(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】並進機構に作用する加速ユニットを含む磁気装置
(51)【国際特許分類】
H02K 33/00 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
H02K33/00 A
(21)【出願番号】P 2015548672
(86)(22)【出願日】2013-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2013077888
(87)【国際公開番号】W WO2014096444
(87)【国際公開日】2014-06-26
【審査請求日】2016-12-22
【審判番号】
【審判請求日】2019-05-22
(32)【優先日】2012-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】514054926
【氏名又は名称】エスイーエイチ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ヘイン,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】マーシュナー ヴォン ヘルムレイヒ,マルティン
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-193341(JP,A)
【文献】特開平5-300718(JP,A)
【文献】実開昭61-138379(JP,U)
【文献】特開2005-312294(JP,A)
【文献】特開2006-325381(JP,A)
【文献】特開2007-98238(JP,A)
【文献】特開2002-192073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の固定子(1)及び1個の並進機構(2)を含む磁気装置であって、
前記並進機構(2)は直線状の並進機構動作経路(3)に沿って前記固定子(1)に対して並進機構動作方向(4)に可動であり、
前記固定子(1)は永久磁石であり前記並進機構(2)は電磁石である、又は、
前記固定子(1)は電磁石であり前記並進機構(2)は永久磁石であり、
前記電磁石は、強磁性コアとコイルを含み、
磁力F(x,J)が前記固定子(1)と前記並進機構(2)との間で作用し、
前記磁力F(x,J)は前記固定子(1)と前記並進機構(2)との間の距離と前記電磁石に供給される電流密度とにより決定され、
前記並進機構(2)は、加速ユニット(5)に機械的または電磁的に結合されることができ、前記加速ユニット(5)は、前記固定子(1)と前記並進機構(2)の間隔に応じて、前記並進機構動作経路(3)の少なくとも一部において前記並進機構(2)に作用する矯正力Fcorr(x)を生成し、
前記並進機構(2)に作用する力の総和F
TOT(x,J)は、前記磁力F(x,J)と前記矯正力Fcorr(x)の合計により定義され、
前記電磁石に電流が供給されていない場合(J=0)に、前記固定子(1)と前記並進機構(2)の間に作用する力は、前記固定子(1)と前記並進機構(2)の間隔により形成される磁気捕捉力
F(x,J=0)であり、
前記矯正力
Fcorr(x)を、前記
磁気捕捉力
F(x,J=0)に大きさが等しく前記磁気捕捉力
F(x,J=0)と反対方向に作用させることにより、
前記電磁石に電流が供給されていない場合(J=0)に、前記並進機構(2)に作用する力の総和はゼロとなり、前記固定子(1)に対する前記並進機構動作経路(3)の如何なる位置も均衡点となることを特徴とする、装置。
【請求項2】
加速ユニット(5)は、並進機構動作経路(3)全体に沿って、並進機構(2)に結合されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気装置。
【請求項3】
加速ユニット(5)は、並進機構(2)及び基準点(6)に結合され、並進機構(2)と基準点(6)との間で少なくとも部分的に延伸することを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁気装置。
【請求項4】
固定子(1)は、基準点(6)であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気装置。
【請求項5】
加速ユニット(5)は、別の磁石を含む、又は、電動機及び/又は空気圧装置及び/又は油圧装置である駆動ユニットを含むことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の磁気装置。
【請求項6】
加速ユニット(5)は、並進機構動作方向(4)と平行に作用するバネ力を有するバネを含むことを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載の磁気装置。
【請求項7】
並進機構動作経路(3)の1本の線は、固定子(1)を通り走ることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載の磁気装置。
【請求項8】
該磁気装置は、電磁石の極性形成を制御し、前記電磁石の強度を制御するための制御装置を含むことを特徴とする、請求項1乃至7の何れか一項に記載の
磁気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個の磁気的に励起された固定子及び少なくとも1個の磁気的に励起された並進機構を含み、該並進機構は、並進機構動作経路に沿って、前記固定子に対する並進機構動作方向に可動であり、前記固定子(1)は永久磁石であり、前記並進機構(2)は電磁石である、又は、前記固定子(1)は電磁石であり、前記並進機構(2)は永久磁石であり、磁力F(x,J)が、前記固定子(1)と前記並進機構(2)との間で作用し、xは≧0の前記固定子(1)と前記並進機構(2)との間の距離であり、Jは前記電磁石の電流密度であり、前記並進機構は、少なくとも並進機構動作経路の一部で、加速ユニットに結合されることができ、該加速ユニットは、並進機構が加速ユニットに結合される際に、並進機構に作用する矯正力Fcorr
(x)を含む加速力状態を生成し、加速力状態は、前記並進機構(2)の移動方向において、前記固定子(1)から離隔される方向に向かわされている、磁気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
簡素化するために、以下では、固定子磁石は、固定子と称され、並進機構磁石は並進機構と称される。
【0003】
技術水準による磁気駆動装置は、少なくとも1個の固定子及び1個の並進機構を含み、該並進機構は、固定子と並進機構との間で作用する磁気吸引力及び反発力を使用することによって、固定子に対して可動である。特許文献1及び特許文献2(出願人:イェレミー・ハイン(Jeremy Hein)、マルティン・マルシュナー・フォン・ヘルムライヒ(Martin Marschner von Helmreich))から、吸引力及び反発力は、本質的に、固定子と並進機構との間隔の関数となることが知られている。並進機構に作用し、並進機構を移動させる全ての力の総和は、並進機構と、近接した固定子との間隔を選択することによって、最適化できる。
