IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社瑞光の特許一覧

<>
  • 特許-シートの製造装置及びシートの製造方法 図1
  • 特許-シートの製造装置及びシートの製造方法 図2
  • 特許-シートの製造装置及びシートの製造方法 図3
  • 特許-シートの製造装置及びシートの製造方法 図4
  • 特許-シートの製造装置及びシートの製造方法 図5
  • 特許-シートの製造装置及びシートの製造方法 図6
  • 特許-シートの製造装置及びシートの製造方法 図7
  • 特許-シートの製造装置及びシートの製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】シートの製造装置及びシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/512 20060101AFI20220302BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20220302BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
A61F13/512
A61F13/511 100
A61F13/15 353
A61F13/15 352
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019567089
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2019001874
(87)【国際公開番号】W WO2019146596
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2018011867
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】島田 崇博
(72)【発明者】
【氏名】真部 貴仁
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-133574(JP,A)
【文献】特開2017-093867(JP,A)
【文献】特開昭55-111224(JP,A)
【文献】特表平08-507451(JP,A)
【文献】特表2017-507254(JP,A)
【文献】特開2008-073396(JP,A)
【文献】特開2015-113540(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136943(WO,A1)
【文献】特開昭52-047080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の不織布から使い捨て着用物品に用いられるシートを製造するためのシートの製造装置であって、
超音波振動を印加する印加面を有する超音波ホーンと、
前記印加面に対向可能な対向面を有するアンビルと、を備え、
前記対向面には複数の突起が設けられており、
各突起は、その先端に位置する頂面と、前記頂面からその周囲に拡がりつつ前記突起の基端側に延びるように前記頂面に隣接して形成される隣接面とを有し、
前記不織布を前記複数の突起が設けられた前記対向面に引き寄せることによって前記不織布に複数の凸部を形成した状態で前記印加面と前記対向面との間に前記不織布を挟み込んで超音波振動を印加することにより、前記不織布における前記頂面に対応する部分を溶融させて前記凸部に孔を形成するとともに、溶融した当該部分が前記孔の周りにおいて冷却されることにより、前記凸部を保持するとともに前記孔の開孔状態を保持するための保持部を、前記孔の周りであって前記孔に隣接する部位に形成するように構成されている、シートの製造装置。
【請求項2】
前記隣接面は、前記頂面に向かうにつれて前記突起の断面積が小さくなるような形状を有している、請求項に記載のシートの製造装置。
【請求項3】
前記対向面に前記不織布を引き寄せるために前記対向面において隣り合う前記突起同士の間の部位に形成された吸引口を通じて空気を吸引する吸引装置をさらに備える、請求項又はに記載のシートの製造装置。
【請求項4】
前記印加面は、当該印加面に前記突起の頂面が対向した状態で前記印加面及び前記突起を当該突起の高さ方向に見たときに、前記頂面及び前記隣接面の全体を含むような大きさを有する平面である、請求項の何れか1項に記載のシートの製造装置。
【請求項5】
1枚の不織布から使い捨て着用物品に用いられるシートを製造するためのシートの製造方法であって、
複数の凸部を前記不織布に形成する凸部形成工程と、
前記不織布に前記複数の凸部が形成された状態で超音波ホーンにおける超音波振動を印加する印加面と、アンビルにおける前記印加面に対向する対向面との間に前記不織布を挟み込んで超音波振動を印加することにより、前記凸部の頂部の少なくとも一部を溶融させて孔を形成する孔形成工程と、
前記孔形成工程において溶融した前記凸部の前記頂部の少なくとも一部が前記孔の周りにおいて冷却されることにより、前記凸部を保持するとともに前記孔の開孔状態を保持するための保持部を、前記孔の周りであって前記孔に隣接する部位に形成する保持部形成工程と、を備えるシートの製造方法。
【請求項6】
前記対向面には複数の突起が設けられているとともに前記突起同士の間に吸引口が形成されており、
前記凸部形成工程において、前記吸引口を通じて空気を吸引して前記不織布を前記対向面に引き寄せることにより、前記複数の凸部を形成し、
