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特許7033549細胞に基づくネオ抗原ワクチンおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】細胞に基づくネオ抗原ワクチンおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20220303BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20220303BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220303BHJP
   A61K 35/19 20150101ALI20220303BHJP
   A61K 35/18 20150101ALI20220303BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220303BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220303BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220303BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220303BHJP
   C12N 5/078 20100101ALN20220303BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220303BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20220303BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20220303BHJP
   C12N 15/27 20060101ALN20220303BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
A61K48/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P43/00 105
A61P37/02
A61P37/06
A61P35/00
A61P35/02
A61P11/00
A61P17/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P37/04
A61K39/00
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K35/15 Z
A61K35/17 Z
A61K35/19 Z
A61K35/18 Z
A61K35/76
C12N5/10 ZNA
C12N15/867 Z
C12N15/09 Z
C12N5/078
C07K16/28
C12N5/0783
C12N15/24
C12N15/27
C12N15/62 Z
【請求項の数】 85
(21)【出願番号】P 2018557312
(86)(22)【出願日】2017-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017031171
(87)【国際公開番号】W WO2017192924
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-27
(31)【優先権主張番号】62/331,906
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506139369
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー リサーチ センター
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リデル, スタンリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーチ, ジョシュア
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/040900(WO,A1)
【文献】特表2008-539751(JP,A)
【文献】特表2007-535924(JP,A)
【文献】国際公開第2016/054555(WO,A2)
【文献】ADHAM S BEAR; CONRAD R CRUZ; AARON E FOSTER,T CELLS AS VEHICLES FOR CANCER VACCINATION,JOURNAL OF BIOMEDICINE AND BIOTECHNOLOGY,米国,2011年,VOL:2011,PAGE(S):1 - 7,http://dx.doi.org/10.1155/2011/417403
【文献】J. Immunol., 1998, 160(3):1139-1147
【文献】CARRENO BEATRIZ M; ET AL,CANCER IMMUNOTHERAPY. A DENDRITIC CELL VACCINE INCREASES THE BREADTH AND DIVERSITY 以下備考,SCIENCE,2015年05月15日,VOL:348, NR:6236,PAGE(S):803 - 808,http://dx.doi.org/10.1126/science.aaa3828,OF MELANOMA NEOANTIGEN-SPECIFIC T CELLS
【文献】Molecular Therapy, 2012, 20(5):927-937
【文献】SONG-NAN ZHANG; IL-KYU CHOI; JING-HUA HUANG; ET AL,OPTIMIZING DC VACCINATION BY COMBINATION WITH ONCOLYTIC ADENOVIRUS COEXPRESSING IL-12 AND GM-CSF,MOLECULAR THERAPY,2011年08月,VOL:19, NR:8,PAGE(S):1558 - 1568,http://dx.doi.org/10.1038/mt.2011.29
【文献】YOZO NAKAZAWA; LESLIE E HUYE; GIANPIETRO DOTTI; ET AL,OPTIMIZATION OF THE PIGGYBAC TRANSPOSON SYSTEM FOR THE SUSTAINED GENETIC MODIFICATION 以下備考,J.IMMUNOTHER.,2009年10月,VOL:32 ,NR:8,PAGE(S):1-18,http://dx.doi.org/10.1097/CJI.0b013e3181ad762b,OF HUMAN T LYMPHOCYTES
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞であって、以下:
(i)融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、コードされた前記融合タンパク質は、以下:
(i)(a)疾患または障害に関連する外因性ネオ抗原であって、CD8 T細胞が特異的に結合するエピトープを含むペプチド含む、外因性ネオ抗原、および、
(i)(b)抗原ペプチドまたはネオ抗原ペプチドであって、CD4 T細胞が特異的に結合するエピトープを含む、抗原ペプチドまたはネオ抗原ペプチド
を含む、ポリヌクレオチド、ならびに、
(ii)免疫原性エンハンサーをコードするポリヌクレオチド
を含むT細胞。
【請求項2】
前記(i)(b)の抗原ペプチドまたはネオ抗原ペプチドが、前記ポリヌクレオチドを含む前記T細胞に対して外因性である、請求項1に記載のT細胞。
【請求項3】
前記(i)(b)の抗原ペプチドまたはネオ抗原ペプチドが、前記疾患または障害に関連する、請求項1または2に記載のT細胞。
【請求項4】
前記(i)(a)および/または(i)(b)のネオ抗原が、腫瘍ネオ抗原を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項5】
前記(i)(a)および/または(i)(b)の疾患または障害が癌を含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項6】
ネオ抗原または抗原が、KRAS、B-Raf、SF31、MYD88、DDX3X、MAPK1、GNB1、p53、raf、ras、myc、pRb、PTEN、CD95、α-フェトプロテイン(AFP)、B7H4、BTLA、CD3、CD19、CD20、CD25、CD22、CD28、CD30、CD40、CD44v6、CD52、CD56、CD79b、CD80、CD81、CD86、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD151、CD276、CA125、CEA、CEACAM6、c-Met、CT-7、CTLA-4、EGFR、EGFRvIII、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EphA2、FLT1、FLT4、Frizzled、O-アセチル-GD2、GD2、GHRHR、GHR、GITR、gp130、HVEM、IGF1R、IL6R、KDR、L1CAM、Lewis A、Lewis Y、LTβR、LIFRβ、LRP5、MAGE、メソセリン、MUC1、NY-ESO-1、がん特異的ネオ抗原、OSMRβ、PD1、PD-L1、PD-L2、PSMA、PTCH1、RANK、Robo1、ROR1、TERT、TGFBR2、TGFBR1、TLR7、TLR9、TNFRSF4、TNFR1、TNFR2、チロシナーゼ、TWEAK-R、またはWT-1に由来する、請求項1から5までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項7】
複数のネオ抗原を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項8】
2種から約20種までのネオ抗原を含む、請求項に記載のT細胞。
【請求項9】
2種から約10種までのネオ抗原を含む、請求項またはに記載のT細胞。
【請求項10】
ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、ナイーブセントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1からまでのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項11】
CD4T細胞、CD8T細胞またはその両方である、請求項1から10までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項12】
ヒトT細胞である、請求項1から11までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項13】
前記免疫原性エンハンサーが、IL-12、GM-CSF、誘導性細胞死因子、細菌フラジェリン、CD80、CD137L、CD40L、分泌型IL-2、CD25非依存的にT細胞に結合する分泌型IL-2、分泌型IL-15、分泌型IL-15-IL-15Rα複合体、分泌型IFNβ、分泌型IFN-α1、分泌型IL-7、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1から12までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項14】
前記免疫原性エンハンサーが、CD80、CD137L、IFN-β、IL-12、GM-CSF、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1から13までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項15】
前記免疫原性エンハンサーが、IL-12を含む、請求項1から14までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項16】
前記IL-12が、前記T細胞の細胞表面に局在するIL-12融合タンパク質を含む、請求項1に記載のT細胞。
【請求項17】
前記IL-12融合タンパク質が、(a)IL-12ドメイン;および(b)膜貫通ドメインを含む、請求項1に記載のT細胞。
【請求項18】
前記IL-12融合タンパク質が、(c)前記融合タンパク質を分泌経路に導くシグナルドメインをさらに含む、請求項1に記載のT細胞。
【請求項19】
前記免疫原性エンハンサーが、GM-CSFを含む、請求項から1までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項20】
前記免疫原性エンハンサーが、IL-12およびGM-CSFを含む、請求項1から19までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項21】
前記免疫原性エンハンサーが、誘導性細胞死因子を含む、請求項から20までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項22】
前記誘導性細胞死因子が、セリン/トレオニンキナーゼ3(RIPK3)と相互作用する受容体を含む、請求項21に記載のT細胞。
【請求項23】
前記誘導性細胞死因子が、細胞死シグナル伝達ドメインおよびマルチマー形成ドメインを含む融合タンパク質を含む、請求項21に記載のT細胞。
【請求項24】
前記細胞死シグナル伝達ドメインが、RIPK3キナーゼドメインを含み、前記マルチマー形成ドメインが、FK506結合タンパク質またはそのマルチマー形成部分を含む、請求項23に記載のT細胞。
【請求項25】
前記免疫原性エンハンサーが、細菌フラジェリンを含む、請求項から24までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項26】
前記細菌フラジェリンが、Salmonellaフェーズ1フラジェリンを含む、請求項25に記載のT細胞。
【請求項27】
前記細菌フラジェリンが、前記T細胞の細胞表面に局在する細菌フラジェリン融合タンパク質を含む、請求項25または2に記載のT細胞。
【請求項28】
前記細菌フラジェリン融合タンパク質が、(a)細菌フラジェリンドメイン;および(b)膜貫通ドメインを含む、請求項2に記載のT細胞。
【請求項29】
前記細菌フラジェリン融合タンパク質が、(c)前記融合タンパク質を分泌経路に導くシグナルドメインをさらに含む、請求項2に記載のT細胞。
【請求項30】
前記免疫原性エンハンサーが、前記T細胞において発現する場合、前記免疫原性エンハンサーを伴わない1種または複数種のネオ抗原をコードするT細胞と比較して、前記1種または複数種のネオ抗原に対する免疫応答を改善することができ、ここで、前記免疫応答は、T細胞の直接的および/または間接的活性化を含み、ここで、間接的活性化が樹状細胞によって媒介される、請求項1から29までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項31】
外因性共刺激分子をさらに含む、請求項1から30までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項32】
前記共刺激分子が、CD80、CD86、B7RP1、CD137L、OX40L、CD70、CD30L、CD154、ICAM-1、CD2BP2、LIGHT、KLRD1、CD83に特異的に結合するリガンド、CD137(4-1BB)のアゴニスト、CD134(OX-40)のアゴニスト、CD27のアゴニスト、CD28のアゴニスト、CD40のアゴニスト、CD122のアゴニスト、GITRのアゴニスト、ICOSのアゴニスト、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項31に記載のT細胞。
【請求項33】
前記共刺激分子が、CD80を含む、請求項31または32に記載のT細胞。
【請求項34】
前記共刺激分子が、CD137Lを含む、請求項31から33までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項35】
前記共刺激分子が、前記T細胞の細胞表面に局在する、請求項31から34までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項36】
前記融合タンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、各々がネオ抗原をコードする1種以上のミニ遺伝子を含むトランスポゾン発現構築物中に含まれる、請求項1から35までのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項37】
前記トランスポゾン発現構築物がさらにレポーター遺伝子を含む、請求項36に記載のT細胞。
【請求項38】
前記トランスポゾン発現構築物がさらに細胞表面マーカーをコードする核酸分子を含む、請求項36または37に記載のT細胞。
【請求項39】
前記細胞表面マーカーが、切断型ヒトCD19、切断型ヒトEGFR、切断型ヒトCD34、または、切断型ヒトNGFRを含む、請求項38に記載のT細胞。
【請求項40】
(a)請求項1から39までのいずれか一項に記載のT細胞、および(b)薬学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤を含む、組成物。
【請求項41】
ヒト被験体において疾患または障害を処置するための組成物であって、請求項1から39までのいずれか一項に記載のT細胞、または請求項40に記載の組成物を含む、組成物。
【請求項42】
ネオ抗原の発現に関連する疾患または障害を有するヒト被験体を処置するための組成物であって、請求項1から39までのいずれか一項に記載のT細胞、または請求項40に記載の組成物を含む、組成物。
【請求項43】
前記疾患または前記障害の再燃または再発が防止される、請求項41または42に記載の組成物。
【請求項44】
複数回投与されることを特徴とする、請求項41から43までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
前記組成物の投与間の期間が、1週間、2週間、3週間、および1カ月から選択される、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記組成物が、前記T細胞の刺激用量において投与され、ここで、前記組成物が、外因性ネオ抗原および必要に応じて1種または複数種の外因性免疫原性エンハンサーを含むT細胞を含む追加刺激用量の組成物と組み合わせて投与される、請求項41から45までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記疾患または前記障害が、ウイルス感染、細菌感染、過剰増殖性障害、または自己免疫疾患である、請求項41から46までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記疾患または前記障害が、過剰増殖性疾患または障害である、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記過剰増殖性疾患または障害が血液学的悪性疾患または固形がんである、請求項4に記載の組成物。
【請求項50】
前記過剰増殖性疾患または障害が、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)多発性骨髄腫(MM)、B細胞リンパ腫、および、B細胞がんから選択される血液学的悪性疾患である、請求項4に記載の組成物。
【請求項51】
前記過剰増殖性疾患または障害が、癌腫、胆管がん、膀胱がん、骨および軟部組織癌腫、脳腫瘍、乳房の腺癌、前立腺の腺癌、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、類腱腫、胚性がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、胃腺癌、多形膠芽腫、婦人科腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、肝臓がん、肺がん、肺の気管支原性癌、中皮腫、悪性黒色腫、神経芽腫、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、膵管腺癌、原発性星状細胞腫瘍、原発性甲状腺がん、前立腺がん、腎臓がん、腎細胞癌、横紋筋肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、精巣胚細胞腫瘍、尿路上皮がん、子宮肉腫子宮がん、および黒色腫から選択される固形がんである、請求項4に記載の組成物。
【請求項52】
前記過剰増殖性疾患または障害が肺がんである、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記過剰増殖性疾患または障害が黒色腫または悪性黒色腫である、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
前記T細胞が、前記ヒト被験体に対して同系、同種異系、または自己のものである、請求項41から53までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
前記T細胞が、前記ヒト被験体に対して自己のものである、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記T細胞が、前記ヒト被験体に対して同種異系のものである、請求項54に記載の組成物。
【請求項57】
追加の補助剤または治療剤と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項41から56までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
前記補助剤または治療剤と同時にまたは逐次的に投与されることを特徴とする、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記補助剤または治療剤が、化学療法;免疫チェックポイント分子の阻害剤;共刺激分子;免疫原性を高める分子;細胞療法;またはワクチンを含む、請求項57または58に記載の組成物。
【請求項60】
前記補助剤または治療剤が、化学療法を含む、請求項57から5までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
前記補助剤または治療剤が、免疫チェックポイント分子の阻害剤を含む、請求項57から60までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
前記免疫チェックポイント分子の阻害剤が、PD-1、PD-L1、またはPD-L2、LAG3、CTLA4、B7-H3、B7-H4、CD244/2B4、HVEM、BTLA、CD160、TIM3、GAL9、KIR、PVR1G(CD112R)、PVRL2、アデノシン、A2aR、免疫抑制性サイトカイン、IDO、アルギナーゼ、VISTA、TIGIT、LAIR1、CEACAM-1、CEACAM-3、CEACAM-5、Treg細胞、またはそれらの任意の組み合わせの活性または発現を遮断する作用物質を含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
前記PD-1、PD-L1、またはPD-L2の活性または発現を遮断する作用物質が、PD-1に結合する抗体を含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記補助治療剤が、共刺激分子を含む、請求項57から63までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
前記共刺激分子が、CD80、CD86、B7RP1、CD137L、OX40L、CD70、CD30L、CD154、ICAM-1、CD2BP2、LIGHT、KLRD1、CD83に特異的に結合するリガンド、CD137(4-1BB)のアゴニスト、CD134(OX-40)のアゴニスト、CD27のアゴニスト、CD28のアゴニスト、CD40のアゴニスト、CD122のアゴニスト、GITRのアゴニスト、ICOSのアゴニスト、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
前記共刺激分子が、CD80を含む、請求項64または65に記載の組成物。
【請求項67】
前記共刺激分子が、CD137Lを含む、請求項65または66に記載の組成物。
【請求項68】
前記補助剤または治療剤が、ワクチンを含む、請求項57から67までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項69】
アジュバントと組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項41から68までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項70】
前記アジュバントが、ミョウバンまたはアルミニウム塩、GM-CSF、ガンマイヌリン、ISCOM、リポソーム、MF59、モノホスホリルリピドA、ビロソームおよび他のウイルス様粒子、またはAquilaのQS-21 stimulonを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項71】
請求項1から39までのいずれか一項に記載のT細胞を調製する方法であって、前記T細胞に、(a)被験体の試料中で同定された1種または複数種のネオ抗原を含む前記融合タンパク質をコードする核酸分子を含有するトランスポゾンプラスミド;および(b)トランスポザーゼをコードする核酸分子を含むプラスミドを導入し、それにより、前記T細胞を調製するステップを含む、方法。
【請求項72】
前記トランスポゾンプラスミドが、piggyBacトランスポゾンプラスミドまたはSleeping beautyトランスポゾンプラスミドを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記トランスポゾンプラスミドが、piggyBacトランスポゾンプラスミドを含む、請求項71または72に記載の方法。
【請求項74】
前記試料の全エキソームまたはRNA配列決定を使用して前記ネオ抗原を同定するステップ;および前記ネオ抗原をコードする前記核酸分子を前記トランスポゾンプラスミドに挿入するステップをさらに含む、請求項71から73までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
ネオ抗原および/もしくは抗原を含むペプチドか、または、ネオ抗原および/もしくは抗原からなるペプチドの、MHCに対する結合を予測するステップをさらに含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
インビトロにおける被験体由来のサンプルのHLAタイピングをさらに含む、請求項71から75までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
ネオ抗原をコードする前記核酸分子が、タンデムなミニ遺伝子を含む、請求項請求項71から76までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記タンデムなミニ遺伝子が、2種から約20種までのネオ抗原を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記タンデムなミニ遺伝子が、2種から約10種までのネオ抗原を含む、請求項77または78に記載の方法。
【請求項80】
前記T細胞が、前記被験体に対して同系、同種異系、または自己のものである、請求項71から79までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記T細胞が、前記被験体に対して自己のものである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記T細胞が、前記被験体に対して同種異系のものである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
記トランスポゾンプラスミドおよび前記トランスポザーゼをコードする核酸分子を含むプラスミドが、前記T細胞にex vivoで導入される、請求項71から82までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記T細胞に免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子を含むプラスミドを導入するステップをさらに含む、請求項71から83までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子が、前記トランスポゾンプラスミド中に含まれる、請求項84に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の利益に関する声明
この発明は、National Institutes of Healthによって付与されたCA114536およびCA136551の下、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
配列表に関する記述
本願に関連する配列表は、紙コピーの代わりにテキスト形式で提供され、これによって参照により本明細書に組み入れられる。配列表を含むテキストファイルの名称は、360056_440WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。このテキストファイルは181KBであり、2017年5月3日に作成されたものであり、EFS-Web経由で電子的に提出されることになる。
【背景技術】
【0003】
