(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】キックスケーター
(51)【国際特許分類】
A63C 17/04 20060101AFI20220304BHJP
B62K 17/00 20060101ALI20220304BHJP
B62K 15/00 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A63C17/04
B62K17/00
B62K15/00
(21)【出願番号】P 2020094812
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2020-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明田 守
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006687(JP,A)
【文献】登録実用新案第3072731(JP,U)
【文献】登録実用新案第3103657(JP,U)
【文献】登録実用新案第3223072(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 17/04
B62K 17/00
B62K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪を回転自在に保持するボードと、
前輪を回転自在に保持し、前記ボードの前記後輪側と反対側に位置するシャフトと、
前記ボードに対して回転自在に取り付けられ、前記シャフトを把持するヒンジと、
を備え、
前記ヒンジは、前記シャフトが前記ボードに対して立ち上がった状態において、連結部材を介して前記シャフトに固定されて当該シャフトを把持し、
前記連結部材が前記シャフトから取り外されて前記ヒンジによる把持状態が解除された場合に、
前記シャフトを前記ボード側に
倒すことによって折りたたまれる、
ことを特徴とするキックスケーター。
【請求項2】
前記前輪を回転駆動する駆動ユニット、
をさらに備え、
当該キックスケーターを折りたたんだ状態において、前記シャフト及び前記駆動ユニットの一部が、前記ヒンジの前記シャフトを把持する把持部に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載のキックスケーター。
【請求項3】
前記シャフトは、前記前輪側と反対側が伸縮自在である、
ことを特徴とする請求項1に記載のキックスケーター。
【請求項4】
前記シャフトに設けられ、前記ヒンジによって把持されるベアリング、
を有することを特徴とする請求項1に記載のキックスケーター。
【請求項5】
前記シャフトは、前記ボード側に
折りたたんだ場合に、前記前輪の前方側端部と前記後輪の後方側端部との間に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載のキックスケーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折りたたみ可能なキックスケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドルが取り付けられたシャフトを、車輪が取り付けられたボード側に倒して折りたたむことが可能なキックスケーターが知られている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1では、ボードに取り付けられた後輪を、該後輪の軸と直交する軸のまわりに回転させつつ、ボードをシャフト側に倒すことによって折りたたんでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キックスケーターは、走行時の安定性を向上させるため、車輪を大きくすることがある。しかしながら、特許文献1では、折りたたみ時に、前輪及び後輪の向き(例えば回転軸の方向)が互いに異なっており、車輪を大きくすると、折りたたみ時、互いに異なる方向へのサイズ増大が生じる。