前記孔形成工程及び前記保持部形成工程においても、前記吸引口を通じて空気の吸引を行う、請求項に記載のシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの使い捨て着用物品などに用いられるシートを製造するための装置、及び前記シートを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの使い捨て着用物品において、例えば吸収体をカバーするとともに、肌に接触する部分に用いられるシート(表面シート)が知られている。このようなシートは不織布によって形成されている。当該シートは、複数の凸部が形成されていることによってクッション性や肌触りを良好にするという機能を有するとともに、複数の孔が形成されていることによって通液性が良好となり、高い粘性の液をもれなく吸収体に移行させるという機能を有している。
【0003】
例えば特許文献1は、このような着用物品に用いられるシートとしての複合シート及びその製造方法を開示している。当該複合シートは、複数の凹凸が形成された第1のシートと平面状の第2のシートとが複数の接合部において部分的に接合されたものである。この複合シートには、複数の孔が形成されている。この複合シートは次のようにして製造される。すなわち、外周面に互いに噛み合う凹凸形状を有する第1のロールと第2のロールを回転させながらそれらの噛み合い部分に第1のシートを供給する。そして、前記第1のシートは、第1のロールの外周面に保持されて前記噛み合い部分から移動した後、第2のシートと重ね合わせられて部分的に接合される。接合された前記両シートは、第1のロールの外周面にそのまま保持されて移動した後、外周面に穿孔部を有する開孔ロールによって複数の孔が形成される。
【0004】
ところで、上記のような着用物品に用いられるシート(表面シート)を単一の不織布によって形成することができれば、大幅なコストダウンを図ることが可能になる。
【0005】
しかし、特許文献1において、第1のロールと第2のロールによって第1のシートに形成される凸部は、第1のシート単独では保持されないため第1のシートに存在しつづけることができず、第1のシートに対して第2のシートが接合されることによってはじめて保持されている。したがって、特許文献1における製造方法では、単一の不織布によって使い捨て着用物品用のシートを製造することはできない。
【0006】
また、特許文献1の製造方法では、複合シートに形成される孔は、開孔ロールの穿孔部によってシートを押し広げることにより形成されているため、穿孔部がシートから抜き取られた後には孔が小さくなったり、再び塞がってしまったりして、明確な孔を形成することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4863697号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、使い捨て着用物品に用いられるシート(表面シート)を単一の不織布によって形成するとともに、当該シートに形成された凸部を保持すること、及び孔の開孔状態を保持することにある。
【0010】
本発明のシートの製造装置は、1枚の不織布から使い捨て着用物品に用いられるシートを製造するための装置である。この製造装置は、超音波振動を印加する印加面を有する超音波ホーンと、前記印加面に対向可能な対向面を有するアンビルと、を備える。前記対向面には複数の突起が設けられている。各突起は、その先端に位置する頂面と、前記頂面からその周囲に拡がりつつ前記突起の基端側に延びるように前記頂面に隣接して形成される隣接面とを有する。この製造装置は、前記不織布を前記複数の突起が設けられた前記対向面に引き寄せることによって前記不織布に複数の凸部を形成した状態で前記印加面と前記対向面との間に前記不織布を挟み込んで超音波振動を印加することにより、前記不織布に
おける前記頂面に対応する部分を溶融させて前記凸部に孔を形成するとともに、溶融した当該部分が前記孔の周りにおいて冷却されることにより、前記凸部を保持するとともに前記孔の開孔状態を保持するための保持部を、前記孔の周りであって前記孔に隣接する部位に形成するように構成されている
【0011】
本発明のシートの製造方法は、1枚の不織布から使い捨て着用物品に用いられるシートを製造するための方法である。当該製造方法は、複数の凸部を前記不織布に形成する凸部形成工程と、前記不織布に前記複数の凸部が形成された状態で超音波ホーンにおける超音波振動を印加する印加面と、アンビルにおける前記印加面に対向する対向面との間に前記不織布を挟み込んで超音波振動を印加することにより、前記凸部の頂部の少なくとも一部を溶融させて孔を形成する孔形成工程と、前記孔形成工程において溶融した前記凸部の前記頂部の少なくとも一部が前記孔の周りにおいて冷却されることにより、前記凸部を保持するとともに前記孔の開孔状態を保持するための保持部を、前記孔の周りであって前記孔に隣接する部位に形成する保持部形成工程と、を備える。
【0012】
本発明によれば、使い捨て着用物品に用いられるシートを単一の不織布によって形成するとともに、当該シートに形成された凸部を保持するとともに孔の開孔状態を保持することができるので、コストダウンを図りながら、シートのクッション性を良好にできるとともにシートの通液性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るシートを示す斜視図である。
図2図1におけるII-II線の断面図である。
図3図1のシートを示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る製造装置を示す概略正面図である。
図5図4の製造装置におけるアンビルの一部を拡大して示す平面図である。
図6図4の製造装置におけるアンビルの突起を拡大して示す正面断面図である。
図7図4の製造装置におけるアンビルの一部を拡大して示す正面断面図である。
図8】前記実施形態の変形例に係るシートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0015】
[シート]
図1は、本発明の実施形態に係るシート1を示す斜視図である。図2は、図1におけるII-II線の断面図である。図3は、図1のシート1を示す平面図である。図1図3に示す本実施形態に係るシート1は、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの使い捨て着用物品において、吸収体をカバーするとともに、肌に接触する部分に用いられるシートとして用いることができるが、このシート1の用途はこれに限られない。
