(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】トリグリセリド耳用製剤とその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4535 20060101AFI20220304BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220304BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A61K31/4535
A61K47/14
A61P27/16
(21)【出願番号】P 2018566390
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(86)【国際出願番号】 US2017040055
(87)【国際公開番号】W WO2018005830
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-26
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517029152
【氏名又は名称】オトノミー,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】サベル,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チャンペン
(72)【発明者】
【氏名】コールマン,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ピュー,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】チー,ホン
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-522998(JP,A)
【文献】International Journal of Pharmaceutics,2015年,494,83-101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4535
A61K 47/14
A61P 27/16
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼓室内投与のための耳用医薬製剤であって、
a)ガシクリジ
ンあるいはその薬学的に許容可能
な塩、および、
b)中鎖脂肪酸を含むトリグリセリド、を含み、
前記トリグリセリドは、耳へ鼓室内注入される
ガシクリジンあるいはその薬学的に許容可能な塩を安定させるのに十分な量で存在し、
耳用医薬製剤は少なくとも約50重量%のトリグリセリドを含む、耳用医薬製剤。
【請求項2】
耳用医薬製剤は約60重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む、請求項1に記載の耳用医薬製剤。
【請求項3】
耳用医薬製剤は約70重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む、請求項1または2に記載の耳用医薬製剤。
【請求項4】
耳用医薬製剤は、
ガシクリジンあるいはその薬学的に許容可能な塩の徐放を少なくとも3日間もたらす、請求項1から3のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【請求項5】
耳用医薬製剤は約80重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む、請求項1から4のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【請求項6】
トリグリセリドはグリセロールと中鎖脂肪酸に由来する、請求項1から5のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【請求項7】
中鎖脂肪酸は、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ウンデシレン酸(ウンデカ-10-エン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、あるいはこれらの組み合わせである、請求項6に記載の耳用医薬製剤。
【請求項8】
耳用医薬製剤は約90重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む、請求項1から7のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【請求項9】
耳用医薬製剤は少なくとも1つの粘度調節剤をさらに含み、少なくとも1つの粘度調節剤は、二酸化ケイ素、ポビドン、カルボマー、ポロキサマー、あるいはこれらの組み合わせである、請求項1から8のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【請求項10】
耳用医薬製剤は、約10cP~約10,000cPの粘度を有する、請求項1から9のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【請求項11】
耳用医薬製剤は約95重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む、請求項1から10のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【請求項12】
耳用医薬製剤は、ガシクリジン遊離塩基
を含む、請求項1から11のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【請求項13】
耳用医薬製剤は、約0.01重量%~約2重量%の
ガシクリジンあるいはその薬学的に許容可能
な塩を含む、請求項1から12のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【請求項14】
耳用医薬製剤は、水、C
1-C
6アルコールまたはC
1-C
6グリコール、C
1-C
4アルコールまたはC
1-C
4グリコール、あるいはこれらの任意の組み合わせを含まないか、あるいは実質的に含まない、請求項1から13のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【請求項15】
耳用医薬製剤は約0.01重量%~約1重量%の
ガシクリジンあるいはその薬学的に許容可能
な塩を含む、請求項1から14のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【請求項16】
耳の疾患または疾病は耳鳴である、請求項1から15のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年6月29日に出願された米国仮出願第62/3565,300号の利益を主張するものであり、当該文献の内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照により全体として本明細書に組み込まれる配列表を含んでいる。2017年6月23日に作成された上記のASCIIコピーは、37173-767.601_SL.txtと命名され、57,476バイトの大きさである。
【背景技術】
【0003】
蝸牛と前庭迷路を含む、外耳、中耳、および/または内耳への薬物送達のためのトリグリセリド由来の耳用製剤が本明細書に記載されている。
【発明の概要】
【0004】
耳用医薬製剤が1つの態様で提供され、該耳用医薬製剤は、
a)治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩、および、
b)中鎖脂肪酸を含むトリグリセリド、を含み、
ここで、トリグリセリドは、耳へ注入される治療薬を安定させるのに十分な量で存在し、ここで、耳用医薬製剤は少なくとも約50重量%のトリグリセリドを含む。
【0005】
いくつかの実施形態において、トリグリセリドは、耳の中において十分な保持時間を提供するのに十分な量で存在する。いくつかの実施形態において、トリグリセリドは、治療薬の徐放をもたらすのに十分な量で存在する。いくつかの実施形態において、トリグリセリドは、細いゲージ針による製剤の送達を可能にするのに十分な量で存在する。いくつかの実施形態において、トリグリセリドはグリセロールと中鎖脂肪酸に由来する。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸は、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ウンデシレン酸(ウンデカ-10-エン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約50重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤はさらに少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの粘度調節剤は、二酸化ケイ素、ポビドン、カルボマー、ポロキサマー、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とポビドンである。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約0.01重量%~約20重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とカルボマーである。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約0.01重量%~約20重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とポロキサマーである。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約0.01重量%~約20重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約0.01重量%~約10重量%の二酸化ケイ素を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、耳用医薬製剤は、約10cP~約10000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態において、治療薬は、免疫調節剤、耳圧調節剤、コルチコステロイド、抗菌薬、耳の神経栄養因子、切断したTrkCまたは切断したTrkBのアンタゴニスト、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニスト、あるいはWNTモジュレータである。いくつかの実施形態において、治療薬は、デキサメタゾン、シプロフロキサシン、ガシクリジン、あるいはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、耳の神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、繊毛の神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PGF)、およびこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、耳の神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0008】
いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は、約0.01重量%~約20重量%の治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩を含む。いくつかの実施形態において、耳の中の製剤の保持時間は少なくとも1日である。いくつかの実施形態において、治療薬は少なくとも1日間製剤から放出される。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は、水、C1-C6アルコールまたはC1-C6グリコール、C1-C4アルコールまたはC1-C4グリコール、あるいはこれらの任意の組み合わせを含まないか、あるいは実質的に含まない。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は、針とシリンジ、ポンプ、マイクロインジェクション装置、芯、海綿状材料、およびこれらの組み合わせから選択された薬物送達装置をさらに含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は、外耳、中耳、および/または内耳に関連する耳の疾患または疾病の処置で使用されるためのものである。いくつかの実施形態において、耳の疾患または疾病は、耳垢症あるいは耳の疾患または疾病に関連する耳垢症、耳そう痒症、外耳炎、耳痛、耳鳴、眩暈、耳閉感、聴力損失、メニエール病、感音性難聴、騒音性難聴、加齢性難聴(老人性難聴)、自己免疫性耳疾患、耳鳴、聴器毒性、興奮毒性、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイハント症候群、前庭ニューロン炎、あるいは微小血管の圧迫症候群、聴覚過敏、加齢性平衡障害(presbystasis)、中枢性聴覚情報処理障害、聴覚神経障害、人工内耳の性能の改良、あるいはこれらの組み合わせである。
【0009】
さらに、被験体の耳の疾患または疾病を処置する方法も本明細書で提供され、該方法は、本明細書に開示された耳用医薬製剤のいずれか1つを被験体に投与する工程を含む。
【0010】
引用による組み込み
本明細書で明記されるすべての公開物、特許、および特許出願は、個々の公開物、特許、または特許出願がそれぞれ参照により組み込まれるべく特別かつ個別に示されるかのような同じ程度で、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の新規な特徴は、とりわけ添付の請求項で説明される。本開示の特徴と利点についてのよりよい理解は、本開示の原則が用いられている例証的な実施形態と添付の図面を説明する以下の詳細な記載を参照することによって得られる:
【
図2A】AとBは完全長のTrkCとTrkB、およびそれぞれのアイソフォームを例証する。Aは出典がEstebanらのEsteban et al. J Cell Biol 2006;173:291-299であり、Bは出典がLubergらのJ.Neurochem.2010;113:952-964である。
【
図2B】AとBは完全長のTrkCとTrkB、およびそれぞれのアイソフォームを例証する。Aは出典がEstebanらのEsteban et al. J Cell Biol 2006;173:291-299であり、Bは出典がLubergらのJ.Neurochem.2010;113:952-964である。
【
図3-1】切断したTrkCの典型的な小分子アンタゴニストを例証する。
【
図3-2】切断したTrkCの典型的な小分子アンタゴニストを例証する。
【
図3-3】切断したTrkCの典型的な小分子アンタゴニストを例証する。
【
図4A】それぞれ6%のデキサメタゾン(0.4μm)無菌のMCT、6%のデキサメタゾン(5μm)無菌のMCT、および、6%のデキサメタゾン(5μm)オートクレーブ滅菌したMCT製剤について投与後の外リンパのデキサメタゾンの濃度を示す。
【
図4B】それぞれ6%のデキサメタゾン(0.4μm)無菌のMCT、6%のデキサメタゾン(5μm)無菌のMCT、および、6%のデキサメタゾン(5μm)オートクレーブ滅菌したMCT製剤について投与後の外リンパのデキサメタゾンの濃度を示す。
【
図4C】それぞれ6%のデキサメタゾン(0.4μm)無菌のMCT、6%のデキサメタゾン(5μm)無菌のMCT、および、6%のデキサメタゾン(5μm)オートクレーブ滅菌したMCT製剤について投与後の外リンパのデキサメタゾンの濃度を示す。
【
図5A】0.3%のガシクリジンMCT製剤について投与後の外リンパのガシクリジンの濃度を示す。
【
図5B】3%のガシクリジンMCT製剤と3%のガシクリジンHCL MCT製剤について投与後の外リンパのガシクリジンの濃度を示す。
【
図6】0.16%のガシクリジン遊離塩基MCT製剤、0.5%のガシクリジン遊離塩基MCT製剤、および1.5%のガシクリジン遊離塩基MCT製剤について投与後の外リンパのガシクリジンの濃度を示す。
【
図7】MCT/SiO2製剤中の1.5%のガシクリジンHCl/PVPとMCT/SiO2製剤中の1.5%のガシクリジンパモ酸塩について投与後の外リンパでのガシクリジンの濃度を示す。
【
図8A】IgG MCT/0.5% SiO2製剤について投与後の外リンパのヒトIgGの濃度を示す。
【
図8B】IgG MCT/3% SiO2製剤について投与後の外リンパのヒトIgGの濃度を示す。
【
図9A】IgG MCT/PVP/0.5% SiO2製剤について投与後の外リンパのヒトIgGの濃度を示す。
【
図9B】IgG MCT/PVP/3% SiO2製剤について投与後の外リンパのヒトIgGの濃度を示す。
【
図10A】IgG MCT/カルボマー/0.5% SiO2製剤について投与後の外リンパのヒトIgGの濃度を示す。
【
図10B】IgG MCT/カルボマー/3% SiO2製剤について投与後の外リンパのヒトIgGの濃度を示す。
【
図11A】IgG MCT/P407/0.5% SiO2製剤について投与後の外リンパのヒトIgGの濃度を示す。
【
図11B】IgG MCT/P407/3% SiO2製剤について投与後の外リンパのヒトIgGの濃度を示す。
【
図12】6%のデキサメタゾン(0.2μm)MCT、6%のデキサメタゾン(0.2μm)MCT/0.05% SiO2、および、6%のデキサメタゾン(0.2μm)MCT/2% SiO2製剤について投与後の外リンパのデキサメタゾンの濃度をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
活性薬剤の全身投与は、いくつかの例では、内耳構造に影響を与える疾患の処置に有効なものではない。蝸牛管と蝸牛とは、例えば、活性薬剤の全身送達を内耳内の標的部位へと制限する循環系から単離されている。いくつかの例においては、全身薬物投与は、血清内で血中濃度が高く、かつ、内耳の器官構造内で低いという薬物濃度の潜在的な不均等を作り出す。特定の例では、聴覚構造に十分な治療上有効な量の薬剤を送達するために、この不均等を克服するべく大量の薬剤が必要とされる。いくつかの例においては、全身薬物投与はさらに、副次的な全身蓄積とその結果として生じる副作用との可能性を高める。
【0013】
内耳疾患のための現在利用可能な治療は、付随する副作用の危険も伴う。例えば、利用可能な方法は、医薬品の複数回の1日量(例えば、鼓室内注射または注入)を必要とする。ある例においては、複数回の毎日の鼓室内注射は患者に不快感を与え、服薬を守らない事態に陥る。ある例においては、外耳道内に投与される点耳薬による、または、鼓室内注射を介する、内耳への活性薬剤の送達は、血液迷路障壁(BLB)、卵円窓膜、および/または、正円窓膜によって示される生物学的障壁によって妨害される。いくつかの例においては、点耳薬による、または、鼓室内注射を介する、内耳への活性薬剤の送達は、内耳構造内で浸透性の不均衡を生み出し、微生物または内毒素が存在する結果として感染または他の免疫異常の原因となり、あるいは、聴力損失等を引き起こす取り返しの付かない構造上の損傷(例えば、鼓膜の穿孔)を引き起こす。
【0014】
治療薬の鼓室内注射は、鼓膜の後ろから中耳および/または内耳へと治療薬を注入する技術である。鼓室内注射には課題が残る。例えば、正円窓膜、すなわち内耳への薬物吸収の部位へのアクセスには場合によっては問題がある。加えて、鼓室内注射を使用する現在のレジメンは、外リンパと内リンパのモル浸透圧濃度とpHの変化と、直接的または間接的に内耳に損傷を与える病原体とエンドトキシンの導入に対処していない。
【0015】
トリグリセリドベースの耳用医薬製剤である耳用の製剤と組成物が本明細書で提供される。こうしたトリグリセリドは中鎖トリグリセライド(MCT)を含んでいる。これらの耳用の製剤と組成物は、治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩;および、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、トリグリセリドはグリセロールと中鎖脂肪酸に由来する。
【0016】
いくつかの実施形態において、耳用のトリグリセリドベースの医薬製剤は、耳に注入される治療薬を安定させるのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、注入は外耳内に行われる。いくつかの実施形態において、注入は中耳内に行われる。いくつかの実施形態では、注入は鼓室内である。いくつかの実施形態では、注入は内耳内に行われる。いくつかの実施形態において、耳用のトリグリセリドベースの医薬製剤は、耳の中での十分な保持時間を提供するのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、耳の中の十分な保持時間とは中耳向けである。いくつかの実施形態において、耳の中の十分な保持時間とは内耳向けである。いくつかの実施形態において、耳の中の十分な保持時間とは外耳向けである。いくつかの実施形態において、外耳とは、外耳道、鼓膜の外側表面、またはその組み合わせである。いくつかの実施形態において、外耳は外耳道である。いくつかの実施形態において、耳用のトリグリセリドベースの医薬製剤は、治療薬の徐放を提供するのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、治療薬の徐放は外耳で行われる。いくつかの実施形態において、治療薬の徐放は中耳で行われる。いくつかの実施形態において、治療薬の徐放は内耳で行われる。いくつかの実施形態において、トリグリセリドは、細いゲージ針による製剤の送達を可能にするのに十分な量で存在する。
【0017】
これらの耳用のトリグリセリドベースの医薬製剤は、外耳、中耳、および/または内耳への薬物送達に適している。いくつかの例では、これらの耳用の医薬製剤と組成物はヒトへの投与に適している。いくつかの例では、本明細書に開示された耳用の製剤と組成物はさらに、pH、モル浸透圧濃度、イオン平衡、無菌性、エンドトキシン、および/または発熱物質レベルの厳格な基準を満たす。いくつかの例では、耳用の製剤と組成物は内耳の微小環境(例えば、外リンパ)と適合する。
【0018】
ゆえに、特定の実施形態では、耳の標的構造を局所的に処置し、かつ、標的の耳構造へ耳用活性薬剤を長時間曝露させる、制御放出型の耳に許容可能な製剤と組成物が本明細書で提供される。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、耳の構造、および/または、内リンパと外リンパに適合する、厳格なモル浸透圧濃度とpH範囲とに対応するように設計される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも3日間長時間放出をもたらし、かつ、厳格な無菌条件を満たす、制御放出製剤である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、低レベルのエンドトキシン(例えば、典型的に容認可能なレベルのエンドトキシン0.5EU/mLと比較して、0.5EU/mL未満)を含む。いくつかの例においては、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、製剤または組成物1g当たり低レベルのコロニー形成単位(例えば、50CFUs未満)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、発熱物質および/または微生物を実質的に含まない。いくつかの例では、本明細書に記載される耳用製剤または組成物は、内リンパおよび/または外リンパのイオンの平衡を維持するために製剤される。
【0019】
いくつかの例においては、本明細書に記載される耳用製剤または組成物の局所投与は、活性薬剤の全身投与の結果生じる有害な副作用の可能性を回避する。いくつかの例では、本明細書に記載される局所的に適用された耳用の製剤と組成物は、耳構造に適合する。こうした適合性の耳構造は、外耳、中耳、および/または内耳に関連する構造を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は、所望の耳構造(例えば蝸牛の領域)に直接投与されるか、あるいは、例えば、限定されないが、正円窓膜、蝸牛窓稜、あるいは卵円窓膜を含む蝸牛の領域の場合には、耳構造の領域と直接連通する構造に投与される。
【0020】
いくつかの例においては、本明細書で開示される耳用の製剤と組成物は、製剤からの一定の速度で薬物を放出し、および、耳の疾患を患っている個体または患者の内耳への耳用活性薬剤の安定した長期間の暴露源を提供して、他の処置方法(例えば、点耳薬、および/または、複数回の鼓室内注射)に関連するあらゆる可変性を減少または除去する制御放出製剤または組成物である。
【0021】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、外耳への有効成分の持続放出をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、蝸牛と前庭迷路を含む、中耳および/または内耳(inner earまたはauris interna)への有効成分の持続放出をもたらす。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物はさらに、制御放出成分と組み合わせて即時または急速放出成分を含む。
【0022】
特定の定義
本明細書で使用されるような、製剤、組成物、または成分に関する用語「耳に許容可能な」とは、処置される被験体の外耳(auris externa、または、external ear あるいは outer ear)中耳(auris media、あるいは、middle ear)、および/または、内耳(auris interna、あるいは、inner ear)に対する持続性の有害な影響がないことを含む。本明細書で使用されるような「耳に薬学的に許容可能な」により、担体または希釈剤などの材料を指し、これは、外耳(auris externa、あるいは、external ear あるいは outer ear)、中耳(auris media、あるいは、middle ear)、および/または、内耳(auris interna、あるいは、inner ear)に関連して化合物の生物学的活性または特性を抑止し、かつ、外耳(auris externa、あるいは、external ear あるいは outer ear)、中耳(auris media、あるいは、middle ear)、および、内耳(auris interna、あるいは、inner ear)に対する毒性が減少しており、つまり、材料は、望ましくない生物学的作用を引き起こしたり、それが含まれる組成物の成分のいずれにも有害に相互作用したりすることなく、個体に投与される。
【0023】
本明細書で使用されるように、特定の化合物または医薬組成物の投与による特定の耳の疾患、障害、または疾病の症状の改善または減少とは、化合物または組成物の投与に起因する、または関連付けられる、重症度の任意の低下、発病の遅れ、進行の遅延、または持続期間の短縮(永久的または一時的であれ、持続的または一過的であれ)を指す。
【0024】
本明細書で使用されるように、「免疫調節剤」または「免疫調節薬」または「免疫調節薬剤」または「免疫調節」の用語は、同義語として用いられる。
【0025】
「抗TNF剤」または「抗腫瘍壊死因子剤」または「TNFモジュレータ」または「TNF調節剤」または「TNF-アルファモジュレータ」または「抗TNFアルファ剤」の用語は、同義語として用いられる。用語「抗TNF剤」とその同義語は一般に、TNF-αの生物学的効果、あるいは分子の標的に結合および拮抗する薬剤を含むプロ-TNF-α刺激の生物学的効果を打ち消す薬剤を指し、ここでは、腫瘍壊死因子アルファあるいはTNF-アルファ(TNF-α)、TNF-αの放出を阻害する薬剤、あるいはプロ-TNF-α刺激によりTNF-α遺伝子発現に干渉する薬剤である。同様に、限定されないが、TNF-α活性の経路の上流にある標的を含むTNF-α活性の一般的な経路内の標的を調節することによってTNF-αの生物学的活性を間接的に拮抗する薬剤も含まれ、限定されないが、TNF-αの発現、活性、または機能を増加させる薬剤も含まれる。
【0026】
本明細書で使用されるように、「耳圧調節剤」または「耳圧モジュレータ」との用語は、同義語として用いられており、効果の程度を定めるものではない。耳圧モジュレータはさらに、バソプレシンとエストロゲン関連受容体βタンパク質を含む、液状の恒常性タンパク質の発現または転写後の処理を調節する化合物を含んでいる。さらに、バソプレシン受容体またはエストロゲン関連受容体βモジュレータは、バソプレシン受容体とエストロゲン関連受容体βシグナル伝達、または、アクアポリン機能等の、バソプレシン受容体またはエストロゲン関連受容体βの制御下で下流の機能に影響を与える化合物を含んでいる。バソプレシン受容体またはエストロゲン関連受容体β調節剤は、バソプレシン受容体またはエストロゲン関連受容体β機能を増加および/または減少させる化合物を含み、前記化合物は、アンタゴニスト、阻害剤、アゴニスト、半アゴニストなどを含む。
【0027】
「耳の神経および/または有毛細胞のモジュレータ」と「耳の感覚細胞調節剤」とは、同義語である。これらは、耳の神経および/または有毛細胞の成長および/または再生を促す薬剤を含む。
【0028】
本明細書で使用されるように、用語「抗菌剤」とは、微生物の成長、増殖、または増加を阻害するか、もしくは微生物を殺す化合物を指す。適切な「抗菌剤」は、抗バクテリア剤(バクテリアに対して効果的である)、抗ウイルス剤(ウイルスに対して効果的である)、抗菌類剤(菌類に対して効果的である)、抗原虫剤(原虫に対して効果的である)、および/または、任意のクラスの微生物寄生体に対する抗寄生虫剤である。「抗菌剤」は、有毒であることまたは細胞増殖抑制性であることなどを含む、微生物に対する任意の適切なメカニズムによって作用する。
【0029】
成句「抗菌性小分子」とは、比較的少ない分子量、例えば、1000分子量未満の抗菌化合物を指し、これは、耳の不調、特に、病原性微生物によって引き起こされた耳の不調の処置に有効であり、本明細書に開示された製剤に使用するのに適している。適切な「抗菌性小分子」とは、抗バクテリア、抗ウイルス、抗真菌、抗原虫、および、抗寄生虫性の小分子を含む。
【0030】
「遊離ラジカルのモジュレータ」と「遊離ラジカル調節剤」は同義語である。これらは、遊離ラジカル、特に活性酸素種の産生、および/または、それによって引き起こされた損傷を調節する薬剤を指す。
【0031】
本明細書で使用されるように、「イオンチャネル調節剤」、「イオンチャネルのモジュレータ」、または「イオンチャネルモジュレータ」は、同義語として用いられており、効果の程度を定めるものではない。イオンチャネルモジュレータはさらに、バソプレシン受容体またはエストロゲン関連受容体βタンパク質を含む、液体恒常性タンパク質の発現または転写後の処理を調節する化合物を含んでいる。さらに、バソプレシン受容体またはエストロゲン関連受容体βモジュレータは、バソプレシン受容体とエストロゲン関連受容体βシグナル伝達、または、アクアポリン機能等の、バソプレシン受容体またはエストロゲン関連受容体βの制御下で下流の機能に影響を与える化合物を含んでいる。バソプレシン受容体またはエストロゲン関連受容体β調節剤は、バソプレシン受容体またはエストロゲン関連受容体β機能を増加および/または減少させる化合物を含み、前記化合物は、アンタゴニスト、阻害剤、アゴニスト、半アゴニストなどを含む。
【0032】
本明細書で使用されるように、「耳用薬剤」または「耳構造調節剤」または「耳用治療薬」または「耳用活性薬剤」または「活性剤」の用語は、耳の疾患、例えば、例えば、中耳炎、耳硬化症、耳の自己免疫疾患、耳癌の処置に有効な化合物を指し、本明細書で開示される製剤で使用するのに適している。「耳用薬剤」または「耳構造調節剤」または「耳用治療薬」または「耳用活性薬剤」または「活性剤」としては、限定されないが、アゴニスト、半アゴニスト、アンタゴニスト、半アンタゴニスト、逆アゴニスト、競合的アンタゴニスト、ニュートラルアンタゴニスト、オルソステリックアンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、耳構造調節標的の陽性アロステリックモジュレータ、耳構造調節標的の陰性アロステリックモジュレータ、またはその組み合わせとして機能する化合物が挙げられる。
【0033】
「平衡障害」とは、ふらつきを感じたり、動いているような感覚を有したりするような状態を被験体に引き起こす、不調、病気、または、疾病を指す。この定義には、浮動性めまい、回転性めまい、不均衡、および失神性めまいが含まれる。平衡疾患として分類される疾患は、限定されないが、ラムゼイハント症候群、メニエール病、デバルクマン症候群症候群(mal de debarquement)、良性発作性頭位めまい症、迷路炎、および老人性難聴を含む。
【0034】
「CNSモジュレータ」と「CNS調節剤」は同義語である。これらは、CNSの活性を減少させ、縮小し、部分的に抑え、完全に抑え、改善し、拮抗し、促進し、刺激し、または増加させる薬剤を指す。例えば、いくつかの例では、これらは、GABA受容体の感度を高めることによってGABAの活性を増加させ、または、それらは、神経内の脱分極を変える。
【0035】
「局所麻酔薬」は、可逆的な感覚消失および/または侵害受容の喪失を引き起こす物質を意味する。しばしば、こうした物質は、興奮性膜(例えばニューロン)の脱分極と再分極の速度を減少させることにより機能する。非限定的な例として、局所麻酔薬はリドカイン、ベンゾカイン、プリロカイン、およびテトラカインを含む。
【0036】
「GABAA受容体のモジュレータ」、「GABA受容体のモジュレータ」、「GABAA受容体モジュレータ」、および「GABA受容体モジュレータ」は、同義語である。これらは、例えば、GABAに対するGABA受容体の感度を増加させることによって、GABA神経伝達物質の活性を調節する物質を指す。
【0037】
本明細書で使用されるように、「細胞毒性剤」との用語は、耳疾患、例えば、耳の自己免疫疾患、耳癌の処置に有効な細胞毒(すなわち、細胞に対して毒)である化合物を表しており、本明細書で開示される製剤で用いるのに適している。
【0038】
「細胞毒性小分子」との成句は、比較的低い分子量、例えば、1000未満、または、600乃至700未満、または、300乃至700の分子量であり、耳の疾患、例えば、耳の自己免疫疾患、耳癌の処置に有効な量の細胞毒性化合物を指し、本明細書で開示される製剤で用いるのに適している。適切な「細胞毒性小分子」は、メトトレキサート、シクロホスファミド、サリドマイドと、メトトレキサート、シクロホスファミド、サリドマイドの代謝物、塩、多形体、プロドラッグ、アナログ、および誘導体を含んでいる。特定の実施形態において、好ましい細胞毒性小分子は、細胞毒性剤の薬学的に活性な代謝物である。例えば、シクロホススファミドの場合では、好ましい代謝物は、シクロホスファミドの薬学的に活性な代謝物であり、限定されないが、4-ヒドロキシシクロホスファミド、アルドホスファミド、ホスファイドマスタード、およびこれらの組み合わせを含む。
【0039】
「抗酸化剤」は、耳に薬学的に許容可能な抗酸化剤であり、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、およびトコフェロールを含む。ある実施形態では、必要に応じて、抗酸化剤は化学安定性を増強する。抗酸化剤は同様に、本明細書で開示される耳用薬剤と組み合わせて使用される薬剤を含む特定の治療薬の聴器毒性の影響を中和するために使用される。
【0040】
「外耳」とは外部(あるいはouter)の耳を指し、耳介と外耳道(EAC)を含んでいる。
【0041】
「内耳(auris interna)」とは、蝸牛および前庭迷路、ならびに蝸牛と中耳とを接続する正円窓を含む、内耳(inner ear)を指す。
【0042】
「内耳のバイオアベイラビリティ」または「中耳のバイオアベイラビリティ」とは、試験されている動物またはヒトの内耳または中耳内のそれぞれで利用可能となる本明細書で開示される化合物の投与された用量の割合を指す。
【0043】
「中耳」は、鼓室、耳小骨、および中耳を内耳につなぐ卵円窓を含む中耳を指す。
【0044】
「血漿濃度」は、被験体の血液の血漿成分中の本明細書で提供される化合物の濃度を指す。
【0045】
「内耳のバイオアベイラビリティ」は、試験される動物またはヒトの内耳で利用可能となる本明細書で開示される化合物の投与された用量の割合を指す。
【0046】
製剤、組成物、または成分に関して「耳に許容可能な浸透促進剤」との用語は、本明細書で使用されるように、障壁耐性を減少させる特性を指す。
【0047】
「担体物質」は、耳用薬剤と、中耳と、内耳と、耳に許容可能な医薬製剤の放出特性とに適合する賦形剤である。このような担体物質は、例えば、結合剤、懸濁剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、潤滑剤、湿潤剤、希釈剤などを含む。「耳に薬学的に適合する担体物質」は、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼイン塩ナトリウム、大豆レシチン、タウロコール酸、ホスファチジルコリン、塩化ナトリウム、三リン酸カルシウム、二リン酸カリウム、セルロースおよびセルロース接合体、糖類、ステアロイル乳酸ナトリウム、カラギーナン、モノグリセリド、ジグリセリド、アルファ化デンプンなどを含むが、これらに限定されない。
【0048】
「希釈剤」との用語は、送達前に耳用薬剤を希釈するのに使用され、かつ、中耳および/または内耳に適合する化合物である。
【0049】
「分散剤」および/または「粘度調節剤」および/または「増粘剤」は、液体媒体を介する耳用薬剤の拡散性と均質性とを制御する物質である。拡散促進物質/分散剤の例としては、限定されないが、親水性ポリマー、電解液、トゥイーン(登録商標)60または80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP;商業的にはプラスドン(登録商標)として知られている)、および炭水化物ベースの分散剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、HPC-SL、およびHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、HPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15M、HPMC E10M、およびHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアリン酸アセテート(HPMCAS)、非結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、酸化エチレンおよびホルムアルデヒドを有する4-1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(チロキサポールとしても知られている)、ポロキサマー(例えば、Pluronics F68(登録商標)、F88(登録商標)、F108(登録商標)、およびF127(登録商標)、これらは酸化エチレンおよび酸化プロピレンのブロックコポリマーである);および、ポロキサミン(例えば、エチレンジアミンへの酸化プロピレンおよび酸化エチレンの連続付加に由来する四官能性のブロックコポリマーである、Poloxamine(登録商標)としても知られているTetronic908(登録商標)(BASF Corporation,Parsippany,N.J.))、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S-630)、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコールは、約300から約6000まで、約3350から約4000まで、または約7000から約5400までの分子量を有する)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ゴム、例えば、トラガカントゴムおよびアラビアゴム、グアーゴム、キサンタンゴムを含むキサンタン、糖、セルロース系、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルソース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩、キトサン、二酸化ケイ素、およびこれらの組み合わせが挙げられる。セルロースまたはトリエチルセルロースなどの可塑剤も分散剤として使用される。本明細書で開示される耳用薬剤のリポソーム分散と自己乳化性分散に有用な随意の分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルグリセロール、コレステロール、およびミリスチン酸イソプロピルである。いくつかの実施形態では、「分散剤」、および/または「粘度調節剤」および/または「増粘剤」は、ポロキサマーではない。
【0050】
「薬物吸収」または「吸収」とは、投与の局地的な部位、ほんの一例として内耳の正円窓膜から、および、障壁(以下に記載されるような正円窓膜)を介して内耳(auris internaまたはinner ear)構造に至る耳用薬剤の移動のプロセスを指す。「同時投与」との用語は、本明細書で使用されるように、一人の患者への耳用薬剤の投与を包含することを意味し、耳用薬剤が同じまたは異なる投与経路によって、もしくは同じまたは異なる時間に投与される処置レジメンを含むことを意図している。
【0051】
「有効な量」または「治療上有効な量」という用語は、本明細書で使用されるように、処置されている疾患または疾病の症状の1つ以上をある程度まで軽減することが予想される、投与されている耳用薬剤の十分な量を指す。例えば、本明細書で開示される耳用薬剤の投与の結果は、本明細書で開示される疾患または疾病のいずれかひとつの徴候、症状、または原因の減少および/または緩和である。例えば、治療用途のための「有効な量」とは、過度な有害な副作用なく疾患の症状の減少または改善をもたらすために必要とされる本明細書で開示されるような製剤を含む耳用薬剤の量である。用語「治療上有効な量」は、例えば、予防に有効な量を含む。本明細書で開示される耳用薬剤組成物の「有効な量」とは、過度の有害な副作用なく所望の薬理学的効果または治療の改善を達成するのに有効な量である。「有効な量」または「治療上有効な量」は、実施形態によっては、投与される化合物の代謝の変動、年齢、体重、被験体の一般的な状態、処置されている疾病、処置されている疾病の重篤度、および処方する医師の判断次第で、被験体ごとに変化することが理解されよう。いくつかの例では、持続放出投薬フォーマットでの「有効な量」は、薬物動態学的および薬力学的な考察に基づいて即時放出投薬フォーマットでの「有効な量」とは異なることも理解されよう。
【0052】
用語「増強する」または「増強」とは、耳用薬剤の所望の効果の効能または存続時間の増大または延長、あるいは治療薬の投与後に結果として生ずるあらゆる有害な総体症状を指す。したがって、本明細書に開示される抗菌剤の効果を増強することに関して、用語「増強」とは、本明細書に開示される耳用薬剤と組み合わせて用られる他の治療薬の効果を効能または持続のいずれかで増大または延長させる能力を指す。「増強する有効な量」とは、本明細書で使用されるように、所望の系で別の治療薬または耳用薬剤の効果を増強するのに適切な耳用薬剤または他の治療薬の量を指す。患者に使用されるとき、こうした使用に有効な量は、疾患、障害、または疾病の重症度と経過、以前の治療、患者の健康状態、および医薬品に対する反応、ならびに治療する医師の判断によって変わる。
【0053】
