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特許7033411成形用包装材、蓄電デバイス用外装ケース及び蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】成形用包装材、蓄電デバイス用外装ケース及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20220303BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20220303BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20220303BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20220303BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220303BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220303BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220303BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220303BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20220303BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/131
B32B27/00 H
B32B27/18 Z
B32B15/08 F
B32B27/30 D
H01G11/78
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017170957
(22)【出願日】2017-09-06
(65)【公開番号】P2019046729
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】吉野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】唐津 誠
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-149397(JP,A)
【文献】特開2015-033828(JP,A)
【文献】特開2004-327044(JP,A)
【文献】特開2014-022080(JP,A)
【文献】特開2005-032456(JP,A)
【文献】特開2002-050325(JP,A)
【文献】特開2017-112014(JP,A)
【文献】特開2018-073649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
B32B 27/00
B32B 27/18
B32B 15/08
B32B 27/30
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層としての基材層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む成形用包装材であって、
前記熱融着性樹脂層は、単層または複数層からなり、前記熱融着性樹脂層の最内層が、熱融着性樹脂、アンチブロッキング剤、スリップ剤およびフッ素ポリマー系滑剤を含有する樹脂組成物からなり、
前記最内層におけるフッ素ポリマー系滑剤の含有率が5ppm~5000ppmであり、
前記アンチブロッキング剤の含有率が100ppm~50000ppmであり、
前記スリップ剤の含有率が100ppm~3000ppmであることを特徴とする成形用包装材。
【請求項2】
前記フッ素ポリマー系滑剤におけるフッ素含有率が50質量%以上である請求項1に記載の成形用包装材。
【請求項3】
前記フッ素ポリマー系滑剤におけるフッ素の含有率が60質量%~80質量%である請求項1に記載の成形用包装材。
【請求項4】
前記フッ素ポリマー系滑剤が、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体およびヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体からなる群より選ばれる1種または2種のフッ素ポリマー系滑剤である請求項1~3のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項5】
前記最内層の内側表面において前記スリップ剤の一部および前記フッ素ポリマー系滑剤の一部がともに付着している請求項1~4のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項6】
前記最内層の内側表面の動摩擦係数が0.5以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項7】
前記基材層の外側の表面にスリップ剤が付着している請求項1~6のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項8】
前記基材層の外側表面の動摩擦係数が0.5以下である請求項1~7のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の成形用包装材の成形体からなる蓄電デバイス用外装ケース。
【請求項10】
蓄電デバイス本体部と、
請求項9に記載の蓄電デバイス用外装ケースを少なくとも含む外装部材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装部材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型の二次電池(リチウムイオン二次電池)のケースとして好適に用いられ、また食品の包装材、医薬品の包装材として好適に用いられる成形用包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル電気機器の薄型化、軽量化に伴い、これらに搭載されるリチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気2重層コンデンサ等の蓄電デバイスの外装材としては、従来の金属缶に代えて、耐熱性樹脂層/接着剤層/金属箔層/接着剤層/熱可塑性樹脂層(内側シーラント層)からなる積層体が用いられている。また、電気自動車等の電源、蓄電用途の大型電源、キャパシタ等も上記構成の積層体(外装材)で外装されることも増えてきている。前記積層体に対して張り出し成形や深絞り成形が行われることによって、略直方体形状等の立体形状に成形される。このような立体形状に成形することにより、蓄電デバイス本体部を収容するための収容空間を確保することができる。
【0003】
このような立体形状にピンホールや破断等なく良好状態に成形するには内側シーラント層の表面の滑り性を向上させることが求められる。内側シーラント層の表面の滑り性を向上させて良好な成形性を確保するものとして、内側シーラント層に脂肪酸アミドを含有せしめた構成のものが公知である(特許文献1参照)。
【0004】
また、同様に滑り性を向上させて良好な成形性を確保するものとして、基材層の一方の面に最外層として耐酸性付与層が設けられ、該基材層の他方の面に、第1接着層、少なくとも片面に腐食防止処理層を設けたアルミニウム箔層、第2接着層、シーラント層が順次積層されたリチウムイオン電池用外装材であって、前記シーラント層の外側の表面にスリップ剤(脂肪酸アミド等)およびアンチブロッキング剤(シリカ粒子等)の少なくとも一方が塗布されるか、または前記シーラント層にスリップ剤(脂肪酸アミド等)およびアンチブロッキング剤(シリカ粒子等)の少なくとも一方が配合された構成のリチウムイオン電池用外装材が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
上記いずれの技術においても、内側シーラント層の表面の滑り性を向上させることができて良好な成形性を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-101764号公報
