(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ペダルカバーおよびその支持体ならびに部品キットおよびペダルカバーをペダルのヘッド部に挿嵌する方法
(51)【国際特許分類】
G05G 1/483 20080401AFI20220303BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20220303BHJP
F16B 5/10 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G05G1/483
G05G1/30 E
F16B5/10 G
(21)【出願番号】P 2021050563
(22)【出願日】2021-03-24
(62)【分割の表示】P 2018535829の分割
【原出願日】2017-01-23
【審査請求日】2021-03-24
(32)【優先日】2016-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】303063311
【氏名又は名称】ベントレー・モーターズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,ゲイリー スティーブン
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-152073(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0002382(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/00
F16B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面および後面を有するフットパッドを備えるペダルカバーであって、
前記ペダルカバーは、前記フットパッドから後方に向けて、前記フットパッドの前記前面から離れる方向に延在する少なくとも2つの側部をさらに備え、
前記側部のうち、少なくとも2つの対向する側部の各々は、複数のラッチ部材を備え、
ヘッド部および後面を有するペダルに前記ペダルカバーを適用する際には、前記ペダルの前記ヘッド部は前記側部を通り越して前記ペダルカバーの後面に向けて押され、それによって、前記ラッチ部材は収縮し、前記ペダルカバーの後面が前記ペダルの前記ヘッド部に当接すると、前記ラッチ部材が前記ペダルの前記後面の後方に係合し、
一方の
端部において内向きに延在する突縁部を有する内巻きリップ部と、他方の
端部において内向きに延在する突縁部を有さない直立リップ部と、を備え、
前記2つの側部は、前記内巻きリップ部と前記直立リップ部の間に延在し、複数の弾性ラッチ部材をそれぞれ有し、
前記直立リップ部と前記内巻きリップ部の内向きに延在する突縁部とは、互いに実質的に平行である、ペダルカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のペダルカバーを支持するペダルカバー支持体であって、
前記ペダルカバーの前面の形状に一致する後面と、前記ペダルカバーの直立または内巻きのリップ部を支持するリップ部とを有し、
前記ペダルカバー支持体の前記リップ部は、直立リップ部および内巻きリップ部から選択される、ペダルカバー支持体。
【請求項3】
前面および後面を有するフットパッドを備えるペダルカバーと、
前記ペダルカバーを支持するペダルカバー支持体であって、前記ペダルカバーの前記前面の形状に一致する後面を有する、ペダルカバー支持体と、
を備える部品キットであって、
前記ペダルカバーは、前記フットパッドから後方に向けて、前記フットパッドの前記前面から離れる方向に延在する少なくとも2つの側部をさらに備え、
前記側部の各々は、複数のラッチ部材を備え、
ヘッド部および後面を有するペダルに前記ペダルカバーを適用する際には、前記ペダルの前記ヘッド部は前記側部を通り越して前記ペダルカバーの後面に向けて押され、それによって、前記ラッチ部材は後退し、前記ペダルカバーの後面が前記ペダルの前記ヘッド部に当接すると、前記ラッチ部材が前記ペダルの前記後面の後方に係合する、部品キット。
【請求項4】
ペダルカバーをペダルのヘッド部に挿嵌する方法であって、
前記ペダルカバーは、前面および後面を有するフットパッドを備え、
前記ペダルカバーは、前記フットパッドから後方に向けて、前記フットパッドの前記前面から離れる方向に延在する少なくとも2つの側部をさらに備え、
前記側部の各々は、複数のラッチ部材を備え、