「浸透促進剤」との用語は、障壁耐性(例えば、正円窓膜の障壁耐性、BLB等)を減少させる薬剤を指す。
【0054】
用語「阻害する」とは、本明細書に記載される疾病の1つのいずれかを含む疾病の進行を防ぐ、遅らせる、または撤回させること、あるいは、処置を必要としている患者の疾病の進歩を含む。
【0055】
用語「キット」および「製品」は、同義語として使用される。
【0056】
「調節する」との用語は、標的、例えば、本明細書で開示されるTNF-アルファ剤との相互作用、TNF-アルファ剤の活性、または、ほんの一例として、TNF-アルファの活性を阻害すること、または、TNF-アルファの活性を制限することを含む、TNF-アルファの活性を変える他の直接または間接の標的を含む。
【0057】
「薬力学」とは、中耳および/または内耳内の所望の部位で薬物の濃度に対して観察される生物学的反応を決定する因子を指す。
【0058】
「薬物動態学」とは、中耳および/または内耳内の所望の部位で薬物の適切な濃度の達成ならびに維持を決定する因子を指す。
【0059】
予防的な適用では、本明細書に記載される耳用薬剤を含む組成物は、特定の疾患、障害、あるいは疾病になりやすい、あるいはそのリスクのある患者に投与される。このような量は、「予防に有効な量または用量」であると定義される。この用途では、正確な量は、また、患者の健康状態、体重などによって変わる。
【0060】
「プロドラッグ」とはインビボで親薬物に変換される耳用薬剤を指す。ある実施形態では、プロドラッグは、化合物の生物学的、薬学的、または治療的な形態への1つ以上の工程またはプロセスによって酵素的に代謝される。プロドラッグを生成するために、薬学的に活性な化合物は、インビボ投与時に再生成されるように修飾される。1つの実施形態では、プロドラッグは、薬物の代謝性安定性または輸送特性を変えるため、副作用または毒性を消すため、あるいは、薬物の他の特徴または特性を変えるように設計される。本明細書に提供される化合物は、いくつかの実施形態において、適切なプロドラッグへと誘導体化される。
【0061】
「可溶化剤」とは、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、ビタミンE TPGS、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール、胆汁塩、ポリエチレングリコール200-600、グリコフロール、トランスクトール(登録商標)、プロピレングリコール、およびジメチルイソソルビドなど耳に許容可能な化合物を指す。
【0062】
「安定化剤」は、任意の抗酸化剤、緩衝剤、酸、防腐剤などの、中耳および/または内耳の環境に適合する化合物を指す。安定化剤としては、(1)賦形剤と、容器または送達系(注射器またはガラス瓶を含む)との適合性を向上させる、(2)組成物の成分の安定性を向上させる、または(3)製剤の安定性を向上させる、いずれかを行う薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
「定常状態」は、本明細書で使用されるように、中耳および/または内耳に投与される薬物の量が、標的とする構造内での薬物曝露濃度を水平または一定レベルにする、1回の投薬間隔の間に除去される薬物の量と等しいときのことをいう。
【0064】
本明細書で使用されるように、用語「被験体」とは、動物、好ましくはヒトまたはヒト以外を含む哺乳動物を意味するように使用される。患者および被験体との用語は交換可能に使用される。
【0065】
「界面活性剤」とは、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、Tween(登録商標)60または80、トリアセチン、ビタミンE TPGS、ホスホリン脂質、レシチン、ホスファチジルコリン(c8~c18)ホスファチジルエタノールアミン(c8~c18)、ホスファチジルグリセロールc8~c18)、ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリソルベート、ポロキサマー、胆汁塩、グリセリルモノステアレート、酸化エチレンと酸化プロピレンのコポリマー、例えば、プルロニック(登録商標)(BASF)などの耳に許容可能な化合物を指す。他のいくつかの界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油(例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油);および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40などが挙げられる。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、物理的安定性を高めるために、または他の目的のために含まれる。
【0066】
用語「処置する」、「処置すること」、または、「処置」とは、本明細書で使用されるように、疾患または疾病または関連する症状を緩和するか、軽減するか、改善すること、追加の症状を防ぐこと、症状の根本的な代謝性の原因を改善するか防ぐこと、疾患または疾病を阻害すること、例えば、疾患または疾病の進行を抑えること、疾患または疾病を和らげること、疾患または疾病の退行を引き起こすこと、疾患または疾病によって引き起こされた状態を和らげること、あるいは疾患または疾病の症状を予防的および/または治療的に制御するまたは止めることを含む。
【0067】
前述した実施形態のいずれかにおいて、「実質的に低分解産物」との用語は、活性薬剤の5重量%未満が活性薬剤の分解産物であることを意味する。さらなる実施形態において、上記用語は、活性薬剤の3重量%未満が活性薬剤の分解産物であることを意味する。またさらなる実施形態において、活性薬剤の2重量%未満が、活性薬剤の分解産物であることを意味する。さらなる実施形態において、活性薬剤の1重量%未満が、活性薬剤の分解産物であることを意味する。
【0068】
「TrkBまたはTrkCのアゴニスト」との用語は、TrkBまたはTrkC受容体上の1つ以上のエピトープを認識してこれに結合する薬剤を含む。いくつかの実施形態において、TrkBまたはTrkCのアゴニストは抗体である。TrkBまたはTrkCのアゴニストは、ニューロンの成長および/または再生と、それらのプロセスと接続、および/または耳の有毛細胞を促す薬剤である。いくつかの実施形態において、TrkBまたはTrkCのアゴニストは、耳の感覚細胞の成長、再生、および/または表現型の維持と、耳のそれらのプロセスと接続(例えば、ニューロンおよび/または有毛細胞)を促すことにより、治療上の利点(例えば聴力損失の緩和)をもたらす。いくつかの実施形態において、TrkBまたはTrkCのアゴニストは、耳の感覚細胞への損傷を(例えば、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の機能不全)を処置および/または撤回するか、あるいは、(例えば、耳保護(otoprotectant)効果または栄養作用を及ぼすことによって)耳の感覚細胞に対するさらなる損傷を(例えば、細胞死)を減少させるか、または遅らせることによって、治療上の利点(例えば、音響性外傷による耳鳴の緩和)をもたらす。
【0069】
TrkBまたはTrkCのアゴニストは「神経栄養剤」を含み、これは、自然発生の神経栄養剤(例えば、BDNF、NT3、NT 4/5、IGF)の化学修飾されたアナログ、あるいはアミノ酸残基中に1つ以上の突然変異を有する自然発生の神経栄養剤を意味し、耳の感覚細胞(例えば、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の生存、成長、および/または再生を促す。いくつかの実施形態において、神経栄養剤は、耳の感覚細胞の酸化的損傷および/または骨新生および/または変性を減少させるか、または阻害する。いくつかの実施形態において、神経栄養剤は(例えば、医療機器の手術移植後に)健康な耳の感覚細胞を維持する。いくつかの実施形態において、神経栄養剤は免疫抑制剤(例えば、耳の手術中に使用される免疫抑制剤)である。いくつかの実施形態において、神経栄養剤は、成長因子(例えば、耳細胞の成長を促すために移植処置の後に使用される成長因子)である。
【0070】
本明細書で使用されるように、用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子の可変領域にある少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用されるように、この用語は、無傷のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけではなく、そのフラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、単鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の修飾された構造も包含する。抗体は、IgG、IgA、あるいはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、抗体は任意の特別なクラスである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを様々なクラスに割り当てることができる。5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかをさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl、およびIgA2に分けることもある。様々なクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造と三次元構造が周知である。同様に、単鎖可変フラグメント(scFv)、ダイアボディ、ミニボディ、単一ドメイン抗体(sdAbs)またはナノボディ、抗体キメラ、ハイブリッド抗体、二重特異性抗体身体、ヒト化抗体など、および、前述のものを含む組み換えペプチドなどの単鎖抗体も含まれる。
【0071】
本明細書で使用されるように、「モノクローナル抗体」や「mAb」などの用語は、実質的に均質の抗体の集団から得られた抗体を指し、つまり、上記集団を含む個々の抗体は、少量で存在することもある潜在的に自然発生する突然変異を除けば、同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を対象としている。さらに、典型的には様々な決定因子(エピトープ)を対象とした様々な抗体を含んでいるポリクローナル抗体調合物とは対照的に、モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定因子を対象としている。修飾因子「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質の集団から得られる抗体の特徴を示しており、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとは解釈されない。
【0072】
「天然の抗体」と「天然の免疫グロブリン」は通常、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。軽鎖はそれぞれ1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合するが、ジスルフィド結合の数は様々な免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。重鎖と軽鎖はそれぞれ規則的に距離をおいた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は一方の末端に可変ドメイン(VH)とその後の多くの定常ドメインを有する。各軽鎖は一方の末端に可変ドメイン(VL)を、もう一方の末端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと位置を合わされ、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと位置を合わされる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖の可変領域の間で境界面を形成すると考えられている。
【0073】
本明細書で使用されるように、用語「可変」とは、可変ドメインの特定の部分が抗体中で配列が大きく異なるという事実を指す。可変領域は抗原結合特異性を与える。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメイン全体に均一に分布していない。それは、軽鎖と重鎖の可変ドメイン中の相補性決定領域(CDR)または超可変領域、その両方の3つのセグメントに集中している。可変ドメインの高度に保存された部分はフレームワーク(FR)領域と呼ばれる。天然の重鎖と軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、ループ接続を形成し、場合によっては、f3-プリーツシート構造の一部を形成する、3つのCDRにより接続された、13-プリーツシート構造を採用している4つのFR領域を含む。各鎖内のCDRはFR領域によって一緒に近接して保持され、他方の鎖からのCDRは抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al. (1991) NIH PubL. No. 91-3242, Vol. I, pages 647-669を参照)。定常ドメインは抗体を抗原に結合することに直接関与しないが、Fc受容体(FcR)結合、抗体依存性の細胞の毒性への抗体の関与、補体依存性細胞傷害の開始、およびマスト細胞脱顆粒などの様々なエフェクター機能を示す。
【0074】
本明細書で使用されるように、用語「超可変領域」は、本明細書で使用するとき、抗原結合の原因となる抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補的決定領域」または「CDR」(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基24-34(L1)、50-56(L2)、および89-97(L3)と、重鎖可変ドメイン中の残基31-35(H1)、50-65(H2)、および95-102(H3);Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service, National Institute of Health,Bethesda,Md.)からのアミノ酸残基、および/または、「超可変ループ」(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基26-32(L1)、50-52(L2)、および、91-96(L3)と、重鎖可変ドメイン中の残基(H1)、53-55(H2)、および96-101(13);Clothia and Lesk,(1987)J.Mol.Biol.,196:901-917)からの残基を含む。本明細書で認められるように、「フレームワーク」あるいは「FR」残基は、超可変領域残基以外のそれらの可変ドメイン残基である。
【0075】
「抗体フラグメント」は無傷の抗体の一部を含む。いくつかの実施形態において、無傷の抗体の一部は無傷の抗体の抗原結合または可変領域である。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab、F(ab’)2、およびFvフラグメント;ダイアボディ;線形の抗体;(Zapata et al.(1995)Protein Eng.10:1057-1062)単鎖抗体分子;および、抗体フラグメントから形成された多特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合性フラグメントと、その名前が容易に結晶させる能力を反映している残基「Fc」フラグメントを生成する。ペプシン処置により、2つの抗原結合部位を有するとともに依然として抗原を架橋結合することができるF(ab’)2フラグメントが生成される。
【0076】
「Fv」は、完全抗原認識部位および結合部位を含む最小限の抗体フラグメントである。この領域は、緊密な非共有結合性会合中の1つの重鎖と1つの軽鎖の可変ドメインの二量体からなる。VH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するために、それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用するのはこの構造内である。まとめて、6つのCDRが抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも親和性は低いが、1つの可変ドメイン(または、抗原に特異的なわずか3つのCDRしか含まないFvの半分)でも、抗原を認識して結合する能力を有している。
【0077】
Fabフラグメントはさらに、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fabフラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に少数の残基を加えることでFab’フラグメントとは異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’に関する本明細書での命名である。Fab’フラグメントは、F(ab’)2フラグメントの重鎖ジスルフィド架橋を還元することにより生成される。抗体フラグメントの他の化学的結合も知られている。
【0078】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(x)とラムダ(X)と呼ばれる、2つの明らかに異なるタイプの1つに割り当てられる。
【0079】
本明細書で使用されるように、用語「ヒト化抗体」とは、ヒトによって生成された抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体、あるいは、当該技術分野で知られているまたは本明細書で開示されるヒト化抗体を作るための技術のいずれかを使用して作られた抗体を意味する。ヒト化抗体のこの定義は、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドあるいは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含んでいる。ヒト化抗体は当該技術分野で知られている様々な技術を使用して生成可能である。1つの実施形態では、ヒト化抗体はファージライブラリーから選択され、ここで、そのファージライブラリーはヒト化抗体を発現する。ヒト化抗体もトランスジェニック動物(例えば、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的にあるいは完全に不活性化されたマウス)へヒト免疫グロブリン座を導入することにより作ることが可能である。代替的に、ヒト化抗体は、標的抗原を対象とした抗体を生成するヒトBリンパ球を不死化することにより調製されることもある(そのようなBリンパ球は個体から回収されることもあれば、あるいはインビトロで免疫化されることもある)。
【0080】
本明細書で提供される抗体の「ベニア(veneered)」バージョンとの用語もいくつかの実施形態で使用されてもよい。ベニア化のプロセスは、天然のFRタンパク質の折り畳み構造を実質的にすべて保持する抗原結合部分を含む抗体を提供するために、例えば、マウスの重鎖または軽鎖の可変領域からのFR残基を、ヒトFR残留物と選択的に交換する工程を含む。ベニア化技術は、抗原結合部分の抗原結合特性が主として抗原結合表面内の重鎖と軽鎖のCDRセットの構造と相対的な配置によって決定されるという理解に基づく。したがって、抗原連合特異性はヒト化された抗体でのみ維持することができ、ここで、CDR構造、互いとのその相互作用、および可変領域ドメインの残りとのその相互作用は慎重に維持される。ベニア化技術を用いることによって、免疫系に容易に遭遇する外部(例えば、溶媒到達可能な)のFR残基は、弱い免疫原性、実質的に非免疫原性のベニア化表面のいずれかを含むハイブリッド分子を提供するために、ヒトの残基と選択的に取り替えられる。本明細書で提供される抗体のベニア化バージョンは本開示によって包含されることを理解されたい。
【0081】
本明細書で使用されるように、抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合フラグメント」(あるいは単に「抗体部分」あるいは「抗体フラグメント」)は、とりわけ、抗原(例えば、TrkCの膜近傍領域ドメイン)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、完全長の抗体のフラグメントによって行うことが可能であることが示されている。こうした抗体の実施形態は、二重特異性、二重特異的、または他特異的なフォーマットュアルであってもよく;2つ以上の様々な抗原に特異的に結合してもよい。抗体の「抗原結合部分」との用語に包含される結合フラグメントの例は、(i)VL、VH、CL、およびCH1のドメインからなる一価フラグメントである、FAbフラグメント;(ii)ヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって結合した2つのFAbフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab’)2フラグメント;(iii)VHとCH1のドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一のアームのVLとVHのドメインからなるFvフラグメント、(v)一つの可変ドメインを含むdAbフラグメント;および、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン(VLとVH)は別々の遺伝子によってコードされるが、これらは合成リンカーによって組み換え法を用いて結合可能であり、合成リンカーにより、上記ドメインを、VLとVHの領域がペアになって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖とすることが可能となる。こうした単鎖抗体も本開示内に包含されるように意図されている。ダイアボディなどの単鎖抗体の他の形態も包含される。ダイアボディは、VHとVLのドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、短すぎて同じ鎖の上の2つのドメイン間を対にすることができないリンカーを使用して、それにより、2つのドメインを別の鎖の相補的なドメインと無理やり対にさせて2つの抗原結合部位を作成する、二価の二重特異性抗体である。
【0082】
本明細書に記載される抗体が、完全長の抗体の同じ特性(例えば、特異性または親和性)を保持する、単鎖抗体あるいはFAbフラグメントなどの、そのフラグメント、一部、変異体、あるいは誘導体を含むことを理解されたい。
【0083】
用語「耳の治療介入」とは、1つ以上の耳構造に対する外部の損傷または外傷を意味し、移植片、耳の手術、注射、カニューレ挿入などを含む。移植片は内耳または中耳の医療装置を含み、その例としては、人工内耳、聴力温存(hearing sparing)装置、聴力改善装置、短い電極、微小な人工器官、またはピストンのような人工器官;針;幹細胞移植;薬物送達装置;任意の細胞ベースの治療;などが挙げられる。耳の手術は中耳手術、内耳手術、鼓膜切開、蝸牛開口(cochleostomy)、迷路切開、乳突削開術、アブミ骨切除術(stapedectomy, stapedotomy)、内リンパ球嚢切開術(sacculotomy)などを含む。注射は中耳内注射、蝸牛内注射、正円窓膜全体の注射などを含む。カニューレ挿入は中耳内、蝸牛内、内リンパ、外リンパ、または前庭のカニューレ挿入などを含む。
【0084】
化合物の薬学的に許容可能な誘導体としては、その塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物、あるいはプロドラッグが挙げられる。こうした誘導体は、そのような誘導体化の既知の方法を使用して当業者によって容易に調製され得る。薬学的に許容可能な塩としては、限定されないが、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミン、および他のヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、l-パラ-クロロベンジル-2-ピロリジン-l’-イルメチルベンズイミダゾール、ジエチルアミンおよび他のアルキルアミン、ピペラジンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのアミン塩;限定されないが、リチウム、カリウム、およびナトリウムなどのアルカリ金属塩;限定されないが、バリウム、カルシウム、およびマグネシウムなどのアルカリ土類金属塩;限定されないが、亜鉛などの遷移金属塩;および、限定されないが、炭酸水素ナトリウムリン酸塩とリン酸水素二ナトリウムなどの無機塩類が挙げられ、さらに、限定されないが、塩酸塩や硫酸塩などの鉱酸の塩;および、限定されないが、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、琥珀酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、メシル酸塩、およびフマル酸塩などの有機酸の塩を含んでいる。薬学的に許容可能なエステルとしては、限定されないが、カルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、およびボロン酸を含む酸性基の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、および、シクロアルキルエステルが挙げられる。薬学的に許容可能なエノールエーテルとしては、限定されないが、Rが水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、およびシクロアルキルである、式C=C(OR)の誘導体が挙げられる。薬学的に許容可能なエノールエステルとしては、限定されないが、Rが水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、およびシクロアルキルである、式C=C(OC(O)R)の誘導体が挙げられる。薬学的に許容可能な溶媒和物と水和物は、1つ以上の溶媒または水分子、あるいは、約1~100、あるいは約1~10、あるいは1~約2、3、または4の溶媒または水分子を有する化合物の複合体である。
【0085】
本明細書で提供される化合物がキラル中心を含むこともあることを理解されたい。こうしたキラル中心は(R)あるいは(S)配置のいずれかであるか、あるいはその混合物であることがある。したがって、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であることもあれば、立体異性またはジアステレオ異性混合物であることもある。そのため、当業者は、その(R)形態の化合物の投与がその(S)形態の化合物の投与と、インビボで異性化を経験する化合物については同等であることを認識する。
【0086】
本開示は、こうしたすべての潜在的な異性体と、そのラセミ形態および光学的に純粋な形態を含むことを意図している。光学的に活性な(+)および(-)、(R)-および(S)-、あるいは(D)-および(L)-異性体は、いくつかの例では、キラルのシントンあるいはキラルの試薬を使用して調製されるか、あるいは、逆相HPLCなどの従来の技術を使用して分解される。本明細書に記載される化合物がオレフィンの二重結合または幾何学的な不斉の他の中心を含む場合、別段の定めのない限り、化合物はEとZの両方の幾何異性体を含むことが意図される。同様に、すべての互変異性体も含まれるように意図される。
【0087】
本明細書で使用されるように、指定されない限り、アルキル、アルケニル、およびアルキニルの炭素鎖は1~20の炭素、1~16の炭素、あるいは1~6の炭素を含んでおり、直鎖または分子鎖である。ある実施形態では、アルキル、アルケニル、およびアルキニルの炭素鎖は1~6つの炭素を含んでいる。2~20の炭素のアルケニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~8つの二重結合を含み、2~16の炭素のアルケニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~5つの二重結合を含む。2~6の炭素のアルケニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~2つの二重結合を含む。2~20の炭素のアルキニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~8つの三重結合を含み、2~16の炭素のアルキニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~5つの三重結合を含む。2~6の炭素のアルキニル炭素鎖は、ある実施形態では、1~2つの三重結合を含む。本明細書の典型的なアルキル、アルケニル、およびアルキニルの基は、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、エチニル、1-プロピニル、および2-プロピニルを含む。本明細書で使用されるように、低級アルキルで、低級アルケニル、および低級アルキニルとは、約1~約2の炭素から最大で約6つの炭素を有する炭素鎖を指す。
【0088】
用語「シクロアルキル」は、3~10の炭素原子のある実施形態において、3~6の炭素原子の他の実施形態において、飽和した単環式環系または多環式環系を指す;シクロアルケニルとシクロアルキニルは、少なくとも1つの二重結合と少なくとも1つの三重結合をそれぞれ含む、単環式または多環式の環系を指す。シクロアルケニルとシクロアルキニルの基は、ある実施形態では、4~7つの炭素原子を含む(さらなる実施形態で)シクロアルケニル基と、8~10の炭素原子を含む(さらなる実施形態で)シクロアルキニル基とを有する、3~10の炭素原子を含むこともある。シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル基の環系は、1つの環、あるいは縮合、架橋、またはスピロ接続により一緒に結合されることもある2つ以上の環から構成されてもよい。
【0089】
用語「アリール」は、6~19の炭素原子を含む単環芳香族基あるいは多環芳香族基を指す。アリール基としては、限定されないが、フルオレニル、置換されたフルオレニル、フェニル、置換されたフェニル、ナフチル、および、置換されたナフチルなどの基が挙げられる。
【0090】
用語「アラルキル」は、アルキルの水素原子の1つがアリールと取り替えられたアルキル基を指す。
【0091】
本明細書に記載される方法および組成物の他の目的、特徴、および利点は以下の詳細な記載から明らかとなる。しかしながら、詳細な記載と特定の例は、特定の実施形態を示しているが、例証目的でのみ与えられることを理解されたい。
【0092】
耳の解剖学的構造
耳は音を検知する感覚器官、および平衡と体位を維持する器官の両方として役立つ。耳は、3つの部分に一般的に分けられる:外耳、中耳、および内耳(あるいはauris interna)。
図1で示されるように、外耳はこの器官の外部部分であり、耳介(耳殻)、耳道(外耳道)、および(鼓膜(ear drum)としても知られている)鼓膜(tympanic membrane)の外部に面する部分からなる。外耳の肉質部分であり、頭部の側面にある目に見える耳介は、音波を集め、音波を耳道に向かわせる。したがって、外耳の機能とは1つには音波を集め、鼓膜と中耳へ向けることである。
【0093】
中耳は鼓膜の後ろの鼓室と呼ばれる空気で膨らんだ空洞である。鼓膜(tympanic membrane)(鼓膜(ear drum)としても知られている)は、中耳と外耳を分ける薄い膜である。中耳は側頭骨内にあり、この空間内に3つの耳骨(耳小骨):槌骨、キヌタ骨、およびアブミ骨を含む。耳小骨は、鼓室の空間を横切って架け橋を形成する小さな靭帯によって一緒に連結される。一方の端部で鼓膜に付いている槌骨はその前方の端部でキヌタ骨に連結され、これが順にアブミ骨に連結している。アブミ骨は、鼓室内にある2つの卵円窓の1つの卵円窓に付いている。環状靭帯としても知られている線維組織層は卵円窓にアブミ骨を接続する。外耳からの音波はまず鼓膜を振動させる。振動は耳小骨と卵円窓を通って蝸牛全体に送信され、これが内耳中の流体に運動を伝える。したがって、耳小骨は鼓膜と液体で満たされた内耳の卵円窓との間で機械的結合を与えるように配され、音は変形・変換されて内耳に入り、さらに処理される。耳小骨、鼓膜、または卵円窓の堅さ、硬直性、または移動の喪失は、聴力損失、例えば、耳硬化症、またはアブミ骨の硬直化の原因となる。
【0094】
鼓室は耳管によって咽喉にも繋がっている。耳管は外部空気と中耳腔との間の圧力を等しくする能力を与える。内耳の一構成要素であるが鼓室内にも到達可能である正円窓は、内耳の蝸牛に開口している。正円窓は膜により覆われており、これは3層:外部または粘液層、中間または腺維層、および蝸牛の流体と直接連通する内膜からなる。ゆえに、正円窓は内膜を介して内耳と直接連通している。
【0095】
卵円窓と正円窓での動作は相互につながっており、つまり、アブミ骨が鼓膜からの動きを卵円窓へ伝えることで内耳流体に対して内側に動き、正円窓はこれに呼応して押し出されて蝸牛流体から遠ざかる。正円窓のこの動きにより蝸牛内での流体の移動が可能となり、これが最終的には蝸牛の内毛細胞の移動を引き起こし、聞こえている信号を変換することを可能にする。蝸牛の流体の移動の能力が欠けているため、正円窓の剛性と硬直性は聴力損失の原因となる。最近の研究は正円窓上に機械的な変換器を埋め込むことに焦点を当てており、これは卵円窓を通る正常な導電性の経路を迂回し、増幅された入力を蝸牛室に与えるものである。
【0096】
聴覚の信号伝達は内耳内で起こる。液体で満たされた内耳(またはinner ear)は2つの構成要素:蝸牛と前庭器からなる。
【0097】
蝸牛は聴力に関連する内耳の部分である。蝸牛はカタツムリに似た形状に巻かれた先細りのチューブのような構造である。蝸牛の内部は3つの領域に分けられ、これは前庭膜と基底膜の位置によってさらに定義される。前庭膜の上の部分は前庭階であり、これは卵円窓から蝸牛の頂端まで伸びており、カリウム含有量が少なく、ナトリウム含有量が多い水性液である外リンパ流体を含む。基底膜は鼓室階領域を定義し、それは蝸牛の頂端から正円窓に伸びており、外リンパもさらに含む。基底膜は何千もの堅い繊維を含み、これは正円窓から蝸牛の頂端まで長さが徐々に増加する。音によって活性化されると、基底膜の繊維は振動する。前庭膜と鼓室階の間は蝸牛管であり、これは蝸牛の頂端で閉じられた嚢として終わる。蝸牛管は内リンパ流体を含み、これは脳脊髄液に似ていてカリウムが多い。
【0098】
聴力の感覚器であるコルチ器官は基底膜に位置し、上方へ伸びて蝸牛管に達する。コルチ器官はその自由表面から伸びる毛髪様の突起を有する有毛細胞を含み、蓋膜と呼ばれるゼラチン状の表面と接触する。有毛細胞に軸索はないが、内耳神経(第III脳神経)の蝸牛枝を形成する感覚神経繊維に囲まれる。
【0099】
議論されるように、楕円窓としても知られている卵円窓は、アブミ骨と連通することで、鼓膜から振動する音波を中継する。卵円窓に伝えられる振動は、外リンパと前庭/鼓室階によって流体で満たされた蝸牛の内部の圧力を増加させ、それにより正円窓の膜は反応して拡大する。卵円窓の協調した内部押圧/正円窓の外部への拡張により、蝸牛内の圧力を変化させることなく、蝸牛内の流体の移動が可能となる。しかしながら、振動が前庭膜中の外リンパを通って伝わるため、振動は前庭膜中で対応する発振を生成する。こうした対応する発振は蝸牛管の内リンパを通って伝わり、基底膜へと移動する。基底膜が振動するか、または上下に移動するとき、コルチ器官は基底膜と共に動く。その後、コルチ器官中の有毛細胞受容体は蓋膜とは逆の方向に動き、蓋膜中の機械的な変形を引き起こす。この機械的な変形が神経インパルスを開始し、これは内耳神経を介して中枢神経系に移動し、受け取った音波を信号へと機械的に送信し、信号は中枢神経系によりその後処理される。
【0100】
内耳は頭蓋の側頭骨中の入り組んだ一連の通路である骨または骨迷路(osseous or bony labyrinth)内にその一部がある。前庭は平衡の器官であり、三半規管と前庭からなる。三半規管は互いに対して配されることで、空間中の3つの直交面に沿った頭部の動きが、流体の移動と、膨大部綾と呼ばれる三半規管の感覚器によるその後の信号処理とによって検知することができるようになっている。膨大部綾は有毛細胞と支持細胞を含み、頂と呼ばれるドーム型のゼラチン状の塊により覆われる。有毛細胞の毛は頂に埋め込まれている。三半規管は動的平衡、回転運動と角運動の平衡を検知する。
【0101】
頭をすばやく回転させるとき、三半規管は頭とともに動くが、膜質の三半規管にある内リンパ流体は静止したままである傾向にある。内リンパ流体は頂を押圧し、この頂が一方の側に傾く。頂が傾斜するにつれて、頂は膨大部綾の有毛細胞に毛の一部を折り曲げ、これが感覚刺激を引き起こす。それぞれの三半規管が異なる面に位置するので、各三半規管の対応する膨大部綾は頭の同じ動作に対して異なるように応答する。これにより刺激の寄せ集めが形成され、これは内耳神経の前庭枝上の中枢神経系に送信される。中枢神経系はこの情報を解釈し、平衡を維持するために適切な反応を始める。中枢神経系では小脳が重要であり、これはバランス感覚と平衡感覚を媒介する。
【0102】
前庭は内耳の中心部分であり、静的均衡、または重力に対する頭の位置を確認する有毛細胞を有する機械受容器を含む。頭が静止しているか、またはまっすぐに動いているとき、静的均衡は一定の役割を果たしている。前庭の膜迷路は、2つの嚢のような構造である、卵形嚢および球形嚢に分けられる。それぞれの構造は斑と呼ばれる小さな構造を含み、これが静的均衡の維持に関与する。斑は感覚毛細胞からなり、これは斑を覆うゼラチン状の塊(頂に似ている)に埋め込まれている。耳石と呼ばれる炭酸カルシウムの粒は、ゼラチン状の層の表面上に埋め込まれている。
【0103】
頭が直立位置にあるとき、毛は斑に沿って真っ直ぐである。頭を傾けると、ゼラチン状の塊と耳石がそれに対応して傾斜し、斑の有毛細胞の毛の一部を曲げる。この曲げ作用により中枢神経系に対する信号刺激が開始され、信号刺激は内耳神経の前庭枝を通って伝わり、これが運動心拍を適切な筋肉に伝えることでバランスが維持される。
【0104】
いくつかの例では、本明細書に記載される耳用製剤は外耳に置かれる。いくつかの例では、本明細書に記載される耳用製剤は、蝸牛と前庭迷路を含む中耳または内耳に置かれる:1つの選択肢は、注射器/針またはポンプを使用し、鼓膜(eardrum)全体に製剤を注入することである。いくつかの例では、蝸牛と前庭迷路への送達のために、1つの選択肢は、正円窓膜全体に、あるいは、蝸牛の微小灌流としても知られている中耳への直接の微量注入によって、活性成分を送達することである。
【0105】
耳の疾患あるいは疾病
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、外耳、中耳、および/または内耳に関連する疾患あるいは疾病の処置および/または予防に適している。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、外耳に関連する疾患あるいは疾病の処置および/または予防に適している。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、中耳に関連する疾患あるいは疾病の処置および/または予防に適している。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、内耳に関連する疾患あるいは疾病の処置および/または予防に適している。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、本明細書で開示されるもののいずれか1つなどの耳の疾患あるいは疾病の症状を減少させ、撤回し、および/または改善する。これらの障害または疾病には多くの原因があり、限定されないが、感染、損傷、炎症、腫瘍、および医薬品あるいは他の化学薬品に対する有害な反応が挙げられる。
【0106】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、耳垢の生成を調節するために使用される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、耳垢症の処置で使用される。いくつかの実施形態において、耳垢症は疾患あるいは疾病に関連付けられる。いくつかの実施形態において、疾患あるいは疾病は、耳そう痒症、外耳炎、耳痛、耳鳴、眩暈、耳閉感、聴力損失、あるいはこれらの組み合わせである。
【0107】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、メニエール病、感音性難聴、騒音性難聴、老人性難聴(加齢性難聴)、自己免疫性耳疾患、耳鳴、聴器毒性、興奮毒性、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイハント症候群、前庭ニューロン炎、微小血管の圧迫症候群、聴覚過敏、加齢性平衡障害、中枢性聴覚情報処理障害、あるいは聴覚神経障害の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、人工内耳の性能の改良のために使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物はメニエール病の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は感音性難聴の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は騒音性難聴の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は難聴(加齢性難聴)の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は自己免疫性耳疾患の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は耳鳴の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は聴器毒性の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は興奮毒性の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は内リンパ水腫の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は迷路炎の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物はラムゼイハント症候群の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は前庭ニューロン炎の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は微小血管圧迫症候群の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は聴覚過敏の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は加齢性平衡障害の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は中枢性聴覚情報処理障害の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤と組成物は聴覚神経障害の処置および/または予防に使用される。いくつかの実施形態において、本明細書にされる耳用の製剤と組成物は、人工内耳の性能の改良のために使用される。
