(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】リニアモータ及び圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
H02K41/03 A
(21)【出願番号】P 2021003351
(22)【出願日】2021-01-13
(62)【分割の表示】P 2017054410の分割
【原出願日】2017-03-21
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中津川 潤之介
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-250260(JP,A)
【文献】特開2008-289324(JP,A)
【文献】特開2004-56864(JP,A)
【文献】国際公開第2017/25998(WO,A1)
【文献】特開2016-101019(JP,A)
【文献】特開2006-320035(JP,A)
【文献】特開2009-207240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁極子及び巻線を有する電機子と、
永久磁石磁極及び前記永久磁石磁極を保持する磁石保持部を有する界磁子と、を備え、 前記電機子又は前記界磁子のいずれか一方を固定子、他方を可動子とするリニアモータであって、
前記可動子の移動方向に沿う方向を第1方向、前記第1方向に垂直な前記界磁子の幅方向に沿う方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な前記界磁子の厚さ方向に沿う方向を第3方向とした場合に、
前記磁石保持部は、前記永久磁石磁極が前記第3方向に嵌入される嵌入部を有する磁極フレームと、前記磁極フレームの前記第2方向における両端部である両側端部のそれぞれに設けられ前記第3方向から前記永久磁石磁極の端面に当接するフレーム側端部取付部材と、を有するリニアモータにおいて
前記フレーム側端部取付部材は、
前記永久磁石磁極の前記第3方向における一方の端面側で前記第2方向に沿って前記界磁子の側端部から中央部に向かって突き出した第1突設部と、前記永久磁石磁極の前記第3方向における他方の端面側で前記第2方向に沿って前記界磁子の側端部から中央部に向かって突き出した第2突設部と、前記第3方向に沿って設けられ前記第1突設部と前記第2突設部とを連結する連結部とが一体に構成されて、前記可動子の前記第1方向における移動を案内するガイドレールを構成
し、前記ガイドレールのレール面が前記第1突設部と前記第2突設部とに構成され、
前記フレーム側端部取付部材と前記磁極フレームとは締りばめにより固定されると共に、前記第3方向に沿って前記フレーム側端部取付部材と前記磁極フレームとに跨って設けられたノックピン又はネジによって、前記フレーム側端部取付部材の前記磁極フレームからの脱落を防止する脱落防止構造が構成されることを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のリニアモータにおいて、
前記フレーム側端部取付部材は、前記第1突設部が前記永久磁石磁極の前記第3方向における一方の端面側で前記永久磁石磁極に当接し、前記第2突設部が前記永久磁石磁極の前記第3方向における他方の端面側で前記永久磁石磁極に当接することを特徴とするリニアモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のリニアモータにおいて、
前記脱落防止構造は前記ネジによって構成され、
前記フレーム側端部取付部材は、前記ネジの外径よりも大きな内径を有して前記ネジが挿通する挿通孔を備え、
前記ネジは、前記磁極フレームに形成されたネジ穴に螺合されていることを特徴とするリニアモータ。
【請求項4】
請求項1に記載のリニアモータにおいて、
前記永久磁石磁極と前記磁極フレームの前記嵌入部とは、前記第2方向における寸法が前記第3方向における一方の端面側から他方の端面側に向かうにつれて小さくなるテーパ部を有し、
前記フレーム側端部取付部材は、前記永久磁石磁極の前記第2方向における寸法が大きな端面側で前記永久磁石磁極の端面に当接することを特徴とするリニアモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のリニアモータにおいて、
前記脱落防止構造は前記ネジにより構成され、
前記ネジは、前記永久磁石磁極の前記第2方向における寸法が大きな端面側から前記磁極フレーム及び前記フレーム側端部取付部材に締結されていることを特徴とするリニアモータ。
【請求項6】
シリンダと前記シリンダの内側で往復動するピストンとを備えると共に、前記ピストンを駆動する駆動モータとして請求項1乃至5のいずれか一項に記載したリニアモータを備えたことを特徴とする圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
推力発生機構を有するリニアモータは、回転機を直線状に切り開いた形状をしており、固定子と可動子の各々に構成された磁極の間に働く磁力によって、可動子に推力を発生させる。
【0003】
本技術分野の背景技術として、特開2008-289324号公報(特許文献1)及び国際公開番号2011/155022A1(特許文献2)に記載されたリニアモータが知られている。
【0004】
特許文献1のリニアモータでは、磁石保持フレームの複数の磁石保持穴に永久磁石を嵌め込んで単位長さのレールを構成し、この単位長さのレールを継ぎ足して長いレールを構成している。そして可動子がこの長いレールに沿って駆動される。磁石保持フレームの両縁部には、磁石保持フレームを上下両面から挟むようにフレーム縁部挟持板が設けられ、上面側のフレーム縁部挟持板と下面側のフレーム縁部挟持板とを、上面側から下面側に向けて磁石保持フレームを挿通するボルトで締結している。これにより、特許文献1のリニアモータでは、永久磁石は磁石保持穴から浮き上がることなく、磁石保持フレームに確実に固定される(段落0024,0036-0043、
図4参照)。
【0005】
特許文献2のリニアモータでは、平板状の高透磁率部材の上下表面にそれぞれ複数の永久磁石を一体となるように設置して可動子を構成し、可動子の両端縁部に、可動子を機械的に固定する可動子保持部材を設けている。可動子保持部材は、上表面側の永久磁石の端縁部が嵌入される第1切り欠き部と、高透磁率部材の端縁部が嵌入される第2切り欠き部と、下表面側の永久磁石の端縁部が嵌入される第3切り欠き部と、を有する。可動子保持部材は、その側面(各永久磁石及び高透磁率部材が嵌入される側とは反対側の面)にボルトが挿通する挿通孔が形成されており、挿通孔を挿通するボルトが高透磁率部材の両端縁部に螺刻されたねじ穴に締結されることにより、高透磁率部材に固定されている。これにより、特許文献2のリニアモータでは、高透磁率部材の上下表面の永久磁石を可動子保持部材の第1切り欠き部と第3切り欠き部とで機械的に保持し、永久磁石が可動子から外れるのを防止している(段落0055-61、
