(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】自転車シート
(51)【国際特許分類】
B62J 1/00 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
B62J1/00 B
(21)【出願番号】P 2018563526
(86)(22)【出願日】2017-06-02
(86)【国際出願番号】 GB2017051592
(87)【国際公開番号】W WO2017208015
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-22
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518424682
【氏名又は名称】ダリウス・ディベロップメント・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DARIUS DEVELOPMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダウニング,ジョン・ユージン
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4141587(US,A)
【文献】特開昭64-063482(JP,A)
【文献】実開平07-006061(JP,U)
【文献】特開平10-007046(JP,A)
【文献】特表2001-505510(JP,A)
【文献】特表2006-501099(JP,A)
【文献】特表2006-516506(JP,A)
【文献】特開2008-001181(JP,A)
【文献】国際公開第92/11175(WO,A1)
【文献】米国特許第4363516(US,A)
【文献】米国特許第5011222(US,A)
【文献】米国特許第5076642(US,A)
【文献】米国特許第5863094(US,A)
【文献】米国特許第8011725(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0049675(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0035326(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0232141(US,A1)
【文献】中国実用新案第201321105(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車シートであって、
ユーザがまたがるための前方延在部とユーザの臀部を支持するための後方台とを有する支持面を規定するシート部分と、
背面支持部とを備え、前記背面支持部は、
前記前方延在部と並んで前記支持面と実質的に隣接して延在する近位部分と、
ユーザの尾骨と係合してユーザが前記支持面に座ったときの後方への動きを規制するために、前記支持面の前記後方台から離れるように延在する遠位部分とを含み、
前記背面支持部の最大幅は、前記後方台の幅よりも小さ
く、前記少なくとも1つの背面支持部が、アンカーにおいて前記シート部分に恒久的に一体化されている、自転車シート。
【請求項2】
前記少なくとも1つの背面支持部および前記シート部分が単一の本体で形成されている、請求項1に記載の自転車シート。
【請求項3】
前記少なくとも1つの背面支持部が前記アンカーにおいて前記シート部分に接合されている、請求項1に記載の自転車シート。
【請求項4】
前記アンカーはヒンジを含む、請求項3に記載の自転車シート。
【請求項5】
自転車シートであって、
ユーザがまたがるための前方延在部とユーザの臀部を支持するための後方台とを有する支持面を規定するシート部分と、
背面支持部とを備え、前記背面支持部は、
前記前方延在部と並んで前記支持面と実質的に隣接して延在する近位部分と、
ユーザの尾骨と係合してユーザが前記支持面に座ったときの後方への動きを規制するために、前記支持面の前記後方台から離れるように延在する遠位部分とを含み、
前記背面支持部の最大幅は、前記後方台の幅よりも小さ
く、前記少なくとも1つの背面支持部が、前記支持部の一部を支持されていない状態のままにするように、前記支持部の一部のみに沿って延在するアンカーにおいて前記シート部分または股領域に恒久的に接合されている、自転車シート。
【請求項6】
自転車シートであって、
ユーザがまたがるための前方延在部とユーザの臀部を支持するための後方台とを有する支持面を規定するシート部分と、
背面支持部とを備え、前記背面支持部は、
