(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】試料収容用チューブ
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20220304BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20220304BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20220304BHJP
A01N 1/02 20060101ALN20220304BHJP
【FI】
B65D25/20 P
G01N1/00 101H
G01N35/02 A
G01N35/02 C
A01N1/02
(21)【出願番号】P 2017149740
(22)【出願日】2017-08-02
【審査請求日】2020-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000137476
【氏名又は名称】株式会社マルコム
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【氏名又は名称】重信 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】西島 光利
(72)【発明者】
【氏名】大石 隆二
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-500983(JP,A)
【文献】特開2005-147680(JP,A)
【文献】特開2004-053566(JP,A)
【文献】特開平11-096278(JP,A)
【文献】特開2006-285545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0226984(US,A1)
【文献】特開2011-227067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/20
G01N 1/00
G01N 35/02
A01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が収容される有底筒状の、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリスチレンから選ばれた樹脂よりなるチューブ本体と、このチューブ本体に連結固定される、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリスチレンから選ばれた樹脂よりなる付属部材とよりなり、
前記付属部材には、前記チューブ本体に収容される試料に係る情報が記録された二次元コードが形成されており、
前記付属部材は、表面に前記二次元コードが形成された板状のコード形成部を有し、
前記二次元コードは、前記コード形成部の表面に形成された凹凸よりなるものであり、
前記チューブ本体は、テーパ状の底壁部と、この底壁部から当該チューブ本体の管軸方向に伸びる筒状部とを有し、
前記付属部材は、前記コード形成部の裏面から突出し、前記筒状部の筒孔に挿入される連結部を
有し、
前記チューブ本体内に収容された試料の色を底面から観察することができるものであることを特徴とする試料収容用チューブ。
【請求項2】
前記付属部材における前記コード形成部の表面には、前記二次元コードが形成された領域を囲繞するコード保護用突出部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の試料収容用チューブ。
【請求項3】
前記チューブ本体における前記筒状部の内周面および前記付属部材における前記連結部の外周面には、互いに嵌合する係合部および被係合部の一方および他方が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の試料収容用チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人等の血液、生体組織などの検体や、薬品等の化学物質などの試料が収容される試料収容用チューブに関し、更に詳しくは、収容される試料に係る情報が記録された二次元コードが形成された試料収容用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、臨床検査においては、人体から採取した血液や生体組織などの検体は、樹脂等よりなる試料収容用チューブに収容されて保管される。また、創薬の研究や化学物質の分析等においては、試薬や分析対象である化学物質は、マイクロチューブと称される試料収容用チューブに収容されて保管される。
【0003】
このような試料収容用チューブにおいては、収容された試料を識別して管理するために、当該試料に係る情報を試料収容用チューブに記録することが行われている。試料収容用チューブに情報を記録する手段としては、特許文献1および特許文献2には、試料収容用チューブの底部外面に、二次元コードが記載されたラベルを貼付する手段が開示され、また、特許文献3には、試料収容用チューブの底部外面に、二次元コードを直接形成する手段が開示されている。
【0004】
然るに、特許文献1および特許文献2に記載の試料収容用チューブにおいては、以下のような問題がある。
例えばマイクロチューブの底部外面に貼付されるラベルは、微細なものである。そのため、このようなラベルを試料収容用チューブの底部外面に貼付することは、極めて煩雑な作業である。また、試料収容用チューブの使用中に、試料収容用チューブからラベルが剥離する虞がある。更に、試料収容用チューブに収容される試料によって、ラベルが汚染すると、ラベルに記載された二次元コードを正確に読み取ることが困難となる。
【0005】
