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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、偏光板及び光学部材
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220303BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20220303BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J133/08
G02F1/1335 510
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020514204
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 KR2018010771
(87)【国際公開番号】W WO2019054778
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2017-0118726
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0107807
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521241281
【氏名又は名称】杉金光電(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】スン・ジュ・ノ
(72)【発明者】
【氏名】ハ・ソン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ヒ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ス・ソ
【審査官】沖村 美由
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-044376(JP,A)
【文献】特開2015-205974(JP,A)
【文献】国際公開第2016/099187(WO,A1)
【文献】特開2012-208247(JP,A)
【文献】特開2013-010836(JP,A)
【文献】特開2007-169329(JP,A)
【文献】特開2011-093957(JP,A)
【文献】特開2005-043795(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104979(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 1/00-5/10;9/00-201/10
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルム;及び前記偏光フィルムの少なくとも一面に形成される粘着層を含む粘着型偏光板であって、
前記粘着層は、無溶剤型粘着組成物の光硬化物であり、
前記組成物は、重量平均分子量(Mw)が1,000,000~3,500,000の範囲内である第1樹脂と、
1,000,000未満の重量平均分子量を有し、(メタ)アクリル酸エステル単量体50重量部~90重量部及び下記化学式1で表示される単量体10~50重量部由来の重合単位を含む第2樹脂と、を含み、
帯電防止剤をさらに含み、
前記帯電防止剤が、下記化学式2で表示される陰イオン又はビスフルオロスルホニルイミドを有する金属塩を含むことを特徴とする、粘着型偏光板。
【化1】

前記化学式1で、Qは、水素又はアルキル基であり、Uは、炭素数1~4のアルキレン基であり、mは、1~15の範囲内の数であり、Zは、アルキル基又はアリール基であり、
(化学式2)
「A(BO
化学式2で、Aは、窒素原子又は炭素原子であり、Bは、炭素原子又は硫黄原子であり、Rは、パーフルオロアルキル基であり、mは、1又は2であり、nは、2又は3である。
【請求項2】
前記第1樹脂40重量部~95重量部及び前記第2樹脂5重量部~60重量部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の粘着型偏光板。
【請求項3】
前記第1樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の重合単位を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の粘着型偏光板。
【請求項4】
前記第1樹脂は、水素結合が可能な化合物由来の重合単位をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の粘着型偏光板。
【請求項5】
前記水素結合が可能な化合物は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ウレタン基、アミン基又はアミド基を有することを特徴とする、請求項4に記載の粘着型偏光板。
【請求項6】
前記第1樹脂は、水素結合が可能な化合物由来の重合単位を30重量部以下で含むことを特徴とする、請求項4または5に記載の粘着型偏光板。
【請求項7】
前記組成物は、多官能性(メタ)アクリレート及び光開始剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の粘着型偏光板。
【請求項8】
前記帯電防止剤が、前記第1樹脂及び第2樹脂を合わせた100重量部に対して、5重量部以下で含まれることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の粘着型偏光板。
【請求項9】
前記粘着層は、1×1010Ω/□以下の表面抵抗を有し、そしてガラス基材に対して300mm/minの速度及び90゜の角度で測定された剥離力が300~700gf/inchの範囲内であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の粘着型偏光板。
【請求項10】
請求項1~請求項9のうちいずれか1項に記載の粘着型偏光板が一面又は両面に付着された液晶パネルを含むことを特徴とする、ディスプレイ装置。
【請求項11】
重量平均分子量(Mw)が1,000,000~3,500,000の範囲内である第1樹脂と、
1,000,000未満の重量平均分子量を有し、(メタ)アクリル酸エステル単量体50重量部~90重量部の重合単位及び下記化学式1で表示される単量体10~50重量部の重合単位を含む第2樹脂と、を含み、
帯電防止剤をさらに含み、
前記帯電防止剤が、下記化学式2で表示される陰イオン又はビスフルオロスルホニルイミドを有する金属塩を含むことを特徴とする、無溶剤型光硬化性組成物。
