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特許7033586シネオールとアモキシシリンとを含む医薬製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】シネオールとアモキシシリンとを含む医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/43 20060101AFI20220303BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 31/424 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220303BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
A61K31/43
A61K31/352
A61K31/424
A61K47/44
A61K9/16
A61P31/04
A61P43/00 121
A61P11/00
A61P13/12
A61P13/10
A61P19/02
A61P19/08
A61P27/16
A61P1/02
A61P15/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019515760
(86)(22)【出願日】2017-06-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 MA2017000014
(87)【国際公開番号】W WO2017209588
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】1655017
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1655018
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】39084
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MA
(31)【優先権主張番号】39085
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MA
(73)【特許権者】
【識別番号】518429436
【氏名又は名称】アドバンスト サイエンティフィック ディヴェロップメンツ
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED SCIENTIFIC DEVELOPEMENTS
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ルマール アドナヌ
(72)【発明者】
【氏名】アクムーク アーメド アミン
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/041958(WO,A1)
【文献】特表2014-507441(JP,A)
【文献】Adina Catinca Gradinaru et al,Interactions between cardamom essential oil and conventional antibiotics against Staphylococcus Aureus clinical isolates,Farmacia,2014年,vol 62, no 6,1214-1222
【文献】Hanan. H. Abd El-Kalek et al,SYNERGISTIC EFFECT OF CERTAIN MEDICINAL PLANTS AND AMOXICILLIN AGAINST SOME CLINICAL ISOLATES OF METHICILLIN-RESISTANT STAPHYLOCOCCUS AUREUS CLINICAL ISOLATES,International Journal of Pharmaceutical Applications,2012年,vol 3, no 3,387-398
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シネオールとアモキシシリンと薬学的に許容される、精油ではない植物油とを含む、又は実質的にそれらからなる粉末形態の医薬製剤。
【請求項2】
前記製剤はクラブラン酸も含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記薬学的に許容される、精油ではない植物油は、落花生油である、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記製剤は、粉末のグラムあたり約5mg~約100mgのシネオールを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
前記製剤は、粉末のグラムあたり約20mg~約500mgのアモキシシリンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
前記製剤は、粉末のグラムあたり約2mg~約50mgの油を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
前記製剤は、粉末のグラムあたり約1mg~約100mgのクラブラン酸を含む、請求項2~6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
アモキシシリン/シネオールの質量比は2~8である、請求項1~7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
アモキシシリン/油の質量比は5~15である、請求項1~8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
シネオール/油の質量比は0.1~5である、請求項1~9のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項11】
アモキシシリン/クラブラン酸の質量比は5~11である、請求項2~10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
前記製剤は、水性溶媒に懸濁後、経口で投与するために用いられる、請求項1~11のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
前記製剤は単一用量容器に包装される、請求項1~12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
前記製剤は、甘味料、香料、固化防止剤、潤滑剤、崩壊剤、及びそれらの混合物からなる群より選択される、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体も含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
個体の感染症状の処置における使用のための、請求項1~14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
前記症状は細菌由来の感染症状である、請求項15に記載の使用のための製剤。
【請求項17】
前記症状は、β-ラクタム系ファミリーの抗生物質に耐性のある細菌に起因する感染症状である、請求項15又は16に記載の使用のための製剤。
【請求項18】
前記製剤は、1日~4週の期間にわたって、1回以上の投与量摂取で1日あたり3グラム~30グラムの量で前記個体に投与するために用いられる、請求項15~17のいずれか1項に記載の使用のための製剤。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬製剤の製造プロセスであって、
-シネオールと薬学的に許容される、精油ではない植物油とを混合することによって湿潤化溶液を作製することと、
-前記湿潤化溶液でアモキシシリンを含む粉末を湿潤化させて、アモキシシリンとシネオールと前記油とを含む粉末調製物を得ることとを含み、
-任意的に、前記プロセスは、アモキシシリンとシネオールと前記油とを含む前記粉末調製物を、クラブラン酸を含む粉末と混合すること、並びに/又は、
-任意的に、甘味料、香料、及び/若しくは潤滑剤を添加して、均質な粉末を得るようにそれらを混合すること、並びに/又は、
-任意的に、そのようにして得られた前記粉末をスクリーニングすること、並びに/又は、
-任意的に、スクリーニングした前記粉末を単一用量容器に包装することも含む、プロセス。
【請求項20】
前記アモキシシリンを含む粉末、及び/又は、クラブラン酸を含む粉末は、崩壊剤及び/又は固化防止剤をさらに含む、請求項19に記載の製造プロセス。
【請求項21】
前記細菌感染症は、膀胱炎、細菌性副鼻腔炎、耳、気管支炎、気管支肺疾患、腎盂腎炎、上部生殖管感染症、歯周炎、重度口腔感染症、蜂窩織炎及び蜂巣炎、動物の咬傷、骨及び関節の感染症からなる群から選択される、請求項16~18のいずれか1項に記載の使用のための製剤。
【請求項22】
前記細菌感染症は、β-ラクタム系ファミリーの抗生物質に耐性のある細菌に起因する膀胱炎である、請求項16~18のいずれか1項に記載の使用のための製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野、特に細菌感染症の分野に関する。本発明は、細菌感染症、特に抗生物質耐性感染症の処置における医療又は獣医学的使用に特に適する新規の処置と新規の医薬製剤とに関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質は、殺菌活性又は静菌活性を有する天然又は合成の物質である。抗生物質が第2次世界大戦後に一般的に導入されたことは、20世紀の最も重要な治療的進歩の一つであった。抗生物質による処置は、10年を超えて、すなわち他のいずれの医療処置よりも、平均余命を向上させた。しかしながら、予防的処置若しくは根治的処置において、又は動物用飼料の食品サプリメントとして、養殖、獣医学的及びヒトの医薬において、又は植物に使用する殺虫剤としての使用を含む、所定の抗生物質の一般的使用又はさらなる乱用により、抗生物質耐性微生物個体群の発現や治療有効性の一般的な低下をもたらす選択圧が生じている。このため、病院では、特に特定の多耐性病原体に対する適切な処置がないことから、院内リスクの増加につながっている。
【0003】
抗生物質に対する細菌耐性の近年の報告(2014年4月)において、WHOは、多くの関係者が直ちに協調的に行動しない限り、数十年間処置可能であった一般的な感染症や軽傷が再び殺傷するものになり得るという抗生物質後の時代に世界が向かう、と指摘している。特定の「最終手段的」処置に対する耐性は既に現実のものとなっている。このように、一般的な腸内細菌であるクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)に起因する致死的可能性のある感染症の処置に対する耐性が、世界のあらゆる地域に広がっている。大腸菌(E. coli)に起因する尿路感染症の処置に最も広く使用されている抗菌性薬剤の1つ、フルオロキノロンに対する耐性についても同様である。近年、淋病に対する最終手段的処置、第三世代セファロスポリンの不成功が、南アフリカ、オーストラリア、オーストラリア、カナダ、フランス、日本、ノルウェー、英国、スロベニア、及びスウェーデンで認められている。
【0004】
この脅威に立ち向かうため、WHOは、特に、医療従事者が耐性の進行に常に先んじることができる、新規の診断薬、新規の抗生物質、及びその他の不可欠のツールの開発を呼びかけている。
【0005】
アモキシシリンは、感受性病原体に起因する細菌感染症の処置において言及される、アミノペニシリンファミリーの殺菌性β-ラクタム系抗生物質である。アモキシシリンは、良好に経口で吸収され、広域の抗菌活性を有し、低費用であるので、最も一般的に、特に子供に使用される抗生物質である。アモキシシリンは、様々な感染疾患、特に肺、気管支、鼻、喉、又は耳、血液、消化器又は尿に関する器官、生殖器官、歯肉及び歯の感染疾患の処置に使用される。
【0006】
アモキシシリンは、β-ラクタマーゼ阻害剤のクラブラン酸である、他の分子と組み合わせて使用されることがある。β-ラクタマーゼは、β-ラクタム系抗生物質に耐性のある細菌によって産生される酵素である。クラブラン酸は、β-ラクタマーゼを阻害することで、β-ラクタマーゼによるアモキシシリンの不活性化を阻止し、β-ラクタマーゼ産生耐性病原体におけるアモキシシリンの活性を保持することができる。
【0007】
しかしながら、クラブラン酸などの従来のβ-ラクタマーゼ阻害剤には感受性のない、又は部分的にしか感受性のない、著しく耐性のある細菌病原体、特に広域性のβ-ラクタマーゼ(broad-spectrum s-lactamase、BSBL)細菌の出現が、近年認められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ゆえに、耐性の細菌、特に広域性β-ラクタマーゼ(BSBL)を産生する細菌に対するアモキシシリンの有効性を取り戻す解決策を得ることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、シネオールが特に耐性細菌に対するアモキシシリンの有効性を増大可能であることを発見した。具体的に、発明者らは、アモキシシリンとシネオールとの組合せが、アモキシシリンの抗菌活性を実質的に強化する相乗作用を得ることを可能にするということを示した。このように、発明者らは、耐性細菌病原体、特にアモキシシリンとクラブラン酸との組合せに耐性のある病原体を有効に処置するための、アモキシシリンと、シネオールと、任意的にクラブラン酸とを含む新規の分子の組合せを見出した。
【0010】
また、発明者らは、特にアモキシシリンとクラブラン酸との組合せに耐性のある細菌病原体に対する、単独又はクラブラン酸との組合せのアモキシシリンの抗菌活性を実質的に増大させる医薬製剤を開発した。
【0011】
したがって、本発明は、第1の態様において、シネオールと、アモキシシリンと、薬学的に許容される油とを含む、又は実質的にそれらからなる粉末形態の医薬製剤に関する。
【0012】
好ましくは、本発明の製剤はまた、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸も含む。
【0013】
好ましくは、本発明の製剤の薬学的に許容される油は、植物油、鉱物油、合成油又は動物油、好ましくは植物油、より好ましくは落花性油である。
【0014】
本発明の製剤は、粉末のグラムあたり約5mg~約100mgのシネオール、好ましくは粉末のグラムあたり約10mg~約50mgのシネオール、より好ましくは粉末のグラムあたり約20mg~約40mgのシネオール、最も特に好ましくは粉末のグラムあたり約33mgのシネオールを含むことができる。
【0015】
また、本発明の製剤は、粉末のグラムあたり約20mg~約500mgのアモキシシリン、好ましくは粉末のグラムあたり約50mg~約300mgのアモキシシリン、より好ましくは粉末のグラムあたり約150mg~約200mgのアモキシシリン、最も特に好ましくは粉末のグラムあたり約167mgのアモキシシリンを含むことができる。
【0016】
また、本発明の製剤は、粉末のグラムあたり約2mg~約50mgの油、好ましくは粉末のグラムあたり約10mg~約25mgの油、より好ましくは粉末のグラムあたり約15mg~約20mgの油、最も特に好ましくは粉末のグラムあたり約17mgの油を含むことができる。
【0017】
本発明の製剤は、そして、粉末のグラムあたり約1mg~約100mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤、好適にはクラブラン酸、好ましくは粉末のグラムあたり約5mg~約50mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤、好適にはクラブラン酸、より好ましくは粉末のグラムあたり約15mg~約25mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤、好適にはクラブラン酸、最も特に好ましくは粉末のグラムあたり約21mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤、好適にはクラブラン酸を含むことができる。
【0018】
本発明の製剤は、特に、粉末のグラムあたり約5mg~約100mg、好ましくは約10mg~約50mgのシネオール、及び/又は、粉末のグラムあたり約20mg~約500mg、好ましくは約50mg~約300mgのアモキシシリン、及び/又は、粉末のグラムあたり約2mg~約50mg、好ましくは約10mg~約25mgの油、及び/又は、任意的に粉末のグラムあたり約1mg~約100mg、好ましくは約5mg~約50mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤、好適にはクラブラン酸を含むことができる。
【0019】
好ましくは、本発明の製剤は、粉末のグラムあたり約20mg~約40mg、好ましくは約33mgのシネオール、粉末のグラムあたり約150mg~約200mg、好ましくは約167mgのアモキシシリン、粉末のグラムあたり約15mg~約20mg、好ましくは約17mgの油、及び/又は、任意的に粉末のグラムあたり約15mg~約25mg、好ましくは約21mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤、好適にはクラブラン酸を含む。
【0020】
本発明の製剤は、2~8、好ましくは3~7、特により好ましくは4~6のアモキシシリン/シネオール質量比、最も特に好ましくは約5のアモキシシリン/シネオール質量比を有することができる。
【0021】
本発明の製剤は、5~15、好ましくは7~13、特により好ましくは8~12のアモキシシリン/油質量比、最も特に好ましくは約10のアモキシシリン/油質量比を有することができる。
【0022】
本発明の製剤は、0.1~5、好ましくは0.5~4、特により好ましくは1~3のシネオール/油質量比、最も特に好ましくは約2のシネオール/油質量比を有することができる。
【0023】
本発明の製剤は、5~11、好ましくは6~10、特により好ましくは7~9のアモキシシリン/β-ラクタマーゼ阻害剤質量比、最も特に好ましくは約8のアモキシシリン/β-ラクタマーゼ阻害剤質量比を有することができる。
【0024】
本発明の製剤は、好ましくは水性溶媒に懸濁後、経口で投与することを意図するものであり得る。
【0025】
本発明の製剤は、単一用量容器、好ましくは約1g~約150gの粉末、より好ましくは約1g~約50gの粉末、さらに好ましくは約1g~約10gの粉末、特により好ましくは約3gの粉末を含む単一用量容器に包装することができる。
【0026】
また、本発明の製剤は、好ましくは甘味料、香料、固化防止剤、潤滑剤、崩壊剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体を含むことができる。
【0027】
第2の態様において、本発明はまた、個体、好ましくは動物又はヒトにおける感染症状の処置に使用される上述のような製剤にも関する。
【0028】
好ましくは、該感染症状は細菌由来の感染症状、より好ましくはβ-ラクタム系ファミリーの抗生物質に耐性のある細菌に起因する感染症状である。
【0029】
好ましくは、製剤は、1日~4週の期間にわたって、1回以上の投与量摂取において1日あたり3~30グラムの量で個体に投与されるか又は投与されることが意図される。
【0030】
また、本発明は、第3の態様において、
-シネオールと薬学的に許容される油とを混合することによって湿潤化溶液を作製することと、
-湿潤化溶液でアモキシシリンを含む粉末を湿潤化させて、アモキシシリンとシネオールと油とを含む粉末調製物を得ることとを含む、本発明の医薬製剤を製造するプロセスにも関する。
【0031】
任意的に、プロセスには、アモキシシリンとシネオールと油とを含む粉末調製物を、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む粉末と混合すること、並びに/又は、
‐甘味料、香料、及び/若しくは潤滑剤を添加して、均質な粉末を得るようにそれらを混合すること、並びに/又は、
‐そのようにして得られた粉末をスクリーニングすること、並びに/又は、
