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▶ カコ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】軸接地リング
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/40 20160101AFI20220303BHJP
   H02K 5/16 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H02K11/40
H02K5/16 A
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2018546498
(86)(22)【出願日】2017-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2017000280
(87)【国際公開番号】W WO2017148586
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2019-10-24
(31)【優先権主張番号】102016002641.3
(32)【優先日】2016-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016010926.2
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507052382
【氏名又は名称】カコ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】レンツ ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ヴンダー ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】バンテル ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】パウル アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】パルマー マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー アンドレ
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-110706(JP,A)
【文献】特開2012-173346(JP,A)
【文献】特開昭62-258105(JP,A)
【文献】特開平05-297782(JP,A)
【文献】特開2014-142065(JP,A)
【文献】特表2010-525787(JP,A)
【文献】特開2006-097703(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0159763(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0258576(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101682234(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/40
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の機械要素の誘導電圧または電荷を第2の機械要素へ放出するための軸接地リングであって、導電性材料から成るリング状のハウジングを備え、該ハウジングが、一方の機械要素と導電結合され且つ少なくとも1つの放出要素と導電結合し、該放出要素が、同様に導電性材料から成り、他方の機械要素と導電結合している、前記軸接地リングにおいて、
前記放出要素(8,8a)が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在するディスク状の一体に形成された放出体であり、
前記放出要素(8,8a)が、その半径方向内側エッジ領域(10)でもって弾性変形により前記第1の機械要素(68)と導電結合され、または、その半径方向外側エッジ領域(10)でもって弾性変形により前記第2の機械要素(69)と導電結合されていることを特徴とする軸接地リング。
【請求項2】
前記放出要素(8,8a)が、前記軸接地リングのラジアル面内にある導電性PTFE要素であることを特徴とする、請求項1に記載の軸接地リング。
【請求項3】
前記放出要素(8,8a)が、弾性湾曲したエッジ領域(10)を備え、エッジ領域(10)が、前記第1の機械要素(68)または前記第2の機械要素(69)に当接していることを特徴とする、請求項1または2に記載の軸接地リング。
【請求項4】
エッジ領域(10)が、その周方向に、エッジが開口した複数の繰り抜き部(11)を備えていることを特徴とする、請求項3に記載の軸接地リング。
【請求項5】
少なくとも2つの前記放出要素(8,8a)が1つのパックにまとめられていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の軸接地リング。
【請求項6】
前記放出要素(8,8a)の前記パックの1つの側に、前記放出要素と少なくともほぼ同一の形状およびサイズを有する弾性要素(15)が当接していることを特徴とする、請求項に記載の軸接地リング。
【請求項7】
前記放出要素(8,8a)が、その半径方向の幅の半分以上にわたって、クランプ要素(2,17,55,60)と、導電性材料から成る本体(4,33,61)との間で締め付け固定されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の軸接地リング。
【請求項8】
前記クランプ要素(2,17,55,60)が、前記ハウジング(1)の内部に配置されて、これと導電性固定結合されていることを特徴とする、請求項に記載の軸接地リング。
【請求項9】
前記本体(4,33,61)が前記ハウジング(1,62)と一体的に形成されていることを特徴とする、請求項またはに記載の軸接地リング。
【請求項10】
前記ハウジング(1)内に、少なくとも1つの他の放出要素(8,8a)、または、複数の前記放出要素の少なくとも1つの他のパックが配置されていること、前記放出要素(8,8a)または前記放出要素の前記パックが、導電性材料から成る少なくとも1つの中間ディスク(13)によって互いに分離されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の軸接地リング。
【請求項11】
前記クランプ要素(33,37)が弾性力で前記放出要素(8,8a)に当接していることを特徴とする、請求項から10までのいずれか一つに記載の軸接地リング。
【請求項12】
前記本体が、導電性材料から成って前記第1の機械要素(68)と固定結合されているブシュ()の一部分であることを特徴とする、請求項から11までのいずれか一つに記載の軸接地リング。
【請求項13】
前記放出要素()が前記ブシュ()と前記ハウジング(69)とに当接していることを特徴とする、請求項12に記載の軸接地リング。
【請求項14】
前記放出要素(8)が、その半径方向内側領域(10)でもって前記ブシュ(45)の円錐状部分(47)上に載置され、且つ前記ブシュ(45)の前記円錐状部分(47)の方向に力の作用を受けていることを特徴とする、請求項12または13に記載の軸接地リング。
【請求項15】
前記クランプ要素(60)が、該クランプ要素を前記放出要素(8,8a)に対し押圧させる突起(67)を備えていることを特徴とする、請求項から14までのいずれか一つに記載の軸接地リング。
【請求項16】
前記クランプ要素(60)が、前記ハウジング(62)に固定されているクランプシートであり、その突起(67)がエンボス加工工程によって形成されていることを特徴とする、請求項15に記載の軸接地リング。
【請求項17】
前記クランプ要素(60)が、レーザー溶接によって前記ハウジング(62)に固定されていることを特徴とする、請求項16に記載の軸接地リング。
【請求項18】
前記放出要素(8,8a)が一体に形成され、または、複数のより大きな部分から成っていることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか一つに記載の軸接地リング。
【請求項19】
前記放出要素(8,8a)がコンパクトな導電性材料から成っていることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか一つに記載の軸接地リング。
【請求項20】
前記放出要素(8)が弾性変形可能なディスク状の本体(82)を有し、該本体が、導電性材料から成っている被覆部(83)を備えていることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか一つに記載の軸接地リング。
