(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】電源システム及び電源ユニット
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
H02J1/00 306K
(21)【出願番号】P 2021536791
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2021002749
【審査請求日】2021-06-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107847
【氏名又は名称】大槻 聡
(72)【発明者】
【氏名】牧谷 敦
(72)【発明者】
【氏名】上野山 太郎
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-058247(JP,U)
【文献】国際公開第2013/136475(WO,A1)
【文献】特開平10-094174(JP,A)
【文献】特開2017-127119(JP,A)
【文献】特開2019-017166(JP,A)
【文献】特開2004-080869(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110401329(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0170714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00 - 1/16
H02M 3/00 - 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3以上の電源ユニットを備え、前記電源ユニットが協働して共有の負荷に対し直流電源を供給する電源システムにおいて、
前記3以上の電源ユニットは、一対の同期信号線に接続され、
前記電源ユニットは、
外部から入力される交流電源を直流電源に変換する電源主回路と、
前記電源主回路を制御する制御部と、
前記一対の同期信号線にそれぞれ接続される一対の同期端子と、
異常検出時に前記一対の同期信号線間を導通させて
異常発生を示すエラー信号を出力する送信部と、
前記一対の同期信号線間の導通状態を検出し、エラー信号を受信する受信部と、を備え、
前記電源ユニットのいずれか一つから前記エラー信号が送信されると、他の全ての前記電源ユニットの前記電源主回路が、前記エラー信号の受信タイミングに基づいて、出力を停止することを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記送信部及び前記受信部は、フォトカプラをそれぞれ備え、
前記一対の同期信号線は、前記フォトカプラにより前記電源ユニットから絶縁されていることを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記電源主回路は、前記エラー信号のエッジに基づいて、出力を開始することを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項4】
2以上の他の電源ユニットと接続され、前記他の電源ユニットと協働して共有の負荷に対し直流電源を供給する電源ユニットにおいて、
外部から入力される交流電源を直流電源に変換する電源主回路と、
前記電源主回路を制御する制御部と、
一対の同期信号線にそれぞれ接続される一対の同期端子と、
異常検出時に前記一対の同期信号線を導通させて
異常発生を示すエラー信号を出力する送信部と、
前記一対の同期信号線間の導通状態を検出し、エラー信号を受信する受信部と、を備え、
前記他の電源ユニットのいずれか一つから前記エラー信号が送信されると、前記電源主回路が、前記エラー信号の受信タイミングに基づいて、出力を停止することを特徴とする電源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム及び電源ユニットに係り、さらに詳しくは、2以上の電源ユニットを備え、各電源ユニットが協働して共有の負荷に対し直流電源を供給する電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2以上の電源ユニットにより構成され、共通の負荷に対し各電源ユニットから直流電源を供給する電源システムが知られている(例えば、特許文献1及び2)。この種の電源システムでは、2以上の電源ユニットを接続することにより、様々な特性の電源装置を実現することができる。例えば、電気自動車、パワーコンディショナーなどの動作テストにおいて、バッテリー、ソーラーパネルなどをシミュレートする模擬電源として、このような電源システムが使用されている。
