IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電工パッケージング株式会社の特許一覧

特許7033414成形用包装材、蓄電デバイス用外装ケース及び蓄電デバイス
<>
  • 特許-成形用包装材、蓄電デバイス用外装ケース及び蓄電デバイス 図1
  • 特許-成形用包装材、蓄電デバイス用外装ケース及び蓄電デバイス 図2
  • 特許-成形用包装材、蓄電デバイス用外装ケース及び蓄電デバイス 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】成形用包装材、蓄電デバイス用外装ケース及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/09 20060101AFI20220303BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220303BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220303BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20220303BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220303BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20220303BHJP
【FI】
B32B15/09 A
B32B27/36
B32B27/40
B32B7/02
B65D65/40 D
H01G11/78
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017176419
(22)【出願日】2017-09-14
(65)【公開番号】P2019051634
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】吉野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】南堀 勇二
(72)【発明者】
【氏名】田中 克美
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-071414(JP,A)
【文献】特開2012-146636(JP,A)
【文献】特開2016-104565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/09
H01M 50/10
B32B 27/36
B32B 27/40
B32B 7/02
B65D 65/40
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層としてのポリブチレンテレフタレート層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む成形用包装材において、
前記ポリブチレンテレフタレート層と前記金属箔層とが外側接着剤層を介して接着されており、
前記外側接着剤層は、ポリエステルポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、多価アルコールと、を含むウレタン接着剤の硬化膜で形成され、
前記ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸成分を含み、
前記ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸を含有し、前記ジカルボン酸成分中の前記芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%~80モル%であり、
前記ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が140MPa~300MPaであり、
前記ポリブチレンテレフタレート層の引張強度が、MD方向で100MPa~200MPaであり、TD方向で100MPa~200MPaであり、
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が8000~30000の範囲であることを特徴とする成形用包装材。
【請求項2】
前記外側接着剤層は、ウレタン結合、エステル結合、ウレア結合、アロファネート結合ビュレット結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を含む請求項1に記載の成形用包装材。
【請求項3】
前記ウレタン接着剤において、前記ポリエステルポリオールの水酸基のモル数に対する前記多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数の比率(当量比)が2~25である請求項1または2に記載の成形用包装材。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の成形用包装材の成形体からなる蓄電デバイス用外装ケース。
【請求項5】
蓄電デバイス本体部と、
請求項に記載の蓄電デバイス用外装ケースを少なくとも含む外装部材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装部材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項6】
外側層としてのポリブチレンテレフタレート層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む積層物であって、前記ポリブチレンテレフタレート層は、引張強度が、MD方向で100MPa~200MPaであり、TD方向で100MPa~200MPaであるポリブチレンテレフタレートフィルムからなり、前記熱融着性樹脂層と前記金属箔層とが、硬化型内側接着剤を介して接着され、前記ポリブチレンテレフタレート層と前記金属箔層とが、ポリエステルポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、多価アルコールと、を含む硬化型外側接着剤を介して接着された積層物を準備する工程と、
前記積層物を37℃~55℃の温度で加熱エージング処理を行うことによって前記硬化型内側接着剤および前記硬化型外側接着剤を硬化させるエージング処理工程と、を含み、