【文献】特開2015-53289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、良好な成形性を確保するために十分な量の脂肪酸アミドを添加する必要があり、この場合、脂肪酸アミドが表面に過度に析出することになり、外装材の成形時に成形金型の成形面に脂肪酸アミドが付着堆積していって白粉(脂肪酸アミドによる白粉)が発生する。このような白粉が成形面に付着堆積した状態になると、良好な成形を行い難くなるし、成形品に白粉が付着する可能性があることから、白粉が付着して堆積する毎に清掃して白粉の除去を行う必要が生じるが、このような白粉の清掃除去を行うことで外装材の生産性が低下するという問題があった。
【0008】
また、脂肪酸アミドの添加量、エージング温度、エージング時間について種々調整を試みても、脂肪酸アミドの表面へのブリード量にバラツキが生じやすく、その結果、成形性、白粉付着の有無の程度にバラツキが生じやすく、安定した品質を確保するのが難しいという問題があった。
【0009】
勿論、脂肪酸アミドの添加量を少なくすれば、白粉の付着堆積を抑制することが可能になるが、この場合には表面への脂肪酸アミド析出量が不足して成形性が悪くなるという問題を生じる。このように従来では、優れた成形性と、外装材表面での白粉表出の抑制とを両立させることが難しかった。
【0010】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、成形用包装材の成形時に良好なすべり性を確保できて良好な成形性を確保できると共に、包装材の表面に白粉が表出し難い、成形用包装材、蓄電デバイス用外装ケース及び蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1]外側層としての基材層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む成形用包装材であって、
前記熱融着性樹脂層は、単層または複数層からなり、前記熱融着性樹脂層の最内層が、熱融着性樹脂、アンチブロッキング剤、スリップ剤およびフッ素ポリマー系滑剤を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする成形用包装材。
【0013】
[2]前記最内層におけるフッ素ポリマー系滑剤の含有率が5ppm~5000ppmである前項1に記載の成形用包装材。
【0014】
[3]前記フッ素ポリマー系滑剤におけるフッ素含有率が50質量%以上である前項1または2に記載の成形用包装材。
【0015】
[4]前記フッ素ポリマー系滑剤が、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体およびヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体からなる群より選ばれる1種または2種のフッ素ポリマー系滑剤である前項1~3のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0016】
[5]前記最内層の内側表面において前記スリップ剤の一部および前記フッ素ポリマー系滑剤の一部がともに付着している前項1~4のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0017】
[6]前記最内層の内側表面の動摩擦係数が0.5以下である前項1~5のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0018】
[7]前記基材層の外側の表面にスリップ剤が付着している前項1~6のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0019】
[8]前記基材層の外側表面の動摩擦係数が0.5以下である前項1~7のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0020】
[9]前項1~8のいずれか1項に記載の成形用包装材の成形体からなる蓄電デバイス用外装ケース。
【0021】
[10]蓄電デバイス本体部と、
前項9に記載の蓄電デバイス用外装ケースを少なくとも含む外装部材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装部材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0022】
[1]の発明では、熱融着性樹脂層の最内層が、熱融着性樹脂、アンチブロッキング剤、スリップ剤およびフッ素ポリマー系滑剤を含有する樹脂組成物からなる構成であるから、包装材の成形時における前記熱融着性樹脂層の最内層の表面と成形金型表面との滑り性が向上し、深絞り成形、張り出し成形等の成形時の成形性を向上させることができる。本発明によれば、スリップ剤のブリード量が少なくても成形時に安定した滑り性を確保することができる。
【0023】
[2]の発明では、前記滑り性をより向上させることができて、成形時の成形性をさらに向上させることができる。
【0024】
[3]の発明では、前記フッ素ポリマー系滑剤におけるフッ素含有率が50質量%以上であるから、前記滑り性をより向上させることができて、成形時の成形性をさらに向上させることができる。
【0025】
[4]の発明では、前記フッ素ポリマー系滑剤として、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体および/またはヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体が用いられているので、前記滑り性をより向上させることができて、成形時の成形性をさらに向上させることができる。
【0026】
[5]の発明では、前記滑り性をより向上させることができて、包装材の成形時の成形性をさらに向上させることができる。
【0027】
[6]の発明では、前記滑り性をより向上させることができて、成形時の成形性をさらに向上させることができる。
【0028】
[7]の発明では、前記滑り性をより向上させることができて、包装材の成形時の成形性をさらに向上させることができる。
【0029】
[8]の発明では、前記滑り性をより向上させることができて、成形時の成形性をさらに向上させることができる。
【0030】
[9]の発明では、良好な成形がなされた蓄電デバイス用外装ケースを提供できる。
【0031】
[10]の発明では、良好な成形がなされた外装ケースを用いて構成された蓄電デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る成形用包装材の第1実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る成形用包装材の第2実施形態を示す断面図である。
図3】本発明に係る成形用包装材の第3実施形態を示す断面図である。
図4】本発明に係る蓄電デバイスの一実施形態を示す断面図である。
図5図4の蓄電デバイスを構成する外装材(平面状のもの)、蓄電デバイス本体部及び外装ケース(立体形状に成形された成形体)をヒートシールする前の分離した状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る成形用包装材1は、外側層としての基材層2と、内側層としての熱融着性樹脂層3と、これら両層間に配置された金属箔層4と、を含み、前記熱融着性樹脂層3は、単層または複数層からなり、前記熱融着性樹脂層3の最内層7が、熱融着性樹脂、アンチブロッキング剤、スリップ剤およびフッ素ポリマー系滑剤を含有する樹脂組成物からなる構成である(図1~3参照)。
【0034】
本発明に係る成形用包装材1について3つの実施形態をそれぞれ図1~3に示す。これら3つの実施形態は、代表的な実施形態を示したものに過ぎず、特にこのような構成に限定されるものではない。
【0035】
図1~3に示す成形用包装材1は、リチウムイオン2次電池ケース用として用いられるものである。前記成形用包装材1は、例えば、深絞り成形、張り出し成形等の成形に供されて2次電池のケース等として用いられる。
【0036】
図1~3に示す実施形態では、前記成形用包装材1は、金属箔層4の一方の面に内側接着剤層6を介して熱融着性樹脂層(内側層)3が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面に外側接着剤層5を介して基材層(外側層)2が積層一体化された構成からなる。
【0037】
