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特許7033302下水管路の内面腐食個所の推定方法及び腐食個所検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】下水管路の内面腐食個所の推定方法及び腐食個所検出装置
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
E03F7/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017241178
(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2019052521
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2017175115
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592185666
【氏名又は名称】管清工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091410
【弁理士】
【氏名又は名称】澁谷 啓朗
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 健司
(72)【発明者】
【氏名】井川 理
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-254434(JP,A)
【文献】特開2016-218813(JP,A)
【文献】特開2017-025485(JP,A)
【文献】特開2009-300265(JP,A)
【文献】特開2007-209925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0312980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
F17D 1/00-5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプを有するポンプ場が設けられた下水管路の内面腐食個所の推定方法であって、
下水の自由水面の有無を検出するための液面検知センサを有する水中及び水上移動体を準備し、
前記ポンプの稼働中に、前記水中及び水上移動体を前記下水管路内の下水の流れに乗せてこの下水管路内を下流に向かって移動させ、
前記水中及び水上移動体の前記下水管路内での移動中に前記液面検知センサが検出した前記下水の自由水面の位置に基づき、前記下水管路の内面腐食個所を推定する構成を備え、
前記液面検知センサは液面検出コンデンサを有していて、この液面検出コンデンサの静電容量の変化により前記下水の自由水面を検出する、ことを特徴とする下水管路の内面腐食個所の推定方法。
【請求項2】
前記液面検知センサが検出した前記下水の自由水面の位置は、前記水中及び水上移動体に設けられた、この水中及び水上移動体の移動位置を検出する位置検出センサにより特定される、ことを特徴とする請求項1記載の下水管路の内面腐食個所の推定方法。
【請求項3】
前記水中及び水上移動体は撮影カメラをさらに有し、前記水中及び水上移動体の前記下水管路内での移動中のこの撮影カメラによる前記下水管路内の撮影結果にも基づき、前記下水管路の内面腐食個所を推定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の下水管路の内面腐食個所の推定方法。
【請求項4】
ポンプを有するポンプ場が設けられた下水管路の内面腐食個所を推定するための腐食個所検出装置であって、
前記ポンプの稼働中に前記下水管路内の下水に投入され、この下水の流れに乗って前記下水管路内を下流に向かって移動する水中及び水上移動体と、
前記水中及び水上移動体に設けられた、下水の自由水面の有無を検出するための液面検知センサと、を備え
前記液面検出センサは液面検出コンデンサを有していて、この液面検出コンデンサの静電容量の変化により前記下水の自由水面を検出する、ことを特徴とする腐食個所検出装置。
【請求項5】
前記水中及び水上移動体に設けられた位置検知センサをさらに備えた、ことを特徴とする請求項4記載の腐食個所検出装置。
【請求項6】
前記水中及び水上移動体は記憶手段を有していて、前記液面検知センサの検出結果は前記位置検出センサの検出結果と関連付けられて前記記憶手段に記憶される、ことを特徴とする請求項5記載の腐食個所検出装置。
【請求項7】