図14-
図15C参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-102695号公報
【文献】国際公開番号2011/155022A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のリニアモータは、上面側のフレーム縁部挟持板と下面側のフレーム縁部挟持板とを、上面側から下面側に向けて磁石保持フレームを挿通するボルトで締結して、両フレーム縁部挟持板を磁石保持フレームに固定している。一方、特許文献2のリニアモータは、可動子保持部材の側面からボルトを締結している。
【0008】
特許文献1及び特許文献2では、可動子のガイドレールの構成について開示が無く、ガイドレールの構成について十分な配慮が成されていない。
【0009】
本発明の目的は、リニアモータに好適な軸受とそのガイドレールの構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のリニアモータは、
磁極子及び巻線を有する電機子と、
永久磁石磁極及び前記永久磁石磁極を保持する磁石保持部を有する界磁子と、を備え、 前記電機子又は前記界磁子のいずれか一方を固定子、他方を可動子とするリニアモータであって、
前記可動子の移動方向に沿う方向を第1方向、前記第1方向に垂直な前記界磁子の幅方向に沿う方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な前記界磁子の厚さ方向に沿う方向を第3方向とした場合に、
前記磁石保持部は、前記永久磁石磁極が前記第3方向に嵌入される嵌入部を有する磁極フレームと、前記磁極フレームの前記第2方向における両端部である両側端部のそれぞれに設けられ前記第3方向から前記永久磁石磁極の端面に当接するフレーム側端部取付部材と、を有するリニアモータにおいて
前記フレーム側端部取付部材は、前記永久磁石磁極の前記第3方向における一方の端面側で前記第2方向に沿って前記界磁子の側端部から中央部に向かって突き出した第1突設部と、前記永久磁石磁極の前記第3方向における他方の端面側で前記第2方向に沿って前記界磁子の側端部から中央部に向かって突き出した第2突設部と、前記第3方向に沿って設けられ前記第1突設部と前記第2突設部とを連結する連結部とが一体に構成されて、前記可動子の前記第1方向における移動を案内するガイドレールを構成し、前記ガイドレールのレール面が前記第1突設部と前記第2突設部とに構成され、
前記フレーム側端部取付部材と前記磁極フレームとは締りばめにより固定されると共に、前記第3方向に沿って前記フレーム側端部取付部材と前記磁極フレームとに跨って設けられたノックピン又はネジによって、前記フレーム側端部取付部材の前記磁極フレームからの脱落を防止する脱落防止構造が構成される。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明の圧縮機は、
シリンダと前記シリンダの内側で往復動するピストンとを備えると共に、前記ピストンを駆動する駆動モータとして上記リニアモータを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上下のガイドレール面間距離を高精度かつ一定に保つことができ、リニアモータに好適な軸受とそのガイドレールの構成を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実施例1に係るリニアモータの可動子(界磁子)の斜視図。
【
図3】実施例1に係るリニアモータの前後方向に対して垂直な断面図。
【
図4A】実施例1に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面を示す模式図。
【
図4B】実施例1の変更例(変更例1)に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面を示す模式図。
【
図4C】実施例1の変更例(変更例2)に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面を示す模式図。
【
図4D】実施例1の変更例(変更例3)に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面を示す模式図。
【
図5A】実施例2に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面模式図。
【
図5B】実施例2の変更例(変更例4)に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面模式図。
【
図6】実施例3に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面模式図。
【
図7】実施例3の参照例に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面模式図。
【
図8】実施例4に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面模式図。
【
図9A】本発明に係るリニアモータを用いた圧縮機の実施例(実施例5)を示す斜視図。
【
図9B】本発明に係るリニアモータを用いた圧縮機の実施例(実施例5)を示す要部断面図。
【
図11】実施例7に係る車両用エアサスペンションの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。複数の実施例及び各実施例の変更例において、同様の構成要素には同様の符号を付し、また、同様の説明は繰り返さない。説明のため、互いに直交する前後、左右、及び上下方向という語を用いるが、必ずしも重力方向は下向きである必要はなく、上、右、左、前若しくは後方向又はそれ以外の方向に平行にできる。
【0015】
なお、以下で説明する各実施例及び各変更例では、前後方向は可動子2の駆動方向に一致し、上下方向は永久磁石磁極210の磁極面(S,N極が生じる面)に垂直な方向に一致する。また、可動子2は前後方向を長手方向としており、左右方向を可動子2の幅方向と呼んで説明する場合がある。或いは、可動子2の移動方向(前後方向)に沿う方向を第1方向、第1方向に垂直な界磁子の幅方向(左右方向)に沿う方向を第2方向、第1方向及び第2方向に垂直な界磁子の厚さ方向(上下方向)に沿う方向を第3方向として説明する場合もある。
【0016】
[実施例1]
図1乃至
図4Aを参照して、本発明の実施例1に係るリニアモータについて、説明する。
