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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20220303BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20220303BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20220303BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
G09G5/00 510A
G09G5/00 550C
G09G5/36 510V
G09G5/36 520K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017228506
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019098791
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀野 崇
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 守
(72)【発明者】
【氏名】舛屋 勇希
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102966(JP,A)
【文献】特開2016-064760(JP,A)
【文献】特開2016-078726(JP,A)
【文献】特開2017-193246(JP,A)
【文献】特開2010-156608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G01C 21/34
G02B 27/01
G09F 9/00
G09G 5/00
G09G 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認者に虚像として視認させる画像の表示光を車両上の被投影部に照射する投射部と、
案内地点より所定距離手前である案内表示地点において案内方向を指示する案内画像と、前記案内表示地点より所定距離手前である事前案内表示地点において前記案内画像を表示する前に表示される事前案内画像と、を前記車両の実景に重畳して表示するよう前記投射部を制御する表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、前記案内表示地点までの距離と前記事前案内画像の傾きとを相関させて、前記事前案内画像を変化させて表示させ、
前記事前案内画像は、前記車両の現在の進行方向を指示する画像であり、
前記表示制御部は、前記事前案内画像を前記進行方向に対して起立した起立状態から、前記案内表示地点までの距離が短くなるにつれて前記進行方向と直交する前記車両の幅方向に沿う軸回りに前記進行方向の手前から奥に向かい傾けた傾斜状態へと切り替えて表示させるヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記事前案内画像を3次元的に傾けて表示させる請求項1記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記案内画像は、右左折の方向を案内する画像である請求項1または請求項2のいずれか一項記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記事前案内画像は、前記車両の進行方向を指示する矢印である請求項1から請求項3のいずれか一項記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに搭載されるヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display、HUD)は、車両前方の実景に画像を重ねて表示することで、実景に情報を付加・強調した拡張現実(AR、Augmented Reality)を生成する。このようなHUDは、運転者の視線移動を極力抑えつつ、所望の情報を運転者に的確に提供することができる。これにより、HUDは、安全で快適な車両運行に寄与することができる。
【0003】
HUDが表示する画像の一つとして、案内画像がある。案内画像は、目的地の経路を実景の車線に重畳して表示されることで、走行すべき車線を強調して車両を経路に誘導する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-13590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
