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  • 特許-検眼装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】検眼装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/13 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
A61B3/13
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018075575
(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2019180848
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-192296(JP,A)
【文献】特表平11-513591(JP,A)
【文献】特開平4-9132(JP,A)
【文献】特開2017-90851(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0092362(US,A1)
【文献】特開昭63-73930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に設けられたLED光源から、筐体壁に筐体壁を貫通するように設けられた光照射用窓に向かう光路に沿って、マドックス小桿および集光用レンズが、この順に、あるいは、逆の順に筐体内に配置され、少なくとも前記集光用レンズが、前記光路の光路軸方向に関して両方向に自在に移動可能である、検眼装置。
【請求項2】
前記マドックス小桿および前記集光用レンズが、一体となって、前記光路の光路軸方向に関して両方向に自在に移動可能である、請求項1に記載の検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、これまで別々の眼科用検査機器が必要であった、広域開散光と線状光とを一つの装置で提供できる検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科における重要な検査に、「検影法」と「ヒルシュベルグ(Hirschberg)試験」とがある。検影法は、一眼の瞳孔に線状の光源を入射して動かし、瞳孔内での光の動きを観察することで、屈折度(近視や遠視の度数)を定量する方法である。ヒルシュベルグ試験は、広域に開散する光源を両眼の角膜に投射し、角膜上の光源の反射位置を観察することで、眼位(目線のずれ)を定量する方法である。その際、観察光の方向と視軸を一致させ、瞳孔内を徹照すると、角膜反射の位置が分かりやすい。
【0003】
検影法では、図4に示すような、線状開散光〔図4の(a)〕、線状(長)収束光〔図4の(b)〕、線状短収束光〔図4の(c)〕が必要となり、更に、線状開散光から線状短収束光の間で、光束の幅を連続的に変化させることが必要となる。このような装置としては、例えば、非特許文献1に示すストリークレチノスコープ(線状検影器)RXシリーズ(株式会社ナイツ)が市販されている。この装置では、特殊な形状のフィラメントを備えたハロゲンランプを使用しており、非特許文献1に示すように、フィラメントの形状がそのまま投影されることにより線状光を提供している。
【0004】
一方、ヒルシュベルグ試験では、広域開散光〔図4の(d)〕を使用するが、所定の範囲に光源を投射できれば、照射域を変化させる必要はない。このような装置としては、例えば、非特許文献1に示すポケレチライトORT-Y(株式会社ナイツ)が市販されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】株式会社ナイツ、「ホームページ>製品情報>レチノスコープ」、[online]、株式会社ナイツ、[平成30年3月14日検索]、インターネット<URL:http://www.neitz.co.jp/product/rx/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、検影法で使用するストリークレチノスコープでは、先述のとおり、特殊な形状のフィラメントを備えたハロゲンランプを使用しているため、ハロゲンランプ自体が高価であり、更に、消費電力が大きいため、大用量のバッテリー又は変圧器付き電源を必要とし、装置自体が大型となる欠点があった。また、ハロゲンランプの寿命も短いため、交換コストの高さも問題であった。特に装置の大型化については、これらの検査を行う重要な対象として乳幼児・小児を想定しており、検査時には検査対象に装置を近づける必要があるため、乳幼児・小児に不安を与えて検査がスムーズに進まないことが頻繁に見受けられた。
【0007】
このような現状に鑑み、本発明者は、電源交換が実質的に不要であり、消費電力が小さく、安価であって、更に小型化を目指して、ストリークレチノスコープの開発に鋭意検討を重ねた結果、LED光源とマドックス小桿と集光用レンズ(凸レンズ)との組合せにより、これらの課題を全て解決できることを見出した。すなわち、ハロゲンランプの代わりにLED光源を採用することにより、高耐久化、電力の小消費化、低価格化、小型化を達成した。
【0008】
本発明者は、開発当初、検影法で使用するストリークレチノスコープの開発のみを想定していたが、LED光源とマドックス小桿と集光用レンズ(凸レンズ)との組合せが、線状開散光、線状(長)収束光、線状短収束光の提供だけでなく、広域開散光の提供も可能であることに気が付いた。これにより、これまで別々の眼科用検査機器が必要であった、検影法とヒルシュベルグ試験を一つの装置で実施することが可能になり、本発明を完成させた。
【0009】
従って、本発明の課題は、広域開散光と線状光とを一つの装置で提供できる検眼装置を提供すると共に、検影法で使用する従来公知のストリークレチノスコープの種々の欠点を解決した前記検眼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
[1]筐体内に設けられたLED光源から、筐体壁に筐体壁を貫通するように設けられた光照射用窓に向かう光路に沿って、マドックス小桿および集光用レンズが、この順に、あるいは、逆の順に筐体内に配置され、少なくとも前記集光用レンズが、前記光路の光路軸方向に関して両方向に自在に移動可能である、検眼装置、
