(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】塀構造、塀材及び塀の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04H 17/16 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
E04H17/16 104
(21)【出願番号】P 2019048104
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308022302
【氏名又は名称】大林株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】片桐 良夫
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0221901(US,A1)
【文献】特開平07-207991(JP,A)
【文献】特開平01-275875(JP,A)
【文献】実開昭49-028942(JP,U)
【文献】特開平05-018149(JP,A)
【文献】特開昭48-027552(JP,A)
【文献】実開昭53-068522(JP,U)
【文献】特公昭46-006272(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/16
E04F 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接している支柱間に塀パネルが保持されている塀構造であり、
前記支柱は、平板状のベース面部と長尺で断面がコ字形の主柱部とがL字形をなし、該主柱部として、前記ベース面部の延びる方向を前後方向とすると共に前記主柱部が延びる方向を上下方向としたときに、前記コ字形の開口を左右方向の何れかに向けている前記主柱部を少なくとも一つ備えているものであり、
前記塀パネルは、横材と縦材とが組み付けられたフレームの開口を、両側からパネル材が被覆している中空構造で
あると共に、前記パネル材の外表面に不織布層を備えており、該不織布層には、糸による縫い目が形成されているものであり、
前記ベース面部を地面に当接させた状態で、前記ベース面部を貫通したアンカーが地中に埋設されていることによって前記支柱が地面から立設しており、
隣接している前記支柱であって、それぞれの前記主柱部の前記コ字形の開口が向き合うように配置されている前記支柱の間に、前記コ字形の開口に落とし込まれることによって前記塀パネルが保持されている
ことを特徴とする塀構造。
【請求項2】
支柱と塀パネルを備える塀材であり、
前記支柱は、平板状のベース面部と長尺で断面がコ字形の主柱部とがL字形をなし、該主柱部として、前記ベース面部の延びる方向を前後方向とすると共に前記主柱部が延びる方向を上下方向としたときに、前記コ字形の開口を左右方向の何れかに向けている前記主柱部を少なくとも一つ備え、前記ベース面部にアンカー用孔部が貫設されているものであり、
前記塀パネルは、横材と縦材とが組み付けられたフレームの開口を、両側からパネル材が被覆している中空構造である
と共に、前記パネル材の外表面に不織布層を備えており、該不織布層には、糸による縫い目が形成されているものである
ことを特徴とする塀材。
【請求項3】
請求項
2に記載の塀材を使用した塀の構築方法であり、
前記ベース面部を地面に当接させた状態で、前記アンカー用孔部を挿通させたアンカーを地中に埋設することにより、
隣接させる前記支柱それぞれの前記主柱部の前記コ字形の開口が向き合うように、前記支柱を前記地面から立設させ、
隣接している前記支柱それぞれの前記主柱部の前記コ字形の開口に前記塀パネルを落とし込むことによって、前記塀パネルを前記支柱に保持させる
ことを特徴とする塀の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塀構造、該塀構造を構成する塀材、及び、該塀材を使用した塀の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
隣接する住宅との境界、住宅と道路との境界などに設けられ、他者の出入りを防止すると共に視野を遮蔽する塀としては、従来、コンクリートブロック塀や、現場でコンクリートを打設する湿式コンクリート塀が多用されている。また、プレキャストコンクリートパネルを工場で製造し、現場に輸送して施工する乾式コンクリート塀も用いられている。
【0003】
