(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】フォトクロミックアイウェアレンズの製造方法およびフォトクロミックアイウェア製品
(51)【国際特許分類】
G02B 5/23 20060101AFI20220303BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20220303BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20220303BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20220303BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G02B5/23
G02B1/18
G02B1/11
G02B1/14
G02C7/10
(21)【出願番号】P 2019547432
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 US2018020524
(87)【国際公開番号】W WO2018160885
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-02-04
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500323340
【氏名又は名称】ヤンガー・マニュファクチャリング・カンパニー・ドゥーイング/ビジネス/アズ・ヤンガー・オプティックス
【氏名又は名称原語表記】YOUNGER MFG.CO.d/b/a YOUNGER OPTICS
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニエミ,ケヴィン エム.
(72)【発明者】
【氏名】アンブラー,デイヴィッド マーク
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0096666(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0224139(US,A1)
【文献】特表2005-509704(JP,A)
【文献】特開2006-052408(JP,A)
【文献】特表2002-504935(JP,A)
【文献】特表2006-514135(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0093844(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/23
G02B 1/18
G02B 1/11
G02B 1/14
G02C 7/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトクロミックアイウェアレンズの製造方法であって、
(a)少なくとも1種のフォトクロミック材料と、
(b)反応生成物であって、
(b1)2.5~4.0のNCO反応基/1.0のOH反応基の当量比において、脂環式ジイソシアネートと少なくとも1種のポリオールとを反応させて調整されるポリウレタンプレポリマーであって、得られた前記ポリウレタンプレポリマーに過剰なNCO反応基が含まれる、ポリウレタンプレポリマー、
(b2)ジエチルトルエンジアミンと1種または複数種のポリオール物質との混合物であって、前記混合物の1種または複数種のポリオール物質のそれぞれが1200未満の分子量を有し、前記混合物はOHおよびNH
2反応基を提供し、前記混合物におけるOH反応基の当量をB
OHとし、前記混合物におけるNH
2反応基の当量をB
NH2とすると、前記混合物におけるOHおよびNH
2反応基の合計当量は、
B
TOT=B
OH+B
NH2 (式1)
として表され、前記混合物におけるB
TOTは、前記ポリウレタンプレポリマーにおける過剰なNCO反応基の1.0当量ごとに0.75~1.10の範囲にあり、ここで前記B
OHは少なくとも0.08で、かつ、B
NH2は0.67より小さい、混合物、および
(b3)前記混合物(b2)の総重量に対して0.5%~1.1%の総重量%で提供される1種または複数種の触媒、
を含む反応生成物と、
を組み合わせて、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層を少なくとも1つ形成するステップを含む、
方法。
【請求項2】
前記混合物(b2)と前記ポリウレタンプレポリマー(b1)とを反応させる前に、前記1種または複数種の触媒(b3)が前記混合物(b2)に添加される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種または複数の触媒は、有機金属化合物および第三級アミンからなる群から選択されるいずれか1つまたはそれらの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機金属化合物は、有機金属スズ化合物、有機金属亜鉛化合物、有機金属ジルコニウム化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記B
OHは、少なくとも0.20である、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記B
TOTは、前記ポリウレタンプレポリマーにおける過剰なNCO反応基の1.0当量ごとに0.95を超えない、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記B
OHは、少なくとも0.40である、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
熱可塑性ポリカーボネート、硬質樹脂熱硬化性ポリマー物質、ポリ(尿素-ウレタン)物質、ポリチオウレタン物質、エピスルフィド物質、1.56を超える屈折率を有するその他の硫黄含有ポリマー物質、ポリスチレン物質、ポリアミド物質、光学グレードのナイロンポリマー物質、アクリル物質、ポリアクリレート物質、およびポリメタクリレート物質からなる群から選択されるレンズ材料を1種または複数種含むレンズ要素上に、前記変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層を少なくとも1つ形成するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層および前記レンズ要素のうちの少なくとも一方に、硬質コーティング、疎水性コーティング、防曇コーティング、防湿コーティング、ミラーコーティング、可視光反射防止コーティング、紫外線反射防止コーティング、エレクトロクロミックコーティング、偏光コーティング、偏光多層薄膜コーティング、多層干渉コーティング、導電性コーティング、可視光フィルタコーティング、紫外線フィルタコーティング、および赤外線フィルタコーティングからなる群から選択されるコーティングを1種または複数種塗布するステップをさらに含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層に、離型剤、熱または光安定剤、UV吸収剤、染料または着色剤、顔料、酸化防止剤、鎖延長剤、カラーブロッカー、蛍光増白剤、界面活性剤、可塑剤、および不活性耐衝撃性改良剤からなる群から選択される添加剤を1種または複数種添加するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種のフォトクロミック材料は、ハロゲン化銀、二色性金属酸化物、二色性有機染料、サーモクロミック物質、スピロ(インドリン)ピラン物質、ナフトピラン物質、ベンゾピラン物質、ジチゾネート物質、ベンゾオキサジン物質、スピロオキサジン物質、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン物質、スピロピリドベンゾオキサジン物質、アントロキノン物質、オキサジン物質、インドリジン物質、フルギド物質、およびフルギミド物質からなる群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種のフォトクロミック材料は、少なくとも2種の前記フォトクロミック材料を含み、前記フォトクロミック材料の少なくとも1種は、可視光によって活性化される、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種のフォトクロミック材料と前記(b1)~(b3)の反応生成物とを組み合わせるステップは、前記フォトクロミック材料と前記ポリウレタンプレポリマーとを混合するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種のフォトクロミック材料と前記(b1)~(b3)の反応生成物とを組み合わせるステップは、前記反応生成物と前記少なくとも1種のフォトクロミック材料とを接触させて、前記少なくとも1種のフォトクロミック材料を反応生成物に吸収させるステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~13の何れか1項に記載の方法により製造されたフォトクロミックアイウェアレンズを備える、
フォトクロミックアイウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、2017年3月1日出願の米国仮特許出願第62/465,639号の優先権を主張し、その開示の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
<連邦政府による資金提供を受けた研究または開発>
該当なし。
【0003】
<共同研究契約>
該当なし。
【0004】
<配列表>
該当なし。
【0005】
<従来利用>
該当なし。
【0006】
本発明の分野は、一般にアイウェアに関し、より具体的には、フォトクロミック反応を含むアイウェアレンズに関する。
【背景技術】
【0007】
一般に、アイウェアは、加齢、病気、またはその他の要因によって引き起こされる視力障害、異常および焦点の欠陥を修正するために使用される。これらの生理的な視力の問題を修正することに加えて、視力に影響を与える可能性がある物理的条件または環境条件(例えばグレア、変化する照明、高強度の光、ほこり、結露など)を良好にするために、アイウェアが使用されてもよい。
【0008】
変化する照明の状態は、適切な視覚とその認識を妨げる可能性がある。照明が突然または大幅に変化すると、その影響は、軽度の不便さから認識の無効化または危険なくらいの喪失にまで及ぶ。目は、明るい状態と暗い状態との両方に適応するために適度の時間を必要とし、その移行中に瞬間的に見えなくなることは(非常に不快ではあるが)一般的である。
【0009】
明るい日光の下で上記のような不快感を和らげるサングラスの利点が一般によく知られている。静的な色付きレンズは、光の強度を減少させ、場合によっては、レンズの特定の色によって特定の波長領域が優先的にブロックまたは吸収されて、深度知覚またはコントラスト強調をさらに支援する。また、偏光サングラスは、眩しいグレアをブロックして目の疲れを和らげるのに特に効果的である。別のアプローチとして、光の強度の変化に反応するフォトクロミックレンズもある。
