(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】道路特徴決定装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20220302BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G01B11/00 B
(21)【出願番号】P 2020181278
(22)【出願日】2020-10-29
(62)【分割の表示】P 2019187663の分割
【原出願日】2015-10-19
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】500063228
【氏名又は名称】田中 成典
(73)【特許権者】
【識別番号】502235692
【氏名又は名称】中村 健二
(73)【特許権者】
【識別番号】511121768
【氏名又は名称】今井 龍一
(73)【特許権者】
【識別番号】515027602
【氏名又は名称】窪田 諭
(73)【特許権者】
【識別番号】519113745
【氏名又は名称】Intelligent Style株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】田中 成典
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄平
(72)【発明者】
【氏名】今井 龍一
(72)【発明者】
【氏名】窪田 諭
(72)【発明者】
【氏名】姜 文渊
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-086156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上を走行しながら計測された表面点による三次元計測データに基づいて、道路特徴を決定する道路特徴決定装置であって、
前記三次元計測データに基づいて抽出された道路端部線を、前記走行の軌跡を結ぶ走行線の右側にある右側道路端部線と、左側にある左側道路端部線に分類する分類手段と、
右側道路端部線と左側道路端部線が接する位置を分岐開始位置とし、分岐開始位置から直線を延長し、当該直線が
右側道路端部線または左側道路端部線に接する位置を分岐終了位置とする分岐範囲判断手段と、
分岐開始位置から分岐終了位置まで
双方の分岐の道路中心線または車線中央線を延長して生成し、
前記延長して生成された双方の分岐の車線中央線が交わらない場合には、前記双方の分岐の道路中心線を結ぶように道路中央線または車線中央線を生成する中央線生成手段と、
を備えた道路特徴決定装置。
【請求項2】
コンピュータによって、道路上を走行しながら計測された表面点による三次元計測データに基づいて、道路特徴を決定する道路特徴決定装置を実現するための道路特徴決定プログラムであって、コンピュータを
前記三次元計測データに基づいて抽出された道路端部線を、前記走行の軌跡を結ぶ走行線の右側にある右側道路端部線と、左側にある左側道路端部線に分類する分類手段と、
右側道路端部線と左側道路端部線が接する位置を分岐開始位置とし、分岐開始位置から直線を延長し、当該直線が
右側道路端部線または左側道路端部線に接する位置を分岐終了位置とする分岐範囲判断手段と、
分岐開始位置から分岐終了位置まで
双方の分岐の道路中心線または車線中央線を延長して生成し、
前記延長して生成された双方の分岐の車線中央線が交わらない場合には、前記双方の分岐の道路中心線を結ぶように道路中央線または車線中央線を生成する中央線生成手段として機能させるための道路特徴決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路などを走行しながら計測した表面形状の三次元測定データ等に基づいて、道路の特徴を決定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の形状を計測によって特定し、道路端部、道路中心、車線中心などの道路形状データを得ることができれば、自動車の自動運転、運転補助制御などに利用することができる。
【0003】
たとえば、特許文献1においては、道路の傾斜を正確に測定することのできる方法が開示されている。この方法によれば、道路の場所による傾斜などを測定し、傾斜の変化を連続的に得ることができる。
【0004】
また、特許文献2においては、自動車の速度や操舵角をセンサによって取得し、これらデータに基づいて、道路の曲率を推定するシステムが開示されている。これにより、道路の曲率を推定して、衝突の回避などに用いることができる。