ペダルカバー支持体は、前記ペダルカバーの前面の形状に一致する後面を有し、
前記方法は、
前記ペダルカバーを、前記ペダルカバー支持体内に支持するステップと、
前記ペダルの前記ヘッド部が前記ペダルカバーの側部の各ラッチ部を越えるように前記ヘッド部を押して、前記ペダルカバーを前記ペダルの前記ヘッド部に固定させるステップと、を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダルカバー(pedal cap)、ペダルにペダルカバーを取り付ける方法、そのようなペダルカバーを備えるペダルおよびそのようなペダルを備える自動車に関する。また、本発明は、ペダルにペダルカバーを取り付ける際に使用する支持体に関する。より詳細には、本発明は、ペダルプレートにペダルカバーを取り付けるための複数のラッチ部を有するペダルカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車(およびその他の車両)には、車両を制御するために運転者が押下するアクセル、ブレーキおよび(任意の)クラッチなどのペダルが設けられていることが多い。このようなペダルは、一般的に、金属アーム部と、車両を操作するために作動される、金属アーム部と一体のまたは金属アーム部に取り付けられた金属プレートとから構成されている。
【0003】
金属プレートを直接押下することに関する欠点が、自動車の運転が始まった当初から知られている。その対策として、米国特許第2069066号明細書、米国特許第1977415号明細書、米国特許第1810625号明細書および米国特許第1455675号明細書は、いずれもペダルプレートを覆うゴム製のパッド/カバーを提案している。米国特許第2069066号明細書および米国特許第1810625号明細書は、いずれもペダルカバーの縁部に、ペダルプレートが挿入される内向きに延在する突縁部を設けることを提案している。実際には、プレートを内向きに延在する突縁部内に挿入する作業は(通常、カバーを広げるための特殊な工具が必要であることから)工場内であっても困難であり、整備業者やホームメカニックにとってはより困難であるが、この技術は現在でも、ペダルパッドをペダルプレートに接続する標準的な方法として適用されている。
【0004】
プレートを突縁部によって形成されたポケット内に誘導する際にプレートには応力が生じるが、プレートは一般に金属製であるため、通常はこれらの力に耐えることができる。米国特許第1977415号明細書および米国特許第1455675号明細書は、締付け顎部(clamping jaws)または柔軟な板部材(pliable tongues)を使用してペダルカバーを取り付ける方法を代替的に提案しているが、これらの取り付け方法は、業界内では普及していない。その原因の一部として、挿嵌するための特殊な工具がまた必要であることや、顎部/板部材が置かれるべき位置やその機能によって課せられる設計上の制約などが考えられる。
【0005】
ペダルカバーの全周に、弾性材料から形成され、ペダルカバーと一体の内巻き突縁部を形成する技術は多数あるにもかかわらず、最近になっても代替案が提案されており、例えば、2007年公開の欧州特許出願公開第1816538号明細書は、スタッドを、ペダルに形成された複数の穴に挿入することを提案している。しかしながら、これは、多数の部品やペダルプレートに穴を設けるための追加の機械加工を必要とするより高価な技術である。より簡便で安価な解決策が既に存在しているため、この技術もまた普及していない。
【0006】
欧州特許出願公開第1816538号明細書に開示される解決策は、特に、炭素繊維/ガラス繊維の複合材などによって一体成形される現在のペダルに適さない。これらの複合材からなるペダルは、使用中に生じる力に考慮しながら必須箇所以外の材料を削減する目的で、独特の形状を有している。穴あけ加工を施すことによって複合材は大幅に脆くなり、このような複合材からなるペダルには、ペダルカバーのポケット内にプレートを押し込む際に生じる応力を受けとめるためというよりも、使用中の強度を高めるように設計されたプレートが設けられることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、好ましくは複合材から形成されたペダルに適し、好ましくは上述した問題を克服する、改善されたペダルカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、前面および後面を有するフットパッドを備えるペダルカバーが提供され、ペダルカバーは、フットパッドから後方に向けて、すなわち前面から離れる方向に延在する少なくとも1つの側部をさらに備え、側部は、少なくとも1つのラッチ部材を備えている。
