(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】2入力2出力超伝導ゲート
(51)【国際特許分類】
H01L 39/22 20060101AFI20220303BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20220303BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20220303BHJP
H03K 19/195 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H01L39/22 K
H01F27/28 K
H01F37/00 N
H03K19/195
(21)【出願番号】P 2020508578
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(86)【国際出願番号】 US2018045192
(87)【国際公開番号】W WO2019040260
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-02-14
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ハー、クエンティン ピー.
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-527158(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0104491(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 39/22
H01F 27/28
H01F 37/00
H03K 19/195
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導ゲートシステムであって、
第1の入力パルスを供給するように構成された第1の入力と、
第2の入力パルスを供給するように構成された第2の入力と、
ゲートと、を備え、前記ゲートは、
第1の出力に結合され、かつ正のバイアスインダクタによって供給されるバイアス磁束電流に基づいて、第1および第2の入力パルスに関する第1の論理関数に対応する第1の出力パルスを前記第1の出力において提供するように構成された第1のジョセフソン接合であって、前記正のバイアスインダクタは、前記第1のジョセフソン接合にバイアスを加え、前記正のバイアスインダクタは、前記第1の出力に結合されている、前記第1のジョセフソン接合と、
第2の出力に結合され、かつ負のバイアスインダクタによって供給される電流に基づいて、前記第1および第2の入力パルスに関する第2の論理関数に対応する第2の出力パルスを前記第2の出力において提供するように構成された第2のジョセフソン接合であって、前記負のバイアスインダクタは、前記第2のジョセフソン接合からバイアスを差し引き、前記負のバイアスインダクタは、前記第2の出力に結合されている、前記第2のジョセフソン接合と、
前記正のバイアスインダクタに結合された第1の組のストレージインダクタと、
前記負のバイアスインダクタに結合された第2の組のストレージインダクタと、を含み、
前記第1の組のストレージインダクタは、前記第2の組のストレージインダクタの個々のインダクタと相互誘導クロスカップリングされたインダクタを含む、超伝導ゲートシステム。
【請求項2】
前記第1の論理関数は論理OR関数であり、前記第2の論理関数は論理AND関数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記正のバイアスインダクタは、前記第1の出力と低電圧レールとを相互接続する変圧器の二次巻線であり、前記変圧器は、
第1のバイアス磁束電流を伝導し、前記バイアス磁束電流としての第2のバイアス磁束電流を誘導する一次巻線をさらに含み、前記負のバイアスインダクタは、前記第2の出力と低電圧レールとを相互接続し、かつ前記第2のジョセフソン接合に対してバイアスを減少させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のジョセフソン接合は、前記第1の入力パルスおよび前記第2の入力パルスのうちの少なくとも1つに応答してトリガーされて前記第1の出力パルスを提供し、前記第1の論理関数は、前記第1および第2の入力パルスに関連する論理OR関数であり、前記第2のジョセフソン接合は、前記第1の入力パルスおよび前記第2の入力パルスの両方に応答してトリガーされて前記第2の出力パルスを提供し、前記第2の論理関数は、前記第1および第2の入力パルスに関連する論理AND関数である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の入力は、前記第1の入力パルスを供給するように構成された第1のジョセフソン伝送線(JTL)として構成され、前記第2の入力は、前記第2の入力パルスを供給するように構成された第2のJTLとして構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のJTLは、RQLクロック信号により第1のレシプロカル量子論理(RQL)入力パルスとして前記第1の入力パルスを供給するように構成され、前記第2のJTLは、前記RQLクロック信号により第2のRQL入力パルスとして前記第2の入力パルスを供給するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1および第2のRQL入力パルスの各々は、負のパルスが続く正のパルスを含み、前記第1および第2のRQL入力パルスの少なくとも1つの正のパルスが前記第1のジョセフソン接合をトリガーし、前記第1および第2のRQL入力パルスの少なくとも1つの負のパルスが前記第1のジョセフソン接合をリセットし、前記第1および第2のRQL入力パルスの両方の正のパルスが前記第2のジョセフソン接合をトリガーし、前記第1および第2のRQL入力パルスの少なくとも1つの負のパルスが前記第2のジョセフソン接合をリセットする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の組のストレージインダクタの前記インダクタが、