【0004】
磁気吸引力によって発生し、並進機構に作用する力条件は、固定子に向かい移動する並進機構に関して、固定子からの距離rで、最大に達することができる。並進機構が逆方向に移動する場合、即ち並進機構が固定子から離隔する場合は、距離rが十分に短いと、固定子と移動する並進機構との間で吸引力が作用する可能性がある。
【0005】
固定子と並進機構との間隔が、十分に短い場合、固定子と並進機構は、磁石として、固定子と並進機構の極性とは無関係に作用する。間隔が十分短いか否かは、とりわけ、固定子に対する並進機構の磁場強度、又は並進機構に対する固定子の磁場強度によって、決まる。並進機構の磁場強度は、磁気装置の運転中、例えば電磁石の極性反転中に、固定子と比べて低くなることがある。
【0006】
固定子と並進機構との間隔が十分短い場合には、固定子から離隔する並進機構の動作は、固定子と並進機構との間の吸引力によって妨げられる、又は減速される。技術水準で知られているこの作用は、固定子で並進機構を「捕捉すること(capturing)」と呼ばれている。これにより、例えば、磁気駆動装置として機能する磁気装置の出力が低下する。
【0007】
特許文献3で記載された技術水準と同様に、特許文献3では、並進機構動作経路の終端位置に電磁石を含む磁気装置について開示している。並進機構を、第1終端位置から第2終端位置に移動するために、電磁石は、第1終端位置でスイッチが切られる(特許文献3、第1欄、23~24行目、第6欄、19~22行目参照)。電磁石が第1位置でスイッチを切られるため-本特許出願の明細書の導入部分で説明されたように-、並進機構を、第1終端位置にある磁石から分離するという課題は、解決できない。
【0008】
特許文献4は、3頁、10~13行目で、電磁石が原因で(力の)不均衡が生じた際には、開弁されない点を開示している。開位置(均衡状態)は、例えば、バネによって達成される。
【0009】
従って、バネの作用は、本願で開示される加速ユニットの作用とは異なる。捕捉に関する課題は、特許文献4では記載されていない。
【0010】
特許文献5では、少なくとも1個の電磁石、及び1本のバネを含み、バネと電磁石は、相互作用する。特許文献5の段落[0009]によると、並進機構は、電磁石に対する給電の有無によって終端位置に移動されることができる。
【0011】
特許文献5は、バネが電磁石から並進機構を分離する役割を果たす点についての記載を含んではいない。本願で開示されるバネの作用は、特許文献5では記載されておらず、新たな請求項1は、特許文献5に対して新規性を有する。
【0012】
特許文献6の段落[0017]の開示によると、バネは、残留磁気により、アンカープレートが、スイッチを切られた状態の電磁石に付着する点を解決するのに役立つ。バネの作用は、本願で開示されるバネの作用とは一致しない。
【0013】
本願の開示によると、加速ユニットは、固定子から並進機構を、両者を磁石のように機能させて、分離させる。こうすることで、全く電磁石のスイッチを切る必要がなくなる。従って、前記記載によると、請求項1は、特許文献6に対して新規性を有する。
【0014】
特許文献7の段落[0032]で、バネは、単なる支持要素(車両を支持する支持バネ)であるとして開示している。本特許出願で開示される加速ユニットの作用は、特許文献7では説明されていない。
【0015】
特許文献8の開示によると、バネは振動システムの一部である。特許文献8では、本特許出願で開示される加速ユニットの作用と同様な如何なる作用も開示していない。請求項1は、特許文献8に対して新規性を有する。
【0016】
同様に、特許文献10でも、電磁式リニア駆動部に加えて作動するバネに関する仕様を全く含んでいない。また、並進機構が固定子に十分近接して移動される際に磁石として機能する固定子と並進機構に関する課題について、特許文献10では記載されておらず、従って、当業者は、特許文献10からバネ力の大きさや、以下で説明する加速ユニットと同様な、特許文献10で説明されたバネの作用を推論できない。
【0017】
特許文献9では、電磁石の形で設けられたアクチュエータ及び動作方向に力を発生するバネ要素を含む磁気装置について開示している。しかしながら、特許文献9では、少なくとも並進機構が固定子に十分近接して移動された際の、固定子と並進機構が磁石として作用する効果について、本開示で記載された課題には言及していない。従って、当業者は、以下で説明するように、本発明の力の均衡又は力の不均衡を生じさせようとはしていない。特許文献9は、動作方向で生成される力の大きさに関する仕様を全く含んでおらず、従って、当業者は、特許文献9からバネ力の大きさを推論できない。
【0018】
特許文献11では、並進機構に作用するバネ機構を有する電磁アクチュエータについて開示している。特許文献11の開示によると、バネ機構は、並進機構のバックスイング(back-swing)機構として機能する。並進機構を固定子から離隔する際に、固定子と並進機構を分離するという本発明の背後にある課題については、特許文献11では、記載されていない。
【0019】
特許文献12では、バネは、コイルが故障した場合、アクチュエータを閉位置に移動するのに役立つ。よって、本発明の基本的な課題について、特許文献12では記載されていない。
【0020】
特許文献13で開示された装置のバネは、並進機構の動作への作用はないが、数台の装置を結合する役目を果たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】オーストリア特許第20110001260号明細書
【文献】オーストリア特許第20110905号明細書
【文献】独国特許発明第10003928号明細書
【文献】国際公開第2007/063222号
【文献】独国特許発明第102007051917号明細書
【文献】独国特許発明第102006013013号明細書
【文献】欧州特許第1995090号明細書
【文献】米国特許第8222754号明細書
【文献】独国特許発明第102997051917号明細書
【文献】欧州特許第1320178号明細書
【文献】独国特許発明第10003928号明細書
【文献】国際公開第2007/063222号
【文献】ドイツ特許発明第202009014192号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本明細書に記載された発明は、技術水準による装置と比較して、固定子で並進機構を捕捉する作用を減少させる又は防止するための更なる構成要素を含む磁気装置を提供するという課題を解決しようとするものである。以下では、捕捉作用によって生じる力の状態は、「捕捉力状態」と呼ばれる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によると、これは、F(x,J=0)は磁石の捕捉力であり、捕捉力は、電磁石が電流が供給されていない時の測定によって決定され、