【0108】
耳垢の生成
耳垢の生成を調節する耳用の製剤と組成物が本明細書で開示される。耳垢(またはearwax)は外耳道(EAC)全体で見られるろう質の分泌物である。一般に、耳垢は湿ったものと乾燥したものの2つの表現型へ層化される。湿った表現型は黄茶色から暗褐色の外観を有し、高濃度の脂質と色素顆粒を特徴とする。いくつかの実施形態において、湿った耳垢は約50%の脂質を含んでいる。これはアフリカやヨーロッパの人々で優勢的に見られる。乾燥した表現型は灰色~白色の薄片状の外観を有しており、低濃度の脂質と色素顆粒を特徴とする。いくつかの実施形態において、乾燥した耳垢は約20%の脂質を含んでいる。これはアジアやアメリカ先住民の人々で優勢的に見られる。さらに、こうした2つのタイプの耳垢は遺伝学的に異なり、染色体16上のATP結合カセットC11(ABCC11)遺伝子の単一の遺伝子変化がタイプを決定する。具体的には、湿った表現型用の対立遺伝子はABCC11のコード領域の538でGを含んでおり、乾燥した表現型については、538にはAが存在する。
【0109】
耳垢は敏感な外耳道内側を滑らかにして乾燥から守り、細菌、真菌、昆虫、および異物から耳を保護する。確かに、いくつかの研究では、耳感染症の発生が耳垢の欠如に一貫して関連づけられたとき、耳垢の抗菌性特性は実証された。いくつかの実施形態において、耳垢は、細菌と真菌に対する抗菌特性を発揮する。典型的な細菌としては、限定されないが、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、および大腸菌が挙げられる。典型的な真菌としては、限定されないが、黒色アスペルギルスおよび鵞口瘡カンジダが挙げられる。
【0110】
耳垢は40以上の様々な物質で構成された混合物である。耳垢の主要な成分はケラチンであり、これは約60重量%を含む。さらなる成分は、皮脂腺と耳道腺からの分泌物、外耳道(EAC)内の毛からの線分泌物、脱落した上皮細胞、飽和および不飽和の長鎖脂肪酸、アルコール、スクワレン、ラノステロール、およびコレステロールを含む。EACは、耳介(耳殻、あるいは、頭部の側面にある目に見える外耳の肉質部分)、耳道(外耳道)、および、鼓膜としても知られている鼓膜の外部に面する部分から構成される。耳垢はEAC全体で見られる。
【0111】
脂線と耳道腺(あるいは修飾されたアポクリン腺)はEACにある2つの外分泌腺である。皮脂腺は皮膚にある外分泌腺である。これらは、粘着性の油状またはろう質の分泌物である皮脂を分泌し、これを用いて皮膚と毛を滑らかにして防水をする。毛包に接続するタイプと独立して存在するタイプの2つのタイプの脂線がある。皮脂腺が毛包に接続している場合、蓄積した皮脂は毛の基部に分泌され、その後、毛幹によって皮膚の表面に輸送される。
【0112】
皮脂腺は自然免疫に関与し、かつ炎症誘発性および抗炎症性の機能に関与することが知られている。皮脂(脂線の生成物)は同様に抗微生物特性を発揮することが示されている。皮脂はトリグリセリド、ワックスエステル、スクワレン、コレステロールエステル、コレステロール、およびサピエン酸などの脂肪酸を含む。広範囲のグラム陽性菌に対する抗菌活性をインビトロで示すことがわかっている皮脂は、遊離脂肪酸(FFA)も含んでいる。さらに、モノエン脂肪酸(例えば、オレイン酸やパルミトレイン酸)などの脂肪酸も抗菌活性を発揮することが示されている。実際に、パルミトレイン酸の投与は野生型のC57BL/6と突然変異体フレークマウスにおける細菌の病変のサイズを減少させることが示された。別の研究では、オレイン酸とパルミトレイン酸は、黄色ブドウ球菌と化膿性連鎖球菌に対して抑制的であることわかった。脂肪酸に加えて、脂線はさらに、耳垢の抗微生物特性に寄与する、hBD-1、hBD-2、およびhBD-3を含むヒトβ-デフェンシン(hBDs)、ならびに、カテリシジン抗菌性ペプチド18(hCAP-18)の37のアミノ酸長のC末端部分であるLL-37などの放出抗菌性ペプチド(AMP)を放出する。
【0113】
耳道腺あるいは修飾されたアポクリン汗腺は外耳道の皮下にある特殊な汗腺である。耳道腺は、巻かれたチューブ形状の線へと形成される細胞の内部の分泌層と細胞の外部の筋上皮層とを含む。耳道腺はより大きな管へ流出して、これは、その後、外耳道にある粗毛へ流出する。耳垢線は皮脂より比較的粘着性の弱い分泌物を分泌する。
【0114】
産生と排除のメカニズムに不均衡がある場合、異常な耳垢が生じる。耳垢の蓄積は不快感から深刻な健康上の問題まで引き起こしかねない。
【0115】
耳垢症
耳垢が押し込まれてEACおよび/または鼓膜上での固着を妨害するときに、耳垢症または耳垢栓塞が生じる。耳垢症は、子どもで10人に一人、大人で20人に一人、老人や発達遅滞の人々の3分の一以上で生じる。米国では約1200万人が毎年診療してもらっている。いくつかの実施形態において、耳垢の固着はEACの完全閉塞である。いくつかの実施形態において、耳垢の固着はEACの部分閉塞である。
【0116】
耳垢症の発生は、EAC内での耳垢の蓄積、耳垢を形成する補聴器などの通常の押し出し成形品、あるいは、耳垢を形成する綿棒またはそれ以外の耳清浄装置の使用が原因となることがあり得る。耳垢症に関連する疾患または疾病は、耳そう痒症、耳痛、耳鳴、眩暈、耳閉感、および聴力損失を含んでいる。
【0117】
耳垢症の治療は、潅注、潅注以外の手作業での除去、耳垢を柔らかくするための耳垢水、あるいはこれらの組み合わせを含んでいる。潅注は、耳洗浄による水あるいは食塩水の使用を含む。潅注以外の手作業での除去は、キュレット、プローブ、フック、鉗子あるいは吸引装置の使用を含む。耳垢水は水ベース、オイルベース、および、非水ベース、非オイルベースの薬剤を含む。例えば、水ベースの耳垢水は、酢酸、CERUMENEX(登録商標)(トリエタノールアミン・ポリペプチド・オレイン酸塩凝縮液)、COLACE(登録商標)(ドクサートナトリウム)、MOLCER(登録商標)(ドクサートナトリウム)、WAXSOLl(登録商標)、XERUMENEX(登録商標)、(2-フェノキシエタノールの中のパラオキシ安息香酸エステル類を調合されたドクセートナトリウム)、(トリエタノールアミン・ポリペプチド・オレイン酸塩凝縮液、プロピレングリコールおよびクロルブトール(chlorbutol))、過酸化水素、重炭酸ナトリウム、および無菌の食塩水を含んでいる。オイルベースの耳垢水は、アーモンド油、ラッカセイ油、オリーブオイル、鉱油/流動パラフィンの組み合わせ、CLEANEARS(登録商標)(鉱油、スクワレン、およびスペアミント(spiramint)油の組成物)、CERUMOL(登録商標)(落花生油、テレビン油、クロルブトールおよびパラジクロロベンゼンの組成物)、CIOCTYL-MEDO(登録商標)(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、とうもろこし油)、およびEAREX(登録商標)(落花生油、アーモンド油、および精留した樟脳油)を含んでいる。非水ベース、非オイルベースの耳垢水は、AUDAX(登録商標)(サリチル酸コリン、グリセリン)、DEBROX(登録商標)(過酸化カルバミド)、AURO(登録商標)(過酸化カルバミドと無水グリセリンの組成物)、およびEXTEROL(登録商標)(過酸化カルバミドと無水グリセロール)を含んでいる。
【0118】
しばしば、耳垢症の処置は深刻な合併症を引き起こす。例えば、鼓膜穿孔、外耳道裂傷、耳の感染、あるいは聴力損失などの合併症が、耳洗浄の1000回に1回の率で生じる。さらなる合併症は、外耳炎、疼痛、めまい、および卒倒または失神を含んでいる。本開示は、耳垢の除去に関連する合併症を減少させるまたは改善する、耳の組成物と処置方法の必要性を認識している。
【0119】
耳垢症に関連する疾患あるいは疾病
耳垢症に関連する疾患または疾病は、耳そう痒症、外耳炎、耳痛、耳鳴、眩暈、耳閉感、および聴力損失を含んでいる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示された耳用の製剤と組成物は、耳垢の生成を調節し、それにより、耳垢症に関連する疾患あるいは疾病を緩和する。
【0120】
耳そう痒症
耳そう痒症(すなわちそう痒性の外耳道)は、患部領域を引っ掻くという欲望または反射を引き起こすくすぐり感あるいは刺激性の感覚である。場合によっては、赤み、腫脹、痛み、および剥離が患部領域で進行することがある。耳そう痒症は様々な薬剤によって引き起こされる。いくつかの実施形態において、耳そう痒症は、外耳道へ拡散する場合、耳の内部の原発性の微生物感染により、あるいは身体からの二次感染として、生じる。いくつかの実施形態において、湿疹あるいは乾癬などの皮膚疾病は外耳道内の皮膚刺激を引き起こす。さらに、ヘアスプレー、シャンプー、シャワー用ジェル、あるいはアレルゲン、粉塵、ペット、および花粉などのアレルゲンなどの外部刺激は耳そう痒症を引き起こしかねない。いくつかの実施形態において、耳そう痒症は外耳炎などのより深刻な合併症の初期の兆候として働く。
【0121】
耳痛
耳痛(earacheまたはear pain)としても知られている耳痛(Otalgia)は、2つのタイプ、原発性耳痛および放散性耳痛に分類される。原発性耳痛は耳の内部から起こる耳痛である。放散性耳痛は耳の外部から起こる耳痛である。放散性耳痛の病因は複雑化することがあるが、いくつかの周知の数人の有名な犯人は、歯の疾病、副鼻腔炎、首の問題、扁桃炎、咽頭炎、および迷走神経と舌咽神経からの感覚枝を含む。場合によっては、放散性耳痛は頭と首の悪性腫瘍に関連付けられる。
【0122】
耳閉感
耳閉感または耳閉塞感は、耳が塞がれているか、詰められているか、充満しているような感覚と評される。耳痛に似ているため、耳閉感の病因は多様な多くの根本的な原因がある。一般に、耳閉感には耳鳴、耳痛、および難聴が伴うことがある。
【0123】
聴力損失
聴力損失は聴力の部分的または完全な損傷である。聴力損失は、3つのタイプ、伝音性難聴、感音性難聴、および混合性難聴に分類される。音が外耳道を通って鼓膜または鼓膜に効率的に伝導されないとき、伝音性難聴が生じる。いくつかの実施形態において、伝音性難聴は、健全なレベルの低下あるいはかすかな音を聞く能力の低下を含む。処置は矯正医療処置あるいは外科手術を含む。蝸牛(内耳)への損傷、あるいは蝸牛から脳までの神経経路への損傷がある場合、感音性難聴が生じる。この種の聴力損失は一般に永続的な聴力損失につながる。混合性難聴は、外耳領域と内耳領域の両方に沿って損傷が生じる、伝音性難聴と感音性難聴の組み合わせである。
【0124】
聴力損失の程度または重症度は、正常、軽微、軽症、中程度、やや重症、重症、深刻の7つの群へ分類される。加えて、聴力損失はいくつかの例において頻度に基づいて階層化される。例えば、高温にのみ影響を与える聴力損失は高周波難聴と呼ばれ、一方で、低音に影響を与えるものは低周波難聴と呼ばれる。場合によっては、聴力損失は高周波と低周波の両方に影響を与える。
【0125】
聴力損失は、耳垢症、外耳炎、耳痛、耳鳴および眩暈などのさらなる原因と症状をしばしば伴う。いくつかの実施形態において、耳垢症は聴力を40-45dB減少させることがあることが示されている。とりわけ、老人世代におけるこうした損傷は、コミュニケーションや肉体的な不動さえも困難を引き起こすことがある。
【0126】
眩暈
眩暈は身体が静止している間に回ったり揺れたりする感覚と評される。2つのタイプの眩暈がある。自覚的眩暈は身体の偽の運動感覚である。他覚的眩暈は自分の周囲が動いているという知覚である。それにはしばしば悪心、嘔吐、および平衡維持の困難さが伴う。いくつかの実施形態において、外耳炎は眩暈を引き起こす場合がある。
【0127】
メニエール病
メニエール病は、3~24時間続いて次第に鎮まる、眩暈、悪心、および嘔吐の突然の発作を特徴とする突発性の疾病である。進行性の聴力損失、耳鳴、および耳の中の圧迫感は時間とともにこの疾患に伴う。メニエール病の原因は、内耳流体の生成の増加または再吸収の減少を含む、内耳流体のホメオスタシスの不均衡に関連する可能性がある。
【0128】
メニエール病に関連する症状の原因は、内耳流体の生成の増加または再吸収の減少を含む、内耳流体のホメオスタシスの不均衡である可能性がある。
【0129】
メニエール病の原因は知られていないが、ある証拠はこの病気のウイルス性病因を示唆している。これに応じて、いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用製剤は、抗ウイルス剤、例えば、ガンシクロビル、アシクロビル、ファムシクロビル、バルガンシクロビルを含み、メニエール病の局所的な処置のために耳に投与される。
【0130】
内耳内のバソプレシン(VP)媒介アクアポリン2(AQP2)系の最近の研究は、内リンパ生成を誘発し、それにより、前庭と蝸牛構造内の圧力を増加させる際のVPの役割を示唆している。VPのレベルは内リンパ水腫(メニエール病)の場合にはアップレギュレートされることがわかり、モルモット中のVPの長期投与は、内リンパ水腫を引き起こすことが分かった。鼓室階へのOPC-31260(V2-Rの競合アンタゴニスト)の注入を含む、VPアンタゴニストによる処置は、メニエール病の症状の顕著な軽減をもたらした。他のVPのアンタゴニストは、WAY-140288、CL-385004、トルバプタン、コニバプタン、SR 121463A、およびVPA 985を含む。(Sanghi et al. Eur. Heart J. (2005) 26:538-543; Palm et al. Nephrol. Dial Transplant (1999) 14:2559-2562)。
【0131】
他の研究は、内リンパ生成物、ゆえに、前庭/蝸牛器内の圧力を制御する際のエストロゲン関連受容体β/NR3B2(ERR/Nr3b2)の役割を示唆している。マウス中のノックアウト研究は、内リンパ流体産生を制御する際のNr3b2遺伝子のタンパク質生成物の役割を実証する。Nr3b2発現は、内リンパ分泌線状辺緑細胞(strial marginal cell)と、蝸牛および前庭器の前庭暗細胞でそれぞれ局在化した。さらに、Nr3b2遺伝子のコンディショナルノックアウトは、聴覚消失と内リンパ液体量の減少をもたらした。いくつかの例では、ERR/Nr3b2に対するアンタゴニストを用いる処置は、内リンパ量の減少を助け、ゆえに、内耳構造内の圧力を変える。
【0132】
他の処置は即座の症状の対処と再発の予防を目的としている。低ナトリウム食、ならびにカフェイン、アルコール、およびタバコを避けることが提唱された。眩暈の発作を一時的に軽減する薬物は、抗ヒスタミン薬(メクリジン(アンティバート、ボニン、ドラマミン、ドリミネート)と他の抗ヒスタミン薬を含む)、および、ロラゼパムまたはジアゼパムを含むバルビツール酸および/またはベンゾジアゼピンを含む中枢神経系薬剤を含んでいる。症状を和らげるのに役立つ薬物の他の例は、スコポラミンを含む、ムスカリン性アンタゴニストを含んでいる。悪心と嘔吐は、フェノチアジン薬剤プロクロルペラジン(Compazine(登録商標)、ブッカステム、ステメチル、およびフェノチル(Phenotil)を含む抗精神病薬を含む坐剤によって軽減される。
【0133】
眩暈の症状を和らげるために、前庭機能の破壊を含むメニエール病の症状を軽減するべく外科的処置も使用されてきた。こうした処置は、内耳中の流体圧力を下げるおよび/または内耳平衡機能を破壊することを目的としている。流体圧力を下げる内リンパのシャント術は、前庭機能障害の症状を和らげるために内耳に配される。前庭神経の切断も用いられ、これは聴力を保護しつつ眩暈を制御する。
【0134】
深刻なメニエール病の処置のための前庭機能の破壊に対する別のアプローチは、前庭系中の感覚毛細胞機能を破壊する薬剤の中耳内適用であり、それによって内耳平衡機能を根絶する。ゲンタマイシンとストレプトマイシンのようなアミノグリコシドを含む様々な抗菌剤がこの処置で使用される。薬剤は、小さな針、ガーゼを備えたまたは備えていない鼓膜切開チューブ、または手術用カテーテルを用いて鼓膜を介して注入される。少量の薬剤が長期間(例えば、注入の間が1か月)にわたって投与される低用量方法、および、大量の薬剤が短い時間枠(例えば毎週)に投与される高用量方法を含む様々な投与レジメンを用いて、抗菌剤を投与する。高用量方法の方が一般に効果的であるが、場合によっては、聴力損失を引き起こすためリスクが高い。
【0135】
いくつかの例では、本明細書で開示される耳用製剤は、メニエール病を処置するべく前庭を不能にするための抗菌剤(例えばゲンタマイシンやストレプトマイシン)の投与にも役立つ。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、鼓膜内での活性薬剤の安定した放出を維持するために用いられ、これにより、複数回の注入、または、鼓膜切開チューブの挿入を必要なくなる。さらに、活性薬剤を前庭系中で局地化させ続けることにより、本明細書で開示される耳用製剤は、いくつかの実施形態において、聴力損失のリスクを減らす高用量の抗菌剤を投与するためにも使用可能である。
【0136】
メニエール症候群
メニエール病と同様の症状を呈するメニエール症候群は、例えば、梅毒感染による甲状腺疾患または内耳の炎症などの別の疾患プロセスに対する二次的な病気として知られている。したがって、メニエール症候群は、内分泌異常、電解質不均衡、自己免疫機能不全、薬物療法、感染(例えば、寄生虫感染)、または脂質異状症を含む、内リンパの正常な産生または再吸収を妨害する様々なプロセスに対する二次的な影響である。メニエール症候群に罹患した患者の処置はメニエール病の処置に似ている。
【0137】
感音性難聴
感音性難聴は、前庭蝸牛神経(第VIII脳神経としても知られている)または内耳の感覚細胞内の(先天性および後天性の)異常から生じるタイプの難聴である。内耳の主な異常は、耳有毛細胞の異常である。
【0138】
蝸牛の形成不全、染色体異常、および先天性真珠腫は、感音性難聴を引き起こす先天性異常の例である。ほんの一例として、炎症性疾患(例えば、化膿性内耳炎、鼓膜炎、流行性耳下腺炎、麻疹、ウイルス性梅毒、および自己免疫障害)、メニエール病、聴器毒性薬物(例えば、アミノグリコシド、ループ利尿薬、代謝拮抗薬、サリチル塩、およびシスプラチン)への暴露、身体外傷、老人性難聴、音響性外傷(90dBを超える音に長時間曝されること)はすべて、後天性の感音性難聴を引き起こす。
【0139】
感音性難聴を引き起こす異常が聴覚路内の異常である場合、感音性難聴は中枢性難聴と呼ばれる。感音性難聴を引き起こす異常が聴覚路内の異常である場合、感音軟調は皮膚性難聴と呼ばれる。
【0140】
いくつかの例では、内耳の構成要素または付随する神経要素が影響を受け、神経(つまり、脳の中の聴神経または聴神経経路が影響を受ける)要素または知覚要素を含む際に、感音性難聴は生じる。神経性難聴は遺伝的であるか、あるいは、音響性外傷(つまり非常に大きな騒音)、ウイルス感染、薬剤性疾患、またはメニエール病によって引き起こされる。いくつかの例では、神経性難聴は、脳の腫瘍、感染症、または脳卒中などの様々な脳と神経の疾患の結果として生じる。レフスム病(分枝脂肪酸の異常な蓄積)などのいくつかの遺伝性疾患が聴力損失に影響を与える神経の障害も引き起こす。聴神経経路は、脱髄症、例えば、特発性の炎症性の脱髄疾患(多発性硬化症を含む)、横断脊髄炎、デビック病、進行性多病巣性白質脳症、ギラン-バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、および抗MAG末梢神経障害によって損傷を受ける。
【0141】
突発難聴または感音性難聴の発生は5,000人の個体に約1人で生じ、ウイルス感染または細菌感染、例えば、流行性耳下腺炎、麻疹、インフルエンザ、水痘、サイトメガロウイルス、梅毒、または感染性腺熱、もしくは内耳器官に対する物理的な怪我によって引き起こされる。場合によっては、原因は特定されない。場合によっては、耳鳴と眩暈が突発難聴に伴い、次第に治まっていく。経口のコルチコステロイドは感音性難聴を処置するために頻繁に処方される。場合によっては、外科的処置が必要である。他の処置は、内耳の耳鳴と急性の感音性難聴の処置のために開発中の化合物であるAM-101とAM-111を含む。(Auris Medical AG, Basel, Switzerland)。
【0142】
騒音性難聴
騒音性難聴(NIHL)は、長時間続くあまりにも大きな声または音に曝されることによって引き起こされる。いくつかの例では、聴力損失は、高音量の音楽、重機または機械、飛行機、または、銃声音などの騒音に長期間曝露されることによって生じる。場合によっては、85デシベル以上の音に長時間、または、繰り返し、または、衝撃的に曝されることで、難聴が引き起こされる。NIHLは有毛細胞および/または聴神経への損傷を引き起こす。有毛細胞は、音響エネルギーを、脳に移動する電気的信号に変換する小さな感覚細胞である。場合によっては、衝撃音は永続的な即時の聴力損失を引き起こす。この種の聴力損失は、場合によっては、時間の経過とともに治る、耳または頭での音の鳴り響き、耳鳴、または、轟音音といった耳鳴を伴う。聴力損失と耳鳴は一方または両方の耳で起こり、耳鳴は、場合によっては、生涯を通して継続的に、または、時々、続く。聴力損失に至る永久的な損傷と診断されることも多い。大きな音に継続して曝されることは、衝撃音に比べてより穏やかにおきるプロセスではあるが、有毛細胞の構造に損傷を与え、聴力損失と耳鳴とを引き起こす。
【0143】
いくつかの実施形態において、耳用保護剤はNIHLを撤回し、減少させ、または改善する。NIHLを処置または予防する耳用保護剤の例としては、限定されないが、D-メチオニン、L-メチオニン、エチオニン、ヒドロキシルメチオニン、メチオニノル(methioninol)アミホスチン、メスナ(ナトリウム2-スルファニルエタン酸(sodium2-sulfanylethanesulfonate)、DとLとのメチオニンの混合物、ノルメチオニン、ホモメチオニン、S-アデノジル-L-メチオニン)、ジメチルジチオカルバミン酸、エブセレン(2-フェニル-1、2-ベンズイソセレナゾール-3(2H)-オン)、チオ硫酸ナトリウム、AM-111(細胞透過性JNK阻害剤(Laboratoires Auris SAS))、ロイコボリン、ロイコボリンカルシウム、デクスラゾキサン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0144】
老人性難聴(加齢性難聴)
老人性難聴(加齢性難聴(ARHL))は老化に起因する進行性の両側聴力損失である。ほとんどの聴力損失が高周波(つまり15あるいは16Hz以上の周波)で生じ、(男性の声とは対照的に)女性の声を聞くことが難しくなり、甲高い音(「s」と「th」など)を区別することができない。背景ノイズをフィルタ処理することが難しい。障害は、補聴器の移植、および/またはROSの形成を避ける医薬品の投与によって、最もしばしば処置される。
【0145】
障害は、内耳、中耳、および/または、VIII神経の生理機能の変化によって引き起こされる。老人性難聴を引き起こす内耳の変化は、耳の有毛細胞および/または不動毛の損失を伴う上皮萎縮、神経細胞の萎縮症、血管線条の萎縮症、および基底膜の肥厚/硬直を含む。老人性難聴に寄与するさらなる変化は、鼓膜と小骨における欠陥の蓄積を含む。
【0146】
いくつかの例では、老人性難聴を引き起こす変化は、DNA中の突然変異とミトコンドリアDNA中の突然変異の蓄積により生じるが、しかしながら、変化は、大きな騒音に曝されること、聴器毒性の薬剤に曝されること、感染、および/または、耳への血流が減少することによって悪化する。後者は、アテローム性動脈硬化、糖尿病、高血圧および喫煙に起因する。
【0147】
老人性難聴または加齢性難聴は、通常の加齢の一部として起こるとともに、内耳の螺旋状のコルチ器官にある受容体細胞が変性した結果起こる。他の原因は、内耳神経中の多くの神経線維の減少、および蝸牛にある基底膜の柔軟性の喪失のせいでもある。最も一般的には、これは、人が年をとるにつれて内耳の変化により生じるが、中耳の変化、あるいは耳から脳までの神経経路に沿う複雑な変化にも起因する。特定の病状と薬物がさらに一定の役割を果たす。いくつかの例では、老人性難聴は、らせん神経節ニューロン求心性繊維と有毛細胞(リボンシナプス)を備えたそれらのシナプスの緩やかな喪失に起因し、その結果、音を検知する感覚細胞と、聴性脳にこの情報を送信する聴神経との間の分離を引き起こす。らせん神経節ニューロンと有毛細胞の喪失も生じる。場合によっては、大きな騒音または他の耳への傷害に対して前々から晒されていると、この加齢のプロセスは悪化し、聴力損失を悪化させる。老人性難聴はさらに、「隠れた聴力損失」(聴力閾値には顕著な変化はないにもかかわらず、背景の雑音(「雑音下での会話(speech-in-noise)」)に対して音を検知することができないこと)を含む。聴力のこうした微妙な減少は、らせん神経節ニューロン求心性繊維の喪失と有毛細胞(リボン・シナプス)とのそのシナプス結合に関連付けられる。
【0148】
自己免疫性内耳疾患
自己免疫性内耳疾患(AIED)は感音性難聴の数少ない可逆的な原因の1つである。AIEDは、内耳の音声受信機能および前庭機能の両側性障害を含むことが多い、成人および子供の両方に起こるまれな障害である。AIEDの由来は、内耳構造を攻撃する、自己抗体および/または免疫細胞とみられているが、他の自己免疫疾病に関連している。多くの場合、AIEDは全身性の自己免疫症状なく生じるが、最大で三分の一の患者が、炎症性腸疾患、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、コーガン病、潰瘍性大腸炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、および強皮症などの全身性の自己免疫疾患にも苦しんでいる。多系統疾患であるベーチェット病にも一般には聴覚前庭の問題がある。食物に関連するアレルギーが蝸牛および前庭の自己免疫の原因であるといういくつかの証拠が存在するが、この疾患の原因論の重要性については、まだ議論がまとまっていない。AIEDの分類スキームが開発されている(HarrisおよびKeithleyの文献「(2002)Autoimmune inner ear disease、Otorhinolaryngology Head and Neck Surgery.91、18-32」)。
【0149】
免疫系は通常、細菌やウイルスなどの侵襲性の病原体から内耳を保護する際に重大な役割を果たす。しかし、AIED内では、免疫システムは、それ自体、デリケートな内耳組織を傷つけだす。内耳は外来抗原への局在化された免疫応答を開始する十分な能力を有していることが確立されている。外来抗原は内耳に入ると、内リンパ嚢内とその周りにいる免疫担当細胞によってまず処理される。いったん外来抗原がこれらの免疫担当細胞によって処理されると、こうした細胞は、内耳の免疫応答を調節する様々なサイトカインを分泌する。このサイトカイン放出の結果の1つが体循環から補充される炎症細胞の流入を促すことである。こうした全身性の炎症細胞は螺旋状の蝸牛軸の静脈とその支脈を通って漏出により蝸牛に入り、身体の他の部分で生じると、抗原の取り込みと調節解除に関与し始める。インターロイキン1(IL-1)は自然(非特異的)免疫反応を調整する際に重要な役割を果たし、ヘルパーT細胞とB細胞を休止させる既知の活性化因子である。ヘルパーT細胞はIL-1によって活性化されるとIL-2を産生する。IL-2の分泌は多能性T細胞、ヘルパーT細胞、細胞毒性T細胞、および抑制遺伝子T細胞のサブタイプへの分化をもたらす。IL-2は同様に、Bリンパ球の活性化においてヘルパーT細胞を補助し、かつ、内耳の免疫応答の免疫調節で中心的役割を果たしていると思われる。IL-2は、抗原チャレンジ後6時間で早くも内耳の外リンパ内で確認され、ピークレベルは抗原チャレンジの18時間後に確認された。IL-2の外リンパレベルはその後、消失し、抗原チャレンジの120時間後には外リンパ内にはもはや存在しなかった(Gloddek、Acta Otolaryngol.(1989)108,68-75)。
【0150】
IL-1βと腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の両方が免疫反応の開始と増幅に重要な役割を果たすことがある。IL-1βは、手術による外傷または非特異的反応での音響性外傷といった外傷のある状態で、らせん靱帯の線維細胞により発現される。THF-αは浸潤性の全身細胞により、または抗原の存在下で内リンパ嚢内に含まれる常在細胞により発現される。THF-αは動物モデル中の適応性の(特定の)免疫反応の一部として放出される。抗原がマウスの内耳に注入される場合、IL-1およびTNF-αは両方とも発現され、活発な免疫反応が生じる。しかしながら、抗原が内耳へ外傷を与えることなく、脳脊髄液を介して内耳へと導入されると、TNF-αのみが発現し、免疫応答が最小化される(Satoh J.Assoc.Res.Otolaryngol.(2003)、4、139-147)。重要なことに、蝸牛の外傷は単独でも最小限の免疫反応を引き起こす。こうした結果は、最大の反応を達成するために、免疫反応の非特異的および特異的な構成要素の両方が、内耳中で協調して作用することを示唆している。
【0151】
したがって、蝸牛が傷つき、抗原が注入される(あるいは、自己免疫疾患の場合に、患者が内耳抗原を対象とする免疫細胞を有している)場合、非特異的な免疫反応と特異的な免疫反応の両方は同時に活性化される。これは、THF-αとIL-1βの同時の産生をもたらし、その結果、大きく増幅されたレベルの炎症を引き起こして、内耳に大きな損傷を与える。動物モデルでのその後の実験は、特定の適応免疫応答が十分な炎症を引き起こして損傷をもたらす前に、免疫媒介性の損傷の重要な工程は、非特異的な先天性の免疫反応に内耳が慣らされることを必要とすることを確認している。結果として、特異的な免疫応答と特にTNF-αの作用とを下方制御またはブロックする薬剤は、特異的な免疫応答と非特異的な免疫応答が同時に活性化されるときに見られる過剰な免疫応答を防ぎ得る。
【0152】
いくつかの例において、本明細書に記載される耳用製剤は、自己免疫性の耳疾患の処置に使用され、抗TNF剤を含む。適切な抗TNF剤としては、限定されないが、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、およびアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))が挙げられる。ある実施形態では、抗ウイルス剤を含む本明細書で開示される製剤は、AIEDの処置のために投与される。他の実施形態では、本明細書に開示される抗菌剤製剤は、ステロイド、細胞毒性剤、コラーゲン、γグロブリン注入または他の免疫調節薬を含む、同じ疾患もしくは同じ疾患の症状を処置するのに役立つ他の医薬品と併用して、AIEDの処置のために投与される。ステロイドは例えば、プレドニゾンまたはデカドロンを含む。AIEDの処置のための細胞毒性剤は、例えば、メトトレキセート、シクロホスファミド、およびサリドマイドを含む。プラスマフェレーシス手順が随意に使用される。経口のコラーゲン、γグロブリン注入液、または他の免疫調節薬(例えば、βインターフェロン、α-インターフェロン、またはコパキソン)を用いる処置も、本明細書に開示される抗菌剤製剤と組み合わせて随意に使用される。さらなる医薬品が本明細書に開示される制御放出製剤と一緒に、または、他の投与経路方式、例えば、経口、注入、局所的、経鼻、または他の適切な手段を介して随意に投与される。追加の医薬品は随意に同時投与されるか、または様々な時間に投与される。
【0153】
耳鳴
耳鳴は、外部刺激のない状態での音の認識として定義されている。場合によっては、耳鳴は、継続的に、または、散発的に、一方または両方の耳で生じ、ほとんどの場合、響き渡るような音として記載される。ほとんどの場合、他の疾患の診断症状として用いられる。耳鳴には、2つのタイプ:他覚的耳鳴と自覚的耳鳴がある。前者は誰にでも聞こえる身体内で作成された音である。後者は罹患した個体にしか聞こえない。研究は、5000万以上の米国人がある種の耳鳴を経験していると、見積もっている。これらの5000万の内、約1200万のヒトが、激しい耳鳴を経験している。
【0154】
いくつかの例においては、耳鳴は、耳構造(例えば、不動毛)への損傷、1または複数の分子受容体の機能障害、および/または、1または複数の神経路の機能障害が原因で生じる。いくつかの例においては、耳鳴は、NMDA受容体の異常活性によって生じた興奮毒性が原因で生じる。いくつかの例においては、耳鳴は、α9および/またはα10アセチルコリン受容体の機能障害が原因で生じる。ある例では、耳鳴は内耳神経への損傷に起因する。ある実施形態では、神経伝達物質の再取り込み(例えば、細胞外の神経伝達物質の増加)の減少は、耳鳴の症状を処置および/または改善する。ある実施形態では、NK1受容体のアンタゴニズムは耳鳴の症状を処置および/または改善する。ある実施形態では、神経伝達物質の再取り込みの減少とNK1受容体のアンタゴニズムは、耳鳴の症状を処置および/または改善する。
【0155】
耳鳴にはいくつかの処置がある。第IV脳神経によって管理されるリドカインは、患者の60%乃至80%の耳鳴に関連する雑音を減少させ、または取り除く。ノルトリプチリン、セルトラリン、パロキセチン等の選択的な神経伝達物質再取り込み阻害剤は、耳鳴に対する効能も実証している。ベンゾジアゼピンも耳鳴を処置するために処方される。
【0156】
聴器毒性
聴器毒性は毒素によって引き起こされる聴力損失を指す。この聴力損失は、耳の有毛細胞、蝸牛、および/または、脳神経VIIへの外傷による。複数の薬物が聴器毒性であると知られている。多くの場合、聴器毒性は用量依存性である。聴器毒性は永久的であるか、あるいは薬物の中止により可逆的である。
【0157】
既知の聴器毒性薬物は、限定されないが、アミノグリコシドクラスの抗生物質(例えば、ゲンタマイシンおよびアミカシン)、マクロライドクラスの抗生物質のいくつかのメンバー(例えば、エリスロマイシン)、糖タンパク質クラスの抗生物質のいくつかのメンバー(例えば、バンコマイシン)、サリチル酸、ニコチン、いくつかの化学療法剤(例えば、アクチノマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、およびビンクリスチン)、ならびにループ利尿薬ファミリー薬物のいくつかのメンバー(例えばフロセミド)を含む。
【0158】
シスプラチンおよびアミノグリコシドクラスの抗生物質は、活性酸素種(「ROS」)の産生を引き起こす。ROSは、DNA、ポリペプチド、および/または脂質に損害を与えることにより細胞を直接破壊する。抗酸化剤は、ROSの形成を防ぐことによって、あるいは、それらが細胞を破壊する前に遊離ラジカルを除去することによって、ROSによる損傷を防ぐ。シスプラチンおよびアミノグリコシド抗生物質クラスの抗生物質の両方も、内耳の血管線条でメラニンを結合することによって耳に損傷を与えると考えられている。
【0159】
サリチル酸は、ポリペプチドプレスチン(prestin)の機能を阻害するので、聴器毒性と分類される。プレスチン(prestin)は、外部の耳の有毛細胞の原形質膜を横切って塩化物と炭酸塩の交換を制御することによって、外部の耳の有毛細胞運動性を調節する。それは、外部の耳の有毛細胞でのみ見られ、内部の耳の有毛細胞では見られない。これに応じて、いくつかの実施形態では、抗酸化剤を含む制御放出型の耳用組成物の使用は、限定されないが、シスプラチン治療、アミノグリコシドまたはサリチル酸の投与、あるいは他の聴器毒性薬物を含む化学療法の聴器毒性作用を防ぐか、改善するか、または減少させる。
【0160】
興奮毒性
興奮毒性は、グルタミン酸および/または同様の物質による、ニューロンおよび/または有毛細胞の死または損傷を指す。
【0161】
グルタミン酸は、中枢神経系で最も大量にある興奮性の神経伝達物質である。シナプス前細胞は、刺激に対してグルタミン酸を放出する。グルタミン酸はシナプス全体を流れ、シナプス後細胞に位置する受容体に結合し、これらの神経細胞を活性化させる。グルタミン酸受容体は、NMDA、AMPAおよびカイニン酸受容体を含んでいる。グルタミン酸輸送体は、シナプスから細胞外のグルタミン酸を除去する役目を課されている。特定の出来事(例えば、乏血または脳卒中)は輸送体に損傷を与える。これはシナプス内に蓄積する過剰なグルタミン酸を生じさせる。シナプス内の過剰なグルタミン酸は、グルタミン酸受容体の過剰な活性化を結果として生じる。AMPA受容体は、グルタミン酸とAMPAの双方の結合によって活性化される。AMPA受容体の特定のイソフォームの活性化は、ニューロンの原形質膜に位置しているイオンチャンネルの開放という結果を生じる。チャンネルが開くと、Na+とCa2+イオンがニューロンへと流れ、K+イオンがニューロンの外へと流れる。
【0162】
NMDA受容体は共アゴニストグリシンまたはD-セリンと一緒にグルタミン酸またはNMDAの両方の結合によって活性化される。NMDA受容体の活性化は、ニューロンの原形質膜に位置しているイオンチャンネルの開放を結果として生じる。しかし、これらのチャンネルはMg2+イオンによってブロックされる。AMPA受容体の活性化は、イオンチャンネルからシナプスへのMg2+イオンの排出という結果を生じる。イオンチャンネルが開き、イオンチャンネルがMg2+イオンを排出すると、Na+とCa2+イオンがニューロンへと流れ、K+イオンがニューロンの外へと流れる。
【0163】
興奮毒性は、NMDA受容体とAMPA受容体とが、過剰な量のリガンド、例えば、異常な量のグルタミン酸の結合によって、過剰に活性化されたときに生じる。これらの受容体の過剰な活性化は、それらの制御下でイオンチャンネルの過剰な開放を起こす。このことは、異常に高いレベルのCa2+とNa+とがニューロンに入ることを可能にする。これらのレベルのCa2+とNa+とが神経細胞へと流れ込むことは、より頻繁に神経細胞を興奮させ、細胞内に急激に発達した遊離ラジカルと炎症性の化合物とを結果として生じる。遊離ラジカルは最終的には細胞内の貯蔵エネルギーを使い果たし、ミトコンドリアを損傷する。さらに、過剰なレベルのCa2+とNa+イオンは、過剰なレベルの酵素(ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ、プロテアーゼを含むが、これに限定されない)を活性化する。こうした酵素の過剰な活性は、細胞骨格、原形質膜、ミトコンドリア、感覚神経のDNAに損傷を与えるという結果を生じる。
【0164】
内リンパ水腫
内リンパ水腫とは、内耳の内リンパ系内の水圧の増加を指す。内リンパと外リンパとは、複数の神経を含む薄膜によって分離されている。圧力変化は、それらを収容している膜と神経とにストレスを与える。圧力が非常に大きい場合、膜で破壊が生じる。これは流体の混合を引き起こし、結果として、脱分極の妨害と機能の一時的な喪失が起こる。前庭神経の発火の速度の変化はしばしば眩暈を引き起こす。さらに、場合によっては、コルチ器官も影響を受ける。基底膜と内外の有毛細胞との歪は、難聴および/または耳鳴を引き起こす。
【0165】
原因は、代謝性障害、ホルモンのアンバランス、自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、または真菌感染を含む。症状は、難聴、めまい、耳鳴、耳閉塞感を含む。さらに、場合によっては、眼振もある。処置は、ベンゾジアゼピン、利尿剤(水圧を下げるもの)、コルチコステロイド、および/または、抗菌性、抗ウイルス性、または、抗真菌性薬剤を含む。
【0166】
迷路炎
迷路炎は、内耳の前庭系を含む耳の迷路の炎症である。原因は細菌感染、ウイルス感染、および真菌感染を含んでいる。さらに、いくつかの例では、頭部損傷あるいはアレルギーによって引き起こされる。迷路炎の症状は、平衡維持できないこと、浮動性めまい、回転性めまい、耳鳴、および聴力損失を含む。場合によっては、回復が1~6週間かかるが、しかしながら、慢性的な症状は何年も存在する。
【0167】
迷路炎にはいくつかの処置がある。プロクロルペラジンは、制吐薬としてしばしば処方される。セロトニン再取り込み阻害剤は内耳内の新しいニューロンの成長を刺激することがわかっている。加えて、原因が細菌感染である場合、抗生物質を用いる処置が規定され、疾病がウイルス感染によって引き起こされる場合、コルチコステロイドと抗ウイルス薬を用いる処置が推奨される。
【0168】
ラムゼイハント症候群(帯状疱疹感染)
ラムゼイハント症候群は聴神経の帯状疱疹感染によって引き起こされる。この感染は激しい耳痛、聴力損失、目眩、神経により供給される、顔または首の皮膚上の、外耳の、外耳道内の水疱を引き起こす。場合によっては、顔面筋も、顔面神経が腫れによって圧迫される場合に麻痺するようになる。聴力損失は一時的または永続的であり、通常数日から数週間続く眩暈の症状を伴う。
【0169】
ラムゼイハント症候群の処置は、アシクロビルを含む抗ウイルス剤の投与を含む。他の抗ウイルス剤はファムシクロビルとバラシクロビルを含んでいる。抗ウイルス性およびコルチコステロイド治療の組み合わせを用いて帯状疱疹感染を改善する。鎮痛剤または麻薬も疼痛を軽減するために投与され、ジアゼパムまたは他の中枢神経系薬剤は目眩を抑えるために投与される。カプサイシン、リドカインパッチ、および神経ブロックも使用される。顔面神経麻痺を取り除くために圧縮した顔面神経上で手術も行われる。
【0170】
前庭ニューロン炎
前庭ニューロン炎または前庭神経障害は末梢性前庭系の急性の持続的な機能不全である。前庭ニューロン炎は前庭器の一方または両方からの求心性ニューロン入力の破壊によって引き起こされることが理論付けられる。この破壊の源はウイルス感染と前庭神経および/または迷路の急性の局所的な虚血とを含む。前庭ニューロン炎は突然の目眩の発作を特徴とし、これは、目眩の一回の発作、一連の発作、または数週間にわたって減少する持続的な疾患として顕在化する。症状は一般に悪心、嘔吐、および先の上気道感染を含むが、聴覚症状は一般にはない。目眩の最初の発作は通常重症であり、罹患した側への目の不随意にチラつくことを特徴とする疾病である眼振を引き起こす。聴力損失は通常生じない。
【0171】
いくつかの例では、前庭ニューロン炎は脳に内耳を接続する前庭神経の炎症によって引き起こされ、恐らくウイルス感染によって引き起こされる。前庭ニューロン炎の診断は、眼球運動を電子的に記録する方法である通常眼振を使用する電気眼振検査、対するテストを含んでいる。他の原因が眩暈の症状に一定の役割を果たすことがあるかどうか判断するために磁気共鳴画像も行われる。
【0172】
前庭ニューロン炎の処置は典型的には、疾患がそれ自体で消えるまで疾患(主として眩暈)の症状を緩和することを含んでいる。眩暈の処置は多くの場合メニエール病と同一であり、メクリジン、ロラゼパム、プロクロルペラジン、またはスコポラミンを随意に含む。嘔吐が深刻な場合、流体と電解液も静脈内に投与される。疾患が十分に初期に検知される場合、プレドニゾロンのようなコルチコステロイドも与えられる。
【0173】
いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤を含む本明細書で開示される組成物は、前庭ニューロン炎の処置のために投与される。さらに、いくつかの実施形態において、組成物は、抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン、またはステロイドを含む疾患の症状を処置するために一般に使用される他の薬剤と共に投与される。眩暈の処置はメニエール病の処置と同一であり、メクリジン、ロラゼパム、プロクロルペラジン、またはスコポラミンを含むことがある。嘔吐が深刻な場合、流体と電解液も静脈内に投与される。
【0174】
前庭ニューロン炎を診断する際の最も重要な発見は自発的で一方向性の水平性眼振である。これにはしばしば悪心、嘔吐、および平衡維持の困難さが伴う。これには一般には、聴力損失あるいは他の聴覚症状は伴わない。
【0175】
迷路炎にはいくつかの処置がある。ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、メクリジン、およびプロメタジンなどのH1-受容体アンタゴニストは、前庭刺激を縮小し、抗コリン作用性効果によって迷路機能を低下させる。ジアゼパムとロラゼパムなどのベンゾジアゼピンもGABAA受容体に対する効果により前庭応答を阻害するために使用される。抗コリン作用薬(例えばスコポラミン)も処方される。これらは前庭小脳の経路内での伝導を抑えることにより機能する。最後に、コルチコステロイド(つまりプレドニゾン)は、前庭神経と関連する器官の炎症を改善するために処方される。