案内画像(画像)は、例えば右左折する地点が近づいた際に車線に重畳して表示される、進行方向を示す矢印である。これにより、画像は、運転者に事前に右左折する地点を知らせる。しかし、画像(虚像)の結像位置が車両から数十m程度前方である場合、画像が右左折を案内する地点と、運転者が画像から右左折を認識する地点とが一致しない恐れがある。すなわち、画像が表示された時点では、車両は右左折する地点の数十mまで接近している。このため、運転者が画像により右左折すべき地点を認識してから、減速、車線変更など右左折のための準備を行うための距離が短く、右左折すべき地点を通過してしまう恐れがある。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、運転者に確実に経路を案内することができるヘッドアップディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るヘッドアップディスプレイは、上述した課題を解決するために、視認者に虚像として視認させる画像の表示光を車両上の被投影部に照射する投射部と、案内地点より所定距離手前である案内表示地点において案内方向を指示する案内画像と、前記案内表示地点より所定距離手前である事前案内表示地点において前記案内画像を表示する前に表示される事前案内画像と、を前記車両の実景に重畳して表示するよう前記投射部を制御する表示制御部と、を備え、前記表示制御部は、前記案内表示地点までの距離と前記事前案内画像の傾きとを相関させて、前記事前案内画像を変化させて表示させる。
また、前記事前案内画像は、前記車両の現在の進行方向を指示する画像である。
さらに、前記表示制御部は、前記事前案内画像を前記進行方向に対して起立した起立状態から、前記案内表示地点までの距離が短くなるにつれて前記進行方向と直交する前記車両の幅方向に沿う軸回りに前記進行方向の手前から奥に向かい傾けた傾斜状態へと切り替えて表示させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るヘッドアップディスプレイにおいては、運転者に確実に経路を案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るヘッドアップディスプレイの実施形態であるヘッドアップディスプレイの構成図、およびヘッドアップディスプレイが表示する虚像の説明図。
図2】投射部を説明する構成図。
図3】HUDの表示制御部により実行される案内画像表示処理を説明するフローチャート。
図4】事前案内画像の参考例を示す説明図。
図5】案内画像の表示例を示す説明図。
図6】事前案内画像の他の表示例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るヘッドアップディスプレイの実施形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係るヘッドアップディスプレイは、例えば自動車やオートバイなどの車両に搭載される。本実施形態においては、本発明に係るヘッドアップディスプレイが自動車に搭載される例を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明に係るヘッドアップディスプレイの実施形態であるヘッドアップディスプレイ10の構成図、およびヘッドアップディスプレイ10が表示する虚像70の説明図である。図1では、車両1の前後方向をZ方向(Z軸、前方向がZ正方向)とし、車両1の左右方向(車両1の幅方向)をX方向(X軸、左方向がX正方向)とし、上下方向をY方向(Y軸、上方向がY正方向)とする。
【0012】
図2は、投射部40を説明する構成図である。
【0013】
ヘッドアップディスプレイ10(Head Up Display、HUD10)は、車両1の内部に設けられ、一部の光を透過し、一部の光を反射する被投影部2である車両1のフロントウインドシールドの一部に向けて、表示光50を投射する。HUD10は、視認者(運転者)の視点3を置くと想定される領域に、被投影部2に反射された表示光50によりアイボックス4を形成する。視認者は、視点3をこのアイボックス4内に配置することでHUD10が表示する虚像70の全体を、車両1前方の実景と重ねて視認することができる。一方、視認者は、視点3がアイボックス4から外れると、虚像70の一部が視認できなくなる(視認しづらくなる)。
【0014】
HUD10は、後述するように、表示領域100内で、X方向、Y方向、Z方向に虚像70が表示される位置を調整することができる。すなわち、HUD10は、特にアイボックス4から虚像70が結像されるまでの間のZ軸方向の距離である表示距離140を調整することができ、虚像70の奥行きを表現することができる。
【0015】
HUD10は、通信インターフェース5を介して、位置情報取得部6と通信可能に接続されている。位置情報取得部6は、GPS(Global Positioning System)などにより車両1の位置情報を取得する。また、HUD10は、通信インターフェース5を介して、車両1に設けられた車両ECU、車載カメラ、センサ、その他の車載機器、携帯機器、他車両、路上の通信インフラなどから情報を受信する。
