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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】ポリ乳酸樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20220304BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20220304BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20220304BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20220304BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20220304BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20220304BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20220304BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220304BHJP
【FI】
C08J7/00 301
C08J3/20 Z CFD
C08J3/22
C08J5/00
C08L67/04 ZBP
C08L71/00 Y
C08K5/20
C08L101/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017555126
(86)(22)【出願日】2016-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2016086513
(87)【国際公開番号】W WO2017099168
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2015239688
(32)【優先日】2015-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316000792
【氏名又は名称】Bioworks株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】寺田 貴彦
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-105306(JP,A)
【文献】特開2014-051646(JP,A)
【文献】特開2010-126643(JP,A)
【文献】特開2009-144127(JP,A)
【文献】国際公開第2006/121056(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/016197(WO,A1)
【文献】特開2014-093487(JP,A)
【文献】特開2008-302615(JP,A)
【文献】特開2010-280910(JP,A)
【文献】特開2008-174735(JP,A)
【文献】特開2015-165016(JP,A)
【文献】特開2015-044984(JP,A)
【文献】特開2009-155489(JP,A)
【文献】特開2004-115051(JP,A)
【文献】特開2013-122022(JP,A)
【文献】特開2014-51642(JP,A)
【文献】特開2015-44984(JP,A)
【文献】特開2016-108511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B29C71/04
C08J3/00-5/02
5/12-5/22
7/00-7/02
7/12-7/18
99/00
C08L67/04
C08L71/00
C08K5/20
C08L101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.0重量部を含む混合物を溶融後、20~40℃に冷却し、その後46~70℃に加熱することで得られるポリ乳酸樹脂組成物であって、下記(a)および(b)に示す条件を満たすポリ乳酸樹脂組成物。
(a)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(b)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が50~70%
【請求項2】
L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.5重量部を含む混合物を溶融後、20℃未満に冷却し、その後46~55℃に加熱することで得られるポリ乳酸樹脂組成物であって、下記(c)および(d)に示す条件を満たすポリ乳酸樹脂組成物。
(c)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(d)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が50~70%
【請求項3】
L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.0重量部を含む混合物を溶融後、20~40℃に冷却し、その後46~60℃に加熱することで得られるポリ乳酸樹脂組成物であって、下記(e)および(f)に示す条件を満たすポリ乳酸樹脂組成物。
(e)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(f)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が35~55%
【請求項4】
L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.5重量部を含む混合物を溶融後、20℃未満に冷却し、その後46~55℃に加熱することで得られるポリ乳酸樹脂組成物であって、下記(g)および(h)に示す条件を満たすポリ乳酸樹脂組成物。
(g)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(h)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が35~55%
【請求項5】
前記冷却後かつ加熱前におけるポリ乳酸樹脂組成物を、毎分10℃の昇温速度で示差走査熱量測定することで得られるポリL-乳酸の冷結晶化発熱量が、16J/g以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項6】
前記加熱後におけるポリ乳酸樹脂組成物を、毎分10℃の昇温速度で示差走査熱量測定することで得られるポリL-乳酸の冷結晶化発熱量が、5J/g以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項7】
ポリL-乳酸の結晶粒径が100nm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項8】
可塑剤(B)の25℃での屈折率が、1.42~1.48であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項9】
可塑剤(B)が、ポリエチレングリコール、ヒマシ油系脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種または混合物であることを特徴とする請求項8に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項10】
滑剤(C)が、エチレンビスヒドロシキステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アマイド、からなる群から選択された少なくとも1種または混合物であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項11】
さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンジアセトモノ脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種または混合物を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項12】
θ/2法で測定された純水の接触角が60°以下であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項13】
ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物を作製するために、ポリL-乳酸(A)100重量部に対して、可塑剤(B)と滑剤(C)の合計で25から100重量部を混練してなる濃縮されたポリ乳酸樹脂組成物(D)を予め作製して供することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項14】
前記濃縮されたポリ乳酸樹脂組成物(D)は、さらにL-乳酸純度が98mol%未満であるポリL-乳酸を含んでいることを特徴とする請求項13に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物、その組成物からなる成形品に関する。より詳しくは、高い結晶性と、透明性とを共存できるポリ乳酸樹脂組成物、その組成物からなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な筺体、容器、包装の分野でプラスチックが使用されているが、特に食品容器など内容物が視認できることが求められる容器には透明なプラスチック材料が使用されている。透明なプラスチック材料としては、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどが使用されている。
【0003】
しかし、昨今の食文化の変化などから、プラスチック容器に内容物を入れたまま電子レンジで加温するなど、プラスチックの耐熱性に対するニーズが高まっている。透明性の高いポリエチレンテレフタレートの耐熱性は60℃程度までであり、レンジ等で加温することができない。また、延伸したポリスチレン(OPS)の耐熱性は80℃なので、レンジ加熱される容器の上蓋などに使用されているが、内容物が油分を含んでいたり、加熱時間が長い場合等は容易に80℃超えたりすることがあり、OPSの容器が破損することがある。
【0004】
これに対して耐熱性を高めるべく、ポリエチレンテレフタレートを延伸したり(O-PET)、不透明なポリプロピレンを透明核剤によって透明化したりすることが検討されているが、いずれも耐熱性は110℃以下、透明性を示すヘイズ値は10%以上であり、透明性と耐熱性を共存できる汎用性プラスチック材料はない。
【0005】
一方、透明性の高いプラスチック材料としてポリ乳酸樹脂がある。ポリ乳酸樹脂は半結晶性の材料であるが、非常に結晶化し難い材料であるので、通常の成形サイクルでは非晶であり50℃程度の耐熱性しかない。非晶のポリ乳酸を熱処理(アニール)したり、80℃超える高温の金型で成形したりすることで結晶性を高めることができるが、結晶化を高めると、通常、白濁して乳白色になって不透明化してしまう。また、金型内での結晶化は、軟質化された樹脂の成形と結晶化が競争的に起こるので、成形品のエッジが設計よりも丸くなるように型取りが悪くなるなど成形性にも課題がある。
【0006】
特許文献1には、ポリ乳酸など脂肪族ポリエステルに、脂肪酸カルボン酸アミドを添加する方法が記載されている。しかし、結晶化度は33%に到達するもののヘイズは6.5%であり、十分な結晶化度と透明性を兼ね備える結果は得られていない。
【0007】
特許文献2には、ポリ乳酸樹脂にポリエチレングリコールを配合する方法が記載されている。しかし、流動性改善についての記載はあるが、結晶性向上や透明性維持に関する記載はない。
【0008】
特許文献3には、ポリ乳酸樹脂にヒマシ油系脂肪酸エステルを添加する方法が記載されている。しかし、熱処理前の成形品の結晶化度は30%未満と低く、またヘイズ値においても全て8%を超えており、十分な結晶化度と透明性を兼ね備える結果は得られていない。
【0009】
