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特許7033642選択的S1P1レセプターアゴニストを含む薬学的合剤
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  • 特許-選択的S1P1レセプターアゴニストを含む薬学的合剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】選択的S1P1レセプターアゴニストを含む薬学的合剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/426 20060101AFI20220303BHJP
   A61K 31/225 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
A61K31/426
A61K31/225
A61K31/4015
A61P25/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020213525
(22)【出願日】2020-12-23
(62)【分割の表示】P 2018176173の分割
【原出願日】2015-12-10
(65)【公開番号】P2021059574
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2014/077469
(32)【優先日】2014-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500226786
【氏名又は名称】アクテリオン ファーマシューティカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH-4123 Allschwil,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】マルティーヌ クローゼル
(72)【発明者】
【氏名】ルカ ピアリ
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515373(JP,A)
【文献】特表2012-500285(JP,A)
【文献】国際公開第2014/152494(WO,A1)
【文献】J Neurol Neurosurg Psychiatry,2014年03月,Vol.85,p.1198-1208
【文献】Neurology,2014年04月,Vol.82, 10 Supplement,P1.206
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン又はその薬学的に許容される塩である第1活性成分、並びに、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート、2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート及びその薬学的に許容される塩からなる群より選択される第2活性成分、を含む、再発多発性硬化症の治療用の薬学的合剤。
【請求項2】
前記第1活性成分が(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンであり、前記第2活性成分が(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアートである、請求項1に記載の薬学的合剤。
【請求項3】
前記第1活性成分が(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンであり、前記第2活性成分が2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアートである、請求項1に記載の薬学的合剤。
【請求項4】
前記第1活性成分及び前記第2活性成分が単一の医薬組成物中に含まれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬学的合剤。
【請求項5】
前記第1活性成分及び前記第2活性成分が別個の医薬組成物中に含まれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬学的合剤。
【請求項6】
再発-寛解型多発性硬化症の治療用の、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬学的合剤。
【請求項7】
活性成分としての(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む、再発多発性硬化症の治療用の医薬組成物であって、前記医薬組成物が、活性成分としての(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第2の医薬組成物と組み合わせて投与される、医薬組成物。
【請求項8】
活性成分としての(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む、再発-寛解型多発性硬化症の治療用の医薬組成物であって、前記医薬組成物が、活性成分としての(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第2の医薬組成物と組み合わせて投与される、医薬組成物。
【請求項9】
活性成分としての(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む、再発多発性硬化症の治療用の医薬組成物であって、前記医薬組成物が、活性成分としての(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第2の医薬組成物と組み合わせて投与される、医薬組成物。
