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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 29/02 20060101AFI20220303BHJP
   A01F 12/40 20060101ALI20220303BHJP
   A01F 29/09 20100101ALI20220303BHJP
【FI】
A01F29/02 A
A01F12/40 302Z
A01F29/09 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018180569
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020048475
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乙倉 進
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼波
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-189(JP,A)
【文献】特開平9-187152(JP,A)
【文献】実開昭52-70970(JP,U)
【文献】実公昭49-1511(JP,Y1)
【文献】実公昭53-44791(JP,Y2)
【文献】特開平10-295170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0007537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/40
A01F 29/00 - 29/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置の後方下部で排稈を処理する排稈処理装置を備え、
前記排稈処理装置は、駆動源からの回転動力が伝達される駆動軸の軸線方向に間隔を設けて螺旋状に配置された複数の切断刃と、前記駆動軸と平行に配置されて自由回転する自由回転軸の軸線方向に間隔を設けて配置された複数の円板刃と、を有し、交互に配列された前記切断刃と前記円板刃との間で排稈を切断する、コンバイン。
【請求項2】
前記切断刃よりも下方且つ前記自由回転軸よりも上方に配置される板状のフレームをさらに備え、
前記円板刃の一部は、前記フレームに設けられたスリットから突出している、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記切断刃の回転軌跡の前端が、前記円板刃の前端よりも前方に位置する、請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記自由回転軸は多角形の断面形状を有し、前記円板刃は前記自由回転軸に挿通される多角形の挿通孔を有している、請求項1~3の何れかに記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀装置の後方下部に排藁切断装置を設けたコンバインにおいて、円板刃を左右に並べて横架軸支した一対の回転刃を互いの速度差で排藁を剪断する状態で対向配備したコンバインが開示されている。
【0003】
しかしながら、円板刃において排稈(排藁)に作用するのは、主としてその最外周縁であり、送り作用が小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-115841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排稈の送り作用を向上させて切断処理能力を高めた排稈処理装置を備えるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンバインは、脱穀装置の後方下部で排稈を処理する排稈処理装置を備え、
前記排稈処理装置は、駆動源からの回転動力が伝達される駆動軸の軸線方向に間隔を設けて螺旋状に配置された複数の切断刃と、前記駆動軸と平行に配置されて自由回転する自由回転軸の軸線方向に間隔を設けて配置された複数の円板刃と、を有し、交互に配列された前記切断刃と前記円板刃との間で排稈を切断するものである。
【0007】
かかる構成によれば、駆動軸により回転される複数の切断刃が螺旋状に配置されているため、従来(例えば特許文献1)の円板刃に比べて、排稈の送り作用を向上させて切断処理能力を高めることができる。
【0008】