【請求項21】
前記被覆部(83)が前記本体(82)全体を覆うことを特徴とする、請求項20に記載の軸接地リング。
【請求項22】
前記本体(82)は、前記放出要素(8)が前記機械要素(68,69)に当接している領域に、複数の貫通破断部(86)を備え、これら貫通破断部が、導電性材料(87)で充填されていることを特徴とする、請求項20または21に記載の軸接地リング。
【請求項23】
前記複数の貫通破断部(86)が、前記本体(82)の周方向に配分して配置されていることを特徴とする、請求項22に記載の軸接地リング。
【請求項24】
該導電性材料(87)が前記複数の貫通破断部(86)において少なくとも前記被覆部と結合され、該被覆部が、前記本体(82)の、前記第1または第2の機械要素(68,69)とは逆の側(84,85)に設けられていることを特徴とする、請求項22または23に記載の軸接地リング。
【請求項25】
前記被覆部(83)が導電性の箔であることを特徴とする、請求項20から24までのいずれか一つに記載の軸接地リング。
【請求項26】
前記導電性の箔が、前記本体(82)の1つの側から外側エッジを介して前記本体(82)の他の側へ延在していることを特徴とする、請求項25に記載の軸接地リング。
【請求項27】
前記導電性の箔が、互いに隣り合っている前記本体(82)の間に位置していることを特徴とする、請求項25または26に記載の軸接地リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の軸接地リングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気駆動装置を制御するため、周波数変換器を使用することが増えてきている。しかしながら、周波数変換器は周波数を変化させる電圧を駆動軸内に誘導する。電圧は、とりわけモータ軸を破損させたり、たとえばラジオの不快な暗騒音のようなEMVに関する問題を生じさせる。軸電流は、モータベアリングのベアリングレースおよびベアリングボールに小さな溶融凹みを生じさせ、これらの溶融凹みが原因となって、ベアリングレースに経時的に穴が生じて、結局モータベアリングが故障する。
【0003】
電荷または電圧をモータ軸から放出させるため、軸接地リングが知られている(特許文献1)。軸接地リングは、放出要素として、2つの板の間に固定されてこれら板から半径方向内側へ突出しているフィラメントを有している。板とフィラメントとは、接地されたハウジングと導電結合されているリング状のハウジングによって受容される。導電性のフィラメントの使用は、軸接地リングの面倒な製造を要求し、これに対応して高価な製造を要求する。加えて、使用中にフィラメントが溶けて不純物になり、場合によってはシステムが完全に故障するほどの全システム損傷に至る危険がある。軸の回転方向が変化することも問題であり、これは対応的な調整によってフィラメントが回転方向を逆転させるのが困難だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許第1872463B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、この種の軸接地リングを次のように構成すること、すなわちコスト上好ましく簡単に製造でき、第1の機械要素から第2の機械要素への電荷または電圧の確実な放出を保証するように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、この種の軸接地リングにおいて、本発明によれば、請求項1の特徴ある構成によって解決される。
【0007】
本発明による軸接地リングでは、放出要素は個々のフィラメントから形成されるのではなく、ディスク状の放出体から形成される。ディスク状の放出体とは、放出体が一体に形成されていなければならないということだけでなく、放出体を形成するために、取り付け状態で互いに当接しあっているか、或いは、互いに間隔を持つことができるようなより大きな(比較的大きな)部分から成っていてもよいと理解すべきである。さらに、ディスク状の放出体とは、わずかな厚さを有していればよい構成部材である。放出体は簡単に作製でき、取り付けることができる。放出要素は多数のフィラメントから形成されるのではなく、少なくとも1つの放出体によって形成されるので、放出要素の個々の部品が溶けることはない。したがって、使用時軸接地リングによる汚染は発生せず、或いは、発生しても無視できるほどの非常にわずかなものである。軸接地リングを密封システムと一緒に使用する場合には、放出要素の摩耗粒子または溶解した粒子が密封システムを汚染し、この汚染によって密封システムが故障するような問題はもはや発生しない。
【0008】
放出要素としてのディスク状の放出体が、軸接地リングのラジアル面内にある導電性PTFE要素であり、この導電性PTFEが有利にはPTFEディスクであれば有利である。導電性は、PTFE内の適当な導電性充填物質によって生じる。このようなPTFEコンパウンドは摩擦が少なく、摩耗しにくい。PTFE要素は、回転する第1の機械要素または第2の機械要素との有利な面接触を可能にする。PTFE要素により、第1の機械要素の回転方向交替は難なく可能である。PTFE要素に内在する記憶効果には、該PTFE要素がその変形後も出発位置に、すなわちディスク形状に戻ろうとするという利点がある。したがって、軸接地リングの取り付け位置に応じて、PTFE要素がその半径方向内側領域の弾性変形で第1の機械要素に当接でき、或いは、その半径方向外側領域の弾性変形で第2の機械要素に当接できるという利点がある。この記憶効果のために、PTFE要素は適当な復帰力で第1または第2の機械要素に当接する。これにより、常にそれぞれの機械要素との確実な結合が保証されており、その結果第1の機械要素での電荷または誘導された電圧を確実に放出させることができる。
【0009】
この場合、放出要素の弾性湾曲したエッジ領域が、その周方向に、エッジが開口した複数の繰り抜き部を、好ましくは複数のスリットを備えているのが有利である。これらの繰り抜き部は次のような数量および/または長さで設けられており、すなわち一方では、このエッジ領域を第1または第2の機械要素に当接させている復帰力が、導電性材料の十分に導電性のある面が機械要素に当接するために十分な大きさであり、他方では、摩擦が最小にすぎない程度に前記復帰力が小さいような数量および/または長さで設けられている。
【0010】
放出を改善するため、少なくとも2つの、好ましくは2つ以上の放出要素が1つのパックにまとめられているならば有利である。たとえば複数のPTFE要素を、好ましくは複数のPTFEディスクを、有利な放出要素として互いに当接させて設置させることができる。
【0011】
このケースでは、放出要素のパックの1つの側に、放出要素と少なくともほぼ同一の形状およびサイズを有する弾性要素が当接していれば、有利である。弾性要素は、放出要素を第1または第2の機械要素と申し分なく接触させる用を成す。
【0012】
放出要素の簡単で確実な固定を保証するため、放出要素が、その半径方向の幅の半分以上にわたって、クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定されていれば、有利である。
【0013】
有利には、本体はハウジングの内部に配置されて、これと導電結合されている。これによって、電荷または電圧を、放出要素と本体とを介してハウジングへ放出させることができる。
【0014】
有利な更なる構成では、ハウジング内に、少なくとも1つの他の放出要素、または、複数の放出要素の少なくとも1つの他のパックが配置され、放出要素または放出要素のパックが、導電性材料から成る少なくとも1つの中間ディスクによって互いに分離されているように構成されている。このケースでは、軸接地リングは、軸線方向に互いに間隔をもって位置する2つの放出要素または放出要素のパックを有し、これによって第1の機械要素からの有害な電荷または電圧の放出を改善することができる。
【0015】
さらに、クランプ要素が弾性力で放出要素に当接しているのが有利である。これによって、クランプ要素が常にしっかりと放出要素に当接して放出要素を確実に保持することが保証されている。
【0016】
有利で構造的に簡潔な実施態様では、本体はハウジングと一体に形成されている。
【0017】
しかし、本体が、導電性材料から成って第1の機械要素と固定結合されているブシュの一部分であることも可能である。この第1の機械要素が有利な態様で回転する軸であれば、ブシュはこの軸上に相対回転不能に着座する。
【0018】
有利には、放出要素はブシュとハウジングとに当接している。これは、軸接地リングの非常に簡潔な構成と、第2の機械要素への電荷または電圧の確実な放出とを可能にする。
【0019】
更なる有利な実施態様では、放出要素は、その半径方向内側領域でもってブシュの円錐状部分上に載置されている。
【0020】