【0003】
このような電源システムにおいて、いずれかの電源ユニットに故障などの異常が発生した場合、当該電源ユニットの出力低下により、他の電源ユニットに過大な負荷がかかり、正常な電源ユニットが破損するおそれがある。このため、異常発生を他の電源ユニットに迅速に伝達し、全ての電源ユニットの出力を停止する必要がある。また、電源ユニットの停止動作にずれが生じた場合、動作が不安定になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-148032号
【文献】特開2014-147196号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、電源システムを構成する2以上の電源ユニットのいずれかに生じた異常を電源ユニット間において迅速に伝達することができる電源システムを提供することを目的とする。また、いずれかの電源ユニットにおいて異常が発生した際に迅速に出力を停止する電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の実施態様による電源システムは、2以上の電源ユニットを備え、前記電源ユニットが協働して共有の負荷に対し直流電源を供給する電源システムにおいて、前記電源ユニットが、外部から入力される交流電源を直流電源に変換する電源主回路と、前記電源主回路を制御する制御部と、一対の同期信号線にそれぞれ接続される一対の同期端子と、異常検出時に前記一対の同期信号線間を導通させてエラー信号を出力する送信部と、前記一対の同期信号線間の導通状態を検出し、エラー信号を受信する受信部と、を備え、前記電源主回路は、前記エラー信号の受信タイミングに基づいて、出力を停止するように構成される。
【0007】
このような構成を採用することにより、いずれかの電源ユニットで異常が発生した時に、他の全ての電源ユニットに対し、異常の発生を迅速に伝達することができる。また、各電源ユニットの出力停止動作を同期させることができ、出力停止時における電源システムの動作を安定させることができる。
【0008】
本発明の第2の実施態様による電源システムは、上記構成に加えて、前記送信部及び前記受信部が、フォトカプラをそれぞれ備え、前記一対の同期信号線は、前記フォトカプラにより前記電源ユニットから絶縁されているように構成される。
【0009】
本発明の第3の実施態様による電源システムは、上記構成に加えて、前記電源主回路が、前記エラー信号のエッジに基づいて、出力を開始するように構成される。
【0010】
本発明の第4の実施態様による電源ユニットは、他の電源ユニットと接続され、前記他の電源ユニットと協働して共有の負荷に対し直流電源を供給する電源ユニットにおいて、外部から入力される交流電源を直流電源に変換する電源主回路と、前記電源主回路を制御する制御部と、一対の同期信号線にそれぞれ接続される一対の同期端子と、異常検出時に前記一対の同期信号線を導通させてエラー信号を出力する送信部と、前記一対の同期信号線間の導通状態を検出し、エラー信号を受信する受信部と、を備え、前記電源主回路は、前記エラー信号の受信タイミングに基づいて、出力を停止するように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源システムを構成する2以上の電源ユニットのいずれかに生じた異常を電源ユニット間において迅速に伝達する電源システムを提供することができる。また、いずれかの電源ユニットにおいて異常が発生した際に迅速に出力を停止する電源システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1による電源システム100の概略構成の一例を示した図である。
【
図2】電源ユニット10~13の詳細構成の一例を示した図である。
【
図3】同期処理部35の詳細構成の一例を示した図である。
【
図4】電源システム100の出力開始動作の一例を示したタイミングチャートである。
【
図5】マスターユニットMUの動作の一例を示したフローチャートである。