【0010】
フォトクロミック眼鏡レンズに一般的に使用される有機フォトクロミック剤は、放射エネルギーの吸収に応じた結合切断、電子移動および/または回転によって分子配向が変化する柔軟な構造を有する。通常、このような再配向は、エネルギー源が除去されると元に戻される。そのため、フォトクロミック材料は、明るい光の下では暗色化(darken)し且つ光の強度が低下するにつれて透明化するよう選択される。しかしながら、この反応性にはいくつかの制限がある場合がある。多くのフォトクロミック物質は紫外線を吸収するため、車を運転しているときや電車に乗っているときなど、窓の後方に位置する場合は反応が制限される可能性がある。最近のフォトクロミック技術に関する進歩は、可視波長領域内への吸収性(活性化)を拡張させて、反応性を改善させている。別の制限として、フォトクロミック分子が、吸収されたエネルギーの変化にどれだけ速く反応するかということが挙げられる。太陽に照らされた明るい場所から室内に移動したときにレンズの薄色化(lighten)に30分かかることは、明らかに受け入れられない(危険な場合もある)。フェードバック(元の色に戻る)時間を短縮することは、フォトクロミックレンズの性能を評価する上で非常に重要な要素である。
【0011】
実際問題として、フォトクロミック分子の物理的環境は、その性能における反応性および寿命に大きな影響を与えることがわかっている。フォトクロミック有機分子の色の変化(薄色化および暗色化)は分子の物理的な再配列および移動に依存するため、フォトクロミック有機分子が物理的な再配列および移動を受けるために、ある程度の障害のない空間を設けることが好ましい。これは、気相または液相または溶液において問題にはならない。しかしながら、固体マトリックス内(アイウェアレンズ内またはレンズ上に塗布)に閉じ込められた場合に、多くの制限が現れる可能性がある。また、環境条件下で露出されたり物理的結合の動きが繰り返されたりすることで、フォトクロミック分子が「疲労」(すなわち着色または反応の低下)する可能性がある。
【0012】
例えば米国特許第4,968,454号、第5,405,557号および第5,523,030号ならびにそれらの中の参考文献に記載されているように、フォトクロミック物質を光学材料に塗布または組み込むための多くのプロセスが既に進歩している。同様に、フォトクロミック剤の組み込み易さに加えて、改善された耐衝撃性、改善された耐薬品性、高い屈折率、低い色収差、軽量化またはその他の有益な機能を含む特性を有する光学レンズ材料を改善するために、多くの開発が行われてきた。多くの場合、1つの領域の改善は、別の特性の性能の低下を伴う。その場合、光学レンズ装用者にとって効果的且つ最も有益な属性のバランスが決定される。
【0013】
フォトクロミック分子の媒体として、ポリウレタン材料が注目されてきた。ポリイソシアネートとポリオール物質との反応によって形成されるこれらの材料は、有機フォトクロミック物質のための良好なホスト材料であることがわかっている。ポリウレタン物質は、柔らかい材料(場合によってはエラストマー材料)であり、一次レンズ材料として機能するのに十分な剛性または構造的完全性を有さないが、コーティング、接着剤、中間層、埋込み層、またはレンズに接合されるまたはレンズ内に含まれる薄い積層体内の要素として使用することができる。米国特許第4,889,413号、第6,187,444B1号および第7,662,433B2号には、レンズに使用されるフォトクロミックポリウレタンコーティングの例が記載されている。また、例えば米国特許第4,889,413号、第6,107,395号および第9,440,419B2号には、接着剤、薄い中間層または積層体内の膜として使用され且つ光学レンズ内または上に組み込まれるフォトクロミックポリウレタン物質が記載されている。
【0014】
別のアプローチとして、多くの柔らかいまたは弾性ポリウレタン物質よりもはるかに高い衝撃強度を有するように設計され得るポリ(尿素-ウレタン)物質を検討することが挙げられる。例えば米国特許第5,962,617号、第5,962,619号、第6,127,505号、第6,531,076B2号、第6,733,887B2号、第6,734,272B2号、第7,002,744B2号、第7,144,969B2号および第9,316,765B2号に記載されているように、多くの場合、イソシアネート基を含む化合物と、ポリオールまたはその他のOH含有材料とを反応させて過剰なNCO反応基を含むプレポリマーを形成し、このポリウレタンプレポリマーとポリアミン物質とを反応させて最終的なポリ(尿素-ウレタン)を形成することで、ポリ(尿素-ウレタン)物質が形成される。これらの材料は、多くの場合、改善された耐衝撃性を有し、良好な光学的透明度および高い透過率を有するように設計され得る。これにより、レンズ基材および/または眼科医療用アイウェアレンズにおける実行可能な構造の層として使用することができる。また、フォトクロミック材料を反応性混合物に添加したり、吸収させたり、最終的なレンズ製品に塗布したりして、フォトクロミック特性を付与することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、新しい光学材料の開発、特にフォトクロミックアイウェアレンズまたは眼鏡レンズに使用される光学材料の開発において、信頼性が高い且つ長持ちするアイウェアレンズが必要とする強度、剛性および構造的復元力を維持しながら、フォトクロミック分子の必要な分子回転または再配列に対応するために、その構造内に十分なオープンな空間を設けることができる材料を提供するという課題が常にある。また、フォトクロミック反応の高速化およびレンズの透過率の変化(静止状態では薄色化し、活性エネルギーに曝されるとより暗色化する)の範囲の改善に対する継続的な市場の要求もある。しかしながら、同一製品内で「より暗く、より速く」の両方を満たすことは、特にフェードバックの速度を上げることを求める場合、困難だった。フェードバック率が増加することは、目の能動反応が遅い高齢者、光に対して非常に敏感な人、および頻繁に異なる光の強度を有する領域間を通過する人(例えば複数のトンネルを車で通過する人またはオープンな森林地帯を通過する人)にとって特に有益である。
【0016】
フォトクロミック性能のさらなる改善および光学材料の改善は、引き続き研究される領域である。本発明は、これらの領域に対処する新しいアプローチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一実施形態において、本発明は、フォトクロミックアイウェアレンズの製造方法に関する。該方法は、少なくとも1種のフォトクロミック材料と反応生成物とを組み合わせて、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層を少なくとも1つ形成するステップを含む。ここで、該反応生成物は、ポリウレタンプレポリマー、ジエチルトルエンジアミンと1種または複数種のポリオール物質との混合物、および該混合物の総重量に対して約0.05%~約1.1%の総重量%で含まれる1種または複数種の触媒を含む。この反応のためのポリウレタンプレポリマーは、得られたポリウレタンプレポリマーに過剰なNCO反応基が含まれるように、約2.5~4.0のNCO反応基/1.0のOH反応基の当量比において、脂環式ジイソシアネートと少なくとも1種のポリオールとを反応させて調整される。ジエチルトルエンジアミンと1種または複数種のポリオール物質との混合物中のポリオール物質は、1200未満の分子量をそれぞれ有する。また、混合物は、OHおよびNH2反応基を提供する。混合物におけるOHおよびNH2反応基の合計当量は、ポリウレタンプレポリマーにおける過剰なNCO反応基の1.0当量ごとに約0.75~約1.10の範囲にある。
【0018】
本発明の一実施形態において、混合物におけるOH反応基の当量は、ポリウレタンプレポリマーにおける過剰なNCO反応基の1.0当量ごとに少なくとも0.04である。別の実施形態において、混合物におけるOH反応基の当量は、ポリウレタンプレポリマーにおける過剰なNCO反応基の1.0当量ごとに少なくとも0.08である。別の実施形態において、混合物におけるOH反応基の当量は、ポリウレタンプレポリマーにおける過剰なNCO反応基の1.0当量ごとに少なくとも0.20である。
【0019】
本発明の一実施形態において、混合物におけるOHおよびNH2反応基の合計当量は、ポリウレタンプレポリマーにおける過剰なNCO反応基の1.0当量ごとに0.95を超えない。
【0020】
本発明の別の実施形態において、混合物におけるNH2反応基の当量は、ポリウレタンプレポリマーにおける過剰なNCO反応基の1.0当量ごとに0.745より小さい。
【0021】
本発明の一実施形態において、混合物とポリウレタンプレポリマーとを反応させる前に、1種または複数種の触媒が混合物に添加される。本発明の別の実施形態において、1種または複数種の触媒は、有機金属化合物または第三級アミンであり得る。別の実施形態において、1種または複数種の触媒として使用される有機金属化合物は、有機金属スズ化合物、有機金属亜鉛化合物、有機金属ジルコニウム化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
本発明の実施形態において、該方法は、1種または複数種のレンズ材料を含むレンズ要素上に、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層を少なくとも1つ形成するステップを含む。レンズ材料は、熱可塑性ポリカーボネート、硬質樹脂熱硬化性ポリマー物質、ポリ(尿素-ウレタン)物質、ポリチオウレタン物質、エピスルフィド物質、約1.56を超える屈折率を有するその他の硫黄含有ポリマー物質、ポリスチレン物質、ポリアミド物質、光学グレードのナイロンポリマー物質、アクリル物質、ポリアクリレート物質、およびポリメタクリレート物質を含むことができる。別の実施形態において、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層およびレンズ要素のうちの少なくとも一方に、1種または複数種のコーティングを塗布することができる。1種または複数種のコーティングは、硬質コーティング、疎水性コーティング、防曇コーティング、防湿コーティング、ミラーコーティング、可視光反射防止コーティング、紫外線反射防止コーティング、エレクトロクロミックコーティング、偏光コーティング、偏光多層薄膜コーティング、多層干渉コーティング、導電性コーティング、可視光フィルタコーティング、紫外線フィルタコーティング、および赤外線フィルタコーティングから選択することができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、レンズ要素上の変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層は、フォトクロミック材料が活性化されたときに555nmにおける透過率としてフェードバック率を測定した場合、少なくとも10%速いフェードバック率を有する。このより速いフェードバック率は、同じフォトクロミック材料と、同じポリウレタンポリマーとジエチルトルエンジアミンのみを反応させて形成された(混合物および触媒を除いた)反応生成物と、を含むポリ(尿素-ウレタン)の層を有するレンズ要素と比較したものである。別の実施形態において、レンズ要素上の変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層の可視視感透過率は、フォトクロミックレンズが活性化されたとき、15%より小さく8%より大きい。
