(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】直付け構造を有する乳首
(51)【国際特許分類】
A61J 11/00 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
A61J11/00 C
(21)【出願番号】P 2020043614
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000107066
【氏名又は名称】株式会社リッチェル
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】井田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】宮本 聖
(72)【発明者】
【氏名】中辻 真樹子
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/011573(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/093767(WO,A1)
【文献】米国特許第1904710(US,A)
【文献】米国特許第2010637(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳瓶等の装着対象の口部に直付けされて、乳幼児が飲食する際に口に咥えて使用される、可撓性を有する軟質部材で形成された直付け構造を有する乳首であって、
乳幼児が口に咥える乳首本体部と、該乳首本体部に連続して形成されて装着対象の口部に装着される装着部と、前記乳首本体部と前記装着部の境界部分における外周面に、該装着部を外側に折り返すために形成された1本の折り返し溝と、を有し、
前記装着部は、略円筒形状で、その下端部に下方に延出する舌片部を有すると共に、その内面側に、装着対象の口部に挿入される凸状リング部と、該凸状リング部の外周側に形成されて前記装着対象の口部に嵌合する嵌合溝とを有し、前記折り返し溝の高さ方向の位置が、前記嵌合溝の底部と略同一位置に設けられていることを特徴とする直付け構造を有する乳首。
【請求項2】
前記乳首は、哺乳瓶の口部に装着して飲料を乳幼児に与えるためのものであり、前記装着部の下方が拡径した裾広がりの形状であることを特徴とする請求項
1に記載の直付け構造を有する乳首。
【請求項3】
前記乳首
の乳首本体部は、周面に流出孔が設けられた先端部と、該先端部に連続して設けられた膨大部とを備え、前記先端部の内部の食物を前記流出孔から流出させて食するためのもので、装着対象が持ち手を備えた保持具であることを特徴とする請求項1に記載の直付け構造を有する乳首。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳瓶等の口部に直接装着するための直付け構造を有する乳首に関する。
なお、本願において「乳首」とは、哺乳瓶に取り付ける一般的な乳首に限らず、例えば特許文献2に開示の「授食装置」における食品容器のように、フルーツ等の食品を入れて乳幼児がしゃぶることで内部の食品を食するいわゆる「おしゃぶり」のような大型の乳首を含む。
【背景技術】
【0002】
哺乳瓶等の瓶口に直付けする構造を有する乳首としては、例えば特許文献1に「ゴム製の本体1に壜口の外径より緊縮せる外壁2を連続して設け外壁2の末縁に突条2´を設定し本体1と外壁2との間に口壜に嵌着すべき凹陥部3を設け且本体1と外壁2に連続して壜口に圧着嵌合する嵌合部4を設けてなる乳首の構造」が開示されている。
【0003】
また、一般的な乳首ではないが、多孔を有する大型の乳首形状部(食品容器)を有し、内部にフルーツ等の食品を入れて乳幼児がしゃぶることで内部の食品を食するための授食装置が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭31-2076号公報
【文献】実用新案登録第3159462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された乳首は、装着時には外壁2を上方に跳ね上げるように折り返して嵌合部を壜口に嵌合させ、その後、外壁2の折り返しを元に戻すことで、外壁2を壜口下方の肩部に抱き付かせるようにする。
【0006】
しかしながら、乳首をしっかりと装着させる必要から、外壁はある程度強い弾性を有するため、上方への折り返しがスムーズにできないことがある。特に特許文献1の乳首の外壁は円筒状のものであるため、折り返しを開始する際の捲り上げを行いにくいという問題もある。
この点、外壁の弾性を弱くしたり、外壁の延出長さを短くしたりすることで、取り外しを容易にすることは可能であるが、その場合には装着時の抱き付き強度が弱くなって使用中に外れやすくなるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2の授食装置は、乳首に相当する食品容器をハンドルアセンブリに取り付けるために、第1連結部材と第2連結部材という2つの部材を必要としており、構造が煩雑で、取付けや取外しの操作も面倒であるという問題がある。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、装着が容易で装着状態では外れにくく、また外しやすい直付け構造を有する乳首を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る直付け構造を有する乳首は、哺乳瓶等の装着対象の口部に直付けされて、乳幼児が飲食する際に口に咥えて使用される、可撓性を有する軟質部材で形成されたものであって、