前記水中及び水上移動体は撮影カメラも備えている、ことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の腐食個所検出装置。
【請求項8】
前記水中及び水上移動体は記憶手段を有していて、前記液面検知センサの検出結果及び前記撮影カメラの撮影結果は前記位置検出センサの検出結果と関連付けられて前記記憶手段に記憶される、ことを特徴とする請求項7記載の腐食個所検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水圧送管路などの下水管路の内面腐食個所を予測して特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下水管路システムには、地盤の高低差を利用する自然流下方式のものと、ポンプによる圧力を利用する圧力管路方式のものとが用いられているが、圧力管路方式の圧力管路の内面は下水から発生する硫化水素の影響により腐食しやすくなっている。
【0003】
まず、図7を参照してモルタルライニング下水管の内面の硫化水素による腐食メカニズムを説明すると、閉ざされた管渠A内が嫌気的環境(酸素不足の環境)になると、下水B中の硫酸塩(SO42-)が硫酸塩還元バクテリアにより還元されて硫化水素(H2S)が発生する(図7a)。下水B中で発生したこの硫化水素は下水Bが空気層Cと接するようになるとこの空気層C内に放散し、モルタルライニング内面Eに付着している水分に溶け込んで濃縮される。ここで、十分な好気的環境(酸素ありの環境)が生じていると、下水管Dのモルタルライニング内面Eに水分を介して付着している硫化水素が硫黄酸化バクテリアにより酸化されて硫酸(H2SO4)が発生し、モルタルライニング内面Eがこの硫酸により腐食する(図7b)。
【0004】
図8に示す下水圧送管Fでは、例えば、下水Bが下水圧送管F内を満管状態で流れて(矢印参照)嫌気状態となっていれば下水B内に硫化水素は発生しているが、下水圧送管Fの上部に空気溜り又は大きな空気溜りが生じていないので、硫化水素が硫黄酸化バクテリアにより酸化されて硫酸が発生するといったことはなく、この範囲では下水圧送管Fのモルタルライニング内面Gは腐食していない(図8a)。しかしながら、例えば、下水圧送管Fの凸部Hの上部に空間Iが生じていると、この空間Iは空気弁Vから流入した空気により空気溜りJとなる。下水Bには満管状態個所で硫化水素が発生しているが、この硫化水素は空気溜りJ箇所まで運ばれて空気溜りJ内に放散され、下水圧送管Fのモルタルライニング内面Gに付着(水分を介して付着)する。そして、下水圧送管Fのモルタルライニング内面Gに付着した硫化水素から硫酸が発生し、波線Kで表した領域に腐食が発生する(図8b)。
【0005】
ところで、下水圧送管の内面の腐食の程度は、例えば、図9に示すように下水圧送管の外面に超音波厚さ計Mを取り付け、管壁の厚さを測定することにより確認することができる。すなわち、管厚Nが他の部分の管厚より薄い場合には薄さの程度に応じて腐食が進行していることとなる。しかしながら、この測定を下水圧送管の全長にわたって行うのは、下水圧送管を全長にわたって掘り出さなければならないので調査作業効率が良くない。しかも圧送ポンプを調査作業中長時間にわたって停止させなければならないので管路全長にわたる測定は下水処理設備の運営上も好ましくない。そこで、例えば特許文献1に記載されているように、下水圧送管での空気溜りの発生個所を調査し、この空気溜りの発生個所で下水圧送管の腐食が進行していると推定して空気溜りの発生個所を中心として実際に腐食調査を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-254434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1での空気溜り発生個所の調査は、下水圧送管の管路縦断図と動水勾配線を利用して行うものであるが、実際の下水圧送管は必ずしも配管図面通りに敷設されているとは限らないので、信頼性に乏しい場合も少なくない。
【0008】
そこで本発明は、下水圧送管の空気溜り発生個所を確実に調査でき、この調査結果に基づいて下水圧力管路の内面腐食個所の信頼性の高い推定を行う方法及びこの方法に用いる腐食個所検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するための本発明の下水管路の内面腐食個所の推定方法は、ポンプを有するポンプ場が設けられた下水管路の内面腐食個所の推定方法であって、液面検知センサを有する水中及び水上移動体を準備し、前記ポンプの稼働中に、前記水中及び水上移動体を前記下水管路内の下水の流れに乗せてこの下水管路内を下流に向かって移動させ、前記水中及び水上移動体の前記下水管路内での移動中に前記液面検知センサが検出した前記下水の液面の位置に基づき、前記下水管路の内面腐食個所を推定するものである。ここでは、液面検知センサが検出した下水の液面の位置は、水中及び水上移動体に設けられた、この水中及び水上移動体の移動位置を検出する位置検出センサにより特定するように構成できる。
