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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】ビタミンD様作用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/65 20060101AFI20220302BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20220302BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20220302BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220302BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20220302BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220302BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220302BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220302BHJP
   A61K 133/00 20060101ALN20220302BHJP
【FI】
A61K36/65
A61K8/9789
A61P3/02 102
A61P17/00
A61P17/16
A61P43/00 111
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K133:00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020074097
(22)【出願日】2020-04-17
(62)【分割の表示】P 2015112275の分割
【原出願日】2015-06-02
(65)【公開番号】P2020128382
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2020-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2015100615
(32)【優先日】2015-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000162021
【氏名又は名称】共栄化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩野 英生
(72)【発明者】
【氏名】古村 仁
(72)【発明者】
【氏名】澤木 茂
(72)【発明者】
【氏名】澤木 茂豊
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-042644(JP,A)
【文献】特開2012-087112(JP,A)
【文献】特開昭63-051312(JP,A)
【文献】特開平05-294820(JP,A)
【文献】特表2000-503660(JP,A)
【文献】国際公開第01/028565(WO,A1)
【文献】David BOUDIER David BOUDIER,皮膚に効果的な“ビタミンD様”作用をもたらす天然由来の有効成分 "Vitamin D-like " efficacy of a natural active ingredient for high cutaneous benefits,フレグランスジャーナル 4月号,第41巻,宇野 浩一 ▲▼フレグランスジャーナル社
【文献】Journal of Chromatography B,2014年,947-948,62-67
【文献】Journal of Nutritional Science and Vitaminology,2010年,56,326-330
【文献】Journal of Steroid Biochemistry & Molecular Biology,2016年,163,59-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/65
A61K 8/9789
A61P 3/02
A61P 17/00 - 17/18
A61P 43/00
A61Q 19/00 - 19/10
A61K 133/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャクヤクの花抽出物を有効成分とするビタミンD受容体活性化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンD様作用を有する物資を含む皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、加齢に伴う細胞増殖・分化の不活化、ホルモン分泌の低下、細胞外マトリックス成分の量的低下などの内的要因と、太陽光(紫外線)に誘発される活性酸素、大気汚染物質や環境ホルモン等の化学物質、花粉などのアレルギー物質、環境ストレス等の外的要因が複雑に絡み合って、老化現象や肌荒れ、色調の変化等が生じる。従来、これらの要因により生じる皮膚の老化や肌荒れ等、色調の変化を改善する目的で、様々な抗老化剤、美肌剤又は美白剤が提案されている。さらに、近年、皮膚の老化や肌荒れ、色調の変化のメカニズムを解明すべく様々な研究がなされており、それらのメカニズムを特定し、より効率的に抑制、改善できる有効成分が求められている。
【0003】