特許文献4には、ポリ乳酸樹脂を含む生分解性樹脂に、可塑剤、脂肪酸アミドを含む結晶核剤を配合し、結晶性と透明性を改善する方法が記載されている。しかし、この場合も30%を超える結晶化度と、5%以下のヘイズ値を達成している例はなく、十分な結晶化度と透明性を兼ね備える結果は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平9-278991号公報
【文献】特開2012-158658号公報
【文献】特開2006-143829号公報
【文献】特開2007-262422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、結晶化度が良好で、透明性に優れたポリ乳酸樹脂組成物または成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明者は、ポリL-乳酸樹脂に特定の可塑剤および滑剤を混合したものを溶融後に冷却し、さらに加熱する工程を施し、ポリ乳酸樹脂組成物を得る手段において、ポリL-乳酸におけるL-乳酸の光学純度、可塑剤および滑剤の配合量、冷却温度、加熱温度の全てを特性の条件に制御することによって、透明かつ結晶化度の高いポリ乳酸樹脂組成物とすることができることを見出した。この手段により溶融後の冷却過程で透明を保ちながら緩い結晶系を構築し、さらに温度条件を守って加熱することで結晶の再配列、再結晶化が起こり、透明性を保ちながら、高い耐熱性を発現する高い結晶化度を実現できる。本発明はこれらの知見に基づいて完成された。本発明は、以下のとおりである。
【0013】
すなわち、本発明の第1の態様に係るポリ乳酸樹脂組成物は、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.0重量部を含む混合物を溶融後、20~40℃に冷却し、その後46~70℃に加熱してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、下記(a)および(b)に示す条件を満たすことを特徴とする。
(a)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(b)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が50~70%
【0014】
本発明の第2の態様に係るポリ乳酸樹脂組成物は、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.5重量部を含む混合物を溶融後、20℃未満に冷却し、その後46~80℃に加熱してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、下記(c)および(d)に示す条件を満たすことを特徴とする。
(c)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(d)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が50~70%
【0015】
本発明の第3の態様に係るポリ乳酸樹脂組成物は、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.0重量部を含む混合物を溶融後、20~40℃に冷却し、その後46~60℃に加熱してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、下記(e)および(f)に示す条件を満たすことを特徴とする。
(e)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(f)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が35~55%
【0016】
本発明の第4の態様に係るポリ乳酸樹脂組成物は、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.5重量部を含む混合物を溶融後、20℃未満に冷却し、その後46~80℃に加熱してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、下記(g)および(h)に示す条件を満たすことを特徴とする。
(g)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(h)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が35~55%
【0017】
また、上述の各態様に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記冷却後かつ加熱前におけるポリ乳酸樹脂組成物を、毎分10℃の昇温速度で示差走査熱量測定することで得られるポリL-乳酸の冷結晶化発熱量が、16J/g以上であることが好ましい。
【0018】
また、上述の各態様に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記加熱後におけるポリ乳酸樹脂組成物を、毎分10℃の昇温速度で示差走査熱量測定することで得られるポリL-乳酸の冷結晶化発熱量が、5J/g以下であることが好ましい。
【0019】
また、上述の各態様に係るポリ乳酸樹脂組成物において、ポリL-乳酸の結晶粒径が100nm以下であることが好ましい。
【0020】
また、上述の各態様に係るポリ乳酸樹脂組成物において、可塑剤(B)の25℃での屈折率が、1.42~1.48であることが好ましい。
【0021】
また、上述の各態様に係るポリ乳酸樹脂組成物において、可塑剤(B)が、ポリエチレングリコール、ヒマシ油系脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種または混合物であることが好ましい。
【0022】
また、上述の各態様に係るポリ乳酸樹脂組成物において、滑剤(C)が、エチレンビスヒドロシキステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アマイド、からなる群から選択された少なくとも1種または混合物であることが好ましい。
【0023】
また、上述の各態様に係るポリ乳酸樹脂組成物において、さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンジアセトモノ脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種または混合物を含むことが好ましい。
【0024】
また、上述の各態様に係るポリ乳酸樹脂組成物において、θ/2法で測定された純水の接触角が60°以下であることが好ましい。
【0025】
また、上述の各態様に係るポリ乳酸樹脂組成物において、ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物を作製するために、ポリL-乳酸(A)100重量部に対して、可塑剤(B)と滑剤(C)の合計で25から100重量部を混練してなる濃縮されたポリ乳酸樹脂組成物(D)を予め作製して供することが好ましい。
【0026】
また、上述の濃縮されたポリ乳酸樹脂組成物(D)において、さらにL-乳酸純度が98mol%未満であるポリL-乳酸を含んでいることが好ましい。
【0027】
また、本発明の他の態様に係るポリ乳酸樹脂成形品は、前述のポリ乳酸樹脂組成物からなり、さらに130~160℃に加熱して軟化させた後、金型内で成形冷却してなることを特徴とする。
【0028】
なお、金型の温度が30~60℃であることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、結晶化度が良好で、透明性に優れたポリ乳酸樹脂組成物または成形品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態に係るポリ乳酸樹脂組成物およびポリ乳酸樹脂成形品について詳細に説明する。なお、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0031】
[ポリ乳酸]
本実施の形態で用いられるポリL-乳酸は、L-乳酸を主たる構成成分とするポリマーである。ポリL-乳酸は、L-乳酸の光学異性体であるD-乳酸を含有するが、本実施の形態の第1及び第2のポリ乳酸樹脂組成物におけるポリL-乳酸は、ポリ乳酸重合体の全乳酸成分中のL-乳酸ユニットの含有割合が99mol%以上である。また、本実施の形態に係る第3及び第4のポリ乳酸樹脂組成物におけるポリL-乳酸は、ポリ乳酸重合体の全乳酸成分中のL-乳酸ユニットの含有割合が98mol%以上、99mol%未満のものを使用する。
【0032】
本実施の形態で用いられるポリL-乳酸は、乳酸以外の他の単量体を含んでいてもよいが、他の単量体を含むと結晶性が著しく阻害されるので、他の単量体の共重合量は、ポリL-乳酸系の単量体全体に対し、0~3mol%であることが好ましく、さらに0~2モル%であることがより好ましい。
【0033】
他の単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのグリコール類、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4´-ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトンなどのラクトン類を使用することができる。
【0034】
本実施の形態で用いられるポリL-乳酸の重量平均分子量は、実用的な生産性や物性を考慮すると、5万~50万であることが好ましく、より好ましくは10万~25万である。なお、ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリスチレン換算により計算した分子量をいう。
【0035】
また、本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリL-乳酸以外の樹脂を含んでもよい。含有量は、総質量に対して0~70質量%が好ましく、より好ましくは0~50質量%、さらに好ましくは0~30質量%である。
【0036】
ポリL-乳酸以外の樹脂としては、例えば、ポリD-乳酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が使用される。
【0037】
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物は、樹脂組成物中に含まれるラクチド等の低分子乳酸成分が0~0.5質量%であることが好ましい。より好ましくは0~0.3質量%である。0.5質量%を超えると、ポリ乳酸樹脂組成物の透明性に悪影響を及ぼすだけでなく、経時的にポリL-乳酸樹脂の加水分解を進行させ、強度その他の特性が低下することが懸念される。
【0038】
[可塑剤]
本実施の形態で用いられる可塑剤は、ポリ乳酸樹脂組成物の成形加工を容易にするほか、柔軟性を付加させることができる。これらの効果は、可塑剤の添加によるガラス転移温度および分子鎖の運動性の向上に起因した現象である。添加した可塑剤がポリ乳酸高分子鎖間に入り込むことにより、可塑剤の極性部と高分子の極性部との会合が起き、高分子の極性部が遮断され、分子鎖のミクロブラウン運動を妨げている高分子同士の相互作用を高分子と可塑剤間の相互作用で置き換えることによって、高分子鎖間の相互作用の緩和が起こる。この働きによって、分子鎖同士の間隔が広がり、絡み合いの解きほぐしが起こることで分子鎖の運動性が向上する。可塑剤の効果により分子運動性が向上し、より低温でのポリL-乳酸の結晶化が可能となる。
【0039】
ポリL-乳酸を溶融状態からある一定の温度へ急冷させ、静置場で結晶化処理される場合、形成される結晶構造はラメラ構造(折りたたみ鎖結晶)である。その際、結晶化処理を行う温度が、高分子の高次構造形成において最も基本的で重要なファクターとなる。すなわち、結晶の厚みは結晶化温度の上昇と共に増加することが知られており、より低温で結晶化させた方が、よりラメラ厚みの小さい結晶が形成される。
【0040】
これらのことにより、可塑剤により分子鎖の運動性が向上させ、より低温での結晶化が可能となることで、結晶の厚みは小さく、より透明な組成物を成形できることとなる。
【0041】
本発明者が鋭意検討した結果、可塑剤の配合量は、ポリL-乳酸100重量部に対して2.6~10重量部が好ましい。2.6重量部未満であれば、ポリL-乳酸の分子運動性向上の効果は小さく、十分に薄いラメラを形成する温度域では、実用的な結晶化速度が得られない。また、可塑化効果が小さいため、ポリ乳酸樹脂組成物も硬くてもろく、実用に耐えない。また、熱成形に供試するとき、軟化温度以上でも賦形し難く、部分的に融解が起こる温度域までの加熱が必要になってしまう。また、10重量部を超えると、ポリL-乳酸分子の会合遮断、絡み合いの解きほぐしだけでなく、結晶にも取り込まれるようにあり、かえって結晶化を阻害する。また、結晶化によりポリ乳酸樹脂組成物に溶けきれなくなり、ポリ乳酸樹脂組成物から浸出する(ブリード現象)懸念が増大する。
