(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】端子の縦断面を研削する方法
(51)【国際特許分類】
B24B 19/00 20060101AFI20220303BHJP
B24B 9/02 20060101ALI20220303BHJP
H01R 43/02 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
B24B19/00 Z
B24B9/02 A
H01R43/02 Z
(21)【出願番号】P 2020104727
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2020-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】502056927
【氏名又は名称】トルーソルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 正和
(72)【発明者】
【氏名】高田 進太郎
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特公昭58-058169(JP,B2)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0074903(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 19/00
B24B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のワイヤー束を被覆した芯線部を有する端子を研削し、当該芯線部の
長手方向に平行な縦断面を露出させる研削装置であって、
台座と、
前記台座に配設され前記端子を固定する固定治具と、
前記台座に配設され研削面を有する研削手段と、
前記台座に配設され前記固定治具又は前記研削手段の位置を調整する位置調整手段とを備え、
前記固定治具は、研削対象となる前記芯線部の前記長手方向に平行な側部が前記研削手段の研削面と対向し鉛直方向に突出した状態で固定する固定手段と、によって構成され、
前記研削手段は、前記端子を前記長手方向に直行する方向に研削する研削面を有し、
前記位置調整手段は、前記研削面が前記端子の
前記側部から前記芯線部に当接するよう、前記固定治具と前記研削手段とを相対移動させることで、前記芯線部を
必要な深さまで研削し
前記長手方向に平行な縦断面を露出させる、
研削装置。
【請求項2】
前記位置調整手段は、前記固定治具又は前記研削手段を三軸方向に移動可能なガイド、昇降機構及び調整ノブからなる、
請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
複数本のワイヤー束を被覆した芯線部を有する端子を研削する研削装置であって、台座と、前記台座に配設され前記端子を固定する固定治具と、前記台座に配設され研削面を有する研削手段と、前記台座に配設され前記固定治具又は前記研削手段の位置を調整する位置調整手段とを備える研削装置によって前記端子の前記芯線部を研削する方法であって、
前記端子を前記固定治具に
研削対象となる端子の芯線部の長手方向に平行な側部が前記研削手段の研削面と対向し鉛直方向に突出した状態で固定するステップ、
前記固定治具と前記研削手段とを前記台座上で相対移動させ、前記研削面を前記端子の
前記側部から前記芯線部に当接させるステップ、
前記固定治具と前記研削手段とを前記台座上で相対移動させ、前記研削手段によって前記芯線部を
必要な深さまで長手方向に直行する方向に研削し、前記芯線部の前記長手方向に平行な縦断面を露出させるステップ、
を含む、端子の芯線部を研削する研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研削装置及び研削方法に関し、特に、長手方向に配設された複数本のワイヤー束を被覆した芯線部を有する端子を研削するものとして有用なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハーネスメーカにおいて製造されるワイヤーハーネスを含む端子100を、
図1A~
図1Cに示す。
図1Aは側面図を、
図1Bは平面図を、
図1Cは
図1BにおけるB-B断面図を示す。
図1A~
図1Cに示されるように、このような端子100は、長手方向に配設された複数本のワイヤー束を被覆して圧着ないし溶着して形成した芯線部110を有する。
【0003】
そして、ハーネスメーカにおいて、端子100の品質を確認するために、
図1Aに示すように、芯線圧着部又は被覆圧着部を、長手方向に直交する方向(
図1AにおけるA-A方向)に切断して横断面を露出させ、横断面部分のC/H、C/W、圧縮率の測定検査を実施している。
【0004】
ところで、近年においては、横断面だけでなく、
図1B及び
図1Cに示すように、長手方向(
図1BにおけるB-B断面)で芯線圧着部を切断し、
図1Cに示されるような縦断面での検査及び確認が求められるようになっている。
【0005】
長手方向に配設された複数本のワイヤー束を被覆して圧着ないし溶着して形成した芯線部110を有する端子100の縦断面を露出させるにあたり、従来においては、特許文献1に示すように研削対象であるワーク全体を樹脂で固め、樹脂で固めたワークを研磨台に載せ、研磨台を用いて手作業で研削する手段が採用されている。または、ワークを直接的に専用の治具で挟み込み、研磨台を用いて手作業で研削する手段が採用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されるような手段では、ワークを樹脂で固める場合、樹脂で固めるのに時間がかかることや、手作業で研削することによる精度のバラつき、及び、研削作業に時間がかかるなどの問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、人手によるバラつきなく、かつ、短時間で縦断面を露出することが可能な研削装置及び研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0010】