【0009】
使用時には、フットパッドの前面は運転者の足に面し、後面はペダルのヘッド部(またはペダルプレート)の前面に面し、ペダルカバーを適用する際には、ペダルのヘッド部は側部を通り越してペダルカバーの後面に向けて押され、それによって、ラッチ部材は収縮し、カバーの後面がペダルのヘッド部に当接すると、少なくとも1つのラッチ部材がペダルの後面の後方に係合する。
【0010】
ペダルカバーは、2つの側部を備えていてもよい。2つの側部は、ペダルカバーの対向する側方部にそれぞれ形成されてもよい。
【0011】
側部または各側部は、内向きに湾曲していてもよく、例えば、わずかに内向きに湾曲していてもよい。
【0012】
側部または各側部は、複数のラッチ部材を備えていてもよく、例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のラッチ部材を備えていてもよい。
【0013】
ラッチ部材または各ラッチ部材は、弾性材料から形成されてもよい。あるいは、ラッチ部材または各ラッチ部材は、例えば、コイルばねによって弾性的に付勢されてもよい。
【0014】
ペダルカバーは、弾性材料から形成されてもよい。ペダルカバーは、例えば、ゴムやエラストマーなどのプラスチック材料から全体を形成されてもよい。各ラッチ部材は、ペダルカバーと一体であってもよい。ペダルカバーは、成形品であってもよい。各ラッチ部材は、ペダルカバーと一体成形されてもよく、例えば、ラッチ部材は、フットパッドと、少なくとも1つの側部とを備えるプラスチック成形品(例えば、ゴムやエラストマー成形品)の一体部分として形成されてもよい。
【0015】
ラッチ部材または各ラッチ部材は、くさび形状であってもよい。
【0016】
ラッチ部材または各ラッチ部材は、角錐形状であってもよい。
【0017】
ラッチ部材または各ラッチ部材は、中空であってもよい。
【0018】
ラッチ部材または各ラッチ部材は、圧縮されたときにラッチ部材を外向きに膨張させるテーパ状の側壁を有して形成されてもよい。
【0019】
ラッチ部材または各ラッチ部材は、圧縮されたときにラッチ部材を外向きに膨張させる支持壁を備えていてもよい。各支持壁は、プラスチック成形品(例えば、ゴムまたはエラストマー成形品)の一部として、ペダルカバーと任意に一体成形されてもよい。
【0020】
ペダルカバーは、ペダルカバーの一方または両方の端部において、リップ部材を備えていてもよい。リップ部材または各リップ部材は、プラスチック成形品(例えば、ゴムまたはエラストマー成形品)の一部として、ペダルカバーと任意に一体成形されてもよい。
【0021】
ペダルカバーは、全体として、2つの側方部と2つの端部とを有する長方形であってもよい。
【0022】
少なくとも1つのリップ部材(または各リップ部材)は、内向きに延在する突縁部を有する内巻きリップ部材であってもよく、リップ部材は、好ましくはプラスチック成形品(例えば、ゴムまたはエラストマー成形品)の一部として、ペダルカバーと任意に一体成形されてもよい。少なくとも1つのリップ部材(または各リップ部材)は、内向きに延在する突縁部を有さずに形成された直立リップ部材であってもよい。
【0023】
両方の端部がリップ部材を備えている場合、一方のリップ部材は、内向きに延在する突縁部を有する内巻きリップ部材であってもよく、他方のリップ部材は、直立リップ部材、すなわち内向きに延在する突縁部を有さずに形成されたリップ部材であってもよい。
【0024】
あるいは、両方のリップ部材は、内向きに延在する突縁部を有していてもよく、この場合、フットパッドが実質的に湾曲していると、ペダルのヘッド部をカバー内に挿入することが困難となり得る。しかしながら、少なくとも1つのラッチ部を有する少なくとも1つの側部の存在によって、カバーの全周に内向きに延在する突縁部が形成される従来技術よりも、作業が容易となる。
【0025】
好ましい実施形態は、一方の端部において(一体成形された)内向きに延在する突縁部を有するリップ部と、他方の端部において内向きに延在する突縁部を有さないリップ部と、これらのリップ部の間に延在し、複数の弾性ラッチ部材をそれぞれ有する2つの側部とを含んでいる。
【0026】
特に、フットパッドが湾曲している場合、これらの配置によって、ペダルのヘッド部への適用を容易にしながら高い連結力を提供することができる。まず、ペダルのヘッド部の一方の端部が内向きに延在する突縁部の後方にある空間に挿入され、次に、ペダルが回転されてフットパッドの後面がペダルの前面に当接し、ラッチ部は回転の過程で収縮し、フットパッドに係合する。内向きに延在する突縁部とラッチ部によって、カバーがペダルから抜け落ちることが防止される。