前記前方延在部と並んで前記支持面と実質的に隣接して延在する近位部分と、
ユーザの尾骨と係合してユーザが前記支持面に座ったときの後方への動きを規制するために、前記支持面の前記後方台から離れるように延在する遠位部分とを含み、
前記背面支持部の最大幅は、前記後方台の幅よりも小さく、
前記少なくとも1つの背面支持部の少なくとも一部が前記シート部分の開口部内へ変位可能である、自転車シート。
【請求項7】
前記背面支持部は、前記遠位部分を前記近位部分に接合する湾曲した中央部分を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の自転車シート。
【請求項8】
前記湾曲した中央部分は少なくとも10mmの最小曲率半径を有する、請求項7に記載の自転車シート。
【請求項9】
前記背面支持部の幅は40mm以下である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の自転車シート。
【請求項10】
前記遠位部分の端部は、150mm以下の距離だけ、前記近位部分の端部の接線に対して鉛直方向にずれている、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の自転車シート。
【請求項11】
前記遠位部分の端部は、90~120度の範囲の角度で前記近位部分の端部に対して延在している、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の自転車シート。
【請求項12】
前記少なくとも1つの背面支持部が前記シート部分に対して変位可能である、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の自転車シート。
【請求項13】
前記少なくとも1つの背面支持部が弾性的に変形可能である、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の自転車シート。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の自転車シートを組み込んだ自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、自転車シートに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
健康になるために、お金を節約するために、またはストレスを避けるために、道路に出るユーザまたはサイクリスト(自転車の運転者)が増加している。
【0003】
自転車、特に純粋に足こぎ式の自転車のユーザの多くは、丘を登る、または自転車のペダルを踏むことを困難に感じることがある。
【0004】
特に着座しているときは、ペダル踏みはユーザの背中、上半身および腕に負担を強いることがあり、ユーザは、ペダルを踏む脚の動作によって生じる推力に対して進まなければならない。
【0005】
従来技術
それゆえ、この問題およびこれに類似した問題を解消するために、次のような数多くの特許出願がなされてきた。
【0006】
中国実用新案第201 321 105号明細書(RENFA)では、サドルパイプ、2つのシートビーム、およびサドルシートクッションを備えた、衝撃吸収背もたれを有する自転車サドルが開示されている。
【0007】
登録された米国特許第8 011 725号明細書(ANDREWS)では、着座した状態でペダルを踏んでいる間に自転車の乗り手の臀部をレース用自転車シート上の固定位置に維持するための自転車乗り手用シートブレースが開示されている。
【0008】
米国特許出願第4 363 516号明細書(BRALY他)では、ロープの輪によって一端で相互接続された、間隔を設けて配置された脚部の対を有するU字状の部材を備える、従来の自転車シートに取付けるための推力支持部が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明によると、請求項1で規定される自転車シートが提供される。
【0010】
背面支持部の近位部分は、支持面の輪郭が背面支持部の輪郭に略一致するように、支持面に概ね一致している。しかしながら、背面支持部がシート部分と合流する溝またはわずかな切れ目が生じる場合があるが、これは、自転車シートに座っているユーザが不快感を感じるほどのものではない。
【0011】
本発明によると、自転車シート装置が提供される。この自転車シート装置は、使用の際にユーザの脚の間に配置される股領域と、使用の際にユーザの臀部を支持するように配置されたシート部分と、(たとえば略鉛直に)シート部分の上面から離れるように延在し、シート部分に対するユーザの後方への動きを規制する少なくとも1つの背面支持部とを備える。