【0024】
本発明の別の実施形態において、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層は、さらに、離型剤、熱または光安定剤、UV吸収剤、染料または着色剤(tints)、顔料、酸化防止剤、鎖延長剤、カラーブロッカー、蛍光増白剤、界面活性剤、可塑剤、および不活性耐衝撃性改良剤のような添加剤を1種または複数種含む。
【0025】
本発明の一実施形態において、フォトクロミック材料は、ハロゲン化銀、二色性金属酸化物、二色性有機染料、サーモクロミック物質、スピロ(インドリン)ピラン物質、ナフトピラン物質、ベンゾピラン物質、ジチゾネート物質、ベンゾオキサジン物質、スピロオキサジン物質、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン物質、スピロピリドベンゾオキサジン物質、アントロキノン物質、オキサジン物質、インドリジン物質、フルギド物質、またはフルギミド物質からなることができる。本発明の一実施形態において、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層を形成する方法は、少なくとも2種のフォトクロミック材料を含み、フォトクロミック材料の少なくとも1種は、可視光によって活性化される。本発明の一実施形態において、フォトクロミック材料(複数を含む。)とポリウレタンプレポリマーとを混合することができる。別の実施形態において、反応生成物とフォトクロミック材料とを接触させて、フォトクロミック材料を反応生成物に吸収させることで、フォトクロミック材料(複数を含む。)と反応生成物とを組み合わせることができる。
【0026】
本発明の別の実施形態は、上記方法によって作製されたフォトクロミックアイウェアレンズを備えるフォトクロミックアイウェア製品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態によるアイウェアレンズを例示的に示す側面図である。
【
図2】2つの眼鏡レンズブランク(それぞれの合計レンズ厚約10.5mm)のフォトクロミック性能に関する比較例を示すグラフである。一方のレンズブランクは、本発明の一実施形態に従って形成され(点線)、他方のレンズブランクは、市販の材料にフォトクロミック材料を添加して形成された(実線)。555nmにおける各レンズブランクの透過率に対する活性エネルギーに曝される時間がx軸に沿って示されている。フェードバックは、活性エネルギーがブロックされた時間=0から開始する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明者らは、光学物品に使用されるフォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)物質を形成する反応プロセスをさらに変更することにより、これらの光学物品、特にアイウェアレンズのフォトクロミック性能の予想外且つ著しい改善を得ることができた。ポリウレタンプレポリマーと大量のポリオール物質およびポリアミン反応物とを反応させて、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を形成すると、フェードバック率が著しく短縮され、驚くべきことに、レンズの最も暗い状態(得られた最も低い透過率)が損なわれなかった。実際、この改善された材料によって、フォトクロミック物質がより活性化され、本発明の実施形態を介して作製された光学物品において、さらに低い透過率の値を得ることができた。
【0029】
本発明の一実施形態において、光学物品が提供される。光学物品は、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)からなる構成要素を少なくとも1つ備える。本明細書に記載する光学物品は、目に見える少なくともある程度の光を透過するように設計され得る。一実施形態において、光学物品は、レンズの少なくとも1つの光学面上に変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層を少なくとも1つ備えるアイウェアレンズである。本実施形態の一態様において、アイウェアは、目の外側且つ目に直接接触しない位置に提供される。アイウェアレンズは、目の前方に装着される光学物品である。これらは、プラノレンズ、処方レンズ、または非処方レンズであってもよい。眼科医療用アイウェアレンズ製品とは、指定された度数がゼロ(プラノ)であっても、正の値であっても、負の値であっても、多焦点に対応したものであっても、完成したアイウェアレンズの指定された度数を維持するのに十分な構造的完全性を有するレンズおよびレンズブランクである。指定された度数は、個人の視力矯正のために処方されたものによって定義されてもよく、または、処方レンズ製品および非処方レンズ製品の業界または眼科医療用国内規格および国際規格に従って確立されてもよい。個人のニーズと要求に応じて、例えば視力を矯正するため、目の保護または改善された快適さを提供するため、またはファッションアクセサリとして使用するためという目的のうちの1つまたは複数の目的を有してもよい。通常、アイウェアレンズは、眼鏡フレーム、リム、マウンティング、ゴーグル、ヘルメット、キャリア、バイザー、またはユーザの目の前方でレンズを保持するように設計されたその他の構造に取り付けられる。本明細書において使用されるアイウェアレンズは、レンズブランク、半完成レンズブランク、完成したレンズブランク、表面仕上げレンズ、縁取りレンズ、および取り付けレンズを含む。
【0030】
多くの異なる光学材料を使用して、アイウェアレンズを形成することができる。このような材料は、固有のヘイズまたは散乱が低く、長期の摩耗に耐えて処方された度数を維持するのに十分な化学的、物理的および機械的完全性を有することが好ましい。当該技術分野で知られている材料の中には、様々な屈折率を有する金属酸化物ガラスを含む無機および有機光学材料、ポリカーボネート物質およびその他の材料を含む光学グレードの熱可塑性プラスチック、(ポリオール(アリルカーボネート)重合、特に、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の反応に基づく)硬質樹脂熱硬化性ポリマー物質、ポリ(尿素-ウレタン)物質、ポリウレタン物質、ポリチオウレタン物質、エピスルフィド物質、約1.56を超える屈折率を有するその他の硫黄含有ポリマー物質、ポリスチレン物質、ポリアミド物質、特定の強化された光学グレードのナイロンポリマー物質、アクリル物質、ポリアクリレート物質、ポリメタクリレート物質、およびその他の有機ポリマー物質がある。また、光学材料は、結晶構造、アモルファス構造、またはポリマー構造を有する混合有機材料および/または無機材料を含むことができ、材料の光学的、物理的または化学的な特性を変更するその他の添加剤を含むこともできる。
【0031】
アイウェアレンズ製品は、層状構造および複合体として光学材料の組み合わせを含むこともできる。本発明の一実施形態において、そのような組み合わせで変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を使用することができる。
図1に示すように、一実施形態において、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)は、目の前方に装着されたときにアイウェアレンズ100の外面により近い層20として形成され得る(すなわち、アイウェアレンズの使用時に、上記層は装用者の目からより遠い位置にある。)。この例示的な実施形態において、要素10は、アイウェアレンズが使用されるときに目の近くに配置される光学材料を含む層または構造である。本明細書にさらに記載するように、要素10は、1種または複数種の光学材料を含むことができ、物質、処理剤、層、コーティング、添加剤および/または構成要素を含むこともできる。一実施形態において、アイウェアレンズ100は、眼科医療用アイウェアレンズである。
【0032】
図1は、例示的な実施形態を示す。本発明の範囲において、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層を光学物品の内面上に配置することができることに留意されたい。また、光学物品の1つまたは複数のその他の要素の中、上、または要素に対して、層を挟んだり、積層させたり、接着させたり、結合させたり、融合させたり、接合させたり、取り付けたりすることで、光学物品の構造内に変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層を配置することも、本発明の範囲に含まれる。また、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層は、アイウェアレンズの直径全体よりも小さい範囲にわたって延在することができる。
【0033】
光学的品質は、光学物品およびアイウェアレンズの重要な要件であり得る。ただし、これらの製品は、すべての可視光を100%透過するわけではない。これは、屈折率の差に関する物理法則、表面での反射の結果、およびレンズ材料またはレンズ構造の固有のまたは設計された吸収率または反射率によるものである。実際、アイウェアレンズにおいて、一部の可視光および別の波長領域における一部の光の透過率が制限されることが非常に望ましい場合がある。例えば、特定の実施形態において、アイウェアレンズは、315nm~380nmの波長領域において大量のUV光を減衰させるまたはブロックすることができる。これは、レンズ材料(複数を含む。)の固有の吸収特性によって得られるか、レンズまたはレンズ材料(複数を含む。)と組み合わせた添加剤または処理剤の結果として生じる。例えば、UV吸収剤を要素10および/または層20に添加することができる。または、UV吸収剤を要素10または層20を形成する1種または複数種の反応物とともに添加することができる。または、UV吸収剤をアイウェアレンズの任意選択の層に含めることができる。別の例として、光学物品またはアイウェアレンズのコーティング、膜、およびその他の追加要素は、1種または複数種のUV反射体またはUV吸収剤を含むことができる。
【0034】
特定の実施形態において、アイウェアレンズのレンズ材料(複数を含む。)、要素10、層20、またはその他の要素は、1種または複数種の添加剤をさらに含むことができる。添加剤は、レンズ材料または要素のポリマー構造を変更させる物質、または眼科医療用レンズとしてより良好な性能を提供するために物理的、光学的または化学的な特性を変更させる物質を含むことができる。また、特定の材料の特性の安定性を向上させるため、またはそれらを特定の光学的または物理的な性能を有するように調整するために、添加剤が含まれてもよい。好ましい添加剤は、エレクトロクロミック物質、サーモクロミック物質、ナノ粒子、液晶物質、染料、着色剤、顔料、UV吸収剤、UV反射体、UV安定剤、熱安定剤、IR反射体、可視光フィルタ、選択的光反射体、および選択的光UV吸収剤などの物質を含む。