【化2】

前記化学式1で、Qは、水素又はアルキル基であり、Uは、炭素数1~4のアルキレン基であり、mは、1~15の範囲内の数であり、Zは、アルキル基又はアリール基であり、
(化学式2)
「A(BO
化学式2で、Aは、窒素原子又は炭素原子であり、Bは、炭素原子又は硫黄原子であり、Rは、パーフルオロアルキル基であり、mは、1又は2であり、nは、2又は3である。
【請求項12】
前記第1樹脂40重量部~95重量部及び前記第2樹脂5重量部~60重量部を含むことを特徴とする、請求項11に記載の無溶剤型光硬化性組成物。
【請求項13】
前記組成物は、多官能性(メタ)アクリレート及び光開始剤をさらに含むことを特徴とする、請求項11または12に記載の無溶剤型光硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2017年09月15日に出願された大韓民国特許出願第10-2017-0118726号及び2018年09月10日に出願された大韓民国特許出願第10-2018-0107807号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、粘着組成物、偏光板及び光学部材に関する。
【背景技術】
【0003】
粘着剤の用途は非常に多様である。例えば、偏光フィルム、位相差フィルム又は輝度向上フィルムのような光学機能性フィルムと液晶パネルを含む液晶表示装置(Liquid Crystal Display Device、以下、「LCD装置」)の製造時、光学機能性フィルム間の積層や液晶パネルに対する光学機能性フィルムの付着に粘着剤が用いられ得る。
【0004】
上記用途で粘着剤を用いる場合、離型基材から粘着剤を伝写するか、被接着対象に粘着剤を付着又はそれから再使用のために剥離する場合があり得る。このような過程で発生した静電気は、装置の誤作動を誘発し得る。
【0005】
一方、粘着剤は、離型基材上に塗布された粘着組成物で溶媒を乾燥した後、これを伝写する方式で製造されるが、この過程で気泡発生や粘着剤層の厚さの不均一などが発生しうる問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の一つの目的は、粘着剤層の形成時に均一な厚さを提供することができ、気泡発生が抑制されるなど耐久性に優れた無溶剤型粘着組成物を提供することである。
【0007】
本出願の他の目的は、粘着剤層の形成時に表面抵抗が低くて静電気発生を防止することができる無溶剤型粘着組成物を提供することである。
【0008】
本出願の上記目的及びその他の目的は、後述する本出願によって全て達成され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願に関する一つの例示で、本出願は、粘着型偏光板に関する。前記偏光板は、偏光フィルム及び前記偏光フィルムの少なくとも一面に形成された粘着層を含み得る。
【0010】
粘着層は、下記説明する無溶剤型組成物を光硬化して形成されたものであってもよい。すなわち、前記粘着層は、無溶剤型光硬化性組成物の硬化物であってもよい。光硬化は、例えば、マイクロ波(microwaves)、赤外線(IR)、紫外線(UV)、X線及びγ線のような電磁気波は勿論、α-粒子ビーム(alpha-particle beam)、陽子ビーム(proton beam)、中性子ビーム(neutron beam)及び電子ビーム(electron beam)のような粒子ビームの照射により行われ得る。組成物を光硬化するための条件は特に制限されない。
【0011】
前記偏光フィルムは、様々な方向に振動しながら入射する光から一方の方向に振動する光のみを抽出することができる機能性フィルムであってもよい。使用可能な偏光フィルムの種類は特に制限されない。例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性色素が吸着配向されている形態のポリビニルアルコール系偏光フィルムなどのように、この分野で公知の一般的な偏光フィルムが制限なしに用いられ得る。偏光フィルムに用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリビニルアセテート系樹脂をゲル化して得ることができる。この場合、用いられるポリビニルアセテート系樹脂には、ビニルアセテートの単独重合体だけでなく、ビニルアセテート及び上記と共重合可能な他の単量体の共重合体も含まれ得る。上記でビニルアセテートと共重合可能な単量体の例には、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類及びアンモニウム基を有するアクリルアミド類などの1種又は2種以上の混合が挙げられるが、これに制限されるものではない。ポリビニルアルコール系樹脂のゲル化度は、通常、85モル%~100モル%程度、好ましくは、98モル%以上であってもよい。上記ポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類に変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタールなども用いられ得る。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常、1,000~10,000程度、好ましくは、1,500~5,000程度であってもよい。
【0012】
前記偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸(例えば、一軸延伸)する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色し、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸(boric acid)水溶液で処理する工程及びホウ酸水溶液で処理した後に水洗する工程などを経て製造し得る。上記で二色性色素としては、ヨウ素(iodine)や二色性の有機塩料などが用いられ得る。
【0013】
前記偏光フィルムのような光学部材上に粘着剤層を形成する方法は特に制限されない。例えば、バーコーターなどを用いて下記言及される粘着剤層の形成のための粘着組成物を塗布した後に硬化するか、又は粘着組成物を剥離性基材(離型基材)の表面に塗布して硬化させた後にこれを偏光フィルム上に伝写する方法などが用いられる。本出願の組成物は、離型基材の除去時に静電気の発生を抑制し得る点で、後者の方法により適合する。
【0014】