【0012】
自転車シートは、シート部分および背面支持部を含む単一の本体であり得る、または、これらは後で互いに固定される別々の部品であり得る。
【0013】
有利なことに、自転車シートは、サイクリストがサイクリングシート上の好ましい位置から後方に滑ることを防ぐことができ、臀部(具体的にいうと、尾骨)に対して反力を与えることによってユーザへの負担を軽減する。これにより、サイクリストは位置および姿勢を維持しやすくなる。
【0014】
従来のサイクリングでは、サイクリストは、環状に回転している最も高い地点から下方へおよび前方へペダルを押すときに、ペダルに最大の力を加える。このペダル踏み運動によって、ユーザに後方への力が加えられ、ユーザがシートの後部に押される。ユーザが臀部を背面支持部に押し付けると、支持部は、自転車シート上の適切な安定した位置でユーザを支える反力を与える。
【0015】
背面支持部は、自転車シートに座っている人の尾骨と並んで延在し得る。したがって、使用の際は、背面支持部は尾骨と並んで延在し得る。
【0016】
このように、ユーザのペダル推力は背面支持部からの抵抗によって打ち消され、ユーザは進んでいる間に支持部内へと押される。
【0017】
股領域は、股領域およびシート部分が従来の自転車シート形状を採用するように、シート部分の前方から実質的に水平方向に延在し得る。
【0018】
背面支持部は、シート部分の後方から(たとえば実質的に鉛直方向に)延在し得る。したがって、臀部がシート部分にあり股領域が脚の間にある状態でユーザがシートに座ると、背面支持部は臀部の背後で上方向に延在し、ユーザを支持する。シートが尾骨と係合し、好ましくは、不快感を引き起こす、および/または、良好なサイクリング技術を妨げることがあるユーザの臀筋と干渉しないと有利である。
【0019】
自転車シートは、二輪車、一輪車、三輪車、または四輪車のためのシートであり得る。
好ましくは、自転車シートは二輪車シートである。
【0020】
いくつかの実施形態では、背面支持部は変位可能である。背面支持部は、部分的に変位可能でもよい、または、背面支持部は全体として変位可能でもよい。たとえば、支持部は、使用中に支持部の最も高い端部が圧力をかけられて後方に変位されるように撓み得るが、支持部がシート部分に接続されている地点は固定された状態になっている。さらに他の実施形態では、背面支持部は、尾骨からの圧力に応じて移動するように配置されている。たとえば、ユーザの体の一部、たとえば臀部または尾骨領域が背面支持部に力を加えるようにユーザが自転車シートにおいて後ろに滑るまたはもたれると、支持部は後方に変位可能である。
【0021】
支持部は直接尾骨から離れるように変位可能である、ある固定経路に沿って摺動可能である、または、ある固定点を中心として旋回可能である。尾骨からの圧力が支持部をある初期距離だけ変位させると、圧力によって支持部がそれ以上変位することがないように、支持部が変位可能な距離または角度範囲を制限することができる。さらに他の実施形態では、尾骨からの圧力が取り除かれると、支持部は圧力が加えられる前の位置に弾性的に戻ることができる。
【0022】
支持部を変位させるために支持部に加えられる力がある大きさを必ず超えるように、支持部は変位しにくくなっていてもよい。支持部の変位に対する抵抗は、支持部がその停止位置からさらに変位されると増加し得る。そのような実施形態では、ユーザに作用する後ろ向きの力が、背面支持部の変位に対する抵抗によって打ち消される。
【0023】
背面支持部の変位は、自転車からユーザの尾骨への衝撃または振動の伝達を抑制するように作用するダッシュポットによって制御可能である。
【0024】
支持部は、ユーザの体、特に尾骨に対する圧力が取り除かれると支持部がその初期位置または配置に戻るように、弾性的に変位可能である。
【0025】
背面支持部の弾性的な変位は、たとえば、ばねまたは弾性的に変形可能なブッシングによって和らげることができる。
【0026】
代替的にまたは追加的に、背面支持部は、自転車シートの形状を変更できるようにユーザによって手動で変位可能である。たとえば、後方支持部の高さは、異なる高さのユーザの尾骨に一致するように変更可能であり、この支持部も尾骨からの圧力に応じて水平方向に変位可能である。したがって、いくつかの実施形態では、背面支持部は少なくとも部分的にシート部分に対して変位可能である。
【0027】
背面支持部の全てがシート部分に対して変位可能である、または、支持部の一部のみがシート部分に対して変位可能である。いくつかの実施形態では、ある低い初期圧力がユーザの体によって支持部にかけられると、支持部の一部が変位可能になり、圧力が他の部分のある閾値レベルを超えると、他の部分または支持部全体が変位可能になる。