従来、抗老化剤、美肌剤又は美白剤として、様々な有効性が解明されているビタミン類又はそれらの誘導体が広く使用されている。しかし、ビタミン類は、紫外線、熱又は酸素等により容易に分解又は変質することから、化粧料等の皮膚外用剤に利用する場合に、安定性の点で問題があった。さらに、ビタミン類の中には過剰摂取による副作用が報告されているものもあり、安全性の点でも課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記従来の課題に鑑みて、ビタミン類の特に、ビタミンDに注目し、血中のビタミンDの濃度を指標として皮膚の状態を評価する方法、ビタミンD様作用を有する皮膚外用の有効成分を評価する方法、及び当該方法によりスクリーニングされたビタミンD様作用剤を含有する皮膚外用剤を提供することを目的とする。従来、ビタミンD又はその誘導体を化粧料等の皮膚外用剤に利用することは、例えば、特許文献1~4に開示されている。しかし、ビタミンDは、ヒトの生体に不可欠な物質であるものの、紫外線、熱又は酸素等により容易に分解されるという問題点もあった。
【0005】
【文献】特開昭62-263110号
【文献】特開昭63-051312号
【文献】特開平02-178218号
【文献】特開平05-294820号
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シャクヤク花抽出物を有効成分とするビタミンD様作用剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ビタミンD様作用に基づく皮膚の老化防止・改善効果及び/又は肌荒れ防止・改善効果を有する化粧料等の皮膚外用剤を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】皮膚の角層水分量の評価試験結果を示す図である。
図2】経皮水分蒸散量の評価試験結果を示す図である。
図3】血中ビタミンD濃度と皮膚の角層水分量との相関関係を示す図である。
図4】血中ビタミンD濃度と経皮水分蒸散量との相関関係を示す図である。
図5】皮膚の角層水分量の評価試験結果を示す図である。
図6】経皮水分蒸散量の評価試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において「ビタミンD様作用」の評価としては、例えば、被験物質とビタミンD受容体(Vitamin D receptor:VDR)との結合度を分析する方法や、被験物質がVDRに結合したときにVDRのリガンドであるビタミンDと同様の作用で生じる遺伝子の転写活性を分析する方法が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限るものではない。
【0010】
本発明において、皮膚の老化及び/又は肌荒れの評価方法として、例えば、皮膚の角層水分量、及び皮膚からの水分蒸散量を測定する方法が挙げられるが、本発明はこれに限るものではなく、皮膚の老化及び肌荒れを評価する常法を用いることができる。
【0011】
本発明において、ビタミンD様作用を評価する物質は皮膚外用剤として利用されるものであれば、特に限定されず、天然物(動植物、海藻、微生物等)由来の成分や、糖(単糖、オリゴ糖、多糖、ムコ多糖等)、糖アルコール、ポリフェノール又はその誘導体、有機酸又はその塩、アミノ酸、ペプチド、ビタミン類(ビタミンDを除く)又はその塩或いは誘導体、タンパク質又はその誘導体、脂質(コレステロール、脂肪酸等)、高級アルコール等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0012】
本発明に係る評価方法により評価された物質(ビタミンD様作用剤)は、皮膚外用剤(化粧料や医薬部外品)に配合することができる。かかる場合は、通常、皮膚外用剤に用いられる成分、例えば油性成分、界面活性剤(合成系、天然物系)、保湿剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、粉体成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0013】
油性成分としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、植物由来スクワランなどの植物由来の油脂類;ミンク油、タートル油などの動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリンなどのロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワランなどの炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、cis-11-エイコセン酸などの脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2-エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)などの合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0014】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α-スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩などのアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級~第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2-アルキル-1-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N-ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩などのカチオン界面活性剤;N,N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N-トリアルキル-N-アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N-アシルアミドプロピル-N′,N′-ジメチル-N′-β-ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタインなどの両性界面活性剤等を使用することができる。