そして、図1に示す第1実施形態では、前記熱融着性樹脂層(内側層)3は、該内側層3の最内層7を構成する第1熱融着性樹脂層および該第1熱融着性樹脂層7における前記金属箔層4側の面に積層された第2熱融着性樹脂層8からなる構成(2層積層構成)である。前記第1熱融着性樹脂層(最内層)7が成形用包装材1の内側の表面に露出している(図1参照)。
【0038】
また、図2に示す第2実施形態では、前記熱融着性樹脂層(内側層)3は、該内側層3の最内層7を構成する第1熱融着性樹脂層と、該第1熱融着性樹脂層7における前記金属箔層4側の面に積層された第2熱融着性樹脂層8と、該第2熱融着性樹脂層8における前記金属箔層4側の面に積層された第3熱融着性樹脂層9と、からなる3層積層構成である。前記第1熱融着性樹脂層(最内層)7が成形用包装材1の内側の表面に露出している(図2参照)。
【0039】
また、図3に示す第3実施形態では、前記熱融着性樹脂層(内側層)3は、第1熱融着性樹脂層(最内層)7のみからなる単層構成である。前記同様に、前記第1熱融着性樹脂層(最内層)7が成形用包装材1の内側の表面に露出している(図3参照)。
【0040】
本発明において、前記熱融着性樹脂層(内側層;シーラント層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液等に対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、包装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0041】
前記熱融着性樹脂層3(第1熱融着性樹脂層7、第2熱融着性樹脂層8および第3熱融着性樹脂層9を含む)を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱融着性樹脂を用いるのが好ましい。なお、前記熱融着性樹脂層3を構成する樹脂として、酸変性ポリオレフィン樹脂を使用するのは、経済性の観点から、好ましくない。即ち、前記熱融着性樹脂層3を構成する樹脂として、酸変性されていないポリオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。
【0042】
そして、第1実施形態のように熱融着性樹脂層(内側層)3として2層積層構成を採用する場合には、前記第1熱融着性樹脂層(最内層)7を構成する熱融着性樹脂として、共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するランダム共重合体を用いると共に、前記第2熱融着性樹脂層8を構成する熱融着性樹脂として、共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するブロック共重合体を用いるのが好ましい。
【0043】
また、第2実施形態のように熱融着性樹脂層(内側層)3として3層積層構成を採用する場合には、前記第1熱融着性樹脂層(最内層)7および前記第3熱融着性樹脂層9を構成する熱融着性樹脂として、共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するランダム共重合体を用いると共に、前記第2熱融着性樹脂層8を構成する熱融着性樹脂として、共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するブロック共重合体を用いるのが好ましい。なお、前記熱融着性樹脂層3として3層積層構成を採用する場合において前記第3熱融着性樹脂層9にもフッ素ポリマー系滑剤を含有せしめてもよいが、ラミネート強度が低下する懸念があるので、前記第3熱融着性樹脂層9にはフッ素ポリマー系滑剤を含有せしめない構成か、又は含有せしめてもフッ素ポリマー系滑剤の含有率を1000ppm未満に設定するのが好ましい。
【0044】
また、第3実施形態のように熱融着性樹脂層(内側層)3として単層構成を採用する場合には、前記第1熱融着性樹脂層(最内層)7を構成する熱融着性樹脂としては、共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するランダム共重合体を用いるのが好ましい。
【0045】
前記ランダム共重合体に関して、前記「プロピレンを除く他の共重合成分」としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4メチル-1-ペンテン等のオレフィン成分の他、ブタジエン等が挙げられる。また、前記ブロック共重合体に関して、前記「プロピレンを除く他の共重合成分」としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4メチル-1-ペンテン等のオレフィン成分の他、ブタジエン等が挙げられる。
【0046】
そして、本発明では、前記熱融着性樹脂層3の最内層7が、熱融着性樹脂、アンチブロッキング剤、スリップ剤およびフッ素ポリマー系滑剤を含有する樹脂組成物からなる構成であるので、包装材1の成形時における前記熱融着性樹脂層3の最内層7の表面7aと成形金型表面との滑り性が向上し、深絞り成形、張り出し成形等の成形時の成形性を向上させることができる(より深い成形を良好に行うことができる)。
【0047】
前記アンチブロッキング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、無機粒子、樹脂粒子等が挙げられる。前記無機粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ粒子、ケイ酸アルミニウム粒子等が挙げられる。前記樹脂粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子(ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子)、ポリスチレン樹脂粒子等が挙げられる。
【0048】
前記アンチブロッキング剤の粒子径は、平均粒子径で0.1μm~10μmの範囲にあるのが好ましく、中でも平均粒子径で1μm~5μmの範囲にあるのがより好ましい。
【0049】
前記最内層7における前記アンチブロッキング剤の濃度(含有率)は、100ppm~50000ppmに設定されるのが好ましく、中でも500ppm~15000ppmに設定されるのが特に好ましい。
【0050】
前記スリップ剤としては、特に限定されるものではないが、脂肪酸アミドが好適に用いられる。前記脂肪酸アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族系ビスアミド等が挙げられる。
【0051】
前記飽和脂肪酸アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。前記不飽和脂肪酸アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
【0052】
前記置換アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、N-オレイルパルチミン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。また、前記メチロールアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチロールステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0053】
前記飽和脂肪酸ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0054】
前記不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0055】
前記脂肪酸エステルアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ステアロアミドエチルステアレート等が挙げられる。前記芳香族系ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-システアリルイソフタル酸アミド等が挙げられる。
【0056】
前記最内層7における前記スリップ剤の濃度(含有率)は、100ppm~3000ppmに設定されるのが好ましく、中でも500ppm~1500ppmに設定されるのが特に好ましい。
【0057】
なお、前記熱融着性樹脂層3として上述した2層積層構成(図1参照)を採用する場合において、前記第2熱融着性樹脂層8にもスリップ剤を含有せしめるのが好ましい。この場合、前記第2熱融着性樹脂層8にスリップ剤を100ppm~5000ppmの含有率で含有せしめるのが好ましく、中でも500ppm~3000ppmの含有率で含有せしめるのが特に好ましい。
