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特許7033655短鎖脂肪酸生成腸内細菌群集の変化を用いたアルコール性肝疾患の診断および治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】短鎖脂肪酸生成腸内細菌群集の変化を用いたアルコール性肝疾患の診断および治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220303BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20220303BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220303BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220303BHJP
   A61P 3/06 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A61K35/74 A
A61P1/16
A23L33/135
A61K35/74 Z
A61K35/74 G
A61P3/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020518722
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 KR2018011564
(87)【国際公開番号】W WO2019066577
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】10-2017-0126557
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115823
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC 13327BP
(73)【特許権者】
【識別番号】520106231
【氏名又は名称】コバイオラブス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コ,クァンピョ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ボラム
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウン キ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,キュンチャン
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/167338(WO,A1)
【文献】Future Microbiol.(2017) 12(2), 157-170,2017年01月31日
【文献】Frontiers in Physiology,2017年05月19日,Vol. 8, Artilcle 319,pp.1-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール性脂肪肝の予防または改善活性を有し、寄託番号KCTC13327BPを有するロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)SNUG30017である、ロゼブリア(Roseburia)属菌株。
【請求項2】
前記ロゼブリア属菌株は、上皮細胞間密着結合(tight junction)の増加、アルコール性脂肪肝原因物質の減少、および腸壁透過性の減少からなる群より選択される1以上の特性を有するものである、請求項1に記載のロゼブリア属菌株。
【請求項3】
前記上皮細胞間密着結合の増加特性は、前記ロゼブリア属菌株の鞭毛によるものである、請求項2に記載のロゼブリア属菌株。
【請求項4】
前記上皮細胞間密着結合の増加は、アルコール性脂肪肝誘導動物モデルで、前記ロゼブリア属菌株で処置していない対照群に比べて、前記ロゼブリア属菌株処置群で上皮細胞膜の上皮電気抵抗増加、オクルディン(Occludin)遺伝子の発現量増加、またはMUC2遺伝子の発現量増加によるものである、請求項2に記載のロゼブリア属菌株。
【請求項5】
前記ロゼブリア属菌株は、CXCL2遺伝子、CXCL5遺伝子、TNF-α遺伝子、およびIL-1β遺伝子からなる群より選択される1種以上の肝炎症性サイトカインの発現量減少特性を有する、請求項1に記載のロゼブリア属菌株。
【請求項6】
前記アルコール性脂肪肝の予防または改善は、前記ロゼブリア属菌株の摂取による血中ALT濃度の減少、血中AST濃度の減少、肝の中性脂肪の減少、肝の脂肪量減少、および肝の脂肪合成関連遺伝子の発現減少からなる群より選択される1種以上の肝機能指標が改善されることである、請求項1に記載のロゼブリア属菌株。
【請求項7】
前記肝の脂肪合成関連遺伝子は、PPAR-γまたはCD36である、請求項6に記載のロゼブリア属菌株。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のロゼブリア属菌株、前記菌株の鞭毛抽出物、前記菌株の培養物、前記培養物の濃縮液および乾燥物からなる群より選択される1種以上を含む、アルコール性脂肪肝の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のロゼブリア属菌株、前記菌株の鞭毛抽出物、前記菌株の培養物、前記培養物の濃縮液および乾燥物からなる群より選択される1種以上を含む、アルコール性脂肪肝の予防または改善用食品組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のロゼブリア属菌株、前記菌株の鞭毛抽出物、前記菌株の培養物、前記培養物の濃縮液および乾燥物からなる群より選択される1種以上を含む、アルコール性脂肪肝の予防または改善用プロバイオティクス組成物。
【請求項11】
前記ロゼブリア属菌株は、腸内微生物菌叢の多様性増加、または代謝と関連した腸内微生物菌叢機能性増加を誘発するものである、請求項10に記載のプロバイオティクス組成物。
【請求項12】
対象の腸内に存在する、請求項1~のいずれか一項に記載のロゼブリア属菌株を定量する製剤を含むアルコール性脂肪肝の診断用組成物であって、前記定量する製剤が、プライマー、プローブ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマーおよび抗体からなる群より選択される1以上である、診断用組成物
【請求項13】
脂肪酸代謝物である酪酸およびプロピオン酸の濃度を定量する製剤を含む、請求項12に記載のアルコール性脂肪肝の診断用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール性脂肪肝症状を改善する効能を有するロゼブリア属菌株、前記菌株を検出することができる製剤を含むアルコール性脂肪肝疾患の診断用組成物、および前記菌株を含む腸内微生物を用いたアルコール性脂肪肝疾患の危険度予測または診断用キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルコール性肝疾患(ALD;Alcoholic liver disease)の原因はアルコールであって、アルコールは胃腸管内で容易に吸収され、そのうちの2~10%は腎臓と肺で除去され、残りは主に肝で酸化される。慢性的な飲酒は、多様な経路を通じて肝細胞の脂肪代謝不均衡を招いてアルコール性脂肪肝を誘導するのが知られている。
【0003】
従来はアルコール性肝損傷発生機序は摂取されたアルコールの約70%がアルコール脱水素酵素(ADH、alcohol dehydrogenases)によって、残り30%がシトクロム(cytochrome)P450 2E1によってアセトアルデヒド(acetaldehyde)に変換されると知られたが、最近の研究はアルコール性肝炎患者で顕著に増加された腸内細菌と内毒素(endotoxin)の一つであるリポ多糖類(LPS、lipopolysaccharide)がアルコール性肝損傷の重要な原因であるのを提示している。
【0004】
腸内微生物叢の構成比率は人体の免疫状態と密接な連関性があり、慢性飲酒によって腸上皮細胞間の結合(tight junction)が阻害され腸漏れ(leaky gut)現象が発生すれば、腸内グラム陰性菌のLPSが門脈を通じて多く移動するようになり、肝内クッパー細胞(kupffer cell)の活性誘導および炎症性サイトカイン(cytokine)生成によってひどい肝損傷が誘導される。
【0005】
次世代塩基配列分析方法を用いる細菌群集分析を通じて非培養性を含む微生物叢の分析が可能になり、微生物ゲノムの多様性と疾患との連関性を糾明する研究が行われている。
【0006】
腸内微生物叢が腸管系免疫以外にも肝、脳、腎臓のような2次臓器の疾患症状に関与することがあり、腸内微生物叢の構成比率だけでなく特定菌株の獲得が免疫体系において非常に重要であるのが明らかになっている。
【0007】
したがって、アルコール性脂肪肝症状を改善する効能がある腸内微生物を確認して、これを用いたアルコール性脂肪肝疾患を診断する技術の開発が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、アルコール性脂肪肝改善活性を有するロゼブリア属菌株を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、腸内ロゼブリア(Roseburia)属菌株を検出することができる製剤を含むアルコール性脂肪肝疾患の診断用組成物を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、対象(subject)の腸内に存在する請求項1によるアルコール性脂肪肝症状緩和活性を有するロゼブリア属菌株の量を測定する第1段階;
アルコールを摂取させた対照群の腸内に存在する請求項1によるアルコール性脂肪肝症状緩和活性を有するロゼブリア属菌株の量を測定する第2段階;および
前記第1段階および第2段階で測定したロゼブリア属菌株の量を比較する第3段階を含むアルコール性脂肪肝診断に関する情報を提供する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は次世代塩基配列分析方法を用いた腸内細菌群集分析とこれを用いたアルコール摂取量によって変化するマイクロバイオームバイオマーカー発掘に関するものであって、具体的に、アルコール摂取量によって変化するマイクロバイオームバイオマーカーに該当するロゼブリア・インテスティナリス菌株を分離し、マウス実験を通じてアルコール性脂肪肝疾患症状改善効能を確認して本発明を完成した。具体的に、本発明者らは健康な韓国人から分離されたロゼブリア・インテスティナリスSNUG30017菌株を発掘し、これを対象にしてアルコール性脂肪肝症状改善効能を確認して本発明を完成した。
