて配置される請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アブレーションバルーンの近位端に位置される第2のコーティング領域を更に含み、前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域は、前記コーティング領域と前記第2のコーティング領との間に位置され、前記非コーティング領域は、前記非コーティング領域と接触する肺静脈口の外周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記非コーティング領域が前記アブレーションバルーンの遠位端に位置され、前記コーティング領域が前記アブレーションバルーンの近位端で前記非コーティング領域に隣接して位置され、前記非コーティング領域は、肺静脈の腔部の外周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
所望の高周波を示す信号を生成するように構成されて配置される高周波信号生成器を更に含み、
前記高周波コイルは、前記カテーテルシャフトを通って延在する電気リード線を介して前記高周波信号生成器に電気的に結合されるとともに、前記高周波信号生成器から信号を受信して所望の高周波を送信するように更に構成されて配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記アブレーションバルーンの前記コーティング領域は、前記コーティング領域と接触する組織を前記RFコイルにより送信される高周波から遮蔽するように構成されて配置される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記診断電極は、前記診断電極と接触する組織の電気生理的特性を検出するように構成されて配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記アブレーションバルーンの表面を横切って略長手方向に延在する複数の電極支持構造体を更に含み、1つ又は複数の診断電極が前記複数の電極支持構造体のそれぞれに結合され、1つ又は複数の電気トレースが、前記電極支持構造体を横切って延在するとともに、前記診断電極のそれぞれを前記カテーテルシャフトの長さにわたって延在するリード配線に電気的に結合させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記コーティング領域は、化学蒸着されたポリ(p-キシリレン)ポリマー又は化学蒸着されたポリ(p-キシリレン)ポリマーを含むポリマーの組成物から構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
心房細動を処置するためのシステムにおいて、
導入体であって、前記導入体を通じて延在するルーメンを含む、導入体と、
前記導入体の前記ルーメンを通じて延在するように構成されるバルーン送出カテーテルと、
コーティング領域と非コーティング領域とを含むアブレーションバルーンであって、前記アブレーションバルーンは、前記バルーン送出カテーテルの遠位端に結合されるとともに、
前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域に沿って肺静脈の組織壁と係合する、及び、
前記バルーンの前記非コーティング領域により係合される前記肺静脈の組織壁に沿ってアブレーション治療を行なう、
ように構成される、アブレーションバルーンと、
前記コーティング領域と前記非コーティング領域との間の境界付近において前記アブレーションバルーンの周囲で周方向に分配される複数の診断電極と、
を備え、
複数の前記診断電極は、前記アブレーションバルーンの前記コーティング領域に配置されており、かつ、前記コーティング領域と前記非コーティング領域との間の前記境界に沿って配置されている、システム。
【請求項11】
前記アブレーションバルーンの前記コーティング領域は、
前記コーティング領域と係合される前記肺静脈の組織壁及び血液プールをアブレーション治療から絶縁するように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
高周波信号生成器と、前記アブレーションバルーン内の高周波コイルとを更に含み、前記高周波コイルは、前記バルーン送出カテーテルを通って延在するリード配線を介して前記高周波信号生成器に電気的に結合されるとともに、前記高周波信号生成器から信号を受信して前記受信した信号に基づいて高周波信号を放射するように構成される、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記アブレーションバルーンは、前記非コーティング領域と接触する組織から熱を吸収する低温流体を受けるように構成されて配置され、
前記コーティング領域は、前記コーティング領域と接触する血液プール及び組織内の熱から前記低温流体を絶縁するように更に構成されて配置される、
請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記アブレーションバルーンの近位端にある第2のコーティング領域を更に含み、前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域は、前記コーティング領域と前記第2のコーティング領との間に位置され、前記非コーティング領域は、肺静脈口の外周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記非コーティング領域が前記アブレーションバルーンの遠位端に位置され、前記コーティング領域が前記非コーティング領域に対して前記アブレーションバルーンの近位端で前記非コーティング領域に隣接して位置され、前記非コーティング領域は、肺静脈洞の外周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
肺静脈隔離のためのバルーンカテーテルにおいて、
アブレーションバルーンを肺静脈内へと展開するように構成される操向可能なバルーン送出カテーテルシャフトであって、
前記アブレーションバルーンが、前記操向可能なバルーン送出カテーテルシャフトの遠位端に結合されるとともに、前記アブレーションバルーンの外表面上にコーティング領域及び非コーティング領域の組合せを含み、前記コーティング領域及び前記非コーティング領域が前記アブレーションバルーンの外周にわたって波打つ境界を形成し、前記アブレーションバルーンが、
非展開構成から展開する、及び、
前記アブレーションバルーンの前記コーティング領域及び前記非コーティング領域に沿って前記肺静脈の組織壁と係合する、
ように構成される、操向可能なバルーン送出カテーテルシャフトと、
前記アブレーションバルーンを用いて前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域と接触する前記肺静脈の組織壁に対してアブレーション治療を行なうように構成される組織アブレーション手段と、
前記アブレーションバルーンの少なくとも一部分に結合されて前記一部分を横切って延在するフレキシブル電子回路であって、前記アブレーションバルーンの周囲で周方向に分配される複数の診断電極と、前記診断電極を前記カテーテルシャフトの長さにわたって延在するリード配線に電気的に結合させる電気トレースとを含む、前記フレキシブル電子回路と、
を備え、
複数の前記診断電極は、前記アブレーションバルーンの前記コーティング領域に配置されており、かつ、前記コーティング領域と前記非コーティング領域との間の境界に沿って配置されている、バルーンカテーテル。
【請求項17】
前記組織アブレーション手段は、冷凍アブレーション、エレクトロポレーション、レーザエネルギー、高周波、マイクロ波、化学反応、高強度集束超音波のうちの1つ又は複数を含む、請求項16に記載のバルーンカテーテル。
【請求項18】
前記非コーティング領域が前記アブレーションバルーンの遠位端にあり、前記コーティング領域が前記遠位非コーティング領域よりも近位にあり、前記非コーティング領域は、前記肺静脈の腔外周と係合して、前記非コーティング領域と接触する肺静脈組織の組織アブレーション治療を促進させるように構成されて配置され、前記コーティング領域は、前記コーティング領域と接触する血液プール及び肺静脈組織を前記アブレーション治療から絶縁するように構成されて配置される、請求項16又は17に記載のバルーンカテーテル。
【請求項19】
前記アブレーションバルーンの前記コーティング領域は、前記コーティング領域と接触する組織及び血液に対する前記アブレーション治療の実行を軽減するように構成される、請求項16から18のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項20】
前記アブレーションバルーンは、前記非コーティング領域と接触する組織から熱を吸収する低温流体を受けるように構成されて配置され、
前記コーティング領域は、前記コーティング領域と接触する血液プール及び組織と関連付けられる熱から前記低温流体を絶縁するように更に構成されて配置される、
請求項16から19のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、その開示内容の全体が本明細書中に完全に記載されるように参照により本願に組み入れられる2017年1月6日に出願された米国仮出願第62/443,228号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、カテーテルに関し、特に、心臓又は他の組織内でアブレーション治療を行なうためのカテーテルに関する。1つの実施形態において、本開示は、肺静脈組織の近傍でアブレーションすることによって心臓不整脈を処置するためのカテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
人の心臓は、心臓内の室を含むその多くの表面及び心室を横切る電流を定期的に受ける。各心収縮の直前に、心臓が消極して再分極する。これは、電流が心臓を横切って身体の全体にわたって広がるからである。健康な心臓では、心臓の表面及び心室は脱分極波の規則的な進行を受ける。例えば異所性心房頻脈、心房細動、及び、心房粗動を含む心房性不整脈を受ける心臓などの不健康な心臓では、脱分極波の進行が無秩序状態となる。不整脈は、瘢痕組織又は急速で均一な脱分極の他の障害の結果として残る場合がある。これらの障害により、脱分極波が心臓の幾つかの部分を通じて二回以上電気的に循環する場合がある。心房性不整脈は、不規則な心拍、同期する房室収縮の損失、及び、血流停滞を含む様々な危険な状態をもたらし得る。これらの状態の全ては、様々な疾患及び死と関連付けられてきた。
【0004】
様々な診断的及び/又は治療的な医療手技では、例えば異所性心房頻脈、心房細動、及び、心房粗動を含む心房性不整脈などの状態を是正するために血管内カテーテルが使用される。
【0005】
一般に、心房細動治療において、カテーテルは、患者の心臓へ向けて患者の脈管構造を通じて操作される。カテーテルは、マッピング、アブレーション、診断、又は、他の処置のために使用されてもよい1つ又は複数の電極を支持する場合がある。心房細動に関連する症状を軽減するために、カテーテルの遠位端が心臓組織に対してアブレーションエネルギーを与えて心臓組織中に外傷を形成する。外傷組織は、電気信号を伝導することが殆どできず、それにより、望ましくない電気経路が断たれ、不整脈をもたらす迷走電気信号が制限又は防止される。アブレーションカテーテルは、例えば、高周波(RF)、冷凍アブレーション、レーザ、化学物質、及び、高強度集束超音波を含むアブレーションエネルギーを利用し得る。
【0006】