【0058】
また、前記熱融着性樹脂層3として上述した3層積層構成(図2参照)を採用する場合において、前記第3熱融着性樹脂層9にもスリップ剤を含有せしめてもよいが、ラミネート強度が低下する懸念があるので、前記第3熱融着性樹脂層9にはスリップ剤を含有せしめない構成か、又は含有せしめてもスリップ剤の含有率を2000ppm未満に設定するのが好ましい。
【0059】
前記フッ素ポリマー系滑剤は、滑り性を付与し得るフッ素含有ポリマー(分子中に1ないし複数個のフッ素原子を有するポリマー)であり、例えば、フッ素エラストマー、フッ素樹脂(エラストマーを含まない)等が挙げられる。このようなフッ素ポリマー系滑剤を前記最内層7に含有せしめることにより、該フッ素ポリマー系滑剤は前記スリップ剤との相互作用が少なく、最内層7の表面7aに滑性層を形成し得て動摩擦係数を低減できるので、深絞り成形等の成形時の成形性を大きく向上させることができる(より深い成形を行っても良好な成形体を得ることができる)。また、前記フッ素ポリマー系滑剤を最内層7に含有せしめることにより、最内層7の表面7aの表面荒れを抑制できる。
【0060】
前記フッ素エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、フッ素含有モノマーの共重合体などが挙げられる。前記フッ素含有モノマーの共重合体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。前記例示した共重合体は、Tgが-35℃~-5℃の範囲にあって、融点を示さないポリマーである。中でも、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体を用いるのが好ましい。この場合、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体にポリエチレングリコールを配合してもよく、この時、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体100質量部に対してポリエチレングリコールの配合量を1質量部~70質量部に設定するのが好ましく、中でも5質量部~65質量部に設定するのがより好ましい。前記フッ素エラストマーに、例えば、無機系の粘着防止剤等を配合してもよい。前記無機系の粘着防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、タルク、アモルファスシリカ、カオリン(ケイ酸アルミニウム)、炭酸カルシウム等が挙げられる。前記フッ素エラストマーとして、例えば、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体を含有するスリーエム社製のダイナマー(商標)「FX5920A」、ダイナマー(商標)「FX9613」を挙げることができる。
【0061】
前記フッ素樹脂(エラストマーは含まない)としては、融点を有する(融点を示す結晶性の)フッ素樹脂を用いるのが好ましい。融点を有するフッ素樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体(TFE/P)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(THV)等が挙げられる。上記融点を有するフッ素樹脂は、前記フッ素エラストマーと比較して、耐熱性に優れている上に、前記スリップ剤(脂肪酸アミド等)との相互作用(反応)がより少ないという利点がある。
【0062】
前記フッ素樹脂(エラストマーは含まない)としては、融点が100℃~300℃の範囲内のものを用いるのが好ましい。融点が100℃以上であることで、樹脂組成物におけるフッ素樹脂(フッ素ポリマー系滑剤)の分散性を向上させることができる。融点が300℃以下であることで(成形温度を高くする必要がなく)加工性を向上できる。中でも、前記フッ素樹脂(エラストマーは含まない)としては、融点が110℃~230℃の範囲内のものを用いるのが特に好ましい。前記例示したフッ素樹脂の中で、融点が100℃~300℃のものは、FEP、PCTFE、ETFE、PVDF、TFE/P、THV等である。また、融点が110℃~230℃であるものは、PVDF、TFE/P、THV等である。これらの中でも、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(THV)が最適である。
【0063】
なお、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体は、「フッ素エラストマー」に該当するものと「融点を有するフッ素樹脂」に該当するものと両方あるが、成形性をより向上できる点で、後者に該当するもの(即ち融点を有するテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体)を用いるのが特に好ましい。前記融点を有するテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体として、スリーエム社製のダイナマー(商標)「FX5911」を挙げることができる。
【0064】
前記フッ素ポリマー系滑剤としては、前記フッ素エラストマー滑剤と前記フッ素樹脂滑剤(エラストマーを含まない)を併用してもよい(混合して使用してもよい)。
【0065】
前記フッ素ポリマー系滑剤におけるフッ素(F原子)の含有率は、50質量%以上であるのが好ましい。50質量%以上であることで耐熱性をより向上できるし、最内層の表面7aに一層ブリードしやすくできる。中でも、前記フッ素ポリマー系滑剤におけるフッ素(F原子)の含有率は、60質量%~80質量%であるのがより好ましく、さらに66質量%~76質量%であるのが特に好ましい。
【0066】
前記最内層7における前記フッ素ポリマー系滑剤の濃度(含有率)は、5ppm~5000ppmに設定されるのが好ましい。5ppm以上であることで成形性を十分に向上させることができると共に、5000ppm以下であることで最内層7の均一な押出成形(フィルム成形)が可能となる。中でも、前記最内層7における前記フッ素ポリマー系滑剤の濃度(含有率)は、50ppm~3000ppmに設定されるのがより好ましく、100ppm~1500ppmに設定されるのが特に好ましく、200ppm~1200ppmに設定されるのが最も好適である。なお、前記フッ素ポリマー系滑剤を配合して前記最内層7の樹脂組成物を得る際には、該フッ素ポリマー系滑剤をポリオレフィン樹脂等の樹脂に混合してなるマスターバッチにしておいて、該マスターバッチを配合して前記最内層7の樹脂組成物を得るようにしてもよい。
【0067】
本発明において、前記基材層(外側層)2は、耐熱性樹脂層で形成されているのが好ましい。前記耐熱性樹脂層2を構成する耐熱性樹脂としては、包装材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱融着性樹脂層3の融点(熱融着性樹脂層が複数層からなる場合には最も高い融点を有する層の融点)より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、熱融着性樹脂層3の融点(熱融着性樹脂層が複数層からなる場合には最も高い融点を有する層の融点)より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。
【0068】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層2としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層2は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0069】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2の厚さは、2μm~50μmであるのが好ましい。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは2μm~50μmであるのが好ましく、ナイロンフィルムを用いる場合には厚さは7μm~50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで包装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0070】