【0012】
一つの様態として、本発明は、アルコール性脂肪肝予防または改善活性を有するロゼブリア(Roseburia)属菌株に関するものである。
【0013】
本発明の他の一例は、本発明によるロゼブリア属菌株、前記菌株の鞭毛抽出物、前記菌株の培養物、前記培養物の濃縮液および乾燥物からなる群より選択される1種以上を含む、アルコール性脂肪肝予防または治療用薬学的組成物に関するものである。
【0014】
本発明の他の一例は、本発明によるロゼブリア属菌株、前記菌株の鞭毛抽出物、前記菌株の培養物、前記培養物の濃縮液および乾燥物からなる群より選択される1種以上を含む、アルコール性脂肪肝予防または改善用食品組成物に関するものである。
【0015】
本発明の他の一例は、本発明によるロゼブリア属菌株、前記菌株の鞭毛抽出物、前記菌株の培養物、前記培養物の濃縮液および乾燥物からなる群より選択される1種以上を含む、アルコール性脂肪肝予防または改善用プロバイオティクス製剤に関するものである。
【0016】
前記ロゼブリア属菌株は、腸内微生物菌叢の多様性増加、または代謝と関連した腸内微生物菌叢機能性増加を誘発するものであり得る。
【0017】
本発明の他の一例は、対象(subject)の腸内に存在する、本発明によるロゼブリア属菌株を定量する製剤を含むアルコール性脂肪肝診断用組成物に関するものである。
【0018】
前記組成物は、脂肪酸代謝物である酪酸およびプロピオン酸の濃度を定量する製剤を含むものであってもよい。
【0019】
本発明の他の一例は、対象(subject)の腸内に存在するアルコール性脂肪肝症状緩和活性を有するロゼブリア属菌株の量を測定する第1段階;アルコールを摂取させた対照群の腸内に存在する請求項1によるアルコール性脂肪肝症状緩和活性を有するロゼブリア属菌株の量を測定する第2段階;および前記第1段階および第2段階で測定したロゼブリア属菌株の量を比較する第3段階を含む、アルコール性脂肪肝診断に関する情報を提供する方法に関するものである。
【0020】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明によるアルコール性脂肪肝改善活性を有するロゼブリア属菌株は、例えば、アルコール摂取量による腸内菌叢分析結果、アルコール摂取量が少ない正常グループでロゼブリア属菌株が連関性を示し、前記連関性を示したロゼブリア属菌株を選択して本発明によるアルコール性脂肪肝改善活性を有するロゼブリア属菌株として採択した。本発明によるロゼブリア属菌株は、腸内菌叢に由来したものであってもよい。
【0021】
前記ロゼブリア属菌株は、腸上皮細胞間密着結合(tight junction)強化を通じてアルコール性脂肪肝改善活性を示すことができる。具体的に、ロゼブリア属菌株が添加される場合、上皮細胞膜の上皮抵抗が増加して腸の上皮細胞間結合が強化されることを確認した(実施例7)。
【0022】
前記ロゼブリア属菌株は、ロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)、およびロゼブリア・ホミニス(Roseburia hominis)からなる群より選択される1種以上のものであってもよい。
【0023】
前記ロゼブリア属菌株は、ロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)であってもよい。
【0024】
前記ロゼブリア属菌株は、ロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)SNUG30017であってもよい。
【0025】
前記ロゼブリア属菌株は、ロゼブリア・ホミニス(Roseburia hominis)DSM16839であってもよい。
【0026】
本発明によるロゼブリア属菌株は、下記のような特性を1種以上有する菌株であってもよい。
(1)上皮細胞間密着結合(tight junction)を強化、上皮細胞膜の上皮電気抵抗を増加、Zo-1およびOccludin遺伝子の発現量増加、またはMUC2遺伝子の発現量増加、
(2)アルコール性脂肪肝の発生原因物質、例えば、血中リポ多糖類(LPS)の濃度減少、
(3)肝損傷の改善、血中ALT濃度減少、血中AST濃度減少、肝の中性脂肪減少、生体内腸壁透過度実験でFITC投与時血中FITC蛍光発現減少、またはOil Red O染色結果、肝の脂肪量減少、
(4)脂肪肝誘発遺伝子の発現減少、またはPPAR-rおよびCD36遺伝子の発現量減少、
(5)肝損傷症状の改善または治療、CXCL2およびCXCL5遺伝子の発現量減少、
(6)肝での炎症反応減少、またはTNF-αおよびIL-1β遺伝子の発現量減少。
(7)腸内微生物菌叢回復および多様性増加、
(8)DNA回復および代謝と関連した腸内微生物菌叢機能性増加。
【0027】
本発明の一例によるロゼブリア属菌株の上皮細胞間密着結合強化特性は、細胞間密着結合(tight junction)の機能維持または増加を意味し、具体的に密着結合活性増加、密着結合タンパク質、例えば、膜タンパク質であるoccludinのmRNA発現増加であり得る。本発明の一例によるロゼブリア属菌株は、ヒト由来大腸細胞株であるのCaco-2細胞株で密着結合タンパク質発現を増加させて腸細胞間密着結合特性を向上させる。
【0028】
例えば、Caco-2細胞に前記菌株を投与後24時間後の上皮細胞膜の上皮電気抵抗(TEER、TransEpithelial Electrical Resistance)の増加率(%)が対照区と比較して1倍以上、1.2倍以上、1.4倍以上、1.6倍以上、1.8倍以上、または2倍以上であって(図8a)、上皮細胞間結合を強化させる効果があり、アルコール性脂肪肝症状を緩和することができる。
【0029】
TEERは、内皮および上皮単一層の細胞培養モデルで密着結合力学の完全性を測定するために広く受け入れられる定量的技術である。TEER値は、薬物や化学物質の運搬を評価する前に細胞腸壁の完全性を示す強力な指標である。TEER測定は細胞損傷なくリアルタイムで行うことができ、一般に広範囲な周波数スペクトルでオーミック抵抗測定またはインピーダンス測定を基盤とする。TEERを活用して広く特性化された腸壁モデルには胃腸管(GI)管モデルがあり、胃腸管細胞層が有する電気的抵抗値/腸上皮細胞間隙の健全性指標として活用できる。
【0030】
例えば、ロゼブリア属菌株を投与する場合、Zo-1発現量が対照群と比較して100%以上、105%以上、110%以上、または120%以上であり得る(図15a)。
【0031】
例えば、本発明の一例によるロゼブリア属菌株を投与する場合、Occludin発現量が対照群と比較して100%以上、105%以上、110%以上、115%以上、120%以上、125%以上、130%以上、135%以上、または140%以上であり得る(図15a)。
【0032】
例えば、本発明の一例によるロゼブリア属菌株を投与する場合、MUC2発現量が対照群と比較して100%以上、105%以上、110%以上、115%以上、120%以上、125%以上、130%以上、135%以上、または140%以上であり得る(図15a)。
【0033】
本発明の一例によるロゼブリア属菌株のアルコール性脂肪肝の発生原因物質減少効果は、アルコール性脂肪肝またはアルコール性肝炎の原因物質であるリポ多糖類(LPS、lipopolysaccharide)の血中濃度を減少させて、アルコール性脂肪肝を改善することができる。例えば、C57BL/6Jマウスにアルコールと共に前記ロゼブリア属菌株を投与する場合、エタノールのみを投与した対照群と比較して血中LPS濃度が90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、または62%以下であり得る(図11)。
【0034】
本発明の一例によるロゼブリア属菌株の肝損傷の改善または治療効果は、アルコール性脂肪肝を改善して、アルコール性脂肪肝誘導動物モデルで、前記ロゼブリア属菌株を無処理した対照区と比較して、前記ロゼブリア属菌株処理群で、肝損傷の程度を示す指標である血中ALT濃度、血中AST濃度、肝の中性脂肪、生体内腸壁透過度実験でFITC投与時血中FITC蛍光発現、および/またはOil Red O染色結果肝の脂肪量が減少できる。
【0035】
例えば、本発明の一例によるロゼブリア属菌株を投与する場合、血中ALT濃度が対照群と比較して100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、または50%以下であり得る。
【0036】
例えば、本発明の一例によるロゼブリア属菌株を投与する場合、血中AST濃度が対照群と比較して100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、または50%以下であり得る。
【0037】
例えば、本発明の一例によるロゼブリア属菌株を投与する場合、肝の中性脂肪濃度(Liver TG)が対照群と比較して100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、または50%以下であり得る。
【0038】
例えば、本発明の一例によるロゼブリア属菌株を投与する場合、血中FITC蛍光発現が対照群と比較して100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、74%以下、または73%以下であり得る。
【0039】
例えば、本発明の一例によるロゼブリア属菌株を投与する場合、Oil Red O染色結果脂肪量が対照群と比較して100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、または50%以下であり得る。
【0040】
本発明の一例によるロゼブリア属菌株はアルコール性脂肪肝を改善することができ、前記ロゼブリア属菌株をアルコールと共に投与時、脂肪肝誘発遺伝子の発現量が、前記ロゼブリア属菌株を無処理した対照区と比較して、前記ロゼブリア属菌株処理群で減少して、アルコールによって発生した脂肪肝の改善効果を確認した。
【0041】
例えば、本発明の一例によるロゼブリア属菌株を投与する場合、肝での中性脂肪合成および脂肪酸輸送のような脂肪代謝と関連した遺伝子であるPPAR-rの発現量が対照群と比較して90%以下、85%以下、80%以下、または75%以下であり得る(図14)。
【0042】
例えば、本発明の一例によるロゼブリア属菌株を投与する場合、肝での中性脂肪合成および脂肪酸輸送のような脂肪代謝と関連した遺伝子であるCD36の発現量が対照群と比較して90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、または25%以下であり得る。
【0043】
本発明の一例によるロゼブリア属菌株はアルコールによって発生する肝での炎症反応の増加を改善することができ、前記ロゼブリア属菌株をアルコールと共に投与時、炎症性サイトカインまたはケモカイン遺伝子の発現量が、前記ロゼブリア属菌株を無処理した対照区と比較して、前記ロゼブリア属菌株処理群で減少して、アルコールによって発生した脂肪肝の改善効果を確認した。