【0176】
微小血管圧迫症候群
「血管の圧縮」あるいは「神経血管の圧縮」とも呼ばれる微小血管圧迫症候群(MCS)は、目眩と耳鳴を特徴とする障害である。これは、血管による脳神経VIIIの刺激によって引き起こされる。MCSを抱える被験体で見られる他の症状としては、限定されないが、重篤な運動不耐性および神経痛性様の「急回転(quick spins)」が挙げられる。MCSはカルバマゼピン、TRILEPTAL(登録商標)、およびバクロフェンで処置される。さらに、それは、いくつかの症例でも外科的に処置される。
【0177】
聴神経腫瘍
聴神経腫瘍(聴神経腫、聴神経鞘腫、前庭神経鞘腫、および第8神経腫を含む)は、シュワン細胞、神経を囲む細胞内に由来する腫瘍である。聴神経腫は、頭蓋骨由来の全ての腫瘍の約7乃至8%の割合を占めており、患者の神経線維腫症の診断にしばしば関係する。腫瘍の位置によって、いくつかの症状は難聴、耳鳴めまい、平衡失調を含む。場合によっては、腫瘍が大きくなるに連れて、他の一層重篤な症状が表れ、これは脳と、口、目、または顎との間の接続に影響を与える顔面神経または三叉神経を圧迫する。小さな腫瘍は、顕微鏡手術または定位放射線放射技術(分割定位放射線治療を含む)によって除去される。悪性のシュワン腫は、化学治療薬(ビンクリスチン、アドリアマイシン、シクロホスファミド、イミダゾールカルボキサミドを含む)によって処置される。
【0178】
聴覚神経障害
聴覚神経障害(AN)も、聴覚神経障害/聴覚同期不全(AN/AD)あるいは聴覚神経障害スペクトル障害(ANSD)として知られている。聴覚神経障害は、蝸牛内の外毛細胞が存在して機能的であるが、聴覚情報が聴神経と脳に適切に送信されない聴力損失を指す。
【0179】
良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症は、卵形嚢から三半規管の1つ(多くの場合、後部三半規管)への浮遊している炭酸カルシウム結晶(耳石)の移動によって引き起こされる。頭部の移動は、異常な内リンパ変位と結果のめまいの感覚とを生じる耳石の移動を、結果として生じる。めまい発作は、普通、約1分の間続き、他の聴覚症状を伴って起きることは稀である。
【0180】
耳の癌
原因は知られてないが、耳の癌は、長期間および未処置の耳炎にしばしば関連付けられ、少なくともいくつかの例においては、慢性炎症と癌の進行との間のつながりを示唆している。いくつかの例では、耳の腫瘍は、良性または悪性のものがあり、外耳、中耳、内耳にできる。耳の癌の症状は耳漏、耳痛、聴力損失、顔面神経麻痺、耳鳴、および目眩を含んでいる。治療の選択肢は限られており、手術、放射線療法、化学療法、およびこれらの組み合わせを含む。同様に、追加の医薬品は、癌に関する症状や疾病を処置するのに使用され、顔面神経麻痺の場合にはコルチコステロイドを、耳炎が現れたときには抗菌剤を含む。
【0181】
耳の癌を治療するために従来の細胞毒性剤の全身投与が用いられ、これは、放射線療法とメトトレキサートと組み合わせたシクロホスファミド(CHOP化学療法中の)の全身的な投与と、外頚動脈を通るメトトレキサートの潅流とを含む。しかしながら、活性薬剤の全身投与を必要とするこうした処置は、本明細書で議論される同じ欠点に苦しめられている。すなわち、比較的高用量の薬剤が、耳で必要な治療薬量を得るために要求され、その結果、望ましくない有害な副作用が増えてしまう。ゆえに、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物と製剤中の細胞毒性剤の局所投与により、有効投与量の減少と、副作用の発生率および/または重傷度の減少とを伴う耳のがん処置がもたらされる。耳のがん処置のための、細胞毒性剤(例えば、メトトレキサート、シクロホスファミド、サリドマイド)の全身投与の典型的な副作用は、貧血症、好中球減少症、挫傷、吐き気、皮膚炎、肝炎、肺線維症、催奇形、末梢性神経障害、疲労、便秘、深部静脈血栓、肺水腫、無気肺、誤嚥性肺炎、低血圧、骨髄抑制、下痢、皮膚や爪の黒ずみ、脱毛、髪の色と質感の変化、無気力、出血性膀胱炎、癌腫、口のびらん、免疫減少を含む。
【0182】
ある実施形態において、細胞毒性剤は、メトトレキサート(RHEUMATREX(登録商標)、アメトプテリン)、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、およびサリドマイド(THALIDOMID(登録商標))である。いくつかの実施形態において、化合物は、抗炎症特性を有しており、AIEDを含む、耳の炎症性疾患を処置するため、本明細書で開示される製剤や組成物中で用いられる。
【0183】
メトトレキサート、シクロホスファミド、およびサリドマイドの全身投与は、耳の癌と同様に、AIED、メニエール病、およびベーチェット病を含む炎症性の耳疾患等の耳の疾患を処置するために現在使用されるか、または、研究されているが、細胞毒性剤は重大な副作用の可能性がないわけではない。さらに、有効性を示すが安全性の理由のために承認されていない細胞毒性剤も、本明細書で開示される実施形態内で考慮される。いくつかの実施形態において、耳の癌と同様に、自己免疫および/または炎症性疾患の処置のための標的となる耳構造に対する細胞毒性剤の局所的な適用により、全身投与で経験される有害な副作用は減少するか、取り除かれる。いくつかの実施形態において、本明細書で考慮される細胞毒性剤を用いる局所的処置は、標的とされた疾患の有効な処置のために必要とされる薬物の量を減少させ、これは、例えば、内耳および/または中耳内での活性薬剤の保持の増大、内耳での生物学的血液障壁の存在、または、中耳への十分な浸透性アクセスの欠如に起因する。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物、製剤、および方法で使用される細胞毒性剤は、メトトレキサート、シクロホスファミド、およびサリドマイドを含む、細胞毒性剤の代謝物、塩、多形体、プロドラッグ、アナログ、および誘導体である。例えば、親化合物の細胞障害性および抗炎症性の特性を少なくとも部分的に保っている、メトトレキサート、シクロホスファミド、および、サリドマイドといった細胞毒性剤の代謝物、塩、多形体、プロドラッグ、アナログ、および誘導体が特に好ましい。ある実施形態では、本明細書で開示される製剤と組成物中で用いられるサリドマイドのアナログは、レナリドマイド(REVIMID(登録商標))とCC-4047(ACTIMID(登録商標))である。
【0185】
シクロホスファミドは、全身投与されたときにインビボで代謝を経験するプロドラッグである。酸化代謝物4-ヒドロキシシクロホスファミドは、アルドホスファミドと平衡して存在し、2つの化合物は活性薬剤ホスファミドマスタードと分解副産物アクロレインの輸送形態としての機能を果たす。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤と組成物へと組み込まれる好ましいシクロホスファミド代謝物は、4-ヒドロキシシクロホスファミド、アルドホスファミド、ホスファミドマスタード、およびこれらの組み合わせである。
【0186】
とりわけ耳の癌の処置のために本明細書で開示される組成物、製剤、および方法で使用される他の細胞毒性剤は、以下を含む任意の従来の化学療法剤である:アクリジンカルボキサミド、アクチノマイシン、17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、アミノプテリン、アムサクリン、アントラサイクリン、抗悪性腫瘍薬、抗新生物薬、5-アザシチジン、アザチオプリン、BL22、ベンダムスチン、ビリコダル、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン、ブスルファン、カリクリン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、クロラムブチル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、ジクロロ酢酸、ディスコデルモリド、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エリブリン、エストラムスチン、エトポシド、エキサテカン、エクシスリンド、フェルギノール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ホスフェストロール、ホテムスチン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、IT-101、イダルビシン、イホスファミド、イミキモド、イリノテカン、イロフルベン、イクサベピロン、ラニキダル、ラパチニブ、レナリドミド、ロムスチン、ルトテカン、マホスファミド、マソプロコール、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ネララビン、ニロチニブ、オブリメルセン、オキサリプラチン、PAC-1、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、ピクサントロン、プリカマイシン、プロカルバジン、プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ)、ラルチトレキセド、レベッカマイシン、ルビテカン、SN-38、サリノスポラミドA、サトラプラチン、ストレプトゾトチン、スウェインソニン、タリキダール、タキサン、テガフール-ウラシル、テモゾロミド、テストラクトン、チオTEPA、チオグアニン、トポテカン、トラベクテジン、トレチノイン、四硝酸トリプラチン、トリス(2-クロロエチル)アミン、トロキサシタビン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、およびゾスキダル。
【0187】
中枢性聴覚情報処理障害
聴覚処理障害(APD)とも呼ばれる中枢性聴覚情報処理障害(CAPD)は、脳が聴覚情報を処理する方法に影響を与える様々な障害を記載するための一般的な用語である。CAPDを抱える個体は通常、外耳、中耳、および、内耳(末梢聴覚)の正常な構造と機能を持っている。しかしながら、こうした個体は聴覚情報を処理することができず、これにより、音、とりわけ、会話からの音を認識および解釈することが難しくなる。中枢性聴覚情報処理障害は発育性または後天性のいずれかであり、中枢神経系の機能不全から発生すると考えられている。
【0188】
真珠腫
真珠腫はしばしば中耳で見られる増殖性嚢胞である。真珠腫は先天性または後天性として分類される。後天性の真珠腫は(第1に)鼓膜の退縮および/または(第2に)鼓膜内の破れに由来する。
【0189】
最も一般的な初期真珠腫は、上鼓室へと退縮している弛緩部に由来している。弛緩部は、退縮しつづけているため、上鼓室の側壁が緩やかにむしばまれる。これにより、上鼓室の側壁内に緩やかに広がる欠陥が生じる。あまり一般的でないタイプの初期後天性真珠腫は、後中耳内への鼓膜退縮の後方象限の退縮に由来する。鼓膜が退縮するにつれて、扁平上皮はアブミ骨を包み、鼓室洞へと退縮する。第2の真珠腫は、鼓膜への損傷(例えば、内耳の外傷、または、外科手術による穿孔)に由来する。
【0190】
真珠腫の成長に関連する合併症には、破骨細胞への外傷、いくつかの例においては、脳からの耳の頂部を分離している脛骨の劣化を含む。破骨細胞への損傷は、真珠腫の拡大に由来する骨への持続的な加圧に由来する。さらに、真珠腫の上皮内に多数のサイトカイン(例えば、TNF-α、TGF-β1、TGF-β2、IL-1、およびIL-6)が存在していることから、周囲の骨はさらに劣化する。
【0191】
真珠腫を抱える患者にはしばしば、耳痛、難聴、粘液膿性排出物、および/または、めまいがある。身体検査は真珠腫の存在を確認する。身体検査によって特定される症状には、小骨、および、粘膜膿と肉芽組織とで満たされている耳道に対する損傷を含む。
【0192】
真珠腫の有効な医学療法は現在存在しない。真珠腫は血液供給がないため、抗生物質の全身投与では処置できない。抗生物質の局所投与はしばしば、真珠腫を処置できない。薬剤性内耳損傷ある種の抗生物質、利尿剤(例えば、エクタリン酸とフロセミド)、アスピリン、アスピリン様物質(例えば、サリチル酸)、およびキニーネを含む薬物の投与による損傷。内耳器官の劣化は、作用する薬物とその代謝物のクリアランスを減少させる結果を生じる、同様の機能障害によって促進される。いくつかの例では、こうした薬物は、聴覚および平衡感覚の両方に影響を及ぼすが、聴覚がより強く影響を受ける可能性が高い。
【0193】
例えば、ネオマイシン、カナマイシン、アミカシンは平衡よりも聴覚の方に強く作用する。抗生物質であるバイオマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシンは、聴覚と平衡感覚の両方に影響を及ぼす。別の一般的に投与される抗生物質であるストレプトマイシンは、難聴よりも目眩を誘発し、暗闇での歩行が困難になり、一歩ずつ動いているという環境的な感覚を誘発するダンディ症候群を引き起こす。アスピリンは、きわめて高用量で接種する場合には、一時的な難聴と、外部の音が存在しない状態で音を認識する状態である耳鳴を引き起こす。同様に、キニーネ、エタクリン酸、およびフロセミドは、いくつかの例では、一時的なまたは永久的な難聴を引き起こす。
【0194】
遺伝性障害
Scheibe、Mondini-Michelle、ワールデンブルグ、Michel、アレキサンダーの耳変形、両眼隔離症、Jervell-Lange Nielson、レフサムとアッシャー症候群を含む遺伝性障害は、感音性難聴患者のおよそ20%で見られる。いくつかの例では、先天性耳奇形は、膜質迷路、骨迷路、またはその両方の発育の異常に起因する。重度の聴力損失と前庭機能異常に加えて、遺伝的奇形は、再発する髄膜炎の進行、脳脊髄液(CSF)漏れ、外リンパの瘻孔を含む他の機能不全にも関連付けられる。慢性感染症の処置は遺伝性障害患者で必要とされる。
【0195】
聴覚過敏
聴覚過敏は、特定の周波と音量範囲に対する感度の増大(通常の環境音に対する耐性の崩壊)を特徴とする疾病である。場合によっては、聴覚過敏は徐々に生じ、他の例では、聴覚過敏は急に現れる。重篤な聴覚過敏を抱える人は日々の音を許容することが難しく、こうした音の一部は罹患した人には不愉快であるか、痛みを伴うほど大きく思えるが、他人にはそうではない。
【0196】
中耳の炎症性障害
例として、急性中耳炎(AOM)、滲出性中耳炎(OME)、および慢性中耳炎を含む中耳炎(OM)は、成人にも子供にも起こる疾病である。OMの感受性は多元的であり、環境因子、微生物因子、および宿主因子を含んで複合的である。細菌感染は、肺炎球菌感染に起因する事例の40%を超えてOMの事例の大部分を占める。しかしながら、ウイルス原因は、他の微生物因子と同様に、場合によってはOM疾病の原因でもある。
【0197】
原因物質にかかわらず、インターロイキンとTNFを含むサイトカイン産生の増加は、OMに罹患した個体の滲出媒体中で観察された。IL-1β、IL-6、およびTNF-αは、ウイルスおよび細菌への感染後に急性の炎症反応を誘発する急性期サイトカインである。遺伝学的研究は、TNF-α SNP(一塩基多型)の発生と、AOMに冒され、その後に鼓膜切開チューブの設置を要する小児科患者におけるOMに対する感受性の増大との相互関係を実証することによってサイトカインとOMとの間の関連性を支持している。肺炎球菌接種で誘発されOMの動物モデルでは、TNF-αとインターロイキンのレベルは、OMの初期の発育段階で増加し、TNF-αレベルは接種の72時間後に着実に増加することがわかった。さらに、より高いTNF-αレベルが多くの鼓膜切開チューブの留置の病歴に関連付けられ、慢性的なOMの事例におけるTNF-αのある役割を示唆している。最後に、TNF-αとインターロイキンの直接注入は、モルモットモデルにおいて中耳の炎症を誘発することが示されている。こうした研究はサイトカインが中耳におけるOMの起原と維持において果たす役割を支持するものである。
【0198】
いくつかの例では、OMがウイルス、細菌、またはその両方によって引き起こされるため、正確な原因と、ゆえに最も適切な処置を特定することが困難なことが多い。中耳内でのOMの処置の選択肢は、アモキシシリン、クラブラン酸、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、セフロキシム、クラリスロマイシン、およびアジスロマイシン、ならびに他のセファロスポリン、マクロライド、ペニシリン、あるいはスルホンアミドなどの抗生物質を用いる処置を含む。さらに、流体を流出させて、外耳と中耳の間の圧力の平衡を保つために、鼓膜を通って患者の中耳へ鼓膜切開チューブを挿入するための手術である鼓膜切開を含む外科的処置が利用可能である。いくつかの例では、付随する発熱または痛みの効果を処置するために、ベンゾカイン、イブプロフェン、およびアセトアミノフェンを含む下熱薬と鎮痛剤が処方される。実験用のリポ多糖類(LPS)により誘発されたOM動物モデルにおけるTNF-α阻害剤を用いる前処理は、OMの発育を抑えることが示されており、OMまたはOMEの処置におけるある役割を示唆している。加えて、こうした疾病の処置は、他の炎症反応メディエーター(血小板活性化因子アンタゴニスト、一酸化窒素合成酵素阻害剤、およびヒスタミンアンタゴニストを含む)との組み合わせにおけるTNF-α阻害剤の使用を含む。
【0199】
上で議論したように、メトトレキサート、シクロホスファミド、およびサリドマイドはすべて、AIEDを処置するために全身投与される、細胞毒性の小分子薬剤である。いくつかの実施形態において、化合物は、とりわけ、TNF活性を干渉することにより直接的な抗炎症作用を有することにより、OMを含む中耳の炎症性障害の処置のために本明細書で開示された組成物と製剤中で役立つ。他の実施形態では、OMを含む中耳の炎症性障害を処置する親の細胞毒性剤の能力を保持するメトトレキサート、シクロホスファミド、およびサリドマイドの代謝物、塩、多形体、プロドラッグ、アナログ、および誘導体は、OMを含む中耳の炎症性障害の処置のために本明細書で開示された製剤で役立つ。ある実施形態では、本明細書に開示された組成物と製剤へ組み込まれるシクロホスファミドの好ましい代謝物は、4-ヒドロキシシクロホスファミド、アルドホスファミド、ホスファイドマスタード、それらの組み合わせのものを含む。
【0200】
さらに、他の耳の障害は、炎症反応の側面を有するか、または、自己免疫疾病(メニエール病、非急性難聴、または騒音性難聴を含む)にわずかに関連している。こうした障害も、本明細書に開示された細胞毒性薬剤製剤による効用として明示的に考慮され、したがって、開示された実施形態の範囲内にある。
【0201】
外耳の炎症性障害
水泳選手の耳とも呼ばれる外耳炎(OE)は外耳の炎症および/または感染症である。OEは外耳中の細菌によって引き起こされることが多く、これは外耳道の皮膚への損傷を伴う感染を確立する。OEを引き起こす主要な病原菌はシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であるが、疾患はグラム陽性細菌とグラム陰性細菌の他の多くの菌種の存在に関連付けられる。OEはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)とアスペルギルス(Aspergillus)を含む外耳中の真菌感染によっても引き起こされることがある。OEの症状は耳痛、腫れ、および耳漏を含む。疾病が著しく進行した場合、OEは腫れと分泌の結果として一時的な伝音性難聴を引き起こす。
【0202】
OEの処置は外耳道から悪化している病原体を取り除き、炎症を減らすことを含み、これは、抗炎症薬、例えば、ステロイドと共に、抗菌剤、例えば抗菌剤と抗真菌剤の組み合わせを投与することにより通常達成される。OEの処置のための典型的な抗菌薬は、アミノグリコシド(例えば、ネオマイシン、ゲンタマイシン、およびトブラマイシン)、ポリミキシン(例えば、ポリミキシンB)、フルオロキノロン(例えば、オフロキサシンとシプロフロキサシン)、セファロスポリン(例えば、セフロキシム、セファクロル、セフプロジル、ロラカルベフ、セフジニル、セフィキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフチブテン、およびセフトリアキソン)、ペニシリン(例えば、アモキシシリン、アモキシシリン-クラブラン、およびペニシリナーゼ耐性ペニシリン)、およびこれらの組み合わせを含んでいる。OEの処置のための典型的な抗真菌剤は、クロトリマゾール、チメロサール、M-酢酸クレシル、トルナフタート、イトラコナゾール、およびこれらの組み合わせを含む。細菌と真菌の感染を処置するために、酢酸も単独で、および他の薬剤と組み合わせて耳に投与される。点耳液は活性薬剤の投与のためにビヒクルとして使用されることが多い。耳の腫脹が著しく進行して点耳液が外耳道にさほど浸透しない場合には、処理溶液の浸透を促すためにガーゼが外耳道に挿入される。顔と首まで及ぶ広範囲な軟組織の腫れの場合には経口の抗生物質も投与される。OEの痛みが正常な活動、例えば睡眠を妨害するほど非常に激しい場合には、根本的な炎症と感染症が緩和されるまで、局所的な鎮痛薬または経口の麻薬のような鎮痛剤が与えられる。
【0203】
注目すべきことに、ネオマイシンを含む点耳液などの複数のタイプの局所的な点耳液は、外耳道で使用するのに安全かつ効果的であるが、中耳を刺激したり、中耳に対して聴器毒性であったり、鼓膜が影響を受けていないと分からない限り、こうした局所的な調製物を使用してはならないという懸念を誘発することになる。いくつかの実施形態において、鼓膜が影響を受けていないときでさえ、OEの処置のための本明細書で開示される製剤を利用することで、中耳に損傷を与える可能性のある活性薬剤の使用が可能となる。具体的には、本明細書で開示される制御放出製剤は、いくつかの例では、保持時間を改善して外耳に局所的に適用され、それにより、活性薬剤が外耳道から中耳の中へ漏れるという懸念を払拭することができる。さらに、ネオマイシンなどの聴器毒性の薬剤が使用される場合、耳用保護剤が随意に加えられる。
【0204】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物、とりわけ、粘稠性および/または粘膜付着性の高い製剤を用いる深刻なOEの処置は、耳用ガーゼを拡大使用する必要性をなくす。具体的には、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物は、製剤技術の結果として外耳道中の滞留時間を増加させ、それにより、外耳中でのその存在を維持するための装置を必要としなくなる。いくつかの実施形態において、製剤は針または耳用の点滴器を用いて外耳に適用され、活性薬剤は耳用ガーゼの力を借りることなく炎症部位で維持される。
【0205】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗菌製剤を用いるOEの処置は、鼓膜の緊張部の慢性的な炎症を特徴とするOEの特殊な形態である肉芽性鼓膜炎(granular myringitis)の処置を包含する。鼓膜の外部の上皮層と下部の線維層は増殖性の肉芽組織に取って代えられる。主な症状は悪臭のする耳漏である。プロテウス(Proteus)とシュードモナス(Psuedomonas)の種を含む様々な細菌と真菌が疾患を引き起こす。これに応じて、抗菌剤または抗真菌剤を含む本明細書で開示される抗菌剤製剤は、いくつかの実施形態において、肉芽性鼓膜炎の処置に役立つ。
【0206】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗菌製剤を用いるOEの処置は慢性的な狭窄性外耳炎の処置を包含する。慢性的な狭窄性外耳炎は一般に細菌または真菌によって引き起こされる反復性感染症を特徴とする。主な症状は外耳道のそう痒、耳漏、および慢性的な腫れである。抗菌剤または抗真菌剤を含む本明細書で開示される抗菌剤製剤は、慢性的な狭窄性外耳炎の処置に役立つ。
【0207】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗菌製剤を用いるOEの処置は、側頭骨と隣接する骨を含む感染である悪性または壊死性の外耳炎の処置を包含する。悪性外耳道炎は一般に外耳炎の合併症である。これは主として免疫に血管のある人、とりわけ真性糖尿病の年配の人に生じる。悪性外耳道炎はシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)によってしばしば引き起こされる。処置は、可能な場合には抗菌治療と鎮痛剤と併用して、免疫抑制の矯正を一般に含む。これに応じて、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される抗菌剤製剤は、悪性または壊死性の外耳炎の処置に役立つ。
【0208】
中耳炎(OM)(例として、急性中耳炎(AOM)、慢性中耳炎、滲出液を伴う中耳炎(OME)、滲出性中耳炎、および慢性滲出性中耳炎を含む)は、大人と子供の双方を冒す疾病である。OMの感受性は多元的であり、環境因子、微生物因子、および宿主因子を含んで複合的である。細菌感染は、肺炎球菌感染に起因する事例の40%を超えてOMの事例の大部分を占める。しかしながら、場合によっては、他の微生物と同様にウイルスもさらにOM疾患の主な原因となる。
【0209】
いくつかの例では、OMがウイルス、細菌、またはその両方によって引き起こされるため、正確な原因と、したがって最も適切な処置を特定することが困難なことが多い。OMに対する処置の選択肢は、ペニシリン(例えば、アモキシシリンとアモキシシリン-クラブラン)、クラブラン酸、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、セファロスポリン(例えば、セフロキシム、セファクロル、セフプロジル、ロラカルベフ、セフジニル、セフィキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフチブテン、およびセフトリアキソン)、マクロライドおよびアザライド(例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、およびアジスロマイシン)のような抗生物質、スルホンアミド、およびこれらの組み合わせを含む。さらに、流体を流出させて、外耳と中耳の間の圧力の平衡を保つために、鼓膜を通って患者の中耳へ鼓膜切開チューブを挿入するための手術である鼓膜切開を含む外科的処置が利用可能である。付随する発熱または痛みの効果を処置するために、ベンゾカイン、イブプロフェン、およびアセトアミノフェンを含む下熱薬と鎮痛剤が処方される。
【0210】
原因物質にかかわらず、インターロイキンとTNFを含むサイトカイン産生の増加は、OMに罹患した個体の滲出媒体中で観察された。IL-1β、IL-6、およびTNF-αは、ウイルスおよび細菌への感染後に急性の炎症反応を誘発する急性期サイトカインである。さらに、より高いTNF-αレベルが多くの鼓膜切開チューブの留置の病歴に関連付けられ、慢性的なOMの事例におけるTNF-αのある役割を示唆している。最後に、TNF-αとインターロイキンの直接注入は、モルモットモデルにおいて中耳の炎症を誘発することが示されている。こうした研究はサイトカインが中耳におけるOMの起原と維持において果たす役割を支持するものである。したがって、OMの処置は、病原体を除去し、かつ炎症の症状を処置するために抗炎症薬と併用して、抗菌剤を使用することを含む。こうした処置は、いくつかの実施形態において本明細書で開示される抗菌製剤と併用して、ステロイド、TNF-α阻害剤、血小板活性因子アンタゴニスト、一酸化窒素合成酵素阻害剤、ヒスタミンアンタゴニスト、およびその組み合わせの使用を含む。
【0211】
乳様突起炎は耳の後ろの側頭骨の一部である乳様突起の感染である。乳様突起炎は一般に治療していない急性中耳炎によって引き起こされる。乳様突起炎は急性または慢性である。症状は耳痛、紅斑、およびと耳漏と同様に、乳様突起領域の痛み、腫れ、および圧痛を含む。乳様突起炎は一般に細菌が中耳から乳突蜂巣まで広がると生じ、ここで炎症は骨構造に対する損傷を引き起こす。最も一般的な病原菌は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、およびグラム陰性桿菌である。これに応じて、いくつかの実施形態において、細菌に対して効果的な抗菌薬を含む本明細書で開示される抗菌剤製剤は、急性乳様突起炎と慢性乳様突起炎を含む乳様突起炎の処置に役立つ。
【0212】
水疱性鼓膜炎は、マイコプラズマ細菌を含む様々な細菌とウイルスによって引き起こされる鼓膜の感染症である。この感染症は鼓膜とその付近の耳道の炎症の原因となり、鼓膜上で水疱の形成を引き起こす。水疱性鼓膜炎の主な症状は痛みであり、これは鎮痛剤の投与により取り除かれる。いくつかの実施形態において、抗菌剤と抗ウイルス剤を含む本明細書で開示される抗菌製剤は、水疱性鼓膜炎の処置に役立つ。
【0213】
耳管カタルまたは耳管炎は耳管の炎症と腫れから引き起こされ、カタルの蓄積をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される抗菌製剤は耳管炎の処置に役立つ。
【0214】
迷路炎、例えば、漿液性迷路炎は、前庭系を収容する1つ以上の迷路を含む内耳の炎症である。主な症状は眩暈であるが、この疾患は聴力損失、耳鳴、および眼振も特徴とする。迷路炎は急性で、1~6週間続いて深刻な眩暈と嘔吐を伴うこともあれば、慢性で、数か月または数年にわたって続く症状を伴うこともある。迷路炎は、ウイルス感染または細菌感染によって一般に引き起こされる。いくつかの実施形態において、抗菌剤と抗ウイルス剤を含む本明細書に開示される抗菌製剤は、迷路炎の処置に役立つ。
【0215】
顔面神経炎は、顔面神経を苦しめる末梢神経系の炎症である神経炎の形態である。この疾患の主な症状はピリピリ感と灼熱感、ならびに影響を受けた神経の刺すような痛みである。深刻な場合では、その近くの筋肉のしびれ、感覚消失、および麻痺がある。この疾患は、一般に帯状疱疹または単純疱疹のウイルス感染によって引き起こされるが、細菌感染(例えばハンセン病)に関連付けられる。いくつかの実施形態において、抗菌剤と抗ウイルス剤を含む本明細書に開示される抗菌製剤は、顔面神経炎の処置に役立つ。
【0216】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗菌製剤はさらに側頭骨放射線骨壊死の処置に役立つ。
【0217】
加速度病
動揺病として知られている加速度病は、視覚的に知覚した動作と前庭系の動作感覚との間に離断がある状態である。めまい、疲労および悪心は加速度病の最も一般的な症状である。ジメンヒドリナート、シンナリジン、およびメクリジンはすべて加速度病の全身療法薬である。加えて、ベンゾジアゼピンと抗ヒスタミン薬は加速度病を治療する際に有効性が実証されている。
【0218】
デバルクマン症候群
デバルクマン症候群は、持続的な動作事象、例えば、クルーズ、自動車旅行、または飛行機での移動の後に通常生じる疾病である。これは、持続的な動いている感覚、平衡を維持する難しさ、疲労、および認知障害を特徴とする。症状はさらに、めまい、頭痛、聴覚過敏、および/または耳鳴を含んでいる。多くの場合、症状は一か月を越えて続く。処置はベンゾジアゼピン、利尿薬、ナトリウムチャネル遮断薬、および三環系抗うつ薬を含んでいる。
【0219】
蝸牛前庭障害を引き起こす他の微生物感染症
他の微生物感染症は聴力損失を含む蝸牛前庭の障害を引き起こすことが知られている。こうした感染症は、風疹、サイトメガロウイルス、伝染性単核症、水痘帯状疱疹(水痘)、肺炎、細菌(ライム病)のボレリア(Borrelia)種、および特定の真菌感染を含む。これに応じて、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される制御放出抗菌剤製剤はこうした耳の感染症の局所的な処置にも使用される。
【0220】
遊離ラジカルによって引き起こされる耳の障害
遊離ラジカルは高反応性原子、分子、またはイオンであり、その反応性は不対電子の存在に起因する。活性酸素種(「ROS」)は分子酸素の連続する減少の結果生じる。所望の活性酸素種(「ROS」)の例としては、限定されないが、超酸化物、過酸化水素、およびヒドロキシルラジカルが挙げられる。ROSは、ATPの産生の副産物として自然に産生される。場合によっては、ROSはシスプラチンとアミノグリコシドの使用にも起因する。さらに、音響性外傷によって引き起こされた不動毛へのストレスで、耳の有毛細胞はROSを産生する。
【0221】
いくつかの例では、ROSは、核DNAとミトコンドリアDNAに損傷を与えることにより細胞を直接破壊する。前者に対する損傷は、聴覚細胞の機能および/またはアポトーシスを損なう突然変異を引き起こす。後者に対する損傷はしばしば、エネルギー生産の低下とROS産生の増加をもたらし、この両方とも、細胞の機能またはアポトーシスを損なう。さらに、ROSは脂質を含むポリ不飽和化脂肪酸を酸化させ、タンパク質を含むアミノ酸を酸化させ、および、酵素の活性に必要な補助因子を酸化させることにより、細胞を破損するか殺す。抗酸化剤は、ROSの形成を防ぐことによって、あるいは、それらが細胞を破損する前にROSを除去することによって、ROSによって引き起こされた損傷を改善する。
【0222】
ROSによるミトコンドリアへの損傷は、聴力損失、とりわけ、老化による聴力損失でしばしば見られる。ATPの損失は内耳中の神経の機能の損失に相互に関連する。さらに、それは内耳の生理学的変化を引き起こす。さらに、ミトコンドリアへの損傷はしばしば、細胞の劣化と内耳細胞のアポトーシスの速度の増加を引き起こす。血管条の細胞は、内耳中で流体のイオンの平衡を維持するために必要とされる広大なエネルギー必要量により最も代謝的に活性である。したがって、血管条の細胞は、ミトコンドリアの損傷により最も頻繁に損傷を受けるか殺される。
【0223】
耳硬化症
耳硬化症は中耳中の硬骨の異常な成長であり、これは耳の内部の構造が振動を伝達するのを防ぎ、それが聴力損失を引き起こす。耳硬化症は通常、小骨、とりわけ、卵円窓の蝸牛の入口にあるアブミ骨に影響を与える。異常な骨成長は卵円窓上にアブミ骨を固定し、音波が蝸牛に移動するのを防ぐ。耳硬化症は感音性難聴、つまり、損傷を受けた神経繊維または聴覚有毛細胞、あるいは、伝音性難聴を引き起こす。
【0224】
場合によっては、耳硬化症の処置は、アブミ骨摘出と呼ばれる、固定されたアブミ骨硬骨を除去するための外科手術を含んでいる。場合によっては、フルオリド処置も用いられ、これは、聴力損失を撤回しないが、耳硬化症の進行を遅らせる。
【0225】
加齢性平衡障害
老化の不均衡としても知られている加齢性平衡障害は、罹患した個体が全身性の不均衡を抱えているが、目眩を伴っていない障害である。全身の不均衡は典型的には歩行中に気づかされる。
【0226】
体位性眩暈
頭位眩暈症としても知られている体位性眩暈は、特定の頭の位置が引き金となって起きる突然の激しい眩暈を特徴とする。この疾患は、内耳に対する肉体的な損傷、中耳炎、耳の手術、または内耳への動脈の閉塞により引き起こされる損傷を受けた三半規管によって引き起こされる。
【0227】
体位性眩暈を抱える患者の眩暈の発症は、一方の耳に当てて横たわるか、または見上げようとして頭を傾けるときに生じるのが一般的である。眩暈は眼振を伴う。体位性眩暈の深刻な場合では、前庭神経は影響を受けた半規管まで切断される。眩暈の処置は多くの場合メニエール病の処置と同一であり、メクリジン、ロラゼパム、プロクロルペラジン、またはスコポラミンを含む。嘔吐が深刻な場合、流体と電解液が静脈内に投与される。
【0228】
再発性の前庭障害
再発性の前庭障害は、被験体が重篤なめまいの複数回のエピソードを経験する疾病である。めまいのエピソードは数分または数時間続く。メニエール病とは異なり、聴力損失を伴わない。場合によっては、メニエール病または良性発作性頭位めまい症へ進行する。治療はメニエール病の治療に似ている。
【0229】
梅毒感染
梅毒感染も、大人の突発難聴と同様に、米国の100,000人の出生数当たりおよそ11.2人に影響を与えている先天性の出生前の聴力損失を引き起こす。梅毒はスピロヘータ梅毒トレポネーマにより引き起こされる性病であり、これはその第2期と第3期に、膜質の迷路炎により耳の障害と前庭障害を引き起こし、二次的には髄膜炎を含む。
【0230】
後天性の梅毒と先天性の梅毒の両方は耳の障害を引き起こす。梅毒に起因する蝸牛前庭の障害の症状は、AIEDとメニエール病のような他の耳の障害の症状に類似することが多く、耳鳴、難聴、眩暈、倦怠感、咽喉痛、頭痛、および皮疹を含む。いくつかの実施形態において、梅毒感染は、大人の突発難聴と、米国の100,000人の出生数当たりおよそ11.2人に影響を与えている先天性の出生前の聴力損失を引き起こす。
【0231】
ステロイドと、ペニシリン(例えばペニシリンGベンザチン(BICILLIN LA(登録商標))を含む抗生物質とを用いる処置は、スピロヘータ有機体を根絶するのに効果的である。しかしながら、トレポネーマは身体中の他の部位から根絶後でも蝸牛と前庭の内リンパには留まる。これに応じて、内リンパ流体からスピロヘータ生物体の完全な根絶を達成するために、ペニシリンを用いる長期的な処置が正当化される。
【0232】
内耳梅毒(耳の症状を呈する梅毒)の処置は一般的に、ステロイド(例えば、プレドニゾロン)と抗菌薬(例えば、ペニシリンGベンザチンBICILLIN LA(登録商標)、ペニシリンGプロカイン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、セフトリアキソン、アジスロマイシン)の組み合わせを含む。こうした処置はスピロヘータ生物体を根絶するのに効果的である。しかしながら、トレポネーマは身体中の他の部位から根絶後でも蝸牛と前庭の内リンパには留まる。これに応じて、内リンパ流体からスピロヘータ生物体の完全な根絶を達成するために、ペニシリンを用いる長期的な処置が必要とされる。さらに、深刻なまたは進行した梅毒の症例の場合、プロベネシッドなどの尿酸排出促進薬がその有効性を増大させるために抗菌薬と共に投与される。
【0233】
側頭骨骨折
外耳道、中耳、および内耳の一部を含む側頭骨は、頭蓋への打撃からの骨折または他の損傷にさらされる。耳からの出血または斑状の内出血は、側頭骨の骨折の徴候であり、正確な診断のためにコンピューター断層撮影(CT)スキャンを必要とする。側頭骨骨折は鼓膜を破裂させ、その結果、顔面神経麻痺と感音性難聴を引き起こす。
【0234】
検知された側頭骨骨折の処置は、髄膜炎あるいは脳組織の感染を防ぐための抗生物質レジメンを含んでいる。加えて、手術は腫れまたは感染により顔面神経上でのその後の圧力を軽減するために行われる。
【0235】
顎関節疾患
顎関節疾患(TMD)と内耳障害の関係に関する複数の証拠が存在する。解剖学的研究は三叉神経が潜在的に関与していることを実証しており、脈管系の三叉神経の神経支配は蝸牛と前庭迷路機能を制御することが示されている。さらに、場合によっては、基底と前下小脳動脈を通る蝸牛への三叉神経のガッセル神経節の眼の繊維の突起は、代謝性ストレス(例えば極度の騒音)に対する迅速な血管拡張反応における血管緊張に重要な役割を果たす。突発難聴、眩暈、および耳鳴などの内耳の疾患と症状は、例えば、片頭痛からの三叉神経節中の異常な活性の存在による蝸牛の血流の減少から、あるいはTMDによってもたらされる慢性的な痛みまたは激痛から始まる中枢興奮作用によって始まる。
【0236】
同様に、他の研究者たちは、三叉神経節がさらに腹側蝸牛殻核と上オリーブ複合体に神経を分布させ、これが聴覚皮質に至る聴覚路を妨害して、ここで、TMDの症例では、眼と大顎の三叉神経の周辺の神経支配からの一定の周辺の体細胞の信号が生じる。中枢神経系を介するこうした体性感覚および聴覚系の相互作用は、耳、鼻、または咽喉の既存の疾患のない状態での耳の症状を説明するものである。
【0237】
これに応じて、TMD中の強力な筋収縮は神経学的機能と聴覚機能と平衡機能において調節を誘発する。例えば、聴覚と前庭の調節は、過緊張性と筋痙縮の結果として生じ、これは、筋肉捕捉(muscular trapping)によって内耳機能に影響を与える神経と血管を刺激する。影響を受けた神経あるいは筋収縮の緩和は聴覚または前庭の症状を軽減するように作用する。バルビツール酸またはジアゼパムを含む薬物はこのようにTMD患者の聴覚または前庭の機能障害を軽減する。
【0238】
卵形嚢機能不全
卵形嚢は、前庭迷路で見られる2つの耳石器の1つである。それは水平面に沿って重力と直線加速度の両方に反応する。卵形嚢機能不全は損傷によって卵形嚢にもたらされた障害である。これはしばしば、被験体の傾きまたは平衡失調の知覚を特徴とする。
【0239】
眩暈
眩暈は身体が静止している間に回っているか揺れているという感覚として記載される。2つのタイプの眩暈がある。自覚的眩暈は身体の偽の運動感覚である。他覚的眩暈は自分の周囲が動いているという知覚である。これにはしばしば、悪心、嘔吐、および平衡を維持する難しさが伴う。
【0240】
任意の1つの理論に束縛されることなく、目眩は内リンパ中の流体の過剰な蓄積によって引き起こされると仮定される。この体液平衡失調は、運動感覚に結びつく内耳の細胞への圧力の増加を引き起こす。目眩の最も一般的な原因は良性発作性頭位眩暈、すなわちBPPVである。場合によっては、目眩は、頭部損傷または血圧の突然の変化によって引き起こされる。目眩は、上半規管裂隙症候群を含む複数の疾患の診断症状である。
【0241】
局所的な耳への投与
さらに、外耳、中耳、および/または内耳の構造への治療薬(耳用薬剤)の局所送達のための方法、製剤、および組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、治療薬(耳用薬剤)の局所送達は、全身送達の毒性かつ付随する副作用を克服する。いくつかの実施形態において、前庭器および蝸牛器へのアクセスは中耳を介し、正円窓膜、卵円窓/アブミ骨底板、輪状靭帯を含み、および耳嚢/側頭骨を介する。
【0242】
特定の実施形態では、長時間、標的とする聴覚表面(例えば、正円窓)に接したままである耳用の製剤と組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、耳用の製剤と組成物は、耳用製剤を耳の粘膜表面に塗ることを可能にする粘膜付着性のさらに備えている。いくつかの例において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、耳管を介する活性薬剤のドレナージまたは漏れが原因の治療効果の弱化を回避する。
【0243】
いくつかの実施形態において、外耳、中耳、および/または内耳の局在的な処置は、脆弱なPKプロフィール、脆弱な取り込み、低い全身放出、および/または毒性の問題を抱える薬剤を含む、以前は望ましくなかった治療薬の使用を可能にする。いくつかの実施形態において、耳用薬剤製剤と組成物の局所的な標的化は、あらかじめ特徴づけられた毒性のまたは効果のない治療薬(耳用活性薬剤)(例えば、抗TNF剤などの免疫調節剤)を用いる副作用のリスクを減らす。これに応じて、治療薬(耳用薬剤)の副作用あるいは効果のなさが原因で以前は専門家から敬遠されていた活性薬剤および/または薬剤の使用も本明細書に記載される実施形態の範囲内で企図される。
【0244】
いくつかの実施形態において、とりわけ、外耳、中耳、および/または内耳の構造を標的とすることで、全身療法に通常伴う有害な副作用が回避される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、耳の病気に苦しむ個体または患者に治療薬(耳用薬剤)の一定の、可変の、および/または持続的な供給源を与えることにより、耳の障害を処置し、それによって、治療の可変性を減少させるか、取り除く、制御放出型治療薬製剤(例えば、免疫調節剤あるいは耳圧モジュレータ製剤)と組成物である。これに応じて、本明細書で開示される1つの実施形態は、少なくとも1つの治療薬(耳用薬剤)の連続的な放出を保証するなどのために、少なくとも1つの治療薬(耳用薬剤)を可変のまたは一定の速度で治療上有効な量で放出することを可能にする製剤または組成物を提供することである。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される治療薬(耳用薬剤)は、即時放出型の製剤または組成物として投与される。他の実施形態では、治療薬(耳用薬剤)は、連続的に、あるいはパルス方式で、またはその両方の変形で放出される制御放出製剤として投与される。さらに他の実施形態では、治療薬(耳用薬剤)製剤または組成物は、連続的に、あるいはパルス方式で、またはその両方の変形で放出される即時放出型と制御放出型の両方の製剤または組成物として投与される。この放出は随意に、環境的な条件または生理学的な条件、例えば、外部のイオン環境に依存する(例えば、Oros(登録商標)release system、Johnson & Johnsonを参照)。