また、特許文献3に記載の試料収容用チューブにおいては、以下のような問題がある。 例えばマイクロチューブにおいては、底壁部の内面がテーパ状に形成された、いわゆるV底のものが賞用されている。一方、試料収容用チューブの底壁部の外面に二次元コードを直接形成する場合には、当該底壁部の外面が平坦であることが必要である。底壁部の内面がテーパ状でかつ外面が平坦である試料収容用チューブを得るためには、底壁部の外周部分の厚みを大きくするか、或いは底壁部を二重底の構造とすることが考えられる。然るに、このような形態のマイクロチューブを、樹脂を成形することによって製造する場合には、底壁部にひけが生じやすいため、底壁部の外面が十分に平坦な試料収容用チューブが得られず、その結果、底壁部の外面に形成された二次元コードを確実に読み取ることが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特願2002-225895号公報
【文献】特願2005-172682号公報
【文献】特願2005-145541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、二次元コードを形成すべき面領域の平坦性が十分に確保され、当該二次元コードを確実に読み取ることができる試料収容用チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の試料収容用チューブは、試料が収容される有底筒状の、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリスチレンから選ばれた樹脂よりなるチューブ本体と、このチューブ本体に連結固定される、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリスチレンから選ばれた樹脂よりなる付属部材とよりなり、
前記付属部材には、前記チューブ本体に収容される試料に係る情報が記録された二次元コードが形成されており、
前記付属部材は、表面に前記二次元コードが形成された板状のコード形成部を有し、
前記二次元コードは、前記コード形成部の表面に形成された凹凸よりなるものであり、
前記チューブ本体は、テーパ状の底壁部と、この底壁部から当該チューブ本体の管軸方向に伸びる筒状部とを有し、
前記付属部材は、前記コード形成部の裏面から突出し、前記筒状部の筒孔に挿入される連結部を有し、
前記チューブ本体内に収容された試料の色を底面から観察することができるものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の試料収容用チューブにおいては、前記付属部材における前記コード形成部の表面には、前記二次元コードが形成された領域を囲繞するコード保護用突出部が形成されていることが好ましい。
また、前記チューブ本体における前記筒状部の内周面および前記付属部材における前記連結部の外周面には、互いに嵌合する係合部および被係合部の一方および他方が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の試料収容用チューブによれば、試料が収容されるチューブ本体とは別体の付属
部材に、二次元コードが形成されているため、二次元コードを形成すべき面領域の平坦性
が十分に確保され、その結果、当該二次元コードを確実に読み取ることができる。
また、二次元コードがコード形成部に形成された凹凸よりなるものであるため、チューブ本体内に収容された試料の色に関わらず、当該二次元コードを確実に読み取ることができ、しかも、チューブ本体内に収容された試料の色などを試料収容用チューブの底面から観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の試料収容用チューブの一例における構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す試料収容用チューブを管軸に沿って切断して示す説明用断面図である。
【
図3】チューブ本体における筒状部を拡大して示す説明用断面図である。
【
図4】付属部材を拡大して示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の試料収容用チューブの実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の試料収容用チューブの一例における構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す試料収容用チューブを管軸に沿って切断して示す説明用断面図である。
図1に示す試料収容用チューブ10は、マイクロチューブと称されるものである。この試料収容用チューブ10は、内部に試料が収容される有底筒状のチューブ本体11と、このチューブ本体11に連結固定される付属部材20と、チューブ本体11の開口を塞ぐ蓋材30とにより構成されている。
チューブ本体11内に収容される試料としては、人等の血液、生体組織などの検体、薬品や、その他の化学物質などが挙げられる。
【0013】
試料収容用チューブ10におけるチューブ本体11、付属部材20および蓋材30は、いずれも樹脂によって形成されている。試料収容用チューブ10を形成する樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどを用いることができる。これらの中では、耐薬品性、成形性の観点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0014】
この例のチューブ本体11は、断面が円形の直管状の胴部12と、この胴部12に連続するテーパ状の底壁部15と、この底壁部15から当該チューブ本体11の管軸方向に伸びる筒状部16とを有する。胴部12の一端における開口縁には、全周にわたって半径方向外方に突出する第1のフランジ13が形成されている。胴部13の外周面における中央より開口に接近した位置には、部分的に半径方向外方に突出する第2のフランジ14が形成されている。
【0015】
図3に拡大して示すように、チューブ本体11における筒状部16の内周面には、後述する付属部材20における連結部25の外周面に形成された被係合部26(