【0042】
また、本実施の形態で好適に使用される可塑剤は、少なくともその25℃での屈折率が、1.42~1.48であることが好ましい。ポリL-乳酸との相溶性によってもポリ乳酸樹脂組成物の透明性に影響を与えるが、ポリL-乳酸の屈折率である1.45との差を±0.03とすることで本発明のポリ乳酸樹脂組成物の透明性を一層向上させることができる。25℃での屈折率が1.42に満たない場合および1.48を超える場合は、ポリL-乳酸と可塑剤との屈折率の差が大きくなり、それに基づく光の散乱により樹脂組成物の透明性が低下しやすくなる。
【0043】
25℃での屈折率が、1.42~1.48を満たす可塑剤の例として、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸系ポリエステル、エポキシ化大豆油、アセチルクエン酸トリブチル、ポリヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、トリエチルヘキサン酸エリスリチル、乳酸オクチルドデシル、ポリエチレングリコール、ヒマシ油系脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0044】
なお、これらの中で、可塑剤(B)が、ポリエチレングリコール、ヒマシ油系脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種または混合物であることがより好ましい。これらは、25℃での屈折率が、1.42~1.48であるばかりでなく、ポリL-乳酸との相溶性が特に優れ、溶融状態から冷却、加熱され、ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化度が変わり、非晶部/結晶部の存在比率が変わったとしても不透明化したり、浸出したりすることがないため、より好適な可塑剤として使用される。
【0045】
また、これら可塑剤は、お互いの相溶性も良く、ポリL-乳酸に対して単体で加えられるだけでなく、2種類以上を混合して加えることができる。
【0046】
[滑剤]
本実施の形態で用いられる滑剤は、外部滑剤となってポリ乳酸樹脂組成物の成形加工時の離型を容易にするほか、内部滑剤となって分子の滑りを向上させ、分子絡み合いの解きほぐしも含めて分子鎖の運動性を向上することができる。そして、滑剤の効果により分子運動性が向上し、より低温でのポリL-乳酸の結晶化が可能となる。
【0047】
ポリL-乳酸を溶融状態からある一定の温度へ急冷し、静置場で結晶化処理する場合、形成される結晶構造はラメラ構造(折りたたみ鎖結晶)である。その際、結晶化処理を行う温度が、高分子の高次構造形成において最も基本的で重要なファクターとなる。すなわち、結晶の厚みは結晶化温度の上昇と共に増加することが知られており、より低温で結晶化させた方が、よりラメラ厚みの小さい結晶が形成される。
【0048】
これらのことより、滑剤により分子鎖の運動性が向上させ、より低温での結晶化が可能となることで、結晶の厚みは小さく、より透明な組成物を成形できる。
【0049】
また、本実施の形態で用いられる滑剤は、内部滑剤となって、ポリ乳酸樹脂組成物の混合時の混練等におけるせん断発熱を抑制し、混練前からポリL-乳酸に存在する結晶核を溶融させずに保つ核メモリー効果もあり、ポリL-乳酸の結晶化促進により効果的である。
【0050】
本発明者が鋭意検討した結果、滑剤は単独で使用するよりも可塑剤との併用で大きな効果を発現することがわかった。また、可塑剤との併用では、ポリL-乳酸100重量部に対して滑剤の配合量は0.3重量部以上であることが好ましい。0.3重量部未満であれば、ポリL-乳酸への内部滑剤としての分子運動性向上の効果は小さく、十分に薄いラメラを形成する温度域では、実用的な結晶化速度が得られない。また、滑剤の配合量は、ポリL-乳酸、可塑剤、滑剤を含む混合物を溶融後に冷却する温度にも依存することが明確となった。すなわち、溶融後の冷却温度が20~40℃の時は滑剤は1.0重量部以下、溶融後の冷却温度が20℃以下の時は滑剤は1.5重量部以下であることが好ましい。この範囲を超えると、ポリ乳酸樹脂組成物は溶融後の冷却時または加熱時に白濁し、不透明となる。
【0051】
なお、滑剤としては、エチレンビスヒドロシキステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アマイドからなる群から選択された少なくとも1種または混合物であることがより好ましい。これらは、ポリ乳酸樹脂組成物の高い透明性を維持しながら、内部滑剤としてポリL-乳酸の分子鎖運動性を高め、速やかなる結晶化に貢献する。また、これら滑剤は、お互いの相性も良く、ポリL-乳酸に対して単体で加えられるだけでなく、2種類以上を混合して加えることができる。
【0052】
[その他の添加剤]
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物は、さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンジアセトモノ脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種または混合物を含むことが好ましい。これらは、ポリ乳酸樹脂組成物またはポリ乳酸樹脂成形品の表面に親水性を付与することができる。プラスチックに発生する「曇り」は、基材表面へ微小な水滴が付着(結露)し、その水滴が光を散乱するために生じる。「曇り」を防止するには、水滴の発生を防止すれば良く、ポリ乳酸樹脂組成物に親水性を付与することで、ポリ乳酸樹脂組成物と水滴の接触角を小さくして、ポリ乳酸樹脂組成物上で水滴とせず、水の膜にしてしまう。ポリ乳酸樹脂組成物は、さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンジアセトモノ脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種または混合物を含むことでこれら効果が期待できる。
【0053】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンリシノール酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等が挙げられる。グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンヒドロキシステアリン酸エステル、グリセリンモノラウリン酸エステル、グリセリンオレイン酸エステル等が挙げられる。グリセリンジアセトモノ脂肪酸エステルとしては、グリセリンジアセトモノラウレートなどが挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンラウレート、ソルビタントリステアレート等が挙げられる。
【0054】
なお、本発明者が鋭意検討した結果、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンジアセトモノ脂肪酸エステルの配合量は、ポリL-乳酸100重量部に対して1~5重量部が好ましい。1重量部未満であれば、ポリ乳酸樹脂組成物表面への親水化の効果が小さく、また5重量部以上であれば、ポリL-乳酸結晶化を阻害し、また白濁してしまう。より好適には1~3重量部で使用される。
【0055】
なお、本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物が、さらにポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンジアセトモノ脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種または混合物を含んだときのθ/2法で測定された純水の接触角が60°以下であることが好ましい。ポリL-乳酸表面の純水の接触角は76°であるが、60°を超えると、ポリ乳酸樹脂組成物またはポリ乳酸樹脂成形品の表面は十分に親水化されず、微小な水滴の光散乱による曇りが生じる。
【0056】
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物は、上記の本発明の可塑剤、滑剤以外に、加水分解防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収材、顔料、抗菌剤、防かび剤、発泡剤、難燃剤などを、本発明の目的である結晶性や透明性を妨げない範囲で含有することができる。例えば、加水分解防止剤としては、ポリカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物が挙げられ、ジシクロヘキシルカルボジイミド又はジイソプロピルカルボジイミド等のモノカルボジイミドと有機ジイソシアネートとの反応により得られたポリカルボジイミド化合物等が挙げられる。加水分解防止剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物100重量部に対して、0.01~3重量部が好ましく、0.05~2重量部がさらに好ましい。
【0057】
[ポリ乳酸樹脂組成物の混合方法]
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)および滑剤(C)をまず混合することが必要である。各成分の混合は、公知公用の方法や混練技術を適用できる。例えば、2軸押出混練機を用いて、パウダー状若しくはペレット状のポリL-乳酸(A)を押出混練ペレット化する際に、可塑剤(B)および滑剤(C)を添加し、加熱・せん断を加え、混合して押出混練ペレット化することができる。2軸押出混練機への供給は、ポリL-乳酸と同時に可塑剤(B)および滑剤(C)をフィードすることもできるし、必要に応じてサイドフィードや液体注入ポンプを使用して供給することもできる。なお、2軸押出混練機の加熱温度は、スクリューの回転数にもよるが、140~240℃であることが好ましい。140℃未満では混合が不十分となり、240℃を超えると、ポリL-乳酸の熱分解が起こってしまう。また、スクリューの回転数は、100~500rpmであることが好ましい。100pm未満では混合が不十分となり、500rpmを超えると、ポリL-乳酸の熱分解が起こってしまう。
【0058】
2軸押出し混練機以外にも、バッチ式のニーダーや、ニーダールーダー、ニーダーでバッチ混練後に押出機でペレット化するなどの手法で混合できる。また、ポリL-乳酸、可塑剤(B)、滑剤(C)をブレンダーなどで一括混合した後、2軸押出機で組成物を加熱溶融しながら押出しペレット化することなどもできる。
【0059】
なお、ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)および滑剤(C)を規定の濃度で混合する以外にも、可塑剤(B)および滑剤(C)をポリL-乳酸(A)に高濃度に混合して得られた、ポリ乳酸樹脂組成物(D)を製造した後、そのポリ乳酸樹脂組成物(D)を、ポリL-乳酸(A)にドライブレンドしたり、加熱押出し混練等により希釈したりして製造することもできる。
【0060】
なお、可塑剤(B)および滑剤(C)をポリ乳酸樹脂組成物(D)として添加する場合、添加剤毎に混合しても良いし、2種類を同時に混合しても良い。また、ポリ乳酸樹脂組成物(D)における混合比率は、ポリL-乳酸(A)100重量部に対して、可塑剤(B)と滑剤(C)の合計で25から100重量部であることが好ましい。
【0061】
また、ポリ乳酸樹脂組成物(D)は本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物における規定の可塑剤(B)および滑剤(C)濃度よりも濃縮されているために、乾燥工程等で加熱され、ポリL-乳酸が高い結晶化度になった場合など、可塑剤(B)および滑剤(C)がブリードすることが懸念される。その場合は、ポリ乳酸樹脂組成物(D)が、L-乳酸純度が98mol%~99mol%または99mol%以上であるポリL-乳酸だけでなく、L-乳酸純度が98%未満であるポリL-乳酸を含むことで、ポリ乳酸樹脂組成物(D)において、より相溶性の高い非晶状態のポリL-乳酸が増え、可塑剤(B)および滑剤(C)のブリードを抑制することができる。よって、濃縮されたポリ乳酸樹脂組成物(D)においては、L-乳酸純度が98mol%未満であるポリL-乳酸を含んでいることが好ましい。
