(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】樹脂成形品の切断装置
(51)【国際特許分類】
B26F 1/02 20060101AFI20220303BHJP
B26F 1/40 20060101ALI20220303BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20220303BHJP
B29C 51/26 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
B26F1/02 B
B26F1/40 B
B26D7/18 Z
B29C51/26
(21)【出願番号】P 2017199077
(22)【出願日】2017-10-13
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390007537
【氏名又は名称】株式会社ケーピープラテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 一成
(72)【発明者】
【氏名】平岩 静雄
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】実公平07-030319(JP,Y2)
【文献】特開2011-158414(JP,A)
【文献】特開平07-328995(JP,A)
【文献】特開2003-103620(JP,A)
【文献】特開2015-104797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/00 - 1/44
B26D 7/18
B29C 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品が成形された樹脂シートから前記樹脂成形品の外形を切抜く切断装置であって、
下型と、
前記下型に対して相対的に離接する上下方向に移動可能な上型と、
前記上型に設けられ、前記樹脂成形品の外形部分と対向する環状面を含む平板部材と、
前記下型に設けられ、前記平板部材の環状面に前記樹脂成形品を押し付けることにより前記樹脂成形品の外形を切抜く環状の押切刃をなす上縁を含み、前記押切刃の内側に切抜き完了の前記樹脂成形品が通過する通過空間を画定する筒状の刃物部材と、
前記上型に対して上下方向に所定範囲内を移動可能に設けられ、前記上型が前記下型から離れた上昇位置にある時には前記上型に対して降下した降下位置にあり、前記上型の降下途中の位置において上側から前記樹脂成形品に当接するノックアウト部材と、
前記上型に対して上下方向に移動可能に設けられ、前記上型に対して降下移動することにより前記樹脂成形品を前記通過空間に押し込む押込部材とを有し、
前記押込部材は前記樹脂成形品の環状の外周部に当接する外側環状部を含む樹脂成形品の切断装置。
【請求項2】
前記上型は前記押切刃が前記環状面に当接する切断位置と前記押切刃が前記環状面から離れた前記上昇位置との間を移動可能であり、
前記ノックアウト部材は、前記切断位置に於いて、少なくとも前記樹脂成形品に当接する位置とそれよりも下方の位置との間を含む所定範囲内を前記上型に対して上下方向に移動可能である請求項1に記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項3】
前記ノックアウト部材は前記上型が前記上昇位置にある時には自重によって降下位置に位置する請求項1又は2に記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項4】
前記上型に対して前記ノックアウト部材を降下方向に付勢するノックアウト用ばねを有する請求項1から3の何れか一項に記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項5】
前記ノックアウト部材は前記押込部材に上下方向に相対的に移動可能に取り付けられ、
前記ノックアウト部材と前記押込部材との間に、前記ノックアウト部材を前記上型に対して降下方向に付勢するノックアウト用ばねが設けられている
請求項1から3の何れか一項に記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項6】
前記下型は前記通過空間からの前記樹脂成形品を上下方向に積層した状態で集積する集積用開口を有する請求項1から
5の何れか一項に記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項7】