【0010】
水中及び水上移動体は撮影カメラをさらに有し、液面検知センサが検出した下水の液面の位置とともに、水中及び水上移動体の下水管路内での移動中の撮影カメラによる下水管路内の撮影結果にも基づき、下水管路の内面腐食個所を推定することができる。このように構成することにより、下水管路の内面腐食個所の推定をより正確なものとすることができる。
【0011】
また、この目的を達成するための本発明の腐食個所検出装置は、ポンプを有するポンプ場が設けられた下水管路の内面腐食個所を推定するための腐食個所検出装置であって、前記ポンプの稼働中に前記下水管路内の下水に投入され、この下水の流れに乗って前記下水管路内を下流に向かって移動する水中及び水上移動体と、前記水中及び水上移動体に設けられた液面検知センサと、を備えたものである。さらに、水中及び水上移動体に位置検知センサを設けることもできる。水中及び水上移動体は記憶手段を有し、液面検知センサの検出結果が位置検出センサの検出結果と関連付けられて記憶手段に記憶されるといったように構成できる。
【0012】
水中及び水上移動体は撮影カメラも備えることができ、液面検知センサの検出結果及び撮影カメラの撮影結果を位置検出センサの検出結果と関連付けて記憶手段に記憶することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の下水管路の内面腐食個所の推定方法又は腐食個所検出装置を用いれば、高い精度で下水管路の内面腐食個所を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る腐食個所検出装置の構成を示す図である。
図2】腐食個所検出装置が下水の液面を検出する場合を示す図である。
図3】液面検知センサの配置態様の変更例を示す図である。
図4】ポンプが稼動しているときに腐食個所検出装置を用いて下水管路の空気溜りを検査する場合を説明する図である。
図5】腐食個所検出装置が下水管路内を移動するときの状態を説明する図である。
図6】下水管路の腐食個所を推定する場合を説明する図である。
図7】下水管の内面の硫化水素による腐食メカニズムを説明する図である。
図8】下水圧送管の内面に腐食が発生する場合を示す図である。
図9】下水圧送管の外面から内面の腐食の程度を確認する場合を示す図である。
図10】本発明に係る別の腐食個所検出装置の構成を示す図である。
図11】前側カバー部分の断面図である。
図12】後側カバー部分の断面図である。
図13】ケースの後側の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面の参照により説明する。
【0016】
まず、図1を参照して本発明に係る腐食個所検出装置の構成を説明する。
【0017】
腐食個所検出装置1(水中及び水上移動体)は、樹脂製のケース3(水中及び水上移動体)と、このケース3内に密封状態で収容された検出器5及びこの検出器5に電力を供給するバッテリー7と、ケース3内に設けられ、バッテリー7から検出器5への電力の供給をON-OFFする計測用押しボタンスイッチ9と、を備えている。ケース3は、円筒形のケース本体11と、このケース本体11の前端部及び後端部のそれぞれに取り外し可能に取り付けられた半円球状又は半回転楕円体状の前側カバー13及び後側カバー15と、を備え、検出器5は、ケース本体11の内面に対向して配置された、下水管路内の下水の液面を検出する一対の液面検知センサ17と、腐食個所検出器1の移動距離を検出する3軸加速度センサ19と、腐食個所検出器1の移動方向を検出する3軸ジャイロセンサ21と、液面検知センサ17、3軸加速度センサ19及び3軸ジャイロセンサ21からの検出信号を受け取って下水の液面検出の有無の情報を腐食個所検出装置1の下水管路内での移動位置情報と関連付けてホルダー23に取り出し可能に差し込まれているメモリーカード等の記憶媒体25に記憶する制御部27と、を有している。前側カバー13及び後側カバー15はそれぞれ、例えば、ガスケットを介してケース本体11の端部にねじ着けられていて、計測用押しボタンスイッチ9はケース本体11の後方に設けられ、後側カバー15を取り外してON-OFF操作できるように構成されている。
【0018】