前記第1の入力と前記第1の出力とを相互接続し、前記第1の入力パルスに応答して第1の電流を提供するように構成される第1のストレージインダクタと、
前記第2の入力と前記第1の出力とを相互接続し、前記第2の入力パルスに応答して第2の電流を提供するように構成される第2のストレージインダクタと、を含み、
前記第2の組のストレージインダクタの前記個々のインダクタが、
前記第1の入力と前記第2の出力とを相互接続し、前記第1の入力パルスに応答して第3の電流を提供するように構成される第3のストレージインダクタと、
前記第2の入力と前記第2の出力とを相互接続し、前記第2の入力パルスに応答して第4の電流を提供するように構成される第4のストレージインダクタと、を含み、
前記第1のジョセフソン接合および前記第2のジョセフソン接合の各々が、前記第1、第2、第3、および第4の電流のいずれかの振幅よりも大きいトリガーしきい値を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のストレージインダクタおよび前記第4のストレージインダクタは相互誘導クロスカップリングされ、前記第2のストレージインダクタおよび前記第3のストレージインダクタは相互誘導クロスカップリングされ、前記第1および第4のストレージインダクタの相互誘導クロスカップリングおよび前記第2および第3のストレージインダクタの相互誘導クロスカップリングの各々は、0.5未満のクロスカップリング係数kを有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
超伝導ゲートシステムであって、
第1の入力パルスを供給するように構成された第1の入力と、
第2の入力パルスを供給するように構成された第2の入力と、
ゲートと、を備え、前記ゲートは、
第1の出力に結合され、かつ前記第1の出力と低電圧レールとを相互接続する変圧器の二次巻線によって供給されるバイアス磁束電流に基づいて、前記第1および第2の入力パルスに関する論理OR関数に対応する第1の出力パルスを前記第1の出力において提供するように構成された第1のジョセフソン接合であって、前記変圧器は、前記第1のジョセフソン接合にバイアスを追加するために
、第1のバイアス磁束電流を伝導し、前記バイアス磁束電流
としての第2のバイアス磁束電流を誘導する一次巻線をさらに含む、前記第1のジョセフソン接合と、
第2の出力に結合され、かつ前記第2の出力と低電圧レールを相互接続する負のバイアスインダクタによって供給される電流に基づいて、前記第1および第2の入力パルスに関する論理AND関数に対応する第2の出力パルスを前記第2の出力において提供するように構成された第2のジョセフソン接合であって、前記負のバイアスインダクタは、前記第2のジョセフソン接合に関連するバイアスを減少させるように構成されている、前記第2のジョセフソン接合と、
前記変圧器の前記二次巻線に結合された第1の組のストレージインダクタと、
前記負のバイアスインダクタに結合された第2の組のストレージインダクタと、を含み、
前記第1の組のストレージインダクタは、前記第2の組のストレージインダクタの個々のインダクタと相互誘導クロスカップリングされたインダクタを含む、超伝導ゲートシステム。
【請求項11】
前記第1の入力は、前記第1の入力パルスを供給するように構成された第1のジョセフソン伝送線(JTL)として構成され、前記第2の入力は、前記第2の入力パルスを供給するように構成された第2のJTLとして構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のJTLは、RQLクロック信号により第1のレシプロカル量子論理(RQL)入力パルスとして前記第1の入力パルスを供給するように構成され、前記第2のJTLは、前記RQLクロック信号により第2のRQL入力パルスとして前記第2の入力パルスを供給するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1および第2のRQL入力パルスの各々は、負のパルスが続く正のパルスを含み、前記第1および第2のRQL入力パルスの少なくとも1つの正のパルスが前記第1のジョセフソン接合をトリガーし、前記第1および第2のRQL入力パルスの少なくとも1つの負のパルスが前記第1のジョセフソン接合をリセットし、前記第1および第2のRQL入力パルスの両方の正のパルスが前記第2のジョセフソン接合をトリガーし、前記第1および第2のRQL入力パルスの少なくとも1つの負のパルスが前記第2のジョセフソン接合をリセットする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の組のストレージインダクタの前記インダクタが、
前記第1の入力と前記第1の出力とを相互接続し、前記第1の入力パルスに応答して第1の電流を提供するように構成される第1のストレージインダクタと、
前記第2の入力と前記第1の出力とを相互接続し、前記第2の入力パルスに応答して第2の電流を提供するように構成される第2のストレージインダクタと、を含み、
前記第2の組のストレージインダクタの前記個々のインダクタが、
前記第1の入力と前記第2の出力とを相互接続し、前記第1の入力パルスに応答して第3の電流を提供するように構成される第3のストレージインダクタと、