前記金属箔層4は、包装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)、銅箔等が挙げられ、中でも、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)を用いるのが好ましい。前記金属箔層4の厚さは、5μm~120μmであるのが好ましい。5μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、120μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。中でも、前記金属箔層4の厚さは、10μm~80μmであるのがより好ましい。
【0071】
前記金属箔層4は、少なくとも内側の面(内側層3側の面)に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0072】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2が好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2が好ましい。
【0073】
前記外側接着剤5としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱硬化性接着剤等が挙げられる。前記熱硬化性接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。前記外側接着剤層5の厚さは、1μm~5μmに設定されるのが好ましい。中でも、包装材1の薄膜化、軽量化の観点から、前記外側接着剤層5の厚さは、1μm~3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0074】
前記内側接着剤6としては、特に限定されるものではないが、例えば、前記熱硬化性接着剤等が挙げられる。前記内側接着剤層6の厚さは、1μm~5μmに設定されるのが好ましい。中でも、包装材1の薄膜化、軽量化の観点から、前記内側接着剤層6の厚さは、1μm~3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0075】
前記成形用包装材1を構成する基材層2、熱融着性樹脂層3(最内層7を含む)中に、本発明の効果を阻害しない範囲で、次のような添加剤を添加してもよい。前記添加剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、防かび剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、防さび剤、吸湿剤、酸素吸収剤等が挙げられる。前記可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド、グリセリン脂肪酸エステルアセチル化モノグリセライド、グリセリン脂肪酸エステル有機酸モノグリセライド、グリセリン脂肪酸エステル中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、特殊脂肪酸エステル、高級アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0076】
しかして、本発明の成形用包装材1は、前記熱融着性樹脂層3の最内層7の表面7aに、前記スリップ剤の一部および前記フッ素ポリマー系滑剤の一部が表出して(ブリードして)付着している。前記最内層7の表面7aにおけるスリップ剤の付着量は0.05μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲であるのが好ましく、前記最内層7の表面7aにおけるフッ素ポリマー系滑剤の付着量は0.05μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲であるのが好ましい。しかして、このような表出付着によって、前記最内層7の表面7aの動摩擦係数が0.5以下になる。中でも、前記最内層7の表面7aの動摩擦係数が0.25以下であるのが好ましく、さらには0.20以下であるのがより好ましく、0.18以下であるのが特に好ましい。
【0077】
また、本発明の成形用包装材1において、前記基材層2の表面2aには、前記最内層7に含有されていたスリップ剤が付着している。この付着スリップ剤は、ラミネート加工して得た成形用包装材1を巻いた状態で保管する際に、巻いた状態での最内層7の表面7aとの接触により該最内層7から転写されたものである。前記転写後の付着量は、0.05μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲であるのが好ましい。付着量がこのような範囲であれば、成形用包装材1の成形性を高めることができる。中でも、前記転写後の付着量は、0.1μg/cm2~0.6μg/cm2の範囲であるのがより好ましい。しかして、このような転写付着によって、前記基材層2の表面2aの動摩擦係数が0.5以下になる。中でも、前記基材層2の表面2aの動摩擦係数が0.25以下であるのが好ましく、さらに0.20以下であるのがより好ましく、0.18以下であるのが特に好ましい。前記成形用包装材1を深絞り成形等により成形した後は、この転写スリップ剤は、除去してもよいし、或いは放置しておいてもよいし、或いはまた自然に消失してしまってもよい。
【0078】
本発明の包装材1を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、外装ケース(電池ケース等)10を得ることができる(図4、5参照)。
【0079】
本発明の包装材1を用いて構成された蓄電デバイス30の一実施形態を図4に示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。本実施形態では、図4、5に示すように、包装材1を成形して得られた外装ケース10と、成形に供されることなく平面状の包装材1とにより外装部材15が構成されている。しかして、本発明の包装材1を成形して得られた外装ケース10の収容凹部内に、略直方体形状の蓄電デバイス本体部(電気化学素子等)31が収容され、該蓄電デバイス本体部31の上に、前記平面状の包装材1がその内側層3側を内方(下側)にして配置され、該平面状外装材1の内側層3(最内層7)の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29の内側層3(最内層7)とがヒートシールによりシール接合されて封止されることによって、本発明の蓄電デバイス30が構成されている(図4、5参照)。なお、前記外装ケース10の収容凹部の内側の表面は、内側層3(最内層7)になっており、収容凹部の外面が基材層(外側層)2になっている(図5参照)。
【0080】
図4において、39は、前記包装材1の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29とが接合(溶着)されたヒートシール部である。なお、前記蓄電デバイス30において、蓄電デバイス本体部31に接続されたタブリードの先端部が、外装部材15の外部に導出されているが、図示は省略している。
【0081】
前記蓄電デバイス本体部31としては、特に限定されるものではないが、例えば、電池本体部、キャパシタ本体部、コンデンサ本体部等が挙げられる。
【0082】
前記ヒートシール部39の幅は、0.5mm以上に設定するのが好ましい。0.5mm以上とすることで封止を確実に行うことができる。中でも、前記ヒートシール部39の幅は、3mm~15mmに設定するのが好ましい。
【0083】
なお、上記実施形態では、外装部材15が、包装材1を成形して得られた外装ケース10と、平面状の包装材1と、からなる構成であったが(図4、5参照)、特にこのような組み合わせに限定されるものではなく、例えば、一対の外装ケース10からなる構成であってもよい。
【実施例
【0084】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0085】
<使用材料>
[フッ素ポリマー系滑剤A(フッ素樹脂でありエラストマーでない)]
スリーエム社製のダイナマー(商標)「FX5911」…テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(該共重合体の融点が118℃、該共重合体中のフッ素含有率が69質量%)
