(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】耐摩耗性木質ボードの製造方法
(51)【国際特許分類】
B27M 3/00 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
B27M3/00 M
(21)【出願番号】P 2021542353
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(86)【国際出願番号】 EP2020050300
(87)【国際公開番号】W WO2020151949
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-08-24
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509091387
【氏名又は名称】フローリング・テクノロジーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Flooring Technologies Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハー・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ツィック・シュテファン
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0376886(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0160859(US,A1)
【文献】国際公開第2007/042258(WO,A1)
【文献】特表2012-500920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0255670(US,A1)
【文献】特開平11-156818(JP,A)
【文献】特表2017-503688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 3/00 - 3/08
B32B 27/00 - 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面を有し、前記上面に少なくとも1つの装飾層が配置され
、耐摩耗性木質系パネルを製造する方法であって、以下の工程:
-前記木質系パネルの上面の少なくとも1つの装飾層に、少なくとも1つの第1の樹脂層を塗布する工程であって、前記第1の樹脂層は、固形分を60~80重量
%含む工程;
-前記木質系パネルの前記上面の前記第1の樹脂層上に耐摩耗性粒子を均一に散布する工程;
-ただし、前記木質系パネルの前記上面の前記第1の樹脂層は、前記耐摩耗性粒子を有した状態で塗布後に乾燥しておらず;
-前記木質系パネルの前記上面に、耐摩耗性粒子と共に設けられた第1の湿潤樹脂層に対し、少なくとも1つの第2の樹脂層を塗布する工程であって、前記第2の樹脂層は、固形分を60~80重量
%含む工程;
-続いて、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とからなる構造を、少なくとも1つの乾燥装置で乾燥させる工程;
-少なくとも1つの第3の樹脂層を塗布する工程であって、前記第3の樹脂層は、固形分を60~80重量
%含み、ガラスビーズを含む工程;
-続いて、塗布された前記第3の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;
-少なくとも1つの第4の樹脂層を塗布する工程であって、前記第4の樹脂層は、固形分を50~70重量
%含み、ガラスビーズを含む工程;
-続いて、塗布された前記第4の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;
-少なくとも1つの第5の樹脂層を塗布する工程であって、前記第5の樹脂層は、固形分を50~70重量
%含み、ガラスビーズを含む工程;
-続いて、塗布された前記第5の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;
-少なくとも1つの第6の樹脂層を塗布する工程であって、前記第6の樹脂層は、固形分を50~70重量
%含み、ガラスビーズを含まない工程;
-続いて、塗布された前記第6の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;及び
-得られた層状構造体をショートサイクルプレスでプレスする工程;
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記装飾層が設けられた前記木質系パネルは、前記第1の樹脂層が塗布されるまでの間は乾燥機で加熱されないことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記樹脂層は、水性ホルムアルデヒド含有樹脂
をベースにしていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1の樹脂層はセルロース繊維または木材繊
維を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法であって、散布された耐摩耗性粒子の量が10~50g/
m
2
であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法であって、前記木質系パネルの前記上面に塗布される前記第2の樹脂層にはガラスビーズは含まれないことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法であって、前記ガラスビーズの直径は90~150μmであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法であって、塗布された前記樹脂層の合計厚みは60~200μ
mであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法であって、塗布されるそれぞれの樹脂への硬化剤の添加は、その樹脂の各々の塗布装置でのみ行われることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法であって、前記各樹脂層の乾燥は
、150~220
℃の乾燥機温度で行われることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法であって、前記層状構造体のプレスは、ショートサイクルプレスにより、150~250
℃の温度下で、かつ、30~60kg/c
m
2
の圧力下