この場合、放出要素がブシュの円錐状部分の方向に力の作用を受けていれば、有利である。力を作用させるため、ジクザグばねのような圧縮ばねを使用することができる。この力の作用には、ブシュに対する当接領域で放出要素が摩耗した時に、放出要素がその半径方向内側領域でもってブシュの円錐状部分と接触するように放出要素を軸線方向に変位させるという利点がある。
【0021】
有利な構成では、放出要素をクランプするクランプ要素は、該クランプ要素を放出要素に対し押圧させる突起を備えている。これによって、放出要素が回転する第1の機械要素とともに一緒に回転するのを阻止することができる。
【0022】
この場合、クランプ要素が、好ましくはレーザー溶接によってハウジングに固定されているクランプシートであり、その突起をエンボス加工工程によって形成することができるならば、有利である。これは、簡単でコスト上好ましい製造に寄与する。
【0023】
放出要素に対する材料として、可能なコンパクトな材料である導電性PTFEを取り上げたが、この材料に限定されるものではない。放出要素に対しては、電圧または電流および電荷を放出させることができるものであればすべての材料が考慮される。たとえば、グラファイト、銅粒子等の導電性充填物質を備えた、熱的に耐性があって、使用例に応じてはさらに化学的に耐性のある適当なプラスチック、たとえばフッ素系熱可塑性樹脂またはポリアミドが考慮される。他の例は、たとえば適当な導電性充填物質を備えた、フッ素系ゴムのような導電性エラストマーである。
【0024】
さらに、放出要素に導電性被覆部を備えさせることが可能である。被覆部は放出要素上に被着されていてよい。しかし放出要素は箔であってもよい。被覆部は、摩擦を低減させるためにも用いられる。
【0025】
さらに、放出要素を非導電性材料から製造し、この材料に導電性被覆部を備えさせることが可能である。この場合、放出要素は有利には弾性変形可能なディスク状の本体を有し、この本体は非導電性材料、導電性の悪い材料、または導電性の材料から成っていてよい。本体は、導電性材料から成る被覆部を備える。放出要素の本体に対しては、有利にはポリフルオールカーボン、特にポリテトラフルオロエチレンが使用される。
【0026】
被覆部に対し有利な導電性材料としては、シルバーコーティングが優れていることが明らかになった。シルバーコーティングは簡単に本体上に被着することができ、非常に低い比抵抗を有する。
【0027】
被覆部が放出要素の本体全体を被覆しているのが有利である。
【0028】
特に有利な実施態様では、本体は、放出要素が機械要素に当接している領域に、複数の貫通破断部を備えている。これら貫通破断部は、少なくとも部分的に導電性材料で充填されている。貫通破断部は放出要素の本体を貫通しているので、本体が機械要素との接触側で対応的に摩耗しても、それにもかかわらず、誘導された電圧の確実な放出が保証されている。この場合、貫通破断部内の導電性材料は、本体の摩耗の度合いに関係なく電圧を放出できるよう保証している。
【0029】
貫通破断部内の導電性材料は、有利には、少なくとも、本体の、機械要素とは逆の側に設けられた被覆部と結合されている。このケースでは、本体の機械要素側は必ずしも被覆部を備えている必要はない。貫通破断部内にあって対応する機械要素と接触している被覆部により、貫通破断部内のこの材料が、誘導された電圧を、本体の機械要素とは逆の側に設けられた被覆部へ放出することが達成される。
【0030】
有利な実施態様では、本体の、機械要素と接触している側が、導電性材料から成る適当な被覆部を備えていても、導電性材料を備えた貫通破断部が設けられる。
【0031】
電圧の申し分のない放出が保証されているようにするため、貫通破断部は本体の周方向に配分して配置されている。この配分は、誘導された機械要素の電圧を確実に放出できるように行われる。
【0032】
被覆部が導電性の箔であれば特に有利である。このような被覆部はコスト上好ましい部材である。導電性の箔は、たとえば銅箔である。このような箔は、たとえばわずかほぼ0.03mmの薄い厚さを有しているにすぎない。
【0033】
導電性の箔は、本体と固定結合されていてよく、この場合結合手段としては、たとえば適当な接着剤のような適当なものであればいかなる手段も考えられる。しかし、箔が本体にゆるく当接して、クランプ力をもたらすことによって本体と固定結合されていてよい。
【0034】
有利には、被覆部(箔)は、本体の1つの側から外側エッジを介して本体の他の側へ延在している。この場合、それぞれの本体の前記1つの側は箔によって完全に覆われていてよく、他方本体の前記他の側では、箔はこの本体の他の側の面積の一部にわたってのみ延在している。このより小さな領域でもって箔は導電性の保持リング等に当接することができ、保持リングを介して、誘導された電圧を回転する機械要素から放出させることができる。
【0035】
更なる有利な実施態様では、被覆部(箔)は互いに隣り合っている本体の間に位置している。
【0036】
本出願の対象は、個々の請求項の対象から明らかになるばかりでなく、図面および本明細書に開示されている記載および構成要件によっても明らかになる。これらの記載および構成要件は、個別にまたは組み合わせで技術水準に対し新規なものであれば、請求項の対象でなくとも本発明にとって重要なものとして権利を主張する。
【0037】
本発明の更なる構成は他の請求項、本明細書および図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明を、図面に図示したいくつかの実施形態を用いて詳細に説明する。
図1】本発明による軸接地リングの第1実施形態の図である。
図2図1の線A-Aによる拡大断面図である。
図3】本発明による軸接地リングの他の実施形態の、図2に対応する図である。
図4】本発明による軸接地リングの他の実施形態の図である。
図5】線D-Dによる拡大断面図である。
図6】本発明による軸接地リングの他の実施形態の図である。
図7図6の軸接地リングの背面図である。
図8図6の線F-Fによる拡大断面図である。
図9】本発明による軸接地リングの他の実施形態の図である。
図10図9の線J-Jによる拡大断面図である。
図11】本発明による軸接地リングの他の実施形態の図である。
図12図11の線L-Lによる拡大断面図である。
図13】本発明による軸接地リングの他の実施形態の図である。
図14図13の線N-Nによる拡大断面図である。
図15】本発明による軸接地リングの他の実施形態の図である。
図16図15の線P-Pによる拡大断面図である。
図17】本発明による軸接地リングの他の実施形態の半分の軸断面図である。
図18】本発明による軸接地リングの他の実施形態の、図17に対応する図である。
図19】本発明による軸接地リングの他の実施形態の半分の軸断面図である。
図20】本発明による軸接地リングの他の実施形態の図である。
図21図20の線Q-Qによる拡大断面図である。
図22図3の軸接地リングを取り付け位置で示した軸断面図である。
図23】本発明による軸接地リングの他の実施形態の図である。
図24図23の軸接地リングを取り付け位置で示した軸断面図である。
図25】本発明による軸接地リングの他の実施形態の半分の軸断面図である。
図26図25の軸接地リングの部分図である。
図27図25の軸接地リングの放出体に設けた貫通破断部の1実施形態を示す図である。
図28図25の軸接地リングの放出体に設けた貫通破断部の1実施形態を示す図である。
図29図25の軸接地リングの放出体に設けた貫通破断部の1実施形態を示す図である。
図30】本発明による軸接地リングの他の実施形態の、図25に対応する図である。
図31】本発明による軸接地リングの他の実施形態の、図26に対応する図である。
図32】本発明による軸接地リングの他の実施形態の軸断面図である。
図33図32の軸接地リングの半部分の拡大図である。
図34図32の線A-Aによる拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
コンバータで作動される交流電動機が有害な電圧をモータ軸68(図21)上に誘導することは知られている。この電圧が軸受内の潤滑剤の抵抗値を越えると、電圧が軸受を介して放電し、これによって軸受が強く負荷されて、長期間使用すると損傷する。軸接地リングを用いると、モータ軸68内に誘導された有害電圧が確実に放出され、その結果電圧が軸受を介して放出されなくなる。
【0040】
しかし、軸接地リングは電動機ばかりでなく、たとえば伝動装置にも使用することができる。一般には、軸接地リングは、誘導される電圧、電流または電荷を軸から放出する必要がある場所で使用される。
【0041】
図1および図2による軸接地リングは、導電性材料から成ってハウジングを形成している外側クランプリング1を有している。外側クランプリング1は軸断面にてL字状の横断面を有する。外側クランプリング1は内側クランプリング2を取り囲んでいる。内側クランプリング2も同様に導電性材料から成っており、軸断面にてL字状の横断面を有している。外側クランプリング1は筒状側面3を有し、筒状側面3はこれに対し垂直に延在するラジアルフランジ4へ移行している。内側クランプリング2も同様に、ラジアルフランジ6へ移行する筒状側面5を有している。両ラジアルフランジ4,6は中央に軸68のための貫通穴7を有する。