その結果、折りたたみ時のキックスケーターのサイズが、車輪のサイズ増大分以上に大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車輪を大きくしても、折りたたみ時のサイズの大型化を抑制することができるキックスケーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るキックスケーターは、後輪を回転自在に保持するボードと、前輪を回転自在に保持し、前記ボードの前記後輪側と反対側に位置するシャフトと、前記ボードに対して回転自在に取り付けられ、前記シャフトを把持するヒンジと、を備え、前記シャフトは、前記ヒンジによる把持状態が解除された場合に、前記前輪の回転軸のまわりに、前記ボード側に回転可能である、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るキックスケーターは、上記発明において、前記前輪を回転駆動する駆動ユニット、をさらに備え、当該キックスケーターを折りたたんだ状態において、前記シャフト及び前記駆動ユニットの一部が、前記ヒンジの前記シャフトを把持する把持部に位置する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るキックスケーターは、上記発明において、前記シャフトは、前記前輪側と反対側が伸縮自在である、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るキックスケーターは、上記発明において、前記シャフトに設けられ、前記ヒンジによって把持されるベアリング、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るキックスケーターは、上記発明において、前記シャフトは、前記ボード側に回転して折りたたんだ場合に、前記前輪の前方側端部と前記後輪の後方側端部との間に位置する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キックスケーターにおいて、車輪を大きくしても、折りたたみ時のサイズの大型化を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るキックスケーターの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すキックスケーターを折りたたんだ状態を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すキックスケーターの折りたたみ方法を説明する図(その1)である。
【
図4】
図4は、
図1に示すキックスケーターの折りたたみ方法を説明する図(その2)である。
【
図5】
図5は、
図1に示すキックスケーターの折りたたみ方法を説明する図(その3)である。
【
図6】
図6は、
図2に示すキックスケーターを収納した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面は模式的なものであって、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚みの比率などは現実のものとは異なる場合があり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0014】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るキックスケーターの構成を示す図である。
図1の(a)は、キックスケーター1を前方からみた構成を示す平面図である。
図1の(b)は、
図1の(a)に示すキックスケーター1を右側からみた構成を示す平面図である。
図1の(b)の右側を前方、左側を後方として説明する。また、前後方向(
図1の(a)では紙面と直交する方向)及び左右方向(
図1の(a)では上下方向)と直交する方向(
図1の(a)では左右方向)を高さ方向とする。
【0015】
キックスケーター1は、ボード11と、第1シャフト12と、第2シャフト13と、第1ヒンジ14と、第2ヒンジ15と、前輪16と、後輪17と、駆動ユニット18とを備える。また、キックスケーター1には、上記の構成要素のほか、フェンダー191、192や、ナンバープレート193が設けられる。
【0016】
ボード11は、前方から後方にわたって延びる板状をなす。ボード11には、一端側に第1ヒンジ14及び第2ヒンジ15が取り付けられる。ボード11は、後方側の端部において、後輪17を回転自在に保持する。使用者は、ボード11に乗ってキックスケーター1を操作する。
【0017】
第1シャフト12は、ボード11に対して立ち上がって延びる。第1シャフト12には、駆動ユニット18が取り付けられる。また、第1シャフト12は、第1ヒンジ14及び第2ヒンジ15を介してボード11に固定される。第1シャフト12は、ボード11側の端部において、前輪16を軸161のまわりに回転自在に保持する。
さらに、第1シャフト12には、キックスケーター1の前方を照らすための前照灯121が取り付けられる。前照灯121は、当該前照灯121に取り付けられるバッテリー、又は、駆動ユニット18から供給される電力によって点灯する。
【0018】