以上の説明は、この分野を単に例示しようとするにすぎず、特許請求の範囲の否定として解釈されるべきでない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、心臓内又は他の組織内での組織アブレーションのための電気生理的カテーテルに関する。特に、本開示は、組織の所望部分にアブレーションエネルギーを収束させるためのコーティング面及び非コーティング面の組合せを伴う電気生理的アブレーションバルーンカテーテルに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様は、カテーテルシャフト、近位端と遠位端とを含むアブレーションバルーン、及び、アブレーションバルーン内の高周波コイルを含むアブレーションバルーンカテーテルを対象とする。アブレーションバルーンの近位端がカテーテルシャフトの遠位部に結合される。アブレーションバルーンは非コーティング領域を更に含み、非コーティング領域は、アブレーションバルーンと非コーティング領域に接触する組織との間のエネルギー伝達を促進させ、また、アブレーションバルーンはコーティング領域を更に含み、コーティング領域は、アブレーションバルーンとコーティング領域に接触する組織との間のエネルギー伝達を軽減する。アブレーションバルーン内の高周波コイルは、非コーティング領域と接触する組織をアブレーションするためにアブレーションバルーンの非コーティング領域を通じて高周波を送信する。より特定の実施形態において、アブレーションバルーンの非コーティング領域は、肺静脈と係合して、肺静脈の周囲の周辺領域に沿って組織をアブレーションする。
【0009】
幾つかの実施形態は、心房細動を処置するためのシステムを対象とする。システムは、導入体であって、該導入体を通じて延在するルーメンを含む、導入体と、アブレーションバルーンが遠位端に結合されるバルーン送出カテーテルと、複数の診断電極とを含んでもよい。心房細動処置を行なうために、バルーン送出カテーテルは導入体のルーメンを通じて延在される。コーティング領域と非コーティング領域とを含むアブレーションバルーンは、アブレーションバルーンの非コーティング領域に沿って肺静脈の組織壁と係合する。アブレーションバルーンは、該バルーンの非コーティング領域により係合される肺静脈の組織壁に沿ってアブレーション治療を行なう。複数の診断電極は、コーティング領域と非コーティング領域との間の境界付近においてアブレーションバルーンの周囲で周方向に分布される。幾つかの特定の実施形態において、アブレーションバルーンのコーティング領域は、コーティング領域と係合される肺静脈の組織壁及び血液プールをアブレーション治療から絶縁する。
【0010】
更なる他の実施形態は、肺静脈隔離のためのバルーンカテーテルを対象とする。バルーンカテーテルは、操向可能なバルーン送出カテーテルシャフトと、操向可能なバルーン送出カテーテルシャフトの遠位端に結合されるアブレーションバルーンと、組織アブレーション手段とを含む。操向可能なバルーン送出カテーテルシャフトは、アブレーションバルーンを肺静脈内へと展開する。アブレーションバルーンは、該アブレーションバルーンの外表面上にコーティング領域及び非コーティング領域の組合せを含む。コーティング領域及び非コーティング領域は、アブレーションバルーンの外周にわたって波打つ境界を形成する。アブレーションバルーンは、非展開構成から展開するとともに、アブレーションバルーンの非コーティング領域に沿って肺静脈の組織壁と係合する。組織アブレーション手段は、アブレーションバルーンと共に、アブレーションバルーンの非コーティング領域と接触する肺静脈の組織壁に対してアブレーション治療を行なう。幾つかの特定の実施形態では、非コーティング領域がアブレーションバルーンの遠位端にあり、コーティング領域が非コーティング領域よりも基端側にある。非コーティング領域は、肺静脈の腔外周と係合して、非コーティング領域と接触する肺静脈組織の腔外周の組織アブレーション治療を行なう。コーティング領域は、コーティング領域と接触する血液プール及び肺静脈組織をアブレーション治療から絶縁する。
【0011】
本開示の上記および他の態様、特徴、詳細、有用性及び利点は、以下の説明および特許請求の範囲を読むことから、ならびに添付図面を検討することから明らかになるであろう。
【0012】
様々な例示的な実施形態は、添付図面に関連して以下の詳細な説明を考慮して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の様々な態様による、治療的な医療処置を行なうためのカテーテルシステムの概略的な図である。
【0014】
図2】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンカテーテルが肺静脈を特定している状態の左心房の正断面図である。
【0015】
図3】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンカテーテルが肺静脈内に配置された状態の左心房の正断面図である。
【0016】
図4】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンの展開前における、アブレーションバルーンカテーテルが内部に配置された状態の肺静脈の正断面図である。
【0017】
図5】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンカテーテルが内部で展開された状態の肺静脈の正断面図である。
【0018】
図6A】本開示の様々な態様と合致する、展開されたアブレーションバルーンカテーテル及びアブレーションバルーンカテーテルの中心ルーメンを通じて延在する電気生理的ループカテーテルの斜視側面図である。
【0019】
図6B】本開示の様々な態様と合致する、バルーンが透けて示される図6Aの展開されたアブレーションバルーンカテーテルの斜視側面図である。
【0020】
図7】本開示の様々な態様と合致する、展開されたアブレーションバルーンカテーテル及びアブレーションバルーンカテーテルの中心ルーメンを通じて延在するガイドワイヤの斜視側面図である。
【0021】
図8】本開示の様々な態様と合致する、展開されたアブレーションバルーンカテーテルの斜視側面図である。
【0022】
本明細書において検討されている様々な実施形態が修正形態及び代替形態に適しているが、それらの態様は図面に例として示されており、詳細に説明される。しかしながら、特許請求の範囲を説明されている特定の実施形態に限定する意図はないことが理解されるべきである。それどころか、特許請求の範囲において定義される態様を含む本開示の範囲内に入る全ての修正形態、等価物、および代替案を包含することが意図されている。さらに、本願を通じて用いられている用語「例(example)」は実例に過ぎず、制限ではない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、心臓内、他の臓器内、及び/又は、身体内の組織内での組織アブレーションのための電気生理的カテーテルに関する。特に、本開示は、標的組織にアブレーションエネルギーを収束させるためのコーティング領域及び非コーティング領域の組合せを伴う電気生理的アブレーションバルーンカテーテルに関する。心房細動を処置するための幾つかの心臓関連の用途では、例えば、症状を軽減する及び/又は病状を完全に治すために肺静脈組織がアブレーションされる。以下、図を特に参照して、本開示の様々な実施形態について説明する。これらの実施形態は、心房細動処置に向けられるが、人体内又は動物内の様々な他の病状及び臓器に対して容易に適用され得る。
【0024】
アブレーション治療は、外傷ラインを形成するべく制御された様態で多くの個々のアブレーションを行なうことによって果たされてもよい。そのような外傷ラインは、多くの場合、心臓内への異常な電気信号の導入と関連付けられてきた心臓の左心房内の肺静脈の周囲/肺静脈間に形成される。本開示の様々な実施形態は、肺静脈へのエネルギー印加の数を最小限に抑えることを対象とする。他の診断カテーテルは、エネルギー印加機能を伴うフープ及びバルーンが装着された設計を含むが、そのような設計は、治療を行なっている最中に肺静脈の標的の外周及び長さにアブレーションエネルギーを収束させることができないという欠点がある。その結果、血液プールへのエネルギー損失と、非標的組織の意図しないアブレーションとがもたらされる。更に、それに伴うエネルギー損失は、標的組織アブレーションの効果を低下させ、一貫性のない外傷ラインと、不完全な電気信号遮断とを引き起こす場合がある。ある場合には、非標的組織の意図しないアブレーションが肺静脈狭窄、横隔神経損傷、及び、食道損傷を引き起こす場合がある。
【0025】
医療分野では、肺静脈隔離(PVI)手技を含む様々な治療用途のためにバルーンに基づくアブレーションが使用されてきた。高周波(RF)、超音波、レーザ、極低温、及び、その他を含む治療エネルギーを送出するために幾つかのエネルギー源がバルーンカテーテル内で利用される場合がある。米国特許第6,952,615号、米国特許第7,112,198号、米国特許第8,231,617号、及び、米国特許第8,647,339号の態様は、バルーンと接触する組織を加熱することによってアブレーションを達成する様々な高周波RF熱バルーンカテーテルを開示し、これらの特許のそれぞれは、あたかも本明細書中に完全に記載されているかのように参照により本願に組み入れられる。本開示と合致する様々な実施形態では、送信されるRFエネルギーがバルーンと接触する組織を加熱する容量型加熱によって外傷が形成される場合があるが、バルーンの非組織接触領域(例えば、血液プール)を通じて多量のエネルギーが失われる。本開示の様々な実施形態は、RFエネルギーの送信を標的肺静脈組織(例えば、洞及び/又は口)に収束させることによってエネルギー送出効率を高める。結果として、RFエネルギーは、標的肺静脈のみへ送出され、血液プール又は他の組織へ送出されない-送出されると望ましくない外傷をもたらし得る。血液プールはもはやそのようなRFエネルギーのための大型ヒートシンクとして機能しないため、アブレーションバルーンと隣接する停滞気味の血液プールでの血液凝固の発生を大きく減らすことができる。
【0026】
様々な実施形態では、アブレーションバルーンを通じて送出されるエネルギーの効率を高めるために、バルーンは、バルーンの非組織接触領域を通じて散逸されるエネルギーを減らすために特定の領域でコーティング(絶縁)されてもよい。アブレーションバルーンの非コーティング領域では、エネルギーが限られた抵抗を伴って送信され得る。特定の実施形態では、バルーンのコーディングが誘電効果を有し得る。具体的には、バルーンの周囲で特定の構成にコーティングすることによって所望の外傷パターンを形成できる。非コーティング領域は、所望の標的組織領域のみへのエネルギー送出を促す周方向パターン、長手方向パターン、又は、螺旋パターンなどの様々な形態を成すことができる。非標的組織への外部からのRFエネルギー送出を軽減することにより、PV狭窄、横隔神経損傷、及び、食道損傷のリスクを大きく減らすことができる。コーティング材料は、それがコーティングされる際に高い体積抵抗率、高い破断伸長、及び/又は、バルーンに対する同様のデュロメータを伴う絶縁材料であってもよい。パリレンは、使用され得るポリマーコーティングの1つの例である。パリレンは、優れた誘電特性を成し、化学的に不活性であるとともに、既知の生体適合性材料である。シリコーンは、コーティングのために使用され得る他の材料である。パリレンは、水分バリア及び誘電体バリアとして使用される様々な化学蒸着ポリ(p-キシリレン)ポリマーのための商品名である。パリレンの品種の1つであるパリレンCは、本開示の様々な実施形態でコーティング材料として使用され得る有利なバリア特性を有する。