前記第2の入力と前記第2の出力とを相互接続し、前記第2の入力パルスに応答して第4の電流を提供するように構成される第4のストレージインダクタと、を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1のストレージインダクタおよび前記第4のストレージインダクタは相互誘導クロスカップリングされ、前記第2のストレージインダクタおよび前記第3のストレージインダクタは相互誘導クロスカップリングされ、前記第1および第4のストレージインダクタの相互誘導クロスカップリングおよび前記第2および第3のストレージインダクタの相互誘導クロスカップリングの各々は、0.5未満のクロスカップリング係数kを有する、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、量子および古典的回路システムに関し、具体的には、2入力2出力の超伝導ゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルロジックの分野では、既知の高度に開発されたCMOS(相補型金属酸化膜半導体)技術が広く使用されている。CMOSは、技術として成熟に近づき始めているので、速度、消費電力計算密度、相互接続帯域幅などの点でより高性能をもたらし得る代替手段に関心がある。CMOS技術に対する代替方法は、20Gb/s(ギガバイト/秒)以上の典型的なデータレート、および約4°ケルビンの動作温度で、約4nW(ナノワット)の典型的な信号電力を有する、超伝導ジョセフソン接合を利用する超伝導体ベースの単一磁束量子回路を含む。
【発明の概要】
【0003】
一例は、超伝導ゲートシステムを含む。このシステムは、第1の入力パルスを供給するように構成された第1の入力と、第2の入力パルスを供給するように構成された第2の入力とを含む。システムはまた、第1の出力にそれぞれ結合される正のバイアスインダクタおよび第1のジョセフソン接合に基づいて、第1および第2の入力パルスに関する第1の論理関数に対応する第1の出力パルスを第1の出力において提供するように構成されるゲートを含む。ゲートは、第2の出力にそれぞれ結合される負のバイアスインダクタおよび第2のジョセフソン接合に基づいて、第1および第2の入力パルスに関する第2の論理関数に対応する第2の出力パルスを第2の出力において提供するようにも構成される。
【0004】
別の例は、超伝導ゲートシステムを含む。このシステムは、第1の入力パルスを供給するように構成された第1の入力と、第2の入力パルスを供給するように構成された第2の入力とを含む。システムはまた、第1の出力に結合される第1のジョセフソン接合と、第1の出力と低電圧レールとを相互接続する変圧器の二次巻線とに基づいて、第1および第2の入力パルスに関する論理OR関数に対応する第1の出力パルスを第1の出力において提供するように構成されたゲートを含む。変圧器は、第1のジョセフソン接合にバイアスを加えるためにバイアス磁束電流が印加される一次巻線をさらに含む。ゲートは、第2の出力に結合された第2のジョセフソン接合と、第2の出力と低電圧レールとを相互接続し、第2のジョセフソン接合に関連するバイアスを減少させるように構成された負のバイアスインダクタに基づいて、第1および第2の入力パルスに関する論理AND関数に対応する第2の出力パルスを第2の出力において提供するようにも構成される。
【0005】
別の例は、超伝導ゲートシステムを含む。このシステムは、第1の入力パルスを供給するように構成された第1の入力と、第2の入力パルスを供給するように構成された第2の入力とを含む。システムはゲートをも含む。ゲートは、第1のジョセフソン接合と、第1の出力に結合された正のバイアスインダクタ、第1の入力と第1の出力とを相互接続し、第1の入力パルスに応答して第1の持続電流を提供するように構成された第1のストレージインダクタと、第2の入力と第1の出力とを相互接続し、第2の入力パルスに応答して第2の持続電流を提供するように構成された第2のストレージインダクタとを含む。第1のジョセフソン接合は、正のバイアスインダクタと、第1および第2の持続電流の組み合わせとに応答してトリガーするように構成されている。ゲートは、第2のジョセフソン接合と、第2の出力に結合された負のバイアスインダクタと、第1の入力と第2の出力とを相互接続し、第1の入力パルスに応答して第3の持続電流を提供するように構成された第3のストレージインダクタと、第2の入力と第2の出力とを相互接続し、第2の入力パルスに応答して第4の持続電流を提供するように構成された第4のストレージインダクタとをも含む。第2のジョセフソン接合は、負のバイアスインダクタと、第3および第4の持続電流の組み合わせとに応答してトリガーするように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、概して、量子および古典的回路システムに関し、具体的には、2入力2出力の超伝導ゲートに関する。超伝導ゲートは、一対の入力に応答して、2つの異なる論理関数などの2つの論理関数を提供するように構成されたゲートに対応することができる。一例として、2つの論理関数は、個々のペアの入力での論理AND演算および論理OR演算に対応することができる。一例として、入力は、レシプロカル量子論理(RQL:Reciprocal Quantum Logic )超伝導回路などにおけるジョセフソン伝送線(JTL:Josephson transmission line)を介してそれぞれ供給されることができる。その結果、ペアの入力信号は、正のパルス(例えば、フラクソン)と負のパルス(例えば、反フラクソン)との両方を含むRQLパルスとして供給することができる。従って、超伝導ゲートは、論理OR出力においてペアの入力に関連する少なくとも1つの入力パルスの存在の表示、および/または論理AND出力においてペアの入力に関連する両方の入力パルスの存在の表示を提供することができる。
【0008】