【
図6】スレーブユニットSUの動作の一例を示したフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態2による電源システム100の動作の一例を示したタイミングチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態2による電源システム100の動作の他の例を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
(1)電源システム100の概要
図1は、本発明の実施の形態1による電源システム100の概略構成の一例を示した図である。電源システム100は、電力系統から供給される交流電源21を所望の直流電源に変換し、負荷22に供給する電源装置である。
【0014】
電源システム100は、出力線PoLを介して負荷22に接続された2以上の電源ユニット10~13により構成される。各電源ユニット10~13は、制御端末20からの制御パラメータPrに基づいて、外部から供給される交流電力を直流電力に変換し、負荷22に直流電源を供給する。また、制御端末20からの制御パラメータPrに基づいて、電源ユニット10~13間においてバランス調整を行う。
【0015】
各電源ユニット10~13は、同一の構成を有する装置であり、ユニークな識別番号0~3が予め対応づけられている。識別番号は、電源ユニット10~13が互いを識別するためのユニット識別情報UIDである。電源ユニット10~13は、ユニット間通信線UCLにそれぞれ接続され、ユニット識別情報UIDを用いて、任意の電源ユニット10~13間で通信することができる。また、電源ユニット10~13は、一対の同期通信線ZCLに接続され、出力開始タイミングを同期させることができる。
【0016】
電源ユニット10~13のうち、予め定められた1つがマスターユニットMU、その他がスレーブユニットSUであり、マスターユニットMUのみが制御端末20に接続される。例えば、一番若い識別番号0が対応づけられた電源ユニット10がマスターユニットMUであり、端末通信線TCLを介して、制御端末20から制御パラメータPrを受信する。一方、それ以外の電源ユニット11~13がスレーブユニットSUであり、ユニット間通信線UCLを介して、マスターユニットMUから制御パラメータPrを受信する。なお、マスターユニットMU及びスレーブユニットSUは、出力開始前のデータ通信における各電源ユニット10~13の機能を示すものであり、出力開始後の各電源ユニット10~13は、マスターユニットMU及びスレーブユニットSUの区別なく動作する。
【0017】
制御端末20は、電源システム100を制御する装置であり、電源ユニット10~13の制御パラメータPrを生成し、マスターユニットMUへ送信する。制御パラメータPrは、例えば、ユーザ操作に基づいて生成及び出力される。例えば、専用プログラムをインストールしたPCを制御端末20として用いることができる。
【0018】
端末通信線TCLは、制御端末20及びマスターユニットMU間のデータ通信に使用される有線又は無線の通信路である。制御端末20との通信には、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)パケットを送受信するパケット通信方式を採用することができ、LAN(Local Area Network)やインターネットを介して接続することもできる。
【0019】
ユニット間通信線UCLは、電源ユニット10~13間のデータ通信に使用される有線の通信路である。ユニット間通信には、例えば、CAN(Controller Area Network)規格のようなマルチマスターバス通信方式が採用され、任意の電源ユニット10~13から任意の電源ユニット10~13へデータを送信することができる。
【0020】
同期通信線ZCLは、出力開始を示すトリガー信号を伝達する有線の通信路であり、フォトカプラを介在させ、電源ユニット10~13から絶縁された一対の信号線により構成される。一対の同期通信線ZCLは、導通状態又は非導通状態を遷移可能であり、トリガー信号は、一対の同期通信線ZCL間を一定の時間幅で導通させるパルス信号であり、マスターユニットMU(電源ユニット10)から全てのスレーブユニットSU(電源ユニット11~13)へ伝達される。
【0021】
(2)電源ユニット10~13