【0005】
さらに、特許文献3においては、道路上の移動を三次元軌跡データとして取得し、道路のカーブ部分において直線と円弧とを緩和曲線(クロソイド曲線)によって接続する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-100809
【文献】特開2012-131496
【文献】特開2014-160064
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の技術においては、道路の傾斜や道路の曲率を特定することができるものの、歩道との境である道路端部を特定したり、道路中心、車線中心などを特定することはできなかった。
【0008】
また、特許文献3では、道路の直線部と曲線部をクロソイド曲線で結ぶことで、より正確に道路特徴を得ることができる。しかし、特許文献3においては、まず、直線部、円弧部を決めてから、クロソイド曲線を決定している。しかし、直線部の始点・終点、円弧部の始点・終点などは明確に決定することが難しく、そのために誤差の大きいクロソイド曲線を決定する可能性があった。
【0009】
さらに、上記各特許文献のいずれにおいても、道路の分岐部分における道路中心線や車線中心線をどのように扱うと好ましいかを検討しておらず、問題としてすら認識されていなかった。
【0010】
この発明は上記の問題のうち少なくとも一つを解決して、精度の良い道路特徴決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のいくつかの独立して適用可能な特徴を以下に示す。
【0012】
(1)(3)この発明に係る道路特徴決定装置は、道路上を走行しながら計測された表面点による三次元計測データに基づいて、道路特徴を決定する道路特徴決定装置であって、前記走行方向に垂直な横断面を所定間隔で設定する横断面設定手段と、前記走行の軌跡を結ぶ走行線と、前記横断面との交点を走行点として決定する走行点決定手段と、前記横断面において、端部の構造物の頂点から水平方向に最小歩道幅より短い所定距離移動した位置における表面点と、前記頂点との間を結ぶ直線を設定し、当該直線に対する垂線が最も長い表面点を構造物下部端点として抽出する構造物下部端点抽出手段と、前記構造物下部端点から前記所定距離の範囲の表面点の平均点を決定し、当該平均点と前記走行点との間を結ぶ直線を設定し、当該直線に対する垂線が最も長い表面点を道路端部点として抽出する道路端部点抽出手段と、各横断面における道路端部点を結んで道路端部を決定する道路端部決定手段とを備えている。
【0013】
したがって、歩道と車道を区別して、道路端部を正確に特定することができる。
【0014】
(2)(4)この発明に係る道路特徴決定装置は、前記横断面における左右の道路端部点の中間点を道路中心点として抽出する道路中心点抽出手段と、各横断面における道路中心点を結んで道路中心線を決定する道路中心決定手段とを備えている。
【0015】
したがって、道路中心線を正確に決定することができる。
【0016】
(5)(7)(15)(17)この発明に係る道路特徴決定装置は、表面点のうち所定の輝度以上の点が所定距離以上連続している点を区分線として抽出する区分線抽出手段と、前記区分線の欠損部分を補完して、区分線を決定する区分線決定手段とを備えている。
【0017】
したがって、車線を区分する区分線を正確に得ることができる。
【0018】
(6)(8)(16)(18)この発明に係る道路特徴決定装置は、区分線と道路端部との中心または隣接する前記区分線の中心に車線中心線を決定する車線中心線決定手段を備えている。
【0019】
したがって、車線中心線を正確に得ることができる。
【0020】
(9)(19)この発明に係る道路特徴決定装置は、区分線決定手段は、区分線を抽出できない区間においては、左右の道路端部間の距離と、最小車線幅とに基づいて、区分線を生成することを特徴としている。
【0021】
したがって、白線や黄色線のない道路においても、車線を推定することができる。
【0022】
(10)(11)(20)(21)この発明に係る道路特徴決定装置は、三次元計測データに基づいて抽出されたカーブ近傍における道路中心線または車線中心線に基づいて、直線および円弧を抽出する直線・円弧抽出手段と、前記円弧の中心から、前記直線に対して垂線を設定し、前記円弧の中心をクロソイド終点における曲率半径の中心として、前記垂線に対する接線角を変化させてクロソイド曲線を生成し、クロソイド終点が前記円弧と合致するクロソイド曲線を決定するクロソイド曲線決定手段と、決定したクロソイド曲線に基づいて、前記直線の端点と円弧の端点を決定し、直線、クロソイド曲線、円弧を接続する接続手段とを備えている。