【0245】
さらに、治療薬を含む本明細書で開示される耳用の製剤と組成物と組み合わせて、外耳、中耳、および/または内耳用の薬剤などの追加の治療薬(耳用薬剤)の使用が、本明細書で開示された実施形態内に含まれている。使用時、こうした追加の治療薬(耳用薬剤)は、眩暈、耳鳴、聴力損失、平衡障害、感染症、炎症反応、またはこれらの組み合わせを含む自己免疫障害に起因する聴力または平衡感覚の喪失または機能不全の処置で役立つ。これに応じて、眩暈、耳鳴、聴力損失、平衡障害、感染症、炎症反応、またはこれらの組み合わせの効果を改善するか、または弱める追加の治療薬(耳用薬剤)も、本明細書に記載される治療薬(耳用薬剤)と組み合わせて使用されることが企図されている。追加の治療薬(耳用薬剤)としては、限定されないが、ステロイド、抗嘔吐剤、局所麻酔薬、コルチコステロイド、シトキサン、アザチオプリン、あるいはメトトレキサートを含む化学療法剤;コラーゲン、γ-グロブリン、インターフェロン、コパキソン、中枢神経系薬剤、抗生物質、血小板活性因子アンタゴニスト、一酸化窒素合成酵素阻害剤、およびこれらの組み合わせを用いる処置が挙げられる。
【0246】
加えて、本明細書に含まれる耳用の製剤または組成物は、担体、保存剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤などのアジュバント、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝液を含んでいる。こうした担体、アジュバント、および他の賦形剤は、外耳、中耳、および/または内耳中の環境と適合する。これに応じて、標的とされる区域または領域で最低限の副作用で本明細書において企図される耳の病気の効果的な処置を可能にするために、聴器毒性を欠くか、または聴器毒性が最小限である担体、アジュバント、および賦形剤が具体的に企図される。聴器毒性を防ぐために、本明細書で開示される耳用の組成物または製剤は随意に、限定されないが、鼓室、前庭骨および前庭膜の迷路、蝸牛骨および蝸牛膜の迷路、ならびに内耳内に位置する他の解剖学的構造または生理学的構造を含む、外耳、中耳、および/または内耳の特徴的な領域を標的とする。
【0247】
処置
個体または患者への本明細書に記載される治療薬(耳用薬剤)の投与を含む、本明細書に記載される任意の耳の疾病、疾患、あるいは障害(例えば、外耳、中耳、および/または内耳の障害)の処置に適している耳用の製剤と組成物が本明細書で提供される。本明細書に記載される製剤と組成物は、本明細書に記載される任意の疾患の処置に適している。いくつかの例では、処置は慢性の再発性の疾患のための長期的な処置である。いくつかの例では、治療は、本明細書に記載される任意の耳の疾患あるいは障害の処置のための本明細書に記載される耳用製剤の予防的な投与である。いくつかの例では、予防的な投与は、疾患を患っている疑いのある個体、あるいは耳の疾患または障害に遺伝学的にかかりやすい個体における疾患の発生を回避する。いくつかの例では、処置は予防維持療法である。いくつかの例では、予防維持療法は、疾患の再発を回避する。
【0248】
いくつかの例では、耳への適合性と無菌性の改善のおかげで、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は長期的な投与に対して安全である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は聴器毒性が非常に低い。
【0249】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも1日、3日、5日、1週、2週、3週、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、あるいは一年の期間に、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも3日間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも5日間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも1週間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも2週間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも3週間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも1ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも2ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも3ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも4ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも5ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも6ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、少なくとも1年間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。
【0250】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約1日、3日、5日、1週、2週、3週、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、あるいは1年の期間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約3日間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約5日間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約1週間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約2週間、治療薬耳用薬剤の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約3週間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約1ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約2ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約3ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約4ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約5ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約6ヶ月間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、約1年間、治療薬(耳用薬剤)の安定した徐放をもたらす。
【0251】
1つの態様では、耳に関連する疾患あるいは疾病を処置および/または予防するための制御放出型の組成物および製剤が本明細書で提供される。いくつかの例では、耳に関連するこれらの疾患または疾病は、外耳、中耳、および/または内耳を含む。
【0252】
こうした耳の疾患あるいは疾病は耳垢症、あるいは、ある疾患または症状に関連する耳垢症を含む。いくつかの実施形態において、疾患あるいは疾病は、耳そう痒症、外耳炎、耳痛、耳鳴、眩暈、耳閉感、聴力損失、あるいはこれらの組み合わせである。
【0253】
他の耳の疾患あるいは疾病は、自己免疫性内耳障害(AIED)、メニエール病、内リンパ水腫、騒音性難聴(NIHL)、感音性難聴(SNL)、耳鳴、耳硬化症、平衡障害、目眩などを含む。いくつかの実施形態において、耳に関連する疾患または疾病は、メニエール病、感音性難聴、騒音性難聴、老人性難聴(加齢性難聴)、自己免疫性耳疾患、耳鳴、聴器毒性、興奮毒性、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイハント症候群、前庭ニューロン炎、微小血管圧迫症候群、聴覚過敏、加齢性平衡障害、中枢性聴覚情報処理障害、聴覚神経障害、あるいは人工内耳の性能の改善である。
【0254】
いくつかの耳の疾患あるいは障害の病因は、騒音性難聴と加齢性難聴、めまい、悪心、眼振、目眩、耳鳴、炎症、腫れ、感染および/またはうっ血を含む、進行性の聴力損失の症候群からなる。こうした障害は、感染症、騒音への暴露、損傷、炎症、腫瘍、および医薬品または他の化学薬品に対する有害な反応などの多くの原因を有する。聴覚および/または平衡感覚の機能障害のいくつかの原因は、炎症および/または自己免疫障害および/またはサイトカイン媒介性の炎症反応による。
【0255】
耳の疾患あるいは疾病を処置するための免疫調節薬組成物と製剤が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、こうした組成物と製剤は制御放出型である。いくつかの例では、耳の疾患あるいは疾病は中耳炎を含む中耳の炎症あるいは感染である。免疫調節薬としては、限定されないが、抗TNF剤、カルシニューリン阻害剤、IKK阻害剤、インターロイキン阻害剤、TNF-a変換酵素(TACE)阻害剤、あるいはトール様受容体阻害剤が挙げられる。
【0256】
耳の疾患あるいは疾病を処置するための耳圧調節組成物または製剤が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、こうした組成物と製剤は制御放出型である。いくつかの例では、耳の疾患あるいは疾病は、内耳の流体ホメオスタシス障害であり、これは、メニエール病、内リンパ水腫、進行性の聴力損失、騒音性難聴、加齢性難聴、浮動性めまい、回転性めまい、耳鳴、および同様の疾病を含んでいる。耳圧調節剤の例としては、限定されないが、アクアポリンのモジュレータ、エストロゲン関連受容体ベータモジュレータ、ギャップ結合タンパク質モジュレータ、NMDA受容体アンタゴニストを含むNMDA受容体モジュレータ、浸透圧利尿薬、プロゲステロン受容体モジュレータ、プロスタグランジンモジュレーター、あるいはバソプレシン受容体モジュレータが挙げられる。
【0257】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される製剤と組成物は、耳鳴、騒音性難聴と加齢性難聴を含む進行性の聴力損失、および平衡障害を処置するためのCNS調節組成物および製剤である。平衡障害は、良性の発作性頭位めまい症、めまい、内リンパ水腫、加速度病、迷路炎、デバルクマン症候群(de debarquement)、メニエール病、メニエール症候群、鼓膜炎、中耳炎、ラムゼイハント症候群、再発性の前庭障害、耳鳴、目眩、微小血管圧迫症候群、卵形嚢機能不全、および前庭ニューロン炎を含んでいる。少数の治療薬が、GABAA受容体モジュレータと局所麻酔薬を含む平衡障害の処置に利用可能である。
【0258】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される製剤と組成物は、自己免疫性内耳疾患(AIED)を含む耳の自己免疫疾患の処置のための細胞毒性剤組成物と製剤である。さらに、中耳炎を含む中耳の障害の処置のための制御放出型の細胞毒性剤組成物が本明細書で提供される。さらに、本明細書で開示される組成物は、癌、特に耳の癌の処置に役立つ。特定の細胞毒性剤を含む少数の治療薬は、AIEDの処置に利用可能である。特に、細胞毒性剤メトトレキサートとシクロホスファミドは試験されており、AIEDの全身療法に使用される。さらに、サリドマイドは、AIEDの治療に現在投与されていないが、しばしばAIEDに関連付けられるベーチェット病を治療するために使用されている。
【0259】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される製剤と組成物は、内耳内の破壊された、発育不良の、機能不全の、破損された、脆弱な、または、欠けている毛に起因する聴力損失または聴力の低下を処置または改善するための耳の感覚細胞モジュレータを含む。さらに、聴器毒性、興奮毒性、感音性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイハント症候群、前庭ニューロン炎、および微小血管圧迫症候群を処置するための制御放出型の耳の感覚細胞調節剤組成物および製剤が本明細書で開示される。
【0260】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される製剤と組成物は、耳の疾患あるいは疾病を処置するためのコルチコステロイド組成物と製剤である。いくつかの実施形態において、こうした組成物は制御放出型である。
【0261】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される製剤と組成物は、耳の疾患あるいは疾病を処置するための抗菌剤組成物および製剤である。耳の疾患あるいは疾病は、限定されないが、外耳炎、中耳炎、ラムゼイハント症候群、内耳梅毒、AIED、メニエール病、および前庭ニューロン炎を含む。いくつかの実施形態において、こうした組成物は制御放出型である。
【0262】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される製剤と組成物は、遊離ラジカルによるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性、ならびに/あるいはミトコンドリアの機能不全を防ぐか、軽減するか、撤回するか、または改善する。
【0263】
さらに、メニエール病、内リンパ水腫、騒音性難聴と加齢性難聴を含む進行性の聴力損失、浮動性めまい、回転性めまい、耳鳴、および同様の疾病を含む内耳の流体ホメオスタシス障害を処置するためのイオンチャネル調節組成物および製剤が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、こうした組成物と製剤は制御放出型である。イオンチャネル調節治療薬を送達するために、経口経路、静脈内の経路、または筋肉内の経路を介する全身性の経路が現在使用されている。
【0264】
耳の疾患と疾病を処置するための切断したTrkCまたは切断したTrkBアンタゴニスト組成物と製剤が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、こうした組成物と製剤は制御放出型である。
【0265】
耳の疾患と疾病を処置するための非天然のTrkCまたはTrkBのアゴニスト組成物および製剤が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、こうした組成物と製剤は制御放出型である。
【0266】
トリグリセリド
トリグリセリドを含む耳用の製剤と組成物が本明細書で提供される。トリグリセリドはグリセロールと3つの脂肪酸に由来するエステルである。いくつかの例では、これらの脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、あるいはこれらの組み合わせである。1つの態様において、治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩;および、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドを含む、耳用の製剤あるいは組成物が本明細書で提供され、ここで、トリグリセリドは、耳へ注入される治療薬を安定させるのに十分な量で存在し、ここで、耳用の医薬製剤または組成物は、少なくとも約50重量%のトリグリセリドを含む。
【0267】
いくつかの例では、これらのトリグリセリドは中鎖トリグリセリド(MCT)である。いくつかの実施形態において、これらのトリグリセリドは中鎖脂肪酸を含む。
【0268】
いくつかの実施形態において、トリグリセリドはグリセロールと中鎖脂肪酸に由来する。いくつかの実施形態において、各中鎖脂肪酸は独立して、炭素鎖中に6~12の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、各中鎖脂肪酸は独立して、炭素鎖中に8~12の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、各中鎖脂肪酸は独立して、炭素鎖中に6、7、8、9、10、11、または12の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、各中鎖脂肪酸は独立して、炭素鎖中に8または10の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸は、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ウンデシレン酸(ウンデカ-10-エン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸は、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、またはこれらの組み合わせである。
【0269】
いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドは、バラッサオイル(balassee oil)、ココナッツオイル、コフネヤシ油、パーム核油、ホシダネヤシ油、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドはバラッサオイルである。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドはココナッツオイルである。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドはコフネヤシ油である。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドはパーム核油である。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドはホシダネヤシ油である。
【0270】
いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は、耳に注入される治療薬を安定させるのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は、耳の中で十分な保持時間を提供するのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、耳は外耳、中耳、または内耳である。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は、治療薬の徐放をもたらすのに十分な量のトリグリセリドを有する。いくつかの実施形態において、トリグリセリドは、細いゲージ針による製剤の送達を可能にするのに十分な量で存在する。
【0271】
いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約50重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約55重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約60重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約65重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約70重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約75重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約80重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約85重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約90重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約95重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。
【0272】
いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約50重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約55重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約60重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約65重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約70重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約75重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約80重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約85重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約90重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約95重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。
【0273】
いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約50重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約55重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約60重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約65重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約70重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約75重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約80重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約85重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約90重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。
【0274】
いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約50重量%~約55重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約55重量%~約60重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約60重量%~約65重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約65重量%~約70重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約70重量%~約75重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約75重量%~約80重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約80重量%~約85重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約85重量%~約90重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約90重量%~約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約95重量%~約99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約95重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約95重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。
【0275】
いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約50重量%~約60重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約60重量%~約70重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約70重量%~約80重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約80重量%~約90重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約90重量%~約99重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約90重量%~約99.9重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約90重量%~約99.99重量%のトリグリセリドを含む。
【0276】
いくつかの実施形態では、耳用医薬製剤は、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、約55重量%、約56重量%、約57重量%、約58重量%、約59重量%、約60重量%、約61重量%、約62重量%、約63重量%、約64重量%、約65重量%、約66重量%、約67重量%、約68重量%、約69重量%、約70重量%、約71重量%、約72重量%、約73重量%、約74重量%、約75重量%、約76重量%、約77重量%、約78重量%、約79重量%、約80重量%、約81重量%、約82重量%、約83重量%、約84重量%、約85重量%、約86重量%、約87重量%、約88重量%、約89重量%、約90重量%、約91重量%、約92重量%、約93重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%、または約99重量%のトリグリセリドを含む。
【0277】
いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約50重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約51重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約52重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約53重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約54重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約55重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約56重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約57重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約58重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約59重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約60重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約61重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約62重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約63重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約64重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約65重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約66重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約67重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約68重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約69重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約70重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約71重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約72重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約73重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約74重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約75重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約76重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約77重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約78重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約79重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約80重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約81重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約82重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約83重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約84重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約85重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約86重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約87重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約88重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約89重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約90重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約91重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約92重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約93重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約94重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約95重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約96重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約97重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約98重量%のトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、耳用医薬製剤は約99重量%のトリグリセリドを含む。
【0278】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物のいずれか1つの中のトリグリセリドは、本明細書で開示される製剤または組成物中の対応する量のトリグリセリド中の以下の成分の少なくとも1つと取り替えられる:鉱油あるいは任意の対応する高級アルカン;ワセリン(ワセリン(petroleum jelly);様々な分子量のシリコーン油(ポリジメチルシロキサン);本明細書に開示される油のいずれかに溶けたみつろう。
【0279】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物はさらに少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの粘度調節剤は、二酸化ケイ素、ポビドン、カルボマー、ポロキサマー、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポビドンである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はカルボマーである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポロキサマーである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とポビドンである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とカルボマーである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素とポロキサマーである。いくつかの実施形態では、ポロキサマーはP407である。
【0280】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約40重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約35重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約30重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約25重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約20重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約15重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約10重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約7重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約5重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約3重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約2重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約1重量%のポビドンを含む。
【0281】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.02重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.03重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.04重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.05重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.06重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.07重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.08重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.09重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.1重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.2重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.3重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.4重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.5重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.6重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.7重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.8重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.9重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約1重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約2重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約3重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約4重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約5重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約6重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約7重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約8重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約9重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約10重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約11重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約12重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約13重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約14重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約15重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約16重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約17重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約18重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約19重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約20重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約25重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約30重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約35重量%のポビドンを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約40重量%のポビドンを含む。
【0282】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約40重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約35重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約30重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約25重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約20重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約15重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約10重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約7重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約5重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約3重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約2重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約1重量%のカルボマーを含む。