で行われることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法であって、コーティングされた前記木質系パネルは、ショートサイクルプレス内で、前記木質系パネルのマーキングを利用することで、前記ショートサイクルプレス内に配置された構造化されたプレスプレート上に整列され、木質系パネル上の装飾と、エンボス加工されるプレスプレートの構造と、の間に、合致性が確立されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾層を備えた耐摩耗性木質系パネル、特に、装飾と同期した(synchronous)構造を備えた木質系パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的ストレスによる摩耗を免れない多くの製品や製品表面は、表面に耐摩耗性コーティングを施すことで、摩耗による早期の損傷や破壊から保護しなければならない。これらの製品には、例えば、家具、インテリアパネル、床材などが含まれ得る。ユーザーに対して可能な限り長期の耐用年数を保証するために、使用の頻度や強度に応じて、異なる保護手段を適用する必要がある。
【0003】
上述した製品の多くは、過度の使用により摩耗すると、すぐに見苦しくなったり、もはや洗浄できなくなったりする装飾面を有する。これらの装飾面は、熱硬化性樹脂を含浸させた紙で構成されていることが非常に多く、これらの紙は、いわゆるショートサイクルプレスで木質系の基材に押し付けられている。熱硬化性樹脂としては、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂が非常によく使われている。
【0004】
装飾面の耐摩耗性を向上させるための一つの方法は、表面付近の樹脂層に耐摩耗性粒子を適用または導入することである。これは、例えば、耐摩耗性粒子を含む液状樹脂を対応する表面に塗布することによって行うことができ、木質系の装飾パネルの場合、耐摩耗性粒子としてコランダム粒子が一般的に使用される。
【0005】
液状樹脂中には塗布のためにコランダムが導入されることが多いが、斯かる液状樹脂中におけるコランダム粒子の沈降およびそれに伴う問題を避けるために、適宜の装置を用いて耐摩耗性粒子を散布させておくこともできる。
【0006】
プレス工程という更なるプロセスステップでコランダムを含有する配合物によって引き起こされるもう一つの問題は、ショートサイクルプレスにおける構造化プレスプレートのシート摩耗であり、コランダムが1平方メートルあたりgで塗布される量が大きくなるほど、粒径が大きくなるほど、このコランダムがコランダムを含まない樹脂層で覆われるのが不十分であるほど、この問題は大きくなる。
【0007】
従来、板金の摩耗を抑えるために、コランダム含有層は、後続の樹脂層によって、プレスプレートに対して遮断されていた。この目的のために、ガラスビーズを樹脂層とともに液層構造に導入し、ガラスビーズを耐摩耗性粒子とプレスプレートの間のスペーサとして機能させることができる。このようにして、シートの摩耗を少なくとも幾分減らすことができる。この種のアプローチは、特に、それ以降に公開された特許文献1(欧州特許出願公開第3480030号明細書)及び特許文献2(欧州特許出願公開第3246175号明細書)に記載されている。
【0008】
しかしながら、高い耐摩耗性を有する、特に耐摩耗性がAC4~AC6クラスの木質系パネルを製造するためには、またプレスプレートの摩耗を少なくしようと思っても、耐摩耗性粒子の量を増加させる必要がある。しかしながら、既に述べたように、これによればプレスプレートの摩耗の増加を招くこととなり、これまでのアプローチではプレスプレートの摩耗を十分に低減することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第3480030号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3246175号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、高い耐摩耗性、特にAC4~AC6クラスの耐摩耗性を確実に達成するだけでなく、プレスプレートの摩耗の低減を確保するという技術的目的に基づいている。これは、特に、印刷されたパネルが多種多様なフォーマットで処理されるプロセスにおいて達成されるべきである。可能であれば、プロセスの簡素化と、少なくともコストの中立性が、達成されるべきである。既に述べた欠点は、可能であれば、新しいプロセスによればもはや発生しないようになるべきである。これにより、現在のプロセスに関する情報をタイムリーに提供する、効果的な品質管理も可能になるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する方法により解決される。
【0012】
したがって、上面と下面を有し、前記上面に少なくとも1つの装飾層が配置され、特に前記装飾層と同期した構造を有する、耐摩耗性木質系パネルを製造する方法であって、以下の工程:
-前記木質系パネルの上面の少なくとも1つの装飾層に、少なくとも1つの第1の樹脂層を塗布する工程であって、前記第1の樹脂層は、固形分を60~80重量%、(好ましくは65~70重量%、特に好ましくは65~67重量%)含む工程;
-前記木質系パネルの前記上面の前記第1の樹脂層上に耐摩耗性粒子を均一に散布する工程;
-ただし、前記木質系パネルの前記上面の前記第1の樹脂層は、前記耐摩耗性粒子を有した状態で塗布後に乾燥しておらず;
-前記木質系パネルの前記上面に、耐摩耗性粒子と共に設けられた第1の湿潤樹脂層に対し、少なくとも1つの第2の樹脂層を塗布する工程であって、前記第2の樹脂層は、固形分を60~80重量%、(好ましくは65~70重量%、特に好ましくは65~67重量%)含む工程;
-続いて、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層との組み合わせからなる構造を、少なくとも1つの乾燥装置で乾燥させる工程;
-少なくとも1つの第3の樹脂層を塗布する工程であって、前記第3の樹脂層は、固形分を60~80重量%、(好ましくは65~70重量%、特に好ましくは65~67重量%)含み、ガラスビーズを含む工程;
-続いて、塗布された前記第3の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;
-少なくとも1つの第4の樹脂層を塗布する工程であって、前記第4の樹脂層は、固形分を50~70重量%、(好ましくは55~65重量%、特に好ましくは58~62重量%)含み、ガラスビーズを含む工程;
-続いて、塗布された前記第4の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;
-少なくとも1つの第5の樹脂層を塗布する工程であって、前記第5の樹脂層は、固形分を50~70重量%、(好ましくは55~65重量%、特に好ましくは58~62重量%)含み、ガラスビーズを含む工程;