‐スクリーニングした粉末を単一用量容器に包装すること、も含むことができる。
【0032】
好ましくは、アモキシシリンを含む粉末、及び/又は、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む粉末は、崩壊剤及び/又は固化防止剤も含む。
【0033】
第4の態様において、本発明はまた、線状又は環状に組織化されるとともに非共有結合によって互いに相互作用する、2つを超えるアモキシシリン分子を含む分子複合体にも関する。
【0034】
好ましくは、本発明の分子複合体は、少なくとも3つのアモキシシリン分子、より好ましくは3~6つのアモキシシリン分子、最も特に好ましくは4つのアモキシシリン分子から形成される。
【0035】
本発明の分子複合体は、水性溶媒に、シネオールの存在下で且つ界面活性剤の非存在下でアモキシシリンを溶解させることで得られる、又は得ることができる。
【0036】
本発明は、第5の態様において、個体の細菌感染症の処置に使用されるシネオールとアモキシシリンとを含む、又は実質的にそれらからなる治療用の組合せに関する。
【0037】
好ましくは、組合せにはまた、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸も含む。
【0038】
特に、本発明の組合せは、シネオールとアモキシシリンと、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを共に、個別に、又は連続的に使用するための組み合わせの調製物であり得る。
【0039】
好ましくは、細菌感染症は、抗生物質、好ましくはβ-ラクタム系ファミリーの抗生物質に耐性のある細菌に起因する。
【0040】
処置される個体は、動物、好ましくは哺乳動物、最も特に好ましくはヒトである。
【0041】
本発明の組合せにおいて、
-シネオールは、1日あたり個体の体重の約0.1mg/kg/日~約50mg/kg/日、好ましくは約0.5mg/kg/日~20mg/kg/日、最も特に好ましくは約1mg/kg/日~約10mg/kg/日の用量で個体に投与されることができるか又は投与されることが意図され、及び/又は、
-アモキシシリンは、1日あたり個体の体重の約5mg/kg/日~約200mg/kg/日、好ましくは約10mg/kg/日~100mg/kg/日、最も特に好ましくは約15mg/kg/日~約50mg/kg/日の用量で個体に投与されることができるか又は投与されることが意図され、及び/又は、
-β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸は、1日あたり個体の体重の約0.1mg/kg/日~約50mg/kg/日、好ましくは約0.5mg/kg/日~約20mg/kg/日、最も特に好ましくは約1mg/kg/日~約10mg/kg/日の用量で個体に投与されることができるか又は投与されることが意図される。
【0042】
好ましくは、組合せは、1日あたり1回のみ又は数回の投与量摂取頻度で、1日~4週の期間にわたって、より好ましくは約7日の期間にわたって、個体に投与されるか又は投与されることが意図される。
【0043】
好ましくは、組合せのシネオールと、アモキシシリンと、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とは、経口で個体に投与されるか又は投与されることが意図される。
【0044】
組合せのアモキシシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤とは、好ましくはアモキシシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む医薬組成物から、共に個体に投与されることができるか又は投与されることが意図されることができる。
【0045】
組合せのシネオールとアモキシシリンと任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤とは、好ましくはシネオールとアモキシシリンと任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む医薬組成物から、又はシネオールを含む医薬組成物及びアモキシシリンと任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む医薬組成物から、共に投与されることができるか又は投与されることが意図されることができる。
【0046】
好ましくは、シネオールは、アモキシシリン、及び/又は任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤に対して、連続的に又は個別に、好ましくは連続的に投与されるか又は投与されることが意図される。
【0047】
第6の態様において、本発明はまた、シネオールと、アモキシシリンと、薬学的に許容される賦形剤又は担体と、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、又は実質的にそれらからなる医薬組成物にも関する。
【0048】
また、本発明は、第7の態様において、
(a)シネオールを含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、及びアモキシシリンを含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、
(b)シネオールを含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、及びアモキシシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、若しくは実質的にそれらからなる医薬組成物、
(c)アモキシシリンを含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、及びシネオールとβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、若しくは実質的にそれらからなる医薬組成物、
(d)β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、及びシネオールとアモキシシリンとを含む、若しくは実質的にそれらからなる医薬組成物、又は
(e)シネオールを含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、アモキシシリンを含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、及びβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む、又は実質的にそれからなる医薬組成物、並びに、
(f)任意的に、そうしたキットを使用するための指示を含む指導書、を包含する個体の細菌感染症を処置するためのキットにも関する。
【0049】
本発明はまた、個体の細菌感染症、好ましくは抗生物質耐性細菌に起因する細菌感染症の処置に使用される本発明のキット又は組成物にも関する。
【0050】
好ましくは、細菌感染症は、膀胱炎、特に再発性急性膀胱炎、細菌性副鼻腔炎、特に急性上顎洞炎、耳炎、特に急性中耳炎、気管支炎、特に慢性気管支炎及び/又は急性気管支炎、気管支肺疾患、特に慢性気管支肺疾患及び/又は急性気管支肺疾患、腎盂腎炎、上部生殖管感染症、歯周炎、重度口腔感染症、特に膿瘍、蜂窩織炎及び蜂巣炎、動物の咬傷、骨及び関節の感染症、特に骨髄炎からなる群から選択され、好ましくは、該細菌感染症は、膀胱炎、特にβ-ラクタム系ファミリーの抗生物質に耐性のある細菌に起因する膀胱炎である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、アモキシシリンとクラブラン酸とシネオールとの組合せで処置したウサギ血清の抗菌活性の研究である。A(シネオールなしのAMC)は、アモキシシリン(1.5g)とクラブラン酸(186.5mg)とを含む組成物の単一用量をウサギ3匹に経口投与した後、T、T1h、T2h、T3h、及びT6hのときの血清阻害率を大腸菌のBSBL多耐性株について計算した。B(シネオールありのAMC)は、アモキシシリン(1.5g)とクラブラン酸(186.5mg)とシネオール(300mg)とを含む組成物の単一用量をウサギ3匹に経口投与した後、T、T1h、T2h、T3h、及びT6hのときの血清阻害率を大腸菌のBSBL多耐性株について計算した。
図2図2では、アモキシシリンの平均血清中濃度の24時間モニタリングを示す。A(シネオールなし)は、アモキシシリン(2g)とクラブラン酸(250mg)とを含む組成物の単一用量(12g)を経口投与した後、アモキシシリンの血清中濃度を12人の健康なボランティアにおいて24時間モニタリングする。B(シネオールあり)は、アモキシシリン(2g)とクラブラン酸(250mg)とシネオール(400mg)とを含む組成物の単一用量(12g)を経口投与した後、アモキシシリンの血清中濃度を12人の健康なボランティアにおいて24時間モニタリングする。
図3図3では、アモキシシリンの平均血漿中濃度の7日間モニタリングを示す。A(シネオールなし)は、アモキシシリン(2g)とクラブラン酸(250mg)とを含む組成物の単一用量(12g)を経口投与した後、アモキシシリン(500mg)とクラブラン酸(62.5mg)とを含む同じ組成物の維持用量(3g)を、1日あたり3回の7日間、12人のボランティアに投与する。アモキシシリンの血漿中濃度を12人の健康なボランティアにおいて7日間モニタリングする。B(シネオールあり)は、アモキシシリン(2g)とクラブラン酸(250mg)とシネオール(400mg)とを含む組成物の単一用量(12g)を経口投与した後、アモキシシリン(500mg)とクラブラン酸(62.5mg)とシネオール(100mg)とを含む同じ組成物の維持用量(3g)を、1日あたり3回の7日間、12人のボランティアに投与する。アモキシシリンの血漿中濃度を12人の健康なボランティアにおいて7日間モニタリングする。
図4図4は、アモキシシリン複合体形成の分光学的研究である。A(AMX単独)は、水溶液内のアモキシシリン単独の質量分析による解析を示す。B(シネオールありのAMX)は、水溶液内のシネオールを伴うアモキシシリンの質量分析による解析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
発明者らは、アモキシシリンのシネオールとの組合せが、特に耐性細菌に対するアモキシシリンの有効性を実質的に増大させる相乗作用を得ることを可能にすると示した。発明者らは特に、シネオールが、治療濃度未満で、アモキシシリン耐性細菌により産生される酵素であるβ-ラクタマーゼの阻害作用からアモキシシリンを防護することを見出した。
【0053】
このように、発明者らは、耐性細菌病原体、特にアモキシシリンとクラブラン酸との組合せに耐性のある病原体を有効に処置するための、アモキシシリンと、シネオールと、任意的にクラブラン酸とを含む新規の治療用の組合せを見出した。
【0054】
また、発明者らは、シネオールとアモキシシリンとクラブラン酸とを組み合わせた粉末形態の医薬製剤を開発した。発明者らは、この組合せがアモキシシリンの抗菌活性を実質的に増大させて、耐性病原体による感染症に罹患した患者を有効に処置することを可能にすることを見出した。
【0055】
この新規の製剤はまた、優れた保存特性も有する。特に、製剤に油を使用することで、高揮発性薬剤であるシネオールをこの製剤の粉末状担体に非常に効率的に固定することができる。このため、水性溶媒に懸濁後容易に経口で投与することのできる活性化合物投与用単一製剤の提案が可能になる。単一であるとともにさらに経口で投与される薬剤にすることで、処置に対するコンプライアンスと、その有効性を大きく増大させる。
【0056】
また、発明者らは、アモキシシリンがシネオールの存在下で少なくとも3つのアモキシシリン分子の複合体を形成することも示した。この複合体形成により、アモキシシリン分子はβ-ラクタマーゼにアクセスしにくくなり、ゆえにその治療有効性を増大させる。
【0057】
このように、第1の態様において、本発明は、シネオールと、アモキシシリンと、薬学的に許容される油とを含む、又は実質的にそれらからなる粉末形態の医薬製剤に関する。
【0058】
第2の態様において、本発明は、個体の細菌感染症の処置に使用される、シネオールとアモキシシリンとを含む治療用の組合せに関する。本発明の組合せはまた、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸も含むことができる。特に、本発明の組合せは、好ましくはシネオールとアモキシシリンとクラブラン酸とである組合せの有効成分を共に、個別に、又は連続的に使用するための組み合わせの調製物であり得る。
【0059】
[定義]
本明細書において、「約」という用語は、特定値の±10%である値の範囲を指す。一例として、「約50」は、50の±10%の値、すなわち45~55の範囲の値を含む。好ましくは、「約」という用語は、特定値の±5%である値の範囲を指す。「約」という用語が先行する値はまた、本願において具体的に記載されているとされる必要があると理解される。
【0060】
本明細書において使用される際「実質的にからなる」という用語は、その製剤において言及されるもの以外の任意の有効成分を含まない、特に他の抗生物質又はβ-ラクタマーゼ阻害剤のない、本発明の製剤を指す。
【0061】
本明細書に使用されるとき、「薬学的に許容される賦形剤又は担体」という用語は、医薬製剤に存在する有効成分以外の任意の物質を指す。その添加により、有効成分との任意の相互作用、特に化学的相互作用を回避しながら、最終製品に特定のコンシステンシー、又は他の特定の物理的特性又は食味の特性を与えることが特に意図される。
【0062】
本明細書に使用されるとき、「有効成分」という用語は、治療作用を有する分子に関する。特に、シネオールと、アモキシシリンと、β-ラクタマーゼ阻害剤とは有効成分である。
【0063】
本明細書に使用されるとき、「治療作用」という用語は、細菌感染症の発現を抑止若しくは遅延させるか、又は細菌感染症の影響を回復若しくは軽減することができる、有効成分、本発明の組成物、又は本発明の組合せによって誘発される作用を指す。
【0064】
本明細書に使用されるとき、「抗菌作用」という用語は、細菌感染症の原因となる細菌の量及び/又は濃度を個体において低減することができる、有効成分、本発明の組成物、又は本発明の組合せによって誘発される作用を指す。
【0065】
本明細書に使用されるとき、「相乗作用」という用語は、有効成分を個別に摂取した際の本発明の組成物又は本発明の組合せに存在するすべての有効成分の治療効果の合計よりも、及び/又は抗菌作用の合計よりも、高い治療効果及び/又は抗菌作用を有する本発明の組成物又は本発明の組合せに関する。そうした作用の存在は、実施例1に示すようなフラクショナル阻止濃度指数(fractional inhibitory concentration index、fic指数)を計算することで評価することができる。
【0066】
本明細書に使用されるとき、「処置」という用語は、細菌感染症に罹患したヒトの医学的状態を改善することを狙いとした任意の行為に関する。処置とは、患者の状態、すなわち感染症若しくはその症状の一部の悪化を改善すること、又は感染症若しくはその症状の一部を根絶することを狙いとすることであり得る。また、処置は、細菌感染症の進行を抑止又は遅延する作用を有するものであり得る。また、処置とは、予防的又は抑止的作用を有する、すなわち細菌感染症の発現を抑止又は遅延させることであり得る。
【0067】
本明細書に使用されるとき、「量」及び「用量」という用語は同等であり、互換的に使用することができる。
【0068】
本明細書に使用されるとき、「治療有効量」という用語は、治療作用を誘発するのに十分な有効成分、本発明の組成物、又は本発明の組合せの量を指す。あるいは、「治療有効量」という用語は、抗菌作用を誘発するのに十分な有効成分、本発明の組成物、又は本発明の組合せの量を指し得る。投与される量は、処置される個体、細菌感染症の特性などに応じて当業者によって適応させることができることは明らかである。特に、用量及び投与計画は、処置される細菌感染症の特性、発現段階、及び重症度、並びにまた処置される個体の体重、年齢、及び一般的健康状態、又は処方する医師の判断に応じたものである。
【0069】
本明細書に使用されるとき、「治療量未満量」という用語は、単独では治療作用を誘発するのに十分でない有効成分の量を指す。あるいは、「治療量未満量」という用語は、単独では抗菌作用を誘発するのに十分でない有効成分の量を指し得る。
【0070】
本明細書に使用されるとき、「治療用組合せ」及び「組合せの調製物」という用語は、有効成分、好ましくはシネオール、アモキシシリン、任意的にクラブラン酸の組合せを指し、これらは、組合せに2つを超える有効成分を含む際に、共に、個別に、若しくは連続的に投与するため、若しくはそれらの投与モードを混合させて、それぞれが個別に、又は1つ以上の製剤として製剤化され得る。
【0071】
本明細書に使用されるとき、「共に」という用語は、組合せの有効成分が共に、すなわち同時に使用又は投与される、本発明の組合せを指す。
【0072】
本明細書に使用されるとき、「連続的に」という用語は、組合せの有効成分が連続的に、すなわち順次使用又は投与される、本発明の組合せを指す。好ましくは、投与が連続的であるとき、すべての有効成分は約1時間以内、好ましくは約10分以内、より好ましくは約1分以内の間隔内で投与される。
【0073】
本明細書に使用されるとき、「個別に」という用語は、組合せの有効成分が1日の別々の時間に使用又は投与される、本発明の組合せを指す。好ましくは、投与が個別であるとき、有効成分は約1時間~15時間、好ましくは約1時間~約8時間、より好ましくは約1時間~約5時間の間隔で投与される。
【0074】
[シネオール]
本明細書に使用されるとき、「シネオール」、「ユーカリプトール」又は「1、8-シネオール」という用語は、10個の炭素原子を含むモノテルペングループ、すなわちテルペノイドに属する環状エーテル(CAS番号470-82-6)を指す。シネオールは、特に、特定のユーカリ(例えばユーカリプタス・ポリブラクテア(Eucalyptus polybractea))の精油、ローズマリー(例えばマンネンロウ(Rosmarinus officinalis))、ヨモギ(例えばニガヨモギ(Artemisiavulgaris))に加え、アブサン、ローリエ、セージ、バジルやクスノキの葉(クスノキ(Cinnamomumcamphora))の精油から抽出することができる、天然、無色の有機化合物である。シネオールは、任意の薬学的に許容される形態で使用することができる。本明細書に使用されるとき、「薬学的に許容される」という用語は、医薬の投与に適する分子、化合物、又は組成物を指す。シネオールは、好ましくは精製形態で使用される。精製形態では、シネオールは液体である。
【0075】
[アモキシシリン]
アモキシシリン(CAS番号26787-78-0)は、現在のところ感受性病原体に起因する細菌感染症の処置において言及される、アミノペニシリンファミリーの殺菌性β-ラクタム系抗生物質である。β-ラクタムは、ペニシリン誘導体、セファロスポリン、モノバクタム、及びカルバペネムを含む大きなクラスの抗生物質である。β-ラクタムは、その分子構造におけるβ-ラクタム核の存在によって特徴づけられ、これがその殺菌力を与える。
【0076】
本発明の製剤又は組合せにおいて、アモキシシリンは任意の薬学的に許容される形態であることができる。つまり、アモキシシリンは、薬学的に許容される塩、特にナトリウム塩若しくはカリウム塩の形態、無水若しくは水和の形態、好ましくは三水和物の形態、又はそれらの形態の混合物であることができる。好ましい実施形態において、本発明の製剤又は組合せは、アモキシシリン三水和物を含む。
【0077】
[薬学的に許容される油]
本発明の医薬製剤はまた、薬学的に許容される油も含む。本明細書に使用されるとき、「油」という用語は、室温で液体であるとともに水不混和性である脂肪性物質から構成される相を指す。
【0078】
本発明の製剤に使用される油は、任意の薬学的に許容される油、すなわちその毒性学的データが個体への経口投与に適合する任意の油である。油は、好ましくは、動物油、鉱物油、植物油、及び合成油、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0079】
