(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】コンクリート製品および擁壁の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/02 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
E02D29/02 305
E02D29/02 309
(21)【出願番号】P 2019033118
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】592136635
【氏名又は名称】株式会社オーイケ
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】大池 秀実
(72)【発明者】
【氏名】大池 悦二
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-160627(JP,A)
【文献】特開2004-036247(JP,A)
【文献】特開2010-261168(JP,A)
【文献】特開平09-296461(JP,A)
【文献】特開平03-008952(JP,A)
【文献】実開平02-066855(JP,U)
【文献】実開昭62-021143(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、
コンクリート製の第1の壁体と、
前記第1の壁体の左または右に隣接して配置されるコンクリート製の第2の壁体とを有し、
前記第1の壁体は、前記第2の壁体と隣接する側の下側に第1の円錐台状の第1の接続部を含み、
前記第2の壁体は、前記第1の壁体と隣接する側の上側に、前記第1の接続部に同軸状に繋がり、前記第1の円錐台状の上部に連続した円錐台形状を形成する第2の円錐台状の第2の接続部を含む、コンクリート製品。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の少なくとも一方の壁体は、前記第1の接続部および前記第2の接続部の外周面の勾配と共通の勾配の外壁面を含む、コンクリート製品。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれかにおいて、
前記第1の壁体の前記第1の接続部および前記第2の壁体の前記第2の接続部の中心軸に沿って延びた孔を含む、コンクリート製品。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1の壁体の前記隣接する側の端面の上部は、前記第2の接続部の外面の勾配と共通の勾配の面を含む、コンクリート製品。
【請求項5】
請求項1ないし3において、
前記第2の壁体の前記隣接する側の端面の下部は、前記第1の接続部の外面の勾配と共通の勾配の面を含む、コンクリート製品。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の内壁面は、上方の壁厚が小さくなるように傾斜している、コンクリート製品。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記第2の壁体は、前記第1の接続部に同軸状に繋がり、前記第1の円錐台状の下部に連続した円錐台形状を形成する第3の円錐台状の第3の接続部を含む、コンクリート製品。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記第1の壁体は、
下半部に前記第1の接続部を含み、前記第2の壁体は、
上半部に前記第2の接続部を含む、コンクリート製品。
【請求項9】
コンクリート製の第1の壁体と、前記第1の壁体の左または右に隣接して配置されるコンクリート製の第2の壁体とを用いて擁壁のコーナー部分を施工する方法であって、
前記第1の壁体は、前記第2の壁体と隣接する側の下側に第1の円錐台状の第1の接続部を含み、前記第2の壁体は、前記第1の壁体と隣接する側の上側に、前記第1の接続部に同軸状に繋がり、前記第1の円錐台状の上側に連続した円錐台形状を形成する第2の円錐台状の第2の接続部を含み、前記第1の壁体の前記隣接する側の端面の上部は、前記第2の接続部の外面の勾配と共通の勾配の面を含み、当該施工方法は、
前記第1の壁体の前記第1の接続部および前記第2の壁体の第2の接続部の少なくともいずれかを水平方向に移動して組み合わせる工程を有する、施工方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記第2の壁体は、前記第2の接続部の中心軸に沿って上下に貫通する孔を有し、