【0283】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.02重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.03重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.04重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.05重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.06重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.07重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.08重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.09重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.1重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.2重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.3重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.4重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.5重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.6重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.7重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.8重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.9重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約1重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約2重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約3重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約4重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約5重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約6重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約7重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約8重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約9重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約10重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約11重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約12重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約13重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約14重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約15重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約16重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約17重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約18重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約19重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約20重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約25重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約30重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約35重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約40重量%のカルボマーを含む。
【0284】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約40重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約35重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約30重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約25重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約20重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約15重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約10重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約7重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約5重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約3重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約2重量%のカルボマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約1重量%のカルボマーを含む。
【0285】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.02重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.03重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.04重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.05重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.06重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.07重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.08重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.09重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.1重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.2重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.3重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.4重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.5重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.6重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.7重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.8重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.9重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約1重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約2重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約3重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約4重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約5重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約6重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約7重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約8重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約9重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約10重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約11重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約12重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約13重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約14重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約15重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約16重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約17重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約18重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約19重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約20重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約25重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約30重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約35重量%のポロキサマーを含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約40重量%のポロキサマーを含む。
【0286】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約20重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約15重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約10重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約7重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約5重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約3重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約2重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約1重量%の二酸化ケイ素を含む。
【0287】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.02重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.03重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.04重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.05重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.06重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.07重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.08重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.09重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.1重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.2重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.3重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.4重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.5重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.6重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.7重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.8重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.9重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約1重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約2重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約3重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約4重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約5重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約6重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約7重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約8重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約9重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約10重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約11重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約12重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約13重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約14重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約15重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約16重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約17重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約18重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約19重量%の二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約20重量%の二酸化ケイ素を含む。
【0288】
いくつかの実施形態において、粘度調節剤は二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポビドン、カルボマー、あるいはポロキサマーなどのポリマーである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はデキストランあるいはアルギン酸などの多糖類である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアラート(HPMCAS)、および非晶質セルロースなどのセルロースベースである。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポリビニルアルコール(PVA)である。いくつかの実施形態において、粘度調節剤はポリエチレングリコール(PEG)ベースである。
【0289】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約40重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約35重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約30重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約25重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約20重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約15重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約10重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約7重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約3重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約2重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%~約1重量%の粘度調節剤を含む。
【0290】
いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.01重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.02重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.03重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.04重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.05重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.06重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.07重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.08重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.09重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.1重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.2重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.3重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.4重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.6重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.7重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.8重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約0.9重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約1重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約2重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約3重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約4重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約6重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約7重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約8重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約9重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約10重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約11重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約12重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約13重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約14重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約15重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約16重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約17重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約18重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約19重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約20重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約25重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約30重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約35重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は約40重量%の粘度調節剤を含む。
【0291】
治療薬
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は耳に許容可能なpHとモル浸透圧濃度を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、本明細書に記載される厳格な無菌要件を満たし、かつ、内リンパおよび/または外リンパと適合する。本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用される医薬品は、内耳障害と、限定されないが、聴力損失、眼振、目眩、耳鳴、炎症、腫れ、感染、およびうっ血を含むその付随する症状とを含んでいる耳の障害を改善するか、減少させる薬剤を含む。耳の障害には多くの原因があり、感染、損傷、炎症、腫瘍、および本明細書で開示される医薬品に反応する薬物あるいは他の化学薬品に対する有害な反応を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用薬剤の薬学的に活性な代謝物、塩、多形体、プロドラッグ、アナログ、および誘導体は製剤中で使用される。
【0292】
有効な成分あるいは治療薬(耳用薬剤としても知られている)としては、限定されないが、免疫調節剤、耳圧調節剤、コルチコステロイド、抗菌剤、切断したTrkCまたは切断したTrkBのアンタゴニスト、あるいは非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニスト、あるいはWNTモジュレータが挙げられる。いくつかの実施形態では、治療薬は免疫調節剤である。いくつかの実施形態では、治療薬は耳圧調節剤である。いくつかの実施形態において、治療薬はコルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、治療薬は抗菌剤である。いくつかの実施形態において、治療薬は切断したTrkCまたは切断したTrkBのアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、治療薬は非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストである。いくつかの実施形態において、治療薬は、コルチコステロイド、抗菌剤、あるいはNMDA受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、治療薬は、デキサメタゾン、シプロフロキサシン、またはガシクリジンである。いくつかの実施形態において、治療薬はWNTモジュレータである。
【0293】
いくつかの実施形態において、治療薬は、抗TNF剤、カルシニューリン阻害剤、IKK阻害剤、インターロイキン阻害剤、TNF酵素変換(TACE)阻害剤、またはトール様受容体阻害剤である。いくつかの実施形態において、治療薬は、アクアポリンのモジュレータ、エストロゲン関連受容体βモジュレータ、ギャップ結合タンパク質モジュレータ、NMDA受容体アンタゴニスト、浸透圧利尿剤、プロゲステロン受容体モジュレータ、プロスタグランジンモジュレーター、または、バソプレッシン受容体モジュレータである。いくつかの実施形態において、治療薬は、1-アミノアダマンタン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、イボガイン、ケタミン、エスケタミン(AM-101)、亜酸化窒素、フェンシクリジン、リルゾール、チレタミン、メマンチン、ジゾシルピン、アプチガネル、レマセミド、7-クロロキヌレナート、DCKA(5,7-ジクロロキヌレン酸)、キヌレン酸、1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACPC)、AP7(2-アミノ-7-ホスホノヘプタン酸)、APV(R-2-アミノ-5-ホスホノペンタノアート、CPPene(3-[(R)-2-カルボキシピペラジン-4-イル]-プロプ-2-エニル-1-ホスホン酸);(+)-(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシ-フェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジノ)-1-プロ-パノール;(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリ-ジノ)-1-プロパノール;(3R,4S)-3-(4-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル-)-クロマン-4,7-ジオール;(1R*,2R*)-1-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-(4-(4-フルオロ-フェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-プロパン-1-オール-メシレート;または、ガシクリジン(1-[(1R,2S)-2-メチル-1-チオフェン-2-イルシクロヘキシル]ピペリジン)である。いくつかの実施形態において、治療薬は、ガシクリジン、あるいはその薬学的に許容可能な塩である。
【0294】
使用について企図された他の治療薬としては、限定されないが、抗炎症薬、抗酸化剤、神経保護薬、グルタミン酸モジュレータ、TNF-アルファモジュレータ、インターロイキン1ベータモジュレータ、レチナールデヒドモジュレーター、ノッチモジュレーター、γ-セクレターゼモジュレーター、サリドマイド、イオンおよび/または流体(例えば、水)ホメオスタシスモジュレーター、バソプレシン阻害剤、バソプレシン媒介性のAQP2(アクアポリン2)系の阻害剤、内耳の転写制御ネットワークの転写制御因子(例えば、エストロゲン関連受容体ベータの転写制御因子を含む)、BDNF(脳由来の神経栄養因子)とニューロトロフィン-3を含む内耳有毛細胞成長因子、および他の治療モダリティが挙げられる。
【0295】
治療薬は明示的に、耳の標的のアゴニスト、耳の標的の部分アゴニスト、耳の標的のアンタゴニスト、耳の標的の部分アンタゴニスト、耳の標的のインバースアゴニスト、耳の標的の競合的アンタゴニスト、耳の標的のニュートラルアンタゴニスト、耳の標的のオルソステリックアンタゴニスト、耳の標的のアロステリックアンタゴニスト、耳の標的の陽性アロステリックモジュレータ、耳の標的の陰性アロステリックモジュレータ、あるいはこれらの組み合わせを含む。
【0296】
いくつかの実施形態について、製剤または組成物は、有効成分の全身放出が制限されるか、全身放出がなされないように設計され、全身毒性(例えば肝臓毒性)をもたらす、あるいは、貧弱なPK特性(例えば短い半減期)を有する治療薬も随意に使用される。ゆえに、いくつかの実施形態において、例えば、肝臓処理の後に形成される有毒な代謝産物により、特定の器官、組織、または系における薬物の毒性により、有効性を達成するために必要とされる高いレベルゆえに、全身の経路を通って放出できないことを理由に、または、不十分なPK特性により、全身性適用の間に有毒、有害、または非効果的であると以前は示されてきた治療薬は役に立つ。本明細書で開示される製剤と組成物は、処置が必要な耳の構造体を直接標的とするように企図され、例えば、企図された1つの実施形態は、内耳または内耳の構成要素の直接的なアクセスと処置を可能にする、正円窓膜のまたは蝸牛窓稜への本明細書で開示される耳用製剤の直接の適用である。他の実施形態では、本明細書で開示される耳用の製剤および組成物は、卵円窓に直接適用される。さらに他の実施形態において、直接的なアクセスは、内耳への直接的な微量注入(例えば、蝸牛への微小潅流)により得られる。こうした実施形態は随意に薬物送達デバイスを含み、この薬物送達デバイスは、針およびシリンジ、ポンプ、マイクロインジェクションデバイス、スポンジ状物質、またはこれらの組み合わせを用いることによって耳圧調節製剤を送達する。
【0297】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の適用は、鼓室内膜に穿孔することによって、および、中耳を標的とし、鼓室または耳小骨の壁を含む影響を受けた中耳構造に耳用薬剤製剤を直接適用することによって、中耳に標的化される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用活性薬剤製剤または組成物は、標的とする中耳構造に閉じ込められ、例えば、耳管または穿孔した鼓膜から拡散したり漏れたりすることにより、失われることはない。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳用の製剤と組成物は、綿棒、注入、あるいは点耳液を含む任意の適切な方法で外耳に送達される。同様に、他の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物は、針およびシリンジ、ポンプ、マイクロインジェクションデバイス、スポンジ状物質、またはこれらの任意の組み合わせを用いる適用によって外耳の特定領域に標的化される。例えば、外耳炎の処置の場合、本明細書で開示される抗菌薬製剤は外耳道に直接送達され、そこで、抗菌薬製剤は保持され、これによって、ドレナージまたは漏出が原因で標的耳構造からの活性薬剤の損害を減少させる。
【0298】
いくつかの実施形態において、例えば、抗菌薬として以前は拒絶されていた薬剤は、毒性および有害な副作用を含む全身作用を回避する実施形態の標的とされた性質のおかげで、本明細書では用途を見つける。ほんの一例として、毒性と安全性の問題ゆえに以前は拒絶されていた抗TNF剤であるオネルセプトは、本明細書に開示された実施形態のいくつかでは抗TNF剤として有用である。さらに、高用量の医薬品、例えば、こうした医薬品について現在承認されている用量と比較して用量制限毒性を有する薬剤の投与も本明細書に記載される実施形態の範囲内で企図される。
【0299】
いくつかの医薬品は、単独で、または組み合わせて、聴器毒性である。例えば、アクチノマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、カルボプラチンおよびビンクリスチンを含むいくつかの化学療法剤;および、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、ジヒドロストレプトマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、アミカシン、ネオマイシン、カナマイシン、エキノマイシン(etiomycin)、バンコマイシン、メトロニダゾール(metronidizole)、カプレオマイシンを含む抗生物質は、中程度~非常に毒性が強く、いくつかの例では、前庭と蝸牛の構造体に差次的に影響を与える。しかしながら、いくつかの実施形態において、抗酸化剤と組み合わせた耳毒性薬物、例えば、シスプラチンの組み合わせは保護的であり、薬物の聴器毒性を弱める。さらに、潜在的に聴器毒性の薬物の局在化適用は、効能を維持された低用量の使用を介して、または、短時間の標的量の使用を介して、全身適用によって生じる毒性の影響を弱める。これに応じて、標的とされた耳の障害の治療のコースを選ぶ専門家は、聴器毒性化合物を回避するか組み合わせるための、あるいは聴器毒性作用を回避するか減少させるべく処置の量またはコースを変えるための知識を有している。
【0300】
特定の例では、薬学的な賦形剤、希釈剤、または担体は潜在的には聴器毒性である。例えば、一般的な防腐剤である塩化ベンザルコニウムは聴器毒性であり、従って、前庭または蝸牛の構造に取り込まれると潜在的に有害である。制御放出型の耳用製剤を製剤化する際、製剤から潜在的な聴器毒性化合物を減少させるか除去するために、もしくはこうした賦形剤、希釈剤、または担体の量を減少させるために、適切な賦形剤、希釈剤、または担体を避けるか、または組み合わせることが推奨される。いくつかの例では、本明細書で開示される医薬品、賦形剤、希釈剤、担体、あるいは製剤および組成物の聴器毒性は、容認された動物モデルを使用して確認される。例えば、Maritini、A.,et al. Ann. N.Y. Acad. Sci. (1999) 884:85-98を参照。随意に、制御放出型の耳用の製剤または組成物は、具体的な治療薬または賦形剤、希釈剤、あるいは担体の使用から生じる潜在的な聴器毒性作用を打ち消すために、抗酸化剤、アルファリポ酸、カルシウム(calicum)、ホスホマイシン、または鉄キレート剤などの耳保護用薬剤を含む。
【0301】
単独で、または、他の内耳薬剤と組み合わせて、本明細書に記載される実施形態において使用される他の薬剤は、カスパーゼ、JNK阻害剤(一例として、CEP/KT-7515、AS601245、SPC9766、およびSP600125)、抗酸化剤、NSAIDs、神経保護薬、グルタミン酸モジュレータ、インターロイキン1モジュレータ、腫瘍壊死因子-α変換酵素(TACE)およびカスパーゼを含むインターロイキン1アンタゴニスト、レチナールデヒドモジュレーター、ノッチモジュレーター、γセクレターゼモジュレーター、サリドマイド、内圧を下げるためのラタノプロスト(キサラタン(登録商標))、およびこれらの組み合わせを含む、抗アポトーシス剤を含んでいる。
【0302】
免疫調節剤抗TNF剤
AIEDまたはOMを含む自己免疫疾患および/または炎症性障害の結果として、症状または作用を減少させるか、または改善する薬剤が、本明細書で開示される製剤と組成物とともに使用されるように企図される。これに応じて、いくつかの実施形態は、抗TNF剤を含むTNF-αの作用をブロックする薬剤の使用を組み込む。ほんの一例として、抗TNF剤は、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、および、ゴリムマブ(CNTO 148)などのタンパク質ベースの治療薬、ならびにTACE阻害剤、IKK阻害剤、またはカルシニューリン阻害剤などの小分子治療薬、または、これらの組み合わせを含む。
【0303】
インフリキシマブとアダリムマブは抗TNFモノクローナル抗体であり、エタネルセプトはTNFタンパク質に特異的に結合するように設計された融合タンパク質である。これらはすべて、関節リウマチの処置での使用について現在承認されている。現在、関節リウマチ、乾癬性関節炎、および強直性脊椎炎の第III相臨床試験中であるゴリムマブは、TNF-αの溶解可能な膜結合型の両方の形態を標的とするとともに中和する完全なヒト化抗-TNFアルファIgG1モノクローナル抗体である。TNFの他のアンタゴニストは、ほんの一例として以下のものを含む:TNF受容体(ペグ化された可溶性の1型TNF受容体;Amgen);TNF結合因子(オネルセプト;Serono);TNF抗体(米国特許出願第2005/0123541号;米国特許出願第2004/0185047号);p55 TNF受容体に対する単一ドメイン抗体(米国特許出願第2008/00088713号);溶解可能なTNF受容体(米国特許出願第2007/0249538号);TNFに結合する融合ポリペプチド(米国特許出願第2007/0128177号);および、フラボン誘導体(米国特許出願第2006/0105967号)。これらはすべて開示のための参照により組み込まれる。可溶性のTNF p55受容体であるオネルセプトの使用は2005年に中止された。第III相臨床試験は、患者が不治の敗血症と診断されたことを報告した。その後、リスク対効果の分析が行われ、その結果、臨床試験は中止された。上に議論されるように、本明細書の実施形態は、全身放出が制限されるか、全身放出がなされず、全身毒性を抱え、PK特性が脆弱で、または、これらの組み合わせを有することが以前からわかっていた抗TNF剤の使用も具体的に企図している。
【0304】
エタネルセプト、インフリキシマブ、およびアダリムマブは関節リウマチでの使用に関して現時点で承認されている全身療法薬であるが、こうした抗TNF剤は深刻な有害な副作用を伴わないわけではない。いくつかの実施形態では、自己免疫性および/または炎症性の障害の処置のための標的の耳の構造への抗TNF剤の局所的な適用は、全身療法で生じるこうした有害な副作用を減少させるか、取り除く。さらに、いくつかの実施形態において、本明細書で企図される抗TNF剤は、例えば、内耳内の生物学的な血液障壁の存在が原因で、あるいは中耳への十分な全身的なアクセスの不足が原因で、標的とされた障害の効果的な処置に必要とされる薬剤の量を減少させる。
【0305】
エタネルセプトは、ヒトIgG1のFc部分に結合するヒト75キロダルトン(p75)腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外のリガンド結合部分からなる二量体の融合タンパク質である。エタネルセプトのFc成分は、IgG1のCH1ドメインではなく、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および、ヒンジ領域を含む。エタネルセプトは、およそ150キロダルトンの見かけの分子量を有する934のアミノ酸からなる組換えタンパク質である。エタネルセプトは腫瘍壊死因子(TNF)に特異的に結合し、細胞表面TNF受容体とのTNFの相互作用を阻害することにより作用する。死に至った深刻な感染と敗血症を含む、エタネルセプトに伴う深刻な副作用が、全身投与で報告されている。エタネルセプトの静脈内投与時に観察された他の副作用は、結核の収縮;精神状態変化、横断脊髄炎、視神経炎、多発性硬化症、および永続的な障害にもたらす発作を含む、中枢神経系障害の発症あるいは悪化;汎血球減少症、致命的な結果を伴う再生不良性貧血、血液疾患、持続的な熱、挫傷、出血、および血色の悪さ、好中球減少症、および蜂巣炎を含む有害な血液事象を含む。エタネルセプトを用いる処置は、場合によっては、悪性疾患の発生と同様に、自己抗体の形成も引き起こし、これは、ループス様症候群へと進行する。さらに、エタネルセプトを全身に処置された患者の三分の一が、軽度~中程度の紅斑および/またはかゆみ、疼痛および/または腫れを含む注射部位反応を発症させる。注射部位出血と挫傷も観察されている。エタネルセプトの全身投与からの他の副作用は、頭痛、悪心、鼻炎、めまい、咽頭炎、せき、無力症、腹痛、発疹、末梢性浮腫、呼吸障害、消化不良、副鼻腔炎、嘔吐、口腔内潰瘍、脱毛症、および間質性肺炎を含んでいる。稀少な副作用は、心不全、心筋梗塞、心菌虚血、高血圧、低血圧、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、胆嚢炎、膵炎、胃腸出血、滑液包炎、多発性筋炎、脳虚血、うつ病、呼吸困難、肺塞栓症、および関節リウマチ患者における膜性糸球体腎症を含んでいる。水痘感染、胃腸炎、うつ病/人格障害、皮膚潰瘍、食道炎/胃炎、A群連鎖球菌敗血症性ショック、I型糖尿病、および軟組織と術後創感染も若年性関節リウマチ患者で見られた。