前記ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸成分を含み、
前記ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸を含有し、前記ジカルボン酸成分中の前記芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%~80モル%であり、
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が8000~30000の範囲であり、
前記硬化型外側接着剤の硬化膜のヤング率が140MPa~300MPaであることを特徴とする成形用包装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型の二次電池(リチウムイオン二次電池)のケースとして好適に用いられ、また食品の包装材、医薬品の包装材として好適に用いられる成形用包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル電気機器の薄型化、軽量化に伴い、これらに搭載されるリチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気2重層コンデンサ等の蓄電デバイスの外装材としては、従来の金属缶に代えて、耐熱性樹脂層(外側層)/接着剤層/金属箔層/接着剤層/熱可塑性樹脂層(内側シーラント層)からなる積層体が用いられている。また、電気自動車等の電源、蓄電用途の大型電源、キャパシタ等も上記構成の積層体(外装材)で外装されることも増えてきている。前記積層体に対して張り出し成形や深絞り成形が行われることによって、略直方体形状等の立体形状に成形される。このような立体形状に成形することにより、蓄電デバイス本体部を収容するための収容空間を確保することができる。
【0003】
上記外側層としては、外装材としての強度確保、良好な成形性確保の観点から、ポリアミド樹脂層が採用されることが多い。例えば、少なくともアルミニウム箔の片面に、厚さ9~50ミクロンのポリアミドフィルムをラミネートすると共に、耐電解液性を付与できる少なくとも厚さ9~50ミクロンのポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン-アクリレート共重合体またはアイオノマー樹脂のフィルムを最も外側にラミネートした包材総厚が150ミクロン以下である電池ケース用包材が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-123800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電デバイス用外装材のヒートシール工程では、対向する一対の外装材の縁部同士の間にタブリードを介在させて同時にシールすることになるため、高い温度、高い圧力、長い時間を必要とする。このような条件でヒートシールを行うと、ポリアミド樹脂層に含まれる分子量の小さい化合物が前記ヒートシール時にポリアミド樹脂層の表面に析出してシールバーに付着して徐々に堆積する結果、ヒートシール操作を繰り返し行っているとシールバーの付着堆積物(低分子量化合物)によってシール不良を起こしやすいという問題があった。また、付着堆積物を除去するべく頻繁にシールバーの清掃を行わなければならず生産性が低下するという問題もあった。
【0006】
このようなシール不良を生じないようにするために、ポリアミド樹脂層の外面にポリエステル樹脂層を積層する手法も考えられるが、コスト増大を来たす上に成形性も低下するという問題があった。
【0007】
また、内側層の熱融着性樹脂層の融点の低いものを選定してヒートシール温度を下げるという案も考えられるが、低融点の熱融着性樹脂層を使用した場合にはシール後の厚さが薄くなり十分な絶縁性が得られ難いことが懸念される。
【0008】
また、電池等の蓄電デバイス分野では、コスト低減のために生産性を向上させることが求められている。
【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、ヒートシール時にシール不良を生じることなくシールできると共に、シールバーの清掃頻度を顕著に低減できて生産性を向上することができ、耐電解液性に優れていて、成形後のデラミネーションの発生を十分に抑制できる成形用包装材、蓄電デバイス用外装ケース及び蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]外側層としてのポリブチレンテレフタレート層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む成形用包装材において、
前記ポリブチレンテレフタレート層と前記金属箔層とが外側接着剤層を介して接着されており、
前記外側接着剤層は、ポリエステルポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、多価アルコールと、を含むウレタン接着剤の硬化膜で形成され、
前記ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸成分を含み、
前記ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸を含有し、前記ジカルボン酸成分中の前記芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%~80モル%であり、
前記ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が70MPa~400MPaであり、
前記ポリブチレンテレフタレート層の引張強度が、MD方向で100MPa~300MPaであり、TD方向で100MPa~300MPaであることを特徴とする成形用包装材。
【0012】
[2]前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が8000~30000の範囲である前項1に記載の成形用包装材。
【0013】
[3]前記外側接着剤層は、ウレタン結合、エステル結合、ウレア結合、アロファネート結合ビュレット結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を含む前項1または2に記載の成形用包装材。
【0014】