【0016】
通信インターフェース5は、例えば、USBポート、シリアルポート、パラレルポート、OBDII、その他任意の適切な有線通信ポートにより有線通信機能を有している。車両1からのデータケーブルは、HUD10に情報を伝達するために、通信インターフェース5を介して、HUD10の情報取得部20に連結される。なお、通信インターフェース5は、例えば、Bluetooth(登録商標)通信プロトコル、IEEE802.11プロトコル、IEEE802.16プロトコル、共有無線アクセスプロトコル、ワイヤレスUSBプロトコル、その他任意の適切な無線電信技術を用いた無線通信インターフェースであってもよい。
【0017】
HUD10は、情報取得部20と、表示制御部30と、投射部40と、を有している。
【0018】
情報取得部20は、通信インターフェース5から各種情報を取得する入力インターフェースである。HUD10は、情報取得部20から各種情報を入力し、表示する虚像70に反映する。
【0019】
表示制御部30は、車両1の実景に重畳して虚像(案内画像および事前案内画像)を表示するため投射部40を制御する。表示制御部30は、距離判定部31と、表示データ生成部32と、駆動部33と、を有している。
【0020】
距離判定部31は、位置情報取得部6から取得した位置情報に基づいて、案内画像および事前案内画像(後述)を生成および表示するタイミングを判定する。表示データ生成部32は、距離判定部31の判定結果に基づき、案内画像および事前案内画像に関するデータを含む表示データを生成する。表示データは、表示データ生成部32が調整した表示距離140に各虚像70を表示させるべく投射部40を駆動するための表示距離データを含む。駆動部33は、表示データ生成部32が生成した表示データに基づき、投射部40を駆動する。本実施形態において表示制御部30により実行される具体的な制御は、後述する。
【0021】
投射部40は、視認者に虚像として視認させる画像の表示光50を車両1上の被投影部2に照射する。投射部40は、立体画像表示部41と、リレー光学部42と、を有している。
【0022】
立体画像表示部41は、第1の3D実像43を形成する。リレー光学部42は、第1の3D実像43を拡大して第2の3D実像44を結像する。また、リレー光学部42は、この第2の3D実像44の表示光50を投射部40の外部の被投影部2に向けて投射する。
【0023】
立体画像表示部41は、3次元的に形成される第1の3D実像43を生成する。立体画像表示部41は、画像投射部45と、振動スクリーン46と、を有している。
【0024】
画像投射部45は、表示制御部30から入力される表示データに基づいてその表示データに含まれる映像を表す映像光(図示せず)を出射するプロジェクタである。画像投射部45は、表示距離データ(後述)に応じて、映像を表示するタイミングを調整し、振動スクリーン46の振動位置に同期して投影する映像を高速に切り替える。すなわち、画像投射部45は、表示距離データに基づき、振動スクリーン46の振動位置に適した映像を振動スクリーン46に投影する。
【0025】
振動スクリーン46は、例えば、画像投射部45の映像を一定の角度範囲に拡散させるポリカーボネート製の拡散フィルムである。振動スクリーン46は、画像投射部45からの映像光を受けて実像を結像し、画像投射部45が出射する映像光の光軸に沿って往復運動する。振動スクリーン46は、連続的または断続的に振動位置を示す信号を画像投射部45に送信することができる。画像投射部45は、振動位置を示す信号を基準に、表示距離データに応じた位置に虚像70が視認されるように、映像を表示するタイミングを調整してもよい。
【0026】
振動スクリーン46は、表示制御部30の制御に基づいて、スクリーン振動方向における振幅を一定に保ちつつ、虚像70の奥行き方向Zの長さを調整する。すなわち、表示制御部30は、振動スクリーン46がその振幅のうち第1の範囲に位置している期間においては表示光を出射せず、振動スクリーン46がその振幅のうち第2の範囲に位置している期間においては表示光を出射する。HUD10は、これら第1の範囲および第2の範囲の位置ならびに比率を調整することで、虚像70の奥行き方向Zにおける位置および長さを調整する。
【0027】
具体的には、振動スクリーン46は、60[Hz]以上の周波数で振動し、この周期1/60[sec]内で、画像投射部45が複数フレームの異なる映像を投射することで各振動位置に複数フレームの異なる映像(実像)を結像する。すなわち、複数フレームの実像が振動スクリーン46の振動方向で重なることで第1の3D実像43が生成される。
【0028】
なお、表示制御部30は、振動スクリーン46の振幅を変化させることで、虚像70の奥行き方向Zの長さを調整してもよい。
【0029】