本発明において、前記切断刃よりも下方且つ前記自由回転軸よりも上方に配置される板状のフレームをさらに備え、
前記円板刃の一部は、前記フレームに設けられたスリットから突出しているものでもよい。
【0009】
かかる構成によれば、自由回転軸への排稈の巻き付きを防止できる。また、円板刃がフレームによって支持されるため、円板刃の左右方向の傾きを防止できる。さらに排稈がフレームによって案内されて、切断刃と円板刃との切断処理位置に適切に搬送されるため、切断処理能力を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記切断刃の回転軌跡の前端が、前記円板刃の前端よりも前方に位置するものでもよい。
【0011】
かかる構成によれば、脱穀装置から搬出された排稈が円板刃よりも先に切断刃に接触するため、排稈が排稈処理装置の中で滞留することなく搬送される。
【0012】
本発明において、前記自由回転軸は多角形の断面形状を有し、前記円板刃は前記自由回転軸に挿通される多角形の挿通孔を有しているものでもよい。
【0013】
かかる構成によれば、円板刃が自由回転軸に対して自由回転しないため、排稈の接触に伴って発生する円板刃の回転力が適切に自由回転軸に伝達される。その結果、全ての円板刃が同時に回転することで、一部の円板刃が回転しない状態の発生を防ぐことができ、排稈の送り作用が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コンバインの左側面図
図2】コンバインの右側面図
図3】コンバインの平面図
図4】脱穀装置と選別装置とを示す縦断面図
図5】細断装置の斜視図
図6】自由回転刃の分解斜視図
図7】細断装置の縦断面図
図8】コンバインの伝動構造を示す模式図
図9】二番唐箕及び二番コンベアの部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るコンバインの一例について説明する。
【0016】
[コンバインの全体構造]
まずは、コンバインの全体構造について簡単に説明する。図1~3は、それぞれ、本実施形態のコンバイン100の左側面、右側面、及び平面を示す。図中には、コンバイン100の前後方向、左右方向、及び、上下方向を矢印で示している。コンバイン100は、走行装置1と、刈取装置2と、搬送装置2aと、脱穀装置3と、選別装置4と、貯留装置5と、動力装置6とを備える。更に、本実施形態のコンバイン100は、外部へ排出する脱穀処理物である排稈を細断するための細断装置7(排稈処理装置に相当する)を備えている。
【0017】
走行装置1は、機体フレーム10の下方に設けられている。走行装置1は、トランスミッション11と、左右一対に設けられたクローラ装置12とを有する。トランスミッション11は、機体フレーム10に搭載されたエンジン61の動力をクローラ装置12に伝達する。クローラ装置12は、コンバイン100を前後方向に走行させたり、コンバイン100を左右方向に旋回させたりする。
【0018】
刈取装置2は、走行装置1の前方に設けられている。刈取装置2は、リール21と、カッター(刈刃)22と、オーガ(横送りスクリュー)23とを有する。また、刈取装置2の後方に設けられる搬送装置2aは、搬送コンベア24と、フロントロータ25(図4参照)とを有する。リール21は、回転することによって圃場の穀稈をカッター22へ案内する。カッター22は、リール21によって案内された穀稈を切断する。オーガ23は、カッター22によって切断された穀稈を所定の位置に集合させる。搬送コンベア24は、オーガ23によって集合させた穀稈をフロントロータ25まで搬送する。フロントロータ25は、搬送コンベア24が搬送してきた穀稈を脱穀装置3へ送り込む。
【0019】
脱穀装置3は、刈取装置2の後方に設けられている。脱穀装置3は、扱胴31を収容する扱室30と、扱室30の前後壁に対して回転自在に設けられた扱胴軸311を中心に回転する扱胴31と、扱胴31を下方から覆う受網32(図4参照)とを有する。脱穀装置3の左側には、扱胴31の左側方をカバーするサイドカバー33が取り付けられている。扱胴31は、回転することによって穀稈を脱穀しながら後方へ搬送する。受網32は、扱胴31によって搬送される穀稈を支持するとともに、脱穀物を選別装置4へ落下させる。扱胴31の下方には、穀粒搬送用のスクリューコンベアである一番コンベア143と二番コンベア144(図4参照)とが設けられている。これらは、いずれも脱穀処理された穀粒を水平方向(左右方向)に搬送する。
【0020】