【0016】
このシート1は、後述する本発明の実施形態に係る製造装置10及び製造方法を用いることによって1枚の不織布から製造することができる。不織布としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂製の不織布を例示することができるが、これらに限られない。
【0017】
図1図3に示すように、シート1は、交互に並ぶ凸部2と凹部3とを有する。各凸部2は、1枚の不織布の一部分を図2に示す高さ方向H1の一方(図2では上方)に、凹部3に対して隆起させることによって形成されている。凸部2の全体的な形状は、後述するシート1の製造装置10におけるアンビルの突起15(図6参照)の形状を変えることによって調節できる。
【0018】
シート1では、複数の凸部2は、第1の方向D1に沿って所定のピッチで配列されているとともに、第1の方向D1に直交する第2の方向D2に沿って所定のピッチで配列されている。同様に、複数の凹部3は、第1の方向D1に沿って所定のピッチで配列されているとともに、第1の方向D1に直交する第2の方向D2に沿って所定のピッチで配列されている。ただし、複数の凸部2は、必ずしも等間隔で配列されていなくてもよい。同様に、複数の凹部3は、必ずしも等間隔で配列されていなくてもよい。
【0019】
なお、図2に示すように、シート1において凸部2と凹部3の境界Bは、凸部2の高さ方向H1における凸部2の頂部2Aと凹部3の底部3Aの中間の位置にある。したがって、本実施形態では、凸部2の基部は境界Bに位置する。
【0020】
シート1は、液の浸透性及び通気性を高めるために複数の孔4を有している。各孔4は、対応する凸部2の頂部2Aに形成されている。孔4の大きさと形状は、後述するシート1の製造装置10におけるアンビルの突起15の形状、超音波ホーン11による超音波振動の時間、振幅、加圧力などを変えることによって適宜調節することができる。本実施形態では、孔4は、図3に示す平面視で円形であるが、孔4の形状は円形に限られない。孔4の形状は、アンビルの外周面14に設けられる突起15の頂面16(図6参照)の形状に応じて変えることができる。
【0021】
シート1は、複数の凸部2を保持するために複数の保持部5を有している。各保持部5は、対応する凸部2に設けられている。保持部5は、孔4の周りであって孔4に隣接する部位に設けられている。図2に示す本実施形態では、保持部5は、凸部2において頂部2A側の一部分に形成されている。具体的には、保持部5は、凸部2の高さ方向H1において、頂部2Aと前記境界Bとの間の部位2B(例えば、頂部2Aに近接した部位)から孔4に至るまでの部分に形成されている。ただし、保持部5は、凸部2の、より広い範囲に形成されていてもよい。
【0022】
図3に示すようにシート1を平面視したときに、保持部5の形状は環状を呈している。孔4は保持部5の内周縁によって形成されている。
【0023】
図1及び図2に示すように、保持部5は、凸部2の高さ方向H1に直交する方向の位置が孔4から遠ざかるにつれて高さ方向H1の位置が凸部2の基部B側に近づく部位を有している。具体的には、保持部5は、単に孔4の周りを囲むように凸部2の頂部2Aにおいて平面的に形成されるだけでなく、凸部2の高さ方向H1における凸部2の基部B側にも拡がるように立体的に形成されている。保持部5がこのような形状を有することにより、凸部2を保持する効果をより高めることができる。
【0024】
保持部5の剛性は、凹部3の底部31などの保持部5以外の部分の剛性よりも高い。保持部5の剛性が保持部5以外の部分の剛性よりも高くなるようにシート1を構成することによって凸部2を保持するとともに孔4の開孔状態を保持することができる。
【0025】
保持部5における単位面積あたりの質量(目付け)は、凹部3の底部31などの保持部5以外の部分における単位面積あたりの質量(目付け)よりも大きい。保持部5における単位面積あたりの質量が保持部5以外の部分における単位面積あたりの質量よりも大きくなるようにシート1を構成することによって凸部2を保持するとともに孔4の開孔状態を保持することができる。
【0026】
保持部5の剛性を保持部5以外の部分の剛性よりも高くしたり、保持部5における単位面積あたりの質量を、保持部5以外の部分における単位面積あたりの質量よりも大きくしたりする方法としては、後述する実施形態に係るシート1の製造方法が例示できる。シート1の原材料である不織布Sは、上述したような熱可塑性樹脂などによって形成された繊維を織らずに絡み合わせたシート状のものであり、柔軟性を有している。一方、後述の製造方法によって製造されるシート1では、超音波ホーン11による摩擦熱によって不織布Sの一部が溶融して孔4が形成され、この孔4の周りであって孔4に隣接する部位には、溶融物が超音波ホーン11の先端面13(図7参照)の加圧力によって移動し、それが冷却されて保持部5となる。このように保持部5は、不織布Sの一部が一度溶融して再び硬化したものを含むため、加工前の不織布Sに比べて空隙が少ない塊状となり、その結果、保持部5以外の部分よりも剛性が高くなり、また、孔4にあった不織布Sの溶融物が流れ込むため、保持部5以外の部分よりも単位面積あたりの質量が大きくなる。
【0027】
以上のように本実施形態に係るシート1では、孔4の周りであって当該孔4に隣接する部位に形成された保持部5が凸部2を保持するとともに孔4の開孔状態を保持するので、使い捨て着用物品に用いられるシート1を単一の不織布によって形成するとともに、当該シート1に形成された凸部2及び孔4の開孔状態を保持することができる。
【0028】