【0027】
ペダルカバーは、湾曲していてもよい。
【0028】
ペダルカバーの湾曲部は、凹状であってもよく、すなわち後面は凹状であり、前面は凸状であってもよい。
【0029】
ペダルカバーの湾曲部は、円の一部分を実質的に構成する断面形状を有していてもよい。この一部分は、円の四分の一の大きさより小さくてもよい。内巻きリップ部と直立リップ部とが設けられている場合に、該一部分が円の四分の一の大きさより大きいと、ペダルをペダルカバー内に挿入することがより困難となる。該一部分は、円の八分の一の大きさより小さくてもよい。両方のリップ部が内巻きリップ部である場合に、該一部分が円の八分の一の大きさより大きいと、ペダルのヘッド部をペダルカバー内に誘導することがより困難となる。
【0030】
直立リップ部と内巻きリップ部の内向きに延在する突縁部とは、互いに実質的に平行であってもよい。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に係るペダルカバーと、ペダルカバー支持体とを備える部品キットが提供され、ペダルカバー支持体は、ペダルカバーの前面の形状に一致する後面を有している。
【0032】
ペダルカバー支持体は、ペダルカバーの直立または内巻きリップ部を支持するために配置された直立リップ部を備えていてもよい。
【0033】
ペダル支持体は、ペダルカバーの直立または内巻きリップ部を支持するために配置された内巻きリップ部を備えていてもよい。
【0034】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様に係るペダルカバーをペダルのヘッド部に挿嵌する方法が提供される。該方法は、ペダルカバーを本発明の第2の態様において定義されるペダルカバー支持体内に挿入するステップと、ペダルのヘッド部がペダルカバーの側部の少なくとも1つのラッチ部を越えるようにヘッド部を押して、ペダルカバーをペダルのヘッド部に固定させるステップとを備えている。
【0035】
該方法は、ペダルカバーをペダルカバー支持体内に挿入するステップを備えていてもよく、ペダルカバーは、内巻きリップ部を有し、内巻きリップ部は、支持体の内巻きリップ部内に挿入される。該方法は、ペダルのヘッド部の一方の端部をペダルカバーの内巻きリップ部内に挿入するステップと、ヘッド部がラッチ部または各ラッチ部を越えるようにペダルを回転して、該ラッチ部をペダルの後面の後方に係合させるステップとをさらに備えている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下、本発明をより明確に理解するために、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を例として説明する。
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るペダル、ペダルカバーおよびペダルカバー支持体を概略的に示す断面図である。
【
図2a】
図1のペダルカバーが、
図1のペダルカバー支持体内に誘導されている状態を概略的に示す断面図である。
【
図2b】
図1のペダルが、
図1および
図2aのペダルカバー支持体内に保持された
図1および
図2aのペダルカバー内に誘導されている状態を概略的に示す断面図である。
【
図3b】
図1から
図3aのペダルカバーが有する2つのラッチ部の通常状態を概略的に示す部分断面平面図である。
【
図3c】ペダルカバーが有する
図3bの2つのラッチ部の圧縮状態を概略的に示す部分断面平面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るペダルカバーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1を参照すると、ペダル1が、第1の実施形態に係るペダルカバー2の隣に図示されている。ペダルカバー2は、ペダル1のヘッド部3の形状に一致しており、その側部5において、ペダル1のヘッド部3の後面の後方に係合するラッチ部4を有している。さらに、ペダルカバー2内へのヘッド部3の挿入を補助する安定した基材を提供するために、ペダルカバー2を挿入することができる支持体6が設けられている。
【0038】