選別装置4は、脱穀装置3の下方に設けられている。選別装置4は、扱胴31から落下した脱穀物を選別する揺動選別体41と、送風装置である唐箕42とを有する。揺動選別体41は、脱穀物をふるいにかけて穀粒を選別する。揺動選別体41で選別された穀粒は、一番コンベア143と揚穀コンベア151とによって搬送され、投入口153を介してグレンタンク51に投入される。唐箕42は、脱穀物に含まれる藁屑などの夾雑物を吹き飛ばす。藁屑などの夾雑物は、選別装置4の後方に設けられた細断装置7によって細断され、排稈口721から外部へ排出される。
【0021】
貯留装置5は、脱穀装置3及び選別装置4の右側方に設けられている。したがって、脱穀装置3及び選別装置4と、貯留装置5とは、走行装置1の上方で左右に並列配置される。貯留装置5は、穀粒を貯留するためのグレンタンク51を備える。グレンタンク51は、選別装置4から一番コンベア143及び揚穀コンベア151を介して搬送されてきた穀粒を貯留する。グレンタンク51内の穀粒を排出する際には、排出オーガ52が用いられる。排出オーガ52は、上下左右方向に回動自在に構成されており、穀粒を任意の場所に排出することができる。
【0022】
動力装置6は、運転部13の下方で且つ貯留装置5の前方に設けられている。動力装置6は、エンジン61で構成されている。本実施形態のエンジン61は、ディーゼルエンジンであり、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを運動エネルギーに変換する。より具体的に説明すると、エンジン61は、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを、走行装置1など各部を駆動する動力に変換する。動力装置6は、電気によって動力を発生させる電動モータであっても構わない。また、動力装置6はエンジン61と電動モータの双方を備えていてもよい。
【0023】
運転部13は、グレンタンク51の前方で機体フレーム10の右側前部に設けられている。運転部13には、オペレータが着席する運転座席14や、その運転座席14の前方に配置された操向ハンドル15が設置され、それらの周囲に変速レバーやクラッチレバー、スイッチ類など種々の操作具が配置されている。
【0024】
[脱穀装置]
既述のように、脱穀装置3は、扱室30と、扱胴31と、受網32とを有する。図4に示すように、扱室30は、受網32、機枠300、上部カバー301、及び、穀稈案内部材302などによって区画形成されている。機枠300は、扱胴31の前方に配置された前壁部材303と、扱胴31の後方に配置された後壁部材304と、扱胴31の右側方に配置された右側壁部材305とを含む。上部カバー301は、扱胴31を上方から覆うように配置され、機枠300に対して開閉可能に取り付けられている。穀稈案内部材302は、後方に向かって上方へ傾斜する姿勢で設けられ、フロントロータ25により送り込まれた穀稈を受網32に案内する。
【0025】
扱胴31は、前後方向に沿って延びた扱胴軸311と、掻き込みスクリュー312と、ツースバー(扱歯支持部材)313とを有する。扱胴31の駆動軸である扱胴軸311には、後述する伝動構造によってエンジン61からの回転動力が伝達される。掻き込みスクリュー312は、扱胴31の前部に配置され、その掻き込みスクリュー312の後方に、扱胴軸311を中心として複数のツースバー313が並列に配置されている。
【0026】
扱胴軸311は、直線状に形成された構造体であり、掻き込みスクリュー312と複数のツースバー313とを支持する。扱胴軸311は、扱室30を形成する前壁部材303及び後壁部材304によって回転自在に支持されている。また、扱胴軸311の前端部は、前壁部材303から前方に突出している。
【0027】
掻き込みスクリュー312は、螺旋状のインペラ(掻き込み羽根)312bが着脱可能に形成された構造体である。掻き込みスクリュー312は、フロントロータ25によって送り込まれてきた穀稈を掻き込む。つまり、掻き込みスクリュー312は、回転することにより、フロントロータ25によって送り込まれてきた穀稈を取り込んで後方へ送り出す。掻き込みスクリュー312は、螺旋状のインペラ312bが形成された構造に限られず、複数のブレードが形成された構造でも構わない。
【0028】