前記下型は前記集積用開口に向けて開口した空気吸引部を有する請求項
6に記載の樹脂成形品の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の切断装置に関し、更に詳細には、樹脂シートから樹脂成形品の外形を切抜く切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品を成形された樹脂シートから食器等による丼形の樹脂成形品の外形を切抜く切断装置として、固定配置の下型と、下型に対して上下方向に移動可能な上型と、前記上型の底部に設けられ、前記樹脂成形品の外形部分と対向する環状面を含む平板部材と、前記下型の上部に設けられ、前記平板部材の環状面に前記樹脂成形品を押し付けることにより前記樹脂成形品の外形を切抜く押切刃(トムソン刃)をなす上縁を含む筒状の刃物部材と有する切断装置(トリミング装置)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この切断装置では、樹脂成形品の切抜き完了毎に、ノックアウト部材によって樹脂成形品を刃物部材の内側に画定された空間に押し込むこと(排出)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ノックアウト部材による前記空間に対する樹脂成形品の押し込みは、切抜き完了のタイミングに同期して、つまり上型が下死点位置に移動した切抜き完了の直後に行う必要がある。このノックアウト部材の同期動作は、切断装置の動作速度が遅く、サイクルタイムが長い場合には困難ではないが、切断装置の動作速度が早く、サイクルタイムが短くなるほど、難しくなる。このため、ノックアウト部材の同期動作が切断装置の動作速度の高速化の阻害する。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ノックアウト部材の同期動作が切断装置の動作速度の高速化を阻害しないようにし、切断装置の高速化を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態による樹脂成形品の切断装置は、樹脂シート(S)から樹脂成形品(W)の外形を切抜く切断装置(1)であって、上型(10)と、下型(12)と、前記上型(10)に設けられ、前記樹脂成形品(W)の外形部分と対向する環状面(22A)を含む平板部材(22)と、前記下型(12)に設けられ、前記平板部材(22)の平面(22A)に前記樹脂成形品(W)を押し付けることにより前記樹脂成形品(W)の外形を切抜く押切刃(52)をなす上縁を含み、前記押切刃(52)の内側に切抜き完了の前記樹脂成形品(W)が通過する通過空間(54)を画定する筒状の刃物部材(50)と、前記上型(10)に対して上下方向に所定範囲内を移動可能に設けられ、前記上型(10)が下型(12)から離れた上昇位置にある時には前記上型(10)に対して降下した降下位置にあり、前記上型(10)の降下途中の位置において上側から前記樹脂成形品(W)に当接するノックアウト部材(44)とを有する。
【0008】
この構成によれば、切抜きが完了した時点でノックアウト部材(44)が上型(10)に対して降下する動作が必然的に得られ、切抜きが完了した樹脂成形品(W)をノックアウト部材(44)が発泡樹脂シート(S)から分離する動作は、切抜きが完了した時点で必然的に降下するノックアウト部材(44)によって行われるので、上型(10)の駆動タイミングに同期させてノックアウト部材(44)の動作を外部から制御する必要がない。これにより、ノックアウト部材(44)の同期動作が切断装置(1)の動作速度の高速化を阻害することがなく、切断装置(1)による切抜き工程の更なる高速化が可能になる。
【0009】
上記樹脂成形品(W)の切断装置(1)において、好ましくは、前記上型(10)は前記押切刃(52)が前記環状面(22A)に当接する切断位置と前記押切刃(52)が前記環状面(22A)から離れた前記上昇位置との間を移動可能であり、前記ノックアウト部材(44)は、前記切断位置に於いて、少なくとも前記樹脂成形品(W)に当接する位置とそれよりも下方の位置との間を含む所定範囲内を前記上型(10)に対して上下方向に移動可能である。
【0010】
この構成によれば、切抜きが完了した樹脂成形品(W)を通過空間(54)に移動させることがノックアウト部材(44)によって的確に行われる。
【0011】
上記樹脂成形品(W)の切断装置(1)において、好ましくは、前記上型(10)に対して前記ノックアウト部材(44)を降下方向に付勢するノックアウト用ばね(46)を更に有する。
【0012】