-続いて、塗布された前記第5の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;
-少なくとも1つの第6の樹脂層を塗布する工程であって、前記第6の樹脂層は、固形分を50~70重量%、(好ましくは55~65重量%、特に好ましくは58~62重量%)含み、ガラスビーズを含まない工程;
-続いて、塗布された前記第6の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;及び
-得られた層状構造体をショートサイクルプレスでプレスする工程;
を備える方法が提供される。
【0013】
したがって、本発明の方法により、装飾層を備えた木質系パネルであって、装飾層が装飾層と同期した構造を備えているものを、高い耐摩耗性を備えた様々な形式で、費用対効果の高い態様で提供することができる。本発明の方法によれば、木質系パネルの装飾層(前処理されたものまたは前処理されていないもの)に、第1の樹脂層、特に固形分の多い第1の熱硬化性樹脂層(メラミン-ホルムアルデヒド樹脂層)の形態のものを塗布する。最初は、第1の樹脂層の乾燥や予備乾燥は行わず、木質系パネルの上面の湿った、又はまだ液体の状態の第1の樹脂層上に、耐摩耗性粒子を適宜の散布装置を用いて均一に散布する。散布時には第1の樹脂層はまだ液体であるため、耐摩耗性粒子は樹脂層に沈み込むことができる。樹脂の固形分が多く、その結果粘度が上昇するため、耐摩耗性粒子は樹脂層に良好に埋め込まれる。
【0014】
続いて(すなわち、耐摩耗性粒子が散布された第1の樹脂層を中間の処理で乾燥させることなく)、まだ湿っている第1の樹脂層の上に、固形分を増加させた第2の樹脂層を塗布する。これは、処理方向において散布装置の下流側(すなわち、第1の乾燥機および散布装置の間)に塗布装置を設置することによって行われる。追加で設置された塗布装置は、第1の樹脂層に付着していない、あるいはローラ塗布で第1の樹脂層に浸透しなかった耐摩耗性粒子をピックアップし、これらを樹脂塗布装置に戻す。樹脂塗布装置に戻された耐摩耗性粒子は均等な濃度とされ、研磨された(abraded)耐摩耗性粒子がローラを介して次の面に均等に塗布される。この結果、第2のコーティングユニット内での耐摩耗性粒子の濃度が濃縮され、耐摩耗性粒子の含有量が最大で10%になる。これにより、ばらばらになった(loose)粒子が吹き飛ばされたり、乾燥機に巻き込まれたりするのを防ぐことができる。
【0015】
これに続いて、増加された固形分とガラスビーズを含む第3の樹脂層が導入され、またこれに続いて通常量の固形分(約55~60wt%)とガラスビーズを含む第4の及び第5の樹脂層が導入され、さらにこれに続いて通常量の固形分を含みつつガラスビーズを含まない第6の樹脂層が導入される。
【0016】
増加された固形分を含む樹脂層と、従来通りの通常量の固形分とセルロース繊維とガラスビーズとを含む樹脂層と、による本発明の層構造により、耐摩耗性粒子は被覆され、もはや被覆表面から突出する(protrude)ことがない。このようにして、コーティングされた表面から突出するコランダム粒子により例えば後続のプレスされたシートに及ぼされる有害な影響が低減され、あるいはその大部分を除去することができる。
【0017】
本発明の方法では、積層体形成のための下流側のプレス工程において、プレスプレートの耐用年数を長期化することができる。また、全体として、材料費やメンテナンスコストが削減されるため、プロセスコストが削減される。また、生産ラインに新たな設備や装置を導入する必要もない。
【0018】
また、本発明の層構造では、より深い構造のプレスプレートを利用して、装飾に同期した構造のエンボス加工を施すことが可能となる。これは、それぞれ異なる量の固形分を有する複数の樹脂層からなる特定の樹脂構造によってのみ達成される、全体の層の厚みによって実現可能となる。したがって、本明細書に記載されるシートの寿命をベースにすると、本発明のプロセスでは、25~50%の改善が見られる。
【0019】
本発明のプロセスの好ましい実施形態では、装飾層を備えた木質系パネルは、第1の樹脂層を塗布するよりも前には、IR乾燥機などの乾燥機で加熱されない。これは、生産ラインに設置されたIR乾燥機をオフにするか、あるいは生産ラインにIR乾燥機を設置しないことにより、実現することができる。装飾層を備えた木質系パネルの加熱を避けることにより、パネル表面の帯電を無くすことができ、また、コランダムを散乱させるときの散乱カーテンを均質にすることができる。また、ボードのパネル表面からの放出熱に起因するサーマルリフトが低減される。
【0020】
印刷された木質系パネルをIR乾燥機で乾燥する過程を省略すると如何になるかについては、当業者にとって明らかではない。なぜならば、通常、直接印刷によって塗布された装飾層の上には、まだ完全には硬化していない樹脂の保護層が配置しているからである。保護層は、ホルムアルデヒド含有樹脂、特にメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、又はメラミン-尿素-ホルムアルデヒド樹脂であってもよく、ボードを処理の中間で保管するためのスペーサとして用いられるガラス球(大きさ50~150μ)を含んでいてもよい。この保護層は、さらに仕上げを行う前の保管のために、装飾層を一時的に保護する役割を果たす。装飾層上の保護層は、未だ完全には硬化していないが、約10%、好ましくは約6%の、一定の残留水分量を有しており、さらに架橋を形成する余地を残している。このような保護層は、例えば国際公開第2010/112125号、又は欧州特許第2774770号明細書などに記載されている。
【0021】
このような(熱硬化性)保護層を備えた装飾層を加熱する典型的な工程は、保護層を乾燥させ、残留水分量を調整するように機能し、その結果、保護層の粘着性や、後続の樹脂層の接着性を調製するように機能する。
【0022】
しかしながら、保護層を加熱する工程は、耐摩耗性粒子の散乱パターンに悪影響を及ぼすことが明らかになっている。保護層を備えた印刷された木質系パネルの加熱過程を省略すると、散乱パターンが均一化され、パネル表面に耐摩耗性粒子が均一に分布するようになる。
【0023】
本発明のプロセスで使用される樹脂層は、好ましくは水性ホルムアルデヒド含有樹脂、特にメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、又はメラミン-尿素-ホルムアルデヒド樹脂をベースにしている。
【0024】
好ましくは、使用される樹脂にはそれぞれ、硬化剤、湿潤剤(界面活性剤またはその混合物)、消泡剤、離型剤および/または他の成分のような添加剤が含まれる。湿潤剤は、それぞれの場合、樹脂層に対し0.1~1重量%の量で使用される。離型剤および平滑剤は、好ましくは0.5~1.5重量%の量で第5の及び第6の樹脂層に添加される。
【0025】