図1は、実施例1に係るリニアモータの斜視図である。
図2は、実施例1に係るリニアモータの可動子(界磁子)の斜視図である。
図3は、実施例1に係るリニアモータの前後方向に対して垂直な断面図である。
【0017】
リニアモータ100は、固定子1および可動子2からなる。以降の説明では、電機子側を地面に対して静止させる固定子、界磁子側を地面に対して前後方向に移動させる可動子として説明するが、固定子と可動子とは逆の関係であっても良い。
【0018】
≪固定子1≫
固定子1は、電機子3と、電機子3の前側及び後側それぞれに配置された端部部材4と、巻線6と、を備える。電機子3は、軟磁性体のコア300及びスペーサ310を有し、複数のコア300は軟磁性体のスペーサ310で繋いで構成されている。すなわち複数のコア300はスペーサ310を間に挟みながら前後方向に連結されている。これにより、複数のコア300及びスペーサ310を含む磁路を形成できるようにしている。コア300には上下に磁極歯301があり、それぞれ巻線6が巻回されている。
【0019】
電機子3は、1つ又は2つ以上を前後方向に並べることができる。また、端部部材4は、最も前側の電機子3の前側及び/又は最も後側の電機子3の後側に設けることができる。
【0020】
≪コア300≫
コア300は、可動子2を挟んで対向配置された磁極歯301と、これら2つの磁極歯301をつなぐ腕部302とを有する。磁極歯301及び腕部302は、例えば、電磁鋼板を前後方向に積層して構成できる。磁極歯301には巻線6を巻回している。
【0021】
腕部302は、巻線6及び可動子2の左右方向における両外側を上下方向に延設された軟磁性体であり、永久磁石磁極210から発せられ、磁極歯301に進入した磁束を、この磁極歯301に対向する別の磁極歯301に導くことができる。これにより、コア300は、磁極歯301と、この磁極歯301に対向する永久磁石磁極210と、この永久磁石磁極210に前述の磁極歯301が対向する側とは反対側の面で対向する磁極歯301と、腕部302と、を含む磁路を形成できる。
【0022】
≪スペーサ310≫
スペーサ310は、隣接するコア300を流れる磁束を通過させることができる。スペーサ310は、例えば、電磁鋼板を前後方向に積層して構成できる。このため、2つのコア300の間にスペーサ310を配した電機子3は、永久磁石磁極210の前後方向間隔等の設計に応じて、隣り合う2つのコア300及び永久磁石磁極210を含む磁路を形成できる。
【0023】
≪端部部材4≫
端部部材4は、軟磁性体又は非磁性体で形成することができる。端部部材4は、前後方向に延在する貫通ボルト等(図示せず)の固定部材により自身とコア300、及びスペーサ310とともに固定されている。また、端部部材4には軸受5等の支持部材が配置され、可動子2を支持している。
【0024】
≪可動子2≫
可動子2は、前後方向を長手方向としている。可動子2は、前後方向に複数の永久磁石を固定する非磁性体または軟磁性体からなる磁極フレーム200と、磁極フレーム200に設けられた永久磁石磁極210と、磁極フレーム200の左右方向端部(側端部)に設けられた挟持部材220と、を有している。 本実施例の可動子2は、永久磁石磁極210を10個固定した態様だが、10個以上でも以下でも良い。永久磁石磁極210はそれぞれ上下方向に磁化し、隣り合う磁極210の上面は、N極とS極とが、交互になるように配されている。
【0025】
また、可動子2は、2つの磁極歯301の間、かつ2つの腕部302の間の空間に配されている。なお、永久磁石磁極210は上下方向に垂直な平板形状にできる。本実施例では、上下方向とは、磁極歯301と永久磁石磁極210の極性とが対向している方向である。
【0026】
なお、上述したように、本実施例では、可動子2は界磁子によって構成される。
【0027】
≪磁極フレーム200≫
磁極フレーム200は、永久磁石磁極210を嵌装する空隙200aを複数備えたはしご状にすることができる。永久磁石磁極210は空隙200aに嵌入されることで、左右方向及び前後方向に抜けることなく、磁極フレーム200に固定される。すなわち、空隙200aは磁極フレーム200を上下方向に貫通する貫通孔として形成されており、永久磁石磁極210が上下方向に嵌入される嵌入部を構成する。永久磁石磁極210は空隙(嵌入部)200aを埋めるように空隙200aに配置されることで、左右方向及び前後方向への位置ずれが防止される。なお、空隙(嵌入部)200aは、永久磁石磁極210を貼付できる凹部で構成しても良い。この凹部は上下方向における磁極フレーム200の一端面に凹状に形成される。この凹部も永久磁石磁極210が嵌入される空隙(嵌入部)200aの一種とみなすことができる。磁極フレーム200は、軟磁性体で形成しても良いし、非磁性体で形成しても良い。
【0028】
≪永久磁石磁極210≫
永久磁石磁極210は、ネオジム磁石等の希土類磁石で構成してもよいし、フェライト磁石等、他の素材による永久磁石を用いてもよい。
【0029】
≪挟持部材220≫
挟持部材220は、可動子2の左右方向(幅方向)の端部にあって、磁極フレーム200及び永久磁石磁極210の両方の左右方向端部(側端部)と、上面及び下面で接するように設けられている。挟持部材220が永久磁石磁極210の左右方向端部と上面及び下面で接することにより、永久磁石磁極210は上下方向に抜けることなく磁極フレーム200に固定される。
【0030】
挟持部材220は、磁極フレーム200の左右方向(幅方向、第2方向)における両端部である両側端部のそれぞれに設けられるフレーム側端部取付部材であり、上下方向(厚さ方向、第3方向)から永久磁石磁極210の端面に当接して永久磁石磁極210の空隙(嵌入部)200aからの抜けを防止する。
このために挟持部材220は、
図2に示すように、磁極フレーム200及び永久磁石磁極210の上面の側縁部と接する上辺部(第1突設部)220aと、磁極フレーム200及び永久磁石磁極210の下面の側縁部と接する下辺部(第2突設部)220bと、上辺部220aと下辺部220bとを連結する連結部(連結辺)220cと、を備える。上辺部(第1突設部)220aは、永久磁石磁極210の上下方向(第3方向)における一方の端面側で左右方向(第2方向)に沿って界磁子2の側端部から中央部に向かって突き出すように構成され、永久磁石磁極210の上下方向における一方の端面側で永久磁石磁極210に当接する。下辺部(第2突設部)220bは、永久磁石磁極210の上下方向(第3方向)における他方の端面側で左右方向(第2方向)に沿って界磁子2の側端部から中央部に向かって突き出すように構成され、永久磁石磁極210の上下方向における他方の端面側で永久磁石磁極210に当接する。上辺部220a、下辺部220b及び連結部220cは、磁極フレーム200及び永久磁石磁極210の側端部(側縁部)が嵌入される嵌入凹部220dを構成する。