連結軸を前記孔に挿入して、第1の接続部および第2の接続部を相対的に回転して角度を調整する工程を有する施工方法。
【請求項11】
擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、
コンクリート製の第1の壁体であって、左または右に第2の壁体が接続される第1の壁体を有し、
前記第1の壁体は、前記第2の壁体と隣接する側の下部に、前記第2の壁体の前記第1の壁体と隣接する側の上部に設けられた円錐台状の第2の接続部に同軸状に繋がる円錐台状の第1の接続部を含む、コンクリート製品。
【請求項12】
擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、
コンクリート製の第2の壁体であって、左または右に第1の壁体が接続される第2の壁体を有し、
前記第2の壁体は、前記第1の壁体と隣接する側の上部に、前記第1の壁体の前記第2の壁体と隣接する側の下部に設けられた円錐台状の第1の接続部に同軸状に繋がる円錐台状の第2の接続部を含む、コンクリート製品。
【請求項13】
請求項1ないし8に記載のコンクリート製品の前記第1の壁体および前記第2の壁体を含むコーナー部分を有する擁壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁として用いられるコンクリート製品およびその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、宅地の造成、公園の造成において構築現場において容易に設置可能なL型擁壁のコーナーブロック及びその施工方法を課題として、縦壁の下端にほぼ直角に底版を一体に設けたL型のコーナーブロックであって、底版の対向面を斜めに形成し、縦壁の一方端に、中央に貫通孔を有する接合部を設けた1対の一方ブロックと他方ブロックの前記接合部を軸棒で軸着して蝶番構造としたことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この蝶番構造のコーナーブロックは、コーナー部分の角度の調整には便利である。その一方、上下に分離された接合部によりコーナーの頂部が構成されるので、コーナーの左右に配置されるブロックに付属する接合部の軸心が微妙にずれただけで、コーナーの頂部の稜線に、縦方向に、上下の接合部の軸心の微妙なずれによる凸凹が発生しやすい。特に、上側の接合部の軸心が下側の接合部の軸心より多少でも外側にずれると、上側の接合部が下側の接合部より外側に飛び出している印象を与えやすく、擁壁の構造としては問題がないとしても、外観上、不安定感を生じさせる可能性がある。また、多大な労力を使って施工時に稜線を一致できたとしても、施工後に何等かの要因により、接合部の上下に微小なずれが発生することがあり、その場合も同様の現象が発生し得る。さらに、コーナー部においては稜線が目立つので、微小なずれであっても、見た目で把握しやすいという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様の1つは、擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、コンクリート製の第1の壁体と、第1の壁体の左または右に隣接して配置されるコンクリート製の第2の壁体とを有し、第1の壁体は、第2の壁体と隣接する側の下側に第1の円錐台状の第1の接続部を含み、第2の壁体は、第1の壁体と隣接する側の上側に、第1の接続部に同軸状に繋がり、第1の円錐台状の上部に連続した円錐台形状を形成する第2の円錐台状の第2の接続部を含む。
【0006】
円錐台状の第1の接続部を含み、第2の壁体は、第1の壁体と隣接する側の上半部に、第1の接続部に同軸状に繋がる円錐台状の第2の接続部を含む。第2の壁体は、第1の接続部に同軸状に繋がり、第1の円錐台状の下部に連続した円錐台形状を形成する第3の円錐台状の第3の接続部を含んでもよい。第1の壁体は、上半部に第1の接続部を含み、第2の壁体は、下半部に第2の接続部を含んでもよい。
【0007】