【0028】
いくつかの実施形態では、背面支持部は弾性的に変形可能な部分を含み得る。いくつかの実施形態では、この弾性的に変形可能な部分はアンカーにおいてシート部分に固定され得る。
【0029】
弾性的に変形可能な部分はユーザの体からの圧力を受けて変形可能であり、圧力が取り除かれると、初期の形状または配置に戻ることが可能である。
【0030】
弾性的に変位可能なまたは弾性的に変形可能な支持部は、ユーザの体に緩衝をもたらすように作用し得、これによって、衝撃または振動からの影響を抑制する。
【0031】
このため、弾性的に変形可能な支持部によって、支持部および装置を使用する際にユーザに最大の快適性がもたらされる。変形はアンカーの後で、および/またはアンカーで発生してもよい。弾性変形可能な支持部はパッドを含み得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、支持部は、実質的に弾性的に変形可能な材料で形成されている。そのため、ユーザの体が支持部と接触しこれに圧力を加えると、支持部は後方に撓んで、ユーザはシート上で後方にある距離だけ移動する。いくつかの実施形態では、支持部は弾性的に変形可能である。
【0033】
いくつかの実施形態では、装置は、弾性的に変形可能な層、たとえばパッド層を含む。そのようなパッドは、シート部分および/または背面支持部に含まれていてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、装置はユーザの体の一部に対して成形可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、股領域は、長手方向に細く延在する中央の高い点から降下する、傾斜した側面を含む。シート部分は、後方に延在可能であり、広がって、ペダルを踏んでいる間にユーザの臀部が快適に移動するように、下方向に傾斜した2つの対向するサドル部分を提供する。
【0035】
背面支持部は、ユーザの下側の背中(詳細には尾骨)の形状を反映しこれに一致するように、弓状または上方向に湾曲した形状を含み得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、ユーザがシートに座ると支持部が停止位置から後方に変位されるように、静止している背面支持部がシート部分の上方で延在し得る。これによって、弾性的に変位可能な支持部は、使用の際に常にユーザの体に支持圧力を与える。
【0037】
いくつかの実施形態では、アンカーはシート部分を含む。いくつかの実施形態では、背面支持部はシート部分に直接固着可能である、または、シート部分に一体化可能である。このように、支持部は、シート部分の延在する実質的に支持されていない部分を含み得る。シート部分および支持部は、単一の本体から形成可能である。
【0038】
いくつかの実施形態では、背面支持部はシート部分の延在部を含み得る一方で、他の実施形態では、支持部およびシート部分は自転車シートの別々の部品であり得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、背面支持部はヒンジによってシート部分に接続可能である。
背面支持部は、アンカーにおいてシート部分に接合された別の本体でもよい。そのようなアンカーは、接合材料が位置する、シート部分と背面支持部との表面の重なりを含み得る。代替的に、支持部はアンカーにおいて股領域に接合可能である。
【0040】
アンカーは、支持部の一部を支持されていないままにするように、支持部の一部のみに沿って延在可能である。このことは、支持部の支持されていない部分が、ユーザの尾骨を移動させるように変形する、または撓むことを可能とする。
【0041】
いくつかの実施形態では、背面支持部は、その周囲の一部から延在するウイングを有する本体を含み、これらのウイングは、シート部分の領域に接合されている。このことは、支持部の一部を相対的に支持されていないままにし得、この部分は実質的に鉛直方向に延在する支持部の部分でもあり得、支持部に接触するユーザの体の一部によって圧力がかかっているときに変位する部分でもあり得る。これらの実施形態では、支持部は、支持されていない部分が撓むことができるように、弾性的に変形可能な材料で形成されていてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、 背面支持部の変位はばねによってバイアスがかけられてもよい。いくつかの実施形態では、上記バイアスは1つ以上のばねによって与えられ得る。