【0031】
挟持部材220と磁極フレーム200とは圧入や焼きばめ、又は冷しばめなど、締めしろのある締りばめを用いて、固定する。あるいは、挟持部材220と磁極フレーム200とをすきまばめで嵌め合い、ネジ又はノックピンを用いて挟持部材220を磁極フレーム200に固定してもよい。あるいは、上述したいずれかの締りばめと、ネジ又はノックピンと、を併用してもよい。
【0032】
締りばめと、ネジ又はノックピンとを併用する場合、挟持部材220と磁極フレーム200とを上述したいずれかの締りばめで固定し、ネジ又はノックピンにより挟持部材220の磁極フレーム200からの抜け(脱落)を防止するようにするとよい。すなわち、ノックピン又はネジを、上下方向(第3方向)に沿って、挟持部材(フレーム側端部取付部材)220と磁極フレーム200とに跨るように設け、挟持部材220の磁極フレーム200からの脱落を防止する脱落防止構造を構成する。
【0033】
本実施例では、挟持部材220の上下面をすべり軸受または転がり軸受と対向して摺動するガイドレールとして用いる。すなわち、挟持部材220の上辺部220aの上面と下辺部220bの下面とにそれぞれレール面が形成されている。挟持部材220でガイドレールを構成することにより、他にガイドレール部品を設ける必要が無くなり、部品点数及び組立工数を削減することができる。
【0034】
さらに本実施例では、永久磁石磁極210と上面及び下面で接する挟持部材220が一体(一つの部材)で構成されており、挟持部材220の上側のガイドレール面と下側のガイドレール面との間の距離は挟持部材220の加工精度のみの影響を受ける。このため、上下のガイドレール面間距離を高精度かつ一定に保つことができる。これにより本実施例では、可動子2の上下方向位置を精度よく配することができる。そのため、軸受5における摺動損失を低減し、リニアモータを高効率に駆動できる。
【0035】
図4Aを参照して、挟持部材220と磁極フレーム200との固定構造について説明する。
図4Aは、実施例1に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面を示す模式図である。
【0036】
本実施例では、挟持部材220と磁極フレーム200とは圧入により固定され、さらに挟持部材220の磁極フレーム200からの抜け(脱落)を防止するようにノックピン250が設けられている。
【0037】
挟持部材220は上辺部220a、下辺部220b及び連結部220cが形成する嵌入凹部220dを有しており、磁極フレーム200の側端部(側縁部)が嵌入凹部220d内に嵌入されている。このため挟持部材220は、上下方向には磁極フレーム200に保持された状態にある。さらに、挟持部材220と磁極フレーム200とは圧入により組み付けられているため、挟持部材220は磁極フレーム200の側端部(側縁部)に固定された状態にある。しかし、稼働中における挟持部材220の磁極フレーム200からの抜けを確実に防止するため、本実施例ではノックピン250を設けている。
【0038】
ノックピン250を圧入する圧入孔200bは磁極フレーム200に設けられており、圧入孔200bの直径(内径)はノックピン250の直径(外径)よりも僅かに小さい。
一方、ノックピン250を挿通する挟持部材220側の挿通孔220eは、その直径(内径)が圧入孔200bの直径及びノックピン250の直径よりも大きな寸法で、上辺部220aと下辺部220bとに形成されている。
【0039】
ノックピン250は、磁極フレーム200の圧入孔200bを貫通し、一方の端部(上端部)が上辺部220aの挿通孔220e内に位置し、他方の端部(下端部)が下辺部220bの挿通孔220e内に位置するように、設けられている。
【0040】
本実施例では、ノックピン250は挟持部材220の磁極フレーム200からの抜けを防止するために設けたものであり、ノックピン250による固定力は必要としない。このため、ノックピン250は磁極フレーム200の圧入孔200bに圧入されており、挟持部材220の挿通孔220eには圧入されていない。すなわち、ノックピン250の外周と挿通孔220eの内周との間には隙間(クリアランス)が存在する。この場合、ノックピンは挟持部材220の抜けを防止するように係止する係止部として機能する。
【0041】
本実施例では、ノックピン250は磁極フレーム200側に圧入され、ノックピン250と挿通孔220eとの間に隙間があるため、ノックピン250の圧入時に挟持部材220に荷重(圧入力)が作用しない。このため、挟持部材220の上側ガイドレール(上辺部)220a及び下側ガイドレール(下辺部)220bの変形を防ぐことができ、各ガイドレール220a,220bの平面度のばらつきを抑制することができる。また、ガイドレール220a,220bに荷重が加わらないため、上辺部220a、下辺部220b及び連結部220cの肉厚を薄くすることができ、挟持部材220を軽量化及び小型化できる。挟持部材220の軽量化によりリニアモータを高効率に駆動できると共に、挟持部材220の小型化によりリニアモータを小型化することができる。
【0042】
ノックピン250に替えてスプリングピンを用い、このスプリングピンを圧入孔200bに挿入して固定してもよい。
【0043】
本実施例では、挟持部材220と磁極フレーム200とを締りばめを用いて固定していることにより、挟持部材220と磁極フレーム200とが密着している。このため、圧入時に挟持部材220に加わる荷重が小さければ、各ガイドレール220a,220bの変形を抑制することができる。従って、挿通孔220eの直径(内径)をノックピン250の直径(外径)よりも僅かに小さくし、圧入孔200bの直径(内径)をノックピン250の直径(外径)よりも僅かに大きくし、ノックピン250を挿通孔220eに圧入するようにしてもよい。すなわち、実施例1の挿通孔220eと圧入孔200bとを入れ替えてもよい。しかし、圧入時の荷重の大きさ又は材料の硬さによっては変形が生じる可能性もあるため、微小な変形を問題にする場合は挟持部材220側に圧入孔200bを設けることが好ましい。
【0044】
本実施例では、ノックピン250を用いたことにより、ガイドレール面を構成する上辺部220a及び下辺部220bに小さな直径の挿通孔220eを設けるだけでよい。一方、ネジを用いた場合には、ネジの頭部がガイドレール面に突出しないようにするために、上辺部220a又は下辺部220bにネジの頭部を埋没させるザグリを設ける必要があり、ガイドレール面に大きな開口が形成されることになる。また、ネジを用いた場合、ネジの緩みを防止する対策が必要になる。しかし、本実施例ではノックピン250を用いたことにより、このような対策を行う必要が無い。
【0045】
[変更例1]