このコンクリート製品は、第1の壁体および第2の壁体でコーナー部分を施工する際に、第2の接続部および第1の接続部が上下に接合され、全体として上部に対して下部が広い円錐台状のコーナーが構成され、コーナー部分の外側に上下に表れる稜線は、下側が外側に広がるものとなり、外観は安定した印象を与える形状となる。第1の接続部に対して上側となる第2の接続部は、第1の接続部に対して小さな印象を与え、施工の際、あるいはその後、万一、第2の接続部と第1の接続部との境界部分で第2の接続部の側が外側に微小にずれたとしても、第1の接続部の上に第2の接続部が収まっている印象を与えやすく、構造的な不安定感が発生することを抑制できる。さらに、第2の接続部が第1の接続部に対して外側にずれた場合であっても、第1の接続部の(外周面)稜線が円錐台状に外側に広がっているので、その外周面を基礎としてモルタル等により第2の接続部のずれを埋めることは容易であり、凸凹が目立ちにくい稜線を備えたコーナー部分を施工できる。
【0008】
さらに、第1の接続部および第2の接続部に連結するよう第1の壁体および第2の壁体の外壁面を形成することが可能であり、第1の壁体および第2の壁体の外壁面の上側に対して下側が外側に広がり、上側が後退した斜度を設けることができる。したがって、このコンクリート製品を用いることにより、全体として、擁壁を外側から見たときに圧迫感が少なく、安定感に優れた印象を与える擁壁を施工し、提供できる。
【0009】
したがって、第1の壁体および第2の壁体の少なくとも一方の壁体は、第1の接続部および第2の接続部の外周面の勾配と共通の勾配の外壁面を含んでもよい。第1の壁体および第2の壁体の外壁面が、第1の接続部と第2の接続部の外面と凹凸なく連続して接続させてもよく、さらに、外観美に優れたコーナー部分を備えた擁壁を提供できる。
【0010】
第1の壁体の第1の接続部および第2の壁体の第2の接続部の中心軸に沿って延びた孔を含んでもよい。この孔は、鉛直方向に延び、棒材などを差し込むことにより、それを中心に相対回転可能に連結でき、第1の壁体および第2の壁体が接地面に対して鉛直方向の姿勢を維持しながら、第1の壁体および第2の壁体の成す角度を変えやすく、擁壁のコーナー部分の施工がさらに容易になる。また、この孔にモルタルなどを注入することにより第1の接続部および第2の接続部を固定できる。
【0011】
第1の壁体の隣接する側の端面の上部は、第2の接続部の外面の勾配と共通の勾配の面を含んでもよい。さらに、第2の壁体の隣接する側の端面の下部は、第1の接続部の外面の勾配と共通の勾配の面を含んでもよい。第1の壁体の隣接する側の端面の上部と第2の接続部の外面との隙間、および第2の壁体の隣接する側の端面の下部と第1の接続部の外面との隙間を小さくできる。また、擁壁を施工する際に、これらの隙間をモルタル等で埋める場合は、施工の手間を軽減できる。
【0012】
第1の壁体および第2の壁体の内壁面は、上方の壁厚が小さくなるように傾斜していてもよい。外壁面および内壁面に勾配を有する擁壁用のブロック(コンクリート製品)であって、コーナーの角度に応じて現場で角度を変えることができるコンクリート製品を提供できる。
【0013】
本発明の異なる他の形態の1つは、第1の壁体と第2の壁体とを用いて擁壁のコーナー部分を施工する方法である。第1の壁体の隣接する側の端面の上部が、第2の接続部の外面の勾配と共通の勾配の面を含む場合は、第1の壁体と第2の壁体とを垂直方向の動きだけで組み合わせることが難しい。したがって、当該施工方法は、第1の壁体の第1の接続部および第2の壁体の第2の接続部の少なくともいずれかを水平方向に移動して組み合わせる工程を有する。
【0014】
また、第2の壁体は、第2の接続部の中心軸に沿って上下に貫通する孔を有し、当該施工方法は、連結軸を孔に挿入して、第1の接続部および第2の接続部を相対的に回転して角度を調整する工程を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態のコーナーブロックを前方(正面)から見た斜視図である。
【
図2】コーナーブロックを後方(背面)から見た斜視図である。
【
図3】第1のブロックおよび第2のブロックのそれぞれを外側(正面)から見た斜視図である。
【
図4】第1のブロックおよび第2のブロックのそれぞれを内側(背面)から見た斜視図である。
【
図5】第1のブロックおよび第2のブロックを正面から見た図である。
【
図6】第1のブロックおよび第2のブロックの側面図である。
【
図7】第1のブロックおよび第2のブロックの平面図である。
【
図8】第1のブロックおよび第2のブロックの底面図である。
【
図9】コーナーブロックを用いた擁壁を施工する様子を示し、(a)は70度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(b)は90度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(c)は110度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示す図である。