リレー光学部42は、立体画像表示部41が生成した第1の3D実像43の光を受け、この第1の3D実像43を拡大した第2の3D実像44を結像する。その後、リレー光学部42は、この第2の3D実像44の光である表示光50を被投影部2に向けて投射する。
【0030】
リレー光学部42は、第1のリレー光学部47と、第2のリレー光学部48と、第3のリレー光学部49と、を有している。
【0031】
第1のリレー光学部47は、立体画像表示部41が生成した第1の3D実像43の光を受光するレンズ群である。第1のリレー光学部47は、第1の3D実像43における振動スクリーン46の各振動位置に結像した各映像を、異なる倍率で拡大する機能を有している。図2においては、第1のリレー光学部47は模式的に1枚のレンズとして図示されているが、実際には複数の薄膜レンズを合成した合成レンズである。
【0032】
第2のリレー光学部48は、第1のリレー光学部47から第1の3D実像43の光を入射し、この入射した光を第3のリレー光学部49に向けて反射する。また、第2のリレー光学部48は、第1のリレー光学部47の光学的パワーと協働して第1の3D実像43を拡大した第2の3D実像44を、第2のリレー光学部48と第3のリレー光学部49との間で結像させる。第2のリレー光学部48は、例えば、正の光学的パワーを有する凹状の反射面を有するミラーである。なお、第2のリレー光学部48が担う光学的作用を第1のリレー光学部47が有する場合には、第2のリレー光学部48は省略されてもよい。
【0033】
第3のリレー光学部49は、第2の3D実像44の光である表示光50を被投影部2に向けて反射する。第3のリレー光学部49は、凹状の反射面を有するミラーである。第3のリレー光学部49は、被投影部2の曲面形状による像の歪みを補正する機能と、第2の3D実像44を拡大する機能と、を有する。
【0034】
図1の左図を用いて、HUD10が表示する虚像70の例を説明する。
【0035】
虚像70は、一例として、奥行き感を表現しない2D(two-dimensional)虚像の第1の虚像71と、奥行き感を表現する3D(three-dimensional)虚像の第2の虚像72および第3の虚像73と、である。第1の虚像71は、表示距離141のXY平面に平面的に結像され、視認者に遠近感を感じさせない二次元的な虚像である。第1の虚像71は、概ね視認者の目の焦点を調整することなく第1の虚像71の表示全体を明確に認識させることができる。
【0036】
第2の虚像72は、表示距離143のXY平面上に一端があり、表示距離143より視認者から離れた(Z正方向に離れた)表示距離144のXY平面上に他端がある。第2の虚像72は、平面的に結像され、視認者に奥行き感を感じさせる。第2の虚像72は、視認者の目の焦点の調整により第2の虚像72の表示全体を明確に認識させ、立体的な印象を与えることができる。
【0037】
第3の虚像73は、表示距離142のXY平面上に一端があり、表示距離142より視認者から離れた(Z正方向に離れた)表示距離143のXY平面上に他端がある。第3の虚像73は、体積を有するような立体的なオブジェクトとして結像され、視認者に立体感を感じさせる。
【0038】
表示領域100は、虚像70が表示される領域である。表示領域100は、一または複数の虚像70のすべてを取り囲むX軸、Y軸、およびZ軸に沿った最小領域であり、虚像70の周りを取り囲むバウンディンボックスとも呼ばれる矩形領域である。表示領域100は、前面110と、後面120と、を有している。前面110は、視認者近傍のXY平面である。後面120は、視認者から離れたXY平面である。
【0039】
また、長さDは、前面110と後面120との間の奥行き方向Zの距離である。すなわち、長さDは、最も視認者の近傍に表示される虚像70と、最も視認者から離れて表示される虚像70との間の長さ(距離)である。長さDは、表示する虚像70の表示距離140によって変化する。例えば、虚像70のうち最も視認者から離れた位置に表示される第2の虚像72をより視認者側に表示すると、長さDは短くなる。
【0040】
長さDを短くする場合、例えば、虚像70の奥行き方向Zを縮小する。具体的には、前面110を縮小させる基準面とした場合、前面110の位置は固定のまま、表示領域100内に表示される虚像71、72、73を、前面110に向けて縮小することで長さDを短くすることができる。一方、長さDを長くする場合、例えば、虚像70の奥行き方向Zを拡大する。具体的には、前面110を拡大させる基準面とした場合、前面110の位置は固定のまま、表示領域100内に表示される虚像71、72、73を、後面120に向けて拡大することで長さDを長くすることができる。
【0041】
本実施形態におけるHUD10は、視認者に視認させる虚像の一例として、案内画像と、事前案内画像と、を表示する。これら案内画像および事前案内画像は、実景の車線に重畳して表示されることで、走行すべき車線を強調して車両1を経路に誘導することができる。案内画像および事前案内画像は、3次元的に表現する3D虚像である。
【0042】
