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特許7033272画像検査装置、画像検査システムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】画像検査装置、画像検査システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/33 20170101AFI20220303BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20220303BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20220303BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20220303BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20220303BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G06T7/33
H04N1/00 002A
G03G21/00 510
B41J29/393 105
B41J29/393 101
B41J29/38
G01N21/892 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018034347
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019149078
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121599
【弁理士】
【氏名又は名称】長石 富夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】大木 亮
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-123812(JP,A)
【文献】特開2014-117841(JP,A)
【文献】特開2016-035418(JP,A)
【文献】特開2017-228165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/33
H04N 1/00
G03G 21/00
B41J 29/393
B41J 29/38
G01N 21/892
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に画像を形成する画像形成装置から出力された用紙とその周囲の背景を含む領域を光学的に読み取る読み取り装置から読み取り画像を取り込む取込部と、
前記取込部で取り込んだ、前記画像形成装置から出力された第1の用紙を前記読み取り装置で読み取って得た第1の読み取り画像と、前記第1の用紙に画像形成された画像と同じ画像が画像形成されて前記画像形成装置から出力された第2の用紙を前記読み取り装置で読み取って得た第2の読み取り画像とを、画像内の特徴点で位置合わせして比較する画像比較部と、
を有し、
前記画像比較部は、前記第1の読み取り画像の用紙領域内にある画像がエッジ検出可能か否かに応じて、前記第1の読み取り画像と前記第2の読み取り画像とを位置合わせする方法を切り替える
ことを特徴とする画像検査装置。
【請求項2】
用紙に画像を形成する画像形成装置から出力された用紙とその周囲の背景を含む領域を光学的に読み取る読み取り装置から読み取り画像を取り込む取込部と、
前記取込部で取り込んだ、前記画像形成装置から出力された第1の用紙を前記読み取り装置で読み取って得た第1の読み取り画像と、前記第1の用紙に画像形成された画像と同じ画像が画像形成されて前記画像形成装置から出力された第2の用紙を前記読み取り装置で読み取って得た第2の読み取り画像とを、画像内の特徴点で位置合わせして比較する画像比較部と、
を有し、
前記画像比較部は、前記第1の読み取り画像の用紙領域内画像が白紙か否かに応じて、前記位置合わせする方法を切り替える
ことを特徴とする画像検査装置。
【請求項3】
前記画像比較部は、前記第1の読み取り画像の用紙領域内画像が白紙でない場合は、その画像がエッジ検出可能な画像か否かに応じて、前記位置合わせする方法を切り替える