ペダル1は、その自由端部にヘッド部(またはペダルプレート)3を有するアーム部7を備えている。反対側の端部は、自動車(図示せず)または同様の車両に枢動自在に(吊り下げまたは立ち上げ状態で)取り付けられ、入力ロッドなど(図示せず)を介して接続されることによって、使用時にアクセル、クラッチ、ブレーキなどとして機能する。
【0039】
本実施形態におけるペダル1は、炭素繊維複合材などの複合材料から一体成形されている。その結果、ペダル1は硬くて軽量であるが、比較的脆い。特に、ペダルのヘッド部3は、薄いシート/プレートとして形成されているために比較的脆いが、通常の使用、実際には激しい使用にも耐えることができる。
【0040】
ペダル1のヘッド部3は、使用時に運転者の足に面する湾曲した前面8を有して形成されている。ヘッド部3がプレートとして形成されているため、後面9も同様に湾曲している。この湾曲部は、前面8が凸状かつヘッド部3が横方向において(すなわち両方の側方部の間で)水平となるように、ヘッド部3の上端部10から下端部17まで延在している。
【0041】
ペダルカバー2は、例えば、ゴムやエラストマーなどのプラスチック材料のような弾性(および高い摩擦性を有する)材料から成形品として形成されている。ヘッド部3と同様に、使用時に運転者によって押下される前面を有するフットパッドを構成し、ペダル1のヘッド部3の形状に一致するプレート状の湾曲した本体部11を有している。フットパッドの前面は、個別に設計されてもよく、例えば、装飾用の金属プレートを備えていてもよい。
【0042】
ペダルカバー2の湾曲部は、円の一部分を実質的に構成する断面形状を有しており、この一部分は、円の四分の一の大きさよりもわずかに小さい。
【0043】
よって、本体部11の後面12は、ヘッド部3の前面8の形状に一致するように、凹状である。本体部11の下端部には、後方に向けて延在する内巻きリップ部13が配置されており、内巻きリップ部13は、形成された領域において湾曲した本体部11の一部と実質的に平行な内向きに延在する突縁部14を有している。これにより、ヘッド部3の下端部17を受容するように寸法決めされた溝15が形成される。
【0044】
反対側の端部(上端部)には、後方に向けて延在する直立リップ部16が形成されており、直立リップ部16は、形成された領域において湾曲した本体部11の一部と実質的に垂直である。直立リップ部16と内巻きリップ部13の内向きに延在する突縁部14は、互いに実質的に平行である。
【0045】
ペダルカバー2の各側方部には、側部5が形成されている。各側部5は、ペダルカバー2の下端部にある内巻きリップ部13と上端部にある直立リップ部16の間に延在している。各側部は、後方に向けて、すなわち本体部11の後面12から離れる方向に突出している。リップ部13,16は、典型的には比較的短くてもよく、例えば1cm未満の高さであってもよい。一方、各側部5は、さらに後ろ方向に突出しており、典型的には2cm以上突出している。これにより、運転者の足がペダルの下に滑り込む可能性が低くなる。
【0046】
図3aに示すように、各側部5は、各側部5の最後端18間の距離がペダルカバー2の本体部11に近い端部間の距離よりもわずかに短くなるように、わずかに内向きに湾曲している。例えば、各最後端は、5mmほど内側に位置している。
【0047】
上述した各ラッチ部4は、側部5の内側面19に形成されており、本実施形態では、3つのラッチ部4が2つの側部5のそれぞれに設けられ、合計6つのラッチ部が設けられている(しかしながら、他の数であってもよいことは言うまでもない)。
【0048】
図3aおよび
図3bが示すように、各ラッチ部4は、本体部11に近づくにつれて広がり遠のくにつれて細くなるくさび形状、または壁面の一つが側部5から構成される三角錐形状である。くさび形状のラッチ部4の基部20、すなわち係合面は、ペダル1のプレート状のヘッド部3の厚さと実質的に等しい寸法だけ本体部11の後面12から離間している。
【0049】
本実施形態におけるくさび形状のラッチ部4は、中空であり、ペダルカバー2の他の部分と同じ弾性材料から形成されている。その結果、
図3cに示すように、ラッチ部4を側部5に向けて圧縮することができる。
【0050】
図3aから
図3cは、2つの異なる中空のくさび形状のラッチ部4を示している。図の右側に示すラッチ部4aは、全体が中空であり、2つの三角形状の側壁21a,22aから構成されている。側壁21a,22aの一方の縁部は互いに結合しており、他方の縁部は側部5に結合している。側壁21a,22aは、互いに結合する縁部に向けて厚みが増加するようなテーパ状となっている。これにより、ペダル1のヘッド部3がペダルカバー2の本体部11に向けて動く際に加わる力がラッチ部を側部5に向けて圧縮させるため、ラッチ部は、外向きに付勢されて膨張する。