T細胞の、組織学的性質が異なるヒトがんを認識し、排除する潜在性が理解されている。例えば、T細胞調節分子(免疫チェックポイント分子)を遮断する抗体は、免疫機能を高め、抗腫瘍活性を有することが示されている(Brahmerら、N Engl J Med、366巻:2455頁、2012年;Topalianら、N Engl J Med、366巻:2443頁、2012年)。しかし、大多数のがん患者では、免疫チェックポイント分子の阻害剤を用いて処置した場合に長続きする免疫応答は達成されず、これは、おそらく、多くの患者が、誘導またはレスキューされ得る腫瘍抗原に対する機能的なT細胞応答を欠くことが原因である(Tumehら、Nature、515巻:568頁、2014年)。したがって、腫瘍抗原に対するロバストなT細胞応答を誘発または追加刺激(boost)するための方法が必要とされている。
【0004】
従来のペプチドに基づく、および樹状細胞に基づくワクチン接種プラットフォームでは、臨床的に有効なT細胞応答を生じさせるのに苦戦してきた(Pennockら、Trends Immunol、37巻:170頁、2016年)。自己T細胞は細胞に基づくがんワクチンのための有用なプラットフォームであり得る。外来タンパク質を発現するように改変されたT細胞は動物(Bergerら、Blood、103巻:1261頁、2004年;Russoら、J Clin Invest.、117巻:3087頁、2007年)およびヒト(Bergerら、Blood、107巻:2294頁、2006年;Bergerら、J Virol、75巻:799頁、2001年;Riddellら、Nat Med、2巻:216頁、1996年)における免疫原性が高く、外来タンパク質に由来するペプチドエピトープに対する高頻度の長続きするT細胞応答を誘発する。移入されたT細胞は、抗原刺激が起こる二次リンパ器官に効率的に移動し、また、免疫原性が増大するようにさらに遺伝子改変することができる(Russoら、J Clin Invest.、117巻:3087頁、2007年)。
【0005】
がんワクチンの設計の間に対処しなければならない1つの問題は、ワクチンを用いて標的化する腫瘍関連抗原の選択である。腫瘍により発現される多くの「自己」抗原は、一般に、免疫寛容に起因して(例えば、XingおよびHogquist、Cold Spring Harb. Perspect. Biol.、4巻:a006957頁、2012年を参照されたい)、さらにオンターゲットオフ腫瘍毒性にも起因して(例えば、Morgan、Blood、20巻:3392頁(2013年)を参照されたい)、ワクチンに含めるには不十分な候補である。しかし、がんの特質として変異があり、発がん性曝露またはゲノムの不安定性に関連するがんでは多数の体細胞変異が蓄積する可能性がある。高度に変異したがんにおけるこれらの変異のいくつかは癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子において生じ、腫瘍成長を促進する一方、大部分は「パッセンジャー」変異であり、正常細胞に再導入した場合に観察可能な表現型は導かれない。パッセンジャー変異は、これらのがんのゲノム全体を通してランダムに分布し、発現されるアミノ酸の変化の大半を形成し、T細胞によって「外来」としてサンプリングおよび認識され得る。これらの体細胞変異はネオ抗原を生じさせ、また、大多数がパッセンジャー変異であるので、大半のネオ抗原は個々の患者の腫瘍に独特なものになる(SchumacherおよびSchreiber、Science、348巻:69頁、2015年)。腫瘍特異的ネオ抗原は、臨床的に有効なT細胞応答を導き得、伝統的にがんワクチン接種の標的とされてきた一部のがん特異的または過剰発現した自己抗原よりも良好ながんワクチンの標的になり得る(SchumacherおよびSchreiber、2015年)。
【0006】
ペプチド(Gubinら、Nature、515巻:577頁、2014年)およびリポソームRNA調製物(Kreiterら、Nature、520巻:692頁、2015年)を使用するネオ抗原ワクチン手法が多数の移植可能マウスがんモデルにおいて使用されており、ペプチドでパルスされた樹状細胞ワクチンにより、黒色腫を有する患者におけるネオ抗原応答が刺激されることが見出されている(Carrenoら、Science、348巻:803頁、2015年)。高度に変異した固形腫瘍に対する免疫応答におけるネオ抗原に関する潜在的に重要な役割を支持する証拠があるにもかかわらず、広範に誘導されかつ強力な免疫応答を誘発するために個々の腫瘍におけるネオ抗原レパートリーを利用するための再現可能な戦略は欠けている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Gubinら、Nature(2014年)515巻:577頁
【文献】Kreiterら、Nature(2015年)520巻:692頁
【文献】Carrenoら、Science(2015年)348巻:803頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、腫瘍特異的ネオ抗原などの疾患または障害に関するネオ抗原に対する免疫応答を生じさせる、細胞に基づくワクチンが依然として必要とされている。本開示の実施形態は、そのような必要性に対処し、さらに、他の関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本開示は、疾患または障害に関連する外因性ネオ抗原をコードするポリヌクレオチドおよび免疫原性エンハンサーをコードするポリヌクレオチドを含むT細胞を提供する。
【0010】
別の態様では、疾患または障害に関連する外因性ネオ抗原と、T細胞の細胞表面に局在するIL-12融合タンパク質を含む免疫原性エンハンサーとを含む免疫細胞であって、B細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、マクロファージ、単球、巨核球、肥満細胞、血小板、赤血球、および顆粒球から選択される免疫細胞が提供される。
【0011】
さらなる態様では、本開示のT細胞または免疫細胞、および薬学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤を含む、組成物が提供される。
【0012】
別の態様では、本開示は、疾患または障害を処置するための方法であって、本明細書に記載のT細胞、免疫細胞、または組成物を有効量でそれを必要とするヒト被験体に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0013】
なお別の態様では、ネオ抗原の発現に関連する疾患または障害を有するヒト被験体を処置するための方法であって、本明細書に記載のT細胞、免疫細胞、または組成物を有効量で被験体に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0014】
さらに別の態様では、本開示は、ネオ抗原をコードする核酸分子を含むトランスポゾン発現構築物を提供する。本開示のトランスポゾン発現構築物を含むキットも提供される。
【0015】
別の態様では、本開示のトランスポゾン発現構築物を含む宿主細胞が提供される。本開示の宿主細胞および薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物も提供される。
【0016】
さらなる態様では、本開示は、T細胞を調製する方法であって、T細胞に、(a)被験体の試料中で同定されたネオ抗原をコードする核酸分子を含有するpiggyBacトランスポゾンプラスミド;および(b)piggyBacトランスポザーゼをコードする核酸分子を含むプラスミドを導入し、それにより、T細胞を調製するステップを含む、方法を提供する。
【0017】
なお別の態様では、免疫細胞を調製する方法であって、前記免疫細胞に(a)被験体の試料中で同定されたネオ抗原をコードする核酸分子を含有するpiggyBacトランスポゾンプラスミド、(b)piggyBacトランスポザーゼをコードする核酸分子を含むプラスミド、および(c)前記T細胞の細胞表面に局在するIL-12融合タンパク質をコードする核酸分子を含むプラスミドを導入し、それにより、前記免疫細胞を調製するステップを含む、方法が提供される。 本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
疾患または障害に関連する外因性ネオ抗原をコードするポリヌクレオチドおよび免疫原性エンハンサーをコードするポリヌクレオチドを含むT細胞。
(項目2)
前記ネオ抗原が、腫瘍ネオ抗原を含む、項目1に記載のT細胞。
(項目3)
複数のネオ抗原を含む、前記項目のいずれか一項に記載のT細胞。
(項目4)
2種から約20種までのネオ抗原を含む、項目3に記載のT細胞。
(項目5)
2種から約10種までのネオ抗原を含む、項目3または4に記載のT細胞。
(項目6)
ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、ナイーブセントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組み合わせである、項目1から5までのいずれか一項に記載のT細胞。
(項目7)
CD4 T細胞、CD8 T細胞またはその両方である、項目1から6までのいずれか一項に記載のT細胞。
(項目8)
ヒトT細胞である、項目1から7までのいずれか一項に記載のT細胞。
(項目9)
前記免疫原性エンハンサーが、IL-12、GM-CSF、誘導性細胞死因子、細菌フラジェリン、CD80、CD137L、CD40L、分泌型IL-2、CD25非依存的にT細胞に結合する分泌型IL-2、分泌型IL-15、分泌型IL-15-IL-15Rα複合体、分泌型IFNβ、分泌型IFN-α1、分泌型IL-7、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前記項目のいずれか一項に記載のT細胞。
(項目10)
前記免疫原性エンハンサーが、IL-12を含む、項目1から9までのいずれか一項に記載のT細胞。
(項目11)
前記IL-12が、前記T細胞の細胞表面に局在するIL-12融合タンパク質を含む、項目10に記載のT細胞。
(項目12)
前記IL-12融合タンパク質が、(a)IL-12ドメイン;および(b)膜貫通ドメインを含む、項目11に記載のT細胞。
(項目13)
前記IL-12融合タンパク質が、(c)前記融合タンパク質を分泌経路に導くシグナルドメインをさらに含む、項目12に記載のT細胞。
(項目14)
前記免疫原性エンハンサーが、IL-12およびGM-CSFを含む、項目9から13までのいずれか一項に記載のT細胞。
(項目15)
前記免疫原性エンハンサーが、誘導性細胞死因子を含む、項目9から14までのいずれか一項に記載のT細胞。
(項目16)
前記誘導性細胞死因子が、セリン/トレオニンキナーゼ3(RIPK3)と相互作用する受容体を含む、項目15に記載のT細胞。
(項目17)
前記誘導性細胞死因子が、細胞死シグナル伝達ドメインおよびマルチマー形成ドメインを含む融合タンパク質を含む、項目15に記載のT細胞。
(項目18)
前記細胞死シグナル伝達ドメインが、RIPK3キナーゼドメインを含み、前記マルチマー形成ドメインが、FK506結合タンパク質またはそのマルチマー形成部分を含む、項目17に記載のT細胞。
(項目19)
前記免疫原性エンハンサーが、細菌フラジェリンを含む、項目9から18までのいずれか一項に記載のT細胞。
(項目20)
前記細菌フラジェリンが、Salmonellaフェーズ1フラジェリンを含む、項目19に記載のT細胞。
(項目21)
前記細菌フラジェリンが、前記T細胞の細胞表面に局在する細菌フラジェリン融合タンパク質を含む、項目19または20に記載のT細胞。
(項目22)
前記細菌フラジェリン融合タンパク質が、(a)細菌フラジェリンドメイン;および(b)膜貫通ドメインを含む、項目21に記載のT細胞。
(項目23)
前記細菌フラジェリン融合タンパク質が、(c)前記融合タンパク質を分泌経路に導くシグナルドメインをさらに含む、項目22に記載のT細胞。
(項目24)
外因性共刺激分子をさらに含む、前記項目のいずれか一項に記載のT細胞。
(項目25)
前記共刺激分子が、CD80、CD86、B7RP1、CD137L、OX40L、CD70、CD30L、CD154、ICAM-1、CD2BP2、LIGHT、KLRD1、CD83に特異的に結合するリガンド、CD137(4-1BB)のアゴニスト、CD134(OX-40)のアゴニスト、CD27のアゴニスト、CD28のアゴニスト、CD40のアゴニスト、CD122のアゴニスト、GITRのアゴニスト、ICOSのアゴニスト、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目24に記載のT細胞。
(項目26)
前記共刺激分子が、CD80を含む、項目25に記載のT細胞。
(項目27)
前記共刺激分子が、CD137Lを含む、項目24から26までのいずれか一項に記載のT細胞。
(項目28)
前記共刺激分子が、前記T細胞の細胞表面に局在する、項目24から27までのいずれか一項に記載のT細胞。
(項目29)
疾患または障害に関連する外因性ネオ抗原と、免疫細胞の細胞表面に局在するIL-12融合タンパク質を含む免疫原性エンハンサーとを含む免疫細胞であって、B細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、マクロファージ、単球、巨核球、肥満細胞、血小板、赤血球、および顆粒球から選択される免疫細胞。
(項目30)
前記IL-12融合タンパク質が、(a)IL-12ドメイン;および(b)膜貫通ドメインを含む、項目29に記載の免疫細胞。
(項目31)
前記IL-12融合タンパク質が、(c)前記融合タンパク質を分泌経路に導くシグナルドメインをさらに含む、項目30に記載の免疫細胞。
(項目32)
GM-CSF、誘導性細胞死因子、細菌フラジェリン、CD80、CD137L、CD40L、分泌型IL-2、CD25非依存的にT細胞に結合する分泌型IL-2、分泌型IL-15、分泌型IL-15-IL-15Rα複合体、分泌型IFNβ、分泌型IFN-α1、分泌型IL-7、またはそれらの任意の組み合わせから選択される第2の免疫原性エンハンサーをさらに含む、項目30から32までのいずれか一項に記載の免疫細胞。
(項目33)
(a)項目1から28までのいずれか一項に記載のT細胞または項目29から32までのいずれか一項に記載の免疫細胞、またはそれらの任意の組み合わせ、および(b)薬学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤を含む、組成物。
(項目34)
疾患または障害を処置するための方法であって、項目1から28までのいずれか一項に記載のT細胞、項目29から32までのいずれか一項に記載の免疫細胞、または項目33に記載の組成物を有効量でそれを必要とするヒト被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目35)
ネオ抗原の発現に関連する疾患または障害を有するヒト被験体を処置するための方法であって、項目1から28までのいずれか一項に記載のT細胞、項目29から32までのいずれか一項に記載の免疫細胞、または項目33に記載の組成物を有効量で前記被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目36)
前記疾患または前記障害の再燃または再発が防止される、項目34または35に記載の方法。
(項目37)
前記T細胞、前記免疫細胞、または前記組成物が複数回投与される、項目34から36までのいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
投与間の期間が、1週間、2週間、3週間、および1カ月から選択される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記疾患または前記障害が、ウイルス感染、細菌感染、過剰増殖性障害、または自己免疫疾患である、項目34から38までのいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記疾患または前記障害が、過剰増殖性疾患または障害である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記過剰増殖性疾患または障害が血液学的悪性疾患または固形がんである、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記過剰増殖性疾患または障害が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)および多発性骨髄腫(MM)から選択される血液学的悪性疾患である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記過剰増殖性疾患または障害が、胆管がん、膀胱がん、骨および軟部組織癌腫、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、類腱腫、胚性がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、胃腺癌、多形膠芽腫、婦人科腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、肝臓がん、肺がん、中皮腫、悪性黒色腫、神経芽腫、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、膵管腺癌、原発性星状細胞腫瘍、原発性甲状腺がん、前立腺がん、腎臓がん、腎細胞癌、横紋筋肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、精巣胚細胞腫瘍、尿路上皮がん、子宮肉腫および子宮がんから選択される固形がんである、項目41に記載の方法。
(項目44)
前記過剰増殖性疾患または障害が肺がんである、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記過剰増殖性疾患または障害が悪性黒色腫である、項目43に記載の方法。
(項目46)
前記T細胞または前記免疫細胞が、前記ヒト被験体に対して同系、同種異系、または自己のものである、項目34から45までのいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記T細胞または前記免疫細胞が、前記ヒト被験体に対して自己のものである、項目46に記載の方法。
(項目48)
追加の補助治療剤を投与するステップをさらに含む、項目34から47までのいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記リンパ球または前記組成物が、前記補助治療剤と同時にまたは逐次的に投与される、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記補助治療剤が、化学療法;免疫チェックポイント分子の阻害剤;共刺激分子;免疫原性を高める分子;細胞療法;またはワクチンを含む、項目48または49に記載の方法。
(項目51)
前記補助治療剤が、化学療法を含む、項目48から50までのいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記補助治療剤が、免疫チェックポイント分子の阻害剤を含む、項目48から51までのいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記免疫チェックポイント分子の阻害剤が、PD-1、PD-L1、またはPD-L2、LAG3、CTLA4、B7-H3、B7-H4、CD244/2B4、HVEM、BTLA、CD160、TIM3、GAL9、KIR、PVR1G(CD112R)、PVRL2、アデノシン、A2aR、免疫抑制性サイトカイン、IDO、アルギナーゼ、VISTA、TIGIT、LAIR1、CEACAM-1、CEACAM-3、CEACAM-5、Treg細胞、またはそれらの任意の組み合わせの活性または発現を遮断する作用物質を含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記PD-1、PD-L1、またはPD-L2の活性または発現を遮断する作用物質が、PD-1に結合する抗体を含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記補助治療剤が、共刺激分子を含む、項目48から54までのいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記共刺激分子が、CD80、CD86、B7RP1、CD137L、OX40L、CD70、CD30L、CD154、ICAM-1、CD2BP2、LIGHT、KLRD1、CD83に特異的に結合するリガンド、CD137(4-1BB)のアゴニスト、CD134(OX-40)のアゴニスト、CD27のアゴニスト、CD28のアゴニスト、CD40のアゴニスト、CD122のアゴニスト、GITRのアゴニスト、ICOSのアゴニスト、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記共刺激分子が、CD80を含む、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記共刺激分子が、CD137Lを含む、項目56または57に記載の方法。
(項目59)
前記補助治療剤が、ワクチンを含む、項目48から58までのいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
アジュバントを投与するステップをさらに含む、項目34から59までのいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記アジュバントが、ミョウバンまたはアルミニウム塩、GM-CSF、ガンマイヌリン、ISCOM、リポソーム、MF59、モノホスホリルリピドA、ビロソームおよび他のウイルス様粒子、またはAquilaのQS-21 stimulonを含む、項目60に記載の方法。
(項目62)
ネオ抗原をコードする核酸分子を含むトランスポゾン発現構築物。
(項目63)
(a)プロモーター;(b)第1のpiggyBacトランスポゾン逆方向反復;(b)前記ネオ抗原をコードする前記核酸分子;および(c)第2のpiggyBacトランスポゾン逆方向反復を含み、前記ネオ抗原をコードする前記核酸分子が、前記第1のpiggyBacトランスポゾン逆方向反復と前記第2のpiggyBacトランスポゾン逆方向反復の間に位置する、項目62に記載のトランスポゾン発現構築物。
(項目64)
前記トランスポゾン発現構築物が、プラスミド中に存在する、項目62または63に記載のトランスポゾン発現構築物。
(項目65)
細胞表面マーカーをコードする核酸分子をさらに含む、項目62から64までのいずれか一項に記載のトランスポゾン発現構築物。
(項目66)
前記細胞表面マーカーが、切断型ヒトCD19、切断型ヒトEGFR、切断型ヒトNGFR、切断型ヒトCD34、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目65に記載のトランスポゾン発現構築物。
(項目67)
IL-12、GM-CSF、誘導性細胞死因子、細菌フラジェリン、CD80、CD137L、CD40L、分泌型IL-2、CD25非依存的にT細胞に結合する分泌型IL-2、分泌型IL-15、分泌型IL-15-IL-15受容体アルファ複合体、分泌型IFNβ、分泌型IFN-α1、分泌型IL-7、またはそれらの任意の組み合わせから選択される免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子をさらに含む、項目62から66までのいずれか一項に記載のトランスポゾン発現構築物。

(項目68)
項目62から67までのいずれか一項に記載のトランスポゾン発現構築物を含むキット。
(項目69)
項目62から67までのいずれか一項に記載のトランスポゾン発現構築物を含む宿主細胞。
(項目70)
piggyBacトランスポザーゼをコードする核酸分子を含むpiggyBacトランスポザーゼ酵素発現構築物をさらに含む、項目69に記載の宿主細胞。
(項目71)
免疫系細胞である、項目69または70に記載の宿主細胞。
(項目72)
前記免疫系細胞が、樹状細胞、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、巨核球、肥満細胞、血小板、赤血球、または顆粒球である、項目71に記載の宿主細胞。
(項目73)
前記免疫系細胞が、T細胞である、項目72に記載の宿主細胞。
(項目74)
前記T細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、ナイーブセントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組み合わせである、項目73に記載の宿主細胞。
(項目75)
前記T細胞が、CD4 T細胞、CD8 T細胞またはその両方である、項目73または74に記載の宿主細胞。
(項目76)
ヒト細胞である、項目69から75までのいずれか一項に記載の宿主細胞。
(項目77)
ウイルスベクターをさらに含む、項目69から76までのいずれか一項に記載の宿主細胞。
(項目78)
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターである、項目77に記載の宿主細胞。
(項目79)
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、項目80に記載の宿主細胞。
(項目80)
前記ウイルスベクターが、IL-12、GM-CSF、誘導性細胞死因子、細菌フラジェリン、CD80、CD137L、CD40L、分泌型IL-2、CD25非依存的にT細胞に結合する分泌型IL-2、分泌型IL-15、分泌型IL-15-IL-15受容体アルファ複合体、分泌型IFNβ、分泌型IFN-α1、分泌型IL-7、またはそれらの任意の組み合わせから選択される免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子をさらに含む、項目77から79までのいずれか一項に記載の宿主細胞。
(項目81)
前記ウイルスベクターが、(a)前記宿主細胞の細胞表面に局在する融合タンパク質中に含まれるIL-12をコードする核酸分子および(b)GM-CSFをコードする核酸分子を含む、項目80に記載の宿主細胞。
(項目82)
前記ウイルスベクターが、共刺激分子をコードする核酸分子を含む、項目77から81までのいずれか一項に記載の宿主細胞。
(項目83)
前記核酸分子が、CD80、CD86、B7RP1、CD137L、OX40L、CD70、CD30L、CD154、ICAM-1、CD2BP2、LIGHT、KLRD1、CD83に特異的に結合するリガンド、CD137(4-1BB)のアゴニスト、CD134(OX-40)のアゴニスト、CD27のアゴニスト、CD28のアゴニスト、CD40のアゴニスト、CD122のアゴニスト、GITRのアゴニスト、ICOSのアゴニスト、またはそれらの任意の組み合わせを含む共刺激分子をコードする、項目82に記載の宿主細胞。
(項目84)
項目69から83までのいずれか一項に記載の宿主細胞および薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物。
(項目85)
項目1から28までのいずれか一項に記載のT細胞を調製する方法であって、前記T細胞に、(a)被験体の試料中で同定されたネオ抗原をコードする核酸分子を含有するpiggyBacトランスポゾンプラスミド;および(b)piggyBacトランスポザーゼをコードする核酸分子を含むプラスミドを導入し、それにより、前記T細胞を調製するステップを含む、方法。
(項目86)
前記試料の全エキソームまたはRNA配列決定を使用して前記ネオ抗原を同定するステップ;および前記ネオ抗原をコードする前記核酸分子を前記piggyBacトランスポゾンプラスミドに挿入するステップをさらに含む、項目85に記載のT細胞を調製する方法。
(項目87)
ネオ抗原をコードする前記核酸分子が、タンデムなミニ遺伝子を含む、項目85または86に記載の方法。
(項目88)
前記タンデムなミニ遺伝子が、2種から約20種までのネオ抗原を含む、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記タンデムなミニ遺伝子が、2種から約10種までのネオ抗原を含む、項目87または88に記載の方法。
(項目90)
前記T細胞が、前記被験体に対して同系、同種異系、または自己のものである、項目85から89までのいずれか一項に記載の方法。
(項目91)
前記T細胞が、前記被験体に対して自己のものである、項目90に記載の方法。
(項目92)
前記piggyBacトランスポゾンプラスミドおよび前記piggyBacトランスポザーゼをコードする核酸分子を含むプラスミドが、前記T細胞にex vivoで導入される、項目85から91までのいずれか一項に記載の方法。
(項目93)
前記T細胞に免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子を含むプラスミドを導入するステップをさらに含む、項目85から92までのいずれか一項に記載の方法。
(項目94)
前記免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子が、前記piggyBacトランスポゾンプラスミド中に含まれる、項目93に記載の方法。
(項目95)
項目29から32までのいずれか一項に記載の免疫細胞を調製する方法であって、前記免疫細胞に(a)被験体の試料中で同定されたネオ抗原をコードする核酸分子を含有するpiggyBacトランスポゾンプラスミド、(b)piggyBacトランスポザーゼをコードする核酸分子を含むプラスミド、および(c)前記T細胞の細胞表面に局在するIL-12融合タンパク質をコードする核酸分子を導入し、それにより、前記免疫細胞を調製するステップを含む、方法。