ツースバー313は、複数の扱歯313tが所定の間隔を設けて平行に配置された構造体である。ツースバー313は、掻き込みスクリュー312が送り出した穀稈を脱穀する。つまり、ツースバー313は、回転することにより、掻き込みスクリュー312が送り出した穀稈を揉み込み、また打撃して脱穀物を落とす。扱胴31で脱穀処理された穀稈の一部や塵などは、扱胴31の後方に流下し、脱穀装置3の後方から排出される。ツースバー313は、複数の扱歯313tを有する構造に限られず、螺旋状のブレードを有する構造でもよい。本実施形態では、複数のツースバー313と、各ツースバー313同士に亘って設けられる複数の板部材314とにより、扱胴31の内部空間と扱胴31の外部空間とを隔てて全体として円筒状をなす回転体を構成しているが、これに代えて、円筒形状の回転体に複数の扱歯313tを備えた構造としてもよい。
【0029】
受網32は、主に網体321によって構成されている。本実施形態では、複数のツースバー313によって構成される回転体の下方を覆うように、網体321が設けられている。網体321は、所定の間隔で平行にワイヤを張り巡らせた構造体である。網体321は、ツースバー313によって揉み込まれる穀稈を支持する。また、網体321は、その隙間から脱穀物を選別装置4へ落下させる。網体321の左端部と右端部は、機枠300に対して着脱自在に支持されている。
【0030】
[選別装置]
既述のように、選別装置4は、揺動選別体41と、唐箕42とを備える。図4に示すように、揺動選別体41は、フィードパン411と、チャフシーブ412と、ストローラック413とを有し、これらが互いに連接されている。本実施形態では、フィードパン411の後方にチャフシーブ412が配置されており、そのチャフシーブ412の後方にストローラック413が配置されている。揺動選別体41の下方には、左右方向に延びた揺動軸41aの回転に連動して揺動選別体41を前後に揺動する偏心カム式の揺動駆動機構410が設けられている。揺動選別体41の駆動軸である揺動軸41aには、後述する伝動構造によって回転動力が伝達される。
【0031】
フィードパン411は、広く平らに形成された構造体である。フィードパン411は、受網32から落下してきた脱穀物を受け止める。また、フィードパン411は、前後に揺動することにより、フィードパン411上の脱穀物を均しながら後方に移動させる。このとき、脱穀物は、斜めに取り付けられたフィン411fによって左右方向にも満遍なく広げられる。
【0032】
チャフシーブ412は、複数のシーブプレート412pが所定の間隔を設けて平行に取り付けられた構造体である。シーブプレート412pの角度は変更可能に構成されている。チャフシーブ412は、前後に揺動することにより、フィードパン411から送られてきた脱穀物をふるいにかける。これにより、脱穀物に混入している夾雑物を浮き上がらせ、穀粒と分離することができる。こうして、チャフシーブ412は、脱穀物から穀粒の選別(「精選別」)を行う。精選別後の脱穀物(穀粒のみを含む「一番処理物」)は、ふるい網415を通った後に、第一流穀板431で案内されて一番樋43へ落下し、一番コンベア143で右側方へと搬送される。一番コンベア143は、左右方向に延びた一番スクリュー軸143aの回転に伴って穀粒を搬送する。一番コンベア143の駆動軸である一番スクリュー軸143aには、後述する伝動構造によって回転動力が伝達される。チャフシーブ412の上に残った脱穀物は、後方に移動してストローラック413へ送られる。
【0033】
ストローラック413は、複数のラックプレート413pが所定の間隔を設けて平行に取り付けられた構造体である。ストローラック413は、前後に揺動することにより、チャフシーブ412から送られてきた脱穀物をふるいにかける。これにより、脱穀物に混入している比較的大きな夾雑物を支持して、穀粒と分離することができる。こうして、ストローラック413は、脱穀物から穀粒の選別(「精選別」)を行う。精選別後の脱穀物(穀粒と少数の小さな夾雑物を含む「二番処理物」)は、第二流穀板441で案内されて二番樋44へ落下する。二番樋44に落下した脱穀物は、二番コンベア144で右側方へと搬送され、選別装置4の前端側に還元搬送されて、再度の選別処理に供される。二番コンベア144は、左右方向に延びた二番スクリュー軸144aの回転に伴って穀粒を搬送する。二番コンベア144の駆動軸である二番スクリュー軸144aには、後述する伝動構造によって回転動力が伝達される。ストローラック413の上に残った脱穀物は、後方に移動して外部へ排出される。
【0034】