[4]前記ウレタン接着剤において、前記ポリエステルポリオールの水酸基のモル数に対する前記多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数の比率(当量比)が2~25である前項1~3のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0015】
[5]前項1~4のいずれか1項に記載の成形用包装材の成形体からなる蓄電デバイス用外装ケース。
【0016】
[6]蓄電デバイス本体部と、
前項5に記載の蓄電デバイス用外装ケースを少なくとも含む外装部材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装部材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【0017】
[7]外側層としてのポリブチレンテレフタレート層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む積層物であって、前記ポリブチレンテレフタレート層は、引張強度が、MD方向で100MPa~300MPaであり、TD方向で100MPa~300MPaであるポリブチレンテレフタレートフィルムからなり、前記熱融着性樹脂層と前記金属箔層とが、硬化型内側接着剤を介して接着され、前記ポリブチレンテレフタレート層と前記金属箔層とが、ポリエステルポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、多価アルコールと、を含む硬化型外側接着剤を介して接着された積層物を準備する工程と、
前記積層物を37℃~55℃の温度で加熱エージング処理を行うことによって前記硬化型内側接着剤および前記硬化型外側接着剤を硬化させるエージング処理工程と、を含み、
前記ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸成分を含み、
前記ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸を含有し、前記ジカルボン酸成分中の前記芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%~80モル%であることを特徴とする成形用包装材の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
[1]の発明では、外側層(基材層)としてポリブチレンテレフタレート層を使用すると共に、外側接着剤層として上記特定の接着剤を使用しているので、基材層として一般的に使用されているナイロン層の場合と比較して、シールバーの清掃頻度を顕著に低減できて生産性を向上することができ、耐電解液性に優れ、かつ成形後のデラミネーション(剥離)の発生を十分に抑制できる。さらに前記ジカルボン酸成分中の芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%~80モル%であるので、デラミネーションの発生をより十分に抑制できる。また、ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が70MPa~400MPaであるので、成形性向上に寄与できると共に、デラミネーションの発生をより一層防止することができる。さらに、ポリブチレンテレフタレート層の引張強度が、MD方向で100MPa~300MPaであり、TD方向で100MPa~300MPaであることによって、成形性をより向上させることができる。
【0019】
[2]の発明では、数平均分子量が8000~30000のポリエステルポリオールが用いられているから、外側接着剤層の接着強度をより増大させることができるし、成形性も向上させることができる。従って、成形深さのより深い成形を行っても、外側層と金属箔層の間のデラミネーション(剥離)をより十分に防止できる。
【0020】
[3]の発明では、外側接着剤層は、上記特定の結合を含むので、外側接着剤層の接着強度をより増大させることができるし、成形性も向上させることができる。従って、成形深さのより深い成形を行っても、外側層と金属箔層の間のデラミネーション(剥離)をより十分に防止できる。
【0021】
[4]の発明では、接着剤が十分に反応するので接着不足による外側層と金属箔層の間のデラミネーションをより十分に防止できる。
【0022】
[5]の発明では、良好状態にシールできると共に、デラミネーションの発生を十分に抑制できる蓄電デバイス用外装ケースを提供できる。
【0023】
[6]の発明では、良好状態にシールがなされると共に、デラミネーションの発生を十分に抑制できる外装ケースを用いて構成された蓄電デバイスを提供できる。
【0024】
[7]の発明(製造方法)によれば、シール不良を生じることなくヒートシールできると共に、シールバーの清掃頻度を顕著に低減できて生産性を向上することができ、かつ成形後のデラミネーション(剥離)の発生を十分に抑制できる成形用包装材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る成形用包装材の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る蓄電デバイスの一実施形態を示す断面図である。
図3図2の蓄電デバイスを構成する包装材(平面状のもの)、蓄電デバイス本体部及びケース(立体形状に成形された成形体)をヒートシールする前の分離した状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る成形用包装材1の一実施形態を図1に示す。この成形用包装材1は、リチウムイオン2次電池等の電池用包装材として用いられるものである。前記成形用包装材1は、例えば、深絞り成形、張り出し成形等の成形に供されて成形ケース10として使用さる(図3参照)。
【0027】
前記成形用包装材1は、金属箔層4の一方の面(上面)に外側接着剤層(第1接着剤層)5を介してポリブチレンテレフタレート層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面(下面)に内側接着剤層(第2接着剤層)6を介して熱融着性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成である(図1参照)。
【0028】