(項目96)
(c)の核酸分子によりコードされるIL-12融合タンパク質が、IL-12ドメインおよび膜貫通ドメインを含む、項目95に記載の方法。
(項目97)
(c)の核酸分子によりコードされるIL-12融合タンパク質が、前記融合タンパク質を分泌経路に導くシグナルドメインをさらに含む、項目96に記載の方法。
(項目98)
前記IL-12融合タンパク質をコードする核酸分子が、プラスミド中に含まれる、項目95から97までのいずれか一項に記載の方法。
(項目99)
前記IL-12融合タンパク質をコードする核酸分子が、(a)のpiggyBacトランスポゾンプラスミド中に含まれる、項目95から98までのいずれか一項に記載の方法。
(項目100)
前記試料の全エキソームまたはRNA配列決定を使用して前記ネオ抗原を同定するステップ;および前記ネオ抗原をコードする前記核酸分子を前記piggyBacトランスポゾンプラスミドに挿入するステップをさらに含む、項目95から99までのいずれかに記載の方法。
(項目101)
ネオ抗原をコードする前記核酸分子が、タンデムなミニ遺伝子を含む、項目95から100までのいずれかに記載の方法。
(項目102)
前記タンデムなミニ遺伝子が、2種から約20種までのネオ抗原を含む、項目101に記載の方法。
(項目103)
前記タンデムなミニ遺伝子が、2種から約10種までのネオ抗原を含む、項目101または102に記載の方法。
(項目104)
前記免疫細胞が、前記被験体に対して同系、同種異系、または自己のものである、項目95から103までのいずれか一項に記載の方法。
(項目105)
前記免疫細胞が、前記被験体に対して自己のものである、項目104に記載の方法。
(項目106)
前記piggyBacトランスポゾンプラスミドおよび前記piggyBacトランスポザーゼをコードする核酸分子を含むプラスミドが、前記免疫細胞にex vivoで導入される、項目95から105までのいずれか一項に記載の方法。
(項目107)
前記免疫細胞に第2の免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子を含むプラスミドを導入するステップをさらに含む、項目95から106までのいずれか一項に記載の方法。
(項目108)
前記第2の免疫原性エンハンサーが、GM-CSFを含む、項目107に記載の方法。
(項目109)
前記第2の免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子が、ネオ抗原をコードする核酸分子を含む前記piggyBacトランスポゾンプラスミド中に含まれる、項目107または108に記載の方法。
(項目110)
前記GM-CSFをコードする核酸分子を含むプラスミドが前記免疫細胞にex vivoで導入される、項目109に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、個人向けの、腫瘍特異的ネオ抗原に基づくT細胞ワクチンを開発するための本開示の方法の概略を示す。大多数のネオ抗原は個々の患者のがんに独特なものであるので、各患者の腫瘍の「ミュータノーム(mutanome)」が決定され、それにより、ワクチンによって標的化すべき候補ネオ抗原の同定が可能になる。T細胞を患者から得、ネオ抗原を発現するように改変し、ex vivoで拡大させ、患者に投与することができる。
【0019】
図2図2は、オボアルブミンを発現するように操作されたTVAX細胞(「TOVA」細胞と称される)を用いた処置により、マウスにおけるオボアルブミン(「OVA」)に対するCD8応答が効率的に誘導されることを示す。6週齢の雄C57BL/6マウスに、-1日目に類遺伝子(CD45.1)ナイーブOT-1細胞2×10個を注射し、0日目および14日目にTOVAを注射した。OT-1細胞の頻度を6日目、13日目、および20日目に決定した。OVA特異的T細胞は、わずか2×10個のTOVA細胞の投与後に用量依存的な刺激(priming)、および、14日目における第2の2×10個のTOVA細胞の投与の7日後に循環T細胞の5~10%までの応答の効率的な追加刺激を示した。
【0020】
図3図3A~3Cは、piggyBacトランスポゾンによる、初代ヒトT細胞における抗原の安定な非ウイルス性発現を示す。T細胞におけるタンパク質発現を、フローサイトメトリーを使用して評価した。(A)初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、piggyBacトランスポザーゼをコードするプラスミドおよびCMV NLVエピトープと翻訳的に連結した切断型CD19をコードするpiggyBacトランスポゾンを用いてヌクレオフェクトした。抗CD3/CD28刺激の7日後にT細胞をCD19について染色した。(B)迅速な拡大プロトコールの13日目に、CD19T細胞をCD19マイクロビーズによって濃縮し、CD19について染色した。(C)NLVエピトープを安定に発現するT細胞と共培養した場合のCMV NLV特異的CD8T細胞によるインターフェロン産生(破線、トランスフェクトされていないT細胞(灰色)またはNLVペプチドでパルスした、トランスフェクトされていないT細胞(実線)と比較して)。
【0021】
図4図4A~4Bは、少量のRNAによりCD8およびCD4メモリー応答が効率的に拡大することを示す。CMV陽性ドナー由来のCD8T細胞またはCD4T細胞を、漸減量のCMV pp65遺伝子をコードするmRNAを用いて刺激した。非改変細胞およびCMV pp65ペプチドをパルスした非改変細胞がそれぞれ陰性対照および陽性対照としての機能を果たした。(A)CD8T細胞を、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)と複合体を形成した免疫優性NLVペプチドを含有するテトラマーを用いて染色した。(B)CD4T細胞を、ブレフェルジンAの存在下で、pp65遺伝子を包含するペプチドをパルスした自己B細胞と共にインキュベートし、細胞内IFN-γについて染色した。
【0022】
図5A図5A~5Bは、TVAXによるアジュバント分子の発現により、CD8T細胞の刺激が高まることを示す。(A)6週齢の雄C57BL/6マウスに、-1日目にトランスジェニックドナーCD4.5+/+TCROT-1 +/-CD8T細胞(オボアルブミン抗原ペプチドSIINFEKLに特異的なTCRを有する)500個を注射した実験の設計スキーム。0日目に、マウスは、T細胞ワクチン(TOVA細胞と称される全長オボアルブミンを発現するT細胞2×10個)を受けた。注射されたTOVA細胞の3群を、さらに膜係留型IL-12(mtIL-12)を発現するように、GM-CSFを分泌するように、またはその両方をなすように形質導入した。次いで、+7日目にマウスから採血し、T細胞をCD45.1について染色した。(B)各処置群からの、OT-1特異的TCRを有するCD8T細胞の百分率。
図5B図5A~5Bは、TVAXによるアジュバント分子の発現により、CD8T細胞の刺激が高まることを示す。(A)6週齢の雄C57BL/6マウスに、-1日目にトランスジェニックドナーCD4.5+/+TCROT-1 +/-CD8T細胞(オボアルブミン抗原ペプチドSIINFEKLに特異的なTCRを有する)500個を注射した実験の設計スキーム。0日目に、マウスは、T細胞ワクチン(TOVA細胞と称される全長オボアルブミンを発現するT細胞2×10個)を受けた。注射されたTOVA細胞の3群を、さらに膜係留型IL-12(mtIL-12)を発現するように、GM-CSFを分泌するように、またはその両方をなすように形質導入した。次いで、+7日目にマウスから採血し、T細胞をCD45.1について染色した。(B)各処置群からの、OT-1特異的TCRを有するCD8T細胞の百分率。
【0023】
図6A図6Aおよび6Bは、CD8T細胞のT刺激が交差提示によって起こることを示す。(A)6週齢の雄C57BL/6マウスに、CD4.5+/+TCROT-1 +/-CD8T細胞500個を注射し、クラスI MHCまたはb2m-/-OVA細胞2×10個を用いてワクチン接種し、採血し、CD45.1について染色した。(B)各処置群からの、OT-1特異的TCRを有するCD8T細胞の百分率。
図6B図6Aおよび6Bは、CD8T細胞のT刺激が交差提示によって起こることを示す。(A)6週齢の雄C57BL/6マウスに、CD4.5+/+TCROT-1 +/-CD8T細胞500個を注射し、クラスI MHCまたはb2m-/-OVA細胞2×10個を用いてワクチン接種し、採血し、CD45.1について染色した。(B)各処置群からの、OT-1特異的TCRを有するCD8T細胞の百分率。
【0024】
図7A図7A~7Cは、2種の抗原を発現するTVAX細胞が内因性CD4およびCD8応答を刺激し得ることを例示する。(A)6週齢の雄C57BL/6マウスに、CD4抗原LLO190(Listeria monocytogenes由来)をコードするウイルスを用いてさらに形質導入したTOVA細胞を使用してワクチン接種した。CD8細胞の2群およびCD4細胞の1群は、mtIL-12およびGM-CSFをさらに発現するものであった。+7日目に、細胞を染色し(OVA/CD8テトラマー;LLO190/CD4についての細胞内サイトカイン染色)、選別した。(B)CD8T細胞の百分率としてのOVA/CD8陽性テトラマー細胞。(C)CD4T細胞の百分率としての細胞内インターフェロン陽性細胞。
図7B】同上
図7C】同上
【0025】
図8A図8A~8Cは、mtIL-12を発現するように操作され、OVAをモデル抗原として含有するTVAX細胞が、移植可能マウス黒色腫モデルにおける治療有効性を有することを例示する。(A)6週齢の雄C57BL/6マウスに、B16F10-オボアルブミンマウス黒色腫細胞株に由来する細胞5×10個を注射した。+1日目に、マウスはTOVA/mt-IL12細胞2×10個を受け、+15日目および+29日目に追加刺激投与(同じ投与量)を伴った。動物を+10日目、+14日目、+17日目、および+21日目に屠殺し、腫瘍サイズを測定した。(B)注射後の各処置群についての腫瘍サイズ(mm)。(C)各処置群のパーセント生存。
図8B】同上
図8C】同上
【0026】
図9A図9A~9Cは、TVAX細胞によりマウス肉腫ネオ抗原に対する応答が誘導されることを示す。(A)6週齢の雄C57BL/6マウスに、連結したマウスネオ抗原Lama4およびAlg8をコードするウイルスベクターを用いて形質導入したT細胞を用いてワクチン接種した。TVAX細胞のサブセットに、L.monocytogenes抗原LLO190、mtIL-12+GM-CSFまたはその両方をさらに発現するように形質導入した。+13日目に、テトラマー染色を実施した。(B)各処置群についてのCD8T細胞の百分率としてのテトラマー陽性細胞。(C)追跡実験において、ワクチン接種したマウスは、+28日目に、Alg8、Lama4、mt-IL12、およびGM-CSFを発現するように改変された同系T細胞2×10個の最初の刺激用量を受け、その後、「追加刺激」注射(細胞4×10個)を受けた。テトラマー染色を表示した時点で実施した。この実験における模擬ワクチン接種動物と比較したこれらのテトラマーについての検出限界は0.1%であった。群当たりN=3。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。
図9B】同上
図9C】同上
【0027】
図10図10は、患者腫瘍から候補ネオ抗原を同定するための典型的な方法(上)および2ラウンドの候補ネオ抗原を用いた刺激後の肺がん患者由来の末梢血からのT細胞応答を示すデータ(Elispotサイトカイン放出アッセイ)(左下および右下)を例示する。
【0028】
図11図11は、本開示によるT細胞ワクチンを形成するために、T細胞を、ネオ抗原を発現するように改変するための例示的なスキームを示す。右下には、肺がん患者由来のT細胞の自己TERF1 TVAXによる活性化を示す、原理証明実験からのフローサイトメトリーのデータが提示されている。
【0029】
図12A図12A~12Dは、20merの候補ネオ抗原ペプチドを用いた刺激後のがん患者由来の末梢血からのインターフェロン放出データ(Elispotアッセイ)、およびその後の候補の検証を示す。(A)プールされた候補ネオ抗原ペプチドを用いた刺激後の黒色腫患者由来の血液によるサイトカインの放出。(B)プールされた候補ネオ抗原ペプチドを用いた刺激後の肺がん患者由来の血液によるサイトカインの放出。(C)(A)に示されている黒色腫患者試料中の個々のペプチドに対する特異的なT細胞応答の検証。(D)(B)に示されている肺がん患者の試料中の個々のペプチドに対する特異的なT細胞応答の検証。
図12B】同上
図12C】同上
図12D】同上
【0030】
図13A図13A~Cは、追加の肺がん患者3名からの血液試料からのインターフェロン放出データ(Elispot)を示す。
図13B図13A~Cは、追加の肺がん患者3名からの血液試料からのインターフェロン放出データ(Elispot)を示す。
図13C図13A~Cは、追加の肺がん患者3名からの血液試料からのインターフェロン放出データ(Elispot)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は、ネオ抗原に対する免疫応答を誘発または追加刺激するための免疫原性組成物および細胞に基づくワクチンを提供する。ある特定の実施形態では、外因性ネオ抗原をコードし、1種または複数種のネオ抗原をコードする1つまたは複数の発現構築物をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む免疫細胞(例えば、Tリンパ球)、そのような発現構築物を含む宿主細胞、およびそれを使用するための方法が提供される。本明細書で提供する免疫細胞および宿主細胞は、腫瘍ネオ抗原などの外因性ネオ抗原を発現するように改変される。ある特定の実施形態では、免疫細胞および宿主細胞は、1種または複数種の外因性ネオ抗原に対する免疫応答を強化するために、1つまたは複数の免疫原性エンハンサー(例えば、外来またはヘルパー抗原、IL-12(例えば、膜係留型IL-12など)、GM-CSF)を発現するようにさらに改変される。
【0032】
免疫細胞または宿主細胞は、誘導またはレスキューされ得るネオ抗原(複数可)に対する機能的なT細胞応答をもたらし得る、特定の被験体により産生される1種または複数種のネオ抗原に対する免疫応答を誘導するための、個人向けの細胞に基づくワクチンに使用することができる。ある特定の実施形態では、ネオ抗原は、腫瘍ネオ抗原である。ネオ抗原には、1のみまたは少数の特定の個体において見出され、正常組織においては見出されない(したがって、オフターゲットの免疫原性が低減している)、および、中枢性寛容機構に供されないという利点がある。
【0033】
本開示をより詳細に示す前に、本明細書で使用される一定の用語の定義を提供することは、本開示の理解の助けになるだろう。さらなる定義は、本開示を通して示す。
【0034】
本明細書では、任意の濃度範囲、百分率範囲、比の範囲、または整数範囲は、別段の指示がない限り、述べられている範囲内の任意の整数の値、および適宜、その分数(例えば、整数の十分の一および百分の一)を含むと解されるものとする。また、任意の物理的特徴、例えば、ポリマーサブユニット、サイズまたは厚さに関して本明細書で述べられている任意の数値範囲は、別段の指示がない限り、述べられている範囲内の任意の整数を含むと解されるものとする。
【0035】
本明細書で使用される用語「約」は、別段の指示がない限り、示されている範囲、値または構造の±20%を意味する。
【0036】
本明細書で使用される用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、列挙されている成分の「1つまたは複数」を指すと解されたい。代替案(例えば「または」)の使用は、代替案のどちらか一方、両方、またはそれらの任意の組み合わせを意味すると解されたい。
【0037】
加えて、本明細書に記載の組成物および置換基の様々な組み合わせに由来する個々の特徴または特徴群は、あたかも各特徴または特徴群が個々に記載されている場合と同程度に、本願により開示されていると解されたい。したがって、特定の構造または特定の置換基の選択は、本開示の範囲内である。
【0038】
本明細書で使用される用語「含む(include)」、「有する」および「含む(comprise)」は、同義的に使用され、これらの用語および異表記は、非限定的と解釈されることを意図したものである。
【0039】
用語「から本質的になる」は、特許請求の範囲を、明記されている材料もしくはステップに、または特許請求された対象の基本的特徴に著しい影響を与えないものに限定する。例えば、タンパク質ドメイン、領域もしくはモジュール(例えば、結合ドメイン、ヒンジ領域、リンカーモジュール)、またはタンパク質(1つもしくは複数のドメイン、領域もしくはモジュールを有し得る)は、ドメイン、領域、モジュールまたはタンパク質のアミノ酸配列が、併せて、ドメイン、領域、モジュールもしくはタンパク質の長さの最大20%(例えば、最大15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%または1%)に寄与し、かつドメイン、領域、モジュールまたはタンパク質の活性(例えば、結合タンパク質の標的結合親和性)に実質的な影響を与えない(すなわち、活性を50%を超えて、例えば、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%または1%も低下させない)、伸長、欠失、変異、またはそれらの組み合わせ(例えば、アミノもしくはカルボキシ末端またはドメイン間のアミノ酸)を含む場合、特定のアミノ酸配列「から本質的になる」。
【0040】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」または「免疫系細胞」は、2つの主要な系統である骨髄系前駆細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球、肥満細胞、血小板、赤血球、および顆粒球などの骨髄系細胞を生じる)およびリンパ系前駆細胞(リンパ系細胞または「リンパ球」を生じる)を生じる、骨髄における造血幹細胞に由来する免疫系の任意の細胞を意味する。本明細書で使用される場合、「リンパ球」という用語は、主にリンパ液に存在すること、および、一般に、核が大きいことを特徴とする脊椎動物免疫系の白血球の亜型を指す。リンパ球は、例えば、T細胞(CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4-CD8-二重陰性T細胞、γδT細胞、調節T細胞)、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。別の例示的な免疫系細胞は、マクロファージおよび樹状細胞、ならびに本明細書に記載の他の骨髄系細胞を含む。マクロファージおよび樹状細胞は、APCの表面上の主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)受容体がT細胞の表面上のTCRと相互作用するときにT細胞を活性化し得る特殊化した細胞である、「プロフェッショナル抗原提示細胞」(または「プロフェッショナルAPC」)と呼ぶことができる。あるいは、任意の造血幹細胞または免疫系細胞は、TCRによりまたは別の抗原結合タンパク質(例えば、キメラ抗原受容体または抗体)により認識される抗原を発現する核酸分子を導入することによってAPCに転換することができる。本開示のワクチン組成物または処置方法に使用される免疫細胞またはリンパ球は、当該組成物または処置方法を受ける被験体に対して自己、同種異系、または同系のものであり得る。
【0041】
「T細胞」(または「Tリンパ球」)は、胸腺において成熟し、T細胞受容体(TCR)を産生する免疫系細胞であり、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)から得る(濃縮または単離する)ことができ、本明細書では、「バルク」T細胞と称される。T細胞の単離後、細胞傷害性(CD8)T細胞およびヘルパー(CD4)T細胞の両方を、拡大する前、またはその後に、ナイーブT細胞亜集団、メモリーT細胞亜集団、およびエフェクターT細胞亜集団に選別することができる。T細胞は、ナイーブ(抗原に曝露されていない;TCMと比較してCD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127およびCD45RAの発現の増大、ならびにCD45ROの発現の低下)、メモリーT細胞(T)(抗原経験済みおよび長寿命)およびエフェクター細胞(抗原経験済み、細胞傷害性)であり得る。Tは、セントラルメモリーT細胞(TCM、ナイーブT細胞と比較してCD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45ROおよびCD95の発現の増大、ならびにCD54RAの発現の低下)およびエフェクターメモリーT細胞(TEM、ナイーブT細胞またはTCMと比較してCD62L、CCR7、CD28、およびCD45RAの発現の低下、ならびにCD127の発現の増大)のサブセットにさらに分けることができる。エフェクターT細胞(T)は、TCMと比較してCD62L、CCR7、CD28の発現の低下を有し、グランザイムおよびパーフォリンについて陽性である抗原経験済みCD8+細胞傷害性Tリンパ球を指す。ヘルパーT細胞(T)は、サイトカインを放出することによって他の免疫細胞の活性に影響を及ぼすCD4細胞である。CD4T細胞は、適応免疫応答を活性化も抑制もし得、いずれの作用が誘導されるかは、他の細胞およびシグナルの存在に依存する。T細胞は、公知の技術に従って収集することができ、これらの種々の亜集団または組み合わせを、抗体への親和性結合、フローサイトメトリー、または免疫磁気選択などの公知の技術によって濃縮するまたは枯渇させることができる。
【0042】
「T細胞受容体」(TCR)は、MHC受容体に結合した抗原ペプチドに特異的に結合することができる免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー(可変結合ドメイン、定常ドメイン、膜貫通領域および短い細胞質尾部(short cytoplasmic tail)を有する;例えば、Janewayら、Immunobiology: The Immune System in Health and Disease、第3版、Current Biology Publications、4:33頁、1997年参照)を指す。TCRは、細胞の表面上にまたは可溶性の形態で見いだすことができ、一般的にαおよびβ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとしても公知)またはγおよびδ鎖(それぞれTCRγおよびTCRδとしても公知)を有するヘテロダイマーで構成されている。免疫グロブリンと同様に、TCR鎖の細胞外部分(例えば、α鎖、β鎖)は、2つの免疫グロブリンドメインである、N末端における可変ドメイン(例えば、α鎖可変ドメインまたはVα、β鎖可変ドメインまたはVβ;一般的にKabat番号付けに基づくアミノ酸1~116、Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Dept.Health and Human Services、Public Health Service National Institutes of Health、1991年、第5版)および細胞膜に隣接した1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメインまたはCα、一般的にKabatに基づいてアミノ酸117~259、β鎖定常ドメインまたはCβ、一般的にKabatに基づいてアミノ酸117~295)を含む。また免疫グロブリンと同様に、可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)により分離された相補性決定領域(CDR)を含む(例えば、Joresら、Proc.Nat’l Acad.Sci.U.S.A.、87巻、9138頁、1990年;Chothiaら、EMBO J.、7巻、3745頁、1988年を参照;Lefrancら、Dev.Comp.Immunol.、27巻、55頁、2003年も参照)。ある特定の実施形態では、TCRは、T細胞(または「Tリンパ球」)の表面上に見いだされ、CD3複合体と会合する。本開示に使用するTCRの供給源は、ヒト、マウス、ラット、ウサギまたは他の哺乳動物などの、様々な動物種に由来し得る。
【0043】
「抗原」または「Ag」とは、本明細書で使用される場合、免疫応答を惹起する免疫原性分子を指し、この免疫応答は、抗体産生、特定の免疫学的にコンピテントな細胞(例えば、T細胞)の活性化またはその両方を伴い得る。抗原は、例えば、ペプチド、グリコペプチド、ポリペプチド、グリコポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質などであり得る。抗原は、当技術分野で公知の方法を使用して、合成すること、組換えにより産生させること、または生体試料から得ることができる。例えば、新規の抗原は、染色体の再配列または断裂などの当技術分野で公知の方法を使用して生成することができる。1つまたは複数の抗原を含有し得る例示的な生体試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞、生体液(biological fluid)、またはこれらの組み合わせを含む。抗原は、抗原を発現するように改変または遺伝子操作された細胞によって産生させることができる。例示的な抗原は、α-フェトプロテイン(AFP)、B7H4、BTLA、CD3、CD19、CD20、CD25、CD22、CD28、CD30、CD40、CD44v6、CD52、CD56、CD79b、CD80、CD81、CD86、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD151、CD276、CA125、CEA、CEACAM6、c-Met、CT-7、CTLA-4、EGFR、EGFRvIII、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EphA2、FLT1、FLT4、Frizzled、O-アセチル-GD2、GD2、GHRHR、GHR、GITR、gp130、HVEM、IGF1R、IL6R、KDR、L1CAM、Lewis A、Lewis Y、LTβR、LIFRβ、LRP5、MAGE、メソセリン、MUC1、NY-ESO-1、がん特異的ネオ抗原、OSMRβ、PD1、PD-L1、PD-L2、PSMA、PTCH1、RANK、Robo1、ROR1、TERT、TGFBR2、TGFBR1、TLR7、TLR9、TNFRSF4、TNFR1、TNFR2、チロシナーゼ、TWEAK-RまたはWT-1(それらの免疫原性部分または断片を含む)を含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、「腫瘍抗原」または「腫瘍関連抗原」または「TAA」とは、体液性免疫応答、細胞性免疫応答またはその両方を誘発する、腫瘍形成細胞または腫瘍細胞において見出される変異したタンパク質を指し、腫瘍細胞においてのみ見出され得る、または腫瘍細胞および他の正常細胞において見出され得る。TAAは、変異した癌遺伝子(例えば、p53、raf、ras、myc、EGFR)、変異した腫瘍抑制遺伝子(例えば、pRb、TP53、PTEN、CD95)、細胞タンパク質を過剰発現するかまたは異常に発現する変異した遺伝子などの産物であり得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ネオ抗原」とは、以前には被験体のゲノム内(すなわち、被験体由来の健康な組織の試料中)で観察されていない、または宿主の免疫系によって「見られていなかった」もしくは認識されていなかった新しい抗原または抗原エピトープが生じる構造的な変化、変更または変異を含有する宿主細胞産物を指す。ネオ抗原は、例えば、変更されたもしくは変異した産物が生じる変更(置換、付加、欠失)を有するコードするポリヌクレオチドに由来するもの、または、細胞への外因性核酸分子もしくはタンパク質の挿入に由来するもの、または遺伝子変化を生じる環境因子(例えば、化学的、放射線学的)への曝露に由来するものであり得る。ネオ抗原は、腫瘍抗原から別々に生じ得る、または腫瘍抗原から生じ得るもしくはそれに付随し得る。「腫瘍ネオ抗原」(または「腫瘍特異的ネオ抗原」)とは、腫瘍細胞または腫瘍内の複数の細胞に付随する、それから生じる、またはその中で生じるネオ抗原決定基を含むタンパク質を指す。腫瘍ネオ抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞のDNAによりコードされる1つまたは複数の体細胞変異を含有する抗原性腫瘍タンパク質またはペプチド、ならびにウイルス関連腫瘍(例えば、子宮頸がん、一部の頭頸部がん)に関連するウイルスオープンリーディングフレームに由来するタンパク質またはペプチド上に見出される。例えば、腫瘍ネオ抗原は、例示的な腫瘍または他の抗原のいずれかの中でまたはそれから、ならびに「ドライバー」がん抗原(例えば、Tranら、N. Eng. J. Med.、375巻:2255~2262頁(2016年)に記載されているKRAS由来のG12Dネオ抗原)から、ならびに変異したB-Raf、SF31、MYD88、DDX3X、MAPK1、GNB1、およびその他において生じ得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「免疫原性エンハンサー」は、細胞に含有されるポリヌクレオチドによりコードされる外因性ネオ抗原の免疫原性を高める、T細胞などの宿主細胞に含有されるポリヌクレオチドによりコードされる分子を含む。宿主細胞によりコードされる免疫原性エンハンサーは、ネオ抗原に対する免疫応答を改善する局在化されかつ濃縮されたアジュバント活性をもたらし得る。例示的な免疫原性エンハンサーとして、IL-12(例えば、膜集合IL-12)、GM-CSF、誘導性細胞死因子、細菌フラジェリン、CD80、CD137L、CD40L、分泌型IL-2、CD25非依存的にT細胞に結合する分泌型IL-2、分泌型IL-15、分泌型IL-15-IL-15Rα複合体、分泌型IFNβ、分泌型IFN-α1、分泌型IL-7、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。免疫原性エンハンサーは、宿主細胞により内因的に発現されるものであってよく(例えば、宿主細胞は、例えばGM-CSFを内因的に発現し得る)、その場合、宿主細胞を、免疫原性エンハンサーの発現が増大するように操作することができる。あるいは、免疫原性エンハンサーは宿主細胞に対して外因性のものであってもよい。