図2は、電源ユニット10~13の詳細構成の一例を示した図である。電源ユニット10~13は、電源主回路30、電圧検出部301、電流検出部302、端末通信部31、ユニット間通信部32、PWM駆動部33、パラメータ記憶部34、同期処理部35及び制御部36を備える。
【0022】
A)電源主回路30
電源主回路30は、入力端子Piを介して電力系統から入力される交流電力を直流電力に変換し、出力端子Poを介して負荷22へ出力する回路である。電源主回路30の動作は、制御パラメータPrに基づいて制御される。具体的には、動作モードが定電流動作(CC:Constant Current)であれば、出力電流が目標値Crに一致するように動作し、定電圧動作(CV:Constant Voltage)であれば、出力電圧Voが目標値Crに一致するように制御される。目標値Crは、定電流動作における目標電流Iref又は定電圧動作における目標電圧Vrefである。
【0023】
電源主回路30は、交流電力及び直流電力を双方向に変換することができる双方向電源(回生電源)であり、交流電圧を直流電圧に変換して負荷22にエネルギーを供給する力行動作を行うだけでなく、負荷22の状況に応じて、直流電圧を交流電圧に変換して負荷22からエネルギーを吸収する回生動作も行うこともできる。
【0024】
電源主回路30は、交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバータ40と、入出力間を絶縁する絶縁トランス41と、出力電圧Voを制御する昇降圧DC/DCコンバータ42とにより構成される。
【0025】
AC/DCコンバータ40は、交流電力及び直流電力を双方向に変換することができる双方向変換器であり、例えば、スリーステートのスイッチング素子を用いて構成することができる。
【0026】
絶縁トランス41は、1次側と2次側の間において絶縁を確保しつつ直流電力を双方向に伝達することができる双方向DC/DCコンバータであり、トランス412と、トランス412の1次側に接続されたDC/ACコンバータ411と、トランス412の2次側に接続されたAC/DCコンバータ413とにより構成される。AC/DCコンバータ40から入力される直流は、DC/ACコンバータ411で交流に変換され、トランス412を通過した後、AC/DCコンバータ413で再び直流に変換される。トランス412を通過する交流を高周波にすることにより、小型のトランスを用いて絶縁することができ、装置全体を小型化することができる。
【0027】
昇降圧DC/DCコンバータ42は、制御パラメータPrに基づいて、出力電圧Voを制御する双方向DC/DCコンバータであり、例えば、スイッチング回路421及びインダクタンス422で構成されるチョッパー回路を用いることができる。スイッチング回路421は、直列接続された2つのスイッチング素子で構成され、インダクタンス422の一端は、当該2つのスイッチング素子の接続点に接続される。2つのスイッチング素子は、PWM駆動部33からのPWM信号に基づいて、一方がオンで他方がオフとなる状態と、一方がオフで他方がオンとなる状態を交互に繰り返すように動作し、そのデューティー比に応じた出力電圧Voを生成する。
【0028】
B)電圧検出部301、電流検出部302
電圧検出部301は、電源主回路30の出力電圧Voを検出する手段である。電圧検出部301の検出値は、検出電圧Vdetとして制御部36に入力される。電流検出部302は、電源主回路30の出力電流Ioを検出する手段である。電流検出部302の検出値は、検出電流Idetとして制御部36に入力される。
【0029】
C)端末通信部31
端末通信部31は、端末通信線TCLを介して、制御端末20と通信するパケット通信手段である。マスターユニットMUの端末通信部31は、制御パラメータPrを制御端末20から受信し、制御部36へ出力する。スレーブユニットSUの端末通信部31は使用されず、マスターユニットMUの端末通信部31は、マスターユニットMUの制御パラメータPrだけでなく、スレーブユニットSUの制御パラメータPrも取得する。
【0030】
D)ユニット間通信部32
ユニット間通信部32は、ユニット間通信線UCLを介して、電源ユニット10~13間でデータ通信を行うための手段である。ユニット間通信では、任意の電源ユニット10~13が、ユニット間通信線UCL上に送信データを出力することができる。送信データには、送信元又は送信先のユニット識別情報UIDが含まれ、各電源ユニット10~13は、ユニット間通信線UCL上の送信データを監視し、送信元又は送信先のユニット識別情報UIDに基づいて自ユニットに必要なデータを選択的に受信する。