【0035】
別の実施形態において、光学物品、特にアイウェアレンズは、追加の任意選択の要素を含むことができる。これは、
図1において符号40で示す。これらの任意選択の要素は、要素10または層20の一方または両方、またはレンズ100の1つまたは複数の位置に追加することができる。このような1つまたは複数の追加の要素は、特定の光学的、化学的、または物理的な性能を調整する材料、物質、処理剤、層、またはコーティングを含むことができる。また、これらの追加の要素は、上述した添加剤を1種または複数種含むことができる。また、任意選択の要素(複数を含む。)40は、偏光子、ディスプレイ、カメラ、センサ、送信機、受信機、電気接点、無線デバイス、マーク、および装飾品を備えるまたは含むことができる。レンズ100に複数の任意選択の要素40が追加される場合、各要素は、同じまたは異なる材料、物質、処理剤、層、コーティング、添加剤および/または構成要素を含むことができる。
【0036】
アイウェアレンズ100は、外観を向上させるまたは特定のアイウェアレンズの使用に合わせて製品の性能や機能を変更する構成要素をさらに含むことができる。これらの構成要素は、要素10または層20の中または上に設けることができ、またはこれらの機能とは別の要素にすることができる。一実施形態において、光学物品は、膜、ウェハ、支持膜、コーティング、多層薄膜コーティング、多層ポリマー膜スタック、配線グリッド、または適用または埋め込み構造として実現される偏光子要素を含むことができる。好ましい偏光子は、直線型、勾配直線型、楕円型、円型、または可変型から選択され、単一、混合、複数、またはグラデーションの色合いを有することができる。別の実施形態において、アイウェアレンズは、ディスプレイ、カメラ、センサ、送信機、受信機、電気接点、回路、無線デバイス、マーク、および装飾品を含む任意選択の構成要素を備えることができる。
【0037】
アイウェアレンズ100の任意選択の要素(複数を含む。)40は、任意選択の塗布コーティングを含むこともできる。コーティングは、硬質コーティング、疎水性コーティング、防曇コーティング、防湿コーティング、ミラーコーティング、可視光反射防止コーティング、UV反射防止コーティング、フォトクロミックコーティング、エレクトロクロミックコーティング、偏光コーティング、偏光多層薄膜コーティング、多層干渉コーティング、導電性コーティング、その他の可視光、UVまたは赤外線フィルタコーティング、およびレンズの光学的、化学的または機械的な特性を調整するためのその他のコーティングを含む。コーティングは、1つまたは複数の層を含むことができる。例えば、誘電体材料、金属/誘電体材料、または導電性/絶縁性材料からなる多層干渉コーティングは、2~数百層の範囲になり得る。また、1種または複数種のコーティングをアイウェアレンズと組み合わせて使用されてもよい。
【0038】
アイウェアレンズ100の任意選択の要素(複数を含む。)40、要素10および/または層20は、レンズまたはそれぞれの層または要素の表面特性を変更するための任意選択の処理剤を含むことができる。いくつかの好ましい任意選択の処理剤は、防湿剤または離型剤として機能したり、防曇性または洗浄の容易さを改善したりすることができる。その他の好ましい任意選択の処理剤は、傷、衝撃、または化学薬品に対する耐性を高めることができる。または、後続ステップにおけるコーティング、層、または材料の接着性を強化することができる。
【0039】
変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)材料を使用して光学物品全体を形成することができる。しかしながら、本発明の一実施形態において、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)は、光学物品、特にアイウェアレンズの中または上に比較的薄い層のみを形成するために使用される。このアプローチに関していくつかの利点が得られる。第1に、フォトクロミック物質は、非常に高価である。第2に、光エネルギーに曝されることでフォトクロミック分子が活性化されると、それらが暗色化して構造のより深い部分にあるフォトクロミック分子の反応を妨害する可能性がある。これは、材料および限られた資金を無駄にする可能性がある。その一方で、より厚い層へ活性化エネルギーが十分に浸透し且つその層が均一でない場合、不均一な暗色化が生じる可能性がある。これは、レンズの外観に望ましくない斑点を生じさせる。発明者らは、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)材料の比較的薄い層のみがアイウェアレンズ100に組み込まれると、要素10を含むその他の光学材料と有利に組み合わせて光学物品の全体的な特性を強化することができることを見出した。
【0040】
便宜上、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)材料を層20と呼ぶ。この変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)材料の層は、本発明の様々な実施形態に従って作製されたアイウェアレンズまたは光学物品の構造の外面またはその近傍、内面またはその近傍、または中間位置に配置することができることに留意されたい。
図1に示すように、一実施形態において、層20は、使用中の(目の前方に装着される)アイウェアレンズ100の外面に向けて配置される。これは、フォトクロミック物質(複数を含む。)を日光によりよく曝すために好ましい場合がある。別の実施形態において、目からより離れた位置にある層20に、1つまたは複数の任意選択の要素(複数を含む。)40を追加することができる。このような任意選択の要素40は、例えば、硬質コーティング、反射防止コーティング、UVまたはIR吸収剤、またはUVまたはIR反射体を含むことができる。
【0041】
変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)材料は、少なくとも1種のフォトクロミック材料を含む。好ましいフォトクロミック材料は、ハロゲン化銀および二色性金属酸化物のような無機材料と、いくつかの二色性有機染料、サーモクロミック物質(特に有機金属サーモクロミック物質)、ならびにスピロ(インドリン)ピラン物質、ナフトピラン物質、ベンゾピラン物質、ジチゾネート物質、ベンゾオキサジン物質、スピロオキサジン物質、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン物質、スピロピリドベンゾオキサジン物質、アントロキノン物質、オキサジン物質、インドリジン物質、フルギド物質、フルギミド物質のような様々な芳香族、ヘテロ芳香族、および環化合物を含む有機材料と、当該技術分野で知られているその他のフォトクロミック材料とを含むことができる。一実施形態において、ナフトピランフォトクロミック材料を使用することができる。1種または異なる複数種のフォトクロミック材料または異なるフォトクロミック族を組み合わせて変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)材料において使用することができる。
【0042】
一実施形態において、フォトクロミック物質が活性化されたときにアイウェアレンズがニュートラルグレー色を示すように、1種または複数種のフォトクロミック材料を組み合わせることができる。別の実施形態において、レンズは、活性化されたときにグレー以外の識別可能な色を提供する1種または複数種のフォトクロミック材料を含むことができる。別の実施形態において、アイウェアレンズは、静止(非活性化)状態におけるアイウェアに薄い色合いを提供し且つ可視光および/またはUV光によって活性化されたときに暗い色合いを提供する、1種または複数種のフォトクロミック材料を含むことができる。
【0043】
別の実施形態において、アイウェアレンズは、異なる光の強度または曝露の波長の下で、色相を変えることができる。
【0044】
一実施形態において、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)材料は、色相および色合いの深さのいずれかまたは両方を変えるために、異なる波長領域(UV曝露、近UV曝露、近可視光曝露、または青色光曝露)によって活性化される1種または複数種のフォトクロミック物質を利用するように有利に設計され得る。ほとんどの市販のフォトクロミック材料は、UV光によってのみ活性化される。しかしながら、一部のフォトクロミック材料は、可視光の下で吸収および反応するか、可視光にある程度反応するように可視範囲(青色光のエッジ付近)に広がる吸収テールを有することができる。可視光によって活性化されるフォトクロミック材料は、アイウェアレンズによる追加のUVまたは青色光フィルタを提供することができる。様々な光周波数によって活性化されるフォトクロミック材料を使用するまたは組み合わせることで、発明者らは、直射日光、様々な人工光源、または窓やフロントガラスを介してフィルタリングされる光に反応するように、アイウェアレンズを有利に調整することができた。
【0045】
光学部品用の耐衝撃性ポリ(尿素-ウレタン)物質を調整するための従来の方法および化学的性質のいくつかは、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を調整するための出発点として使用することができる。通常、上述したポリ(尿素-ウレタン)物質は、活性イソシアネート基を含む「A側」のポリウレタンプレポリマーと、ポリアミン化合物(複数を含む。)を含む「B側」とを、A側の過剰なNCO反応基の大部分がB側のアミン基との反応で消費されて最終的なポリ(尿素-ウレタン)製品が形成されるような当量比で反応させることで形成される。A側のポリウレタンプレポリマーを形成するためのNCO:OH反応の当量比は、約2:1~約4.5:1の範囲であってよい。B側とA側との反応のための反応性アミンと過剰な反応性NCOとの当量比は、約0.85:1~約1.1:1の範囲であってもよい。例えば米国特許第6,127,505号およびその中の参考文献、ならびに参照により本明細書にそれぞれ組み込まれる第7,002,744B2号、第6,531,076B2号および第6,733,887B2号には、光学物品に適した耐衝撃性ポリ(尿素-ウレタン)物質を作製するための方法および反応性混合物が詳細に記載されている。さらに、米国特許第6,531,076B2号および第6,733,887B2号には、フォトクロミック材料とポリアミンおよびプレポリマーとを混合してフォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を形成することが記載されている。
【0046】
本発明者らは、第6,127,505号、第7,002,744B2号、第6,531,076B2号および第6,733,887B2号に記載されているタイプのポリ(尿素-ウレタン)材料の反応における「B側」のポリアミンの一部を追加のポリオール(複数を含む。)で置換することにより、改善されたおよび変性のポリ(尿素-ウレタン)が得られることを見出した。これは、より少ないポリオールがA側に添加され、(A側に所望のNCO:OH当量比を得るために)残りのポリオールがB側に添加される従来の準プレポリマー法とは異なる。本発明の一実施形態において、反応性混合物中のポリオールの全体の割合は、従来のポリ(尿素-ウレタン)物質と比較して、著しく増加している。