【0047】
本明細書で使用される場合、「TVAX細胞」とは、1種または複数種のネオ抗原をコードする異種ポリヌクレオチドを含むT細胞であって、ヒトなどの宿主に投与されると、抗原を全身的に送達するT細胞を指す。TVAX細胞などは、免疫原性エンハンサーをコードするポリヌクレオチドをさらに含んでよく、T細胞において発現するネオ抗原の免疫原性は、免疫原性エンハンサーを伴わない1種または複数種のネオ抗原をコードするT細胞と比較して統計的に有意に改善される。本開示のTVAX細胞の全身投与により、全身的なネオ抗原の提示または局在化されたネオ抗原の提示、例えば、腫瘍部位または二次リンパ組織における局在化または濃縮されたネオ抗原の提示などがもたらされ得る。
【0048】
本明細書で使用される「結合ドメイン」または「結合領域」は、標的(例えば、抗原、リガンド)を特異的に認識してその標的と結合する能力を有するタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドまたはペプチド(例えば、抗体、受容体)もしくはその一部分を指す。結合ドメインは、目的の生体分子または別の標的についての任意の天然に存在する、合成、半合成または組換えで産生された(すなわち、ヒトによって操作された)結合パートナーを含む。例示的結合ドメインとしては、免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変領域(例えば、ドメイン抗体、一本鎖Fv断片(scFvまたはsFv)、Fab、F(ab’))、受容体外部ドメイン、またはリガンド(例えば、IL-12などのサイトカイン)が挙げられる。免疫グロブリン可変ドメイン(例えば、scFv、Fab)は、本明細書では「免疫グロブリン結合ドメイン」と呼ばれる。特定の標的に特異的に結合する本開示の結合ドメインを同定するための様々なアッセイが公知であり、そのようなアッセイには、ウェスタンブロット、ELISAおよびBiacore(登録商標)分析が含まれる。ある特定の実施形態では、結合ドメインは、より大きいポリペプチドまたはタンパク質の一部であり、「結合タンパク質」と呼ばれる。
【0049】
結合ドメインの供給源としては、ヒト、齧歯類、鳥類、ウサギおよびヒツジを含む、様々な種からの抗体可変領域(抗体、sFv、scFv、Fabもしくは可溶性Vドメインまたはドメイン抗体としてフォーマットすることができるもの)が挙げられる。結合ドメインのさらなる供給源としては、他の種、例えば、ラクダ科動物(ラクダ、ヒトコブラクダもしくはラマからのもの;Ghahroudiら、FEBS Letters 414巻:521頁、1997年;Vinckeら、J.Biol.Chem.284巻:3273頁、2009年;Hamers-Castermanら、Nature 363巻:446頁、1993年;Nguyenら、J.Mol.Biol.275巻:413頁、1998年)、テンジクザメ(Rouxら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.(USA)95巻:11804頁、1998年)、スポッテッドラットフィッシュ(Nguyenら、Immunogenetics 54巻:39頁、2002年)、またはヤツメウナギ(Herrinら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.(USA)105巻:2040頁、2008年;Alderら、Nature Immunol.9巻:319頁、2008年)からの抗体の可変領域が挙げられる。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを使用して抗原結合領域を形成することができるようであり、すなわち、これらの機能性抗体は、重鎖のみのホモダイマーである(「重鎖抗体」と呼ばれる)(Jespersら、Nature Biotechnol.22巻:1161頁、2004年;Cortez-Retamozoら、Cancer Res.64巻:2853頁、2004年;Baralら、Nature Med.12巻:580頁、2006年;Barthelemyら、J. Biol.Chem.283巻:3639頁、2008年)。
【0050】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」または「に特異的」は、試料中の任意の他の分子または成分と有意に会合も合体もしないが、10-1に等しいまたはより大きい親和性またはK(すなわち、1/Mの単位を有する特定の結合相互作用の平衡会合定数)(この会合反応のオン速度(on-rate)[kon]とオフ速度(off-rate)[koff]との比に等しい)による標的分子への結合タンパク質(例えば、受容体、抗体、CARもしくはTCR)または結合成分(またはその融合タンパク質)の会合または合体を指す。結合タンパク質または結合ドメイン(またはその融合タンパク質)は、「高親和性」結合タンパク質または結合ドメイン(もしくはその融合タンパク質)または「低親和性」結合タンパク質または結合ドメイン(もしくはその融合タンパク質)と分類することができる。「高親和性」結合タンパク質または結合ドメインは、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも1010-1、少なくとも1011-1、少なくとも1012-1または少なくとも1013-1のKを有する結合タンパク質または結合ドメインを指す。「低親和性」結合タンパク質または結合ドメインは、最大で10-1まで、最大で10-1まで、最大で10-1までのKを有する結合タンパク質または結合ドメインを指す。あるいは、親和性は、Mの単位を有する特定の結合相互作用の平衡解離定数(K)(例えば、10-5Mから10-13M)と定義することができる。
【0051】
特定の標的に特異的に結合する本開示の結合ドメインを同定するためのおよび結合ドメインまたは融合タンパク質親和性を決定するための様々なアッセイ、例えば、ウェスタンブロット、ELISA、分析用超遠心分離、分光法および表面プラズモン共鳴(Biacore(登録商標))分析は、公知である(例えば、Scatchardら、Ann.N.Y.Acad.Sci.51巻:660頁、1949年;Wilson、 Science 295巻:2103頁、2002年;Wolffら、Cancer Res.53巻:2560頁、1993年;および米国特許第5,283,173号、5,468,614号または等価物を参照されたい)。
【0052】
抗体技術の当業者によって理解されている用語には、本明細書において明確に異なって定義されていない限り、各々、当技術分野で獲得された意味が与えられる。用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続されている少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含むインタクト抗体、ならびにインタクト抗体によって認識される抗原標的分子と結合する能力を有するまたは保持する、インタクト抗体の任意の抗原結合部分または断片、例えば、scFv、FabまたはFab’2断片を指す。したがって、本明細書での用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含み、該ポリクローナルおよびモノクローナル抗体には、インタクト抗体およびそれらの機能性(抗原結合)抗体断片が含まれ、そのような抗体断片には、抗原結合断片(Fab)断片、F(ab’)断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、一本鎖抗体断片(一本鎖可変断片(scFv)を含む)、およびシングルドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片が含まれる。この用語は、免疫グロブリンの遺伝子操作された形態および/または別様に修飾された形態、例えば、イントラボディ(intrabody)、ペプチボディ(peptibody)、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、ならびにヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性、例えば二重特異性、抗体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)およびテトラボディ(tetrabody)、タンデムジscFv、タンデムトリscFvを包含する。別段の記述がない限り、用語「抗体」は、その機能性抗体断片を包含すると解されたい。この用語は、任意のクラスまたはサブクラスの抗体を含む、インタクトまたは完全長抗体も包含し、そのようなクラスまたはサブクラスには、IgGならびにそのサブクラス、IgM、IgE、IgAおよびIgDが含まれる。
【0053】
モノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、非ヒト、キメラ、ヒト化またはヒトのものであってもよい。免疫グロブリン構造および機能は、例えば、Harlowら編、Antibodies: A Laboratory Manual、14章(Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、1988年)に総説されている。
【0054】
例えば、用語「V」および「V」は、抗体軽鎖および重鎖それぞれからの可変結合領域を指す。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)および「フレームワーク領域」(FR)として公知の、別個の明確に定義された部分領域(sub-region)で構成されている。用語「CL」は、「免疫グロブリン軽鎖定常領域」または「軽鎖定常領域」、すなわち、抗体軽鎖からの定常領域を指す。用語「CH」は、「免疫グロブリン重鎖定常領域」または「重鎖定常領域」を指し、この領域は、抗体アイソタイプに依存して、CH1、CH2およびCH3(IgA、IgD、IgG)、またはCH1、CH2、CH3およびCH4ドメイン(IgE、IgM)へとさらに分割可能である。「Fab」(抗原結合断片)は、抗原と結合する抗体の部分であり、可変領域と、鎖間ジスルフィド結合によって軽鎖に連結されている重鎖のCH1とを含む。
【0055】
「超可変領域」または「HVR」と同義の用語「相補性決定領域」および「CDR」が、抗原特異性および/または結合親和性を付与する、抗体可変領域内のアミノ酸の非連続配列を指すことは、当技術分野において公知である。一般に、各重鎖可変領域に3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)があり、各軽鎖可変領域に3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。「フレームワーク領域」および「FR」が、重鎖および軽鎖の可変領域の非CDR部分を指すことは、当技術分野において公知である。一般に、各完全長重鎖可変領域に4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3およびFR-H4)があり、各完全長軽鎖可変領域に4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3およびFR-L4)がある。
【0056】
所与のCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列境界は、いくつかの周知スキームのいずれかを使用して容易に決定することができ、そのようなスキームには、Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991年)によるもの(「Kabat」番号付けスキーム)、Al-Lazikaniら(J. Mol.Biol.273巻:927頁、1997年)によるもの(「Chothia」番号付けスキーム)、MacCallumら(J. Mol.Biol.262巻:732頁、1996年)によるもの(「Contact」番号付けスキーム)、Lefrancら(Dev.Comp.Immunol.27巻:55頁、2003年)によるもの(「IMGT」番号付けスキーム)、およびHonegger&Plueckthun(J. Mol.Biol.309巻:657頁、2001年)によるもの(「Aho」番号付けスキーム)が含まれる。所与のCDRまたはFRの境界は、同定に使用されるスキームによって変わり得る。例えば、Kabatスキームは、構造アラインメントに基づき、その一方でChothiaスキームは、構造情報に基づく。KabatスキームとChothiaスキームの両方の番号付けは、最も一般的な抗体領域配列長に基づくものであり、挿入には挿入文字、例えば「30a」によって対応し、一部の抗体には欠失が出現する。2つのスキームは、ある特定の挿入および欠失(「インデル」)を異なる位置に配置するため、結果として異なる番号付けになる。Contactスキームは、複雑な結晶構造の分析に基づくものであり、多くの点でChothia番号付けスキームと類似している。
【0057】
下の表1はKabat、ChothiaおよびContactスキームによってそれぞれ同定されるCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3およびCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3の例示的位置境界を列挙するものである。CDR-H1については、Kabat番号付けスキームとChothia番号付けスキームの両方を使用する残基番号付けが列挙されている。FRは、CDR間に位置し、例えば、FR-L1は、CDR-L1とCDR-L2の間に位置する、など。示されているKabat番号付けスキームは、H35AおよびH35Bに挿入を配置するため、Chothia CDR-H1ループの末端は、示されているKabat番号付け規定を使用して番号付けしたとき、ループの長さに依存してH32とH34の間で変動することに注目される。
【表1】
【0058】
したがって、別段の指定がない限り、所与の抗体またはその領域、例えばその可変領域、の「CDR」または「相補性決定領域」または個々の指定CDR(例えば、CDR-H1、CDR-H2)は、上述のスキームのいずれかによって定義される、ある(または特異的)相補性決定領域を包含すると解されたい。例えば、特定のCDR(例えば、CDR-H3)が、所与のVまたはVアミノ酸配列内の対応するCDRのアミノ酸配列を含有すると述べられている場合、そのようなCDRは、上述のスキームのいずれかによって定義される可変領域内の対応するCDR(例えば、CDR-H3)の配列を有すると解される。一部の実施形態では、指定CDR配列が指定される。同様に、別段の指定がない限り、所与の抗体またはその領域、例えばその可変領域、のFRまたは個々の指定FR(例えば、FR-H1、FR-H2)は、公知スキームのいずれかによって定義される、ある(または特異的)フレームワーク領域を包含すると解されたい。一部の事例では、Kabat、ChothiaまたはContact法によって定義されるCDRなどの、特定のCDR(単数または複数)またはFR(単数または複数)の同定のためのスキームが指定される。他の場合、CDRまたはFRの特定のアミノ酸配列が与えられる。
【0059】
提供する抗体の中には、抗体断片もある。「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の部分を含む、インタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、抗体は、可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む一本鎖抗体断片、例えばscFvである。
【0060】
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、抗体断片である。ある特定の実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である。
【0061】
抗体断片は、インタクト抗体のタンパク質分解性消化、ならびに組換え宿主細胞による産生を含むがこれらに限定されない様々な技術によって作製することができる。ある特定の実施形態では、抗体は、組換えで産生された断片、例えば、合成リンカー、例えばペプチドリンカー、によって連結された2つもしくはそれより多くの抗体領域または抗体鎖を有するものなどの、天然に存在しない配置(arrangement)を含む断片である。ある特定の実施形態では、抗体は、天然に存在するインタクト抗体の酵素的消化によって産生される。一部の態様では、抗体断片は、scFvである。
【0062】
本明細書で使用される「Fc領域部分」は、1つまたは複数の定常ドメイン、例えば、CH2、CH3、CH4またはそれらの任意の組み合わせを含み得る、抗体からのFc断片の重鎖定常領域セグメント(「結晶性断片」領域またはFc領域)を指す。ある特定の実施形態では、Fc領域部分は、IgG、IgAもしくはIgD抗体のCH2およびCH3ドメインまたはそれらの任意の組み合わせ、あるいはIgMまたはIgE抗体のCH3およびCH4ドメインおよびそれらの任意の組み合わせを含む。他の実施形態では、CH2CH3またはCH3CH4構造は、同じ抗体アイソタイプからの部分領域ドメインを有し、ヒトのもの、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM(例えば、ヒトIgG1からのCH2CH3)である。バックグラウンドにより、Fc領域は、免疫グロブリンのエフェクター機能、例えば、ADCC(抗体依存性細胞介在性細胞傷害)、CDC(補体依存性細胞傷害)および補体結合、Fc受容体(例えば、CD16、CD32、FcRn)との結合、Fc領域を欠くポリペプチドと比べて長いin vivoでの半減期、プロテインA結合、ならびにおそらくさらには経胎盤移行に関与する(Caponら、Nature 337巻:525頁、1989年を参照されたい)。ある特定の実施形態では、本開示の免疫グロブリン様結合タンパク質において見いだされるFc領域部分は、これらのエフェクター機能の1つまたは複数を媒介することができる、あるいはこれらの活性の1つもしくは複数またはすべてを、例えば当技術分野において公知の1つまたは複数の変異によって、欠くであろう。
【0063】
加えて、抗体は、Fab領域とFc領域の間に通常は位置するヒンジ配列を有する(しかし、ヒンジの下方セクションが、Fc領域のアミノ末端部分を含むこともある)。バックグラウンドにより、免疫グロブリンヒンジは、Fab部分が空間内を自由に移動できるように可撓性スペーサーとしての機能を果す。定常領域とは対照的に、ヒンジは、構造的に多様であり、免疫グロブリンクラス間およびさらにはサブクラス間で配列と長さの両方が異なる。例えば、ヒトIgG1ヒンジ領域は、自由に可撓性であり、これにより、Fab断片は、それらの対称軸の周りを回転し、2つの重鎖間ジスルフィド架橋の第1の架橋を中心とする球内に移動することが可能になる。比較すると、ヒトIgG2ヒンジは比較的短く、また4つの重鎖間ジスルフィド架橋によって安定化された堅いポリプロリン二重らせんを含有し、この二重らせんが可撓性を制限する。ヒトIgG3ヒンジは、その固有の伸長したヒンジ領域(IgG1ヒンジの約4倍の長さ)の点で他のサブクラスとは異なり、このヒンジ領域は、62個のアミノ酸(21個のプロリンおよび11個のシステインを含む)を含有し、非可撓性ポリプロリン二重らせんを形成するが、Fab断片がFc断片から比較的遠くに離れているので、より大きい可撓性をもたらす。ヒトIgG4ヒンジは、IgG1より短いが、IgG2と同じ長さを有し、その可撓性は、IgG1とIgG2の中間である。
【0064】
本明細書で使用される、ヒトIgG1重鎖の定常領域内のアミノ酸残基の位置は、別段の定めがない限り、Kabat番号付け規定に従ってヒトIgG1の可変領域が128のアミノ酸残基で構成されていると仮定して、番号付けされる。ヒトIgG1重鎖の番号付けされた定常領域は、その後、他の免疫グロブリン重鎖の定常領域内のアミノ酸残基に番号付けするための基準として使用される。ヒトIgG1重鎖以外の免疫グロブリン重鎖の定常領域内の目的のアミノ酸残基の位置は、目的のアミノ酸残基と整列する、ヒトIgG1重鎖内のアミノ酸残基の位置である。ヒトIgG1重鎖の定常領域と他の免疫グロブリン重鎖の定常領域間のアラインメントは、デフォルトパラメータを用いてClustal W法を使用するMegalignプログラム(DNASTAR Inc.)などの、当技術分野において公知のソフトウェアプログラムを使用して行うことができる。本明細書に記載の番号付けシステムによれば、例えば、ヒトIgG2 CH2領域は、他のCH2領域と比較してそのアミノ末端付近にアミノ酸欠失を有することもあるが、ヒトIgG2 CH2における296に位置する「N」の位置は、この残基がヒトIgG1 CH2における297位の「N」と整列するので、やはり297位と見なされる。
【0065】
用語「エピトープ」は、免疫グロブリン、受容体、または他の結合ドメインもしくは結合タンパク質と特異的に結合することができる、任意のアミノ酸配列またはタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、一般に、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基を含有し、特異的三次元構造特性はもちろん特異的電荷特性も有することができる。
【0066】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」および「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結されているアミノ酸残基で構成された化合物を指す。用語「タンパク質」は、用語「ポリペプチド」と同義語であることもあり、または加えて、2つまたはそれより多くのポリペプチドの複合体を指すこともある。ポリペプチドは、他の成分(例えば、共有結合されているもの)、例えば、タグ、標識、生物活性分子、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含有することもある。特定の実施形態では、ポリペプチドは、断片であってもよい。本明細書で使用される「断片」は、親ポリペプチドにおいて見いだされる1つまたは複数のアミノ酸を欠くポリペプチドを意味する。断片は、親ポリペプチドにおいて見いだされる結合ドメイン、抗原またはエピトープを含むことができる。ある特定の実施形態では、ポリペプチドの断片は、親ポリペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸の少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより多くを有することができる。
【0067】
本明細書に記載の「バリアント」ポリペプチド種は、本明細書に提示の基準ポリペプチドと比べて、1つまたは複数の部位に1つもしくは複数の非天然アミノ酸、1つもしくは複数のアミノ酸置換、1つもしくは複数のアミノ酸挿入、1つもしくは複数のアミノ酸欠失、またはそれらの組み合わせを有する。ある特定の実施形態では、「バリアント」は、基準ポリペプチドと比べて実質的に同様の活性(例えば、酵素機能、免疫原性)または構造を有するポリペプチドを意味する。基準ポリペプチドのバリアントは、当技術分野において公知の配列アラインメントプログラムおよびパラメータによって決定して、基準ポリペプチドのアミノ酸配列との少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれより高い配列同一性を有することができる。バリアントは、例えば、遺伝的多型またはヒトによる操作の結果として得ることができる。アミノ酸の保存的置換は周知であり、自然に起こることもあり、またはタンパク質が組換えで産生されるときに導入されることもある。アミノ酸置換、欠失および付加を、当技術分野において公知の変異誘発方法を使用してタンパク質に導入してもよい(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY、2001年を参照されたい)。オリゴヌクレオチド誘導部位特異的(またはセグメント特異的)変異誘発手順を利用して、所望される置換、欠失または挿入に応じて変化させた特定のコドンを有する変化したポリペプチドを得てもよい。あるいは、ランダムまたは飽和変異誘発技術、例えば、アラニンスキャニング変異誘発、エラープローンポリメラーゼ連鎖反応変異誘発、およびオリゴヌクレオチド誘導変異誘発を使用して、ポリペプチドバリアントを調製してもよい(例えば、Sambrookら、上掲を参照されたい)。
【0068】
2つまたはそれより多くのポリペプチドまたは核酸分子配列の文脈での用語「同一の」または「同一性パーセント」は、当技術分野において公知の方法、例えば配列比較アルゴリズムを使用して、手動アラインメントにより、または目視検査により測定して、比較ウインドウまたは指定領域にわたって比較し、最もよく一致するように整列させたとき、同じである2つもしくはそれより多くの配列もしくは部分配列、または指定領域にわたって同じであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの指定百分率(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一性)を有する2つもしくはそれより多くの配列もしくは部分配列を意味する。例えば、配列同一性および配列類似性パーセントの決定に好適な好ましいアルゴリズムは、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、Altschulら(Nucleic Acids Res.25巻:3389頁、1977年)およびAltschulら(J. Mol.Biol.215巻:403頁、1990年)に、それぞれ記載されている。
【0069】
本明細書で使用される「融合タンパク質」は、天然ではタンパク質中で一緒に見いだされない少なくとも2つの異なるドメインを有する、一本鎖ポリペプチドを含む。融合タンパク質をコードする核酸分子を、PCRを使用して構築すること、組換えにより作出すること、もしくは同様のことができ、またはそのような融合タンパク質を合成により作製することができる。融合タンパク質は、他の成分(例えば、共有結合されているもの)、例えば、タグまたは生物活性分子をさらに含有することもある。
【0070】
「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」は、3’-5’ホスホジエステル結合によって連結されているデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれかを含有する、一本鎖もしくは二本鎖直鎖状または環状ポリヌクレオチドを指す。核酸分子は、RNA、DNA、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、cDNA、またはベクターDNAを含む。ある特定の実施形態では、本開示の核酸は、PCRにより生成する。核酸は、天然に存在するヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドなど)、天然に存在するヌクレオチドの類似体(例えば、天然に存在するヌクレオチド、モルホリノのα鏡像異性体)または両方の組み合わせであるモノマーから構成され得る。修飾ヌクレオチドは、糖部分またはピリミジンもしくはプリン塩基部分の修飾もしくは置換を有し得る。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合またはそのような結合の類似体により連結され得る。ホスホジエステル結合の類似体は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、ホスホルアミデートなどを含む。
【0071】
ある特定の実施形態では、本開示のペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、特定の型の細胞における発現が高まるまたは最大になるようにコドン最適化することができる(例えば、Scholtenら、Clin. Immunol.、119巻:135~145頁、2006年)。本明細書で使用される場合、「コドン最適化された」ポリヌクレオチドは、宿主細胞tRNAレベルのアバンダンスに対応するサイレント変異を用いて改変されたコドンを有する異種ポリペプチドである。
【0072】
本開示のポリヌクレオチドのバリアントも企図される。バリアントポリヌクレオチドは、本明細書に記載の基準ポリヌクレオチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、99%または99.9%同一であるか、または約65℃~68℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、もしくは約42℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび50%ホルムアミドというストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で規定配列の基準ポリヌクレオチドとハイブリダイズするものである。ポリヌクレオチドバリアントは、本明細書に記載の機能性を有する免疫グロブリン結合タンパク質またはその抗原結合断片をコードする能力を保持する。