【0044】
例えば、本発明の一例によるロゼブリア属菌株を投与する場合、炎症性サイトカインの一つであって好中球募集(neutrophil recruitment)を活性化させるケモカイン(chemokines)であるCXCL2および/またはCXCL5遺伝子発現量が、対照群と比較して90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、または25%以下であり得る。
【0045】
例えば、本発明の一例によるロゼブリア属菌株を投与する場合、炎症性サイトカインと知られたTNF-αおよび/またはIL-1β遺伝子の発現量が、対照群と比較して90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、または25%以下であり得る。
【0046】
本発明の一例によるロゼブリア属菌株の上皮細胞間密着結合強化特性は、ロゼブリア属菌株の鞭毛によるものであってもよい。具体的に、実施例8でロゼブリア属菌株、ロゼブリア属菌株の培養液、およびロゼブリア属菌株の鞭毛をそれぞれ処理後、腸上皮細胞膜の上皮電気抵抗(TEER)およびFITC透過度を測定してみた結果、ロゼブリア属菌株の鞭毛が添加された場合に上皮細胞膜の上皮電気抵抗が有意に増加して、ロゼブリア属菌株由来鞭毛に腸上皮細胞間結合を強化させる効果があり、アルコール性脂肪肝を改善することができるのを確認した。
【0047】
本発明の薬学組成物はそれぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、軟膏剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、または経皮剤、座剤および滅菌注射用液の形態の非経口剤形などに剤形化して使用できる。
【0048】
本発明による薬学組成物を非経口用として提供する場合、一例として液剤、ゲル(gel)剤、洗浄組成物、錠剤、座剤形態、クリーム、軟膏、ドレッシング溶液、噴霧剤、その他塗布剤などの局所投与剤、溶液型、懸濁型、乳剤型などの液状剤形であってもよく、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、座剤、クリーム、軟膏、ゼリー、バブル、または洗浄剤、好ましくは液剤、ゲル(gel)剤、洗浄組成物などの皮膚外用剤が含まれ得る。前記剤形は、一例として、滅菌水に溶解補助剤、乳化剤、pH調節のための緩衝剤などを添加して製造することができる。
【0049】
前記非水性溶剤または懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。
【0050】
本発明の薬学的組成物は、薬剤学的に適合し生理学的に許容される担体、賦形剤および希釈剤などの補助剤を追加的に含有するものであってもよい。
【0051】
本発明の薬学的組成物に含有できる担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用することができる
【0052】
本発明による薬学的組成物は、ヒトを含む哺乳動物に多様な経路で投与できる。投与方式は通常使用されるいずれの方式であってもよく、例えば、経口、皮膚、静脈、筋肉、皮下などの経路で投与でき、好ましくは経口で投与できる。
【0053】
本発明の薬学的組成物をヒトに適用する具体例において、本発明の薬学的組成物は単独で投与できるが、一般に投与方式と標準薬剤学的慣行(standard pharmaceutical practice)を考慮して選択された薬剤学的担体と混合されて投与できる。
【0054】
例えば、本発明のロゼブリア属菌株含有組成物は、デンプンまたはラクトースを含有する錠剤形態で、または単独または賦形剤を含有するカプセル形態で、またはうまみを出すか色を帯びるようにする化学薬品を含有するエリキシルまたは懸濁剤形態で経口、口腔内または舌下投与できる。
【0055】
本発明の薬学組成物の投与容量は患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態および疾患程度によって異にすることができ、医師または薬剤師の判断によって一定時間間隔で1日1回~数回に分割投与することもできる。例えば、有効成分含量を基準にして、1日投与量が0.1~500mg/kg、好ましくは0.5~300mg/kgであってもよい。前記投与量は平均的な場合を例示したものであって、個人的な差によってその投与量が高いか低いこともある。
【0056】
また、本発明の薬学組成物の1日投与量が前記投与容量未満であれば有意性ある効果を得ることができず、それ以上を超過する場合、非経済的であるだけでなく常用量の範囲を逸脱するので好ましくない副作用が現れる恐れが発生することがあるので、前記範囲にすることがよい。
【0057】
本発明のまた他の実施形態によるアルコール性脂肪肝の予防または改善用食品組成物において、食品とは栄養素を一つまたはそれ以上含有している天然物または加工品を意味し、好ましくはある程度の加工工程を経て直接食べることができる状態になったものを意味し、通常の意味としての食品、食品添加剤、健康機能性食品、飲料および飲料添加剤などを全て含む意図である。本発明で飲料とは、のどの渇きを解消するか味を楽しむために飲むものの総称を意味し、機能性飲料を含む意図である。
【0058】
本発明の一例によるロゼブリア属菌株は、乳製品、ヨーグルト、カード(curd)、チーズ(例えば、クォーク、クリーム、加工、軟質および硬質)、発酵乳、粉乳、牛乳基材の発酵製品、アイスクリーム、発酵穀物製品(fermented cereal based product)、調製粉乳(milk based powder)、飲料、ドレッシングおよび愛玩動物飼料のような多様な食用製品に含有できる。用語“食品”は本願で薬剤学的製品および獣医学的製品を除いた、動物が摂取できる、全ての提供形態の、全てのタイプの製品をはじめとする、最も広義的な意味である。
【0059】
前記飲料は必須成分として前記ロゼブリア属菌株を含有すること以外に液体成分には特別な制限はなく、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。
【0060】
前述の天然炭水化物の例はモノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖などのジサッカライド、例えばマルトース、スクロースなどのポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖およびキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。前述のもの以外の香味剤として天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど))および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、本発明の食品組成物100ml当り一般に約1~20g、好ましくは約5~12gである。
【0061】
本発明の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。
【0062】
その他に、本発明の食品組成物は、天然果物ジュースおよび果物ジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は、独立的に、または組み合わせて使用することができる。
【0063】
本発明による組成物が食餌補助剤として使用される場合、そのまま投与するか、水、ヨーグルト、牛乳または果物ジュースなどの適正飲用可能な液体と混合するか、または固形または液形食品と混合することができる。このような側面で、食餌補助剤は、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、懸濁剤、サシェ剤(sachet)、パスティール(pastille)、スイート(sweet)、バー(bar)、シロップ剤および対応する投与形態、一般に単位投薬(unit dose)形態であり得る。好ましくは、本発明の組成物は、薬剤学的製品の一般的な製造工程で製造された錠剤、カプセル剤または散剤形態で投与される。
【0064】
本発明の一例による食品組成物に含まれている有効性分としてのロゼブリア属菌株の含量は食品の形態、所望する用途などによって適切に特別な制限がなく、例えば、全体食品重量の有効成分であるロゼブリア属菌株の菌体、前記菌株培養物、前記菌株の破砕物および前記菌株の抽出物からなる群より選択される1種以上は、0.00001重量%~100重量%、0.001重量%~99.9重量%、0.1重量%~99重量%、さらに好ましくは1重量%~50重量%、0.01~15重量%で加えることができる。例えば、食品組成物100mlを基準にして0.02~10g、好ましくは0.3~1gの比率で加えることができる。
【0065】
本発明の一例によるロゼブリア属菌株は、特にプロバイオティクとして用いることができるという利点があり、よって、本発明によるロゼブリア属菌株を含むプロバイオティクス組成物を提供することができる。本発明によるロゼブリア属菌株はアルコール性脂肪肝を予防または改善する特性を有するため、有用なプロバイオティクス製剤として使用できる。
【0066】
プロバイオティクバクテリアは、毒性欠乏、生存性、付着性および有用効果と関連したいくつかの要件を充足しなければならない。このようなプロバイオティク特徴は、同一種のバクテリアでも菌株-依存的である。したがって、全てのプロバイオティク要件に対して優れた性能を示す菌株を発掘することが重要であり、前記菌株が優れたプロバイオティク特徴を有しているのを立証した。また、プロバイオティクス組成物に使用される菌株の好ましい条件は、胃腸で活性損失が少なく、腸内多様な抗生剤などに耐性を有することであり得る。
【0067】
プロバイオティクスは、“特定個数で摂取時、本質的な基本栄養を超えて健康上利点を提供する、生きている微生物”と定義される(Araya M.et al.、2002;Guarner F.et al.、1998)。数種の乳酸菌とビフィドバクテリウム種がプロバイオティクスに該当し、これはこれら菌株が特異的な健康効果を促進させると立証されたのを意味する。プロバイオティクバクテリアは毒性欠如、腸内生存性、付着性および有益な効果と関連したいくつかの要件を充足させなければならない。また、腸管免疫改善効果は腸細胞間密着結合の機能維持および炎症性サイトカイン減少、抗炎症サイトカインの増加、腸内菌叢の均衡維持などが並行されなければならないのが報告された。したがって、全てのプロバイオティク要件に対して優れた性能を有するそのような菌株を発掘することが重要である。
【0068】
したがって、プロバイオティクス組成物に使用される菌株の好ましい条件は、胃腸で活性損失少なく、腸内多様な抗生剤などに耐性を有することであり得る。