【
図10】コーナーブロックを組み立てる工程を説明する図である。
【
図11】コーナーブロックの異なる例を示す図である。
【
図12】コーナーブロックのさらに異なる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および
図2に、コンクリート製品の一例を示している。このコンクリート製品は、コンクリート製の擁壁1のコーナー部分2を施工するためのコーナーブロック5であり、コンクリート製の第1のブロック10と、第1のブロック10の左または右に隣接して配置されるコンクリート製の第2のブロック20とを有する。
図1は、コーナー部分2を外側(前方、正面)8から見た斜視図である。
図2は、コーナー部分2を内側(後方、背面)7から見た斜視図であり、外側8から見てコーナー3の左側に第1のブロック10が配置され、右側に第2のブロック20が配置されている。擁壁1は、宅地造成などの土留を行う必要がある箇所を囲うように施工される。
【0017】
図3および
図4に、第1のブロック10および第2のブロック20を分離した状態で示している。第1のブロック10は、擁壁1の壁面を構成する第1の壁体11を含み、第2のブロック20は、擁壁1の壁面を構成する第2の壁体21を含み、第1の壁体11と第2の壁体21とが隣接して所定の角度θで組み合わされて擁壁1のコーナー部分2が施工される。第1の壁体11は、水平方向に延びた本体12と、本体12のコーナー3の側(コーナー側)4、すなわち、第2の壁体21と隣接する側4の下側に、本体12と一体となるように設けられた円錐台状の第1の接続部(連結部、接合部、結合部)13とを含む。第2の壁体21は、水平方向に延びた本体22と、本体22のコーナー3の側(コーナー側)4、すなわち、第1の壁体11と隣接する側4の上側に、本体22と一体となるように設けられた円錐台状の第2の接続部23とを含む。
【0018】
本例のブロック10および20においては、第1の接続部13は、第1の壁体11のコーナー側4の下半部を構成するように設けられており、第2の接続部23は、第2の壁体21のコーナー側4の上半部を構成するように設けられている。したがって、第1の接続部13の高さh1と、第2の接続部の高さh2とは同じまたはほぼ同じになっているが、第1の接続部13の高さh1が第2の接続部の高さh2よりも長くてもよく、短くてもよい。第2の壁体21の円錐台状の第2の接続部23は、下側を構成する、第1の壁体11の第1の接続部13に同軸状に繋がり、第1の接続部13の円錐台の形状(第1の円錐台状)の上部に、連続した円錐台形状を形成するような第2の円錐台形状を含む。したがって、第1の接続部13の上に第2の接続部23が搭載されると、1つの上下に連続した円錐台形状の外面3aを備えたコーナー3が形成される。
【0019】
すなわち、第1のブロック10の円錐台状の第1の接続部13の上面13bと、第2のブロック20の円錐台状の第2の接続部23の下面(底面)23cとは同じ直径または半径を備えた円形に形成されており、第2のブロック20の接続部23と、第1のブロック10の接続部13とを上下に接続して、擁壁1のコーナー部分2を施工すると、コーナー3の外面(外周面)3aは、上下に同じ勾配(斜面、テーパー面)を備えた円錐台の形状の一部、すなわち、円錐台状の第1の接続部13および第2の接続部23により構成されるコーナー接続部30の外周面31の一部により構成される。第1の壁体11および第2の壁体21のなす角度θが変わっても、円錐台状の第1の接続部13および第2の接続部23により構成されるコーナー接続部30の外周面31の基本的な形状は変わらず、コーナー3の外周面3aは、上下に同じ勾配(斜面、テーパー面)を備えた円錐台状の面が表れる。
【0020】
上側に行くほど狭くなる円錐台形状の外周面3a、すなわち、コーナーの接続部30の外周面31の勾配(斜度)は、1~5%程度であってもよく、2~4%程度であってもよく、典型的な勾配は3%である。第1の壁体11の本体12は、外面(外壁面)12aが円錐台状の第1の接続部13の外周面13aと連続するように形成されており、外面12aは、上側が下側に対して後退し、接続部13の外周面13aと同様の勾配9で傾いている。第2の壁体21も同様であり、本体22の外面(外壁面)22aが円錐台状の第2の接続部23の外周面23aと連続するように形成されており、外面22aは、上側が下側に対して後退し、外周面23aと同様の勾配9で傾いている。