【0062】
なお、ポリ乳酸樹脂組成物(D)と、ポリL-乳酸(A)の配合比率は、ポリ乳酸樹脂組成物(D)/ポリL-乳酸(A)の重量比が1/3~1/20、好ましくは1/5~1/20、より好ましくは1/10~1/20である。
【0063】
[ポリ乳酸樹脂組成物の冷却方法]
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物を溶融した後に冷却するが、冷却温度と、ポリ乳酸樹脂組成物における成分組成に好適な関係があることを見出した。すなわち、冷却温度が20~40℃の場合、ポリL-乳酸(A)100重量部に対する滑剤(C)の好適な含有量が0.3~1.0重量部であり、溶融後の冷却温度が20℃未満の場合、好適な含有量は0.3~1.5重量部であることを見出した。冷却温度に関わらず、滑剤(C)の好適な含有量0.3重量部未満であれば、ポリL-乳酸への内部滑剤としての分子運動性向上の効果は小さく、十分に薄いラメラを形成する温度域では、実用的な結晶化速度が得られない。また、冷却温度20~40℃においてポリL-乳酸(A)100重量部に対する滑剤(C)の含有量が1.0重量部を超えた場合や、溶融後の冷却温度が20℃未満において滑剤(C)の含有量が1.5重量部を超えた場合は、冷却過程または冷却過程に続く加熱過程でポリ乳酸樹脂組成物が白濁してしまう。また、滑剤(C)の含有量に限らず、溶融後の冷却温度が40℃を超えた場合も、ポリ乳酸樹脂組成物は溶融後の冷却時または加熱時に白濁し、不透明となる。ポリL-乳酸、可塑剤、滑剤を含む混合物を溶融後に冷却する温度は、滑剤の配合量にも依存することが明確となった。
【0064】
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物における、ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物を溶融後に冷却する方法は、公知の成形方法、射出成形、押出し成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、異形押出し成形、インフレーション成形、プレス成形などの手法によって行うことができる。
【0065】
例えば、押出し成形機によるシート成形の場合、Tダイ法により溶融後に吐出された、ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物を、金属製冷却ロールで巻き取りながら冷却する。金属製冷却ロールの表面温度を制御することにより、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融後の冷却温度を20~40℃、あるいは20℃未満に制御することで実現できる。
【0066】
なお、上記のシート成形の場合、必要に応じて延伸加工することもできる。また、必要に応じてシート表面に帯電防止性、防曇性、粘着性、ガスバリヤー性、密着性および易接着性などの機能を有する層をコーティングにより形成することができる。また、必要に応じて、他樹脂および他シートをラミネートすることにより、帯電防止性、防曇性、粘着性、ガスバリヤー性、密着性および易接着性などの機能を有する層を形成することができる。
【0067】
また、射出成形機による成形の場合、ノズルより溶融後に吐出された、ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物を、金属製金型内で成形しながら冷却する。金属製金型の温度を制御することにより、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融後の冷却温度を20~40℃、あるいは20℃未満に制御することで実現できる。
【0068】
[ポリ乳酸樹脂組成物の加熱方法]
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物を溶融、それに続く冷却後に、加熱するが、加熱温度と、ポリ乳酸樹脂組成物における成分組成および前記冷却温度に好適な関係があることを見出した。
【0069】
すなわち、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)100重量部に対して、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.0重量部を含む混合物を溶融後、20~40℃に冷却した場合、それに続く好適な加熱温度は、46~70℃である。L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)100重量部に対して、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.5重量部を含む混合物を溶融後、20℃未満に冷却した場合、それに続く好適な加熱温度は、46~80℃である。L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)100重量部に対して、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.0重量部を含む混合物を溶融後、20~40℃に冷却した場合、それに続く好適な加熱温度は、46~60℃である。L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)100重量部に対して、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.5重量部を含む混合物を溶融後、20℃未満に冷却した場合、それに続く好適な加熱温度は、46~80℃である。
【0070】
いずれの場合も加熱温度が、その下限値よりも小さい場合は、ポリL-乳酸の分子運動性は小さいままで向上の効果は小さく、実用的な結晶化速度が得られない。また、いずれの場合も加熱温度が、その上限値を超えた場合は、ポリL-乳酸の分子運動性が大きいために、十分に小さいサイズであった結晶も成長して、より大きなラメラの形成、さらには球晶を形成したり、新たに形成した結晶核を中心に大きなサイズの結晶を形成したりするため、ポリ乳酸樹脂組成物が白濁し、不透明化することとなる。
【0071】
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物における、ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物を溶融後に冷却し、さらに加熱する方法は、例えば、公知の成形方法、射出成形、押出し成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、異形押出し成形、インフレーション成形、プレス成形などの手法の後に、オンライン、オフラインでの加熱工程を設けることで実施できる。
【0072】
例えば、押出し成形機によるシート成形の場合、Tダイ法により溶融後に吐出された、ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物を、金属製冷却ロールで巻き取りながら冷却した後に、恒温槽で加熱することで実現できる。また、金属製冷却ロールでの冷却の後段に設置された加熱ロール上を搬送させることによって加熱することができる。加熱ロールの表面温度を制御することにより、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融、冷却後の加熱温度を制御することで、ポリ乳酸組成物の加熱温度を46~70℃など好適な温度域に加熱することができる。
【0073】
[ポリ乳酸樹脂組成物のヘイズ]
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物のヘイズは5%以下であることが好ましい。ヘイズを5%以下とすることで、ポリエチレンテレフタレートや延伸ポリスチレン(OPS)のと同等の十分な透明性を実現できる。なお、本発明でいうヘイズは、厚み0.3mmのポリ乳酸樹脂組成物をJIS K7136に準拠する方法で測定した時の値を言い、厚み0.3mmと異なる場合は、厚み0.3mmに換算した場合の換算ヘイズ値であり、H0.3(%)=H×0.3/d(H0.3:0.3mm厚み換算ヘイズ値(%)、H:サンプルのヘイズ実測値(%)、d:ヘイズ測定部のサンプル厚み(mm))で定義される式により得られる換算ヘイズ値とする。本実施の形態では、この厚み0.3mmの時のヘイズ値が5%以下であることが好ましい。
【0074】
[ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化度]
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物の結晶化度は、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.0重量部を含む混合物を溶融後に冷却し、その後加熱したポリ乳酸樹脂組成物においては、50~70%であることが好ましい。また、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.0重量部を含む混合物を溶融後に冷却し、その後加熱したポリ乳酸樹脂組成物においては、35~55%であることが好ましい。ポリL-乳酸は半結晶性の高分子材料であり、結晶部分と非晶部分が共存しているが、この範囲の結晶化度を保てば、ガラス転移温度を超えて、非晶部分がゴム状態になり軟化しても、ポリ乳酸樹脂組成物はほぼ変形することなく、100℃超える高温まで耐えることができる。なお、本実施の形態の結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、ポリ乳酸樹脂組成物を10℃/minの速度で昇温した時の結晶化熱量(ΔHc)および融解熱量(ΔHm)を測定し、下式によって計算した結晶化度のことを言う。
結晶化度(%)=(融解熱量-結晶化熱量)/93×100
【0075】
[ポリ乳酸樹脂組成物の結晶粒径]
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物の結晶粒径は、100nm以下であることが好ましい。結晶粒径は、100nm以下であれば、十分に可視光よりも小さく、良好な透明性を保ちながら、耐熱性に寄与する結晶を実現することができる。なお、本実施の形態の結晶粒径は、広角X線回折透過法によって測定した回折プロファイルを、Scherrer法により解析して求めた値である。
【0076】
[ポリ乳酸樹脂成形品]
上述の方法で得られたポリ乳酸樹脂組成物を成形し、本実施の形態のポリ乳酸樹脂成形品を得る方法について以下に説明する。
【0077】
本実施の形態でいう成形品とは、容器、袋、チューブ、カップ、ボトル、トレーなどを包含し、その形状、大きさ、厚みなどに関して制限はない。特に、ブリスターパック、食品トレー、お弁当箱や飲料カップなどの容器類、その他各種包装用の成形体などを挙げることができる。
【0078】
成形方法としては、真空成形、真空圧空成形、熱板成形、プラグアシスト成形、ストレート成形、フリードローイング成形、プラグアンドリング成形、スケルトン成形などの各種成形方法を適用できる。
【0079】
なお、本実施の形態に係るポリ乳酸樹脂成形品は、自己消火性を有しており、炎にさらされる間は燃えるが、炎から離されれば速やかに消火する性質を有している。
【0080】
本実施の形態のポリ乳酸樹脂成形品においては、まず本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物を加熱軟化させた後、金型内で成形冷却して得られるが、前記加熱軟化させる温度は、130~160℃であることが好ましい。この温度は範囲であれば、高い結晶化度を保持したままでも、非晶部分の軟化により、十分に成形可能な弾性率まで低下する。本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物は既に高い結晶化度を有しているので、130℃未満の加熱であれば、ポリ乳酸樹脂組成物の軟化が不十分であるため、金型形状に十分に変形できないため、成形性が悪くなる。また、160℃超えると、結晶の融解も同時に起こるために、ポリ乳酸樹脂成形品の結晶化度が成形過程で低下し、ひいては耐熱性の低下につながることになる。
【0081】