【0023】
したがって、適切なクロソイド曲線によって、中心線の直線と円弧を接続することができる。
【0024】
(12)(22)この発明に係る道路特徴決定装置は、クロソイド曲線決定手段は、クロソイド終点の前記直線に対する垂直な位置が、前記円弧の終点の前記直線に対する垂直な位置と合致するかどうかによってクロソイド曲線を決定することを特徴としている。
【0025】
したがって、適切なクロソイド曲線を決定することができる。
【0026】
(13)(14)(23)(24)この発明に係る道路特徴決定装置は、三次元計測データに基づいて抽出された道路端部線を、前記走行の軌跡を結ぶ走行線の右側にある右側道路端部線と、左側にある左側道路端部線に分類する分類手段と、右側道路端部線と左側道路端部線が接する位置を分岐開始位置とし、分岐開始位置から直線を延長し、当該直線が道路端部線に接する位置を分岐終了位置とする分岐範囲判断手段と、分岐開始位置から分岐終了位置まで双方の道路中心線または車線中央線を延長して生成し、分岐終了位置においては、双方の道路中心線を結ぶように道路中央線または車線中央線を生成する中央線生成手段とを備えている。
【0027】
したがって、分岐部分においても中心線を接続することができる。
【0028】
「横断面設定手段」は、実施形態においては、ステップS1がこれに対応する。
【0029】
「走行点決定手段」は、実施形態においては、ステップS15、S17がこれに対応する。
【0030】
「構造物下部端点抽出手段」は、実施形態においては、ステップS34~S37がこれに対応する。
【0031】
「道路端部点抽出手段」は、実施形態においては、ステップS43~S47がこれに対応する。
【0032】
「道路端部決定手段」は、実施形態においては、ステップS7がこれに対応する。
【0033】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】この発明の第1の実施形態による道路特徴決定装置の機能ブロック図である。
【
図2】道路特徴決定装置のハードウエア構成である。
【
図3】道路端部・中心決定処理のフローチャートである。
【
図9】道路端点抽出処理を説明するための図である。
【
図10】第2の実施形態による道路特徴決定装置の機能ブロック図である。
【
図11】区分線・車線中心線決定処理のフローチャートである。
【
図12】区分線抽出処理を説明するための図である。
【
図13】他の例による区分線決定処理を説明するための図である。
【
図14】第3の実施形態による道路特徴決定装置の機能ブロック図である。
【
図18】平面における直線の接続を説明するための図である。。
【
図19】縦断面における直線の接続を説明するための図である。。
【
図20】直線と円弧の接続を説明するための図である。
【
図21】直線と円弧の接続を説明するための図である。
【
図22】円弧と円弧の接続を説明するための図である。
【
図23】第4の実施形態による道路特徴決定装置の機能ブロック図である。
【
図25】分岐部特定・中央線補完処理のフローチャートである。
【
図26】分岐部特定・中央線補完処理のフローチャートである。
【
図27】分岐部における中央線の接続を説明するための図である。
【
図28】分岐部における中央線の接続を説明するための図である。
【
図29】分岐部における中央線の接続を説明するための図である。
【
図30】交差点における中央線の接続を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
1.第1の実施形態
1.1全体構成
図1に、この発明の一実施形態による道路特徴決定装置の機能ブロック図を示す。
【0036】
この実施形態における道路特徴決定装置は、道路上を走行しながら計測された表面点による三次元計測データを受けて、道路端部および道路中心の決定を行う。
【0037】
横断面設定手段2は、三次元計測データにおいて、走行方向に垂直な横断面を所定間隔で設定する。走行点決定手段4は、走行の軌跡を結ぶ走行線と、横断面との交点を走行点として決定する。
【0038】
構造物下部端点抽出手段6は、横断面において、端部の構造物の頂点から水平方向に最小歩道幅より短い所定距離移動した位置における表面点を見いだす。見いだした表面点と、前記頂点との間を結ぶ直線を設定する。さらに、当該直線に対する垂線が最も長い表面点を構造物下部端点として抽出する。