【0027】
同様の参照番号が様々な図における同様の構成要素を特定するために使用される図面を参照すると、図1は、組織アブレーション処置を行なうためのカテーテルアブレーションシステム100の概略的な図である。本実施形態では、組織120は人体140内の心筋組織である。しかしながら、システムが人の体内及び人以外の体内の様々な他の組織に関連する用途を見出してもよく、したがって、本開示が心筋組織及び/又は人体のみに関連するシステムの使用に限定されるように意図されていないことが理解されるべきである。
【0028】
カテーテルアブレーションシステム100は、カテーテル160と、カテーテル160の遠位端でアブレーションバルーン130により行なわれるアブレーション治療を制御するためのアブレーションサブシステム180を含んでもよい。アブレーションサブシステム180は、例えば高周波(RF)、冷凍アブレーション、レーザ、化学物質、及び、高密度焦点式超音波を含むアブレーションエネルギーの印加及び/又は生成を制御できる。
【0029】
図1の例示の実施形態において、カテーテル160は、心臓組織120などの体内組織の検査、診断及び/又は処置のために設けられる。カテーテルは、ケーブルコネクタ又はインタフェース121、ハンドル122、近位端126と遠位端128とを有するシャフト124(本明細書中で使用される「近位」は、ハンドル122付近のカテーテル160の端部へと向かう方向を指し、「遠位」は、ハンドル122から離れる方向を指す)、及び、カテーテルシャフト124の遠位端に結合されるアブレーションバルーン130を含んでもいてよい。
【0030】
一実施形態において、アブレーションバルーン130は、シャフト124の1つ以上の部分を操作してアブレーションバルーンを心臓120内の所望の位置に位置決めするために、ハンドル122を使用して患者140の脈管構造を通じて操作される。様々な実施形態において、アブレーションバルーンは、アブレーションサブシステム180により動作されるときにアブレーションバルーン130と接触する組織120をアブレーションするアブレーション要素(例えば、RFコイル、アブレーション電極、高密度焦点式超音波アブレーション要素など)を含む(また、場合によっては、アブレーションバルーン130に近接する組織120が、血液プールを通って近位組織へ伝導性のエネルギーを伝達することによってアブレーションされてもよい)。
【0031】
本開示の様々な特定の実施形態において、カテーテル160は、カテーテルシャフト124の遠位端128に、電極と1つ以上の測位センサ(例えば、電極又は磁気センサ)を含んでいてもよい。そのような実施形態において、電極は、心臓組織120に関連する電気生理学データを取得し、一方、測位センサは、アブレーションバルーン130の三次元位置を示す位置データを生成する。更なる実施形態において、カテーテル160は、例えば、限定されないが、操作ワイヤとアクチュエータ、灌注ルーメンとポート、圧力センサ、接触センサ、温度センサ、付加的な診断電極、及び、対応する導体、リード線、又はトレースなどの他の従来のカテーテル構成要素を更に含む。
【0032】
コネクタ121は、例えばアブレーションサブシステム180から、カテーテルシャフト124の遠位端128に装着されているアブレーションバルーン130まで延在する1つ以上のケーブル132のための機械的及び電気的な接続を行なう。他の実施形態において、コネクタは、例えば、流体源(カテーテル160が灌注カテーテルを備える場合)及び接触/圧力検出回路などのカテーテルシステム100内の他の構成要素から延在するケーブルのための機械的接続、電気的接続及び/又は流体接続を行なってもよい。コネクタ121は、当該技術分野において従来のものであり、カテーテル160の近位端126に配置される。
【0033】
ハンドル122は、ユーザがカテーテル160を保持するための場所をもたらし、身体140内でシャフト124のための操作又は案内を更に行なってもよい。例えば、ハンドル122は、カテーテル160を通じてシャフト124の遠位端128まで延在することによりシャフトの操作を容易にする1つ以上の操作ワイヤを操作するための手段を含んでいてもよい。ハンドル122は、当該技術分野において従来のものであり、ハンドルの構成は異なっていてもよいことが理解される。他の実施形態において、カテーテル160の制御は、カテーテルシャフト124をロボット駆動又はロボット制御することによって、或いは磁気ベースの案内システムを使用してカテーテルシャフト124を駆動及び制御することによって、自動化されていてもよい。
【0034】
カテーテルシャフト124は、患者の身体140内で移動するように構成される細長い管状の可撓性部材である。シャフトは、アブレーションバルーン130をカテーテル160の遠位端128に支持する。また、シャフト124は、(灌注流体、低温アブレーション流体及び体液を含む)流体、薬剤、及び/又は、手術用の道具又は器具の輸送、送達及び/又は除去を可能にしてもよい。ポリウレタンなどのカテーテルのために使用される従来の材料から形成されていてもよいシャフト124は、導電体、流体及び/又は手術用の道具を収容及び/又は輸送するように構成される1つ以上のルーメンを画定する。カテーテルは、従来の導入シースを介して身体140内の血管又は他の構造体へと導入されてもよい。
【0035】
心臓アブレーション治療の一例において、心房性不整脈を是正するために、導入シースは、抹消静脈(一般的には大腿静脈)を通って導入され、右心房内へと進められ、これは中隔アプローチと称される。その後、導入シースは、卵円窩(左心房と右心房との間の組織壁)に切開部を形成し、その中に導入シースを固定するために、卵円窩の切開部を通って延在する。その後、アブレーションカテーテル160は、導入シースのルーメンを通って左心房内へと延在してもよい。その後、アブレーションカテーテル160のカテーテルシャフト124は、肺静脈などの左心房内の所望の位置にアブレーションバルーン130を位置決めするために、左心房を通って操作又は案内されてもよい。
【0036】
アブレーションバルーン130と接触する標的心筋組織の効果的で且つ効率的なアブレーションを達成するためには、標的心筋組織と接触しないバルーンの部分を通じたエネルギー伝達を制限するやり方でアブレーションバルーンを介したエネルギー伝達に焦点が合わされなければならない。例えば、RFバルーン用途において、バルーン内のRFコイルは、標的組織と接触しているバルーンの部分だけでなく、血液プール及び非標的組織によっても吸収されるRF信号を放射する。この意図しないエネルギー損失は、組織アブレーション治療の有効性を低下させる。これは、標的組織に印加されるエネルギーが知られておらず、様々な非標的ヒートシンクに起因してRFコイルの加熱効率が大きく低下されるからである。したがって、本開示の態様は、バルーンの表面上にコーティング領域及び非コーティング領域を設けることによるアブレーションバルーンを通じたエネルギー伝達に焦点を合わせる。コーティング部は、標的組織がアブレーションバルーンの表面と接触する可能性が低い領域内に配置されてもよく、望ましくないエネルギー伝達を防止するためにこれらの部分を絶縁する。非コーティング部は、標的組織がアブレーションバルーンの表面と接触する可能性が高い領域内に配置されてもよく、RFコイルとアブレーションバルーンの非コーティング部に接触する組織との間のエネルギー伝達を促進させる-それにより、RFエネルギーを標的組織領域に集中させて、所与の治療に必要な全体のRFエネルギーを減らす。
【0037】
直流エレクトロポレーションパルス及び/又は高周波を利用して組織アブレーション治療を行なう用途において、コーティング領域は、非コーティング領域を通じた電波及び/又は電気パルスの流れを促進させるのに役立ち得る。そのような用途において、コーティング領域は、アブレーションバルーンから発する電波及び/又は電気パルスから非標的組織を遮蔽するように作用してもよい。幾つかの特定の実施形態において、アブレーションバルーンのコーティング領域は、アブレーションバルーン内から発せられる電波及び/又は電気パルスを反射して戻し、アブレーションバルーンの非コーティング領域から発せられる結果として得られる電波及び/又は電気パルスの強度/強さを増大させてもよい。
【0038】
図2は、アブレーションバルーンカテーテル231がアブレーション治療を行なうための肺静脈(例えば、214,216,218,220)を特定している心筋210の部分の正断面図である。図2に示されるように、心筋210は、左心房212L及び右心房212Rと呼ばれる2つの上側の部屋と、左心室及び右心室と呼ばれる2つの下側の部屋(部分的に見える)とを含む。
【0039】
本開示の態様は、肺静脈口から発する迷走電気信号のための導電経路を形成する肺静脈214,216,218,220における組織が肺静脈に位置される望ましくない電気インパルス源(例えば、不整脈病巣)を電気的に隔離するべく破壊されるアブレーション治療を対象とする。不整脈病巣を破壊することによって或いは左心房212Lから不整脈病巣を電気的に隔離することによって、心房症状の原因を減少させる又は完全に排除することができる。
【0040】
図2に示されるように、アブレーションバルーンカテーテル231は、導入シース230によって左心房212L内へ導入されてもよい。導入体230により左心房212L内へ導入された時点で、ガイドワイヤ232及び遠位カテーテルシャフト234がそれぞれアブレーションバルーン236を案内してもよい。随意的に、アブレーションバルーンカテーテル231は、アブレーションバルーンの近位端240及び遠位端238にそれぞれマッピング電極を含んでもよい。術中、導入体230は、その遠位端が左心房212L内に位置される。図2に示されるように、導入体230が抹消静脈(一般に大腿静脈)を通じて導入されて右心房212Rへと押し進められ卵円窩226の壁に固定される経中隔的アプローチが利用されてもよい。
【0041】
また、アブレーションバルーンカテーテル231は、動脈系を通じて左心房212L内へ導入されてもよい。その場合、導入体230は、動脈(例えば大腿動脈)内へと導入され、動脈を通じて大動脈、大動脈弓へと逆行して押し進められて、左心室内へと至る。アブレーションバルーンカテーテル234は、その後、導入体230のルーメン内から延在され、僧帽弁222を通じて左心房212Lに入る。
【0042】
導入体230が左心房212L内に位置された時点で、操向可能なアブレーションバルーンカテーテル231は、導入体230の遠位端から押し進められて、肺静脈(例えば、214,216,218,220)のうちの1つへと向かう。図2では、標的肺静脈が右上肺静脈214である。アブレーションバルーンカテーテルの遠位先端が標的肺静脈214へ向けて方向付けられるまでガイドワイヤ232及びアブレーションバルーンカテーテル231の遠位部234が操作される。
【0043】
治療が肺静脈の腔部に対して行われる場合、アブレーションバルーン236は、展開された後、洞と接触する状態へと延在される。或いは、治療が肺静脈口に対して行われる場合には、アブレーションバルーンが肺静脈内へと延在される。アブレーションバルーン236は、アブレーションバルーンカテーテル231の遠位端238付近に支持された状態では、それが導入体230を通過して標的肺静脈214に入ることができるように折り畳み状態のままである。肺静脈口内に位置された時点で、アブレーションバルーン236が展開され、それにより、アブレーションバルーンは、標的肺静脈214に係合してアブレーションバルーンカテーテル231を標的肺静脈214内に固定する。幾つかの用途においては、肺静脈から左心房内への血液の流れを閉塞することが望ましい場合がある。肺静脈の適切な閉塞を確かめるために、蛍光透視色素が肺静脈内の血液プール中へと注入されてもよい(蛍光透視鏡撮像によって見える)-蛍光透視色素が肺静脈内に停滞する場合には、アブレーションバルーンが肺静脈を効果的に閉塞している。アブレーションバルーンの適切な位置が確認された時点で、アブレーション治療が開始され得る。