本実施の形態のポリ乳酸樹脂成形品においては、ポリ乳酸樹脂組成物を加熱軟化させた後、金型内で成形冷却して得られるが、本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物は既に高い結晶化度を有し、130~160℃の範囲で加熱されても依然として高い結晶化度を保っているので、100℃以下に冷却されれば、変形なく離型することができるとともに、金型内で結晶化度を加温によって高める必要もないため、ガラス転移温度以下の金型、例えば20℃程度の金型温度であっても良い。
【0082】
しかしながら、ポリ乳酸樹脂組成物の加熱温度と加熱時間によっては、ポリL-乳酸の結晶構造がわずかに乱れたディスオーダー型結晶になることがある。これは、通常結晶より低い耐熱性を有するため、ポリ乳酸樹脂成形品を成形する過程において、加熱後に金型温度を30~60℃に設定することが好ましい。これにより、ポリL-乳酸の結晶構造が、より耐熱性の高い結晶構造へと転移する。
【実施例
【0083】
以下、各実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。また、以下の各実施例および各比較例に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造条件や特性について表1、表2に示す。
【0084】
[実施例1]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0085】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0086】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0087】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.5%であった。また、DSCより測定された結晶化度は52.6%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0088】
また、このポリ乳酸組成物の燃焼性を確認したところ、炎にさらされる間は燃えるが、炎から離されれば1秒もかけずに速やかに消火した。つまり、実施例のポリ乳酸樹脂組成物は、自己消火性を有している。
【0089】
[実施例2]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)10重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度150-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0090】
次に、このペレットをシリンダー温度190℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0091】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0092】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.8%であった。また、DSCより測定された結晶化度は51.5%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0093】
[実施例3]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)3重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0094】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0095】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0096】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.2%であった。また、DSCより測定された結晶化度は55.0%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0097】
また、このポリ乳酸組成物を切り出し、重ねて試料ホルダーに固定した後、ホルダーを回転しながら広角X線回折透過法により回折プロファイルを測定した。そのプロファイルのポリL-乳酸(203)面の結晶ピークを用いてScherrer式により解析したところ、結晶粒子径は16nmであった。
【0098】
[比較例1]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)12重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度150-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0099】
次に、このペレットをシリンダー温度185℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0100】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0101】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.9%であったが、DSCより測定された結晶化度は41.1%であり、50%を下回った。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、80℃に加熱によって自重で変形した。透明性は得られたが、十分な耐熱性は得られなかった。
【0102】
[比較例2]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)2.5重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度150-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0103】
次に、このペレットをシリンダー温度210℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0104】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0105】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.1%であったが、DSCより測定された結晶化度は35.8%であり、50%を下回った。また、非常に剛直で硬くてもろかった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、70℃に加熱によって自重で変形した。透明性は得られたが、十分な耐熱性は得られなかった。
【0106】
[実施例4]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.3重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0107】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0108】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0109】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.1%であった。また、DSCより測定された結晶化度は51.2%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0110】
[実施例5]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)1.0重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0111】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0112】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0113】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.3%であった。また、DSCより測定された結晶化度は60.4%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0114】
[比較例3]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.2重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0115】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0116】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0117】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示していたが、少し白濁が認められた。ヘイズ値は7.8%であった。また、DSCより測定された結晶化度は30.1%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、70℃に加熱によって自重で変形した。十分な透明性、耐熱性は得られなかった。
【0118】
[比較例4]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)1.2重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0119】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0120】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0121】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示していたが、少し白濁が認められた。ヘイズ値は6.3%であった。また、DSCより測定された結晶化度は58.0%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、高い結晶化度を得られたものの、十分な透明性は得られなかった。
【0122】
[実施例6]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0123】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0124】
さらに、このシートを、60℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0125】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.6%であった。また、DSCより測定された結晶化度は55.2%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0126】
[実施例7]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0127】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0128】
さらに、このシートを、70℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0129】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.1%であった。また、DSCより測定された結晶化度は61.4%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0130】
[比較例5]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0131】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0132】