本発明において、前記外側層2は、包装材1として良好な成形性を確保する役割を主に担う部材である。本発明では、前記外側層2は、ポリブチレンテレフタレート層で形成されている。そして本発明では、前記ポリブチレンテレフタレート層を構成するポリブチレンテレフタレートフィルムとして、MD方向の引張強度が100MPa~300MPaであり、TD方向の引張強度が100MPa~300MPaであるポリブチレンテレフタレートフィルムを用いる。このような特性を備えたポリブチレンテレフタレート層(外側層)2を形成することによって、成形性を向上させることができる。中でも、前記ポリブチレンテレフタレート層を構成するポリブチレンテレフタレートフィルムとしては、MD方向の引張強度が100MPa~200MPaであり、TD方向の引張強度が100MPa~200MPaであるポリブチレンテレフタレートフィルムを用いるのが好ましい。なお、前記「MD方向」の語は、ロール状のフィルムにおける巻方向(流れ方向;Machine Direction)を意味し、前記「TD方向」の語は、ロール状のフィルムにおける幅方向(前記流れ方向に対して垂直な方向;Transverse Direction)を意味する。
【0029】
前記ポリブチレンテレフタレート層(外側層)2の厚さは、10μm~80μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで包装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。中でも、前記ポリブチレンテレフタレート層2の厚さは、15μm~50μmであるのがより好ましい。
【0030】
本発明において、前記外側接着剤層(第1接着剤層)5は、ポリエステルポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、多価アルコールと、を含むウレタン接着剤の硬化層で形成される。
【0031】
前記ポリエステルポリオールは、例えば、アルコールおよびカルボン酸を配合して縮重合反応を行うことによって得られる。即ち、前記ポリエステルポリオールは、アルコール成分とカルボン酸成分の縮重合体である。例えば、多価アルコールおよびジカルボン酸を配合して縮重合反応を210℃で20時間行うことによって、前記ポリエステルポリオールを製造できる。前記多価アルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。前記カルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸などが挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等が挙げられ、前記芳香族ジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸等が挙げられる。
【0032】
前記ポリエステルポリオールは、前記ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸を含有しているのが好ましい。前記ジカルボン酸成分における芳香族ジカルボン酸の含有率は40モル%~80モル%であるのが好ましい。40モル%以上であることで、成形深さの深い成形を行った場合でも、外側層2と金属箔層4の間のデラミネーション(剥離)をより十分に防止できると共に、80モル%以下であることで、外側接着剤(第1接着剤)5の密着力を十分に確保することができる。中でも、前記ジカルボン酸成分における芳香族ジカルボン酸の含有率は50モル%~70モル%であるのがより好ましい。
【0033】
前記ポリエステルポリオールとしては、特に限定されるものではないものの、数平均分子量が8000~30000の範囲のポリエステルポリオールを用いるのが好ましい。数平均分子量が8000以上であることで外側接着剤層の接着強度をより増大させることができると共に、数平均分子量が30000以下であることで成形性も向上させることができる。中でも、前記ポリエステルポリオールの数平均分子量は、10000~26000の範囲であるのが特に好ましい。
【0034】
前記多官能イソシアネート化合物(硬化剤)としては、脂肪族系、脂環族系、芳香族系の各種多官能イソシアネート化合物を使用できる。前記脂肪族系多官能イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられ、前記脂環族系多官能イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられ、前記芳香族系多官能イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。これら多官能イソシアネート化合物の変性体であってもよく、例えば、イソシアヌレート化、カルボジイミド化、ポリメリック化等の多量化反応による多官能イソシアネート変性体を例示できる。
【0035】
前記多価アルコールは、1分子中にアルコール性水酸基を2個以上有するアルコールである。前記多価アルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールプロパン(TMP)、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、エチレングリコール、グリセリン、カルビトール、ソルビトール等が挙げられる。前記アルコール性水酸基は、前記イソシアネート基と反応し得る官能基である。
【0036】
前記外側接着剤層5において、前記ポリエステルポリオールの水酸基(OH)のモル数に対する前記多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基(NCO)のモル数の比率(当量比[NCO]/[OH])は、2~25の範囲に設定されるのが好ましい。中でも、前記当量比[NCO]/[OH]は5~20の範囲に設定されるのが特に好ましい。
【0037】
前記外側接着剤層(第1接着剤層)5の厚さ(乾燥後の厚さ)は、1μm~6μmに設定されるのが好ましい。
【0038】
前記外側接着剤層5を構成するウレタン接着剤の硬化膜のヤング率は70MPa~400MPaの範囲にある必要がある。ヤング率が70MPa以上であることで、外側接着剤層5の耐熱性を向上させることができるし、高温環境下でのラミネート強度も十分に向上させることができると共に、ヤング率が400MPa以下であることで、ウレタン接着剤硬化膜の密着力を十分に向上させることができて成形深さの深い成形を行っても外側層2と金属箔層4の間でデラミネーション(剥離)が発生するのを十分に防止できる。中でも、前記外側接着剤層5を構成するウレタン接着剤硬化膜のヤング率は140MPa~300MPaの範囲であるのが特に好ましい。なお、前記ヤング率は、JIS K7127-1999に準拠して測定されるヤング率である。