(a)並進機構(2)が固定子(1)から離隔する時、並進機構動作方向(4)における並進機構(2)に作用する力の総和が、0(ゼロ)より大きくなる、
F(x,J=0)+F
corr
(x)>0、Fcorr(x)>-F(x,J=0)、又は、
(b)並進機構(2)が固定子(1)に向かって移動する時、並進機構動作方向(4)に逆って並進機構(2)に作用する力の総和が、0(ゼロ)より小さくなる、
F(x,J=0)+F
corr
(x)<0、Fcorr(x)<-F(x,J)、又は、
(c)並進機構(2)と固定子(1)が均衡状態の時、並進機構(2)に作用する力の総和が0(ゼロ)であり、
F(x,J=0)+F
corr
(x)=0、Fcorr(x)=-F(x,J)
それにより、並進機構(2)は、矯正力F
corr
(x)の絶対値≧F(x,J=0)の絶対値であることを用いて、生成された吸引力から分離されることができることによって、達成される。
【0024】
本発明の磁気装置は、磁気駆動装置、発電機、抵抗素子、又は主に若しくは部分的にだけでも磁場により生成された力によって、並進機構が固定子に対して移動される他の装置とすることができる。
【0025】
並進機構と固定子との間隔が十分狭い場合、固定子と並進機構は、磁石として機能し、それにより並進機構は、固定子へと移動される。加速ユニットによって発生される加速力状態は、並進機構が固定子から離隔する動作方向に指向される。加速力状態に関する作用は、前記捕捉作用が起こる並進機構動作経路の一部に限定できる。
【0026】
並進機構動作経路の一部では、加速力状態は、捕捉力状態と重なることがある。捕捉力状態は、基本的に、固定子と並進機構との間で作用する吸引力を特徴とする。加速力状態は、その大きさに応じて、完全又は部分的に捕捉力状態に対して作用する。
【0027】
加速ユニットは、機械的に生成した力又は磁力に基づいて、力条件を生成できる。加速ユニットは、少なくとも部分的な弾性変形体、例えばバネのようなものがその前に起こった変形を用いて加速力状態を生成できる。弾性体の変形は、並進機構の動作によって発生できる。通常、弾性体の変形は、捕捉作用が起きる前、及び/又は並進機構が、次に捕捉作用が発生する固定子に十分に近い領域に到達する前に、並進機構が少なくとも部分的に固定子に向かう動作中に、発生される。
【0028】
本発明の磁気装置に関する一実施形態は、加速ユニットが、並進機構動作経路に沿って、並進機構に動作可能に結合されることを特徴としてもよい。
【0029】
並進機構と固定子との間隔に応じて、加速ユニットは、並進機構が固定子に接近する際に、付勢可能にされてもよい、及び/又は加速ユニットは、並進機構と固定子との間隔に応じて、加速力状態を発生させてもよい。
【0030】
並進機構が加速ユニットに結合されるとき、及び並進機構が固定子に向けて移動するとき、並進機構動作方向とは逆方向に並進機構に作用する力の総和が、ゼロ以下になることができる。
【0031】
並進機構が加速ユニットに結合されるとき、及び並進機構が固定子から離れる方向に移動するとき、並進機構動作方向に並進機構に作用する力の総和が、ゼロ以上になることができる。
【0032】
本明細書に開示された本発明の磁気装置は、固定子と並進機構との間の領域に加速ユニットを配置することに限定されない。この領域における加速ユニットの配置は、単に本発明の加速ユニットの配置に関する1つの可能性に過ぎない。また、加速ユニットは、並進機構動作経路に関して横方向に配設され、並進機構動作経路に対してどの角度にも延伸することもできる。
【0033】
また、バネは、ベアリング要素と一体的に形成することもでき、該ベアリング要素は、並進機構軸上で摺動する並進機構を支承する役目を果たす。バネは、板バネ又はコイルバネとして設けることができる。ベアリング要素は、弾性材料を含み、該弾性材料は、本発明の磁気装置を運転中、変形される。
【0034】
技術水準によると、並進機構に作用する力は、この領域で作動する固定子と並進機構の総和であり、各固定子と並進機構との間隔に左右される。並進機構が固定子から離隔する際に前記の捕捉作用と共に発生する捕捉力は、バネがそれに対応して形成されると、同様に作用する。本明細書で開示された本発明は、加速ユニットは、並進機構と固定子との一時的な間隔に応じて、加速力状態を生成することを特徴とすることができる。
【0035】
加速ユニットの前記特徴は、例えば、バネ長に沿って異なる幾何学形状を有するバネを用いて、又は、バネ長に沿って異なるバネの材料特性を用いて、達成されることができる。同様な方法で、例えば、弾性変形体が設けられる。
【0036】
本発明の磁気装置に関する以下の実施形態は、固定子に接近する並進装置に応じて、加速ユニットが付勢されると、有利となることがある。本発明に関する記載の文脈において、付勢は、バネの付勢と同様に、後に解放されるために加速ユニットに供給される力又は歪みを蓄積した条件のことを言う。本発明によると、後で解放される供給された力又は歪みは、固定子で捕捉された並進機構を分離するのに役立つ。
【0037】
本発明の磁気装置に関する1つの可能な実施形態は、加速ユニットが、並進機構だけでなく基準点とも結合され、並進機構と基準点との間で少なくとも部分的に延伸することを特徴とすることができる。
【0038】
基準点は、本発明の装置の外側に配置された物体とすることができる。また、基準点は、フレームワーク又はハウジング部等の装置部分とすることもできる。基準点は、固定子に対して静止又は摺動することができる。
【0039】
固定子は、基準点として設けることができる。
【0040】
加速ユニットは、別の磁石とすることができ、該磁石は、並進機構と結合され、並進機構を加速するために切り換えられる。更なる磁石は、永久磁石、及び/又は電磁石とすることができる。
【0041】
更に、加速ユニットは、駆動装置が並進機構と結合される際に、本発明のコアに従い、加力状態を使用可能にするために、駆動装置を含むことができる。駆動装置は、例えば、技術水準による電動機、及び/又は空気圧装置又は油圧装置とすることができる。
【0042】
加速ユニットは、バネの形で設けられ、バネは、並進機構動作方向と平行して作用するバネ力成分を有する。
【0043】
従って、バネ力成分は、捕捉作用によって引き起こされる力とは逆に作用する。バネは、並進機構の、固定子に向かう動作によって、付勢され、バネに蓄えられた力は、並進機構が固定子から離隔する動作中に、解放される。
【0044】
前記の説明は、直線だけでなく折れ線の並進機構動作経路に関する。並進機構動作経路の1本の線は、固定子を貫通できる。
【0045】
本発明の磁気装置に関する可能な実施形態は、永久磁石と電磁石との可能な組合せを含み、特に固定子及び推進機構を、永久磁石又は電磁石の形で設けることを含む。
【0046】