しかしながら、コンクリートブロック塀は、鉄筋を縦横に配設し、モルタルを充填しながらブロックを積み上げて構築するため、現場での作業に多大な手間と時間を要するものであった。また、湿式コンクリート塀の場合も、縦横に鉄筋を組み上げた上で鉄筋を挟むように型枠を設置して型枠内にコンクリートを流し込み、コンクリートが硬化・乾燥してから型枠を取り外すという現場での作業に、多大な手間と時間を要するものであった。一方、乾式コンクリート塀の場合は、現場でコンクリートを硬化・乾燥させる時間を省き、施工期間を短縮することはできるものの、重量物であるプレキャストコンクリートパネルを輸送して現場で施工するために、大型の輸送車やクレーンを必要とすると共に、多人数の作業者を要するという問題があった。
【0004】
加えて、周辺の道路幅が狭い場所や、余剰の敷地面積が小さい場所など、大型の輸送車やクレーンが進入できない場所には、大型の型枠を要する湿式コンクリート塀や、重量物であるプレキャストコンクリートパネルを用いた乾式コンクリート塀は施工できないという問題があった。
【0005】
更に、コンクリートブロック塀やコンクリート塀の場合は、倒壊を防止すべく所定の強度を保つために、鉄筋の間隔、塀の高さや厚さ、基礎の根入れ深さ等、種々の基準が法律等で定められているが、現行の基準を満たさない古い塀が、全国には多量に残存している。近年、大規模な地震による甚大な被害が相次いだことにより、現行の基準を満たさない古い塀に対しては、解体・撤去して新たな塀に造り替えることが要請されているが、新たな塀の施工には上記のような問題があるため、塀の造り替えが進んでいないのが実情である。仮に、新たな塀を、労力や時間を低減して、道路幅や敷地が狭小な場合であっても構築することができれば、塀の造り替えも促進されると考えられる。
【0006】
一方、金属製や木製のフェンス(柵、板囲い)は、労力や時間をさほど要することなく、道路幅や敷地が狭小な場合であっても構築することが可能であるが、塀に重厚感を求める需要者には好まれないという事情がある。
【0007】
そこで、本出願人は過去に、労力や時間を低減して、道路幅や敷地が狭小な場合であっても構築することができると共に、重厚感を与える塀構造、及び、その構築のための塀材を提案し、実施している(例えば、特許文献1参照)。本発明は、同じコンセプトの塀構造及び塀材のバリエーションを増やすための更なる検討の結果、なされたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記のように、労力や時間を低減して、道路幅や敷地が狭小な場合であっても構築することができると共に、重厚感を与える塀構造、該塀構造を構成する塀材、及び、該塀材を使用した塀の構築方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる塀構造は、
「隣接している支柱間に塀パネルが保持されている塀構造であり、
前記支柱は、平板状のベース面部と長尺で断面がコ字形の主柱部とがL字形をなし、該主柱部として、前記ベース面部の延びる方向を前後方向とすると共に前記主柱部が延びる方向を上下方向としたときに、前記コ字形の開口を左右方向の何れかに向けている前記主柱部を少なくとも一つ備えているものであり、
前記塀パネルは、横材と縦材とが組み付けられたフレームの開口を、両側からパネル材が被覆している中空構造であり、
前記ベース面部を地面に当接させた状態で、前記ベース面部を貫通したアンカーが地中に埋設されていることによって前記支柱が地面から立設しており、
隣接している前記支柱であって、それぞれの前記主柱部の前記コ字形の開口が向き合うように配置されている前記支柱の間に、前記コ字形の開口に落とし込まれることによって前記塀パネルが保持されている」ものである。
【0011】
本発明にかかる塀構造は、次の構築方法により構築することができる。すなわち、
「前記ベース面部を地面に当接させた状態で、アンカー用孔部を挿通させたアンカーを地中に埋設することにより、
隣接させる前記支柱それぞれの前記主柱部の前記コ字形の開口が向き合うように、前記支柱を前記地面から立設させ、
隣接している前記支柱それぞれの前記主柱部の前記コ字形の開口に前記塀パネルを落とし込むことによって、前記塀パネルを前記支柱に保持させる」構築方法である。
【0012】
本構成の塀構造は、複数の支柱を地面から立設させ、支柱間に塀パネルを落とし込むように挿入することによって構築されるものである。支柱も塀パネルも予め工場で製造しておくことができ、施工現場で塀パネル同士を固着させる作業を要しない。従って、従来のコンクリートブロック塀や湿式コンクリート塀と比べて、労力や時間を大幅に低減して塀構造を構築することができる。
【0013】
また、塀パネルはフレームがパネル材で被覆された中空構造であるため、非常に軽量である。そのため、サイズの設定により、一人または二人の作業者が人力で運搬することが可能である。従って、道路幅や敷地面積が狭小で、大型の輸送車やクレーンが進入でできない施工現場であっても、問題なく塀構造を構築することができる。