【0015】
乳化剤乃至乳化助剤としては、酵素処理ステビアなどのステビア誘導体、サポニン又はその誘導体、カゼイン又はその塩(ナトリウム等)、糖と蛋白質の複合体、ショ糖又はそのエステル、ラクトース、大豆由来の水溶性多糖、大豆由来蛋白質と多糖の複合体、ラノリン又はその誘導体、コレステロール、ステビア誘導体(ステビア酵素処理物等)、ケイ酸塩(アルミニウム、マグネシウム等)、炭酸塩(カルシウム、ナトリウム等)サポニン及びその誘導体、レシチン及びその誘導体(水素添加レシチン等)、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀など)等を配合することもできる。
【0016】
保湿剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等があり、さらにトレハロース等の糖類、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体など)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、シラン根(白及)抽出物、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0017】
増粘剤としては、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻又は紅藻由来成分;シラン根(白及)抽出物;ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体、アルカリゲネス産生多糖体等の多糖類;キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム等のガム類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体;ポリグルタミン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0018】
防腐・殺菌剤としては、例えば尿素;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、ポリリジン、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、1,2-ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物、大根発酵液、サトウキビ等の植物由来のエタノール又は1,3-ブチレングリコール等がある。
【0019】
粉体成分としては、例えばセリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビなど)のパウダー、豆類(大豆、アズキなど)のパウダー等がある。
【0020】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-ターシャリーブチル-4-メトキシベンゾイルメタン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0021】
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ビタミンE及びその誘導体(例えば、ビタミンEニコチネート、ビタミンEリノレート等)等がある。
【0022】
美白剤としては、t-シクロアミノ酸誘導体、コウジ酸及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン又はその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、マグノリグナン(5,5'-ジプロピル-ビフェニル-2,2’-ジオール)、ヒドロキシ安息香酸及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、α-ヒドロキシ酸、AMP(アデノシンモノホスフェイト、アデノシン1リン酸)、胎盤抽出液、エルゴチオネイン、リノール酸及びその誘導体もしくは加工物(例えばリポソーム化リノール酸など)等が挙げられ、これらを単独で配合しても、複数を組み合わせて配合しても良い。
【0023】
上記のコウジ酸誘導体としては、例えばコウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸ジブチレートなどのコウジ酸エステル類、コウジ酸エーテル類、コウジ酸グルコシドなどのコウジ酸糖誘導体等が、アスコルビン酸誘導体としては、例えばL-アスコルビン酸-2-リン酸エステルナトリウム、L-アスコルビン酸-2-リン酸エステルマグネシウム、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステルナトリウム、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステルマグネシウムなどのアスコルビン酸エステル塩類、L-アスコルビン酸-2-グルコシド、L-アスコルビン酸-5-グルコシド、アスコルビルトコフェリルマレイン酸、アスコルビルトコフェリルリン酸K、ミリスチル3-グリセリルアスコルビン酸、カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸などのアスコルビン酸糖誘導体、それらアスコルビン酸糖誘導体の6位アシル化物(アシル基は