上記樹脂成形品(W)の切断装置(1)において、前記ノックアウト部材(44)は前記上型(10)が前記上昇位置にある時に自重によって降下位置に位置するから、ノックアウト用ばね(46)は必須でない。
【0013】
この構成によれば、ノックアウト部材(44)の自重に加えてノックアウト用ばね(46)の弾発力によってノックアウト部材(44)が降下するので、切抜きが完了した樹脂成形品(W)を発泡樹脂シート(S)から分離することが、より確実に行われる。
【0014】
上記樹脂成形品(W)の切断装置(1)において、好ましくは、前記上型(10)に対して上下方向に移動可能に設けられ、前記上型(10)に対して降下移動することにより前記樹脂成形品(W)を前記通過空間(54)に押し込む押込部材(24)を更に有する。
【0015】
この構成によれば、押込部材(24)が樹脂成形品(W)を前記通過空間(54)に押し込むことがノックアウト部材(44)とは別に行われるので、押込部材(24)の駆動タイミングを厳格に設定する必要がなく、押込部材(24)の動作が切断装置(1)の動作速度の高速化を阻害することがない。
【0016】
上記樹脂成形品(W)の切断装置(1)において、好ましくは、前記押込部材(24)は前記樹脂成形品(W)の環状の外周部(Wa)に当接する外側環状部(26B)を含む。
【0017】
この構成によれば、押込部材(24)は外側環状部(26B)をもって樹脂成形品(W)の環状の外周部(Wa)を押すことになり、通過空間(54)に対する樹脂成形品(W)の押し込み過程で、樹脂成形品(W)が傾く等の不具合が生じることがなく、樹脂成形品(W)の積層が良好に行われる。
【0018】
上記樹脂成形品(W)の切断装置(1)において、好ましくは、前記ノックアウト部材(44)は前記押込部材(24)に上下方向に相対的に移動可能に取り付けられ、前記ノックアウト部材(44)と前記押込部材(24)との間に、前記ノックアウト部材(44)を前記上型(10)に対して降下方向に付勢するノックアウト用ばね(46)が設けられている。
【0019】
この構成によれば、ノックアウト部材(44)の自重に加えてノックアウト用ばね(46)の弾発力がノックアウト部材(44)が降下するので、切抜きが完了した樹脂成形品(W)を発泡樹脂シート(S)から分離することが、より確実に行われる。しかも、押込部材(24)が設けられても、ノックアウト用ばね(46)の取付構造が複雑になることがない。
【0020】
上記樹脂成形品(W)の切断装置(1)において、好ましくは、前記下型(12)は前記通過空間からの前記樹脂成形品(W)を上下方向に積層した状態で集積する集積用開口を有する。
【0021】
この構成によれば、多数の樹脂成形品(W)を集積することができる。
【0022】
上記樹脂成形品(W)の切断装置(1)において、好ましくは、前記下型(12)は集積用開口(56)に向けて開口した空気吸引部(58)を有する。
【0023】
この構成によれば、空気吸引部(58)が集積用開口(56)の空気を吸引するから、上述した樹脂成形品(W)の集積過程において、切抜きによって発生した切り粉等の粉塵が吸引され、樹脂成形品(W)の清掃が行われる。これにより、後工程として清掃工程を設ける必要がなく、切り粉等の粉塵が切断装置(1)の外部に飛散することもない。
【発明の効果】
【0024】
本発明による樹脂成形品の切断装置によれば、ノックアウト部材の同期動作が切断装置の動作速度の高速化を阻害することがなく、切断装置の高速化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による樹脂成形品の切断装置の一つの実施形態の上型が上死点位置(上昇位置)にある状態を示す縦断面図
【
図2】本実施形態の切断装置の上型が降下途中にある状態を示す縦断面図
【
図3】本実施形態の切断装置の上型が下死点近くにある状態(切断寸前)を示す縦断面図
【
図4】本実施形態の切断装置の上型が下死点(切断位置)にある状態を示す縦断面図
【
図5】本実施形態の切断装置の押部材が降下した状態を示す縦断面図
【
図6】本発明による樹脂成形品の切断装置の他の実施形態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明による樹脂成形品の切断装置の一つの実施形態を、
図1~
図5を参照して説明する。
【0027】
本実施形態による切断装置1は、帯状の発泡樹脂シートSに上突の丼形に熱成形された樹脂成形品(発泡樹脂製の食品用丼)Wの外形を発泡樹脂シートSから切抜くためのものである。発泡樹脂シートSには長尺方向に間隔をおいて複数の樹脂成形品Wが熱成形されており、発泡樹脂シートSは樹脂成形品Wの底側が上方になる略水平な姿勢で切断装置1に、図にて右側から左側に搬入される。