好ましい硬化剤は、酸のアルカノールアミン塩、例えばスルホン酸のアルカノールアミン塩などの、潜在的な硬化剤である(Deurowoodが製造元であるDeuroCureを参照)。潜在的な硬化剤は、樹脂の早すぎる硬化やそれによる損失を避けるために、好ましくは、塗布装置の直前の時点で、樹脂に添加される。したがって、好ましくは、硬化剤は一定量が添加されるのではなく、それぞれの塗布装置において可変量の硬化剤が添加される。これには、プラントが機能不全に陥った場合に、硬化剤を添加していない樹脂をラインにより長く残すことができるという利点がある。樹脂硬化剤を添加した塗布装置についてだけ、システムのポットライフ(pot life)に合わせて特別に調整する必要がある。これにより、運転停止や故障が生じた際に樹脂硬化剤をポンプで送り出す必要があることに起因する損失を大幅に削減することができる。
【0026】
個々の樹脂層における硬化剤の割合は様々に設定することが可能であるが、0.5~1.5重量%、好ましくは0.7~1.3重量%としてもよい。個々の樹脂層における硬化剤の含有比率は、製造の方向に向かって減少することが特に好ましい。すなわち、下側の樹脂層の方が、上側の樹脂層よりも高い割合で硬化剤を含有することが好ましい。下側の層から上側の層に向かって硬化剤の量を減少させていくことで、KTプレスにおける各樹脂層の均一な硬化を実現することができる。
【0027】
本発明の方法の1つの変形例では、第1の樹脂層は10~100g/m2、好ましくは40~80g/m2、より好ましくは45~60g/m2の量となるように塗布される。第1の樹脂層は、例えば、第1の塗布装置の溝付き塗布装置ロールを用いて塗布される。
【0028】
第1の樹脂層は、セルロース繊維または木質繊維を含むことができ、好ましくはセルロース繊維を含む。セルロース繊維を添加することで、塗布される樹脂の粘度を調整することができ、第1トップ層の木質系パネルへの塗布性を向上させることができる。第1の樹脂層と共に塗布されるセルロース繊維の量は、(塗布される樹脂の量に基づいて)0.1~1重量%、好ましくは0.5~0.8重量%とすることができ、あるいは、0.1~0.5g/m2、好ましくは0.2~0.4g/m2、より好ましくは0.25g/m2とすることができる。好適に用いられるセルロース繊維は、白色であり、微粉又は粒状の、僅かに吸湿性を有する粉末の形態を有する。
【0029】
本発明の方法の更なる実施形態では、耐摩耗性粒子、コランダム(酸化アルミニウム)、炭化ホウ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素の粒子が用いられるが、コランダムの粒子が特に好ましい。好ましくは、これらは、高い透明性を有する高品質(high-grade)(白色)のコランダムであり、そのため下地層として広がる装飾の光学的効果に極力悪影響を与えないようになっている。コランダムは不規則な空間形状を有している。
【0030】
散布(散乱)した耐摩耗性粒子の量は10~50g/m2、好ましくは10~30g/m2、特に好ましくは15~25g/m2である。散布される耐摩耗性粒子の量は、実現すべき耐摩耗性のレベル(クラス)と粒子径に依存する。したがって、粒径F200を用いるとすると、耐摩耗性がAC3クラスの場合には耐摩耗性粒子の量は10~15g/m2であり、耐摩耗性がAC4クラスの場合には15~20g/m2であり、耐摩耗性がAC5クラスの場合には20~25g/m2である。本発明の例では、完成したボードは好ましくはAC4クラスの耐摩耗性を有する。
【0031】
粒径がF180~F240のクラスの、好ましくはF200のクラスの、耐摩耗性粒子が用いられる。F180のクラスの粒径は53~90μmの範囲を、F220は45~75μmを、F230は34~82μmを、F240は28~70μmの範囲を、占めている(FEPA基準)。一実施形態では、F180~F240のクラスの白色の高価なコランダムであって、好ましくは主な粒径の範囲が53~90μmであるコランダムが、耐摩耗性粒子として用いられる。特に好ましい実施形態では、F200のクラスのコランダム粒子が用いられ、ここでF200はF180とF220との間の混合物であり、直径が53~75μmの範囲である。
【0032】
耐摩耗性粒子は、微細過ぎてはならない(粉塵が発生する虞がある)が、粗すぎてもならない。そのため、耐摩耗性粒子の大きさは妥協点によって決まる。
【0033】
より発展的な実施形態では、シラン化されたコランダム粒子を使用してもよい。代表的なシラン化剤は、アミノシランである。
【0034】
本発明の方法の別の実施形態では、木質系パネルの上面側表面に塗布される第2の樹脂層は、10~50g/m2、好ましくは20~30g/m2、より好ましくは20~25g/m2の量となるように塗布される。全体として、第2の樹脂層の塗布量は、第1の樹脂層の塗布量と比べて少ない。好ましい実施形態では、木質系パネルの上面に塗布される第2の樹脂層はガラスビーズを含まない。
【0035】
第1の樹脂層と第2の樹脂層の合計量は、50~100g/m2、好ましくは60~80g/m2、より好ましくは70g/m2である。したがって、一実施形態では、第1の樹脂層の量は50g/m2であり、第2の樹脂層の量は25g/m2である。
【0036】
既に上述したように、第2の樹脂層中の耐摩耗性粒子は、第2の塗布装置によってばらばらになった粒子(loose particles)が取り込まれることにより、濃縮される。したがって、第2の樹脂層として塗布される樹脂中には、5~15重量%、好ましくは10重量%の含有量の耐摩耗性粒子が生じ得る。
【0037】
上述したように、更なる樹脂層である、第3の、第4の、第5の、そして第6の樹脂層が、続いて第2の樹脂層に対して塗布され、それぞれの層は塗布された後に乾燥される。
【0038】
木質系パネルの上面に塗布される第3の樹脂層の量は、10~50g/m2、好ましくは20~30g/m2、より好ましくは25g/m2とすることができる。
【0039】
上述したように、第3の樹脂層には、スペーサとして機能するガラスビーズが含まれる。好適に用いられるガラスビーズは、直径が90~150μmである。ガラスビーズは、第3の樹脂層と共に塗布してもよいし、あるいは第3の樹脂層に別途散布されてもよい。ガラスビーズの量は、10~50g/m2、好ましくは10~30g/m2、より好ましくは15~25g/m2である。バッチは、好ましくは、約40kgの樹脂溶液にガラスビーズと補助剤を加えることにより構成される。ガラスビーズは、シラン化された形態のものであってもよい。ガラスビーズをシラン化することにより、樹脂マトリックスへの埋込み性が向上する。
【0040】
木質系パネルの上面に塗布される第4の樹脂層(これにもガラスビーズが含まれる)の量は、10~40g/m2、好ましくは15~30g/m2、より好ましくは20g/m2とすることができる。
【0041】