【0039】
本発明において、前記金属箔層4は、成形用包装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔、鉄箔等が挙げられ、アルミニウム箔が一般的に用いられる。前記金属箔層4の厚さは、5μm~150μmであるのが好ましい。5μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、150μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。中でも、前記金属箔層4の厚さは、20μm~100μmであるのがより好ましい。
【0040】
前記金属箔層4は、少なくとも内側の面(内側接着剤層6側の面)に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0041】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2が好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2が好ましい。
【0042】
前記熱融着性樹脂層(内側層;シーラント層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させるとともに、成形用包装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0043】
前記熱融着性樹脂層3を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレンアクリル酸エチル(EEA)、エチレンアクリル酸メチル(EAA)、エチレンメタクリル酸メチル樹脂(EMMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。
【0044】
前記熱融着性樹脂層3の厚さは、20μm~150μmに設定されるのが好ましい。20μm以上とすることで十分なヒートシール強度を確保できるとともに、150μm以下に設定することで薄膜化、軽量化に資する。中でも、前記熱融着性樹脂層3の厚さは、30μm~100μmに設定されるのがより好ましい。前記熱融着性樹脂層13は、熱融着性樹脂未延伸フィルム層で形成されているのが好ましく、前記熱融着性樹脂層13は、単層であっても良いし、複層であっても良い。
【0045】
前記内側接着剤層(第2接着剤層)6としては、特に限定されるものではないが、例えば、硬化型接着剤を用いるのが好ましい。前記硬化型接着剤としては、例えば、熱硬化型アクリル接着剤、熱硬化型酸変性ポリプロピレン接着剤、熱硬化型ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。中でも、熱硬化型アクリル接着剤を用いるのが好ましく、この場合には硬化促進のための加熱エージング処理温度を低くできる(例えば40℃)利点があり、このように低くできることにより加熱エージング処理による熱融着性樹脂層3の白粉発生を十分に防止できるという有利な効果が得られる。前記内側接着剤層6の厚さ(乾燥後の厚さ)は、1μm~4μmに設定されるのが好ましい。
【0046】
本発明の成形用包装材1を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、外装ケース(電池ケース等)10を得ることができる(図2、3参照)。
【0047】
本発明の成形用包装材1を用いて構成された蓄電デバイス30の一実施形態を図2に示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。本実施形態では、図2、3に示すように、包装材1を成形して得られた外装ケース10と、成形に供されることなく平面状の包装材1とにより外装部材15が構成されている。しかして、本発明の包装材1を成形して得られた外装ケース10の収容凹部内に、略直方体形状の蓄電デバイス本体部(電気化学素子等)31が収容され、該蓄電デバイス本体部31の上に、前記平面状の包装材1がその内側層3側を内方(下側)にして配置され、該平面状外装材1の内側層3(最内層7)の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29の内側層3(最内層7)とがヒートシールによりシール接合されて封止されることによって、本発明の蓄電デバイス30が構成されている(図2、3参照)。なお、前記外装ケース10の収容凹部の内側の表面は、内側層3(最内層7)になっており、収容凹部の外面が基材層(外側層)2になっている(図3参照)。
【0048】
図2において、39は、前記包装材1の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29とが接合(溶着)されたヒートシール部である。なお、前記蓄電デバイス30において、蓄電デバイス本体部31に接続されたタブリードの先端部が、外装部材15の外部に導出されているが、図示は省略している。
【0049】
前記蓄電デバイス本体部31としては、特に限定されるものではないが、例えば、電池本体部、キャパシタ本体部、コンデンサ本体部等が挙げられる。
【0050】
前記ヒートシール部39の幅は、0.5mm以上に設定するのが好ましい。0.5mm以上とすることで封止を確実に行うことができる。中でも、前記ヒートシール部39の幅は、3mm~15mmに設定するのが好ましい。
【0051】
なお、上記実施形態では、外装部材15が、包装材1を成形して得られた外装ケース10と、平面状の包装材1と、からなる構成であったが(図2、3参照)、特にこのような組み合わせに限定されるものではなく、例えば、一対の外装ケース10からなる構成であってもよい。
【0052】
次に、本発明に係る、成形用包装材の製造方法について説明する。
【0053】
まず、引張強度が、MD方向で100MPa~300MPaであり、TD方向で100MPa~300MPaであるポリブチレンテレフタレート(層)2と、熱融着性樹脂層(内側層)3と、これら両層間に配置された金属箔層4と、を含む積層物であって、前記熱融着性樹脂層3と前記金属箔層4とが、硬化型内側接着剤を介して接着され、前記ポリブチレンテレフタレート層2と前記金属箔層4とが、ポリエステルポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、多価アルコールと、を含む熱硬化型外側接着剤を介して接着された積層物を準備する(準備工程)。