【0021】
第1のブロック10および第2のブロック20を含むコーナーブロック5により、擁壁1のコーナー部分5を施工(製造)すると、第2の接続部23および第1の接続部13が上下に接合され、全体として上部に対して下部が広い円錐台状のコーナー接合体(コーナー組立体、コーナーアッセンブリ)30が構成され、コーナー部分の外側8に上下に表れる稜線(コーナー3の外周面3aの輪郭)3bは、上側3cに対して下側3dが外側8に広がるものとなり、外観は安定した印象を与える形状となる。したがって、第1の接続部13に対して上側となる第2の接続部23は、第1の接続部13に対して小さな印象を与え、施工の際、あるいはその後、万一、第2の接続部23と第1の接続部13との境界部分33で第2の接続部23の側が外側8に微小にずれたとしても、第1の接続部13の上に第2の接続部23が収まっている印象を与えやすく、構造的な不安定感が発生することを抑制できる。さらに、第2の接続部23が第1の接続部13に対して外側8にずれた場合であっても、第1の接続部13の(外周面)稜線3bが円錐台状に外側8に広がっているので、その外周面を基礎としてモルタル等により第2の接続部23とのずれを埋めることは容易であり、凸凹が目立ちにくい稜線3aを備えたコーナー部分2を施工できる。
【0022】
さらに、第1のブロック10および第2のブロック20は、第1の接続部13および第2の接続部23に連結するよう第1の壁体11および第2の壁体21の外壁面12aおよび22aが形成されている。このため、第1の壁体11および第2の壁体21の外壁面12aおよび22aも、コーナー3の外周面3aに連続した形状で、上側に対して下側が外側8に広がり、上側が後退した斜度(勾配)が設けられている。したがって、このコーナーブロック(コンクリート製品)5を用いることにより、コーナー部分2を含めて、擁壁1を全体として、外側8から見たときに圧迫感が少なく、安定感に優れた印象を与える擁壁1として施工し、提供できる。
【0023】
図3~
図8を用いて、コーナーブロック5を構成する第1のブロック10および第2のブロック20をさらに詳細に説明する。
図3は、第1のブロック10および第2のブロック20を分離した状態を外側(正面)8から見た斜視図である。
図4は、第1のブロック10および第2のブロック20を内側(背面)7から見た斜視図である。
図5は、第1のブロック10および第2のブロック20を外側(正面)8から見た図であり、それらのブロック10および20を直線的に組み合わせた状態を示す図である。
図6(a)は、第1のブロック10を左側から見た側面図であり、
図6(b)は、第2のブロック20を右側から見た側面図である。それぞれのブロックの反対側から見た図は、基本的に左右対称となり、第1の接続部13および第2の接続部23の構造は破線により示している。
図7(a)は、第1のブロック10の平面図であり、
図7(b)は第2のブロック20の平面図である。
図8(a)は、第1のブロック10の底面図であり、
図8(b)は第2のブロックの20の底面図である。
【0024】
第1のブロック10および第2のブロック20は、擁壁1の壁面を構成する第1の壁体11および第2の壁体21をそれぞれ有する。第1の壁体11および第2の壁体21の構造(構成)は、コーナー側4の構成を除き共通であり、擁壁1を施工する地面または基礎から立脚する本体12および22と、本体12および22の下側、内側7に向かって延びるように設けられた基礎部40とを含む。本体12および22と、基礎部40とはL字形を形成するように構成されており、全体としてL字形のブロックとなっている。
【0025】
本例の第1のブロック10および第2のブロック20の基礎部40は、本体12および22の内側7の下端縁から水平方向に延びるコンクリート製の底板部41と、底板部41からさらに内側7に延びた(突き出た)複数の鉄筋42とを含む。底板部41は、ブロック10および20を保管、輸送または現場に一時的に配置する際にブロック10および20を安全に支持できる程度の幅および重量、または重心位置を制御できるものであればよく、例えば、底板部41の幅(長さ)は、本体12および22の底面の幅の0.5~5倍程度であってもよい。本体12および22の底面の幅がブロック10および20を一時的に支持するために十分であれば、底板部41は設けられていなくてもよい。
【0026】