図4Bを参照して、実施例1における、挟持部材220と磁極フレーム200との固定構造の変更例(変更例1)について説明する。
図4Bは、実施例1の変更例(変更例1)に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面を示す模式図である。
【0046】
実施例1では、ノックピン250を磁極フレーム200の圧入孔200bを貫通させているが、本変更例では、ノックピン250は上下方向(厚み方向)において磁極フレーム200の一部に圧入されている。すなわち、ノックピン250は上下方向(厚み方向)において磁極フレーム200の途中まで圧入されている。この場合、磁極フレーム200の圧入孔200bは、磁極フレーム200を上下方向に貫通するように形成してもよいし、有底の凹部(丸穴)として形成してもよい。
【0047】
本変更例では、ノックピン250は磁極フレーム200の上方から下方に向かって圧入しており、ノックピン250の挿通孔220eは挟持部材220の上辺部220aに設けている。挟持部材220の下辺部220aには挿通孔220eが設けられないため、ガイドレール面の構成としては、有利である。また、挟持部材220に加工する挿通孔220eの数を減らすことができるため、加工工数が減り、生産性が向上する。使用しないことを前提に、例えば部品の共通化等の理由から、挟持部材220の下辺部220aに挿通孔220eを形成しても構わない。
【0048】
ノックピン250は磁極フレーム200の下方から上方に向かって圧入する構成とし、ノックピン250の挿通孔220eを挟持部材220の下辺部220bに設けてもよい。
【0049】
本変更例では、
図4C中向かって右側の挟持部材220と左側の挟持部材220とを同じ形状に形成した共通の部品とし、右側に用いる場合と左側に用いる場合とで、前側端部と後側端部とを入れ替えて使用してもよい。
【0050】
本変更例では、上述した以外の構成は実施例1と同様であり、上述した変更点を除いて実施例1で説明した構成を採用することができる。
【0051】
[変更例2]
図4Cを参照して、実施例1における、挟持部材220と磁極フレーム200との固定構造の変更例(変更例2)について説明する。
図4Cは、実施例1の変更例(変更例2)に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面を示す模式図である。
【0052】
本変更例では、変更例1に対して、
図4C中向かって右側のノックピン250を、磁極フレーム200の下方から上方に向かって圧入する構成とし、ノックピン250の挿通孔220eを挟持部材220の下辺部220bに設けている。すなわち、磁極フレーム200の両側端部(側縁部)に配置された挟持部材220において、一方の側端部に配置された挟持部材220と他方の側端部に配置された挟持部材220とで、ノックピン250の圧入方向が上下逆方向となるようにしている。
【0053】
図4Cにおいて、上方から下方に圧入するノックピン250と下方から上方に圧入するノックピン250とを、左右で入れ替えてもよい。
【0054】
本変更例では、
図4C中向かって右側の挟持部材220と左側の挟持部材220とを同じ形状に形成した共通の部品とし、右側に用いる場合と左側に用いる場合とで、上下を入れ替えて使用してもよい。
【0055】
[変更例3]
図4Dを参照して、実施例1における、挟持部材220と磁極フレーム200との固定構造の変更例(変更例3)について説明する。
図4Dは、実施例1の変更例(変更例3)に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面を示す模式図である。本変更例では、以下の点を除き実施例1と同様であり、以下の変更点を除いて実施例1及び変更例1,2で説明した構成を採用することができる。
【0056】
本変更例では、変更例1に対して、ノックピン250をネジ260に、磁極フレーム200の圧入孔200bをネジ穴200cに変更したものである。この場合、挿通孔220eはネジ260の挿通孔となり、ネジ260の直径(外径)と挿通孔220eの直径(内径)との大小関係は、実施例1におけるノックピン250の直径(外径)と挿通孔220eの直径(内径)との大小関係と同様である。
【0057】
本変更例では、挟持部材220の上辺部220aに設けた、ネジ260の挿通孔220eの上端部に、ネジ260の頭部を埋没させるザグリ220fが設けられる。このため、ガイドレール面に挿通孔220eの直径よりも大きな直径の凹部(ザグリ220f)が形成されることになる。
【0058】
ネジ260を用いる場合、ネジ260の締め付けにより、挟持部材220の上側ガイドレール(上辺部)220aに荷重が作用する。しかし、挟持部材220と磁極フレーム200とを圧入や焼きばめ、又は冷しばめなどの締りばめを用いて固定することにより、挟持部材220と磁極フレーム200とが密着しており、上側ガイドレール(上辺部)220aの変形を抑制することができる。しかし、材料の硬さによっては変形が生じる可能性もあるため、微小な変形を問題にする場合はノックピン250を用いることが好ましい。
【0059】
本変更例では、上述した以外の構成は実施例1、変更例1及び変更例2と同様の構成を有する。また、ネジ260及びネジ穴200cの配置は、上述した実施例及び各変更例で説明した挟持部材220及び磁極フレーム200の配置と同様に変更可能である。
【0060】
[実施例2]
図5Aを参照して、挟持部材220と磁極フレーム200との固定構造について説明する。
図5Aは、実施例2に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面模式図である。実施例2の構成は、以下の点を除き実施例1と同様であり、以下の本実施例に係る構成を除いて実施例1及び変更例1~3で説明した構成を採用することができる。
【0061】
本実施例では、永久磁石磁極210の左右方向の両端面(側端部)210dがテーパ状を成すテーパ面230dで構成されている。永久磁石磁極210の端部(側端部)210dに対向する、磁極フレーム200の空隙200aの内面(内周面)はテーパ面230dに沿ってテーパ状を成すテーパ面230eで構成されている。永久磁石磁極210は、テーパ面230dを磁極フレーム200のテーパ面230eに当接するようにして、空隙200aに嵌装される。テーパ面230dとテーパ面230eとは、永久磁石磁極210と磁極フレーム200とが接する面にテーパ部230を構成する。
【0062】
挟持部材220と磁極フレーム200とは実施例1及び変更例1,2と同様に固定される。本実施例では、挟持部材220の磁極フレーム200への組み付けにノックピン250を用いており、このノックピン250は実施例1及び変更例1,2と同様に構成することができる。
【0063】