【0044】
様々な実施形態では、アブレーションバルーン236の壁厚を最小限に抑えてアブレーションバルーン内のRFコイルとアブレーションバルーンの外表面と接触する組織との間のRFエネルギー伝達を促進させることが望ましい場合がある。1つの特定の実施形態では、アブレーションバルーンの最大直径を取り囲む領域でアブレーションバルーン厚が0.0010”±0.0002”であってもよい。アブレーションバルーンの外面に適用されるコーティング領域は、例えば0.002”~0.005”の間で異なる。幾つかの実施形態では、コーティング厚が制限されてもよい。これは、過度のコーティングがバルーンの展開形状に悪影響を及ぼす場合があるからである。様々な実施形態では、アブレーションバルーンがペレタン(登録商標)などの一種の医療グレードポリウレタンであってもよい。更なる他の実施形態では、アブレーションバルーンがペバックス(登録商標)などのポリエーテルブロックアミドから成っていてもよい。
【0045】
随意的に示されるように、図2の実施形態は、マッピング電極238,240を含んでもよい。マッピング電極238,240は、肺静脈214の伝導電位の展開前の電気的マッピングを医師が行なうことができるようにするリング電極であってもよい。マッピング電極は、アブレーションバルーンカテーテル231に支持されているように示されているが、代替的に、別個の電気生理的カテーテルに搭載して支持されてもよい。様々な他の実施形態において、電極は、アブレーションバルーン236の外表面上に位置されてもよい。アブレーション治療が完了した後、医師は、マッピング電極238,240を利用して、肺静脈の伝導電位をマッピングし、アブレーション治療の効果を決定してもよい。
【0046】
組織をアブレーションするため、アブレーションバルーン236は、展開された時点で、高周波信号を肺静脈214の標的組織中へと放射してもよい。他の実施形態において、アブレーションバルーン236は、直流電流を標的組織へとアブレーションするために伝導してもよい(一般に、エレクトロポレーションと称される)。更なる他の実施形態において、アブレーションバルーン236は、以下のエネルギー、すなわち、数ある中でも特に、冷凍アブレーション、レーザ、化学物質、及び、高強度集束超音波のうちの1つ又は複数を標的組織に送出してもよい。
【0047】
前述の実施と合致する様々な実施形態において、アブレーションバルーン236は、アブレーションバルーンを通じたアブレーションエネルギーの流れを絶縁する、遮蔽する、抵抗する、制限する、或いはさもなければ、軽減するアブレーションバルーン236の1つ又は複数のコーティング領域を含んでもよい。特定の実施において、コーティング領域は、アブレーション治療の標的でない組織と位置合わせされ、一方、アブレーションバルーン236の非コーティング領域は、アブレーション治療の標的にされる組織と接触するように位置決めされ、非コーティング領域を通るアブレーションエネルギーの流れを促進する。
【0048】
肺静脈の腔部をアブレーションするためのアブレーションバルーンを含む様々なアブレーションバルーン実施が想定される。そのような実施形態において、アブレーションバルーンの遠位部は、アブレーションバルーンの非コーティング領域と肺静脈洞との間でのアブレーションエネルギーの伝達を促進させるための非コーティング領域から成ってもよい。アブレーションバルーンの近位部は、例えば血液プールヒートシンク及び/又は非標的組織によってアブレーションエネルギーが肺静脈洞から離れるように方向付けられるのを防止するためのコーティング領域から成っていてもよい。本開示と合致する更なる他のアブレーションバルーン実施は、肺静脈口をアブレーションすることを対象とする。そのような実施形態において、アブレーションバルーンの中央外周部は、肺静脈口に対するアブレーション治療に影響を及ぼすための非コーティング領域から成る。アブレーションバルーンの近位部及び遠位部は、血液プールヒートシンク及び/又は非標的組織によってアブレーションエネルギーが肺静脈口から離れるように方向付けられるのを防止するためのコーティング領域を備える。
【0049】
図3は、肺静脈314の腔部を通じて肺静脈口(この場合、肺静脈口はアブレーション治療を受けるようになっている)内へと押し進むアブレーションバルーン336を含むアブレーションバルーンカテーテル331を示す。バルーン336を押し進めるために、カテーテルシャフト334が導入シース330から延在される。前述したように、導入シースは、右心房212R及び経中隔壁226を介して左心房312Lへとアブレーションバルーンカテーテル331を送出する。アブレーションバルーンカテーテル331が肺静脈314に入ると、アブレーションバルーン336の展開前に適切な位置を確かめるために、電極338(図では見えない),340を使用してマッピングが行われてもよい。
【0050】
コーティング領域と非コーティング領域との組合せを伴うアブレーションバルーン336を増補することによってアブレーションバルーン336の内/外への正確なエネルギー伝達を促進することが分かってきた。本開示の様々な実施形態において、コーティング領域及び非コーティング領域は、拡張可能なアブレーションバルーンと一体であってもよく(例えば互いに融合される材料添加剤又は別個の材料)、アブレーションバルーンの内面及び/又は外面に結合されてもよく、アブレーションバルーン336内に付加的な/別個の層を備えてもよく、或いは、二重層バルーン構成の一方の層(例えば、外側アブレーションバルーン内に位置されるバルーン(或いは逆もまた同様))を備えてもよい。更なる他のより特定の実施形態において、コーティング領域及び非コーティング領域のそれぞれは、他の層及び拡張可能なアブレーションバルーン自体に対して自立しているバルーンのそれ自体のセグメントを備えてもよい。そのような実施形態において、コーティング領域及び非コーティング領域は、コーティング領域及び非コーティング領域(例えば、コーティングバッフル及び非コーティングバッフル)の位置を変えるために引張ワイヤ又は他の調整機構を介して調整可能であってもよい。コーティングバッフル及び非コーティングバッフルの位置を動的に調整することにより、アブレーションバルーン336のエネルギー伝達系の焦点がバルーンと接触する肺静脈の様々な部分に調整されてもよい。そのような実施形態は、例えば、アブレーションバルーン336の再配置を伴うことなく肺静脈の腔部及び口部で連続的なアブレーション治療を促進させる。
【0051】
心房細動症状に苦しむ患者を処置するべく治療が行われるようになっている1つの特定の用途では-(本開示と合致する)アブレーションバルーン336が標的肺静脈314の内壁と係合する。適所に位置された時点で、アブレーションバルーンのコーティングバッフルが、カテーテルハンドルとバルーン336との間のカテーテルシャフト334の長さにわたって延在する引張ワイヤ及び/又は操向ワイヤを使用してエネルギー伝達を収束させるように位置されてもよい。第1の治療のため、コーティングバッフルは、アブレーションバルーンの遠位部及び近位部を通じたエネルギーの伝達を最小限に抑えるように位置されてもよく、したがって、非コーティング領域は、アブレーションバルーンの中央部付近に位置されてもよく、コーティングバッフルによって遠位及び近位の両方で隣接される。この構成は、肺静脈口をアブレーションするために実施されてもよい。前述のエネルギー伝達手段のうちの1つ又は複数を使用して、アブレーションバルーンは、コーティング領域を介してエネルギーの流れを遮蔽し、絶縁し、反射し、或いはさもなければ、軽減し得るコーティングバッフルによって肺静脈組織の他の領域へのエネルギー伝達を最小限に抑えつつ、エネルギーの伝達を肺静脈口の組織に収束させる。治療は、肺静脈口の内壁の周囲にアブレーションの外周ゾーンを形成する。アブレーションゾーンは、標的肺静脈314を左心房312Lから電気的に隔離する。不整脈病巣がアブレーションゾーン内に位置された限りでは、不整脈病巣が破壊される。不整脈病巣が左心房の反対側の標的肺静脈内に位置される限りでは、これらの病巣によりもたらされる電気インパルスがアブレーションゾーンによって遮断され或いは実質的に妨げられる。
【0052】
肺静脈口でのアブレーション治療が完了した後、アブレーションバルーンは、心筋310からの除去のために折り畳まれてもよく、或いは、他の肺静脈に対する及び/又は標的肺静脈314の他の部分に対する更なるアブレーション治療を行なうべく再配置され及び/又は再構成されてもよい。例えば、標的肺静脈314の腔部に対するアブレーション治療を行なうべくコーティングバッフルが再構成され及び/又はアブレーションバルーン336が再配置されてもよい。そのような用途において、アブレーションバルーンの遠位部は、洞部と接触する状態へと位置されてもよく、また、コーティングバッフルは、ガイドワイヤを介して、アブレーションバルーンの近位部に対して再配置されてもよい。前述したエネルギー伝達手段の1つ又は複数を使用して、アブレーションバルーンは、コーティングバッフルによりエネルギーの流れを遮蔽する、絶縁する、反射する、或いはさもなければ、軽減することによって、血液プール中への及び肺静脈組織の他の領域に対するエネルギー伝達を最小限に抑えつつ、エネルギーの伝達を肺静脈の腔部に収束させる。治療は、標的肺静脈314を左心房312Lから電気的に隔離するアブレーションの外周ゾーンを肺静脈の腔部の周囲に形成する。
【0053】
図4は、アブレーションバルーン436がバルーン展開前に標的肺静脈414内に位置している状態のアブレーションバルーンカテーテル431を示す。本実施形態において、アブレーションバルーンカテーテル431は、標的肺静脈414の洞416内でアブレーション治療を行なうように位置される。そのような手技では、アブレーションバルーンが洞416と接触する状態へと拡張された時点で、洞416の周囲のアブレーションの外周リングをアブレーションするアブレーション治療が開始されてもよい。アブレーションの外周ゾーンは、左心房412Lをアブレーションの反対側の不整脈病巣によりもたらされる電気インパルスから電気的に隔離する。本開示の幾つかの実施形態において、アブレーションバルーンカテーテル431を正確に位置決めすることは、アブレーション治療の効果に大きく影響を及ぼす場合があり、したがって、本開示の幾つかの実施形態は、アブレーションバルーンの展開前にアブレーションバルーン436の近位及び遠位の電極を使用してマッピングすることにより、アブレーションバルーンを標的肺静脈414内に適切に位置決めする。更なる他の実施形態において、アブレーションバルーン436は、アブレーション治療を肺静脈口に対して行なうために標的肺静脈414の口415と接触して位置されてもよい。
【0054】