、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基など)、L-アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸テトララウリン酸エステルなどのL-アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル類、3-O-エチルアスコルビン酸、L-アスコルビン酸-2-リン酸-6-O-パルミテートナトリウム、グリセリルアスコルビン酸又はそのアシル化誘導体、ビスグリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸グルセリン誘導体、L-アスコルビン酸リン酸アミノプロピル、L-アスコルビン酸のヒアルロン酸誘導体、3-O-Dラクトース-L-アスコルビン酸、イソステアリルアスコルビルリン酸塩等が、ハイドロキノン誘導体としては、アルブチン(ハイドロキノン-β-D-グルコピラノシド)、α-アルブチン(ハイドロキノン-α-D-グルコピラノシド)等が、トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸エステル(例えば、トラネキサム酸ラウリルエステル、トラネキサム酸ヘキサデシルエステル、トラネキサム酸セチルエステル又はその塩)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トラネキサム酸メチルアミド)などが挙げられ、レゾルシノール誘導体としては、例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、4-イソアミルレゾルシノール等が、2,5-ジヒドロキシ安息香酸誘導体としては、例えば2,5-ジアセトキシ安息香酸、2-アセトキシ-5-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-5-プロピオニルオキシ安息香酸等が、ニコチン酸誘導体としては、例えばニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等が、α-ヒドロキシ酸としては、例えば乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、α-ヒドロキシオクタン酸等がある。
【0024】
次に、シャクヤク花抽出物の調製例及び評価試験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下において、部はすべて重量部を、また%はすべて重量%を意味する。
【0025】
試験例1.ビタミンD様作用評価試験
被験物質のビタミンD様作用を評価した。
(i)被験物質の調製
被験物質の調製例1.シャクヤクの花部の抽出液の調製(1)
ボタン科ボタン属に属する植物のシャクヤク(Paeonia lactiflora)の花を乾燥、粉砕して得られる粉砕物30gを、30%1,3-ブチレングリコール溶液(精製水/1,3ブチレングリコール=70/30)300gに接触させ、80℃で2時間抽出を行った。次に、得られた抽出液を濾過して淡黄色~褐色透明の花部の抽出液264g(固形分濃度2.61%)を得て、これを被験物質(1)とした。
被験物質の調製例2.シャクヤクの花部の抽出液の調製
抽出溶媒として、30%1,3-ブチレングリコールに代えて、精製水を使用すること以外は調製例1と同様の方法により、褐色透明の花部の抽出液262g(固形分濃度1.40%)を得て、被験物質(2)とした。
(ii)ビタミンD様作用評価試験
正常なヒトの表皮細胞を、増殖添加剤を含有するHumedia-KG2(クラボウ社製)にて1×10個/mLに調製し、96穴マイクロプレートに100μLを播種して、5%CO、飽和水蒸気下、37℃で培養した。24時間培養後、ビタミンD受容体結合塩基配列(VDRE)を組み込んだホタルルシフェラーゼレポーターベクター及び内部標準としてのウミシイタケルシフェラーゼを組み込んだベクター(Cignal VDRE Reporter Assay Kit)[QIAGEN社製]を細胞へViaFectトランスフェクション試薬[Promega社製]を用いて導入した。さらに、24時間後、試料として被験物質(1)を添加した。試料の添加濃度は、培地全量に対する試料溶液としての終濃度が、1.0%となるように調整した。試料を添加してから24時間培養後、培養した表皮細胞の内容物を抽出し、細胞抽出液のルシフェラーゼ活性をデュアルルシフェラーゼアッセイシステム[Promega社製]を用い、ルミノメーター(Promega GloMax-Multi+Detection System)にて測定した。ホタルルシフェラーゼの測定値(VDRE転写量)をウミシイタケルシフェラーゼの測定値(細胞量)で割った数値を細胞あたりのビタミンD様作用とした。なお、試料の代わりに比較対照として30%の1,3-ブチレングルコール(1,3-BG)を培地に添加した区(培地中の1,3-BGの溶液としての終濃度は1.0%)のビタミンD様作用を100としてその相対値を算出した。また、試験系が正常に機能しているかを確認するために、試料溶液の代わりに陽性対照として活性化ビタミンD3であるカルシトリオール(100nM)を添加した場合についても、同様の試験を行った。
【0026】
試験例1の結果を表1に示す。
[表1]
【0027】
表1に示すように、試料である被験物質(1)は、ビタミンD受容体に結合して遺伝子の転写を活性化したこと、すなわち、ビタミンD様作用を有することが明らかとなった。なお、陽性対照のカルシトリオールも同様に、ビタミンD様作用を有していたことから、本試験系が正常に行われたことも確認された。さらに、被験物質(2)についても同様の効果が確認された。
【0028】
上記試験例1によりビタミンD様作用が確認された被験物質が、皮膚の老化防止・改善効果及び肌荒れ防止・改善効果を有することを確認する評価試験を行った。