固定子は、永久磁石とすることができ、並進機構は、電磁石とすることができる。
【0047】
固定子は、電磁石とすることができ、並進機構は、電磁石とすることができる。
【0048】
一般的な専門知識によると、電磁石及び/又は永久磁石は、分極される必要があり、それにより固定子に対する並進機構の動作又は所定位置は、生成された反発力又は吸引力を用いて達成されることができる。
【0049】
固定子及び/又は並進機構が、電磁石の形で設けられる場合、固定子及び/又は並進機構は、更なる磁石として機能することができる。これは、所定期間推移する間に固定子及び/又は並進機構の磁場を変化させることによって、達成できる。所定期間は、移動する並進機構の位置に応じて、選択されることができる。
【0050】
本発明の磁気装置は、電磁石の分極を制御し、加速力状態に応じて電磁石の強さを制御する制御装置を含むことができる。
【0051】
以下では、本発明の磁気装置の一部としての加速ユニットに関する作用について、前記説明を捕捉する以下の図面及び該図面に対応する説明を参照して、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図2】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図3】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図4】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図5】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図6】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図7】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図8】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図9】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図10】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図11】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図12】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図13】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図14】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図15】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図16】1個の固定子及び1個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図17】1個の固定子及び2個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図18】1個の固定子及び2個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図19】1個の固定子及び2個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図20】1個の固定子及び2個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図21】1個の固定子及び2個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図22】1個の固定子及び2個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図23】1個の固定子及び2個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図24】1個の固定子及び2個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図25】1個の固定子及び2個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図26】1個の固定子及び2個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【
図27】1個の固定子及び2個の並進機構を含む磁気装置に関する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
また、一般的に当業者に知られており、技術水準に関して適用されるため、簡素化の理由で、以下の記載では、摩擦力や空気抵抗といった、並進機構の動作を打ち消す力を考慮に入れていない。
【0054】
図1乃至
図16を参照して、直線的な並進機構の動作経路3に沿って配設された2磁気双極子の相互作用について、記載する。第1双極子1は、
永久磁石であり、第2双極子2は、
電磁石である。
図1乃至
図17を参照した記述は、双極子間で、相対運動が全くなく、それにより双極子を固定子又は並進機構と呼ぶのは相応しくないとの仮定に基づいている。
【0055】
技術水準により簡素化する理由で、永久磁石は、筒型で、少なくとも並進機構の動作軸に沿って延在する磁場を有するものと仮定される。また、1メートル当たりのアンペア[A/m]で表される均一な励磁(数1)の磁場が、想定される。永久磁石の外側の磁場は、磁石からの距離xが大きくなるにつれて、減少する。これは、以下の式(数2)で表わされる:
【0056】
【0057】
【0058】
電磁石は、筒状の強磁性体コアを含み、該コアの周りには、コイルが同様に筒形状に延伸している。簡素化するために、外部磁場Hcoil(J)[A/m]が使用される場合に、強磁性体コアの均一な励磁が想定され、それにより、以下の関係式(数3)が満足されるが、式中χVは、強磁性体コアの磁化率である。電流密度Jを有する電流が、電磁石の巻線を通過すると、磁場Hcoil(J)が、コイルの巻線内の前記電流密度としてJ[A/mm2]の関数で、コイル内部に生成される。
【0059】
【0060】
それに応じて、電流密度Jで齎される電磁石の強磁性体コアの磁場に対して、以下が適用できる:以下の(数4)。その結果、強磁性体コアの他の磁場は前記強磁性体コアからxの距離離れている永久磁石の磁場に起因する(以下の(数5))。それに関連する教示によれば、最大の更なる磁場は、x=0のときで:以下の(数6)となる。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