[フッ素ポリマー系滑剤B(フッ素エラストマー)]
スリーエム社製のダイナマー(商標)「FX5920A」…ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(該共重合体中のフッ素含有率が66質量%)35質量%、エチレングリコール65質量%の混合物。
[フッ素ポリマー系滑剤C(フッ素エラストマー)]
スリーエム社製のダイナマー(商標)「FX9613」…ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(該共重合体中のフッ素含有率が66質量%)90質量%、無機粒子(タルク6.5質量%、アモルファスシリカ2.5質量%、炭酸カルシウム1質量%)10質量%の混合物。
【0086】
<実施例1>
厚さ30μmのアルミニウム箔4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2であった。
【0087】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、2液硬化型のウレタン系接着剤5を介して厚さ15μmの二軸延伸6ナイロンフィルム2をドライラミネートした(貼り合わせた)。
【0088】
次に、エチレン-プロピレンランダム共重合体、1000ppmのエルカ酸アミド(スリップ剤)、5000ppmのシリカ粒子(平均粒子径2μm;アンチブロッキング剤)および50ppmのフッ素ポリマー系滑剤A(スリーエム社製「FX5911」)を含有してなる厚さ3μmの第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7、エチレン-プロピレンブロック共重合体、1000ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ14μmの第2熱融着性樹脂無延伸フィルム8、エチレン-プロピレンランダム共重合体、1000ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ3μmの第3熱融着性樹脂無延伸フィルム9がこの順で3層積層されるようにTダイを用いて共押出することにより、これら3層が積層されてなる厚さ20μmのシーラントフィルム(第1熱融着性樹脂無延伸フィルム層7/第2熱融着性樹脂無延伸フィルム層8/第3熱融着性樹脂無延伸フィルム層9)3を得た後、該シーラントフィルム3の第3熱融着性樹脂無延伸フィルム層9面を、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤6を介して、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、ロール軸に巻き取り、しかる後、33℃で13日間エージングした(加熱した)後、ロール軸から引き出すことによって、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0089】
なお、前記2液硬化型マレイン酸変性ポリプロピレン接着剤として、主剤としてのマレイン酸変性ポリプロピレン(融点80℃、酸価10mgKOH/g)100質量部、硬化剤としてのヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌレート体(NCO含有率:20質量%)8質量部、さらに溶剤が混合されてなる接着剤溶液を用い、該接着剤溶液を固形分塗布量が2g/m2になるように、前記アルミニウム箔4の他方の面に塗布して、加熱乾燥させた後、前記シーラントフィルム3の第3無延伸フィルム層9面に重ね合わせた。
【0090】
<実施例2>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中のフッ素ポリマー系滑剤A(スリーエム社製「FX5911」)の含有率を500ppmに変更した以外は、実施例1と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0091】
<比較例1>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に、フッ素ポリマー系滑剤を非含有とした以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)を得た。
【0092】
<実施例3>
アルミニウム箔4の厚さを35μmに変更すると共に、シーラントフィルムとして厚さのみを変更した(組成は変更することなく)厚さ30μmのシーラントフィルム(厚さ3μmの第1熱融着性樹脂無延伸フィルム層7/厚さ24μmの第2熱融着性樹脂無延伸フィルム層8/厚さ3μmの第3熱融着性樹脂無延伸フィルム層9)を用いた以外は、実施例1と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0093】
<実施例4>
アルミニウム箔4の厚さを35μmに変更すると共に、シーラントフィルムとして厚さのみを変更した(組成は変更することなく)厚さ30μmのシーラントフィルム(厚さ4.5μmの第1熱融着性樹脂無延伸フィルム層7/厚さ21μmの第2熱融着性樹脂無延伸フィルム層8/厚さ4.5μmの第3熱融着性樹脂無延伸フィルム層9)を用いた以外は、実施例2と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0094】
<比較例2>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に、フッ素ポリマー系滑剤を非含有とした以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)を得た。
【0095】
<実施例5>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中のフッ素ポリマー系滑剤A(スリーエム社製「FX5911」)の含有率を1000ppmに変更した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0096】
<実施例6>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤として、50ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)に代えて、50ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)および50ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX5920A」)を使用した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0097】
<実施例7>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤として、50ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)に代えて、250ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)および250ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX5920A」)を使用した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0098】
<実施例8>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤として、50ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)に代えて、500ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)および500ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX5920A」)を使用した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0099】
<実施例9>