図5は、拡張されたアブレーションバルーン536が標的肺静脈514の洞516内に係合された状態のアブレーションバルーンカテーテル531を示す。アブレーションバルーン536の拡張形状は、肺静脈514の長さ及び外周に合わせた輪郭を成してもよい。本開示の態様は、コーティング領域537及び非コーティング領域538のそれぞれの組合せを含むアブレーションバルーン536を対象とする。1つの実施形態において、アブレーションバルーンは、バルーンと接触する組織(及び、幾つかの状況では、アブレーションバルーンに近接する組織)中へRFエネルギーを放射することにより組織をアブレーションするRF放射体(例えばRFコイル)をバルーン内に有するRFアブレーションバルーンである。非コーティング領域538は、アブレーションバルーン536の中央外周の周囲に位置されてもよい。非コーティング領域538と接触する組織のアブレーションを促進させるために、バルーン内のRF放射体は、非コーティング領域538と接触する洞516の部分へとバルーンを通じてRFエネルギーを伝達する。また、アブレーションバルーンは、コーティング領域537をバルーンの近位端及び遠位端に含み、コーティング領域537は、アブレーションバルーンのこれらの部分を絶縁する。コーティング領域537は、肺静脈の非標的領域(例えば、本実施形態では、肺静脈口515)及びアブレーションバルーン536を取り囲む血液プールへのRFエネルギーの伝達を防止する。コーティング領域537はアプリケーションバルーン536によるエネルギー送出の効率を高めるが、そうでなければ、エネルギーが肺静脈口515(及び他の非標的組織)及び血液プールによって少なくとも部分的に吸収され得る。したがって、そのようなアブレーションバルーン設計は、出力効率を向上させてアブレーション治療時間を減らし、或いは、治療時間を維持しつつアブレーションの増強ゾーン550をもたらし得る。更に、冷凍アブレーション又は直流エレクトロポレーションパルスなどの他のアブレーション手段を使用する用途において、コーティング領域537は、非コーティング領域538を通じたエネルギーの収束及び/又は増幅を達成するように、生成されたエネルギーを元のアブレーションバルーン536へと放射してもよい。
【0055】
アブレーション治療が完了した時点で、アブレーションバルーン536が折り畳まれてもよく、また、アブレーションバルーンカテーテル531が導入シース330内へ引き戻されてもよい(例えば図3参照)。電気生理的カテーテル、又は、(例えば)アブレーションバルーン536の近位及び遠位の電極は、アブレーションバルーンカテーテル531の除去の前に治療の効果を確かめるために使用されてもよい。本開示の様々な実施形態では、アブレーションバルーン536の表面上に更なる電極が単独で或いは(図2に示されるような)電極238,240と共に位置されてもよい。更に、これらの様々な電極は、アブレーション治療前、アブレーション治療中、及び、アブレーション治療後に使用されてもよい。例えば、アブレーション治療前に、バルーンの最適な位置を決定して左心房512Lからの標的肺静脈514の電気的な隔離を高めるために電極が使用されてもよい。アブレーション治療中、アブレーション効果を追跡するために電極が使用されてもよい。具体的には、電極からの検出データを使用して、肺静脈と左心房との間の十分な隔離が達成された時期を決定してもよく、その後、アブレーション治療が終了する。同様に、アブレーション治療の完了後、アブレーション治療の効果を(例えば、深さ及び表面積、並びに、電気刺激に対する抵抗などのアブレーション外傷特性に基づいて)決定するため、及び、更なる治療の適用が必要とされ得るかどうかを決定するために、電極が使用されてもよい。
【0056】
典型的なアブレーション治療では、全ての肺静脈が処置される。右上肺静脈214に関して本明細書中に記載されるようなプロセスは、3つの他の肺静脈のそれぞれに関して再現されてもよい。
【0057】
アブレーションバルーンは、様々な異なる用途のために開発されてきており、多くの異なる形態を成す。本開示の態様は、様々なタイプ及び機械的構造のアブレーションバルーンを利用する。アブレーションバルーンは、自立型であってもよく、或いは、例えば内部バルーンの使用により、機械的に直立されてもよい。1つの実施形態の例では、アブレーションバルーンカテーテル531のシャフト534の長さを通じて延在するルーメンが、アブレーションバルーンに径方向の力を及ぼす流体をアブレーションバルーン内へ注入し、-それにより、(図5に示されるように)バルーンを直立構成へと拡張させてもよい。更に、バルーン536の非コーティング領域及びコーティング領域(それぞれ538,537)は、所与の用途又は処置のために必要に応じてアブレーションバルーンの表面の全体にわたって様々なパターン、配置、及び、構成を備えてもよい。本開示の様々な実施形態は、人の心臓の肺静脈内の心房細動の処置を対象にしてきたが、本開示の態様は、そのように狭く解釈されるべきではなく、代わりに、様々なタイプの組織、臓器、及び、有機体に適用され得る。
【0058】
幾つかの実施形態は、バルーンの材料がバルーンを通じたエネルギーの伝達を絶縁するコーティング領域を必要としない場合がある。そのような実施形態において、コーティングは、代わりに本質的に導電性及び/又は熱伝導性を有してもよく、それにより、コーティングと接触する組織へのエネルギーの伝達を促進してもよく、そのようなエネルギー伝達が望ましいバルーンの領域に適用されてもよい。非コーティング領域及びコーティング領域(それぞれ538,537)が拡張可能なアブレーションバルーン536と一体であり、アブレーションバルーン536の内面及び/又は外面に適用され、及び/又は、拡張されたアブレーションバルーン536とカテーテルシャフト534との間の隙間空間内に位置される様々な実施を本開示の態様が対象とし得ることが更に理解される。
【0059】
図6Aは、本開示の様々な態様と合致する、展開されたアブレーションバルーンカテーテル600の、該アブレーションバルーンカテーテルの中心ルーメン641(図6Bに示される)の遠位端を通って延在する電気生理的ループカテーテル632を伴う斜視側面図である。アブレーションバルーン601がアブレーションバルーンカテーテル600のカテーテルシャフト631の遠位端に結合される。中心ルーメン641がカテーテルシャフト631の近位端からアブレーションバルーン601を貫いてカテーテルシャフト631の遠位端へと延在する。中心ルーメンは、アブレーションバルーン601に隣接する組織に関連する電気生理的データを回収するための電気生理的ループカテーテル632の使用を容易にする。幾つかの用途において、電気生理的カテーテルは、アブレーションバルーン601の両側に位置されてもよく、アブレーション治療の効果を含む情報をもたらすための肺静脈の電気生理的特性の収集を容易にする。1つの特定の実施形態において、電気生理的カテーテルのうちの一方は基準として使用されてもよく、他方は、例えば心臓の左心房により受けられる電気信号を示すデータを供給する。
【0060】
図6Aのアブレーションバルーンカテーテル600には、アブレーションバルーン601に近接する組織をアブレーションするのに十分な出力を伴う高周波を放射するためのRFコイル642が取り付けられる。しかしながら、RFコイル642は、該コイルから放射されるRFエネルギーの的を絞る或いはさもなければRFエネルギーを収束させることができる能力を欠く。また、RFコイル642の全エネルギー出力を知ることはできるが、そのエネルギーのうちのどのくらいの量が実際にアブレーションされている組織により吸収されるのかを確かめることは難しい-かなりの量のエネルギーがバルーンに近接する血液プール又は非標的組織によって吸収され得るため。したがって、本開示の様々な実施形態は、コーティング領域637及び非コーティング領域638の組合せを含むアブレーションバルーン601を対象にする。コーティング領域637は、コーティング領域637と接触する組織及び血液へのエネルギーの伝達を減少させる又は排除する低い熱伝達及び/又は導電性を含む材料特性を有してもよい。具体的には、肺静脈の洞を標的にするアブレーション治療手技において、非コーティング領域638(透けて示される)は、RFエネルギーの伝達を洞に対してのみ方向付けるのに役立つように2つのコーティング領域637間のバルーン上に位置される。そのような手技において、遠位コーティング領域637は、肺静脈の口及び閉塞された血液プールと接触していてもよい。同様に、近位コーティング領域637は、心臓の左心房内の血液プール及びおそらく洞の更なる領域と接触していてもよい。コーティング領域は、該コーティング領域と接触する組織へのRFエネルギー(又は、アブレーションバルーンのエネルギー送出方法論に応じた他のタイプのエネルギー)の流れを減少させる又は排除することにより、アブレーション治療中のそのような組織のアブレーションを防止する。また、コーティング領域と接触する血液プールは、バルーン表面の極端な加熱及び/又は焦げ付きに起因する凝固から更に防止される。コーティングが外側、内側、或いは、1つ又は複数のバルーン601間の隙間空間に限定される必要がないことが理解されるべきである。代わりに、コーティングは、RFコイル642からのエネルギーの収束を促進させる材料を含む独立した構造を備えてもよい。更なる他のより具体的な実施形態において、コーティングは、RFコイル642自体、及び/又は、独立したエネルギー収束構造、及び/又は、アブレーションバルーン601のコーティング部637に対して直接に適用されてもよい。幾つかの実施形態は、アブレーションバルーン601の選択部でエネルギー遮蔽を促進させる材料組成物をアブレーションバルーン自体に含侵させてもよい。実施形態は、選択的な/収束されたエネルギー放射ビームを有するRFコイル642を利用してもよい。中心ルーメン641の外面に沿ってRFコイル642を正確に位置させることにより、非標的組織への損傷を軽減しつつRFコイル642の収束されたビームを標的組織に向けることができる。
【0061】
図6Aには、バルーンのコーティング領域637,637が不透明なものとして示され、一方、バルーンの非コーティング領域638が透明状態で示される。バルーンの様々なコーティング領域及び非コーティング領域が、望み通りに、又は、少なくともバルーン材料及び/又はコーティング材料の材料特性により制御されるように、透明又は不透明であってもよいことが理解されるべきである。
【0062】
RFコイル642は、所望の高周波を示す信号を生成する高周波信号生成器に電気的に結合されてもよい。信号生成器から信号を受信すると、RFコイル642は、バルーン内の流体とアブレーションバルーンの非コーティング領域638とを通じて高周波を送信して非コーティング領域と接触する組織をアブレーションする。信号生成器は、カテーテルシャフト631の近位端に隣接して位置されてもよく、また、カテーテルシャフトの長さにわたって延びる電気リード線がRFコイル642を信号生成器に対して電気的に結合してもよい。
【0063】
図6Bは、バルーン601が透明状態で示される図6Aの展開されたアブレーションバルーンカテーテル600の斜視側面図である。導入体を通じたアブレーションバルーンカテーテル600の肺静脈を伴う位置への輸送を容易にするために、アブレーションバルーン601は折り畳み構成で輸送される。アブレーション治療の前に、アブレーションバルーン601は、近位出口661及び遠位出口661(他の実施形態は、更に多い又は少ない出口を有してもよく、或いは、アブレーションバルーンの膨張及び収縮の両方のために同じ出口を利用してもよい)を通じてアブレーションバルーンへと送出される気体又は液体を使用して膨張されてもよい。アブレーションバルーン内の流体の導入は、バルーンを拡張させる径方向の力を及ぼす。同様に、アブレーション治療が完了するときに、カテーテルシャフト631の長さにわたって延在するルーメン641に流体結合される入口660を通じてアブレーションバルーン内の流体を引き出すことによってバルーン601が収縮されてもよい。更なる他の実施形態において、アブレーションバルーンは、導入体から抜け出る際に及び/又は制御ワイヤの作動時にアブレーションバルーンの拡張を容易にする変形可能な構造を含んでもよい。そのような実施形態は、バルーンの膨張及び収縮を引き起こすためのカテーテルシャフトを通じた流体の流れの必要性を排除することによってアブレーションバルーンカテーテルの複雑さを低減し得る。