ことを特徴とする請求項に記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記画像比較部は、
前記第1の読み取り画像の用紙領域内画像が白紙でない場合は、用紙領域外を除去して、前記第1の読み取り画像と前記第2の読み取り画像を位置合わせし、
前記第1の読み取り画像の用紙領域内画像が白紙の場合は、用紙領域外を除去せずに、前記第1の読み取り画像と前記第2の読み取り画像を位置合わせする
ことを特徴とする請求項またはに記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記画像比較部は、用紙領域外を除去して、前記第1の読み取り画像と前記第2の読み取り画像を位置合わせする場合に、用紙領域内の画像がエッジ検出可能か否かに応じて、前記特徴点の検出方法を切り替える
ことを特徴とする請求項に記載の画像検査装置。
【請求項6】
前記第1の読み取り画像の用紙領域内にある画像として、前記第1の用紙に前記画像形成装置で画像形成された画像を用いる
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【請求項7】
用紙に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置から出力された用紙とその周囲の背景を含む領域を光学的に読み取る読み取り装置と、
請求項1乃至のいずれか1つに記載の画像検査装置と、
を含む
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
情報処理装置を、
請求項1乃至のいずれか1つに記載の画像検査装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同じ内容が印刷された第1の用紙の読み取り画像と第2の用紙の読み取り画像とを位置合わせして比較する画像検査装置、画像検査システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大量の印刷は、通常、何度か試し印刷を行って各種の調整を行い、印刷内容に問題のないことが見本により確認できたら本印刷を開始する。しかし、本印刷された用紙の画像が、何らかの要因で、見本に対して色ズレが生じたり、歪が生じたりすることがある。そこで、近年は、印刷装置の後段の搬送路上にスキャナを設け、印刷出力される各用紙の画像を読み取って検査することが行われる。この検査では、見本を印刷出力する際にスキャナで読み取って得た画像を基準の画像として保存しておき、本印刷で印刷した用紙をスキャナで読み取って得た画像と、保存してある基準の画像とを比較する。
【0003】
画像を比較する場合、それぞれの画像内の特徴点を抽出し、その特徴点の位置関係から回転角度のズレ量、倍率(X/Y)のズレ量、シフト(X/Y)のズレ量などを算出し、そのズレ量を元に画像補正(アフィン変換等)を実施後に比較を行うのが一般的である。
【0004】
上記のように画像を比較して画像検査を行う上で、画像の位置合わせの精度が検査精度に大きく影響する。
【0005】
画像同士を位置合わせして検査する技術として、下記特許文献1には、比較する画像をそれぞれ複数の細かい領域に分割し、分割後の領域毎で位置合わせして差分を検出し、検出された差分が閾値を超える分割領域が特定のものに集中しているかどうか等に基づいて、位置合わせが正しく行われたか否かを判定する技術が開示されている。
【0006】
また下記特許文献2には、スキャナの読み取り画像から検出されたスジが、スキャナで読み取る際に生じたスキャナスジであるか否かを判定する方法が開示される。具体的には、用紙コーナなどから読み取り時のスキューを検出し、このスキュー値に対して、検出したスジが主走査方向に移動がない場合はスキャナスジと判定する。
【0007】
また、下記特許文献3には、基準点の位置ズレ量を算出し、差分の大きい部分を画像比較領域から除外する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-59744号公報
【文献】特開2014-155113号公報
【文献】特開2014-199248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
印刷装置の後段に設けたインラインのスキャナで用紙を読み取って画像同士を位置合わせして検査する場合の問題点としては、読み取り対象の用紙の位置や角度がばらつくことの他に、以下のような問題がある。