【0031】
スレーブユニットSUの制御パラメータPrは、ユニット間通信により、マスターユニットMUからスレーブユニットSUへ送信される。また、各電源ユニット10~13で検出された検出電流Idet及び検出電圧Vdetは、バランス情報Biとして、ユニット間通信により、他の電源ユニット10~13へ送信される。
【0032】
E)PWM駆動部33
PWM駆動部33は、制御部36が生成する駆動信号Drに基づいて、PWM(Pulse Wide Modulation)信号を生成し、スイッチング回路421へ出力する。このため、電源主回路30は、駆動信号Drに応じた電圧を出力する。
【0033】
F)パラメータ記憶部34
パラメータ記憶部34は、制御部36が参照する各種パラメータを記憶する記憶手段であり、制御端末20から受信した制御パラメータPrを保持する。制御パラメータPrには、動作モード情報Cm、目標値Cr及びバランス調整先情報Cbが含まれる。
【0034】
動作モード情報Cmは、電源システム100の制御方法として、定電流動作(CC)又は定電圧動作(CV)を示すパラメータであり、各電源ユニット10~13に共通のパラメータである。目標値Crは、定電流動作(CC)時における目標電流Iref及び定電圧動作(CV)時における目標電圧Vrefである。バランス調整先情報Cbは、バランス調整を行う際に参照する1又は2以上の他の電源ユニット10~13の識別番号である。バランス調整先情報Cbは、制御端末20において、ユーザがユニット構成及び動作モードを指定することにより、自動的に生成される。このため、ユーザは、バランス調整を意識することなく、電源システム100を構築することができる。
【0035】
G)同期処理部35
同期処理部35は、電源ユニット10~13の動作タイミングを同期させるための手段であり、同期端子Z1,Z2を介して、動作タイミングを一致させるためのトリガー信号TGを送受信する。
【0036】
同期処理部35は、同期通信線ZCLに対しトリガー信号TGを出力することができ、同期通信線ZCL上のトリガー信号を検知することができる。トリガー信号TGは、一対の同期通信線ZCL間の導通状態に対応するパルス信号として出力される。このため、全ての電源ユニット10~13においてトリガー信号TGを迅速に検出することができるとともに、高いノイズ耐性を有し、誤動作を抑制することができる。
【0037】
マスターユニットMUの同期処理部35は、制御部36からトリガー送信信号sTGが入力されると、一対の同期通信線ZCLにトリガー信号TGを出力する。一方、マスターユニットMU及びスレーブユニットSUの各同期処理部35は、同期通信線ZCLを監視し、トリガー信号TGを検出すれば、トリガー受信信号rTGを制御部36へ出力する。
【0038】
H)制御部36
制御部36は、検出電圧Vdet又は検出電流Idetに基づいて、駆動信号Drを生成し、PWM駆動部33を介して、電源主回路30を制御する。また、端末通信部31及びユニット間通信部32を制御し、制御端末20及び他の電源ユニット10~13とのデータ通信を行う。さらに、同期処理部35を制御し、電源ユニット10~13間における出力開始タイミングの同期制御を行う。
【0039】
(3)同期処理部35の詳細構成
図3は、同期処理部35の詳細構成の一例を示した図である。同期処理部35は、2つの同期端子Z1,Z2を有し、2以上の電源ユニット10~13は、一対の同期通信線ZCLを用いて、端子Z1同士、端子Z2同士がそれぞれ接続されている。同期処理部35は、一対の同期通信線ZCL間を導通させることによりトリガー信号を送出し、また、同期通信線ZCL間の導通状態を検出することにより、トリガー信号を受信する。
【0040】
同期処理部35は、2つのフォトカプラ51,52を備える。フォトカプラ51は、トリガー信号を送出するための送信用フォトカプラであり、フォトカプラ52は、トリガー信号を受信するための受信用フォトカプラである。
【0041】