さらに、このシートを、80℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0133】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示していたが、少し白濁していた。ヘイズ値は8.9%であった。また、DSCより測定された結晶化度は62.4%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、高い結晶化度を得られたものの、十分な透明性は得られなかった。
【0134】
[比較例6]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0135】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0136】
さらに、このシートを、45℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0137】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.0%であったが、DSCより測定された結晶化度は27.1%であり、50%を下回った。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、60℃に加熱によって自重で変形した。透明性は得られたが、十分な耐熱性は得られなかった。
【0138】
[実施例8]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0139】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、40℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0140】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0141】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は3.8%であった。また、DSCより測定された結晶化度は54.4%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0142】
[比較例7]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0143】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、53.7℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0144】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0145】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示していたが、少し白濁が認められた。ヘイズ値は7.2%であった。また、DSCより測定された結晶化度は53.0%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、高い結晶化度を得られたものの、十分な透明性は得られなかった。
【0146】
[実施例9]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0147】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、15℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0148】
さらに、このシートを、80℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0149】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.3%であった。また、DSCより測定された結晶化度は57.8%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0150】
[実施例10]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)1.5重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0151】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、15℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0152】
さらに、このシートを、55℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0153】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.5%であった。また、DSCより測定された結晶化度は61.2%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0154】
[比較例8]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0155】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、15℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0156】
さらに、このシートを、90℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0157】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示していたが、白濁が認められた。ヘイズ値は14.84%であった。また、DSCより測定された結晶化度は59.5%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、高い結晶化度を得られたものの、十分な透明性は得られなかった。
【0158】
[実施例11]
滑剤としてN-ステアリルエルカ酸アミド(ニッカアマイドSE、日本化成(株)製)0.53重量部を使用した以外は、実施例1と同じ組成、条件でシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観をしめしており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.4%であった。また、DSCより測定された結晶化度は55.0%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0159】
[実施例12]
滑剤としてN-ステアリルステアリン酸アミド(ニッカアマイドS、日本化成(株)製)0.53重量部を使用した以外は、実施例1と同じ組成、条件でシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観をしめしており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.2%であった。また、DSCより測定された結晶化度は54.5%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0160】
[実施例13]
可塑剤としてヒマシ油系脂肪酸エステル(リックサイザー:C-101、伊藤製油(株)製)5.2重量部を使用した以外は、実施例1と同じ組成、条件でシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観をしめしており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.4%であった。また、DSCより測定された結晶化度は61.2%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0161】
[実施例14]
可塑剤としてヒマシ油系脂肪酸エステル(リックサイザー:C-101、伊藤製油(株)製)3重量部と、ポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)3重量部を使用した以外は、実施例1と同じ組成、条件でシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観をしめしており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.1%であった。また、DSCより測定された結晶化度は60.2%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0162】
[実施例15]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.0重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)1.0重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0163】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、10℃に設定されたロールにより冷却し、さらに65℃に設定したロールで加熱して、厚さ0.3mmのシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0164】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.1%であった。また、DSCより測定された結晶化度は57.8%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0165】
[実施例16]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.0重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)1.0重量部、脂肪酸グリセロールエステル(和光純薬工業(株))3重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)と、グリセリン脂肪酸エステルを含む混合物をペレット状で得た。
【0166】
次に、このペレットをシリンダー温度190℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、10℃に設定されたロールにより冷却し、さらに65℃に設定したロールで加熱して、厚さ0.3mmのシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度、接触角を測定した。
【0167】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.1%であった。また、DSCより測定された結晶化度は57.8%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0168】
また、このシートの表面の純水の接触角はθ/2法で測定したところ、50°であった。ポリL-乳酸単体からなるシートの純水の接触角は78°であったので、この組成によって表面は親水性に改善されており、防曇などの効果が向上した。
【0169】
[実施例17]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:3100HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.0重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.8重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0170】
次に、このペレットをシリンダー温度170-180℃に、金型温度を20℃に設定した射出成形機にて、厚さ3mmの平板状成形品を得た。
【0171】
さらに、この成形品を、55℃の恒温槽で1昼夜放置して、平板状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0172】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、透明であった。0.3mm換算のヘイズ値は4.5%であった。また、DSCより測定された結晶化度は59.8%であった。このポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0173】