好ましくは、組合せに使用される油は精油ではない。本明細書に使用されるとき、「精油」という用語は、植物の揮発性芳香族(芳香性)化合物の濃縮した疎水性の液体を指す。精油は、機械的抽出、コールドプレス、揮発性溶剤、超臨界CO、蒸気エントレインメント又は乾燥蒸留法によって得られる。
【0080】
油は、その吸着特性のため本発明の製剤に使用されることができる。本明細書に使用されるとき、「吸着剤」という用語は、医薬製剤において、例えばシネオール分子などの液体分子を例えば粉末状担体などの固体担体に固定することができる賦形剤を指す。
【0081】
特定の実施形態において、本発明の製剤は鉱物油を含む。鉱物油は、石炭、石油、又は特定の瀝青質片岩の蒸留によって得られる。鉱物油は、特に炭化水素、アルカン、及びパラフィンを含む。特に、鉱物油は、精製パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、セレシン、ペトロラタム、及びそれらの混合物からなる群から選択されることができる。
【0082】
他の特定の実施形態において、本発明の製剤は合成油を含む。特に、合成油は、シリコン油、合成ワックス、合成モノグリセリド、合成ジグリセリド、及び合成トリグリセリド、例えばカプリル酸トリグリセリド及びカプリン酸トリグリセリド、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることができる。
【0083】
さらに他の特定の実施形態において、本発明の製剤は動物油を含む。この動物油は、例えば、ミンク油、マッコウ油、鯨油、アザラシ油、エミュー油、牛脚油、魚油、特にアンチョビ油、サーディン油、カペリン油、ニシン油、サーモン油、スプラット油、タラ油、ブルーホワイティング油、ピルチャード油、マグロ油、サメ油、及びそれらの混合物からなる群から選択されることができる。
【0084】
好ましい実施形態において、本発明の製剤は植物油を含む。使用することのできる植物油の例は、小麦胚芽油、コーン油、ヒマワリ油、シア油、ヒマシ油、スイートアーモンド油、マガダミア油、アンズ油、大豆油、綿油、アルファルファ油、ポピーシード油、パンプキンシード油、ゴマ油、マローシード油、アボカド油、ヘーゼルナッツ油、グレープシード油、ブラックカラントシード油、月見草油、キビ油、大麦油、キノア油、オリーブ油、落花性油、ライ麦油、ベニバナ油、キャンドルナッツ油、パッションフラワー油、マスクローズ油、ココナッツ油、アルガン油、ナタネ油、ココナッツ核油、アマニ油、クルミ油、カシューナッツ油、マルゴサ油、ピスタチオ油、米油、カメリナ油、サチャインチ油、ボラージ油、ヘンプ油、エンドウ豆油、ホホバ油、ニーム油、ブラッククミン油、エゴマ油、及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0085】
最も特に好ましい実施形態において、本発明の製剤に含まれる薬学的に許容される油は落花性油である。
【0086】
[β-ラクタマーゼ阻害剤]
本発明の医薬製剤はまた、1つ以上のβ-ラクタマーゼ阻害剤も含むことができる。これらの阻害剤は、様々な方法でβ-ラクタマーゼの活性を抑制し、例えば、特にクラブラン酸やスルバクタムの場合のように、これらの酵素と不可逆的に結合することで自殺基質として作用して抑制する。
【0087】
β-ラクタマーゼ阻害剤は、任意の薬学的に許容されるβ-ラクタマーゼ阻害剤であり得る。この阻害剤は、好ましくは、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、アズトレオナム、アビバクタム、薬学的に許容されるそれらの塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0088】
好ましい実施形態において、本発明の製剤はクラブラン酸を含む。クラブラン酸(CAS番号58001-44-8)は、一般にβ-ラクタム系抗生物質、特にアモキシシリンと組み合わせて使用される。
【0089】
本発明の製剤において、クラブラン酸は、任意の薬学的に許容される形態、好ましくは薬学的に許容される塩の形態、特にクラブラン酸のカリウム塩の形態であるとよい。
【0090】
[医薬製剤]
第1の態様において、本発明は、シネオールと、アモキシシリンと、薬学的に許容される油とを含む、又は実質的にそれらからなる粉末形態の医薬製剤に関する。
【0091】
本明細書に使用されるとき、「粉末」という用語は物質の細分された状態を指し、小さい粒子状の固体状態である。
【0092】
好ましくは、粉末粒子は、約5mm以下、より好ましくは2.5mm以下、最も特に好ましくは1.25mm以下の直径を有する。
【0093】
本発明の医薬製剤の粉末は好ましくは乾燥粉末である。本明細書に使用されるとき、「乾燥粉末」という用語は、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下の含水量を有する粉末を指す。
【0094】
本発明の医薬製剤は、好ましくは、特に不純物及び/又は微生物学的特性について欧州薬局方(第8版)の要件を満たすものである。
【0095】
特に、本発明の医薬製剤の粉末に存在する細菌量は、好ましくは粉末のグラムあたり10000CFU(コロニー形成単位(colony-forming units))未満、好ましくは粉末のグラムあたり1000CFU未満、最も特に好ましくは粉末のグラムあたり100CFU未満である。好ましくは、本発明の医薬製剤の粉末はいずれの大腸菌も含まない。他の病原体に関して、真菌量及び酵母量は、好ましくは粉末のグラムあたり1000CFU未満、好ましくは粉末のグラムあたり100CFU未満、最も特に好ましくは粉末のグラムあたり50CFU未満である。
【0096】
本発明の医薬製剤は、上述で規定するような、シネオールとアモキシシリンと薬学的に許容される油とを含む、又は実質的にそれらからなる。
【0097】
好ましくは、アモキシシリンとシネオールとは、以下の実施例で示すように、治療作用及び/又は抗菌作用、好ましくは相乗作用を得るのに十分な用量の投与を可能にする濃度で本発明の製剤に存在する。そうした作用を得るために、アモキシシリンとシネオールとは治療有効量又は治療量未満量で投与することができる。
【0098】
好ましい実施形態において、シネオールとアモキシシリンとは治療有効量で投与される。
【0099】
他の好ましい実施形態において、アモキシシリンは治療有効量で投与され、シネオールは治療量未満量で投与される。
【0100】
さらに他の好ましい実施形態において、アモキシシリンは治療量未満量で投与され、シネオールは治療有効量で投与される。
【0101】
さらに他の好ましい実施形態において、アモキシシリンとシネオールとは治療量未満量で投与される。
【0102】
好ましくは、油は、製剤の粉末にシネオールを吸着させることを可能にするのに十分な濃度で本発明の製剤に存在する。
【0103】
一実施形態において、本発明の製剤は、粉末のグラムあたり約5mg~約100mg、好ましくは約10mg~約50mg、より好ましくは約20mg~約40mgのシネオール、及び/又は、粉末のグラムあたり約20mg~約500mg、好ましくは約50mg~約300mg、より好ましくは約150mg~約200mgのアモキシシリン、及び/又は、粉末のグラムあたり約2mg~約50mg、好ましくは約10mg~約25mg、より好ましくは約15mg~約20mgの油を含む、又は実質的にそれらからなる。
【0104】
好ましくは、本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり約5mg~約100mgのシネオールと、約20mg~約500mgのアモキシシリンと、約2mg~約50mgの油とを含む、又は実質的にそれらからなる。
【0105】
より好ましい態様では、本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり約10mg~約50mgのシネオールと、約50mg~約300mgのアモキシシリンと、約10mg~約25mgの油とを含む、又は実質的にそれらからなる。
【0106】
最も特に好ましくは、本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり約20mg~約40mg、好ましくは約33mgのシネオールと、粉末のグラムあたり約150mg~約200mg、好ましくは約167mgのアモキシシリンと、粉末のグラムあたり約15mg~約20mg、好ましくは約17mgの油とを含む、又は実質的にそれらからなる。
【0107】
好ましい実施形態において、本発明の医薬製剤は、上述で規定するような、シネオールとアモキシシリンと薬学的に許容される油とβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む、又は実質的にそれらからなる。
【0108】
好ましくは、β-ラクタマーゼ阻害剤は、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、及びアズトレオナムから選択される。より好ましくは、β-ラクタマーゼ阻害剤はクラブラン酸である。
【0109】
このように、本発明の医薬製剤は、上述のような量のシネオールとアモキシシリンと薬学的に許容される油と、治療有効量又は治療量未満量での投与を可能にするのに十分な濃度で存在するβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む、又は実質的にそれらからなることができる。
【0110】
一実施形態において、本発明の医薬製剤は、上述のような量のシネオールとアモキシシリンと薬学的に許容される油と、粉末のグラムあたり約1mg~約100mg、好ましくは約5mg~約50mg、より好ましくは約15mg~約25mg、最も特に好ましくは約20.8mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、又は実質的にそれらからなる。
【0111】
他の特定の実施形態において、本発明の医薬製剤は、シネオールの量がアモキシシリンのグラムあたり約0.02mg~約0.5mg、好ましくは約0.1mg~約0.3mgのシネオールであり、より好ましくはシネオールの量がアモキシシリンのグラムあたり約0.2mgのシネオールであり、及び/又は、油の量がアモキシシリンのグラムあたり約0.01mg~約0.5mg、好ましくは約0.05mg~約0.2mgの油であり、より好ましくは油の量がアモキシシリンのグラムあたり約0.1mgの油である、シネオールとアモキシシリンと薬学的に許容される油と含む、又は実質的にそれらからなる。好ましくは、本発明の医薬製剤はまた、β-ラクタマーゼ阻害剤の量がアモキシシリンのグラムあたり約0.01mg~約0.5mg、好ましくは約0.1mg~約0.2mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤であり、より好ましくはβ-ラクタマーゼ阻害剤の量がアモキシシリンのグラムあたり約0.125mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤である、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸も含む。
【0112】
特定の実施形態において、アモキシシリン/シネオールの質量比は2~8、好ましくは3~7、特により好ましくは4~6である。好ましい実施形態において、アモキシシリン/シネオールの質量比は約5である。
【0113】
特定の実施形態において、アモキシシリン/β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸の質量比は5~11、好ましくは6~10、特により好ましくは7~9である。好ましい実施形態において、アモキシシリン/β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸の質量比は約8である。
【0114】
特定の実施形態において、アモキシシリン/油の質量比は5~15、好ましくは7~13、特により好ましくは8~12である。好ましい実施形態において、アモキシシリン/シネオールの質量比は約10である。
【0115】
特定の実施形態において、シネオール/油の質量比は0.1~5、好ましくは0.5~4、特により好ましくは1~3である。好ましい実施形態において、シネオール/油の質量比は約2である。
【0116】
本発明の医薬製剤はまた、少なくとも1つの他の有効成分も含むことができる。
【0117】
このように、特定の実施形態において、本発明の医薬製剤は、上述で規定するようなシネオールとアモキシシリンと薬学的に許容される油と、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸と、他の有効成分とを含む、又は実質的にそれらからなる。好ましくは、本発明の製剤のさらなる有効成分は、他の抗生物質、特にβ-ラクタム系抗生物質、及び/又は他のβ-ラクタマーゼ阻害剤、及び/又は抗真菌剤、及び/又は抗寄生虫剤、及び/又は鎮痛剤である。
【0118】
本発明の医薬製剤は、上述のような量の、シネオールとアモキシシリンと薬学的に許容される油と、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸と、治療有効量又は治療量未満量の投与を可能にするのに十分な濃度で存在する他の有効成分とを含む、又は実質的にそれらからなることができる。
【0119】
[賦形剤]
さらに、本発明の医薬製剤は、薬学的に許容される油に加えて少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体を含むことができる。
【0120】
本発明の製剤のこの薬学的に許容される賦形剤又は担体は、好ましくは、甘味料、香料、固化防止剤、潤滑剤、崩壊剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0121】
このように、特定の実施形態において、本発明の医薬製剤はさらに少なくとも1つの崩壊剤を含む。
【0122】
本明細書に使用されるとき、崩壊剤という用語は、崩壊、すなわち、液体媒体、好ましくは水性媒体の医薬製剤に存在する分子の分離と、その均質な懸濁とを向上させることのできる賦形剤を指す。
【0123】
好ましくは、崩壊剤は、結晶セルロース、架橋カルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、及び架橋カルボキシメチルセルロースからなる群から選択される。
【0124】
本明細書に使用されるとき、「架橋カルボキシメチルセルロース」と「クロスカルメロース」という用語は同等であり、互換的に使用することができる。
【0125】
他の好ましい実施形態において、本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり約10mg~約1000mg、好ましくは約100mg~約600mg、より好ましくは約450mg~約550mg、例えば約513.7mgの崩壊剤を含む。
【0126】
特に、製剤は、好ましくは約20μm~約200μmの直径、より好ましくは約50μm~約100μmの直径を有する粒子からなる粉末の形態の結晶セルロースを含むことができる。特に、結晶セルロースは、Avicel(登録商標)、Emcoceln(登録商標)、及びVitacel(登録商標)タイプの結晶セルロース、又はそれらの混合物から選択され、好ましくは結晶セルロースは、AvicelのPH101、102、103、104、112、113、301及び302結晶セルロースから選択され、最も特に好ましくは結晶セルロースはAvicelのPH112タイプのものである。
【0127】
このように、特定の実施形態において、本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり約100mg~約800mg、好ましくは約300mg~約500mg、より好ましくは約400mg~約420mg、例えば約413.7mgの結晶セルロースを含む。
【0128】
あるいは、製剤にはクロスカルメロースを含むことができる。特に、クロスカルメロースは、36pm未満の平均直径を有する粒子から構成された粉末の形態であってもよい。好ましくは、クロスカルメロースはクロスカルメロースナトリウムである。
【0129】
他の特定の実施形態において、本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり約10mg~約250mg、好ましくは約50mg~約150mg、より好ましくは約80mg~約120mg、例えば約100mgのクロスカルメロースを含む。
【0130】
特に好ましい実施形態において、本発明の医薬製剤は、上述で規定するような、結晶セルロースとクロスカルメロースとを含む。このように、本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり約100mg~約800mg、好ましくは約300mg~約500mg、より好ましくは約400mg~約420mg、例えば約413.7mgの結晶セルロース、及び/又は粉末のグラムあたり約10mg~約250mg、好ましくは約50mg~約150mg、より好ましくは約80mg~約120mg、例えば約100mgのクロスカルメロースを含むことができる。
【0131】
また、本発明の医薬製剤は、固化防止剤タイプの少なくとも1つの賦形剤も含むことができる。
【0132】
本明細書に使用されるとき、「固化防止剤」という用語は、粉末製品において粒子の凝固を限定的なものとしてその流動性を確保する賦形剤を指す。
【0133】
好ましくは、固化防止剤は、タルク、シリカ及びその誘導体、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、フェロシアン化ナトリウム、フェロシアン化カリウム、フェロシアン化カルシウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0134】
より好ましくは、固化防止剤は、シリカ及びその誘導体、特にシリカ、コロイダルシリカ、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸カリウム、アルミノケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0135】
最も特に好ましくは、固化防止剤はシリカ、好ましくは合成非晶質シリカ、特にsyloid(登録商標)Al-1 FPである。
【0136】
好ましい実施形態において、本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり20mg~約500mg、好ましくは約50mg~約300mg、より好ましくは約150mg~約200mg、例えば約180mgの固化防止剤、好ましくはシリカを含む。
【0137】
また、本発明の医薬製剤は、潤滑剤タイプの少なくとも1つの賦形剤も含むことができる。
【0138】
本明細書に使用されるとき、「潤滑剤」という用語は、特にその潤滑促進、非粘着、及び減摩作用の有効性によって、粉末を製造するステップを容易にすることを意図した賦形剤を指す。
【0139】
好ましくは、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、又はそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0140】
好ましい実施形態において、本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり約1mg~約40mg、好ましくは約2mg~約15mg、より好ましくは約4mg~約10mg、例えば約6mgの潤滑剤、好ましくはステアリン酸マグネシウムを含む。
【0141】
また、本発明の医薬製剤は、甘味料タイプの少なくとも1つの賦形剤も含むことができる。
【0142】
本明細書に使用されるとき、「甘味料」という用語は、甘い食味を与えることで医薬製剤の食味を変化させることを意図した賦形剤を指す。
【0143】
好ましくは、甘味料は、アセスルファムカリウム(E950)、アリターム(E956)、アスパルテーム(E951)、シクラメート(E952)、ネオテーム、サッカリン(E954)、アスパルテーム-アセスルファム塩(E962)、スクラロース、ソーマチン、ポリオール、ブラゼイン、クルクリン、グリチルリジン、加水分解水添デンプン(hydrogenated starch hydrolyzate)、マビンリン、ミラクリン、モネリン、ペンタジン、ステビア、タガトース、トレハロース、イソマルツロース、エリスリトール、及びそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、甘味料はアスパルテームである。