具体的には、案内画像は、案内地点より所定距離(例えば数十m)手前である案内表示地点において経路の案内方向を指示する。案内方向は、例えば右左折の方向や、車線変更の方向であり、案内画像は右左折の方向や車線変更の方向を指示する画像である。案内画像は、例えば車両1が右折する案内地点の30m手前(案内表示地点)において、車両1が右折を完了するまでの間に表示される、右方向を指示する矢印である。
【0043】
事前案内画像は、案内表示地点より所定距離(例えば数十m)手前である事前案内表示地点において、案内画像を表示する前に表示される画像である。すなわち、事前案内画像は、案内地点に近づいたことを事前に通知することを意図した画像である。
【0044】
以下、案内画像および事前案内画像を表示する案内画像表示処理について、具体的に説明する。
【0045】
図3は、HUD10の表示制御部30により実行される案内画像表示処理を説明するフローチャートである。案内画像表示処理は、例えば運転者などにより経路案内が設定されることにより経路案内が開始された後、経路案内が終了するまでの間に実行される。図3においては、案内方向が右折方向であり、案内画像が案内地点において右折方向を指示する画像である例を用いて説明する。また、案内表示地点は、右折する地点(案内地点)から30m手前とする。事前案内表示地点は、案内表示地点から150m手前とする。
【0046】
ステップS1において、距離判定部31は、事前案内表示地点に車両1が到達したか否かを判定する。具体的には、距離判定部31は、案内地点、案内表示地点、および事前案内表示地点に関する位置情報を予め取得している。距離判定部31は、位置情報取得部6より車両1の現在の位置情報を取得する。距離判定部31は、取得した現在の位置情報と、事前案内表示地点に関する位置情報とを比較する。これにより、距離判定部31は、事前案内表示地点に車両1が到達したか、すなわち車両1が案内表示地点から150m手前に到達したか否かを判定する。
【0047】
距離判定部31が未だ事前案内表示地点に車両1が到達していないと判定した場合(ステップS1のNO)、到達したと判定されるまでステップS1が繰り返される。
【0048】
一方、距離判定部31が事前案内表示地点に車両1が到達したと判定した場合(ステップS1のYES)、ステップS2において、表示制御部30は、事前案内画像に関する表示データを生成し、投射部40を制御して表示させる。具体的には、表示データ生成部32は、案内表示地点(案内地点)までの距離と事前案内画像の傾きとを相関させて、事前案内画像を3次元的に変化させる。表示データ生成部32は、事前案内画像の傾きの度合で、右折の地点までの距離を運転者に直感的に認識させる。
【0049】
ここで、図4は、事前案内画像150の参考例を示す説明図である。図4においては、事前案内画像150は、車両1の実景である車線151に、重畳されて表示されている。
【0050】
表示データ生成部32は、車両1の現在の進行方向(Z正方向)を指示する画像としての矢印である事前案内画像150を表示データとして生成する。事前案内画像150は、車線151に沿って奥行き感を持つ、例えば第2の虚像72のような3D虚像である。このとき、距離判定部31は、位置情報取得部6より適宜車両1の現在の位置情報を取得し、取得した現在の位置情報と、案内表示地点に関する位置情報とを比較する。表示データ生成部32は、この比較結果を適宜取得する。表示データ生成部32は、車両1が案内表示地点に近づくにつれて、進行方向(Z正方向)に沿う軸回りに案内方向である右方向(X負方向)に向かい徐々に事前案内画像150を傾けるように、表示データを生成する。
【0051】
例えば、表示データ生成部32は、案内表示地点の150m手前から100m手前までの間においては、図4(a)に示すようなZ軸に対して傾きを有していない矢印の表示データを生成する。表示データ生成部32は、案内表示地点の100m手前から案内表示地点までの間においては、案内表示地点と車両1との距離が小さくなるにつれて、徐々に矢印を時計回りに(右方向に)Z軸に対して回転させるように、案内表示地点までの距離に相関して表示データを生成する。表示データ生成部32は、車両1が案内表示地点に到達した時点において、図4(b)に示すような、矢印がZ軸に対して最大の傾きである約45度傾くような表示データを生成する。
【0052】
駆動部33は、生成された表示データに基づいて投射部40を駆動することで、事前案内画像150を投射部40に表示させる。
【0053】
ステップS3において、距離判定部31は、案内表示地点に車両1が到達したか否かを判定する。具体的には、距離判定部31は、取得した現在の位置情報と、案内表示地点に関する位置情報とを比較する。これにより、距離判定部31は、案内表示地点に車両1が到達したか、すなわち車両1が右折する地点から30m手前に到達したか否かを判定する。
【0054】
距離判定部31が未だ案内表示地点に車両1が到達していないと判定した場合(ステップS3のNO)、到達したと判定されるまでステップS2が繰り返される。