【0054】
前記ポリエステルポリオールとして、前記多官能イソシアネート化合物として、前記多価アルコールとして、それぞれどのような物質を使用するか等については上述したとおりである。
【0055】
また、前記硬化型内側接着剤としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化型アクリル接着剤、熱硬化型酸変性ポリプロピレン接着剤、熱硬化型ポリウレタン系接着剤等が挙げられ、中でも、熱硬化型アクリル接着剤を用いるのが好ましい。
【0056】
次に、前記積層物における前記硬化型内側接着剤および前記硬化型外側接着剤を硬化させるのであるが、好ましくは、前記積層物を37℃~55℃の範囲の温度で加熱処理を行うことによって前記硬化型内側接着剤および前記硬化型外側接着剤を硬化させる(エージング処理工程)。前記エージング処理工程を経て、本発明の成形用包装材1を得ることができる。前記加熱処理は38℃~52℃で行うのが特に好ましい。
【0057】
前記加熱処理(加熱エージング処理)の時間は、特に限定されるものではないが、硬化型内側接着剤として熱硬化型アクリル接着剤を用いる場合には前記加熱処理は3日間~15日間行うのが好ましく、硬化型内側接着剤として熱硬化型酸変性ポリプロピレン接着剤を用いる場合には前記加熱処理は3日間~15日間行うのが好ましく、硬化型内側接着剤として熱硬化型ポリウレタン系接着剤を用いる場合には前記加熱処理は3日間~15日間行うのが好ましい。
【実施例
【0058】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
厚さ35μmのアルミニウム箔(JIS H4160に規定されるA8079のアルミニウム箔)4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2であった。
【0060】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、数平均分子量15000のポリエステルポリオール100質量部、トリレンジイソシアネート(TDI)25質量部、トリメチロールプロパン(TMP)10質量部を含有する熱硬化型外側接着剤を外側接着剤(層)5として乾燥後の質量が3.5g/m2になるように塗布した。
【0061】
上記ポリエステルポリオールは、アジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)40モル部およびイソフタル酸(芳香族ジカルボン酸)60モル部からなるジカルボン酸成分と、ネオペンチルグリコール30モル部、エチレングリコール30モル部および1,6-ヘキサンジオール40モル部からなる多価アルコール成分とを混合して210℃で20時間縮重合反応させて得られたポリエステルポリオールである。従って、前記ジカルボン酸成分中の芳香族ジカルボン酸の含有率は、60モル%である。
【0062】
また、上記熱硬化型外側接着剤において、ポリエステルポリオールの水酸基(OH)のモル数に対するトリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアネート基(NCO)のモル数の比率(当量比[NCO]/[OH])は、10であった。
【0063】
前記アルミニウム箔4の一方の面の外側接着剤塗布面に、MD方向の引張強度が190MPa、TD方向の引張強度が180MPaである2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)2を重ね合わせて貼り合わせた。
【0064】
次に、前記アルミニウム箔4の他方の面に、熱硬化型アクリル接着剤からなる内側接着剤を乾燥後の質量が2.5g/m2になるように塗布した後、該内側接着剤塗布面に、厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム3を貼り合わせることによって、積層物を得た。
【0065】
前記積層物を40℃環境下に9日間静置して加熱エージング処理を行うことにより、熱硬化型外側接着剤及び熱硬化型内側接着剤を同時に硬化させて、外側接着剤層5および内側接着剤層6を形成せしめて、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0066】
<実施例2>
ジカルボン酸成分として、アジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)55モル部およびイソフタル酸(芳香族ジカルボン酸)45モル部からなるジカルボン酸成分を用いて得られた数平均分子量12000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0067】
<実施例3>
ジカルボン酸成分として、アジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)25モル部およびイソフタル酸(芳香族ジカルボン酸)75モル部からなるジカルボン酸成分を用いて得られた数平均分子量24000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0068】
参考例4
数平均分子量が9000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例2と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0069】
参考例5
数平均分子量が29000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例3と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0070】
参考例6
ジカルボン酸成分として、アジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)50モル部およびイソフタル酸(芳香族ジカルボン酸)50モル部からなるジカルボン酸成分を用いて得られた数平均分子量5000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0071】
<実施例7>