【0042】
有利には金属から成る両クランプリング1,2により、円板状の放出体8の形態の放出要素が締め付け固定される。放出体8は導電性材料、好ましくは導電性PTFEから成っている。基本的には、放出体8は、以下で説明するように誘導された電圧を軸68から接地されたハウジング69(図22)へ誘導する導電性材料であれば、どのような適当な材料から成っていてもよい。有利な導電性PTFEを使用することの利点は、このコンパクトな材料が化学的および熱的に耐性があり、摩擦が少ないことにある。内側クランプリング2はその側面5でもってクランプリング1の側面3の内側にプレスばめで当接している。このようにして、放出体8はクランプリング1,2の両ラジアルフランジ4,6の間で確実に締め付け固定されている。
【0043】
締め付け固定の際に放出体8が損傷しないようにするため、内側クランプリング2は、側面5からラジアルフランジ6への移行部において、この移行部が放出体8から間隔を持つように外面が面取りされている。
【0044】
放出体8は、両ラジアルフランジ4,6の間の領域において、さらに、有利には導電性がある接着剤を用いて、ラジアルフランジ4および/またはラジアルフランジ6と結合されていてよい。
【0045】
放出体8の半径方向内側領域10は、貫通穴7のエッジから突出している。この突出の大きさは、放出体8のこの半径方向内側領域10が弾性変形で軸68上に載置されるように選定されている。
【0046】
放出体8の弾性変形により、放出体8が軸68上に平面的に載置され、よって確実に電圧を軸68上に放出できることが達成される。
【0047】
弾性変形により発生する、軸68に対し半径方向に作用する力が、大きすぎないようにするため、この弾性変形領域には、周方向に配分して配置される、縁が開口した複数の繰り抜き部11が設けられている。これらの繰り抜き部11は、本実施形態では、放出体8の内側エッジまで延在するスリットとして形成されている。スリット11の長さは次のように選定され、すなわち放出体8の、スリットの間に形成される部分12が、一方では十分な半径方向の力で軸68上に載置されることで、電圧を確実に放出するように、他方では軸との接触領域での放出体8の摩耗が可能な限り小さくなるような力でもって載置されるように、選定される。
【0048】
軸接地リングは、ハウジング69の取り付け空間70内にプレスばめにより次のように挿着されており、すなわち外側クランプリング1の側面3がプレスによってハウジング69の取り付け空間70の内壁71に当接するように挿着されている(図22)。ハウジング69自体は接地されている。これにより、電圧は、軸68から放出体8と外側クランプリング1とを介して、接地されたハウジング69へ放出される。
【0049】
クランプリング1は必ずしも取り付け空間内へ圧入させる必要はなく、たとえば、横方向に突出する固定板を介して、接地された構成部材に固定されていてよい。また、クランプリング1をダイレクトに、接地された構成部材にねじ止めすることも可能である。接地された構成部材は本実施形態でのみモータハウジングである。放出は、適当に接地された他の構成部材を介して行うこともできる。
【0050】
これらの実施形態は、以下で説明する実施形態に対しても適用される。
【0051】
図3は、前記実施形態の場合のように放出体8の半径方向内側領域10に繰り抜き部を備えさせない実施形態を示している。この場合も、軸の電圧を接地されたハウジングに確実に放出させることが可能である。内側領域10の弾性変形によって発生するラジアル力を可能な限り小さくさせるため、突出している領域10の半径方向の幅を対応的な大きさに選定することができる。他の点では、図3の実施形態は図1および図2の実施形態に対応している。
【0052】
放出体8に対し導電性のPTFEを使用することの利点は、この材料がいわゆる記憶効果を有していることである。このため、弾性変形する内側領域10は、その出発位置へ戻ろうとする。これにより、放出体8のこの内側領域に摩耗が生じた場合にこれに反作用するような復帰力が生じ、これによって使用期間にわたって一定の軸68との確実な接触が保証されている。
【0053】
導電性のPTFEから成っている放出体8により、軸68の回転方向交替も可能になる。この場合、放出体8の半径方向内側領域10が直立することはない。
図4および図5の実施形態では、軸線方向に互いに間隔を持って直列に配置された2つの放出体8が使用される。外側クランプリング1はクランプディスク13を取り囲み、クランプディスク13はその外側エッジ14でもってクランプリング1の側面3の内側に当接することができる。クランプディスク13とクランプリング1のラジアルフランジ4との間で放出体8は前述のようにして締め付け固定されている。放出体8は、図1および図2の実施形態の場合と同一に構成されている。
【0054】
有利には放出体8と同一に構成された第2の放出体8aは、クランプディスク13との協働のもとに内側クランプリング2を用いて締め付け固定される。第2の放出体8aは、内側クランプリング2のラジアルフランジ6とクランプディスク13との間で締め付け固定される。クランブリング2はその側面5でもって前述のようにしてプレスばめで外側クランプリング1に着座している。クランプディスク13は、両クランプリング1,2と同様に中央に軸68のための貫通穴7を有している。
【0055】
中間ディスクとしてのクランプディスク13は、必ずしも導電性材料から成っている必要はない。両クランプリング1,2は導電性材料、好ましくは金属から成っている。両放出体8,8aは有利には導電性のPTFEから成り、且つ同一に構成されている。
【0056】
前記実施形態の場合と同様に、放出体8,8aは比較的大きな幅にわたってクランプリング1,2とクランプディスク13との間で締め付け固定されている。締め付けられる領域が好ましくは比較的大きくなければならないので(本実施形態では、半分の幅よりも大きい)、クランプディスク13が一緒に回転しないよう確実に保証される。さらに、これにより、軸から接地されたハウジングへの確実な電圧放出が行われる。
【0057】
この実施形態では、両放出体8,8aは異なる構成を有していてもよい。すなわち、放出体8は繰り抜き部11を備えて構成され、他の放出体8aは繰り抜き部なしで構成されていてよい。
【0058】
図6ないし図8の軸接地リングの場合、互いに接している複数の放出体8のパックが使用される。放出体は同一に構成されており、有利には導電性PTFEから成っている。有利には、放出体は繰り抜き部11としてのスリットを備えている。互いに接している放出体8は、前述の態様で両クランプリング1と2の間で締め付け固定されている。
【0059】
内側クランプリング2のラジアルフランジ6と放出体パックとの間には、放出体8の弾性湾曲した内側領域10を、接地すべき軸68に対し確実に押圧させる用をなす、復帰ディスク15が設けられている。復帰ディスク15は、放出体8の弾性湾曲領域10を接地すべき軸68に対し十分に接触させる用を確実に行う弾性要素として形成されていてよい。復帰ディスク15は金属製であっても、プラスチックまたはエラストマーから成っていてもよい。図8が示すように、復帰ディスク15は放出体8と同様の形状およびサイズを有している。
【0060】
復帰ディスク15は、図8に図示したように、両クランプリング1,2のラジアルフランジ4と6に比べて比較的厚くてよい。
【0061】
前記実施形態の場合と同様に、軸接地リングは非常に簡単に取り付けることができる。放出体8から成るパックを外側クランプリング内へ挿入し、次にフックディスク15をパックに当接させ、その後内側クランプリング2を外側クランプリング1の中へ次のように圧入し、すなわち放出体8が復帰ディスク15とともに確実に保持されるような深さで圧入する。内側クランプリング2は、前述した態様でプレスばめで外側クランプリング1内に着座する。
【0062】
前記実施形態の場合と同様に、内側クランプリング2は、その側面5が軸線方向において外側クランプリング1の側面3から突出しないように形成されている。復帰ディスク15は有利には次のように形成されており、すなわち該復帰ディスクが放出体8と同様にその外側エッジでもって外側クランプリング1の側面3の内側に当接するように、且つその半径方向内側領域16が放出体8の内側領域10と同じように弾性湾曲しているように、形成されている。
【0063】