【0144】
好ましい実施形態において、本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり約1mg~約60mg、好ましくは約3mg~約20mg、より好ましくは本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり約8mg~約15mg、例えば約12mgの甘味料、好ましくはアスパルテームを含む。
【0145】
また、本発明の医薬製剤は、香料タイプの少なくとも1つの賦形剤も含むことができる。
【0146】
本明細書に使用されるとき、「香料」という用語は、風味を与えることで医薬製剤の食味を変化させることを意図した賦形剤を指す。
【0147】
好ましくは、香料は、イチゴ、ラズベリー、チェリー、バナナ、レモン、オレンジ、ピーチ、リンゴ、キャラメル味、又はそれらの混合からなる群より選択される。より好ましくは、香料はレモン、イチゴ、及びピーチ味の混合である。
【0148】
好ましい実施形態において、本発明の医薬製剤は、粉末のグラムあたり約1mg~約100mg、好ましくは約10mg~約50mg、より好ましくは約20mg~約40mg、例えば約30mgの香料を含む。
【0149】
微生物学的汚染のリスクを抑止するため、本発明の医薬製剤はまた、保存剤も含むことができる。
【0150】
本発明の製剤に使用することができる保存剤は、安息香酸、及び安息香酸ナトリウムなどのそのナトリウム塩又はカリウム塩、メチルパラベン、プロピルパラベン、又はブチルパラベンなどのパラベン、ソルビン酸、及びソルビン酸カリウムなどのそのナトリウム塩又はカリウム塩、塩化ベンザルコニウムなどの四級アンモニウム、フェニル水銀塩(アセテート、ボレート、若しくはナイトレート)又はチオメルサールなどの水銀誘導体、並びにそれらの組合せを含むが、それらに限定されない。
【0151】
また、本発明の医薬製剤は、pH緩衝剤タイプの賦形剤、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、及びコハク酸などの、それらの種々の酸及び塩なども含むことができる。
【0152】
また、製剤は、特に子供に対する許容性を高めるために、着色剤も含むことができる。好ましくは、着色剤は風味の信憑性を高めるために使用される(例えばイチゴ味に対してピンク色の着色剤)。
【0153】
特に好ましい実施形態において、本発明の医薬製剤は、いずれの界面活性剤も含まない。「界面活性剤」(又は「サーファクタント」)という用語は、本明細書に使用されるとき、界面活性特性を有する両新媒性分子を指す。医薬製剤に一般に使用される界面活性剤は、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デオキシコレート及びコレートなどのイオン性界面活性剤、トリトンX-100、n-ドデシルβ-D-マルトピラノシド(DDM)、ジギトニン、Tween20及びTween80などの非イオン性界面活性剤、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)又は3-[ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナートなどの両性界面活性剤である。
【0154】
他の好ましい実施形態において、本発明の医薬製剤は、シネオールとアモキシシリンと薬学的に許容される油と、上述で規定するような、少なくとも甘味料、香料、固化防止剤、潤滑剤、及び/又は崩壊剤と、任意的に上述で規定するようなβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、又は実質的にそれらからなる、又はそれらからなる粉末の形態である。
【0155】
好ましくは、本発明の医薬製剤は、上述の量のシネオールとアモキシシリンと油と、粉末のグラムあたり約1mg~約60mgの甘味料、好ましくはアスパルテーム、及び/又は約1mg~約60mgの香料、及び/又は約20mg~約500mgの固化防止剤、好ましくはシリカ、及び/又は約1mg~約40mgの潤滑剤、好ましくはステアリン酸マグネシウム、及び/又は約10mg~約1000mgの崩壊剤、好ましくは結晶セルロースとクロスカルメロースとの混合物と、任意的に上述の量のβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、又は実質的にそれらからなる、又はそれらからなる粉末の形態である。
【0156】
より好ましくは、本発明の医薬製剤は、上述の量のシネオールとアモキシシリンと油と、粉末のグラムあたり約3mg~約20mgの甘味料、好ましくはアスパルテーム、及び/又は約10mg~約50mgの香料、及び/又は約50mg~約300mgの固化防止剤、好ましくはシリカ、及び/又は約2mg~約15mgの潤滑剤、好ましくはステアリン酸マグネシウム、及び/又は約100mg~約600mgの崩壊剤、好ましくは結晶セルロースとクロスカルメロースとの混合物と、任意的に上述の量のβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、又は実質的にそれらからなる、又はそれらからなる粉末の形態である。
【0157】
最も特に好ましくは、本発明の医薬製剤は、上述の量のシネオールとアモキシシリンと油と、粉末のグラムあたり約8mg~約15mg、例えば約12mgの甘味料、好ましくはアスパルテーム、並びに/又は約20mg~約40mg、例えば約30mgの香料、並びに/又は約150mg~約200mg、例えば約180mgの固化防止剤、好ましくはシリカ、並びに/又は約4mg~約8mg、例えば6mgの潤滑剤、好ましくはステアリン酸マグネシウム、並びに/又は450mg~約550mg、例えば約513.7mgの崩壊剤、例えば約100mgのクロスカルメロース及び約413.7mgの結晶セルロースと、任意的に上述の量のβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、又は実質的にそれらからなる、又はそれらからなる粉末の形態である。
【0158】
[本発明の製剤の包装、安定性、及び投与経路]
本発明者は、本発明の医薬製剤が特に安定的であることを示した。製品の安定性は、種々の環境要因、特に温度と湿度と(ICH標準)の影響下で、その製品量が所定の時間間隔で変化しないという点で特性評価される。変化がないことは、好ましくは初期値に対して5%を超えて変化しない、アモキシシリン、シネオール、及び任意的にクラブラン酸の最終パーセンテージにおいて観察することができる。
【0159】
このように、特定の実施形態において、本発明の医薬製剤は、約25℃の温度且つ少なくとも約60%の相対湿度で、少なくとも18か月間、好ましくは少なくとも24か月間、より好ましくは少なくとも36か月間安定的である。
【0160】
他の特定の実施形態において、本発明の医薬製剤は、約30℃の温度且つ少なくとも約65%の相対湿度で、少なくとも6か月間、好ましくは少なくとも12か月間、より好ましくは少なくとも24か月間安定的である。
【0161】
さらに他の特定の実施形態において、本発明の医薬製剤は、約40℃の温度且つ少なくとも約75%の相対湿度で、少なくとも3か月間、好ましくは少なくとも6か月間、より好ましくは少なくとも12か月間安定的である。
【0162】
当業者には既知の気候室は、本発明の医薬製剤に上述の温度及び相対湿度条件を提供することを可能にする。
【0163】
本明細書に使用されるとき、「相対湿度」という用語は、同じ温度における飽和蒸気圧(又は蒸気圧)に対する空気に含まれる水蒸気の分圧の比率を指す。
【0164】
本発明の医薬製剤は経口投与を意図している。
【0165】
好ましくは、医薬製剤は、水性溶媒に懸濁した後、混合してから投与され、好ましくは該水性溶媒は水である。特に好ましくは、医薬製剤は用時に溶解される。本発明の医薬製剤は、水性媒体に懸濁後、約20℃以下の温度且つ少なくとも約15%以下の相対湿度で、少なくとも48時間、好ましくは少なくとも72時間、より好ましくは少なくとも96時間安定的である。
【0166】
本発明の医薬製剤は、水性溶媒、好ましくは水に懸濁後、わずかに酸性のpHを有する溶液を構成することができる。好ましくは、水性溶媒に本発明の医薬製剤を懸濁して構成した溶液のpHは、pH約5~約7である。
【0167】
本発明の医薬製剤は、単一用量容器又は複数用量容器、好ましくは単一用量容器に包装することができる。
【0168】
好ましい実施形態において、本発明の製剤は、約1g~約150gの粉末、より好ましくは約1g~約50gの粉末、さらに好ましくは約1g~約10gの粉末、特により好ましくは約3gの粉末を含む単一用量容器に包装される。
【0169】
医薬製剤を単一用量容器に包装するとき、該単一用量容器は二次的に箱に包装することができる。箱には、例えば、3~31個の単一用量容器、好ましくは5~21個の単一用量容器、より好ましくは7~14個の単一用量容器を含むことができる。
【0170】
他の実施形態において、本発明の医薬溶液は複数用量容器に包装される。該容器は、例えば、約10g~約500gの粉末、好ましくは約20g~約200gの粉末、より好ましくは約30g~約100gの粉末、最も特に好ましくは約50mgの粉末を含むことができる。
【0171】
医薬製剤を複数用量容器に包装するとき、該容器は、任意的に、所定量の粉末、好ましくは約1mg~約30mgの粉末、より好ましくは約2mg~約20mgの粉末、より好ましくは約3mg~12mgの粉末を取るための例えばスプーンなどの用量器を添えて、二次的に箱に包装することができる。特に、用量器は、約3g、約6g、約9g、約12g、約15g、及び/又は約18gの粉末を取ることができる。
【0172】
[シネオールとアモキシシリンとの組合せ]
第2の態様において、本発明はまた、個体の細菌感染症の処置に使用されるシネオールとアモキシシリンとを含む、又は実質的にそれらからなる組成物にも関する。
【0173】
好ましくは、本発明の組合せにおいて、アモキシシリンとシネオールとは、以下の実施例で示すような、治療作用及び/又は抗菌作用、好ましくは相乗作用を得ることを可能にする用量で投与される。そうした作用を得るために、アモキシシリン及び/又はシネオールは治療有効量又は治療量未満量で投与することができる。
【0174】
好ましい実施形態において、シネオールとアモキシシリンとは治療有効量で投与される。
【0175】
他の好ましい実施形態において、アモキシシリンは治療有効量で投与され、シネオールは治療量未満量で投与される。
【0176】
さらに他の好ましい実施形態において、アモキシシリンは治療量未満量で投与され、シネオールは治療有効量で投与される。
【0177】
さらに他の好ましい実施形態において、アモキシシリンとシネオールとは治療量未満量で投与される。
【0178】
一実施形態において、シネオールは、1日あたり個体の体重の約0.1mg/kg/日~約50mg/kg/日、好ましくは約0.5mg/kg/日~約20mg/kg/日、最も特に好ましくは約1mg/kg/日~約10mg/kg/日の用量で個体に投与され、及び/又はアモキシシリンは、1日あたり個体の体重の約5mg/kg/日~約200mg/kg/日、好ましくは約10mg/kg/日~約100mg/kg/日、最も特に好ましくは約15mg/kg/日~約50mg/kg/日の用量で個体に投与されることできる。
【0179】
好ましくは、本発明の組合せのシネオールは、1日あたり個体の体重の約0.1mg/kg/日~約50mg/kg/日の用量で個体に投与され、本発明の組合せのアモキシシリンは、1日あたり個体の体重の約5mg/kg/日~約200mg/kg/日の用量で個体に投与される。
【0180】
より好ましくは、本発明の組合せのシネオールは、1日あたり個体の体重の約0.5mg/kg/日~約20mg/kg/日の用量で個体に投与され、本発明の組合せのアモキシシリンは、1日あたり個体の体重の約10mg/kg/日~約100mg/kg/日の用量で個体に投与される。
【0181】
最も特に好ましくは、本発明の組合せのシネオールは、1日あたり個体の体重の約1mg/kg/日~約10mg/kg/日の用量で個体に投与され、本発明の組合せのアモキシシリンは、1日あたり個体の体重の約15mg/kg/日~約50mg/kg/日の用量で個体に投与される。
【0182】
好ましい実施形態において、本発明の組合せは、個体の細菌感染症の処置に使用される、シネオールと、アモキシシリンと、好ましくはクラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、アズトレオナム、及びそれらの混合物から選択されるβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む、又は実質的にそれらからなる。好ましくは、β-ラクタマーゼ阻害剤はクラブラン酸である。
【0183】
このように、本発明の組合せのシネオールとアモキシシリンとは、上述のような量で個体に投与することができ、β-ラクタマーゼ阻害剤は、治療有効量又は治療量未満量で個体に投与することができる。
【0184】
特定の実施形態において、本発明の組合せのシネオールとアモキシシリンとは、上述のような量で個体に投与され、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸は、1日あたり個体の体重の約0.1mg/kg/日~約50mg/kg/日、好ましくは約0.5mg/kg/日~約20mg/kg/日、最も特に好ましくは約1mg/kg/日~約10mg/kg/日の用量で個体に投与される。
【0185】
他の特定の実施形態において、本発明の組合せは、シネオールとアモキシシリンとを含む、又は実質的にそれらからなり、シネオールの量はアモキシシリンのグラムあたり約0.02mg~約0.5mg、好ましくは約0.1mg~約0.3mgのシネオールであり、より好ましくはシネオールの量はアモキシシリンのグラムあたり約0.2mgのシネオールである。好ましくは、本発明の組合せはまた、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸も含み、β-ラクタマーゼ阻害剤の量はアモキシシリンのグラムあたり約0.01mg~約0.5mg、好ましくは約0.1mg~約0.2mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤であり、より好ましくはβ-ラクタマーゼ阻害剤の量がアモキシシリンのグラムあたり約0.125mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤である。
【0186】
本発明の組合せは、少なくとも1つの他の有効成分をさらに含むことができる。好ましくは、本発明の組合せのさらなる有効成分は、他の抗生物質、特にβ-ラクタム系抗生物質、及び/又は他のβ-ラクタマーゼ阻害剤、及び/又は抗真菌剤、及び/又は抗寄生虫剤、及び/又は鎮痛剤である。
【0187】
このように、本発明の組合せのシネオールと、アモキシシリンと、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とは、上述のような量で投与することができ、他の有効成分は治療有効量又は治療量未満量で個体に投与することができる。
【0188】
[本発明の組合せの包装及び投与経路]
本発明の組合せの有効成分は、共に、連続的に、個別に、又はそれらの投与モードの混合で個体に投与することができる。
【0189】
本発明の組合せの有効成分は連続的に又は個別に投与され、その時間間隔は、好ましくはシネオールとアモキシシリンとの相乗作用により、所望の治療的作用が得られるように好ましくは選択される。
【0190】
好ましくは、本発明の組合せの有効成分は共に投与される。本発明の組合せの有効成分の投与を共に行うとき、好ましくは、組合せのすべての有効成分を含む単一製剤を投与することで行う。
【0191】
本発明の組合せが2つを超える有効成分を含むとき、特定の有効成分を共に投与することができ、特定の有効成分を連続的に投与することができ、及び/又は特定の有効成分を個別に投与することができる。例えば、本発明の組合せが3つの有効成分を含むとき、2つの有効成分を共に投与し、3つ目の有効成分を連続的に又は個別に、好ましくは連続的に投与することができる。
【0192】
特定の実施形態において、本発明の組合せは、好ましくはシネオールとアモキシシリンとを含む医薬組成物から、あるいは一方がシネオールを含み他方がアモキシシリンを含む2つの医薬組成物から、共に個体に投与されるシネオールとアモキシシリンとを含む。
【0193】
他の特定の実施形態において、本発明の組合せは、一方がシネオールを含み他方がアモキシシリンを含む2つの医薬組成物から、連続的に又は個別に、好ましくは連続的に個体に投与されるシネオールとアモキシシリンとを含む。
【0194】
さらに他の特定の実施形態において、本発明の組合せは、個体に共に投与されるシネオールと、アモキシシリンと、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む。シネオールとアモキシシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤とは、
(a) シネオールと、アモキシシリンと、β-ラクタマーゼ阻害剤とを含む医薬組成物、
(b) シネオールを含む医薬組成物、及びアモキシシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む医薬組成物、
(c) アモキシシリンを含む医薬組成物、及びシネオールとβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む医薬組成物、
(d) β-ラクタマーゼ阻害剤を含む医薬組成物、及びシネオールとアモキシシリンとを含む医薬組成物、
(e) シネオールを含む医薬組成物、アモキシシリンを含む医薬組成物、及びβ-ラクタマーゼ阻害剤を含む医薬組成物、から個体に共に投与することができる。
【0195】
さらに他の特定の実施形態において、本発明の組合せは、シネオールを含む医薬組成物と、アモキシシリンを含む医薬組成物と、β-ラクタマーゼ阻害剤を含む医薬組成物とから、連続的に又は個別に、好ましくは連続的に個体に投与されるシネオールと、アモキシシリンと、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む。
【0196】
さらに他の特定の実施形態において、本発明の組合せは、
(a) シネオールを含む医薬組成物、アモキシシリンを含む医薬組成物、及びβ-ラクタマーゼ阻害剤を含む医薬組成物、又は
(b) シネオールを含む医薬組成物、及びアモキシシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む医薬組成物から、
アモキシシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤とが個体に共に投与され、シネオールが個体に連続的に又は個別に、好ましくは連続的に投与される、シネオールと、アモキシシリンと、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む。
【0197】
さらに他の特定の実施形態において、本発明の組合せは、
(a) シネオールを含む医薬組成物、アモキシシリンを含む医薬組成物、及びβ-ラクタマーゼ阻害剤を含む医薬組成物、又は
(b) アモキシシリンを含む医薬組成物、及びシネオールとβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む医薬組成物から、
シネオールとβ-ラクタマーゼ阻害剤とが個体に共に投与され、アモキシシリンが個体に連続的に又は個別に、好ましくは連続的に投与される、シネオールと、アモキシシリンと、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む。
【0198】
さらに他の特定の実施形態において、本発明の組合せは、
(a) シネオールを含む医薬組成物、アモキシシリンを含む医薬組成物、及びβ-ラクタマーゼ阻害剤を含む医薬組成物、又は
(b) β-ラクタマーゼ阻害剤を含む医薬組成物、及びシネオールとアモキシシリンとを含む医薬組成物から、
アモキシシリンとシネオールとが個体に共に投与され、β-ラクタマーゼ阻害剤が個体に連続的に又は個別に、好ましくは連続的に投与される、シネオールと、アモキシシリンと、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む。