第1の特徴に係る発明における研削装置は、長手方向に配設された複数本のワイヤー束を被覆した芯線部を有する端子を研削し、当該芯線部の縦断面を露出させる研削装置であって、台座と、台座に配設され端子を固定する固定治具と、台座に配設され研削面を有する研削手段と、台座に配設され固定治具又は研削手段の位置を調整する位置調整手段とを備え、移動手段は、研削面が端子の長手方向に直交する方向から芯線部に当接するよう、固定治具と研削手段とを相対移動させることで、前記芯線部を研削し縦断面を露出させる。
【0011】
第1の特徴に係る発明によれば、位置調整手段が固定治具又は研削手段の位置を調整して研削面が端子の長手方向に直交する方向から芯線部に当接するよう相対位置を調整できるため、手作業で研削する際に生じる作業者の熟練度による精度のばらつきを抑制し、手作業に伴う怪我も防止することが可能な研削装置を提供することができる。
【0012】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、位置調整手段は、固定治具又は研削手段を三軸方向に移動可能なガイド、昇降機構及び調整ノブからなる。
【0013】
第2の特徴に係る発明によれば、位置調整手段が固定治具又は研削手段を三軸方向に移動可能であるため、手作業によらず、精度よく所望の深さまで端子を研削することができる。
【0014】
第3の特徴に係る発明は、第1又は第2の特徴に係る発明であって、固定治具は、端子を略水平方向に固定する把持具によって構成され、研削手段は、略水平方向の回転軸を有するとともに、略鉛直方向の研削面を有する略円盤形状の砥石によって構成される。
【0015】
第3の特徴に係る発明によれば、固定治具によって端子を略水平に固定し、略鉛直方向の研削面を有する略円盤形状の砥石によって端子を研削するため、作業者から研削面が視認しやすく、研削時における作業員による確認作業が容易になるとともに、位置の微調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、人手によるバラつきなく、かつ、短時間で縦断面を露出することが可能な研削装置及び研削方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1D】
図1Dは、本実施形態に係る研削装置によって、研削対象となる部位を局所的に研削した状態の端子の模式図を示す。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る研削装置の概観の斜視図を示す。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る研削装置の要部を拡大した平面図を示す。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る研削装置の立面図を示す。
【
図5A】
図5Aは、本実施形態に係る研削方法のフローの一部を示す。
【
図5B】
図5Bは、本実施形態に係る研削方法のフローの他の一部を示す。
【
図5C】
図5Cは、本実施形態に係る研削方法のフローのさらに他の一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0019】
[研削装置1の構成]
図2~
図4を用いて、本実施形態に係る研削装置200について説明する。
図2は研削装置1の概観の斜視図を、
図3は要部を拡大した平面図を、
図4は立面図を示している。また、本実施形態に係る研削装置200は、
図1A~
図1Dに示す端子100を研削するものとする。
【0020】
本実施形態に係る研削装置200は、長手方向に配設された複数本のワイヤー束を被覆した芯線部110を有する端子100を研削する研削装置200であって、台座210と、台座210に配設され端子100を固定する固定治具220と、台座210に配設され研削対象部位を研削可能な研削面を有する研削手段230と、台座210に配設され固定治具220の位置を調整する位置調整手段240と、種々の設定値を入力可能な操作パネル250を備える。
【0021】
本実施形態における固定治具220は、端子100を略水平に載置する載置台221と、略水平に載置された端子100を上方から把持して固定する複数の押さえ片222と、複数の押さえ片222の位置を調整することによって端子100を締め付けて固定する調整ネジ223によって構成される。本実施形態において、載置台221と押さえ片222は把持具として機能する。このような機構によって、本実施形態に係る固定治具220は、芯線部110などの研削対象となる部位が固定治具220から突出するよう、端子100を固定する。また、端子100の研削時には、端子100に対して強い負荷が加わるため、負荷に伴う端子のずれを抑制するための段差や凹部を載置台及び/又は押さえ片に設けてもよい。
【0022】
なお、固定治具220は、研削対象となる100端子を固定することができるものであれば、上記の形式以外のものも使用可能である。例えば、載置台221と押さえ片222の替わりに、左右から端子を挟み込んで固定する押さえ腕なども使用できる。
【0023】
研削手段230は、固定治具220に固定された端子100を研削するためのものであって、本実施形態においては、水平方向に配設された回転軸を中心にモータ駆動で回転するカット刃である砥石が使用される。カット刃には円周上に研削対象部位を研削するための研削面が形成されており、モータ駆動によって高速回転するカット刃の研削面を当接させることにより、研削対象となる部位を局所的に研削することができる。
【0024】