図9および図10の実施形態は、軸接地リングが互いに接している放出体8の2つのパックを有している点でのみ、前記実施形態と異なっている。一方の放出体パックは外側クランプリング1のラジアルフランジ4とクランプディスク13との間で締め付け固定されており、放出体8の第2のパックはクランプディスク13と他のクランプディスク17との間で締め付け固定されている。他のクランプディスクは、外側クランプリング1内にプレスばめで着座している内側クランプリングを形成している。クランプディスク17も軸68のための貫通穴7を有している。放出体8の両パックは、前記実施形態の場合と同一に構成されている。クランプディスク17は、クランプディスク13の中間接続のもとに放出体8の両パックを外側クランプリング1のラジアルフランジ4に対ししっかりと押圧させるように、設けられている。図示した実施形態での放出体8は、図1および図2の放出体8と同一に構成されている。しかし、パック内部の放出体8を繰り抜き部なしで形成することも可能である。パックは、その半径方向外側のエッジでもって外側クランプリング1の側面3の内側に当接している。
【0064】
クランプディスク17は、クランプディスク13および外側クランプリング1と同様に導電性材料から、好ましくは金属から成っている。
【0065】
図6ないし図8の実施形態では、放出体パック8のための復帰ディスク15が設けられていたが、図9および図10の実施形態では、このような復帰ディスクは設けられていない。しかしながら、この実施形態でも両放出パック8の一方に、有利には両方にこのような復帰ディスクを設けてもよいことは言うまでもない。
【0066】
図1ないし図10の実施形態の場合、放出体8,8aは軸68にダイレクトに載置されている。しかし、軸68上に相対回転不能にブシュを固定し、このブシュの上に放出体8,8aを載置することも可能である。この場合には、ブシュは導電性材料、たとえば金属から成る。このようなブシュは以下で説明する実施形態で設けられている。
【0067】
図11および図12の実施形態では、軸接地リングは、軸68を間隔を持って取り囲んでいる、軸断面にてU字状の、リング状のハウジング18を有している。軸68上には、相対回転不能に、軸断面にてL字状の、リング状の支持部分19が着座している。この支持部分は、軸68の損面上に相対回転不能に着座している筒状のブシュ20を有している。その自由端21は有利にはホッパー状に拡大されており、その結果支持部分19を軸68上に簡単に押し付けて取り付けることができる。ブシュ20には、半径方向外側へ突出するリングフランジ22が接続している。
【0068】
ハウジング18は、半径方向外側にある筒状側面23を有し、該筒状側面は、一端において、半径方向内側へ向けられたリングフランジ24へ移行している。リングフランジはほぼ支持部分19のブシュ20の自由端21の高さに延在している。リングフランジ24は半径方向内側において筒状側面25へ移行し、筒状側面25は、ブシュ20を半径方向に間隔を持って取り囲み、支持部分19のリングフランジ22から軸線方向に間隔を持っている。
【0069】
支持部分19の、半径方向内側に延在しているリングフランジ22は、ハウジング18の内部にある。有利には、リングフランジ22の外面26は、ハウジング18の側面23の端面27とともに、軸接地リングの1つの共通のラジアル面内にある。リングフランジ22はハウジング18の側面23から半径方向に間隔を持っており、その結果支持部分19は軸68とともに支障なく回転することができる。
【0070】
軸接地リングは、ハウジング18の側面でもってハウジング18の取り付け空間70内へ圧入させる。したがって、軸が回転する際、ハウジング18は固定されている。ハウジング18も支持部分19も導電性材料、特に金属から成っている。
【0071】
リングフランジ22の内面には放出リング29が当接している。放出リング29は導電性材料、好ましくは導電性PTFEから成っている。放出リング29は軸68を取り囲み、長方形の横断面を有している。放出リング29はその平坦な外面30でもってリングフランジ22の内面28に面一に当接している。さらに、放出リング29はその半径方向内側のリングフランジ31でもってハウジング18の側面25の外側に面一に当接している。
【0072】
放出リング29は、少なくとも1つの弾性要素32(本実施形態では、波形ばねである)により、支持部分19のリングフランジ22に対し軸線方向においてしっかりと押圧される。有利には、弾性要素32は中間ディスク33の中間接続のもとに放出リング29をリングフランジ22に対し押圧させる。中間ディスク33は、その半径方向の幅の大部分にわたって放出リング29に面一に当接しており、その結果中間ディスクは支持部分19のリングフランジ22に対ししっかり押圧される。弾性要素32は一端でもってハウジング18のリングフランジ24で支持され、放出リング29が支持部分19のリングフランジ22に対し十分しっかりと押圧されるほどの大きさの弾性力を行使する。
【0073】
放出リング29は、有利には摩擦の少ない材料から成っている。支持部分19は軸68と相対回転不能に結合されているので、支持部分19のリングフランジ22は放出リング29に対し相対的に回転する。したがって、摩擦の少ない材料は摩耗の点で有利である。
【0074】
説明している実施形態では、軸線方向配置が採用され、他方図1ないし図10の実施形態では、放出体8,8aの半径方向配置が採用されている。電圧または電荷は、軸68から支持部分19と放出リング29とハウジング18の側面25とを介して、接地されたハウジング69へ側面23を介して放出される。放出リング29は、ハウジング18と支持部分19のリングフランジ22との間に保護された状態で位置している。放出リング29と中間ディスク33とはハウジング18の側面23から十分な間隔を有し、該ハウジングのリングフランジ24では弾性要素32が軸線方向に支持されている。軸接地リングの取り付けの際、ハウジング18と支持部分19とは、放出リング29とハウジング18および支持部分19との間での確実な接触が保証されるようにハウジング69の受容空間70内へ圧入されるとともに、軸68に対し押圧される。加えて、弾性要素32は、摩耗が生じた場合に放出リング29を軸線方向に調整しなおし、その結果放出リングとリングフランジ22との間の確実な接触が確保されている。
【0075】
支持部分19およびハウジング18のリングフランジ22および/または24は、図示した実施形態とは異なり、半径方向において斜め外側または内側へ延在していてもよい。このケースでは、放出リング29は対応的に、支持部分19のラジアルフランジ22に面一に当接するように適合されている。
【0076】
図13および図14の軸接地リングも、放出リング29に関しては軸線方向配置である。軸接地リングは、ブシュ20でもって軸68上に相対回転不能に着座している支持部分19を有している。ハウジング18は前記実施形態の場合と同一に構成されており、そのリングフランジ24に、周方向に配分して配置される複数の開口部34を有し、これらの開口部を通じてそれぞれピン35が突出している。ピン35は、半径方向に間隔をもってハウジング18の内側側面25を取り囲んでいる押圧ディスク37に設けられた軸線方向の孔36に係合している。さらに、押圧ディスク37は放出リング29と同様にハウジング18の外側側面23から半径方向に間隔を有している。
【0077】
押圧ディスク37は、放出リング29の方向へ弾性付勢されている。各ピン35は圧縮ばね38によって取り囲まれ、圧縮ばね38は、一端をハウジング18のリングフランジ24の内面で支持され、他端を押圧ディスク37で支持されている。
【0078】
押圧ディスク37は、放出リング29が軸線方向においても半径方向においても該押圧ディスクと接触するように形成されている。図14が示すように、放出リング29は、支持部分19のリングフランジ22とは逆の側の背面でもって押圧ディスク37の側面39に当接している。
【0079】
側面39から中央の環状突起40が軸線方向に突出している。環状突起40の筒状外側面41上には、放出リング29がその半径方向内側の環状面42でもって載置されている。
【0080】
放出リング29は、圧縮ばね38により、支持部分19の、半径方向外側へ突出しているリングフランジ22に対し、しっかり押圧される。圧縮ばね38は押圧ディスク37の周方向に配分して配置されているので、押圧ディスク37はその側面39でもって放出リング29の背面に対し均一に当接し、その結果放出リングはリングフランジ22の内面28に対ししっかり押圧される。ピン35は押圧ディスク37のための軸線方向ガイドとして用いられ、ヘッド43でもって、ハウジング18のリングフランジ24の、ラジアル面内にある外面44に固定されている。このようにして電圧または電荷は、軸68から、これに相対回転不能に着座している支持部分19と、放出リング29と、押圧ディスク37と、ピン35と、圧縮ばね38と、ハウジング18とを介して、接地されたハウジング69へ放出させることができる。電圧または電荷を放出させるための対応する構成部材は、対応的に導電性材料、好ましくは金属から成っている。圧縮ばね38は、放出リング29が支持部分19のリングフランジ22との接触面において摩耗する場合には、放出リング29のための後調整要素としても用いられる。