【0047】
上述した開示のいくつかに従って作製された光学部品のための耐衝撃性ポリ(尿素-ウレタン)物質は、例えばPPG Industries,Inc.から市販されているTrivex(登録商標)のA側およびB側材料を組み合わせることによって作製することができる。便宜上、本発明者らは、これらの材料または同様のA側およびB側の混合物を、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)物質の出発物質として使用した。
【0048】
また、A側は、離型剤、熱または光安定剤、UV吸収剤、染料または着色剤、顔料、酸化防止剤、鎖延長剤、カラーブロッカー、蛍光増白剤、界面活性剤、可塑剤、不活性耐衝撃性改良剤、またはその他の材料を含むその他の添加剤を含むことができる。これにより、最終的な反応生成物の光学的または物理的な特性を改善することができる。このような添加剤は、B側にも含まれてもよい。しかしながら、ポリアミン化合物の反応性を考慮すると、A側のみにこれらの添加剤を含めるか、A側とB側との間で反応が生じるときに別々に混合することが、より効果的且つ有益であり得る。
【0049】
一実施形態において、フォトクロミック材料は、反応性混合物のA側(ポリウレタンプレポリマー)に添加された。1種または複数種のフォトクロミック材料を様々な重量%で使用することができる。一般に、得られる光学物品の着色(暗色化)の度合いは、添加されたフォトクロミック材料(複数を含む。)の量とともに増加する。しかしながら、このフォトクロミック材料が高価であるため、また、アイウェアレンズの透過率をある程度低く抑える必要があるため、効果的な暗色化を実現しながら重量%を可能な限り低く保つことが好ましい場合がある。本発明の実施形態において、約5重量%未満、約4重量%未満、約3.5重量%未満、約3%未満、約2.9重量%未満、約2.8重量%未満、約2.7重量%未満、約2.6重量%未満、約2.5重量%未満、約2.4重量%未満、約2.3重量%未満、約2.2重量%未満、約2.1重量%未満、約2重量%未満、約1.9重量%未満、約1.8重量%未満、約1.7重量%未満、約1.6重量%未満、約1.5重量%未満、約1.4重量%未満、約1.3重量%未満、約1.2重量%未満、約1.1重量%未満、約1重量%未満、約0.9重量%未満、約0.8重量%未満、約0.7重量%未満、約0.6重量%未満、約0.5重量%未満、約0.4重量%未満、約0.3重量%未満、または約0.25重量%未満のフォトクロミック材料が使用される。別の実施形態において、含まれるフォトクロミック材料の量は、前述の値のうちの任意選択の2つの値の間にあるおよびそれらの値を含む範囲である。本実施形態の一態様において、含まれるフォトクロミック材料の量は、約2重量%より小さく、約0.25重量%より大きい。本実施形態の別の態様において、含まれるフォトクロミック材料の量は、約1.8重量%より小さく、約0.3重量%より大きい。本実施形態の別の態様において、含まれるフォトクロミック材料の量は、約1.6重量%より小さく、約0.5重量%より大きい。
【0050】
変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を作製するために、A側のポリウレタンプレポリマーを形成するためのNCO:OH当量比は変更されなかった。ただし、B側とA側のプレポリマーとを反応させる前に、追加のポリオール物質が反応性混合物のB側に添加された。これにより、B側のNH2およびOH種と、A側のポリウレタンプレポリマーの過剰なNCO反応基との競合反応が生じる。イソシアネート基とアミン基との反応は、イソシアネート物質とヒドロキシル基との反応よりも熱力学的および動力学的に有利である。しかしながら、過剰な未反応のヒドロキシル基は、脆いまたは不透明な製品につながる可能性がある。したがって、OH反応を促進するために、1種または複数種の触媒をB側に添加することもできる。
【0051】
B側に添加するのに好ましいポリオール物質は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびポリオール共重合体を含む。本発明の一実施形態において、ポリオール物質は、架橋の度合いを制御することができるジオール物質を含む。架橋が多すぎると、層20のポリマーマトリックスにおけるフォトクロミック活性が妨げられる可能性がある。使用することができるポリオール物質は、脂肪族または脂環式ポリオール物質および脂肪族または脂環式ジオール物質のいずれか1種または組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、添加されるポリオール物質は、1種または複数種の脂肪族または脂環式ジオール物質を含む。
【0052】
本発明の実施形態において、B側に添加される1種または複数種のポリオール物質は、約1200未満、約1100未満、約1000未満、約900未満、約800未満、約700未満、約600未満、約500未満、約400未満、約300未満、約200未満、または約100未満の分子量を有する。別の実施形態において、1種または複数種のポリオール物質は、前述の値のうちの任意選択の2つの値の間にあるおよびそれらの値を含む分子量を有してもよい。
【0053】
別の実施形態において、1種または複数種のポリオール物質は、約1200未満、約1100未満、約1000未満、約900未満、約800未満、約700未満、約600未満、約500未満、約400未満、約300未満、約200未満、または約100未満の分子量を有する1種または複数種のジオール物質を含む。別の実施形態において、1種または複数種のジオール物質は、前述の値のうちの任意選択の2つの値の間にあるおよびそれらの値を含む分子量を有してもよい。一実施形態において、1200未満の分子量を有する添加ポリオール物質は、ポリエーテルジオール物質である。別の実施形態において、添加ポリオール物質は、テトラヒドロフランに基づくポリエーテルジオール物質である。
【0054】
B側に添加されるポリオール物質または好ましくはジオール物質の量は、B側のアミンの当量比の一部を置換する。これにより、B側の反応物とA側の過剰なNCO反応種との当量比がほぼ一定に保たれる(例えば、B:A比は約0.75~1.2:1である。)。しかしながら、ここで、B側の反応物には、アミン基に加えて、著しい量のヒドロキシル基が含まれる。このB側の反応物の組み合わせは、第6,127,505号、第7,002,744B2号、第6,531,076B2号および第6,733,887B2号に記載されている反応経路および得られたポリ(尿素-ウレタン)製品とは異なる。これらの公報において、B側の反応種は、アミン基のみであった。また、プレポリマーを形成するために使用されるポリオール反応物の一部が、B側に添加される場合があることが記載されている。しかしながら、これは、B側で利用可能なNH2反応種の総量を変えず、B側の反応物とA側の過剰なNCO反応基との当量比も変えなかった。
【0055】
本発明の一実施形態において、A側と反応させることができるB側の反応種の数は、上述した範囲と同じである(例えば、B:Aの反応種の比率は、約0.75:1~約1.2:1である。)。しかしなら、この比率を作り出すB側の種は、アミン基のみでなく、具体的にヒドロキシル基を含む。一実施形態において、B:Aの反応種の当量比は、約0.75:1~約1.10:1の範囲である。
【0056】
言い換えると、B側の反応物にポリオール物質を添加することは、B側の反応種が、所定の当量比に対して、OH種とNH2種の両方を含むことを意味する。例えば、上述した市販の材料において、B:Aの当量反応性比を0.75:1.0に設定すると、これは、A側の過剰なNCO反応種の1.0当量と反応するB側のNH2基の0.75当量に対応することになる。対照的に、本発明のこの実施形態において、0.75:1.0の同じB:Aの当量反応性比で、B側の当量比は、[xOH基+(0.75-x)NH2基]を含むことになる。便宜上、B側が複数のタイプの反応種を含むことを示すため、およびB側の合計当量に対する影響を識別するために、反応性比に対するB側の当量を、次のように表す。
BTOT=BOH+BNH2 (式1)
ここで、BTOTは、B側の混合物中のすべてのOHおよびNH2反応種の合計当量を示し、BOHおよびBNH2は、OHおよびNH2反応種に関連した合計当量の部分をそれぞれ示す。すなわち、BOHは、B側の反応性混合物におけるOH反応基の当量を示し、BNH2は、B側の反応性混合物におけるNH2反応基の当量を示す。便宜上、A側の反応種に対するB側の種の当量反応性比を、A側のポリウレタンプレポリマーの過剰なNCO反応種の1.0当量を基準にして示す。
【0057】
本発明の実施形態において、A側の過剰なNCO反応基に対するB側の反応種の合計当量比BTOTは、約0.75:1.0、約0.755:1.0、約0.76:1.0、約0.77:1.0、約0.78:1.0、約0.79:1.0、約0.80:1.0、約0.81:1.0、約0.82:1.0、約0.825:1.0、約0.83:1.0、約0.835:1.0、約0.84:1.0、約0.845:1.0、約0.85:1.0、約0.855:1.0、約0.86:1.0、約0.865:1.0、約0.87:1.0、約0.875:1.0、約0.88:1.0、約0.89:1.0、約0.90:1.0、約0.91:1.0、約0.92:1.0、約0.93:1.0、約0.94:1.0、約0.95:1.0、約0.96:1.0、約0.97:1.0、約0.98:1.0、約0.99:1.0、約0.995:1、約1.0:1.0、約1.05:1.0、約1.10:1.0、約1.15:1.0、または約1.20:1.0であり得る。別の実施形態において、A側の過剰なNCO反応基に対するB側の反応種の合計当量比(BTOT:Aの当量比)は、前述の値のうちの任意選択の2つの値の間にあるおよびそれらの値を含む範囲であり得る。
【0058】
一実施形態において、B側に添加されるポリオール物質は、A側の過剰なNCO基と反応する反応種の少なくとも4%を置換する。例えば、BTOT:Aの反応物の合計当量比が0.75:1.0である上述した例において、B側の4%のOH反応基は、(OHの0.03当量+NH2の0.72当量)=A側の過剰なNCOの1.0当量と反応するB側の反応種の合計当量0.75に対応する。これを、式(1)に当てはめるとBOH=0.03、BNH2=0.72、およびBTOT=0.75である。別の実施形態において、B側に添加されるポリオール物質は、B側の反応種の少なくとも8%を置換する。例えば、同じBTOT:Aの当量反応性比が0.75:1.0のNCOにおいて、8%の置換は、(OHの0.06当量+NH2の0.69当量)=A側のNCOの1.0当量と反応するB側の反応種の合計当量0.75に対応する。このB側のBTOTの0.75当量値は、BOH=0.06およびBNH2=0.69に対応する。
【0059】