本実施形態においては、水平方向に配設された回転軸を中心に回転するカット刃の円周上に形成された研削面を使用して芯線部の研削を行うため、略円形のカット刃が鉛直に配設される。このようにすることで、カット位置の視認が容易となり、研削位置の誤りを防止することができるとともに、人手によって確認することで位置の微調整が可能となる。
【0025】
なお、研削手段230の種類は、研削対象となる部位を局所的に研削できるものであれば、砥石でなくても構わない。砥石以外のものとして、例えば、金属刃やレーザなどの他の研削手段が使用可能である。
【0026】
位置調整手段240は、固定治具220と研削手段230との相対的な位置を調整し、固定治具220に固定された端子100を研削手段230の研削面に当接させ、対象部位を研削せしめるものである。
【0027】
本実施形態において、位置調整手段240は、固定治具220を三軸方向に移動させるための手段が設けられている。具体的には、固定治具220を台座210の幅方向に移動するための搬送モータ241及び図示しないボールねじやガイド、固定治具220を台座210の奥行き方向に移動するための奥行き方向調整ノブ242、及び、固定治具220の高さを調整するための図示しない昇降機構などが設けられる。
【0028】
なお、本実施形態においては、位置調整手段240は固定治具220の位置を調整するものとして構成されるが、研削手段230の位置を調整するものとして構成されてもよい。そのため、本発明においては、位置調整手段240は、固定治具220と研削手段230を台座210上で相対移動させ、互いの相対位置を調整するものとして定義される。
【0029】
操作パネル250は、位置調整手段240による固定治具220と研削手段230の相対位置を調整するための座標情報や送り速度等を設定するためのものであり、タッチパネル等が使用される。
【0030】
[研削装置200を用いた端子の研削方法]
次に、
図5A~
図5Cを用いて、研削装置200を用いた端子100の研削方法について説明する。
図5A~
図5Cにおいては、端子100の芯線部110を研削し、芯線部110の縦断面を露出させる例について説明する。
【0031】
まず、
図5Aに示すように、固定治具220に対し、研削対象となる芯線部110が固定治具220から露出するように、端子100を固定する。固定治具220を用いて端子100を固定するにあたっては、
図5Aに示すよう、載置台221から芯線部110が突出するように端子100を載置台221に載置し、調整ネジ223を締めることで複数の押さえ片222と載置台221との間に端子100を固定する。
【0032】
次に、
図5Bに示すように、操作パネル250を操作し、位置調整手段240を用いて、固定治具220に固定された端子100において研削対象となる芯線部110を研削手段230の研削面に当接させる(
図5Cに示す状態)。このとき、本実施形態においては、位置調整手段240は固定治具220を三軸の方向、すなわち、幅方向、奥行き方向及び高さ方向に移動させることによって、固定治具220に固定された端子100の芯線部110を研削手段230の研削面に当接させる。
【0033】
そして、
図5Cに示す状態から、さらに操作パネル250を操作し、位置調整手段240を用いて、固定治具220を幅方向に動かすことにより、芯線部110を適切な深さまで研削を行い、縦断面を露出させる。
【0034】
なお、研削手段230の研削面の幅が、露出させたい箇所の長さに満たない場合には、位置調整手段240を用いて、研削面を端子100から離間させ、固定治具220と研削手段230の相対位置をわずかにずらし、再度、同等の深さまで研削を行う。これを繰り返すことにより、所望の幅を有する縦断面を露出させることができる。
【0035】
このようにして、研削装置200による端子100の芯線部110の研削を完了する。
【0036】
このように、本実施形態に係る研削方法によって研削を行うことで、
図1Dに示すように、研削対象となる部位のみを局所的に研削することができる。そして、このような研削方法によると、端子100を樹脂で覆う必要がないため、樹脂で固めるための時間を節約することができ、10分未満という短時間で端子100の研削を行うことができる。また、固定治具220と研削手段230の相対位置を位置調整手段240によって調整して送りを制御するため、作業者の熟練度に関わらず、仕上がりにばらつきのない断面を得ることができる。そして、操作パネル250による操作と連動させるため、また、端子100を固定治具220に固定して研削するため、指を怪我する恐れがない。
【0037】
本発明においては、下記の通り、種々の変形を行うことが可能である。
【0038】
<変形例1>
変形例1においては、研削手段230の砥石は水平向きに形成された研削面を有する。すなわち、上記実施形態においては、水平方向に配設された回転軸を有し、鉛直向きに形成される研削面を有していたが、変形例1においては、研削の向きを変更している。研削の方向の変更に伴い、固定治具220に固定される端子100の向きも変更される。
【0039】
<変形例2>
変形例2においては、位置調整手段240として、手動で操作可能な機構を採用する。すなわち、上記実施形態においては、固定治具220を幅方向に搬送するものとして搬送モータ241を用いたが、変形例2においては、ハンドル操作等の手動の手段を使用する。つまり、ハンドルを手動で回転させることにより、固定治具220がボールねじやガイドレール上を移動せしめる。この場合においても、手作業で研削する従来のものとは異なり、ハンドルを操作して固定治具220の位置を調整するため、指を怪我する恐れはない。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
100 端子
110 芯線部
200 研削装置
210 台座
220 固定治具
221 載置台
222 押さえ片
223 調整ネジ
230 研削手段
240 位置調整手段
250 操作パネル