【0043】
上記ばねは、支持部をシート部分に接続するヒンジにおいて作用し得る。
いくつかの実施形態では、支持部は、使用中に鉛直および水平方向に移動するように配置可能である。
【0044】
いくつかの実施形態では、背面支持部の少なくとも一部はシート部分の開口部内に変位可能である。
【0045】
いくつかの実施形態では、自転車シートは、たとえば標準的な形状の自転車シート取付け手段を用いてシートポスト上での設置において水平方向に移動するように配置されている。この装置は、ユーザの好みに応じて水平方向の取付けバーまたは部材上のポストに留められる。
【0046】
いくつかの実施形態では、取付け手段は、使用の際に水平方向に変位可能である。たとえば、シートは、ばねによってバイアスされるサスペンション機構を有するシートポストを含み得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、背面支持部は、使用の際にユーザの尾骨を取り囲むまたはこれと隣接するように配置されている。たとえば、背面支持部は、使用の際に尾骨の片側に位置する、使用の際に装置の最も後方の縁部に隣接してまたはここに位置する、2つの部分からなる部分を含み得る、または二股に分かれた部分を含み得る。このように、尾骨は有利なことに自由のままであり得、ユーザの周囲の体が代わりに支持されている。有利なことに、これによって、ユーザの脚のペダルの推進が打ち消される一方で、尾骨に対する圧力が緩和される。
【0048】
いくつかの実施形態では、支持部は使用の際にユーザの尾骨を鏡のように反映するように配置されている。たとえば、支持部は装置の中央方向に直立した部分を含み得、これは、装置の最も後方の縁部の幅の中央に位置し得る、またはこれに隣接し得る。有利なことに、これによって、ユーザの臀部を直接支持可能であり、ユーザが好ましくない態様で後方に移動することを防止する。
【0049】
いくつかの実施形態では、シート部分は、装置がさらなる使用の快適性をもたらすためにばね手段を含み得る。いくつかの実施形態では、ばね手段は鉛直方向に変形し得る。いくつかの実施形態では、ばね手段は水平方向に変形し得る。そのような態様で、この部分は、使用中にユーザのペダルの推進からの衝撃をさらに緩和するように、2つ以上の方向に変位可能である。
【0050】
自転車シートは、自転車に取付けるための取付け手段を備え得る。いくつかの実施形態では、当該取付け手段は、既存の自転車サドル上にまたはこれにわたって自転車シートを取付ける手段を備え得る。好ましくは、取付け手段はシートポストへ取付けるために配置されており、自転車のシートチューブ内に挿入可能である。
【0051】
本発明の第2の側面によると、前述のような自転車シートを備える自転車が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明に係る装置の第1の実施形態を示す等角図である。
【
図2】
図1に示す実施形態の等角図と反対側から見た等角図である。
【
図3a】
図1に示す実施形態を下方から見た平面図である。
【
図3b】
図1に示す実施形態を上方から見た平面図である。
【
図6c】
図1に示す実施形態の背面支持部を示す図である。
【
図7a】本発明に係る装置の変形実施形態を示す図である。
【
図7b】本発明に係る装置の変形実施形態を示す図である。
【
図7c】本発明に係る装置の変形実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図面の詳細な説明
図1~
図7を参照すると、自転車シートの第1の実施形態が示されている。この自転車シートは、広いシート部分から前側端部2へと前方に延在する長尺領域を先細りにすることによって形成される股領域を備える。シート部分は、次第に広くなるヒップ部3において股領域から外に向かう、2つの対向するサドル部分4を含む。股領域は、シートの前方延在部、すなわち、自転車の使用中は前方を向く部分を形成する。2つの対向するサドル部分4は、シートの後方台、すなわち、自転車の使用中にユーザの臀部を支持する部分を形成する。
【0054】
背面支持部20は装置と同じ材料で形成されている。背面支持部の形状は細長い卵形の湾曲になっているため径方向に撓むことができるが、必ずしも横方向でなくてもよい。
【0055】
支持部20の前面端部7は、股領域の背後で、2つの対向するサドル部分4の間の開口部に配置可能である。背面支持部20の前面端部7は、シート部分によって支持されており、シート部分および股領域と略同じ平面に位置する。背面支持部20の後方端部1は上方向に湾曲しており、支持されていない。使用の際は、後方端部1はユーザの尾骨と接触しこれを支持する。