二軸延伸6ナイロンフィルム2の厚さを25μmに変更し、アルミニウム箔4の厚さを40μmに変更すると共に、第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤をフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX5920A」)に変更し、シーラントフィルムとして厚さ40μmのシーラントフィルム(厚さ4μmの第1熱融着性樹脂無延伸フィルム層7/厚さ32μmの第2熱融着性樹脂無延伸フィルム層8/厚さ4μmの第3熱融着性樹脂無延伸フィルム層9)を用いた以外は、実施例1と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0100】
<実施例10>
二軸延伸6ナイロンフィルム2の厚さを25μmに変更し、アルミニウム箔4の厚さを40μmに変更すると共に、第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤を500ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX5920A」)に変更し、シーラントフィルムとして厚さ40μmのシーラントフィルム(厚さ6μmの第1熱融着性樹脂無延伸フィルム層7/厚さ28μmの第2熱融着性樹脂無延伸フィルム層8/厚さ6μmの第3熱融着性樹脂無延伸フィルム層9)を用いた以外は、実施例2と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0101】
<実施例11>
二軸延伸6ナイロンフィルムに代えて、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、アルミニウム箔4の厚さを35μmに変更すると共に、第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤を50ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX9613」)に変更し、シーラントフィルムとして厚さ80μmのシーラントフィルム(厚さ8μmの第1熱融着性樹脂無延伸フィルム層7/厚さ64μmの第2熱融着性樹脂無延伸フィルム層8/厚さ8μmの第3熱融着性樹脂無延伸フィルム層9)を用いた以外は、実施例1と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0102】
<実施例12>
二軸延伸6ナイロンフィルムに代えて、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、アルミニウム箔4の厚さを35μmに変更すると共に、第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤を500ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX9613」)に変更し、シーラントフィルムとして厚さ80μmのシーラントフィルム(厚さ12μmの第1熱融着性樹脂無延伸フィルム層7/厚さ56μmの第2熱融着性樹脂無延伸フィルム層8/厚さ12μmの第3熱融着性樹脂無延伸フィルム層9)を用いた以外は、実施例1と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0103】
<比較例3>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に、フッ素ポリマー系滑剤を非含有とした以外は、実施例11と同様にして、蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)を得た。
【0104】
<実施例13>
外側層2として厚さ27μmの積層フィルム(厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム/厚さ15μmの二軸延伸6ナイロンフィルム)を用い、アルミニウム箔4の厚さを40μmに変更すると共に、第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤を500ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX9613」)に変更し、シーラントフィルムとして厚さ80μmのシーラントフィルム(厚さ8μmの第1熱融着性樹脂無延伸フィルム層7/厚さ64μmの第2熱融着性樹脂無延伸フィルム層8/厚さ8μmの第3熱融着性樹脂無延伸フィルム層9)を用いた以外は、実施例1と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0105】
<比較例4>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に、フッ素ポリマー系滑剤を非含有とした以外は、実施例13と同様にして、蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)を得た。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
<実施例14>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤として、50ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)に代えて、250ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX9613」)及び250ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX5920A」)を使用した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0109】
<実施例15>
アンチブロッキング剤として、5000ppmのシリカ粒子に代えて、6000ppmのケイ酸アルミニウム粒子(平均粒子径2μm)を用い、第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤として、50ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)に代えて、750ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)および250ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX5920A」)を使用した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0110】
<実施例16>
アンチブロッキング剤として、5000ppmのシリカ粒子に代えて、4000ppmのアクリル樹脂ビーズ(平均粒子径3μm)を用い、第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤として、50ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)に代えて、1000ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)および500ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX5920A」)を使用した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0111】
<実施例17>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7および第3熱融着性樹脂無延伸フィルム9に含有せしめるスリップ剤として、1000ppmのエルカ酸アミドに代えて、1000ppmのステアリン酸アミドを用い、第2熱融着性樹脂無延伸フィルム8に含有せしめるスリップ剤として、1000ppmのエルカ酸アミドに代えて、1000ppmのステアリン酸アミドを用い、第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤として、50ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)に代えて、500ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)および250ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX5920A」)を使用した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0112】