また、本実施形態に係るシート1では、保持部5は、高さ方向H1に直交する方向の位置が孔4から遠ざかるにつれて高さ方向H1の位置が凸部2の基部B側に近づくような形状を有している。このように保持部5は、単に孔4の周りを囲むように平面的に形成されるだけでなく、凸部2の高さ方向H1における凸部2の基部B側にも拡がるように立体的に形成されている。これにより、保持部5によって凸部2が保持される効果をより高めることができる。
【0029】
また、本実施形態に係るシート1は、凹凸が保持されることにより、クッション性を有している。また、シート1は、孔4の開孔状態が保持されることにより、体液の透過性を高く維持することができる。
【0030】
[シートの製造装置]
図4は、本発明の実施形態に係る製造装置10を示す概略正面図である。図5は、図4の製造装置10におけるアンビルの一部を拡大して示す平面図である。図6は、図4の製造装置10におけるアンビルの突起15を拡大して示す正面断面図である。図7図4の製造装置10におけるアンビルの一部を拡大して示す正面断面図である。
【0031】
本実施形態に係る製造装置10は、上述したシート1を製造するための装置である。図4に示すように、この製造装置10は、超音波印加装置と、アンビルと、吸引装置20とを備える。
【0032】
前記超音波印加装置は、超音波ホーン11、図略の超音波発振器、コンバーター、ブースターなどを備えている。超音波ホーン11は、超音波振動を印加する先端面13(印加面13)を有する。本実施形態では、先端面13は平面によって構成されている。先端面13は、後述するローラ12の外周面14の接線方向に延びる平面である。
【0033】
前記超音波発振器は、前記コンバーターと電気的に接続されており、超音波発振器により発生された所定範囲の周波数の波長の電気信号がコンバーターに入力されるように構成されている。コンバーターは、例えば圧電素子を内蔵し、超音波発振器から入力された電気信号を機械的振動に変換する。ブースターは、コンバーターから発せられた機械的振動の振幅を調整して超音波ホーン11に伝達する。超音波ホーン11は、使用する周波数で共振するように構成されている。
【0034】
本実施形態では、前記アンビルは、円筒形状のローラ12と、複数のピン15(突起15)とを備える。ローラ12は、図略のモータによって図4に示す矢印の方向に回転可能に構成されている。ローラ12は、超音波ホーン11の先端面13に対向可能な外周面14(対向面14)を有している。
【0035】
図5に示すように、複数のピン15は、ローラ12の外周面14に設けられている。複数のピン15は、外周面14上に所定のピッチで設けられている。具体的には、複数のピン15は、ローラ12の外周面14の周方向D3に沿って所定のピッチで配列されているとともに、外周面14の幅方向D4(ローラ12の回転軸の軸方向D4)に沿って所定のピッチで配列されている。ただし、複数のピン15は、任意のパターンで配置することができ、必ずしも等間隔で配列されていなくてもよいし、周方向D3や幅方向D4と任意の角度で交差する方向に配列されていてもよく、或いは特定の方向に配列されていなくてもよい。
【0036】
図5及び図6に示すように、各ピン15は、ローラ12の外周面14からローラ12の径方向外側に突出するように設けられている。各ピン15は、外周面14につながる基端15Bと、突出方向の端である先端15Aとを有する。
【0037】
各ピン15は、外面を有している。各ピン15の外面は、頂面16と、これに連続する隣接面17と、第1側面18と、第2側面19とを有し、これらの面16~19は、各ピン15の高さ方向H2にこの順に並んでいる。
【0038】
頂面16は、そのピン15の高さ方向H2の一方である突出方向の先端に位置する先端面である。頂面16は、そのピン15が超音波ホーン11の先端面13に対向したときに、当該ピン15の前記外面のうち、先端面13に最も近い面である。言い換えると、頂面16は、ピン15の前記外面のうち、ローラ12の回転軸から最も遠い面である。図6に示す実施形態では、頂面16は、高さ方向H2に平行なピン15の中心線C2と交わる領域に設けられた平面によって構成されている。
【0039】
隣接面17は、頂面16からその周囲に拡がるように頂面16に連続して形成された面である。隣接面17は、頂面16が超音波ホーン11の先端面13に対向したときに、先端面13に対して頂面16よりも遠くに位置している。言い換えると、隣接面17は、ローラ12の回転軸に対して、頂面16よりも近くに位置している。
【0040】
図6に示すように本実施形態では、隣接面17は頂面16に向かうにつれてピン15の断面積が小さくなるような形状を有している。すなわち、ピン15における中心線C2に直交する断面の面積は、隣接面17が設けられた部分においては頂面16に向かうにつれて次第に小さくなっている。ここでいう隣接面17の、ピン15における中心線C2を含む断面での形状は、図6に示すように曲線の場合だけでなく、直線の場合や曲線と直線の組み合わせの場合なども含む。隣接面17は、全体が滑らかな連続面でなくてもよく、角張った面を含んでいてもよい。
【0041】
図6に示すように突起15の頂面16が超音波ホーン11の印加面13に対向した状態において、印加面13、頂面16及び隣接面17を高さ方向H2に見たときに、印加面13は、頂面16及び隣接面17の全体を含むような大きさを有している。
【0042】
第1側面18は、隣接面17よりも基端15B側にあって隣接面17に連続して形成された面である。第1側面18は、隣接面17のように頂面16に向かうにつれてピン15の断面積が小さくなるような形状を有していない面であり、ピン15における円柱状の部分の側面(円柱面)である。ピン15における中心線C2に直交する断面の面積は、第1側面18が設けられた部分においては一定である。
【0043】
