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特許7033435アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、果実感とボディ感の増強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、果実感とボディ感の増強方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20220303BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C12G3/04
C12G3/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017214206
(22)【出願日】2017-11-06
(65)【公開番号】P2019083729
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 淳哉
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/095573(WO,A1)
【文献】特表2017-507661(JP,A)
【文献】特開2006-174753(JP,A)
【文献】特開2006-174754(JP,A)
【文献】特開2016-152777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 3/04
C12G 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーバーを含有するアルコール飲料であって、
酢酸の含有量が0.0~0.2w/v%であり、
クエン酸の含有量が0.4~0.55w/v%であるアルコール飲料。
【請求項2】
無果汁である請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
容器詰め飲料である請求項1又は請求項2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
前記フレーバーが果実フレーバーである請求項1から請求項のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
前記フレーバーが、柑橘フレーバー、ぶどうフレーバー、りんごフレーバーの少なくとも1種である請求項1から請求項のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
フレーバーを含有するアルコール飲料の製造方法であって、
酢酸の含有量を0.0~0.2w/v%とし、クエン酸の含有量を0.4~0.55w/v%とする工程を含むアルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
フレーバーを含有するアルコール飲料の果実感とボディ感の増強方法であって、
前記アルコール飲料の酢酸の含有量を0.0~0.2w/v%し、クエン酸の含有量を0.4~0.55w/v%とする果実感とボディ感の増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、果実感とボディ感の増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
果実が奏する香味は、昔から飲食品の分野において人気を博していることから、飲食品に対して果実感を付与するという技術に関し、これまでにも様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ヘスペリジン配糖体またはヘスペリジン配糖体とヘスペリジンとの混合物を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の風味の改善方法が記載されている。
また、特許文献2には、シトロプテンを有効成分として含有することを特徴とする呈味付与剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-318379号公報
【文献】特開2011-55797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、フレーバーによって香味を調製したアルコール飲料について検討したところ、果汁を多く含有させた飲料と比較し、果実感やボディ感が乏しくなることを確認した。
また、本発明者は、特許文献1、2に記載されている物質とは異なる物質であって、よりアルコール飲料の香味に適した物質によって、アルコール飲料の果実感やボディ感を増強させることが必要であると考えた。
【0006】
そこで、本発明は、果実感とボディ感が増強されたアルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、果実感とボディ感の増強方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、フレーバーによって香味を調製したアルコール飲料の果実感やボディ感が乏しくなるという問題を解消するため、様々な物質に焦点をあてて数多くの実験を行った。その結果、酢酸に着目し、これを含有させることにより、前記した課題を解決できることを見出し、本発明を創出した。
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)フレーバーを含有するアルコール飲料であって、酢酸の含有量が0.0~0.2w/v%であり、クエン酸の含有量が0.4~0.55w/v%であるアルコール飲料。
(2)無果汁である前記1に記載のアルコール飲料。
(3)容器詰め飲料である前記1又は前記2に記載のアルコール飲料。
)前記フレーバーが果実フレーバーである前記1から前記のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
)前記フレーバーが、柑橘フレーバー、ぶどうフレーバー、りんごフレーバーの少なくとも1種である前記1から前記のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
)フレーバーを含有するアルコール飲料の製造方法であって、酢酸の含有量を0.0~0.2w/v%とし、クエン酸の含有量を0.4~0.55w/v%とする工程を含むアルコール飲料の製造方法。
)フレーバーを含有するアルコール飲料の果実感とボディ感の増強方法であって、前記アルコール飲料の酢酸の含有量を0.0~0.2w/v%し、クエン酸の含有量を0.4~0.55w/v%とする果実感とボディ感の増強方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るアルコール飲料は、酢酸の含有量が所定範囲であることから、果実感とボディ感が増強されている。
本発明に係るアルコール飲料の製造方法は、酢酸の含有量を所定範囲とする工程を含むことから、果実感とボディ感とが増強されたアルコール飲料を製造することができる。