【0051】
図3aから
図3cの左側に示すカバーのラッチ部4bは、三角形状の側壁21b,22bから構成されており、ほぼ中空であるが、一対の支持壁23が三角形状の各側壁の中央部から側部5に沿う共通の中間点まで延在している。これらの支持壁23は、テーパ状の場合と同様に、三角形状の側壁が圧縮されたときに内向きに膨張することを防止しながら外向きに膨張させ、これにより、ラッチ部4は、横方向に省スペースに圧縮される。
【0052】
実際には、両方のラッチ部は、典型的には同様に、すなわち両方がテーパ状に形成されてもよく、また、いずれも支持壁23を備えていてもよいことは言うまでもない。
【0053】
上述したように、ペダルカバー2内へのペダル1のヘッド部3の挿入を補助するために、
図1から
図2cに示す支持体6が設けられている。支持体6は、強度の高い材料から形成されており、既知の方法によって安定した面に取り付けられている。支持体6は、ペダルカバー2を支持体6内に受容できるように、ペダルカバー2の前面の形状に一致する後面24を有している。支持体6の基部には、ペダルカバーの内巻きリップ部13を差し込むことができる内巻きリップ部25が設けられている。切り欠き部26が各側部5に形成されており、これにより、内巻きリップ部13を支持体6の内巻きリップ部内に差し込むことができる。
【0054】
図2を参照すると、ペダルカバー2をペダル1のヘッド部3に挿嵌するために、ペダルカバー2の内巻きリップ部13は、支持体6の内巻きリップ部25内に誘導され、ペダルカバー2の前面は、支持体6の後面24上に載置される。次に、ペダル1のヘッド部3の下端部17は、ペダルカバー2の内巻きリップ部13内に誘導され、ペダル1のアーム部7をレバーとして使用しながらペダル1は回転され、これにより、ヘッド部3は、ラッチ部4を越えながらこれらを側部5に向けて圧縮させる(
図3c参照)。次に、ペダル1のヘッド部3の後面9が各ラッチ部4の基部を越えると、各ラッチ部4は、ペダル1の後面9の後方に係合するように内向きに跳ね戻り、前面8は、ペダルカバー2の後面11に当接する。
【0055】
すべてのラッチ部4がペダルに係合すると、ペダル1のヘッド部3の上端部10は、直立壁16に隣接する。その結果、内向きに延在するリップ部13およびラッチ部4により、ペダルカバー2が前面から離れる方向に引っ張られて取り外されることが制限され、内向きに延在するリップ部13の直立部により、ペダルカバー2が上方向(ペダル1のヘッド部3の上端部10に向かう方向)に滑動することによって取り外されることが制限され、側部5により、ペダルカバー2が一方または他方の側から滑り落ちることが制限され、直立リップ部16により、ペダルカバー2が下方向(ペダル1のヘッド部3の下端部17に向かう方向)に滑動することによって取り外されることが制限される。
【0056】
これは、ヘッド部3の下端部17または上端部11をペダルカバー2内に誘導する際に大きな応力を生じさせない、また、くさび形状のラッチ部4が押し付けられる際に応力をわずかにしか生じさせない、ペダル1をペダルカバー2内に誘導するための非常に円滑な方法であることを、当業者であれば理解可能である。また、適切な支持体6が設けられていると、ペダル1のヘッド部3を従来のペダルカバーに誘導する方法よりも、作業が実質的に容易となる。すなわち、他の道具を使用することなく、ペダルのアーム部7をレバーとして使用しながら、ペダル1をペダルカバー2内に迅速に誘導することができる。組み立てが容易であるにもかかわらず、カバー2は、ペダル1にしっかりと保持される。また、各ラッチ部4は、ペダルカバーの側部5を支持する役割を果たし、ペダル間(例えば、アクセルからブレーキ)を移動する運転者の足がペダルの裏側に引っ掛かることを防止する。
【0057】
支持体6によって大量生産時の組立てが迅速かつ容易となるが、大量生産時に限られたことではないことも、理解可能である。整備技術者/ホームメカニックの手によって、典型的な従来技術によるペダルカバーよりも著しく容易にペダルカバー2をペダル1上に載置することができる。
【0058】
図4は、第2の実施形態に係るペダルカバー27を示している。これもまた、第1の実施形態と同様に、ゴムまたはエラストマーなどの弾性プラスチック材料から成形品として形成されていることが分かる。また同様に、使用時に運転者によって押下される前面を有するフットパッドを構成し、ペダル(図示せず)のヘッド部(図示せず)の形状に一致するプレート状の湾曲した本体部28を有している。