【請求項10】
活性成分としての(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む、再発-寛解型多発性硬化症の治療用の医薬組成物であって、前記医薬組成物が、活性成分としての(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第2の医薬組成物と組み合わせて投与される、医薬組成物。
【請求項11】
活性成分としての(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第1の医薬組成物;並びに活性成分としての(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第2の医薬組成物を有する、再発多発性硬化症の治療用のキット。
【請求項12】
前記医薬組成物の同時の、連続的な又は別々の投与のための取扱説明書をさらに有する、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
再発-寛解型多発性硬化症の治療用の、請求項11又は12に記載のキット。
【請求項14】
再発多発性硬化症の治療において使用するための医薬を製造するための、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン、並びに、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート、2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート及びその薬学的に許容される塩からなる群より選択される第2の活性成分、の使用。
【請求項15】
再発-寛解型多発性硬化症の治療において使用するための医薬を製造するための、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン、並びに、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート、2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート及びその薬学的に許容される塩からなる群より選択される第2の活性成分、の使用。
【請求項16】
再発多発性硬化症の治療において、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル
(2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩を含む第2の医薬と組み合わせて使用するための医薬を製造するための、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンの使用。
【請求項17】
再発-寛解型多発性硬化症の治療において、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩を含む第2の医薬と組み合わせて使用するための医薬を製造するための、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンの使用。
【請求項18】
再発多発性硬化症の治療において、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンを含む第2の医薬と組み合わせて使用するための医薬を製造するための、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項19】
再発-寛解型多発性硬化症の治療において、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンを含む第2の医薬と組み合わせて使用するための医薬を製造するための、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン((R)-5-[3-chloro-4-(2,3-dihydroxy-propoxy)-benz[Z]ylidene]-2-([Z]-propylimino)-3-o-tolyl-thiazolidin-4-one)又はその薬学的に許容される塩である第1活性成分並びにフマル酸メチル、フマル酸ジメチル、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート((N,N-diethylcarbamoyl)methyl methyl (2E)but-2-ene-1,4-dioate)及び2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート(2-(2,5-dioxopyrrolidin-1-yl)ethyl methyl (2E)but-2-ene-1,4-dioate)又はその薬学的に許容される塩からなる群より選択される第2活性成分を含む薬学的合剤に関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】図の記述:図1:ラットEAE(n=11/群)におけるponesimod、DMF又はその組み合わせの効果。臨床評価は、独立の試験者により、盲検下、毎日行われた。SEM=平均値の標準誤差。
【発明を実施するための形態】
【0003】
本発明の記述