腐食個所検出装置1は下水管路内の下水の流れに乗って下水管路内を下流に向かって移動するように構成され、例えば、下水が満管状態ではなく自由液面を有して流れている個所では下水の液面上に浮かんで移動するように比重が1よりも小さな0.8乃至0.9程度に調整される。
【0019】
それぞれの液面検知センサ17は、例えば液面検出コンデンサ29を備えていて、この液面検出コンデンサ29は取り付け位置のケース本体11の外側の誘電率が変わることによって静電容量が変化するように構成されている。したがって、図2に示すように、下水管路31を流れる下水33が自由水面35を有する位置に腐食個所検出装置1がさしかかって下水33に浮かぶと、液面検知センサ17(一方の液面検知センサ17)が下水33中からこの自由水面35上又は自由水面35よりも上側に位置することとなり、一方の液面検知センサ17の液面検出コンデンサ29の静電容量が空気の誘電率の影響を受けて変化するので、この静電容量を検出することにより空気溜りの有無を検出できる。液面検知センサ17は、生じている空気溜りが小スペースのものであり、下水33の自由水面35から上側に出ている腐食個所検出装置1の部分が小さい場合であっても、この空気溜り又は自由水面35を精度よく検出できるようにケース3内に配置される。
【0020】
なお、図3に示すように、液面検出の精度を高めるために、液面検知センサ17を周方向等間隔で4つ(図3a)又は6つ(図3b)設けるようにしてもよい。
【0021】
図3aの場合でも図3bの場合でも、例えば、それぞれの液面検出センサ17に一対の液面検出コンデンサ29を外側に開くように配置することができる。
【0022】
図4及び図5は腐食個所検出装置1を用いてポンプ場を有する下水管路31の内面の腐食状態を検査する場合を説明する図である。
【0023】
ポンプ場37の圧送ポンプPが稼動して下水33が圧送されているときに、下水管路31内に、計測用押しボタンスイッチ9をON操作して腐食個所検出器1を投入する。圧送されている下水33の流速は、例えば0.6m乃至3.0m/秒で一定又はほぼ一定である。腐食個所検出器1を下水管路31内に投入するときは、ケース本体11から後側カバー15を取り外して計測用押しボタンスイッチ9をON操作した後、後側カバー15をケース本体11に再び取り付けるようにする。腐食個所検出装置1を下水管路31内に投入すると、腐食個所検出装置1は下水33の流れに乗って下水管路31を下流(図4上右側)に向かって移動する。下水33はL1からL4にかけては下水管路31を常に満管状態で流れているのでL1からL4のいずれの箇所でも自由水面がなく、空気溜りは発生していない。したがって、腐食個所検出装置1は下水3を潜った状態又は下水3に沈んだ状態でL1からL4まで移動するので(図5a参照)、液面検知センサ17は液面を検知していない。
【0024】
しかしながら、腐食個所検出器1がL5を通過するときは、下水33が非満管状態で流れているので自由水面35を有し、上方に空気溜り39が発生している。したがって、腐食個所検出装置1は下水33の自由水面35に浮かんだ状態又は下水33の自由水面35から一部が突出した状態で移動し(図5b参照)、自由水面35よりも上方に位置する又は自由水面35に位置する液面センサ17によってこの空気溜り39は検出される。
【0025】
さらに、腐食個所検出装置1がL6に到達するときには下水33は再び満管状態で流れているので自由水面はなく、空気溜りは発生していない。したがって、腐食個所検出装置1は下水33を潜った状態又は下水33に沈んだ状態でL6を通過するので、液面検知センサ17は液面を検知していない。
【0026】
下水管路31内を移動してきた腐食個所検出装置1を下水管路31の下流側で回収したら、ケース本体11から後側カバー15を取り外して計測用押しボタンスイッチ9をOFF操作するとともに、ケース本体11から前側カバー13を取り外してホルダ-23から記憶媒体25を取り出し、記憶媒体25の記憶内容をパソコンにコピーする。
【0027】
図6はパソコンに記憶した調査結果をディスプレイに表示する場合の一例を示している。
【0028】
この例では、下水33の自由水面35が検出され空気溜り39が生じていると考えられる個所はハイライト表示(太線表示)される。ここでは、下水33の自由水面35、したがって空気溜り39が検出された個所を腐食発生個所と推定することができる。
【0029】
次に、図10乃至図13を参照して別の腐食個所検出装置の構成を説明する。
【0030】
別の腐食個所検出装置41(水中及び水上移動体)は液面検知センサを周方向等間隔で4つ設け(図3aに示す型のもの)、さらに撮影カメラを備えたものである。