一例として、超伝導ゲートは、第1の出力に結合された正のバイアスインダクタと、第2の出力に結合された負のバイアスインダクタを含むことができる。例えば、正のバイアスインダクタは、バイアス磁束電流を提供する変圧器の二次巻線に対応することができ、このため、正のバイアスインダクタは、第1の出力に結合された第1のジョセフソン接合にバイアスを追加する。従って、第1のジョセフソン接合は、個々のペアの入力に供給される入力パルスの少なくとも1つに応答してトリガーして、論理OR出力を示す出力パルスを提供するように構成することができる。別の例として、負のバイアスインダクタは、第2の出力と低電圧レール(例えば、グランド)とを相互接続するインダクタに対応することができ、このため、負のバイアスインダクタは、第2の出力に結合された第2のジョセフソン接合からバイアスを差し引く。従って、第2のジョセフソン接合は、個々のペアの入力に供給される両方の入力パルスに応答してトリガーして、論理AND出力を示す出力パルスを提供するように構成することができる。
【0009】
図1は、超伝導ゲートシステム10の例を示している。超伝導ゲートシステム10は、古典的および/または超伝導回路においてペアの入力の並行論理関数(concurrent logic functions)を提供するために提供することができる。
図1の例では、第1の入力パルス「A」が第1の入力12において提供され、第2の入力パルス「B」が第2の入力14において提供される。
図1の例では、入力パルスAおよびBは、クロック信号CLKに基づいて各々動作する第1のジョセフソン伝送線(JTL)16および第2のJTL18を介して提供される。一例として、クロック信号CLKは、レシプロカル量子論理(RQL)クロック信号に対応して、RQLパルス信号として入力パルスAおよびBを提供することができる。従って、入力パルスAおよびBの各々は、正のパルス(例えば、フラクソン(fluxon))と、正のパルスに続く負のパルス(例えば、反フラクソン)とを含むことができる。
【0010】
超伝導ゲートシステム10は、入力パルスAおよびBに関して、第1の出力22において第1の論理関数を提供し、第2の出力24において第2の論理関数を提供するように構成された超伝導ゲート20を含む。
図1の例において、第1の論理関数は、「A+B」として示される論理OR関数として示され、第2の論理関数は、「A・B」として示される論理AND関数として示される。一例として、本明細書でより詳細に説明するように、個々の第1および第2の論理関数を提供するために超伝導ゲート20に対して入力パルスAおよびBが実質的に同時に提供される必要がないように(例えば、入力パルスAおよびBは、互いに一致している必要はないが、同じクロックサイクル内で発生する)、超伝導ゲート20は、入力パルスAおよびBを持続電流に変換するように構成することができる。
【0011】
図1の例では、超伝導ゲート20は、ジョセフソン接合26とバイアスインダクタ28とを含む。一例として、ジョセフソン接合26は、第1の出力22に結合された第1のジョセフソン接合と、第2の出力24に結合された第2のジョセフソン接合とを含むことができる。バイアスインダクタ28は、第1の出力22に結合された正のバイアスインダクタと、第2の出力24に結合された負のバイアスインダクタとを含むことができる。例えば、正のバイアスインダクタは、バイアス磁束電流を供給する変圧器の二次巻線に対応することができ、このため、正のバイアスインダクタは、第1のジョセフソン接合にバイアスを追加する。従って、第1のジョセフソン接合は、入力パルスAおよびBのうちの少なくとも1つの存在に応答してトリガーするように構成することができ、従って、正のバイアスインダクタに基づいて、第1および第2の入力パルスAおよびBに対する論理OR演算に対応する出力パルスを提供することができる。負のバイアスインダクタは、第2の出力24と低電圧レール(例えば、グランド)を相互接続するインダクタに対応することができ、このため、負のバイアスインダクタは、第2のジョセフソン接合からバイアスを差し引く。従って、第2のジョセフソン接合は、入力パルスAおよびBの両方に応答してトリガーするように構成することができ、従って、負のバイアスインダクタに基づいて、第1および第2の入力パルスAおよびBに対する論理AND演算に対応する出力パルスを提供することができる。本明細書でより詳細に説明するように、正のバイアスインダクタおよび負のバイアスインダクタを実装することによって、超伝導ゲートシステム10は、一般的な超伝導ゲートシステムと比較して改善されたパラメトリック動作マージン(parametric operating margins)で動作することができ、かつ関連するストレージインダクタの低減された相互誘導クロスカップリングを具現化して、より物理的にコンパクトな設計を提供することができる。
【0012】
図2は、超伝導ゲート回路50の例を示している。超伝導ゲート回路50は、
図1の例の超伝導ゲートシステム10に対応することができる。従って、
図2の例に関する以下の説明では、
図1の例を参照する。
【0013】
超伝導ゲート回路50は、第1の入力52および第2の入力54を含む。第1の入力52は第1の入力ジョセフソン接合J
I1を含み、第2の入力54は第2のジョセフソン接合J
I2を含む。一例として、第1および第2のジョセフソン接合J
I1およびJ
I2は各々、トリガーに応答して(例えば、単一磁束量子(SFQ)パルスとしての入力パルスAおよびBの伝搬に基づいて)第1の入力パルスAおよび第2の入力パルスBをそれぞれ供給するように構成された個々のJTL(例えば、
図1の例における各々のJTL16および18)に関連付けることができる。一例として、入力パルスAおよびBは、正のパルス(例えば、フラクソン)の後に負のパルス(例えば、反フラクソン)が続くRQLパルス信号として供給することができる。
【0014】
超伝導ゲート回路50は、各々入力パルスAおよびBに関して、第1のジョセフソン接合J
O1に基づいて第1の出力58において第1の論理関数を提供し、第2のジョセフソン接合J
O2に基づいて第2の出力60において第2の論理関数を提供するように構成される超伝導ゲート56を含む。