【0069】
本発明で使用される用語、“診断用マーカーまたは診断マーカー”とはアルコール性脂肪肝である状態とそうでない状態を区分する基準となる物質であって、正常試料に比べてアルコール性脂肪肝を有する患者の試料で増加または減少を示す各種有機生体分子などを含む。本発明の目的上、本発明の一例による診断用組成物は、アルコール性脂肪肝患者で特異的に高い水準で発現されるロゼブリア属菌株を言い、当該菌株と正の相関関係を有するルミノコッカス(Ruminococcus)属菌株、ブラウチア(Blautia)属菌株、および/またはクロストリジウム(Clostridium)属菌株微生物または群集をいう。
【0070】
好ましくは、前記検出できる製剤は、試料内でアルコール性脂肪肝の診断マーカーであるロゼブリア属菌株、ルミノコッカス属菌株、ブラウチア属菌株、および/またはクロストリジウム属菌株の存在を検出するために使用できる物質を意味する。例えば、ロゼブリア属菌株、ルミノコッカス属菌株、ブラウチア属菌株、および/またはクロストリジウム属菌株に特異的に存在するタンパク質、核酸、脂質、糖脂質、糖タンパク質または糖(単糖類、二糖類、オリゴ糖類など)などのような有機生体分子を特異的に検出することができるプライマー、プローブ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマーおよび抗体からなる群より選択される1以上であり得る。
【0071】
本発明で微生物検出製剤は、抗体であってもよく、抗原-抗体反応を基盤とした免疫学的方法を使用して該当微生物を検出することができる。このための分析方法としては、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent asay)、放射線免疫分析(RIA:Radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、オクタロニー(Ouchterlony)免疫拡散法、ロケット(rocket)免役電気泳動、組織免疫染色、免疫沈殿分析法(Immunoprecipitation assay)、補体固定分析法(Complement FixationAssay)、FACS(Fluorescence activated cell sorter)、タンパク質チップ(protein chip)などがあるが、これに制限されるわけではない。
【0072】
本発明で使用される用語、“危険度予測”とは被試験者がアルコール性脂肪肝の発生または関連疾患の発病可能性があるかを判別することを言い、アルコール性脂肪肝の発生または関連疾患の発病危険性の高い被試験者を特別且つ適切な管理を通じて発病時期を遅らせるか発病しないようにするか、最も適切な治療方式を選択することによって治療決定をするために臨床的に使用できる。また、“診断”とは、病理状態の存在または特徴を確認することを意味し、本発明の目的上、診断はアルコール性脂肪肝の発生または関連疾患の発病有無を確認することを意味することができる。
【0073】
本発明の一例によれば、ロゼブリア属菌株を検出することができる製剤を含む組成物であって、前記検出特異度の高い菌株を全て含んでアルコール性脂肪肝またはアルコール性脂肪肝関連疾患を顕著な敏感度で検出することができる。
【0074】
本発明のまた他の一例として、本発明の前記微生物検出製剤を含む組成物は、アルコール性脂肪肝またはアルコール性脂肪肝関連疾患の危険度予測または診断用キット形態に実現されて提供できる。本発明のキットは該当微生物を検出するためのプライマー、プローブ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマーおよび/または抗体の検出製剤を含むだけでなく、分析方法に適した1種以上の他の構成成分組成物、溶液、または装置が含まれてもよい。
【0075】
具体的な一例として、本発明で該当微生物に特異的なプライマーを含むキットは、PCRなどの増幅反応を行うための必須要素を含むキットであってもよい。例えば、前記PCR用キットはテストチューブまたは他の適切なコンテナ、反応緩衝液、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、Taq-ポリメラーゼ逆転写酵素のような酵素、DNase、RNAse抑制剤、DEPC-水(DEPC-water)、滅菌水などを含むことができる。
【0076】
前記キットは試料の採取のための血液または腸液試料採取用捕集器具を含み、前記捕集器具はブラシ、吸水性パッド、綿棒、スポイド、スワップ、注射器および羊水捕集器からなる群より選択される1以上の試料採取用捕集器具を追加的に含むことができるが、前記生物学的試料を捕集することができるものであればこれに限定されない。
【0077】
また前記キットは、アルコール性脂肪肝またはアルコール性脂肪肝関連疾患の危険度予測または診断のために被試験者の試料を採取することを要求する説明書を追加的に含むことができる。
【0078】
本発明のまた他の例として、本発明は、ロゼブリア属菌株を用いたアルコール性脂肪肝またはアルコール性脂肪肝関連疾患の危険度予測または診断に必要な情報を提供するために、ロゼブリア属菌株、ルミノコッカス属菌株、ブラウチア属菌株、およびクロストリジウム属菌株からなる群より選択される1以上の微生物を検出する方法に関するものである。
【0079】
前記アルコール性脂肪肝またはアルコール性脂肪肝関連疾患の危険度予測または診断用組成物に関する事項は、前記微生物を検出する方法にも同様に適用できる。
【0080】
好ましくは、前記方法は、(a)被試験者の試料を採取する段階;(b)前記試料からゲノムDNAを抽出する段階;前記抽出されたゲノムDNAにロゼブリア属菌株に特異的なプライマーを反応させる段階;および(c)前記反応物を増幅させる段階を含んで実現できる。
【0081】
前記段階(a)で、“被試験者の試料”とは、アルコール性脂肪肝またはアルコール性脂肪肝疾患患者と予想される人の体から採取されたものであって、血液、腸液、組織、細胞、全血、血清、血漿、唾液、大便または尿のような試料などを含むが、例えば、被試験者の血液、腸液、腸から採取された組織、好ましくは大便試料であってもよい。
【0082】
前記段階(b)で被試験者の試料からゲノムDNAの抽出は当業界に知られた一般的な技術を適用して行うことができ、前記段階(c)でロゼブリア属菌株に特異的なプライマーは前記説明した通りである。
【0083】
前記段階(c)で反応物を増幅させる方法は当業界に知られた一般的な増幅技術、例えば、重合酵素連鎖反応、SYBRリアルタイムPCR、逆転写-重合酵素連鎖反応、マルチプレックスPCR、タッチダウンPCR、ホットスタートPCR、ネステッドPCR、ブースターPCR、リアルタイムPCR、分別ディスプレイPCR、cDNA末端の迅速増幅、インバースPCR、ベクトレットPCR、TAIL-PCR、リガーゼ連鎖反応、復旧連鎖反応、転写媒介増幅、自己維持塩基配列複製、ターゲット塩基配列の選択的増幅反応を用いることができるが、本発明の範囲がこれに制限されない。
【0084】
また、前記段階(c)増幅産物の量を正常対照群試料の増幅産物と比較する段階(d)を追加的に行うことができ、被試験者試料の増幅産物が正常対照群試料の増幅産物と比較して有意的に増加するか減少したと判断される場合、当該被試験者はアルコール性脂肪肝またはアルコール性脂肪肝疾患があると判断することができる。
【0085】
好ましくは、被試験者試料のロゼブリア属菌株の微生物に対する増幅産物が正常対照群試料より低い場合、アルコール性脂肪肝またはアルコール性脂肪肝疾患の危険性があると予測するか、アルコール性脂肪肝またはアルコール性脂肪肝疾患があると診断することができる。
【発明の効果】
【0086】
本発明は韓国人双子コホートを基盤としてアルコール摂取量によって変化する腸内菌叢を相関関係分析してアルコール性脂肪肝疾患の新規バイオマーカーとして活用することができるロゼブリア属菌株に関するものであって、本発明のロゼブリア属菌株を用いてアルコール性脂肪肝疾患の診断用キットまたは治療用組成物開発活用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】発明の一実施形態によるコホートのアルコール摂取量(g/day)およびAUDITスコアの相関関係結果およびグループによる年齢、性別、C反応性蛋白(hsCRP)臨床指標情報を示したものである。
図2】発明の一実施形態による16S rRNAに基づいて分析された腸内菌叢をアルコール摂取量によってAUDIT stage I、II、IIIに区分して腸内菌叢の多様性変化を確認した結果を示したものである。
図3】発明の一実施形態による健康要因と腸内菌叢の連関性をOTU(Operational Taxonomic Units、16S基盤生物情報学的細菌分類単位)に分けて分析した結果である。
図4】発明の一実施形態による健康要因と腸内菌叢の連関性を分類群(taxon)に分けて分析した結果である。
図5】発明の一実施形態によるcytoscapeソフトウェアを用いてネットワーク分析を行った結果である。
図6】発明の一実施形態による短鎖脂肪酸代謝物を年齢、性別、双子と家族関係をランダム変数に、アルコール摂取グループを補正変数に指定後、連関性分析を行った結果である。
図7】発明の一実施形態による短鎖脂肪酸代謝物情報が確保された307個の試料内で代謝物と腸内菌叢の相関性分析を実施した結果である。
図8a】発明の一実施形態によるロゼブリア・インテスティナリスSNUG30017菌株の腸上皮細胞間膜(tight junction)強化効果を確認した実験結果である。
図8b】ロゼブリア・インテスティナリスおよびロゼブリア・ホミニス菌株に由来したタンパク質抽出物をSDS-PAGE gelにローディングした結果である。
図8c】ロゼブリア・インテスティナリスおよびロゼブリア・ホミニス菌株に由来したタンパク質抽出物をLTQ-Orbitrap質量分析した結果である。
図8d】ロゼブリア・インテスティナリスおよびロゼブリア・ホミニス菌株を透過電子顕微鏡で観察した結果である。
図8e】ロゼブリア属菌株、ロゼブリア属菌株の培養液、およびロゼブリア属菌株の鞭毛をCaco-2細胞株に添加した後、24時間後に膜の上皮電気抵抗を測定した結果である。
図8f】ロゼブリア属菌株、ロゼブリア属菌株の培養液、およびロゼブリア属菌株の鞭毛が処理されたCaco-2細胞に、エタノールを500mM/wellで処理後、3時間培養した後の膜の上皮電気抵抗を測定した結果である。
図8g】FITC-dextran(Fluorescein-dextran)を1g/lで処理して1時間培養後、FITC permeabilityを蛍光を通じて透過度を測定した結果である。
図9a】本発明による菌株のアルコール性脂肪肝改善効果を確認するための動物実験過程を示す模式図である。
図9b】発明の一実施形態によるロゼブリア菌株SNUG30017菌株のアルコール性脂肪肝改善効果を確認した結果である。