永久磁石磁極210は、両側端部210dがテーパ状に形成されているため、左右方向長さが下から上に向かって小さくなっている。挟持部材220は、磁極フレーム200の上面及び下面と接し、かつ永久磁石磁極210の左右方向端部(側端部)の下面と接するように設けられている。
【0064】
永久磁石磁極210はテーパ面230dが磁極フレーム200のテーパ面230eに当接して上方向に抜けることがなく、かつ下面が挟持部材220の下辺部220bと当接することにより下方向にも抜けることなく磁極フレーム200に固定される。
【0065】
また、テーパ面230dを設け、永久磁石磁極210上面の左右方向長さを下面の左右方向長さよりも短くでき、実施例1よりも磁石使用量を低減できる。
【0066】
永久磁石磁極210の左右方向長さが上から下に向かって小さくなるように、テーパ面230d及びテーパ面230eを構成してもよい。この場合、挟持部材220は、磁極フレーム200の上面及び下面と接し、かつ永久磁石磁極210の左右方向端部(側端部)の上面と接するように設ける。
【0067】
すなわち本実施例では、永久磁石磁極210と磁極フレーム200の空隙(嵌入部)200aとは、左右方向(第2方向)における寸法が上下方向(第3方向)における一方の端面側から他方の端面側に向かうにつれて小さくなるテーパ部230を有するように構成される。そして挟持部材220は、永久磁石磁極210の左右方向(第2方向)における寸法が大きな端面側で永久磁石磁極210の端面に当接するように構成される。
【0068】
[変更例4]
図5Bを参照して、実施例2における、挟持部材220と磁極フレーム200との固定構造の変更例(変更例4)について説明する。
図5Bは、実施例2の変更例(変更例4)に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面模式図である。
【0069】
本変更例では、実施例2のノックピン250に替えてネジ260を用いている。永久磁石磁極210の左右方向長さが下から上に向かって小さくなるように、テーパ面230d及びテーパ面230eが構成されているため、ネジ260は下側(下辺部220b側)から締め付けるようにする。これにより、磁極フレーム200は挟持部材220の下辺部220b側に向かって締め付けられる。このため、テーパ面230dとテーパ面230eとがより密着するようにして、挟持部材220を磁極フレーム200に組み付けることができる。これにより、永久磁石磁極210の上下方向の位置ずれを確実に防止することができる。
【0070】
永久磁石磁極210の左右方向長さが上から下に向かって小さくなるように、テーパ面230d及びテーパ面230eを構成した場合は、ネジ260は上側(上辺部220a側)から締め付けるようにする。
【0071】
すなわち本変更例では、ネジ260は、永久磁石磁極210の左右方向(第2方向)における寸法が大きな端面側から挟持部材220及び磁極フレーム200の端面(下面)に締結される。
【0072】
その他の構成は実施例2と同様であり、上述した変更点を除いて実施例1、変更例3及び実施例2で説明した構成を採用することができる。
【0073】
[実施例3]
図6を参照して、挟持部材220と磁極フレーム200との固定構造について説明する。
図6は、実施例3に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面模式図である。実施例2の構成は、以下の点を除き実施例1と同様であり、以下の変更点を除いて実施例1、実施例2及び1-4で説明した構成を採用することができる。
【0074】
本実施例では、磁極フレーム200は上下に二分割され、永久磁石磁極210の上下方向(第3方向)における一方の端面側に配置される上磁極フレーム部材(第1磁極フレーム部材)200fと、永久磁石磁極210の他方の端面側に配置される下磁極フレーム部材(第2磁極フレーム部材)200gとで構成される。この場合、空隙(嵌入部)200aは上磁極フレーム部材200fと下磁極フレーム部材200gとに跨って形成される。
【0075】
永久磁石磁極210の左右方向両端部の上側側縁部210fがテーパ状を成すテーパ面230fで構成されている。永久磁石磁極210の左右方向両端部の下側側縁部210gがテーパ状を成すテーパ面230gで構成されている。
【0076】
永久磁石磁極210のテーパ面230fに対向する、上磁極フレーム部材200fの空隙200aの内面(内周面)200mはテーパ面230fに沿ってテーパ状を成すテーパ面230mを有する。永久磁石磁極210のテーパ面230gに対向する、下磁極フレーム部材200gの空隙200aの内面(内周面)200nはテーパ面230gに沿ってテーパ状を成すテーパ面230nを有する。
【0077】
永久磁石磁極210は、テーパ面230f,230gを磁極フレーム200f,200gのテーパ面230m,200nに当接するようにして、空隙200aに嵌装される。テーパ面230f,230gとテーパ面230m,200nとは、永久磁石磁極210と磁極フレーム200とが接する面にテーパ部230を構成する。
【0078】
すなわち本実施例では、永久磁石磁極210の一方の端面側と上磁極フレーム部材(第1磁極フレーム部材)200fの空隙(嵌入部)200aとは、上下方向(第3方向)に沿って前記一方の端面側に近づくにつれて左右方向(第2方向)における寸法が小さくなる第1テーパ部230を有する。また、永久磁石磁極210の他方の端面側と下磁極フレーム部材(第1磁極フレーム部材)200gの空隙(嵌入部)200aとは、上下方向(第3方向)に沿って前記他方の端面側に近づくにつれて左右方向(第2方向)における寸法が小さくなる第2テーパ部230を有する。
【0079】
永久磁石磁極210はテーパ部230により上方向にも下方向にも抜けることがなく固定される。二分割した上下の磁極フレーム200f,200gは、挟持部材220を用いて、上下に二分割した磁極フレーム200f,200gを挟み込むようにして、組み付ける。この場合、挟持部材220と磁極フレーム200f,200gとは、上述した各実施例及び各変更例で説明したいずれかの方法(構成)により、固定される。すなわち、挟持部材220と磁極フレーム200は、圧入や焼きばめ、又は冷しばめなどの締りばめにより固定することができる。或いは、ネジ止めまたはノックピンを用いて固定してもよい。
或いは、締りばめと、ネジ止めまたはノックピンを用いた固定と、を併用してもよい。或いは、挟持部材220と磁極フレーム200とを締りばめで固定し、ネジ止めまたはノックピンを用いて挟持部材220の磁極フレーム200からの抜け止めを行ってもよい。
【0080】