【0059】
ペダルカバー27の湾曲部は、円の一部分を実質的に構成する断面形状を有しており、第2の実施形態におけるこの一部分は、円の八分の一の大きさよりもわずかに小さい。
【0060】
よって、本体部28の後面29は、ヘッド部(図示せず)の前面の形状に一致するように、凹状である。本体部28の下端部には、後方に向けて延在する内巻きリップ部30が配置されており、内巻きリップ部30は、形成された領域において湾曲した本体部28の一部と実質的に平行な内向きに延在する突縁部31を有している。これにより、ペダル(図示せず)のヘッド部の下端部を受容するように寸法決めされた溝32が形成される。
【0061】
第2の実施形態において、反対側の端部(上端部)には、形成された領域において湾曲した本体部28の一部と実質的に垂直であり、後方に向けて延在する別の内巻きリップ部33が形成されており、内巻きリップ部33は、形成された領域において湾曲した本体部28の一部と実質的に平行な内向きに延在する突縁部34を有している。これにより、ペダル(図示せず)のヘッド部の上端部を受容するように寸法決めされた第2の溝35が形成される。本体部28の比較的浅い湾曲部を見ると、内向きに延在する突縁部31,34は、概ね互いを対向している。
【0062】
ペダルカバー27の各側方部には、側部36が形成されている。各側部36は、ペダルカバー27の下端部にある内巻きリップ部30と上端部にある直立リップ部33の間に延在している。各側部は、後方に向けて、すなわち本体部27の後面29から離れる方向に突出している。リップ部30,33は、典型的には比較的短くてもよく、例えば1cm未満の高さであってもよい。一方、各側部36は、さらに後ろ方向に突出しており、典型的には2cm以上突出している。これにより、運転者の足がペダルの下に滑り込む可能性が低くなる。
【0063】
概略的に示す
図3aから
図3bは、第1の実施形態と同様に、第2の実施形態にも適用される。ここでも各側部36は、各側部36の最後端37間の距離がペダルカバー27の本体部28に近い端部間の距離よりもわずかに短くなるように、わずかに内向きに湾曲している。例えば、各最後端は、5mmほど内側に位置している。
【0064】
各ラッチ部38は、側部36の内側面39に形成されており、
図3aから
図3cを参照しながら説明した第1の実施形態に係るラッチ部と同一のものである。
【0065】
ペダルカバー27内へのペダル(図示せず)のヘッド部の挿入を補助するために、
図1から
図2cに示す第1の実施形態に係る支持体と同様の支持体が設けられている。
【0066】
ペダルカバー27をペダル(図示せず)のヘッド部に挿嵌するために、ペダルカバー27の下端部の内巻きリップ部30は、対応する支持体(図示せず)の内巻きリップ部内に誘導される。次に、ペダル(図示せず)のヘッド部の下端部は、ペダルカバー27の下端部の内巻きリップ部30内に誘導され、ペダルのアーム部をレバーとして使用しながらペダルは回転され、これにより、ヘッド部は、ラッチ部4を越えながらこれらを側部36に向けて圧縮させる。次に、ペダルのヘッド部の後面が各ラッチ部38の基部を越えると、ヘッド部は、ペダルカバー27の上端部にある溝35内に誘導され、各ラッチ部38は、ペダルの後面の後方に係合するように内向きに跳ね戻り、前面は、ペダルカバー27の後面に当接する。
【0067】
すべてのラッチ部38がペダルに係合すると、ペダルのヘッド部の上端部は、上端部の溝35内に保持される。その結果、下端部の内向きに延在する突縁部31、ラッチ部38および上端部の内向きに延在する突縁部34によって、いずれもペダルカバー2が前面から離れる方向に引っ張られて取り外されることが制限され、内向きに延在するリップ部30,33の直立部によって、ペダルカバー2が上方向または下方向に滑動することによって取り外されることが制限され、各側部5によって、ペダルカバー2が一方または他方の側から滑り落ちることが制限される。
【0068】
これもまた、ペダルをペダルカバー27内に誘導するための円滑な方法であることを、当業者であれば理解可能である。また、適切な支持体が設けられていると、ペダルのヘッド部を従来のペダルカバーに誘導する方法よりも、作業が実質的に容易となる。すなわち、他の道具を使用することなく、ペダルのアーム部をレバーとして使用しながら、ペダルをペダルカバー内に迅速に誘導することができる。
【0069】
上述した実施形態は単に例示の目的で示しているに過ぎず、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。