第2側面19は、第1側面18よりも基端15B側にあって第1側面18に連続して形成された面である。第2側面19は、ローラ12の外周面14につながっている。第2側面19は、ピン15における中心線C2に直交する断面の面積が、第2側面19が設けられた部分において基端15Bから第1側面18に向かうにつれて次第に小さくなるような形状を有する。第2側面19が上記のような形状を有していることにより、図7に示すように、空気が吸引口21を通じて吸引されて不織布Sが外周面14及びピン15に密着したときに不織布Sの一部が第2側面19に沿って滑らかな曲面となることができる。
【0044】
図7に示すように、ローラ12は、その外周面14に開口する複数の吸引口21と、複数の吸引口21のそれぞれにつながる複数の吸引路22と、複数の吸引路22を通じて吸引される空気が合流する複数の合流路23とを有する。複数の吸引口21は、ローラ12の外周面14において隣り合う突起15同士の間の部位に形成されている。各吸引路22は、対応する吸引口21からローラ12の径方向内側に延びている。各合流路23は、ローラ12の軸方向に延びている。複数の合流路23は、ローラ12の周方向D3に沿って並んでいる。合流路23は、ローラ12の軸方向の端面に設けられた吸引ボックス24(図4参照)を介して、吸引源としての吸引装置20につながっている。
【0045】
吸引装置20は、吸引口21を通じて空気を吸引して外周面14に不織布Sを引き寄せるためのものである。吸引装置20は、吸引ボックス24、合流路23及び吸引路22を介してローラ12の外周面14の吸引口21に連通している。
【0046】
図4に示す正面視において、吸引ボックス24は、円弧形状を有している。吸引ボックス24は、ローラ12の軸方向の一端にある端面の全周にわたって設けられているのではなく、当該端面のうち、ローラ12の外周面14に不織布Sが巻き付けられている領域に対応する部分に設けられている。吸引ボックス24はローラ12の回転に伴って回転するものではなく、吸引ボックス24と超音波ホーン11との相対位置は変化しない。これにより、ローラ12の外周面14のうち、吸引装置20によって空気が吸引される範囲が定まる。
【0047】
[シートの製造方法]
次に、本実施形態に係る製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、1枚の不織布Sから使い捨て着用物品に用いられるシート1を製造するための方法である。当該製造方法は、凸部形成工程と、孔形成工程と、保持部形成工程と、を備える。
【0048】
以下の実施形態に係る製造方法では、凸部形成工程、孔形成工程及び保持部形成工程が行われる間、ローラ12は停止せずに図4の矢印の方向に連続して回転しており、超音波ホーン11とアンビルのピン15との間の間隔は予め設定された値に保持される。ただし、本発明の製造方法は、このような実施形態に限られない。例えば、凸部形成工程、孔形成工程及び保持部形成工程が行われる間、ローラ12を断続的に回転させてもよく、また、超音波ホーン11は、ローラ12の外周面14に対して近づく方向と遠ざかる方向とに進退移動可能に構成されていてもよい。
【0049】
凸部形成工程、孔形成工程及び保持部形成工程が行われる範囲は、吸引ボックス24が設けられている範囲と関連づけて定義できる。すなわち、図4に示すように、凸部形成工程は、吸引ボックス24が設けられている範囲に対応する領域のうち、超音波ホーン11の先端面13に対応する領域よりも回転方向上流側の領域で行われる。孔形成工程は、吸引ボックス24が設けられている範囲に対応する領域のうち、超音波ホーン11の先端面13に対応する領域で行われる。保持部形成工程は、吸引ボックス24が設けられている範囲に対応する領域のうち、超音波ホーン11の先端面13に対応する領域よりも回転方向下流側の領域で行われる。
【0050】
凸部形成工程は、孔形成工程及び保持部形成工程の前に、交互に並ぶ凹凸形状を不織布Sに予め形成するための工程である。凸部形成工程において、図4に示すようにローラ12に導入された不織布Sは、吸引装置20が吸引路22の空気を吸引することにより、ローラ12の外周面14及び複数のピン15に引き寄せられるように吸着される。これにより、不織布Sは、ローラ12の外周面14と、当該外周面14に設けられた複数のピン15の外面とに沿った形状となるので、不織布Sには、交互に並ぶ凸部2と凹部3とが形成される。
【0051】
孔形成工程は、超音波ホーン11の先端面13と、ローラ12の外周面14との間に不織布Sを挟み込んだ状態で超音波振動を印加することにより、凸部2の一部を溶融させて孔4を形成する工程である。
【0052】
孔形成工程では、超音波ホーン11は、不織布Sを予め設定された圧力で加圧しながら、不織布Sに対して超音波振動を印加する。具体的には、上述したブースターから超音波ホーン11に伝達された超音波振動は、超音波ホーン11の先端面13とローラ12の複数のピン15との間に挟まれた不織布Sに印加される。これにより、超音波振動が印加された不織布Sの一部分、すなわち、複数のピン15の頂面16にそれぞれ対応する部分が摩擦熱によって溶融し、溶融物が周りへ移動することで不織布Sに上述した孔4が形成される。孔形成工程においても、空気が吸引された状態にあるため、孔4が形成された凸部2は、ローラ12の突起15に沿った形状を維持しながらローラ12の回転方向下流側に送られる。
【0053】
本実施形態では、孔形成工程における超音波ホーン11による超音波振動の時間、振幅、加圧力などの製造条件は、不織布Sの材質、厚みなどに応じて、不織布Sに孔4が形成されるような値に設定される。
【0054】
保持部形成工程は、前記孔形成工程において溶融した凸部2の一部が孔4の周りにおいて冷却されることにより、凸部2の形状及び孔4の形状を保持するための保持部5を、孔4の周りであって孔4に隣接する部位に形成する工程である。
【0055】
超音波ホーン11の先端面13に対向する領域を通過して孔4が形成されると、次の保持部形成工程では、超音波ホーン11の先端面13に対向する領域よりも下流側において、孔4の周りであって孔4に隣接する部位が冷却されて上述した保持部5が形成される。本実施形態では、当該部位の冷却は、前記吸引装置20が周囲の空気を吸引することにより生じる空気流によって行われる。ただし、当該部位は、例えば、図略の送風機などによって強制的に冷却されてもよい。