【0306】
インフリキシマブは、149キロダルトンの近似の分子量を有するキメラ・ヒト-マウスIgG1κモノクローナル抗体である。インフリキシマブは1010M-1の結合定数でTNFαに特異的に結合する。インフリキシマブは連続的な潅流によって培養された組み換え細胞系統によって産生される。インフリキシマブはその細胞表面受容体へのTNFの結合を阻害することにより、TNFαの結合活性を中和するように作用する。不治の敗血症と深刻な感染を含む、全身的な静脈注入または注射の結果の深刻な副作用が、インフリキシマブの使用で報告された。ヒストプラズマ症、リステリア症、ニューモシスティス症、および結核の症例も観察された。蕁麻疹を含む過敏症、呼吸困難、および低血圧がインフリキシマブを用いる処置で生じた。注入反応は心肺の反応(主として、胸痛、低血圧、高血圧、あるいは呼吸困難)、そう痒症、および合併型反応を含む。他の過敏症の症状は、熱、発疹、頭痛、咽喉痛、筋痛、多発性関節痛、手および顔の浮腫、ならびに/あるいはえん下障害、アナフィラキシー、痙攣、紅斑性皮疹、喉頭/咽頭浮腫、および深刻な気管支痙攣を含む。神経学的な有害事象は、視神経炎、卒中、および多発性硬化症を含む中枢神経系の脱髄性疾患の新しい発症または悪化、ならびに/あるいは、X線撮影の証拠を含む。治療後のループス様症候群を暗示する症状を含む自己抗体の形成も観察された。他の深刻な有害事象は、関節リウマチ、慢性関節リウマチ小節、腹部ヘルニア、無力症、胸痛、横隔膜ヘルニア、汎血球減少症、脾梗塞、脾腫、失神、脳低酸素、痙攣、めまい、脳障害、不全片麻痺、脊椎管狭窄症、上部運動ニューロン障害、耳垢症、眼内炎、および他の稀に生じる副作用を悪化させることを含んでいる。
【0307】
アダリムマブはヒトTNFに特異的な組み換えヒトIgG1モノクローナル抗体である。アダリムマブはヒト由来の重鎖と軽鎖の可変領域とヒトIgG1:κ定常領域とを有する抗体をもたらすファージディスプレー技術を使用して作成され、約148キロダルトンの分子量を有する1330のアミノ酸からなる。アダリムマブはTNF-αに特異的に結合し、p55とp75の両方のTNF細胞表面受容体との相互作用をブロックする。アダリムマブはさらに、補体のある状態においてインビトロでTNF発現細胞を溶解させる。アダリムマブはリンフォトキシン(TNF-α)には結合せず、不活性化しない。不治の敗血症と、上気道感染症、気管支炎、尿路感染、肺炎、化膿性関節炎、人工装具感染および手術後感染、丹毒蜂巣炎、憩室炎、腎盂腎炎、結核、およびヒストプラズマ、アスペルギルス、およびノカルジアによって引き起こされた侵襲性の日和見感染を含む深刻な感染を含む、全身的な投与からの深刻な副作用がアダリムマブの静脈内投与または注入で報告されている。他の深刻な副作用は、錯乱、多発性硬化症、錯感覚、硬膜下血腫、および振せんを含む神経学的な事象と、リンパ腫の進行を含む悪性腫瘍の進行であった。処置後のループス様症候群を暗示する症状を含む自己抗体の形成も観察された。最も一般的な副作用は注射部位反応であり、患者の20%は、紅斑および/またはかゆみを開発する、出血、疼痛、および/または腫れを発症させた。アダリムマブの全身投与の結果としての他の有害事象は、臨床的再燃反応、発疹、および肺炎を含んでいる。他の有害事象は副鼻腔炎、インフルエンザ症候群、悪心、腹痛、高コレステロール血症、高脂血、血尿、アルカリホスファターゼレベルの増加、背部痛、高血圧と、同様に、疼痛、骨盤痛、胸郭痛、不整脈、心房細動、心血管障害、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心停止、高血圧性脳症、心筋梗塞、動悸、心嚢液貯留、心膜炎、失神、頻脈、血管障害、および他の障害を含む稀な深刻な有害事象を含んでいた。
【0308】
カルシニューリン阻害剤
カルシニューリン阻害剤は、カルシニューリン機能の阻害によって機能する構造上多様な小分子免疫調節薬の群である。カルシニューリンは、細胞質のNFATの脱リン酸化を触媒する、カルシウム活性化タンパク質脱リン酸化酵素である。脱リン酸化に際して、NFATは核に移動し、TNF-α、IL-2、IL-3、およびIL-4などのサイトカインの転写に関与する制御性の複合体を形成する。カルシニューリン機能の阻害は脱リン酸化の事象とその後のサイトカイン転写を妨げる。カルシニューリン阻害の異常な態様は、抑制的な特性の実現のために、シクロスポリン、タクロリムス、およびピメクロリムスがイムノフィリンを有する複合体を形成することを要求されるというものである(Schreiber et al、Immunol. Today (1992)、13:136-42; Liu et al、Cell (1991)、66:807-15)。シクロスポリンについては、イムノフィリンはシクロフィリンであり、タクロリムスとピメクロリムスはFK506結合タンパク質(FKBP)に結合する。
【0309】
【0310】
シクロスポリンは、ビューベリア・ニベア(Beauveria nivea)の代謝産物として精製された11の残基環状ペプチドであり、化学名シクロ[((E))-(2S,3R,4R)-3-ヒドロキシ-4-メチル-2-(メチルアミノ)-6-オクテノイル]-L-2アミノブチリル-N-メチルグリシル-N-メチル-L-ロイシル-L-バリル-N-メチル-L-ロイシル-L-アラニル-D-アラニル-N-メチル-L-ロイシル-N-メチル-L-ロイシル-N-メチル-L-バリルである。これは全身投与または局所投与の両方で複数の製剤で提供される。サンディミュン(登録商標)は、3つの様々な製剤:ソフトゼラチンカプセル、経口溶液、あるいは注入のための製剤でシクロスポリンを提供する。サンディミュン(登録商標)は、腎臓、肝臓、あるいは心臓の移植中の臓器拒絶の防止のために処方される。ネオーラル(登録商標)とGengraf(登録商標)は、2つの製剤:ソフトゼラチンカプセルと経口溶液でシクロスポリンを提供する。これらは、腎臓、肝臓、あるいは心臓移植中の臓器拒絶の防止、深刻な活性な関節リウマチを抱える患者の治療、あるいは重症の乾癬の処置のために処方される。サンディミュン(登録商標)と比較して、ネオーラル(登録商標)とGengraf(登録商標)は、シクロスポリンのバイオアベイラビリティの増加をもたらす。Restasis(登録商標)は、眼用のエマルジョン製剤でシクロスポリンを提供する。これは乾性角結膜炎に関連する目の炎症により涙液の産生が低下した患者で涙液の産生を増加させるために処方される。
【0311】
FK-506あるいはフジマイシンとしても知られているタクロリムスは、ストレプトマイセスツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)によって産生された23員のクロライド天然物であり、化学名[3S-[3R*[E(1S*,3S*,4S*)], 4S*,5R*,8S*,9E,12R*,14R*,15S*,16R*,18S*,19S*,26aR*]]-5,6,8,11,12,13,14,15,16,17,18,19,24,25,26,26a-ヘキサデカヒドロ-5,19-ジヒドロキシ-3-[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシシクロヘキシル)-1-メチルエテニル]-14,16-ジメトキシ-4,10,12,18-テトラメチル-8-(2-プロペニル)-15,19-エポキシ-3H-ピリド[2,1-39c][1,4]オキサザシクロトリコシン-1,7,20,21(4H,23H)-テトラオン一水和物を有する。これは全身投与または局所投与に適した製剤で提供される。全身的な投与については、プログラフ(登録商標)製剤は経口カプセルあるいは注射用の無菌液を供給する。プログラフ(登録商標)は、肝臓、腎臓、あるいは心臓の移植中の臓器拒絶の防止のために処方される。局所投与については、プログラフ(登録商標)製剤は、中程度~重度のアトピー性皮膚炎の処置のために処方される。
【0312】
ピメクロリムスはタクロリムスの半合成アナログであり、化学名(1R,9S,12S,13R,14S,17R,18E,21S,23S,24R,25S,27R)-12-[(1E)-2-{(1R,3R,4S)-4-クロロ-3-メトキシシクロヘキシル}-1-メチルビニル]-17-エチル-1,14-ジヒドロキシ-23,25-ジメトキシ-13,19,21,27-テトラメチル-11,28-ジオキサ-4-アザ-トリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコサ-18-エン-2,3,10,16-テトラオンを有する。これは局所適用に適した製剤で提供され、軽度~中程度のアトピー性皮膚炎の処置のために処方される。
【0313】
研究は、タクロリムスとピメクロリムスがランゲルハンス細胞や皮膚の結合組織を抑制せず、したがって、コルチコステロイドとは異なり、皮膚の萎縮を引き起こさないことを示した(Stuetz et al、Int. Arch. Allergy Immunol.(2006)、141:199-212; Queille-Roussel et al、Br.J.Dermatol.(2001)、144:507-13)。カルシニューリンが重要であるため、カルシニューリン阻害剤の全身投与は有意な副作用を引き起こす。全身性副作用は投与量、曝露レベル、および治療期間に関連する。長期間の血中濃度の上昇は、高血圧、腎毒性、精神障害、高脂血、および深刻な免疫抑制を引き起こす。タクロリムスまたはピメクロリムスの局所適用は、あったとしてもごくわずかな全身曝露しかもたらさないことが示されており、タクロリムスは局所適用後に0.5%未満のバイオアベイラビリティを実証した。
【0314】
1つの実施形態では、耳用の製剤または組成物はカルシニューリン阻害剤を含む。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物はシクロスポリンを含む。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物はタクロリムスを含む。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物はピメクロリムスを含む。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、全身投与時に毒性を誘発するカルシニューリン阻害剤を含む。
【0315】
自己免疫性および/または炎症性の障害の処置のための免疫調節α剤と組み合わせて随意に使用される他の医薬品は、コルチコステロイド、局所麻酔薬、シトキサン、アザチオプリン、あるいはメトトレキサートを含む化学療法剤を含む、自己免疫性および炎症性の障害を処置するために、コラーゲン、γグロブリン、インターフェロン、コパキソン、あるいはこれらの組み合わせを用いる処置に使用されてきた他の薬剤を含む。これに応じて、自己免疫性の耳の障害の処置において開示された免疫調節組成物と製剤と組み合わせて、他の治療薬の使用も本明細書の実施形態の範囲内で企図される。加えて、他の治療薬は、AIED、あるいは嘔吐、めまい、および全身倦怠を含む他の自己免疫障害の付随する症状を処置するために、随意に使用される。
【0316】
IKK阻害剤
TNF-αの転写は転写因子NF-κBに依存する。無刺激細胞では、NF-κBは、IκBとしても知られているNF-κBのタンパク質阻害剤を有するタンパク質複合体の一部として細胞質にある。NF-κBの活性化は、IκBのリン酸化により誘発されたユビキチン化に依存する。いったん、ポリ-ユビキチン化されると、IκBは26Sプロテアソームによって急速分解を行い、自由なNF-κBは炎症誘発性の遺伝子転写を活性化するために核に移動する。NF-κBを放出するリン酸化事象は、IKKキナーゼから構成されるIκBキナーゼ(IKK)複合体によって媒介される。一般にIKK-αとIKK-β(Woronicz et al. Science (1997)、278:866; Zandi et al. Cell (1997)、91:243)あるいはIKK-1およびIKK-2(Mercurio et al. Science (1997)、278:860)と呼ばれる2つのIKK酵素が発見されている。いくつかの例では、IKKの両方の形態は、ホモ二量体およびIKK-α/IKK-βヘテロ二量体として存在する。IκBキナーゼ複合体の別の成分は、IKK-γあるいはNEMO(NF-κB必須モジュレータ(Essential Modulator))として知られている調節タンパク質である(Rothwarf et al. Nature (1998)、395:297)。NEMOは触媒性のドメインを含まないため、直接のキナーゼ活性を有しているようには見えず、制御的機能を果たすと思われている。既存のデータは、細胞内のIKKの優勢な形態がNEMOのニ量体あるいは三量体のいずれかに関連付けられるIKK-α/IKK-βヘテロ二量体であることを示唆する(Rothwarf et al. Nature (1998) 395:297)。生化学的な実験と分子生物学的な実験は、TNF-αにより誘発されたIκBのリン酸化と分解の最も有望なメディエーターとしてIKK-αとIKK-βを同定し、これは、炎症過程に関与する遺伝子のファミリーのNF-κB活性化とアップレギュレーションを引き起こす(Woronicz et al. Science (1997); Karin、Oncogene (1999) 18:6867; Karin、J. Biol. Chem. (1999) 274:27339)。
【0317】
多くのIKK-β阻害剤が同定されている。SPC-839は広範に研究されてきた。これは62nMのIC50でIKK-βを阻害し、30mg/kgでラット関節炎モデルの足浮腫を減少させる。カルボリンPS-1145は、150nMのIC50でIKK複合体を阻害し、LPS負荷マウスにおいてTNF-αの産生を減少させる。アロステリック阻害剤であるBMS-345541は0.3μMのIC50でIKK-βを阻害する。マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルでは、これは30mg/kgの投与量で疾患の重症度を有意に低下させた。IKK阻害剤の科学評論誌が公表されており(Karin et al.,Nature Reviews Drug Discovery (2004)、3、17-26)、これはIKK阻害剤の開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0318】
【0319】
1つの実施形態では、耳用の製剤または組成物はIKK阻害剤を含む。一層の実施形態では、耳用の製剤または組成物はIKK-β阻害剤を含む。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、全身投与時に毒性を誘発するIKK阻害剤を含む。追加の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、経口吸収されないIKK阻害剤を含む。追加の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、SPC-839、PS-1145、BMS-345541、およびSC-514から選択されるIKK阻害剤を含む。追加の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、以下の特許公報の群の中で開示された化合物から選択されるIKK阻害剤を含む:WO199901441、WO2001068648、WO2002060386、WO2002030353、WO2003029242、WO2003010163、WO2001058890、WO2002044153、WO2002024679、WO2002046171、WO2003076447、WO2001030774、WO2001000610、WO2003024936、WO2003024935、WO2002041843、WO200230423、WO2002094265、WO2002094322、WO2005113544、および、WO2006076318。これらはすべてIKK阻害剤の開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0320】
インターロイキン阻害剤
インターロイキンはサイトカインのあるクラスである。ある例では、インターロイキンは、病原体に遭遇した白血球によって分泌されたシグナル伝達分子である。ある例では、インターロイキンの分泌は追加の白血球を活性化し、感染の部位へ補充する。ある例では、感染の部位への追加の白血球の補充は(白血球を含むリンパの増大による)炎症を引き起こす。IL-1α、IL-1β、IL-2、およびIL-8が中耳滲出液で見られる。ある例では、IL-1αとIL-1βも真珠腫の上皮で見られる。
【0321】
Il-1は、IL-1αとIL-1βで構成されたインターロイキンのクラスである。IL-1は、マクロファージ、B細胞、単球、および樹状細胞(DC)によって作られる。これは受容体IL1R1/CD121aとIL1R2/CD121bに結合する。その受容体へのIL-1の結合は細胞表面癒着因子の増大をもたらす。これにより、感染の部位への白血球遊走が可能となる。
【0322】
IL-2はTH-1細胞によって作られ、受容体CD25/IL2Ra、CD122IL2Rb、およびCD132/IL2Rgに結合する。Il-2分泌はTH-1細胞へ抗原の結合によって刺激される。受容体へのIL-2の結合は記憶T細胞の成長と分化を刺激する。
【0323】
IL-8はマクロファージ、リンパ球、上皮細胞、および内皮細胞によって作られる。これはCXCR1/IL8RaとCXCR2/IL8Ra/CD128に結合する。IL-8の分泌は、感染の部位への好中球走化性を開始させる。
【0324】
いくつかの実施形態において、被験体は、炎症誘発性インターロイキンの阻害剤を投与される。いくつかの実施形態において、炎症誘発性インターロイキンは、IL-1α、IL-1β、IL-2あるいはIL-8である。いくつかの実施形態において、炎症誘発性インターロイキンの阻害剤は、WS-4(IL-8に対する抗体);[(Ser IL-8]72;あるいは[Ala IL-8]77(米国特許第5,451,399号を参照。これはペプチドに関する開示のために参照により本明細書に組み込まれる);IL-1RA;SB 265610(N-(2-ブロモフェニル)-N’-(7-シアノ-1H-ベンゾトリアゾール-4-イル)尿素;SB 225002(N-(2-ブロモフェニル)-N’-(2-ヒドロキシ-4-ニトロフェニル)尿素);SB203580(4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)1H-イミダゾール);SB272844(GlaxoSmithKline);SB517785(GlaxoSmithKline);SB656933(GlaxoSmithKline);Sch527123(2-ヒドロキシ-N,N-ジメチル-3-({2-[[(R)-1-(5-メチル-フラン-2-イル)-プロピル]アミノ]-3,4-ジオキソ-シクロブタ-1-エニルアミノ}-ベンズアミド);PD98059(2-(2-アミノ-3-メトキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン);レパリキシン;N-[4-クロロ-2-ヒドロキシ-3-(ピペラジン-l-(スルホニル)フェニル]-N’-(2-クロロ-3-フルオロフェニル)尿素)p-トルエンスルホナート;(WO/2007/150016号を参照。これはこの化合物に関する開示のために参照により本明細書に組み込まれる);シベレスタット;bG31P(CXCL8((3-74))K11R/G31P);バシリキシマブ;シクロスポリンA;SDZ RAD(40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン);FR235222(Astellas Pharma);ダクリズマブ;アナキンラ;AF12198(Ac-Phe-Glu-Trp-Thr-Pro-Gly-Trp-Tyr-Gln-L-アゼチジン-2-カルボニル-Tyr-Ala-Leu-Pro-Leu-NH2)(SEQ ID NO:119);またはそれらの組み合わせである。
【0325】
血小板活性因子アンタゴニスト
血小板活性化因子アンタゴニストは、本明細書で開示される免疫調節製剤と組み合せた使用について企図されている。血小板活性化因子アンタゴニストは、ほんの一例として、カズレノン(kadsurenone)、フォマクチン G、ジンセノサイド、アパファント(4-(2-クロロフェニル)-9-メチル-2[3(4-モルホリニル)-3-プロパノール-1-イル[6H-チエノ[3.2-f[[1.2.4]トリアゾロ]4,3-1]]1.4]ジアゼピン)、A-85783、BN-52063、BN-52021、BN-50730(四面体-4,7,8,10メチル-1(クロロ-1 フェニル)-6(メトキシ-4 フェニル-カルバモイル)-9 ピリド[4’,3’-4,5]チエノ[3,2-f]トリアゾロ-1,2,4[4,3-a]ジアゼピン-1,4)、BN50739、SM-12502、RP-55778、Ro 24-4736、SR27417A、CV-6209、WEB 2086、WEB 2170、14-デオキシアンドログラホリド、CL 184005、CV-3988、TCV-309、PMS-601、TCV-309、およびこれらの組み合わせを含む。
【0326】
TNF-α変換酵素(TACE)阻害剤
TNF-αは当初、26kDa、233のアミノ酸、膜結合型の前駆体タンパク質として細胞表面上で発現される。マトリックスメタロプロテイナーゼ TNF-α変換酵素による膜結合型のTNF-αのタンパク質分解切断は、Ala-76とVal-77との間で生じ、溶解可能な三量体として存在する17kDaの成熟したTNF-αをもたらす。タンパク質分解切断の阻害は、抗炎症治療においてタンパク質ベースの治療薬の代替物を供給することができる。しかしながら、潜在的な1つの問題は、TACEがTNF-αに加えて他のタンパク質の処理に関与すると考えられているということである。例えば、第II相臨床試験において、TACE阻害の結果、肝臓内で毒作用の徴候が生じた。(Car et al, Society of Toxicology, 46th Annual Meeting, Charlotte, North Carolina, March 25-29, 2007)。この機構ベースの毒性に関する仮説は、TACEがTNFRIとTNFRIIなどの他の膜結合タンパク質にも作用するというものである。
【0327】
経口投与後の毒性は全身投与された薬物にとって問題であるが、作用部位に対する局所送達はこの問題を克服する。阻害剤GW3333は、LPSにより誘発されたヒトPBMC細胞のTNF-α産生を阻害するために40nMのTACE IC50と0.97μMのIC50を有する(Conway et al, J. Pharmacol. Exp. Ther. (2001), 298:900)。ニトロアルギニンアナログAは、LPSにより誘発されたMonoMac-6細胞でのTNF-α産生を阻害するために4nMのIC50 TACE IC50と0.034μMのIC50を有している(Musso et al, Bioorg. Med. Chem. Lett. (2001), 11:2147)が、経口活性を欠いている。TNF-α変換酵素阻害剤の科学評論誌が公表されており(Skotnicki et al.,Annual Reports in Medicinal Chemistry (2003), 38, 153-162)、これはこうした開示のために本明細書により組み込まれる。
【0328】
【0329】
これに応じて、耳用の製剤または組成物はTACE阻害剤を含む。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、全身投与時に毒性を誘発するTACE阻害剤を含む。追加の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、経口吸収されないTACE阻害剤を含む。別の実施形態では、耳用製剤は、ニトロアルギニンアナログA、GW3333、TMI-1、BMS-561392、DPC-3333、TMI-2、BMS-566394、TMI-005、アプラタスタット、GW4459、W-3646、IK-682、GI-5402、GI-245402、BB-2983、DPC-A38088、DPH-067517、R-618、およびCH-138から選択されるTACE阻害剤を含む。
【0330】
トール様受容体阻害剤
トール様受容体(TLR)は、少なくとも12のパターン認識細胞表面と細胞内受容体のファミリーである。ファミリーは2つのドメイン:複数のロイシンリッチリピートを備えたリガンド結合ドメインと、短いトール/Il-1受容体ドメインとの存在によって定義され、後者は下流シグナル制御カスケードの開始を制御する。ある例では、受容体は、病原体上で見られる構造上保存される分子(つまり「パターン」)の結合によって活性化される。各受容体は、病原体(例えば、TLR2-リポペプチド;TLR3-ウイルスdsRNA;TLR4-LPS;TLR5-フラジェリン;TLR9-CpG DNA)で見られる特定の保存された分子を認識して結合する。ある例では、病原体へのTLRの結合は、TLRシグナル伝達カスケードを開始させ、これは最終的に、様々なサイトカイン、ケモカイン、および抗原特異的ならびに非特異的な免疫反応の活性化を引き起こす。ある例では、TLR2および/またはTLR4の発現は、分類できないインフルエンザ菌(Hemophilus influenzae)(NTHi)への接触でアップレギュレートされる。NTHiによる感染は中耳炎の一般的な原因である。
【0331】
トール様受容体は、破壊された微生物に由来し、かつ、先天性の免疫系で重要な役割を果たすと信じられている構造上保存された分子を認識する単一の膜貫通型非触媒性の受容体のクラスに属する。したがって、トール様受容体は、病原体によって広く共有されるがホスト分子とは識別可能な分子を認識する。こうした受容体は、インターロイキン-1受容体を備えたスーパーファミリーを形成し、トール様受容体ドメインを共通して有する。CQ-07001などのトール様受容体アゴニストはトール様受容体3機能を刺激して、抗炎症活性と組織再生成活性を誘発する。ゆえに、トール様受容体モジュレータは、AIEDを含む内耳障害と、中耳炎を含む中耳疾患との両方で使用される意味合いを持つ。いくつかの実施形態において、トール様受容体モジュレータは、トール様受容体アンタゴニスト、部分的アゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、および/またはオルソステリックアンタゴニストを含む。他のトール様受容体モジュレータとしては、限定されないが、ポリイノシンポリシチジル酸[ポリ(I:C)]、ポリAU、dsRNAアゴニスト(AMPLIGEN(登録商標)、Hemispherx、Inc.,Rockville MD;および、POLYADENUR(登録商標)、Ipsen)を含む他の核酸分子が挙げられ、本明細書に開示された実施形態の範囲内で企図されている。
【0332】
いくつかの実施形態において、TLR阻害剤はST2抗体;sST2-Fc(機能的なマウス溶解可能なST2-ヒトIgG1 Fc融合タンパク質;Biochemical and Biophysical Research Communications, 29 December 2006, vol. 351, no. 4, 940-946を参照。これは、sST2-Fcに関連する開示のために参照により本明細書に組み込まれる);CRX-526(Corixa);リピドIVA;RSLA(ロドバクター・スフェロイデス リピドA);E5531 ((6-O-{2-デオキシ-6-O-メチル-4-O-ホスホノ-3-O-[(R)-3-Z-ドデカ-5-エンドイルオキシデシル]-2-[3-オキソ-テトラデカノイルアミノ]-β-O-ホスホノ-α-D-グルコピラノース四ナトリウム塩);E5564(α-D-グルコピラノース,3-O-デシル-2-デオキシ-6-O-[2-デオキシ-3-O-[((3R))-3-メトキシデシル]-6-O-メチル-2-[((11Z))-1-オキソ-11-オクタデケニル]アミノ]-4-O-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(1,3-ジオキソテトラデシル)アミノ]-1-(二水素リン酸塩),四ナトリウム塩);化合物4a(ヒドロシナモイル-L-バリルピロリジン;PNAS, June 24, 2003, vol. 100, no. 13, 7971-7976を参照。化合物4aに関連する開示のために参照により本明細書に組み込まれる);CPG 52364(Coley Pharmaceutical Group);LY294002(2-(4-モルホリニル)-8-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-4-オン);PD98059(2-(2-アミノ-3-メトキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン);クロロキン、および、免疫調節オリゴヌクレオチド(IROに関する開示のため、米国特許出願公開第2008/0089883号を参照)である。
【0333】
自己免疫薬剤
さらに、本明細書で開示される製剤と組成物とともに用いられる、自己免疫性内耳疾患(AIED)を含む自己免疫疾患の結果としての症状または効果を減少または改善する薬剤も企図されている。これに応じて、いくつかの実施形態は随意に、限定されないが、抗TNF剤を含むTNF-αの作用をブロックする薬剤の使用を組み込む。ほんの一例として、複数の抗TNF剤は、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、およびアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、あるいはこれらの組み合わせを含む。自己免疫障害を処置する他の医薬品は、シトキサン、アザチオプリン、あるいはメトトレキサートを含む化学療法剤;コラーゲン、γグロブリン、インターフェロン、コパキソン、あるいはこれらの組み合わせを用いる処置を含む。
【0334】
IL-1モジュレータ
インターロイキン1(IL-1)は、全身性の炎症、免疫調節、および赤血球産生と同様に、局所の調節で一定の役割を果たす多面発現性サイトカインである。IL-1ファミリーのメンバーであるIL-1βは、腫瘍血管新生を含む血管新生プロセスに関与する。さらに、IL-1はマクロファージ、繊維芽細胞、滑膜細胞、および軟骨細胞中の炎症性のエイコサノイドの合成を刺激することがわかっており、関節炎モデルにおいて白血球活性化と組織破壊に寄与すると信じられている。したがって、IL-1活性への干渉は、AIEDと中耳炎などの慢性的な炎症疾患の疾患調節療法を開発するための手法である。いくつかの実施形態において、IL-1モジュレータは、IL-1アンタゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、および/またはオルソステリックアンタゴニストを含んでいる。いくつかの実施形態において、IL-1モジュレータとしては、限定されないが、IL-1サブユニットあるいはその受容体を特異的に認識する抗体、タンパク質、ペプチド、核酸、および小分子治療薬が挙げられる。いくつかの実施形態において、ILL-1モジュレータは、例えば、AF12198、IL-1の天然のアンタゴニスト、IL-1分子に結合する不活性の受容体フラグメント、およびIL-1サイトカインタンパク質の発現を阻むアンチセンスの分子または因子を含む、IL-1アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、IL-1アンタゴニストは、例として、アナキンラ(Kinaret(登録商標))およびACZ885(カナキヌマブ(登録商標))を含むIL-1抗体である。いくつかの実施形態において、IL-1のモジュレータは、例として、ラニビズマブ、テフィバズマブ、およびベバシズマブを含む、IL-1の放出および/または発現に影響を与えるサイトカインおよび/または成長因子を調節する抗体である。いくつかの実施形態において、IL-1モジュレータは、細胞表面受容体に結合する前に、IL-1に取り付いてIL-1を中和するIL-1トラップ(trap)であり、限定されないが、リロナセプト(Arcalyst(登録商標))を含む。
【0335】
RNAi
いくつかの実施形態において、標的の阻害あるいはダウンレギュレーションが望ましい(例えば、1つ以上のカルシニューリン、IKK、TACE、TLR、あるいはサイトカインをコードする遺伝子)場合、RNA干渉が利用される。いくつかの実施形態において、標的を阻害または下流調節する薬剤は、siRNA分子である。特定の例において、siRNA分子は、RNA干渉(RNAi)による目標の転写を阻害する。いくつかの実施形態において、目標に相補的な配列を有する二重鎖RNA(dsRNA)分子は、(例えばPCRによって)生成される。いくつかの実施形態において、目標に相補的な配列を備えた20~25bpのsiRNA分子が生成される。いくつかの実施形態において、20~25bpのsiRNA分子は、各鎖の3’末端および5’リン酸塩末端のおよび3’ヒドロキシル末端上に2~5bpのオーバーハング(overhang)を有する。いくつかの実施形態において、20~25bpのsiRNA分子は、ブラントエンドを有する。RNAを生成するための技術については、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook et al., 1989) and Molecular Cloning: A Laboratory Manual, third edition (Sambrook and Russel, 2001), 本明細書では「Sambrook」として共同で引用されている); Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al., eds., 1987, including supplements through 2001); Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry John Wiley & Sons, Inc., New York, 2000)を参照する。これらは、そのような開示のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0336】
いくつかの実施形態において、dsRNAまたはsiRNAの分子は、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物に組み入れられる。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は内耳に注入される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は正円窓膜を通って注入される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはこれらの組み合わせに注入される。
【0337】
特定の例において、dsRNAまたはsiRNA分子の投与の後、投与部位の細胞(例えば、蝸牛、コルチ器官、および/または前庭迷路の細胞)は、dsRNAまたはsiRNAの分子で形質転換される。形質転換に続く特定の例において、dsRNA分子は、約20~25bpの多数のフラグメントへと切断され、siRNA分子を与える。特定の例において、フラグメントは、各鎖の3’末端の上に約2bpのオーバーハングを有する。
【0338】
特定の例では、siRNA分子は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって、2つの鎖(ガイド鎖および非ガイド鎖)に分割される。特定の例において、ガイド鎖は、RISCの触媒作用成分(つまり、アルゴノート)に組み入れられる。ガイド鎖は、相補的な標的mRNA配列に結合する。いくつかの例において、RISCは、標的mRNAを切断する。いくつかの例において、標的遺伝子の発現はダウンレギュレートされる。
【0339】
いくつかの実施形態では、標的に粗放的な配列は、ベクターに連結する。いくつかの実施形態において、配列は2つのプロモータの間に配置される。いくつかの実施形態において、プロモータは反対方向に位置づけられる。いくつかの実施形態において、ベクターは細胞と接触する。特定の例において、細胞はベクターで形質転換される。形質転換に続く特定の例において、配列のセンス鎖および非センス鎖が生成される。特定の例において、センス鎖および非センス鎖はハイブリダイズしてdsRNA分子を形成して、これはsiRNA分子へと切断される。特定の例において、鎖はハイブリダイズして、siRNA分子を形成する。いくつかの実施形態において、ベクターは、プラスミド(例えば、pSUPER;pSUPER.neo;pSUPER.neo+gfp)である。
【0340】
いくつかの実施形態において、ベクターは耳の製剤に組み込まれる。いくつかの実施形態において、耳用製剤は内耳に注入される。いくつかの実施形態において、耳用製剤は正円窓膜を通って注入される。いくつかの実施形態において、耳用製剤は、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはこれらの組み合わせに注入される。
【0341】
耳圧モジュレーター
アクアポリン
本明細書で開示される製剤と組成物とともに用いられる、耳の障害を処置し、および/または、耳の細胞と構造を調節する薬剤が企図されている。ある例では、アクアポリンは流体ホメオスタシスに関与する。ある例では、AQP2 mRNAは、対照動物で観察されたレベルを上回るバソプレシンで処置されたラットで増える。ある例では、アクアポリン-1は蝸牛と内リンパ嚢で発現される。ある例では、アクアポリン-1はらせん靱帯、コルチ器官、鼓室階、および内リンパ嚢で発現される。アクアポリン-3は、血管条、らせん靱帯、コルチ器官、らせん神経節、および内リンパ嚢で発現される。ある例では、アクアポリン2(AQP2)mRNAは、内リンパ水腫の個体での正常なレベルを超えて増える。
【0342】
これに応じて、いくつかの実施形態は、アクアポリンを調節する薬剤の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、アクアポリンはアクアポリン1、アクアポリン2、および/または、アクアポリン3である。いくつかの実施形態において、アクアポリン(例えば、アクアポリン1、アクアポリン2、あるいはアクアポリン3)を調節する薬剤は、アクアポリンアンタゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストあるいは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、および/またはオルソステリックアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、アクアポリンアンタゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストあるいは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、および/またはオルソステリックアンタゴニストは、限定されないが、P物質;RU-486;テトラエチルアンモニウム(TEA);抗アクアポリン抗体;バソプレシンおよび/またはバソプレシン受容体アンタゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、および/またはオルソステリックアンタゴニスト;あるいは、これらの組み合わせを含む。
【0343】
エストロゲン関連受容体ベータモジュレータ
オーファン核内受容体である、エストロゲン関連受容体ベータ(ERR-ベータ;Nr3b2としても知られている)は内耳の内リンパ生成細胞、蝸牛中の線条辺縁細胞(strial marginal cell)、および膨大部と卵形嚢の前庭暗細胞で特異的に発現され、これらの細胞の進行を制御する。(Chen et al. Dev. Cell. (2007) 13:325-337)。Nr3b2発現は、内リンパ分泌線条辺縁細胞と、蝸牛および前庭器の前庭暗細胞でそれぞれ局在化した。ノックアウトマウスでの研究は、これらの動物における線条辺縁細胞が複数のイオンチャネルと輸送体遺伝子を発現することができなかったことを示しており、内リンパ産生上皮の進行および/または機能における役割を示唆している。さらに、Nr3b2遺伝子のコンディショナルノックアウトは、聴覚消失と内リンパ液体量の減少をもたらした。
【0344】
他の研究は、内リンパ産生、ゆえに、前庭/蝸牛器内の圧力を制御する際のエストロゲン関連受容体β/NR3B2(ERR/Nr3b2)の役割を示唆している。いくつかの実施形態において、ERR/Nr3b2に対するアンタゴニストを用いる処置は、内リンパ量の減少を促し、ゆえに、内耳構造内の圧力を変える。これに応じて、ERR/Nr3b2発現、タンパク質産生、あるいはタンパク質機能を弱める薬剤は、本明細書で開示される製剤とともに有用であると企図される。
【0345】
ギャップ結合タンパク質
本明細書で開示される製剤と組成物とともに用いられる、耳の障害を処置し、および/または、耳の細胞と構造を調節する薬剤が企図されている。ギャップ結合は細胞内接続である。ある例では、ギャップ結合は2つの細胞の細胞質を接続する。ある例では、ギャップ結合は細胞間の小分子(例えば、IP3)とイオンの通路を促す。ある例では、ギャップ結合は、コネクシン(例えば、6つのコネクシンがコネクソンを形成し、2つのコネクソンがギャップ結合を組織する)から形成される。複数のコネクシン(例えば、Cx23、Cx25、Cx26、Cx29、Cx30、Cx30.2、Cx30.3、Cx31、Cx31.1、Cx31.9、Cx32、Cx33、Cx36、Cx37、Cx39、Cx40、Cx40.1、Cx43、Cx45、Cx46、Cx47、Cx50、Cx59、およびCx62)がある。ある例では、Cx26とCx43は、らせん板縁、らせん靱帯、血管条、コルチ器官の細胞中で発現される。ある例では、非症候性難聴はコネクシン(例えば、Cx26)をコードする遺伝子(例えば、GJB2)中の突然変異に関連付けられる。ある例では、感音性難聴はコネクシン(例えば、Cx26)をコードする遺伝子中の突然変異に関連付けられる。ある例では、Cx26とCx43の発現は真珠腫内でアップレギュレートされる。ある例では、Cx26の発現はアップレギュレートされた以下の音響性外傷である。ある例では、ギャップ結合は、内リンパ中のK+イオンの移動を促す。
【0346】
これに応じて、本明細書で開示されるいくつかの実施形態は、ギャップ結合タンパク質を調節する薬剤の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、ギャップ結合タンパク質はコネクシンである。いくつかの実施形態において、コネクシンを調節する薬剤は、コネクシンアゴニスト、部分アゴニスト、および/またはコネクシンのポジティブアロステリックモジュレーターである。いくつかの実施形態において、コネクシンアゴニスト、部分アゴニスト、および/またはポジティブアロステリックモジュレーターは、限定されないが、アスタキサンチン;ロチガプチド;アデノシン;副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン;あるいは、これらの組み合わせを含む。
【0347】
バソプレシンとバソプレシン受容体
バソプレシン(VP)は、循環と水のホメオスタシスで重要な役割を果たすホルモンである。このホルモンは2つの特定の視床下部核--視索上核と室傍核に優勢的にある神経分泌細胞によって合成される。こうしたニューロンは、バソプレシンを放出する脳下垂体後葉(神経下垂体)の神経葉で終わる軸索を有する。3つのバソプレシン受容体サブタイプ(VP1a、VP1b、およびVP2)はすべて、Gタンパク質共役受容体ファミリーに属しており、組織分布が異なる。VP1a受容体は、血管平滑筋、肝細胞および血小板に優勢的にある。VP1b受容体は下垂体前葉で見られる。VP2受容体は腎臓の集合管に局在しており、頂端細胞表面でのアクアポリン-2チャネルの呈示を調節する。VP2サブタイプの調節の効果は、抗利尿薬の薬理学的な効果を決定するために、尿量と電解液のレベルの容易に観察された変化を提供する。