【0010】
1)用紙に印刷される画像(コンテンツ)は、用紙に対して常に一定の位置や角度に印刷されるとは限らない。
【0011】
2)用紙に印刷される画像(コンテンツ)は、必ずしも特徴点を検出可能な画像であるとは限らない。
【0012】
上記1)の問題点を図8に基づいて説明する。見本の用紙を読み取って得た画像(見本の画像)では、用紙も用紙に印刷された文字も傾きのない状態である。一方、検査対象の用紙を読み取った画像(検査印刷の画像)では、用紙は若干傾いているが文字には傾きがない。このような画像は、印刷装置において用紙が傾いた状態のまま文字の印刷が行われ、その傾いた状態のまま用紙が搬送されてインラインのスキャナで読み取られた場合に生じる。
【0013】
画像内のエッジを基準に特徴点を抽出して位置合わせする方法を用いると、用紙とその周囲を含む範囲をスキャナで読み取って得た画像の場合、用紙のエッジが特徴点を求める要素として支配的になる。そのため、図8に示す2つの画像を位置合わせすると、用紙のエッジが一致するように一方の画像を回転させることになり、文字については、回転された文字と回転されない文字の比較となって検査精度が悪化する。
【0014】
用紙の傾きに関する問題を回避するために用紙の周囲を除外して、用紙領域内の画像のみを基準に画像同士の位置合わせすることが考えられる。しかし、本印刷の用紙に印刷される画像(コンテンツ)は、テストチャートなど異なり、様々なので、上記2)の問題、すなわち、印刷されたコンテンツが位置合わせに利用可能なエッジや特徴点を含まない場合がある。なお、エッジや特徴点を含まないコンテンツの例としては、白紙、用紙全体に及ぶグラデーションなどがある。図9は、コンテンツが白紙の場合の例を示している。用紙の周囲を除外すると、全体が白紙の画像になるためエッジを検出することができず、画像同士を位置合わせすることができない。
【0015】
上記1)、2)の問題を残したまま、検査の合格に画像比較での高い一致性を求めると、本来、検査合格とすべき用紙までも不合格になる誤判定が増えるため、検査精度を高めることができないという問題があった。また、前述した特許文献1~3に開示の技術では上記の1)、2)の問題を対応することはできない。
【0016】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、多様なコンテンツに対応しつつ用紙が傾斜しても位置合わせを適切に行って画像同士を比較検査することのできる画像検査装置およびそのプログラム、画像形成システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0018】
[1]用紙に画像を形成する画像形成装置から出力された用紙とその周囲の背景を含む領域を光学的に読み取る読み取り装置から読み取り画像を取り込む取込部と、
前記取込部で取り込んだ、前記画像形成装置から出力された第1の用紙を前記読み取り装置で読み取って得た第1の読み取り画像と、前記第1の用紙に画像形成された画像と同じ画像が画像形成されて前記画像形成装置から出力された第2の用紙を前記読み取り装置で読み取って得た第2の読み取り画像とを、画像内の特徴点で位置合わせして比較する画像比較部と、
を有し、
前記画像比較部は、前記第1の読み取り画像の用紙領域内にある画像がエッジ検出可能か否かに応じて、前記第1の読み取り画像と前記第2の読み取り画像とを位置合わせする方法を切り替える
ことを特徴とする画像検査装置。
【0019】
上記発明では、第1用紙を読み取って得た第1の読み取り画像の用紙領域内にある画像の内容に応じて、第1の読み取り画像と第2の読み取り画像とを位置合わせする方法を切り替える。
【0023】
用紙に画像を形成する画像形成装置から出力された用紙とその周囲の背景を含む領域を光学的に読み取る読み取り装置から読み取り画像を取り込む取込部と、
前記取込部で取り込んだ、前記画像形成装置から出力された第1の用紙を前記読み取り装置で読み取って得た第1の読み取り画像と、前記第1の用紙に画像形成された画像と同じ画像が画像形成されて前記画像形成装置から出力された第2の用紙を前記読み取り装置で読み取って得た第2の読み取り画像とを、画像内の特徴点で位置合わせして比較する画像比較部と、
を有し、
前記画像比較部は、前記第1の読み取り画像の用紙領域内画像が白紙か否かに応じて、前記位置合わせする方法を切り替える