底板部41から内側に突き出た鉄筋42は、ブロック10および20により擁壁1として十分な機能を果たすための基礎を形成するために用いられる。擁壁1の重要な機能は、内側7の土圧に対抗することであり、そのために水平方向に十分な長さの基礎を設ける必要がある。その一方、コーナー部2においては、ブロック10および20のなす角度θによっては、それぞれのブロック10および20から延びた基礎が干渉する可能性がある。
【0027】
図9にブロック10および20により異なる角度θのコーナー部2を施工した状態を示している。
図9(a)は角度θが70度、
図9(b)は角度θが90度、
図9(c)は角度θが110度を示している。現場でコーナー部2を施工する際は、破線で示すように、それぞれにブロック10および20から延びた鉄筋42が重なる領域も含めてコンクリートを打設して基礎45を施工することにより、角度θに関わらず所定の耐力を備えた擁壁1を施工できる。
【0028】
なお、ブロック10および20の基礎40の構成は一例であり、上述したように底板部41が設けられていなくてもよい。逆に、コーナー部2として想定される最少角度θで、相互に干渉しない範囲で予めコンクリートで成形された基礎がプレハブされており、鉄筋が突き出ていないタイプの基礎を備えているものであってもよい。
【0029】
基礎40に支持されるブロック10および20の本体12および22の外面(外壁面)11aおよび22aは、上述したように、それぞれの上端面12bおよび22bに対して下端面12cおよび22cが外側8に突き出て、下側が広がり、上側が内側7へ後退するような勾配9を備えている。本体12および22の内面(内壁面)12dおよび22dは、上端面12bおよび22bに対して下端面12cおよび22cが内側7に突き出て、下側が広がり、上側が外側8へ後退するような勾配9aを備えていてもよい。この場合、ブロック10および20は、外側8から見ても、内側7から見ても、上側が下側に対して後退し、安定した印象を与えやすい。
【0030】
なお、本体12および22の上端面12bおよび22bと、下端面12cおよび22cのサイズ(幅)は、本体12および22の高さに対する強度および土圧等に対する耐力などを考慮して決定され、一般的に上端面12bおよび22bの幅の方が、下端面12cおよび22cの幅より狭く、それにより外面12aおよび22aおよび内面12dおよび22dの勾配が決定される。本例のブロック10および20は、上述したように、外面12aおよび22aの勾配(斜度)9を円錐台状の接続部13および23と一致させることが主眼であり、外面12aおよび22aの勾配9を確保することが重要である。したがって、内面12dおよび22dの勾配は0%であってもよく、外面の勾配9よりも小さくてもよく、大きくてもよく、下端面12cおよび22cに対する上端面12bおよび22bの設計に依存して決定されてもよい。本例では、内面12dおよび22dの勾配9aが0%のブロック10および20を示している。
【0031】
第1のブロック10および第2のブロック20のコーナー側4には、壁本体12および22のコーナー側の側面12eおよび22eにそれぞれ繋がる第1の接続部13および第2の接続部23が設けられている。一方、第1のブロック10および第2のブロック20のコーナー側4とは反対側の側面12fおよび22fは、垂直に切り立った面となっており、擁壁1を構成する他のL型擁壁(不図示)と接続できるようになっている。
【0032】
第1のブロック10の第1の接続部13は、円錐台状で、外周面13aが壁本体12の外面12aと連続して、段差あるいは凹凸なく、面一で接続されるように、その中心13xが壁本体12の中心に対して内側7に偏心した位置になるように形成されている。第1の接続部13は、壁本体12のコーナー側4の下半部に接続する、あるいは一体となるように設けられており、円形の上面13bの中心13xに中心(中心軸)13xに沿って垂直(鉛直)に延びた孔15が設けられている。孔15は、第1の接続部13を上下に貫通していてもよく、適当な深さの有底の孔であってもよい。壁本体12のコーナー側4の第1の接続部13の上部は円錐台状の第2の接続部23に接するように傾いた側面12eとなっている。側面12eは、第1の接続部13の上面13bから中心13xの方向に傾く、あるいは突き出るように斜め上に延びており、第2の接続部23の円錐台状の外周面23aに沿うように円弧状に形成されている。側面12eは、第2の接続部23の円錐台状の外周面23aに接するような平面であってもよい。
【0033】