【0073】
用語「単離される」は、材料がその元の環境(例えば、その材料が天然に存在する場合には天然環境)から除去されることを意味する。例えば、生きている動物内に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されていないが、天然系に共存する材料の一部またはすべてから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されている。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であってもよく、ならびに/またはそのようなポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは、組成物(例えば、細胞溶解物)の一部であってもよく、およびさらには、そのようなベクターもしくは組成物が核酸もしくはポリペプチドにとっての天然環境の一部でない点で単離されていることもある。
【0074】
核酸配列を細胞に挿入する文脈での用語「導入される」は、「トランスフェクション」、「形質転換」または「形質導入」を意味し、核酸分子を細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチドまたはミトコンドリアDNA)に組み込んでもよいし、自律レプリコンに変換してもよいし、エピソーム発現ベクター(例えば、Van Caenenbroeckら、Eur. J. Biochem. 267:5665(2000)を参照のこと)に含まれるてもよいし、(例えば、トランスフェクトされたmRNAを)一過性に発現してもよい、真核または原核細胞への核酸配列の組込みへの言及を含む。
【0075】
本明細書で使用される「異種」または「外因性」核酸分子、構築物または配列は、宿主細胞にとって生得的なものではないが、宿主細胞からの核酸分子または核酸分子の一部と相同であり得る、核酸分子または核酸分子の部分を指す。異種または外因性核酸分子、構築物または配列の供給源は、異なる属または種からのものであり得る。ある特定の実施形態では、異種または外因性核酸分子は、例えばコンジュゲーション、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、または同様のものにより、宿主細胞または宿主ゲノムに付加され(すなわち、宿主細胞または宿主ゲノムに内因性のものでも生得的なものでもなく)、付加された分子は、宿主ゲノムに組み込まれることもあり、または染色体外遺伝物質として(例えば、自己複製ベクターのプラスミドもしくは他の形態として)存在することもあり、および複数のコピーで存在することもある。加えて、「異種の」または「外因性の」は、宿主細胞に導入された外因性核酸分子によってコードされている非生得的酵素、タンパク質または他の活性を、たとえ宿主細胞が同種タンパク質または活性をコードしていたとしても、指す。
【0076】
ある特定の実施形態では、1つより多い異種核酸分子を、別個の核酸分子として、ポリシストロン性核酸分子として、融合タンパク質(例えば、複数のネオ抗原)をコードする単一核酸分子として、またはそれらの任意の組み合わせとして宿主細胞に導入することができ、それでもなお、1つより多い異種核酸とみなすことができる。例えば、本明細書で開示したように、免疫細胞を、1種もしくは複数種の所望のネオ抗原をコードするまたは1種もしくは複数種のネオ抗原および免疫原性エンハンサー(例えば、フラジェリン、IL-12、GM-CSF)をコードする、2つまたはそれよりも多くの異種性または外因性核酸分子を含有するように改変することができる。ネオ抗原または免疫原性エンハンサーをコードする、2つまたはそれよりも多くの外因性核酸分子を宿主細胞に導入する場合、2つまたはそれよりも多くの外因性核酸分子は、単一核酸分子(例えば、単一ベクター上の)として、または1つより多い核酸分子(例えば、別個のベクター上の)として導入することができ、また、エピソーム発現ベクター内に含めること、または宿主染色体内の単一の部位または多数の部位に組み込むことができ、それでもなお、2つまたはそれよりも多くの外因性核酸分子とみなすことができることが理解される。したがって、言及される異種核酸分子またはコードされる生物学的活性の数は、コード化核酸分子の数またはタンパク質活性の数を指し、宿主細胞に導入された別個の核酸分子の数ではない。
【0077】
本明細書で使用される用語「内因性」または「生得的」は、宿主細胞中に通常存在する遺伝子、タンパク質または活性を指す。さらに、親遺伝子、タンパク質または活性と比較して変異、過剰発現、シャッフル、重複または別様に変化している遺伝子、タンパク質または活性は、それでもやはり、その特定の宿主細胞に内因性または生得的であると見なされる。例えば、第1の遺伝子からの内因性制御配列(例えば、プロモーター、翻訳減衰配列)を使用して、第2の生得的遺伝子または核酸分子の発現を変化させるまたは調節することができ、その場合、第2の生得的遺伝子または核酸分子の発現または調節は、親細胞における通常の発現または調節とは異なる。
【0078】
本明細書で使用される場合、「組換え」という用語は、ヒトの介入を介した外因性核酸分子の導入により改変された細胞、微生物、核酸分子もしくはベクターを指し、または内因性核酸分子もしくは遺伝子の発現が制御、脱制御され、もしくは構成的であるように改変された細胞もしくは微生物を指し、そのような改変または修飾は、ヒトの介入を介して(例えば、遺伝子工学により)導入または誘導される。遺伝子改変は、例えば、1つまたは複数のタンパク質または酵素をコードする核酸分子(プロモーターなどの、発現制御エレメントを含み得る)を導入する修飾、または他の核酸分子の付加、欠失、置換、または細胞の遺伝物質の他の機能的破綻もしくはそれへの付加を含み得る。例示的修飾は、参照または親分子からの異種または相同ポリペプチドのコード領域またはその機能的断片におけるものを含む。外因性核酸分子を導入することによって改変された細胞、微生物、核酸分子、またはベクターは、「組換え」または「天然に存在しない」または「遺伝子操作された」または「形質転換された」または「トランスジェニック」と称することができる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「変異」は、それぞれ参照もしくは野生型核酸分子またはポリペプチド分子と比較して核酸分子またはポリペプチド分子の配列の変化を指す。変異は、ヌクレオチド(複数可)またはアミノ酸(複数可)の置換、挿入または欠失を含む、いくつかの異なる種類の配列の変化をもたらし得る。ある特定の実施形態では、変異は、1つから3つのコドンもしくはアミノ酸の置換、1つから約5つのコドンもしくはアミノ酸の欠失またはその組み合わせである。
【0080】
「保存的置換」は、1つのアミノ酸の、類似の特性を有する別のアミノ酸による置換と当技術分野で認識されている。例示的な保存的置換は、当技術分野で周知である(例えば、国際公開第97/09433号10頁;Lehninger、Biochemistry、第2版、Worth Publishers, Inc. NY、NY、71~77頁、1975年;Lewin、Genes IV、Oxford University Press、NY and Cell Press、Cambridge、MA、8頁、1990年を参照)。
【0081】
ネオ抗原
一部の態様では、本開示は、1種または複数種の外因性ネオ抗原を発現するT細胞などの免疫細胞を含む免疫原性組成物またはワクチンを提供する。
【0082】
ある特定の実施形態では、ネオ抗原は、腫瘍ネオ抗原などの、過剰増殖性疾患または障害(例えば、がん)に関連するものである。腫瘍ネオ抗原は、多くの場合、腫瘍細胞のDNAにおける体細胞「パッセンジャー」変異から生じるので、多くの腫瘍ネオ抗原は個々の患者のがんに独特である。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に開示した免疫原性組成物またはワクチンの開発は、個々の患者の腫瘍の「ミュータノーム」を決定すること、候補腫瘍ネオ抗原を同定すること、および腫瘍ネオ抗原を被験体に送達される免疫細胞において発現させることを含む(図1)。ある特定の実施形態では、ネオ抗原は、野生型核酸分子と比較してミスセンス変異、ノンストップ変異、スプライスバリアント、遺伝子融合、フレームシフト変異(例えば、付加または欠失)、またはこれらの組み合わせを有する核酸分子によりコードされるタンパク質に由来する抗原性ペプチドまたはエピトープを含む。
【0083】
ネオ抗原は、いくつかの周知の技術のいずれかを使用して同定することができる(例えば、Rajasagiら、Blood、124巻:453頁、2014年を参照されたい)。背景として、また、理論により拘束されることを望むものではないが、一般に、悪性クローンにおける比較的わずかな変異により、新しい免疫応答を誘発することができる。免疫原性になるためには、変異は、発現したタンパク質のアミノ酸配列を変化させるものでなければならず、得られるタンパク質は、タンパク質分解によりプロセシングされて、アミノ酸変化を含有し、MHC分子に結合し、個々のT細胞によって外来として検出されるペプチドにならなければならない。得られる変異は、それによりペプチドのプロセシングおよびMHCへの結合が変更されると、またはMHC-ペプチド-T細胞受容体(TCR)相互作用が、特異的結合が促進されるように変更されると、T細胞応答を潜在的に活性化し得る(Gubinら、J. Clin. Invest.、125巻:3413頁、2015年)。プロテアソームプロセシングならびにMHCへのペプチド結合を予測するためのコンピュータによるアルゴリズムが開発されてきた。
【0084】
in silicoでMHCへの潜在的なペプチド結合を同定するための例示的な予測ツールとしては、例えば、NetMHC(人工神経回路網(artificial neural network)(ANN)を使用して特定のヒトMHCアレルについてMHCクラスI結合を予測するためのもの)(Andreattaら、Bioinformatics、32巻(4号):511~517頁(2016年);Segalら、Cancer Res、68巻(3号):889~892頁(2008年);Nielsenら、Protein Sci.、12巻(5号):1007~1017頁(2003年);NetMHCpan(既知の配列の任意のアレルについてMHCクラスI結合を予測するためのもの)(Nielsen & Andreatta、Genome Medicine、8巻(1号):33頁(2016年);Hoofら、Immunogenetics、61巻(1号):1~13頁(2009年)、安定化マトリクス方法(Stabilized Matrix Method)(SMM)(Peters & Sette、BMC Bioinformatics、6巻:132頁(2005年)、および平均相対的結合(Average Relative Binding)(ARB)マトリクス方法(Buiら、Immunogenetics、57巻(5号):304~314頁(2005年)(Fritschら、Cancer Immunol Res、2巻(6号):522~529頁(2014年);van Buurenら、Oncoimmunology、3巻:e28836頁(2014年);Trolleら、Bioinformatics、39巻(5号):764~768頁(2015年)も参照されたい)が挙げられる。例えば、変異(例えば、ミスセンスおよびフレームシフト)を、自己MHCアレルに結合すると予測される新規のペプチドの形成について、NetMHCpan(Trolleら、Bioinformatics、39巻(5号):764~768頁(2015年))を使用して分析することができる。さらに、HLAタイピングを、OptiType(例えば、Szolekら、Bioinformatics、30巻(23号):3310~3316頁(2014年)を参照されたい)を使用して次世代またはエキソーム配列決定から得ることができる。
【0085】
本開示の免疫原性組成物またはワクチンに使用するための候補ネオ抗原は、腫瘍試料からDNAを単離すること;発現した遺伝子について、エキソーム捕捉、RNA配列決定、全ゲノム配列決定、またはこれらの組み合わせを使用して配列決定すること;およびバイオインフォマティクスを使用して、候補ネオ抗原を生じると予測される体細胞変異(例えば、点変異)を同定することにより、同定することができる。
【0086】
ネオ抗原および免疫原性エンハンサー発現細胞
ある特定の態様では、本開示は、1種または複数種の外因性ネオ抗原および免疫原性エンハンサーを含む免疫細胞(例えば、T細胞)を提供する。一部の実施形態では、本明細書に開示した外因性ネオ抗原および免疫原性エンハンサーを含む免疫細胞を、ネオ抗原に対する免疫応答を誘発または追加刺激するための免疫原性組成物またはワクチンに使用することができる。例えば、本明細書に記載する実施形態のいずれかでは、T細胞を、外因性ネオ抗原を発現するように改変する。そのような操作されたT細胞によって送達されるネオ抗原は、被験体に投与された際の免疫原性が高く、ネオ抗原(複数可)の1つまたは複数のエピトープに対する高頻度の長続きするT細胞応答を誘発することができる。ネオ抗原を産生する細胞を有することが分かっている被験体に移入されたT細胞は、ネオ抗原刺激が起こり得る二次リンパ器官に効率的に移動することができ、また、ネオ抗原を産生する細胞に対して、他のT細胞を間接的に(樹状細胞によって媒介される)または直接的に活性化することができる。さらに、長続きするT細胞応答が生じることにより、ネオ抗原(例えば、腫瘍ネオ抗原)に関連する疾患の再燃または再発が防止され得る。
【0087】
T細胞に基づくワクチンにより、特に個人向けのネオ抗原に基づくワクチンおよび免疫原性組成物に関して、他の手法と比較して、設計、作製、および投与のしやすさなどの追加の実用的な利点がもたらされ得る。背景として、裸のペプチドまたは核酸分子に基づくワクチンは、構築および投与が容易であるが、有効性が高くない。さらに、それらの免疫原性を増大させることは、全身性アジュバントの添加に限定され、これは、毒性であるか有効性が限定されるかまたはその両方であり得る。樹状細胞は単離すること、遺伝子改変すること、またはex vivoで多数まで拡大させることが難しい。対照的に、T細胞は、容易に単離され、容易に遺伝子改変され、ex vivoで拡大することができ、T細胞の養子移入の臨床的な先例がある。本明細書に記載する通り、本開示の免疫原性組成物またはワクチンに使用するためのT細胞は、誘発される特異的な抗がん免疫応答の抗力が増大するように改変することもできる。
【0088】
ある特定の実施形態では、本開示は、外因性ネオ抗原および免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子を含む免疫細胞またはリンパ球であって、核酸分子が1種または複数種の外因性ネオ抗原をコードする、免疫細胞またはリンパ球を提供する。例えば、核酸分子は、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種、18種、19種または20種のネオ抗原をコードし得る。ある特定の実施形態では、免疫細胞は、2種~約5種の外因性ネオ抗原、または2種~約10種の外因性ネオ抗原、または2種~約20種の外因性ネオ抗原をコードする核酸分子を含む。ある特定の他の実施形態では、免疫細胞またはリンパ球は、それぞれが1種または複数種の外因性ネオ抗原、例えば、2種~約5種の外因性ネオ抗原または2種~約10種の外因性ネオ抗原または2種~約20種の外因性ネオ抗原などを独立にコードする別個の核酸分子を含む(例えば、各核酸分子は、異なる数のネオ抗原をコードし得る)。
【0089】
ある特定の実施形態では、本開示の免疫細胞またはリンパ球は、CD8T細胞、CD4T細胞またはその両方が特異的に結合するエピトープを含む外因性ネオ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、本開示の免疫細胞またはリンパ球は、CD8T細胞が特異的に結合する外因性ネオ抗原をコードするポリヌクレオチドを含み、CD4T細胞が特異的に結合する抗原またはネオ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む。さらなる実施形態では、コードされるCD4抗原またはネオ抗原は、免疫細胞またはリンパ球に対して外因性である。他の実施形態では、免疫細胞またはリンパ球は、CD4T細胞が特異的に結合する外因性ネオ抗原をコードするポリヌクレオチドを含み、CD8T細胞が特異的に結合する抗原またはネオ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む。さらなる実施形態では、コードされるCD8抗原またはネオ抗原は、免疫細胞またはリンパ球に対して外因性である。理論に束縛されることを望むものではないが、T細胞のCD8活性およびCD4活性の共刺激により、ネオ抗原に対する免疫応答が高まり得る。
【0090】
上述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の免疫細胞またはリンパ球(例えば、T細胞)は、外因性ネオ抗原および免疫原性エンハンサーを含む。上述の実施形態のいずれかにおいて、免疫細胞またはリンパ球は、外因性ネオ抗原をコードするポリヌクレオチドおよび免疫原性エンハンサーをコードするポリヌクレオチドを含む。例示的な免疫原性エンハンサーは、IL-12(膜係留型IL-12を含む)、GM-CSF、誘導性細胞死因子、抗原(例えば、細菌フラジェリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0091】
上述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の外因性ネオ抗原を含有する免疫細胞またはリンパ球は、Toll様受容体(TLR)によって認識されるものなどの病原体関連分子を含む免疫原性エンハンサーを含有し得る。例えば、DNAにコードされるTLRアゴニストが本開示の免疫原性組成物またはワクチンと使用するための免疫原性エンハンサー(すなわち、分子アジュバント)として機能し得る(Applequistら、J. Immunol.、175巻:3882頁、2005年を参照されたい)。例示的な免疫原性エンハンサーは、細菌フラジェリンタンパク質を含む。細胞表面での細菌フラジェリンタンパク質の発現により免疫応答が高まることが示されている(Applequistら、2005年)。一部の実施形態では、コードされる免疫原性エンハンサーは、細菌フラジェリンまたはその免疫原性増強断片を含む。ある特定の実施形態では、外因性ネオ抗原をコードする核酸分子ならびに細菌フラジェリンまたはその免疫原性増強断片をコードする核酸分子を含む免疫細胞またはリンパ球が提供される。特定の実施形態では、細菌フラジェリンは、Salmonellaフェーズ1フラジェリンを含む。他の実施形態では、細菌フラジェリンは、GenBank受託番号NC_003197.1(その配列全体として参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、細菌フラジェリンは、リンパ球の細胞表面に局在する細菌フラジェリン融合タンパク質(すなわち、膜係留型細菌フラジェリン融合タンパク質)を含む。例えば、ある特定の実施形態では、細菌フラジェリン融合タンパク質は、(a)細菌フラジェリンドメイン;および(b)膜貫通ドメインを含む。ある特定の実施形態では、細菌フラジェリン融合タンパク質は、(c)融合タンパク質を分泌経路に導くシグナルドメインをさらに含む。特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、PDGF膜貫通ドメインを含む。ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号5に記載されているアミノ酸配列またはその断片を含む。さらなる実施形態では、シグナルドメインは、Igκ鎖リーダー配列を含む。ある特定の実施形態では、シグナルドメインは、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を含む。なおさらなる実施形態では、細菌フラジェリンドメインを改変して、真核生物グリコシル化部位を除去することができる。ある特定の実施形態では、細菌フラジェリンドメインは、配列番号4に記載されているアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、細菌フラジェリン融合タンパク質は、タグをさらに含む。一部の実施形態では、細菌フラジェリン融合タンパク質に含まれるタグは、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0092】
ある特定の実施形態では、細菌フラジェリン融合タンパク質は、配列番号3に記載されている核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を含む。
【0093】
上述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の外因性ネオ抗原を含有する免疫細胞またはリンパ球は、ヒトIL-12などのIL-12である免疫原性エンハンサーを含有する。背景として、IL-12は、抗原送達の部位におけるTh1炎症促進性応答の刺激を刺激する一方で(Hsiehら、Science、260巻:547頁、1993年)、全身性の毒性を限定することが示されている。例えば、膜に結合したIL-12により、移植された腫瘍細胞株に対する免疫応答が刺激され得る(Panら、Mol. Ther.、20巻:927頁、2012年)。本明細書で開示したある特定の実施形態では、外因性ネオ抗原および外因性IL-12またはその機能性断片を含む免疫細胞またはリンパ球が提供される。ヒトIL-12をコードする核酸配列は配列番号7に記載されており、ヒトIL-12のアミノ酸配列は配列番号8に記載されている。ある特定の実施形態では、外因性ネオ抗原をコードする核酸分子およびIL-12をコードする核酸分子を含む免疫細胞またはリンパ球が提供される。ある特定の実施形態では、IL-12は、単鎖(sc)IL-12を含む。単鎖IL-12の構築は、例えば、Panら、Mol. Ther.、20巻(5号):927~937頁(2012年)に記載されている。さらなる実施形態では、IL-12は、免疫細胞またはリンパ球の細胞表面に局在するIL-12融合タンパク質(すなわち、膜係留型IL-12)を含む。ある特定の実施形態では、IL-12融合タンパク質は、(a)IL-12ドメイン;および(b)膜貫通ドメインを含む。ある特定の実施形態では、IL-12の膜貫通ドメインは、B7、CD2、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD40、CD47、CD79A、CD79B、CD80、CD86、CD95(Fas)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD279(PD-1)、TIM3、CD300、CD357(GITR)、A2aR、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、GAL9、KIR、Lck、LAT、LPA5、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR2、Ryk、Slp76、SIRPα、pTα、TCRα、TCRβ、TIM3、TRIMまたはZap70のものである。ある特定の実施形態では、IL-12融合タンパク質は、融合タンパク質を分泌経路に導く(すなわち、細胞膜に局在させる)(c)シグナルペプチドをさらに含む。
【0094】
上述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の外因性ネオ抗原を含有する免疫細胞またはリンパ球は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である免疫原性エンハンサーを含有する。背景として、GM-CSFは、サイトカインシグナル伝達に応答して多数の細胞型から分泌され、他の機能の中でも、顆粒球および単球の産生を刺激し、これらは、その後、成熟してマクロファージおよびDCになる。GM-CSFは、免疫調節において役割を果たし、がん免疫療法において免疫原性エンハンサーとして使用されてきた。例えば、Hong、Exp. Mol. Med.、48巻(7号):e242頁(2016年)を参照されたい。
【0095】
上述の実施形態のいずれかにおいて、本開示は、外因性ネオ抗原および免疫原性エンハンサー、または外因性ネオ抗原をコードするポリヌクレオチドおよび免疫原性エンハンサーをコードするポリヌクレオチドを含む免疫細胞またはリンパ球を提供し、ここで、免疫細胞またはリンパ球は、T細胞を含む。
【0096】
樹状細胞による瀕死細胞の食作用は、交差刺激によってCD8T細胞を活性化する(Yatimら、Science、350巻:328頁、2015年)。したがって、本開示のネオ抗原を含有する免疫細胞またはリンパ球におけるアポトーシスまたはネクロトーシスを選択的に誘導することができることにより、炎症性細胞死経路を活性化すること、およびネオ抗原交差提示を増大させることによって細胞の免疫原性を高めることが可能になり得る。ある特定の実施形態では、免疫細胞またはリンパ球は、外因性ネオ抗原および外因性誘導性細胞死因子を含む。ある特定の実施形態では、免疫細胞またはリンパ球は、外因性ネオ抗原をコードする核酸分子および外因性誘導性細胞死因子をコードする核酸分子を含む。
【0097】
「誘導性細胞死因子」は、細胞死を誘発または促進することができ、また、その活性を選択的に誘導することができる分子を指す。一部の実施形態では、誘導性細胞死因子は、細胞死シグナル伝達ドメインおよびマルチマー形成ドメインを含む融合タンパク質である。
【0098】
「マルチマー形成ドメイン」とは、本明細書で使用される場合、別のポリペプチド分子または領域と、直接または間接的に、優先的に相互作用するまたは会合するポリペプチド分子または領域を指し、ここで、マルチマー形成ドメインの相互作用は、マルチマー形成(すなわち、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ホモトリマー、ヘテロトリマー、ホモマルチマー、ヘテロマルチマーなどであり得るダイマー、トリマー、テトラマー、または高次マルチマーの形成)に実質的に寄与するまたはそれを効率的に促進する。例えば、マルチマー形成は、共有結合(例えば、ジスルフィド結合または架橋)、イオン結合、金属結合、静電相互作用、塩橋、双極子-双極子力、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、またはそれらの任意の組み合わせを含めた1つまたは複数の型の分子力に起因し得る。マルチマーは適切な条件下(例えば、生理的条件、組換えまたは操作されたタンパク質の発現、精製、または保管に適した水溶液中、または非変性または非還元性電気泳動のための条件下)で安定である。例示的なマルチマー形成ドメインは、例えば、化学的に誘導されるマルチマー形成など、マルチマー形成促進分子を介して会合し、ここで、マルチマー形成は最小のものであるまたはマルチマー形成促進分子の非存在下では起こらない。
【0099】
ある特定の実施形態では、誘導性細胞死因子は、セリン/トレオニンキナーゼ3(RIPK3)と相互作用する受容体である(例えば、Yatimら、Science、350巻:328頁、2015年を参照されたい)。特定の実施形態では、RIPK3は、GenBank受託番号NP_006862(配列全体として参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を含む。RIPK3が活性化されると、TNF受容体により駆動される細胞死経路によってネクロトーシスが誘発され得、また、化学的に強制されたRIPK3のオリゴマー形成により、ネクロトーシスが誘導され得る(Orozcoら、Cell Death Differ.、21巻:1511頁、2014年)。したがって、ある特定の実施形態では、誘導性細胞死因子は、例えばRIPK3細胞死シグナル伝達ドメインおよびマルチマー形成ドメインを含む融合タンパク質である。ある特定の実施形態では、RIPK3細胞死シグナル伝達ドメインはRIPK3キナーゼドメインを含み、マルチマー形成ドメインはFK506結合タンパク質またはそのマルチマー形成部分を含む。FK506結合タンパク質は、ラパマイシンの合成二価同族化合物と高親和性で結合し、その結果、迅速なダイマー形成がもたらされる(Yatimら、上記;Orozcoら、上記)。さらなる実施形態では、マルチマー形成促進分子は、ラパマイシンまたはその類似体もしくは誘導体を含む。細胞死を導くタンパク質相互作用に関連付けられる他の分子は、混合系統キナーゼドメイン様(MLKL)(Murphyら、Immunity、39巻:443頁、2013年を参照されたい)、ならびにカスパーゼおよびGSDMD(Shiら、Nature、526巻:660頁、2015年を参照されたい)を含む。外因性ネオ抗原および誘導性MLKL、カスパーゼ、またはGSMDを含む免疫細胞、リンパ球またはT細胞も本開示の範囲内に入る。外因性ネオ抗原をコードする核酸分子および誘導性MLKL、カスパーゼ、またはGSMDをコードする核酸分子を含む免疫細胞、リンパ球またはT細胞も提供される。
【0100】
本明細書に開示される細胞または方法における使用のための他の免疫原性エンハンサーとして、例えば、CD80、CD137L、CD40L、分泌型IL-2、CD25非依存的にT細胞に結合する分泌型IL-2、分泌型IL-15、分泌型IL-15-IL-15Rα複合体、分泌型IFNβ、分泌型IFN-α1、分泌型IL-7、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0101】