【0039】
道路端部点抽出手段8は、構造物下部端点から所定距離の範囲の表面点の平均点を決定し、当該平均点と前記走行点との間を結ぶ直線を設定する。さらに、当該直線に対する垂線が最も長い表面点を道路端部点として抽出する。このようにして、各横断面において、道路端部点が抽出される。
【0040】
道路端部決定手段10は、各横断面における道路端部点を接続して道路端部線を生成し、道路端部を決定する。これにより、道路端部の形状を連続的に得ることができる。
【0041】
さらに、道路中心点抽出手段12は、各横断面における左右の道路端部点の中間点を道路中心点として抽出する。道路中心決定手段14は、各横断面における道路中心点を結んで道路中心線を決定する。
【0042】
1.2ハードウエア構成
図2に、道路特徴決定装置のハードウエア構成を示す。CPU30には、メモリ32、ディズプレイ34、ハードディスク36、CD-ROMドライブ38、キーボード/マウス40が接続されている。
【0043】
ハードディスク36には、オペレーティングシステム42、道路特徴決定プログラム44が記録されている。道路特徴決定プログラム44は、オペレーティングシステム42と協働してその機能を発揮するものである。
【0044】
これらプログラムは、DVD-ROM46に記録されていたものを、CD-ROMドライブ38を介して、ハードディスク36にインストールしたものである。なお、インターネットを介して、サーバ装置(図示せず)からダウンロードしてインストールしたものであってもよい。
【0045】
1.3道路端部・中心決定処理
1.3.1全体フローチャート
図3に、道路特徴決定プログラム44の道路端部・中心決定処理における全体フローチャートを示す。
【0046】
CPU30は、三次元計測データをDVD-ROMなどから読み込んで、ハードディスク36に記録する。三次元計測データは、自動車や無人航空機(UAV)などにレーダ測距装置を積載し、走行しながら計測して得られたものであり、道路近傍の表面形状を示すデータである。また、この三次元計測データには、自動車の位置を時間的変化にて示す走行点のデータが含まれる。三次元点群データとして、たとえば、MMS点群データを用いることができる。
【0047】
CPU30は、ハードディスク36から三次元計測データを読み出し、所定間隔にて横断面を設定する(ステップS1)。続いて、CPU30は、設定した各横断面において、道路の左側端部点を抽出する(ステップS3)。さらに、設定した各横断面において、道路の右側端部点を抽出する(ステップS4)。次に、CPU30は、各横断面において、左側端部点と右側端部点の中心を中心点として抽出する(ステップS5)。
【0048】
CPU30は、すべての横断面について、左端部点、右端部点、中心点を抽出すると、これらを接続して、左端部線、右端部線、中心線を決定する(ステップS6)。
【0049】
以下、各処理ごとに詳細を説明する。
【0050】
1.3.2横断面の設定
図4に、横断面設定処理(ステップS1)の詳細フローチャートを示す。
図5に、三次元計測データを模式的に示した例を示す。多数の計測点によって、道路の表面形状が表されている。この実施形態では、各点の測定データとして、X、Y、Zの三次元座標、反射強度、計測時刻が含まれる。さらに、車両の走行位置(走行点)のX、Y、Zの三次元座標、計測時刻も含まれる。なお、高さ方向のZ座標は、海抜として得られる。
【0051】
CPU30は、走行点を計測時刻順に線で結び、走行線を生成する(ステップS11~S14)。次に、CPU30は、各測定点から走行線に対して垂線を引き、交点を生成する(ステップS17)。CPU30は、走行線の起点から前記交点までの距離に基づいて、所定距離ごと(たとえば10cmごと)に各測定点を1つのグループとする(ステップS19)。グループ化した測定点により、横断面(走行線に垂直な平面)の測定点が得られることになる。また、走行線が横断面と接する点を走行点として得る。
【0052】
図6に、横断面における測定点の例を示す。この例では、道路部分と歩道部分があり、端部に構造物がある場合が示されている。ただし、測定データにおいては、直接的には、
図6に示す形状がわかるのみである。したがって、CPU30は、いずれの部分が道路部分であり、いずれの部分が歩道部分であるかを、後述の道路端点の抽出処理によって得る。
【0053】
なお、この実施形態では、10cmごとに測定点をグループ化している。しかし、走行線に沿って、所定の間隔で横断面を設定し、当該横断面に対する垂直距離が5cm以内の測定点を垂直移動して横断面に移すようにしてもよい。