送信用フォトカプラ51は、制御部36からのトリガー送信信号sTGにより駆動される発光素子511と、発光素子511の発光時に端子Z1,Z2間を導通させる受光素子512とを備える。トリガー送信信号sTGが入力されていないとき、端子Z1,Z2間は非導通になる一方、制御部36からトリガー送信信号sTGが入力されているとき、端子Z1,Z2間が導通する。
【0042】
受信用フォトカプラ52は、一対の同期通信線ZCL間の導通により駆動される発光素子521と、発光素子521の発光時にトリガー受信信号rTGを出力する受光素子522とを備える。このため、一対の同期通信線ZCL間が非導通であるとき、トリガー受信信号rTGは出力されない一方、一対の同期通信線ZCL間が導通しているとき、トリガー受信信号rTGが制御部36へ出力される。
【0043】
全ての電源ユニット10~13の端子Z1,Z2は、一対の同期通信線ZCLを介してそれぞれ接続され、送信用フォトカプラ51の受光素子512が並列接続されている。このため、いずれか1つの電源ユニット10~13からトリガー信号が送信されると、一対の同期通信線ZCLが導通する。受信用フォトカプラ52の発光素子521は、送信用フォトカプラ51の受光素子512と直列に接続され、一対の同期通信線ZCL間における導通又は非導通の状態を検出し、トリガー受信信号rTGを生成する。
【0044】
図4は、電源システム100の出力開始動作の一例を示したタイミングチャートである。図中の(a)は、マスターユニットMU内のトリガー送信信号sTG、(b)及び(c)は、各電源ユニット10~13のトリガー受信信号rTG及び駆動信号Drである。ここでは、動作モードが定電圧(CV)動作であり、出力電圧Voを目標電圧Vrefに一致させるように出力制御が行われる。また、出力開始時には、所定の時間又は変化率で出力電圧Voを変化させた後に目標電圧Vrefに到達させるソフトスタート制御が行われている。マスターユニットMU及びスレーブユニットSUは、いずれもトリガー受信信号rTGに基づいて電源出力を開始する。
【0045】
マスターユニットMUは、ユニット間通信部32が、制御パラメータPrを全てのスレーブユニットSUへ送信した後、制御部36がトリガー送信信号sTGを生成し、同期処理部35が、同期通信線ZCLへトリガー信号TGを出力する。トリガー送信信号sTGは、所定幅のパルス信号として生成される。
【0046】
マスターユニットMU及びスレーブユニットSUでは、一対の同期通信線ZCLが導通すれば、同期処理部35がトリガー受信信号rTGを生成し、制御部36へ出力する。制御部36は、トリガー受信信号rTGの受信タイミングに基づいて駆動信号Drの出力を開始し、電源主回路30が電源出力を開始する。図中では、トリガー受信信号rTGの開始エッジに基づいて駆動信号Drを出力しているが、トリガー受信信号rTGの終了エッジに基づいて駆動信号Drを出力することもできる。
【0047】
トリガー受信信号rTGは、トリガー送信信号sTGと同様のパルス信号であり、トリガー送信信号sTGよりも遅延時間tDだけ遅れる。遅延時間tDは、主にフォトカプラ51,52の遅延時間であり、数十マイクロ秒程度である。このため、制御部36による制御周期、例えば250マイクロ秒と比べても十分に短い時間であり、無視することができる。
【0048】
ここで、ユニット間通信線UCLを介したデジタル通信により、電源ユニット10~13間で出力開始指令を伝達した場合、通信時間は、遅延時間tDよりも遥かに長くなるとともに、通信時間にばらつきが生じる。このため、電源ユニット10~13の出力開始タイミングに有意なずれが生じ、出力開始時の動作が不安定になるという問題がある。これに対し、同期通信線ZCLを介してトリガー信号を迅速に伝送することにより、電源出力の開始タイミングをほぼ同期させることができ、出力開始時における動作を安定化することができる。全く同様にして、出力中に目標値を変更する場合にも、絶縁通信線ZCLを介してトリガー信号を伝送することにより、電源ユニット10~13の出力変更タイミングをほぼ同期させることができ、出力変更時における動作を安定化することができる。
【0049】
また、トリガー信号を導通又は非導通の状態として伝達することにより、ノイズ耐性を向上させ、誤動作を防止することができる。さらに、フォトカプラを介在させることにより、ノイズ耐性をさらに向上させることができる。
【0050】
なお、フォトカプラ51,52の遅延時間tDは、極めて短い時間であるため、マスターユニットMUでは、トリガー受信信号rTGではなく、トリガー送信信号sTGに基づいて、駆動信号Drを出力することもできる。