その結果、強磁性体コアの磁場の強さは、距離xで永久磁石によって生成された磁場と、電流密度Jが適用されるコイルによって生成された磁場との総和で決定される(以下の(数7))。
【0065】
【0066】
永久磁石と電磁石との相互作用力に関して、以下の2つの基本的な事例(事例1、事例2)が、考えられる。
図2乃至
図5で推測される永久磁石と電磁石の励磁は、以下の基本的な事例から導かれる。
【0067】
事例1:永久磁石とコアが、同一方向に励磁される、即ち、以下の(数8)が適用され:
∀x,∀J,MEM(x,J)=MEM(x,J)ex,MEM(x,J)>0
∀x,M1(x)=M1(x)ex,M1(x)>0
互いに対面する永久磁石の側面とコアの側面は、異なる極性を有する。その結果得られる力は、以下の(数9)の吸引力となる。
【0068】
【0069】
【0070】
事例2:永久磁石とコアとは、異なる方向に励磁される、即ち、以下の(数10)が適用され:
∀x,∀J,MEM(x,J)=MEM(x,J)ex,MEM(x,J)<0
∀x,M1(x)=M1(x)ex,M1(x)<0
互いに対面する永久磁石の側面とコアの側面は、同じ極性を有する。その結果生じる力は、以下の(数11)F1(x)=F1(x)ex,F1(x)>0の反発力となる。
【0071】
【0072】
【0073】
コアの「正」励磁は、吸引力を生成し、Hcoil(J)>-H1(x)を意味する。電流密度J1が∀x,Hcoil(J)=-H1(x)を満足すると、吸引力は、J>J1
の時に生じる。
【0074】
コアの「負」励磁は、反発力を生成し、Hcoil(J)<-H1(x)及びJ<J1を意味する。
【0075】
電流が全くコイルに供給されない場合、コアの「正」励磁により、Hcoil(0)=0>-H1(x)となるため、吸引力の相互作用が発生する。
【0076】
電磁石の磁場が、永久磁石の磁場より強く、相対する場合は、反発の相互作用が発生する。これは、Hcoil(J)<-H1(x)及びJ<J1
によって達成される。
【0077】
図1は、永久磁石(第1双極子1)と電磁石(第2双極子2)との吸引力相互作用に関する事例を示す。電流は、全く電磁石に供給されていない。コアは、距離xで磁場によって励磁され、その結果永久磁石によって吸引される。
【0078】
図2は、永久磁石(第1双極子1)と電磁石(第2双極子2)との吸引力相互作用に関する事例を示しており、該相互作用は、「正」の電流強度で供給される。「正」電流密度
を供給することは、コイルの磁場と
永久磁石の磁場が、同じ方向に指向されることを意味する。
【0079】
コイルの磁場とコアの磁場は、コアを一層強力に励磁するが、これは、一般に、電流密度が高くなるにつれて、吸引力がより高くなり増大することを意味する。
【0080】
図3は、「負」の電流強度で供給し、それによりコイルの磁場と磁場の総和が、逆方向に指向する際の、永久磁石(第1双極子1)と電磁石(第2双極子2)との吸引相互作用について示している。-H
1(x)<H
coil(J)<0→J
1<J<0が満される場合、相互作用は、吸引力相互作用となる。
【0081】
図4は、「負」の電流密度で供給し、それによりH
coil(J)<-H
1(x)又はJ<J
1が満足される場合の、永久磁石1と電磁石2との反発相互作用に関する事例を示している。
反発相互作用は、電磁石の磁場強度の絶対値が永久磁石の磁場強度の絶対値より大きく、対向する方向に向けられている時に、生じる。
【0082】
図5は、コイルで生成された磁場を用いた永久磁石1
の磁場補償に関する事例について示している。これは、本発明の磁気装置を使用して生成されている。この特定の事例は、電磁石のコアが全く励磁せず、その結果相互作用から相互作用力が全く生じないことを特徴とする。電磁石の逆極性は、互いに打ち消し合う。
【0083】
この均衡は、全く相互作用力がない以下の(数12)を特徴とし、Hcoil(J)=-M1(x)又はJ=J1で達成される。
【0084】
【0085】
図6は、FEMシミュレーションの結果を示している。図
6では、磁場の強さ(
以下の(数13))及び磁力線が、コイルに全く電流が供給されない場合に関して示されている。
図6では、並進機構が、60.0mm、30.0mm、10.0mm、0.0mm(
前記永久磁石と
前記電磁石とが接触)の距離で示されている。
【0086】
【0087】
永久磁石1は、電磁石2のコアを励磁させ、それにより吸引相互作用力を導き、吸引相互作用力は、距離xに反比例する。距離が大きくなるほど、吸引相互作用力は小さくなる。
【0088】
図7は、
図6からのFEMシミュレーションの結果を示す図表である。横座標は距離xを示し、縦座標は力を示している。
【0089】
図6と同様に、
図8は、コイルに
J
coil
=5[A/mm
2
]の電流密度で供給された場合の、FEMシミュレーションの結果を示している。
前記永久磁石1と
前記電磁石2は、同じ方向に分極され、それにより一層大きな吸引相互作用力が生成される。
【0090】
図7と同様に、
図9は、
J
coil
=5[A/mm
2
]が供給された場合の、永久磁石と電磁石との間隔に関連する相互作用力の進展についての、
図8に関する図表である。従って、
図8は、本発明の磁気装置の実施形態を使用した動作モードを示している。吸引相互作用力は、それにより増大される(実線)。
【0091】
また、全く電流が供給されない場合の力-距離線が、ストローク線で示されている。
【0092】
図8及び
図9と同様に、
図10は、電磁石が、J
coil=-5[A/mm
2]で供給された際のFEMシミュレーションの結果を示している。
図11は、対応する図表を示している。
図11は、電磁石がJ
coil=-5[A/mm
2]で供給された際の
前記永久磁石と
前記電磁石との間隔に関連する相互作用力の推移を、実線で示している。ストローク線は、電流を電磁石に供給しない際の推移を示している。また、
図10及び
図11は、本発明による磁気装置の実施形態の動作モードにも関する。
【0093】
図11によると、反発相互作用力は、距離がx>14.0mm内でのみ発生している。その結果、
図10に示された電磁石の磁場は、
前記永久磁石の磁場によって生成される吸引力については、十分強くない。
【0094】
図12では、電流密度J
coil≦0[A/mm
2]で電磁石に供給した際の作用について示している。ここでもまた、横座標は、
前記永久磁石と
前記電磁石との間隔を示し、縦座標は、永久磁石と電磁石との間で作用する力について示している。当業者は、
図12から、反発力を主な特徴とする磁気装置の状態にすることは、電磁石2への電流供給を意味することが、分かるであろう。
【0095】
Hcoil(J)<-H1(x)が満足されない場合、相互作用力は、吸引相互作用力となる。この場合、並進機構は、固定子で捕捉される。
【0096】
また、電磁石が、絶えず電流を供給される場合、永久磁石と電磁石との間隔に関する均衡点xeqが存在する。均衡点は、Hcoil(J)<-H1(xeq)によって規定され、例えば、
Jcoil=-10[A/mm2]⇒xeq=4[mm]