第2シャフト13は、第1シャフト12のボード11と反対側の端部に接続され、当該第1シャフト12に対して進退自在に設けられる。第2シャフト13の第1シャフト12に接続する側と反対側の端部には、当該キックスケーター1の左右方向に、互いに反対側に延びる二つのハンドル131が設けられる。また、各ハンドル131には、当該ハンドル側への方向変更を知らせるための方向指示器132が設けられる。具体的には、右側のハンドル131には、右折を知らせるための方向指示器132が設けられ、左側のハンドル131には、左折を知らせるための方向指示器132が設けられる。各方向指示器132は、第2シャフト13に設けられる指示器レバー133の操作によって点灯が制御される。
さらに、第2シャフト13には、後方を確認するためのミラー134が取り付けられる。
【0019】
ここで、一方のハンドル131(例えば右側のハンドル)には、回転によって駆動ユニット18を駆動させる駆動信号を送信する回路等が配設される。例えば、ハンドル131を前方側に回すと、キックスケーター1を前進させる信号を出力する。前進させる信号は、ハンドルの回転角が大きいほど、速い速度に設定される。また、ハンドル131を後方側に回すと、減速させる信号を出力する。この際、キックスケーター1の運動エネルギーが電気に変換されて、駆動ユニット18に回収される。回収された電気は、方向指示器132や、前照灯121、後述するモータ181、バッテリー183等に供給される。
【0020】
また、第1シャフト12及び第2シャフト13は、各シャフトの中心軸が略一致する。ここでいう中心軸は、長手方向に延びる軸であって、該長手方向と直交する断面の中心を通過する軸である。また、「略一致」とは、一致を含み、製造上の誤差等によるずれを含む。第1シャフト12及び第2シャフト13は、中心軸のまわりに回転可能であり、回転によって前輪の向きを変更することができる。前輪の向きとは、第1シャフト12の長手軸のまわりに回転する方向に相当する。
【0021】
第1ヒンジ14は、一端がボード11に回転自在に取り付けられる。第1ヒンジ14は、他端が二股に分かれてなり、第1シャフト12を把持する。具体的には、第1ヒンジ14は、ボード11から延び、該ボード11に設けられる第1軸111のまわりに回動する回動部141と、回動部141のボード11側と反対側の端部から延び、第1シャフト12を把持する把持部142とを有する。第1軸111は、キックスケーター1の左右方向に延びる軸である。
【0022】
第2ヒンジ15は、一端がボード11に回転自在に取り付けられる。第2ヒンジ15は、他端が二股に分かれてなり、第1シャフト12を把持する。具体的には、第2ヒンジ15は、ボード11から延び、該ボード11に設けられる第2軸112のまわりに回動する回動部151と、回動部151のボード11側と反対側の端部から延び、第1シャフト12を把持する把持部152とを有する。第2ヒンジ15は、ボード11に取り付けられる第2軸112のまわりに回転する。第2軸112は、キックスケーター1の左右方向に延びる軸である。
また、第2ヒンジ15には、第1ヒンジ14の一部を収容可能な収容部151が形成される。収容部151は、第1ヒンジ14をボード11側に倒した際に、該第1ヒンジ14の回動部141を収容できる開口を形成する貫通孔である。なお、収容部151は、第1ヒンジ14を収容できれば、第2ヒンジ15を貫通させる必要はなく、凹形状をなすものであってもよい。
【0023】
第1ヒンジ14及び第2ヒンジ15は、連結部材143によって第1シャフト12に連結されている。連結部材143は、ボルト144によって第1シャフト12に固定されるとともに、第1シャフト12に対して第1ヒンジ14及び第2ヒンジ15を締め付ける。
ここで、第1シャフト12の、第1ヒンジ14及び第2ヒンジ15によって挟み込まれる部分、並びにボルト144配設部分には、ベアリング122が設けられる。すなわち、第1ヒンジ14及び第2ヒンジ15は、ベアリング122を経て第1シャフト12を挟み込む。このため、第1シャフトが中心軸まわりに回転した場合に、その回転によって第1ヒンジ14及び第2ヒンジ15が、第1シャフトの中心軸まわりに回転することが抑制される。なお、ベアリング122は、第1ヒンジ14、第2ヒンジ15及びボルト144の配設位置全体にわたって設けられるものであってもよいし、各部材の配設位置に応じて複数のベアリングを個別に設けてもよい。
【0024】
駆動ユニット18は、前輪16を回転させる動力を発生するとともに、前照灯121や方向指示器132に電力を供給する。駆動ユニット18は、モータ181と、ベルト182とバッテリー183とを有する。ベルト182は、環状をなし、モータ181に設けられるギアと歯合するとともに、前輪16の軸161と歯合する。ベルト182は、モータ181の回転動力を前輪16の軸161に伝えて、前輪16を回転させる。バッテリー183は、第1シャフト12に沿って延びる棒状をなす。
【0025】
キックスケーター1は、シャフト(第1シャフト12及び第2シャフト13)をボード11側に倒して折りたたむことができる。