第1の接続部13は、本体12の内面12dから、ブロック10の内側7に突き出るように構成されており、内側7からみると、第1の接続部13と本体12との境界線12gは、上側の本体12の側面12eとは同一勾配で一直線につながっている。
【0034】
第2のブロック20の第2の接続部23も円錐台状で、第1の接続部13の円錐台状の形状(第1の円錐台状)の上に、連続して一体の円錐台を形成する形状(第2の円錐台状)を備えている。第2の接続部23の外周面23aも壁本体22の外面22aと連続して、段差あるいは凹凸なく、面一で接続されるように、その中心23xが壁本体22の中心に対して内側7に偏心した位置になるように形成されている。第2の接続部23は、壁本体22のコーナー側4の上半部に接続する、あるいは一体となるように設けられており、円形の上面23bの中心(中心軸)23xに沿って垂直(鉛直)に第2の接続部23を貫通するように延びた孔25が設けられている。壁本体22のコーナー側4の第2の接続部23の下側は、円錐台状の第1の接続部13に接するように傾いた側面22eとなっている。側面22eは、第2の接続部23の底面23cから中心23xに対し離れる方向に傾く、あるいは凹むように斜め下に延びており、第1の接続部13の円錐台状の外周面13aに沿うように円弧状に形成されている。側面22eは、第1の接続部13の円錐台状の外周面13aに接するような平面であってもよい。
【0035】
第2のブロック20においても、第2の接続部23は、本体22の内面22dから、ブロック20の内側7に突き出るように構成されており、内側7からみると、第2の接続部23と本体22との境界線22gは、下側の本体22の側面22eとは同一勾配で一直線につながっている。なお、第1の接続部13および第2の接続部23の内側7の一部は、コーナー部2を施工したときに外側8に露出しない。したがって、第1の接続部13および第2の接続部23の内側7は、一部が欠けた、例えば、平面となるように成形されていてもよい。
【0036】
第1のブロック10および第2のブロック20を、第2の接続部23および第1の接続部13が上下に重なるように施工すると、第2の接続部23の底面23cと第1の接続部13の上面13bとが同じ形状、例えば、直径が同一の円形であり、第1の接続部13および第2の接続部23は、中心軸13xおよび23xが共通する同心状に組み合わされ、それらにより、円錐台状のコーナー組立体30が構成される。第1の接続部13の中心軸13xおよび第2の接続部23の中心軸23xをコーナー3に合わせて、底面23cと上面13bとを摺動面として、中心軸13xおよび23xを中心に第1の壁体11および第2の壁体21とを相対的に回転することにより所望の角度θで壁本体12および22が交差するコーナー部2を施工することができる。
【0037】
図10に擁壁1のコーナー部分2を施工する一例を示している。まず、第1のブロック10および第2のブロック20を、コーナー部分2を施工する場所で組み合わせる。第1のブロック10の第1の壁体11は、第2のブロック20の第2の壁体21と隣接する側(コーナー側)4の下側に第1の円錐台状の第1の接続部13を含み、第2のブロック20の第2の壁体21は、第1の壁体11と隣接する側(コーナー側)4の上側に、第1の接続部13に同軸状に繋がり、第1の円錐台状の上側に連続した円錐台形状を形成する第2の円錐台状の第2の接続部23を含む。さらに、第1の壁体11の本体12の隣接する側4の上部の端面12eは、第2の接続部23の外面23aの勾配と共通の勾配の面を含む。端面12eを接続部23の外面23aと共通の勾配とすることにより、組み合わせたときの隙間を小さくできる。その一方、端面12eは、上側が突き出た状態となっているので、第1のブロック10および第2のブロック20を上下方向の移動のみで組み合わせることができない。
【0038】
このため、第1のブロック10および第2のブロック20を組み合わせてコーナー部2を施工する際は、第1の壁体11の第1の接続部13および第2の壁体21の第2の接続部23の少なくともいずれかを水平方向に移動する動きを含めた移動方法により組み合わせる工程を採用する必要がある。例えば、第1のブロック10を所定の場所に設置したのちに、第2のブロック20を第1のブロック10の方向にスライドし、第2の接続部23と第1の接続部13とを上下に組み合わせ、第2の接続部23の貫通孔25と、第1の接続部13の孔15とを一致させる。
【0039】
次に