【0051】
(4)出力開始時の動作
図5のステップS101~S106は、マスターユニットMUの動作の一例を示したフローチャートである。このフローチャートは、制御端末20からのデータ送信要求により開始される。
【0052】
端末通信部31が、端末通信線TCLを介して、制御端末20から制御パラメータPrを受信する(ステップS101)。受信データのうち、マスターユニット用の制御パラメータPrはパラメータ記憶部34に格納され、スレーブユニット用の制御パラメータPrは、ユニット間通信部32が、ユニット間通信線UCLを介して、各スレーブユニットSUへ送信する(ステップS102)。制御パラメータPrを受信した各スレーブユニットSUは、マスターユニットMUへデータ受信の確認返信を送信する。
【0053】
ユニット間通信部32は、各スレーブユニットSUから確認返信を受信する。全てのスレーブユニットSUから確認返信を受信した後、同期処理部35が、同期通信線ZCLにトリガー信号TGを送信する(ステップS103、S104)。当該トリガー信号TGを同期処理部35が受信すれば、制御部36が駆動信号Drを生成し、電源主回路30が出力を開始する(ステップS105、S106)。
【0054】
図6のステップS201~S204は、スレーブユニットSUの動作の一例を示したフローチャートである。このフローチャートは、マスターユニットMUからの制御パラメータPrの送信により開始される。
【0055】
ユニット間通信部32が、マスターユニットMUから制御パラメータPrを受信する(ステップS201)。受信した制御パラメータPrは、パラメータ記憶部34に格納され、マスターユニットMUに対し、受信の確認返信を送信する(ステップS202)。その後、同期処理部35がトリガー信号TGを受信すれば、制御部36が駆動信号Drを生成し、電源主回路30が出力を開始する(ステップS203、S204)。
【0056】
実施の形態2.
上記実施の形態では、同期通信線ZCLを介してトリガー信号を伝送し、電源ユニット10~13の出力開始タイミングを同期させる電源システム100の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、同期通信線ZCLを用いて、任意の電源ユニット10~13における異常発生を他の電源ユニット10~13へ迅速に伝達する例について説明する。
【0057】
電源システム100が負荷22に電源を供給しているときに、2以上の電源ユニット10~13のいずれかに故障が発生した場合、例えば、異常な温度上昇が検出された場合、当該電源ユニット10~13の出力低下により、他の電源ユニット10~13に過大な負荷がかかり、正常な電源ユニット10~13を損傷するおそれがある。このため、電源出力中の電源ユニット10~13のいずれかに異常が発見された場合、全ての電源ユニット10~13の出力動作を迅速に停止させることが望ましい。そこで、同期通信線ZCLを用いて、故障した電源ユニット10~13から正常な電源ユニット10~13へエラー信号ERを伝送することにより、全ての電源ユニット10~13の出力を迅速に停止させる。エラー信号ERは、出力開始用のトリガー信号TGと区別可能な信号として、同期信号線ZCLへ送信される。
【0058】
図7は、本発明の実施の形態2による電源システム100の動作の一例を示したタイミングチャートである。図中の(a)~(d)には、電源ユニット10~13の同期処理部35に入力されるトリガー送信信号sTGが示され、(e)には、各電源ユニット10~13の駆動信号Drが示されている。電源システム100の構成は、
図1の場合と同一であるため、重複する説明を省略する。
【0059】
トリガー信号TGは、マスターユニットMUのみが送信する信号であるのに対し、エラー信号ERは、マスターユニットMU又はスレーブユニットSUにかかわらず、任意の電源ユニット10~13が送信可能な信号である。また、トリガー信号TGは、出力開始のための信号であり、電源の出力開始前に送信されるのに対し、エラー信号ERは、異常の発生を知らせるとともに、出力を停止するための信号であり、電源の出力中に送信される。
【0060】
トリガー信号TGとエラー信号ERは、信号出力時間を異ならせることにより区別される。例えば、エラー信号ERのパルス幅wERは、トリガー信号TGのパルス幅wTGよりも長く、同期通信線ZCL上にいずれかの信号が出力された場合、その継続時間に基づいて、トリガー信号TG又はエラー信号ERのいずれであるのかを判別することができる。