Jcoil=-5[A/mm2]⇒xeq=13[mm]
となる。
【0097】
捕捉作用が発生する範囲は、∀x∈[0,xeq[,F(x,Jcoil)<0によって規定される。捕捉作用の範囲外では、相互作用力は、反発相互作用力∀x>xeq,F(x,Jcoil)>0となる。規定された電流密度Jcoilで、均衡位置は、F(xeq,Jcoil)=0によって規定される。
【0098】
図12を補足して、
図13は、コイル内において電流密度J
coil≧0[A/mm
2]で電磁石に供給する事例を示している。
【0099】
また、
図14では、電磁石が、
J
coil
=10[A/mm
2
]及び
J
coil
=-10[A/mm
2
]で供給される際に、永久磁石と電磁石との間で作用する力の進展を比較している。当然ながら、その結果得られる力の強度は、電流供給が変化すれば、同じではない。
【0100】
永久磁石と電磁石との相互作用に関する以上の記載に基づいて、以下では、固定子に対して振動する並進機構に関する特別な事例における相互作用について、記載される。並進機構の振動は、一定の電気エネルギ、例えば以下の(数14)で、所定の時間間隔で、電磁石の極性を切り換えることによって、達成される。簡素化の理由で、コイルの内部抵抗及び誘電率による電磁石を切り換える際の時間の遅れは、以下の課題に関する記載では考慮されない。
【0101】
【0102】
確実に並進機構を効率的に振動させるために、並進機構は、捕捉範囲外で運転される必要がある。これにより、永久磁石と電磁石との最短距離を規定できる。これにより、並進機構の運転が確実に、条件∈≧xeqで捕捉範囲外で行われる状態の、以下の(数15)を導出できる。
【0103】
【0104】
捕捉範囲外で運転するには、確実に、力場形状が、一定の電気エネルギで非対称|J
coil
|=Cte[A/mm
2
]になるようにしなければならない。吸引相互作用力の値は、反発相互作用力の値より高い。その結果、最短距離では、最大作用可能吸引力が減少する。
【0105】
∈=xeq⇒|Fmax(0,10)|=500[N]
∈=xoffset⇒|Fmax(0,10)|=200[N]
式中、位置xeq及びxoffsetは、コイルJcoil内の電流密度の関数であり、コイルの内部時間係数(以下の(数16))に応じて決まる。
【0106】
【0107】
力場形状の非対称は、磁場に対して作用するために使用されるべき更なるエネルギが求められることで、説明できる。永久磁石と電磁石との相互作用に関する以上の記載では、この更なるエネルギは、電磁石のコイルによって提供され、コイルには、より高い電流密度で供給された。反発相互作用エネルギを確保するには、以下の条件が満足されなければならない:Hcoil(J)<-H1(x)。
【0108】
捕捉範囲の境界点に相当する均衡点は:Hcoil(J)=-H1(xeq)によって、規定される。
【0109】
並進機構が固定子に対して振動する場合、機械的な加速ユニットが有利なことがあり、機械的な加速ユニットは、上述したような更なる電流密度でコイルに供給する際に、並進機構に作用する力条件に関して、同様な効果を持つ。ここで、加速ユニットは、特に、電磁石が運転されない場合に、並進機構に作用する永久磁石の吸引力に対して作用する加速力状態で、並進機構に供給するのに役立つ。
【0110】
本発明の装置を使用する場合、並進機構に作用する総吸引力としての力条件、及び加速力状態は、如何なる位置でもゼロにすべきである。コイルが電流密度Jで供給される状態で、位置xで並進機構に作用する力条件(以下の(数17))は、以下の(数18)で表わされる:式中、Fcorr(x)は、加速ユニットによって発生され、矯正力Fcorr(x)から成る加速力状態であり、F(x,J)は、固定子と並進機構との間の相互作用力である。必要な機械的効果は、並進機構に対する均衡条件(以下の(数19))から得られ、以下の加速ユニットの特徴:以下の(数20),∀x≧0,Fcorr(x)=-F(x,0)を齎し、それにより加速力状態又は矯正力は、電磁石の如何なる運転時にも固定子の吸引力に対して作用せず、それにより、力条件の作用力の総和がゼロになる。
その結果、以下の(数21)となる。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
図15は
、x軸に示された並進機構と固定子との間隔に応じた矯正力の推移について示している
【0117】
図16は、電流密度、即ちJ
coil=+10[A/mm
2]、J
coil=-10[A/mm
2]及びJ
coil=0[A/mm
2]で電磁石のコイルに供給する3つの異なる事例において、並進機構と固定子との間隔に応じて並進機構に作用する力の推移を示している。並進機構に作用する力の総和は、
以下の(数22)で規定され、式中、均衡には、
以下の(数23)で到達される。また、H
coil(J)<0⇒J
coil<0が満足されると、反発相互作用力が存在する。逆の場合では、H
coil(J)>0⇒J
coil>0が満足されると、吸引相互作用力が存在する。力の推移は、実質的にグラフのx軸に対称的である。反発相互作用力と吸引相互作用力は、電磁石のコイル内における電流密度によって規定されるため、実質的に等しい。
【0118】
【0119】
【0120】
以下では、これまでの記載が、n
+1個(n=1,2,3…)の並進機構と
n個の固定子を含む磁気装置に適用される。
図17は、並進機構の動作軸に相当する軸に沿った
1個の固定子及び
2個の並進機構に関する基本的な構成について示している。
【0121】
以下では、1個の固定子及び2個の並進機構を有する磁気装置について説明する。固定子1は、コアとコイルを含む電磁石として設けられ、並進機構2、2’は、永久磁石として設けられる。
【0122】
図17によれば、固定子1と対面する第1並進機構2の表面と、第1並進機構2に対面する固定子1の表面との間隔は、xとなるように決定され、一方で、x’は、固定子1に対面する第2並進機構2’の表面と、第2並進機構2’に対面する固定子1の表面との間隔を示している。δは、第1並進機構2のコアと第2並進機構2’のコアとの間隔を示し、dは、並進機構動作経路3の長さを表しており、それにより以下が満足される:
∀x∈[0,d],∀x’∈[0,d],δ=Cte
x∈[0,d]
x’=d-x⇒x’∈[0,d]
【0123】
固定子1としての電磁石のコアは、3つの磁場、即ち、固定子から距離xに位置する第1並進機構2によって作成された磁場によって、励磁される。
【0124】
【0125】
固定子1から距離x’にある第2並進機構2’の第2磁場は、以下の(数25)によって説明されることができ、式中、x’=d-xが使用される場合、以下が満足される:以下の(数26)。
【0126】
【0127】
【0128】
第3磁場は、電磁石のコイルによって作成された磁場(以下の(数27))であり、式中、電流の方向は、磁場の方向J>0⇒I>0⇒Hcoil(J)>0を規定する。
【0129】
【0130】