【0054】
1.3.3道路端点の抽出
図7、
図8に、道路端点抽出処理(ステップS3、S4)の詳細フローチャートを示す。CPU30は、各横断面において左側端部の頂点Aを抽出する(
図9A参照)。さらに、この頂点から内側に所定距離(たとえば0.5m)だけX方向に移動した位置にある点Bを抽出する。CPU30は、この頂点Aと点Bを結ぶ直線を設定する(ステップS31)。
【0055】
CPU30は、この頂点Aと点Bの範囲内にある各計測点につき、当該直線に対する垂線を生成し、その距離を算出する(ステップS34)。そして、最も垂直距離の大きい計測点を見いだし、構造物下部の特徴点Cとする(ステップS35、S36、S37)。
【0056】
上記のようにして、左側の特徴点Cが見いだされる。CPU30は、同様にして、右側の特徴点Cも見いだす。
【0057】
次に、CPU30は、
図9B、
図9Cに示すように、特徴点CからX方向に所定距離(たとえば0.5m)以内、Z方向に所定距離(たとえば0.1m)以内の計測点を抽出し、そのX、Y、Z座標の平均値を算出し、仮点Dを求める(ステップS39)。
【0058】
CPU30は、仮点Dと走行点とを直線で結ぶ(ステップS40)。次に、CPU30は、仮点Dと走行点Eの間にある各計測点につき(ステップS43)、当該直線との垂直距離を算出する(ステップS44)。最も垂直距離の大きい計測点を見いだし、道路端点Fとする(ステップS45、S46、S47)。
図9では、左側の道路端点Fの決定について説明しているが、右側の道路端点Fについても同様にして決定する。
【0059】
1.3.4道路中心点の決定
続いて、CPU30は、
図9Dに示すように、各横断面において、左側道路端点と右側道路端点の座標を平均し、道路中心点G(両点のX座標の平均値を持つ)を算出する(
図3のステップS5)。
【0060】
以上の各処理により、各横断面において、左側道路端点、右側道路端点、道路中心点を得ることができる。
【0061】
1.3.5道路端部線・道路中心線の決定
CPU30は、各横断面における左側道路端点、右側道路端点を線で結び、左側道路端部線、右側道路端部線を得る。さらに、道路中心点を線で結び、道路中心線を得る(ステップS7)。
【0062】
1.4その他
(1)上記実施形態では、左右の道路端部線に加えて、道路中心線を得るようにしている。しかし、道路端部線、道路中心線のいずれか一方のみを得るようにしてもよい。
【0063】
(2)上記実施形態では、道路の両端に歩道がある場合について説明した。歩道がない道路の場合には、特徴点Cをそのまま道路端部点として抽出すればよい。また、仮点DのZ座標がが走行点EのZ座標より小さい場合や、仮点Dと走行点EとのZ座標の差が、所定値(たとえば1cm)を下回っている場合には、歩道がないと判断すればよい。
【0064】
(3)上記実施形態では、道路端部線、道路中心線を決定するようにしている。これに加えて、あるいはこれに代えて、道路の横断勾配を決定するようにしてもよい。横断面において、左右の道路端部線を結ぶ直線の勾配を算出することにより決定することができる。
【0065】
(4)上記実施形態では、道路特徴決定装置をスタンドアローンのPCとして構成している。しかし、サーバ装置として構成してもよい。この場合、三次元計測データは、インターネットなどを介して接続された端末装置から、道路特徴決定装置であるサーバ装置に送信するようにすればよい。また、決定された道路端部線、道路中心線は、サーバ装置から端末装置に対して送信する。
【0066】
(5)
図9A、
図9Bにおいて、0.5m内側に直線を引くための点を設けている。しかし、歩道の幅よりも小さい長さであれば、これより大きくても小さくてもよい。
【0067】
(6)上記変形例は、互いに組み合わせて実施することが可能である。また、その本質に反しない限り、本実施形態および変形例を、他の実施形態においても適用することができる。
【0068】
2.第2の実施形態
2.1全体構成
図10に、この発明の第2の実施形態による道路特徴決定装置の機能ブロック図を示す。
【0069】
この実施形態における道路特徴決定装置は、道路上を走行しながら計測された表面点による三次元計測データを受けて、車線区分線および車線中心線の決定を行う。
【0070】
区分線抽出手段20は、三次元計測データに基づいて、反射強度(輝度)が所定値以上で、所定長さ継続する箇所を車線区分線として抽出する。区分線決定手段22は、断続する車線区分線に基づいて車線区分線の欠損部分を補完し、区分線を決定する。
【0071】