ことを特徴とする画像検査装置。
【0024】
上記発明では、用紙領域内に有効な画像が存在する(白紙でない)か否かに応じて、位置合わせ方法を切り替える。位置合わせ方法には、背景を削除するか否か、およびまたは特徴点検出のアルゴリズムが含まれる。
【0025】
]前記画像比較部は、前記第1の読み取り画像の用紙領域内画像が白紙でない場合は、その有効な画像がエッジ検出可能な画像か否かに応じて、前記位置合わせする方法を切り替える
ことを特徴とする[]に記載の画像検査装置。
【0026】
上記発明では、用紙領域内が白紙でなければ、用紙領域内の画像がエッジ検出可能な画像か否かに応じて、位置合わせ方法(特徴点検出アルゴリズムなど)を切り替える。
【0027】
]前記画像比較部は、
前記第1の読み取り画像の用紙領域内画像が白紙でない場合は、用紙領域外を除去して、前記第1の読み取り画像と前記第2の読み取り画像を位置合わせし、
前記第1の読み取り画像の用紙領域内画像が白紙の場合は、用紙領域外を除去せずに、前記第1の読み取り画像と前記第2の読み取り画像を位置合わせする
ことを特徴とする[]または[]に記載の画像検査装置。
【0028】
上記発明では、白紙でなければ、用紙周囲の背景部分を除去して位置合わせし、白紙の場合は、用紙周囲の背景部分を除去せずに位置合わせする。
【0029】
]前記画像比較部は、用紙領域外を除去して、前記第1の読み取り画像と前記第2の読み取り画像を位置合わせする場合に、用紙領域内の画像がエッジ検出可能か否かに応じて、前記特徴点の検出方法を切り替える
ことを特徴とする[]に記載の画像検査装置。
【0030】
上記発明では、用紙周囲の背景を削除した場合は、用紙領域内の画像がエッジ検出可能か否かに応じて、特徴点の検出方法(アルゴリズム等)を切り替える。
【0031】
]前記第1の読み取り画像の用紙領域内にある画像として、前記第1の用紙に前記画像形成装置で画像形成された画像を用いる
ことを特徴とする[1]乃至[]のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【0032】
上記発明では、第1の読み取り画像の用紙領域内にある画像として、画像形成装置が印刷時に使用した画像データを使用する。
【0033】
]用紙に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置から出力された用紙とその周囲の背景を含む領域を光学的に読み取る読み取り装置と、
[1]乃至[]のいずれか1つに記載の画像検査装置と、
を含む
ことを特徴とする画像形成システム。
【0034】
]情報処理装置を、
[1]乃至[]のいずれか1つに記載の画像検査装置として機能させるプログラム。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る画像検査装置、プログラム、画像形成システムによれば、多様なコンテンツに対応しつつ用紙が傾斜しても位置合わせを適切に行って画像同士を比較検査することができ、検査精度を高めつつ誤判定を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成システムの概略構成を示す図である。
図2】インラインスキャナ内の通紙経路の一例を示す図である。
図3】画像形成システムにおける用紙やデータの流れと画像検査装置の内部構成を示す図である。
図4】画像形成システムが画像比較による検査を行いながら印刷する処理を示す流れ図である。
図5】白紙でなくエッジ検出可能な読み取り画像に対する位置合わせの手順を示す図である。
図6】白紙かつエッジ検出できない読み取り画像に対する置合わせの手順を示す図である。
図7】白紙でなくかつエッジ検出できない読み取り画像に対する置合わせの手順を示す図である。
図8】従来の画像検査の一例(印刷時に用紙が傾斜した場合)を示す図である。
図9】従来の画像検査の他の一例(背景を除去し、用紙が白紙の場合)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づき本発明の各種実施の形態を説明する。
【0038】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成システム3の概略構成を示している。画像形成システム3は、外部の制御装置やサーバ2から印刷データを受信し、該印刷データに基づいて用紙に画像を形成(印刷)して出力する画像形成装置5と、画像形成装置5の後段に接続されたリレーユニット6と、リレーユニット6の後段に接続されたインラインスキャナ10と、インラインスキャナ10の後段に接続されたフィニッシャ8と、用紙毎に印刷画像が正常か否かを検査する画像検査装置20を備えている。