【0056】
背面支持部20は、支持されていない後方端部1から支持されている前側端部7へ鉛直曲線状に延在する。
【0057】
背面支持部20は、対向するサドル部分4に接触するように、前側端部7の周囲または側方縁部から延在するウイング9を含む。
【0058】
この装置は、ポリエチレン、ポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン(abs)もしくは他の適切な熱可塑性材料、または、グラフェンもしくは十分な重量の実質的に堅固な他の材料で形成された、上部サドルパッド、上部シートサドルを備える。
【0059】
この装置は、自転車シートの上側本体を下方から支持する2つの金属または合金フレーム部材6のための成形マウントを備える。
【0060】
これらの部材は、公知の取付け手段を備え、クランプがこれらの部材に沿って適切な地点でこれらの部材をシートポストに取付けるために使用される。
【0061】
いくつかの実施形態では、取付け手段は、水平方向での移動のための手段を含むクランプを含む。取付け手段は、使用の際に部材の水平部分で後ろ方向へ変位させること、および/または、シートポストに対して装置を押すか摺動させるように作用するばねバイアスを可能とする。このように、ペダル踏みの推力をさらに吸収可能である。
【0062】
いくつかの他の実施形態では、これらの部材は、他のサドルのための取付け手段を含み得、これによって、装置をサドルにわたって留めることができる。
【0063】
マウントは、サドル部分4の下面の後方におけるまたはこれと隣接した2つの後方マウント11と、股領域端部におけるまたはこれと隣接した前方マウント8とを含む。この前方マウントは、2つの部材を収容するように配置されている。
【0064】
股領域は、下方へ垂れ下がる端部と下方へ傾斜した側面とを含み、ペダルで進む間、ユーザの股、太もも、および脚は使用の際は妨げられない。
【0065】
サドル部分はヒップ部に隣接した高い地点から下方に垂れ下がり、後方までのユーザの臀部を反映した湾曲部を形成する。
【0066】
サドル部分は、遠位端部に向かって細くなる開口部10によって中央で分割されており、ヒップ部においてまたはこれらと隣接する最も前方の地点まで延在する。
【0067】
開口部は、背面支持部20に向かって傾斜する面取り周辺縁部5を含む。この部分は、ウィング9と開口部縁部5との間の密着または接合によって開口部で保持されている。
【0068】
後方端部1が鉛直方向に変位するために後方端部1が効果的に支持されないように、ウイング9は、延在し開口部縁部5の約半分に対して接合されている。材料の撓みによって、水平方向の変位が可能になる。
【0069】
いくつかの実施形態では、装置は自転車に組み込まれていてもよい。
図4は、自転車シートの好ましい実施形態の特徴を示す図である。ここで、シート部分2、3、4が支持面30を画定していることが分かる。
【0070】
支持面30は、前方延在部30a(これは股領域に対応し得る)を画定する。使用の際、ユーザは前方延在部30aにまたがる。前方延在部30aは、シートの前方方向を画定しており、自転車を使用の際に自転車の進行方向に向く。
【0071】
また、支持面30は、ユーザの臀部を支持するための後方台30bを画定する(これは、ヒップ部3の後方の2つのサドル部分4に対応し得る)。
【0072】
図4より、(前方および鉛直方向に垂直な)側面視において、支持面30の最も高い部分が前方延在部30aから後方台30b内へと実質的に連続した線(好ましくは、きわめて緩やかに人間工学的に湾曲している)上に延在していることが分かる。
【0073】
背面支持部は、支持面30の延在部を概ね画定する。このように、背面支持部20は、支持面30と接線方向に交差する場所から緩やかに上方向に湾曲する。言い換えれば、背面支持部20は、支持面30と一体化して、遠位部分20aによって形成された最も後方の支持部に緩やかな推移をもたらしている。
【0074】
すなわち、
図4の側面図では、背面支持部20は実質的に連続した線の接線に概ね沿って支持面に合流し、後方台30bの最も高い部分から離れるように湾曲する。背面支持部20の近位部分20cは、シート部分と係合する。好ましくは、前述のウイング9は、シート部分2、3、4と係合するために近位部分20cの側方で延在する。
【0075】
背面支持部20の遠位部分20aは、後方台30bから離れるように延在し、ユーザの尾骨と係合してユーザが支持面30に座ったときの後方への動きを規制するのに好適になるように、支持面30に対して傾斜している。