上述の実施形態のいずれかにおいて、本開示は、外因性ネオ抗原および外因性誘導性細胞死因子、または外因性ネオ抗原をコードするポリヌクレオチドおよび外因性誘導性細胞死因子をコードするポリヌクレオチドを含む免疫細胞またはリンパ球を提供し、ここで、免疫細胞またはリンパ球は、T細胞を含む。
【0102】
上述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の外因性ネオ抗原を含有する免疫細胞またはリンパ球は、共刺激分子をさらに含み得る。ある特定の実施形態では、外因性ネオ抗原をコードする核酸分子および共刺激分子をコードする核酸分子を含む免疫細胞またはリンパ球が提供される。「共刺激分子」とは、本明細書で使用される場合、T細胞にシグナルを送達または伝達してT細胞活性化を正に調節することができる受容体、リガンド、または細胞表面分子を指す(ChenおよびFlies、Nat. Rev. Immunol.、13巻:227頁、2013年)。背景として、T細胞活性化および増殖には、T細胞抗原特異的受容体(TCR)と共刺激シグナルの関与(engagement)、最も典型的には、CD28へのCD80およびCD86の結合に媒介される2つのシグナルが必要である(Ledbetterら、Blood、75巻:1531頁、1990年)。共刺激リガンドおよび対抗受容体は、APC上またはT細胞と相互作用する他の細胞上に頻繁に発現し、T細胞上に見出される細胞表面受容体と相互作用することによって共刺激シグナル伝達をもたらす。一部の実施形態では、外因性ネオ抗原および外因性共刺激分子を含む免疫細胞またはリンパ球が提供され、ここで、共刺激分子は、CD80、CD86、B7RP1、CD137L、OX40L、CD70、CD30L、CD154、ICAM-1、CD2BP2、LIGHT、KLRD1、CD83に特異的に結合するリガンド、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。特定の実施形態では、共刺激分子は、CD80を含む。さらなる実施形態では、共刺激分子は、CD137Lを含む。なおさらなる実施形態では、共刺激分子は、免疫細胞またはリンパ球の細胞表面に局在する。
【0103】
上述の実施形態のいずれかにおいて、本開示は、外因性ネオ抗原および外因性共刺激分子、または外因性ネオ抗原をコードするポリヌクレオチドおよび外因性共刺激分子をコードするポリヌクレオチドを含む免疫細胞またはリンパ球を提供し、ここで、免疫細胞またはリンパ球は、T細胞を含む。
【0104】
上述の実施形態のいずれかにおいて、外因性ネオ抗原を含有する免疫細胞またはリンパ球は、疾患または障害に関連する外因性ネオ抗原を含む。一部の実施形態では、ネオ抗原は、がんなどの過剰増殖性疾患または障害に関連する。ある特定の実施形態では、ネオ抗原は、腫瘍ネオ抗原を含む。特定の実施形態では、ネオ抗原は、野生型核酸分子によりコードされるタンパク質と比較してミスセンス変異またはフレームシフト変異を有する核酸分子によりコードされるタンパク質に由来する腫瘍ネオ抗原を含む。
【0105】
上述の実施形態のいずれかにおいて、外因性ネオ抗原、外因性免疫原性エンハンサー、外因性誘導性細胞死因子、または外因性共刺激分子を、ネオ抗原、免疫原性エンハンサー、誘導性細胞死因子、および共刺激分子の1つまたは複数をコードするDNA分子のトランスフェクション、形質導入、または電気穿孔などの当技術分野で公知の方法によって免疫細胞に導入することができる。一部の実施形態では、ネオ抗原、免疫原性エンハンサー、誘導性細胞死因子、または共刺激分子をコードするポリヌクレオチドを免疫細胞に導入するために発現構築物を使用する。例えば、一部の実施形態では、外因性ネオ抗原、外因性免疫原性エンハンサー、外因性誘導性細胞死因子、または外因性共刺激分子の1つまたは複数を、トランスポゾンベクターまたは発現構築物を使用して免疫細胞、リンパ球またはT細胞に導入する。
【0106】
発現構築物および宿主細胞
別の態様では、本開示は、1種または複数種のネオ抗原および免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子、ならびにそのようなネオ抗原および免疫原性エンハンサーを宿主細胞(例えば、T細胞)において発現させるための発現構築物を提供する。
【0107】
本明細書で使用される「発現構築物」は、好適な宿主において核酸分子の発現を果すことができる好適な制御配列に作動可能に連結されている核酸分子を含有するDNA構築物を指す。発現構築物は、ベクター(例えば、細菌ベクター、ウイルスベクター)内に存在してもよく、またはゲノムに組み込まれていてもよい。用語「作動可能に連結される」は、単一ポリヌクレオチド断片上の2つまたはそれより多くのポリヌクレオチドが、あるポリヌクレオチドの機能が他のポリヌクレオチドによる影響を受けるように、会合していることを指す。例えば、プロモーターとコード配列は、プロモーターがそのコード配列の発現に影響を与えることができる(すなわち、コード配列が、プロモーターの転写制御下にある)場合、作動可能に連結している。用語「発現制御配列」(調節配列とも呼ばれる)は、それらが作動可能に連結されているコード配列の発現およびプロセシングを果す、ポリヌクレオチド配列を指す。例えば、発現制御配列としては、転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;効率的RNAプロセシングシグナル、例えば、スプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を向上させる配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を向上させる配列;およびことによると、タンパク質分泌を増進する配列を挙げることができる。
【0108】
ある特定の実施形態では、発現構築物は、ベクター内に存在する。「ベクター」は、別の核酸を輸送することができる核酸分子である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、RNAベクター、または直鎖状もしくは環状DNAもしくはRNA分子であってもよく、これらは、染色体、非染色体、半合成もしくは合成核酸を含み得る。例示的なベクターは、自己複製能力があるもの(エピソームベクター)、または連結されている核酸を発現させる能力があるもの(発現ベクター)である。例示的なウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルスおよびアルファウイルス、ならびに二本鎖DNAウイルスが挙げられ、二本鎖DNAウイルスには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘およびカナリアポックス)が含まれる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血病肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプーマウイルスが挙げられる(Coffin、Retroviridae: The viruses and their replication、Fundamental Virology、第3版、B. N. Fieldsら編、Lippincott-Raven Publishers、Philadelphia、1996年)。一部の実施形態では、ベクターは、プラスミドベクター(例えば、sleeping beauty、piggyBacまたはトランスポゾンベクター)である。一部の実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。一部のそのような実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはγ-レトロウイルスベクターである。一部の実施形態において、ウイルスまたはプラスミドベクターは、遺伝子マーカー形質導入(例えば、緑色蛍光タンパク質、huEGFRt)をさらに含む。
【0109】
ある特定の他の態様では、本開示は、本明細書に記載の発現構築物もしくはベクターを含むか、または本明細書に記載の発現構築物により提供されるポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。本明細書で使用される用語「宿主」は、目的のポリペプチド(例えば、ネオ抗原)を産生するための異種または外因性核酸分子での遺伝子修飾の標的となる細胞(例えば、T細胞造血前駆体細胞)または微生物を指す。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、異種または外因性ネオ抗原ペプチドまたは免疫原性エンハンサーの生合成に関係するまたは関係しない所望の特性を付与する他の遺伝子修飾(例えば、検出可能なマーカーの包含)を、任意選択で、既に有することもあり、または含むように修飾されることもある。1つより多くの異種または外因性核酸分子を、別の核酸分子として、複数の個々に制御された遺伝子として、ポリシストロン性核酸分子として、融合タンパク質をコードする単一の核酸分子として、またはそれらの任意の組み合わせとして、宿主細胞に導入することができる。2つまたはそれより多くの外因性核酸分子を宿主細胞に導入する場合、2つまたはそれより多くの外因性核酸分子を、単一の核酸分子として(例えば、単一のベクターを用いて)導入し、別々のベクターを用いて、宿主染色体の単一の部位または複数の部位に組み込むことができることは理解される。言及した異種核酸分子またはタンパク質活性の数は、コードする核酸分子の数またはタンパク質活性の数を指し、宿主細胞に導入される別々の核酸分子の数を指さない。
【0110】
ある特定の実施形態では、トランスポゾン発現構築物を使用して外因性ネオ抗原または免疫原性エンハンサーを宿主細胞に導入する。「トランスポゾン」(または「転移因子」)は、トランスポザーゼの存在下でDNA分子内で位置を移動することができる可動性の遺伝学的単位を指す。トランスポゾンは、トランスポザーゼ酵素がDNAに逆方向反復において結合し、当該エレメントのDNA分子からの切除を触媒し、それを別の場所に挿入するカットアンドペースト機構によって動員される。この水平な遺伝子移入のプロセスを使用して遺伝子を細胞に導入することができる。本明細書で使用される場合、「トランスポゾン系」とは、トランスポゾンおよびトランスポザーゼを含むプラスミドに基づく遺伝子移入系を指す。外因性遺伝子を細胞に導入するために使用することができるトランスポゾンは、例えば、sleeping beautyトランスポゾン(Ivicsら、Cell、91巻:501頁、1997年)およびpiggyBacトランスポゾン(Dingら、Cell、122巻:473頁、2005年)を含む。piggyBacトランスポゾン系では、目的の遺伝子にはトランスポゾン末端逆位配列(IR)エレメントが隣接し、構築物は、一般には、トランスポザーゼ酵素を発現するプラスミドと共に細胞内に電気穿孔される。これにより、レトロウイルスベクターに関連する初代ヒトT細胞への効率的な安定な組み込みが導かれ(Nakazawaら、J. Immunother.、32巻:826頁、2009年)、また、これには、使いやすい、低コストの裸のDNA、および組み込みに関連する形質転換事象の理論的リスクが低いという利点がある(Galvanら、J. Immunother.、32巻:837頁、2009年)。
【0111】
ある特定の実施形態では、ネオ抗原をコードする核酸分子を含むトランスポゾン発現構築物が提供される。さらなる実施形態では、トランスポゾン発現構築物は、sleeping beautyトランスポゾンまたはpiggyBacトランスポゾンを含む。特定の実施形態では、トランスポゾン発現構築物は、(a)プロモーター;(b)第1のpiggyBacトランスポゾン逆方向反復;(b)ネオ抗原をコードする核酸分子;および(c)第2のpiggyBacトランスポゾン逆方向反復を含み、ここで、ネオ抗原をコードする核酸分子は、第1のpiggyBacトランスポゾン逆方向反復と第2のpiggyBacトランスポゾン逆方向反復の間に位置する。
【0112】
上述の実施形態のいずれかにおいて、トランスポゾン発現構築物は、プラスミド中に存在し得るまたはプラスミド中で細胞に送達され得る。
【0113】
上述の実施形態のいずれかにおいて、トランスポゾン発現構築物は、ネオ抗原をコードする核酸分子を含むミニ遺伝子を含み得る。上述の実施形態のいずれかにおいて、トランスポゾン発現構築物は、各ミニ遺伝子がネオ抗原をコードする核酸分子を含む、タンデムなミニ遺伝子を含み得る。例えば、タンデムなミニ遺伝子は、2種から約20種までのネオ抗原、または2種から約10種までのネオ抗原、または2種から約5種までのネオ抗原をコードする核酸分子を含み得る。
【0114】
上述の実施形態のいずれかにおいて、トランスポゾン発現構築物は、レポーター遺伝子をさらに含み得る。ある特定の実施形態では、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子である。ある特定の実施形態では、トランスポゾン発現構築物は、細胞表面マーカーをコードする核酸分子をさらに含む。例えば、特定の実施形態では、細胞表面マーカーは、切断型ヒトCD19、切断型ヒトEGFR、切断型ヒトCD34、切断型ヒトNGFR、または任意の他の当技術分野で公知の形質導入マーカーを含む。
【0115】
上述の実施形態のいずれかにおいて、トランスポゾン発現構築物は、免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子をさらに含み得、ここで、免疫原性エンハンサーは、IL-12(例えば、膜係留型IL-12など)、およびGM-CSF、誘導性細胞死因子、抗原(例えば、細菌フラジェリン)、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0116】
上述の実施形態のいずれかにおいて、トランスポザーゼ発現構築物は、piggyBacトランスポザーゼをコードする核酸分子をさらに含み得る。例えば、トランスポザーゼは、他の外因性遺伝子およびpiggyBacトランスポゾン逆方向反復と同じ発現構築物によりコードされるものであり得る。他の実施形態では、トランスポザーゼは、異なる発現構築物に含有される核酸分子によりコードされる。例えば、特定の実施形態では、トランスポザーゼは、異なるプラスミド中に存在する発現構築物中の核酸分子によりコードされる。
【0117】
別の態様では、本明細書に記載するトランスポゾン発現構築物を含む宿主細胞が提供される。一部の実施形態では、宿主細胞は、上述の実施形態のいずれかのトランスポゾン発現ベクターを含む。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、piggyBacトランスポザーゼをコードする核酸分子を含むpiggyBacトランスポザーゼ酵素発現構築物をさらに含む。特定の実施形態では、第1の構築物と第2の構築物とは、異なるプラスミド中に存在する。
【0118】
上述の実施形態のいずれかにおいて、宿主細胞は、免疫系細胞であり得る。一部の実施形態では、宿主細胞は、樹状細胞を含む。他の実施形態では、宿主細胞は、T細胞を含む。さらなる実施形態では、宿主細胞は、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、ナイーブおよびセントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組み合わせから選択されるT細胞を含む。特定の実施形態では、宿主細胞は、CD4T細胞またはCD8T細胞またはその両方である。
【0119】
上述の実施形態のいずれかにおいて、宿主細胞は、ヒトT細胞などのヒト細胞を含み得る。
【0120】
上述の実施形態のいずれかにおいて、外因性ネオ抗原、外因性免疫原性エンハンサー、外因性誘導性細胞死因子、または外因性共刺激分子をコードするポリヌクレオチドをウイルスベクターによって宿主細胞に送達する。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである。
【0121】
上述の実施形態のいずれかにおいて、本開示のポリヌクレオチドを送達するために使用されるウイルスベクターは、例えば、IL-12(例えば、膜係留型IL-12など)、GM-CSF、誘導性細胞死因子、抗原(例えば、細菌フラジェリン)、またはそれらの任意の組み合わせから選択される免疫原性エンハンサーをコードするポリヌクレオチドを含む。上述の実施形態のいずれかにおいて、本開示のポリヌクレオチドを送達するために使用されるウイルスベクターは、CD80、CD137、CD140L、分泌型IL-2、T細胞結合に関してCD25非依存性になるように改変されたIL-2(Levinら、Nature、484巻(7395号):529~33頁、2012年を参照されたい)、IL-15、IL-15-IL-15受容体アルファ複合体、IFN-B、IFN-A1、IL-7、小分子ダイマー形成性RIPK3などの誘導性デススイッチ(inducible death switche)、またはそれらの任意の組み合わせをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0122】
上述の実施形態のいずれかにおいて、ネオ抗原をコードする宿主細胞(例えば、T細胞などのリンパ球)は、ウイルスベクターによって送達された、共刺激分子をコードする核酸分子をさらに含む。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、CD80、CD86、B7RP1、CD137L、OX40L、CD70、CD30L、CD154、ICAM-1、CD2BP2、LIGHT、KLRD1、CD83に特異的に結合するリガンド、CD137(4-1BB)のアゴニスト、CD134(OX-40)のアゴニスト、CD27のアゴニスト、CD28のアゴニスト、CD40のアゴニスト、CD122のアゴニスト、GITRのアゴニスト、ICOSのアゴニスト、またはそれらの任意の組み合わせをコードする核酸分子を含む。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、CD80をコードする核酸分子を含む。他の特定の実施形態では、ウイルスベクターは、CD137Lをコードする核酸分子を含む。ある特定の実施形態では、共刺激分子は、T細胞などの宿主細胞の細胞表面に局在する。
【0123】
方法およびキット
さらなる態様では、外因性ネオ抗原および免疫原性エンハンサー、ならびに任意選択で任意の他の活性な分子を発現する免疫細胞またはリンパ球を調製するための方法およびキットが提供される。
【0124】
ある特定の実施形態では、外因性ネオ抗原を含む免疫細胞またはリンパ球を調製するための方法であって、リンパ球に、(a)ネオ抗原(例えば、特定の被験体の試料中で同定されたもの)をコードする核酸分子を含有するトランスポゾンプラスミド(例えば、piggyBac)、および(b)トランスポザーゼ(例えば、piggyBac)をコードする核酸分子を含むプラスミドを導入し、それにより、外因性ネオ抗原を含むリンパ球を調製することを含む方法が提供される。
【0125】
さらなる実施形態では、2種またはそれよりも多くのネオ抗原またはネオ抗原をコードする核酸分子は、タンデムなミニ遺伝子内に含有される。例えば、タンデムなミニ遺伝子を使用して、同じプラスミドに含有される複数のネオ抗原を発現させることができる。
【0126】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載する方法によって調製されたネオ抗原を発現する免疫細胞またはリンパ球は、処置される被験体に対して同系、同種異系、または自己のものである。特定の実施形態では、ネオ抗原を発現する免疫細胞またはリンパ球は、処置される被験体に対して自己のものである。ある特定の実施形態では、トランスポゾンプラスミド(例えば、piggyBac)およびトランスポザーゼ(例えば、piggyBac)をコードする核酸分子を含むプラスミドを、ex vivoで免疫細胞またはリンパ球(例えば、T細胞)に導入する。一部の実施形態では、ネオ抗原または免疫原性エンハンサーをコードする核酸分子を、例えば、CRISPR-Cas9系またはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZNF)系を使用することによってなど、公知のゲノム編集技術を使用して免疫細胞またはリンパ球のゲノムに導入する。例えば、Wangら、Nat. Biotech、33巻:1256頁(2015年)を参照されたい;Lombardoら、Nat. Biotech.、11巻:1298頁(2007年)およびPCT特許出願第US/2016/031366号も参照されたい。
【0127】
ある特定の実施形態では、上記の成分または本明細書に開示したトランスポゾン発現構築物を含むキットが提供される。
【0128】
医薬組成物および使用方法
一部の態様では、医薬組成物、免疫原性、組成物、およびワクチンが提供される。一部の実施形態では、ロバストな免疫細胞応答を誘発するまたは追加刺激するための治療ワクチンが提供される。ある特定の実施形態では、ワクチンは、外因性ネオ抗原を発現するように改変された免疫細胞を含む。
【0129】
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書に開示の免疫細胞またはリンパ球(例えば、T細胞)と薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む組成物を提供する。診断および治療上の使用のための薬学的に許容される担体は、薬学技術分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R. Gennaro(編集)、第18版、1990年)に、およびCRC Handbook of Food、Drug, and Cosmetic Excipients、CRC Press LLC (S.C.Smolinski編、1992年)に記載されている。例示的な薬学的に許容される担体には、任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤(glidant)、希釈剤、保存薬、色素/着色剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、乳化剤、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。例えば、生理的pHの滅菌食塩水およびリン酸緩衝食塩水は、好適な薬学的に許容される担体であり得る。保存薬、安定剤、色素または同種のものが、医薬組成物に提供されることもある。加えて、抗酸化剤および懸濁剤が使用されることもある。医薬組成物は、希釈剤、例えば水、緩衝液、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、低分子量ポリペプチド(約10残基未満)、タンパク質、アミノ酸、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、デキストリン)、キレート剤(例えば、EDTA)、グルタチオン、ならびに他の安定剤および賦形剤も、含有することがある。中性緩衝食塩水、または非特異的血清アルブミンと混合された食塩水は、例示的な希釈剤である。
【0130】
別の態様では、疾患または障害を処置するための方法であって、本明細書で開示した組成物を投与するステップを含む方法が提供される。ある特定の実施形態では、本開示は、疾患または障害を処置するための方法であって、本明細書で開示したリンパ球または本明細書で開示した組成物を有効量でそれを必要とするヒト被験体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0131】
別の態様では、ネオ抗原の発現に関連する疾患または障害を有するヒト被験体を処置するための方法であって、本明細書で開示した免疫細胞またはリンパ球または本明細書で開示した組成物を有効量でそれを必要とするヒト被験体に投与するステップを含む方法が提供される。本明細書で開示した方法のいずれかにおいて、免疫細胞またはリンパ球は、被験体に対して自己のもの、被験体に対して同系のもの、または被験体に対して同種異系のものであり得る。本明細書で開示した方法のいずれかにおいて、リンパ球は、T細胞を含む。
【0132】
別の態様では、疾患または障害(例えば、がん、感染)を有するヒト被験体における当該疾患または障害の再燃または再発を防止するための方法であって、本明細書で開示したネオ抗原および免疫原性エンハンサーを含有もしくは発現するT細胞などのリンパ球、または本明細書で開示した組成物を有効量でそれを必要とするヒト被験体に投与するステップを含む方法が提供される。上述の実施形態のいずれかにおいて、疾患または障害は、ウイルス感染、細菌感染、過剰増殖性障害、または炎症性疾患もしくは自己免疫疾患であり得る。
【0133】
感染性疾患としては、感染性因子と関連するものが挙げられ、以下のうちのいずれかが挙げられる:種々の細菌(例えば、病原性E.coli、S.typhimurium、P.aeruginosa、B.anthracis、C.botulinum、C.difficile、C.perfringens、H.pylori、V.cholerae、Listeria spp.、Rickettsia spp.、Chlamydia spp.など)、マイコバクテリア、および寄生生物(原生動物の中の任意の公知の寄生生物メンバーを含む)。感染性ウイルスとしては、真核生物ウイルス(例えば、アデノウイルス、ブンヤウイルス、ヘルペスウイルス、パポバウイルス、パピローマウイルス(例えば、HPV)、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病)、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザ)、ポックスウイルス(例えば、ワクシニア)、レオウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス(例えば、HIV)、フラビウイルス(例えば、HCV、HBV)などが挙げられる。ある種の実施形態において、抗原がプロセシングされ、HLA(MHC)クラスI分子とともに示されるサイトゾル病原体での感染は、本開示の融合タンパク質で処置される。
【0134】
腫瘍および白血病を含む、様々ながんは、本明細書で開示する組成物および方法に感受性(amenable)である。処置することができる例示的な種類のがんは、乳房、前立腺、および結腸の腺癌;肺のすべての型の気管支原性癌:骨髄系白血病;黒色腫;肝がん;神経芽腫;乳頭腫;アプドーマ;分離腫;鰓腫;悪性カルチノイド症候群;カルチノイド心疾患;ならびに癌腫(例えば、ウォーカー、基底細胞、基底有棘細胞、ブラウン-ピアス、管、エールリッヒ腫瘍、クレブス2、メルケル細胞、粘液性、非小細胞肺、エンバク細胞、乳頭、硬性、細気管支、気管支原性、扁平上皮細胞および移行細胞)を含む。処置することができるさらなる種類のがんは、組織球性障害;悪性組織球性白血病;ホジキン病:免疫増殖性小(immunoproliferative small);非ホジキンリンパ腫;形質細胞腫;細網内皮症;黒色腫;軟骨芽細胞腫;軟骨腫;軟骨肉腫;線維腫;線維肉腫;巨細胞腫;組織球腫;脂肪腫;脂肪肉腫;中皮腫;粘液腫;粘液肉腫;骨腫;骨肉腫;脊索腫;頭蓋咽頭腫;未分化胚細胞腫;過誤腫;間葉腫;中腎腫;筋肉腫;エナメル上皮腫;セメント質腫;歯牙腫;奇形腫;胸腺腫;栄養膜腫瘍を含む。さらに、以下の種類のがんも処置に感受性であると考えられる:腺腫;胆管腫;コレステリン腫;円柱腫(cyclindroma);嚢胞腺がん;嚢胞腺腫;顆粒膜細胞腫;半陰陽性卵巣腫瘍;肝がん;汗腺腫;膵島細胞腫瘍;ライジッヒ細胞腫;乳頭腫;セルトリ細胞腫;卵胞膜細胞腫;平滑筋腫;平滑筋肉腫;筋芽細胞腫;筋腫(myomma);筋肉腫;横紋筋腫;横紋筋肉腫;上衣腫;神経節神経腫;神経膠腫;髄芽腫;髄膜腫;神経鞘腫;神経芽細胞腫;神経上皮腫;神経線維腫;神経腫;傍神経節腫;非クロム親和性傍神経節腫。処置することができる種類のがんは、被角血管腫;好酸球増加随伴性血管類リンパ組織増殖症;硬化性血管腫;血管腫症;グロムス血管腫;血管内皮腫;血管腫;血管外皮細胞腫;血管肉腫;リンパ管腫;リンパ管筋腫;リンパ管肉腫;松果体腫;癌肉腫;軟骨肉腫;葉状嚢肉腫;線維肉腫;血管肉腫;平滑筋肉腫;白血肉腫(leukosarcoma);脂肪肉腫;リンパ管肉腫;筋肉腫;粘液肉腫;卵巣癌腫;横紋筋肉腫;肉腫;新生物;神経線維腫症(nerofibromatosis);および子宮頸部異形成をも含む。
【0135】
処置に感受性である種々の過剰増殖性障害を例示すると、B細胞リンパ腫(様々な種類のホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)または中枢神経系リンパ腫など)、白血病(急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、ヘアリーセル白血病、慢性骨髄芽球性白血病のB細胞芽球形質転換など)ならびに骨髄腫(多発性骨髄腫など)がある。さらなるB細胞がんは、小リンパ球性リンパ腫、B細胞性前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連(MALT)リンパ組織型節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦郭(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、悪性の可能性のあるB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症および移植後リンパ増殖性障害を含む。
【0136】