電磁石のコアの励磁は、以下の(数28)として要約でき、式中f(x)は、f(0)=1,lim∞f(x)=0で、xについて反比例関数となる。
【0131】
【0132】
以下では、ベクトルF1(x,J)は、固定子1と第1並進機構2との相互作用力条件であり、ベクトルF2(x,J)は、固定子1と第2並進機構2’との相互作用力条件であり、それにより、固定子1に作用する力条件に関して、以下の(数29)が適用される。
【0133】
【0134】
区間x∈[0,d]は、軸の並進機構動作経路3に沿った並進機構2、2’の変位を表しており、そのとき、左から右への動作は、其々開始位置x=d又はx’=0から終端位置x=0又はx’=dへの「正」方向の動作と見なされる。右から左への動作は、其々開始位置x=0又はx’=dから終端位置x=d又はx’=0への「負」の動作と見なされる。
【0135】
MEM(x,J)>0で、以下の(数30)のとき、以下が適用される。
【0136】
【0137】
第1並進機構2と固定子1は、
図17では、同じ方向に分極され、それにより相互作用力が、吸引力となり、F
1(x,J)>0が満足される。これは、H
coil(J)>
-M
1
の時、max(f(d-x))=1の条件の下で、H
coil(J)>-M
1f(x)となる場合に当てはまる。
【0138】
第2並進機構2’と固定子1は、異なる方向に分極され、それにより相互作用力は、反発力となる。これは、Hcoil(J)>M2f(d-x)及びmax(f(d-x))=1のとき、即ち∀x∈[0,d]、Hcoil(J)>M2となるときに、達成される。
【0139】
左から右への動作は、∀x∈[0,d]、Hcoil(J)>M2>0>-M1の結果、固定子の「正」の励磁となるときに、達成される。
【0140】
M2>Hcoil(J)>-M1のとき、捕捉作用が起こる。固定子1は、第2並進機構2’の磁場によって捕捉される、又は第2並進機構2’は、固定子1の磁場によって捕捉される。
【0141】
MEM(X,J)<0で、以下の(数31)のとき、第1並進機構2と固定子1は、反対方向に分極され、それにより相互作用力は、反発力となり、F1(x,J)<0が当てはまる。これは、∀x∈[0,d],Hcoil(J)<-M1によって、達成される。
【0142】
【0143】
第2並進機構2’と固定子1は、同じ方向に分極され、それにより相互作用力は、吸引力となり、F2(x,J)<0が当てはまる。これは、Hcoil(J)<M2f(d-x)、つまり∀x∈[0,d],F2(x,J)<0の時、∀x∈[0,d],Hcoil(J)<M2の時に達成される。
達成される。
【0144】
M1及びM2は、正であり、それにより並進機構2、2’の右から左への動作は、∀x∈[0,d],Hcoil(J)<-M1<0<M2が、固定子1の「負」極化を説明するときに、推論されることができる。
【0145】
捕捉問題は、-M1<Hcoil(J)<M2のときに発生し、それにより固定子1は、第1並進機構2の磁場によって捕捉される。
【0146】
磁場が等しく強い、M1=M2=Mの場合、「正」極化及び左から右への動作は、∀x∈[0,d]及びHcoil(J)>Mのときに、達成される。逆に、「負」極化及び右からの左への動作は、∀x∈[0,d]及びHcoil(J)<-Mのときに、達成される。捕捉作用は、Hcoil(J)∈[-M,M]のときに発生する;捕捉作用は、|Hcoil(J)|>Mが補償されるときに、抑制できる。
【0147】
本システムは、MEM(x,J)=0⇒χV{-M1f(x)+M2f(d-x)+Hcoil(J)}=0⇒Hcoil(J)=M1f(x)-M2f(d-x)のときに、均衡状態になる。磁石が同じ磁化であるM1=M2=M3と仮定すると、並進機構は、Hcoil(J)=M{f(x)-f(d-x)}のときに、均衡状態になる。
【0148】
電流を供給されていない電磁石の場合、本システムは、Hcoil(J)=0→M{f(x)-f(d-x)}=0→f(x)=f(d-x)のときに、内部均衡となり、これは、一方で、x=d/2で達成される。これは、第1並進機構と第2並進機構が同じ励磁状態にあり、固定子から同じ距離にある場合である。
【0149】
異なる磁場強度を有する並進機構を使用するとき、均衡点は、M1f(xeq)=M2f(d-xeq)を満足するために、強い方の並進機構から離隔するようシフトする。
【0150】
図18乃至
図24は、FEMを用いたシミュレーションの結果を示している。シミュレーションは、以下の仮定に基づいている。
【0151】
固定子1は、軟質金属製の強磁性体コアを有する、直径30.0mm、長さ30.0mm(円筒形)の電磁石と見なされる。コイルは、電流密度J
coil
[A/mm
2
]、断面積30.0x30.0mm2の銅製本体を有すると仮定される。
【0152】
並進機構2、2’は、半径30.0mm、長さ30.0mmの円筒形を有する永久磁石であると仮定され、永久磁石は、筒軸方向に励磁される。励磁値をM1=M2=M=10E5[A/m]と仮定すると、該値は、市販のN45永久磁石に相当する。並進機構2、2’は、システム軸でもある直線的な並進機構動作経路3に沿って自由に移動できる。並進機構2、2’の相対的な位置については、変数x∈[0,d][mm]で説明される。
【0153】
図18乃至
図24では、相互作用力は、並進機構の位置x∈[0,73][mm]に関して、及び並進機構の位置に応じて固定子にJ
coil∈[-10,10][A/mm
2]で供給することに関して、示されている。
【0154】
図18は、電磁石が、並進機構の位置の
範囲x∈[0,
73]に対して、J
coil=0[A/mm
2]で供給される場合を示している。以上の記載によると、均衡点F
EM(x
eq,0)=0は、並進機構動作の中間点(
以下の(数32))になる。
【0155】
【0156】
図20は、電磁石として設けられた固定子が、並進機構のx∈[0,73][mm]の範囲内で、Jcoil∈[0,10][A/mm2]で供給される際の、相互作用力の進展について示している。電流を固定子に供給すると、固定子は正に励磁される。固定子と第1並進機構は、吸引相互作用力を受ける;固定子と第2並進機構は、反発相互作用力を受ける。固定子と第2並進機構との間の反発相互作用に関する条件|Hcoil(J)|>M2は、固定子が第2並進機構に近いときには、満足されない。
【0157】
図19は、x∈[0,73][mm]の範囲内で固定子の位置に応じて、固定子が、Jcoil∈[+10,0][A/mm2]で供給されるときの、相互作用力の進展について示している。これにより、固定子が負に励磁される;固定子と第1並進機構との間に反発相互作用力が存在するのに対して、固定子と第2並進機構は、吸引力相互作用力を受ける。
【0158】
固定子が第1並進機構の近くにあるときには、固定子と第1並進機構との間の反発相互作用力の条件は、満足されない。
【0159】
図21では、x∈[0,73][mm]の
範囲に対して、第1並進機構2の位置に応じて、電磁石として設けられた固定子1にJ