本実施例では、挟持部材220が上下に二分割した磁極フレーム200f,200gの左右方向端部と上面及び下面で接することにより、磁極フレーム200f,200gが上下方向に分かれることなく永久磁石磁極210を磁極フレーム200に固定することができる。この場合も、挟持部材220の上下面をすべり軸受または転がり軸受と対向して摺動するガイドレールとして用いる。
【0081】
図7を参照して、本発明に関する参照例について説明する。
図7は、実施例3の参照例に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面模式図である。挟持部材220を用いることなく、磁極フレーム200f,200gはネジ止めまたはノックピンを用いて固定することができる。或いは、磁極フレーム200f,200gは溶接により固定することができる。
【0082】
ただしこの場合は、磁極フレーム200f,200gの左右方向両端部がガイドレール面となる。このため、上下のガイドレール面間の間隔寸法のばらつきが大きくなるという課題や、上下のガイドレール面の上下方向の傾きが大きくなるなどの課題を有する。
【0083】
[実施例4]
図8を参照して、挟持部材220と磁極フレーム200との固定構造について説明する。
図8は、実施例4に係るリニアモータの可動子周辺部について、前後方向に対して垂直な断面模式図である。実施例4の構成は、以下の点を除き実施例1-3及び変更例1-4で説明した構成を採用することができる。
【0084】
磁極フレーム200と永久磁石磁極210の上面及び下面に非磁性シート240が配置され、非磁性シート240は挟持部材220と磁極フレーム200とにより上下方向から挟まれて固定されている。非磁性シート240により、永久磁石磁極210が上下方向に抜けることなく磁極フレーム200に固定される。
【0085】
挟持部材220は、磁極フレーム200の左右方向(幅方向、第2方向)における両端部である両側端部のそれぞれに設けられるフレーム側端部取付部材であり、非磁性シート240を磁極フレーム200との間に挟み込んで保持して、永久磁石磁極210の空隙(嵌入部)200aからの抜けを防止する。
【0086】
非磁性シート240により、永久磁石磁極210と磁極歯301の間のギャップを拡大する必要が生じるが、非磁性シート240の材質としてステンレスなどの非磁性金属を用いる場合は、強度が高いために薄くすることができ、磁気的なギャップを低減できる。その一方で、非磁性金属を用いる場合はその内部に渦電流が発生し、損失や発熱の原因となる可能性がある。非磁性シート240の材質として、樹脂等の非金属を用いる場合は、渦電流が発生せず、非磁性シート240内の損失や発熱をなくすことができる。
【0087】
本実施例において、実施例1-3及び変更例1-4で説明したノックピン250やネジ260を併用してもよい。
【0088】
また本実施例においても、挟持部材220はガイドレールを構成し、挟持部材220の上面及び下面はガイドレール面を構成する。
【0089】
[実施例5]
図9Aは、本発明に係るリニアモータを用いた圧縮機の実施例(実施例5)を示す斜視図である。
図9Bは、本発明に係るリニアモータを用いた圧縮機の実施例(実施例5)を示す要部断面図である。なお、上述の実施例と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0090】
本実施例の圧縮機1000は、空気や窒素ガス、或いは酸素などの気体のほか、冷媒を圧縮する気体圧縮機として用いることができ、可動子2の往復動方向について、電機子3の一方側に設けた共振ばね400と、電機子3の他方側に設けたピストン(ピストン1200内に配置、図示せず)、シリンダ1200、電磁弁1400(1400A,1400B)、排気弁1500、ドライヤ1600、及びインバータ1700を有する。
【0091】
本実施例の圧縮機1000では、ピストン1100の駆動モータがリニアモータで構成されており、可動子2が扁平な板状(平板状)を成している。また、可動子2は端部部材4の後側端部から更に後方に突き出している。
【0092】
シリンダ1200には、電機子3及び共振ばね400を収納するケーシング1800が取付けられている。本実施例では、ケーシング1800の前面として端部部材4を用いているが、端部部材4の前側にケーシング1800の前面を構成する部材を設けても良い。
すなわち、端部部材4をケーシング1800の前面部材として兼用する代わりに、端部部材4とは別に前面部材を設けてもよい。
【0093】
ケーシング1800は、筒状の側面(側面部材)1810と後面(後面部材、底面部材)1820とが別体で構成されており、前後に延在する挿通部1830によって、底面1820がシリンダ1200にベース板1900を介して固定されている。これにより、側面1810は後面1820及びシリンダ1200に挟持されている。
【0094】
ケーシング1800側から前方に向けて電極が突出し、電極の一端部に巻線6の引き出し端部が電気的に接続されている。電極の他端部はベース板1900に形成された貫通孔(図示せず)を貫通してインバータ1700の内部に挿入され、内部のインバータ回路と電気的に接続されている。
【0095】
ベース板1900にはガスの吸入吐出口1910が設けられている。ここで、ガスは、上述した空気や窒素ガス、或いは酸素などの気体のほか、冷媒などである。また、ベース1900には2つの電磁弁1400A,1400Bが取り付けられ、各電磁弁1400A,1400Bに対応してガスが流れる2つの貫通孔(ガス通路)1920a,1920bが設けられている。電磁弁1400A,1400Bは三方弁であり、ガスの吸入吐出弁を構成する。一方の電磁弁1400Aが吸入状態にある場合、他方の電磁弁1400bは吐出状態となる。一方の電磁弁1400Aは吸入状態において吸入吐出口1910から吸入したガスを、貫通孔1920aを通じてケーシング1800の内部に流す。このとき、他方の電磁弁1400Bは吐出状態になっており、貫通孔1920bを通じたガスの流れを遮断する。
【0096】
電磁弁1400Aを通じてケーシング1800の内部に流入したガスは、可動子2と端部部材4及びベース板1900との隙間を流れてシリンダ1200の内部に流れ、シリンダ1200を通じてドライヤ1600に流れる。更に、ガスはドライヤ1600からもう一方の電磁弁1400Bを通じて吐出される。電磁弁1400A及び電磁弁1400Bの吸入吐出の状態が入れ替わると、ガスの流れは上述した経路の逆を辿って流れる。シリンダ1200では必要に応じて流入したガスの圧縮を行う。ベース板1900の貫通孔1920bが設けられた側には、吸入吐出口1910に対応する位置に、図示しない吸入吐出口が設けられている。
【0097】
シリンダ1200のシリンダヘッド1200Aには、ドライヤ1600がシリンダ1200の内部と連通可能な状態で取り付けられている。
【0098】
[実施例6]