【0039】
画像形成装置5は、無端で環状に掛け渡された中間転写ベルトと、この中間転写ベルトに沿って配置されたC,M,Y,K各色の像形成ユニットを備え、像形成ユニットによって中間転写ベルト上にC,M,Y,K各色のトナー像を重畳してフルカラーのトナー像を形成する。そして、画像形成装置5は、中間転写ベルト上に形成したトナー像を、給紙トレイから搬送されてきた用紙に転写し、さらに定着器で用紙に熱定着させた後、該用紙を後段の装置に向けて出力する。画像形成装置5は、上記のようなタンデム式の電子写真方式のものに限定されず、用紙に画像を形成する方式は任意でよい。
【0040】
リレーユニット6は、画像形成装置5から出力された用紙をさらに後段の装置(ここではインラインスキャナ10)へ中継搬送する。インラインスキャナ10は、リレーユニット6から受け入れた用紙を自装置の後段のフィニッシャ8へ搬送すると共に、搬送中に用紙の両面をスキャンして該用紙の両面の画像を光学的に読み取り、その読み取り画像の画像データを画像検査装置20へ出力する。フィニッシャ8は、インラインスキャナ10から送られてきた用紙に対して、指定された後処理を施した後、排紙トレイに排出する。
【0041】
図2は、インラインスキャナ10内の通紙経路の一例を示している。インラインスキャナ10は、用紙の両面を1パスで読み取るため、用紙の表面を読み取る上面側ラインイメージセンサ11と、用紙の裏面を読み取る下面側ラインイメージセンサ12が、用紙搬送方向に距離を置いて互いに異なる位置に配置されている。この例では下面側ラインイメージセンサ12は、上面側ラインイメージセンサ11より用紙搬送方向の上流に配置されている。また、上面側ラインイメージセンサ11のさらに下流に、測色計13を備えている。
【0042】
各々のラインイメージセンサ11、12の前後には、用紙を保持、搬送するための用紙搬送機構が設けてある。用紙搬送機構は、対向配置された一対の搬送ローラ14により構成される。
【0043】
上面側ラインイメージセンサ11、下面側ラインイメージセンサ12は、搬送路上の特定箇所に固定されており、これらの読み取り位置に対して、搬送される用紙が相対移動することで該用紙の表裏および用紙周辺の背景がラインイメージセンサ11、12によって読み取られる。用紙の搬送方向を副走査方向、用紙上でこれに直交する方向を主走査方向とする。読取装置15は、副走査方向に搬送される用紙に対して主走査方向のライン単位の読み取りを繰り返すことで用紙を二次元に読み取る。
【0044】
ラインイメージセンサ11、12の主走査方向の読み取り幅は用紙幅より広くされており、インラインスキャナ10は、各用紙を読み取る際に、用紙とその周囲(前後左右の端部より外側へ所定の範囲)の背景部を含む範囲を読み取り範囲として画像を読み取る。ここでは、用紙の周囲の背景部は、黒色に読み取られる。
【0045】
図3は、画像形成システム3における用紙やデータの流れと画像検査装置20の内部構成を示している。画像形成装置5で画像形成されて出力された用紙は、フィニッシャ8へと搬送され、その途中でインラインスキャナ10によって用紙の両面が周囲の背景を含めて読み取られる。インラインスキャナ10は読み取って得た画像のデータを画像検査装置20に向けて出力する。
【0046】
画像検査装置20は、インラインスキャナ10から画像のデータを取り込む取込部21と、取込部21が取り込んだ画像のデータに基づいて用紙上に正常に画像が形成されているか否かを検査する画像比較部22を備えている。画像検査装置20は、CPU(Central Processing Unit)や記憶部を備えており、記憶部に保存されているプログラムをCPUが読み出して実行することで取込部21、および画像比較部22の機能が実現される。なお、画像検査装置20の機能の一部または全部をASIC等の回路で構成してもよい。
【0047】
次に、画像形成システム3が行う印刷処理を図4の流れ図に基づいて説明する。図4では、画像検査装置20が行う処理の処理箱は実線で示し、画像検査装置20以外の装置(画像形成装置5やインラインスキャナ10)が行う処理の処理箱は破線で示してある。
【0048】