【0064】
バルーン601を膨張させる/収縮させるために使用される同じ流体が導電性を有してもよい。したがって、導電性流体(例えば生理食塩水溶液)を使用して、RFコイル642(バルーン内)により生成される高周波信号をアブレーションバルーンの非コーティング領域に輸送してもよい。アブレーションバルーンの非コーティング領域はエネルギー伝達を促進させるため、エネルギーは、非コーティング領域を通じて流れ、標的組織と接触する。
【0065】
アブレーション治療の高度な制御を容易にするために、アブレーションバルーンは、アブレーションバルーン601内の流体の温度を測定する熱電対662を伴って構成されてもよい。アブレーションバルーン601内の流体の温度は、アブレーションバルーン601と接触する組織の温度に対して少なくとも何らかの相関関係を有し、それにより、アブレーション制御システムの効果を向上させるためのデータフィードバックを容易にする。
【0066】
本開示と合致する様々な実施形態において、アブレーションバルーンの非コーティング領域は、アブレーションバルーンの中心線の遠位に位置されてもよい。バルーンのサイズ及び形状は、非コーティング領域の遠位の位置決めとともに、肺静脈の腔部のアブレーションを促進させる。
【0067】
図7は、展開されたアブレーションバルーンカテーテル700、及び、該アブレーションバルーンカテーテルの中心ルーメン722の遠位端から延出するガイドワイヤ773の斜視側面図である。アブレーションバルーン701はカテーテルシャフト731の遠位端から延在する。アブレーションバルーン701は、近位コーティング領域737と遠位コーティング領域737との間に挟まれる非コーティング面領域738を含む。肺静脈と接触して配置されると、遠位コーティング領域737は肺静脈の口(及び閉塞された血液プール)に当接され、非コーティング面領域738は洞の標的領域と接触し、及び、近位コーティング領域737は洞の非標的領域(及び左心房内の血液プール)に触れている。アブレーション治療中、コーティング領域は、該コーティング領域を通じたRFエネルギーの流れを減少させ又は完全に排除し、一方、非コーティング領域は、洞の標的領域へのRFエネルギー送信を促進させる。また、本実施形態は、アブレーションバルーン701の表面上にわたって延在する1つ又は複数のフレキシブル電子回路も含む。フレキシブル電子回路は、アブレーションバルーンの近位端の周囲で周方向に分配される1つ又は複数のマルチフレックス診断電極770を含む。マルチフレックス診断電極770のそれぞれは、バルーンの表面に沿って延在している電気トレース771を介してカテーテルシャフト731内のリード配線に電気的に結合する。マルチフレックス診断電極770のうちの1つ又は複数は、適切に位置されると、アブレーションされた組織に近接する組織と接触する状態に配置される。アブレーション治療前、アブレーション治療中、及び、アブレーション治療後、マルチフレックス診断電極770は、該電極と接触する組織の健康状態を示す電気生理的信号を受信する。具体的には、例えば、心房細動患者において、肺静脈は、心臓の1つ又は複数の室の異常な拍動(多くの場合、他の室と同期しない)をもたらし得る望ましくない電気信号を送出する。アブレーション治療は、非コーティング領域738が洞と接触する外傷組織を形成する。アブレーション治療が有効である場合、外傷組織は、電気信号を殆ど伝導することができず、それにより、望ましくない電気経路を阻止して、さもなければ不整脈をもたらし得る迷走電気信号を制限する又は防止する。コントローラ回路が、マルチフレックス診断電極770から受信される電気生理的データに基づき、更なるアブレーションが必要とされるかどうか、及び/又は、肺静脈からの電気信号の十分な寸断に起因してアブレーション治療を時期尚早に終わらせるべきかどうか、アブレーション治療の効果を決定してもよい。
【0068】
マルチフレックス診断電極770は、図7に示されるように、温度センサを含んでもよい。電極は、コーティング領域内に位置されてもよいが、非コーティング領域に近接していてもよく、或いは、非コーティング領域内にあってもよい。様々な実施形態は、フレキシブル回路を利用して電極をカテーテルシャフト内のリード配線に電気的に結合するとともにバルーンの膨張及び収縮を促進してもよい。多くの実施形態において、電極は、アブレーションのためのものではなく、電気生理的マッピング及び温度監視のためだけのものである。電極-組織界面での温度測定は、アブレーションコントローラへのフィードバックを与えてもよく、また、予め設定されたエネルギーレベルに至るまで出力を調整するのに使用されてよい。
【0069】
図7に示されるように、近位コーティング領域737Aと非コーティング領域738との間の境界は、アブレーションバルーン701の全周にわたって波打つ。境界のこのような波打ちは、1つ又は複数のマルチフレックス診断電極770がコーティング領域737の突出部へと延出できるようにする。各診断電極770は、アブレーションの標的にされた組織によって効果的に取り囲まれる。コーティング領域突出部上の診断電極770の位置は、(例えば、標的組織の健康状態を示す電気生理的信号を受信するために)診断電極770をアブレーションの標的にされた組織に近接して配置しつつ、RFコイル742から放射されるRF信号から診断電極を絶縁する。
【0070】
図7に示される実施形態の変形例において、1つ又は複数のマルチフレックス診断電極770は、バルーン701の非コーティング面領域738に結合されてもよく、或いは、コーティング領域737と非コーティング面領域738との間の境界を画定する平面を横切って部分的に延びて位置されてもよい。そのような位置取りは、診断電極770とアブレーションの標的組織(例えば、非コーティング面領域738と接触する組織)と間の直接的な接触を容易にし得る。結果として、診断電極770は、標的組織の健康状態を示す電気生理的信号を受信することができる。
【0071】
図8は、本開示の様々な態様と合致する、展開されたアブレーションバルーンカテーテル800の斜視側面図である。アブレーションバルーンカテーテル800はアブレーションバルーン801を伴うカテーテルシャフト831を含み、アブレーションバルーン801はカテーテルシャフトの遠位端から延在する。図7と同様に、中心ルーメン872がカテーテルシャフト831の近位端からアブレーションバルーン801の遠位端まで延在する。中心ルーメン872は、アブレーションバルーン801の遠位端で更なるカテーテルの使用を容易にする。アブレーションバルーン801は、1つ又は複数のコーティング領域837,837及び1つ又は複数の非コーティング領域838を含む。アブレーションバルーン801上における非コーティング領域及びコーティング領域の位置は、幾つかある因子の中で特に、アブレーションの好ましい解剖学的位置、アブレーションされるべき組織の寸法特性、所望のアブレーション外傷領域(病状の重症度に少なくとも部分的に依存する)などの様々な因子に依存する。
【0072】
本実施形態において、アブレーションバルーンの寸法及びプロファイルは、患者の肺静脈の洞に嵌まり合うように構成される。アブレーションバルーン801の非コーティング領域838が肺静脈洞の全周にわたって連続的な一貫した接触を成して洞の完全な一貫したアブレーションを促すことが望ましいが、コーティング領域837,837が肺静脈組織と接触するように構成されてもよく又は構成されなくてもよい。幾つかの実施形態では、コーティング領域837,837が肺静脈の曲率を厳密にたどってアブレーションバルーン801を肺静脈内により良く着座させることが望ましい場合がある。しかしながら、他の実施形態では、コーティング領域と肺静脈の非標的組織との間に小さい隙間を許容することによってアブレーションバルーン801のコーティング領域837,837を更に絶縁することが望ましい場合がある。この小さい隙間は、この隙間に血液が溜まることができるようにし、それにより、アブレーションバルーンのエネルギー源と(例えば、RFコイル842)と非標的組織との間に更なる絶縁及びヒートシンクをもたらし-過剰な/望ましくない組織アブレーションを防止するこができる。
【0073】
本開示のアブレーションバルーン801は、アブレーションバルーンの表面上にわたって延在して非コーティング領域838の遠位に位置されるマルチフレックス診断電極870を支持する電極支持構造体871を更に含む。電極支持構造体871は、アブレーションバルーン801と一体化されてもよく、又は、アブレーションバルーン801から独立していてもよい。幾つかの実施形態において、アブレーションバルーン及び電極支持構造体871は、アブレーションバルーン内の室へと流体を導入することによって拡張されてもよい。他の実施形態において、電極支持構造体871は、アブレーションバルーンと一体であってもよく、例えば導入体から抜け出る際にバルーンを拡張させる構造的バイアスを有してもよい。アブレーションバルーン801が組織と接触する状態へと拡張されると、マルチフレックス診断電極870も組織と接触する状態へと押圧される。したがって、マルチフレックス診断電極870は、標的組織の電気生理的特性を示す電気信号をカテーテルシャフト831の近位端にあるコントローラ回路へ送信することができる。マルチフレックス診断電極870からの電気トレース又はリード配線が、電極支持構造体871内に組み込まれてもよく、又は、電極支持構造体871の1つ又は複数の表面に沿って延在し、その後、カテーテルシャフト831内のルーメンを通ってカテーテルシャフトの遠位端にあるハンドルまで延在してもよい。
【0074】
マルチフレックス診断電極870は、アブレーションされた組織にわたる電位を測定するために利用されてもよい。電極が温度センサを含む場合、電極-組織界面で検出された温度は、アブレーション中に加熱を監視して高周波RF生成器からの出力を制御するために使用されてもよい。バルーン上に戦略的に位置されるコーティング領域によってRFコイルの生成されたエネルギーを標的組織に収束させて血液プール及び非標的組織へのエネルギーの伝達を制限することにより、同等のアブレーション外傷深さに関してアブレーション治療出力を最大で50%減少させることができる。同様に、アブレーション治療出力が維持される場合、同等のアブレーション外傷深さに関してRF暴露期間を大きく減らすことができる。
【0075】
図8において、マルチフレックス診断電極870は、アブレーションバルーン801の非コーティング領域838を遠位側へと通り過ぎて延在する。しかしながら、図8に示される実施形態の幾つかの変形例において、電極支持構造体871は、マルチフレックス診断電極870を非コーティング領域838の真上に、非コーティング領域よりも遠位又は近位に、或いは、非コーティング領域838とコーティング領域837,837の一方との間の境界を画定する平面を越えて位置させてもよい。図7に示される近位コーティング領域737Aとコーティング領域738との間の境界と同様に、非コーティング領域838とコーティング領域837,837との間の1つ又は複数の境界は、アブレーションバルーン801の全周にわたって波打ってもよい。
【0076】
幾つかの実施形態において、アブレーションバルーンのコーティング領域及び非コーティング領域は、対称的である必要はなく、アブレーションされる組織構造の構造的特性を考慮するように非対称的であってもよい。例えば、非コーティング領域は、アブレーションバルーンのプロファイルでうまくマッピングしない固有のトポグラフィーに起因してアブレーションバルーン間の一貫した接触が起こりそうもない領域ではより大きくてもよい。同様に、例えば肺静脈の特定の側又は部分がより伝導性がある(例えば、より多くの迷走電気信号を左心房へ送出する)ことを肺静脈の電気生理的マッピングが示す場合、そのような部分と位置合わせされるべき非コーティング領域838の長さは、肺静脈のその領域内のアブレーションの抵抗性を高めるべくより長くてもよい。コーティング領域837,837の厚さは、急激なアブレーション外傷があまり望ましくない場合、又は、アブレーションバルーンと組織との間の特定の接触点がエネルギー伝達の増大(例えば、より高い接触圧)をもたらし得る場合には、異なってもよい。