図10】発明の一実施形態による肝と盲腸を摘出後に重量を測定した結果である。
図11】発明の一実施形態による血中アラニンアミノ伝達酵素(ALT)およびバクテリアのグラム陰性菌の細胞壁を構成するリポ多糖類(LPS、lipopolysaccharide)を測定した結果である。
図12】発明の一実施形態によるヘマトキシリン&エオシン(H&E、Hematoxylin & Eosin)染色を通じた組織病理学的観察結果である。
図13a】発明の一実施形態による肝組織の損傷尺度であるOil Red O染色を行った結果である。
図13b】無作為的に選択された部位のOil Red O染色結果写真6枚に基づいて、ImageJプログラムを使用して脂肪を示す赤色を定量した結果である。
図14】発明の一実施形態による肝組織の遺伝子発現量変化を確認した結果であって、各グラフの棒は左側から陰性対照群(Pair)、陽性対照群(EtOH)、ロゼブリア・インテスティナリス投与群(EtOH+Ri)、ロゼブリア・ホミニス投与群(EtOH+Rh)、アッカーマンシアムシニフィラ投与群(EtOH+Akk)、ラクトバチルスラムノサスGG投与群(EtOH+LGG)である。
図15a】腸組織の遺伝子発現量変化を確認した結果であって、各グラフの棒は左側から陰性対照群(Pair)、陽性対照群(EtOH)、ロゼブリア・インテスティナリス投与群(EtOH+Ri)、ロゼブリア・ホミニス投与群(EtOH+Rh)、アッカーマンシアムシニフィラ投与群(EtOH+Akk)、ラクトバチルスラムノサスGG投与群(EtOH+LGG)である。
図15b】腸組織のオクルディン(Occludin)およびb-アクチン(b-actin)タンパク質発現量変化を確認したウェスタンブロット(western blot)写真である。
図15c】腸組織でウェスタンブロット(western blot)で確認したタンパク質発現量を定量して、Occludin発現量をb-actinで補正した値であって、各グラフの棒は左側から陰性対照群(Pair)、陽性対照群(EtOH)、ロゼブリア・インテスティナリス投与群(EtOH+Ri)、ロゼブリア・ホミニス投与群(EtOH+Rh)、アッカーマンシアムシニフィラ投与群(EtOH+Akk)、ラクトバチルスラムノサスGG投与群(EtOH+LGG)である。
図16a】16S rRNAに基づいて分析された腸内菌叢をグループによって腸内菌叢の多様性変化をFaith’s Phylogenetic diversity(系統的多様性)指標で確認した結果である。
図16b】16S rRNAに基づいて分析された腸内菌叢をグループによって腸内菌叢の多様性変化をChao1指標で確認した結果である。
図16c】16S rRNAに基づいて分析された腸内菌叢の主成分分析を実施した結果である。
図16d】腸内菌叢の変化を分析するために単変量分析(LefSE)を実施した結果である。
図17】PICRUStを通じた腸内菌叢KEGG pathways機能推定分析を実施した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]アルコール性脂肪肝の予防または改善活性を有する、ロゼブリア(Roseburia)属菌株。
[実施形態2]前記ロゼブリア属菌株は、上皮細胞間密着結合(tight junction)の増加、アルコール性脂肪肝原因物質の減少、および腸壁透過性の減少からなる群より選択される1以上の特性を有するものである、実施形態1に記載のロゼブリア属菌株。
[実施形態3]前記上皮細胞間密着結合の増加特性は、前記ロゼブリア属菌株の鞭毛によるものである、実施形態2に記載のロゼブリア属菌株。
[実施形態4]前記上皮細胞間密着結合の増加は、アルコール性脂肪肝誘導動物モデルで、前記ロゼブリア属菌株で処置していない対照群に比べて、前記ロゼブリア属菌株処置群で上皮細胞膜の上皮電気抵抗増加、オクルディン(Occludin)遺伝子の発現量増加、またはMUC2遺伝子の発現量増加によるものである、実施形態2に記載のロゼブリア属菌株。
[実施形態5]前記ロゼブリア属菌株は、CXCL2遺伝子、CXCL5遺伝子、TNF-α遺伝子、およびIL-1β遺伝子からなる群より選択される1種以上の肝炎症性サイトカインの発現量減少特性を有する、実施形態1に記載のロゼブリア属菌株。
[実施形態6]前記アルコール性脂肪肝の予防または改善は、前記ロゼブリア属菌株の摂取による血中ALT濃度の減少、血中AST濃度の減少、肝の中性脂肪の減少、肝の脂肪量減少、および肝の脂肪合成関連遺伝子の発現減少からなる群より選択される1種以上の肝機能指標が改善されることである、実施形態1に記載のロゼブリア属菌株。
[実施形態7]前記肝の脂肪合成関連遺伝子は、PPAR-γまたはCD36である、実施形態6に記載のロゼブリア属菌株。
[実施形態8]前記菌株は、ロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)である、実施形態1に記載のロゼブリア属菌株。
[実施形態9]前記菌株は、寄託番号KCTC13327BPを有するロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)SNUG30017である、実施形態1に記載のロゼブリア属菌株。
[実施形態10]実施形態1~9のいずれかに記載のロゼブリア属菌株、前記菌株の鞭毛抽出物、前記菌株の培養物、前記培養物の濃縮液および乾燥物からなる群より選択される1種以上を含む、アルコール性脂肪肝の予防または治療用薬学組成物。
[実施形態11]実施形態1~9のいずれかに記載のロゼブリア属菌株、前記菌株の鞭毛抽出物、前記菌株の培養物、前記培養物の濃縮液および乾燥物からなる群より選択される1種以上を含む、アルコール性脂肪肝の予防または改善用食品組成物。
[実施形態12]実施形態1~9のいずれかに記載のロゼブリア属菌株、前記菌株の鞭毛抽出物、前記菌株の培養物、前記培養物の濃縮液および乾燥物からなる群より選択される1種以上を含む、アルコール性脂肪肝の予防または改善用プロバイオティクス組成物。
[実施形態13]前記ロゼブリア属菌株は、腸内微生物菌叢の多様性増加、または代謝と関連した腸内微生物菌叢機能性増加を誘発するものである、実施形態12に記載のプロバイオティクス組成物。
[実施形態14]対象の腸内に存在する、実施形態1~9のいずれかに記載のロゼブリア属菌株を定量する製剤を含むアルコール性脂肪肝の診断用組成物。
[実施形態15]脂肪酸代謝物である酪酸およびプロピオン酸の濃度を定量する製剤を含む、実施形態14に記載のアルコール性脂肪肝の診断用組成物。
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳しく説明する。しかし、これら実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって限定されるのではない。
【実施例
【0089】
実施例1.研究対象および試料収集
韓国人双子コホートで410人の一卵性、二卵性双子とその家族らを対象にして大便試料を採取して-80℃に冷凍保管した。冷凍保管された試料を実験室に移してQIAamp FAST DNA stool mini kit(Qiagen)を用いてバクテリアゲノムDNAを抽出した。本コホートではアルコール摂取量(g/day)およびアルコール摂取習慣アンケート調査結果であるAUDITスコア臨床指標を活用して、AUDITスコアによるゾーンI(0-7点、正常グループ)、ゾーンII(8-15点)、ゾーンIII(16-40点、アルコール摂取量が多いグループ)に分けて分析した。本コホートのアルコール摂取量(g/day)およびAUDITスコアの相関関係分析結果およびグループによる年齢、性別、C反応性蛋白(hsCRP)臨床指標情報を図1に示した。
【0090】
実施例2.16S rRNAを用いた腸内菌叢分析
実施例1で抽出されたDNAを、バクテリアの16S rRNA遺伝子のV4領域をターゲットとする下記表1の515F/806Rプライマー(配列番号1および2)を用いて増幅し、Illumina社のMiSeq機器を用いて塩基配列データを生成した。生成された大容量塩基配列をQIIME pipelineを使用して分析し、腸内細菌の全体遺伝情報を確認して腸内菌叢の構造を把握後、アルコール摂取量指標との連関性を観察した。
【0091】
【表1】
【0092】
16S rRNAに基づいて分析された腸内菌叢をアルコール摂取量によってAUDIT ゾーンI、II、IIIに区分して腸内菌叢の多様性変化を確認した結果を図2に示し、アルコール摂取量が多いグループの場合、腸内菌叢の多様性が減少したのを確認した。これは、アルコール摂取量が増加することによって、有益菌の多様性の減少および潜在的な有害菌の優占によって、腸健康に否定的な影響を及ぼすことがあるのを示唆する。
【0093】
実施例3.腸内菌叢とアルコール摂取量の相関関係分析
年齢、性別、家族歴を補正して混乱変数を制御することができるMaAsLin(Multivariate analysis by linear models)ソフトウェアを用いて、多変量分析を通じてアルコール摂取量による腸内菌叢の変化およびこれによる腸の健康を特定することができる腸内バクテリアを糾明した。MaAsLinソフトウェアを使用して年齢、性別、双子と家族関係をランダム変数に、アルコール摂取グループを補正変数に指定後、健康要因と腸内菌叢の連関性をOTU(Operational Taxonomic Units、16S基盤生物情報学的細菌分類単位)および分類群(taxon)に分けて分析し、その結果を図3および図4に示した。
【0094】
図3から確認できるように、アルコール摂取量が多いグループはプレボテラコプリ(Prevotella copri)OTUが最も大きな連関性があり、アルコール摂取量が少ない正常グループはロゼブリア(Roseburia)OTUが最も大きな連関性があると確認された。前記図3の結果は、図4から確認できるように、分類群で分析を行った時も同じ傾向性を示した。
【0095】
実施例4.アルコール摂取量グループによる腸内菌叢のネットワーク分析
アルコール摂取量が多いグループと正常グループで腸内菌叢の発生パターンを把握するためにcytoscapeソフトウェアを用いてネットワーク分析を実施した。
【0096】
その結果は図5に示し、ネットワーク分析を通じて腸内菌叢の相互関係を観察した結果、アルコール摂取量によって腸内菌叢が二つのグループに分けられることが明らかになった。同じグループに属する分類群は互いに強い正の相関関係があり、他のグループとは互いに負の相関関係があった。
【0097】
実施例5.アルコール摂取量による腸内菌叢と短鎖脂肪酸代謝物の相関関係分析
韓国人双子コホートの一部である307個の糞便試料で腸内菌叢由来代謝産物である短鎖脂肪酸(short chain fatty acid)分析を実施した。同量の糞便試料を滅菌された3次蒸留水に溶かし、95%(v/v)硫酸を使用して酸性化させた後、遠心分離して上層液を回収した。
【0098】