【0014】
また、本実施形態の塀構造は、ベース面部の延びる方向を、塀を構築する施主の領域の内方に向かう方向とすることにより、構築作業の全てを施主の領域で行うことができる。そのため、塀の構築に当たり、他者の管理下にある領域に入る許可を得るなどの煩雑な手続きが不要である。
【0015】
更に、塀パネルは軽量な中空構造でありながら、横材と縦材を組み付けることにより機械的強度が高められたフレームを備えているため、地震による振動や、台風等で強風を受けても、変形したり破断したりしない堅固な塀構造を構築することができる。
【0016】
加えて、塀パネルを保持する支柱は、主柱部とベース面部とがL字形をなしており、ベース面部を貫通したアンカーが地中に埋設されているため、支柱が地面に強固に固定されており、塀構造が極めて頑丈で倒壊しにくい。
【0017】
更に、塀構造を構成する塀パネルは中空構造であるが、パネル材でフレームを被覆していることにより外観からは中空構造であることは分からない。そのため、金属製や木製のフェンスに比べて重厚感を与える塀を構築することができる。
【0018】
次に、本発明にかかる「塀材」は、
「支柱と塀パネルを備える塀材であり、
前記支柱は、平板状のベース面部と長尺で断面がコ字形の主柱部とがL字形をなし、該主柱部として、前記ベース面部の延びる方向を前後方向とすると共に前記主柱部が延びる方向を上下方向としたときに、前記コ字形の開口を左右方向の何れかに向けている前記主柱部を少なくとも一つ備え、前記ベース面部にアンカー用孔部が貫設されているものであり、
前記塀パネルは、横材と縦材とが組み付けられたフレームの開口を、両側からパネル材が被覆している中空構造である」ものである。
【0019】
これは、上記の塀構造を構成すると共に、上記の塀の構築方法に使用される塀材である。
【0020】
また、本発明にかかる「塀材」は、上記構成に加え、
「前記塀パネルは、前記パネル材の外表面に不織布層を備えており、
該不織布層には、糸による縫い目が形成されている」ものである。
【0021】
本構成では塀パネルの外表面は、毛羽立った不織布層であり、更に糸による縫い目によって微細な凹凸が形成されている。毛羽立ちに加えて縫い目による微細な凹凸を有していることにより、塀パネルに対する化粧層の接着性を高めることができる。化粧層は、塗料の塗布や吹付けを行うことにより、或いは、タイルなど表面材を貼り付けることにより設けることができ、化粧層と不織布層との間に下地剤の層を設けても良い。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の効果として、労力や時間を低減して、道路幅や敷地が狭小な場合であっても構築することができると共に、重厚感を与える塀構造、該塀構造を構成する塀材、及び、該塀材を使用した塀の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態の塀構造の斜視図である。
【
図2】(a)支柱10Aの側面図、及び、(b)支柱10Aを中央で切断した縦断面図である。
【
図3】(a)支柱10Aの要部平面図、(b)支柱10Bの要部平面図、(c)支柱10Cの要部平面図、及び、(d)支柱10Dの要部平面図である。
【
図5】塀構造の構築方法を説明する分解斜視図である。
【
図6】(a)アンカーの埋設を説明する要部断面図(側面視)、及び(b)アンカーの埋設を説明する要部断面図(正面視)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態である塀構造、該塀構造を構成する塀材、及び、該塀材を使用した塀の構築方法について、図面を用いて説明する。
【0025】
まず、塀材の構成について説明する。本実施形態の塀材は、支柱10と、アンカー20と、塀パネル30とを具備している。支柱10には、後述するように複数の種類があるが、特に区別する必要がない場合は「支柱10」と総称している。
【0026】
複数種類の支柱10は、共通する構成として、ベース部12と、一以上の主柱部11とを備えている。ベース部12は、細長い長方形で平板状のベース面部12aと、ベース面部12aの一対の長辺からベース面部12aに対して直角に立ち上がった一対の立壁部12bを備えており、ベース面部12aが延びる方向に直交する方向の断面は単一のコ字形である。ベース面部12aには、複数のアンカー用孔部12hが貫設されている。ベース面部12aは、地面に当接させる部分である。
【0027】
一つの主柱部11は、細長い長方形で平板状の中間壁部11aと、中間壁部11aの一対の長辺から中間壁部11aに対して直角に延出した一対の側壁部11bを備えており、中間壁部11aが延びる方向に直交する方向の断面は単一のコ字形である。ベース部12の長手方向(ベース面部12aが延びる方向)と主柱部11の長手方向(中間壁部11aが延びる方向)とは直角をなしており、主柱部11はベース部12と共にL字形を形成している。