前記粘着層は、無溶剤型組成物の光硬化物であってもよい。すなわち、前記粘着層を形成するために用いられる組成物は無溶剤型であり、光硬化が可能な成分を含む組成物であり得る。本出願で「無溶剤型組成物」は、組成物が溶剤、例えば、有機溶剤や水性溶剤などを含まないことを意味する。本出願で「光硬化型組成物」とは、光の照射によるラジカル重合により硬化が可能な組成物を意味する。例えば、光硬化型組成物は、光の照射によるラジカル反応により重合が可能になるように分子内に炭素間不飽和二重結合を有する樹脂を含み得る。
【0015】
無溶剤型組成物を用いる場合には、溶剤に対する乾燥工程が省略できるので、工程効率が高くなり得、溶剤による気泡発生とそれによる粘着型偏光板の耐久性の低下問題を回避し得る。無溶剤型光硬化性組成物は、粘着力を確保するのに有利である。そして、熱硬化型組成物、例えば、イソシアネート反応型組成物は、硬化後の物性の安定化のために別途のエージング(aging)工程が必須的であるが、光硬化型組成物は、エージングなしに硬化後に直ちに製品化が可能な利点がある。また、無溶剤型光硬化性組成物の使用は、熱硬化時に発生する偏光子の収縮や劣化問題も回避できる利点がある。
【0016】
これと関して、本出願の無溶剤型光硬化性組成物は、分子量が互いに異なり、各分子内に炭素間不飽和二重結合を有する2以上の光硬化性樹脂(又は重合体)を含み得る。
【0017】
具体的に、前記組成物は、重量平均分子量(Mw:weight average molecular weight)が1,000,000~3,500,000の範囲内である第1樹脂、及び前記第1樹脂より重量平均分子量が小さい第2樹脂をさらに含み得る。本出願で重量平均分子量は、後述する実施例に記載したように、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味し得る。
【0018】
相対的に分子量が小さい第2樹脂は、第1樹脂に比べて分散性が優れるため、第2樹脂を含む組成物及び/又はその硬化物内で適切に分散された状態で存在し得る。このような第2樹脂の特性でより粘着層表面への帯電防止剤の移動が容易になり、それによって、少量の帯電防止剤でも粘着層の表面抵抗の減少効果を大きく改善し得る。
【0019】
一つの例示で、前記第2樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び下記化学式1で表示される単量体由来の重合単位を含み得る。本出願で「重合単位」とは、一つ以上の所定の単量体が重合されて形成された樹脂、重合体又は重合反応物の主鎖や側鎖などに前記所定の単量体が重合されて含まれている状態を意味し得る。
【0020】
【化1】
【0021】
前記化学式1で、Qは、水素又はアルキル基であり、Uは、炭素数1~4のアルキレン基であり、mは、1~15の範囲内の数であり、Zは、水素、アルキル基又はアリール基である。また、化学式1で、[-U-O-]単位が2個以上存在する場合、前記単位内のUの炭素数は同一であるか互いに異なり得る。
【0022】
前記化学式1で、mは、任意の数であって、例えば、1~15の範囲内、1~13の範囲内又は1~11の範囲内の数であり得る。前記範囲を満足する場合、粘着剤に適切な導電性を付与し得る。
【0023】
本出願で用語「アルキル基」は、特記のない限り、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルキル基を意味し得る。前記アルキル基は、直鎖状、分枝鎖状又は環状であってもよい。前記アルキル基は、一つ以上の置換基によって置換されているか、又は非置換された状態であってもよい。
【0024】
本明細書で用語「アルキレン基」は、特記のない限り、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルキレン基であってもよい。前記アルキレン基は、 直鎖状、分枝鎖状または環状であってもよい。前記アルキレン基は、必要に応じて、一つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0025】
本出願で用語「アリール基」は、特記のない限り、ベンゼン環を含むか又は2つ以上のベンゼン環が連結されているか、あるいは2つ以上のベンゼン環が一つ又は2つ以上の炭素原子を共有しつつ縮合又は結合されている構造を含む化合物又はその誘導体から由来する1価残基を意味し得る。前記アリール基は、例えば、炭素数6~25、炭素数6~22、炭素数6~16又は炭素数6~13のアリール基であってもよい。このようなアリール基としては、フェニル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基(xylyl group)又はナフチル基などが例示され得る。
【0026】
化学式1の化合物としては、例えば、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、アルコキシジアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシテトラアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アリールオキシジアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アリールオキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アリールオキシテトラアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル又はポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0027】
前記第2樹脂に含まれる(メタ)アクリル酸エステル単量体の種類は特に制限されない。例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体として、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが用いられ得る。このような単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート又はラウリル(メタ)アクリレートなどが用いられ得るが、上記羅列された単量体のみに制限されるものではない。
【0028】
一つの例示で、前記第2樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体50重量部~90重量部の重合単位及び前記化学式1で表示される単量体10~50重量部の重合単位を含み得る。前記化学式1で表示される単量体が10重量部未満である場合、帯電防止の改善効果が些細であり、50重量部を超過する場合には、第1樹脂との相溶性が悪くなって樹脂間の相分離が起きることがある。本出願で「重量部」は、各成分間の相対的な重量の割合を意味し得る。例えば、第2樹脂が(メタ)アクリル酸エステル単量体及び前記化学式1で表示される単量体の混合物から形成される場合に、前記混合物内で前記二つの単量体の相対的な重量比は、(メタ)アクリル酸エステル単量体50重量部~90重量部:前記化学式1で表示される単量体10~50重量部であり得る。