本発明に係る果実感とボディ感の増強方法は、アルコール飲料の酢酸の含有量を所定範囲とすることから、アルコール飲料の果実感とボディ感を増強することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るアルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、果実感とボディ感の増強方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0011】
[アルコール飲料]
本実施形態に係るアルコール飲料は、フレーバーを含有するとともに、酢酸を含有する飲料である。
ここで、アルコール飲料とは、アルコールを含有する飲料であり、特定の種類の飲料に限定されないものの、酢酸が奏する酸味を果実様または野菜様の香味として生かすことのできる果実風味アルコール飲料または野菜風味アルコール飲料であるのが好ましく、果実風味アルコール飲料であるのが特に好ましい。なお、果実風味アルコール飲料とは、果実の風味(香味)を飲用者に与える飲料であり、野菜風味アルコール飲料とは、野菜の風味(香味)を飲用者に与える飲料であり、例えば、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料、サワーテイスト飲料等が挙げられる。
【0012】
(フレーバー)
フレーバーとは、様々な香味を飲料に付加する香料であり、果実フレーバーまたは野菜フレーバーが好ましく、果実フレーバーがより好ましい。
「果実フレーバー」とは、果実様の香味を飲料に付加する香料であり、例えば、柑橘フレーバー(レモン、ライム、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、イヨカン、ウンシュウミカン、カボス、キシュウミカン、キノット、コウジ、サンボウカン、シトロン、ジャバラ、スダチ、ダイダイ、タチバナ、タンゴール、ナツミカン、ハッサク、ハナユズ、ヒュウガナツ、ヒラミレモン(シークヮーサー)、ブンタン、ポンカン(マンダリンオレンジ)等の柑橘類のフレーバー)、ぶどうフレーバー、りんごフレーバー、ピーチフレーバー、マンゴーフレーバー等が挙げられる。そして、果実フレーバーとしては、前記したフレーバーの中でも、柑橘フレーバー、ぶどうフレーバー、りんごフレーバーの少なくとも1種が好ましく、酢酸の香味が馴染みやすい柑橘フレーバーがより好ましい。
また、「野菜フレーバー」とは、野菜様の香味を飲料に付加する香料であり、例えば、トマト、ニンジン、ピーマン、サツマイモ、ショウガ等のフレーバーが挙げられる。
【0013】
フレーバーの含有量は、700ppm(700×10-4w/v%)以上であるのが好ましく、800ppm以上であるのがより好ましく、1000ppm以上であるのがさらに好ましい。フレーバーの含有量が所定値以上であることにより、果実感とボディ感をより増強させることができるとともに、飲みやすさも向上させることができる。
【0014】
フレーバーの含有量は、1800ppm以下であるのが好ましく、1500ppm以下であるのがより好ましく、1300ppm以下であるのがさらに好ましい。フレーバーの含有量が所定値以下であることにより、果実感とボディ感をより増強させることができるとともに、飲みやすさも確保することができる。
【0015】
(酢酸)
酢酸は、カルボン酸の一種であり、エタン酸(ethanoic acid)とも呼ばれる。
そして、酢酸は、前記したフレーバーによって香味が調製されたアルコール飲料の果実感とボディ感を増強させることができる。
【0016】
酢酸の含有量は、0.025w/v%以上であるのが好ましく、0.04w/v%以上であるのがより好ましく、0.05w/v%以上であるのがさらに好ましい。酢酸の含有量が所定値以上であることにより、アルコール飲料の果実感とボディ感を増強させることができる。
【0017】
酢酸の含有量は、0.2w/v%以下であるのが好ましく、0.15w/v%以下であるのがより好ましく、0.1w/v%以下であるのがさらに好ましい。酢酸の含有量が所定値以下であることにより、アルコール飲料の果実感とボディ感が増強された状態とすることができる。
【0018】
アルコール飲料の酢酸の含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定することができる。
【0019】
(無果汁又は低果汁)
本実施形態に係るアルコール飲料は、前記したフレーバーを含有し、このフレーバー(特に、果実フレーバー)によって飲料の香味のタイプが果実様となるように調製されている場合は、果汁は含有しなくともよい。そして、果実感とボディ感の増強という効果をより明確に発揮させるべく、本実施形態に係るアルコール飲料は、無果汁又は低果汁であるのが好ましい。
【0020】
ここで「無果汁」とは、果汁を全く含有しないことを示し、「低果汁」とは、果汁の含有量が果汁率換算で10.0%未満であることを示す。
果汁の含有量(果汁率換算)は、「含有量(果汁率換算)%(詳細には、w/w%)」=「果汁配合量(g)」×「濃縮倍率」/100g×100により算出することができる。なお、「濃縮倍率」(ストレート果汁を100%としたときの果汁の相対的濃縮倍率)を算出するにあたり、JAS規格に準ずるものとし、各果実に特有の糖用屈折指示度の基準(Bx)又は酸度の基準(%)に基づいて換算できる。
【0021】
(クエン酸)
本実施形態に係るアルコール飲料は、さらにクエン酸を含有してもよい。
クエン酸は、ヒドロキシ酸の一種であり、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸(2-Hydroxy-1,2,3-propanetricarboxylic acid)とも呼ばれる。
【0022】
クエン酸の含有量は、0.15w/v%以上であってもよく、0.2w/v%以上であってもよく、0.4w/v%以上であってもよい。また、クエン酸の含有量は、0.55w/v%以下であってもよく、0.5w/v%以下であってもよい。
【0023】
アルコール飲料のクエン酸の含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定することができる。
【0024】
(酢酸の含有量とクエン酸の含有量との比率)
酢酸の含有量とクエン酸の含有量との比率については、特に限定されないものの、アルコール飲料の酢酸の含有量をAw/v%とし、クエン酸の含有量をBw/v%とした場合、B/Aは、3以上であってもよく、4以上であってもよく、8以上であってもよい。また、B/Aは、20以下であってもよく、16以下であってもよい。
【0025】
(アルコール)
本実施形態に係るアルコール飲料は、アルコールを含有する。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の所望の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、蒸留酒又は醸造酒であることが好ましい。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。醸造酒としては、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、甘味果実酒などを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0026】