【0029】
試験例2.皮膚の角層水分量及び経皮水分蒸散量の評価試験(1)
4名の被験者A~D(25歳~45歳の男女)の前腕内側部に被験部(15mm×15mm)を設定した。次に、Skicon-200を用いて各被験部の角層水分量を、Tewameter TM 300を用いて経皮水分蒸散量を、それぞれ3回測定し、3回の平均を各被験部の初期値(0)とした。各初期値を測定後、2%SDS水溶液を各被験部に1日3回適用することで皮膚バリア機能を破壊し、皮膚の老化、肌荒れを強制的に生じさせた当該被験部を試験区とした。また、SDSを適用しない被験部(リファレンス区)も設定した。その後、それぞれの試験区に試料[被験物質(1)]とコントロール溶液[1,3-ブチレングルコール(1%水溶液)]の塗布を開始した(1日2回)。各被験部の角層水分量及び経皮水分蒸散量の変化を1日目、5日目、8日目に測定した。その結果は、リファレンス区の値を差し引いた各被験部の初期値から、SDS処理直後の角層水分量の変化量を-100とし、又水分蒸散量の変化量を100として、それぞれの相対値を算出した。
【0030】
試験例2の結果を図1及び図2に示す。
図1に示すように、被験物質(1)は、コントロールと比較して、皮膚の角層水分量の低下を顕著に抑えることができ、又SDS処理後、早期にかつ顕著に皮膚の角層水分量を改善させることが明らかとなった。また、図2に示すように、被験物質(1)は、コントロールと比較して、皮膚からの水分蒸散を顕著に抑えることができ、又SDS処理後、早期に皮膚からの水分蒸散を抑える機能を改善することが明らかとなった。以上のことから、ビタミンD様作用を指標として、皮膚の老化防止・改善及び/又は肌荒れ防止・改善効果を有する被験物質を評価できることが確認された。
【0031】
試験例3.皮膚の角層水分量及び経皮水分蒸散量の評価試験(2)
被験者の血中ビタミンD濃度を測定し、その測定値に基づいて、被験者20名をグループAとグループBに分けた。そして、上記試験例2と同様の方法で各グループの被験者の被験部をSDS処理し、被験物質(1)を塗布した被験部と、コントロール溶液を塗布した被験部の角層水分量と経皮水分蒸散量の変化をそれぞれ評価した。
(i)血中ビタミン濃度の測定
まず、採血担当医師により被験者の腕部の静脈から血液を採取した。そして、採取した血液からラジオイムノアッセイの二次抗体法を用いて、ビタミンDの濃度を測定した。
(ii)皮膚の角層水分量及び経皮水分蒸散量の評価試験
上記(i)の測定により、血中のビタミンDの濃度が基準値(20ng/mL;日本骨粗鬆症学会、米国Institute of Medicine等で報告されている基準値)以下の被験者10名(グループA)と、血中のビタミンDの濃度が基準値を超える被験者10名(グループB)に対して、それぞれの前腕内側部に被験部(15mm×15mm)を設定した。次に、Skicon-200を用いて各被験部の角層水分量を、Tewameter TM 300を用いて経皮水分蒸散量を、それぞれ3回測定し、3回の平均を各被験部の初期値(0)とした。各初期値を測定後、2%SDS水溶液を各被験部に1日3回適用することで皮膚バリア機能を破壊し、強制的に皮膚の老化、肌荒れを生じさせた当該被験部を試験区とした。また、SDSを適用しない被験部(リファレンス区)も設定した。その後、それぞれの試験区に試料[被験物質(1)]とコントロール溶液[30%1,3-ブチレングルコール(1%水溶液)]の塗布を開始した(1日2回)。各被験部の角層水分量及び経皮水分蒸散量の変化を1日目、5日目、8日目に測定した。その結果は、リファレンス区の値を差し引いた各被験部の初期値から、SDS処理直後の角層水分量の変化量を-100とし、又水分蒸散量の変化量を100として、それぞれの相対値を算出し、各グループの平均値を求めた。
【0032】
試験例3の結果として、血中のビタミンDの濃度と皮膚の老化及び肌荒れの相関関係を図3及び図4に示す。すなわち、グループAとグループBのそれぞれの被験者において、被験物質(1)ではなくコントロール溶液のみを塗布した被験部の角層水分量(図3)及び水分蒸散量(図4)の試験結果を示す。図3に示すように、血中のビタミンDの濃度が基準値以下のグループAの被験者は血中のビタミンDの濃度が基準値を超えるグループBの被験者と比較して、SDS処理後に皮膚の角層水分量が顕著に低下することが明らかとなり、また、皮膚の角層水分量の回復も遅いことが明らかとなった。さらに、図4に示すように、グループAの被験者はグループBの被験者と比較して、経皮水分蒸散量も顕著に増加し、経皮水分蒸散を抑える機能の回復も遅いことが明らかとなった。すなわち、被験者の血中ビタミンD濃度と、皮膚の老化及び肌荒れとの相関関係が認められ、これにより、被験者の血中ビタミンD濃度を指標として、皮膚の老化及び/又は肌荒れを評価できることが示唆される。
【0033】
試験例3の結果として、グループAとグループBの各被験者に対するビタミンD様作用剤[被験物質(1)]による皮膚の老化防止・改善及び肌荒れの防止・改善効果を図5及び図6に示す。図5及び図6において、被験物質(1)を塗布した被験部の結果をグループA(+)及びグループB(+)として表し、コントロール溶液を塗布した被験部の結果をグループA(-)及びグループB(-)として表す。図5に示すように、特に、血中のビタミンDの濃度が基準値以下のグループAにおいて、被験物質(1)は、コントロールと比較して、皮膚の角層水分量の低下を顕著に抑えることができ、又SDS処理後、早期にかつ顕著に角層水分量を改善させることが明らかとなった。また、図6に示すように、特に、グループAにおいて、被験物質(1)は、コントロールと比較して、皮膚からの水分蒸散を顕著に抑えることができ、又SDS処理後、早期にかつ顕著に皮膚からの水分蒸散を抑える機能を改善することが明らかとなった。以上のことから、ビタミンD様作用を指標として、血中のビタミンDの濃度が低い被験者に対する皮膚の老化防止・改善及び/又は肌荒れ防止・改善効果を有する被験物質を評価できることが示唆される。