試料上層液に内部標準(internal standard)のために1%2-メチルペンタン酸(2-methyl pentanoic acid)を添加後、エーテル(ethyl ether)を添加した。これをvortex後、遠心分離してエーテル層を回収し、Agilent社の6890 GC-FID機器を用いて短鎖脂肪酸代謝物を分析した。確保した短鎖脂肪酸代謝物プロファイルは総6種であって、酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、酪酸(butyric acid)、イソ酪酸(isobutyric acid)、吉草酸(valericacid)、およびイソ吉草酸(isovaleric acid)であった。
【0099】
このプロファイルをMaAsLinソフトウェアを用いて年齢、性別、双子と家族関係をランダム変数に、アルコール摂取グループを補正変数に指定後、連関性を分析した。
【0100】
前記実験結果は図6に示し、アルコール摂取量が多いほど酪酸の相対存在比が減少するのを確認することができた。また、アルコール摂取量が多いほどプロピオン酸対酪酸の比率が増加するのを確認することができた。
【0101】
また、短鎖脂肪酸代謝物情報が確保された307個の試料内で代謝物と腸内菌叢の相関性分析を実施した。その結果、図7から確認できるように、ロゼブリアと酪酸の正の相関関係があり、プレボテラおよびメガモナス(Megamonas)はプロピオン酸と正の相関関係があった。
【0102】
前記結果を通じて、アルコール摂取による腸内菌叢の変化が代謝産物である短鎖脂肪酸の変化を誘導することができ、腸内菌叢と短鎖脂肪酸代謝物がアルコール摂取による疾患のバイオマーカーとして使用できるのを確認することができた。
【0103】
実施例6.韓国人由来ロゼブリア属菌株の分離および同定
健康な韓国人の腸内菌叢でロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)菌株を分離した。具体的に、腸内菌叢分離用試料を健康な一般人成人から提供を受けて、糞便試料から菌株を分離、同定した(IRB承認番号:1602/001-001)。
【0104】
糞便試料は収得直後本研究室に運送されて直ぐ菌株分離に使用した。試料は直接塗抹形式で1.5%寒天(agar)が含まれているYCFAG培地にストリーキング後、37℃、嫌気条件で48時間培養した。培養後、純粋分離された集落(colony)を無作為的に選抜してYBHI培地で培養し、菌株の同定のために菌株のgenomic DNAを抽出した後、16S rRNA遺伝子をターゲットにして下記表2の27F/1492Rプライマー(配列番号3および4)を用いてPCR反応を行った。
【0105】
【表2】
【0106】
前記PCR反応物をQIAquick PCR purification kit(Qiagen)を使用して精製した後、ABI3711 automatic sequencer(マクロゼン)を用いて塩基配列分析を実施した。その結果は下記表3の配列と同一であり、この配列情報を用いてChunlabのEzBioCloudプログラム(http://www.ezbiocloud.net/identify)で多重比較して最終的に菌株の同定を完了した。
【0107】
【表3】
【0108】
前記分離された菌株をロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)SNUG30017と命名し、韓国生命工学研究院生物資源センター(Korean Collection for Type Culture)に寄託して受託番号KCTC13327BP(Roseburia intestinalis SNUG30017、2017年9月1日寄託)を付与された。
【0109】
純粋分離および同定された菌株の長期保管のために、指数期に到達した培養液にグリセロール(60%v/v)を添加してストックを作って-80℃に保管した。
【0110】
実施例7.ロゼブリア属菌株の腸上皮細胞間膜強化特性
腸上皮細胞間膜強化特性(tight junction強化特性)試験のための動物細胞としてCaco-2細胞株を米国細胞株銀行(ATCC)から分譲を受けて使用した。Caco-2細胞株はヒト大腸由来結腸直腸癌adenocarcinoma細胞であって、形態は上皮細胞である。
【0111】
Caco-2細胞は、20%ウシ胎児血清(FBS)、1%非必須アミノ酸溶液、1% HEPES、1.5%重炭酸ナトリウム溶液、ペニシリン-ストレプトマイシン(10U/ml)が添加されたMEM(Thermo Fisher Scientific、USA)培地を用いて5%CO存在下で37℃で培養させた。腸上皮細胞間壁強化実験のためにCaco-2細胞はウェル当り3×10cell/mlの数になるように24トランスウェルプレート(pore size 0.4μm、Corning、USA)に分注し、隔日で培地を交換して完全に単一層(monolayer)を形成するように7日間培養して実験に使用した。
【0112】
実験群としてロゼブリア・インテスティナリスSNUG30017菌株(Ri)を使用し、対照群のためにロゼブリア・ホミニス(Roseburia hominis)DSM 16839菌株(Rh)をドイツ菌株銀行(DSMZ)から分譲を受けて使用した。各菌はYBHI液体培地で指数期に到達するように37℃、嫌気条件で培養後、遠心分離後に上層液を除去し、PBSに希釈して準備した。菌株はバクテリアカウントキットを使用してBD社のAccuri C6 Flow cytometer機器を使用して菌数を測定した。単一層を形成したCaco-2細胞は菌株を処理する前にウシ胎児血清および抗生剤が添加されていない培地を添加し、感染多重度(MOI)が100になるように菌株を添加した。その後、0時間、12時間、24時間が経過した後の腸上皮細胞膜の上皮電気抵抗(TEER、TransEpithelial Electrical Resistance)を測定した。
【0113】
その結果は図8aに示し、Ri菌株が対照区に比べて上皮細胞膜の上皮電気抵抗を増加させ、12時間より24時間に対照区に比べて上皮細胞膜の上皮電気抵抗を顕著に増加させた。Rhは対照区に比べて有意な差がなかった。
【0114】
前記結果を通じて実施例6で分離して確保したロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)SNUG30017菌株が腸上皮細胞間結合を強化させる効果があり、このような効果を通じてアルコール性脂肪肝症状を緩和することができるのが分かる。
【0115】
実施例8.ロゼブリア属菌株鞭毛の腸上皮細胞間膜強化特性
8-1:ロゼブリア属菌株の鞭毛抽出
ロゼブリア属菌株の鞭毛を抽出するために、以下のように実施した。
【0116】
ロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)SNUG30017菌株(Ri)およびロゼブリア・ホミニス(Roseburia hominis)DSM16839菌株(Rh)はYBHI液体培地500mlで37℃、嫌気条件で24時間培養後、4℃、4,000xg、20分間遠心分離して上層液は除去した。その後、4℃PBSに菌株を懸濁後、ミキサーで30秒間3回均質化した。これを4℃、10,000xg、20分間遠心分離して上層液のみを確保し、これを4℃、100,000xg、1時間超高速遠心分離を実施して濃縮したpelletを500μlの3次滅菌蒸留水に懸濁し、このように抽出されたタンパク質を鞭毛で推定した。
【0117】
8-2:ロゼブリア属菌株の鞭毛確認
実施例8-1で得られたタンパク質抽出物をPAGE gel、およびLTQ-Orbitrap質量分析器を用いて分析した。
【0118】
具体的に、RiおよびRh菌株に由来したタンパク質抽出物はBCA protein assay kit(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量した。同量を10%β-mercaptoethanolが含まれているLaemmli sample loading buffer(Bio-Rad)を添加して10分間85℃で沸かした後、10%SDS-PAGE gelにローディングして鞭毛に該当する約35kDaサイズのバンドを確認し、その結果は図8bに示した。
【0119】
該当するサイズのバンドをトリプシン消化(trypsin digestion)してLTQ-Orbitrap質量分析器分析を実施した。確保されたアミノ酸配列をNCBIで確保したタンパク質データベースとマッチングした結果、抽出されたタンパク質はロゼブリア属菌株の鞭毛であるのを確認し、その結果は図8cに示した。
【0120】
また、RiおよびRh菌株の鞭毛の確認のためにYBHI固体培地37℃、嫌気条件で24時間培養後、gridの上に菌株を載せてPTA(phosphotungstic acid)を使用したnegative stainingを実施した。これを透過電子顕微鏡(TEM、Transmission electron microscope)を通じて鞭毛を観察し、その結果は図8dに示した。
【0121】
8-3:ロゼブリア属菌株鞭毛の腸上皮細胞間密着結合強化特性確認
ロゼブリア属菌株由来鞭毛に腸上皮細胞間膜密着結合強化特性があるのを確認するために、以下のように実施した。
【0122】
具体的に、エタノールによって破壊された腸上皮細胞間膜保護特性(tight junction保護特性)試験のための動物細胞としてCaco-2細胞を米国細胞株銀行(ATCC)から分譲を受けて使用した。Caco-2細胞は、20%ウシ胎児血清(FBS)、1%non-essential amino acids solution、1%HEPES、1.5%重炭酸ナトリウム溶液、ペニシリン-ストレプトマイシン(10U/ml)が添加されたMEM(Thermo Fisher Scientific、USA)培地を用いて5%CO存在下で37℃で培養させた。腸上皮細胞間壁保護実験のためにCaco-2細胞はウェル当り3×10cell/mlの数になるように24トランスウェルプレート(pore size 0.4μm、Corning、USA)に分注し、隔日で培地を交換して完全に単一層(monolayer)を形成するように7日間培養して実験に使用した。
【0123】
実験群としてロゼブリア・インテスティナリスSNUG30017菌株(Ri)を使用し、対照群のためにロゼブリア・ホミニス(Roseburia hominis)DSM16839菌株(Rh)をドイツ菌株銀行(DSMZ)から分譲を受けて使用した。各菌はYBHI液体培地で指数期に到達するように培養後、遠心分離後に上層液を除去し、PBSに希釈して準備した。菌株はバクテリアカウントキットを使用してBD社のAccuri C6 Flow cytometer機器を使用して菌数を測定した。培養液の場合、上層液を0.22umフィルター処理した。実施例8-1で抽出された鞭毛の場合、Thermo社のBCAキットを使用してタンパク質濃度を測定した。単一層を形成したCaco-2細胞は、菌株を処理する前にウシ胎児血清および抗生剤が添加されていない培地を添加した。各菌株の場合、1*10cells/well、1*10cells/wellになるように添加し、各菌株の培養液の場合は1%、各菌株の鞭毛の場合は250μM、および500μMで添加した。