別の実施形態において、添加されるポリオール物質は、A側の過剰なNCO反応種と反応するB側の反応種の少なくとも25%を置換する。例えば、NH2反応基をOH反応基で25%置換して、BTOT:A種の当量比が0.95:1.0として選択される場合、B側の反応基は、(OH基の0.2375当量およびNH2基の0.7125当量)=A側の過剰なNCOの1.0当量と反応するB側の反応種の合計当量0.95を構成することになる。BTOT:Aの当量比が0.95:1.0の例における25%の置換の場合、BOH=0.2375およびBNH2=0.7125である。別の実施形態において、添加されるポリオール物質は、A側の過剰なNCO種と反応するB側の反応種の少なくとも50%を置換する。したがって、NH2反応基の50%を置換して、BTOT:Aの反応種の当量比が1.10:1.0として選択される場合、B側の反応基は、(OH基の0.55当量およびNH2基の0.55当量)=A側のNCOの1.0当量と反応するB側の合計当量1.10を構成することになる。この場合、BOH=0.55およびBNH2=0.55である。
【0060】
本発明の特定の実施形態において、所定のBTOT:Aの当量比に関して、A側のポリウレタンプレポリマーの過剰なNCO反応種の当量は1.0であり、BOH=xおよびBNH2=(BTOT-x)である。ここで、xは、少なくとも0.02、少なくとも0.03、0.04、少なくとも0.05、少なくとも0.06、少なくとも0.07、少なくとも0.08、少なくとも0.09、少なくとも0.10、少なくとも0.11、少なくとも0.12、少なくとも0.125、少なくとも0.13、少なくとも0.135、少なくとも0.14、少なくとも0.145、少なくとも0.15、少なくとも0.155、少なくとも0.16、少なくとも0.165、少なくとも0.17、少なくとも0.175、少なくとも0.18、少なくとも0.185、少なくとも0.19、少なくとも0.195、少なくとも0.20、少なくとも0.205、少なくとも0.21、少なくとも0.22、少なくとも0.23、少なくとも0.24、少なくとも0.25、少なくとも0.26、少なくとも0.27、少なくとも0.28、少なくとも0.29、少なくとも0.30、少なくとも0.31、少なくとも0.32、少なくとも0.33、少なくとも0.34、少なくとも0.35、少なくとも0.36、少なくとも0.37、少なくとも0.38、少なくとも0.39、少なくとも0.40、少なくとも0.41、少なくとも0.42、少なくとも0.43、少なくとも0.44、少なくとも0.45、少なくとも0.46、少なくとも0.47、少なくとも0.48、少なくとも0.49、少なくとも0.50、少なくとも0.51、少なくとも0.52、少なくとも0.53、少なくとも0.54、少なくとも0.55、少なくとも0.56、少なくとも0.57、少なくとも0.58、少なくとも0.59、少なくとも0.60、少なくとも0.61、少なくとも0.62、少なくとも0.63、少なくとも0.65、少なくとも0.66、少なくとも0.67、少なくとも0.68、少なくとも0.69、少なくとも0.70、または少なくとも0.74である。別の実施形態において、xの値は、前述の値のうちの任意選択の2つの値の間にあるおよびそれらの値を含む範囲であり得る。
【0061】
BTOTの当量の割合としてのBOHのBTOTへの影響を表すと、BOHは、BTOTの少なくとも2%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも32%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも38%、少なくとも40%、少なくとも42%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも48%、少なくとも50%、少なくとも52%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも58%、少なくとも60%、少なくとも62%、または少なくとも64%を構成してもよい。この場合、BTOTは、A側のポリウレタンプレポリマーの過剰なNCO反応基の1.0当量と比較して表される。
【0062】
言い換えると、B側に添加されるポリオール物質は、B側の混合物の総質量に部分的に影響を与える。一実施形態において、B側に添加されるポリオール物質は、反応性のB側種の総質量の少なくとも約10%、少なくとも約10.5%、少なくとも約11%、少なくとも約11.5%、少なくとも約12%、少なくとも約12.5%、少なくとも約13%、少なくとも約13.5%、少なくとも約14%、少なくとも約14.5%、少なくとも約15%、少なくとも約15.5%、少なくとも約16%、少なくとも約16.5%、少なくとも約17%、少なくとも約17.5%、少なくとも約18%、少なくとも約18.5%、少なくとも約19%、少なくとも約19.5%、少なくとも約20%、少なくとも約20.5%、少なくとも約21%、少なくとも約21.5%、少なくとも約22%、少なくとも約22.5%、少なくとも約23%、少なくとも約23.5%、少なくとも約24%、少なくとも約24.5%、少なくとも約25%、少なくとも約25.5%、少なくとも約26%、少なくとも約26.5%、少なくとも約27%、少なくとも約27.5%、少なくとも約28%、少なくとも約28.5%、少なくとも約29%、少なくとも約29.5%、少なくとも約30%、少なくとも約30.5%、少なくとも約31%、少なくとも約31.5%、少なくとも約32%、少なくとも約32.5%、少なくとも約33%、少なくとも約33.5%、少なくとも約34%、少なくとも約34.5%、少なくとも約35%、35.5%、少なくとも約36%、少なくとも約36.5%、少なくとも約37%、少なくとも約37.5%、少なくとも約38%、少なくとも約38.5%、少なくとも約39%、少なくとも約39.5%、少なくとも約40%、少なくとも約40.5%、少なくとも約41%、少なくとも約41.5%、少なくとも約42%、少なくとも約42.5%、少なくとも約43%、少なくとも約43.5%、少なくとも約44%、少なくとも約44.5%、少なくとも約45%、少なくとも約45.5%、少なくとも約46%、少なくとも約46.5%、少なくとも約47%、少なくとも約47.5%、少なくとも約48%、少なくとも約48.5%、少なくとも約49%、少なくとも約49.5%、少なくとも約50%、少なくとも約50.5%、少なくとも約51%、少なくとも約51.5%、少なくとも約52%、少なくとも約52.5%、少なくとも約53%、少なくとも約53.5%、少なくとも約54%、少なくとも約54.5%、少なくとも約55%、55.5%、少なくとも約56%、少なくとも約56.5%、少なくとも約57%、少なくとも約57.5%、少なくとも約58%、少なくとも約58.5%、少なくとも約59%、少なくとも約59.5%、少なくとも約60%、少なくとも約60.5%、少なくとも約61%、少なくとも約61.5%、少なくとも約62%、少なくとも約62.5%、少なくとも約63%、少なくとも約63.5%、少なくとも約64%、少なくとも約64.5%、少なくとも約65%、65.5%、少なくとも約66%、少なくとも約66.5%、少なくとも約67%、少なくとも約67.5%、少なくとも約68%、少なくとも約68.5%、少なくとも約69%、少なくとも約69.5%、少なくとも約70%、少なくとも約70.5%、少なくとも約71%、少なくとも約71.5%、少なくとも約72%、少なくとも約72.5%、少なくとも約73%、少なくとも約73.5%、少なくとも約74%、少なくとも約74.5%、少なくとも約75%、75.5%、少なくとも約76%、少なくとも約76.5%、少なくとも約77%、少なくとも約77.5%、少なくとも約78%、少なくとも約78.5%、少なくとも約79%、少なくとも約79.5%、または少なくとも約-80%を質量で構成することができる。別の実施形態において、B側に添加される過剰なポリオール物質は、前述の値のうちの任意選択の2つの値の間にあるおよびそれらの値を含む範囲であり得る。好ましい実施形態の一態様において、添加ポリオール物質は、反応性のB側の総質量の約25%~約75%を構成することができる。
【0063】
B側の変性反応性混合物には、1種または複数種の触媒を含むことができる。1種または複数種の触媒は、有機金属化合物または第三級アミンであり得る。触媒の例として、有機金属スズ、コバルト、ビスマス、水銀、亜鉛または混合金属錯体が挙げられる。様々な異なる有機金属触媒が、例えばKing Industries,Inc.(米国コネチカット州ノーウォーク)から市販されている。混合金属錯体の触媒の一例として、King IndustriesによるK-KAT(登録商標)XK-604が挙げられる。これは、亜鉛とジルコニウム化合物の独自の混合物である。スズの触媒の一例として、Evonik Nutrition and Care GmbH(ドイツ国エッセン)によるDABCO T-12のようなジブチルスズジラウレートが挙げられる。不要なまたは危険な化学物質に曝されることを制限しながら必要な反応を開始するために、様々な触媒を選択することができる。1種または複数種の触媒を、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.3重量%、少なくとも約0.4重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.1重量%、少なくとも約1.2重量%、少なくとも約1.3重量%、少なくとも約1.4重量%、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約1.6重量%、少なくとも約1.7重量%、少なくとも約1.8重量%、少なくとも約1.9重量%、または少なくとも約2重量%の総重量%で、B側の反応性混合物中に提供することができる。1種または複数種の触媒は、前述の値のうちの任意選択の2つの値の間にあるおよびそれらの値を含む範囲の総重量%でB側の反応性混合物中に提供され得る。本実施形態の一態様によれば、1種または複数種の触媒は、約0.1%~約1%の範囲で提供され得る。
【0064】
別の実施形態において、A側とB側とが組み合わされたときに、1種または複数種の触媒を反応に添加することができる。
【0065】
A側とB側とが組み合わされたときに、発熱反応が生じる。反応生成物は、約2分未満で固化し始める場合がある。しかしながら、通常、光学物品は、制御された温度条件の下で数時間硬化される。これにより、既知の反応の度合いと選択された光学形状の良好な保持を確保することができる。様々な硬化温度および硬化時間を使用することができ、後続の作業で必要な硬化の度合い、反応において使用される添加剤または材料の熱感度、生産効率、安全性および取り扱いに関する考慮事項、またはその他の実用的な要素に基づいて選択することができる。例示的な硬化条件は、摂氏40度で2時間~24時間から、摂氏130度で2時間~12時間までの範囲であり得る。
【0066】
A側およびB側の反応性混合物は、それぞれ空気または水への露出が厳しく制限される容器に保持および保管することができる。そうしない場合、混合物が黄色く変色したり、濁ったり、空気中の水分に反応し始めたりする可能性がある。
【0067】