【0061】
マスターユニットMU(UID=0)が、トリガー信号TGを出力した場合、各スレーブユニットSU(UID=1~3)は、信号継続時間がwTGであることから、その信号がトリガー信号TGであると判別することができる。各電源ユニット10~13の制御部36は、トリガー受信信号rTGの終了エッジのタイミングに基づいて、駆動信号Drを生成し、電源主回路30が出力を開始する。
【0062】
電源出力中のスレーブユニットSU(UID=2)に故障が発生した場合、当該電源ユニット13からエラー信号ERが出力される。この信号の継続時間がwERであることから、その信号がエラー信号ERであると判別することができる。各電源ユニット10~13の制御部36は、エラー信号ERの終了エッジのタイミングに基づいて、駆動信号Drの生成を停止し、電源主回路30が出力を停止する。
【0063】
図8は、本発明の実施の形態2による電源システム100の動作の他の例を示したタイミングチャートである。図中の(a)~(d)には、電源ユニット10~13の同期処理部35に入力されるトリガー送信信号sTGが示され、(e)には、各電源ユニット10~13の駆動信号Drが示されている。
【0064】
トリガー信号TGとエラー信号ERは、パルス信号の連続出力回数を異ならせることにより区別される。例えば、トリガー信号TG及びエラー信号ERを構成するパルス信号の幅は同一であるが、トリガー信号TGが、十分な時間間隔をあけて送信される単一パルスであるのに対し、エラー信号ERは、2つのパルス信号が短いインターバル時間tBを挟んで連続出力される。
【0065】
トリガー信号TG及びエラー信号ERを受信する電源ユニット10~13は、1つのパルス信号を検出した後、さらにインターバル時間tBを経過した後に、トリガー信号TG又はエラー信号ERのいずれであるのかを判別することができる。
【0066】
本実施の形態によれば、同期通信線ZCLを介して、トリガー信号TGだけでなく、エラー信号ERも伝送することができる。このため、いずれかの電源ユニット10~13に故障などの異常が発生した場合、全ての電源ユニットの出力を迅速に停止させることができ、正常な電源ユニットを損傷するのを防止することができる。また、エラー信号ERをトリガー信号TGと区別可能な信号として電源ユニット10~13間で伝送することにより、安価に実現することができる。
【符号の説明】
【0067】
100 電源システム
10~13 電源ユニット
20 制御端末
21 交流電源
22 負荷
30 電源主回路
301 電圧検出部
302 電流検出部
31 端末通信部
32 ユニット間通信部
33 PWM駆動部
34 パラメータ記憶部
35 同期処理部
36 制御部
41 絶縁トランス
412 トランス
421 スイッチング回路
422 インダクタンス
42 昇降圧DC/DCコンバータ
51 送信用フォトカプラ
52 受信用フォトカプラ
Bi バランス情報
Pr 制御パラメータ
Cm 動作モード情報
Cr 目標値
Cb バランス調整先情報
Dr 駆動信号
Idet 検出電流
Io 出力電流
Iref 目標電流
Vdet 検出電圧
Vo 出力電圧
Vref 目標電圧
MU マスターユニット
SU スレーブユニット
TCL 端末通信線
UCL ユニット間通信線
ZCL 同期通信線
TG トリガー信号
rTG トリガー受信信号
sTG トリガー送信信号
ER エラー信号
【要約】
【課題】 2以上の電源ユニットを任意に接続し、任意の動作モードで使用することができる電源システムを提供する
【解決手段】 2以上の電源ユニット10~13を備え、電源ユニット10~13が協働して共有の負荷22に対し直流電源を供給する電源システム100であって、電源ユニット10~13が、外部から入力される交流電源を直流電源に変換する電源主回路30と、電源主回路30を制御する制御部36と、一対の同期信号線ZCLにそれぞれ接続される一対の同期端子Z1,Z2と、異常検出時に一対の同期信号線ZCL間を導通させてエラー信号ERを出力する送信部35と、一対の同期信号線ZCL間の導通状態を検出し、エラー信号ERを受信する受信部35と、を備え、電源主回路30は、エラー信号ERの受信タイミングに基づいて、出力を停止する。
【選択図】
図8