1) 第1の態様において、本発明は、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン(以下、「化合物1」とも記載する。)又はその薬学的に許容される塩である第1活性成分並びにフマル酸メチル、フマル酸ジメチル、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート及び2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩からなる群より選択される第2活性成分を含む薬学的合剤に関する。
【0004】
WO2010/046835は化合物1の種々の結晶形を開示する;本発明は、化合物1の非晶質並びに結晶形を含むいかなる形態の化合物1をも包含するものとする。さらに、化合物1の結晶形はすべての種類の化合物1の結晶形を包含し、分子のみ、溶媒和物、水和物、分子塩及び共結晶(同じ分子が異なる共結晶形成体と共結晶を形成できる場合)の多形体を含むものとするが、それらは薬学的投与に適するものであるものとする。好ましい態様において、化合物1は、WO2010/046835に記載の結晶形A又はCである。最も好ましい態様において、化合物1は結晶形Cである。
【0005】
同様に、本発明は、前段落において化合物1について記載した非晶質及び結晶形を含むいかなる形態のフマル酸メチル、フマル酸ジメチル、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート及び2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアートをも包含するものとする。本明細書で使用する「フマル酸メチル」という用語は、(E)-4-メトキシ-4-オキソブタ-2-エン酸及び/又はその薬学的に許容される塩を意味する。
【0006】
化合物1は選択的S1Pレセプターアゴニストであり、その経口投与は、末梢血リンパ球数の一貫的、持続的及び用量依存的な減少をもたらす。化合物1は、活性化した免疫系に関連する疾患又は障害の治療及び/又は予防に有用であることが記載されている(例えば、WO2005/054215及びWO2009/115954を参照。)。特に、化合物1(INN:ponesimod)は、中等度から重篤な慢性尋常乾癬の患者及び再発-寛解型多発性硬化症の患者において、第II相試験で臨床的有益性を示した。化合物1は、WO2005/054215、WO2008/062376及びWO2014/027330に記載されたいずれかの手順に従って製造してもよい。
【0007】
フマル酸ジメチル(「DMF」又は「BG-12」とも呼ばれる。)は、WO00/030622において、自己免疫疾患の治療に有用であることが記載されている。特に、フマル酸ジメチル(Tecfidera(登録商標))は、この疾患の最も通常の形態である再発-寛解型多発性硬化症を含む多発性硬化症の再発型の治療に対して承認された。フマル酸ジメチルは、例えばEP0312697A2に記載の当該技術分野において既知の手順に従って製造することができる。
【0008】
フマル酸メチル(「フマル酸モノメチル」又は「MMF」とも呼ばれる。)は、フマル酸ジメチルの薬理学的に活性な代謝物であることが示された。フマル酸メチルは、例えばEP0312697A2に記載の当該技術分野において既知の手順に従って製造することができる。
【0009】
(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート(「XP23829」とも呼ばれる。)は、速やかにフマル酸モノメチルに変換されるプロドラッグである。XP23829は、現在、中等度から重篤な慢性尋常乾癬の治療及び多発性硬化症の再発型の治療に対して臨床開発が行われている。(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート及びその製造はWO2010/022177に記載されている。
【0010】
2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート(「ALKS 8700」とも呼ばれる。)は、速やかにフマル酸モノメチルに変換されるプロドラッグである。ALKS8700は、現在、多発性硬化症の治療に対して臨床開発が行われている。2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート及びその製造はWO2014/152494に記載されている。
【0011】
2) 本発明のさらなる態様は、前記第1の活性成分が(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンであり、前記第2の活性成分がフマル酸メチル又はその薬学的に許容される塩である、態様1)に従う薬学的合剤に関する。
【0012】
3) 本発明のさらなる態様は、前記第1の活性成分が(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンであり、前記第2の活性成分がフマル酸ジメチルである、態様1)に従う薬学的合剤に関する。
【0013】
4) 本発明のさらなる態様は、前記第1の活性成分が(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンであり、前記第2の活性成分が(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4
-ジオアートである、態様1)に従う薬学的合剤に関する。
【0014】
5) 本発明のさらなる態様は、前記第1の活性成分が(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンであり、前記第2の活性成分が2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアートである、態様1)に従う薬学的合剤に関する。