【0081】
図15および図16の軸接地リングは、筒状部分46でもって軸68上に相対回転不能に着座しているブシュ45を有している。筒状部分46には円錐状部分47が接続し、該円錐状部分47は、筒状部分46から外側へ円錐状に拡大し、自由端において、半径方向に延びるリングフランジ48へ移行している。ブシュ45は導電性材料、好ましくは金属から成っている。
【0082】
軸接地リングを取り付けるため、軸断面にてL字状のハウジング49を用いる。ハウジング49は、筒状側面50でもってハウジング69の取り付け空間70内へ圧入される。側面50の自由端は、ブシュ45のリングフランジ48の高さにある。
【0083】
側面50は、半径方向内側へ向いているリングフランジ51へ移行している。リングフランジ51は、ブシュ45の筒状部分46の自由端の高さにある。リングフランジ51は、ブシュ45のリングフランジ48の幅よりもかなり大きな半径方向幅を有している。両リングフランジ48,51は軸方向に見て互いにオーバーラップしている。リングフランジ51は半径方向に間隔をもってブシュ45の筒状部分46を取り囲んでいる。
【0084】
放出体8は、その半径方向内側エッジでもってブシュ45の円錐状部分47に当接している。放出体8は、中間ディスク33と支持ディスク55との間で、互いに当接するように締め付けられる。放出体8は円錐状であるために異なる内径を有している。
【0085】
中間ディスク33は、軸断面にてL字状の横断面を有している。中間ディスク33は筒状側面53でもって放出体8のパックとオーバーラップしている。筒状側面53は、半径方向内側へ向けられているリングフランジ54へ移行し、リングフランジ54の、放出体8とは逆の側の外面には、少なくとも1つの圧縮ばね52が係合している。圧縮ばね52は有利には波形ばねであり、ハウジング49のリングフランジ51で軸線方向に支持されている。リングフランジ54は、ブシュ45の筒状部分46から円錐状部分47への移行領域を間隔を持って取り囲んでいる。リングフランジ54は、放出体8の半径方向の幅の半分以上にわたって延在しており、その結果放出体をリングフランジ54によって確実に圧縮させることができる。
【0086】
支持ディスク55は軸接地リングのラジアル面内にあり、ブシュ45のリングフランジ48の外径よりも大きい内径を有している。
【0087】
中間ディスク33の筒状側面53は、支持ディスク55と放出体8のパックとを外側から取り囲むような軸線方向長さを有している。支持ディスク55は、その外側エッジでもって、中間ディスク33の側面53の内側に固定されている。筒状側面53はハウジング49の側面50の内側に対し間隔を有している。
【0088】
軸接地リングの使用中に、電圧は軸68から、これに相対回転不能に着座しているブシュ45と、放出体8と、圧縮ばね52とを介してハウジング49へ誘導され、ハウジング49は、ハウジング69の取り付け空間70内にプレスばめされているために、電圧を接地されたハウジング69へ放出させる。
【0089】
圧縮ばね52は、放出体8がその半径方向内側領域10でもって常にブシュ45の円錐状部分47と十分に接触しているように作用する。圧縮ばね52は、中間ディスク33と放出体8と支持ディスク55とから成るユニットを軸線方向に付勢している。放出体8はこのユニットをハウジング49の内部で心合わせしている。
【0090】
放出体8の内径は、有利には、ブシュ45の円錐状部分47のそれぞれの外径よりもわずかに大きいように選定することができる。放出体8のこのような構成の場合、放出体8とブシュ45または中間ディスク33との間の確実な接触が確保されている。これにより、軸68での負荷を、接地されたハウジング69へ確実に放出させることができる。放出体8が中間ディスク33のリングフランジ54から半径方向内側へ突出しているので、放出体8の突出領域10を弾性変形させることが可能であり、このことは放出体8とブシュ45の円錐状部分47との間の接触を改善させる。
【0091】
図17の実施形態では、1つのパックに統合されている複数の放出体8は、その半径方向内側の弾性変形領域10でもってブシュ56上に載置されている。ブシュ56は、筒状部分57でもって軸上に相対回転不能に着座している。筒状部分57の自由端58は、有利には一定に円錐状に拡開されており、これは、ブシュ56を軸上に簡単に取り付けるために用いる。筒状部分57は、半径方向外側へ延在しているリングフランジ59へ移行している。ブシュ56は導電性材料、好ましくは金属から成る。
【0092】
放出体8は、リング状のクランプディスク60を用いてハウジング62のラジアルフランジ61に対し締め付けられる。ハウジング62も同様に導電性材料、特に金属から成っており、その結果ハウジング62は電圧または電荷を軸68から接地されたハウジング69へ放出させることができる。
【0093】
ハウジング62は外側筒状側面63を有し、この外側筒状側面63でもってハウジングはプレスばめによりハウジング69の取り付け空間70内に着座している。筒状側面63には、半径方向外側へ向けられているリングフランジ64が接続し、このリングフランジ64でもってハウジング62は取り付け位置でハウジング69の端面に当接している。リングフランジ64は、ハウジング69の取り付け空間70内へのハウジング62の取り付けを容易にする。側面63は、他端で、ブシュ56の円錐状拡大端部58の高さにある、半径方向内側へ延在しているリングフランジ65へ移行している。リングフランジ65には、半径方向内側の筒状側面66が接続し、該筒状側面66は、半径方向内側へ延在しているラジアルフランジ61へ移行している。ハウジング62の両側面63,66は互いに且つ軸接地リングの軸線に対し同軸に位置している。ラジアルフランジ61は、ブシュ56のリングフランジ59から軸線方向に間隔を有している。ブシュ56が軸と相対回転不能に結合されているので、この半径方向の間隔は、ブシュ56が支障なくハウジング62によって回転せしめられるようにするためのものである。
【0094】
複数の放出体8から成るパックは、クランプディスク60によってリング状のラジアルフランジ61に対し押圧される。クランプディスク60は、好ましくはレーザー溶接により筒状側面66に簡単に固定することができる簡潔なクランプシートとして形成されていてよい。放出体8とクランプディスク60とは、それらの外側エッジでもって、側面66のブシュ56側外面に当接している。放出体8は互いに同一に形成され、有利には導電性PTFEから成っている。
【0095】
複数の放出体8から成るパックが使用中にブシュ56によってその軸線のまわりに一緒に回転しないようにするため、クランプディスク60は、その周方向に、軸線方向に突出する複数の突起67を備えている。これらの突起67は、クランプディスク60の周方向に配分して配置されており、放出体8の回転を申し分なく阻止する用を成す。クランプディスク60がシートから成っていれば、クランプシートに適当にエンボス加工処理を施すことにより突起67を非常に簡単に設けることができる。
【0096】
放出体8は、図1ないし図10の実施形態に対応して形成されていてよい。
【0097】
使用中に電圧または電荷は軸68からブシュ56を介して放出体8によって受容され、放出体8はこれをハウジング62を介して、接地されたハウジング69へ放出させる。
【0098】
図18の軸接地リングは、クランプディスク60が、複数の放出体8から成るパックに作用する軸線方向の突起を有していない点でのみ、前記実施形態と異なっている。クランプディスク60は、放出体8がハウジング62のリングフランジ61とクランプディスク60との間で軸線方向においてしっかり圧縮されて、軸の回転の際に放出体8がブシュ56によって連行されないように、ハウジング62の側面66に固定される。
【0099】
図19の実施形態は、図11および図12の実施形態に対応している。唯一の相違点は、放出リング29が、少なくともその接触面に、導電性の被覆部72を備え、被覆部72が互いに導電結合されていることである。被覆部は、少なくとも支持部分19のリングフランジ22との接触領域において、軸接地リングの比較的長期の使用期間でも放出リング29が電圧または電荷を確実に軸68から放出させることができるような厚さを有している。有利には、放出リング29は被覆部72によって取り囲まれている。この場合、放出リング自体は非導電性材料から成っていてよい。
【0100】
図20および図21は、基本的には図1ないし図3の実施形態と同一に構成された軸接地リングを示している。これら実施形態と異なるのは、クランプリング1がその筒状側面3でもって軸68上に相対回転不能に着座している点である。このケースでは、ディスク状の放出体8は、両クランプリング1,2から半径方向へ突出しているその領域10でもって、ハウジング69の取り付け空間70の内壁71に当接している。軸接地リングをこのように構成しても、電圧または電荷を軸68からクランプリング1と放出体8とを介してハウジング69へ放出させることができる。