炎症性疾患および自己免疫疾患としては、以下が挙げられる:関節炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、多発軟骨炎、乾癬性関節炎、乾癬、皮膚炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、封入体筋炎、炎症性筋炎、中毒性表皮壊死症、全身性強皮症および硬化症、クレスト症候群、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、脳炎、ぶどう膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー状態、湿疹、喘息、T細胞の浸潤および慢性炎症応答が関わる状態、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、全身性エリテマトーデス(SLE)、亜急性皮膚エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、ループス脊髄炎、ループス脳炎、若年発症糖尿病、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、視神経脊髄炎、リウマチ熱、シデナム舞踏病、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症と関連する免疫応答、結核、類肉腫症、ウェゲナー肉芽腫症およびチャーグ・ストラウス病を含む肉芽腫症、無顆粒球症、血管炎(過敏性血管炎/脈管炎、ANCAおよびリウマトイド血管炎を含む)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む免疫性溶血性貧血、悪性貧血、赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球遊出が関わる疾患、中枢神経系(CNS)炎症性障害、多臓器障害症候群(multiple organ injury syndrome)、重症筋無力症、抗原-抗体複合体媒介性の疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、ランバート・イートン筋無力症症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、固形臓器移植片拒絶、移植片対宿主病(GVHD)、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、自己免疫性多内分泌腺症候群、血清反応陰性脊椎関節症、ライター病、スティフ・マン症候群、巨細胞性動脈炎、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発ニューロパチーまたはIgM媒介性ニューロパチー、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、自己免疫性血小板減少症、自己免疫精巣炎および自己免疫卵巣炎を含む精巣および卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症;自己免疫甲状腺炎、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、アジソン病、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群(または多腺性内分泌障害症候群)、インスリン依存性糖尿病(IDDM)ともいわれるI型糖尿病およびシーハン症候群を含む自己免疫性内分泌疾患;自己免疫性肝炎、リンパ球性間質性肺炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植)、非特異性間質性肺炎(NSIP)、ギラン・バレー症候群、大型血管炎(リウマチ性多発筋痛症および巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中型血管炎(川崎病および結節性多発動脈炎を含む)、結節性多発動脈炎(PAN)、強直性脊椎炎、バージャー病(IgA腎症)、急速進行性糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変、セリアックスプルー(グルテン性腸症)、クリオグロブリン血症、肝炎と関連するクリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、冠動脈疾患、家族性地中海熱、顕微鏡的多発血管炎、コーガン症候群、ウィスコット・オルドリッチ症候群および閉塞性血栓血管炎。
【0137】
特定の実施形態では、疾患または障害は、血液学的悪性疾患または固形がんから選択される過剰増殖性疾患または障害である。ある特定の実施形態では、過剰増殖性疾患または障害は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)および多発性骨髄腫(MM)から選択される血液学的悪性疾患である。一部の実施形態では、過剰増殖性疾患または障害は、胆管がん、膀胱がん、骨および軟部組織癌腫、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん(cervical cancer)、結腸がん、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、類腱腫、胚性がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、胃腺癌、多形膠芽腫、婦人科腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、肝臓がん、肺がん、中皮腫;悪性黒色腫、神経芽腫;骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、膵管腺癌、原発性星状細胞腫瘍、原発性甲状腺がん、前立腺がん、腎臓がん、腎細胞癌、横紋筋肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、精巣胚細胞腫瘍、尿路上皮がん、子宮肉腫および子宮がんから選択される固形がんである。ある特定の実施形態では、処置される疾患または障害は、肺がんである。ある特定の実施形態では、処置される疾患または障害は、悪性黒色腫である。
【0138】
ある特定の実施形態では、過剰増殖性疾患または障害を処置するための方法が提供され、過剰増殖性疾患または障害は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)または多発性骨髄腫(MM)から選択される血液学的悪性疾患である。
【0139】
さらなる実施形態では、過剰増殖性疾患または障害を処置するための方法が提供され、過剰増殖性疾患または障害は、胆管がん、膀胱がん、骨および軟部組織癌腫、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、類腱腫、胚性がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、胃腺癌、多形膠芽腫、婦人科腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、肝臓がん、肺がん、中皮腫;悪性黒色腫、神経芽腫;骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、膵管腺癌、原発性星状細胞腫瘍、原発性甲状腺がん、前立腺がん、腎臓がん、腎細胞癌、横紋筋肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、精巣胚細胞腫瘍、尿路上皮がん、子宮肉腫および子宮がんから選択される固形がんである。
【0140】
上述の実施形態のいずれかにおいて、組成物は、リンパ球または宿主細胞を含み得、リンパ球または宿主細胞は、ヒト被験体に対して同系、同種異系、または自己のものである。一部の実施形態では、組成物は、リンパ球または宿主細胞を含み得、リンパ球または宿主細胞は、ヒト被験体に対して自己のものである。
【0141】
本開示の組成物は、医療分野の当業者によって決定される処置(または防止)すべき疾患または状態に適切な方法で投与することができる。組成物の適切な用量、好適な投与の期間および頻度は、患者の状態、サイズ、疾患の種類および重症度、有効成分の特定の形態、ならびに投与方法のような因子により決定される。ある特定の実施形態では、本開示の細胞または組成物は、最初の「刺激」用量で投与し、その後、1つまたは複数の「追加刺激」用量を、状況に適した量および頻度および持続時間で続けることができる。ある特定の実施形態では、刺激用量および追加刺激用量の一方または両方が、外因性ネオ抗原および1種または複数種の外因性免疫原性エンハンサー(例えば、mtIL-12および分泌型GM-CSF)を含むリンパ球を含む。
【0142】
本開示は、本明細書で開示されるとおりの融合タンパク質を発現する細胞および薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。適切な賦形剤としては、水、食塩水、デキストロース、グリセロールなどおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0143】
上述の実施形態のいずれかにおいて、方法は、追加の治療剤または補助剤を投与するステップをさらに含み得る。ある特定の実施形態では、ネオ抗原およびアジュバントを含む改変されたリンパ球(例えば、T細胞)またはその組成物を、追加の治療剤または補助剤と同時にまたは逐次的に投与する。
【0144】
ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、化学療法;免疫チェックポイント分子の阻害剤;共刺激分子;免疫原性を高める分子;細胞療法;またはワクチンを含む。
【0145】
ある特定の実施形態において、追加の治療剤は、化学療法を含む。例示的な化学療法剤としては、以下が挙げられる:例えば、アルキル化剤(例えば、チオテパおよびシクロホスファミド);アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン);アジリジン(例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、およびウレドパ);エチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamine)(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含む);ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード);ニトロソウレア(nitrosurea)(例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン);抗生物質(例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン(olivomycin)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン);代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU));葉酸アナログ(例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート);プリンアナログ(例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン);ピリミジンアナログ(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU);アンドロゲン(例えば、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン);抗副腎皮質物質(anti-adrenal)(例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン);葉酸補充剤(例えば、フロリン酸);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSKTM;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2″-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン(例えば、パクリタキセル(タキソールTM、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)およびドセタキセル(タキソテールTM、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン);ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン、カペシタビン;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に受容可能な塩、酸または誘導体。
【0146】
ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、免疫チェックポイント分子の阻害剤を含む。ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、免疫チェックポイント分子の活性または発現を遮断する作用物質を含む。一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG3、CTLA4、B7-H3、B7-H4、CD244/2B4、HVEM、BTLA、CD160、TIM3、GAL9、KIR、PVR1G(CD112R)、PVRL2、アデノシン、A2aR、免疫抑制性サイトカイン(例えば、IL-10、IL-4、IL-1RA、IL-35)、IDO、アルギナーゼ、VISTA、TIGIT、LAIR1、CEACAM-1、CEACAM-3、CEACAM-5、Treg細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む。一部の実施形態では、作用物質は、PD-1、PD-L1、またはPD-L2の活性または発現を遮断するものである。一部の実施形態では、作用物質は、免疫チェックポイント分子の活性を遮断するものであり、作用物質は、アンタゴニスト抗体またはその結合断片、アプタマー、リボザイム、ドミナントネガティブ阻害剤、または小分子阻害剤を含む。一部の実施形態では、作用物質は、免疫チェックポイント分子の発現を遮断するものであり、作用物質は、siRNA、shRNA、RNAi、アンチセンス、CRISPR/Cas系、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはTALENである。一部の実施形態では、作用物質は、PD-1に結合する抗体を含めた、PD-1、PD-L1、またはPD-L2の活性を遮断する抗体である。
【0147】
一部の実施形態では、追加の治療剤は、共刺激分子を含む。一部の実施形態では、共刺激分子は、CD80、CD86、B7RP1、CD137L、OX40L、CD27、CD28、CD122、GITR、ICOS、CD40、CD70、CD30L、CD154、ICAM-1、CD2BP2、LIGHT、KLRD1、またはCD83に特異的に結合するリガンドを含む。特定の実施形態では、共刺激分子は、CD80を含む。なおさらなる実施形態では、共刺激分子は、CD137Lを含む。一部の実施形態では、追加の治療剤は、共刺激分子のアゴニストを含む。例えば、追加の治療剤は、CD137(4-1BB)アゴニスト(例えば、ウレルマブなど)、CD134(OX-40)アゴニスト(例えば、MEDI6469、MEDI6383、またはMEDI0562など)、レナリドマイド、ポマリドミド、CD27アゴニスト(例えば、CDX-1127など)、CD28アゴニスト(例えば、TGN1412、CD80、またはCD86など)、CD40アゴニスト(例えば、CP-870,893、rhuCD40L、またはSGN-40など)、CD122アゴニスト(例えば、IL-2など)、GITRのアゴニスト(例えば、PCT特許出願公開第WO2016/054638号に記載されているヒト化モノクローナル抗体など)、ICOSのアゴニスト、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0148】
ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、細菌フラジェリン、IL-12、GM-CSF、ヘルパー抗原、またはそれらの任意の組み合わせなどの、免疫原性を高める分子を含む。一部の実施形態では、細菌フラジェリンは、Salmonellaフェーズ1フラジェリンを含む。他の実施形態では、細菌フラジェリン、IL-12、GM-CSF、ヘルパー抗原、またはそれらの任意の組み合わせをアジュバントと組み合わせる。
【0149】
ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、操作されたTCR、キメラ抗原受容体(CAR)またはその両方を含む免疫細胞などの、細胞療法を含む。さらなる実施形態では、追加の治療剤は、ペプチドワクチン、DNAワクチン、RNAワクチン、細胞ワクチン、またはそれらの任意の組み合わせなどのワクチンを含む。なおさらなる実施形態では、ワクチンを追加の治療剤または補助剤と共に投与する。例示的な追加の治療剤または補助剤は、B-Raf阻害剤、MEK阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、細胞傷害性薬剤、ミョウバンまたはアルミニウム塩、GM-CSF、ガンマイヌリン、ISCOM、リポソーム、MF59、モノホスホリルリピドA、ビロソームおよび他のウイルス様粒子、またはAquilaのQS-21 stimulon、CD80、CD137、CD140L、またはIL-2の分泌、T細胞結合に関してCD25非依存性になるように改変されたIL-2(Levinら、2012年を参照されたい)、IL-15、IL-15-IL-15受容体アルファ複合体、IFN-B、IFN-A1、IL-7、小分子ダイマー形成性RIPK3などの誘導性デススイッチ、またはそれらの任意の組み合わせで構成され得る。
【0150】
本開示の免疫細胞、リンパ球、T細胞、およびその組成物、ならびに細胞に基づく追加的な療法(例えば、操作されたTCRまたはキメラ抗原受容体(CAR)を含む免疫細胞)の投与は、一般に、注射によって(例えば、非経口的に)実施される。「非経口的」という用語は、本明細書で使用される場合、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、または注入技術を含む。他の追加の療法、またはそれらの薬学的に許容される塩の、純粋な形態でまたは適切な医薬組成物としての投与は、同様の有用性がある薬剤についての任意の投与形式を使用して行うことができる。例えば、本開示の免疫向上剤は、注射によって、あるいは本開示の化合物を適切な薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を使用して送達することができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア、およびエアロゾルなどの固体、半固体、液体または気体の形態の調製物に製剤化することができる。そのような医薬組成物を投与する例示的な経路は、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、頬側、直腸、膣、および鼻腔内を含む。
【0151】
本開示の組成物は、その中に含有される活性成分が、組成物が患者に投与された際に生物学的に利用可能なものであることが可能になるように製剤化される。被験体または患者に投与される組成物は、1つまたは複数の投与単位の形態をとり、例えば、錠剤が単一の投与単位であってよく、また、エアロゾル形態の本開示の化合物の容器に複数の投与単位を保持することができる。そのような剤形を調製する実際の方法は公知であるか、または当業者には明らかになろう(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第22版(Pharmaceutical Press、2012年を参照されたい)。投与される組成物は、いずれにしても、治療有効量の本開示の免疫細胞またはリンパ球を含有する。
【実施例
【0152】
(実施例1)
外因性抗原を発現するT細胞は、抗原に対する応答をin vivoで刺激および追加刺激し得る
候補ネオ抗原を発現するように遺伝子操作された自己T細胞遺伝子(「TVAX」)を用いたワクチン接種を調査するためのマウスモデルを開発した。このモデルは、TVAX作用の機構を試験するため、およびワクチン免疫を強化するための戦略を評価するために使用することができる。オボアルブミン(「OVA」)をモデル抗原として使用した。なぜなら、OVA特異的T細胞を定量するための試薬が容易に入手可能であり、また、OVA発現腫瘍は腫瘍根絶の免疫機構を調査するために広く使用されているからである(Dranoff、Nat. Rev. Immunol.、12巻:61頁、2012年)。OVAを発現するように形質導入されたマウスT細胞が免疫原性であるかどうかを決定するために、野生型B6マウス(The Jackson Laboratory、USA)に、少数の、CD45.1で類遺伝子的に標識したナイーブOVA特異的OT-1 CD8+T細胞を播種し、次いで、2つの用量レベルの、全長OVAを発現する野生型T細胞(本明細書では、「TOVA」細胞と称される)のうちの一方、またはGFPを発現する対照T細胞を用いてワクチン接種した。抗原特異的OT-1細胞のin vivoにおける拡大を、類遺伝子性CD45.1マーカーを用いて追跡した。
【0153】
わずか200,000個のTOVAの投与後に、OVA特異的T細胞の用量依存的な刺激、および14日目に、第2の200,000個のTOVA細胞の用量の7日後に、循環T細胞の5~10%までの応答の効率的な追加刺激が観察された(図2)。TOVAモデル系は、適度の用量のTOVAでT細胞応答を刺激し、追加刺激させることを可能にするものであり、また、T細胞ワクチンの刺激、追加刺激、およびメモリー形成の効率を向上させるためのTOVA細胞に対する追加の遺伝子改変の能力を探究するために使用することができる。
【0154】
(実施例2)
T細胞に基づくワクチンを開発するためのマウスモデル
実施例1のTOVAモデルなどのマウスモデルを、TVAXの効果の基礎をなす機構を解明するため、T細胞に基づくワクチンレジメンを開発するため、およびT細胞の腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘発する能力を潜在的に向上させる追加の遺伝子改変を同定するために使用することができる。実施例3~8にTOVAマウスモデルを使用した一連の実験を記載する。以下の材料および方法を使用した。
【0155】
マウス
全てのマウス実験を実施例1において上記の通り6週齢の雄C57BL/6マウスで実施した。一部の実験では、ワクチンを構築するためのT細胞ドナーを、ベータアクチンプロモーターの制御下でニワトリオボアルブミンを発現するB6バックグラウンドマウス(The Jackson Laboratory)から得た。オボアルブミンSIINFEKLエピトープ(本発明においてモデルネオ抗原として使用される)に特異的なTCRについてトランスジェニックであるOT-IマウスをCD45.1マウスと交配させて(どちらもThe Jackson Laboratoryから入手した)、OT-IトランスジェニックTCRについてヘテロ接合性であり、類遺伝子性CD45.1マーカーについてホモ接合性であるマウスを作出した。
【0156】
DNA構築物
mtIL12構築物(Panら、Mol. Ther.、20巻(5号):927~937頁(2012年))のコード配列をPCRによって増幅し、NEBuilderクローニングキット(NEB)を使用してレトロウイルスベクターMP71(Engelsら、Hum. Gene Ther.、14巻(12号):1155~1168頁(2003年))のNotI-EcoRI部位にクローニングしてプラスミドpJV1を作製した。コドン最適化されたマウスGM-CSFをコードする合成DNA断片を合成し(Life Sciences)、MP71のNotI-EcoRI部位にクローニングしてpJV8を作製した。プラスミドpJV99を、N末端において融合するマウスCD19の切断型をコードする直鎖DNA断片をニワトリオボアルブミン由来のSIINFEKLエピトープおよびListeria monocytogenesリステリオリシンOのLLO190エピトープ(NEKYAQAYPNVS)(グリシン-セリンリンカーで連結したエピトープ)をコードする直鎖配列と融合させ、これをレトロウイルスベクターMP71のNotI-EcoRI部位にクローニングすることによって作製した。プラスミドpJV94を、Robert Schrieberおよび共同研究者により同定された(Gubinら、Nature、515巻(7528号):577~581頁(2014年))マウスLama4およびAlg8遺伝子の変異したエピトープを含有する配列でpJV72のSIINFEKL配列を置き換えることによって得た。上記の参考文献および供給源からのプラスミド、構築物、ベクター、およびその配列は、それらの全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0157】
T細胞の遺伝子改変
5~10週齢のマウスドナー由来の総T細胞を、EasySep(商標)マウスCD8精製キット(STEMCELL Technologies、Vancouver、BC、Canada)を使用して脾臓から単離し、マウスIL-2を補充したマウスT細胞培地中、マウスCD3/CD28 dynabeads(Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA、USA))を用いて刺激した。リン酸カルシウムトランスフェクションを使用してPlat-E細胞(Cell Biolabs,Inc.、San Diego、CA、USA)にプラスミドレトロウイルス構築物をトランスフェクトすることによってレトロウイルスを産生させ、トランスフェクションから+2日目および+3日目にウイルス上清を回収した。ウイルス上清を遠心分離によってレトロネクチン(retronectin)上に濃縮し、刺激の+1日目および+2日目にT細胞にウイルスを用いて形質導入した。抗原の形質導入を、mCD19発現;抗IL12抗体(Biolegend)を用いた膜係留型IL-12、およびELISAによるGM-CSFによってモニターした。刺激の+3日目に、細胞を、マウスIL-15を補充した培地に移動させ、刺激の+5日目にビーズを除去し、刺激の+6日目に細胞を凍結保存したまたはマウスに移入した。一部の実験については、OVAを構成的に発現するドナー由来のT細胞に、膜係留型IL-12および/または分泌型GM-CSFを含有するウイルスを用いて同時形質導入した。他の実験については、野生型ドナー由来のT細胞に、膜係留型IL-12および/もしくは分泌型GM-CSFを含有するウイルスならびに/または抗原を含有するウイルスの組み合わせを用いて形質導入した。
【0158】
ワクチン接種実験
OT-Iマウスが関与する実験では、EasySepキットを使用してCD8細胞を単離し、ワクチン接種実験に関してはワクチン接種の前日にマウス当たり500個の細胞を移入し、B16腫瘍実験に関してはマウス当たり100個の細胞を移入した。2×10個のワクチン細胞を刺激用量のために移入し、腫瘍実験ではこれを14日ごとに反復した。追加刺激用量を、注射前にマウスIL15を含有する培地中で終夜静置した凍結保存細胞を使用して実施した。
【0159】
OT-I細胞を用いる実験では、赤血球溶解後に、末梢血白血球を類遺伝子マーカーCD45.1で染色した。一部の実験では、赤血球溶解後に、抗原に対する内因性T細胞応答を、SIINFEKL、変異したAlg8、変異したLama4(Fred Hutchinson Cancer Research Center Immune Monitoring Labから入手)またはLLO190(NIH Tetramer Core Facilityから入手)に特異的なテトラマーを用いた染色によって検出した。
【0160】
トランスジェニックT細胞を用いたワクチン接種のための有効な刺激-追加刺激レジメンを決定するために、B6マウス由来のTOVA細胞を培養物中で拡大させ、マウスに種々の刺激-追加刺激レジメンで静脈内投与した。類遺伝子マーカーを用いた標準的なアッセイを使用してOVA特異的CD8およびCD4T細胞応答を測定し、それらの機能を細胞内サイトカイン染色によって評価した。CD8T細胞応答を、CD45.1で類遺伝子的に標識したOVA特異的OT-1 T細胞200,000個をB6マウスにワクチン接種前に移入することによって調べた。末梢血中の拡大したOT-1細胞を毎週測定した。CD4+応答を調べるために、CD45.1で類遺伝子的に標識したOVA特異的CD4+OT-II細胞をワクチン接種前に同様に移入した。マウスの群に、異なる刺激および追加刺激のスケジュールを用いてワクチン接種した(毎週、2週間ごと、および毎月)(群当たりマウス3匹)。内因性T細胞の応答を評価するために、当該方法をOT-1/OT-II T細胞の移入なしでも反復した。
【0161】
(実施例3)
免疫原性エンハンサーの発現によりTvax免疫応答が改善される