【0015】
6) 本発明のさらなる態様は、前記第1及び前記第2の活性成分が単一の医薬組成物(薬学的組成物)中に含まれる、態様1)~5)のいずれか1つに従う薬学的合剤に関する。
【0016】
例えば、前記第1の活性成分を1日に1回投与し、前記第2の成分を1日に2回投与する、態様6)の特別の場合においては、2種の医薬組成物のうち、1日に1回投与する一方の医薬組成物のみが前記第1及び前記第2の活性成分の両方を含み、他方は前記第2の活性成分のみを含む。
【0017】
さらに、前記第1及び/又は前記第2の活性成分を用量漸増レジメに従って投与する、態様6)に従う医薬組成物の場合には(例えば、化合物1についてWO2009/115954に記載された漸増レジメ参照。)、用量漸増に必要な医薬組成物は、用量漸増レジメの異なる工程に必要な活性成分の量を含む。
【0018】
7) 本発明のさらなる態様は、前記第1及び前記第2の活性成分が別個の医薬組成物中に含まれる、態様1)~5)のいずれか1つに従う薬学的合剤に関する。
【0019】
前記第1及び前記第2の活性成分が別個の医薬組成物に含まれる場合には、それらは、同時に、連続的に(sequentially)又は別々に投与することができ;好ましくは、別個の医薬組成物は、同時に又は連続的に、特に連続的に投与される。前記第1の活性成分が、例えば、1日に1回、前記第2の活性成分が1日に2回投与される場合には、前記別個の医薬組成物は、好ましくは、1日に1度は、同時に又は連続的に、特に連続的に投与される。連続的に又は別々に投与される場合には、前記別個の医薬組成物は、どちらか一方の順序で投与してよい。1日当たりの投与回数は、前記別個の医薬組成物について同じであっても異なっていてもよい。例えば、一方の医薬組成物を1日に2回投与し、他方の医薬組成物を1日に1回又は2回投与してもい。好ましくは、化合物1を含む医薬組成物を1日に1回投与し、前記第2の活性成分を含む医薬組成物を1日に2回投与する。さらに、前記別個の医薬組成物は、同じ投与経路で投与しても、異なる投与経路で投与してもよく、好ましくは、同じ投与経路で投与される。最も好ましくは、前記別個の医薬組成物は経口投与される。
【0020】
8) 本発明のさらなる態様は、医薬として使用するための、態様1)~7)のいずれか1つに従う薬学的合剤に関する。
【0021】
9) 本発明のさらなる態様は、活性化された免疫系に関連する疾患又は障害の予防及び/又は治療において使用するための、態様1)~7)のいずれか1つに従う薬学的合剤に関する。
【0022】
10) 本発明のさらなる態様は、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、角膜及び皮膚等の移植された臓器に対する拒絶反応;移植片対宿主病;関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病及び潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、橋本甲状腺炎等の甲状腺炎、及びブドウ膜網膜炎を含む自己免疫症候群;鼻炎、結膜炎及び皮膚炎等のアトピー性
疾患;喘息;I型糖尿病;リウマチ熱及び感染後糸球体腎炎を含む感染後自己免疫疾患;固形癌並びに腫瘍転移からなる群より選択される疾患又は障害の予防及び/又は治療において使用するための、態様1)~7)のいずれか1つに従う薬学的合剤に関する。
【0023】
11) 本発明のさらなる態様は、腎臓、肝臓、心臓及び肺から選択される移植された臓器に対する拒絶反応;移植片対宿主病;関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、乾癬性関節炎、クローン病及び橋本甲状腺炎から選択される自己免疫症候群;及びアトピー性皮膚炎からなる群より選択される疾患又は障害の予防及び/又は治療において使用するための、態様1)~7)のいずれか1つに従う薬学的合剤に関する。
【0024】
12) 本発明の好ましい態様は、移植片対宿主病の予防及び/又は治療において使用するための、態様1)~7)のいずれか1つに従う薬学的合剤に関する。
【0025】
13) 本発明の最も好ましい態様は、多発性硬化症の予防及び/又は治療において使用するための、態様1)~7)のいずれか1つに従う薬学的合剤に関する。
【0026】
14) 本発明の別の非常に好ましい態様は、再発多発性硬化症の予防及び/又は治療において使用するための、態様1)~7)のいずれか1つに従う薬学的合剤に関する。
【0027】
15) 本発明の別の非常に好ましい態様は、再発-寛解型多発性硬化症の予防及び/又は治療において使用するための、態様1)~7)のいずれか1つに従う薬学的合剤に関する。
【0028】
本発明は、態様1)~7)のいずれか1つに従う薬学的合剤の薬学的に有効な量を、それを必要とする対象(好ましくはヒト)に投与することを有する、態様9)~15)のいずれか1つに記載した疾患又は障害の予防又は治療のための方法にも関する。
【0029】
16) 本発明のさらなる態様は、活性成分としての(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、活性成分としてのフマル酸メチル、フマル酸ジメチル、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第2の医薬組成物と組み合わせて投与される、医薬組成物に関する。
【0030】
17) 本発明のさらなる態様は、活性成分としての(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、活性成分としてのフマル酸ジメチル及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第2の医薬組成物と組み合わせて投与される、医薬組成物に関する。