【0028】
切断装置1は、
図1に示されているように、不図示のプレス機械のラムによって上下方向に駆動される上型10と、同プレス機械のボルスタ3上に固定される下型12とを有する。
【0029】
上型10の下面には複数のボルト14によって筒状の平板取付部材16が固定されている。平板取付部材16の環状の下端面16Aには環状の平板部材(刃物受け部材)22が固定されている。平板部材22は、ポリプロピレン(PP)等の樹脂或いはステンレス鋼等の金属によって構成され、樹脂成形品Wの外形部分(外周部分)と対向する平面状の環状面22Aを含む。
【0030】
平板取付部材16の内側には押込部材24が上下方向に移動可能に配置されている。押込部材24は、平板取付部材16の内周面16Bに摺接する外周面26Aを備えた筒状部材26と、筒状部材26の上端部にボルト28によって固定された端板部材30とによって構成されている。筒状部材26は樹脂成形品Wの環状の外周部(フランジ部)Waの裏面に当接する外側環状部26Bを下端に有する。筒状部材26の下端側の内周面26Cは樹脂成形品Wの外周形状に合致する形状になっている。
【0031】
端板部材30の中央部には円筒体によるポスト部材32の下端が固定されている。ポスト部材32は端板部材30から上型10に形成されている貫通孔34を貫通して上型10の上方に垂直に延在している。ポスト部材32の上端にはキャップ部材36が固定されている。キャップ部材36と上型10との間には圧縮コイルばねによる押込用ばね38が取り付けられている。押込用ばね38は押込部材24を上型10に対して上方に向けて付勢している。これにより、押込部材24は、
図1に示されているように、自由状態において、押込用ばね38のばね力により、上型10に対して上限の最上昇位置にある。
【0032】
端板部材30の上面にはゴム製Oリングによる緩衝部材40が取り付けられている。緩衝部材40により、押込用ばね38のばね力によって端板部材30の上面が上型10の下面に当接する際の衝撃が緩和されると共に衝撃音の発生が抑制される。
【0033】
押込部材24は、上型10が下死点あるいはその近傍に降下することにより外側環状部26Bをもって樹脂成形品Wの外周部Waに当接すると共に筒状部材26の内周面26Cが樹脂成形品Wの外周面Wbに当接する(
図3参照)。更に、押込部材24は、キャップ部材36が不図示の独立した駆動装置によって下方に押されることにより、押込用ばね38のばね力に抗して上型10に対し降下移動する。
【0034】
端板部材30には複数のハンガロッド42がねじ部42Aによってねじ止めされている。各ハンガロッド42は端板部材30から垂下されて筒状部材26の内側に配置される。各ハンガロッド42は一つの環状形状のノックアウト部材44を吊り下げ支持している。このノックアウト部材44の吊り下げ支持は、ノックアウト部材44に形成された複数の挿通孔44Aを各ハンガロッド42の軸部42Bが貫通し、ノックアウト部材44に形成された拡径孔44Bと挿通孔44Aとの内径違いによる肩部に、軸部42Bの先端(下端)に形成された拡径頭部42Cと軸部42Bとの外径違いによる肩部が当接することにより、ノックアウト部材44の押込部材24に対する下限位置(最降下位置)を設定した状態で、ノックアウト部材44が押込部材24及び上型10に対して相対的に上下方向に所定範囲内を移動可能な支持状態で行われる。
【0035】
ノックアウト部材44は、ハンガロッド42により押込部材24に対して上下方向に所定範囲内を移動可能であり、上型10が上昇位置(上死点)にある時には、
図1に示されているように自重によって最降下位置に位置する。
【0036】
ノックアウト部材44と端板部材30との間には圧縮コイルばねによるノックアウト用ばね46が設けられている。ノックアウト用ばね46は、ハンガロッド42毎に設けられ、ノックアウト部材44を押込部材24に対して降下方向に付勢している。つまり、ノックアウト部材44は、更に、ノックアウト用ばね46による下方へのばね付勢のもとに、押込部材24からフローティング支持され、自由状態において、押込部材24に対して下限の最降下位置にある。
【0037】
ノックアウト部材44は、環状に形成されており、上側から樹脂成形品Wの底面Wcに当接可能な環状の下面44Cを備えている。この下面44Cは上型10の降下途中に樹脂成形品Wの底面Wcに当接する設定になっている(
図2参照)。
【0038】