【0029】
一つの例示で、前記含量範囲を満足する場合、前記第2樹脂の形成時には、前記化学式1で表示される単量体を15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上又は45重量部以上で用いられる。
【0030】
一つの例示で、前記第2樹脂の重量平均分子量は、1,000,000未満であってもよい。前記第2樹脂が前記範囲内の分子量を有する場合、一種の可塑剤として機能するため、粘着組成物の帯電防止機能を一層改善し得る。より具体的に、前記第2樹脂の分子量は、950,000以下、900,000以下、850,000以下、800,000以下、750,000以下、700,000以下、650,000以下、600,000以下、550,000以下、500,000以下、450,000以下又は400,000以下であってもよい。可塑剤としての機能を考慮するとき、800,000以下であるものがより好ましい。前記第2樹脂の分子量の下限は、50,000以上、100,000以上、150,000以上、200,000以上又は250,000以上であってもよい。第2樹脂の分子量が50,000未満である場合には、粘着剤フィルムの凝集力が顕著に低下して耐久性が不良になるからである。
【0031】
一つの例示で、前記組成物は、第1樹脂40重量部~95重量部及び前記第2樹脂5重量部~60重量部を含み得る。第2樹脂が5重量部未満である場合、所望するレベルの帯電防止性能を得にくく、60重量部を超過する場合には、第1樹脂の特性を大きく阻害して耐久性がよくないことがある。
【0032】
粘着剤の耐久信頼性を考慮すると、第1樹脂と第2樹脂の相対的な含量において、分子量が大きい第1樹脂の含量が第2樹脂の含量に対して同等又はその以上であることが好ましい。例えば、前記組成物は、第1樹脂50重量部~95重量部及び前記第2樹脂5重量部~50重量部を含み得る。
【0033】
一つの例示で、前記第1樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合単位を含み得る。例えば、前記第1樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体又はその混合物の重合物であってもよい。(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、前記第2樹脂と関連して言及された単量体が1種以上用いられ得る。
【0034】
また一つの例示で、前記第1樹脂は、水素結合が可能な化合物の重合単位をさらに含んでいてもよい。前記第1樹脂が水素結合が可能な化合物の重合単位を有する場合、水素結合を通じて粘着剤層の接着力や粘着剤層の耐久性を改善し得る。前記水素結合が可能な化合物の種類は特に制限されず、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ウレタン基、アミン基又はアミド基を含む化合物が1種以上用いられ得る。
【0035】
一つの例示で、前記水素結合が可能な化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート又は8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート又はポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレートなどのポリ(アルキレングリコール)(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ醋酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレインなどのようなカルボキシル基含有単量体;又は(メタ)アクリルアミド又はN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、N,N'-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム又は(メト)アクリロイルモルホリンなどのようなアミド基含有単量体などであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0036】
一つの例示で、前記第1樹脂が水素結合が可能な化合物を重合単位として含む場合、前記第1樹脂は、水素結合が可能な化合物30重量部以下の重合単位を含み得る。例えば、前記第1樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体70重量部以上の重合単位及び水素結合が可能な化合物30重量部以下の重合単位を含み得る。前記水素結合が可能な化合物の含量が30重量部を超過する場合、水素結合が可能な化合物間の引力が付着基材の表面との引力よりさらに大きく作用して粘着物性を低下させる恐れがある。より具体的に、上記含量範囲を満足する範囲内で、前記第1樹脂の形成時に用いられ得る前記水素結合が可能な化合物の含量は、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下又は10重量部以下であってもよい。そして、その下限は、1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上、4重量部以上、5重量部以上、6重量部以上、7重量部以上、8重量部以上、9重量部以上又は10重量部以上であってもよい。
【0037】