【0056】
本実施形態では、前記凸部形成工程において吸引口21を通じて空気を吸引して不織布Sをローラ12の外周面14及びピン15に引き寄せているが、空気の吸引は、孔形成工程及び保持部形成工程においても継続して行われる。
【0057】
以上のように本実施形態に係る製造装置10では、超音波振動によって不織布Sにおける頂面16に対応する部分を溶融させて孔4と保持部5とを形成するので、この保持部5が凸部2を保持するとともに孔4の開孔状態を保持することができ、これにより、凸部2が保持され、孔4の開孔状態が保持された使い捨て着用物品用のシート1を単一の不織布によって形成することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る製造装置10では、各突起15は、その先端15Aに位置する頂面16と、頂面16からその周囲に拡がるように頂面16に連続して形成される隣接面17とを有し、当該隣接面17は、頂面16よりも突起15の基端15B側に位置する。したがって、印加面13と対向面14との間に不織布Sを挟み込んだ状態で超音波振動を印加して凸部2の一部が溶融して孔4が形成されると、溶融した部分は、頂面16に押圧されるので、頂面16に連続して形成されている隣接面17に沿って孔4の周りに移動する。このように移動した部分は、隣接面17に沿った位置で冷却されて固まる。その結果、保持部5は、単に孔4の周りを囲むように平面的に形成されるだけでなく、凸部2の高さ方向H1における凸部2の基部B側(凹部3の底部31)側にも拡がるように立体的に形成される。これにより、保持部5によって凸部2が保持される効果をより高めることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る製造装置10では、孔4と保持部5を形成する手段として超音波振動を用いているので、不織布Sにおける頂面16に対応する部分を局所的に溶融させることができる。したがって、凸部2に孔4を形成するときに、凸部2の基部B側の部位や凹部3などの他の部位に熱の影響が及ぶのを極力回避することができる。これにより、超音波振動によって溶融した凸部2の一部を孔4の周りで冷却させて硬化させ、剛性の高い保持部5を形成する一方で、保持部5以外の他の部位においては保持部5のように剛性が高くなるのを回避して柔軟性が損なわれるのを防ぐことができる。このシート1を、使い捨て着用物品において、吸収体をカバーするとともに肌に接触する部分に用いられるシート1として用いるときには、孔4とその周囲の剛性が高い保持部5が形成されている凸部2の頂部2A側を吸収体側に向け、凸部2の基部側や凸部2とは反対側に突出する凹部3の底部側を装着者の肌面側に向ける。これによって、使い捨て着用物品のシート1として用いられるときに吸収体へ速やかに液体を吸収体へ案内できるうえ、肌触りなどの特性が低下するのを防ぐことができる。
【0060】
また、本実施形態に係る製造装置10では、隣接面17は、頂面16に向かうにつれて突起15の断面積が小さくなるような形状を有しているので、凸部2のうち、超音波振動によって溶融した部分は、頂面16に押圧されて孔4の周りに移動するときに、隣接面17に沿って移動しやすくなる。これにより、保持部5は、凸部2の高さ方向H1における凸部2の基部B側(凹部3の底部31側)にも拡がるように立体的に形成されやすくなる。したがって、凸部2を保持する効果が高められ、これにより、シート1のクッション性も維持されやすくなる。
【0061】
また、本実施形態に係る製造装置10は、吸引装置20を備えているので、吸引装置20によって空気を吸引して不織布Sの凸部2間の部位をピン15の基端15B側に引き寄せながら凸部2に孔4を形成するとともに保持部5を形成することができる。すなわち、超音波振動によって凸部2の一部が溶融して孔4が形成された後、保持部5が冷却されて硬化するまで、吸引によって不織布Sを引っ張った状態を維持できるので、保持部5が硬化するまで凸部2を保形でき、しかも、保持部5が硬化する前に孔4が小さくなったり、孔4が閉じたりするのを防止できる。これにより、孔4をより明確に形成することができる。
【0062】
本実施形態に係る製造装置10では、超音波ホーン11の印加面13にローラ12の突起15の頂面16が対向した状態で印加面13及び突起15を当該突起15の高さ方向H2に見たときに、印加面13は、頂面16及び隣接面17の全体を含むような大きさを有する平面である。したがって、超音波振動によって溶融した凸部2の一部は、頂面16に押圧されて孔4の周りに移動するときに、突起15の基端15B側とは反対方向に移動することが印加面13によって規制される。これにより、溶融した凸部2の一部が、より隣接面17に沿って移動しやすくなる。
【0063】
本実施形態に係る製造方法では、印加面13と対向面14との間に不織布Sを挟み込んだ状態で超音波振動を印加することにより、凸部2の一部を溶融させて孔4を形成することができる。また、溶融した凸部2の一部が孔4の周りにおいて冷却されることにより、保持部5を形成することができる。これにより、凸部2が保持され、孔4の開孔状態が保持された使い捨て着用物品用のシート1を単一の不織布によって形成することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る製造方法では、前記凸部形成工程において、吸引口21を通じて空気を吸引して不織布Sを外周面14及び複数の突起15の外面に引き寄せることにより、凸部2と凹部3を形成する。そして、前記孔形成工程及び前記保持部形成工程においても、吸引口21を通じて空気の吸引を継続して行う。したがって、空気を吸引して不織布Sを外周面14及びピン15に引き寄せながら凸部2に孔4を形成するとともに保持部5を形成することができる。すなわち、超音波振動によって凸部2の一部が溶融して孔4が形成された後、保持部5が冷却されて硬化するまで、吸引によって不織布Sを引っ張った状態を維持できるので、保持部5が硬化するまで凸部2を保形でき、しかも、保持部5が硬化する前に孔4が小さくなったり、孔4が閉じたりするのを防止できる。これにより、孔4をより明確に形成することができ、シートの通液性を良好にできる。