【0076】
図6cから分かるように、遠位部分20aの端部は、近位部分20cの端部に対して角度を有して終端している。この角度αは、好ましくは、90度から120度、より好ましくは100度から110度の範囲である。
図4に示すように、シートを略水平方向に配置した場合、角度αは水平方向との角度を表す。
【0077】
背面支持部20の中央部分20bは、遠位部分20cを近位部分20に連結する。中央部分20bは、(
図4に示す側面図において)最大湾曲を有する背面支持部20の領域を形成する。しかしながら、湾曲はなお緩やかであることが好ましく、そのため、その長さ(この半径は、
図6cに示すように遠位(X)および近位(Y)端部の各々の接線によって画定される平面において計測される)に沿って、中央部分における曲率半径が10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましい。遠位および/または近位部分20a、20cは、直線状でもよく、またはより好ましくは湾曲していてもよい。
【0078】
背面支持部20の表面にわたる測地的な長さは、100mm~170mmの範囲であることが好ましい。
【0079】
遠位端部(すなわち、遠位部分20aの先端)は、少なくとも60mm、好ましくは120mm~150mmの間の距離Hだけ、近位端部(すなわち、近位部分20cの先端)に対する接線X(
図6cに示す)に対して垂直な方向にずれている。
【0080】
図5aより、支持面30がその長さの大部分にわたって延在する略直線状の稜線から横方向に下向きに湾曲し、中央領域が
図4に示す実質的に連続した線を画定していることが分かる。
図5aから分かるように、背面支持部20は後方台30bよりも狭い。好ましくは、背面支持部20の幅Wは40mm以下である(幅は、細長い背面支持部20の長さに沿った最大幅を示す)。この幅は、背面支持部20がユーザの尾骨と係合しユーザの臀筋との係合を避ける(または実質的に避ける)ように選択されている。好ましくは、幅Wは少なくとも10mmである。
【0081】
中央部分20bは遠位部分20aと近位部分20cとの間に緩やかな曲線をもたらすため、ユーザの尾骨との係合に関して、より鋭い遷移によって得られであろうよりもはるかに快適な表面を提供することができる。したがって、背面支持部20は、支持面に座ったときにユーザの後方への動きを最も快適な態様で規制可能である。
【0082】
本発明は例示として説明されたに過ぎず、特に前述の実施形態の特徴の組合せだけでなく、添付の特許請求の範囲によって規定される発明の範囲から逸脱することなく前述の実施形態に変形を加えることが可能であると理解されるであろう。
【0083】
実施形態は、以下の番号を付けた項目において説明されると考えられる。
1.使用の際にユーザの脚の間に配置される股領域と、使用の際にユーザの臀部を支持するように配置されたシート部分と、鉛直方向に延在しシート部分に対するユーザの後方への動きを規制する少なくとも1つの背面支持部とを備える、自転車シート。
【0084】
2.少なくとも1つの背面支持部がアンカーにおいてシート部分に恒久的に一体化されている、項目1に記載の自転車シート。
【0085】
3.少なくとも1つの背面支持部とシート部分とが単一の本体で形成されている、項目
2に記載の自転車シート。
【0086】
4.少なくとも1つの背面支持部が使用の際に尾骨の両側に延在する2つの部分を含む、
項目3に記載の自転車シート。
【0087】
5.少なくとも1つの背面支持部が使用の際に尾骨と並んで延在する部分を含む、項目3に記載の自転車シート。
【0088】
6.少なくとも1つの背面支持部がアンカーにおいてシート部分に接合されている、項目2に記載の自転車シート。
【0089】
7.少なくとも1つの背面支持部がシート部分に対して変位可能である、前述の項目のいずれか1つに記載の自転車シート。
【0090】
8.少なくとも1つの背面支持部が弾性的に変形可能である、前述の項目のいずれか1つに記載の自転車シート。
【0091】
9.少なくとも1つの背面支持部が、支持部の一部を支持されていないままにするように、支持部の一部のみに沿って延在するアンカーにおいてシート部分または股領域に恒久的に接合されている、前述の項目のいずれか1つに記載の自転車シート。
【0092】
10.アンカーがヒンジを含む、項目6に記載の自転車シート。
11.少なくとも1つの背面支持部の少なくとも一部がシート部分の開口部内へ変位可能である、前述の項目のいずれか1つに記載の自転車シート。
【0093】
12.前述の項目のいずれか1つに記載の自転車シートを組み込んだ自転車。