[実施例18]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:4032D、NatureWorks社製、L-乳酸純度:98~99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0174】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、25℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0175】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0176】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.8%であった。また、DSCより測定された結晶化度は40.5%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、120℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0177】
[実施例19]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:4032D、NatureWorks社製、L-乳酸純度:98~99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)10重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度150-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0178】
次に、このペレットをシリンダー温度190℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、25℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0179】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0180】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は3.6%であった。また、DSCより測定された結晶化度は39.7%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、120℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0181】
[実施例20]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:4032D、NatureWorks社製、L-乳酸純度:98~99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)3重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0182】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、25℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0183】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0184】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.1%であった。また、DSCより測定された結晶化度は38.7%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、120℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0185】
[実施例21]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:4032D、NatureWorks社製、L-乳酸純度:98~99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.3重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0186】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0187】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0188】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.1%であった。また、DSCより測定された結晶化度は35.8%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、120℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0189】
[実施例22]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:4032D、NatureWorks社製、L-乳酸純度:98~99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)1.0重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0190】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、25℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0191】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0192】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.0%であった。また、DSCより測定された結晶化度は49.9%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、120℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0193】
[実施例23]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:4032D、NatureWorks社製、L-乳酸純度:98~99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0194】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、25℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0195】
さらに、このシートを、60℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0196】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.3%であった。また、DSCより測定された結晶化度は45.0%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、120℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0197】
[実施例24]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:4032D、NatureWorks社製、L-乳酸純度:98~99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0198】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、40℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0199】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0200】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.6%であった。また、DSCより測定された結晶化度は37.6%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、120℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0201】
[実施例25]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:4032D、NatureWorks社製、L-乳酸純度:98~99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.53重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0202】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、15℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0203】
さらに、このシートを、80℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0204】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.7%であった。また、DSCより測定された結晶化度は54.4%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0205】
[実施例26]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:4032D、NatureWorks社製、L-乳酸純度:98~99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)4.7重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)1.5重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0206】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、15℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0207】
さらに、このシートを、55℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0208】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.1%であった。また、DSCより測定された結晶化度は50.2%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0209】
[実施例27]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)56重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)10.7重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、ポリL-乳酸(A)100重量部に対して、可塑剤(B)、滑剤(C)の合計で66.7重量部を含む濃縮されたポリ乳酸樹脂組成物(D)をペレット状で得た。
【0210】