上述したように、第4の樹脂層(第5及び第6の樹脂層についても同様。)の固形分は、第1~第3の樹脂層の固形分と比べて少ない。塗布される樹脂層ごとの固形分の量を異ならせることにより、一方では第1~第3の層の固形分の量を増大させることにより全体的な層の厚みをより厚くすることができ、また一方では第4~第6の樹脂層の固形分を減少させることにより全体の構築(build-up)に必要な乾燥・プレス時間を確保することができる。
【0042】
木質系パネルの上面に塗布される第5の樹脂層の量は、10~40g/m2、好ましくは15~30g/m2とすることができる。上述したように、第5の樹脂層もガラスビーズを含む。ガラスビーズは、第5の樹脂層と共に塗布してもよく、あるいは第5の樹脂層に別途散布してもよい。
【0043】
一方で、乾燥後の第5の樹脂層に塗布される第6の樹脂層には、ガラスビーズは含まれない。第6の樹脂層にガラスビーズが含まれないことで、既に乾燥されて下地として広がる樹脂層が破壊されず、また樹脂構造の表面が破れたように見えないことがない。
【0044】
木質系パネルに塗布される樹脂層の合計層厚み(膜厚)は、60~200μm、好ましくは90~150μm、特に好ましくは100~120μmとすることができる。このように、合計の層厚みは、従来の方法による場合よりも大幅に厚くなっている。従来の方法では、一般的に、層厚みは50μmに到達するに過ぎない。
【0045】
別の実施形態では、木質系パネルの上面に第2、第3、第4,第5、及び第6の樹脂層が塗布されるとともに、その各木質系パネルの下面に、1つの樹脂層が塗布される。
【0046】
このように、一実施形態では、木質系パネルの上面側の第2の樹脂層と並行して、木質系パネルの下面側にも樹脂層が塗布される。木質系パネルの下面側に塗布される樹脂層の量は、50~100g/m2、好ましくは60~80g/m2、より好ましくは60g/m2とすることができる。好ましくは、最も下側の樹脂層は、反対側の模様(counter-draft)をシミュレート(simulate)するために着色(例えば、茶系)されている。好ましくは、第2の樹脂層は、少なくとも1つのダブル塗布装置(ローラ塗布装置)によって、木質系パネルの上面側および下面側に並行して又は同時に塗布される。第2の樹脂層を塗布した後、第1の乾燥装置にて、第1の及び第2の樹脂層のアッセンブリの乾燥(空気乾燥)が行われる。
【0047】
同様にして、キャリアプレートのダブル塗布装置により、第3の、第4の、第5の、及び第6の樹脂層が下面側に、上面側と平行に塗布され、塗布後にそれぞれ乾燥される。
【0048】
下面側に塗布された樹脂層は、反対側の張力(counter-tension)として機能する。木質系パネルの上面と下面におよそ同量の樹脂層を塗布することで、プレス時に塗布された層によって生じる木質系パネルの張力が相殺される。下側に塗布される反対側のコーティング(countercoat)は、上面側に塗布される層の順序にほぼ対応した層構造とそれぞれの層の厚みを有するが、ガラスビーズは追加されていない。
【0049】
樹脂層は、特に対流式乾燥機において、150~220℃、好ましくは180~210℃の乾燥機温度で乾燥される。温度はそれぞれの樹脂層に適合するように、それぞれの対流式乾燥機において異ならせることができる。例えば、第2の、第3の、及び第4の対流式乾燥機の温度は205℃とすることができ、第5の及び第6の対流式乾燥機の温度はそれぞれ198℃とすることができる。ただし、対流式乾燥機の代わりに他の乾燥機を使用することもできる。
【0050】
最終の乾燥工程に続くプレス工程では、層構造は、ショートプレスサイクルで、150~250℃、好ましくは180~230℃、より好ましくは200℃の温度下で、30~60kg/cm2、より好ましくは40~50kg/cm2の圧力下で、プレスされる。加圧時間は、5~15秒間、好ましくは7~10秒間である。比較として、化粧紙の場合は、50~60kg/cm2の圧力が16秒の間掛けられる。
【0051】
好ましくは、コーティングされた木質系パネルは、当該木質系パネル上のマーキングによって、ショートサイクルプレス内に配置された構造化されたプレスプレートに対して、ショートサイクルプレス内で整列され、それにより、木質系パネル上の装飾と、刻印される(imprinted)プレスプレートの構造と、の間に合致性が生じるようにする。これにより、装飾と同期した構造を生産することができる。プレス時には、メラミン樹脂層が溶融し、コランダム/ガラス/繊維成分の縮合反応によって積層体が形成されることとなる。
【0052】
別の実施形態では、少なくとも1つの木質系パネルは、中密度繊維(MDF)、高密度繊維(HDF)、又はパーティクルボード(particleboard)若しくは配向性ストランドボード(OSB)若しくは合板パネル及び/又は木質プラスチックパネルである。
【0053】
一実施形態では、仕上げ処理されていない木質繊維板、特にMDF又はHDFが使用されるが、これは未だ上側の面にプレススキン(press skin)(ロット層(rotting layer))を備えている。水性メラミン樹脂が上面に塗布されてプレススキンが満たされる。このメラミン樹脂は、後にショートサイクルプレスで溶融されるため、この層の領域で焼き戻し効果(tempering effect)が発揮され、剥離が抑制される。
【0054】
上述した装飾層は、直接印刷によって適用することができる。直接印刷の場合、水性顔料印刷インクの塗布は、グラビア印刷またはデジタル印刷によって行われ、それによって、水性顔料印刷インクは、複数の層、例えば2~10層、好ましくは3~8層となるように塗布することができる。
【0055】
直接印刷の場合、少なくとも1つの装飾層の塗布は、上述のようにアナログのグラビア印刷プロセスにより行ったり、あるいは/またはデジタル印刷プロセスにより行ったりする。グラビア印刷プロセスは、画像化されるべき要素が、印刷前にインクが塗布される印刷フォームの窪みとして存在する印刷技術である。印刷インクは主として窪みに配置され、印刷フォームの接触圧と接着力によって、木質繊維キャリアボードのような被印刷体に転写される。一方、デジタル印刷では、印刷画像を直接コンピュータから印刷機(レーザプリンタやインクジェットプリンタなど)に転送する。これによれば、据え付きの印刷プレートの使用が不要となる。いずれのプロセスにおいても、水性インクやUVベースの色材を使用することが可能である。また、グラビア印刷とデジタル印刷の上述の印刷技術を組み合わせることも考え得る。印刷技術の適宜の組み合わせは、印刷される基材や層に対して直接的に行われてもよく、あるいは用いられる電子データセットを適用することにより印刷前に行われてもよい。
【0056】
装飾と一緒に、プレス時の位置合わせに必要となるマークも、印刷される。
【0057】
木質系パネル又はキャリアボードと、少なくとも1つの装飾層と、の間に少なくとも1つのプライマー層を配置してもよい。プライマー層は印刷前に塗布される。
【0058】