一つの例示で、前記粘着剤組成物は、多官能性(メタ)アクリレートを含み得る。分子のうち2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、前記組成物に含まれる多官能性(メタ)アクリレートの具体的な種類は特に制限されない。一つの例示で、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペート(neopentylglycol adipate)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバル酸(hydroxyl puivalic acid)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリルオキシエチルイソシアヌレート、アリル(allyl)化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレートまたは9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(fluorine)などのような2官能型アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3官能型ウレタン(メタ)アクリレート又はトリス(メタ)アクリルオキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型アクリレート;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート又はペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型アクリレート;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型アクリレート;及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレート(例えば、イソシアネート単量体及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物)などの6官能型アクリレート等が用いられ得る。前記多官能性(メタ)アクリレートは、前記第1樹脂及び第2樹脂の含量を合わせた100重量部に対して5重量部以内で用いられ得る。例えば、0.001以上、0.01以上又は0.1以上の範囲で、そして、3重量部以下又は2重量部以下の範囲で多官能性(メタ)アクリレートが用いられ得る。
【0038】
一つの例示で、前記組成物は、光硬化型オリゴマーをさらに含んでいてもよい。例えば、光硬化型オリゴマーとしては、ポリオール及びポリイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンアクリレートが用いられる。前記オリゴマーは、GPCにより測定され、ポリスチレンを基準として換算された重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000の範囲内であってもよい。特に制限されないが、前記第2架橋剤は、末端に2個のアクリレート基を有する2官能ウレタンアクリレートオリゴマーであってもよい。前記光硬化型オリゴマーは、前記第1樹脂及び第2樹脂の含量を合わせた100重量部に対して15重量部以内で用いられ得る。例えば、0.01以上、0.1以上、0.5以上又は1.0以上の含量で、そして、10重量部以下又は5重量部以下の含量で用いられ得る。
【0039】
前記粘着剤組成物は、光開始剤をさらに含んでいてもよい。光開始剤としては、公知にされた化合物が用いられ得る。例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(1-Hydroxy-cyclohexyl-phenyl-ketone)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(2-Hydroxy-2-methyl-1-phenyl-1-propanone)、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(2-Hydroxy-1-[4-(2-hydroxyethoxy)phenyl]-2-methyl-1-propanone)、メチルベンゾイルホルマート(Methylbenzoylformate)、オキシ-フェニル-酢酸-2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル(oxy-phenyl-acetic acid-2-[2-oxo-2-phenyl-acetoxy-ethoxy]-ethyl ester)、オキシ-フェニル-酢酸-2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル(oxy-phenyl-acetic acid-2-[2-hydroxy-ethoxy]-ethyl ester)、α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン(alpha-dimethoxy-alpha-phenylacetophenone)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(2-Benzyl-2-(dimethylamino)-1-[4-(4-morpholinyl)phenyl]-1-butanone)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン(2-Methyl-1-[4-(methylthio)phenyl]-2-(4-morpholinyl)-1-propanone)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(Diphenyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phosphine oxide)、ホスフィンオキシド(Phosphine oxide)、又はフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(phenylbis(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phosphineoxide)などがラジカル開始剤として用いられ得る。また一つの例示で、常用化された光開始剤製品が用いられ得、例えば、α-ヒドロキシケトン系化合物(例えば、IRGACURE 184、IRGACURE 500、IRGACURE 2959、DAROCUR 1173;Ciba Specialty Chemicals(製));フェニルグリオキシレート(phenylglyoxylate)系化合物(例えば、IRGACURE 754、DAROCUR MBF;Ciba Specialty Chemicals(製));ベンジルジメチルケタール系化合物(例えば、IRGACURE 651;Ciba Specialty Chemicals(製));a-アミノケトン系化合物(例えば、IRGACURE 369、IRGACURE 907、IRGACURE 1300;Ciba Specialty Chemicals(製));モノアシルホスフィン系化合物(MAPO)(例えば、DAROCUR TPO;Ciba Specialty Chemicals(製));ビスアシルホスフィン系化合物(BAPO)(例えば、IRGACURE 819、IRGACURE 819DW;Ciba Specialty Chemicals(製));ホスフィンオキシド系化合物(例えば、IRGACURE 2100;Ciba Specialty Chemicals(製));メタロセン系化合物(例えば、IRGACURE 784;Ciba Specialty Chemicals(製));又はヨードニウム塩(iodonium salt)(例えば、IRGACURE 250;Ciba Specialty Chemicals(製));などが用いられ得る。