【0124】
その後、0時間、24時間が経過した後の腸上皮細胞膜の上皮電気抵抗(TEER、TransEpithelial Electrical Resistance)を測定した。その後、エタノールを500mM/wellで処理して3時間培養後、腸上皮細胞膜の上皮電気抵抗を測定し、FITC-dextran(Fluorescein-dextran)を1g/lで処理して1時間培養後、FITC permeabilityを蛍光を通じて透過度(permeability)を測定した。
【0125】
菌、培養液、鞭毛を添加後、24時間が経過した後に膜の上皮電気抵抗を測定した結果は図8eに示した。菌の場合、Rh菌株が対照区に比べて、上皮細胞膜の上皮電気抵抗を1*10cells/wellで処理時に有意に増加させるのが確認された。鞭毛の場合、RiとRh由来鞭毛いずれも、250μMまたは500μMで添加時、対照区に比べて上皮細胞膜の上皮電気抵抗を有意に増加させた。培養液の場合、Ri由来培養液を1%で処理時、対照区に比べて上皮細胞膜の上皮電気抵抗を有意に減少させるのが確認された。前記結果を通じて菌株や培養液に比べてロゼブリア菌由来鞭毛が腸上皮細胞間結合を強化させる効果が顕著にあるのが分かる。
【0126】
その後、エタノールを500mM/wellで処理して3時間培養後、腸上皮細胞膜の上皮電気抵抗を測定した結果は図8fに示した。その結果、エタノール処理をした陽性対照群(E)はPBSを処理した陰性対照群に比べて上皮細胞膜の上皮電気抵抗が非常に有意に減少させるのが確認された。また、Ri菌株の場合、1*10cells/wellで処理時、陽性対照群に比べて上皮細胞膜の上皮電気抵抗を有意に増加させた。培養液の場合、Ri由来培養液を1%で処理時、陽性対照群に比べて有意に増加させるのが確認され、butyrate(but)を処理したコントロール群も同一な結果が確認された。前記結果を通じてエタノールによって腸上皮細胞間膜が破壊され、Ri由来菌株と培養液が腸上皮細胞間結合保護効果があるのが分かる。
【0127】
FITC-dextran(Fluorescein-dextran)を1g/lで処理して1時間培養後、FITC permeabilityを蛍光を通じて透過度を測定した結果は図8gに示した。その結果、エタノール処理をした陽性対照群はPBSを処理した陰性対照群に比べて上皮細胞膜の透過度が非常に有意に増加させるのが確認された。また、Ri菌株の場合、1*10cells/wellで処理時、陽性対照群に比べて上皮細胞膜の透過度を有意に減少させた。鞭毛の場合、Riは250μMまたは500μMで添加時に陽性対照区に比べて上皮細胞膜の透過度を有意に減少させ、Rhは500μMで添加時に有意な効果があった。培養液の場合、いずれも透過度を減少させる効果がなかった。前記結果を通じてエタノールによって腸上皮細胞間膜が破壊されて透過度が高まり、Ri由来菌株と鞭毛の場合、腸上皮細胞間結合保護効果があって透過度を減少させたのが分かる。
【0128】
実施例9.動物実験モデルの確立
単一菌株投与による腸内菌叢の変化とアルコール性脂肪肝の因果関係を糾明するために動物実験を実施した。
【0129】
雄8~10週齢のC57BL/6JマウスにLieber DeCarli飼料を毎日投与してアルコール性脂肪肝を誘発させた。図9aに示されているように、液体食餌の適応のために2日間アルコールが添加されていない飼料を給与後、3日目からアルコールの濃度を2日ごとに1%、および3%増加させて、6日目に5%(v/v)になるように投与し、その後10日間5%(v/v)で給与後、16日目朝に31.5%(v/v)のエタノールを経口投与して9時間後に実験を終了した。この時、陰性対照群の場合、同一熱量の45%(v/v)のマルトデキストリンを経口投与した。実験群食餌にはアルコール添加と共にマルトデキストリン(maltodextrin)の量を調節して、アルコールが添加されていない陰性対照群食餌の熱量と同一にした。実験群としてロゼブリア・インテスティナリスSNUG30017(Ri)、およびロゼブリア・ホミニスDSM16839菌株(Rh)、対照群として既存のアルコール性脂肪肝緩和効能が知られたAkkermansia muciniphila ATCC BAA-835、およびLactobacillus rhamnosus GG KCTC 5033菌株を使用した。各菌株を2×10CFU/0.2mlの量で毎日15日間経口投与する方式で定着(colonization)させ、陰性および陽性対照群にはPBSを経口投与した。マウスの重量を一週間隔で測定し、飼料摂取量を2日間隔で測定し、その結果を図9bに示した。
【0130】
その結果、図9bから分かるように、実験期間中に平均飼料摂取量(Food intake)は差がないにもかかわらず、陰性対照群(Pair)に比べて陽性対照群のエタノールグループ(EtOH)の重量(Weight change)が有意に減少したのを確認した。これは、同一な熱量を摂取してもエタノールによって重量が減少したのを意味する。エタノールグループ(EtOH)とロゼブリア菌株投与グループ(EtOH+Ri、EtOH+Rh)の重量差に有意性がなく、対照群のAkkermansia muciniphilaグループ(EtOH+Akk)の場合、エタノールグループに比べて有意な重量減少が発生した。
【0131】
実験が終わった後、マウスを犠牲にさせて肝(liver)、盲腸(cecum)、および脾臓(spleen)を摘出後、重量を測定し、その結果を図10に示した。
【0132】
その結果、図10から分かるように、肝、盲腸、および脾臓の体重に対する相対比率の変化はただ陰性対照群(Pair)と陽性対照群のエタノールグループ(EtOH)の間のみで有意性が示され、これは各菌の投与が肝、盲腸および脾臓の重量変化には影響を与えないのを意味する。
【0133】
実施例10.ロゼブリア菌株のアルコール性脂肪肝改善効果確認
10-1:定量分析
実施例9の実験終了時、マウスの血液を収得して血中アラニンアミノ伝達酵素(ALT)、バクテリアのグラム陰性菌の細胞壁を構成するリポ多糖類(LPS、lipopolysaccharide)、およびアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)を測定した。また、肝での中性脂肪(Triglycerides、TG)を測定し、実験終了直前にfluorescein isothiocyanate(FITC)蛍光が付けられたデキストラン(4kDa)を経口投与(60mg/100g body weight)して4時間後に血液を収得して血中内蛍光を測定するin vivo permeability(FITC)を実施した。その結果を図11に示した。
【0134】
その結果、図11から分かるように、ALTの場合、陰性対照群に比べて陽性対照群であるエタノールグループは血中ALT濃度が有意に高まってアルコール性脂肪肝が誘導されたのを確認した。また、実験群であるロゼブリア・インテスティナリスSNUG30017(Ri)、ロゼブリア・ホミニスDSM16839(Rh)、そして対照群であるAkkermansia muciniphila(Akk)の場合、エタノールグループに比べて有意な血中ALT濃度の減少が発生した。ALTは肝の損傷の指標として使用される代表的なバイオマーカーであって、このような結果は菌株投与によってアルコール性脂肪肝が緩和されたのを意味する。
【0135】
ASTの場合、陰性対照群に比べて陽性対照群のエタノールグループは血中AST濃度が有意に高まってアルコール性脂肪肝が誘導されたのを確認した。また、実験群であるロゼブリア・インテスティナリスSNUG30017(Ri)の場合、エタノールグループに比べて有意な血中AST濃度の減少が発生した。ASTも肝損傷の指標として使用される代表的なバイオマーカーであって、このような結果は菌株投与によってアルコール性脂肪肝が緩和されたのを意味する。
【0136】
肝中性脂肪(TG)の場合、陰性対照群に比べて陽性対照群であるエタノールグループは肝での中性脂肪濃度が有意に高まってアルコール性脂肪肝が誘導されたのを確認した。また、実験群であるロゼブリア・インテスティナリスSNUG30017(Ri)の場合、エタノールグループに比べて有意な肝での中性脂肪の減少が発生し、このような結果は菌株投与によってアルコール性脂肪肝が緩和されたのを意味する。
【0137】
FITCの場合、陰性対照群に比べて陽性対照群のエタノールグループは血中FITC蛍光発現が有意に高まって、アルコール性脂肪肝の発生原因の一つである腸壁透過性が高まったのを確認した。また、実験群であるロゼブリア・インテスティナリスSNUG30017(Ri)、ロゼブリア・ホミニスDSM16839(Rh)、そして対照群であるAkkermansia muciniphila(Akk)の場合、エタノールグループに比べて有意な血中FITC蛍光発現の減少が発生し、このような結果は菌株投与によって、腸壁透過性が低まり、アルコール性脂肪肝緩和に役立ったのを意味する。
【0138】
アルコール性脂肪肝の発生原因の一つであるLPSの場合、陰性対照群に比べて陽性対照群であるエタノールグループは血中リポ多糖類(LPS)の濃度が有意に高まって、腸壁透過性が高まったことによって腸に由来したLPSも増加したのを確認した。また、実験群であるロゼブリア・インテスティナリスSNUG30017(Ri)、ロゼブリア・ホミニスDSM16839(Rh)の場合、エタノールグループに比べて有意な血中LPS濃度の減少が発生し、このような結果は菌株投与によって腸壁が強化されたことがLPSの流出を減少させて、アルコール性脂肪肝緩和に役立ったのを意味する。
【0139】
10-2:組織学的分析
組織病理学的観察のために肝組織を10%ホルマリンで固定させた後、ヘマトキシリン&エオシン(H&E、Hematoxylin&Eosin)染色を実施した結果を図12に示し、肝組織の損傷尺度であるOil Red O染色を実施した結果およびImageJ softwareを使用してこれを定量した結果を図13aおよび図13bに示した。
【0140】
図12の結果によれば、陰性対照群(I.Pair)に比べて陽性対照群であるエタノールグループ(II.EtOH)は肥大化した脂肪蓄積と共に中心静脈(central vein、CV)を中心にしてneutrophilのような免疫細胞の浸潤(infiltration)が発生したことが確認された。また、実験群であるロゼブリア・インテスティナリスSNUG30017(III.EtOH+Ri)、ロゼブリア・ホミニスDSM16839(IV.EtOH+Rh)の場合、エタノールグループに比べて免疫細胞の浸潤(infiltration)減少が発生し、このような結果はロゼブリア菌株投与によってアルコール性脂肪肝を誘発する炎症反応が減少したのを意味する。