coil
=10[A/mm
2]で供給した場合と、J
coil
=-10[A/mm
2]で供給した場合とを比較している。
【0160】
条件∀x∈[0,d],|Hcoil(J)|>Mが満足されず、捕捉作用が発生する範囲(以下で「捕捉範囲」と称される)では、相互作用力は、並進機構2、2’の所望する動作に対して作用する。捕捉範囲の終端点は、均衡点xeqによって規定される。
【0161】
捕捉範囲は基本的に、固定子の磁場が、並進機構2、2’のうち近い方の並進機構の磁場と等しくならない固定子の位置に、相当する。
【0162】
当業者は、並進機構の効率的な振動を維持するために、並進機構2、2’の動作は、捕捉範囲外で行われるべきであることに気付くであろう。その結果、第1並進機構と固定子との間の最短距離ε≧xeqとなる。
【0163】
図23および図24は、加速ユニットの使用に関する。
【0164】
以上の記載では、加速ユニットによって有効になった加速力、特に矯正力の状態は、第1並進機構2と固定子1との間隔に応じて、以下の(数33)に示す項で規定され、それにより第1並進機構に作用する力状態は、以下の(数34)で計算される。
【0165】
【0166】
【0167】
加速ユニットの第2の特徴として、均衡状態の存在が、電磁石が運転されていないときに存在すべきものとして選択された(以下の数35に示す)。
【0168】
【0169】
以下の(数36)から成る加速ユニットによって発生させる加速力の条件は、基本的に、捕捉力状態に対応し、本発明によれば、該捕条件状態は、加条件状態と少なくとも一部で重なる必要がある。加速力状態、特に該加速力の推移は、電磁石が運転されていない場合、測定によって推論されることができる。
【0170】
【0171】
図23では、F
corr(x)=-F(x,0)を保証する
加速力状態の推移について比較している。また、相互作用力は、電気駆動装置の形で提供された固定子が、作動していない場合、ストローク線として示されている。
【0172】
図24は、加速ユニットを使用する場合で、固定子が、並進機構と固定子との間隔の位置の関数として、「正」又は「負」の電流密度|J
coil|=10[A/mm
2]で供給される場合での、F
TOT(x,J)の推移を示している。グラフでは、
範囲x∈[0,73][mm]を示している。また、点線は、固定子が全く電流を供給されていないときの、F
TOT(x,J)の推移を示している。
【0173】
図21および22で示された力の推移は、簡素化して、第1並進機構と第2並進機構を同じ励磁状態にした場合に基づくものである。その結果、以下の(数37)を供給せずに、電磁石に対して以下の(数38)で均衡位置になる。
【0174】
【0175】
【0176】
加速ユニットを使用する
図23で示された力条件は、以下の特徴を有する。
【0177】
全く電流を供給されない並進機構は、必ず均衡状態になる:∀x∈[0,d], FTOT(x,0)=0。前記(数38)で言及された均衡位置は、矯正相互作用力FTOT(x,J)の推移に関して対称点になる。矯正相互作用力の推移の形状は、U字型である。
【0178】
図24は、
範囲x∈[0,73][mm]に関して並進機構の相対位置に応じて、J
coil∈[-10,10][A/mm
2]で電磁石に異なる電流を供給した際の、矯正相互作用力F
TOT(x,J)の推移を示している。
【0179】
左から右への並進機構の最適動作は、FTOT(x,J)>0を特徴とする。これは、J>0で達成される。逆に、右から左への並進機構の動作は、J<0で、FTOT(x,J)<0によって達成される。
【0180】
図25乃至
図27は、加速ユニット、即ちバネの形をした特定の実施形態に関連する。バネの作用に関する動作モードについては、
前記加速ユニットの特徴に続いて、記載される。
【0181】
(数21)は、矯正力の推移に関する対称点であるため、矯正力は、バネの機械特性を考慮して、2バネ力の総和として表されることができる:以下の(数39)。
【0182】
【0183】
図25は、∀x∈[0,d]、F
corr(x)=F
1(x)+F
2(x)の推移を示している。ここでは、∀x∈[0,d]、F
1(x)≧0は、必ず「正」の力を発生させ、∀x∈[0,d]、F
2(x)0は、必ず「負」の力を発生させる。第1バネ力F1は、
以下の(数
40)
の範囲において排他的に作動し、それにより第1バネ力は、固定子と第1並進機構との相互作用を打ち消す。同様に、第2バネ力F
2は、
以下の(数
41)
の範囲において排他的に作動し、それにより固定子と第2並進機構との相互作用を打ち消す。
【0184】
【0185】
【0186】
第1並進機構と第2並進機構が同じ励磁状態にあるときに、第1バネ力と第2バネ力は、以下の通り特定されることができる。第1バネ力と第2バネ力は、同じ絶対値であり、異なる方向に作用する:∀x∈[0,d],F2(x)=-F1(d-x)。
【0187】
以上の記載の結果、バネ特性が等しいが、異なる方向に作用する第1バネと第2バネの構成が得られる。
【0188】
図26は、加速ユニット5、5’としてバネ7、7’を使用した本発明の磁気装置に関する可能な実施形態を示している。
【0189】
第1バネ7は、固定子1と第1並進機構2との間で、各表面に作用しながら延伸する。第1バネは、固定子1と第1並進機構2との間の捕捉作用を打ち消す。第1バネ7の付勢は、固定子1への第1並進機構2の接近に応じて決まる。固定子1は、第1バネ7に対する基準点6としての役割を果たす。それと同時に、第1バネ力F1は、「正」の力として、第1並進機構2と固定子1との間隔に応じて、解放される。
【0190】
第2バネ7’は、第1バネ7と同様に作用する。第1バネ7の構成と同様に、第2バネ7’は、固定子1と第2並進機構2’との間に配設される。固定子1は、第2バネ7’の基準点6として機能する。
【0191】
第1バネ7及び第2バネ7’によって生成された矯正力は、以下を満足する:Fcorr(x)=F1(x)+F2(x)=-F(x,0)。
【0192】
技術水準によると、バネ力は、バネの直線的な変形に比例する。バネの圧縮σx[mm]の場合には、以下が満足される:F=-kσx、式中k[N/m]は、バネ定数である。
【0193】
並進機構の動作は、n(n=1,2,3…)の下位動作(submovement)[xn-1,xn]に、x0=0及びxN=dとして、分割される場合、バネ力は、線形外挿によって表されることができる(以下の(数42))。
【0194】
【0195】
バネの特性から共に推測できる圧縮長
がσ
n=x
n-x
n-1
であること及びバネ定数
が以下の(数
43)
であることを考慮すると、
図27が得られ、
図27では、バネ定数は、5つの下位動作x
n∈{0,5,10,20,30,73}に関して示されている。
【0196】
【符号の説明】
【0197】
1 固定子
2 並進機構
3 並進機構動作経路
4 並進機構動作方向
5 加速ユニット
6 基準点
7 バネ