【0031】
18) 本発明のさらなる態様は、医薬として使用するための、態様16)又は17)に従う医薬組成物に関する。
【0032】
19) 本発明のさらなる態様は、態様9)~15)のいずれか1つに記載する疾患又は障害の予防及び/又は治療において使用するための、態様16)又は17)に従う医薬組成物に関する。
【0033】
20) 本発明のさらなる態様は、活性成分としてのフマル酸メチル、フマル酸ジメチル、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル
(2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、活性成分としての(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第2の医薬組成物と組み合わせて投与される、医薬組成物に関する。
【0034】
21) 本発明のさらなる態様は、活性成分としてのフマル酸ジメチル及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、活性成分としての(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第2の医薬組成物と組み合わせて投与される、医薬組成物に関する。
【0035】
22) 本発明のさらなる態様は、医薬として使用するための、態様20)又は21)に従う医薬組成物に関する。
【0036】
23) 本発明のさらなる態様は、態様9)~15)のいずれか1つに記載する疾患又は障害の予防及び/又は治療において使用するための、態様20)又は21)に従う医薬組成物に関する。
【0037】
24) 本発明のさらなる態様は、活性成分としての(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第1の医薬組成物;並びに活性成分としてのフマル酸メチル、フマル酸ジメチル、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル
メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む第2の医薬組成物を有するキットに関する。
【0038】
25) 本発明のさらなる態様は、第2の医薬組成物が、活性成分としてのフマル酸ジメチル及び少なくとも1種の治療上不活性な賦型剤を含む、態様24)に従うキットに関する。
【0039】
26) 本発明のさらなる態様は、前記医薬組成物の同時の、連続的な又は別々の投与のための取扱説明書をさらに有する、態様24)又は25)に従うキットに関する。
【0040】
27) 本発明のさらなる態様は、医薬として使用するための、態様24)~26)のいずれか1つに従うキットに関する。
【0041】
28) 本発明のさらなる態様は、態様9)~15)のいずれか1つに記載する疾患又は障害の予防及び/又は治療において使用するための、態様24)~26)のいずれか1つに従うキットに関する。
【0042】
29) 本発明のさらなる態様は、態様9)~15)のいずれか1つに記載する疾患又
は障害の予防及び/又は治療において使用するための医薬を製造するための、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン並びにフマル酸メチル、フマル酸ジメチル、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート及び2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩からなる群より選択される第2の活性成分の使用に関する。
【0043】
30) 本発明のさらなる態様は、前記第2の活性成分がフマル酸ジメチルである、態様29)に従う使用に関する。
【0044】
31) 本発明のさらなる態様は、態様9)~15)のいずれか1つに記載する疾患又は障害の予防及び/又は治療において、フマル酸メチル、フマル酸ジメチル、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩を含む第2の医薬と組み合わせて使用するための医薬を製造するための、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンの使用に関する。
【0045】
32) 本発明のさらなる態様は、第2の医薬がフマル酸ジメチルを含む、態様31)に従う使用に関する。
【0046】
33) 本発明のさらなる態様は、態様9)~15)のいずれか1つに記載する疾患又は障害の予防及び/又は治療において、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンを含む第2の医薬と組み合わせて使用するための医薬を製造するための、フマル酸メチル、フマル酸ジメチル、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート若しくは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0047】
34) 本発明のさらなる態様は、態様9)~15)のいずれか1つに記載する疾患又は障害の予防及び/又は治療において、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オンを含む第2の医薬と組み合わせて使用するための医薬を製造するための、フマル酸ジメチルの使用に関する。
【0048】