【0065】
[変形例]
図8は、前記実施形態の変形例に係るシート1を示す斜視図である。図8に示す変形例に係るシート1は、複数の凸部2が1枚の不織布に形成されたものであり、凸部2の頂部2Aには孔4が形成されており、凸部2は、孔4の周りであって孔4に隣接する部位に、凸部2を保持するとともに孔4の開孔状態を保持するための保持部5を有している。このような構成を備えている点で、変形例に係るシート1は、図1に示す実施形態に係るシート1と同様である。その一方で、変形例に係るシート1では、各凸部2の周囲はほぼ平坦な面によって構成されており、したがって、図1に示す実施形態に係るシート1における複数の凹部3が明確には形成されていない点で、図1に示す実施形態に係るシート1とは異なっている。
【0066】
[その他の変形例]
上記実施形態では、突起15の頂面16が平面である場合を例示したが、頂面16は湾曲面であってもよい。具体的には、突起15の先端15A側の面は球面の一部のような形状などであってもよい。また、突起15は、例えば截頭錐体のような形状であってもよい。この場合、突起15の頂面16は平面であってもよく、曲面であってもよい。
【0067】
上記実施形態では、突起15は、その高さ方向H2に直交する断面の形状が円形である場合を例示したが、これに限られず、当該断面の形状は、例えば楕円形、多角形などの他の形状であってもよい。
【0068】
上記実施形態では、シートの製造装置が吸引装置20を備えていたが、この吸引装置20は省略することもできる。吸引装置20を省略する場合、シートの製造方法において、不織布Sに複数の凸部を形成する方法としては、例えば、不織布Sをアンビルのローラ12に巻き付けるときの張力によって不織布Sをローラ12の外周面14側及びピン15の基端15B側に引き寄せるという手段が挙げられる。
【0069】
また、凸部形成工程において、アンビルのローラ12のピン15に噛み合う凹部を備えた対向ローラを設けて、この対向ローラをローラ12に押し当て、両ローラ間に不織布Sを通過させることにより不織布Sに凸部を賦形することもできる。この場合、賦形した凸部を維持するために、吸引装置を備えているのが好ましい。また、対向ローラが凹部ではなく多数のピンを備えており、アンビルのローラ12のピン15と噛み合う場合には、凸部と凹部が交互に並ぶ形状が不織布Sに賦形される。
【0070】
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明は、使い捨て着用物品に用いられるシートである。前記シートは、複数の凸部が1枚の不織布に形成されたものである。前記凸部の頂部には、孔が形成されている。前記凸部は、前記孔の周りであって前記孔に隣接する部位に、前記凸部を保持するとともに前記孔の開孔状態を保持するための保持部を有している。
【0071】
本発明のシートでは、孔の周りであって当該孔に隣接する部位に形成された保持部が凸部を保持するとともに孔の開孔状態を保持する。すなわち、当該シートに形成された凸部は、保持部によって保持されて当該シートに存在しつづけることができ、当該シートに形成された孔は、保持部によってその開孔状態が保持される。したがって、凸部が保持され、孔の開孔状態が保持された使い捨て着用物品用シートを単一の不織布によって形成することができる。
【0072】
前記シートにおいて、前記保持部は、前記凸部の高さ方向に直交する方向の位置が前記孔から遠ざかるにつれて前記高さ方向の位置が前記凸部の基部側に近づく部位を有しているのが好ましい。
【0073】
この態様では、保持部は、単に孔の周りを囲むように平面的に形成されるだけでなく、凸部の高さ方向における凸部の基部側にも拡がるように立体的に形成されている。これにより、保持部によって凸部が保持される効果をより高めることができる。
【0074】
前記シートにおいて、前記保持部の剛性は、前記保持部以外の部分の剛性よりも高いことが好ましい。
【0075】
この態様では、保持部以外の部分よりも剛性が高められた保持部によって凸部及び孔の開孔状態が保持される。
【0076】
前記シートにおいて、前記保持部における単位面積あたりの質量は、前記保持部以外の部分における単位面積あたりの質量よりも大きくなっていることが好ましい。
【0077】
この態様では、保持部以外の部分よりも単位面積あたりの質量が大きくされた保持部によって凸部及び孔の開孔状態が保持される。
【0078】
本発明のシートの製造装置は、1枚の不織布から使い捨て着用物品に用いられるシートを製造するための装置である。この製造装置は、超音波振動を印加する印加面を有する超音波ホーンと、前記印加面に対向可能な対向面を有するアンビルと、を備える。前記対向面には複数の突起が設けられている。各突起は、その先端に位置する頂面と、前記頂面からその周囲に拡がりつつ前記突起の基端側に延びるように前記頂面に隣接して形成される隣接面とを有する。この製造装置は、前記不織布を前記複数の突起が設けられた前記対向面に引き寄せることによって前記不織布に複数の凸部を形成した状態で前記印加面と前記対向面との間に前記不織布を挟み込んで超音波振動を印加することにより、前記不織布における前記頂面に対応する部分を溶融させて前記凸部に孔を形成するとともに、溶融した当該部分が前記孔の周りにおいて冷却されることにより、前記凸部を保持するとともに前記孔の開孔状態を保持するための保持部を、前記孔の周りであって前記孔に隣接する部位に形成するように構成されている。
【0079】
本発明の製造装置では、超音波振動によって不織布における頂面に対応する部分を溶融させて孔と保持部とを形成するので、この保持部が凸部及び孔の開孔状態を保持することができる。これにより、凸部が保持され、孔の開孔状態が保持された使い捨て着用物品用シートを単一の不織布によって形成することができる。