【0199】
好ましい実施形態において、アモキシシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とは、好ましくはアモキシシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む医薬組成物から、共に個体に投与される。
【0200】
他の好ましい実施形態において、シネオールと、アモキシシリンと、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とは、好ましくはシネオールと、アモキシシリンと、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む医薬組成物から、又はシネオールを含む医薬組成物及びアモキシシリンと任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む医薬組成物から、共に個体に投与される。
【0201】
さらに他の好ましい実施形態において、シネオールは、アモキシシリンに対して、及び/又は任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸に対して、連続的に又は個別に、好ましくは連続的に個体に投与される。
【0202】
本発明の組合せの有効成分は、同じ又は異なる経路で個体に投与することができる。投与経路は、一般に、使用される医薬製剤に対応したものである。本発明の組合せの有効成分は、好ましくは、非経口又は経腸、好ましくは経腸、より好ましくは経口又は経直腸で個体に投与される。特に好ましくは、本発明の組合せの有効成分は経口で個体に投与される。
【0203】
特定の実施形態において、アモキシシリンと任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とは経口で個体に投与され、シネオールは経直腸で個体に投与される。
【0204】
好ましい実施形態において、アモキシシリンとシネオールと任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とは経口で個体に投与される。
【0205】
本発明の組合せの有効成分、特にアモキシシリンと、シネオールと、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とは、好ましくは、非経口又は経腸の投与に適合し、より好ましくは経口又は経直腸の投与に適合し、最も特に好ましくは経口の投与に適合した任意の医薬製剤の形態で個体に投与することができる。
【0206】
このように、本発明の組合せの有効成分、特にアモキシシリンと、シネオールと、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とは、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、顆粒剤、粉末剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ポリマー剤、ナノ粒子剤、マイクロスフィア、坐剤、直腸用カプセル剤、浣腸剤、ゲル剤、泥膏剤、軟膏剤、クリーム剤、硬膏剤、頓服剤、注射剤、埋め込み剤、噴霧剤、又はエアロゾルの形態に製剤化されることができる。
【0207】
好ましい実施形態において、本発明の組合せの有効成分は、粉末の形態、好ましくは飲用に適した水性懸濁剤用粉末に製剤化される。
【0208】
特定の実施形態において、有効成分は坐剤又は直腸用カプセル剤の形態に製剤化される。
【0209】
他の特定の実施形態において、シネオールは、オイルの形態、又は坐剤若しくは直腸用カプセル剤の形態、好ましくはオイルカプセル化剤の形態に製剤化され、他の有効成分は粉末の形態、好ましくは飲用に適した水性懸濁剤用粉末に製剤化される。
【0210】
[個体の感染症状の処置]
他の態様において、本発明はまた、個体の感染症状の処置に使用される本発明の医薬製剤にも関する。また、本発明は、感染症状の処置を目的とした薬剤の調製のための本発明の医薬製剤にも関する。また、本発明は、投与を必要とする個体、特に感染症状のある個体に、本発明の製剤の治療有効量を投与することを含む処置方法にも関する。
【0211】
また、本発明は、個体の感染症状、好ましくは細菌感染症の処置に使用される本発明の組合せにも関する。また、本発明は、投与を必要とする個体、特に感染症状、好ましくは細菌感染症のある個体に、本発明の組合せ、好ましくはシネオールとアモキシシリンとクラブラン酸との組合せの治療有効量を投与することを含む処置方法にも関する。
【0212】
好ましくは、感染症状は細菌由来のものであり、より好ましくは感染症状は、抗生物質、特にβ-ラクタム系ファミリーの抗生物質に耐性のある1つ以上の細菌に起因するものである。好ましくは、「抗生物質耐性細菌」という用語は、場合によって抗生物質に感受性のない又はわずかに感受性のある細菌を指す。同様に、β-ラクタム系ファミリーの抗生物質に耐性のある細菌は、このファミリーの抗生物質に感受性がない又はわずかに感受性があるものである。ゆえに、β-ラクタム系ファミリーの抗生物質に耐性のある細菌による細菌感染症は、このファミリーの抗生物質で効果的に処置されない。
【0213】
好ましい実施形態において、感染症状はアモキシシリン耐性細菌に起因する。好ましくは、感染症状の原因である細菌は、アモキシシリンとクラブラン酸との組合せに少なくとも部分的に耐性があるものである。
【0214】
他の好ましい実施形態において、感染症状の原因である細菌は、β-ラクタマーゼ産生細菌である。β-ラクタマーゼは、その基質がβ-ラクタム系抗生物質である「活性セリン」不活性化酵素(クラスA、クラスB、及びクラスC)又は金属酵素(クラスB)である。狭域性β-ラクタマーゼは、多数の種々のβ-ラクタム系抗生物質、特にアモキシシリンを含むペニシリン、第1世代、第2世代、及び第3世代(例えばセフォタキシム、セフタジジム)及び第4世代(例えばセフェピム)のセファロスポリン、並びにモノバクタム(例えばアズトレオナム)を阻害することができる広域性β-ラクタマーゼ(BSBL)とは区別される。
【0215】
特に好ましい実施形態において、感染症状の原因である細菌は広域性β-ラクタマーゼ(BSBL)産生細菌である。特に、BSBL産生細菌はクラブラン酸に感受性のないものである。あるいは、細菌は、クラブラン酸で部分的に阻害されるのみであるBSBLを産生するものである。BSBL細菌は、ダブルディスクテスト、組合せディスク法、及びBSBL Eテストなどの当業者に既知のテストによって検出することができる。
【0216】
本発明の医薬製剤又は組合せで処置される細菌感染症は、膀胱炎、特に再発性急性膀胱炎、細菌性副鼻腔炎、特に急性上顎洞炎、耳炎、特に急性中耳炎、気管支炎、特に慢性気管支炎及び/又は急性気管支炎、気管支肺疾患、特に慢性気管支肺疾患及び/又は急性気管支肺疾患、腎盂腎炎、上部生殖管感染症、歯周炎、重度口腔感染症、特に膿瘍、蜂窩織炎及び蜂巣炎、動物の咬傷、骨及び関節の感染症、特に骨髄炎、心内膜炎、心膜炎、敗血症、並びに皮膚感染症からなる群から選択されることができる。好ましくは、該細菌感染症は、膀胱炎、より好ましくはβ-ラクタム系ファミリーの抗生物質に耐性のある膀胱炎、より好ましくはアモキシシリン耐性膀胱炎、最も特に好ましくはアモキシシリンとクラブラン酸との組合せに耐性のある膀胱炎である。
【0217】
「個体」及び「患者」という用語は同等であり、本発明の文脈において互換的に使用することができる。本明細書に使用されるとき、「個体」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物を指し、より好ましくは「個体」という用語はヒトを指す。
【0218】
したがって、特定の実施形態において、本発明の製剤又は組合せを投与する個体はヒトである。このように、個体は新生児、子供、若年者、成年者、又は高齢者であり得る。本明細書に使用されるとき、「新生児」という用語は、12か月未満、好ましくは6か月未満、より好ましくは3か月未満のヒトを指す。本発明において使用するとき、「子供」という用語は、1~12歳のヒト、好ましくは1~8歳のヒト、より好ましくは1~5歳のヒトを指す。本発明において使用するとき、「成年者」という用語は、12~60歳のヒト、好ましくは15~60歳のヒト、より好ましくは18~60歳のヒトを指す。本発明において使用するとき、「高齢者」という用語は、60歳以上のヒト、好ましくは65歳以上のヒト、より好ましくは70歳以上のヒトを指す。
【0219】
好ましい実施形態において、本発明の製剤又は組合せを投与する個体は成年のヒトである。
【0220】
獣医学的用途の分野において、本発明の個体は、非ヒト動物、好ましくはペット又は飼育動物、より好ましくはイヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ類、げっ歯動物、特にハムスターやモルモット、非ヒト霊長類、及び家禽類、好ましくは食用雌鶏(table hen)、産卵雌鶏、若雄鶏や、繁殖用雌鶏、ホロホロチョウ、シチメンチョウ、ウズラ、カモ、ガンや、ハトからなる群から選択される動物であってもよい。
【0221】
最も特に好ましい実施形態において、本発明は、ヒトにおけるβ-ラクタム系ファミリーの抗生物質に耐性のある膀胱炎の処置における本発明の製剤又は組合せに関する。
【0222】
[投与量]
個体の感染症状、好ましくは細菌感染症の処置に使用される本発明の医薬製剤又は組合せは、個体、その年齢、その健康状態、及び処置される感染症に対応して、単一用量(単一投与)、又は複数用量(複数投与)で投与することができる。本発明の医薬製剤又は組合せの複数用量(複数投与)は、投与されるとき、1日以上にわたってもよい。したがって、本発明の医薬製剤又は組合せは、処置における1投与日あたり単一用量(1回投与)を投与することができる。好ましくは、個体には、処置における1投与日あたり本発明の医薬製剤又は組合せの複数用量(複数投与)を投与する。より好ましくは、個体には、処置における1投与日あたり本発明の医薬製剤又は組合せの、好ましくは朝、昼、夜の、3用量(3回投与)を投与する。
【0223】
また、1投与日あたりに個体に投与される用量(又は投与)数は経時で変化し得る。つまり、処置における1投与日あたり個体に単一用量(単一投与)を投与する期間は、処置における1投与日あたり個体に複数用量(複数投与)、好ましくは朝、昼、夜にわたる3用量(3回投与)を投与する期間と交互であってもよい。特に、個体には、処置の第1日目に1用量(1回投与)、一般に「負荷用量」として言及される単一用量を投与した後、その後の日に、処置の1日あたり「維持用量」として言及される複数用量(複数投与)、好ましくは処置の1日あたり、好ましくは朝、昼、夜の、3維持用量(3回投与)を投与することができる。
【0224】
一般に、好ましくは単回の投与量摂取で処置の第1日目に個体に投与される負荷用量は、好ましくは維持用量以上である本発明の製剤の用量であり、より好ましくは、個体に処置の1日あたり少なくとも2維持用量を投与するとき負荷用量は2維持用量以上である。好ましくは、負荷用量は、約5g~約20g、より好ましくは約10g~約15gであり、最も特に好ましくは負荷用量は約12gである。好ましくは、維持用量は、約1g~約15g、より好ましくは約3g~約6gであり、最も特に好ましくは維持用量は約3g又は約6gである。
【0225】
本発明の医薬製剤又組合せは、毎日、2日に1回、又は週1回、好ましくは毎日投与することができる。製剤又は組合せの摂取の周期は種々のパラメータに応じたものであり、例えば、医薬製剤若しくは組合せ摂取の意図した全期間、個体の年齢、及び/又は予防若しくは処置される感染症、好ましくは細菌感染症の深刻度、に応じて当業者によって容易に決定されることができる。また、医薬製剤又は組合せの摂取(投与)の周期は、特定の個体において、特にその感染症の進行及び/又はその全体的な健康状態に応じて、経時で変化し得る。
【0226】
特に、本発明の医薬製剤又は組合せは、1日~約3か月、2か月、1か月、3週、2週、1週、5日、3日、2日の期間、好ましくは約2日~約21日の期間、より好ましくは約7日~約14日の期間、個体に投与することができる。特に好ましい実施形態において、本発明の製剤又は組合せは、約7日の期間個体に投与される。あるいは、本発明の医薬製剤又組合せは、感染症の存続期間にわたって投与することができる。尿路感染症の場合、本発明の製剤又は組合せは、個体から菌のない尿が得られるまで投与することができる。
【0227】
特定の実施形態において、本発明の医薬製剤又組合せは、例えば慢性細菌感染症の場合には、数か月間、任意的に数年間、投与することができる。
【0228】
本発明の医薬製剤は、処置における1日あたり、約1グラム~約150グラム、好ましくは約1グラム~約50グラム、より好ましくは約2グラム~約30グラム、最も特に好ましくは約3グラム~約20グラムの量で、個体に投与することができる。例えば、約9グラムの本発明の医薬製剤を、処置における1日あたりに個体に投与することができる。他の実施例において、約18グラムの本発明の製剤を、処置における1日あたりに個体に投与することができる。
【0229】
[シネオールとアモキシシリンとの医薬組成物]
また、本発明は他の態様において、シネオールと、アモキシシリンと、薬学的に許容される賦形剤又は担体と、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤とを含む、又は実質的にそれらからなる医薬組成物にも関する。
【0230】
好ましい実施形態において、β-ラクタマーゼ阻害剤は、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、及びアズトレオナムから選択され、好ましくはβ-ラクタマーゼ阻害剤はクラブラン酸である。
【0231】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、シネオールと、アモキシシリンと、任意的にβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸と、他の有効成分とを含む、又は実質的にそれらからなる。好ましくは、本発明の組成物のさらなる有効成分は、他の抗生物質、特にβ-ラクタム系抗生物質、及び/又は他のβ-ラクタマーゼ阻害剤、及び/又は抗真菌剤、及び/又は抗寄生虫剤、及び/又は鎮痛剤である。
【0232】
好ましくは、本発明の組成物は、以下の実施例で示すような、治療作用及び/又は抗菌作用、好ましくは相乗作用を得るのに十分な用量の投与を可能にする濃度で存在する有効成分、好ましくはアモキシシリンとシネオールとを含む、又は実質的にそれらからなる。そうした作用を得るために、アモキシシリンとシネオールとは治療有効量又は治療量未満量で投与することができる。
【0233】
好ましい実施形態において、シネオールとアモキシシリンとは治療有効量で投与される。
【0234】
他の好ましい実施形態において、アモキシシリンは治療有効量で投与され、シネオールは治療量未満量で投与される。
【0235】
さらに他の好ましい実施形態において、アモキシシリンは治療量未満量で投与され、シネオールは治療有効量で投与される。
【0236】
さらに他の好ましい実施形態において、アモキシシリンとシネオールとは治療量未満量で投与される。
【0237】
β-ラクタマーゼ阻害剤、及び/又はさらなる有効成分は、本発明の組成物に存在するとき、治療有効量又は治療量未満量で投与することができる。
【0238】
本発明の組成物は、組成物のグラムあたり約5mg~約100mg、好ましくは約10mg~約50mg、より好ましくは約20mg~約40mg、最も特に好ましくは約33mgのシネオール、及び/又は、組成物のグラムあたり約20mg~約500mg、好ましくは約50mg~約300mg、より好ましくは約150mg~約200mg、最も特に好ましくは約167mgのアモキシシリン、及び/又は、任意的に、組成物のグラムあたり約1mg~約100mg、好ましくは約5mg~約50mg、より好ましくは約15mg~約25mg、最も特に好ましくは約21mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む、又は実質的にそれらからなることができる。
【0239】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物のグラムあたり約5mg~約100mgのシネオールと、約20mg~約500mgのアモキシシリンと、約1mg~約100mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、又は実質的にそれらからなる。
【0240】
より好ましくは、本発明の組成物は、組成物のグラムあたり約10mg~約50mgのシネオールと、約50mg~約300mgのアモキシシリンと、任意的に約50mg~約50mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、又は実質的にそれらからなる。
【0241】
最も特に好ましくは、本発明の組成物は、組成物のグラムあたり約20mg~約40mg、好ましくは約33mgのシネオールと、約150mg~約200mg、好ましくは約167mgのアモキシシリンと、任意的に約15mg~約25mg、最も特に好ましくは約21mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、又は実質的にそれらからなる。
【0242】
本発明の組成物は、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、顆粒剤、粉末剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ポリマー剤、ナノ粒子剤、マイクロスフィア、坐剤、直腸用カプセル剤、浣腸剤、ゲル剤、泥膏剤、軟膏剤、クリーム剤、硬膏剤、頓服剤、注射剤、埋め込み剤、噴霧剤、又はエアロゾルの形態であってもよい。好ましくは、本発明の医薬組成物は、粉末剤、より具体的には飲用に適した懸濁剤用粉末剤の形態である。
【0243】
好ましくは、粉末の技術的特徴は、本発明の医薬製剤について前述したとおりである。
【0244】
本発明の組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体をさらに含む。当業者は、選択した医薬剤形に応じて組成物に必要とされる賦形剤を容易に決定することができる。
【0245】
実際には、本発明の組成物が粉末の形態である場合、本発明の組成物の薬学的に許容される賦形剤又は担体は、好ましくは、甘味料、香料、固化防止剤、潤滑剤、崩壊剤、吸着剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0246】
好ましくは、本発明の組成物が粉末の形態である場合、本発明の組成物は、少なくとも1つの甘味料、好ましくはアスパルテーム、香料、固化防止剤、好ましくはシリカ、潤滑剤、好ましくはステアリン酸マグネシウム、崩壊剤、好ましくはクロスカルメロースと結晶セルロースとの混合物、及び吸着剤、好ましくは油を含む。また、そうした組成物は、保存剤、着色剤、及び/又はpH緩衝剤を含むことができる。
【0247】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、シネオールと、アモキシシリンと、上述で規定するような少なくとも1つの甘味料、香料、固化防止剤、潤滑剤、崩壊剤、及び/又は吸着剤と、任意的に、上述で規定するようなβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、又は実質的にそれらからなる、又はそれらからなる粉末の形態である。
【0248】
好ましくは、本発明の組成物は、上述の量のシネオールとアモキシシリンと、粉末のグラムあたり約1mg~約60mgの甘味料、好ましくはアスパルテーム、及び/又は約1mg~約60mgの香料、及び/又は約20mg~約500mgの固化防止剤、好ましくはシリカ、及び/又は約1mg~約40mgの潤滑剤、好ましくはステアリン酸マグネシウム、及び/又は約10mg~約1000mgの崩壊剤、好ましくは結晶セルロースとクロスカルメロースとの混合物、及び/又は約2mg~約50mgの吸着剤、好ましくは油と、任意的に、上述の量のβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、又は実質的にそれらからなる、又はそれらからなる粉末である。