乳幼児が口に咥える乳首本体部と、該乳首本体部に連続して形成されて装着対象の口部に装着される装着部と、前記乳首本体部と前記装着部の境界部分における外周面に、該装着部を外側に折り返すために形成された折り返し溝と、を有し、
前記装着部は略円筒形状で、その下端部に下方に延出する複数の舌片部を有することを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記装着部の内面側に、装着対象の口部に挿入される凸状リング部と、該凸状リング部の外周側に形成されて前記装着対象の口部に嵌合する嵌合溝とを有することを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記折り返し溝の高さ方向の位置が、前記嵌合溝の底部と略同一位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記乳首は、哺乳瓶の口部に装着して飲料を乳幼児に与えるためのものであり、前記装着部の下方が拡径した裾広がりの形状であることを特徴とするものである。
【0013】
(5)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記乳首は、フルーツ等の食物を食するためのもので、装着対象が持ち手を備えた保持具であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の直付け構造を有する乳首においては、乳幼児が口に咥える乳首本体部と、該乳首本体部に連続して形成されて装着対象の口部に装着される装着部と、前記乳首本体部と前記装着部の境界部分における外周面に、該装着部を外側に折り返すために形成された折り返し溝と、を有し、前記装着部は略円筒形状で、その下端部に下方に延出する複数の舌片部を有することにより、装着が容易で装着状態では外れにくく、また外しやすいという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る直付け構造を有する乳首の斜視図である。
【
図2】
図1の直付け構造を有する乳首の平面図である。
【
図6】
図1の直付け構造を有する乳首の哺乳瓶への装着方法の説明図であって、(a)は外観図、(b)は垂直断面図である(その1)。
【
図7】
図1の直付け構造を有する乳首の哺乳瓶への装着方法の説明図であって、(a)は外観図、(b)は垂直断面図である(その2)。
【
図8】本発明の直付け構造を有する乳首の他の実施の形態の分解斜視図である。
【
図9】
図8に示した直付け構造を有する乳首の側面図である。
【
図10】
図8に示した直付けた構造を有する乳首の平面図である。
【
図13】
図8の直付け構造を有する乳首の保持具への装着方法の説明図であって、(a)は外観図、(b)は垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る直付け構造を有する乳首1(以下、単に「乳首1」という)は、哺乳瓶3(
図6、
図7参照)に直付けするための構造を備えたものであって、
図1~
図5に示すように、乳幼児が口に咥える乳首本体部5と、乳首本体部5に連続して形成されて直付け対象の口部に装着する装着部7とを有している。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0017】
<乳首本体部>
乳首本体部5は、先端部9と、先端部9に連続して設けられたお碗を伏せた形状の膨大部11とを備えている。先端部9の頭頂部には、乳幼児が吸引した際に飲料を流出させるための吸飲孔13が設けられ、また、膨大部11には空気を取り入れるための気孔15が設けられている。
【0018】
乳首本体部5の内周面には、
図3~
図5に示すように、わずかに凹んだ凹溝17がリング状に形成されている。凹溝17を形成することで、乳首本体部5の撓みを制御して、乳幼児が咥えた際の感触が実物の乳首に近くなるようにしている。
なお、乳首本体部5は、装着部7と一体成形され、可撓性を有する材質、例えばシリコン等によって形成されている。
【0019】
<装着部>
装着部7は、乳首本体部5に連続して形成されて哺乳瓶3の口部に装着する部分である。装着部7は、
図1~
図5に示すように、裾広がりの略円筒形状で、その下端部には下方に延出する舌片部19が左右両側にそれぞれ形成されている。
舌片部19が形成されていることで、後述するように、乳首を哺乳瓶3から取り外す際に、装着部7を捲り上げやすいという効果を奏する。
【0020】
装着部7の内面側には、装着対象である哺乳瓶3の口部に挿入される凸状リング部21と、凸状リング部21の外周側に形成されて口部に嵌合する嵌合溝23とが形成されている。
また、乳首本体部5と装着部7の境界部分における外周面に、装着部7を外側に折り返すための折り返し溝25が形成されている。
【0021】
なお、折り返し溝25の高さ方向の位置は、嵌合溝23の底部と略同一位置に設けられているのが好ましい。
この位置であれば、装着部7を上方に折り返した際に、凸状リング部21が露出し、嵌合溝23の溝口が広がった状態になるので、乳首1の装着が容易になる(
図6(b)参照)。
【0022】
上記のように構成された本実施の形態の乳首1を哺乳瓶3に装着する方法について、
図6、
図7に基づいて説明する。
乳首1の装着部7を、折り返し溝25を折り返し線として上方に跳ね上げるように折り返し、哺乳瓶3の口部3aに載置する(
図6参照)。折り返し溝25が形成されていることで、折り返し操作が確実かつ容易に行うことができる。