好適に用いられるプライマー層は、バインダーとしてのカゼイン又は大豆プロテインと、無機顔料(特に無機着色顔料)と、を組成物として有する。二酸化チタンなどの白色顔料や、炭酸カルシム、硫酸バリウム、炭酸バリウムなどのその他の着色顔料を、プライマー層の着色顔料として用いることができる。プライマー層には、着色顔料と、カゼインまたは大豆プロテインと、に加えて、溶媒としての水が含まれていてもよい。塗布された顔料ベースコートが、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、特に好ましくは少なくとも4つの連続的に塗布された層又はコーティングからなることも好ましく、各層又はコーティングの塗布量は同じであっても、異なっていてもよい。
【0059】
本発明の方法により、装飾層を備え、耐摩耗性粒子を含む樹脂構造を有する、耐摩耗性木質系パネルの製造が可能となる。木質系パネルは、上面側に少なくとも1つの装飾層を備えるとともに、耐摩耗性粒子、セルロース繊維、およびガラスビーズを含む多層樹脂構造を備え、当該多層樹脂構造は、合計層厚みが60~200μm、好ましくは90~150μm、特に好ましくは100~120μmである。
【0060】
装飾層を備えた木質系パネルは、上面側に耐摩耗性粒子をそれぞれ含む第1の及び第2の樹脂層を備えるとともに、下面側にそれらに対応する樹脂層を備え、上面側に少なくとも1つの第3の樹脂層を備えるとともに、木質系パネルの下面側にそれに対応する樹脂層を備え、上面側に少なくとも第4の、第5の、及び第6の樹脂層を備えるとともに、当該木質系パネルの下面側にそれらに対応する樹脂層を備える樹脂構造を有する。その場合、木質系パネルの上面側の第3~第5の樹脂層に、ガラスビーズが含まれるとしてもよい。
【0061】
好適な実施形態では、本発明のプロセスにより、以下の層構造(下から上に向かってみた場合)を有する耐摩耗性木質系パネルの製造が可能となる。6つの樹脂層のバッキング層-木質系パネル-プライマー層-印刷装飾層-保護層(特に、まだ完全に硬化していない樹脂の保護層)-セルロース繊維を含む第1の樹脂層-耐摩耗性粒子の層-第2の樹脂層-ガラスビーズを含む第3の樹脂層-ガラスビーズを含む第4の樹脂層-ガラスビーズを含む第5の樹脂層-第6の樹脂層(ガラスビーズを含まない)。
【0062】
保護層は、装飾を覆い、処理の中間での保管(積み重ね、保管、輸送)時に装飾を保護する役割を果たす。上面側の他の樹脂層は、仕上げられたラミネートを摩耗から保護し、装飾と同期した構造(decor-synchronous structuring)を実現するように、複数の樹脂層が一緒になってオーバーレイを形成する。
【0063】
本発明の方法を実施するための生産ラインには、以下の要素:
-木質系パネルの上面に第1の樹脂層(第1の樹脂層は繊維を含んでいてもよい)を塗布するための少なくとも1つの第1の塗布装置;
-処理方向において第1の塗布装置に対し下流側に配置される少なくとも1つの装置であって、所定量の耐摩耗性粒子を散布するための装置;
-処理方向において第1の塗布装置および散布装置の下流側に配置される少なくとも1つの第2の塗布装置であって、木質系パネルの上面側に第2の樹脂層を塗布するための第2の塗布装置;
-処理方向において第2の塗布装置の下流側に配置される少なくとも1つの乾燥装置であって、第1の及び第2の樹脂層を含む層構造を乾燥するための乾燥装置;
-処理方向において乾燥装置の下流側に配置される少なくとも1つの第3の塗布装置であって、第3のガラスビーズを含む樹脂層を上面側に塗布し、及び/又は、支持プレートの下表面と平行に樹脂層を塗布する、第3の塗布装置;
-処理方向において第3の塗布装置の下流側に配置される少なくとも1つの更なる乾燥装置であって、第3の上面側の及び/又はこれに対応する下面側の樹脂層を乾燥するための乾燥装置;
-処理方向において前記更なる乾燥装置の下流側に配置される少なくとも1つの第4の塗布装置であって、第4のガラスビーズを含む樹脂層を上面側に塗布し、及び/又は、キャリアプレート(ガラスビーズなし)の下面側と平行に樹脂層を塗布する、第4の塗布装置;
-処理方向において第4の塗布装置の下流側に配置される少なくとも1つの乾燥装置であって、第4の上側の及び/又はこれに対応する下側の樹脂層を乾燥するための乾燥装置;
-処理方向において乾燥装置の下流側に配置される少なくとも1つの第5の塗布装置であって、ガラスビーズを含有する第5の樹脂層を上面側に塗布し、及び/又は、キャリアプレート(ガラスビーズなし)の下面側と平行に樹脂層を塗布する、第5の塗布装置;
-処理方向において第5の塗布装置の下流側に配置される少なくとも1つの乾燥装置であって、第5の上面側の及び/又はこれに対応する下面側の樹脂層を乾燥するための乾燥装置;
-処理方向において乾燥装置の下流側に配置される少なくとも1つの第6の塗布装置であって、第6の樹脂層を上面側に塗布し、及び/又は、キャリアプレートの下面側と平行に樹脂層を塗布する、第6の塗布装置;
-第6の塗布装置の下流側に配置される少なくとも1つの乾燥装置であって、第6の上面側の及び/又はこれに対応する下面側の樹脂層を乾燥するための乾燥装置;そして
-処理方向において最後の乾燥装置の下流側に配置される少なくとも1つのショートサイクルプレス
が含まれる。
【0064】
本発明の生産ラインの好適な変形例では、第1の塗布装置よりも上流側には乾燥装置は設けられておらず、または、生産ラインの一部として乾燥装置が設置されている場合には、この乾燥装置は作動していない、すなわちアクティブではない状態である。
【0065】
また、散布装置と第2の塗布装置との間には乾燥装置は設けられておらず、散布装置を経た後の未だ湿っているプレートは、そのまま第2の塗布装置に供給される。
【0066】
一実施形態では、本発明の生産ラインは、全体として、印刷された木質系パネルの上面側に第1の樹脂層を塗布するための単一の片面塗布装置と、当該木質系パネルの上面側および下面側に5つの更なる樹脂層を塗布するための両面塗布装置と、を備え、また、上面側および/または下面側の樹脂層を乾燥させるための少なくとも1つの乾燥装置が、各両面塗布装置の下流側に設けられている。
【0067】
本発明の生産ラインで提供される耐摩耗性粒子の散布装置は、粉体、顆粒、および繊維の散布に適しており、振動ブラシシステムで構成される。散布装置は、本質的には、供給ホッパー、回転する構造化されたローラ、およびスクレーパから構成される。ここで、ローラの回転速度は、塗布される耐摩耗性材料の量を決定するために使用される。散布装置は、好ましくはスパイク付きのローラで構成される。
【0068】
本発明の生産ラインの一実施形態では、さらに、少なくとも1つの散布装置が少なくとも1つのブースに取り囲まれ、又は少なくとも1つのブース内に配置されている。ブースには、当該ブース内で生じた塵埃を除去する少なくとも1つの手段が設けられる。塵埃を除去するための手段は、吸引装置のような形態であってもよいし、あるいは空気を吹き込む装置のような形態であってもよい。空気の吹き込みは、プレートの入口と出口に設けられたノズルから空気をブースに吹き込むことにより、実現することができる。また、これにより、空気の動きによって耐摩耗性材料の不均一な散乱カーテンが形成されてしまうのを防ぐことができる。