ノックアウト部材44は、上型10の降下途中で下面44Cが樹脂成形品Wの底面Wcに当接することにより、それ以上の上型10の下死点までの降下においては、自重及びノックアウト用ばね46のばね力に抗して、換言すると、ノックアウト用ばね46を撓ませながら押込部材24及び上型10に対して相対的に上昇移動し、ノックアウト用ばね46の弾発力によって樹脂成形品Wを後述の刃物部材50の通過空間54に向けて付勢される。
【0039】
下型12の上面には複数のボルト48によって筒状の刃物部材50が固定されている。刃物部材50は、平板部材22の環状面22Aに樹脂成形品Wの外周部Waを押し付けることにより樹脂成形品Wの外形を切抜くトムソン刃と呼ばれる押切刃52をなす上縁を含み、押切刃52の内側に切抜き完了の樹脂成形品Wが通過する通過空間54を画定している。通過空間54は刃物部材50を上下方向に貫通する開口である。
【0040】
上型10は押切刃52が環状面22Aに当接する切断位置(
図4参照)と、押切刃52が環状面22Aから離れて押込部材24と刃物部材50との間に、樹脂成形品Wを成形された発泡樹脂シートSを搬入可能な空間を画定する上昇位置(
図1参照)との間を、下型12に対して離接する上下方向に移動可能であり、ノックアウト部材44は、前記切断位置に於いて、少なくとも樹脂成形品Wに当接する位置とそれよりも下方の位置との間を含む所定範囲内を上型10に対して上下方向に移動可能である。
【0041】
下型12には通過空間54に連通する上端を有する集積用開口56が形成されている。集積用開口56は通過空間54からの樹脂成形品Wを上下方向に積層した状態で集積するための空間である。
【0042】
下型12が集積用開口56を画定する内周面には集積用開口56に向けて開口した多数の空気吸引孔58を貫通形成された筒状の吸引板60が取り付けられている。下型12の吸引板60の取付部分には環状の空気通路62が形成されている。空気通路62は下型12に形成された空気通路64及び空気配管66によって空気吸引装置68に接続されている。これにより、空気吸引孔58は集積用開口56を画定する内周面において集積用開口56から空気を吸引する。
【0043】
次に、上述の構成による切断装置1の動作について説明する。
【0044】
図1は、上型10が上死点(上昇位置)にあって、発泡樹脂シートSから打ち抜かれていない樹脂成形品Wが切断装置1による切断位置に搬送された初期状態(開始状態)を示している。この初期状態では、押込部材24は最上昇位置にあり、ノックアウト部材44は最降下位置にある。樹脂成形品Wが発泡樹脂シートSの搬送は、不図示の案内部材によって支持、案内されて、図示されている高さをもって略水平な送りによって行われる。
【0045】
この初期状態から不図示のラムによって上型10が降下すると、
図2に示されているように、降下途中で、つまり、上型10が前記切断位置(下死点)に位置する手前で、まず、ノックアウト部材44の下面がノックアウト部材44の真下位置にある樹脂成形品Wの底面Wcに当接する。
そして、これより更に上型10が下死点へ向けて降下すると、その降下の進行に伴ってノックアウト用ばね46が撓み(圧縮変形)、ノックアウト用ばね46のばね力によってノックアウト部材44の下面が樹脂成形品Wの底面Wcに押し付けられる。
【0046】
図3に示されているように、上型10が下死点近くまで降下すると押込部材24の外側環状部26Bが上側から樹脂成形品Wの外周部Waに当接すると共に押込部材24の内周面26Cが樹脂成形品Wの外周面Wbに当接する。また、この時には、平板部材22の環状面22Aが外側環状部26Bより外側において樹脂成形品Wの外周部Waに当接するともに、樹脂成形品Wの外周部Waに刃物部材50の押切刃52の先端が下側から当接し、平板部材22と押切刃52とによる押し切り式の樹脂成形品Wの外形の切抜きが開始される。
【0047】
図4に示されているように、上型10が、押切刃52が環状面22Aに当接する切断位置(下死点)に位置すると、樹脂成形品Wの外形の切抜きが完了する。切抜きが完了すると、ノックアウト部材44が自重及びノックアウト用ばね46の弾発力によって即座に上型10及び押込部材24に対して元の最降下位置まで降下移動する。これにより、切抜きが完了した樹脂成形品Wは、発泡樹脂シートSから外れ(分離)、下方に、つまり通過空間54に押し込まれる。
【0048】
切抜きが完了した樹脂成形品Wをノックアウト部材44が発泡樹脂シートSから分離する動作は、切抜きが完了した時点で、ノックアウト部材44の自重及びノックアウト用ばね46の弾発力によって必然的に行われるので、プレス機械による上型10の駆動タイミングに同期させてノックアウト部材44の動作を外部から制御する必要がない。これにより、ノックアウト部材44の同期動作が切断装置1の動作速度の高速化を障害することがなく、切断装置1の切抜き工程の更なる高速化が可能になる。