装着部7を折り返すことで、凸状リング部21が露出するので、これを哺乳瓶3の口部3aに挿入するようにする。このとき、嵌合溝23の溝口が広がった状態になっているので(
図6(b)参照)、哺乳瓶3の口部3aの先端が嵌合溝23に位置合わせされる。
【0023】
この状態で、装着部7の折り返しを元に戻すようにすれば、
図7に示すように、哺乳瓶3の口部3aが嵌合溝23に嵌合された状態で簡単に装着される。
装着状態では、
図7に示すように、哺乳瓶3の口部3aが嵌合溝23に嵌合され、かつ装着部7が哺乳瓶3の肩部3bに抱き付くように装着されるので、乳首1が外れにくい。
【0024】
乳首1を哺乳瓶3から取り外す際には、舌片部19を摘まんで捲り上げ、その後、折り返し溝25から折り返すことで、簡単に外すことができる。
舌片部19がない場合に比較すると、装着部7の取外しが極めて容易にできる。
【0025】
以上のように、本実施の形態に係る乳首1は、乳首本体部5と装着部7の境界部分における外周面に折り返し溝25を有し、また、装着部7が略円筒形状で、その下端部に下方に延出する舌片部19を有することにより、装着が容易で装着状態では外れにくく、また外しやすいという効果を奏することができる。
また、折り返し溝25の高さ方向の位置が、嵌合溝23の底部と略同一位置に設定されていることから、装着部7を上方に折り返した際に、凸状リング部21が露出し、嵌合溝23の溝口が広がった状態になるので、乳首1の装着が容易になるという効果を奏している。
【0026】
なお、上記の実施の形態では、舌片部19が左右の両側にそれぞれ設けられ、その数が2個であったが、本発明において舌片部19の数は2個に限られず、1個または3個以上であってもよい。
もっとも、左右両側に2個あれば、装着時に両方の舌片部19を左右の手指でつまんで引き下げる操作ができるので、装着操作が容易になるという効果を奏することができる。
【0027】
[実施の形態2]
実施の形態1の乳首1は、哺乳瓶3の口部3aに装着して飲料を乳幼児に与えるためのものであり、装着対象が哺乳瓶3であったが、本実施の形態の乳首27は、乳幼児や患者等がフルーツ等の食物を食するためのもので、直付け対象が持ち手28を備えた保持具29である点、および乳首本体部5を覆うキャップ31を有する点が実施の形態1と異なる。
以下、本実施の形態について
図8~
図13に基づいて説明する。
なお、
図8~
図13において、実施の形態1を示した
図1~
図7と同一又は対応する部分には同一の符号を付してある。
【0028】
本実施の形態の直付け構造を有する乳首27は、持ち手28を備えた保持具29に直付けするための構造を備えたものであって、
図8~
図13に示すように、実施の形態1と同様に、乳幼児が口に咥える乳首本体部5と、乳首本体部5に連続して形成されて直付け対象の口部に装着する装着部7とを有している。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0029】
<乳首本体部>
乳首本体部5は、実施の形態1と同様に、先端部9と、先端部9に連続して設けられた膨大部11とを備えている。先端部9の形状は、
図8に示すように、カモのくちばしのような扁平な形状(平面視で半長丸形状)をしており、その周面に食物等を流出させるための流出孔33が多数設けられている。
なお、乳首本体部5は、実施の形態1と同様に、装着部7と一体成形され、可撓性を有する材質、例えばシリコン等によって形成されている。
【0030】
<装着部>
装着部7は、乳首本体部5に連続して形成されて保持具29の口部29aに装着する部分である。装着部7の形状は、基本的には実施の形態1と同様であり、略円筒形状で、その下端には下方に延出する2つの舌片部19が形成されている。
ただ、本実施の形態の装着部7は裾広がりにはなっておらず、下方に向かって同径になっている。
なお、舌片部19が形成されていることで、後述するように、乳首27を保持具29から取り外す際に、装着部7を捲り上げやすい点は実施の形態1と同様である。
【0031】
また、装着部7の内面側に、装着対象である保持具29の口部29aに挿入される凸状リング部21と、凸状リング部21の外周側に形成されて口部29aに嵌合する嵌合溝23とが形成されている点は実施の形態1と同様である。
さらに、乳首本体部5と装着部7の境界部分における外周面に、装着部7を外側に折り返すための折り返し溝25が形成されている点も実施の形態1と同様である。
【0032】
上記のように構成された本実施の形態の乳首27を保持具29に装着する際には、
図13に示すように、折り返し溝25を折り返し線として装着部7を上方に跳ね上げるように折り返し、保持具29の口部29aに載置し、この状態で、装着部7の折り返しを元に戻すようにすれば、
図11、
図12に示すように、保持具29の口部29aが嵌合溝23に嵌合された状態で簡単に装着される。
【0033】
このように、本実施の形態でも実施の形態1と同様の操作によって乳首本体部5を保持具29に簡単に装着することができ、実施の形態1で述べたのと同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 乳首(実施の形態1)
3 哺乳瓶
3a 口部
3b 肩部
5 乳首本体部
7 装着部
9 先端部
11 膨大部
13 吸飲孔
15 気孔
17 凹溝
19 舌片部
21 凸状リング部
23 嵌合溝
25 折り返し溝
27 乳首(実施の形態2)
28 持ち手
29 保持具
29a 口部
29b 肩部
31 キャップ
33 流出孔