図10は、実施例6に係る冷蔵庫の構成図である。なお、上述の実施例と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0099】
冷蔵庫2001は、冷蔵室2002の前面側に左右に分割された観音開きの冷蔵室扉2002aを備え、製氷室2003と、上段冷凍室2004と、下段冷凍室2005と、野菜室2006との前面側に、それぞれ引き出し式の製氷室扉2003a、上段冷凍室扉2004a、下段冷凍室扉2005a、野菜室扉2006aを備えている。
【0100】
野菜室2006の背面側には、機械室2020が設けられ、機械室2020に圧縮機2024が配置されている。また、製氷室2003、上段冷凍室2004、及び下段冷凍室2005の背面側には、蒸発器室2008が設けられ、蒸発器室2008に蒸発器2007が設けられている。冷蔵庫2001では、圧縮機2024及び蒸発器2007のほか、図示しない放熱器、減圧手段であるキャピラリチューブ及び三方弁等が冷媒配管で接続され、冷凍サイクル2030が形成されている。
【0101】
本実施例では、冷蔵庫2001の冷凍サイクル2030を構成する圧縮機2024に、上述した各実施例のいずれかのリニアモータ100を採用する。例えば、圧縮機2024として実施例5の圧縮機1000を採用するとよい。これにより、冷凍サイクル2030を構成する圧縮機2024の大形化を抑制することができる。そして冷蔵室及び冷凍室のために大きなスペースを確保することが可能になり、外形寸法を大きくすることなく大容量の冷蔵庫を提供することが可能になる。
【0102】
[実施例7]
図11は、実施例7に係る車両用エアサスペンションの構成図である。なお、上述した実施例と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0103】
本実施例では、4輪自動車等の車両に、車両用エアサスペンションを搭載した場合を例に挙げて説明する。
【0104】
車体3002は、車両3001のボディを構成している。車体3002の下側には、左,右の前輪と左,右の後輪とからなる合計4個の車輪3003が設けられている。エアサスペンション3004は、車体3002と各車輪3003との間にそれぞれ設けられた4個の空気ばね3005と、空気圧縮機3006と、バルブユニット3008と、コントローラ3011とを備える。そして、エアサスペンション3004は、各空気ばね3005に対して空気圧縮機3006から圧縮空気が給排されることにより、車高調整を行う。
【0105】
本実施例では、空気圧縮機3006の駆動モータとして、上述した各実施例のいずれかのリニアモータ100を採用する。例えば、空気圧縮機3006として実施例5の圧縮機1000を採用するとよい。空気圧縮機3006は、給排管路(配管)3007を通じてバルブユニット3008に接続されている。バルブユニット3008には、各車輪3003に対して設けられた、電磁弁からなる給排バルブ3008aが4個設けられている。バルブユニット3008と各車輪3003の空気ばね3005との間には、分岐管路(配管)3009が設けられている。空気ばね3005は、分岐管路3009、バルブ3008a、及び給排管路3007を介して、空気圧縮機3006に接続される。そして、バルブユニット3008は、コントローラ3011からの信号に応じて給排バルブ3008aを開,閉弁させることにより、各空気ばね3005に対して圧縮空気を給排し、車高調整を行う。
【0106】
本実施例では、エアサスペンション3004を構成する空気圧縮機3006の大形化を抑制することができる。そして、車両3001における空気圧縮機3006の搭載スペースを小さくすることができ、空気圧縮機3006の配置の自由度が高まる。
【0107】
[その他の態様]
各実施例では、電機子3を固定して界磁子(可動子2)が移動するムービングマグネット型を例示したが、界磁子を固定して電機子3を移動するムービングコイル型でもよい。
【0108】
また、可動子2の上下方向それぞれに磁極歯301を設ける代わりに、可動子2の上下方向一方側に設ける構成でもよい。この場合、腕部302は、一端が軟磁性体の床面に接触してコア300を支持することができる。
また、磁極歯301や腕部302はアモルファス金属を積層して構成してもよいし、圧粉磁心で構成してもよい。アモルファス金属を用いた場合は、磁極歯301や腕部302で発生する鉄損を低減する効果があり、圧粉磁心を用いた場合は、三次元的に任意な形状で構成することができる。
【0109】
本発明は、モータ(リニアモータ)のほか、固定子1及び可動子2を相対移動させる種々の機器に適用できる。例えば、発電機、圧縮機、電磁サスペンション、位置決め装置等に用いても同様の効果が得られる。
【0110】
特許文献1のリニアモータは、上面側のフレーム縁部挟持板と下面側のフレーム縁部挟持板とを、上面側から下面側に向けて磁石保持フレームを挿通するボルトで締結して、両フレーム縁部挟持板を磁石保持フレームに固定している。一方、特許文献2のリニアモータは、可動子保持部材の側面からボルトを締結している。
【0111】
特許文献1及び特許文献2のリニアモータでは、ボルトの締め付け力の違いによって、磁石保持フレームや可動子保持部材の縁部の平面度にばらつきが生じる恐れがある。特許文献1のリニアモータでは、磁石保持フレームの上下方向の厚み寸法にばらつきが生じる可能性がある。また、特許文献2のリニアモータでは、両縁部の距離(幅寸法)にばらつきが生じる可能性がある。
【0112】
特許文献1及び特許文献2では、可動子のガイドレールの構成について開示が無く、ガイドレールの構成について十分な配慮が成されていない。そして、磁石保持フレームや可動子保持部材の縁部の平面度にばらつきが生じると、磁石保持フレームや可動子保持部材の縁部を軸受のガイドレールとして用いる場合に、ガイドレール面の平面度が低下したり、ガイドレールの寸法精度が低下したりするなどして、障害となる可能性がある。
【0113】
本実施例では、締りばめとネジ260とを併用することによって、ネジを用いる場合にも挟持部材220に生じる平面度のばらつきを抑制することができる。更に、ネジ260に替えて、上述したノックピン250やスプリングピンを用いることによって、平面度のばらつきをさらに抑制することができる。
【0114】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0115】
1…固定子、2…可動子(界磁子)、3…電機子、4…端部部材、5…軸受、6…巻線、100…リニアモータ、200…磁極フレーム、200b…圧入孔、210…永久磁石磁極、220…挟持部材(フレーム側端部取付部材)、220a…上側ガイドレール、220b…下側ガイドレール、220e…ノックピン250の挿通孔、230…テーパ部、250…ノックピン、300…コア、301…磁極歯、302…腕部、310…スペーサ。