(アルコール度数)
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、6v/v%以上であるのが好ましく、7v/v%以上であるのがより好ましく、8v/v%以上であるのがさらに好ましく、9v/v%以上であるのが特に好ましい。アルコール度数が所定値以上となる高アルコール飲料であることにより、アルコール飲料のボディ感をより増強させることができる。
また、本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、12v/v%以下であってもよく、10v/v%未満であってもよい。
そして、アルコール度数は、前記したアルコールの含有量によって調節することができる。
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
【0027】
(発泡性)
本実施形態に係るアルコール飲料は、非発泡性のものでも、発泡性のものでもよい。ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2未満であることをいう。
【0028】
(その他)
本実施形態に係るアルコール飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
【0029】
そして、前記したフレーバー、酢酸、クエン酸、アルコール、添加剤は、一般に市販されているものを使用することができる。
【0030】
(容器詰めアルコール飲料)
本実施形態に係るアルコール飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にアルコール飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料は、酢酸の含有量が所定範囲であることから、果実感とボディ感が増強されている。また、本実施形態に係るアルコール飲料は、飲みやすさが向上している。
【0032】
[アルコール飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
【0033】
混合工程では、混合タンクに、水、フレーバー、酢酸、クエン酸、飲用アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、酢酸の含有量、フレーバーの含有量、クエン酸の含有量等が前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0034】
そして、後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
【0035】
なお、混合工程及び後処理工程において行われる各処理は、RTD飲料などを製造するために一般的に用いられている設備によって行うことができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、酢酸の含有量を所定範囲とする工程を含むことから、果実感とボディ感とが増強されたアルコール飲料を製造することができる。また、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、飲みやすさに優れるアルコール飲料を製造することができる。
【0037】
[果実感とボディ感の増強方法]
次に、本実施形態に係る果実感とボディ感の増強方法を説明する。
本実施形態に係る果実感とボディ感の増強方法は、フレーバーを含有するアルコール飲料について、酢酸の含有量を所定範囲とする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「アルコール飲料」において説明した値と同じである。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る果実感とボディ感の増強方法は、アルコール飲料の酢酸の含有量を所定範囲とすることから、アルコール飲料の果実感とボディ感を増強することができる。また、本実施形態に係る果実感とボディ感の増強方法は、アルコール飲料の飲みやすさを向上させることができる。
【実施例
【0039】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0040】
[サンプルの準備]
表に示す量となるように、クエン酸、酢酸、飲用アルコール、レモンフレーバー、りんごフレーバー、ぶどうフレーバー、炭酸水を混合してサンプルを準備した。
なお、サンプルの20℃におけるガス圧は約2.0kg/cm2であった。
【0041】
[試験内容]
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル6名が下記評価基準に則って「果実感」、「ボディ感」、「飲みやすさ」について、1~5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0042】
(果実感:評価基準)
5点:果実感が非常に強い。
4点:果実感が強い。
3点:果実感がある。
2点:果実感が弱い。
1点:果実感が非常に弱い。
【0043】
(ボディ感:評価基準)
5点:ボディ感が非常に強い。
4点:ボディ感が強い。
3点:ボディ感がある。
2点:ボディ感が弱い。
1点:ボディ感が非常に弱い。
なお、「ボディ感」とは、味の厚みである。
【0044】
(飲みやすさ:評価基準)
5点:アルコール飲料として、香味のバランスがとれており、非常に好適であって、非常に飲みやすい。
4点:アルコール飲料として、香味のバランスがとれており、好適であって、飲みやすい。
3点:アルコール飲料として、香味のバランスがとれているものの、好適とも不適ともいえず、飲みやすさも普通である。
2点:アルコール飲料として、香味のバランスがとれておらず、不適であって、飲みにくい。
1点:アルコール飲料として、香味のバランスがとれておらず、全く不適であって、非常に飲みにくい。
【0045】
表1、2、3に、各サンプルの配合を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
(結果の検討)
サンプル1-1~1-5の結果から、酢酸の含有量が所定値以上であると、果実感が増強されるとともに、ボディ感も増強されることが確認できた。また、酢酸の含有量が所定値以下であると、果実感の増強の効果とボディ感の増強の効果もしっかりと発揮されることが確認できた。
【0050】
サンプル2-1~2-5の結果から、クエン酸と酢酸とを含有するアルコール飲料にフレーバー(柑橘フレーバーであるレモンフレーバー)が所定範囲の含有量で添加されていると、果実感とボディ感の増強の効果が得られるとともに、飲みやすさの向上という効果も得られることが確認できた。
【0051】
サンプル3-1~3-3の結果から、フレーバーとしてりんごフレーバーを用いた場合であってもぶどうフレーバーを用いた場合であっても、果実感とボディ感の増強の効果が得られるとともに、飲みやすさの向上という効果も得られることが確認できた。