理論により拘束されることを望むものではないが、本開示のTVAX細胞は、例えば二次リンパ組織および腫瘍部位にネオ抗原の提示を局在化させ、そして濃縮し得る。モデルTAAを提示するT細胞に基づくワクチンは、マウス黒色腫モデルにおけるある程度の有効性を以前示したが、この効果のためには多数の既存の抗原特異的T細胞が必要である。Tvax細胞をそれらの免疫原性が増大するように改変し、それによりこの必要性を克服することができるかどうかを調査した。本実験では、マウスにトランスジェニックドナーCD45.1+/+TCROT-1+/-CD8T細胞500個を注射した。注射後+1日目に、マウスにT細胞ワクチン(TOVA細胞2×10個)を投与した。3群のTOVA細胞は、膜係留型IL-12、分泌型GM-CSFまたはその両方をさらに発現するものであった。次いで、+7日目にマウスから採血し、T細胞をCD45.1について染色した。図5A。この実験からのデータは図5Bに示されている。免疫原性エンハンサーのいずれかまたは両方を発現するTOVA細胞を注射した動物では、非改変TOVAを受けた動物と比べてOT-1特異的CD8T細胞の有意な増加が示された。mtIL-12と分泌型GM-CSFの同時発現により最も強力な最適化効果が生じた。これらのデータから、mtIL-12およびGM-CSFなどの免疫原性エンハンサー分子を発現するように改変されたTVAX細胞はロバストな増殖およびメモリー形成を誘導することが示される。そのような細胞は、多数の既存の抗原特異的T細胞を必要とせずに治療的利益を達成するために有用であり得る。
【0162】
VAX免疫原性を高めるための他の改変は、例えば、誘導性細胞死因子を発現させることを含む。T細胞における、例えば誘導性RIPK3によるネクロトーシスの誘導を使用して、TVAXの刺激用量および追加刺激用量の免疫原性を高めることができる。TVAX細胞を、炎症性細胞死経路を活性化し、抗原交差提示を増大させる誘導性RIPK3を発現するように改変する(Yatimら、Science、350巻(6258号):328~334頁(2015年))。さらに、これを、T細胞においてRIPK3の小分子誘導性アレルを発現するトランスジェニックマウスにおいて試験することができる。ワクチン接種および拡大を上記の通り実施して、刺激、追加刺激またはその両方の状況において誘導されるネクロトーシスによる細胞死を伴うワクチン接種に対するOVA特異的CD8およびCD4応答の拡大および持続性を測定する。
【0163】
膜係留型細菌フラジェリンであり得る病原性膜タンパク質などの他の免疫原性エンハンサーも本開示のTvaxに使用することができる。抗原提示細胞は、in vivoにおいて、膜係留型細菌フラジェリンによって引き起こされる抗原提示の部位への生得的な炎症性シグナルによって活性化され得る。これは、TVAX細胞において、レトロウイルスベクターを使用して細菌フラジェリンの膜係留型バージョンをTOVA細胞の表面上に導入することによって試験することができる。得られたTVAX細胞を上記の刺激および追加刺激レジメンで特徴付ける。
【0164】
VAXに対する宿主免疫原性応答を増強させるための追加の手法は、例えば、CD80、CD137、CD140L、分泌型IL-2、T細胞結合に関してCD25非依存性になるように改変されたIL-2(Levinら、2012年を参照されたい)、IL-15、IL-15-IL-15受容体アルファ複合体、IFN-B、IFN-A1、およびIL-7を含む。
【0165】
(実施例4)
VAX細胞によるCD8刺激は交差提示によって起こる
VAXによる刺激または追加刺激は、TVAXによる直接提示によってまたは宿主DCからの交差提示によって起こり得る。TVAXによる直接提示が起こるかどうかを試験するために、マウスに、CD4.5+/+TCROT-1+/-CD8T細胞500個を注射し、次いで、クラスI MHC+細胞またはb2m-/-OVA細胞2×10個を用いてワクチン接種し、採血し、CD45.1について染色した(図6A)。図6Bに示されている通り、MHC I細胞を注射した群とb2m-/-OVA細胞を注射した群の間で有意差は見られず、また、OT-1特異的CD8T細胞の百分率は免疫エンハンサー分子の発現で上昇した。これらのデータから、CD8刺激にTVAXによる直接提示は必要ないことが示される。
【0166】
(実施例5)
VAXは内因性CD8およびCD4応答を刺激する
次に、TVAXが内因性CD8およびCD4応答を刺激し得るかどうかを問うた。CD8実験に関しては、マウスに、模擬対照、mtIL-12およびGM-CSFを発現するが抗原は発現しないT細胞、OVAのみを発現するT細胞、または抗原および両方の免疫原性エンハンサー分子を発現するT細胞を注射した。注射後+7日目に、OVA特異的CD8T細胞についてのテトラマー染色を実施した。CD4実験に関しては、マウスに、模擬対照、ウイルスにより形質導入されたCD4モデル抗原(LLO190)を発現するが免疫原性エンハンサーは発現しないT細胞、または抗原およびアジュバント分子を発現するT細胞を注射した。+7日目に、細胞内インターフェロン染色を実施した(図7A)。図7Bに示されている通り、抗原と免疫原性エンハンサー分子の同時発現により、他の試験群よりも有意に高いCD8テトラマー染色が示された。CD4実験においても同様の結果が見られ、抗原および免疫原性エンハンサーを同時発現するT細胞の注射により、はるかに高レベルの細胞内サイトカインがもたらされた(図7C)。
【0167】
(実施例6)
mtIL12を有するTVAXは移植可能腫瘍モデルにおいて治療的に有効である
ネオ抗原を対象とした場合のTvaxの効果を移植可能腫瘍モデルにおいて試験することができる。B16F10移植可能黒色腫モデルは、重度に変異した腫瘍である。移植可能モデルでは慢性の抗原曝露に対する寛容性の問題が十分に対処されないが、B16モデルは免疫原性が低く、したがって、免疫療法の比較的ストリンジェントな試験であると考えられる。
【0168】
オボアルブミンも発現するB6F10細胞(5×10個)を雄C57BL/6マウスに注射した。翌日、マウスを、mtIL12を発現するTOVA細胞2×10個を用いて刺激した。追加刺激注射(同じ投与量)を腫瘍注射の15日後および29日日後に投与した。図8A。腫瘍サイズ(mm)を腫瘍注射の10日後、14日後、17日後、および29日後に測定し、動物の生存を60日間追跡した。図8Bに示されている通り、TOVA/mtIL12細胞を受けた群では、他の試験群とは著しく対照的に、腫瘍成長のレベルが低くなった。TOVA/mtIL12で処置した群も生存率が有意に高く、動物の50%が40日目に生存していたが、他の群は30日目よりも前に50%生存に達した(図8C)。これらのデータから、mt12を含むTVAXが移植可能腫瘍モデルにおいて治療的に有効であることが示される。
【0169】
(実施例7)
VAXはマウスネオ抗原に対する免疫応答を誘導する
OVAなどのモデル抗原に対するT細胞応答は、がんに存在する抗原に対する応答よりも惹起するのが容易である。ネオ抗原特異的T細胞の効果を評価するために、mtIL12GM-CSFT細胞を形質導入して、マウス肉腫ネオ抗原Lama4またはAlg8(Gubinら、Nature、515巻(7528号):577~581頁(2014年)に記載されている)、および任意選択でCD4ヘルパー抗原LLO190を発現させた(図9A)。表示した日にマウスから採血し、抗原特異的細胞を、テトラマー陽性である、血液中のCD8T細胞の割合として測定した。模擬ワクチン接種動物の分析からの、この実験におけるこれらのテトラマーについての検出限界は0.1%であった。群当たりN=3。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。注射後13日目にテトラマー染色を実施した。結果は図9Bに示されている。アジュバント分子を発現するT細胞により、両方のネオ抗原に対するロバストなワクチン応答が誘導され、ヘルパー抗原の追加の存在下で最高レベルのテトラマー染色(CD8T細胞の百分率として)が見られた。
【0170】
(実施例8)
Tovaにより誘導される免疫応答は、ワクチン追加刺激によって高められる
ワクチンレジメンは、多くの場合、最初の刺激投与、その後、次の1回または複数回の追加刺激注射からなる。実施例7に記載の実験の後、マウスを、LLO190 CD4抗原と融合したalg8およびlama4ネオ抗原のタンデムなミニ遺伝子をコードするウイルス、ならびに膜係留型IL-12および分泌型GM-CSFをコードする2種の追加のウイルスを用いて形質導入した同系T細胞2×10個の静脈内注射によって刺激した。+28日目に、マウスを、ネオ抗原alg8およびlama4をコードするウイルスをレトロウイルスにより形質導入した同系T細胞4×10個の静脈内注射によって追加刺激した。データは図9Cに示されている。表示した日にマウスから採血し、抗原特異的細胞を、テトラマー陽性である血液中のCD8T細胞の割合として測定した。模擬ワクチン接種動物の分析からの、この実験におけるこれらのテトラマーについての検出限界は0.1%であった。群当たりN=3。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。図9Cに示されている通り、追加刺激注射により免疫応答が有意に増大した。
【0171】
(実施例9)
ヒトT細胞における外因性遺伝子の安定な組み込みのためのトランスポゾン系
個人向けのがんワクチンを開発するためには、患者の腫瘍において予測されるネオ抗原に基づいて各患者に対する新しいワクチン構築物を作製する必要がある。結果として、T細胞遺伝子改変のための臨床グレードのレトロウイルスの作製は実施不能である。したがって、piggyBac(PB)トランスポゾンを使用して、T細胞への形質導入のための非ウイルス遺伝子送達方法を開発した。抗原を発現するT細胞の精製および拡大が可能になるようにPB系を適合させるために、改変T細胞をCD19発現に基づいて選択するために、細胞表面マーカーである切断型ヒトCD19(tCD19)もコードするように構築物を設計した。
【0172】
実行可能性を試験するための予備実験において、tCD19をHLA-A2制限CMV pp65エピトープNLVをコードするミニ遺伝子に翻訳的に連結し、得られた構築物はPBトランスポゾン反復が隣接するものであった。Nakazawaら(J. Immunother.、32巻(8号):826~869頁(2009年))に記載されている方法に従って、tCD19-CMV構築物をヒト末梢血単核細胞(PBMC)内に電気穿孔し、細胞をIL-15の存在下でCD3およびCD28を用いて刺激した。7日間培養した後、5%から30%の間のT細胞がtCD19を安定に発現し(図3A)、これにより、構築物が安定に組み込まれたことが示される。CMV抗原を発現するT細胞を多数得るために、改変細胞をCD19磁気選択によって濃縮し、濃縮された細胞を、治療用T細胞産物を拡大させるために使用される迅速な拡大プロトコールを使用して拡大し、その結果、13日間にわたって100~500倍に拡大した。拡大したT細胞の80%よりも多くがtCD19マーカーを発現した(図3B)。得られた細胞は、CMV陽性ドナーから得られたNLV特異的CD8T細胞を活性化するそれらの能力によって実証された通り、NLVペプチドをパルスしたT細胞のレベルと同等のレベルまでNLV抗原を効率的に提示した(図3C)。この手順を使用すると、10ccの採血から得た5×10個未満またはそれと等しいPBMCから20日間で抗原を発現するT細胞を10個よりも多く得ることができ、これにより、Tvax細胞を調製すること、および、Tvaxを、ネオ抗原特異的T細胞応答を誘発する能力について試験することに関するこの手法の実行可能性が実証される。
【0173】
(実施例10)
単球由来樹状細胞へのRNA電気穿孔により、末梢血由来のメモリーCD8およびCD4T細胞が効率的に拡大する
成功裏のワクチン試験には、免疫原性抗原の正確な予測およびワクチンの製造、ならびにワクチン接種の前に存在するまたはワクチンに応答して誘発された抗原特異的T細胞応答を同定および定量化するための信頼できるツールが必要である。T細胞に基づくネオ抗原ワクチンに関しては、免疫原性ネオ抗原についてスクリーニングするためにTvax細胞を使用することができるが、クラスII抗原の直接提示についてのそれらの効率は、抗原をクラスIおよびクラスII MHCの両方でCD4およびCD8T細胞の両方に直接提示し、また、T細胞をin vitroで最適に刺激するための共刺激分子を発現する樹状細胞(DC)または活性化B細胞の効率よりも低い。
【0174】
したがって、電気穿孔されたmRNAのDCによる発現を使用して免疫原性ネオ抗原についてスクリーニングした。スクリーニングに関して、候補抗原をコードするin vitroで転写されたmRNAを、末梢血から得た自己単球由来DCにおいて発現させた。mRNAからの細胞内発現は、ミニ遺伝子に集合させた多数の候補抗原をスクリーニングするために使用されており(Tranら、Science、344巻:641頁、2014年)、また、これには、MHCに結合するが、プロセシングされない細胞外ペプチドに由来する実験アーチファクトが回避されるという利点がある(Carrenoら、Science、348巻:803頁、2015年)。代替として、初代B細胞を使用することができ、これらを、CD40Lと共培養することにより、小さな臨床試料からであっても100倍よりも大きく効率的に拡大させることができる(Liebigら、Journal of Visualized Experiments、32巻:e1373頁、2009年)。
【0175】
ウイルス抗原mRNAをミニ遺伝子に集合させ、DCに挿入させ、これにより、希少な抗原特異的細胞を拡大させるために潜在性抗原の大きなプールを使用することの実行可能性を例示した。発現構築物を、クラスIおよびクラスII MHC提示を向上させるために(a)T7プロモーター、(b)CMV pp65遺伝子またはCMVエピトープを含有するミニ遺伝子、および(c)融合タンパク質をエンドサトーシス経路へ標的化させる配列と融合することによって作製した(Kreiterら、J Immunol、180巻:309頁、2008年)。漸減量の、構築物からin vitroで転写されたmRNAをDC中に電気穿孔し、CMV陽性ドナー由来のPBMCを刺激するために使用した。標的DC中の抗原をコードするmRNAをわずか0.01ugで用いた刺激の10日後に、免疫優性CMV pp65 CD8エピトープに応答する細胞が効率的に拡大した(図4A)。同様に、わずか0.01ugの、pp65をコードするmRNA構築物によりCMV pp65 CD4応答が効率的に拡大した(図4B)。これらのデータから、強力な抗原に対するロバストなウイルスメモリー応答が、少なくとも、がん特異的T細胞を特徴付け得る消耗の非存在下で拡大し得ることが示される。これらのデータから、少量の、抗原エピトープをコードするRNAをプールの一部として発現させることにより、そのプール内の抗原に対するメモリーCD4およびCD8応答が効率的に拡大され得ることが実証される。この系を使用して、バイオインフォマティクスプラットフォームによって予測される候補ネオ抗原に対するナイーブまたはメモリー応答を評価するために、黒色腫(Snyderら、New Engl. J. Med. Medicine、371巻:2189頁、2014年)および肺がん患者(Rizviら、Science、348巻:124頁、2015年)の臨床試料中の末梢血中に見出され得る希少なネオ抗原反応性T細胞を拡大させることができる。
【0176】
(実施例11)
非小細胞肺がん(NSCLC)および黒色腫の臨床試料からの候補ネオ抗原の同定
血液試料および腫瘍試料を非小細胞肺がん(NSCLC)患者(4)および黒色腫患者(2)から得た。DNAを保存用の固定組織から単離し、SureSelect(Agilent Technologies)、その後、ペアエンド100配列決定を使用してエキソーム捕捉を実施した。MuTect(Cibulskisら、Nature Biotechnology、31巻:213頁、2013年)、VarScan(Koboldtら、Bioinformatics、25巻:2283頁、2009年;Koboldtら、Genome Research、22巻:568頁、2012年)、およびStrelka(Saundersら、Bioinformatics、28巻:1811頁、2012年)からのミスセンス変異の連合を、Cancer Genome Atlasデータセットからの50の同様の腫瘍のトリム平均発現を使用して、百万当たり0.5を上回る転写物の発現についてフィルタリングした(上位および下位の十分位数は除去した)。ナンセンスに媒介される減衰を受けないフレームシフト変異を、VarScanとStrelkaの連合を使用して同定した。この手法を使用して、ナンセンスに媒介される減衰を受けなかった265のミスセンス変異および8のフレームシフト変異を同定した。図10、上の概略図を参照されたい。
【0177】
同定された変異を、ミニ遺伝子に、潜在的なCD8およびCD4エピトープが包含されるようにアミノ酸配列が変異のいずれかの側面に13の隣接するアミノ酸を含むようにコードさせた。次いで、27の得られたアミノ酸ミニ遺伝子を26のタンデムなミニ遺伝子分子に集合させ、それを合成し、上記の実施例3に記載のin vitro転写構築物に並行してクローニングし、配列を確認し、mRNAに転写した。患者において既存のネオ抗原CD8およびCD4メモリーT細胞応答があるかどうかを決定するために、トランスフェクトされた自己DCを抗原提示細胞として使用し、mRNAを使用してT細胞を刺激した。例示的なデータが図10、左下および右下のパネルに示されている。
【0178】
具体的には、以前に養子移入された、in vitroで拡大させた腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を用いた処置後に完全な腫瘍退縮を達成した黒色腫患者2名および肺がん患者1名からの腫瘍組織に対してエキソーム捕捉およびcDNA捕捉を実施した。白血球アフェレーシス産物も3名の患者からTIL注入の前後に得、腫瘍反応性TIL集団および単一細胞腫瘍懸濁物を得た。腫瘍試料のエキソーム配列を同定した。DCトランスフェクションおよび潜在的なネオ抗原反応性T細胞の分析のために候補発現ネオ抗原をin vitro転写産物に組み入れた。
【0179】
これらの実験の結果は、ワクチン構築のためにミニ遺伝子として発現させることができる候補ネオ抗原の検証において有用である。
【0180】
(実施例12)
免疫原性ネオ抗原の同定および特徴付け
患者に特異的なMHCアレルへのネオ抗原結合を予測するため、およびTVAX細胞に組み入れるための候補ネオ抗原を選択するために、配列バリアントのコンピュータによる分析を使用した。試料をNSCLC患者4名および黒色腫患者2名から得、ゲノム分析に供した。発現した、タンパク質をコードするバリアントを実施例11において上記の通り同定した。HLAタイピングをエキソームデータからOptiType(Szolekら、Bioinformatics、30巻(23号):3310~3316頁(2014年))を使用して決定し、ミスセンス変異およびフレームシフト変異を、自己MHCアレルに結合することが予測される新規ペプチドの形成についてNetMHCpan(Trolleら、Bioinformatics、31巻(13号):2174~2181頁(2015年))を使用して分析した。
【0181】
NSCLC患者および黒色腫患者由来の臨床試料中の希少なネオ抗原反応性細胞を検出するためのアッセイを開発した。具体的には、発現したタンパク質をコードする全ての変異を、T細胞応答を伴う抗原が、本発明者らのバイオインフォマティクスワークフローで予測されていたか否かを決定するために系統的に評価した。候補ネオ抗原を実施例11において上記の通りタンデムなミニ遺伝子に集合させた。血液からの自己T細胞を、希少なネオ抗原反応性T細胞集団を拡大させるために、候補ネオ抗原の上位のおよそ50種を含むプールからの20merペプチドを発現するようにトランスフェクトされた(mRNA)自己DCを用いて刺激した。次いで、得られた拡大したT細胞を、特異的な個々のネオ抗原に対する反応性について、これらのネオ抗原を発現するmRNAを電気穿孔したまたは合成ペプチドをパルスした自己DCまたはB細胞と共にインキュベートし、その後、インターフェロン放出を測定することによって試験した。検証実験において、肺がん患者由来の例示的なネオ抗原(TERF1)を提示するTVAXにより、同じ患者由来のがん特異的T細胞が活性化された(図11、右下);これらのデータは、実施例14においてさらに考察されている。TILを同様に分析した。このアッセイプラットフォームは、ヒト試験において免疫をモニターするため、ならびに患者におけるT細胞応答をバイオインフォマティクスにより首尾よく予測することができるかどうかを調査するために使用することができる。
【0182】
in vitroにおいて自己ナイーブT細胞を刺激することができる、コンピュータにより予測されたネオエピトープの数を決定するための方法を開発する。がん患者では、ワクチン接種に応答し得る潜在的に免疫原性であるほんのわずかなネオ抗原が既存のメモリー応答を有する可能性がある。例えば、公開された試験において、ネオ抗原ワクチン応答の大多数(7のうち4)はワクチン接種前には検出されなかった(Carrenoら、Science、348巻(6236号):803~808頁(2015年))。メモリー応答を有さないにもかかわらずプロセシングされ、提示され、T細胞応答を誘発することができる抗原を同定するために、DCにおいて発現する抗原を使用してナイーブT細胞応答をin vitroにおいて刺激するための系を使用する(Bleakleyら、Blood、115巻(23号):4923~4933頁(2010年))。簡単に述べると、この系は、自己DCにおける候補エピトープをコードするmRNAのプールを発現させ、精製されたナイーブ(CD45RA+/CD62L+)T細胞をIL-12およびIL-15の存在下で培養し、その後、これらのT細胞を自己B細胞またはDCにおいて発現される抗原に対してスクリーニングすることを伴う。免疫原性ネオ抗原をメモリーT細胞レパートリーおよびナイーブT細胞レパートリーの両方において系統的に評価することにより、これらの実験は、バイオインフォマティクスによるエピトープ予測、ならびにワクチンを用いて標的とするためのネオ抗原の数および選択の判断基準を合理的に決定することを可能にする。
【0183】
(実施例13)
NSCLCを処置する方法
免疫チェックポイント分子阻害剤療法を受けているNSCLC患者におけるネオ抗原反応性T細胞を用いた処置の相関的縦断的研究を行う。研究用コア針生検材料をNSCLC患者から免疫チェックポイント遮断療法の開始前に得る。これらの患者の血液中で既存のネオ抗原特異的T細胞応答が同定できる場合には、これらの抗原特異的T細胞に関連する独特のT細胞受容体ベータ(TCRB)配列を同定する(Adaptive Biotechnologies)。TCRBの全体的な配列決定は、TCR頻度の感度が高く、定量的な尺度であるので、この技術を使用して、免疫チェックポイント阻害療法中のこれらの患者の腫瘍および縦断的な血液試料中のネオ抗原特異的T細胞を列挙する。テトラマー試薬をCD8抗原特異的T細胞に対して作製し、これにより、細胞表現型の縦断的分析が可能になる。次いで、肺がん免疫療法中にネオ抗原特異的T細胞の表現型および局在を観察する。腫瘍遺伝子発現および微小環境の知見と組み合わせて、これらの観察から、応答についての予測的なバイオマーカー、または処置に対する抵抗性の機構が示唆され得る。
【0184】
(実施例14)
自己TVAXによるネオ抗原特異的T細胞の活性化
この原理証明実験では、ヒト肺がん患者由来のT細胞を、piggy bacトランスポゾン系を使用して、ネオ抗原を発現するように改変し、ネオ抗原に特異的な内因性T細胞を活性化するために使用した。プラスミドpJV53を、マウスIgκ鎖に由来するER標的化シグナルペプチド(配列番号1)をコードする直鎖断片と、ヒト肺がん患者において同定されたTERF1変異、およびT2A skip配列に連結されたヒトクラスI MHCのC末端ドメイン、および切断型ヒトCD19をコードする配列を、piggy bacトランスポゾン配列を含有するベクターPB713B(System Biosciences、Palo Alto、CA、USA)にクローニングすることによって作製した。piggy bacトランスポザーゼを含有するプラスミドpb200pa-1をSystem Biosciencesから得た。Nakazawaら(J. Immunother.、32巻(8号):826頁(2009年))の方法に従って、TERF1トランスポゾンを細胞に導入した。簡単に述べると、凍結保存したヒトPBMCを、5ng/mlの組換えヒトIL-15を含有する培地中で終夜静置し、次いで、2bヌクレオフェクター(Lonza、Basel、SU)を製造者の指示に従って使用し、プログラムU-014を使用して、溶液V中5ugのトランスポゾンpJV53および5ugのトランスポザーゼpb200pa-1プラスミドDNAでヌクレオフェクトした。細胞を、5ng/mlのIL-15を伴うCTL中で24時間静置し、次いで、5ng/mlのIL-15を伴うCTL中で3/28ヒトdynabeadsを7日間用いて刺激した。刺激の+7日目に、CD19マイクロビーズ(Miltenyi Bio)を製造者の指示に従って使用し、表面マーカー切断型CD19を使用して改変細胞を濃縮し、次いで、以前に記載されている通り迅速な拡大プロトコールによって拡大させた。迅速な拡大の+21日目に細胞を抗原の提示についてアッセイした。
【0185】
次に、凍結保存した末梢血単核細胞を解凍し、2ng/mlの組換えヒトIL-7(PeproTech)を補充したCTL(10%ヒト血清、ベータ-メルカプトエタノール、ペニシリンおよびストレプトマイシン、およびL-グルタミンを補充したRPMI(Gibco))中で終夜静置した。翌朝、細胞を洗浄し、Tvaxの存在下、細胞10個で刺激した。+3日目に組換えヒトIL-2(PeproTech)を10U/mlの最終濃度まで添加し、+3日目、+6日目、および+9日目に補充のIL-2を含む半分の培地の取り換えを実施した。+21日目に、抗原特異的T細胞を、細胞内サイトカイン(Miltenyi Biotech)について製造者の指示に従い、10ug/mlの21merのTERF1変異体ペプチドでパルスした自己B細胞を抗原提示細胞として使用して染色した。CD4+IFNγ分泌細胞をFACS Aria2で選別した。選別された細胞を、10ng/mlのヒトIL-15を補充したCTL中で5日間静置し、次いで、以前に記載された迅速な拡大プロトコールを使用して拡大させた(Riddellら、Science、257巻(5067号):238~242頁(1993年))。この拡大の13日目または14日目に細胞を使用したまたは凍結保存した。凍結保存細胞を解凍し、アッセイ前に10ug/mlのヒトIL-2を補充したCTL中で終夜静置した。
【0186】
図11(右下のパネル)に示されている通り、自己TTERF1細胞を用いたワクチン接種により、患者由来のがん特異的T細胞によるロバストなインターフェロン-γ放出がもたらされた。これらのデータから、ヒトネオ抗原を提示する自己TVAXが患者における免疫応答を誘導し得ることが示され、これにより、治療有効性を有し、免疫原性のリスクが低下した個人向けのTVAXを効率的に開発できることが示される。
【0187】
(実施例15)
がん患者由来のネオ抗原の同定および試験
血液試料および腫瘍試料を肺がん患者および黒色腫がん患者から実施例11に記載の通り得た。公的に入手可能なアルゴリズムMutectおよびStrelkaを使用して、全エキソーム配列決定によって候補変異を同定した。これらのアルゴリズムの両方により同定された変異をバリアントアレル頻度によってフィルタリングし、Cancer Genome Atlasにおける同様の腫瘍からの発現によって、または腫瘍のRNA seqが利用可能な場合にはこれによって順位づけた。各患者からの上位の約46変異をスクリーニングのために選択した。
【0188】
所与の患者由来のPBMCを、IL-7中で終夜静置し、混合物(患者試料当たり約46の候補変異を包含する約92ペプチド、配列番号15~512に対応する)中の1ug/mlの各候補(粗製)ペプチドを用いて刺激し、IL-2を+3日目に添加した。自己B細胞を、CD19(Milltenyi)を標的とする免疫磁気ビーズを使用して単離し、CD40Lを発現するNIH 3T3細胞と1:1の比で、200U/mlのヒトIL-4(PeproTech)を補充したTranら(Science、344巻(6184号):641~645頁(2014年))に記載されているB細胞培地中、7日間インキュベートした。その後、B細胞を回収し、4日ごとに3T3 cd40Lを用いて再刺激した。刺激2または3の+3日目にB細胞をアッセイにおいて抗原提示細胞として使用した。+14日目に、細胞を、個々の変異を表すペプチドの対を10ug/mlで用いて再刺激し、反応性をElispotによって読み取った。
【0189】
患者5名の最初のスクリーニングからの例示的なデータが図12A、12C、および13A~13Cに示されている。患者X198(黒色腫)およびMA511(肺がん)に関しては、変異体ペプチド(または野生型対応物)を含有する、80%純粋な27-merのペプチドをElispotアッセイにおいて使用して、T細胞応答が精製されたペプチドに対するものであり、変異体に特異的であることを確認した。それぞれ図12Bおよび12D。これは、患者X198において同定された7つの変異および患者MA511において同定された3つの変異に関してそうであった。
【0190】
本明細書において言及するおよび/または出願データシートに列挙する、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公表文献のすべては、それら全体が参照により本明細書に組み入れられる。上記の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を得ることができる。様々な特許、出願および公表文献の概念を利用するために必要に応じて実施形態の態様を変更して、またさらなる実施形態を得ることができる。上記の詳細な説明に照らして、これらおよび他の変更を実施形態に加えることができる。
【0191】
一般に、下記の特許請求の範囲において使用する用語は、本明細書および本特許請求の範囲において開示する特定の実施形態に本特許請求の範囲を限定すると解釈すべきでなく、そのような特許請求の範囲を伴う均等物の全範囲とともにすべての可能な実施形態を含むと解釈すべきである。したがって、本特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
【配列表】
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