【0040】
一つの例示で、前記開始剤は、前記第1樹脂及び第2樹脂の含量を合わせた100重量部に対して、5重量部以下で用いられ得る。具体的に、前記開始剤は、0.001重量部以上又は0.01重量部以上で用いられ得、そして、3重量部以下又は2重量部以下の範囲で用いられ得る。上記範囲で開始剤が用いられる場合、適切な光硬化が行われ得る。
【0041】
本出願の粘着組成物は、帯電防止剤を含んでいてもよい。帯電防止剤としては、公知にされた帯電防止剤が制限なしに用いられ得る。
【0042】
一つの例示で、本出願の粘着組成物は、前記第1樹脂及び第2樹脂の含量を合わせた100重量部に対して、5重量部以下の帯電防止剤を含んでいてもよい。具体的に、帯電防止剤は、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下又は2重量部以下で用いられ得る。
【0043】
前記第2樹脂に含まれる化学式1で表示される化合物由来の重合単位は、帯電防止剤との親和性に優れる。また、上述したように、相対的に分子量が低い第2樹脂は、分散性に優れる。したがって、分子量が低い第2樹脂の帯電防止剤は、本出願の組成物及び/又はその硬化物内で均一な表面分布を有し得、それによって、粘着層の表面抵抗を効果的に低下させることができる。
【0044】
粘着層に帯電防止能を付与しようと過量の帯電防止剤を用いる場合には、伝写による汚染や粘着力の低下が発生するが、本出願は、上記構成の第2樹脂を含むため少量の帯電防止剤を用いても表面抵抗の減少による帯電防止の改善効果が得られる。特に制限されないが、帯電防止剤の含量の下限は、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上又は0.5重量部以上であってもよい。
【0045】
一つの例示で、帯電防止剤としては、イオン性化合物が用いられ得る。イオン性化合物としては、例えば、金属塩又は有機塩が用いられ得る。
【0046】
前記金属塩イオン性化合物は、例えば、アルカリ金属陽イオン又はアルカリ土類金属陽イオンを含み得る。陽イオンとしては、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウムイオン(Rb)、セシウムイオン(Cs)、ベリリウムイオン(Be2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)及びバリウムイオン(Ba2+)などの1種又は2種以上が例示され得、例えば、チウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及びバリウムイオンの1種又は2種以上又はイオン安定性及び移動性を考慮してリチウムイオンが用いられる。
【0047】
金属塩に含まれる陰イオンとしては、PF 、AsF-、NO 、フルオライド(F)、クロライド(Cl)、ブロマイド(Br)、ヨオジド(I)、ペルクロレイト(ClO )、ヒドロキシド(OH)、カーボネート(CO 2-)、ニトレイド(NO )、トリフルオロメタンスルホネイト(CFSO )、スルホネイト(SO )、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、メチルベンゼンスルホネイト(CH(C)SO )、p-トルエンスルホネイト(CHSO )、テトラボラート(B 2-)、カルボキシベンゼンスルホネイト(COOH(C)SO )、トリフルロロメタンスルホネイト(CFSO )、ベンゾネイト(CCOO)、アセテート(CHCOO)、トリフルオロアセテイト(CFCOO)、テトラフルオロボラート(BF )、テトラベンジルボラート(B(C )又はトリスペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート(P(C )などが例示され得る。
【0048】
他の例示で、金属塩に含まれる陰イオンとしては、下記化学式2で表示される陰イオン又はビスフルオロスルホニルイミドなどが用いられてもよい。
【0049】
(化学式2)
「A(BO
【0050】
化学式2で、Aは、窒素原子又は炭素原子であり、Bは、炭素原子又は硫黄原子であり、Rは、パーフルオロアルキル基であり、mは、1又は2であり、nは、2又は3である。化学式2で、Bが炭素である場合、mは、1であり、Bが硫黄である場合、mは、2であり、Aが窒素である場合、nは、2であり、Aが炭素である場合、nは、3であり得る。
【0051】
化学式2の陰イオン又はビス(フルオロスルホニル)イミドは、パーフルオロアルキル基(R)又はフルオロ基によって高い電気陰性度を示し、また、特有の共鳴構造を含み、陽イオンとの弱い結合を形成するとともに疏水性を有する。したがって、イオン性化合物が重合体などの組成物の他の成分と優れた相溶性を示しながら、少量でも高い帯電防止性を付与し得る。
【0052】
前記化学式2のRは、炭素数1~20、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であり得、この場合、前記パーフルオロアルキル基は、直鎖状、分枝鎖状又は環状構造を有することができる。化学式2の陰イオンは、スルホニルメチド系、スルホニルイミド系、カルボニルメチド系又はカルボニルイミド系陰イオンであり得、具体的には、トリストリフルオロメタンスルホニルメチド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミド、ビスペンタフルオロエタンスルホニルイミド、トリストリフルオロメタンカルボニルメチド、ビスパーフルオロブタンカルボニルイミド又はビスペンタフルオロエタンカルボニルイミドなどの1種又は2種以上が用いられる。
【0053】
前記有機塩イオン性化合物としては、例えば、陽イオンとして、N-エチル-N,N-ジメチル-N-プロピルアンモニウム、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム、N-メチル-N,N,N-トリブチルアンモニウム、N-エチル-N,N,N-トリブチルアンモニウム、N-メチル-N,N,N-トリヘキシルアンモニウム、N-エチル-N,N,N-トリヘキシルアンモニウム、N-メチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウム又はN-エチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウムなどのような4級アンモニウム、ホスホニウム(phosphonium)、ピリジニウム(pyridinium)、イミダゾリウム(imidazolium)、ピロリジニウム(pyrolidinium)又はピペリジニウム(piperidinium)などを前記陰イオン成分とともに含むものが用いられ得る。