図2の例において、第1の論理関数は、出力パルス「A+B」として示される論理OR関数として示され、第2の論理関数は、出力パルス「A・B」として示される論理AND関数として示される。本明細書でより詳細に示すように、第1および第2のジョセフソン接合J
O1およびJ
O2の各々は、持続入力電流の3つの存在の大多数(majority-three presence of persistent input currents)に基づいてトリガーするように構成することができる。
図2の例では、第1のジョセフソン接合J
O1は、入力パルスAおよびBのうちの少なくとも1つに応答してトリガーして、論理OR関数に対応する出力パルスA+Bを第1の出力58に提供するように構成することができる。同様に、第2のジョセフソン接合J
O2は、入力パルスAおよびBの両方に応答してトリガーして、論理AND関数に対応する出力パルスA・Bを第2の出力60に提供するように構成することができる。
【0015】
超伝導ゲート56は、第1の入力52と第1の出力58とを相互接続する第1のストレージインダクタL1と、第2の入力54と第1の出力58とを相互接続する第2のストレージインダクタL2と、第1の入力52と第2の出力60とを相互接続する第3のストレージインダクタL3と、第2の入力54と第2の出力60とを相互接続する第4のストレージインダクタL4とを含む。第1および第3のストレージインダクタL1およびL3は、各々第1の入力パルスAに応答して個々の持続電流を提供するように構成され、第2および第4のストレージインダクタL2およびL4は、各々第2の入力パルスBに応答して個々の持続電流を提供するように構成される。超伝導ゲート回路50は超伝導回路として構成されるので、ストレージインダクタL1、L2、L3および/またはL4において生成される持続電流は持続的であり、このため、以下により詳細に説明するように、個々のジョセフソン接合JO1および/またはJO2がトリガーされるまで持続電流が残存する。従って、入力パルスAおよびBは、必ずしも互いに同時である必要はなく、個々の出力パルスA・BおよびA+Bを提供するために有効な入力として提供されるべく、同じクロックサイクル内で発生することができる。
【0016】
図2の例では、第1および第4のストレージインダクタL
1およびL
4は、62で示される相互誘導クロスカップリングを有するものとして示され、第2および第3のストレージインダクタは、64で示される相互誘導クロスカップリングを有するものとして示される。一例として、第1および第4のストレージインダクタL
1およびL
4の相互誘導クロスカップリングは、第2および第3のストレージインダクタL
2およびL
3の相互誘導クロスカップリングにほぼ等しく、かつk<約0.5(例えば、kは0.2にほぼ等しい)などの小さな相互誘導クロスカップリング値を有することができる。第1および第4のストレージインダクタL
1、L
4および第2および第3のストレージインダクタL
2、L
3の個々のペアの相互誘導クロスカップリングに基づいて、第1および第2のジョセフソン接合J
O1およびJ
O2を介して生成された出力パルスA・BおよびA+Bは、個々のストレージインダクタL
1、L
2、L
3、および/またはL
4を介して入力52および54に戻るように伝搬することが実質的に防止される。しかしながら、第1および第4のストレージインダクタL
1、L
4および第2および第3のストレージインダクタL
2、L
3の個々のペアの相互誘導クロスカップリングは非常に小さいため、このような相互誘導クロスカップリングを具体化する他の回路に比べて、ストレージインダクタL
1、L
2、L
3、およびL
4のサイズを大幅に小さくすることができる。結果として、超伝導ゲート回路50は、対向するインダクタの相互誘導クロスカップリングを具体化する一般的な回路よりも実質的によりコンパクトに製造することができる。
【0017】
さらに、超伝導ゲート56は、一次巻線LPおよび二次巻線LSによって形成される変圧器T1を含む。一次巻線LPは、二次巻線LSにバイアス磁束電流IBとして誘導されるバイアス磁束電流IFを伝導するように構成される。従って、変圧器T1の二次巻線LSは、バイアス磁束電流IBが第1のジョセフソン接合JO1に対するバイアスを増加させるように、第1の出力56と低電圧レール(例えば、グランド)とを相互接続する正のバイアスインダクタとして構成される。従って、変圧器T1の二次巻線LSの正のバイアスインダクタ効果は、第1のジョセフソン接合JO1の3入力構成の大多数(majority-three input arrangement)に関する持続電流として動作する。その結果、第1のジョセフソン接合JO1は、第1のジョセフソン接合JO1に3入力の大多数(majority-three input)を供給するためのバイアス磁束電流IBに加えて、第1のストレージインダクタL1または第2のストレージインダクタL2のいずれかを介して供給される単一の持続電流に応答してトリガーするように構成することができる。従って、第1のジョセフソン接合JO1は、バイアス磁束電流IBの持続電流に加えて、第1の入力パルスAまたは第2の入力パルスBに応答してそれぞれ生成された、第1のストレージインダクタL1および第2のストレージインダクタL2から供給される持続電流の少なくとも1つに応答してトリガーして、論理OR関数に対応する出力パルスA+Bを提供するように構成されている。
【0018】