【0249】
本発明の組成物は、特に、吸着剤タイプの少なくとも1つの賦形剤を含むことができる。本明細書に使用されるとき、「吸着剤」という用語は、医薬組成物において、例えばシネオール分子などの液体分子を例えば粉末状担体などの固体担体に固定することができる賦形剤を指す。好ましくは、吸着剤は薬学的に許容される油である。薬学的に許容される油は上述のとおりのものである。
【0250】
他の特に好ましい実施形態において、本発明の組成物はいずれの界面活性剤も含まない。界面活性剤は賦形剤の章で前述されたとおりである。
【0251】
また、本発明は、個体の感染症状、好ましくは細菌感染症の処置に使用される本発明の医薬組成物にも関する。
【0252】
また、本発明は、投与を必要とする個体、特に感染症状、好ましくは細菌感染症に罹患した個体に、本発明の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む処置方法にも関する。
【0253】
また、個体における感染症状、好ましくは細菌感染症の処置における本発明の組合せ又は本発明の医薬製剤の使用について、並びにまたこの組合せ又は製剤の投与量について記載した実施形態及び定義は、この態様においても考慮される。
【0254】
好ましくは、感染症状は、抗生物質、好ましくはβ-ラクタム系ファミリーの抗生物質、より好ましくはアモキシシリン、最も特に好ましくはアモキシシリンとクラブラン酸との組合せに耐性のある1つ以上の細菌に起因するものである。
【0255】
最も特に好ましい実施形態において、本発明は、膀胱炎、特に、抗生物質、好ましくはβ-ラクタム系ファミリーの抗生物質、より好ましくはアモキシシリン、最も特に好ましくはアモキシシリンとクラブラン酸との組合せに耐性のある膀胱炎の処置に使用される本発明の医薬組成物に関する。
【0256】
[キット]
また、本発明は、他の態様において、
(a) シネオールを含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、及びアモキシシリンを含む、若しくは実質的にそれからなる薬学的に許容される組成物、
(b) シネオールを含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、及びアモキシシリンとβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、若しくは実質的にそれらからなる医薬組成物、
(c) アモキシシリンを含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、及びシネオールとβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸とを含む、若しくは実質的にそれらからなる医薬組成物、
(d) β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、及びシネオールとアモキシシリンとを含む、若しくは実質的にそれらからなる医薬組成物、又は
(e) シネオールを含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、アモキシシリンを含む、若しくは実質的にそれからなる医薬組成物、及びβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む、又は実質的にそれからなる医薬組成物、並びに、
(f) 任意的に、そうしたキットを使用するための指示を含む指導書を包含する、個体の感染症状、好ましくは細菌感染症を処置するためのキットにも関する。
【0257】
好ましくは、キットに含まれる各組成物は、個別の、受容器、容器、及び/又は包装に存在する。
【0258】
特定の実施形態において、本発明のキットにおける少なくとも1つの医薬組成物はまた、少なくとも1つの他の有効成分も含む。好ましくは、本発明のさらなる有効成分は、他の抗生物質、特にβ-ラクタム系抗生物質、及び/又は他のβ-ラクタマーゼ阻害剤、及び/又は抗真菌剤、及び/又は抗寄生虫剤、及び/又は鎮痛剤である。
【0259】
好ましくは、本発明のキットにおける組成物の有効成分、特にモキシシリンとシネオールとは、同じ組成物に存在するとき、又は異なる組成物に存在して、共に、連続的に、若しくは個別に使用されるとき、治療作用及び/又は抗菌作用、好ましくは相乗作用を得るのに十分な用量の投与を可能にする濃度で存在する。そうした作用を得るために、シネオールとアモキシシリンとは治療有効量又は治療量未満量で投与することができる。
【0260】
好ましい実施形態において、シネオールとアモキシシリンとは治療有効量で投与される。
【0261】
他の好ましい実施形態において、アモキシシリンは治療有効量で投与され、シネオールは治療量未満量で投与される。
【0262】
さらに他の好ましい実施形態において、アモキシシリンは治療量未満量で投与され、シネオールは治療有効量で投与される。
【0263】
さらに他の好ましい実施形態において、アモキシシリンとシネオールとは治療量未満量で投与される。
【0264】
β-ラクタマーゼ阻害剤、及び/又はさらなる有効成分は、本発明のキットの組成物に存在するとき、治療有効量又は治療量未満量で投与することができる。
【0265】
シネオールを含む本発明のキットの医薬組成物は、組成物のグラムあたり約5mg~約100mg、好ましくは約10mg~約50mg、より好ましくは約20mg~約40mg、最も特に好ましくは約33mgのシネオールを含むことができる。
【0266】
アモキシシリンを含む本発明のキットの医薬組成物は、組成物のグラムあたり約20mg~約500mg、好ましくは約50mg~約300mg、より好ましくは約150mg~約200mg、最も特に好ましくは約167mgのアモキシシリンを含むことができる。
【0267】
本発明のキットの医薬組成物がβ-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含むとき、該組成物は、組成物のグラムあたり約1mg~約100mg、好ましくは約5mg~約50mg、さらにより好ましくは約15mg~約25mg、最も特に好ましくは約21mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤を含むことができる。
【0268】
本発明のキットの組成物は、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、顆粒剤、粉末剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ポリマー剤、ナノ粒子剤、マイクロスフィア、坐剤、直腸用カプセル剤、浣腸剤、ゲル剤、泥膏剤、軟膏剤、クリーム剤、硬膏剤、頓服剤、注射剤、埋め込み剤、噴霧剤、又はエアロゾルの形態である。
【0269】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、粉末剤、坐剤、又は直腸用カプセル剤の形態、好ましくは粉末剤の形態、より好ましく乾燥粉末剤、より具体的には飲用に適した懸濁剤用乾燥粉末剤の形態である。
【0270】
シネオールが組成物の唯一の有効成分である場合、油の形態、特にオイルカプセル化剤であってもよい。
【0271】
本発明のキットの医薬組成物は、好ましくは少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む。当業者は、選択した医薬剤形に応じて組成物に必要とされる賦形剤を容易に決定することができる。薬学的に許容される賦形剤又は担体は、医薬組成物に対して上述で規定したとおりである。
【0272】
本発明は、さらに他の態様において、個体の感染症状、好ましくは細菌感染症の処置に使用される本発明のキットに関する。
【0273】
また、個体の感染症状の処置における本発明の製剤又は組合せの使用について、並びにまたこの製剤又は組合せの投与及び薬量について記載した実施形態及び定義は、この態様においても考慮される。
【0274】
好ましくは、感染症状は、抗生物質、好ましくはβ-ラクタム系ファミリーの抗生物質、より好ましくはアモキシシリンに耐性のある1つ以上の細菌、最も特に好ましくはアモキシシリンとクラブラン酸との組合せに少なくとも部分的に耐性のある1つ以上の細菌に起因するものである。
【0275】
最も特に好ましい実施形態において、本発明は、膀胱炎、特に、抗生物質、好ましくはβ-ラクタム系ファミリーの抗生物質、より好ましくはアモキシシリン、最も特に好ましくはアモキシシリンとクラブラン酸との組合せに耐性のある膀胱炎の処置に使用される本発明の医薬組成物に関する。
【0276】
[医薬製剤を製造するプロセス]
本発明はまた、第3の態様において、
-シネオールと薬学的に許容される油とを混合することによって湿潤化溶液を作製することと、
-湿潤化溶液でアモキシシリンを含む粉末を湿潤化させて、アモキシシリンとシネオールと油とを含む粉末調製物を得ることとを含む、本発明の医薬組成物又は医薬製剤を製造するプロセスにも関する。
【0277】
本発明はまた、本発明のプロセスによって得られる医薬組成物又は医薬製剤にも関する。
【0278】
本明細書に使用されるとき、「湿潤化溶液」という用語は、乾燥粉末を湿潤化させる又は湿らせるための溶液を指す。湿潤化操作は、特に、湿潤化される粉末に湿潤化溶液を噴霧することで行うことができる。
【0279】
本発明のプロセスの湿潤化溶液を得るためのステップは、シネオールに対する油の質量割合が約0.1~約1、好ましくは約0.2~約0.8、より好ましくは約0.4~約0.6で前述のようにシネオールと薬学的に許容される油とを混合させて行うことができる。最も特に好ましくは、シネオールに対する油の質量割合は約0.5である。例えば、約50mgの油を約100mgのシネオールと混合するか、あるいは約16.7mgの油を約33.3mgのシネオールと混合する。
【0280】
好ましくは、湿潤化溶液を得るためのシネオールと油との混合物は、好ましくはシネオールの蒸発を避けるために約20℃を超えないが混合物を液体形態に保つのに十分な温度で、密閉室において調製される。
【0281】
特定の実施形態において、アモキシシリンを含むとともに湿潤化溶液での湿潤化を意図した粉末はまた、好ましくは、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、アズトレオナム、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択されるβ-ラクタマーゼ阻害剤も含み、より好ましくは、β-ラクタマーゼ阻害剤はクラブラン酸である。
【0282】
好ましくは、アモキシシリンを含むとともに湿潤化溶液での湿潤化を意図した粉末はまた、好ましくは甘味料、香料、固化防止剤、潤滑剤、崩壊剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体も含む。より好ましくは、アモキシシリンを含む粉末は、上述で規定するような少なくとも1つの甘味料、香料、固化防止剤、潤滑剤、及び崩壊剤を含む。
【0283】
他の特定の実施形態において、アモキシシリンを含むとともに湿潤化溶液での湿潤化を意図した粉末はまた、上述で規定するようなクラブラン酸、シリカ、コロイダルシリカ、アスパルテーム、クロスカルメロース、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、及び香料も含む。
【0284】
好ましくは、本発明のプロセスはまた、アモキシシリンを含む粉末を湿潤化溶液で湿潤化する前に圧縮するステップも含む。圧縮によって得た顆粒は、好ましくは、湿潤化溶液で湿潤化する前にキャリブレーションされて分画される。
【0285】
他の実施形態において、本発明の医薬組成物又は医薬製剤を製造するプロセスには、
-シネオールと薬学的に許容される油とを混合することによって湿潤化溶液を作製することと、
-湿潤化溶液でアモキシシリンを含む粉末を湿潤化させて、アモキシシリンとシネオールと油とを含む粉末調製物を得ることと、
-前のステップで得た調製物を、好ましくは、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、アズトレオナム、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択されるβ-ラクタマーゼ阻害剤、より好ましくは、クラブラン酸であるβ-ラクタマーゼ阻害剤を含む粉末と混合すること、
-そのようにして得られた粉末をスクリーニングすること、を含む。
【0286】
このプロセスにおいて、アモキシシリンを含む粉末、及び/又は、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む粉末はまた、上述のような崩壊剤、好ましくは2つの崩壊剤、特に結晶セルロースとクロスカルメロースとを含むことができる。好ましい実施形態において、アモキシシリンを含む粉末と、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む粉末とは、結晶セルロースとクロスカルメロースとである2つの崩壊剤を含む。
【0287】
アモキシシリンを含む粉末、及び/又は、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む粉末は、上述のような固化防止剤をさらに含むことができる。好ましい実施形態において、アモキシシリンを含む粉末と、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む粉末とは、固化防止剤、好ましくはシリカを含む。
【0288】
最も特に好ましい実施形態において、アモキシシリンを含む粉末と、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む粉末とは、結晶セルロースと、クロスカルメロースと、シリカとを含む。
【0289】
したがって、本発明のプロセスは、スクリーニングステップと、そして崩壊剤及び固化防止剤を混合するステップとを含むことができる。あるいは、崩壊剤と固化防止剤とは、混合物がスクリーニングされる前に、混合することができる。特に、結晶セルロースと、クロスカルメロースと、シリカとは、約200mg~約400mg、好ましくは約300mgのクロスカルメロースに対して約1000mg~約1500mg、好ましくは約1241mgの結晶セルロース、及び約400mg~約600mg、好ましくは約540mgのシリカの量で混合することができる。
【0290】
本発明のプロセスはまた、アモキシシリンを含む粉末及び/又はクラブラン酸を含む粉末にこれらの賦形剤を混合するステップも含み、好ましくは、これらの賦形剤の一部分はアモキシシリンを含む粉末に混合され、これらの賦形剤の他の部分はクラブラン酸を含む粉末に混合される。
【0291】
他の好ましい実施形態において、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む粉末はまた、好ましくは、クラブラン酸に対する質量割合が約0.7~約1.3、好ましくは約0.9~約1.1、より好ましくは約1である、コロイダルシリカを含む。好ましくは、クラブラン酸とコロイダルシリカとの混合物は、任意の他の賦形剤を添加する前、又はアモキシシリンを含む粉末と混合する前に、調製する。
【0292】
好ましくは、本発明のプロセスはまた、アモキシシリンを含む粉末を湿潤化溶液で湿潤化する前に圧縮するステップも含む。圧縮によって得た顆粒は、好ましくは、湿潤化溶液で湿潤化する前にキャリブレーションされて分画される。
【0293】
同様に、本発明のプロセスは、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む粉末を、湿潤化溶液で湿潤化したアモキシシリン粉末の混合物と混合する前に、圧縮するステップを好ましくは含む。圧縮によって得た顆粒は、好ましくは、湿潤化溶液で湿潤化する前にキャリブレーションされて分画される。
【0294】
アモキシシリンを含む粉末を湿潤化溶液で湿潤化するステップ時に、湿潤化溶液は、約400mg~約600mg、好ましくは約500mgのアモキシシリンを含む粉末に対して、約100mg~約200mg、好ましくは約150mgの湿潤化溶液の量で、使用することができる。
【0295】
アモキシシリンとシネオールと油との調製物を、β-ラクタマーゼ阻害剤、好ましくはクラブラン酸を含む粉末と混合するステップ時に、アモキシシリンとシネオールと油との調製物は、約550mg~約750mg、好ましくは約650mgのβ-ラクタマーゼ阻害剤を含む粉末と混合される。
【0296】
任意的に、本発明のプロセスは、アモキシシリンとシネオールと油との調製物がクラブラン酸を含む粉末と混合されるステップ後に、上述のような甘味料、香料、及び/又は潤滑剤を添加するさらなるステップを含むことができる。好ましくは、甘味料、香料、及び潤滑剤を添加する。より好ましくは、甘味料はアスパルテームであり、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0297】
このステップ時に、これらのさらなる賦形剤は、3グラムの医薬製剤あたり、約30mg~約50mg、好ましくは約36mgの甘味料、好ましくはアスパルテーム、約15mg~約25mg、好ましくは18mgの潤滑剤、好ましくはステアリン酸マグネシウム、及び/又は約70mg~約110mgの、好ましくは90mgの香料の量で添加することができる。
【0298】
甘味料、香料、及び/又は潤滑剤を添加するステップ後、得られた調製物を均質な粉末になるまで混合する。
【0299】
好ましい実施形態において、最後のスクリーニングステップは、5mm以下、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは1.25mm以下の直径を有する開口を備えたスクリーニングメッシュで行う。
【0300】
任意的に、本発明のプロセスは、単一用量容器又は複数用量容器、好ましくは単一用量容器に、本発明のプロセスによって得られたスクリーニングした粉末を包装するさらなるステップを含むことができる。
【0301】
好ましい実施形態において、本発明のプロセスによって得られたスクリーニングした粉末は、約1g~約150gの粉末、より好ましくは約1g~約50gの粉末、さらに好ましくは約1g~約10gの粉末、特により好ましくは約3gの粉末を含む単一用量容器に包装される。
【0302】
他の実施形態において、本発明のプロセスによって得られたスクリーニングした粉末は、例えば、約10g~約500gの粉末、好ましくは約20g~約200gの粉末、より好ましくは約30g~約100gの粉末、最も特に好ましくは約50mgの粉末を含む複数用量容器に包装される。
【0303】
任意的に、本発明のプロセスは、本発明のプロセスによって得られたスクリーニングした粉末の一次包装に対する二次包装のさらなるステップを含むことができる。
【0304】
好ましい実施形態において、スクリーニングした粉末を含む単一用量容器は、二次的に箱に包装される。特に、箱には、例えば、3~31個の単一用量容器、好ましくは5~21個の単一用量容器、より好ましくは7~14個の単一用量容器を含むことができる。
【0305】
他の実施形態において、スクリーニングした粉末を含む複数用量容器は、任意的に、所定量の粉末、好ましくは約1mg~約30mgの粉末、より好ましくは約2mg~約20mgの粉末、最も特に好ましくは約3mg~12mgの粉末を取るための例えばスプーンなどの用量器を添えて、二次的に箱に包装される。特に、用量器は、約3g、約6g、約9g、約12g、約15g、及び/又は約18gの粉末を取ることができる。
【0306】
[分子複合体]
アモキシシリンは、β-ラクタマーゼ感受性抗生物質である。アモキシシリン耐性細菌によって産生されるβ-ラクタマーゼは、アモキシシリンのβ-ラクタムコアを認識して不活性化する。アモキシシリンは、溶液、好ましくは水性溶媒内に存在させると、短期的に2つのアモキシシリン分子の複合体を形成可能である。これらの複合体の形成は、β-ラクタマーゼに対するいくらかの防護作用を示すにはあまりに短期的である。しかしながら、本発明の医薬製剤を溶液内に存在させると、少なくとも3つのアモキシシリン分子を含む安定的なアモキシシリン複合体を形成してβ-ラクタマーゼの作用に対して該抗生物質を防護する。また、これらの複合体は、シネオールの存在下で溶液にアモキシシリン存在させることで形成することができる。
【0307】