従って、上記に開示した種々の態様1)~34)の従属関係に基づいて、下記の態様が可能であり、意図されており、そして個々の形態としてここに具体的に開示される:
1、2+1、3+1、4+1、5+1、6+1、6+2+1、6+3+1、6+4+1、6+5+1、7+1、7+2+1、7+3+1、7+4+1、7+5+1、8+1、8+2+1、8+3+1、8+4+1、8+5+1、8+6+1、8+6+2+1、8+6+3+1、8+6+4+1、8+6+5+1、8+7+1、8+7+2+1、8+7+3+1、8+7+4+1、8+7+5+1、9+1、9+2+1、9+3+1、9+4+1、9+5+1、9+6+1、9+6+2+1、9+6+3+1、9+6+4+1、9+6+5+1、9+7+1、9+7+2+1、9+7+3+1、9+7+4+1、9+7+5+1、10+1、10+2+1、10+3+1、10+4+1、10+5+1、10+6+1、10+6+2+1、10+6+3+1、10+6+4+1、10+6+5+1、10+7+1、10+7+2+1、10+7+3+1、10+7+4+1、10+7+5+
1、11+1、11+2+1、11+3+1、11+4+1、11+5+1、11+6+1、11+6+2+1、11+6+3+1、11+6+4+1、11+6+5+1、11+7+1、11+7+2+1、11+7+3+1、11+7+4+1、11+7+5+1、12+1、12+2+1、12+3+1、12+4+1、12+5+1、12+6+1、12+6+2+1、12+6+3+1、12+6+4+1、12+6+5+1、12+7+1、12+7+2+1、12+7+3+1、12+7+4+1、12+7+5+1、13+1、13+2+1、13+3+1、13+4+1、13+5+1、13+6+1、13+6+2+1、13+6+3+1、13+6+4+1、13+6+5+1、13+7+1、13+7+2+1、13+7+3+1、13+7+4+1、13+7+5+1、14+1、14+2+1、14+3+1、14+4+1、14+5+1、14+6+1、14+6+2+1、14+6+3+1、14+6+4+1、14+6+5+1、14+7+1、14+7+2+1、14+7+3+1、14+7+4+1、14+7+5+1、15+1、15+2+1、15+3+1、15+4+1、15+5+1、15+6+1、15+6+2+1、15+6+3+1、15+6+4+1、15+6+5+1、15+7+1、15+7+2+1、15+7+3+1、15+7+4+1、15+7+5+1、16、17、18+16、18+17、19+16、19+17、20、21、22+20、22+21、23+20、23+21、24、25+24、26+24、26+25+24、27+24、27+25+24、27+26+24、27+26+25+24、28+24、28+25+24、28+26+24、28+26+25+24、29、30+29、31、32+31、33及び34。
【0049】
上記の表中、数字は上記の番号に応じた態様を意味し、「+」は他の態様への従属関係を表す。種々の態様は読点により個々に分けられている。換言すると、例えば「6+4+1」は、態様6)であって、態様4)に従属し、態様1)に従属することを意味し、すなわち、態様「6+4+1」は、態様4)及び6)の特徴によりさらに限定された態様1)に相当する。
【0050】
ここに記載される定義は、態様1)~34)のいずれか1つに定義されるような主題に対して一律に適用されるものであり、特段の定義によってより広い又はより狭い定義が与えられない限り本明細書及び請求項を通じて準用される。当然ながら、ある用語又は表現の定義又は好ましい定義が、ここに定義されるいずれか又は他のすべての用語又は表現のいずれか又は好ましい定義におけるそれぞれの用語又は表現を、独立して(及びそれらと組み合わせて)定義し置き換えるものであってよい。
【0051】
態様1)~34)のいずれか1つに定義する活性成分に対するいかなる言及も、適宜かつ好都合に、そのような活性成分の薬学的に許容される塩にも言及しているものと理解されるべきである。
【0052】
「薬学的に許容される塩」という用語は、対象化合物の所望の生物活性を保持し、かつ最小の望ましくない毒性作用を示す塩を意味する。そのよう塩としては、対象化合物中の塩基性基及び/又は酸性基の存在に応じた、無機又は有機の酸及び/又は塩基付加塩が挙げられる。参考としては、例えば、「Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties、Selection and Use.」、P.Heinrich Stahl、Camille G.Wermuth(Eds.)、Wiley-VCH、2008;及び「Pharmaceutical Salts
and Co-crystals」、Johan Wouters and Luc Quere(Eds.)、RSC Publishing、2012を参照されたい。
【0053】
本明細書において使用される「薬学的合剤」という用語は、2種又は3種以上の、好ましくは2種の活性成分の合剤を意味し、前記活性成分は単一の医薬組成物又は別個の医薬
組成物中に含まれる。
【0054】
本明細書において使用される「活性成分」という用語は、医薬組成物の薬学的に活性な成分を意味する。本明細書において使用される活性成分の例は、第1群において、(R)-5-[3-クロロ-4-(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-ベンゾ[Z]イリデン]-2-([Z]-プロピルイミノ)-3-o-トリル-チアゾリジン-4-オン(化合物1)であり、第2群において、フマル酸メチル、フマル酸ジメチル、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート及び2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート又はその薬学的に許容される塩(好ましくはフマル酸ジメチル)である。