[2]前記マドックス小桿および前記集光用レンズが、一体となって、前記光路の光路軸方向に関して両方向に自在に移動可能である、前記[1]の検眼装置
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の検眼装置によれば、広域開散光と線状光とを一つの装置で提供することができる。また、本発明の検眼装置によれば、検影法で使用する従来公知のストリークレチノスコープの種々の欠点を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の検眼装置の一態様の内部構造を模式的に示す説明図であり、凸レンズがLED光源に近い位置にあり、広域開散光を照射する状態を示している。
図2図1に示す本発明の検眼装置の一態様の内部構造を模式的に示す説明図であり、凸レンズがLED光源から遠い位置にあり、線状収束光を照射する状態を示している。
図3】本発明の検眼装置が照射可能な光束を模式的に示す説明図である。
図4】検影法およびヒルシュベルグ試験で使用する各従来装置が照射可能な光束を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図2は、本発明の検眼装置の一態様の内部構造を模式的に示す説明図である。図1は、凸レンズがLED光源に近い位置にあり、広域開散光を照射する状態を示し、図2は、凸レンズがLED光源から遠い位置にあり、線状収束光を照射する状態を示す。
【0014】
図1図2に示す検眼装置10では、筐体1内に、下から上に向かって、電源2、LED光源3、マドックス小桿4、集光用レンズ(凸レンズ)5、反射用ガラス(ハーフミラー)6が設けられており、前記反射用ガラス6が配置された位置と同じ高さの筐体壁には、筐体壁を貫通する光照射用窓7と観察窓8とが設けられている。前記マドックス小桿4は、筐体1の外側に設けたリング41を回転させることにより、それに連動して、いずれの方向にも自在に回転可能なように、筐体1に取り付けられている。前記集光用レンズ5は、筐体1の外側に設けたスライドスイッチ51を上下に動かすことにより、それに連動して、上下方向に(すなわち、光路の光路軸方向に関して両方向に)自在に移動可能なように、筐体1に取り付けられている。
【0015】
筐体1の外側(例えば、上部)には、所望により、第2の光源(例えば、LED)91を設けることができ、通常のペンライトとして、例えば、暗所での照明や、固視目標などとして使用することができる。第1のLED光源3と第2光源91とは、切替スイッチ92により切り替えることができる。また、前記第2光源の周囲には、観察者の眩しさを軽減するフード93を設けることができる。
【0016】
マドックス小桿(Maddox rod)は、回旋偏位検査の一つであるマドックス二重桿(Maddox double rod)テストに用いるレンズであり、複数の円柱状レンズを平行に隙間なく並べ、円形に切り抜いた構造を有する。円柱状レンズ(横断面が円形)の集合体形状のもの以外にも、半円柱状レンズ(横断面が半円形)の集合体形状(すなわち、一方の面が平面の波型形状)を用いることもできる。点光源から照射した点状光を、マドックス小桿の一方の面から他方の面に通過させると、小桿の長さ方向に対して直交する線状光に変換される。
【0017】
図1図2に示す検眼装置10では、LED光源3から照射された点状光は、マドックス小桿4を通過することにより、各小桿の長さ方向に対して直交する線状光に変換され、続いて、集光用レンズ5を通過させることにより線状光の幅を変化させることができるため、種々の光束に変換することができる。すなわち、スライドスイッチ51を操作することにより、集光用レンズ5とLED光源との距離を変化させることができ、集光用レンズ5とLED光源3との距離が近い順から、図3に示すように、広域開散光〔図3の(a)〕→線状開散光〔図3の(b)〕→線状(長)収束光〔図3の(c)〕→線状短収束光〔図3の(d)〕へと変化させることができる。所望の光束に変換された光線は、反射用ガラス6を経て、光照射用窓から筐体外部に照射される。観察者は、検眼装置の後方から、観察窓8を通して光源が照射されている部位を観察する。光束と視軸が一致した状態で観察するため、瞳孔内が徹照され、角膜反射の位置が分かりやすい。なお、前記検眼装置10では、リング41を回転させることにより、それに連動して、マドックス小桿4の方向(すなわち、各小桿の方向)を自在に変えることができるため、マドックス小桿により変換された線状光の方向も自在に変化させることができる。
【0018】
図1図2に示す検眼装置10では、マドックス小桿4及び集光用レンズ5の内、マドックス小桿4をLED光源3に近い方に配置し、マドックス小桿4と反射用ガラス6との間を集光用レンズ5が移動可能なように配置しているが、本発明の検眼装置では、マドックス小桿4及び集光用レンズ5の配置を逆にすることもできる。すなわち、マドックス小桿及び集光用レンズの内、集光用レンズをLED光源に近い方に配置し、LED光源とマドックス小桿との間を集光用レンズが移動可能なように配置することもできる。
【0019】
また、図1図2に示す検眼装置10では、集光用レンズ5のみが上下に移動し、マドックス小桿4は回転自在であっても、上下方向には移動できないように配置されているが、本発明の検眼装置では、マドックス小桿及び集光用レンズが一体となって(すなわち、マドックス小桿と集光用レンズとの距離が変わらない状態で)、上下方向に移動可能なように配置することもできる。この際、マドックス小桿と集光用レンズの位置関係は、図1図2に示すようにLED光源に近い方にマドックス小桿を配置しても、あるいは反対に、LED光源に近い方に集光用レンズを配置しても、いずれであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の検眼装置は、眼科において、広域開散光や線状光を必要とする検査(例えば、検影法、ヒルシュベルグ試験)に用いることができる。
【符号の説明】
【0021】
10・・・検眼装置;
1・・・筐体;2・・・電源;3・・・LED光源;4・・・マドックス小桿;
5・・・集光用レンズ(凸レンズ);6・・・反射用ガラス(ハーフミラー);
7・・・光照射用窓;8・・・観察窓;
41・・・リング;51・・・スライドスイッチ;
91・・・第2光源;92・・・切替スイッチ;93・・・フード。
図1
図2
図3
図4