【0028】
支柱10には、主柱部11を二つ備える支柱10A,10Bと、主柱部11を一つ備える支柱10C,10Dとがある。以下では、「左方向」及び「右方向」を用いて支柱10の種類を説明するが、ここでの「左右」は、ベース部12の長手方向を前後方向とし、主柱部11の長手方向を上下方向としたときの左右である。
【0029】
まず、支柱10Aは、
図3(a)に示すように、コ字を右方向に開口させている主柱部11と、コ字を左方向に開口させている主柱部11とが、互いの中間壁部11aを重ね合わせた状態で、ベース部12と一体化されているものである。
【0030】
支柱10Bは、
図3(b)に示すように、コ字を右方向または左方向に開口させている主柱部11の中間壁部11aと、コ字を前方向に開口させている主柱部11の側壁部11bとが重ね合わされた状態で、ベース部12と一体化されているものである。ここでは、主柱部11の一つが右方向に開口している場合を図示しており、右方向に開口している主柱部11の中間壁部11aが、ベース面部12aにおける左側の長辺の延長線上に位置している。主柱部11の一つが左方向に開口している場合の支柱10Bは、左方向に開口している主柱部11の中間壁部11aが、ベース面部12aにおける右側の長辺の延長線上に位置するように形成される。
【0031】
支柱10Cは、
図3(c)に示すように、一つの主柱部11がコ字を左方向に開口させて、その中間壁部11aがベース面部12aにおける右側の長辺の延長線上に位置するように、ベース部12と一体化されているものである。一方、支柱10Dは、
図3(d)に示すように、一つの主柱部11がコ字を右方向に開口させて、その中間壁部11aがベース面部12aにおける左側の長辺の延長線上に位置するように、ベース部12と一体化されているものである。
【0032】
何れの支柱10も、中間壁部11aにおいてベース面部12aを延長した面から所定の高さに、塀パネル30を載置するための平板状の載置台13が、中間壁部11aの長手方向に対して直角をなすように取り付けられている。また、支柱10では、L字形の角部に相当する部分で、ベース部12と主柱部11とが三角形の補強板19によって連結されており、機械的強度が高められている。
【0033】
なお、支柱10の高さは、構築する塀の高さに応じて設定されるものであり、載置台13から主柱部11の上端までの高さを、塀パネル30の高さの複数倍とする。
【0034】
塀パネル30は、横材31aと縦材31bとを組み付けたフレーム31と、フレーム31の開口を両側から被覆しているパネル材32と、パネル材32の外表面を被覆している不織布層32cとを、主要な構成とする。
【0035】
フレーム31はアルミニウム製で、縦材31bの一対と、縦材31bより長い横材31aで長方形の枠を形成した上で、一対の横材31a間を更に複数の縦材31bで連結することにより形成されている。フレーム31には、その開口が前後方向に開口し、横材31aの延びる方向が左右方向となる状態としたときに、上側となる横材31aの上面に位置決め孔31hが穿設されており、下側となる横材31aの下面から位置決めピン31pが下方に向かって突設されている。
【0036】
パネル材32は、外形がフレーム31の外形とほぼ等しい長方形の平板である。パネル材32は、ハニカム構造で樹脂製のコア材32aの両面を樹脂シート32bで被覆したものであり、厚さ10mm~20mmという薄板で軽量でありながら、高い曲げ強度と高い曲げ剛性を有している。
【0037】
塀パネル30は、フレーム31の開口を両側からパネル材32で被覆したものである。パネル材32は、その外表面に更に不織布層32cを有しており、樹脂シート32b、コア材32a、及びフレーム31における空間を介して、両側の不織布層32cを樹脂製の糸で縫い合わせることにより、不織布層32cの外表面に多数の縫い目32sが表れている。塀パネル30全体の厚さは、支柱10の主柱部11におけるコ字の開口幅、すなわち一対の側壁部11b間の距離より僅かに短く設定されている。
【0038】
アンカー20は、長尺棒状で下端が尖っており、少なくとも上端に雄ネジが形成されていると共に、残部の表面には摩擦力を高める凹凸が形成されている。アンカー20は、耐腐食性、防錆性に優れると共に、引張強度が高い材料で形成されていることが望ましい。アンカー20の上端の雄ネジは、ナット25と螺合するものである。
【0039】
次に、上記構成の塀材を使用した塀構造の構築について説明する。ここでは、塀を構築することによって二つの領域を区画する場合であって、塀を構築する施主の管理下にある領域(以下、「施主領域」と称する)と他者の管理下にある領域とを、塀によって区画する場合を例示する。