【0055】
活性成分又は医薬組成物の投与に関連して用いられる場合、「同時の」又は「同時に」という用語は、第2活性成分(又は、第2医薬組成物)の投与が開始される時に、第1活性成分(又は、第1医薬組成物)の投与が未だ継続していることを意味する。特に、「同時の」又は「同時に」という用語は、2種の活性成分(又は、2種の医薬組成物)が、同時に、すなわち同じ開始及び終了時間で投与されることを意味し、例えば、単一の医薬組成物中に含まれる2種の活性成分の投与の場合などである。
【0056】
活性成分又は医薬組成物の投与に関連して用いられる場合、「連続的の」又は「連続的に」という用語は、第1活性成分(又は、第1医薬組成物)の投与の終了後1時間未満に、第2活性成分(又は、第2医薬組成物)の投与が開始されることを意味する。
【0057】
活性成分又は医薬組成物の投与に関連して用いられる場合、「別々の」または「別々に」という用語は、第1活性成分(又は、第1医薬組成物)の投与の終了の1時間又は2時間以上の後に(かつ、約12時間までに、約24時間までに又は約7日までに)、第2活性成分(又は、第2医薬組成物)の投与が開始されることを意味する。
【0058】
「組み合わせて投与される」又は「組み合わせて使用するための」という表現は、活性成分又は医薬組成物の同時の、連続的な又は別々の、好ましくは、連続的な投与を意味する。
【0059】
本明細書において使用される「投与の経路」という用語は、活性成分(例えば、特定の剤型の医薬組成物の形態で)が体内に入る経路を意味する。活性成分は、(特に経口等の)経腸又は(局所的適用又は吸入を含む)非経口投与により投与してもよい。前記活性成分の投与に使用してもよい剤型の例は、錠剤、カプセル剤、丸薬、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、注射用水性又は油性液剤若しくは懸濁剤、坐剤、クリーム剤、ゲル、点耳若しくは点眼剤、鼻腔用スプレー、皮膚パッチ又はエアゾール剤である。錠剤、カプセル剤、丸薬、液剤又は懸濁剤等の経口投与用の剤型が好ましい。液剤又は懸濁剤が好ましい。2種の活性成分が別個の医薬組成物中に含まれている場合には、当該別個の医薬組成物は、同じ又は異なる剤型を用いて、同じ又は異なる投与経路により投与してもよい。
【0060】
明確さを期すために、再発多発性硬化症は、再発を伴う多発性硬化症の型を含む多発性硬化症の再発型を意味する。再発多発性硬化症の例は、再発-寛解型多発性硬化症、再発を伴う二次性進行型多発性硬化症及び進行型再発多発性硬化症である。
【0061】
医薬組成物の製造は、いずれの当業者にもよく知られた様式で(例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、21st Edition(2005)、Part5、「Pharmaceutical Manufactu環」[Lippincott Williams&Wilkin
sにより出版]参照。)、化合物1及び/又はフマル酸メチル、フマル酸ジメチル、(N,N-ジエチルカルバモイル)メチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアート及び2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル メチル (2E)ブタ-2-エン-1,4-ジオアートからなる群より選択されるフマレート誘導体又はその薬学的に許容される塩を、任意にその他の治療的に有益な物質と組み合わせて、適切な無毒の不活性な治療上許容される固体又は液体の担体材料及び必要に応じて、通常の薬学的アジュバントと共に、製剤投与形態とすることにより遂行することができる。フマル酸ジメチルの製剤は、例えば、WO00/030622及びWO2010/079222に記載されている。
【0062】
本発明の薬学的合剤の2種の活性成分の各々の最適な投与レジメ(すなわち、用量の大きさ及び投薬頻度)は、投与の経路、剤型、治療する疾患又は障害及び適用する特定の第2活性成分(フマレート誘導体)により変わるかもしれない。さらに、用量及び/又は投薬頻度は、薬学的合剤の第1及び/又は第2活性成分について、治療の初期相及びより後の相の間で異なってもよい。化合物1についての好ましい投与レジメは、WO2009/115954に開示されている。化合物1についての好ましい維持投与量は、1日に1回、経口で10mg又は20mgであり、特に、1日に1回、経口で20mgである。フマル酸ジメチルについての好ましい投与レジメは、WO2008/097596に開示されている(US8,399,514も参照。)。最も好ましくは、フマル酸ジメチルは、特に、Tecfidera(登録商標)で使用されるような速放性製剤の場合には、1日に2回、経口で120mgの開始用量で7日、その後、1日に2回、経口で240mgの維持投与量で投与される。フマル酸モノメチル又はフマル酸ジメチルの放出制御医薬組成物の好ましい投与レジメは、EP2316430に開示されている。XP23829の好ましい用量は、1日に1回、経口で800mg、又は、1日に2回、経口で400mgである。ALKS 8700の好ましい用量は、1日に2回、経口で420mgである。
【0063】