画像形成システム3では、試し印刷により画質の調整などを行い、問題の無いことが確認された見本(プルーフ)を印刷すると共に(ステップS101)、該見本を印刷出力する際にその画像をインラインスキャナ10で読み取る(ステップS102)。インラインスキャナ10は用紙とその周囲(前後左右の外側)の背景を含む範囲を読み取る。
【0049】
画像検査装置20の取込部21は、インラインスキャナ10が見本を読み取って得た画像を取得する。画像検査装置20の画像比較部22は、取込部21が取得した見本の画像を解析し、見本の画像のうち用紙領域内の画像が白紙か否か(用紙領域内に有効な画像が存在するか否か)を判定する(ステップS103)。
【0050】
用紙領域内が白紙でない(用紙領域内に有効な画像が存在する)場合は(ステップS103;No)、見本の画像から背景部分を除去(削除)して(ステップS104)、ステップS105へ移行する。用紙領域内が白紙(用紙領域内に有効な画像が存在しない)ならば(ステップS103;Yes)、背景部分を除去(削除)することなくステップS106へ移行し、位置合わせのための特徴点を検出するアルゴリズムとして、エッジ基準の特徴点検出アルゴリズムを設定する(ステップS106)。なお、背景部分を除去した場合は除去後の画像を基準の画像、背景部分を除去しない場合は除去前の見本の画像を基準の画像とする。
【0051】
ステップS105では、基準の画像にエッジが存在するか否か(エッジ検出可能な画像か否か)を判定する。エッジ検出可能ならば(ステップS105;Yes)、位置合わせのための特徴点を検出するアルゴリズムとして、エッジ基準の特徴点検出アルゴリズムを設定する(ステップS106)。一方、基準の画像がエッジ検出可能な画像でなければ(ステップS105;No)、位置合わせのための特徴点を検出するアルゴリズムとして、階調基準の特徴点検出アルゴリズムを設定する(ステップS107)。階調基準の特徴点検出アルゴリズムは、たとえば、画像に含まれる各オブジェクトの重心位置を特徴点として検出する。
【0052】
次に、画像形成システム3は、見本に印刷したものと同じ画像を同じ印刷条件で用紙に印刷する検査印刷を行うと共に(ステップS108)、検査印刷される各用紙の画像(周囲の背景部分を含む)をインラインスキャナ10で読み取る(ステップS109)。検査印刷で読み取った画像を検査画像とする。
【0053】
画像検査装置20は、基準の画像が背景部分の除去(削除)されたものである場合は(ステップS110;Yes)、検査画像から背景部分を除去(削除)して(ステップS111)ステップS112へ移行する。基準の画像が背景部分の除去(削除)されたものでなければ(ステップS110;No)、検査画像から背景部分を除去(削除)することなく、ステップS112へ移行する。
【0054】
ステップS112では、ステップS106またはS107で設定された特徴点検出アルゴリズムを用いて位置合わせのための特徴点を抽出し、抽出した特徴点に基づいて、基準の画像と検査画像(背景部分を除去した場合は除去後の検査画像)とを位置合わせする。そして、位置合わせした画像同士を比較して、検査印刷の合否を判定し(ステップS113)、本処理を終了する。なお、ステップS108~S113の工程は、検査印刷する各用紙について行われる。
【0055】
図5は、図4のステップS103でNo(白紙でない)、かつステップS105でYes(エッジ検出可能)の場合の例を示している。この例では、用紙に有効な画像(文字列等)が印刷されているので、白紙でなく、かつ、用紙領域内の画像はエッジ検出可能と判定される。その結果、見本の画像および検査印刷の画像からそれぞれ背景部分を除去し、除去後の画像に対してそれぞれ、エッジ基準の特徴点検出アルゴリズムを用いて特徴点を検出し、検出した特徴点を基準に画像同士を位置合わせして画像の比較が行われる。
【0056】
図5では、見本の画像では、用紙および用紙に印刷された画像はいずれも傾斜していないが、検査印刷の画像では、用紙は傾斜し、用紙に印刷された画像(コンテンツ)は傾斜していない。この場合、背景部分を除去しないままエッジ基準の特徴点検出アルゴリズムを適用すると、用紙の縁が支配的となって、画像同士を正しく位置合わせすることができないが(図8参照)、背景部分を除去してからエッジ基準の特徴点検出アルゴリズムを適用することで、画像同士を正しく位置合わせして比較することができる。
【0057】