ジカルボン酸成分として、アジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)45モル部およびイソフタル酸(芳香族ジカルボン酸)55モル部からなるジカルボン酸成分を用いて得られた数平均分子量8000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0072】
<実施例8>
ジカルボン酸成分として、アジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)30モル部およびイソフタル酸(芳香族ジカルボン酸)70モル部からなるジカルボン酸成分を用いて得られた数平均分子量28000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0073】
参考例9
ジカルボン酸成分として、アジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)25モル部およびイソフ
タル酸(芳香族ジカルボン酸)75モル部からなるジカルボン酸成分を用いて得られた数
平均分子量32000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例
1と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0074】
<実施例10>
当量比[NCO]/[OH]を5に変更した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0075】
<実施例11>
当量比[NCO]/[OH]を20に変更した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0076】
<実施例12>
トリメチロールプロパン(TMP)10質量部に代えて、エチレングリコール(EG)10質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0077】
<実施例13>
トリメチロールプロパン(TMP)10質量部に代えて、グリセリン10質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0078】
<実施例14>
トリレンジイソシアネート(TDI)25質量部に代えて、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)25質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の成形用包装材1を得た。
【0079】
<比較例1>
MD方向の引張強度が190MPa、TD方向の引張強度が180MPaである2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムに代えて、MD方向の引張強度が250MPa、TD方向の引張強度が290MPaである2軸延伸ナイロンフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0080】
<比較例2>
MD方向の引張強度が190MPa、TD方向の引張強度が180MPaである2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムに代えて、MD方向の引張強度が240MPa、TD方向の引張強度が240MPaである2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0081】
<比較例3>
ジカルボン酸成分として、アジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)70モル部およびイソフタル酸(芳香族ジカルボン酸)30モル部からなるジカルボン酸成分を用いて得られた数平均分子量9000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0082】
<比較例4>
ジカルボン酸成分として、アジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)10モル部およびイソフタル酸(芳香族ジカルボン酸)90モル部からなるジカルボン酸成分を用いて得られた数平均分子量28000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0083】
<比較例5>
ジカルボン酸成分として、アジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)50モル部およびイソフタル酸(芳香族ジカルボン酸)50モル部からなるジカルボン酸成分を用いて得られた数平均分子量10000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0084】
<比較例6>
ジカルボン酸成分として、アジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)30モル部およびイソフタル酸(芳香族ジカルボン酸)70モル部からなるジカルボン酸成分を用いて得られた数平均分子量20000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0085】
<比較例7>
外側接着剤として、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する熱硬化型オレフィン外側接着剤を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0086】
<比較例8>
外側接着剤として、メタアクリレート系樹脂を含有する熱硬化型アクリル外側接着剤を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0087】
<比較例9>
外側接着剤として、ビスフェノールA型エポキシ系樹脂を含有する熱硬化型エポキシ外側接着剤を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0088】
<比較例10>
MD方向の引張強度が190MPa、TD方向の引張強度が180MPaである2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムに代えて、MD方向の引張強度が70MPa、TD方向の引張強度が70MPaである2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0089】