【0077】
様々な実施形態において、マルチフレックス診断電極870は、互いに周方向に位置合わせされる必要はなく、代わりに、1つ又は複数の周方向リングを形成するべくオフセットされてもよい-肺静脈の長さに沿う電気生理的な読み取りを容易にする。そのような実施形態は、アブレーション外傷部及び該外傷部に隣接する組織の両方のより完全な電気生理的マップを容易にし得る。更なる他のより特定の実施形態において、電極支持構造体871は、マルチフレックス診断電極870による電気生理的マッピングがアブレーション治療後に迷走電気信号の不完全な遮断を示す領域でスポットアブレーションを行なうことができるスポット電極を含んでもよい。そのようなスポット電極は、例えば、数ある中でも特に、不可逆的エレクトロポレーション技術を利用してもよい。電極支持構造体871は、肺静脈内のアブレーションバルーン801の適切な着座を医師に示す圧力センサを更に容易にする。自動化された実施形態において、制御システムは、十分な数の圧力センサが肺静脈組織との接触を示すまでアブレーション治療を行なわなくてもよい-肺静脈の適切な閉塞を促す。
【0078】
本明細書中で論じられる全ての実施形態は、冷凍アブレーションバルーンと共に用いるように容易に適合され得る。そのような実施形態において、コーティング領域におけるコーティングは、熱伝達の減少を促し、それにより、コーティング領域と接触する組織をアブレーションバルーン内の低温流体の冷却から絶縁する材料特性を含んでもよい。低温流体は、それがアブレーションバルーンに入る際の急速な圧力変化に応じて、多量のエネルギーを必要とする液体から気体への相変化を受ける-これにより、低温流体に熱的に通じる肺静脈からエネルギーを引き出す-バルーンの非コーティング領域と接触する組織をアブレーションする。アブレーションバルーンによるエネルギー吸収の集中に役立つべく、非コーティング領域の隣接する両側で、アブレーションバルーンのコーティング領域が、組織及び該組織に近接する血液プールを絶縁し、肺静脈組織の意図しない/過度なアブレーションを引き起こし得る熱伝達を防止する。また、そのようなコーティング領域は、低温流体相変化のエネルギー吸収を標的組織へと集中させ、アブレーション治療の全体の効果に影響を及ぼし得る熱伝達変動を軽減するとともに、所与のアブレーション治療のための低温流体使用量を減少させる。様々な実施形態において冷凍アブレーションバルーンは、低温流体をアブレーションバルーン701の特定の領域に集中させるように位置されてもよい冷凍分配マニホールドを含んでもよい-例えば、マニホールドは、コーティング領域と接触する組織の冷却を更に制限するために低温流体をアブレーションバルーンの非コーティング領域へと方向付けてもよい。
【0079】
本開示の一態様は、標的肺静脈組織の全体にわたって印加される直流電流を利用して組織をアブレーションするエレクトロポレーションアブレーションバルーンを対象とする。そのような実施形態において、アブレーションバルーンの遠位部及び近位部は、例えば電気的絶縁性がある材料特性を有するコーティング領域を備える。非コーティング領域は、アブレーションバルーンから該アブレーションバルーンと接触する組織への電流の流れを促進させる低い電気抵抗を有する。更なる他の実施形態において、アブレーションバルーンを膨張させるために使用される流体は、生理食塩水などの導電性流体であってもよい。供給源(アブレーションバルーン内であってもよい)により生成されるエレクトロポレーションパルスは、パルスをアブレーションバルーン内の導電性流体を通じてアブレーションバルーンの非コーティング領域と接触する組織との接触状態へと至るように送信してもよい。
【0080】
本開示の様々な実施形態において、アブレーションバルーンは、電気生理的フープカテーテル(ループカテーテルとも称される)のシャフトに一体化させることができる。更なる他の実施形態において、アブレーションバルーンカテーテルは、電気生理的フープカテーテルがアブレーションバルーンカテーテルの長さにわたって延在できるようにする中心ルーメンを含んでいてもよい。
【0081】
本開示と合致する実施形態は、高周波アブレーション技術を利用するアブレーションバルーンを含んでもよい。そのような実施形態では、例えばカテーテルシャフトと接触する高周波放射体がアブレーションバルーン内に位置されてもよい。放射体(例えばRFコイル)は、高周波をアブレーションバルーン内の流体、アブレーションバルーンの非コーティング領域を通じて、非コーティング領域と結合する組織との接触状態へと至るように送信する。幾つかの実施形態において、非コーティング部は、電波の送信を可能にする単なるポリマーである。様々な実施形態では、電波による組織の選択的な放射が望ましい場合、アブレーションバルーンのコーティング部は、コーティング領域を通じた電波の送信を防止する-それにより、組織の選択的な放射及びアブレーションを促進させる電波遮蔽材料であってもよく或いはそのような電波遮蔽材料を含んでもよい。
【0082】
本開示と合致する1つの実施形態において、アブレーションバルーンは、その外表面の約30%がコーティングされず、その表面の約70%がコーティングされる。バルーンのコーティング領域は、出力送出が望ましくない領域を含むと同時に、バルーンの非コーティング領域へ送出される出力密度を増大させてもよい。特定のアブレーションバルーン実施形態において、バルーンは、22ミリメートル(「mm」)の直径を有し、その結果、約1519mmの全外表面積を有する。したがって、コーティング表面積は約1063mmであり、非コーティング表面積は約456mmである。100ワットがアブレーションバルーン内の高周波放射体に印加される場合、非コーティング領域と接触する組織へ送出される出力密度は、そのようなコーティングを伴わないバルーンにおける1ワット/15mmと比べて、1ワット/4.5mmである。したがって、アブレーションが望ましくない組織及び/又は血液プールと接触するアブレーションバルーンの領域を選択的にコーティングすることにより、アブレーションのための標的組織に送出される出力密度を3.3倍増大させることができる。以下の表1は、コーティング領域を伴わないアブレーションバルーン(従来技術)を使用するアブレーション治療の一例からの試験結果を示し、表2は、コーティング領域を含むアブレーションバルーンを使用するアブレーション治療の一例からの試験結果を示す。これらの表から明らかなように、本開示と合致するアブレーションバルーンは、従来技術のバルーンと同じ治療長さで、RF電極に印加されるエネルギーを(50%以上)大きく減少させつつ同様のアブレーション治療結果を得ることができる。
【表1】
【表2】
【0083】
上記の説明及び図面に基づき、当業者であれば容易に分かるように、本明細書中で図示されて説明された例示的な実施形態及び用途に厳密に従うことなく、様々な実施形態に対して様々な修正及び変更を行なってもよい。そのような修正は、特許請求の範囲に記載される態様を含む本開示の様々な態様の真の思想及び範囲から逸脱しない。
【0084】
以上、本開示を実施できる少なくとも幾つかの方法の理解を容易にするためにある程度の特殊性を伴って幾つかの実施形態を説明してきたが、当業者は、本開示の範囲及び添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に対して多くの変更を成すことができる。上記の説明に含まれ、又は添付図面に示される全ての事柄が、限定的ではなく単なる例示として解釈されるものとすることが意図される。したがって、本明細書中の例示及び実施形態は、本開示の範囲を限定するように解釈されるべきでない。詳細又は構造の変更は、本教示から逸脱することなく行なわれてもよい。前述の説明及び以下の特許請求の範囲は、そのような修正及び変化の全てを網羅するように意図される。
【0085】
様々な装置、システム、および方法の様々な実施形態について本明細書で説明した。明細書で説明され、添付図面に示されているように、実施形態の全体的な構造、機能、製造、および使用の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が示されている。しかしながら、実施形態がそのような特定の詳細なしで実施され得ることは、当業者によって理解されるであろう。他の例では、明細書で説明した実施形態を不明瞭にしないために、周知の動作、構成要素、および要素は、詳細には説明されていなくてもよい。本明細書で説明し、図示した実施形態が非限定的な例であることは、当業者には明らかであり、したがって、本明細書で開示した特定の構造的および機能的詳細が、典型的なものである場合があり、実施形態の範囲を必ずしも限定せず、その範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定されることは、理解され得る。
【0086】
この開示で使用される用語「含む」、「備える」及びその変形は、特に別段述べられなければ、「~を含むが、それらに限定されない」ことを意味する。この開示で使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、特に別段述べられなければ、「1つ以上の」を意味する。
【0087】
本明細書を通して、「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、「実施形態」などへの言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じた所々の「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、「実施形態」などの語句の表現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、具体的な特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされる場合がある。したがって、1つの実施形態に関連して図示または説明した具体的な特徴、構造、または特性は、全体または一部において、限定されることなく、1つまたは複数の他の実施形態の特徴、構造、または特性と組み合わされる場合がある。
【0088】
プロセスステップ、方法ステップ、アルゴリズム等が連続した順序で記載される場合があるが、そのようなプロセス、方法及びアルゴリズムは、別の順序で機能するように構成されていてもよい。換言すると、記載される場合があるステップの任意のシーケンス又は順序は、必ずしもそのステップがその順序で行なわれる必要性を示すとは限らない。本明細書中に記載されるプロセス、方法及びアルゴリズムのステップは、実用的な任意の順序で行なわれてもよい。更に、幾つかのステップが同時に行なわれてもよい。
【0089】
単一のデバイス又は物品が本明細書中に記載される場合には、容易に分かるように、単一のデバイス又は物品の代わりに複数のデバイス又は物品が使用されてもよい。同様に、複数のデバイス又は物品が本明細書中に記載される場合には、容易に分かるように、複数のデバイス又は物品の代わりに単一のデバイス又は物品が使用されてもよい。1つのデバイスの機能性又は特徴は、代替的に、そのような機能性又は特徴を有するように明示的に記載されない1つ又は複数の他のデバイスによって具現化されてもよい。