加えて、超伝導ゲート56は、第2の出力58と低電圧レール(例えば、グランド)とを相互接続する負のバイアスインダクタLNを含む。負のバイアスインダクタLNは、負のバイアスインダクタLNが第2のジョセフソン接合JO2に関してバイアスを減少させる(例えば、負のバイアスを提供する)ように、第2のジョセフソン接合JO2に対する負荷を増加させるように構成されている。従って、負のバイアスインダクタLNの負のバイアスインダクタ効果は、第2のジョセフソン接合JO2の3入力構成の大多数に関する振幅ゼロの持続電流として動作する。結果として、第2のジョセフソン接合JO2は、負のバイアスインダクタLNに起因する第2のジョセフソン接合JO2のバイアスの減少に基づいて、第2のジョセフソン接合JO2に3入力の大多数を提供するための第3のストレージインダクタL3および第4のストレージインダクタL4を介して提供される2つの持続電流に応答してトリガーするように構成することができる。従って、第2のジョセフソン接合JO2は、第1の入力パルスAおよび第2の入力パルスBにそれぞれ応答して生成された、第3のストレージインダクタL3および第4のストレージインダクタL4から供給される持続電流の両方に応答してトリガーして、論理AND関数に対応する出力パルスA・Bを提供するように構成される。
【0019】
前述したように、超伝導ゲート回路50は、入力パルスAおよびBが、RQLクロックに基づいて入力パルスAおよびBを伝搬する個々のJTLから提供されるRQLパルスに対応することができるように、RQL回路に実装することができる。従って、出力パルス(単数または複数)A・Bおよび/またはA+Bが提供された後に、入力パルスAおよびBからの負のパルスを超伝導ゲート56に提供して、超伝導ゲート56をリセットすることができる。例えば、RQL入力パルスAおよびBに関連するフラクソンに基づくトリガーに応答して、第1および/または第2の入力ジョセフソン接合JI1および/またはJI2は、ゼロ超伝導相から2π超伝導相に切り替えて、個々の持続電流を提供することができる。同様に、持続電流(単数または複数)に基づくトリガーに応答して、第1および/または第2のジョセフソン接合JO1および/またはJO2は、ゼロ超伝導相から2π超伝導相に切り替えて、個々の出力パルス(単数または複数)A・Bおよび/またはA+Bを提供することができる。従って、第1のジョセフソン接合JO1のトリガーは、第1および/または第2のストレージインダクタL1およびL2に関連する個々の1つの持続電流を除去することができ、第2のジョセフソン接合JO2のトリガーは、第3および/または第4のストレージインダクタL3およびL4に関連する個々の1つの持続電流を除去することができる。
【0020】
続いて、第1および/または第2の入力ジョセフソン接合JI1および/またはJI2は、「トリガー解除」することができ、従って、RQL入力パルスAおよびBに関連する後続の負のフラクソンに応答して、2π超伝導相からゼロ超伝導相に切り替えることができる。第1の入力ジョセフソン接合JI1のトリガー解除に応答して、第1および第3のストレージインダクタL1およびL3は、第1の入力ジョセフソン接合JI1に向かって流れる負の持続電流を伝導することができる。同様に、第2の入力ジョセフソン接合JI2のトリガー解除に応答して、第2および第4のストレージインダクタL2およびL4は、第2の入力ジョセフソン接合JI2に向かって流れる負の持続電流を伝導することができる。従って、第1および第2のストレージインダクタL1およびL2に関連する負の持続電流は、第1のジョセフソン接合JO1をトリガー解除して、第1のジョセフソン接合JO1の超伝導相を2πからゼロに切り替えることができ、これにより、第1および第2のストレージインダクタL1およびL2における個々の負の持続電流が除去される。同様に、第3および第4のストレージインダクタL3およびL4に関連する負の持続電流は、第2のジョセフソン接合JO2をトリガー解除して、第2のジョセフソン接合JO2の超伝導相を2πからゼロに切り替えることができ、これにより、第3および第4のストレージインダクタL3およびL4における個々の負の持続電流が除去される。従って、RQL入力パルスAおよびBの負のフラクソンは、超伝導ゲート56を中立状態に戻して、後続のRQL入力パルスAおよびBを受信して、出力58および60において個々の論理関数を提供することができる。
【0021】
図3は、タイミング
図100の例を示している。タイミング
図100は、
図1の例の超伝導ゲートシステム10または
図2の例の超伝導ゲート回路50の動作に関連付けることができる。従って、
図3の例に関する以下の説明では、
図1および2の例を参照する。
【0022】
タイミング
図100は、
図3の例で「J
I1」として示される第1の入力ジョセフソン接合J
I1の超伝導相、および
図3の例で「J
I2」として示される第2の入力ジョセフソン接合J
I2の超伝導相を示す。さらに、タイミング
図100は、
図3の例で「J
O1」として示される第1のジョセフソン接合J
O1の超伝導相、および
図3の例で「J
O2」として示される第2のジョセフソン接合J
O2の超伝導相を示す。個々のジョセフソン接合J
I1、J
I2、J
O1、およびJ
O2の超伝導相は、論理ロー状態に類似したゼロ超伝導相と、論理ハイ状態に類似した2π超伝導相との間で切り替えることができる。従って、タイミング
図100に示されている超伝導相は、個々の入力ジョセフソン接合J
I1およびJ
I2の超伝導相によって提供される入力パルスAおよびBの存在に対応することができ、かつ個々の入力ジョセフソン接合J
I1およびJ
I2の超伝導相によって提供される出力パルスA・BおよびA+Bに対応することができる。
【0023】
時間T0において、ジョセフソン接合JI1、JI2、JO1、およびJO2の超伝導相は、ゼロ超伝導相として示され、超伝導ゲート回路50は入力を待つ定常状態にある。時間T1において、入力パルスAが提供されて第1の入力ジョセフソン接合JI1がトリガーされて、第1の入力ジョセフソン接合JI1がゼロ超伝導相から2π超伝導相に切り替わる。それに応答して、持続電流が、第1のストレージインダクタL1および第3のストレージインダクタL3を介して供給される。第1のストレージインダクタL1を流れる持続電流は、変圧器T1の二次巻線LSから供給されるバイアス磁束電流IBと結合して、第1のジョセフソン接合JO1の3入力構成の大多数の大半(majority of the majority-three input arrangement)を供給して、第1のジョセフソン接合JO1をトリガーする。その結果、ほぼ時間T1で、第1のジョセフソン接合JO1がトリガーして、ゼロ超伝導相から2π超伝導相に切り替わり、出力パルスA+Bを提供する。従って、出力パルスA+Bは、入力パルスAおよびBのうちの1つの受信に応答して、論理OR演算を示すために提供される。