【0141】
図13a、および図13bの結果によれば、陽性対照群であるエタノールグループ(II.EtOH)の場合、肝での肥大化した脂肪蓄積を確認したが、Ri(III.EtOH+Ri)およびRh(IV.EtOH+Rh)菌株を投与した実験群の場合、肝での脂肪蓄積症状が緩和されたのを確認することができた。特に無作為的に選択した6部位の赤色を定量した結果、有意に減少したのを確認することができた(図13b)。図13bは、無作為的に選択された部位のOil Red O染色結果写真を6枚確保して、ImageJプログラムを使用して脂肪を示す赤色を定量した結果である。
【0142】
10-3:遺伝子発現量分析
組織の遺伝子発現量分析のために肝組織のRNAをRNeasy Lipid tissue mini kit(Qiagen)を使用して抽出し、腸組織のRNAをeasy-spin total RNA extraction kit(Intron)を使用して抽出した。これをhigh capacity RNA-to-cDNA kit(Applied biosystems)を使用してcDNAとして合成させた後、roter-gene SYBR green PCR kit(Qiagen)を使用して遺伝子発現量を分析した結果を図14(肝組織)、および図15a(腸組織)に示した。
【0143】
図14は、肝での中性脂肪合成および脂肪酸輸送のような脂肪代謝と関連した遺伝子であるPPAR-rとCD36の発現量とneutrophil recruitmentを活性化させるchemokinesであるCXCL2とCXCL5の遺伝子発現量、炎症性サイトカインと知られたTNF-αとIL-1βの発現量を比較分析したものである。
【0144】
図15aは、腸での腸上皮細胞間膜(tight junction)と関連したZo-1、Occludinの遺伝子の発現量、および粘液層(mucus layer)と関連したMUC2遺伝子の発現量を比較分析したものである。
【0145】
この時、下記表4のプライマー(配列番号6~27)を使用し、肝の場合、18S、腸の場合、HPRTハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene)で発現量を補正した。
【0146】
【表4】
【0147】
図14の結果によれば、PPAR-rとCD36は陰性対照群(Pair)に比べて陽性対照群(EtOH)で有意に発現量が増加し、これはエタノールによる肝での脂肪代謝の増加を意味する。一方、Ri菌株を投与した実験群(EtOH+Ri)では陽性対照群に比較して二つの遺伝子両方とも有意な発現量減少を示し、Rhを投与した実験群(EtOH+Rh)の場合、CD36発現量の有意な減少を示した。これは、ロゼブリア菌株投与が脂肪代謝と関連した遺伝子発現量を減少させてアルコール性脂肪肝緩和に役立ったのを意味する。
【0148】
また、CXCL2とCXCL5は陰性対照群(Pair)に比べて陽性対照群(EtOH)で有意に発現量が増加し、これはエタノールによる肝での炎症反応の増加および免疫細胞活性増加を意味する。特に、CXCL2とCXCL5は炎症性サイトカインの一種であるケモカインであって、炎症を誘発する。一方、Riを投与した実験群(EtOH+Ri)では陽性対照群に比較して二つの遺伝子両方とも有意な発現量減少を示し、Rhを投与した実験群(EtOH+Rh)の場合、CXCL2発現量の有意な減少を示した。これは、ロゼブリア菌株投与が免疫細胞調節と関連した遺伝子発現量を減少させてアルコール性脂肪肝緩和に役立ったのを意味する。
【0149】
また、TNF-αとIL-1βは陰性対照群(Pair)に比べて陽性対照群(EtOH)で有意に発現量が増加し、これはエタノールによる肝での炎症反応増加を意味する。一方、RiおよびRhを投与した実験群(EtOH+Ri、EtOH+Rh)で全て有意な減少を示し、これは菌株投与による肝での炎症反応の減少を意味する。
【0150】
図15aの結果によれば、Zo-1の場合、陰性対照群(Pair)と陽性対照群(EtOH)の間に有意な差がなかった。一方、Occludinの場合、陰性対照群(Pair)に比べて陽性対照群(EtOH)で有意に発現量が減少し、これはエタノールによる腸での腸上皮細胞間密着結合減少にOccludin発現量が影響を与えることを意味する。一方、RiおよびRhを投与した実験群(EtOH+Ri、EtOH+Rh)およびAkkを投与した対照群(EtOH+Akk)で全て有意にOccludin発現量の増加を示した。これは、ロゼブリア菌株の投与がOccludin発現量を増加させて腸上皮細胞間膜を強化してアルコール性脂肪肝緩和に役立ったのを意味する。
【0151】
MUC2の場合、陰性対照群(Pair)に比べて陽性対照群(EtOH)で有意に発現量が減少し、これはエタノールによる粘液層構成がさらに透過性が高く変わったことを意味する。一方、RiおよびRhを投与した実験群(EtOH+Ri、EtOH+Rh)で全て有意にMUC2発現量の増加を示した。これは、ロゼブリア菌株投与がMUC2発現量を増加させて粘液層を強化してアルコール性脂肪肝緩和に役立ったのを意味する。
【0152】
10-4:タンパク質発現量分析
腸組織のタンパク質発現量分析のために腸組織のタンパク質をprotease inhibitor cocktailが添加されたRIPAバッファーに均質化して抽出後、BCA protein assay kit(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量した。10% β-mercaptoethanolが含まれているLaemmli sample loading buffer(Bio-Rad)を添加して10分間85°Cで沸かした後、10% SDS-PAGE gelを実施した。その後、membraneは5%BSAが添加されたTBSTで1時間blocking後、1次、2次抗体を付けて反応を行った。反応の強さはGeneTools(Syngene)を通じて定量した。
【0153】
図15bは腸での腸上皮細胞間膜(tight junction)と関連したOccludinおよびハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene)であるβ-actinのタンパク質発現量を示したものであり、図15cはグループ当り総4-5個のサンプルから得られた結果を定量してβ-actin値で補正して相対的なタンパク質発現量を示すグラフである。図15bおよび15cの結果によれば、Occludinの場合、陰性対照群(Pair)に比べて陽性対照群(EtOH)で有意に発現量が減少し、これはエタノールによる腸でのOccludin発現量の減少によって腸上皮細胞間膜が弱まることを意味する。一方、RiおよびRhを投与した実験群(EtOH+Ri、EtOH+Rh)およびAkkを投与した対照群(EtOH+Akk)で全て有意にOccludin発現量の増加を示し、Riの場合、最も顕著に高く発現量を増加させた。これは、特にロゼブリア・インテスティナリス菌株投与がOccludin発現量を増加させて腸上皮細胞間膜を強化してアルコール性脂肪肝緩和に役立ったのを意味する。
【0154】
10-5:16S rRNAを用いた腸内菌叢分析
実施例9の実験終了時、マウスの盲腸を収得して-81℃に冷凍保管し、試料を実験室に移してQIAamp FAST DNA stool mini kit(Qiagen)を用いてバクテリアgenomic DNAを抽出した。抽出されたDNAを、バクテリアの16S rRNA遺伝子のV3-4領域をターゲットとする下記表5のプライマー(配列番号28および29)を用いて増幅し、index PCRを行った後、Illumina社のMiSeq機器を用いて塩基配列データを生成した。生成された大容量塩基配列をQIIME pipelineを使用して分析し、腸内細菌の全体遺伝情報を確認して腸内菌叢の構造を把握後、グループによる単変量分析(LefSE)を実施した。
【0155】
【表5】
【0156】
16S rRNAに基づいて分析された腸内菌叢をグループによって腸内菌叢の多様性変化をFaith’s Phylogenetic diversity(系統的多様性)およびChao1指標で確認した結果を図16aおよび図16bに示し、Faith’s Phylogenetic diversity指標の場合、陽性対照群であるエタノールグループの場合、陰性対照群より腸内菌叢の多様性が有意に減少したのを確認した。これは、アルコール摂取量が増加することによって、有益菌の多様性の減少および潜在的な有害菌の優占によって、腸健康に否定的な影響を及ぼすことがあるのを示唆する。一方、RiおよびLGGを投与した実験群で二つの指標両方とも有意に腸内菌叢の多様性が有意に増加したのを示した。これは、菌株投与が腸内菌叢の多様性を増加させて腸健康に肯定的な影響を与えることができるのを示唆する。
【0157】
16S rRNAに基づいて分析された腸内菌叢の主成分分析を実施した結果を図16cに示し、PCA plotを通じて陽性対照群であるエタノールグループが陰性対照群と非常に異なる腸内菌叢構造を有することを確認した。一方、Riを投与した実験群でのみ陽性対照群であるエタノールグループと異なる腸内菌叢構造を有することを確認した。これは、菌株投与が腸内菌叢を構成している種を変化させてその構造を調節(modulation)したのを示唆する。
【0158】
いずれの腸内菌叢が変わったか分析するために単変量分析(LefSE)を実施した結果を図16dに示した。陽性対照群であるエタノールグループでは代表的な有害菌である細胞壁がリポ多糖類(LPS、lipopolysaccharide)から構成されているEnterobacteriaceaeの優占を確認した。一方、Riを投与した実験群ではAkkermansiaおよびPrevotellaの増加を確認した。これは、菌株投与がこのような腸内菌叢を変化させてアルコール性脂肪肝緩和に役立ったのを意味する。
【0159】
PICRUStを通じた腸内菌叢KEGG pathways機能推定分析を実施した結果を図17に示した。陽性対照群であるエタノールグループではグリカン(glycan)分解とガラクトース(galactose)代謝機能の優占を確認した。一方、Riを投与した実験群ではDNA修復および代謝機能の増加を確認した。これは、菌株投与が腸内菌叢の機能を調節してアルコール性脂肪肝緩和に役立ったのを意味する。
【0160】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図8f
図8g
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14
図15a
図15b
図15c
図16a
図16b
図16c
図16d
図17
【配列表】
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