【0049】
その後に、不図示の独立した駆動装置によってキャップ部材36及びポスト部材
32が下方に押されることにより、
図5に示されているように、押込部材24が押込用ばね38のばね力に抗して上型10に対して降下移動する。これにより、切抜きが完了した樹脂成形品Wが一回前の切抜き完了の樹脂成形品W上に積まれる位置まで通過空間54に押し込まれる。このようにして、通過空間54及びその下方の集積用開口56に切抜き完了の樹脂成形品Wが順次に上下方向に積層された状態で集積される。これにより、切断装置1内に多数の樹脂成形品Wを集積することができる。
【0050】
押込部材24は外側環状部26Bをもって樹脂成形品Wの環状の外周部Waを押すから、通過空間54に対する樹脂成形品Wの押し込み過程で、樹脂成形品Wが傾く等の不具合が生じることがなく、樹脂成形品Wの積層が良好に行われる。
【0051】
押込部材24は、切抜きが完了した樹脂成形品Wを発泡樹脂シートSから取り外す作業を行うものでなく、取り外しが完了した樹脂成形品Wが次の工程の邪魔にならないように、通過空間54に押し込む作業を行うだけでよいから、押込部材24の駆動タイミングは、上型10が下死点に位置したことに厳格に同期させる必要がなくなり、押込部材24の駆動は上型10が下死点に位置した後の所定時間内に開始されればよい。したがって、押込部材24の動作が切断装置1の動作速度の高速化を阻害することがない。
【0052】
その後に、プレス機械によって上型10が上死点に戻ると共に、上型10の上昇過程で、不図示の前記駆動装置によるキャップ部材36及びポスト部材32の押圧が解除され、押込部材24が押込用ばね38のばね力によって元の最上昇位置に戻る。
【0053】
空気吸引孔58は集積用開口56を画定する内周面において集積用開口56の空気を吸引するから、上述した樹脂成形品Wの集積過程において、切抜きによって発生した切り粉等の粉塵が空気吸引孔58から空気通路62に吸引され、樹脂成形品Wの清掃が行われる。
【0054】
このように、樹脂成形品Wの清掃が、集積過程において下型12及び刃物部材50の内部で、これらより取り出される以前に行われるから、後工程として清掃工程を設ける必要がなく、切り粉等の粉塵が切断装置1の外部に飛散することもない。
【0055】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0056】
例えば、ノックアウト用ばね46は必須でなく、ノックアウト部材44は、
図6に示されているように、ノックアウト用ばね46が省略され、上型10が上昇位置にある時には、つまり自由状態時には、自重のみで、最降下位置に位置するものであってもよい。
【0057】
また、押込部材24は必須でなく、樹脂成形品Wが皿状のもののように上下寸法が小さく、ノックアウト部材44によって樹脂成形品Wを次工程の障害にならない位置まで通過空間54内に降下させることができる場合には、押込部材24は省略され、ノックアウト部材44が上型10から直接に吊り下げ支持されればよい。この場合にはノックアウト用ばね46は上型10とノックアウト部材44との間に設けられる。切断装置1は、多連構造で、複数の樹脂成形品Wの切断を同時に行うものであってもよい。切断装置1は、上型10が固定で、下型12が上型10に対して上下方向に移動するものであってもよい。
【0058】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 :切断装置
3 :ボルスタ
10 :上型
12 :下型
14 :ボルト
16 :平板取付部材
16A :下端面
16B :内周面
22 :平板部材
22A :平面
24 :押込部材
26 :筒状部材
26A :外周面
26B :外側環状部
26C :内周面
28 :ボルト
30 :端板部材
32 :ポスト部材
34 :貫通孔
36 :キャップ部材
38 :押込用ばね
40 :緩衝部材
42 :ハンガロッド
42A :ねじ部
42B :軸部
42C :拡径頭部
44 :ノックアウト部材
44A :挿通孔
44B :拡径孔
44C :下面
46 :ノックアウト用ばね
48 :ボルト
50 :刃物部材
52 :押切刃
54 :通過空間
56 :集積用開口
58 :空気吸引孔
60 :吸引板
62 :空気通路
64 :空気通路
66 :空気配管
68 :空気吸引装置
70 :昇降部材
S :発泡樹脂シート
W :樹脂成形品
Wa :外周部
Wb :外周面
Wc :底面