【0024】
さらに、持続電流が第3のストレージインダクタL3を介して供給されている間、時間T1において、第2のジョセフソン接合JO2は、トリガーされず、ゼロ超伝導相から2π超伝導相に切り替わらない。前述したように、第2のジョセフソン接合の負のバイアスインダクタLNの負荷は、第3のストレージインダクタL3を流れる持続電流が、第2のジョセフソン接合JO2の3入力構成の大多数の大半の未到達に基づいて、第2のジョセフソン接合JO2の臨界しきい値を超えるには不十分となるようにするものである。従って、第2のジョセフソン接合JO2は時間T1においてトリガーされない。従って、出力パルスA・Bは、入力パルスAおよびBのうちの1つの受信に応答して、論理AND演算を示すために提供されない。
【0025】
時間T2で、入力パルスAはもはや供給されず、従って、第1の入力ジョセフソン接合JI1は、2π超伝導相からゼロ超伝導相に切り替わる。例えば、入力パルスAは、時間T2において相補的な反フラクソンが提供されて第1の入力ジョセフソン接合JI1をトリガー解除するような、RQLパルスとすることができる。RQLパルスに応答して、前述したように、第1のジョセフソン接合JO1も同様に、2π超伝導相からゼロ超伝導相に切り替わるようにトリガーを解除することができ、従って、古典的なデジタルコンピューティングと同様の方法でペアの入力のどちらも提供されないことに応答する論理OR演算を維持することができる。
【0026】
時間T3において、入力パルスBが提供されて第2の入力ジョセフソン接合JI2がトリガーされて、第2の入力ジョセフソン接合JI2がゼロ超伝導相から2π超伝導相に切り替わる。それに応答して、持続電流が、第2のストレージインダクタL2および第4のストレージインダクタL4を介して供給される。第2のストレージインダクタL2を流れる持続電流は、変圧器T1の二次巻線LSから供給されるバイアス磁束電流IBと結合し、これにより、第1のジョセフソン接合JO1をトリガーするのに十分な臨界しきい値を超えて、第1のジョセフソン接合JO1の3入力構成の大多数の大半が提供される。その結果、ほぼ時間T3で、第1のジョセフソン接合JO1がトリガーして、ゼロ超伝導相から2π超伝導相に切り替わり、出力パルスA+Bを提供する。従って、出力パルスA+Bは、入力パルスAおよびBのうちの1つの受信に応答して、論理OR演算を示すために提供される。
【0027】
さらに、持続電流が第4のストレージインダクタL4を介して供給されている間、時間T3において、第2のジョセフソン接合JO2はトリガーされず、ゼロ超伝導相から2π超伝導相に切り替わらない。前述したように、第2のジョセフソン接合の負のバイアスインダクタLNの負荷は、第4のストレージインダクタL4を流れる持続電流が、第2のジョセフソン接合JO2の3入力構成の大多数の大半の未到達に基づいて、第2のジョセフソン接合JO2の臨界しきい値を超えるには不十分となるようにするものである。従って、第2のジョセフソン接合JO2は時間T3においてトリガーされない。従って、出力パルスA・Bは、入力パルスAおよびBのうちの1つの受信に応答して、論理AND演算を示すために提供されない。
【0028】
時間T4において、入力パルスBはもはや供給されず、従って、第2の入力ジョセフソン接合JI2は、2π超伝導相からゼロ超伝導相に切り替わる。例えば、入力パルスBは、時間T4において相補的な反フラクソンが提供されて第2の入力ジョセフソン接合JI2をトリガー解除するような、RQLパルスとすることができる。RQLパルスに応答して、前述したように、第2のジョセフソン接合JO2も同様に、2π超伝導相からゼロ超伝導相に切り替わるようにトリガーを解除することができ、従って、古典的なデジタルコンピューティングと同様の方法でペアの入力のどちらも提供されないことに応答する論理OR演算を維持することができる。
【0029】
時間T5において、入力パルスAが提供されて第1の入力ジョセフソン接合JI1がトリガーされて、第1の入力ジョセフソン接合JI1がゼロ超伝導相から2π超伝導相に切り替わる。それに応答して、時間T1において前述したのと同様に、持続電流が第1のストレージインダクタL1および第3のストレージインダクタL3を介して供給されて、第1のジョセフソン接合JO1がトリガーされる。従って、時間T5において、入力パルスAとBのうちの1つの受信に応答して論理OR演算を示すように出力パルスA+Bが提供される。時間T6において、第2の入力ジョセフソン接合JI2をトリガーするために入力パルスBが提供されて、第2の入力ジョセフソン接合JI2がゼロ超伝導相から2π超伝導相に切り替わる。それに応答して、持続電流が第2のストレージインダクタL2および第4のストレージインダクタL4を介して提供されて、時間T3において前述したのと同様に、第2のジョセフソン接合JO2がトリガーされる。
【0030】
さらに、時間T6において、第2のジョセフソン接合JO2は、ゼロ超伝導相から2π超伝導相に切り替わる。前述したように、第2のジョセフソン接合の負のバイアスインダクタLNの負荷は、第2のジョセフソン接合JO2のバイアスが減少するようにするものである。しかしながら、第3のストレージインダクタL3および第4のストレージインダクタL4の両方を流れる結合された持続電流に応答して、第2のジョセフソン接合JO2の3入力構成の大多数の大半が供給されて、第2のジョセフソン接合JO2の臨界しきい値を超えて、第2のジョセフソン接合JO2がトリガーされる。従って、時間T6において、第2のジョセフソン接合JO2がトリガーされる。従って、出力パルスA・Bは、時間T6において、入力パルスAおよびBの両方の受信に応答する論理AND演算を示すために提供される。さらに、第2のジョセフソン接合JO2のトリガーは、負の持続電流を負のバイアスインダクタLNを介して(例えば、グランドから)流れるように提供する。