図10(b)示すように、鉄筋あるいはその他の棒状の部材51を、接続部13および23の中心軸13xおよび23xに沿って上下に関する貫通孔25と孔15とを連結するように挿入する。棒状の部材51は、第1のブロック10と第2のブロック20とを、コーナー3を中心軸13xおよび23xとしてその周りに回転する連結軸となるので、第1の接続部13および第2の接続部23を相対的に回転して、壁体11および21のなす角度θを所望の角度になるように調整する。
【0040】
その後、
図10(c)に示すように、棒状の部材51を抜いたり、あるいはそのままセットした状態で、貫通孔25にモルタルあるいはその他の接着剤52を注入し、第1のブロック10および第2のブロック20を相互に固定する。その後、
図9に示したように、それぞれのブロック10および20から内側7に延びた鉄筋42を適宜組み合わせてコンクリートを打設し、コーナー部2の基礎45を施工する。
【0041】
第1のブロック10と第2のブロック20との境界の部分、すなわち、第1の接続部13と第2の壁体21の端面22eとの間、および第2の接続部23と第1の壁体11の端面12eとの間は、相互に回転できるように微小な隙間(クリアランス)が設けられている。したがって、その隙間をモルタルなどで埋めてもよい。
【0042】
なお、第1の壁体11および第2の壁体21がなす角度θは、
図9に示す角度に限定されず、現場のコーナー部2の角度に合わせてフレキシブルにセットできる。
【0043】
図11に、異なるコーナーブロック5の例を示している。本例の第1のブロック10および第2のブロック20の基礎部40は、本体12および22の内側7の下側に、底板部41を設けずに、2段に内側7に延びた(突き出た)複数の鉄筋42を含む。鉄筋42は、上述した例のように1段であってもよく、強度あるいは施工現場に即して3段以上であってもよい。
【0044】
図12に、さらに異なるコーナーブロック5の例を示している。本例の第1のブロック10および第2のブロック20の基礎部40は、本体12および22の内側7の下側にプレハブされた底板部41を含む。底板部41は、第1の壁体11および第2の壁体21がなす角度θが可変でも干渉しない形状にプレハブされており、一例は、図示したような三角形、またはそれに近い形状である。基礎部40の構成はこれらに限定されず、第1の壁体11および第2の壁体21をそれぞれ十分な強度で支持できるものであればよく、底板部41の中心に開口があってもよく、リブなどの他の構成を介して底板部41と各壁体11および21が接続されていてもよい。
【0045】
このように本例のコーナーブロック5を用いてコーナー部2を施工することにより、コーナー部2の外周面3aを含めて、外壁面が上方に向かって後退するように傾斜した擁壁1を施工し、提供できる。さらに、コーナー部2は、上方が細い円錐台状の構造30で構成され、万一、施工時あるいは施工後に、上側の第2の接続部23が下側の第1の接続部13よりも外側に少しずれてはみ出したとしても、全体として、不安定な感じや、崩れやすいという印象を与えることはほとんどない。このため、コーナー部2の施工に要する労力を低減でき、優れた美観を有する擁壁1を施工できる。
【0046】
なお、それぞれの壁体11および21のコーナー側4の側面12eおよび22eは、鉛直方向に上下に延びた側面であってもよい。特に、上側の側面12eが鉛直方向に延びていると、第1のブロック10および第2のブロック20を上下方向(鉛直方向)から組み合わせることができ、コーナー部2の施工がさらに容易になる。また、第1の接続部13の上面13bまたは第2の接続部23の下面23cに接続用の部材を軸13xまたは23xに沿って予め埋設しておくことができる。
【0047】
また、上記ではコーナー組立体3を上下に二分割した例を説明したが、三分割またはそれ以上に分割してもよい。例えば、第2のブロック20の第2の壁体21は、第1の接続部13に同軸状に繋がり、第1の円錐台状の下部に連続した円錐台形状を形成する第3の円錐台状の第3の接続部を含んでもよい。さらに、第1のブロック10の第1の壁体11に、第3の接続部の下側に繋がる円錐台形状の第4の接続部を設けてもよい。また、第1のブロック10および第2のブロック20の基礎部40の構成は、上記に限定しないことは上述した通りである。また、壁体11および21は、上端面12bおよび22bに、ガードレール基礎や塀の基礎などの、さらに異なる機能を付加する構成を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 擁壁、 2 コーナー部
10 第1のブロック、 11 第1の壁体、 12 壁本体、 13 第1の接続部
20 第2のブロック、 21 第2の壁体、 22 壁本体、 23 第2の接続部