したがって、最後の態様において、本発明はまた、線状又は環状に組織化されるとともに非共有結合によって互いに相互作用する、2つを超えるアモキシシリン分子を含む分子複合体にも関する。
【0308】
好ましくは、本発明の分子複合体はアモキシシリン分子のみから形成される。
【0309】
本発明の分子複合体は、少なくとも3つのアモキシシリン分子、好ましくは3~6つのアモキシシリン分子、より好ましくは3つ又は4つのアモキシシリン分子、最も特に好ましくは4つのアモキシシリン分子から形成される。
【0310】
本発明の分子複合体のアモキシシリン分子は線状又は環状に組織化することができる。好ましくは、それらは環状に組織化されて、各アモキシシリン分子は他の2つのアモキシシリン分子と相互作用する。
【0311】
特定の実施形態において、アモキシシリン分子は、非共有結合を切断又は形成することで、線状複合体としての組織から環状複合体としての組織へと自由に変わることができる。
【0312】
本発明の分子複合体は、水性溶媒内のシネオールの存在下で溶液にアモキシシリンを存在させることで得ることができる。好ましくは、本発明の分子複合体は、水性溶媒内のシネオールの存在下且つ界面活性剤の非存在下で溶液にアモキシシリンを存在させることで得られる。
【0313】
特定の実施形態において、本発明の分子複合体は、水性溶媒の溶液に本発明の医薬製剤を存在させることで得られる。
【0314】
好ましくは、本発明の分子複合体のアモキシシリン分子はβ-ラクタマーゼに認識されない。したがって、本発明の分子複合体は、アモキシシリン耐性とされる細菌の処置に使用することができる。
【0315】
特定の実施形態において、本発明の分子複合体は、シネオールに対するアモキシシリンの質量比が約0.01~約1000、好ましくは約0.1~約100、より好ましくは約1~約10、最も特に好ましくはシネオールに対するアモキシシリンの質量比が約5であるとき、水性媒体内で得ることができる。
【0316】
本発明はまた、薬剤としての本発明の分子複合体の使用にも関する。また、本発明は、個体の感染症状の処置に使用される本発明の分子複合体にも関する。また、本発明は、感染症状の処置を目的とした薬剤の調製のための本発明の分子複合体にも関する。また、本発明は、投与を必要とする個体、特に感染症状のある個体に、本発明の分子複合体の治療有効量を投与することを含む処置方法にも関する。
【0317】
本発明の製剤又は組合せについて記載した実施形態はまた、この態様においても考慮される。
【0318】
刊行物の記事若しくは概要、公開特許出願、登録特許、又は他の任意の引用例を含む、本特許出願に記載のすべての引用例は、引用例に記載のあらゆる結果、表、図面、及び文言を含んで、言及することで本明細書に全体的に援用される。
【0319】
「含む」、「有する」、「包含する」、及び「からなる」という用語は、異なる意味を有するが、本発明の記載において相互置換可能である。
【0320】
本発明の特徴及び利点は、以下の、非限定的例示としての実施例を閲読することで、より明らかにされる。
【実施例
【0321】
<実施例1:アモキシシリンとシネオールとの組合せの抗菌活性のインビトロにおける研究>
<<材料と方法>>
〔生物材料、培地、及び抗菌剤〕
この研究で試験した6つの株は、ハッサン2世大学教育病院センターの細菌学研究所(モロッコ、フェズ、CHU)にて同定された精製臨床分離株である。試験した6つの細菌株のうちの3つは、BSBL大腸菌(Escherichia coli)の株(P956、P933及びP7847)であり、試験した他の3つの細菌株は、BSBLクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)の株(H1878、H2001及びH1893)である。
【0322】
実施の各試験のために、細菌株の前培養物(予め-20℃で凍結)を24時間37℃で調製した。これらの前培養物から、540nmの光学密度を調節して2×10CFU(コロニー形成単位)/mlを含む細菌移植物を調製した。
【0323】
液体及び寒天のミューラー・ヒントン(Mueller-Hinton、MH)培地をBIOKAR(仏国)より入手した。1つ目を株の増殖に使用し、20%(v/v)のグリセロールを加えた2つ目を株の保管に使用した。入手先の指示に従って、2つの培地の調製を行った。
【0324】
アモキシシリン(AMX)とシネオールとはシグマアルドリッチ(仏国)から入手した。40mgの抗生物質を100mlの滅菌蒸留水に溶解して、AMXの原液(400μg/ml)を調製した。この原液から段階希釈を行った。Remmal A等が記述した方法(J.Essent.Oil.Res[書籍]、1993年、5、1179~1184ページ)にしたがって純粋なシネオールを0.2%(v/v)の寒天に乳化して、使用するシネオール濃縮物を調製した。
【0325】
〔AMXとシネオールとの組合せの阻害率評価〕
部分的阻止濃度(partialinhibitory concentrations、PIC)とは、所定のパーセンテージ(90%、75%、50%、40%...)の研究用細菌個体群の増殖を阻害する抗菌剤の濃度である。使用した6つの細菌株についてのAMXとシネオールとのPICは、光学密度を測定することによる細菌増殖のモニタリングに基づく、マイクロプレート微量希釈技術によって測定された(Casey J.T.等、J. Microbiol. Meth[書籍]、2004年、58、327~334ページ;Patton T等、J. Microbiol. Meth[書籍]、2006年、64、84~95ページ)。
【0326】
96ウェルで200μlの容量のU字状滅菌マイクロプレートを使用した。各マイクロプレートにおいて、
・200μlのMH液体培地を含む列(滅菌性コントロールとネガティブコントロール)
・150μlのMH液体培地と50μlの2×10CFU/mlである細菌移植物とを含む列(ポジティブコントロール)、である2つのコントロール列を準備した。
【0327】
AMXとシネオールに対して、100μlのMH液体培地と50μlの2×10CFU/mlである細菌移植物と50μlの濃度が減少する抗菌剤とを含む2つの列を準備した。使用したAMX濃度は、50、25、12.5、6.25、3.1、1.6、0.8、0.4、0.20、0.10、0.05、0.025μg/mlである。使用したシネオール濃度は、100、50、25、12.5、6.25、3.1、1.6、0.8、0.4、0.20、0.10、0.05μl/mlである。マイクロプレート分光光度計(Versamax、分子デバイス、米国)を使用して、光学密度(OD)を540nmで測定した。t=0のときと、30℃で22時間のインキュベーション後とに、ODを測定した。Casey J.T.等(J.Microbiol. Meth.[書籍]、2004年、58、327~334ページ)の記述にしたがって、以下の数1によって、6つの株のそれぞれについて抗菌剤の阻害率を計算した。
【数1】
【0328】
ODT0とはt=0のときの試験ウェルのODであり、ODT22とはインキュベーションの22時間後の試験ウェルのODであり、ODC0とはt=0のときのポジティブコントロールウェルのODであり、ODC22とはインキュベーションの22時間後のポジティブコントロールウェルのODである。
【0329】
単独のAMXとシネオールとのPICを測定した後、AMXとシネオールとの組合せの抗菌力を評価した。同様のマイクロプレート微量希釈技術を用いた。AMX-シネオールの組合せを以下のように滅菌チューブに調製した。
・AMX50%PIC+シネオール40%PIC
・AMX50%PIC+シネオール30%PIC
・AMX50%PIC+シネオール20%PIC
・AMX25%PIC+シネオール40%PIC
・AMX25%PIC+シネオール30%PIC
・AMX25%PIC+シネオール20%PIC
【0330】
以下の数式にしたがって、AMX-シネオールの組合せの相乗作用の程度を表すフラクショナル阻止濃度指数(FIC指数)を計算した(Odds F.C.等、J.Antimicrob.Chemoth.[書籍]、2003年、52、1ページ)。
【数2】
【0331】
AMX-シネオールの組合せは、
・FIC指数≦0.5のとき相乗作用があり、
・0.5<FIC指数<1のとき相加的であり、
・1<FIC指数<2のとき無作用であり、
・FIC指数>2のとき拮抗的である。
【0332】
<<結果>>
〔アモキシシリンとシネオールとのPICの測定〕
大腸菌の3株とK.ニューモニエの3株とについてAMXの抗菌活性は同等である(表1を参照)。最小阻止濃度(minimum inhibitory concentration、MIC、最小濃度は100%の阻害を可能にする)は、約50μg/ml(p>0.05)である。また、シネオールは、大腸菌の3株とK.ニューモニエの3株とについて同等の抗菌活性を有する(表2を参照)。MICは約100μl/ml(p>0.05)である。
【表1】
表1はアモキシシリンの部分的阻止濃度である。
【表2】
表2はシネオールの部分的阻止濃度である。
【0333】
〔アモキシシリンとシネオールとの組合せの阻害率評価〕
AMXとシネオールとの組合せは、その2つの加算よりも高い阻害率を提供する(表3及び表4を参照)。具体的に、40%PICのシネオール(6.2~7.1μl/ml)と組み合わせた50%PICのAMX(1.1~1.7μg/ml)は、試験したすべての株について100%の増殖阻害を示した。
【表3】
表3は、AMX(50%PIC)のシネオール(40%PIC、30%PIC、及び20%PIC)との組合せの阻害率である。
【表4】
表4は、AMX(25%PIC)のシネオール(40%PIC、30%PIC、及び20%PIC)との組合せの阻害率である。
【0334】
アモキシシリンとシネオールとのMICのフラクショナル指数(FIC指数、表5を参照)を計算することで、この強力な相乗作用を確認した。試験した6つの細菌株について、フラクショナル指数は0.08~0.10と変化する。0.5未満であるというこれらの結果は、AMXとシネオールとの強力な相乗作用の証拠となる。
【表5】
表5は、アモキシシリンとシネオールとの組合せのFIC指数である。
【0335】
<<検討>>
AMXをシネオールと組み合わせると、AMXに耐性の高い、試験した株が、最小AMX濃度で感受性を得たということを、得られた結果は明らかに示している。このように、AMX-シネオールの組合せ(50%IC+40%IC)により、試験したすべての細菌株における100%の増殖阻害を示した。この組合せにより、AMX又はシネオールのMICより大きく低い濃度でAMX単独又はシネオール単独のものと同様の抗菌力を得ることができる。具体的に、100%の阻害に使用した濃度を比較すると、シネオールとの組合せで使用したAMXの濃度がAMX単独の濃度の25分の1であり、AMXとの組合せで使用したシネオールの濃度がシネオール単独の濃度の15分の1であるということが理解される。
【0336】
AMXとシネオールとのこの組合せの殺菌活性は、フラクショナル指数の計算により示されるように(0.1以下の指数)、強力な相乗作用から生じるものである。
【0337】
これらの試験は、全体として、BSBL耐性細菌に対するAMXとシネオールとの組合せの有効性、及び細菌耐性を退けるという奮闘における価値を示している。
【0338】
<実施例2:β-ラクタマーゼによるアモキシシリンの阻害におけるシネオールの作用のインビトロにおける研究>
この研究は、まずシネオールとの組合せのAMXをβ-ラクタマーゼと接触させる酵素試験に基づくものである。そして、この抗生物質の抗菌活性を大腸菌のAMX感受性株にて確認した。
【0339】
<<材料と方法>>
〔生物材料、培地、及び抗菌剤〕
大腸菌のアモキシシリン感受性細菌株(ATCC8739)を国立衛生研究所(INHラバト)より入手した。
【0340】
実施の各試験のために、この細菌株から(予め-20℃で凍結)、この大腸菌株の前培養物を24時間37℃で調製した。これらの前培養物から、540nmの光学密度を調節して3.3×10CFU/mlの細菌移植物を調製した。
【0341】
液体及び寒天のミューラー・ヒントン培地をBIOKAR(仏国)より入手した。この培地の組成は前述されている。入手先の指示に従って、2つの培地の調製を行った。
【0342】
寒天培地での酵素試験のために、抗生物質を付加したディスク(直径Φ=6mm)を使用した(AMX:アモキシシリン、AMC:アモキシシリン+クラブラン酸)。これらは国立衛生研究所(INHラバト)より入手した。液体培地の酵素試験に使用したAMXは、シグマアルドリッチ(仏国)から入手した。
【0343】
シネオールはシグマアルドリッチ(仏国)から入手した。Remmal等が記述した方法(J.Essent.Oil.Res[書籍]、1993年、5、1179~1184ページ)にしたがって、その調製を0.2%(v/v)の寒天に乳化して行った。
【0344】
β-ラクタマーゼ粉末はシグマアルドリッチ(仏国)から入手した。入手先の指示にしたがって、該β-ラクタマーゼ粉末を、0.1%のゼラチンを含むpH7で0.1MのトリスHCIに10mg/mlで溶解した。このように、β-ラクタマーゼ(0.03U/ml)を調製して2~8℃で保管した。
【0345】
〔寒天培地での実験プロトコル〕
寒天培地において、前述の微量希釈法によって、シネオールの阻害未満濃度(シネオールがいずれの阻害も引き起こさない最高濃度)を測定した。これは約0.002μl/mlである。
【0346】
大腸菌の24時間感受性前培養から開始して、MH寒天培地の18のペトリディッシュに表面プレーティングによって播種した。6つのコントロールディッシュと2つの試験ディッシュを以下のように準備した。
ディッシュ1及び2は、抗生物質に対する株の感受性のコントロールに相当する。
- コントロール1:単独のAMXを20μg/mlで付加した3つのディスクをディッシュ1の表面に無菌的に設置した。
- コントロール2:単独のAMCを30μg/mlで付加した3つのディスクをディッシュ2の表面に無菌的に設置した。
ディッシュ3及び4は、抗生物質に対するβ-ラクタマーゼ活性のコントロールに相当する。
- コントロール3:AMXを20μg/mlで付加した3つのディスクをディッシュ3の表面に無菌的に設置した。これらの3つのディスクのそれぞれの表面に、0.03U/mlである10μlのβ-ラクタマーゼを添加した。
- コントロール4:AMCを30μg/mlで付加した3つのディスクをディッシュ4の表面に無菌的に設置した。これらの3つのディスクのそれぞれの表面に、0.03U/mlである10μlのβ-ラクタマーゼを添加した。
ディッシュ5及び6は、シネオール(阻害濃度未満濃度)と組み合わせた抗生物質の抗菌活性のコントロールに相当する。
- コントロール5:AMXを20μg/mlで付加した3つのディスクをディッシュ5の表面に無菌的に設置した。これらの3つのディスクのそれぞれの表面に、0.002μl/mlである10μlのシネオールを添加した。
- コントロール6:AMCを30μg/mlで付加した3つのディスクをディッシュ6の表面に無菌的に設置した。これらの3つのディスクのそれぞれの表面に、0.002μl/mlである10μlのシネオールを添加した。
ディッシュ7及び8は、β-ラクタマーゼによるアモキシシリン阻害におけるシネオール作用の試験に相当する。
- テスト1:AMXを20μg/mlで付加した3つのディスクをディッシュ7の表面に無菌的に設置した。これらの3つのディスクのそれぞれの表面に、0.03U/mlである10μlのβ-ラクタマーゼと0.002μl/mlである10μlのシネオールとを添加した。
- テスト2:AMCを30μg/mlで付加した3つのディスクをディッシュ8の表面に無菌的に設置した。これらの3つのディスクのそれぞれの表面に、0.03U/mlである10μlのβ-ラクタマーゼと0.002μl/mlである10μlのシネオールとを添加した。
8つのペトリディッシュを37℃で18時間インキュベーションした後、阻害輪の直径を測定した。
【0347】
〔液体培地での実験プロトコル〕
前述の微量希釈法によって測定した、大腸菌の感受性株に対する100%でのAMXのMICは、約6μg/mlである。
【0348】
大腸菌の感受性株の24時間前培養から開始して、540nmの光学密度を調節して3.3×10CFU/mlの細菌移植物を調製した。
【0349】
表6に記載のように(以下参照)、5つのコントロールチューブと1つの試験チューブとを準備した。
【0350】
チューブ1は、培地の滅菌性コントロールに相当する。チューブ2は、細菌株の生存度のポジティブコントロールに相当する。チューブ3は、AMXに対する株の感受性のコントロールに相当する。チューブ4は、阻害濃度未満濃度のシネオールでの細菌増殖の非阻害性のコントロールに相当する。チューブ5は、β-ラクタマーゼの存在下でのAMX分解のコントロールに相当する。チューブ6は、β-ラクタマーゼによるアモキシシリン阻害におけるシネオール作用の試験に相当する。
【表6】
表6は、液体培地における研究用コントロールチューブと試験チューブとの含有量である。
【0351】
t=0のときと、30℃で22時間のインキュベーション後とに、ODを測定した。そして、前述の数式にしたがって阻害率を計算した。
【数3】
【0352】
ODT0とはt=0のときの試験チューブのODであり、ODT22とはインキュベーションの22時間後の試験チューブのODであり、ODC0とはt=0のときのポジティブコントロールチューブのODであり、ODC22とはインキュベーションの22時間後のポジティブコントロールチューブのODである。
【0353】
<<結果>>
寒天培地にて(以下の表7参照)
【表7】
表7は、感受性大腸菌阻害輪の直径である(mm)。
*は、3つの阻害輪値の平均である。
【0354】
阻害輪直径の測定において、
- 使用した大腸菌株は、実際のところ、AMX(20μg)及びAMXとクラブラン酸との組合せ(AMC30μg)に感受性があり、それぞれ15mm及び16mmの輪の直径を伴う、
- 阻害濃度未満濃度(0.002μl/ml)のシネオールを添加することで、阻害輪のサイズがAMX(20μg)では17mm及びAMC(30μg)では18mmへとわずかに増加する、
- β-ラクタマーゼ(0.03U/ml)を添加することで、AMX阻害輪がなくなり(20μg)(6mmはディスク直径)、AMC阻害輪(30μg)が約13mmに減縮する、
- β-ラクタマーゼ(0.03U/ml)とシネオール(0.002μl/ml)とを添加することで、AMX(20μg)では約12mm及びAMC(30μg)では約15mmの輪の直径を伴って、β-ラクタマーゼにより誘発される阻害を実質的に少なくする、ということが示される。
【0355】
液体培地にて(以下の表8参照)
【表8】
表8は、大腸菌の感受性株の増殖阻害率である。
【0356】
表8において、
- 使用したシネオール濃度(0.002μl/ml)は、実際のところ阻害濃度未満のものであり、増殖阻害はなかった(コントロール4)、
- β-ラクタマーゼ(0.03U/ml)の存在下において、AMX(6μg/ml)での感受性株の増殖阻害率はゼロである(コントロール5)、
- β-ラクタマーゼ(0.03U/ml)とシネオール(0.002μl/ml)との存在下において、AMX(6μg/ml)での感受性株の増殖阻害率は約83.4%である(テスト1)、ということが示される。
【0357】
<<検討>>
寒天培地で行った研究によって以下のことを示すことができた。
- 阻害濃度未満濃度のシネオールの存在下において、AMXとAMCとの抗菌活性が向上した(阻害輪直径は抗生物質単独で得られたものより大きい)。つまり、AMXとAMCとの活性がシネオールの存在下で増大した(阻害濃度未満濃度において)。
- β-ラクタマーゼの存在下において、AMX(20μg)で誘発された阻害はゼロであり、AMC(30μg)で誘発された阻害は大きく低下した。これは、アモキシシリンのβ-ラクタム環の加水分解によるものである。β-ラクタマーゼは、クラブラン酸で部分的に阻害されるのみである。
- β-ラクタマーゼ及びシネオールの存在下において、AMXとAMCとの抗菌活性が増大した(得られた阻害輪直径は抗生物質単独で得られたものと同等)。シネオールを阻害濃度未満濃度で使用する限り、抗菌活性の増大は、シネオールの存在下におけるアモキシシリンに対するβ-ラクタマーゼの効果の低下によって説明することができる。
【0358】
液体培地で行った研究によって以下のことを示すことができた。
- β-ラクタマーゼの存在下においてAMXはその抗菌活性を完全に失い、これは、β-ラクタム環の加水分解によるこの抗生物質の完全な分解を示している。