【0055】
一方、距離判定部31が案内表示地点に車両1が到達したと判定した場合(ステップS3のYES)、ステップS4において、表示データ生成部32は、案内画像を生成し、表示する。
【0056】
ここで、図5は、案内画像155の表示例を示す説明図である。図5においては、案内画像155は、車両1の実景である車線156であり、右折する地点である案内地点157に、重畳されて表示されている。
【0057】
表示データ生成部32は、右折方向(X負方向)を指示する画像としての矢印である案内画像155を表示データとして生成する。案内画像155は、車線156の路面に沿って奥行き感を持つ、例えば第2の虚像72のような3D虚像である。駆動部33は、生成された表示データに基づいて投射部40を駆動することで、案内画像155を投射部40に表示させる。
【0058】
距離判定部31が車両1が右折を完了したことを検出した場合、案内画像表示処理は終了する。
【0059】
なお、事前案内画像は、案内表示地点までの距離と事前案内画像の傾きとを相関させて、事前案内画像を変化させて表示させれば、図4の例に限らない。例えば、図6は、事前案内画像150の他の表示例を示す説明図である。
【0060】
表示データ生成部32は、車両1の現在の進行方向(Z正方向)を指示する画像としての矢印である事前案内画像158を表示データとして生成する。事前案内画像158は、車線159に沿って奥行き感を持つ、例えば第2の虚像72のような3D虚像である。表示データ生成部32は、車両1が案内表示地点に近づくにつれて、進行方向に直交する車両1の幅方向(X方向)に沿う軸回りに、進行方向の手前から奥に向かい徐々に事前案内画像158を傾けるように、表示データを生成する。
【0061】
例えば、表示データ生成部32は、案内表示地点の150m手前から100m手前までの間においては、図6(a)に示すようなZ軸に対して90度起立した(Y方向に沿った)矢印の表示データを生成する。表示データ生成部32は、案内表示地点の100m手前から案内表示地点までの間においては、案内表示地点と車両1との距離が小さくなるにつれて、徐々に矢印を手前から奥に倒すようにX軸に対して回転させるように、案内表示地点までの距離に相関して表示データを生成する。表示データ生成部32は、車両1が案内表示地点に到達した時点において、図6(b)に示すような、矢印がZ軸に沿う表示データを生成する。
【0062】
このような本実施形態におけるHUD10は、案内画像を車線に重畳表示する前に、運転者に対して案内地点に近づいたことを直感的に認識させるための事前案内画像を表示することができる。これにより、HUD10は、運転者に確実に経路を案内することができる。特に、HUD10は、事前案内画像を3次元的に状態を遷移させて表示できるため、虚像の結像距離によらずに、運転者に対してより直感的に認識させることができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均などの範囲に含まれる。
【0064】
例えば、透過反射部としてのウィンドウシールドは、板状のハーフミラーやホログラム素子などによって構成される専用のコンバイナなどの専用部品であってもよい。
【0065】
また、投射部40は、パララックスバリア方式やレンチキュラレンズ方式などを含む視差分割方式、ライトフィールド方式やホログラム方式を含む空間再生方式、特開2016-212318に開示されているように透過率を調整可能な調光層を有する複数のスクリーンを厚み方向に重ねて配置し、複数のスクリーンに向けてプロジェクタが投射像を高速で切り替えながら投影し、投射像の高速切り替えに応じて、複数のスクリーンがそれぞれ調光率を適宜調整することで3Dの実像を内部に表示する透過率調整スクリーン方式、特開2004-168230に開示されているように複数の液晶表示素子を厚み方向に重ねることで3Dの実像を内部に表示する方式などを採用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 車両
2 被投影部
3 視点
4 アイボックス
5 通信インターフェース
6 位置情報取得部
10 ヘッドアップディスプレイ(HUD)
20 情報取得部
30 表示制御部
31 距離判定部
32 表示データ生成部
33 駆動部
40 投射部
41 立体画像表示部
42 リレー光学部
43 第1の3D実像
44 第2の3D実像
45 画像投射部
46 振動スクリーン
47 第1のリレー光学部
48 第2のリレー光学部
49 第3のリレー光学部
50 表示光
70 虚像
71 第1の虚像
72 第2の虚像
73 第3の虚像
100 表示領域
110 前面
120 後面
140、141、142、143、144 表示距離
150、158 事前案内画像
151、156、159 車線
155 案内画像
157 案内地点
図1
図2
図3
図4
図5
図6