【0101】
放出体8の、半径方向に突出している領域10は、図1および図2の実施形態に対応して、周方向に配分して配置される複数の繰り抜き部11を備えている(図20)。これらの繰り抜き部は有利にはスリットによって形成されている。
【0102】
しかし、ディスク状の放出体8を、図3の実施形態に対応して形成してもよく、すなわち半径方向に突出している領域10がこの種の繰り抜き部を有しないように形成してもよい。
【0103】
図4ないし図10の軸接地リングも、図20および図21の実施形態を用いて説明したように取り付けてもよい。
【0104】
図23および図24は、図22の取り付け状態に対する択一的な取付状況を示している。このケースでは、軸接地リングはハウジング69の取り付け空間70内に圧入されるのではなく、ハウジング69の端面73にねじ止めされる。ディスク状の放出体8はその半径方向内側領域10でもって弾性変形のもとに軸68に載置されている。放出体8は、クランプリング1と、図1ないし図3の実施形態とは異なって外側の筒状側面を有していないクランプリング2との間で締め付け固定されている。クランプリング1は、その筒状側面3でもって、放出体8およびクランプリング2と半径方向外側でオーバーラップしている。クランプ力は、軸接地リングの周方向に配分して配置されている複数のクランプねじ74により発生させる。図示した実施形態では、クランプねじ74は互いに90゜の角度間隔で位置している(図23)。クランプねじ74は遊びを持って両クランプリング1,2と放出体8とを貫通し、ハウジング端面43に設けたねじ孔にねじ込まれている。クランプ力を両クランプリング1,2とそれらの間にある放出体8とへ最適に伝達させることができるようにするため、本実施形態では、半径方向に延在する4つのクランプラグ76が設けられ、これらのクランプラグ76も遊びをもってクランプねじ74を貫通し、クランプラグ76の外面にクランプねじ74がその頭部77でもって当接している。
【0105】
クランプラグ76は幅狭の、半径方向に延びる突出部であり、その半径方向外側の領域は、突出部が屈曲したエッジ領域78でもってハウジング端面73に当接するように屈曲されている。
【0106】
クランプねじ74を用いると、クランプラグ76を十分に大きな力でクランプリング1に対し押圧させることができ、その結果クランプリング1は放出体8を介して内側のクランプリング2をハウジング端面73に対ししっかりと押圧させる。
【0107】
例示したこの取り付け状況は、軸接地リングをハウジングまたはアッセンブリの取り付け空間内に取り付けることができず、ハウジングまたはアッセンブリの外側に固定しなければならない場合に考慮に値する。
【0108】
図25および図26は、放出体8の特に有利な実施形態を示している。この放出体は図1ないし図10の実施形態に対応して構成されており、導電性材料から成っている、有利には金属から成っている保持リング79内に固定されている。図25が示すように、保持リング79はたとえば長方形の輪郭を有する。保持リングは、その半径方向内側の筒状側面80に、中央に位置する環状溝81を備え、この環状溝に放出体8がその半径方向外側領域でもって係合して、適当な態様で固定されている。しかし、放出体8を図1ないし図10に対応させて固定してもよい。
【0109】
放出体8はディスク状の本体82を有している。本体82は、有利にはPTFEから成っているが、適当な弾性材料であれば他のいかなる材料から成っていてよい。本体82は、取り付け位置では、その半径方向内側領域10でもって弾性変形のもとに軸68(図22)上に載置されている。
【0110】
モータ軸68に誘導された電圧を放出させるため、放出体8の本体82は、導電性材料から成る被覆部83によって完全に取り囲まれている。このような材料はたとえば、本体82上へ継続的にしっかりと装着することのできるシルバーコーティングである。
【0111】
被覆部83が設けられているため、本体82自体は導電性材料から成っている必要はない。しかし、本体82も導電性材料、好ましくは導電性PTFEから製造されていれば有利である。図1ないし図10の実施形態の場合のように、誘導された電圧をモータ軸68から接地されたハウジング69(図22)へ放出させることができる導電性材料であれば、他のいかなる材料から成っていてもよい。
【0112】
放出体8の半径方向内側領域10は、取り付け位置では、前述したように弾性変形のもとに、よってラジアル力のもとにモータ軸68に当接し、これによって誘導された電圧をモータ軸68から確実に放出することが保証されている。
【0113】
被覆部83の比抵抗ρは、本体82の比抵抗ρよりも複数倍小さい。この導電性の被覆部83を装着することにより、導電性がさらに改善され、よって抵抗が著しく減少する。
【0114】
抵抗をさらに減少させるには、放出体8の半径方向内側領域10で、被覆部83の、モータ軸68とは逆の側84が、密封すべき軸の側85と導電結合されているのが有利である。これを達成するため、本体82は、半径方向内側領域10に、その周方向に配分して配置される複数の貫通破断部86を備え、これらの貫通破断部86は導電性材料87で少なくとも部分的に充填されている。この導電性材料は、有利には、被覆部83を構成する材料と同じ材料である。貫通破断部86内の材料87を介して、被覆部83の2つの側84と85は互いに結合されている。
【0115】
貫通破断部86は種々の形状を有していてよい。図27ないし図29では、これら貫通破断部の可能な形状を例示したにすぎない。
【0116】
図27によれば、貫通破断部86は円形の横断面を有している。貫通破断部86は、周方向において放出体8の半径方向内側領域10内に互いに間隔を持って直列に配置されている。この場合、貫通破断部86は放出体8の端面88から十分な間隔を有する。
【0117】
図28の実施形態では、貫通破断部86は縦長の、半径方向に延びるスリットとして形成され、これらスリットは、少なくとも部分的に、有利には完全に、導電性材料87で充填されている。スリット状の貫通破断部86は、放出体8の周方向に同様に均等に配分して配置され、放出体8の端面88から十分な間隔を有している。
【0118】
図29の実施形態では、貫通破断部86は波形状に形成され、実質的に半径方向に延びるように配置されている。これらの貫通破断部86も放出体8の周方向に均等な間隔で配分して配置されている。
【0119】
図27ないし図29は、貫通破断部86の可能な構成を例示したにすぎなく、貫通破断部86の図示した形状が限定的なものであるとみなすべきでない。重要なことは、貫通破断部86が少なくとも部分的に、有利には完全に導電性材料87で充填され、これによって被覆部83の2つの側84,85が互いに導電結合されているということである。
【0120】
上述の実施形態では、被覆部83は弾性のある本体82上に被着され、高導電性材料から製造されている。貫通破断部86を介して被覆部83の2つの側84,85は互いに導電結合されている。
【0121】
貫通破断部86は放出体8の半径方向内側領域10に次のように設けられており、すなわち該破断貫通部が放出体8のこの領域10の載置領域においてモータ軸68に位置しているように設けられている。軸接地リングの長期使用時に被覆部が側85で摩耗すれば、貫通破断部86内の導電性材料87がモータ軸68と接触する。このとき、誘導された電圧は、貫通破断部86内の導電性材料87と反対側84の材料とを介して、そこから保持リング79内へ放出させることができる。貫通破断部86が本体82を貫通しているので、誘導された電圧の放出自体は、側85での導電性材料の損失後に、本体82も摩耗に曝される場合に確保されている。したがって、放出体8の全寿命期間中に、誘導された電圧をモータ軸68から確実に放出できるよう、構造的に非常に簡潔な態様で確保されている。
【0122】
他の(図示していない)実施形態では、放出体8は貫通破断部86を備えていなくてもよい。このケースでは、放出体8は、被覆部83を備えた本体82のみを有する。
【0123】
さらに、本体82の側84にだけ被覆部83を備えさせ、他方対向する、モータ軸68の側85には被覆部を設けないように構成することが可能である。このため、本体82内には、導電性材料87を備える貫通破断部86が設けられる。このケースでは、電圧はモータ軸68から、貫通破断部86内にある材料を介して、側84にある被覆部83へ誘導され、そこから保持リング79内へ放出される。ここから適当な態様でハウジング69内への排出が行われる。保持リング79は、接地されたハウジング69への電圧の放出が保証されるように、ハウジング69の取り付け空間70内に取り付けられている。貫通破断部86は、電圧がモータ軸68から確実に前記態様で放出されるように設けられている。本体82を貫通破断部86が貫通しているので、貫通破断部86内の導電性材料とモータ軸68との接触は、本体82がモータ軸に載置されているその半径方向内側領域10で摩耗しても存続する。
【0124】