道路端部線決定手段26は、三次元計測データに基づいて、道路の端部線を決定する。道路端部線決定手段26としては、第1の実施形態による手法を用いることができる。区分線決定手段22は、前記輝度差による車線区分線が抽出されない場合、道路端部線に基づいて得られた道路幅に基づき、車線区分線を決定する。
【0072】
車線中心線決定手段24は、車線区分線と道路端部線に基づいて、車線中心線を決定する。
【0073】
このようにして決定された車線中心線は、自動車の自動運転制御などに用いることができる。
【0074】
2.2ハードウエア構成
この実施形態による道路特徴決定装置のハードウエア構成は、
図2と同様である。
【0075】
2.3区分線決定・車線中心決定処理
道路特徴決定プログラム44の車線区分線・車線中心線決定処理におけるフローチャートを示す。
【0076】
CPU30は、三次元計測データの各点について、所定の輝度より大きい部分を抽出する。道路に車線を区分するための白線や黄色線がひかれていると、この部分での反射が大きくなり輝度が周りよりも高くなる。したがって、所定長さ以上にわたって輝度の高い部分を抽出することにより車線区分線を抽出することができる。
【0077】
たとえば、
図12Bに示すように、白線や黄色線を抽出することができる。
図12Bにおいて、断続的な車線区分領域Rが抽出されている。横断面にて示すと、
図12Aのようになる。なお、領域REのように輝度の高い部分が所定以上の長さ継続しない場合には、抽出しない。
【0078】
図12Bに示すように、白線もしくは黄色線の車線区分領域Rが検出されると(ステップS81)、CPU30は、領域Rの道路幅方向に関する中心を車線区分点とする。CPU30は、各横断面における車線区分点をつないで、車線区分線DLを決定する(ステップS82)。
【0079】
なお、白線や黄色線が断続する場合、白線や黄色線がない部分においては、近傍における道路端部から白線・黄色線までの距離dの位置に白線や黄色線があるものとして車線区分線DLを決定する(
図12C参照)。
【0080】
白線や黄色線が引かれておらず、これらを抽出できない場合もある。この場合、CPU30は、道路幅Dに基づき、次のようにして車線区分線DLを決定する(ステップS83)。まず、三次元計測データに基づいて、
図3の処理に基づいて、各横断面における左右の道路端部点を決定する。さらに、この左右の道路端部点に基づき、道路幅Dを算出する(
図13A参照)。なお、道路端部点、道路幅Dが与えられている場合には、これを用いればよい。
【0081】
CPU30は、道路幅Dと予め定められた最小車線幅dとに基づいて、D/dを算出し、少数以下を切り捨てて、車線数Cを算出する。たとえば、道路幅Dが8.5mであり、設定された最小車線幅dが2.75mであれば、D/dは3.09となる(
図13B参照)。これを切り捨てて、車線数Cとして3が求まることになる。なお、最小車線幅dは、道路の種類(一般道路か高速道路か)によって変えるようにしてもよい。
【0082】
次に、CPU30は、道路幅Dを車線数で除して車線幅を算出し、これによって、車線区分点を決定する(
図13C参照)。各横断面の車線区分点をつないで、車線区分線を決定する。
【0083】
以上のようにして、白線や黄色線がある場合にはこれに基づいて車線区分線を決定し、ない場合には道路幅Dに基づいて車線区分線を決定する。車線区分線を決定すると、CPU30は、
図13Dに示すように、各車線の中心に車線中心線を決定する(ステップS84)。
【0084】
2.4その他
(1)上記実施形態では、白線・黄色線のない部分について、近傍の白線・黄色線がある部分における道路端部からの距離dに基づいて、車線区分線を補完するようにしている。しかし、白線・黄色線のある部分における車線区分線を接続して補完を行うようにしてもよい。
【0085】
(2)上記変形例は、互いに組み合わせて実施することが可能である。また、その本質に反しない限り、本実施形態および変形例を、他の実施形態においても適用することができる。
【0086】
3.第3の実施形態
3.1全体構成
図14に、この発明の第3の実施形態による道路特徴決定装置の機能ブロック図を示す。
【0087】
この実施形態における道路特徴決定装置は、道路上を走行しながら計測された表面点による三次元計測データを受けて、車線中心線の直線、円弧とクロソイド曲線を決定する。
【0088】