図2は、
図1に示すキックスケーターを折りたたんだ状態を示す図である。折りたたみ時のキックスケーター1では、シャフト部分が、前後方向において、前輪16の前方側の端部と後輪17の後方側の端部との間、ボード11と車輪の高さ方向の上端部との間、及び、ボード11の左右方向(幅方向)の端部間に形成される空間内に収容される。
【0026】
図3~
図5は、
図1に示すキックスケーターの折りたたみ方法を説明する図である。キックスケーター1を折りたたむ際には、まず、第2シャフト13を第1シャフト12内に収容する(
図3、4参照)。これにより、第1シャフト12及び第2シャフト13の長手方向の長さが、ボード11の長手方向の長さよりも短くなる。この際、ハンドル131の向きも変更する。本実施の形態では、ハンドル131の長手方向が、第2シャフト13の長手方向と平行となるように向きを変更する。
図4では、ハンドル131を、第1シャフト12側と反対側に折り曲げた例を示しているが、逆向きに折り曲げてもよい。
【0027】
第2シャフト13を収納後、連結部材143を第1シャフト12から外し、第1ヒンジ14及び第2ヒンジ15とともに第1シャフト12をボード11側に倒す(
図5参照)。第1シャフト12は、
例えば第1ヒンジ14の回転に倣って倒れた場合、前輪16の軸161のまわりにボード11側に回転する。この際、第1ヒンジ14の回動部141は、収容部151に収容される。
【0028】
その後、第1シャフト12をボード11側に倒す。この際、第1シャフト12及びバッテリー183は、把持部142、152内に位置する。
ここで、ボード11には、第1シャフト12を倒した際にボルト144が挿通される貫通孔113が形成される。ボルト145は、第1シャフト12側と反対側からボード11側から貫通孔113に挿通され、連結部材143を経て第1シャフト12に螺合する。ボルト144が第1シャフト12に螺合することによって、第1シャフト12がボード11に固定される。
【0029】
上述した作業を経て、キックスケーター1を
図2に示すように折りたたむことができる。
【0030】
図6は、
図2に示すキックスケーターを収納した状態を示す図である。破線Q
1は、折りたたんだ状態のキックスケーター1(
図2参照)の外縁を示す。
図6に示す収納部材20は、折りたたんだ状態のキックスケーター1を収納する。収納部材20は、一端が閉じた筒状をなす。収納部材20の他端側の開口には、ファスナー21が設けられ、開閉自在となっている。さらに、収納部材20の他端側には、貫通孔22が形成される。ユーザは、貫通孔22に手を入れることによって、収納部材20を持ち運ぶことができる。
【0031】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、シャフト(第1シャフト12)を支えるヒンジ(第1ヒンジ14及び第2ヒンジ15)を、ボード11に設けられた回転軸(第1軸111、第2軸112)のまわりに回転させるとともに、シャフトをボード11側に倒すようにした。本実施の形態によれば、回転させたシャフトやヒンジがボード11に沿うように配置されるため、折りたたみ時のサイズの大型化を抑制することができる。また、折りたたんだ状態において、前輪16及び後輪17の向きが同じであるため、車輪を大きくしても、折りたたみ時のキックスケーターのサイズは、車輪分大きくなるのみであり、車輪を大型化に起因するキックスケーター1の折りたたみサイズの大型化は抑制される。
【0032】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、上述した実施の形態では、駆動ユニット18を有する電動型のキックスケーターの構成を例に説明したが、駆動ユニット18を有しない構成であってもよい。駆動ユニット18を有しないキックスケーターの場合、その他の電動型特有の構成(例えば、ハンドル131における駆動信号の出力回路やナンバープレート193)も不要である。
【0033】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【0034】
以上説明したように、本発明に係るキックスケーターは、車輪を大きくしても、折りたたみ時のサイズの大型化を抑制するのに好適である。
【符号の説明】
【0035】
1 キックスケーター
11 ボード
12 第1シャフト
13 第2シャフト
14 第1ヒンジ
15 第2ヒンジ
16 前輪
17 後輪
18 駆動ユニット
20 収納部材
111 第1軸
112 第2軸
121 前照灯
122 ベアリング
131 ハンドル
132 方向指示器
133 指示器レバー
134 ミラー
141、151 回動部
142、152 把持部
143 連結部材
144、145 ボルト
161 軸
181 モータ
182 ベルト
183 バッテリー