本明細書に記載するように、光学物品の大部分よりも光学物品の層として、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を使用することが(必須ではないが)好ましい。アイウェアレンズにおいて、一般的な完成したレンズの厚さは、必要な処方度数、耐衝撃性、構造的完全性、またはその他の性能や審美的な考慮事項を含む要素に応じて、約0.7mmから約2~10mmまでの範囲にある。この場合、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を含む層20の厚さは、好ましくは約1mm以下、より好ましくは約0.1mm~0.7mmの範囲、より好ましくは約0.3mm~0.7mmの範囲である。要素10(または要素10と、要素(複数を含む。)40のようなその他の任意選択の要素との組み合わせ)は、アイウェアレンズの残りの厚さの大部分を構成する。
【0068】
層20は、様々な方法によって光学物品の要素10およびその他の任意選択の要素と組み合わせることができる。例えば、要素10は、事前に形成されたレンズまたはレンズブランクであり得る。次に、例えば米国特許第5,405,557号または第7,002,744B2号およびその中の参考文献に記載されているような添加技術を使用して、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の反応性混合物を要素10の表面上に誘導して、制御された条件下で固化させて層20を形成することができる。この場合、要素10は、層20の成形面(複数を含む。)の1つして機能することができる。別の取り外し可能な金型が層20を収容して、光学物品に望ましい形状に成形する2つ目の面として機能することができる。
【0069】
一実施形態において、要素10は、単焦点、多焦点または累進レンズまたはレンズブランクを含むことができる。さらなる実施形態において、要素10は、熱可塑性ポリカーボネート、硬質樹脂熱硬化性プラスチック、硫黄を含む高屈折率材料、ポリチオウレタン物質、エピスルフィド物質、ポリスチレン物質、ポリアミド物質、光学グレードのナイロンポリマー物質、アクリル物質、ポリアクリレート物質、ポリメタクリレート物質、および米国特許第5,962,617号、第6,127,505号および第7,002,744B2号ならびにそれらの中の参考文献に記載されているようなポリ(尿素-ウレタン)物質を含むレンズ材料を有することができる。
【0070】
要素10と2つ目の成形面との間に変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を形成する反応性混合物を収容するために、金型のエッジ部周りにガスケットまたはテープのような支持体を使用してもよい。米国特許第7,002,744B2号に記載されているように、反応性混合物を制御された状態で導入し、金型間に材料を収容して、成形面間で適切な配置および間隔を維持するための方法の1つとして、サイドフィルガスケットが挙げられる。
【0071】
別の構築方法として、重力または圧力による補助を使用して、アイウェアレンズ100を形成することができる。1つの例示的な方法において、水平面上に金型を配置する。型の表面に変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を形成する反応性混合物を投入してから、液体の反応性混合物上に要素10(レンズまたはレンズブランクなど)を配置して、重力または要素10の背面に対する制御された圧力によって、金型と要素10の表面との間の混合物をプレスする。代替的に、水平面上に要素10を配置して、要素10の表面上に反応性混合物を投入してから、液体の反応性混合物上に取り外し可能な金型を配置して、重力または金型の背面に対する制御された圧力によって、金型と要素10の表面との間の混合物をプレスすることができる。
【0072】
要素10と層20のその他の製造方法または組み合わせ方法が当該技術分野で知られているが、本明細書からもそれを理解することができる。別の実施形態において、最初にフォトクロミック物質を有さない変性ポリ(尿素-ウレタン)のレンズ要素、構成要素または層を作製し、次にそれぞれの要素、構成要素または層とフォトクロミック材料とを接触させて、変性ポリ(尿素-ウレタン)の中または上にフォトクロミック物質を吸収、着色、転写または浸透させることで、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)が形成される。これにより、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を含む最終的なレンズ要素、構成要素または層を形成することができる。
【0073】
本発明者らは、本発明の様々な実施形態においていくつかの重要な利点を得ることができた。多くの場合、高速のフォトクロミック反応を可能にするポリマーマトリックス材料が形成されると、光学物品において効果的に使用するには柔らかくなりすぎて、特にアイウェアレンズのための処方された度数に対する厳しい要件を満たすことができない。変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)は、本明細書に記載する市販のA側およびB側材料から直接形成されたポリ(尿素-ウレタン)よりもわずかに柔らかいが、アイウェアレンズで使用した場合、ひどく損傷しやすいわけではない。
【0074】
本発明の実施形態から、フォトクロミック性能に関するさらなる重要な利点を得ることができた。本発明者らは、本明細書に記載する市販のA側およびB側材料に同じフォトクロミック物質を直接添加した場合の性能と比較して、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)のフェードバック速度が大幅に改善することを見出した。
【0075】
本発明の別の実施形態において、反応性混合物のA側にフォトクロミック材料を組み込む代わりに、着色浴を介して変性ポリ(尿素-ウレタン)の層を形成した後に、変性ポリ(尿素-ウレタン)の層の上にフォトクロミック材料を塗布した。有利には、本実施形態で観察されたフェードバック速度は、ポリオール物質を添加していない市販のA側およびB側材料から調整されたポリ(尿素-ウレタン)の層の類似の色付けと比較して速かった。
【0076】
驚くべきことに、着色の深さは、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の反応性の速さによって損なわれなかった。通常、反応速度が上がるとレンズは暗色化しにくいため、これは驚くべき非常に有利な結果である。フォトクロミック分子の回転または再構成が容易なため、この特性のトレードオフを理解することができる。すなわち、自由に回転して構成を変更することができる場合、反応速度が上がる。しかしながら、その移動の自由さは、通常、新しい位置に保持することができないことを意味する。これにより、簡単に元の色に戻り、濃い色を得ることができない場合がある。変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を含む本発明の実施形態は、この変性ポリマーマトリックスにおいて、フォトクロミック色の濃度を著しく発達させることができる構造と移動の自由さとを有利にバランスさせることができる。
【0077】
これは、以下の非限定的な例で見ることができる。
【実施例】
【0078】
フォトクロミック材料を有する変性A側の調整。市販のTrivex(登録商標)(PPG Industries,Inc.)のA側光学グレード透明ポリウレタンプレポリマーに、独自のナフトピランフォトクロミック材料(日本の東京都にあるTokuyama Corp.)を重量%で添加した。2種以上のフォトクロミック材料の混合物を組み合わせて、活性化によってよりニュートラルな灰色がかった色を実現した。ガラス成形面に対して発熱反応物質が付着することを防止するために、A側の混合物に、約0.75重量%~1重量%の市販の内部離型剤(米国ニューヨーク州ウッドサイドにあるAxel Plastics Research Laboratories,Inc.)を添加した。変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の形成に使用する前に、フォトクロミック染料および離型剤を、乾燥窒素下において摂氏50度で1時間~2時間、A側のポリウレタンプレポリマーと混合した。
【0079】
変性B側の調整。一連の実験において、ある程度の量のB側の反応性混合物を選択した。次に、反応物と触媒とを質量%で添加して、その総質量を構成した。以下の説明で示すポリオール物質は、市販のTrivex(登録商標)(PPG Industries,Inc.)のB側光学グレードポリアミン(ジエチルトルエンジアミン)と組み合わせるために選択された。市販の触媒K-Kat XK-604(King Industries,Inc.)をB側に選択した1.1質量%で添加した。ポリオールの重量%を選択して、B側の保持タンクに(窒素下で)充填した。次に、市販のTrivex(登録商標)(PPG Industries,Inc.)のB側光学グレードポリアミン(ジエチルトルエンジアミン)を添加して、選択した質量の残りを構成した。使用前に、混合物を窒素下において室温で30分~60分間撹拌した。
【0080】
アイウェアレンズの形成。これらの実施例および比較例のそれぞれについて、B:Aの当量比は、A側の過剰なNCO反応種の1当量に対するB側の全反応種に関して、0.95:1の所望且つ一定の値に設定された。比較例において、B側の反応種は、アミン基のみであった(すなわちBTOT=BNH2=0.95)。他の実施例において、BTOT=0.95=BOH+BNH2であった。各例における成分BOHおよびBNH2の当量の値を表1に示す。ポリオール(複数を含む。)およびジエチルトルエンジアミンの分子量および機能性が既知であるため、B:Aの当量比0.95:1において反応させるB側のグラム数と組み合わされるA側のグラム数を決定することができる。市販の反応性加工機(米国カリフォルニア州ヒールズバーグにあるMax Machinery)を使用して、A側およびB側の混合物を制御された温度で保持し、次に、制御された温度および流量で混合して金型に投入した。これらの実験において、A側のタンクとその供給ラインは華氏150度(摂氏65度)に維持され、B側のタンクとその供給ラインは華氏110度以上(摂氏43度以上)に維持された。これらの実験において、A側の流量は140g/分に設定された。B側の流量は、B側の混合物に存在するポリオールの割合および特性、ならびにジアミンの量に基づいて、0.95:1の当量比を維持するように調整された。例えば、ポリオールが存在しない場合、B側の流量は33g/分に設定された。B側の混合物にポリオール(1)が75質量%で添加された場合、流量は73g/分であった。
【0081】
変性A側およびB側材料(例示的な実施形態のために変性にされたか、比較例のための市販のもの)を完全に混合し、摂氏100度で5分~10分間予熱した金型アセンブリに投入した。これらの実験において、金型アセンブリは、
図1に示す要素10として機能する単焦点半完成(SVSF)レンズブランクと、金型のエッジ部とレンズブランクのエッジ部とを支持し且つそれらの間に密閉キャビティを形成するガスケットによって固定位置に保持される球状ガラスの凹型金型とから構成される。ガスケットによって、成形面は、外側の(凸型)レンズブランク面から約0.5mm離されるように保持された。