直線・円弧抽出手段30は、三次元計測データを受けて、車線中心線の直線と円弧を抽出する。クロソイド曲線決定手段32は、前記円弧の中心から、前記直線に対して垂線を設定し、前記円弧の中心をクロソイド終点における距離率半径の中心として、前記垂線に対する接線角を変化させてクロソイド曲線を生成し、クロソイド終点が前記円弧と合致するクロソイド曲線を決定する。接続手段34は、決定したクロソイド曲線に基づいて、前記直線の端点と円弧の端点とを決定し、直線、クロソイド曲線、円弧を接続する。
【0089】
以上のようにして、カーブ部分におけるクロソイド曲線を含む曲がり度合いを正確に決定することができる。
【0090】
3.2ハードウエア構成
この実施形態による道路特徴決定装置のハードウエア構成は、
図2と同様である。
【0091】
3.3曲線部決定処理
図15~
図17に、道路特徴決定プログラム44の曲線部決定処理を含む中心線接続処理におけるフローチャートを示す。CPU30は、三次元計測データに基づいて、道路中心点または車線中心点を決定する(ステップS91)。これは、たとえば、第1の実施形態、第2の実施形態に示す処理によって実現することができる。
【0092】
次に、CPU30は、ハフ変換によって直線部分を抽出する(ステップS92)。この直線として抽出された中心点を判断対象から取り除く(ステップS93)。続いて、CPU30は、RANSAC法によって円弧部分を抽出する(ステップS94)。さらに、ノイズを除去するため、各線のグループ化を行い、点数の少ないグループを削除する(ステップS95)。
【0093】
続いて、CPU30は、各線について以下の処理を行う。まず、CPU30は、処理対象とする線が、直線かどうかを判断する(ステップS97)。直線であれば、その勾配(縦断面における角度)を算出する(ステップS98)。円弧であれば、円の中心点座標と半径を算出する(ステップS99)。
【0094】
すべての線について上記のように直線の勾配、円の中心座標・半径を算出すると、CPU30は、各線を対象として以下の処理を実行する。まず、CPU30は、処理対象とする線が直線であるかを判断する(ステップS103)。対象線が直線であれば、隣接する次の線が直線であるかを判断する(ステップS104)。次の線が直線であれば、直線と直線が連続していることになるので、直線間の補完処理を行う(ステップS106)。
【0095】
直線間の補完処理を、
図18A、B、Cに示す。まず、CPU30は、両直線を延長してその交点を求める(
図18A)。さらに、一方の直線の端点から、垂線を引く。また、両直線の交点から、両直線のなす角度を2等分する直線を引く。この垂線と2等分線との交わる点を求める(
図18B)。この交点を中心点として、円弧を描く(
図18C)。他方の直線とこの円弧が交わる点まで、円弧を設ける。なお、他方の直線と円弧が交わらない場合、他方の直線と円弧が交わるように他方の直線を伸ばす。このようにして、XY平面において、直線と直線の接合部を補完する。
【0096】
また、YZ平面(縦断面)においても、直線と直線の接合部の補完を行う。CPU30は、縦断面において両直線を延長し、その交点を求める(
図19A)。さらに、その交点からdだけ離れた点を通り、両直線に接する放物線を生成する(
図19B)。
【0097】
また、対象線が直線であり(ステップS103がYES)、次の線が曲線である場合には(ステップS104がNO)、直線と曲線をクロソイド曲線によって接合するための補完を行う(ステップS107)。
【0098】
図20Aに示すように、直線部と円弧とが接しない。これは、道路のカーブにおいては、直線と円弧が接続されるのではなく、その間にクロソイド曲線が設けられるからである。そこで、CPU30は、ステップS107において、このクロソイド曲線を推定するようにしている。
【0099】
まず、CPU30は、
図20Bに示すように、クロソイド曲線のパラメータを変化させながら、最も適切なクロソイド曲線を決定する。さらに、
図20Cに示すように、決定したクロソイド曲線によって、直線と円弧を接続する。
【0100】
図21A、B、Cに、適切なクロソイド曲線を示すための処理の詳細を示す。まず、CPU30は、円弧の中心Mから直線に対して垂線を引く(
図21A)。次に、
図21Bに示すように、直線上の点をクロソイド開始点とし、垂線との角度τの位置をクロソイド終点としてクロソイド曲線を生成する。この際、角度τを0~90まで0.01間隔で変えながらクロソイド曲線を生成する。
【0101】
CPU30は、角度τを変えて生成したクロソイド曲線のクロソイド終点のクロソイド開始点からの距離Yと、直線から円弧までの距離dとが合致するクロソイド曲線を見いだす。さらに、
図21Cに示すように、見いだしたクロソイド曲線に基づいて、クロソイド開始点Sを直線の終点とし、当該クロソイド曲線によって直線と円弧とを接合する。