【0069】
散布装置の周囲から、耐摩耗性材料由来の塵埃を除去すると、生産ラインで働く労働者の明らかな健康上の負担とは別に有利であり、さもなければ耐摩耗性粒子からの微細な塵埃が生産ラインの他の設備部分にも体積し、摩耗の増加につながる。そのため、キャビン内に散布装置を配置することで、生産ラインの周囲における塵埃の健康への影響を軽減するたけでなく、早期の摩耗を防止することもできる。
【0070】
好ましくは、散布装置は光電バリア(light barrier)により制御され、光電バリアは、処理方向において、散布装置の下方に設けられるローラ(散布ローラ)の前方に配置される。光バリアによる散布装置の制御は、個々の木質系パネルの間に程度の差はあるが大きな隙間がある場合に有用であり、これは、パネルが散布ローラの前に配置されると直ちに散布プロセスが開始されるためである。
【0071】
本発明の散布装置の一実施形態では、少なくとも1つのホッパーが散布ローラの前方に設けられ、それにより過剰な耐摩耗性粒子を回収する(すなわち、少なくとも1つの木質系パネルに散布されずに、後続の木質系パネルが輸送装置によって散布ローラの下方へと運ばれてくる前に、当該木質系パネルの前方に落ちてしまった耐摩耗性粒子)。
【0072】
より発展的な実施形態では、ホッパーには、少なくとも1つのコンベア及びスクリーニング装置が接続され、ホッパーに回収された過剰な耐摩耗性材料は、コンベアを介してスクリーニング装置に輸送される。スクリーニング装置のスクリーンメッシュは、耐摩耗性粒子状材料に用いられる最大の粒径(すなわち、およそ80~100μm)に対応している。スクリーニング装置では、汚染された粒子や塊状となった材料(塊状の樹脂や塊状の耐摩耗性材料など)が、回収された耐摩耗性材料から分離され、このようにしてスクリーニングされた耐摩耗性材料は、散布装置に戻す(再利用する)ことができる。
【0073】
上述したように、それぞれの樹脂層に対応する塗布ユニット又は塗布装置において、対象となる方法で液体樹脂に硬化剤を添加することも意図されている。本発明の生産ラインの一実施形態では、各塗布装置に対し、少なくとも1つの計量ユニットが、上記の目的のように硬化剤を添加するために設けられる。硬化剤は、少なくとも1つの計量ユニットから樹脂の供給タンクにポンプで送り込まれ、例えば適宜の撹拌機によって供給タンク内の樹脂と混合される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
本発明は、図面を参照するとともに実施形態の例を用いることにより、以下においてより詳細に説明される。
【
図1】
図1は、本発明による方法を用いた、木質系パネルの生産ラインの概略図である。
【0075】
図1に概略的に示される生産ラインは、スイッチがオフとされたIR乾燥機1aを含む。生産ラインからIR乾燥機1aを除外することにより、IR乾燥機内で生じ得るプレート表面の静電帯電を回避することができ、コランダムが一様に散布される散乱カーテンを形成することが可能となる。
【0076】
この生産ラインは、更に、片面塗布装置1(溝付きローラ)と、個々のプリントされたボード(例えば、プリントされたHDFボード)の上面側と下面側とにそれぞれの樹脂層を平行に塗布する5つの両面塗布装置2,3,4,5,6と、それぞれの塗布装置に対して処理方向の下流側に配置される5つの対流式乾燥機2a,3a,4a,5a,6aとを備えている。
【0077】
第1塗布ロール1の下流側には、コランダムなどの耐摩耗性材料をHDFボードの上面側の第1樹脂層上に均一に散布するための第1の散布装置20が設けられる。ここで用いられる耐摩耗性材料はF200コランダムであり、FEPA基準によれば約53~75μmの直径を有するものである。散布装置20は本質的に、供給ホッパー、回転する構造化されたスパイク付きローラ、およびスクレーパで構成される。材料の塗布速度は、散布ローラの回転速度によって決まる。製品に要求される耐摩耗性のレベル(class)に応じて、12~25g/m2のコランダムが樹脂コーティングされたボードに散布される(AC4(EN 13329による)=20g/m2)。スパイク付きローラから5cmだけ離れたメラミン樹脂処理されたボード上へと、コランダムは落下する。散布時には第1の樹脂層は未だ液体状態のため、耐摩耗性粒子は、樹脂層の中へと沈み込むことができる。本発明の散布装置においては、少なくとも1つのホッパー(不図示)が、過剰の耐摩耗性粒子(すなわち、少なくとも1つの木質系パネル上に散布されず、木質系パネルが輸送装置によって散布ローラの下方へと移動されてくる前に当該木質系パネルの前方に落下してしまった耐摩耗性粒子)を回収するために散布ローラの前方に設けられる。
【0078】
両面コーティングユニット2においては、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂およびコランダムでコーティングされたボードが、さらにメラミン-ホルムアルデヒド樹脂でコーティングされる(約20g/m2)。また、付着していないコランダムが少量だけ除去されて、飽和状態(約10重量%)となるまでメラミン樹脂溶液中に蓄積される。この失われた分のコランダムは、今度はコーティングユニット2のローラ塗布によってボードに連続的に再塗布される。2度目の塗布により、コランダムの粒子が液体樹脂により被覆されたり、オーバーレイ層に組み込まれたりすることとなる。これにより、対流式乾燥機での空気の大きな乱れによってコランダムが除去されてしまうことを防ぐことができる。
【0079】
第1の及び第2の樹脂層の積層体は、対流式乾燥機2aによって乾燥される。
【0080】
第3の樹脂層を塗布するための第3の両面コーティング装置3の下流側には、第3の樹脂層にガラスビーズを塗布するためのもう1つの散布装置20が設けられていてもよい。このもう1つの散布装置20の後には、第3の樹脂層を乾燥するための対流式乾燥機3aが設けられる。ガラスビーズを散布するための散布装置20を設けるか否かは任意である。ガラスビーズは、第3の樹脂層と一緒に塗布されるとしてもよい。
【0081】
第4~第6の両面コーティング装置4,5,6により第4~第6の樹脂層を塗布し、対流式乾燥機4a,5a,6aでそれぞれ乾燥させた後、40kg/cm2の圧力下で、加圧温度180~220℃、加圧時間8~10秒として、層構造がショートサイクルプレス7で硬化される。プレスされたシートは冷却され、保管される。
なお、本発明は実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
上面と下面を有し、前記上面に少なくとも1つの装飾層が配置され、(特に前記装飾層と同期した構造を有する、)耐摩耗性木質系パネルを製造する方法であって、以下の工程:
-前記木質系パネルの上面の少なくとも1つの装飾層に、少なくとも1つの第1の樹脂層を塗布する工程であって、前記第1の樹脂層は、固形分を60~80重量%、(好ましくは65~70重量%、特に好ましくは65~67重量%)含む工程;
-前記木質系パネルの前記上面の前記第1の樹脂層上に耐摩耗性粒子を均一に散布する工程;
-ただし、前記木質系パネルの前記上面の前記第1の樹脂層は、前記耐摩耗性粒子を有した状態で塗布後に乾燥しておらず;
-前記木質系パネルの前記上面に、耐摩耗性粒子と共に設けられた第1の湿潤樹脂層に対し、少なくとも1つの第2の樹脂層を塗布する工程であって、前記第2の樹脂層は、固形分を60~80重量%、(好ましくは65~70重量%、特に好ましくは65~67重量%)含む工程;
-続いて、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とからなる構造を、少なくとも1つの乾燥装置で乾燥させる工程;
-少なくとも1つの第3の樹脂層を塗布する工程であって、前記第3の樹脂層は、固形分を60~80重量%、(好ましくは65~70重量%、特に好ましくは65~67重量%)含み、ガラスビーズを含む工程;
-続いて、塗布された前記第3の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;
-少なくとも1つの第4の樹脂層を塗布する工程であって、前記第4の樹脂層は、固形分を50~70重量%、(好ましくは55~65重量%、特に好ましくは58~62重量%)含み、ガラスビーズを含む工程;
-続いて、塗布された前記第4の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;
-少なくとも1つの第5の樹脂層を塗布する工程であって、前記第5の樹脂層は、固形分を50~70重量%、(好ましくは55~65重量%、特に好ましくは58~62重量%)含み、ガラスビーズを含む工程;
-続いて、塗布された前記第5の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;
-少なくとも1つの第6の樹脂層を塗布する工程であって、前記第6の樹脂層は、固形分を50~70重量%、(好ましくは55~65重量%、特に好ましくは58~62重量%)含み、ガラスビーズを含まない工程;
-続いて、塗布された前記第6の樹脂層を、少なくとも1つの更なる乾燥装置で乾燥する工程;及び
-得られた層状構造体をショートサイクルプレスでプレスする工程;
を備える方法。
〔態様2〕
態様1に記載の方法であって、前記装飾層が設けられた前記木質系パネルは、前記第1の樹脂層が塗布されるまでの間は乾燥機で加熱されないことを特徴とする方法。
〔態様3〕
態様1または2に記載の方法であって、前記樹脂層は、水性ホルムアルデヒド含有樹脂、(特にメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、又はメラミン-尿素-ホルムアルデヒド樹脂)をベースにしていることを特徴とする方法。
〔態様4〕
態様1から3のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1の樹脂層はセルロース繊維または木材繊維、(好ましくはセルロース繊維)を含むことを特徴とする方法。
〔態様5〕
態様1から4のいずれか一項に記載の方法であって、散布された耐摩耗性粒子の量が10~50g/m
2
、(好ましくは、10~30g/m
2
、特に好ましくは15~25g/m
2
)であることを特徴とする方法。
〔態様6〕
態様1から5のいずれか一項に記載の方法であって、前記木質系パネルの前記上面に塗布される前記第2の樹脂層にはガラスビーズは含まれないことを特徴とする方法。
〔態様7〕
態様1から6のいずれか一項に記載の方法であって、前記第2の樹脂として塗布される樹脂中に、5~15重量%、(好ましくは10重量%)の含有量で、耐摩耗性粒子が蓄積されることを特徴とする方法。
〔態様8〕
態様1から7のいずれか一項に記載の方法であって、前記ガラスビーズの直径は90~150μmであることを特徴とする方法。
〔態様9〕
態様1から8のいずれか一項に記載の方法であって、塗布された前記樹脂層の合計厚みは60~200μm、(好ましくは90~150μm、特に好ましくは100~120μm)であることを特徴とする方法。
〔態様10〕
態様1から9のいずれか一項に記載の方法であって、塗布されるそれぞれの樹脂への硬化剤の添加は、その樹脂の各々の塗布装置でのみ行われることを特徴とする方法。
〔態様11〕
態様1から10のいずれか一項に記載の方法であって、前記各樹脂層の乾燥は、(特に対流式乾燥機において、)150~220℃、(好ましくは180~210℃)の乾燥機温度で行われることを特徴とする方法。
〔態様12〕
態様1から11のいずれか一項に記載の方法であって、前記層状構造体のプレスは、ショートサイクルプレスにより、150~250℃、(好ましくは180~230℃、特に好ましくは200℃)の温度下で、かつ、30~60kg/cm
2
、(特に好ましくは40~50kg/cm
2
)の圧力下で、行われることを特徴とする方法。
〔態様13〕
態様1から12のいずれか一項に記載の方法であって、コーティングされた前記木質系パネルは、ショートサイクルプレス内で、前記木質系パネルのマーキングを利用することで、前記ショートサイクルプレス内に配置された構造化されたプレスプレート上に整列され、木質系パネル上の装飾と、エンボス加工されるプレスプレートの構造と、の間に、合致性が確立されることを特徴とする方法。
〔態様14〕
態様1から13のいずれか一項に記載の方法で製造可能な木質系パネルであって、上面に少なくとも1つの装飾層を有し、かつ耐摩耗性粒子、セルロース繊維、及びガラスビーズを含む多層樹脂構造を有し、前記多層樹脂構造は少なくとも6つの樹脂層を備え、
第1の樹脂層は、固形分を60~80重量%、(好ましくは65~70重量%、より好ましくは65~67重量%)含むとともに、セルロース繊維を含み、
第2の樹脂層は、固形分を60~80重量%、(好ましくは65~70重量%、より好ましくは65~67重量%)含み、
第3の樹脂層は、固形分を60~80重量%、(好ましくは65~70重量%、より好ましくは65~67重量%)含むとともに、ガラスビーズを含み、
第4の樹脂層は、固形分を50~70重量%、(好ましくは55~65重量%、より好ましくは58~62重量%)含むとともに、ガラスビーズを含み、
第5の樹脂層は、固形分を50~70重量%、(好ましくは55~65重量%、より好ましくは58~62重量%)含むとともに、ガラスビーズを含み、
第6の樹脂層は、固形分を50~70重量%、(好ましくは55~65重量%、より好ましくは58~62重量%)含むが、ガラスビーズを含まず、及び
前記多層樹脂構造は、合計厚みが60~200μm、(好ましくは90~150μm、より好ましくは100~120μm)であることを特徴とする木質系パネル。