【0054】
本出願で、前記帯電防止剤は、必要に応じて、前記金属塩と前記有機塩を同時に含んでいてもよい。
【0055】
その他に、前記粘着剤層の形成のための粘着組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤又は可塑剤などのような添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤の具体的な種類や含量は特に制限されない。
【0056】
上記構成の粘着層は、用途に適合な表面抵抗値と剥離力を有し得る。具体的に、前記粘着層が有する表面抵抗値は、1×1010Ω/□以下であり、そして、ガラス基材に対して300mm/minの速度及び90゜の角度で測定された剥離力が300~700gf/inchの範囲であってもよい。
【0057】
また、本出願は、ディスプレイ装置に関する。ディスプレイ装置がLCDである場合、前記装置は、液晶パネル及び前記液晶パネルの一面又は両面に付着された前記粘着型偏光板を含み得る。
【0058】
液晶パネルは、例えば、順次に形成された第1基板、画素電極、第1配向膜、液晶層、第2配向膜、共通電極及び第2基板を含み得る。一つの例示で、前記第1基板及び第2基板は、ガラス基板であってもよい。この場合、前記光学部材は、粘着剤層を媒介として前記ガラス基板に付着されていてもよい。
【0059】
前記装置は、液晶パネルの視認側の反対側面に光源をさらに含んでいてもよい。光源側の第1基板には、例えば、透明画素電極に電気的に接続された駆動素子としてTFT(Thin Film Transistor)と配線などを含むアクティブ型駆動回路が形成され得る。前記画素電極は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などを含み、画素別電極として機能しうる。また、第1又は第2配向膜は、例えば、ポリイミドなどの材料を含み得るが、これに制限されるものではない。
【0060】
前記装置で液晶パネルとしては、例えば、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、F(ferroelectic)型又はPD(polymer dispersed)型のような受動行列方式のパネル;2端子型(two terminal)又は3端子型(threeterminal)のような能動行列方式のパネル;横電界型(IPS;In Plane Switching)パネル及び垂直配向型(VA;Vertical Alignment)パネルなどの公知のパネルが全て適用され得る。
【0061】
ディスプレイ装置のその他の構成、例えば、液晶表示装置でのカラーフィルタ基板又はアレイ基板のような上下部基板などの種類も特に制限されず、この分野で公知にされている構成が制限なしに採用され得る。
【0062】
本出願に関するまた他の一つの例示で、本出願は、粘着組成物に関する。粘着組成物の具体的な構成は上述した内容と同一であり、偏光板の一面に付着される用途で用いられ得る。
【発明の効果】
【0063】
本出願の一つの例示によると、耐久性と帯電防止能に優れた粘着剤組成物、偏光板及び液晶装置が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、実施例及び比較例を通じて本出願を詳しく説明する。しかし、本出願の範囲は、下記実施例によって制限されるものではない。
【0065】
評価項目及び評価方法
*重量平均分子量:重合体の分子量及び分子量分布(PDI)は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を用いて測定し、GPC測定条件は、下記の通りである。検量線の製作には、標準ポリスチレン(Aglient system(製))を用いて測定結果を重量平均分子量(Mw)に換算した。
【0066】
<GPC測定条件>
測定器:Agilent GPC(Agilent 1200 series、U.S.)
カラム:PL Mixed B 2個連結
カラム温度:40℃
溶離液:THF(Tetrahydrofuran)
流速:1.0mL/min
濃度:~1mg/mL(100μl injection)
【0067】
*表面抵抗:粘着層の表面抵抗は、Hiresta-UX表面抵抗測定器を用いて測定し、測定条件は、下記の通りである。
【0068】
<表面抵抗測定条件>
測定器:Hiresta-UX
印加電圧:100V
時間:30秒
環境(温度/湿度):25度、50%RH
【0069】
* 高温高湿耐久性:ソーダライムガラス(Soda-lime glass)に8×13cmのサイズで粘着層を裁断して付着させた後、60℃/90%RH条件のチャンバに投入して500時間が経過後の気泡発生の有無を観察した。
【0070】
<評価基準>
肉眼で観察される気泡あり:NG
肉眼で観察される気泡なし:OK
【0071】
*光漏れ防止能:下記製造される粘着層と偏光板を含む光学部材2枚をソーダライムガラス(Soda-lime glass)に互いに直交位置になるようにラミネーションし、オートクレーブに40℃、4 bar 20分の条件で維持して試験板を作った。作った試験板を80℃の条件で500時間放置し、光漏れ防止程度を肉眼で観察し、下記基準によって評価した。
【0072】
<評価基準>
光漏れほとんどなし:良好
光漏れ多少あり:普通
明白な光漏れ:NG
【0073】
*剥離力:粘着フィルムを1 inchの幅で裁断してソーダライムガラス(Soda-lime glass)に付着し、常温で1時間放置した後に剥離力を測定した。このとき、「常温」とは、人為的に加温や減温が行われない温度であって、18~30℃の範囲内の温度である。
【0074】
<測定条件>
測定器:TA(Texture Analyzer)instrument引張器
測定角度:90°
測定速度:300mm/min
【0075】
<評価基準>
300~700gf/inch:適切
300gf/inch未満:不適切
【0076】
実施例及び比較例
<実施例1>
第1樹脂(A)の製造:BA(n-butyl acrylate)85重量部、DMAA(dimethyl acrylamide)5重量部及びHBA(hydroxy butyl acrylate)10重量部を50℃の常圧条件でバルク重合して、重量平均分子量が2,500,000である第1樹脂を得た。