【0031】
時間T
7において、入力パルスAはもはや供給されず、従って、第1の入力ジョセフソン接合J
I1は、2π超伝導相からゼロ超伝導相に切り替わる。それに応答して、第2のジョセフソン接合J
O2も同様にトリガー解除して、2π超伝導相からゼロ超伝導相に切り替わることができる。一例として、負のバイアスインダクタL
Nを流れる負の持続電流のため、A入力またはB入力のいずれかで単一の反フルクソンのみを提供して、第2のジョセフソン接合J
O2をトリガー解除することができる。従って、第2のジョセフソン接合J
O2の2π超伝導相からゼロ超伝導相への切り替えは、
図3の例において、時間T
7後に供給されるペアの入力のうちの1つのみに応答する論理AND演算として示される。時間T
8において、入力パルスBはもはや供給されず、従って、第2の入力ジョセフソン接合J
I2は、2π超伝導相からゼロ超伝導相に切り替わる。これに応答して、前述したように、第1のジョセフソン接合J
O1も同様に、2π超伝導相からゼロ超伝導相に切り替わるようにトリガーを解除することができ、従って、ペアの入力のどちらのも提供されないことに応答する論理OR演算を維持することができる。従って、超伝導ゲート回路50は、個々のジョセフソン接合J
I1、J
I2、J
O1、およびJ
O2の超伝導相に基づいて古典的なデジタルコンピューティングと実質的に同様の方法で動作する。
【0032】
上述したものは、本発明の例である。当然ながら、本発明を説明するために考えられる構成要素または方法のすべての組み合わせを説明することはできないが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の技術思想および範囲内にあるそのようなすべての変更、修正、および変形を包含することを意図している。さらに、開示または請求項が「a」、「an」、「a first」、または「another」要素、またはそれらの同等物を記載する場合、1つまたは複数のそのような要素を含むものと解釈されるべきであり、2つ以上のそのような要素を要求も除外もしない。本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、限定されるものではないが、含むことを意味し、「含んでいる」という用語は、限定されるものではないが、含んでいることを意味する。「~に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]超伝導ゲートシステムであって、
第1の入力パルスを供給するように構成された第1の入力と、
第2の入力パルスを供給するように構成された第2の入力と、
ゲートであって、
第1のジョセフソン接合と、第1の出力に結合された正のバイアスインダクタと、
前記第1の入力と前記第1の出力とを相互接続し、前記第1の入力パルスに応答して第1の持続電流を提供するように構成される第1のストレージインダクタと、
前記第2の入力と前記第1の出力を相互接続し、前記第2の入力パルスに応答して第2の持続電流を提供するように構成された第2のストレージインダクタと、前記第1のジョセフソン接合は、前記正のバイアスインダクタと前記第1および第2の持続電流の組み合わせとに応答してトリガーするように構成され、
第2のジョセフソン接合と、第2の出力に結合された負のバイアスインダクタと、
前記第1の入力と前記第2の出力とを相互接続し、前記第1の入力パルスに応答して第3の持続電流を提供するように構成される第3のストレージインダクタと、
前記第2の入力と前記第2の出力とを相互接続し、前記第2の入力パルスに応答して第4の持続電流を提供するように構成された第4のストレージインダクタとを含む前記ゲートとを備え、前記第2のジョセフソン接合は、前記負のバイアスインダクタと、前記第3および第4の持続電流の組み合わせとに応答してトリガーするように構成される、超伝導ゲートシステム。
[付記2]前記正のバイアスインダクタは、前記第1の出力と低電圧レールとを相互接続する変圧器の二次巻線であり、前記変圧器は、前記第1のジョセフソン接合にバイアスを加えるためにバイアス磁束電流が印加される一次巻線をさらに含んで、前記第1および第2の持続電流の少なくとも1つに応答して第1のジョセフソン接合をトリガーし、前記負のバイアスインダクタは、前記第2の出力と低電圧レールとを相互接続し、前記第2のジョセフソン接合に関連するバイアスを減少させて、前記第3および第4の持続電流の両方に応答して前記第2のジョセフソン接合をトリガーするように構成される、付記1に記載のシステム。
[付記3]前記第1の入力は、RQLクロック信号により第1のレシプロカル量子論理(RQL)入力パルスとして前記第1の入力パルスを供給するように構成される第1のジョセフソン伝送線(JTL)として構成され、前記第2の入力は、前記RQLクロック信号により第2のRQL入力パルスとして第2の入力パルスを供給するように構成される第2のJTLとして構成される、付記1に記載のシステム。
[付記4]前記第1のストレージインダクタおよび前記第4のストレージインダクタは相互誘導クロスカップリングされ、前記第2のストレージインダクタおよび前記第3のストレージインダクタは相互誘導クロスカップリングされ、前記第1および第4のストレージインダクタの相互誘導クロスカップリングおよび前記第2および第3のストレージインダクタの相互誘導クロスカップリングの各々は、0.5未満のクロスカップリング係数kを有する、付記1に記載のシステム。