<比較例11>
MD方向の引張強度が190MPa、TD方向の引張強度が180MPaである2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムに代えて、MD方向の引張強度が340MPa、TD方向の引張強度が340MPaである2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0090】
なお、表1中に示した「外側接着剤の硬化膜のヤング率」および「ポリブチレンテレフタレート層の引張強度」は、以下の測定法により測定したものである。
【0091】
<ヤング率測定法>
実施例、比較例で使用した各外側接着剤を熱硬化させた硬化膜のヤング率(MPa)をJIS K7127-1999に準拠して測定した。具体的には、各外側接着剤をガラス板の上に50μmの厚さで塗布した後、40℃で11日間加熱エージング処理を行って、外側接着剤を熱硬化させて厚さ46μmの硬化物を得た。前記硬化物をガラス板から剥がした後、幅15mm×長さ100mmの大きさに切り出して試験片を作製し、島津製作所製ストログラフ(AGS-5kNX)を使用して引張速度200mm/分で前記試験片の引張試験を行ってヤング率(MPa)を測定した。
【0092】
<ポリブチレンテレフタレート層の引張強度の測定法>
実施例、比較例で使用したポリブチレンテレフタレート樹脂(外側層形成用)を押出成形により厚さ25μmのフィルムを得た後、このポリブチレンテレフタレートフィルムをTD方向、MD方向のそれぞれの方向に沿って長さ150mm×幅10mmの大きさに切り出した各試験片について、JIS K7127-1999に準拠してチャック間隔100mm、試験速度200mm/分で引張試験を行って引張強度(MPa)を求めた。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
上記のようにして得られた各成形用包装材について、下記評価法に基づいて評価を行った。
【0096】
<成形性評価法>
株式会社アマダ製の深絞り成形具を用いて成形用包装材に対して縦55mm×横35mm×各深さの略直方体形状(1つの面が開放された略直方体形状)に深絞り成形を行い、即ち成形深さを変えて深絞り成形を行い、得られた成形体におけるコーナー部におけるピンホール及び割れの有無を調べ、このようなピンホール及び割れが発生しない「最大成形深さ(mm)」を調べ、下記判定基準に基づいて評価した。なお、ピンホールや割れの有無は、暗室にて光透過法で調べた。
(判定基準)
「○」…ピンホール及び割れが発生しない最大成形深さが5mm以上である
「△」…ピンホール及び割れが発生しない最大成形深さが3.5mm以上5mm未満である
「×」…ピンホール及び割れが発生しない最大成形深さが3.5mm未満である。
【0097】
<シール後の外観特性評価法>(成形深さの深い成形を行った場合の外観のデラミネーション発生の有無の評価)
成形深さの深い成形として、上記深絞り成形具を用いて成形用包装材に対して縦55mm×横35mm×5mmの略直方体形状(1つの面が開放された略直方体形状)に深絞り成形を行った。この時、耐熱性樹脂層2が成形体の外側になるように成形を行った。各実施例、各比較例毎にそれぞれ2個の成形体を作製し、2個の成形体10のフランジ部(封止用周縁部;図2参照)29同士を接触させて重ね合わせて170℃×6秒間ヒートシールを行った後、目視観察によりヒートシール部39におけるデラミネーション(剥離)発生の有無および外観の浮きの有無を調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「○」…デラミネーション(剥離)が認められず、且つ外観の浮きも認められなかった(合格)
「△」…僅かなデラミネーション(剥離)が稀に発生することがあるが、実質的にはデラミネーション(剥離)が無く、且つ外観の浮きもなかった(合格)
「×」…デラミネーション(剥離)が発生しており、外観の浮きもあった(不合格)。
【0098】
<耐熱性評価法>
成形用包装材を幅15mm×長さ100mmの短冊形にカットして試験片とした。この試験片を2枚作成し、これら2枚の試験片を内側層(熱融着性樹脂層)3同士が接触するように重ね合わせてその全面(全領域)にヒートシールを行って熱封止部(ヒートシール)を形成した。前記ヒートシールは、テスター産業株式会社製のヒートシール装置(TP-701-A)を用いて、シール圧0.2MPa(ゲージ表示圧)、225℃、2秒間の片面加熱により行った。ヒートシール後の熱封止部の表面を観察し、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「○」…変化なし(合格)
「△」…微細なしわが発生する程度である(合格)
「×」…表面が白化または溶融部分が発生した(不合格)。
【0099】
表から明らかなように、本発明の実施例1~14の成形用包装材は、成形深さの深い成形を行ってもピンホールやクラックが発生せず優れた成形性を備えている上に、成形深さの深い成形を行ってもデラミネーション(剥離)を抑制できるし、耐熱性にも優れていた。
【0100】
これに対し、本発明の特許請求の範囲の規定範囲を逸脱した比較例1~11では、少なくともいずれかの評価が「×」(劣っている)の評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る成形用包装材は、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型のリチウムイオンポリマー二次電池等の電池の包装材として好適に用いられ、これ以外にも、食品の包装材、医薬品の包装材として好適であるが、特にこれらの用途に限定されるものではない。中でも、電池用包装材として特に好適である。
【0102】
本発明の蓄電デバイス用外装ケースは、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型のリチウムイオンポリマー二次電池等の電池の外装ケースとして好適に用いられるが、特にこれらの用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0103】
1…成形用包装材
2…ポリブチレンテレフタレート層(外側層)
3…熱融着性樹脂層(内側層)
4…金属箔層
5…外側接着剤層
6…内側接着剤層
10…外装ケース
15…外装部材
30…蓄電デバイス
31…蓄電デバイス本体部
図1
図2
図3