図6は、図4のステップS103でYes(白紙)の場合の例を示している。この例では、用紙に有効な画像が何も印刷されていないため、白紙と判定される。その結果、見本の画像と検査印刷の画像のぞれぞれに対して、背景部分を除去せずに、エッジ基準の特徴点検出アルゴリズムを用いて特徴点を検出し、検出した特徴点を基準に画像同士を位置合わせして画像の比較が行われる。
【0058】
図6の例では、背景部分を除去しないので、用紙の縁のエッジ部分が支配的となって位置合わせの特徴点が検出される。用紙領域内にエッジ検出可能な画像(コンテンツ)が存在しないので、背景部分を除去してしまうと、エッジ基準の特徴点検出アルゴリズムでは適当な特徴点を検出できなくなる。図6の場合は、背景部分を除去せずにエッジ基準の特徴点検出アルゴリズムを適用するので、用紙の縁が特徴点となり、画像同士を正しく位置合わせして比較することができる。
【0059】
図7は、図4のステップS103でNo(白紙でない)、かつステップS105でNo(エッジ検出できない)の場合の例を示している。この例では、エッジ検出できない画像(グラデーション画像)が用紙に印刷されているため、白紙でなく、かつ、用紙領域内の画像はエッジ検出できない画像であると判定される。その結果、見本の画像と検査印刷の画像のぞれぞれに対して、背景部分を除去し、除去後の画像に対して階調基準の特徴点検出アルゴリズムを適用して特徴点を検出する。そして、検出した特徴点を基準に画像同士を位置合わせして画像の比較が行われる。
【0060】
図7の例では、グラデーション画像の重心位置が特徴点として検出され、該特徴点を基準に位置合わして画像同士が比較されるため、用紙領域内の画像がエッジ検出できないものであっても、正しく位置合わせして比較することができる。
【0061】
このように、本発明では、画像内の特徴点を検出して画像同士を位置合わせし比較する方法として、以下の3種類を用意し、これを用紙領域内にある画像の内容(白紙か否か、および、エッジ検出可能か否か)に応じて切り替えた。すなわち、
・画像の背景部分を削除してエッジ基準の特徴点検出アルゴリズムを使用する第1の位置合わせ方法
・画像の背景部分を削除して階調基準の特徴点検出アルゴリズムを使用する第2の位置合わせ方法
・画像の背景部分を削除せずにエッジ基準の特徴点検出アルゴリズムを使用する第3の位置合わせ方法
の3種類の位置合わせ方法を用意しておき、どの方法を使用するかを、用紙領域内の画像が白紙か否か、およびエッジ検出可能か否か、に基づいて切り替えた。これにより、白紙やグラデーション画像などの多様なコンテンツに対応しつつ、用紙が傾斜しても位置合わせを適切に行って画像同士を比較検査することができ、誤判定を増やすことなく、検査精度を高めることができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0063】
本発明は、画像検査装置20の単体とされてもよいし、情報処理装置を画像検査装置20として機能させるプログラムであってもよい。また、画像形成装置5、インラインスキャナ10、画像検査装置20を含む画像形成システムとされてもよい。
【0064】
実施の形態では、白紙か否かに応じて、背景部分を除去するか否かを切り替えたが、用紙領域内の画像がエッジ検出できない画像の場合は(白紙もしくはグラデーション画像の場合)、用紙の周囲の背景部分を除去せずに画像同士の位置合わせを行い、用紙領域内の画像がエッジ検出可能な画像の場合は、用紙の周囲の背景部分を除去して画像同士の位置合わせを行うようにしてもよい。
【0065】
なお、実施の形態では、見本の画像のうち用紙領域内にある画像は、見本の用紙をインラインスキャナ10で読み取って得た画像のうちの用紙領域内にある部分としたが、画像形成装置5が見本の用紙に画像形成する際に使用した元の画像データとしてもよい。たとえば、図4のステップS103で白紙か否かを判断する場合に、見本の用紙に印刷された元の画像データに基づいて白紙か否かを判断してもよい。
【符号の説明】
【0066】
2…サーバ
3…画像形成システム
5…画像形成装置
6…リレーユニット
8…フィニッシャ
10…インラインスキャナ
11…上面側ラインイメージセンサ
12…下面側ラインイメージセンサ
13…測色計
14…搬送ローラ
20…画像検査装置
21…取込部
22…画像比較部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9