- β-ラクタマーゼとシネオールとの存在下において、AMX阻害率は約83.4%である。これらの結果は、阻害濃度未満濃度のシネオールの存在下で、AMXがβ-ラクタマーゼに対する防護を得て、β-ラクタマーゼはその活性をもう保持していないということを示す。このように、AMXの抗菌活性は保持される。
【0359】
これらの結果は、全体として、シネオールと組み合わせたアモキシシリンがβ-ラクタマーゼにわずかに感受性があるのみであるということを示す。この理論に縛られないが、これは、β-ラクタマーゼにAMXのβ-ラクタム環を攻撃させない、シネオールの存在下におけるアモキシシリン分子の複合形成によるものであると考えられる。
【0360】
<実施例3:アモキシシリンとクラブラン酸とシネオールとの組合せで処置したウサギ血清の抗菌活性の研究>
<<材料と方法>>
〔生物材料、培地、及び抗菌剤〕
大腸菌の多耐性BSBL細菌株を国立衛生研究所(INHラバト)より入手した。細菌株を使用して24時間37℃で前培養物を調製した(予め-20℃で凍結)。これらの前培養物を使用して、540nmの光学密度を調節して2×10CFU/mlの細菌移植物を調製した。
【0361】
液体及び寒天のミューラー・ヒントン培地をBIOKAR(仏国)より入手した。この培地の組成は前述されている。入手先の指示に従って、2つの培地の調製を行った。
【0362】
この研究で使用した6匹のウサギは、専門的なブリーダーから入手したニュージーランド種の雌のウサギである。ウサギは生後70~75日であり、約2kgの体重であった。ウサギは、無作為に3匹のウサギの2つの群に分けて、肥育タイプの市販の飼料を適宜与えた。
【0363】
〔実験プロトコル〕
第1群のウサギには、1.5gのアモキシシリンと186.5mgのクラブラン酸とを含む単一用量のAMCを投与した。第2群のウサギには、1.5gのアモキシシリンと186.5mgのクラブラン酸と300mgのシネオールとを含む、単一用量の、シネオールを組み合わせたAMCを投与した。
【0364】
経腸チューブ給餌法によって、精製水で再構成した2つの処置の液剤をウサギに投与した。
【0365】
処置の実施後に、適切なデバイスを使用して拘束することでウサギを固定した。ウサギの耳を赤外線ランプに暴露して、辺縁及び中心の耳介静脈を拡張させた。そして、T=0(T)(投与前)、T(1時間後)、T(2時間後)、T(3時間後)、及びT(6時間後)に、中心耳介静脈から0.5mlの血液サンプルを採取した。
【0366】
血清サンプルの阻害率を測定するために、上述した微量希釈法を使用した。
【0367】
96ウェルで200μlの容量のU字状滅菌マイクロプレートを使用した。ネガティブコントロールは200μlのMH液体培地からなり、ポジティブコントロールは150μlのMH液体培地と50μlの2×10CFU/mlである細菌移植物からなる。所定の時間に採取した血清の各サンプルに対して、それぞれ100μlのMH液体培地と50μlの2×10CFU/mlである細菌移植物と50μlの血清とを含む2つのウェルを準備した。
【0368】
各サンプルについて、T=0と、30℃で22時間のマイクロプレートのインキュベーション後とに、OD読み取りを行う。前述の数式にしたがって、種々の血清サンプルの阻害率を計算した。
【数4】
【0369】
ODT0とはt=0のときの試験ウェルのODであり、ODT22とはインキュベーションの22時間後の試験ウェルのODであり、ODC0とはt=0のときのポジティブコントロールウェルのODであり、ODC22とはインキュベーションの22時間後のポジティブコントロールウェルのODである。
【0370】
<<結果>>
図1は、AMC(アモキシシリン/クラブラン酸の組合せ)単独で処置した群とシネオール追加したAMCで処置した群のウサギからの血清サンプルによる細菌増殖阻害の百分率のモニタリングを経時で示す。
【0371】
処置の実施前に(Tのとき)、2つの群のウサギからの血清サンプルの抗菌活性は視覚的にゼロである。処置の実施の1時間後(T)、AMC単独で処置したウサギからの血清で誘発された阻害は約40±1.2%である一方、AMCとシネオールとで処置したウサギからの血清で誘発された阻害は約47±2.1%である。処置の2時間後、阻害率は、AMC単独で処置したウサギからの血清では50±2.5%であり、シネオールを追加したAMCで処置したウサギからの血清では54±2.9%である。処置の3時間後、阻害率は、AMC単独で処置したウサギでは41±3.2%に、シネオールを追加したAMCで処置したウサギでは48±1.6%に下落する。最後に、処置の6時間後、阻害率は、AMC単独で処置したウサギの血清では16±1.3%に下落するが、シネオールを追加したAMCで処置したウサギではまだ約44±1.5%である。
【0372】
このように、アモキシシリンとクラブラン酸とシネオールとの組合せで処置した第2群のウサギからの血清サンプルで得た阻害率は、アモキシシリンとクラブラン酸との組合せで処置した参照群のウサギからの血清サンプルで得た阻害率よりも顕著に高くなっている(P<0.05)。
【0373】
<実施例4:アモキシシリンとクラブラン酸とシネオールとを含む製剤のガレン製剤展開>
<<材料と方法>>
使用するすべての出発物質、有効成分、及び賦形剤は医薬品グレードのものである。
【0374】
この製剤は、揮発性有効成分であるシネオールの存在によって特徴づけられている。この揮発性化合物を安定化するために、吸着特性を有するいくつかの賦形剤又は賦形剤の組合せを試験した(以下の表9を参照)。
【0375】
形態8(落花性油)について試験したプロセスは、他の有効成分である、アモキシシリン及びクラブラン酸と、シネオール含む油相の賦形剤との混合物で得た顆粒を湿潤化するステップの導入で構成される。湿潤化するステップの後には、潤滑化、混合、及びスクリーニングするステップがあってもよい。
【表9】
表9は試験製剤における吸着剤の組成を示す。
【0376】
フレウィット(FREWITT)スクリーニングメッシュの種々の格子で混合前にすべての出発物質をスクリーニングした。
【0377】
ホバートミキサーで出発物質の混合を行った。
【0378】
マルケジーニ(MARCHESINI)袋詰め機を使用して袋詰めを行った。
【0379】
製造室の温度及び相対湿度は、それぞれ、約<20℃と<15%とであった。
【0380】
いずれの蒸発も避けるために、シネオールの安定化プロセス用に作製した湿潤化溶液を密閉室にて調製した。
【0381】
各試験形態について、3つの有効成分(アモキシシリン、クラブラン酸、及びシネオール)の投与量を含む完全な品質管理を、
・ Tの製造終了時(10個のサンプリング点)、並びに温度<20℃及び周囲湿度<15%に24時間、48時間、及び72時間の暴露後に、最終混合物において、
・ 充填終了時に袋において(10個のサンプリング点)、行った。
【0382】
95%~105%の有効成分含有量(%)を適合すると判断する。10個のサンプリング点において取得した個々の含有量の変動係数(CV%)を計算して、混合物の均質性を確認した。2%以下の変動係数を適合すると判断する。
【0383】
<<結果>>
アモキシシリンとクラブラン酸との平均含有量はすべての試験形態において適合する(形態1~形態8)。シネオールに関して(以下の表10参照)、形態1~形態7は、最終混合物において、95%未満のシネオール含有量を示し、この含有量は、温度<20℃及び周囲湿度<15%に24時間、48時間、及び72時間の暴露後にさらに実質的に減少する。
【0384】
しかしながら、形態8(落花性油)はシネオールの安定化を可能にする。具体的に、この形態に存在するシネオール含有量は、最終混合物において95%~105%であり、温度<20℃及び周囲湿度<15%に24時間、48時間、及び72時間の暴露後にこの範囲に維持される。
【0385】
また、最終混合物及び袋詰めの均質性は形態8において適合し、含有量の変動係数(CV%)の値は2%を超えない。
【表10】
表10は、試験した種々の吸着剤の関数としてのシネオール含有量(%)を示す。
【0386】
さらに、24時間、48時間、及び72時間、温度<20℃及び周囲湿度<15%に暴露した最終混合物における3つの有効成分(アモキシシリン、クラブラン酸、及びシネオール)の不純物の定量化試験はすべて許容基準に適合する(結果は示さず)。また、最終混合物の品質及び袋内の分散の他の試験の結果もすべて許容基準に適合する(結果は示さず)。
【0387】
<実施例5:本発明の医薬製剤の例>
【表11】
*:結晶セルロース量を調節して総重量を3gとする。
以下のプロセスによって、この製剤を得た。
ステップ1:スクリーニング及び予備混合
Avicel PH112と、クロスカルメロースナトリウムと、Syloid A1とをスクリーニング後に混合する。
ステップ2:圧縮
2-1 アモキシシリン
ステップ1で得た粉末予備混合物の一部とアモキシシリン三水和物を混合して、その後圧縮する。その後、得られた顆粒をキャリブレーションして分画する。
2-2 クラブラン酸
ステップ1で得た粉末予備混合物の一部とクラブラン酸を混合して、その後圧縮する。次に、得られた顆粒をキャリブレーションして分画する。
ステップ3:顆粒化
3-1 湿潤化溶液(S1)の調製
密閉容器内でシネオールと落花性油とを混合して湿潤化溶液を得て、その後分画する。
3-2 湿潤化
ステップ2で得たアモキシシリンを含む圧縮した混合物の画分を、溶液S1の画分で湿潤化して、その後混合する。ステップ2で得たクラブラン酸を含む圧縮した混合物の画分を添加する。
3-3 混合
種々の画分を合わせて混合する。
ステップ4:潤滑化
アスパルテーム及び香料組成物をスクリーニング後に混合する。その後、ステアリン酸マグネシウムを添加する。
ステップ5:スクリーニング及び最終混合
最終粉末をスクリーニングして、その後数分混合する。
ステップ6:配分
最終混合物を袋に配分する。
ステップ7:箱への二次包装
【0388】
<実施例6:アモキシシリンとクラブラン酸とシネオールと落花性油とを含む粉末形態の医薬製剤の安定性の研究>
<<材料と方法>>
3つの異なる条件で、実施例5の医薬製剤の安定性を試験した(表12を参照)。
【表12】
表12は、製剤安定性研究の実験条件を示す。
【0389】
製剤を選択条件下に維持するために、制御した温度及び相対湿度の気候室を使用した。
【0390】
条件1について、1年目では3か月ごと、2年目は6か月ごと(0、3、6、9、12、18及び24か月)に品質管理を行った。
【0391】
条件2及び3について、3か月ごと(条件2では0、3、6、9及び12か月、条件3では0、3及び6か月)に品質管理を行った。
【0392】
この品質管理は、
・ 懸濁剤の官能特性、含水量、及びpHの制御、
・ 3つの有効成分(アモキシシリン、クラブラン酸、及びシネオール)の投与量、
・ 3つの有効成分の不純物の定量化、
・ 微生物学的制御、に関する。
【0393】
<<結果>>
3つの条件下で、研究をとおして、3つの有効成分の含有量は95%~105%として測定され(以下の表13~表15を参照)、組成物の安定性を示した。
【表13】
表13は、条件1における安定性研究の結果を示す。
【表14】
表14は、条件2における安定性研究の結果を示す。
【表15】
表15は、条件3における安定性研究の結果を示す。
【0394】
3つの有効成分の不純物の定量化も、3つの条件において許容基準に適合する(結果は示さず)。
【0395】
制御した他のパラメータ(含水量、粉末及び再構成した懸濁剤の外観、再構成した懸濁剤のpH、並びに微生物学的制御)はすべて許容基準に適合する(結果は示さず)。
【0396】
このように、本発明の製剤は、3つの試験条件下で、その化学的、物理的、官能的、及び微生物学的特性を保持する。
【0397】
<実施例7:ヒトにおける薬物動態学的研究>
<<実験プロトコル>>
これらの実験のために48人の健康なボランティアを集めた。
第1の実験では、12人の2つの群に分かれたボランティアに、実施例5の組成物を12g(つまり、全体で2gのアモキシシリン、250mgのクラブラン酸、及び400mgのシネオール)、又はあらゆる点で同一だがシネオールを含まない組成物を12g、経口で投与した。最初の3時間は30分ごとに、その後6時間までは1時間ごと、そして8時間、10時間、及び24時間で、血液サンプルを採取した。採取したサンプルにおけるアモキシシリンの血漿中濃度をクロマトグラフィーにて評価し、血清アモキシシリン動態を分析した。
【0398】
第2の実験では、12人の2つの群に分かれたボランティアにはすべて、まず前述の実験と同じ用量を投与し、その後、同じ組成物の3gの維持用量を、すなわち、実施例5の組成物を1日に3gを3回(つまり、各投与量摂取につき、500mgのアモキシシリン、62.5mgのクラブラン酸、及び100mgのシネオール)、又はあらゆる点で同一だがシネオールを含まない組成物を1日に3gを3回、1週間にわたって1日に3回投与した。7日間にわたって、24時間ごと(最小濃度)、また2時間後、濃度のピーク時(t=26h、50h、72h等)に、血液サンプルを採取した。採取したサンプルにおけるアモキシシリンの血漿中濃度をクロマトグラフィーにて評価し、血清アモキシシリン動態を分析した。
【0399】
<<単一用量投与後24時間のアモキシリン動態>>
アモキシシリンとクラブラン酸の組合せ、又はアモキシシリンとクラブラン酸とシネオールとの組合せで処置したボランティアから得たアモキシシリンの平均血清中濃度のモニタリングにおける曲線は、個人間の大きな変動にもかかわらず、ほぼ完全に重なる(図2を参照)。曲線は吸収段階時には同じ形状を有し、2つの形態は約2時間半で最大濃度(Cmax)に達する。2つの形態は2時間半以上で濃度が低下し始め、2つの消失曲線は投与時と24時間後との間で実質的に平行である。
【0400】
研究したすべての薬物動態学的パラメータ、すなわち曲線下面積(area under the curve、AUC0-t)、最大濃度(Cmax)、ピーク時間(Tmax)、及び半減時間(t1/2)について、得られた値は2つの試験条件間で大きく異ならない(以下の表16参照)。
【0401】
シネオールを含まない形態に対するシネオールを含む形態のアモキシシリンの相対的生物学的利用能は、F(AUC)0.888である。
【0402】
これらの結果は、全体として、研究した2つの組成物が同じ生物学的利用能を有すると結論づけることを可能にする。
【表16】
表16は、血清アモキシシリンの薬物動態学的パラメータを示す。
【0403】
<<反復用量投与時(7日)のアモキシシリン動態>>
アモキシシリンとクラブラン酸の組合せ、又はアモキシシリンとクラブラン酸とシネオールとの組合せで処置したボランティアから得たアモキシシリンの平均血清中濃度のモニタリングにおける曲線は、実質的に完全に重なる(図3を参照)。
【0404】
これらの結果は、研究した2つの組成物が反復投与時に同じ薬物動態学的挙動を有することを示す。
【0405】
<実施例8:感受性細菌感染症を有する患者の臨床試験>
この臨床試験の目的は、患者がアモキシシリン感受性細菌による尿路感染症に罹患している場合に、アモキシシリンとクラブラン酸とを含むのみの医薬製剤に対する、アモキシシリンとクラブラン酸とシネオールとを含む医薬製剤の有効性を評価するためのものであった。この無作為の臨床試験を、それぞれ14人の患者の2群(又は治療群)に分かれた28人の患者の個体群に対して行った。各群の患者を並行して7日間処置した。患者は20歳を超えた男女である。
【0406】
処置開始前に患者に行った耐性記録により、患者はすべて感受性細菌病原体に起因する尿路感染症に罹患していることを確認できた。
【0407】
<<有効性評価基準>>
処置終了時に行った尿の細胞細菌学的検査(cytobacteriologicalexamination of the urine、CBEU)によって処置の有効性を評価する。
【0408】
<<製品と投与量>>
実施例5のテスト製剤(アモキシシリン、クラブラン酸、及びシネオール)は、3gの粉末あたり500mgのアモキシシリン、62.5mgのクラブラン酸、及び100mgのシネオールを含む(袋の含有量に相当する)。
【0409】
研究用の処置に適する患者には、無作為化表にしたがって、無作為に投与した。
‐ 1日目に試験製剤の12グラムの負荷投与量(1投与量摂取で4袋)、その後、6日間同じ製剤を1日あたり3袋(朝に1袋、昼に1袋、夜に1袋)(治療群A)。
‐ 1日目に試験製剤の12グラムの負荷投与量(1投与量摂取で4袋)、その後、6日間同じ製剤を1日あたり6袋(朝に2袋、昼に2袋、夜に2袋)(治療群B)。
【0410】
以下の表17は、種々の治療群における患者の分類と、また処置前のCBEU時に検出された細菌感染症の特性も示す。
【0411】
<<結果>>
処置が治療群Aにおいて有効でなかった1人の患者を除いて(患者2)、すべての場合に処置は効果的であった(最初に検出された細菌の排除)。
【0412】
感染症の際に無菌化が困難であると考えられるためより複合的とされる特定の患者、すなわち、前立腺の良性肥大化を示す患者、糖尿病患者、尿道狭窄、尿路変向、膀胱結石、又は膀胱腫瘍を示す患者の場合に、処置は有効であるとさらに証明された。
【0413】
ゆえに、試験処置(アモキシシリン、クラブラン酸、及びシネオール)は、参照処置(アモキシシリン及びクラブラン酸)のように、困難な領域のものを含む、感受性細菌病原体に起因する尿路感染症の処置を、効果的に行うことができる。
【表17】
表17は、患者の特徴とその分類を示す。
【0414】
<実施例9:耐性細菌感染症を有する患者の臨床試験>
この臨床試験の目的は、患者がアモキシシリンとクラブラン酸との組合せに耐性がある細菌に起因する尿路感染症に罹患している場合に、アモキシシリンとクラブラン酸とシネオールとを含む医薬製剤の有効性を評価するためのものであった。この臨床試験を、7日間の処置を行った23人の患者の個体群に対して実施した。
【0415】
試験製剤(実施例2参照)は、3gの粉末あたり500mgのアモキシシリン、62.5mgのクラブラン酸、及び100mgのシネオールを含む粉末である(1袋の含有量に相当する)。
【0416】
各患者にはまず、1日目に試験製剤の12グラムの負荷投与量(1投与量摂取で4袋)、その後、6日間同じ製剤を1日あたり6袋(朝に2袋、昼に2袋、夜に2袋)、投与した。
【0417】
以下の表18は、また処置前のCBEU時に検出された細菌感染症の特性を含む、この試験の患者の特徴を示す。
【0418】
<<結果>>
1人の患者を除いて(患者6)、すべての場合に処置は効果的であった(最初に検出された細菌の排除)。
【0419】
患者22の事例は特に興味深い。具体的に、この患者は、20年近く、アモキシシリンとクラブラン酸とを含むあらゆる入手可能な試験抗生物質に抵抗性があると考えられた尿路感染症を示し、本発明の製剤で治癒した。
【0420】
ゆえに、アモキシシリンとクラブラン酸とシネオールとを含む本発明の製剤は、参照処置、すなわちアモキシシリンとクラブラン酸とを含む製剤に耐性がある細菌に起因する尿路感染症に対して非常に有効であると証明された。
【表18】
表18は、患者の特徴を示す。
【0421】
<実施例10:アモキシシリン複合体形成の分光学的研究>
100mlの水に溶解した500mgのアモキシシリン、該当する場合、62.5mgのクラブラン酸又は100mgのシネオールを含む溶液に分光学的分析を行った。
【0422】
水に溶解したアモキシシリンの質量分析による分析(図4-A参照)は、アモキシシリン分子に相当する主要なピーク(349.06amuのピーク)、また二量体形態のアモキシシリンに相当する他のピーク(731.17amuのピーク)の存在を示す。アモキシシリン二量体のピークの増幅は、アモキシシリン分子のピークのものに著しく劣る。このように、アモキシシリンは、溶液内に単独で存在するとき、非常に優勢的に分子形態である。
【0423】
アモキシシリンをシネオールの存在下で溶解すると、質量分析において、アモキシシリン単独で既に観察されたピークに加えて、新しいピークが現れる(図4-B参照)。これらのピークは、アモキシシリン三量体(1134.24amuのピーク)とアモキシシリン四量体(1499.34amuのピーク)とに相当する。
【0424】
しかしながら、アモキシシリンをクラブラン酸の存在下且つシネオールの非存在下で溶解すると、アモキシシリンの分光特性は変化しない(結果は示さず)。
【0425】
このように、シネオールの添加によって、3~4のアモキシシリン分子のオリゴマーの形態で溶液内のアモキシシリン分子の再構成を可能にする。この再構成は、アモキシシリンがクラブラン酸の存在下のみにあるときは、観察されない。

図1
図2
図3
図4