【0040】
まず、塀を構築するライン(以下、「施工ライン」と称する)に沿って、支柱10を地面から立設させる。ここで、施主領域側から施工ラインを見たとき、支柱10Cは施工ラインの右端に配置し、支柱10Dは施工ラインの左端に配置し、支柱10Bは施工ラインが直角に屈曲する角部に配置する。そして、支柱10Aは、施工ラインにおいて両側に塀が延びるべき中途の位置に配置される。
【0041】
更に、各支柱10の主柱部11における中間壁部11aの中心線(上下方向の中心線)が、施工ライン上に位置し、且つ、各支柱10のベース部12が施主領域の内方に向かって延び、施工ラインと直交するように配置する。施工ラインの角部に配置される支柱10Bの場合は、直交する二つの施工ラインの一方とベース部12の長手方向が直交するように配置する。上記のように配置された支柱10では何れも、主柱部11のコ字が開口する方向が施工ラインの延びる方向に一致する。隣接する支柱10間の距離は、塀パネル30の長手方向の長さにクリアランスを加えた距離とする。
【0042】
支柱10を地面から立設させるのに先立ち、地面に当接させるベース面部12aに穿設されている複数のアンカー用孔部12hの真下となる位置に、アンカー用孔部12hより大きく地中孔部40hを掘る。地中孔部40hの深さは、アンカー20の長さより大きい設定とする。
【0043】
そして、地中孔部40hにアンカー20を挿し込んだ状態で、地中孔部40h内に充填材を流し込み充填する。或いは、地中孔部40hに充填材を流し込み、硬化しないうちにアンカー20を挿し込む。充填材は地中孔部40hの開口縁に達するまで充填し、充填材層41の表面を地面と同一面とする。アンカー20の上端は地面より突出させる。その突出長さは、ベース部12の厚さとナット25の高さの和より僅かに大きな長さとする。なお、充填材としては、コンクリート、モルタル、セメント、樹脂系接着剤を使用することができる。
【0044】
充填材層41が硬化したら、ベース面部12aを地面に当接させつつ、ベース面部12aの下方からアンカー用孔部12hにアンカー20の上端を挿通する。アンカー用孔部12hは長孔であるため、地中孔部40hに埋設されたアンカー20の位置が多少ずれていたとしても、アンカー用孔部12hに挿通することができる。そして、アンカー用孔部12hを挿通しているアンカー20の上端の雄ネジに、ナット25を螺合させて締め付ける。その際、ナット25とベース面部12aとの間にワッシャ26を挟めば、安定的にナット25で留め付けることができる。
【0045】
このように、アンカー20によってベース部12を地面に固定することにより、支柱10を地面から立設させることができる。
【0046】
上記のように、何れの支柱10においても、主柱部11のコ字が開口している方向は施工ラインの延びる方向に一致している。例えば、
図1に示すように、二本の施工ラインL1,L2が直角をなしており、施主領域側から一方の施工ラインL1が左右に延びるように見たとき、施工ライL1の右端に支柱10Cが配置されていると共に、施工ラインL1の左端に支柱10Bが配置されており、その間に二つの支柱10Aが配置されている場合を例とする。また、
図1の例では、施主領域側から他方の施工ラインL2が左右に延びるように見たとき、上記の支柱10Bが右端に位置し、施工ラインL2の左端に支柱10Dが配置されていると共に、間に一つの支柱10Aが配置されている。
【0047】
そうすると、施工ラインL1の右端の支柱10Cが一つ有する主柱部11のコ字は左方向に向かって開口しており、その左側に隣接している支柱10Aでは、二つの主柱部11のうち一方が右方向に開口している。また、隣接している二つの支柱10A間では、右側の支柱10Aの二つの主柱部11のうち一方が左方向に開口しており、左側の支柱10Aの二つの主柱部11のうち一方が右方向に開口している。更に、支柱10Bの二つの主柱部11のうち、一方は施工ラインL1において右方向に開口しており、他方の主柱部11は施工ラインL2において左方向に開口している。施工ラインL2の左端の支柱10Dでは一つの主柱部11が右方向に開口しており、施工ラインL2において支柱10Dと支柱10Bとの間に配置されている支柱10Aでは二つの主柱部11が左右に開口している。
【0048】
つまり、何れの施工ラインにおいても隣接している支柱10では、それぞれの主柱部11はコ字を向かい合わせるように開口させている。そこで、隣接している支柱10それぞれの主柱部11の開口に、塀パネル30の一対の短辺をそれぞれ沿わせて、塀パネル30を落とし込むように挿入することができる(