図27ないし図29を用いて説明した貫通破断部86の形状は、放出体8において互いに組み合わせて設けられていてもよい。
【0125】
図30および図31は、放出体8が基本的には図25および図26の実施形態の場合と同じように構成された実施形態を示している。放出体8は、弾性変形可能な、リングディスク状の本体82を有し、本体82は被覆部83で完全に覆われている。放出体8が軸68上に載置されている半径方向内側領域10には、少なくとも部分的に導電性材料87で充填されている複数の貫通破断部86が設けられている。貫通破断部86は、前記実施形態を用いて説明した構成を有していてよい。
【0126】
前記実施形態と異なるのは、本体82が軸68とは逆の側84に表面構造部89を備えていることである。表面構造部89は、本体82の半径方向の全幅にわたって且つ全周にわたって設けられている。表面構造部89はたとえば溝によって形成されていてよく、これらの溝はたとえば互いに半径方向に接続し、本体82の周方向に延在する。図30および図31からわかるように、これらの溝はたとえば本体82の厚さの半分にわたって延在している。
【0127】
導電性材料は、表面構造部89が少なくとも部分的に、有利には完全に充填されて連続した被覆部を本体82の側84に生じさせるように、側84に被着される。
【0128】
表面構造部89が本体82の側84に設けた凹部によって形成されているので、誘導された電圧のモータ軸68からの特に良好な放出が保証されている。貫通破断部86のサイズは、その中にある導電性材料87がいかなる場合も表面構造部89内にある導電性材料と接触するように選定されている。さらに、導電性材料を充填した表面構造部89を備える本体82によって導電性が著しく改善されている。
【0129】
この実施形態も、放出体8が長い寿命を有し、モータ軸68からの誘導された電圧の放出が高程度に確保されていることを特徴としている。
【0130】
放出体8は、前記実施形態に関して説明したように、貫通破断部86なしで形成されていてもよい。さらに、本体82の、軸68の側86を、導電性材料で被覆させないことも可能であり、その結果このケースでは、電圧の放出は貫通破断部86内の導電性材料87を介して前述のように行われる。
【0131】
図25ないし図31の実施形態の場合、貫通破断部86の幾何学的横断面は、回転する軸68と導電性材料との有利な接触面が生じ、被覆部および/または本体82を取り囲んでいる材料が摩耗しても、軸接地リングの作動時間にわたって前記接触面が維持されるように選定されている。ディスク状の放出体8の固定は、前述した実施形態に対応して、たとえば図1ないし図3を用いて説明したように、2つのクランプディスクまたはクランプリングを用いて行ってもよい。また、放出体8は、図20および図21の実施形態に対応して、軸68に当接するのではなく、接地されているハウジング69の取り付け空間70の内壁71に当接するように取り付けられていてもよい。
【0132】
さらに、たとえば図4および図5を用いて説明したように、図25ないし図31による放出体をたとえば対を成して使用することが可能である。
【0133】
基本的には、図25ないし図31による放出体を、図1ないし図24のすべての実施形態において使用することが可能である。
【0134】
図32ないし図34は、弾性材料から成る3つのリングディスク状本体82を有し、これら本体82がPTFE、エラストマーまたは他の適当な素材から成ることができる軸接地リングを示している。これらの素材は導電性があっても、導電性が悪くても、或いは導電性がなくてもよい。3つの本体82は、該本体82の被覆部83を形成する導電性箔によって互いに分離されている。被覆部83は同様にリングディスク状に形成され、導電性材料から成っている。被覆部83は、取り付け位置で、その半径方向内側領域90でもってモータ軸68上に半径方向プレストレス力で載置されている。
【0135】
被覆部83は、その半径方向外側領域91でもって、端部側の2つの本体82をu字状に取り囲んでいる(図33)。中央の本体82は、両側を被覆部83によって完全に覆われている。モータ軸68側の本体82は、そのモータ軸68の側でもって、外周の幅狭領域でのみ被覆部83(箔)によって覆われている。これに対し、モータ軸68とは逆の側の本体82は、モータ軸68とは逆の側でもって、外周の幅狭領域でのみ本体83(箔)によって覆われている。
【0136】
複数の本体82とそれらの間にある被覆部83とから成るパックは、外側エッジで、導電性材料から成る保持リング79によってまとめてクランプされる。保持リング79はほぼu字状の横断面を有し、本体82と被覆部83とが一緒に圧縮されるように形成されている。被覆部83は、外側の2つの本体82の外側エッジを取り囲んでいる領域でもってウェブ92に当接し、外側の、半径方向の短い部分でもって保持リング79の脚部93,94に当接している。
【0137】
軸接地リングは、本体82がその半径方向内側エッジ10でもってモータ軸68に当接するように形成されている。被覆部83も同様に、そのエッジ90でもって半径方向のプレストレス力でモータ軸68に当接するように形成されている。これにより、誘導された電圧はモータ軸68から被覆部83を介してクランプリングとして用いられる保持リング79へ放出され、保持リング79からこの電圧は前述した態様で図示していないハウジング69(図22)へ放出させることができる。
【0138】
得られる電気抵抗は、箔状の被覆部83の数量と被覆部83の接触面のサイズとを介してモータ軸68を用いて簡単に調整できる。
【0139】
本体82はその内周に沿って複数のスリット95を備えている。これらのスリット95は、有利には内側エッジから半径方向へ延在し、周方向に均等に配分して配置されている。互いに隣り合っているスリット95の間には、モータ軸68への本体82の確実な当接を保証する舌片96が形成される。
【0140】
有利には、被覆部83(箔)も、半径方向内側のエッジに、該半径方向内側のエッジから有利には半径方向に延在する複数のスリット97を備えている。スリット97の間には、同様にモータ軸68に対する被覆部83の申し分のない当接を保証する舌片98が形成される。これによって、誘導された電圧が確実にモータ軸68から放出されるよう確保されている。
【0141】
本体82のスリット95が被覆部83のスリット97に対し周方向にずらして配置されていれば有利である。このオプションのずれは、被覆部83のスリット97が、半径方向に見て、本体82のスリット95の間の中央に位置するように設けられていてよい。
【0142】
導電性の被覆部83として、たとえば銅箔を使用することができる。このような箔はたとえばほぼ0.04mmに過ぎない厚さを有し、その結果サイズが小さな軸接地リングに対しても使用することができる。それぞれの被覆部83とともに放出体8を形成している本体82もわずかな厚さを有しているにすぎない。したがって、たとえばPTFEから成るディスク状本体83はほぼ0.3mm程度の厚さを有するにすぎない。
【0143】
この実施形態によっても、モータ軸68に誘導された電圧を確実に放出させることができる。本体82が時間とともに摩耗しても、導電性の被覆部83が常にモータ軸68と接触しており、その結果軸接地リングの寿命期間全体らわたって、誘導された電圧の確実な放出が確保されている。
【0144】
例示した保持リング79の代わりに、本体82と被覆部83とは他の実施形態に対応して固定されていてもよい。重要なことは、ハウジングに対する良好な接触(非常に小さな電気抵抗)である。図示した実施形態とは異なり、軸接地リングは対応する数量の被覆部83(箔)を備えた3つの本体82よりも少ないまたは覆い本体を有していてもよい。
【0145】
以上説明した実施形態では、放出体8,8a,29は、有利には、化学的および熱的に耐性があって摩擦の発生が少ない導電性材料から作製されている。この場合、有利な材料として導電性PTFEが考えられる。しかし、放出体8,8a,29はたとえばエラストマーマトリックスから成っていてもよく、このエラストマーマトリックス内に十分な量の導電性の充填剤が封入される。軸接地リングは、誘導された電圧を確実に軸68から接地されたハウジング69へ放出させる。複数の放出体がまとめられて1つのパックを形成すると、軸68から誘導された電圧の放出性が改善する。特に放出体が導電性PTFEから成っていれば、軸接地リングの使用中に汚染は生じず、生じてもわずかである。これは、特に、軸68を密封するための密封システムであって汚染によって損傷するであろう前記密封システムとともに軸接地リングを使用する場合に有利である。
【0146】
すべての実施形態において、特に図25ないし図34の実施形態においては、1Ωよりも著しく小さな、モータ軸68と接地されたハウジング69との間の抵抗値が達成される。しかも、0.01Ω以下の抵抗値を達成可能である。
図1
図2
図3
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