次に、このポリ乳酸樹脂組成物(D)12.5重量部に対して、ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)87.5重量部を乾式で混合し、シリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、32.5℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0211】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0212】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.6%であった。また、DSCより測定された結晶化度は52.2%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0213】
[実施例28]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)60重量部、ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2003D、NatureWorks社製、L-乳酸純度<98mol%)40重量部、可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)84重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)16重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が98mol%未満のポリL-乳酸を含むポリL-乳酸(A)100重量部に対して、可塑剤(B)、滑剤(C)の合計で100重量部を含む濃縮されたポリ乳酸樹脂組成物(D)をペレット状で得た。
【0214】
次に、このポリ乳酸樹脂組成物(D)10重量部に対して、ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)90重量部を乾式で混合し、シリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、10℃に設定されたロールにより冷却し、さらに65℃に設定したロールで加熱して、厚さ0.3mmのシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0215】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.5%であった。また、DSCより測定された結晶化度は59.9%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0216】
[実施例29]
実施例1で得られたシート状のポリ乳酸樹脂組成物を用いて、真空圧空成形を行った。なお、真空圧空成形条件は、ポリ乳酸樹脂組成物の温度が140℃になるように加熱して軟化させた後、室温で放置された金型で成型して、容器状のポリ乳酸樹脂成形品を得た。このポリ乳酸樹脂成形品は、表面の浸出などなく、良好な外観、良好な成形性を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.3%であった。また、DSCより測定された結晶化度は55.6%であった。この容器状のポリ乳酸樹脂成形品に水を入れ、1500W設定の電子レンジで2分間加熱したところ、加熱による容器の形状変化はなかったが、容器底面だけ波打つように少し変形した。
【0217】
[実施例30]
実施例1で得られたシート状のポリ乳酸樹脂組成物を用いて、真空圧空成形を行った。なお、真空圧空成形条件は、ポリ乳酸樹脂組成物の温度が150℃になるように加熱して軟化させた後、60℃に加熱した金型で成型して、容器状のポリ乳酸樹脂成形品を得た。このポリ乳酸樹脂成形品は、表面の浸出などなく、良好な外観、良好な成形性を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は4.5%であった。また、DSCより測定された結晶化度は57.9%であった。この容器状のポリ乳酸樹脂成形品に水を入れ、1500W設定の電子レンジで2分間加熱したところ、加熱による容器の形状変化も、変形もなかった。
【0218】
[実施例31]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:2500HP、NatureWorks社製、L-乳酸純度>99mol%)100重量部、可塑剤としてヒマシ油系脂肪酸エステル(リックサイザー:C-101、伊藤製油(株)製)2.68重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.41重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0219】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、20℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0220】
このシートを、毎分10℃の昇温速度で示差走査熱量測定したところ、ポリL-乳酸の冷結晶化発熱量は、20.0J/gであった。
【0221】
さらに、このシートを、47℃の恒温槽で15時間加熱して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0222】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.5%であった。また、DSCより測定された結晶化度は52.6%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、130℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0223】
また、このシートを、毎分10℃の昇温速度で示差走査熱量測定したところ、ポリL-乳酸の冷結晶化発熱量は2.0J/gであった。
【0224】
[実施例32]
ポリL-乳酸(Ingeo Biopolymer:4032D、NatureWorks社製、L-乳酸純度:98~99mol%)100重量部、可塑剤としてヒマシ油系脂肪酸エステル(リックサイザー:C-101、伊藤製油(株)製)3.54重量部と、ポリエチレングリコール(PEG-6000P、三洋化成工業(株)製)0.21重量部、滑剤としてエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(ITOHWAX:J-530伊藤製油(株)製)0.42重量部を、2軸押出し混練機にて、シリンダー温度160-180℃の条件にて混練することで、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物をペレット状で得た。
【0225】
次に、このペレットをシリンダー温度200℃に設定した押出機にフィードして溶融軟化させた後、T-ダイより吐出させ、25℃に設定されたロールにより冷却して、厚さ0.3mmのシートを得た。
【0226】
このシートを、毎分10℃の昇温速度で示差走査熱量測定したところ、ポリL-乳酸の冷結晶化発熱量は、21.6J/gであった。
【0227】
さらに、このシートを、50℃の恒温槽で1昼夜放置して、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。このポリ乳酸組成物の外観、ヘイズ値、結晶化度を測定した。
【0228】
このポリ乳酸組成物は、表面の浸出などなく、良好な外観を示しており、非常に透明性は高く、ヘイズ値は2.8%であった。また、DSCより測定された結晶化度は40.5%であった。このシート状のポリ乳酸樹脂組成物を、恒温油浴に浸漬して、温度による変化を観測したところ、120℃に加熱しても変形など認められなかった。
【0229】
また、このシートを、毎分10℃の昇温速度で示差走査熱量測定したところ、ポリL-乳酸の冷結晶化発熱量は0.4J/gであった。
【0230】
【表1】
【0231】
【表2】
【0232】
[ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法]
(1)本実施の形態に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法の一態様は、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.0重量部を含む混合物を溶融する溶融工程と、溶融工程の後に、20~40℃に冷却する冷却工程と、冷却工程の後に、46~70℃に加熱する加熱工程と、を含む。また、得られるポリ乳酸樹脂組成物は、下記(a)および(b)に示す条件を満たす。
(a)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(b)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が50~70%
【0233】
(2)また、ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法の他の態様は、L-乳酸純度が99mol%以上であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.5重量部を含む混合物を溶融する溶融工程と、溶融工程の後に、20℃未満に冷却する冷却工程と、冷却工程の後に、46~80℃に加熱する加熱工程と、を含むまた、得られるポリ乳酸樹脂組成物は、下記(c)および(d)に示す条件を満たす。
(c)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(d)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が50~70%
【0234】
(3)また、ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法の他の態様は、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.0重量部を含む混合物を溶融する溶融工程と、溶融工程の後に、20~40℃に冷却する冷却工程と、冷却工程の後に、46~60℃に加熱する加熱工程と、を含む。得られるポリ乳酸樹脂組成物は、下記(e)および(f)に示す条件を満たす。
(e)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(f)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が35~55%
【0235】
(4)また、ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法の他の態様は、L-乳酸純度が98~99mol%であるポリL-乳酸(A)100重量部、可塑剤(B)2.6~10重量部、滑剤(C)0.3~1.5重量部を含む混合物を溶融する溶融工程と、溶融工程の後に、20℃未満に冷却する冷却工程と、冷却工程の後に、46~80℃に加熱する加熱工程と、を含む。得られるポリ乳酸樹脂組成物は、下記(g)および(h)に示す条件を満たす。
(g)厚さ0.3mmにおけるヘイズ値が5%以下
(h)示差走査熱量計によって測定される結晶化度が35~55%
【0236】
また、上述のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法において、ポリL-乳酸(A)、可塑剤(B)、滑剤(C)を含む混合物を作製するために、ポリL-乳酸(A)100重量部に対して、可塑剤(B)と滑剤(C)の合計で25から100重量部を混練してなる濃縮されたポリ乳酸樹脂組成物(D)を予め作製する工程を更に含んでもよい。ここで、濃縮されたポリ乳酸樹脂組成物(D)は、さらにL-乳酸純度が98mol%未満であるポリL-乳酸を含んでいてもよい。
【0237】
[ポリ乳酸樹脂成形品の製造方法]
(1)本実施の形態に係るポリ乳酸樹脂成形品の製造方法は、上述の製造方法によって得られたポリ乳酸樹脂組成物を、さらに130~160℃に加熱して軟化させた後、金型内で成形冷却するものである。ここで、金型の温度は30~60℃であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0238】
本実施の形態のポリ乳酸樹脂組成物またはポリ乳酸樹脂成形品は、包装などに用いられるフィルム類、食品トレー、ボトル、お弁当箱や飲料カップなどの容器類、その他各種包装用の成形体、各種工業材料を始めとして、広い用途に適用することができる。