【0031】
腐食個所検出装置41は、樹脂製のケース43と、このケース43内に密封状態で収容された液面検知センサ45と、ケース43内に密封状態で収容された移動位置検出センサ47と、ケース43内の先端部に密封状態で配置されたビデオカメラ49と、ケース43の先端部にこのビデオカメラ49を囲むように複数個設けられたLEDライト53(図12参照)と、ケース43内に密封状態で収容され、液面検知センサ45、ビデオカメラ49及びLEDライト53に電力を供給するバッテリー55と、ケース43内に密封状態で設けられた制御部57と、ケース43の後端部に配置された、バッテリー55から液面検知センサ45等への電力の供給をON-OFFする計測用手動スイッチ59と、を備えている。
【0032】
ケース43は、円筒形のケース本体61と、このケース本体61の前端部に例えばガスケットを介して取り外し可能に取り付けられた裁頭半回転楕円体状の前側カバー63と、ケース本体61の後端部に例えばガスケットを介して取り外し可能に取り付けられた円盤状の後側カバー65と、を備え、前側カバー63には、先端部の開口にアクリル製等のカメラ用透明板67が固定され、ビデオカメラ49はこのカメラ用透明板67を通して下水管路内を撮影する。前側カバー63にはまた、カメラ用透明板67の周囲に複数個のライト孔69が形成されていて、それぞれのライト孔69にはアクリル製等のライト用透明部材71が差し込まれて固定され、このライト用透明部材71の後側にそれぞれ、LEDライト53が配置されている(図11参照)。後側カバー65には計測用手動スイッチ59の操作用ボルト73がねじ込まれている。操作用ボルト73の先端にはヒンジレバー75の一端部が接触していて、操作用ボルト73を回転させて内側に移動させることによりヒンジレバー75の一端部が押されて他端部が動き、接点部77がONになる(図12参照)。また、操作用ボルト73を逆方向に回転させて外側に移動させることによりヒンジレバー75の一端部への押圧状態が緩和され、他端部が戻るように動いて接点部77がOFFになる(図12の仮想線参照)。
【0033】
液面検知センサ45はバッテリー55を囲むように周方向で等間隔に4つ設けられていて、液面検知センサ17と同様の液面検出コンデンサ29を備えることができる。それぞれの液面検知センサ45では例えば一対の液面検出コンデンサ29が外側に向かって開くように配置されている。それぞれの液面検知センサ45は、例えば、液面検知センサ45の配置位置の径方向外側に液面が生じている場合にこの液面を検出する。
【0034】
操作用ボルト73を回転させて内側にねじ込むことにより接点部77をONにすると、LEDライト53が点灯しビデオカメラ49が撮影を開始するとともに、液面検知センサ45及び移動位置検出センサ47が作動する。制御部57は、ビデオカメラ49からの映像情報を移動位置検出センサ47からの位置情報と関連付けてメモリーカード等の取り出し可能な記憶媒体79に記憶するとともに、液面検知センサ45からの検出情報を移動位置検出センサ47からの位置情報と関連付けて記憶媒体79に記憶する。なお、制御部57は、液面検知センサ45が液面を検出したときにビデオカメラ49が撮影を開始するように構成できるし、また、液面検知センサ45が液面を検出している間だけビデオカメラ49が撮影を行なうように構成できる。ビデオカメラ49からの映像情報は移動位置検出センサ47からの位置情報とは別に記憶できる。
【0035】
なお、図13に示すように、ケース本体61内の制御部57の下側にはバランスウェイト81が設けられていて、腐食個所検出装置41は、周方向に回転しても特定の1つの液面検知センサ45(図10の上側の液面検知センサ45)が上側に戻るまで自動回転復帰するように構成されている。また、後側カバー65には逆止弁(図示せず)付きの窒素ガス封入口(窒素ガス封入口部材)83が設けられていて、窒素ガスをケース43内に注入して閉じ込めることによりケース43内の圧力を下水管路内の圧力より大きくし、ケース43の対圧性を高めるとともに、ビデオカメラ49やカメラ用透明板67での結露を防止することができる。
【0036】
また、ビデオカメラ49の作動の制御やビデオカメラ49からの撮影画像の受信を液面検出コンデンサ29又は液面検知センサ45とは別に無線通信端末にて行うこともできる。
【符号の説明】
【0037】
1、41 腐食個所検出装置
3、43 ケース
17、45 液面検知センサ
31 下水管路
33 下水
35 自由水面
37 ポンプ場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13