【0080】
また、本発明の製造装置では、各突起は、その先端に位置する頂面と、前記頂面からその周囲に拡がりつつ前記突起の基端側に延びるように前記頂面に隣接して形成される隣接面とを有する。したがって、印加面と対向面との間に不織布を挟み込んだ状態で超音波振動を印加して凸部の一部が溶融して孔が形成されると、溶融した部分は、頂面に押圧されるので、頂面に隣接して形成されている隣接面に沿って孔の周りに移動する。このように移動した部分は、隣接面に沿った位置で冷却されて固まる。その結果、保持部は、単に孔の周りを囲むように平面的に形成されるだけでなく、凸部の高さ方向における凸部の基部側にも拡がるように立体的に形成される。これにより、保持部によって凸部が保持される効果をより高めることができる。
【0081】
また、本発明の製造装置では、孔と保持部を形成する手段として超音波振動を用いているので、不織布における頂面に対応する部分を局所的に溶融させることができる。したがって、例えば複数の突起自体を予め加熱して不織布に接触させて孔を形成するような場合と異なり、本発明の製造装置では、凸部の基部側の部位やその周囲などの他の部位に熱の影響が及ぶのを極力回避することができる。これにより、超音波振動によって局所的に溶融した凸部の一部を孔の周りで冷却させて硬化させ、剛性の高い保持部を形成する一方で、他の部位においては保持部のように剛性が高くなるのを回避して柔軟性が損なわれるのを防ぐことができる。よって、使い捨て着用物品のシートとして用いられるときに、肌触りなどの特性が低下するのを防ぐことができる。
【0082】
前記シートの製造装置において、前記隣接面は、前記頂面に向かうにつれて前記突起の断面積が小さくなるような形状を有しているのが好ましい。
【0083】
この態様では、隣接面が上記のような形状(例えばテーパー形状、曲面形状などの形状)を有しているので、凸部のうち、超音波振動によって溶融した部分は、頂面に押圧されて孔の周りに移動するときに、隣接面に沿って移動しやすくなる。
【0084】
前記シートの製造装置は、前記対向面に前記不織布を引き寄せるために前記対向面において隣り合う前記突起同士の間の部位に形成された吸引口を通じて空気を吸引する吸引装置をさらに備えているのが好ましい。
【0085】
この態様では、吸引装置によって空気を吸引することで不織布の凸部間の部分を突起の基端側に引き寄せながら凸部に孔を形成するとともに保持部を形成することができる。したがって、超音波振動によって凸部の一部が溶融して孔が形成された後、保持部が冷却されて硬化するまで吸引を継続した場合には、保持部が硬化するまで吸引によって不織布を引っ張った状態を維持できるので、保持部が硬化するまで凸部を保形でき、しかも、保持部が硬化する前に孔が小さくなったり、孔が閉じたりするのを防止できる。これにより、孔をより明確に形成することができる。
【0086】
前記シートの製造装置において、前記印加面は、当該印加面に前記突起の頂面が対向した状態で前記印加面及び前記突起を当該突起の高さ方向に見たときに、前記頂面及び前記隣接面の全体を含むような大きさを有する平面であるのが好ましい。
【0087】
この態様では、突起の頂面及び隣接面に対向する前記印加面が頂面及び隣接面の全体を含むような大きさを有する平面であるので、超音波振動によって溶融した凸部の一部は、頂面に押圧されて孔の周りに移動するときに、突起の基端側とは反対方向に移動することが印加面によって規制される。これにより、溶融した凸部の一部が、より隣接面に沿って移動しやすくなる。
【0088】
本発明のシートの製造方法は、1枚の不織布から使い捨て着用物品に用いられるシートを製造するための方法である。当該製造方法は、複数の凸部を前記不織布に形成する凸部形成工程と、前記不織布に前記複数の凸部が形成された状態で超音波ホーンにおける超音波振動を印加する印加面と、アンビルにおける前記印加面に対向する対向面との間に前記不織布を挟み込んで超音波振動を印加することにより、前記凸部の頂部の少なくとも一部を溶融させて孔を形成する孔形成工程と、前記孔形成工程において溶融した前記凸部の前記頂部の少なくとも一部が前記孔の周りにおいて冷却されることにより、前記凸部を保持するとともに前記孔の開孔状態を保持するための保持部を、前記孔の周りであって前記孔に隣接する部位に形成する保持部形成工程と、を備える。
【0089】
本発明の製造方法では、印加面と対向面との間に不織布を挟み込んだ状態で超音波振動を印加することにより、凸部の頂部の少なくとも一部を溶融させて孔を形成することができる。また、溶融した凸部の一部が孔の周りにおいて冷却されることにより、保持部を形成することができる。これにより、凸部が保持され、孔の開孔状態が保持された使い捨て着用物品用シートを単一の不織布によって形成することができる。
【0090】
前記シートの製造方法では、前記対向面には複数の突起が設けられているとともに前記突起同士の間に吸引口が形成されており、前記凸部形成工程において、前記吸引口を通じて空気を吸引して前記不織布を前記対向面に引き寄せることにより、前記複数の凸部を形成し、前記孔形成工程及び前記保持部形成工程においても、前記吸引口を通じて空気の吸引を行うことが好ましい。
【0091】
この態様では、空気を吸引して不織布をアンビルの対向面及び突起の外面に引き寄せながら凸部の頂部に孔を形成するとともに孔の周りに保持部を形成することができる。すなわち、超音波振動によって凸部の一部が溶融して孔が形成された後、保持部が冷却されて硬化するまで、吸引によって不織布を引っ張った状態を維持できるので、保持部が硬化するまで凸部を保形でき、しかも、保持部が硬化する前に孔が小さくなったり、孔が閉じたりするのを防止できる。これにより、孔をより明確に形成することができ、シートの通液性を良好にできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8