図5参照)。塀パネル30は、支柱10の高さに応じて、複数枚を挿入することにより複数段に積重する。その際、下段の塀パネル30においてフレーム31の上面に形成されている位置決め孔31hに、上段の塀パネル30においてフレーム31の下面から突出している位置決めピン31pを挿入することにより、複数の塀パネル30の表面が同一面となるように整然と積重することができる。
【0049】
すべての支柱10間に塀パネル30を同様に挿入することにより、塀構造の構築が完了するが、地面から支柱10における載置台13の下面の高さまでコンクリートを打設しても良い(
図6(a),(b)参照)。このようにすることにより、コンクリート層42にベース部12が埋設されると共に、地表面GLと塀パネル30との間に隙間が無いものとなり、外観の良い塀構造となる。最下段の塀パネル30から下方に突出している位置決めピン31pは、コンクリート層42に埋設されるため、コンクリート層42によっても塀パネル30が支持される。
【0050】
なお、同一の施工ライン上にある全ての支柱10の上端に、笠木を架け渡すことにより、積層構造の塀パネル30の内部に雨水が浸入することを防止することができると共に、塀構造の外観も良いものとなる。
【0051】
また、各支柱10において、主柱部11の一対の側壁部11bのうち施主領域の内方に面している側壁部11bに、ビス孔11hが形成されている。このビス孔11hを介して塀パネル30にビスを打ち込むことにより、隣接している支柱10間に塀パネル30が保持されている状態を安定させることができる。
【0052】
塀パネル30の外表面には、塗料の塗布や吹付けを行うことにより、或いは、タイルなどの表面材を貼り付けることにより、化粧層を設けることができる。塀パネル30の外表面は不織布層32cであり、毛羽立っていると共に多数の縫い目32sによって微細な凹凸が多数形成されている。これにより、塀パネル30に対する化粧層の接着性を高めることができる。
【0053】
上記のように、本実施形態の塀構造は、複数の支柱10を地面から立設させ、支柱10間に塀パネル30を落とし込むように挿入することによって構築されるものである。支柱10も塀パネル30も予め工場で製造しておくことができ、施工現場で塀パネル30同士を固着させる作業を要しない。従って、従来のコンクリートブロック塀や湿式コンクリート塀と比べて、労力や時間を大幅に低減して塀構造を構築することができる。
【0054】
また、塀パネル30はフレーム31がパネル材32で被覆された中空構造で、フレーム31はアルミニウム製であるため、非常に軽量である。そのため、サイズの設定により、一人または二人の作業者が人力で運搬することが可能である。従って、道路幅や敷地面積が狭小で、大型の輸送車やクレーンが進入でできない施工現場であっても、問題なく塀構造を構築することができる。
【0055】
また、本実施形態の塀構造は、構築作業の全てを施主領域で行うことができるため、他者の管理下にある領域に入る許可を得るなどの煩雑な手続きが不要である。
【0056】
更に、塀パネル30は軽量な中空構造でありながら、横材31aと縦材31bを組み付けることにより機械的強度が高められた金属製のフレーム31を備えているため、地震による振動や、台風等で強風を受けても、変形したり破断したりしない堅固な塀構造を構築することができる。
【0057】
加えて、塀パネル30を保持する支柱10は、主柱部11とベース部12とがL字形をなしており、ベース部12に締結された長いアンカー20が地中に埋設されるため、支柱10が地面に強固に固定されており、塀構造が極めて頑丈で倒壊しにくい。
【0058】
更に、塀構造を構成する塀パネル30は中空構造であるが、外観からは中空構造であることは分からないため、金属製や木製のフェンスに比べて重厚感を与える塀を構築することができる。
【0059】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0060】
例えば、高さ方向に積重される塀パネル30の数は、図面に示した数に限定されない。また、上記の支柱10の配置は単なる例示である。例えば、支柱10Cと支柱10Dとの間に塀パネル30を保持させるのみにより、長さの短い塀構造を構築することができ、支柱10Cと支柱10Dとの間に支柱10Bを配置し、支柱10Cと支柱10Bとの間、及び、支柱10Cと支柱10Bと支柱10Dとの間に塀パネル30を保持させるのみにより、角部を有する短い塀構造を構築することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 支柱
10A 支柱
10B 支柱
10C 支柱
10D 支柱
11 主柱部
12 ベース部
12a ベース面部
12h アンカー用孔部
20 アンカー
30 塀パネル
31 フレーム
31a 横材
31b 縦材
32 パネル材
32c 不織布層
32s 縫い目