唐箕42は、揺動選別体41の前部下方に配置され、揺動選別体41に向かって選別風を供給する。唐箕42は、ファン部421と、ケース部422とを備える。本実施形態では、フィードパン411の下方にファン部421が配置され、そのファン部421を覆うようにケース部422が配置されている。ファン部421は、左右方向に延びた唐箕軸42aによって軸支されている。ファン部421は、唐箕軸42aを中心に回転する。唐箕42の駆動軸である唐箕軸42aには、後述する伝動構造によってエンジン61からの回転動力が伝達される。
【0035】
ファン部421は、複数のファンプレート421pが所定の角度で取り付けられた構造体である。ファン部421は、チャフシーブ412やストローラック413に向けて風を送り、夾雑物を吹き飛ばす。つまり、ファン部421は、回転して風を送り出すことにより、チャフシーブ412やストローラック413に載った藁屑、及び、それらから落下した藁屑などを吹き飛ばす。これによって、脱穀物に混入している比較的小さな夾雑物を分離できる。こうして、ファン部421は、脱穀物から穀粒の選別を行う。選別後の脱穀物(穀粒のみを含む)は、第一流穀板431で案内されて一番樋43へ落下する。若しくは、選別後の脱穀物(穀粒と少数の小さな夾雑物を含む)は、第二流穀板441で案内されて二番樋44へ落下する。
【0036】
ケース部422は、板材を折り曲げて形成された構造体である。ケース部422は、ファン部421を覆うとともに、そのファン部421が送り出した風を所定の方向へ案内する。より具体的に説明すると、ケース部422は、ファン部421が送り出した風を所定の方向へ案内する。
【0037】
選別装置4は、二番唐箕423をさらに備える。二番唐箕423は、二番ファン部424と、二番ケース部425とを備える。二番ファン部424は、二番唐箕軸423aを中心に回転する。
【0038】
[細断装置]
選別装置4の後方には、脱穀装置3や選別装置4から搬出された藁屑などの排稈を細断して外部へ排出する細断装置7が設けられている。細断装置7は、扱室30の後方下部で排稈を細断するチョッパ71と、チョッパ71の下方に設けられた自由回転刃72と、チョッパ71及び自由回転刃72を覆うチョッパフード73と、チョッパフード73の後方に設けられた排稈口カバー74とを有する。
【0039】
チョッパ71は、左右方向に延びたチョッパ軸711(駆動軸に相当する)と、チョッパ軸711から放射状に延びる複数の切断刃712とを備える。複数の切断刃712は、チョッパ軸711の軸線方向に所定の間隔を設けて螺旋状に配置されている。より具体的には、複数の切断刃712は、チョッパ軸711の長手方向となる左右方向と、チョッパ71の回転方向に沿った周方向とに、所定の間隔を設けて配置されている。チョッパ71は、チョッパ軸711を中心に回転する。チョッパ71の駆動軸であるチョッパ軸711には、後述する伝動構造によって回転動力が伝達される。チョッパ71の回転方向は、左側から見て反時計回りである。
【0040】
自由回転刃72は、左右方向に延びた自由回転軸721と、複数の円板刃722とを備える。自由回転軸721は、チョッパ軸711と平行となるように配置される。また、自由回転軸721は、図4に示すようにチョッパ軸711よりも後方に位置している。自由回転軸721は、左右一対の軸受723によってチョッパフード73の左右の側壁に回転可能に支持されている。
【0041】
自由回転軸721は、第1回転軸7211と第2回転軸7212とから構成されている。第1回転軸7211は、六角形の断面形状を有している。また、第1回転軸7211は、内部に断面六角形の中空部7211aが形成されている。すなわち、第1回転軸7211は、六角形の筒状をしている。第2回転軸7212は、第1回転軸7211の中空部7211aに嵌合する断面六角形の軸部7212aを有している。第2回転軸7212が軸受723を介してチョッパフード73に回転可能に支持される。軸受723は、ブラケット723aによりチョッパフード73に取り付けられている。なお、第1回転軸7211の断面形状は、六角形に限定されず、三角形、四角形等の多角形であればよい。
【0042】
複数の円板刃722は、自由回転軸721の軸線方向に所定の間隔を設けて配置されている。隣り合う円板刃722の間には、第1回転軸7211に挿通される円筒状のカラー724が設けられている。カラー724は、円板刃722を位置決めし、円板刃722を側方から支持する機能を有する。なお、カラー724は、六角形の筒状でもよい。
【0043】
円板刃722には、第1回転軸7211に挿通される六角形の挿通孔722aが形成されている。円板刃722の挿通孔722aと第1回転軸7211の断面とは、互いに嵌合する六角形の形状を有している。これにより、円板刃722が自由回転軸721に対して自由回転しないため、排稈の接触に伴って発生する円板刃722の回転力が適切に自由回転軸721に伝達される。その結果、全ての円板刃722が同時に回転することで、一部の円板刃722が回転しない(送り作用を発揮しない)状態の発生を防ぐことができ、排稈の送り作用が高められる。