【0090】
医師が患者を処置するために使用される器具の一端を操作することに関連して、用語「近位」及び「遠位」が明細書の全体にわたって使用される場合があることが分かる。用語「近位」は、医師に最も近い器具の部分を指し、用語「遠位」は、医師から最も遠くに配置される部分を指す。しかしながら、外科用器具は多くの配向及び位置で使用されてもよく、また、これらの用語は、限定的で絶対的であることを意図しない。他の全ての方向的又は空間的な言及(例えば、上側、下側、上方、下方、左、右、左方向、右方向、上端、下端、上側、下側、垂直、水平、時計回り、反時計回り)は、本開示の読み手の理解を助けるために識別の目的のためだけに使用されるにすぎず、特に本開示の位置、配向又は使用に関して限定をもたらさない。接合の言及(例えば、取り付けられ、結合され、接続され等)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続と要素間の相対移動との間に中間部材を含んでもよい。したがって、接合の言及は、2つの要素が直接に接続されて互いに固定関係を成すことを必ずしも暗示するとは限らない。
【0091】
参照により本明細書に組み込まれると言われる任意の特許、刊行物、または他の開示資料は、全体または一部において、組み込まれた資料が、本開示に示す既存の定義、声明、または他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる。そのように、そして必要な程度まで、本明細書に明示的に示された開示は、参照により本明細書に組み込まれるいかなる矛盾する資料よりも優先される。参照により本明細書に組み込まれると言われているが、本明細書に示された既存の定義、声明、または他の開示資料と矛盾する任意の資料またはその一部は、組み込まれる資料と既存の開示資料との間に矛盾が生じない程度でのみ組み込まれることになる。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
[項目1]
近位部と遠位部とを含むカテーテルシャフトと、
近位端と遠位端とを含むアブレーションバルーンであって、前記アブレーションバルーンの前記近位端が前記カテーテルシャフトの遠位部に結合され、前記アブレーションバルーンが、
非コーティング領域であって、前記アブレーションバルーンと前記非コーティング領域に接触する組織との間のエネルギー伝達を促進させるように構成されて配置される、非コーティング領域と、
コーティング領域であって、前記アブレーションバルーンと前記コーティング領域に接触する組織との間のエネルギー伝達を軽減するように構成されて配置される、コーティング領域と、
を含むアブレーションバルーンと、
前記非コーティング領域と接触する組織をアブレーションするために前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域を通じて高周波を送信するように構成されて配置される前記アブレーションバルーン内の高周波コイルと、
を備えるアブレーションバルーンカテーテル装置。
[項目2]
前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域は、
肺静脈と係合する、及び、
前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域と接触する前記肺静脈の周囲の周辺領域に沿って組織をアブレーションする、
ように構成されて配置される項目1に記載の装置。
[項目3]
前記アブレーションバルーンの近位端に位置される第2のコーティング領域を更に含み、前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域は、前記コーティング領域と前記第2のコーティング領域分との間に位置され、前記非コーティング領域は、前記非コーティング領域と接触する肺静脈口の外周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、項目1に記載の装置。
[項目4]
前記非コーティング領域が前記アブレーションバルーンの遠位端に位置され、前記コーティング領域が前記アブレーションバルーンの近位端で前記非コーティング領域に隣接して位置され、前記非コーティング領域は、肺静脈の腔部の外周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、項目1に記載の装置。
[項目5]
所望の高周波を示す信号を生成するように構成されて配置される高周波信号生成器を更に含み、
前記高周波コイルは、前記カテーテルシャフトを通って延在する電気リード線を介して前記高周波信号生成器に電気的に結合されるとともに、前記高周波信号生成器から信号を受信して所望の高周波を送信するように更に構成されて配置される、項目1に記載の装置。
[項目6]
前記アブレーションバルーンの前記コーティング領域は、前記コーティング領域と接触する組織を前記RFコイルにより送信される高周波から遮蔽するように構成されて配置される、項目5に記載の装置。
[項目7]
前記アブレーションバルーンの少なくとも一部分に結合されて前記一部分を横切って延在するフレキシブル電子回路を更に含み、前記フレキシブル電子回路は、前記アブレーションバルーンの周囲で周方向に分配される複数の診断電極と、前記診断電極を前記カテーテルシャフトの長さにわたって延在するリード配線に電気的に結合させる電気トレースとを含む、項目1に記載の装置。
[項目8]
前記診断電極は、前記診断電極と接触する組織の電気生理的特性を検出するように構成されて配置される、項目7に記載の装置。
[項目9]
前記アブレーションバルーンの表面を横切って略長手方向に延在する複数の電極支持構造体を更に含み、1つ又は複数の診断電極が前記複数の電極支持構造体のそれぞれに結合され、1つ又は複数の電気トレースが、前記電極支持構造体を横切って延在するとともに、前記診断電極のそれぞれを前記カテーテルシャフトの長さにわたって延在するリード配線に電気的に結合させる、項目1に記載の装置。
[項目10]
前記コーティング領域は、化学蒸着されたポリ(p-キシリレン)ポリマー又は化学蒸着されたポリ(p-キシリレン)ポリマーを含むポリマーの組成物から構成される、項目1に記載の装置。
[項目11]
心房細動を処置するためのシステムにおいて、
導入体であって、前記導入体を通じて延在するルーメンを含む、導入体と、
前記導入体の前記ルーメンを通じて延在するように構成されるバルーン送出カテーテルと、
コーティング領域と非コーティング領域とを含むアブレーションバルーンであって、前記アブレーションバルーンは、前記バルーン送出カテーテルの遠位端に結合されるとともに、
前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域に沿って肺静脈の組織壁と係合する、及び、
前記バルーンの前記非コーティング領域により係合される前記肺静脈の組織壁に沿ってアブレーション治療を行なう、
ように構成される、アブレーションバルーンと、
前記コーティング領域と前記非コーティング領域との間の境界付近において前記アブレーションバルーンの周囲で周方向に分配される複数の診断電極と、
を備えるシステム。
[項目12]
前記アブレーションバルーンの前記コーティング領域は、
前記コーティング領域と係合される前記肺静脈の組織壁及び血液プールをアブレーション治療から絶縁するように構成される、項目11に記載のシステム。
[項目13]
高周波信号生成器と、前記アブレーションバルーン内の高周波コイルとを更に含み、前記高周波コイルは、前記バルーン送出カテーテルを通って延在するリード配線を介して前記高周波信号生成器に電気的に結合されるとともに、前記高周波信号生成器から信号を受信して前記受信した信号に基づいて高周波信号を放射するように構成される、項目11に記載のシステム。
[項目14]
前記アブレーションバルーンは、前記非コーティング領域と接触する組織から熱を吸収する低温流体を受けるように構成されて配置され、
前記コーティング領域は、前記コーティング領域と接触する血液プール及び組織内の熱から前記低温流体を絶縁するように更に構成されて配置される、
項目11に記載の装置。
[項目15]
前記アブレーションバルーンの近位端にある第2のコーティング領域を更に含み、前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域は、前記コーティング領域と前記第2のコーティング領域分との間に位置され、前記非コーティング領域は、肺静脈口の外周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、項目11に記載の装置。
[項目16]
前記非コーティング領域が前記アブレーションバルーンの遠位端に位置され、前記コーティング領域が前記非コーティング領域に対して前記アブレーションバルーンの近位端で前記非コーティング領域に隣接して位置され、前記非コーティング領域は、肺静脈洞の外周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、項目11に記載の装置。
[項目17]
肺静脈隔離のためのバルーンカテーテルにおいて、
アブレーションバルーンを肺静脈内へと展開するように構成される操向可能なバルーン送出カテーテルシャフトであって、
前記アブレーションバルーンが、前記操向可能なバルーン送出カテーテルシャフトの遠位端に結合されるとともに、前記アブレーションバルーンの外表面上にコーティング領域及び非コーティング領域の組合せを含み、前記コーティング領域及び前記非コーティング領域が前記アブレーションバルーンの外周にわたって波打つ境界を形成し、前記アブレーションバルーンが、
非展開構成から展開する、及び、
前記アブレーションバルーンの前記コーティング領域及び前記非コーティング領域に沿って前記肺静脈の組織壁と係合する、
ように構成される、操向可能なバルーン送出カテーテルシャフトと、
前記アブレーションバルーンを用いて前記アブレーションバルーンの前記非コーティング領域と接触する前記肺静脈の組織壁に対してアブレーション治療を行なうように構成される組織アブレーション手段と、
を備えるバルーンカテーテル。
[項目18]
前記組織アブレーション手段は、冷凍アブレーション、エレクトロポレーション、レーザエネルギー、高周波、マイクロ波、化学反応、高強度集束超音波のうちの1つ又は複数を含む、項目17に記載のバルーンカテーテル。
[項目19]
前記非コーティング領域が前記アブレーションバルーンの遠位端にあり、前記コーティング領域が前記遠位非コーティング領域よりも近位にあり、前記非コーティング領域は、前記肺静脈の腔外周と係合して、前記非コーティング領域と接触する肺静脈組織の組織アブレーション治療を促進させるように構成されて配置され、前記コーティング領域は、前記コーティング領域と接触する血液プール及び肺静脈組織を前記アブレーション治療から絶縁するように構成されて配置される、項目17に記載のバルーンカテーテル。
[項目20]
前記アブレーションバルーンの前記コーティング領域は、前記コーティング領域と接触する組織及び血液に対する前記アブレーション治療の実行を軽減するように構成される、項目17に記載のバルーンカテーテル。
[項目21]
前記アブレーションバルーンは、前記非コーティング領域と接触する組織から熱を吸収する低温流体を受けるように構成されて配置され、
前記コーティング領域は、前記コーティング領域と接触する血液プール及び組織と関連付けられる熱から前記低温流体を絶縁するように更に構成されて配置される、
項目17に記載のバルーンカテーテル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8