本発明はまた、同位体標識された、特にH(デューテリウム)標識された、活性成分をも含み、当該同位体標識された活性成分は、1又は2以上の原子が、同じ原子番号を有するが、自然において通常見出される原子量と異なる原子量を有する原子によってそれぞれ置き換えられていることを除いては、態様1)に定義する活性成分と同一である。同位体標識された、特にH(デューテリウム)標識された活性成分及びその薬学的に許容される塩は、本発明の範囲に含まれる。水素をより重い同位体H(デューテリウム)に置換することにより代謝安定性が増大するため、例えば、in-vivoでの半減期が長くなり、あるいは、必要用量を減らすことができ、又は、チトクロームP450酵素の阻害が軽減され得るため、例えば、安全性プロファイルが改善される。1つの態様においては、前記薬学的合剤の前記2種の活性成分の一方のみが同位体標識されている。本発明の好ましい態様においては、前記活性成分は同位体標識されていないないか、又は、一方の活性成分は同位体標識されておらず、他方の活性成分は1若しくは2以上のデューテリウム原子によってのみ標識されているか、又は、両活性成分が、それぞれ1若しくは2以上のデューテリウム原子によってのみ標識されている。最も好ましい態様においては、前記活性成分は全く同位体標識されていない。同位体標識された活性成分は、適切な試薬又は出発物質の適宜な同位体種を用いることを除いては、同位体標識されていない活性成分について記載した方法と同様に製造してもよい。
【0064】
数値「X」の前に置かれる「約」という用語は、本出願において、X-10%XからX+10%Xの間を表す。
【実施例
【0065】
生物学的アッセイ:
フマル酸ジメチル(DMF)の効果は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の急性単相
型モデルにおいて、パイロット実験で測定することができる。
【0066】
雌性Lewisラットを、ギニーピッグのミエリン塩基性タンパク質(MBP)をフロイントの完全アジュバント中に乳化したもので免疫化する。ラット当たり合計で200マイクログラムのMBPを2箇所において皮下接種する(右足及び尾の付け根)。10日以内に、ラットは麻痺の徴候を表し始め、それを、Weaver A.ら、FASEB J.、2005、19(12):1668-1670により最初に記述された方法に従って、尾及び各肢を0~15のスケールで評価する。この疾患は急性単相型経過を取り、自然寛解的(self-remitting)である。通常、第21日までに、臨床スコアは3.0未満の値になる。
【0067】
10~14匹のラットの群に、疾患惹起の日(第0日)から、40から160mg/kgの範囲の種々の用量のDMFを1日に1回投与する(q.d.)。臨床スコアを毎日評価し、疾患の発症を、ビヒクルで処理したラットとDMFを投与したラットの間で比較する(ビヒクル:0.5%、メチルセルロース/0.5%、Tween(登録商標)80)。並行して、ラットの体重を毎日モニターし、一般的な健康状態を確認する。第21日に実験を終了し、血液学的測定を行うことができる。化合物濃度を測定し、タンパクマーカーを測定するために血漿サンプルを採取することができる。種々の臓器、特に脊髄及び脳を単離し、病理組織学的試験用に固定してもよい。脊髄組織標本を、種々の染色法を用いて、脱髄、神経細胞消失及び炎症性細胞浸潤の程度を評価するために用いることができる(ミエリンに対してはH&E、Luxol Fast Blue、脱髄、神経細胞消失、T細胞浸潤、抗酸化経路活性化及び他の経路に対しては、それぞれMBP、NeuN、CD3、Nrf2及び免疫組織化学による他のマーカー)。また、遺伝子発現分析のために、さらなる組織サンプルを、RNAlater(登録商標)溶液中に保存してもよい。
【0068】
EAEモデルにおけるDMFの効果の測定に並行して、第2のパイロット実験が必要である。健常雌性Lewisラットに、0.3から100mg/kgの範囲の種々の用量のponesimodを投与する。目的は、この系統のラットにおける末梢血中のリンパ球数に対する、ponesimodの用量-効果相関を評価することである。
【0069】
上記の第1のパイロット実験に基づき、合剤効果実験のためのDMFの用量を1つ選択する。この選択された用量は、EAEスコアにおいて、無効化と最大効果の間の部分的な効果を奏する(120mg/kgの用量)。
【0070】
ponesimodを用いた第2のパイロット実験に基づいて選択された用量は、リンパ球数の減少に対し、最大の効果を示す(100mg/kgの用量)。
【0071】
第1のパイロット実験について記載したものと同じラットEAEモデルにおいて、合剤効果実験を行う。4つの処理群は下記の通りである:
1. ビヒクル(0.5%メチルセルロース/0.5%Tween(登録商標)80) q.d.(第0日から)、
2. DMF(120mg/kg) q.d.(第0日から)、
3. Ponesimod(100mg/kg) q.d.(第0日から)、
4. DMF(120mg/kg) q.d.(第0日から)+ponesimod(100mg/kg) q.d.(第0日から)。
【0072】
期間及び終点において、評価項目は、第1パイロット実験について記載したものと同じである。
【0073】
この実験の目的は、リンパ球数に対して最大の効果を有するponesimodの用量
を付加することにより、EAEモデルにおいて、部分的に効果的な用量のDMFに付加的な有益性が付加されることを示すことである。
【0074】
合剤効果試験の結果を図1に示す。図1からわかる通り、両化合物、すなわちponesimod及びDMFは、ラット単相型EAEモデルにおいて、EAEの臨床的経過に効果を示す。Ponesimodは、顕著で統計的に有意な効果を示したのに対し、DMF単独では、この疾患の上昇相(ascending phase)において、中等度の効果を示した。組み合わせた場合、前記2種の化合物は、第16日以降に相乗効果を示し、DMF単独では、臨床スコアにおいて効果はもはや見られなかった。
図1