【0044】
チョッパ71の切断刃712と自由回転刃72の円板刃722(言い換えれば、各切断刃712の回転軌跡712f(図4参照)の下端部と各回円板刃722の上端部)とは、左右方向に交互に配列されており、各切断刃712が隣り合う円板刃722の間を回転しながら通過する。これにより、交互に配列された切断刃712と円板刃722との間で排稈が切断される。このとき、円板刃722は、左側から見て時計回りに回転する。複数の切断刃712を螺旋状に配置することで、従来の円板刃に比べて排稈の送り作用を高めることができ、切断処理能力が高くなる。
【0045】
また、図4に示すように、切断刃712の回転軌跡712fの前端が、円板刃722の前端722fよりも前方に位置している。これにより、扱室30から搬出された排稈が円板刃722よりも先に切断刃712に接触するため、排稈がチョッパフード73の中で滞留することなく搬送される。また、回転する切断刃712の径は、円板刃722の径よりも大きくなっており、排稈の送り作用を向上できる。
【0046】
チョッパフード73には、後方に向けて開口した排稈口731が形成されており、細断された排稈は、この排稈口731を通じて排出される。
【0047】
チョッパフード73は、チョッパ軸711及び自由回転軸721の両端を回転可能に支持している。また、チョッパフード73は、自由回転軸721の上方に配置された板状のフレーム732を支持している。自由回転軸721の上方にフレーム732を設けることで、自由回転軸721への排稈の巻き付きを防止できる。なお、フレーム732は、回転する切断刃712の回転軌跡712fの最下端よりも下方に位置している。
【0048】
フレーム732は、左右方向に延びる板状部材であり、フレーム732の前部は上方に傾斜している。フレーム732には、前後方向に長尺の複数のスリット732aが形成されている。スリット732aは、左右方向の幅が円板刃722の厚みよりも僅かに大きくなっており、円板刃722の一部がスリット732aから上方へ突出している。これにより、円板刃722がフレーム732によって側方から支持されるため、円板刃722の左右方向の傾きを防止できる。また、フレーム732を設けることで、排稈がフレーム732によって案内されて、切断刃712と円板刃722との切断処理位置に適切に搬送され、切断後の排稈も後方へ適切に搬送される。
【0049】
排稈口カバー74は、後方に向かって下方に傾斜した天板741と、左右一対で設けられた側板742と、その一対の側板742の間に配置された複数の案内板743とを備える。天板741と一対の側板742とは、排稈口731の外周縁部を覆うように設けられており、排稈口カバー74の下部及び後部は開放されている。案内板743は、後方に向かって右側に傾斜した姿勢で設けられている。これにより、排稈口731から排出された排稈は、下方へ向けて且つ右斜め後ろに向けて案内される。
【0050】
[動力伝動機構]
図8に示すように、本実施形態のコンバイン100は、扱胴31の前方で扱胴軸311に連動連結された扱胴入力軸315を備える。ベルト伝動機構81は、脱穀装置3及び選別装置4の右側で扱胴入力軸315と第1カウンタ軸45とに亘って設けられている。即ち、扱胴入力軸315と第1カウンタ軸45とに亘って伝動ベルト81bが架け渡されている。エンジン61からの回転動力は、エンジン61の出力軸61aからベルト伝動機構83を介して第1カウンタ軸45の右端部に伝達され、ベルト伝動機構81によって扱胴入力軸315の右端部に伝達される。ベルト伝動機構83には、伝動ベルト83bを緊張または弛緩させて動力を接続または切断する脱穀クラッチ83cが備えられている。
【0051】
扱胴入力軸315は、左右方向に沿って延びており、その左端部が扱胴軸311の前端部に連動連結されている。扱胴入力軸315は、ギアケース317c(図4では図示していない)で覆われたベベルギア機構317を介して扱胴軸311に連動連結されている。扱胴軸311の前端部と、扱胴入力軸315の左端部とは、それぞれギアケース317cに回転自在に支持されている。扱胴入力軸315に伝達された回転動力がベベルギア機構317を介して扱胴軸311に伝達されることにより、扱胴31が回転する。
【0052】