【0082】
これらの実施例における金型アセンブリの一部として使用されたレンズブランクは、透明な熱可塑性ポリカーボネートまたは透明なTrivexポリ(尿素-ウレタン)材料のいずれかから作製された。これらのTrivexポリ(尿素-ウレタン)のレンズブランクは、追加のポリオール物質やフォトクロミック材料を含まない、サプライヤから納入された市販のA側およびB側の反応物から作製された。
【0083】
変性A側と、市販のB側材料または変性B側材料のいずれかを混合して、金型アセンブリに投入した。次に、アセンブリを室温で約5分間寝かせてから、制御された硬化用オーブンに配置した。以下の表1に示すように、様々な硬化時間および温度が選択された。
【0084】
光学物品のフォトクロミック測定。半完成アイウェアレンズブランクの測定値は、BPC300フォトクロミックレンズ特性評価システム(英国バークシャー州レディングにあるBentham Instruments Ltd.)を使用して取得した。活性化源は、太陽活動の放射照度を近似する空気質量1.5フィルタを有するキセノンランプである。レンズサンプルを摂氏23度に保持し、可視スペクトルを記録しながら3分間照射した。次に、太陽活動の放射源をブロックして、フェードバック中のスペクトル反応を10分間記録した。
【0085】
これらのデータから、サンプルの視感透過率を、静止時の(すなわち、サンプルのフォトクロミック材料(複数を含む。)を活性化する光に曝されていない)サンプルと、フォトクロミック材料(複数を含む。)が活性化された最も暗い状態のサンプルについて、米国国家規格協会(ANSI)による規格Z80.3-2015:Standard for Ophthalmics-Nonprescription Sunglass and Fashion Eyewear Requirements(標準光源C)に従って計算した。また、3分間の活性化期間と、10分間のフェードバック期間とにわたって、各レンズサンプルの555nmにおける透過率を観察および記録して、暗色化率およびフェードバック率を監視した。これは、例えば、以下に示す2つのアイウェアレンズを図示する
図2に示されている。ここで、時間=0は、活性化源をブロックする瞬間に対応し、負の時間値は、太陽活動の放射照度を近似するキセノン光源に曝される期間に対応し、正の時間値は、太陽活動の放射照度がブロックされた後のフォトクロミックレンズのフェードバック中(薄色化)のサンプル反応に対応する。
【0086】
フォトクロミック反応の範囲は、555nmにおける初期%T(静止時透過率)と、活性化中に記録された最も暗い(最低)%Tとを考慮して決定された。アイウェアレンズがこの範囲の半分での%T値に到達するのにかかった時間(レンズの最終的な暗さの半分の暗さに到達する時間)は、t1/2Dとして報告された。活性化源がブロックされたとき、レンズが暗色化サイクル中に記録されたのと同じ%T値に戻るのにかかった時間(レンズの最終的な暗さの半分の暗さにフェードバックする時間)は、t1/2Fとして報告された。
【0087】
本発明の実施例およびフォトクロミックレンズサンプルの比較例(C1、C4およびC9)を以下の表1にまとめた。比較例のレンズサンプルC1、C4およびC9は、同じ変性A側組成物と、ポリオール物質を添加していない非変性の市販のB側材料とを使用して作製された。追加の比較例として、最後の項目(S15)には、トルエン中の1組のフォトクロミック染料の1%溶液に対するフォトクロミック性能が示されている。
【0088】
【0089】
図2には、2つの異なるアイウェアレンズサンプルが示されている。ここでは、擬似的太陽光光源への曝露による活性化中の555nmにおける%Tと、光源がブロックされた場合のフェードバックが示されている。
図2にプロットされた2つのサンプルは、表1に詳述した実施例C1(実線)および実施例2(点線)に対応する。
図2に示す点線プロットは、ポリカーボネートの単焦点半完成レンズブランク(合計レンズ厚約10.5mm)上に形成された変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層を含む、本発明の一実施形態に従って作製されたフォトクロミックレンズブランクの反応性を示す。本発明の一実施形態によれば、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層は、A側のポリウレタンプレポリマーにフォトクロミック材料を添加して、この変性A側と、ポリアミンおよび添加ポリオールを含む変性B側の反応性混合物とを反応させることで、調整される。比較のために、
図2に示す実線は、同じフォトクロミック変性A側と、市販の(添加ポリオール物質を含まない)B側材料のみとを反応させて形成されたフォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)の層を含むフォトクロミックレンズブランク(C1)の比較例の反応性を示している。この層は、ポリカーボネートの単焦点半完成レンズブランク(合計レンズ厚約10.5mm)上に形成された。経過時間シーケンスにおいて、負の値は、活性化光に曝される時間に対応し、時間t=-180秒から開始する。時間t=0は、励起源がブロックされた時間を示し、正の時間は、サンプルのフェードバックを示す。
【0090】
比較例を
図2に示すことによって、本発明のこの実施形態における利点を説明する。実施例C1において、市販のB側材料は、B:Aの当量比=0.95のNH
2:1のNCOにおけるA側の過剰なNCO反応基と組み合わされたNH
2反応種のみを含む。実施例2において、ポリエーテルジオールを添加してB側の反応種を変性とする。0.95のNH
2種だけでなく、0.95の当量比におけるA側の過剰なNCO種の1.0当量と反応させることにより、B側は、0.43当量のOH種+0.52当量のNH
2種を含むことになる(B
OH=0.43およびB
NH2=0.52とすると、B
TOT=0.95)。
図2に示すように、本発明のこの実施形態に従って作製された実施例2のアイウェアレンズは、同じフォトクロミック染料の混合物が(非変性B側材料から作製された)実施例C1のポリ(尿素-ウレタン)の層に添加された場合よりもより暗い状態になり、より速くフェードバックする。
【0091】
実施例3は、ジオールではなく、ポリオールを使用した。この組み合わせでは、実施例2のポリエーテルジオールの結果ほど好ましい結果が得られなかった。これは、ポリオール反応性混合物とのより広範な架橋によるものである可能性がある。
【0092】
表1に示す実施例C4および5~8のグループは、フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を変性とするポリオールの割合が増加するにつれて、フェードバック率が改善および着色の度合いが増加(低い視感透過率)したことを示す。レンズのフェードバック率と全体的な暗色化とが改善されたことに留意されたい。これらの結果は、異なるフォトクロミック染料混合物、異なる硬化条件および異なる要素10でも得ることができた。これは、本発明の作業性の範囲が広いことを示している。
【0093】
改善されたフェードバックおよび良好な暗色化について、同様の傾向が実施例C9および10~12で示された。フォトクロミック染料の濃度が高いと、反応のために使用され得る材料が増えて、上記の条件の差を一部緩和することができる。これらの実施例と、実施例C9および5~8の結果とを比較すると、本発明の実施形態がより低い濃度で高価なフォトクロミック材料を有利に使用できることがわかる。
【0094】
実施例13および14は、ポリエーテルジオールとポリカーボネートジオールとの結果を比較している。いずれの場合もフェードバックの改善が見られたが、影響の度合いが異なる場合があることが示された。しかしながら、観察された結果の差は、実験の条件が同一ではないことに起因している可能性がある。これらの結果を実施例3と比較すると、フェードバック率を改善するためには、ポリオール物質よりもジオール物質が好ましい場合があることがわかる。
【0095】
(異なるポリオール物質から作製された)実施例13および14、ならびに低い濃度のポリオール(1)で作製された多くの実施例は、非変性ポリ(尿素-ウレタン)のフォトクロミック性能に対して明らかな改善を示している。これらの実施例は、本発明の様々な実施形態を実行しながら広範囲の条件を使用することができることを示す。これにより、フォトクロミック反応に対する著しい改善をもたらすことができる。このような結果と良好な作業条件は、処理の柔軟性と良好な制御を提供し、製造において非常に役立つ。
【0096】
実施例S15に示すように、同じフォトクロミック材料をトルエンに溶解して、最高速度と暗色化を可能にする条件と比較した。この溶液において、フォトクロミック分子は、回転や再構成に対する物理的な制約をほとんど有さない。興味深いことに、変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を形成するために75%のポリオール(1)を添加して作製された本発明のこれらの例示的な実施形態によるアイウェアレンズ(実施例2、8、12および13参照)は、溶液S15について観察された非常に速い速度に匹敵するフェードバック率、および同様に低い(暗い)照度Tの値を提供した。これらの非限定的な例は、完全に露出しているレンズの暗さを維持および改善しながら、フェードバック率を大幅に改善できることを示している。本発明の特定の実施例において、ポリオール(1)として示す例示的なポリエーテルジオールを用いて、非変性ポリ(尿素-ウレタン)に対するフェード率が10%~70%改善された。また、視感透過率も改善された。実施例14は、異なるポリオール物質において効果の範囲に違いがある場合を示している。ただし、同時にフェードバック率に著しい改善も得られた。本発明の特定の実施形態のアイウェアレンズは、非変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)よりも少なくとも10%速いフェードバック率を示すことができた。変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)が光学物品に使用される場合、フェードバック率は、別の実施形態において20%を超えた改善、別の実施形態において30%を超えた改善、別の実施形態において40%を超えた改善、および別の実施形態において50%以上の改善を得ることができた。驚くべきことに、これらの例のそれぞれにおいて、活性化されたアイウェアレンズの最大の暗さは、非変性フォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)を含むレンズと少なくとも同等の暗さであったか、それよりも暗かった。これは、性能の明らかな改善を示している。
【0097】
以上、例示的な実施形態およびそれらの様々な変形例または派生物を参照して本発明を詳細に説明した。しかしながら、当業者は、本発明の概念および範囲から逸脱することなく、追加の置換、組み合わせおよび変更が可能であることを理解するであろう。また、当業者には、本明細書および添付の図面を参照して、類似の変形例も可能であることが明らかであろう。