【0034】
上述のように本発明に係る評価方法により確認されたビタミンD様作用を有する物質を皮膚外用剤に適用する場合の処方例を以下に示す。
【0035】
処方例1.化粧水
[A成分] 部
オリーブ油 1.0
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール 5.0
ブチルパラベン 0.1
[B成分]
被験物質(1) 5.0
エタノール 5.0
グリセリン 5.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃以上に加温後、A成分にB成分を加えて攪拌し、さらにヒスコトロン(5000rpm)で2分間ホモジナイズを行った。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えて攪拌混合し、さらに30℃以下まで冷却して化粧水を得た。
【0036】
処方例2.乳液
[A成分] 部
流動パラフィン 6.0
ヘキサラン 4.0
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.0
大豆レシチン 1.5
[B成分]
被験物質(1) 3.0
L-アスコルビン酸-2-グルコシド 2.0
水酸化カリウム 0.5
グリセリン 3.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.5
1,3-ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合して乳液を得た。
【0037】
処方例3.乳液
処方例2のB成分中、L-アスコルビン酸-2-グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてトラネキサム酸2.0部を用いるほかは処方例2と同様にして乳液を得た。
【0038】
処方例4.乳液
処方例2のB成分中、L-アスコルビン酸-2-グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてアルブチン3.0部を用いるほかは処方例2と同様にして乳液を得た。
【0039】
処方例5.乳液
処方例2のB成分中、L-アスコルビン酸-2-グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてニコチン酸アミド3.0部を用いるほかは処方例2と同様にして乳液を得た。
【0040】
処方例6.ローション
[成分] 部
被験物質(1) 10.0
エタノール 10.0
グリセリン 3.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
メチルパラベン 0.2
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.3
カルボキシビニルポリマー 0.1
香料 適量
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
上記の成分を混合してローションを得た。
【0041】
処方例7.エッセンス
[成分] 部
エタノール 2.0
グリセリン 5.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
メチルパラベン 0.1
ヒアルロン酸 0.1
被験物質(1) 5.0
クエン酸 0.3
クエン酸ナトリウム 0.6
精製水 全量が100部となる量
精製水にヒアルロン酸を溶解させた後、残りの原料を順次加えて攪拌溶解させ、透明のエッセンスを得た。
【0042】
処方例8.ヘアシャンプー
[A成分] 部
N-ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0
ポリオキシエチレン(3)アルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 10.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0
メチルパラベン 0.1
[B成分]
クエン酸 0.1
被験物質(1) 2.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
精製水 全量が100部となる量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃に加温して均一に溶解した後、A成分にB成分を加え、攪拌を続けて室温まで冷却してヘアシャンプーを得た。
【0043】
処方例9.ヘアコンディショナー
[A成分] 部
ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油 1.0
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 1.5
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.0
2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
セタノール 3.2
ステアリルアルコール 1.0
メチルパラベン 0.1
[B成分] 部
被験物質(1) 2.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
精製水 全量が100部となる量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃に加温して均一に溶解した後、A成分にB成分を加え、攪拌を続けて室温まで冷却してヘアコンディショナーを得た。
図1
図2
図3
図4
図5
図6