上記のように、本実施形態では、扱胴入力軸315の左端部を扱胴軸311の前端部に連動連結している。しかし、これに限定されず、扱胴入力軸315の右端部を扱胴軸311の前端部に連動連結させてもよい。いずれの場合であっても、エンジン61からの回転動力は第1カウンタ軸45に伝達され、その第1カウンタ軸45から取り出された回転動力が扱胴入力軸315に伝達される。
【0053】
唐箕42は、唐箕軸42aを中心に回転する。唐箕軸42aは、中空のパイプ軸で形成されており、第1カウンタ軸45に対して相対回転可能に外嵌されている。第1カウンタ軸45に伝達された動力は、第1カウンタ軸45の前方に配置された第2カウンタ軸46の左端部にベルト伝動機構88を介して伝達される。そして、その第2カウンタ軸46の左端部に伝達された動力がベルト伝動機構89を介して唐箕軸42aに伝達されることにより、唐箕42が回転する。第2カウンタ軸46は、機枠300に支持された支持軸47により回転可能に支持されている。
【0054】
ベルト伝動機構82は、第1カウンタ軸45とチョッパ71のチョッパ軸711とに亘って設けられている。即ち、第1カウンタ軸45とチョッパ軸711とに亘って伝動ベルト82bが架け渡されている。第1カウンタ軸45の左端部に伝達された動力は、伝動ベルト82bを介してチョッパ軸711に伝達される。
【0055】
本実施形態では、第1カウンタ軸45から取り出された回転動力が、揺動軸41a、一番スクリュー軸143a及び二番スクリュー軸144aに伝達される。より具体的には、第1カウンタ軸45に伝達された回転動力が、ベルト伝動機構84を介して一番スクリュー軸143a及び二番スクリュー軸144aに伝達され、その二番スクリュー軸144aに伝達された回転動力が、ベルト伝動機構85を介して揺動軸41aに伝達される。ベルト伝動機構84の伝動ベルト84bは、第1カウンタ軸45と、一番スクリュー軸143aと、二番唐箕軸423aと、二番スクリュー軸144aとに亘って架け渡されている。ベルト伝動機構85の伝動ベルト85bは、二番スクリュー軸144aと揺動軸41aとに亘って架け渡されている。
【0056】
ところで上述したように、二番処理物は二番樋44へ落下し、二番コンベア144で案内されて右側方(脱穀装置3の右側壁部材305)へと搬送され、当該右側壁部材305に形成された開口部305a(図4参照)を通過した後、前上方に搬送されて選別装置4の前端側に還元搬送される。その際、二番コンベア144により搬送される二番処理物の量が多いと、脱穀装置3の右側壁部材305の開口部305aを通過した二番処理物が上方に搬送しきれず、当該開口部305aを介して逆流し、更には、二番樋44の前方に配された二番唐箕423に流入し、二番唐箕423に詰まりが発生することがある。
【0057】
そこで本実施形態では、図9(a)を参照して、左側面視において、脱穀装置3の右側壁部材305に形成された開口部305aの上部と、二番コンベア144の回転軌跡の上部との間隔(二番コンベア144の半径方向の距離)は、前部から後部に亘るまで間隔が等しくなるように設計されることで、開口部305aを介して逆流する二番処理物の量を低減している。加えて、開口部305aの上部には、開口部305aを介して二番処理物が二番樋44に逆流した際に、二番唐箕423に二番処理物が流入することを防ぐ流入防止部305bが設けられている。
【0058】
流入防止部305bは図9(a)に示すように、側面視で開口部305aの形状に沿って折れ曲がる(湾曲する)傘形状にて形成されている。また、流入防止部305bは図9(b)に示すように、開口部305aから遠ざかるにつれて二番コンベア144に近づくように傾斜して設けられており、開口部305aから逆流し、二番コンベア144により跳ね上げられた二番処理物が拡散する前に流入防止部305bに衝突させることにより二番唐箕423に対する流入防止効果を向上させている。
【0059】
本実施形態では普通型コンバインの例を示したが、これに限られず、本発明は自脱型コンバインであってもよい。
【0060】
本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
100 コンバイン
3 脱穀装置
6 動力装置
7 細断装置(排稈処理装置)
71 チョッパ
711 チョッパ軸(駆動軸)
712 切断刃
72 自由回転刃
721 自由回転軸
7211 第1回転軸
7212 第2回転軸
722 円板刃
722a 挿通孔
73 チョッパフード
732 フレーム
732a スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9