【0102】
また、対象線が曲線であり(ステップS103がNO)、次の線が曲線である場合には(ステップS104がNO)、曲線と曲線を接合するための補完を行う(ステップS108)。処理の詳細を、
図22に示す。
【0103】
CPU30は、円弧と円弧の中心点を結ぶ直線を設定する。さらに、この直線を、半径の小さい方の円弧の側に延長し、円弧からDの位置に点を設定する。Dは、以下の式によって決定する。
【0104】
D=元直線距離×小さい円半径/(大きい円半径-小さい円半径)
CPU30は、設定した点から2つの円弧に接する直線を引く。この直線により、円弧と円弧を接続する。
【0105】
3.4その他
(1)上記実施形態では、車線中心線の接合について説明した。しかし、道路中心線、道路端部線についても同様に適用することができる。
【0106】
(2)上記変形例は、互いに組み合わせて実施することが可能である。また、その本質に反しない限り、本実施形態および変形例を、他の実施形態においても適用することができる。
【0107】
4.第4の実施形態
4.1全体構成
図23に、この発明の第4の実施形態による道路特徴決定装置の機能ブロック図を示す。
【0108】
この実施形態における道路特徴決定装置は、分岐部分における中心線の処理を行う。分類手段40は、道路端部線を、走行線の右側にある右側道路端部線と、走行線の左側にある左側道路端部線に分類する。分岐範囲判断手段42は、右側道路端部線と左側道路端部線が接する位置を分岐開始位置とする。さらに、分岐開始位置から直線を延長し、当該直線が道路端部線に接する位置を分岐酋長位置とする。
【0109】
中央線生成手段44は、分岐開始位置から分岐終了位置まで双方の道路中心線または車線中央線を延長する。さらに、分岐終了位置に置いて、双方の道路中心線を結ぶように道路中央線または車線中央線を生成する。
【0110】
4.2ハードウエア構成
この実施形態による道路特徴決定装置のハードウエア構成は、
図2と同様である。
【0111】
4.3分岐処理
図24に、道路特徴決定プログラムの分岐処理のフローチャートを示す。CPU30は、まず、分岐部を特定する(ステップS110)。さらに、特定した各分岐部について、分岐区間を特定する(ステップS112)。続いて、分岐区間において、中央線を接続する(ステップS113)。このようにして、分岐部分における中央線の補完を行うことができる。
【0112】
図25、
図26に、ステップS112、S113の詳細を示す。CPU30は、各道路端部線につき走行線の右側にあるか左側にあるかを判断する(ステップS120)。
図27Aに示すように、右側であるか左側であるかを記録する。次に、各道路端部線を、繋がっているもの同士でグループ化する(ステップS121)。
【0113】
CPU30は、上記で生成した各クラスタについて次の処理を行う。まず、クラスタ内に右側道路端部線と左側道路端部線の双方があるかどうかを判断する(ステップS123)。
図27Bに示すように、クラスタ2には、双方があるので、分岐であると判断することができる。さらに、右側と左側の交差部分Z(
図27C参照)を分岐開始点とする(ステップS124)。以上のようにして分岐を抽出して、開始点を決定することができる。
【0114】
CPU30は、各分岐について、分岐部で車線数が変化するかどうかを判断する(ステップS130)。たとえば、
図28Aに示すように、分岐部において車線数が変わらなければ、中心線は上手く引かれているので、特段の処理を行わない。しかし、
図28Bや
図28Cに示すように、分岐部において車線数が変わっていれば、CPU30は、以下に示すように中心線の補完を行う。
【0115】
まず、分岐開始点Zから、
図29A、
図29Bに示すように、直線の道路境界線を伸ばす(ステップS131)。さらに、CPU30は、伸ばした直線と他の道路境界線との交点Qを求め、分岐終了点とする(ステップS132)。
【0116】
CPU30は、分岐開始点Zから分岐終了点Qまでの分岐部において、双方の中央線を延長する(ステップS134)。分岐終了点Qでは、両方の中心線の端点を直線Kで結ぶ(
図29A参照)。なお、
図29Bのように、中央線を延長しただけで両方の中央線が接続される場合には、そのままとする。
【0117】
また、
図30に示すように、交差点においても、道路中央線、車線中央線が途切れるが、上記と同じ手法にて接続を行うことができる。
【0118】
4.その他
その本質に反しない限り、本実施形態を、他の実施形態においても適用することができる。