【0077】
第2樹脂(B)の製造:BA(n-butyl acrylate)60重量部及びEOEOEA(2-(2-ethoxyethoxy)ethyl acrylate)40重量部をバルク重合して、重量平均分子量が300,000である第2樹脂を得た。
【0078】
上記製造された第1樹脂70重量部、及び第2樹脂30重量部、及び開始剤(irgacure-819)0.3重量部、ウレタンアクリレート系硬化剤(Miwon Specialty Chemical社、SUO-1020)1.0重量部、及び帯電防止剤(FC-4400)1.5重量部を含む組成物を離型基材上にコンマコーターでコーティングした。その後、Sylvania Black light lampで368m波長の光を約4分程度照射して粘着層を製造した。評価された物性は表2の通りである。
【0079】
<実施例2>
下記表1のように、樹脂間の割合を変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で粘着層を製造した。
【0080】
<比較例1>
下記表1のような構成の樹脂1種を100重量部で用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で粘着層を製造した。
【0081】
<比較例2>
下記表1のような構成の樹脂1種を100重量部で用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で粘着層を製造した。
【0082】
<比較例3>
下記表1のような構成の樹脂1種を100重量部で用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で粘着層を製造した。
【0083】
<比較例4>
下記表1のような構成の樹脂2種を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で粘着層を製造した。
【0084】
<比較例5>
下記表1のような構成の樹脂2種を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で粘着層を製造した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
実施例の場合、上記全ての項目において優れた評価が得られた。一方、本願による構成を有しない比較例の場合、前記の通り測定された物性に劣ることが分かる。
【0088】
具体的に、表面抵抗を低下させるために帯電防止剤を相対的に過量含む比較例3の場合、帯電防止剤のブリードアウトにより高温/高湿耐久性と粘着力に劣る。EOEOAを過量含む比較例4は、表面抵抗が低くなったが、樹脂相溶性が低下し、高温/高湿耐久性と粘着力に劣る。第2樹脂の重量平均分子量が1,000,000である比較例5の場合、第2樹脂による帯電防止機能が不十分であり、耐久性と粘着力の全てに劣ることが分かる。
[付記]
[付記1]
偏光フィルム;及び前記偏光フィルムの少なくとも一面に形成される粘着層を含む粘着型偏光板であって、
前記粘着層は、無溶剤型粘着組成物の光硬化物であり、
前記組成物は、重量平均分子量(Mw)が1,000,000~3,500,000の範囲内である第1樹脂と、
前記第1樹脂より重量平均分子量が小さく、(メタ)アクリル酸エステル単量体50重
量部~90重量部及び前記化学式1で表示される単量体10~50重量部由来の重合単位を含む第2樹脂と、を含むことを特徴とする、粘着型偏光板。
【化2】

前記化学式1で、Qは、水素又はアルキル基であり、Uは、炭素数1~4のアルキレン基であり、mは、1~15の範囲内の数であり、Zは、水素、アルキル基又はアリール基である。
[付記2]
前記第2樹脂は、1,000,000未満の重量平均分子量を有することを特徴とする、付記1に記載の粘着型偏光板。
[付記3]
前記第1樹脂40重量部~95重量部及び前記第2樹脂5重量部~60重量部を含むことを特徴とする、付記1に記載の粘着型偏光板。
[付記4]
前記第1樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の重合単位を含むことを特徴
とする、付記1に記載の粘着型偏光板。
[付記5]
前記第1樹脂は、水素結合が可能な化合物由来の重合単位をさらに含むことを特徴とする、付記4に記載の粘着型偏光板。
[付記6]
前記水素結合が可能な化合物は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ウレタン基、アミン基又はアミド基を有することを特徴とする、付記5に記載の粘着型偏光板。
[付記7]
前記第1樹脂は、水素結合が可能な化合物由来の重合単位を30重量部以下で含むことを特徴とする、付記6に記載の粘着型偏光板。
[付記8]
前記組成物は、多官能性(メタ)アクリレート及び光開始剤をさらに含むことを特徴とする、付記1に記載の粘着型偏光板。
[付記9]
前記第1樹脂及び第2樹脂を合わせた100重量部に対して、5重量部以下の帯電防止剤をさらに含むことを特徴とする、付記1に記載の粘着型偏光板。
[付記10]
前記粘着層は、1×10 10 Ω/□以下の表面抵抗を有し、そしてガラス基材に対して300mm/minの速度及び90゜の角度で測定された剥離力が300~700gf/inchの範囲内であることを特徴とする、付記1に記載の粘着型偏光板。
[付記11]
付記1~付記10のうちいずれか1つに記載の粘着型偏光板が一面又は両面に付着された液晶パネルを含むことを特徴とする、ディスプレイ装置。
[付記12]
重量平均分子量(Mw)が1,000,000~3,500,000の範囲内である第1樹脂と、
前記第1樹脂より重量平均分子量が小さく、(メタ)アクリル酸エステル単量体50重
量部~90重量部の重合単位及び前記化学式1で表示される単量体10~50重量部の重合単位を含む第2樹脂と、を含むことを特徴とする、無溶剤型光硬化性組成物。
【化3】

前記化学式1で、Qは、水素又はアルキル基であり、Uは、炭素数1~4のアルキレン基であり、mは、1~15の範囲内の数であり、Zは、水素、アルキル基又はアリール基である。
[付記13]
前記第2樹脂は、1,000,000未満の重量平均分子量を有することを特徴とする、付記12に記載の無溶剤型光硬化性組成物。
[付記14]
前記第1樹脂40重量部~95重量部及び前記第2樹脂5重量部~60重量部を含むことを特徴とする、付記12に記載の無溶剤型光硬化性組成物。
[付記15]
前記組成物は、多官能性(メタ)アクリレート及び光開始剤をさらに含むことを特徴とする、付記12に記載の無溶剤型光硬化性組成物。