図4参照)と互いに嵌合する係合部17が形成されている。図示の例の係合部17は、筒状部16の内周面の周方向に全周にわたって伸びる、断面の輪郭が円弧状の突条によって構成されている。
【0016】
図4にも拡大して示すように、付属部材20は、表面に二次元コードCが直接形成された円板状のコード形成部21と、このコード形成部21の裏面から突出し、チューブ本体11における筒状部16の筒孔に挿入される円筒状の連結部25とを有する。
【0017】
コード形成部21の表面に形成された二次元コードCは、チューブ本体11に収容される試料に係る情報が記録されたものである。この二次元コードCは、例えばレーザによる刻印によってコード形成部21に形成された凹凸よりなるものであることが好ましい。このような二次元コードCを形成することにより、以下のような効果が得られる。
例えばレーザ照射によって発色する顔料を含むインクが塗布された付属部材20の表面にレーザを照射することにより、二次元コードCを形成することが可能である。しかし、このような二次元コードCは、チューブ本体11内に収容された試料の色によって、当該二次元コードCの読み取りに影響を受けやすいこと、チューブ本体11内に収容された試料の色などを試料収容用チューブ10の底面から観察することが困難であることなどの問題が生じる。
これに対して、二次元コードCがコード形成部21に形成された凹凸よりなるものであれば、チューブ本体11内に収容された試料の色に関わらず、当該二次元コードCを確実に読み取ることができ、しかも、チューブ本体11内に収容された試料の色などを試料収容用チューブ10の底面から観察することができる。
また、二次元コードCの具体的な例としては、国際規格化されたコードではデータマトリックスコード、その他のコードではベリコードなどが挙げられる。
【0018】
図5にも示すように、コード形成部21の表面には、二次元コードCが形成された領域を囲繞するコード保護用突出部22が形成されている。図示の例では、コード保護用突出部22は、コード形成部21の表面における周縁に沿って形成されている。このようなコード保護用突出部22を形成することにより、例えば試料収容用チューブ10がチューブラックに収納されたときに、二次元コードCが形成されたコード形成部21の表面が、チューブラックに接触することが回避されるため、二次元コードCの損傷を防止することができる。
コード保護用突出部22におけるコード形成部21の表面からの突出高さは、0.2~1.0mmであることが好ましい。この突出高さが過小である場合には、二次元コードCの損傷を防止することが困難となることがある。一方、この突出高さが過大である場合には、例えば自動取り出し装置などによって試料収容用チューブ10をチューブラックから取り出す際に、コード保護用突出部22が座屈するなどのトラブルが生じる虞がある。
【0019】
この例の連結部25は、その外周面がコード形成部21側の基端から先端に向かうに従って小径となるテーパ状に形成されて構成されている。また、連結部25の外周面には、チューブ本体11における筒状部16の内周面に形成された係合部17(
図3参照)と互いに嵌合する被係合部26が形成されている。図示の被係合部26は、連結部25の外周面の周方向に全周にわたって伸びる、断面の輪郭が円弧状の凹所(溝)によって構成されている。
【0020】
蓋材30は、チューブ本体11の筒孔に挿入される円筒状の閉栓部31と、この閉栓部31の一端に形成された鍔部32とにより構成されている。閉栓部31は、チューブ本体11における胴部12の内径に適合する外径を有する。この閉栓部31がチューブ本体11の筒孔に挿入されることにより、チューブ本体11の開口が液密に閉塞される。
また、蓋材30は、鍔部32の周縁部から伸びる接続部35を介してチューブ本体11の開口縁部に一体に接続されている。
【0021】
図1に示す試料収容用チューブ10の具体的な寸法の一例を示すと、チューブ本体11は、内容積が2mL、全長が41mm、開口から底面までの長さが34.4mm、胴部12の内径が8.6mm、筒状部16の内径が5.8mmであり、付属部材20は、コード形成部21の直径が8mm、二次元コードCが形成される領域の寸法が4mm×4mm、連結部25の長さが5.5mm、連結部25の先端の外径が5.65mm、コード保護用突出部22の高さが0.2mmである。
また、二次元コードCとして例えばデータマトリックスコードを使用する場合には、シンボルサイズが12セル×12セル、セルサイズが約0.4mmである。
【0022】
上記の試料収容用チューブ10においては、二次元コードCが形成された付属部材20が、試料が収容されるチューブ本体11と別体であることにより、成形によって、付属部材20を単独で製造することができる。そのため、チューブ本体11の底壁部15がテーパ状であっても、二次元コードCを形成すべき面領域の平坦性が十分に確保され、その結果、当該二次元コードCを確実に読み取ることができる。
また、チューブ本体11における筒状部16の内周面および付属部材20における連結部25の外周面に、互いに嵌合する係合部17および被係合部26が形成されているため、付属部材20がチューブ本体11から脱落することを防止することができる。
【0023】
以上、本発明の試料収容用チューブの実施形態の一例について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば本発明の試料収容用チューブは、マイクロチューブ以外のチューブ、例えば内容積が15mLのチューブに適用することができる。
また、蓋材は、チューブ本体に一体に設けられている必要はなく、チューブ本体と分離可能に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 試料収容用チューブ
11 チューブ本体
12 胴部
13 第1のフランジ
14 第2のフランジ
15 底壁部
16 筒状部
17 係合部
20 付属部材
21 コード形成部
22 コード保護用突出部
25 連結部
26 被係合部
30 蓋材
31 閉栓部
32 鍔部
35 接続部
C 二次元コード