<実施例18>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7および第3熱融着性樹脂無延伸フィルム9に含有せしめるスリップ剤として、1000ppmのエルカ酸アミドに代えて、1000ppmのベヘン酸アミドを用い、第2熱融着性樹脂無延伸フィルム8に含有せしめるスリップ剤として、1000ppmのエルカ酸アミドに代えて、1000ppmのベヘン酸アミドを用い、第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に含有せしめるフッ素ポリマー系滑剤として、50ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)に代えて、750ppmのフッ素樹脂滑剤(スリーエム社製「FX5911」)および750ppmのフッ素エラストマー滑剤(スリーエム社製「FX5920A」)を使用した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)1を得た。
【0113】
<比較例5>
第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7に含有せしめるエルカ酸アミドの含有率(濃度)を2500ppmに変更し、第2熱融着性樹脂無延伸フィルム8に含有せしめるエルカ酸アミドの含有率(濃度)を2500ppmに変更し、第1熱融着性樹脂無延伸フィルム7中に、フッ素ポリマー系滑剤を非含有とした以外は、実施例3と同様にして、蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)を得た。
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)について下記評価法に基づいて評価を行った。その結果を表2に示す。なお、表3、4に記載の最内層の表面の動摩擦係数は、JIS K7125-1995に準拠して、各外装材の最内層の表面7aについて測定した動摩擦係数である。また、表3、4に記載の基材層の表面2aの動摩擦係数は、JIS K7125-1995に準拠して、各外装材の基材層の表面2aについて測定した動摩擦係数である。
【0117】
<外装材の最内層の表面に存在するスリップ剤量の評価法>
各蓄電デバイス用外装材から縦110mm×横110mmの矩形状の試験片を2枚切り出した後、これら2枚の試験片を重ね合わせて互いの熱融着性樹脂層(内側層)の最内層の周縁部同士をヒートシール温度200℃でシール幅5mmでヒートシールして袋体を作製した。この袋体の内部空間内にシリンジを用いてアセトン1mLを注入し、内側層の最内層7の表面7aとアセトンとが接触した状態で3分間放置した後、袋体内のアセトンを抜き取った。この抜き取った液中に含まれる成分量をガスクロマトグラフを用いて測定、分析することにより、外装材の最内層の表面7aに存在するスリップ剤量(μg/cm2)を求めた。即ち、最内層の表面1cm2あたりのスリップ剤量を求めた。
【0118】
<外装材の最内層の表面に存在するフッ素ポリマー系滑剤量の評価法>
各蓄電デバイス用外装材から縦101mm×横100.5mmの矩形状の試験片を1枚切り出した後、試験片を半折りにして重ね合わせて互いの熱融着性樹脂層(内側層)の最内層の周縁部同士をヒートシール温度200℃でシール幅5mmでヒートシールして袋体を作製した。この袋体の内部空間内にシリンジを用いてアセトン100mLを注入し、内側層の最内層7の表面7aとアセトンとが接触した状態で室温で3分間放置した後、袋体内のアセトンを抜き取った。この操作を2回繰り返すことによりスリップ剤を除去した。次いで、更に前記袋体の内部空間内にシリンジを用いてアセトン100mLを注入し、内側層の最内層7の表面7aとアセトンとが接触した状態で50℃のオーブン中で30分間放置した後、袋体内のアセトンを抜き取った。この抜き取った液をロータリーエバポレーターで濃縮し、その後140℃で6時間真空乾燥を行った後、残渣の質量を計量することにより、外装材の最内層の表面7aに存在するフッ素ポリマー系滑剤量(μg/cm2)を求めた。即ち、最内層の表面1cm2あたりのフッ素ポリマー系滑剤量を求めた。
【0119】
<外装材の基材層の表面に存在するスリップ剤量の評価法>
各蓄電デバイス用外装材から縦110mm×横110mmの矩形状の試験片を2枚切り出した後、これら2枚の試験片を重ね合わせて互いの基材層(外側層)の表面(最外層の表面)2aの周縁部同士をヒートシール温度250℃でシール幅5mmでヒートシールして袋体を作製した。この袋体の内部空間内にシリンジを用いてアセトン1mLを注入し、基材層2の表面2aとアセトンとが接触した状態で3分間放置した後、袋体内のアセトンを抜き取った。この抜き取った液中に含まれる成分量をガスクロマトグラフを用いて測定、分析することにより、外装材の基材層2の表面2aに存在するスリップ剤量(μg/cm2)を求めた。即ち、基材層2の表面1cm2あたりのスリップ剤量を求めた。
【0120】
<成形性評価法>
成形深さフリーのストレート金型を用いて外装材に対し下記成形条件で深絞り1段成形を行い、各成形深さ(9.0mm、8.5mm、8.0mm、7.5mm、7.0mm、6.5mm、6.0mm、5.5mm、5.0mm、4.5mm、4.0mm、3.5mm、3.0mm、2.5mm、2.0mm)毎に成形性を評価し、コーナー部にピンホールが全く発生しない良好な成形を行うことができる最大成形深さ(mm)を調べた。表2にこの最大成形深さ(mm)を示した。なお、ピンホールの有無は、ピンホールを透過してくる透過光の有無を目視により観察することにより調べた。
(成形条件)
成形型…パンチ:33.3mm×53.9mm、ダイ:80mm×120mm、コーナーR:2mm、パンチR:1.3mm、ダイR:1mm
しわ押さえ圧…ゲージ圧:0.475MPa、実圧(計算値):0.7MPa
材質…SC(炭素鋼)材、パンチRのみクロムメッキ。
【0121】
<白粉の有無評価法>
各蓄電デバイス用外装材から縦600mm×横100mmの矩形状の試験片を切り出した後、得られた試験片を内側層3面(即ち最内層の表面7a)を上側にして試験台の上に載置し、この試験片の上面に、黒色のウェスが巻き付けられて表面が黒色を呈しているSUS製錘(質量1.3kg、接地面の大きさが55mm×50mm)を載せた状態で、該錘を試験片の上面と平行な水平方向に引張速度4cm/秒で引っ張ることによって錘を試験片の上面に接触状態で長さ400mmにわたって引張移動させた。引張移動後の錘の接触面のウェス(黒色)を目視で観察し、ウェス(黒色)の表面に白粉が顕著に生じていたものを「×」とし、白粉が僅かに生じていたに過ぎないものを「△」とし、白粉が殆どないか又は白粉が認められなかったものを「○」とした。なお、上記黒色のウェスとしては、TRUSCO社製「静電気除去シートS SD2525 3100」を使用した。
【0122】
表から明らかなように、本発明の実施例1~18の蓄電デバイス用外装材(成形用包装材)は、最大成形深さが4.0mm以上であり、より深い成形を行っても良好な成形品を得ることができると共に、外装材の表面に白粉が表出し難いものであった。
【0123】
これに対し、熱融着性樹脂層の最内層中に、スリップ剤およびアンチブロッキング剤が添加されているものの、フッ素ポリマー系滑剤が添加されていない比較例1~4では、深絞り成形を行った際の最大成形深さが、実施例1~18と比べて低い結果となった。また、比較例5では、外装材の表面に白粉が顕著に表出していた。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明に係る成形用包装材は、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型のリチウムイオンポリマー二次電池等の電池のケースとして好適に用いられ、これ以外にも、食品の包装材、医薬品の包装材として好適であるが、特にこれらの用途に限定されるものではない。中でも、電池ケース用として特に好適である。
【符号の説明】
【0125】
1…成形用包装材
2…基材層(外側層)
2a…基材層の表面
3…熱融着性樹脂層(内側層)
4…金属箔層
7…最内層(熱融着性樹脂層の最内層;第1熱融着性樹脂層)
7a…包装材の最内層の表面
8…第2熱融着性樹脂層
9…第3熱融着性樹脂層
10…蓄電デバイス用外装ケース
15…外装部材
30…蓄電デバイス
31…蓄電デバイス本体部
図1
図2
図3
図4
図5