【0348】
バソプレシンは尿量と組成物を制御することにより全身の重量モル浸透圧濃度を調節する。バソプレシンは、血漿張性の増大(非常に敏感な刺激)あるいは血漿量の減少(さほど敏感でない刺激)に応じて分泌される。バソプレシンは、腎臓の集合管内のVPの受容体に結合することにより、主として尿量を調節する。VP受容体はげっ歯類の内耳にも存在し、VP媒介性の水チャネルタンパク質であるアクアポリン-2(AQP2)も発現される(Kitano etal. Neuroreport (1997), 8:2289-92)。内耳流体の水ホメオスタシスはVP-AQP2系を使用して調節されることが確認された(Takeda et al. Hear Res (2000), 140:1-6; Takeda et al. Hear Res. (2003), 182:9-18)。最近の研究は、免疫組織化学によってヒト内リンパ嚢中のVP2とAQP2の組織発現に着目し、VP2とAQP2が内リンパ嚢の上皮層にあるが、周囲の結合組織にはないと示した(Taguchi etal, Laryngoscope (2007), 117:695-698)。モルモットでのバソプレシンの全身投与に関する研究は、内リンパ水腫の発症を示した(Takeda et al. Hear Res (2000), 140:1-6)。さらに、アクアポリン-4ノックアウトマウスは、それ以外は健康的であるが、耳が聞こえない。(Beitz et al., Cellular and Molecular Neurobiology (2003) 23(3):315-29)このことは、腎臓のやり方に類似する方法での水と溶質の輸送が内リンパ嚢の流体ホメオスタシスにおいてある役割を果たすことを示唆している。突然変異体ヒトVP2受容体タンパク質(D136A)は、本質的に活性であると同定され、特徴づけられている(Morin et al., FEBS Letters (1998) 441(3):470-5)。VP2受容体のこのホルモン非依存性活性化は、メニエール病などの疾病の病因で役割を果たすことができる。
【0349】
本明細書で開示される製剤と組成物とともに用いられる、耳の障害を処置し、および/または、耳の細胞(例えば、耳の感覚細胞)と構造を調節する薬剤が企図されている。ある例では、VPは流体ホメオスタシスに関与する。ある例では、VPは内リンパおよび/または外リンパのホメオスタシスに関与する。ある例では、内リンパ量の増加は、前庭と蝸牛の構造内で圧力を増加させる。ある例では、VPの血漿レベルは、内リンパ水腫および/またはメニエール病で正常なレベルを超えて上昇する。
【0350】
バソプレシン受容体モジュレータ
バソプレシン受容体モジュレータは、バソプレシンペプチドホルモンに関するそれらの有効性に基づいて区別される。バソプレシン受容体完全アゴニストは天然のペプチドの模倣物である。バソプレシン受容体アンタゴニストは、天然のペプチドの作用を妨げる。いくつかの実施形態において、部分アゴニストは、天然のペプチドの模倣物として役立ち、かつ、部分的な応答を誘発し、あるいは、高いレベルの天然のペプチドのある状態で、部分アゴニストは受容体の占有率について天然のペプチドと競合し、天然のペプチドのみの場合と比べて、有効性を減少させる。構成的な活性を有するバソプレシン受容体について、インバースアゴニストはこの受容体の活性を撤回する役目を果たす。
【0351】
これに応じて、いくつかの実施形態は、バソプレシンおよび/またはバソプレシン受容体を調節する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態において、バソプレシンおよび/またはバソプレシン受容体を調節する薬剤は、バソプレシンおよび/またはバソプレシン受容体アンタゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、および/またはオルソステリックアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、バソプレシンおよび/またはバソプレシン受容体アンタゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストあるいは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、および/またはオルソステリックアンタゴニストは、限定されないが、抗バソプレシン抗体;抗バソプレシン受容体抗体;リチウム;OPC-31260((±)-5-ジメチルアミノ-l-(4-[2-メチルベンゾイルアミノ]ベンゾイル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンズアゼピン塩酸塩);WAY-140288(N-[4-[3-(ジメチルアミノメチル)-10,11-ジヒドロ-5H-ピロロ[2,1c][1,4]ベンゾジアゼピン-10-イルカルボニル]-2-メトキシフェニル]ビフェニル-2-カルボキサミド);CL-385004(5-フルオロ-2-メチル-N-[5-(5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-10(11H)-イルカルボニル)-2-ピリジニル]ベンズアミド);レルコバクタン(relcovaptan)、リキシバプタン(lixivaptan)(VPA-985);トルバプタン;コニバプタン;SR 121463A(1-(4-(N-tert-ブチルカルバモイル)-2-メトキシベンゼンスルホニル)-5-エトキシ-3-スピロ-(4-(2-モルホリノエトキシ)シクロヘキサン)インドール-2-オン フマル酸塩);SR-49059((2S)-1-[(2R,3S)-5-クロロ-3-(2-クロロフェニル)-1-[(3,4-ジメトキシフェニル)スルホニル]-2,3-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-1H-インドール内-2-イル]カルボニル]-2-ピロリジンカルボキサミド)、リキシバプタン(VPA 985);AC-94544(ACADIA Pharmaceuticals Inc.);AC-88324(ACADIA Pharmaceuticals Inc.);AC-110484(ACADIA Pharmaceuticals Inc.);あるいは、これらの組み合わせを含む。
【0352】
最近の研究は、内リンパ産生を調節することにより、それにより、前庭と蝸牛の構造の中にある圧力を媒介として、内耳圧力を調節する際のバソプレシンの役割を示唆している。(Takeda et al. Hearing Res. (2006) 218:89-97)。OPC-31260を含むバソプレシンアンタゴニストを用いる処置は、メニエール病の症状の顕著な減少をもたらした。これに応じて、バソプレシンアンタゴニストは、本明細書で開示される製剤とともに使用するのに役に立つものとして企図される。バソプレシンアンタゴニストの例としては、限定されないが、OPC-31260、WAY-140288、CL-385004、トルバプタン、コニバプタン、SR 121463A、VPA 985、バリウム(ジアゼパム)、ベンゾジアゼピン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。バソプレシンアンタゴニストの試験は、モルモット動物モデルにおける処置を用いた水症減少の試験と計算を含んでいる。例えば、Chi et al.“The quantification of endolymphatic hydrops in an experimental animal model with guinea pigs”, J. Oto-Rhino-Larynol. (2004) 66:56-61を参照。
【0353】
VP2受容体のアゴニストはOPC-51803および関連するアナログを含むことが知られている(Kondo et al., J. Med. Chem. (2000) 43:4388; Nakamura et al., Br. J. Pharmacol. (2000) 129(8):1700; Nakamure et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. (2000) 295(3):1005) and WAY-VNA-932 (Caggiano, Drugs Gut (2002) 27(3):248)。VP2受容体のアンタゴニストはリキシバプタン、トルバプタン、コニバプタン、SR-121463、およびOPC-31260を含む(Martin et al., J. Am. Soc. Nephrol. (1999) 10(10):2165; Gross et al., Exp. Physiol. (2000) 85: Spec No 253S; Wong et al., Gastroent April 2000, vol 118, 4 Suppl. 2, Part 1); Norman et al., Drugs Fut. (2000), 25(11):1121; Inoue et al., Clin. Pharm. Therap. (1998) 63(5):561)。本質的に活性化されたD136A突然変異体VP2受容体に対する試験では、SR-1211463とOPC-31260は、インバースアゴニストとして作用した(Morin et al., FEBS Letters (1998) 441(3):470-75)。
【0354】
【0355】
NMDA受容体モジュレータ
本明細書で開示される製剤と組成物とともに用いられる、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節する薬剤、および、耳鳴などの聴力障害を処置あるいは改善するための薬剤が企図されている。これに応じて、いくつかの実施形態は、NMDA受容体を調節する薬剤の使用を組み入れる。
【0356】
ある例では、過剰な量のグルタミン酸の結合によるNMDAグルタミン酸受容体の過剰活性化は、制御下でイオンチャネルの過度の開口を引き起こす。ある例では、これは、ニューロンに入る異常に高いレベルのCa2+とNa+を引き起こす。ある例では、ニューロンへのCa2+とNa+の流入は、限定されないが、ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ、およびプロテアーゼを含む複数の酵素を活性化する。ある例では、こうした酵素の過剰な活性は、耳鳴、および/または、細胞骨格、原形質膜、ミトコンドリア、ならびにニューロンのDNAへの損傷をもたらす。ある例では、NMDA受容体モジュレーターネラメキサンは、耳鳴の症状を処置し、および/または、改善する。
【0357】
いくつかの実施形態において、NMDA受容体を調節する薬剤はNMDA受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、NMDA受容体を調節する薬剤は、NMDA受容体アンタゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、および/またはオルソステリックである。いくつかの実施形態において、NMDA受容体に拮抗する薬剤としては、限定されないが、1-アミノアダマンタン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、イボガイン、ケタミン、エスケタミン(AM-101)、亜酸化窒素、フェンシクリジン、リルゾール、チレタミン、メマンチン、ネラメキサン、ジゾシルピン、アプチガネル、レマセミド、7-クロロキヌレン酸、DCKA(5,7-ジクロロキヌレン酸)、キヌレン酸、1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACPC)、AP7(2-アミノ-7-ホスホノヘプタン酸)、APV(R-2-アミノ-5-ホスホノペンタノアート)、CPPene(3-[(R))-2-カルボキシピペラジン-4-イル]-プロプ-2-エニル-1-ホスホン酸);(+)-(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシ-フェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジノ)-1-プロ-パノール;(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリ-ジノ)-1-プロパノール;(3R,4S)-3-(4-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル-)-クロマン-4,7-ジオール;または、(1R*,2R*)-1-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-(4-(4-フルオロ-フェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-プロパン-1-オール-メシレート;ガシクリジン(1-[(1R,2S)-2-メチル-1-チオフェン-2-イルシクロヘキシル]ピペリジン);および/または、これらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、NMDA受容体に拮抗する薬剤は、ガシクリジン(1-[(R,2S))-2-メチル-1-チオフェン-2-イルシクロヘキシル]ピペリジン)である。
【0358】
ENaC受容体モジュレータ
上皮のナトリウムチャネル(ENaC、ナトリウムチャネル、非ニューロン1(SCNN1)あるいはアミロライド、敏感なナトリウムチャネル(ASSC))は、Li+イオン、プロトン、およびNa+イオンに浸透性の膜結合型イオンチャネルである。ENaCは極性化した上皮細胞の頂端側細胞膜にあり、経上皮Na+イオン輸送に関与する。Na+/K+-ATPアーゼもNa+輸送とイオンホメオスタシスに関与する。
【0359】
ENaCは、Na+イオンの再吸収により、血液、上皮、および経上皮の流体のNa+イオンとK+イオンのホメオスタシスで一定の役割を果たす。ENaCの活性のモジュレータは耳圧を調節し、例として、鉱質コルチコイドアルドステロン、トリアムテレン、およびアミロライドを含んでいる。
【0360】
浸透圧利尿薬
本明細書で開示される製剤と組成物とともに用いられる、耳圧を調節する薬剤が企図されている。これに応じて、いくつかの実施形態は浸透圧利尿薬を含む。浸透圧利尿薬は2つの腔の間に浸透勾配を形成する物質である。ある例では、浸透圧利尿薬は、内リンパ腔と外リンパ腔の間に浸透勾配をもたらす。ある例では、内リンパ腔と外リンパ腔の間の浸透勾配は内リンパ腔に脱水効果をもたらす。ある例では、内リンパ腔の脱水は耳圧を低下させる。
【0361】
これに応じて、本明細書に開示される組成物と製剤のいくつかの実施形態では、耳圧モジュレータは浸透圧利尿薬である。いくつかの実施形態において、浸透圧利尿薬は、エリトリトール、マンニトール、グルコース、イソソルビド、グリセロール;尿素;あるいは、これらの組み合わせである。
【0362】
いくつかの例では、本明細書で開示される耳圧調節製剤または組成物と組み合わせて用いられる、利尿薬が企図されている。利尿薬は排尿の速度を引き上げる薬である。こうした利尿薬は、トリアムテレン、アミロライド、ベンドロフルメサイアザイド、ヒドロクロロチアジド、フロセミド、トルセミド、ブメタニド、アセタゾラミド、ドルゾラミド、およびこれらの組み合わせを含んでいる。
【0363】
プロゲステロン受容体
本明細書で開示される製剤と組成物とともに用いられる、耳の障害(例えば、炎症)を処置し、および/または、耳の細胞と構造を調節する治療薬が企図されている。プロゲステロンはステロイドホルモンである。ある例では、プロゲステロンはαプロゲステロン受容体のリガンドである。ある例では、プロゲステロンは脳で見られる。ある例では、プロゲステロンはシナプスの機能化に影響を与える。ある例では、プロゲステロンは、部分的または完全な聴力損失に関連付けられる。ある例では、プロゲステロンとエストロゲンをとる女性は、エストロゲンのみをとる女性よりも聴力損失が重篤であった(例えば、約10%~約30%)。
【0364】
これに応じて、いくつかの実施形態は、プロゲステロンおよび/またはプロゲステロン受容体を調節する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態において、プロゲステロンおよび/またはプロゲステロン受容体を調節する薬剤は、プロゲステロンおよび/またはプロゲステロン受容体アンタゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、および/またはオルソステリックアンタゴニストである。他の実施形態において、プロゲステロンおよび/またはプロゲステロン受容体を調節する薬剤は、限定されないが、RU-486((11b,17b)-11-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-17-ヒドロキシ-17-(1プロピン イル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン);CDB-2914(17α-アセトキシ-11β-[4-N,N-ジメチルアミノフェニル]-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン);CDB-4124(17α-アセトキシ-21-メトキシ-11β-[4N,N-ジメチルアミノフェニル]-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン);CDB-4453(17α-アセトキシ-21-メトキシ-11β-[4-N-メチルアミノフェニル]-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン);RTI3021-022(Research Triangle Institute);ZK 230211(11-(4-アセチルフェニル)-17-ヒドロキシ-17-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン);ORG 31710(11-(4-ジメチルアミノフェニル)-6-メチル-4’,5’-ジヒドロ(エストラ-4,9-ジエン-17,2’-(3H)-フラン)-3-オン);ORG33628(Organon);オナプリストン(ZK 98299);アソプリスニル;ウリプリスタル;抗プロゲステロン抗体;抗プロゲステロン受容体抗体;あるいは、これらの組み合わせを含む。
【0365】
プロスタグランジン
プロスタグランジンは脂肪酸由来の化合物の群のメンバーであり、サブタイプに依存して、血管平滑筋細胞の狭窄あるいは拡張の制御、血小板の凝集あるいは分解、疼痛に対する脊柱のニューロンの感作、眼内圧の増加または減少、炎症性の媒介の調節、カルシウム運動の調節、ホルモン調節の制御、およびホルモンの調節の制御を含む、様々な機能に関与している。プロスタグランジンはパラクリンとオートクリンの両方の機能を有しており、エイコサノイド化合物のサブクラスである。
【0366】
ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストン、ミンプロスチン F2アルファ、およびビマトプロストなどのプロスタグランジンアナログは、小柱網に対する効果に加えて、おそらくは血管拡張術メカニズムを介して、ぶどう膜強膜路を増強することにより緑内障患者の眼圧を下げることがわかっている。感音性難聴動物モデルでは、騒音曝露は、血管収縮の増大と血流の減少と同時に、蝸牛内で8-イソプロスタグランジンF2α産生を誘発する。8-イソプロスタグランジンF2αの特異的なアンタゴニストであるSQ29548を用いる処置は、蝸牛血流と血管コンダクタンスの騒音誘発性の変動を防ぐ。さらに、プロスタグランジンアナログJB004/Aは聴力を改善し、および/または、メニエール病に苦しむ患者の耳鳴と目眩の症状を処置する。プロスタグランジンF2α機能の阻害はさらに、聴力と目眩の改善と同様に、メニエール病に苦しむ患者の耳鳴を低下させる。最後に、プロスタグランジンは中耳炎に関連する慢性炎症に関与している。
【0367】
これに応じて、本明細書に開示される1つの実施形態は、メニエール病、耳鳴、目眩、聴力損失、および中耳炎を含む内耳と中耳の障害を改善するか減少させるための、ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストン、ミンプロスチンF2アルファ、ビマトプロスト、および、SQ29548ならびにJB004/A(Synphora AB)を含むプロスタグランジンモジュレーターの使用である。
【0368】
RNAi
いくつかの実施形態において、標的の阻害あるいはダウンレギュレーションが望ましい場合(例えば、遺伝子ERRとNr3b2)、RNA干渉が利用される。いくつかの実施形態において、標的を阻害または下流調節する薬剤は、siRNA分子である。ある例では、siRNA分子は本明細書に記載される通りである。
【0369】
細胞毒性剤
いくつかの例では、免疫調節薬および/または耳圧モジュレータは炎症性の耳の障害の処置に役立つ。
【0370】
耳の障害、例えば、耳の炎症性疾患または耳の癌の処置に役立つ任意の細胞毒性剤は、本明細書に開示される製剤および方法での使用に適している。ある実施形態において、細胞毒性剤は代謝拮抗薬、抗葉酸剤、アルキル化薬、DNAインターカレータ、抗TNF剤、抗血管新生薬、抗炎症薬、および/または免疫調節剤である。いくつかの実施形態において、細胞毒性剤は、タンパク質、ペプチド、抗体、DNA、炭水化物、無機分子、あるいは有機分子である。ある実施形態では、細胞毒性剤は細胞毒性小分子である。典型的には、細胞毒性小分子は、比較的低い分子量(例えば1,000未満、または600-700未満、あるいは300-700の間の分子量)である。いくつかの実施形態では、細胞毒性小分子は抗炎症性の特性も有する。
【0371】
ある実施形態において、細胞毒性剤は、メトトレキサート(RHEUMATREX(登録商標)、アメトプテリン)、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、およびサリドマイド(THALIDOMID(登録商標))である。いくつかの実施形態において、化合物はすべて、耳の癌を含む癌を処置するために使用される。さらに、化合物はすべて抗炎症特性を有しており、いくつかの例では、AIEDを含む耳の炎症性疾患を処置するための本明細書に開示される製剤と組成物中で用いられる。
【0372】
メトトレキサート、シクロホスファミド、およびサリドマイドの全身投与は、耳の癌と同様に、AIED、メニエール病、およびベーチェット病を含む炎症性の耳の疾患等の耳の疾患を処置するために現在使用されるか、または、研究されているが、細胞毒性剤は重大な副作用の可能性がないわけではない。さらに、有効性を示すが安全性の理由のために承認されていない細胞毒性剤も、本明細書で開示される実施形態内で考慮される。耳の癌と同様に、自己免疫性および/または炎症性の疾患の処置のための、標的となる耳構造への細胞毒性剤の局所的な適用は、いくつかの実施形態において、全身投与で起こる有害な副作用を減少または除去することになる。さらに、いくつかの実施形態において、本明細書で企図される細胞毒性剤を用いる局所的処置はさらに、例えば、内耳および/または中耳内での活性薬剤の保持の増大、内耳での生物学的血液障壁の存在、または、中耳への十分な浸透性アクセスの欠如に起因して、標的とされる疾患の有効な処置のために必要とされる薬物の量を減少させる。
【0373】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物、製剤、および方法で使用される細胞毒性剤は、メトトレキサート、シクロホスファミド、およびサリドマイドを含む細胞毒性剤の代謝物、塩、多形体、プロドラッグ、アナログ、および誘導体である。例えば、親化合物の細胞障害性と抗炎症性の特性を少なくとも部分的に保っている、メトトレキサート、シクロホスファミド、サリドマイドといった細胞毒性剤の代謝物、塩、多形体、プロドラッグ、アナログ、および誘導体がとりわけ好ましい。ある実施形態では、本明細書で開示される製剤と組成物中で用いられるサリドマイドのアナログは、レナリドマイド(REVIMID(登録商標))とCC-4047(ACTIMID(登録商標))である。
【0374】
シクロホスファミドは、全身投与されたときにインビボで代謝を経験するプロドラッグである。酸化代謝物4-ヒドロキシシクロホスファミドは、アルドホスファミドと平衡して存在し、2つの化合物は活性薬剤ホスファミドマスタードと分解副産物アクロレインの輸送形態としての機能を果たす。ゆえに、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤と組成物へ組み込まれる好ましいシクロホスファミド代謝物は、4-ヒドロキシシクロホスファミド、アルドホスファミド、ホスファミドマスタード、およびこれらの組み合わせである。
【0375】
とりわけ、耳の癌の処置のために、本明細書で開示される組成物、製剤、および方法で使用される他の細胞毒性剤は、アクリジンカルボキサミド、アクチノマイシン、17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、アミノプテリン、アムサクリン、アントラサイクリン、抗悪性腫瘍薬、抗新生物薬、5-アザシチジン、アザチオプリン、BL22、ベンダムスチン、ビリコダル、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン、ブスルファン、カリクリン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、クロラムブチル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、ジクロロ酢酸、ディスコデルモリド、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エリブリン、エストラムスチン、エトポシド、エキサテカン、エクシスリンド、フェルギノール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ホスフェストロール、ホテムスチン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、IT-101、イダルビシン、イホスファミド、イミキモド、イリノテカン、イロフルベン、イクサベピロン、ラニキダル、ラパチニブ、レナリドミド、ロムスチン、ルトテカン、マホスファミド、マソプロコール、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ネララビン、ニロチニブ、オブリメルセン、オキサリプラチン、PAC-1、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、ピクサントロン、プリカマイシン、プロカルバジン、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、ラルチトレキセド、レベッカマイシン、ルビテカン、SN-38、サリノスポラミドA、サトラプラチン、ストレプトゾトチン、スウェインソニン、タリキダール、タキサン、テガフール-ウラシル、テモゾロミド、テストラクトン、チオTEPA、チオグアニン、トポテカン、トラベクテジン、トレチノイン、四硝酸トリプラチン、トリス(2-クロロエチル)アミン、トロキサシタビン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、およびゾスキダルを含む任意の従来の化学療法剤である。
【0376】
耳感覚細胞モジュレータ
いくつかの例では、免疫調節薬および/または耳圧モジュレータは、ニューロンおよび/または耳感覚細胞の機能を調節する。本明細書で開示される製剤と組成物とともに用いられる、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節し、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の成長を促す薬剤と、内耳内の破壊された、発育不良の、機能不全の、破損された、脆弱な、または、欠けている毛に起因する聴力の損失または低下を処置するか改善するための薬剤が企図されている。それに応じて、いくつかの実施形態は、ニューロンと耳の有毛細胞の生存、および/または、ニューロンと耳の有毛細胞の成長を促す、薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、耳の有毛細胞の生存を促す薬剤は成長因子である。いくつかの実施形態において、成長因子モジュレータは、成長因子モジュレータのアンタゴニスト、部分アゴニスト、インバースアンタゴニスト、ニュートラルアンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、および/またはオルソステリックアンタゴニストである。
【0377】
アミホスチン
本明細書で開示される製剤と組成物とともに用いられる、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節する薬剤と、内耳内の破壊された、発育不良の、機能不全の、破損された、脆弱な、または、欠けている有毛細胞に起因する聴力の損失または低下を処置するか改善するための薬剤とが企図されている。これに応じて、いくつかの実施形態は、シスプラチンにより誘発された聴器毒性からニューロンと耳の有毛細胞を救う薬剤の使用を組み込む。
【0378】
アミホスチン(WR-2721またはETHYOL(登録商標)としても知られている)は細胞保護剤である。ある例では、これは、シスプラチンによって引き起こされたニューロンと耳の有毛細胞への損傷を防ぐか改善する。ある例では、シスプラチンの聴器毒性作用を防ぐか、改善するために、40mg/kg以上の投与量が必要である。
【0379】
抗細胞間接着分子-1抗体
本明細書に開示される製剤と組成物とともに用いられる、抗細胞間接着分子(ICAM)に対する抗体が企図されている。いくつかの例では、ICAMは、騒音曝露に関連付けられる活性酸素種のカスケードを妨げる。いくつかの例では、騒音曝露に関連付けられる活性酸素種のカスケードの調節は、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を改善するか減少させる。これに応じて、いくつかの実施形態は、ICAMに対する抗体(例えば、抗-ICAM-1 Ab、抗-ICAM-2 Abなど)である薬剤の使用を組み込む。
【0380】
Atoh/Math1の調節
本明細書に開示される製剤と組成物とともに用いられる、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の成長および/または再生を促す薬剤が企図されている。Atoh1はE-boxに結合する転写因子である。ある例では、これは、前庭と聴覚系の有毛細胞の発育の間に発現される。ある例では、Atoh1ノックアウトマウスは耳の有毛細胞を発育させなかった。ある例では、Atoh1を発現するアデノウイルスは、聴器毒性抗生物質で処置されたモルモットにおける耳の有毛細胞の成長および/または再生を刺激する。これに応じて、いくつかの実施形態は、Atoh1遺伝子の調節を組み込む。
【0381】
いくつかの実施形態において、被験体は、ヒトAtoh1遺伝子(「Atoh1ベクター」)を運ぶために操作されたベクターを投与される。Atoh1ベクターを作成するための技術の開示については、米国特許出願公開第2004/02475750号を参照。この文献は開示のために参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、Atoh1ベクターはレトロウイルスである。いくつかの実施形態において、Atoh1ベクターは、レトロウイルスではない(例えば、それはアデノウイルス;レンチウイルス;あるいはMETAFECTENE、SUPERFECT(登録商標)、EFFECTENE(登録商標)、あるいはMIRUS TRANSITなどの高分子送達系である)。
【0382】
いくつかの実施形態において、Atoh1ベクターは耳用の製剤または組成物に組み込まれる。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は内耳に注入される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはこれらの組み合わせに注入される。
【0383】
ある例では、Atoh1ベクターの投与の後、Atoh1ベクターは、投与の部位の細胞(例えば、蝸牛、コルチ器官、および/または、前庭迷路の細胞)に感染させる。ある例では、Atoh1配列は、(例えば、Atoh1ベクターがレトロウイルスである場合)被験体のゲノムに組み入れられる。ある例では、(例えば、Atoh1ベクターがレトロウイルスではない場合)治療は定期的に再実施される必要がある。いくつかの実施形態では、治療は毎年再実施される。いくつかの実施形態において、治療は半年ごとに再実施される。いくつかの実施形態において、被験体の聴力損失が中程度(つまり、被験体は41dbから55dB未満の周波が一貫して聞こえない)~深刻(つまり、被験体は90dB未満の周波が一貫して聞こえない)な場合、治療は再実施される。
【0384】
いくつかの実施形態において、被験体はAtoh1ポリペプチドを投与される。いくつかの実施形態において、Atoh1ポリペプチドは耳用の製剤または組成物に組み入れられる。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は内耳に注入される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはこれらの組み合わせに注入される。いくつかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は正円窓膜と接触して置かれる。
【0385】
いくつかの実施形態において、被験体は、Atoh1遺伝子の発現またはAtoh1ポリペプチドの活性を調節する薬学的に許容可能な薬剤を投与される。いくつかの実施形態において、Atoh1遺伝子の発現またはAtoh1ポリペプチドの活性はアップレギュレートされる。いくつかの実施形態において、Atoh1遺伝子の発現またはAtoh1ポリペプチドの活性はダウンレギュレートされる。
【0386】
ある例では、Atoh1を刺激するか、Atoh1に拮抗する化合物が(例えば、ハイスループットスクリーンの使用によって)同定される。いくつかの実施形態において、レポーター遺伝子がE-boxの下流に置かれるように、構築物は設計される。いくつかの実施形態において、レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、CAT、GFP、β-ラクタマーゼ、あるいはβ-ガラクトシダーゼである。ある例では、Atoh1ポリペプチドはE-box配列に結合し、レポーター遺伝子の転写と発現を開始させる。ある例では、Atoh1のアゴニストは、E-box配列へのAtoh1の結合を支援または促進し、それにより、あらかじめ定められたベースライン発現レベルに関するレポーター遺伝子の転写と発現を増加させる。ある例では、Atoh1のアンタゴニストは、E-boxへのAtoh1の結合を妨害し、それにより、あらかじめ定められたベースライン発現レベルに関するレポーター遺伝子の転写と発現を減少させる。
【0387】
BRN-3モジュレータ
本明細書に開示される製剤と組成物とともに用いられる、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の成長および/または再生を促す薬剤が企図されている。BRN-3は、限定されないが、BRN-3a、BRN-3b、およびBRN-3cを含む一群の転写因子である。ある例では、これらは有糸分裂後の有毛細胞中で発現される。ある例では、BRN-3cノックアウトマウスの有毛細胞は不動毛を発育させず、および/またはアポトーシスを起こした。ある例では、BRN3遺伝子は内耳支持細胞の内耳感覚細胞への分化を調節する。これに応じて、いくつかの実施形態は、BRN3遺伝子および/またはポリペプチドの調節を組み込む。
【0388】
いくつかの実施形態において、被験体は、ヒトBRN-3遺伝子(「BRN3ベクター」)を運ぶように操作されたベクターを投与される。いくつかの実施形態において、BRN3ベクターはレトロウイルスである。いくつかの実施形態において、BRN3ベクターはレトロウイルスではない(例えば、それはアデノウイルス;レンチウイルス;あるいは、METAFECTENE(登録商標)、SUPERFECT(登録商標)、EFFECTENE(登録商標)、あるいはMIRUS’TRANSITなどの高分子送達系である)。
【0389】
いくつかの実施形態において、被験体は、聴器毒性薬剤(例えば、アミノグリコシドまたはシスプラチン)あるいは音響性外傷を引き起こすのに十分な音量の音にさらされる前、最中、後に、BRN3ベクターを投与される。
【0390】
幾つかの実施形態において、BRN3ベクターは耳用の製剤または組成物に組み込まれる。幾つかの実施形態において耳用の製剤または組成物は内耳に注入される。幾つかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、またはそれらの組み合わせに注入される。幾つかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は正円窓膜と接触して配される。
【0391】
特定の例において、BRN3ベクターの投与後、BRN3ベクターは、投与部位にて細胞(例えば、蝸牛、コルチ器官、および/または前庭迷路の細胞)に影響を及ぼす。特定の例において、BRN3配列は、(例えばBRN3ベクターがレトロウイルスである時)被験体のゲノムに組み込まれる。特定の例において、治療薬は周期的に再投与される必要がある(例えばBRN3ベクターがレトロウイルスでない時)。
【0392】
幾つかの実施形態において、被験体はBRN3ポリペプチドを投与される。幾つかの実施形態において、BRN3ポリペプチドは耳用の製剤または組成物に組み込まれる。幾つかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は内耳に注入される。幾つかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、またはそれらの組み合わせに注入される。幾つかの実施形態において、耳用の製剤または組成物は正円窓膜と接触して配される。
【0393】
幾つかの実施形態において、被験体は、BRN3遺伝子の発現またはBRN3ポリペプチドの活性を調節する、薬学的に許容可能な薬剤を投与される。幾つかの実施形態において、BRN3遺伝子の発現またはBRN3ポリペプチドの活性はアップレギュレートされる。幾つかの実施形態において、BRN3遺伝子の発現またはBRN3ポリペプチドの活性はダウンレギュレートされる。
【0394】
幾つかの実施形態において、BRN3を刺激(agonizes)または拮抗する化合物が(例えば高スループットスクリーンの使用により)同定される。幾つかの実施形態において、構成物は、レポーター遺伝子がBRN3結合部位の下流に置かれるように設計される。幾つかの実施形態において、BRN3結合部位は配列ATGAATTAAT(SEQ ID NO:120(SBNR3)を有する。幾つかの実施形態において、レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、CAT、GFP、β-ラクタマーゼ、またはβ-ガラクトシダーゼである。特定の例において、BRN3ポリペプチドはSBNR3配列に結合し、レポーター遺伝子の転写および発現を開始する。特定の例において、BRN3のアゴニストは、BRN3のSBNR3配列への結合を補助または促進し、これにより、予め定めた基線の発現レベルに比べてレポーター遺伝子の転写および発現を増加させる。特定の例において、BRN3のアンタゴニストは、BRN3のSBNR3への結合を妨げ、これにより、予め定めた基線の発現レベルに比べて、レポーター遺伝子の転写および発現を減少させる。
【0395】
カルバメート
本明細書に開示される製剤および組成物との使用のために、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節する薬剤、および、内耳における毛の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱さ、または欠損から結果として生じる聴力損失または聴力低下を処置あるいは改善するための薬剤が、考慮される。特定の例において、カルバメート化合物はグルタミン酸で誘導された興奮毒性から、ニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する。従って、幾つかの実施形態は、カルバメート化合物の使用を組み込む。幾つかの実施形態において、カルバメート化合物は、2-フェニル-1,2-エタンジオールモノカルバメートおよびジカルバメート、それらの誘導体、および/またはそれらの組み合わせである。
【0396】
エストロゲン受容体
幾つかの実施形態において、耳の有毛細胞の生存を促進する薬剤はエストロゲン受容体アゴニストである。
幾つかの実施形態において、エストロゲン受容体アゴニストは部分的アゴニストまたはインバースアゴニストである。
【0397】
特定の例において、エストロゲン受容体β(ERβ)は、外毛細胞、内毛細胞、螺旋神経節ニューロン、またはそれらの組み合わせに発現される。特定の実施形態において、ERαおよび/またはERβのアゴニズムは、音響外傷から結果として生じる聴力損失を改善する。特定の実施形態において、ERαおよび/またはERβのアゴニズムは、神経栄養遺伝子の発現および/または神経栄養ポリペプチド(例えばBDNF)の活性を増加、および/またはアップレギュレートする。特定の実施形態において、ERαおよび/またはERβのアンタゴニズムは、音響外傷から結果として生じる聴力損失を増大させる。特定の実施形態において、ERαERβのアンタゴニズムは、神経栄養遺伝子の発現および/または神経栄養ポリペプチド(例えばBDNF)の活性をダウンレギュレートする。
【0398】
幾つかの実施形態において、ERαアゴニストは、PPT(4,4’,4’’-(4-プロピル-[1H]-ピラゾール-1,3,5-トリル)トリスフェノール;SKF-82958(6-クロロ-7,8-ジヒドロキシ-3-アリル-1-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-3-ベンザゼピン(benzazepine);エストロゲン;エストラジオール;17-βエストラジオール、エストロン、エストリオール、合成エストロゲン組成物またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないエストラジオール誘導体である。幾つかの実施形態において、ERβアゴニストはERβ-131、フィトエストロゲン、MK101(bioNovo);VG-1010(bioNovo);DPN(ジアリールプロピオリトリル(diarylpropiolitrile));ERB-041;WAY-202196;WAY-214156;ゲニステイン;エストロゲン;エストラジオール;17-βエストラジオール、エストロン、エストリオール、合成エストロゲン組成物またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないエストラジオール誘導体である。他のERβアゴニストは、各々が開示のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,279,499号、およびParker et al., Bioorg. & Med. Chem. Ltrs. 16: 4652-4656 (2006)に開示される、選択されたベンゾピランおよびトリアゾロ-テトラヒドロフルオレノンを含む。幾つかの実施形態において、エストロゲン受容体β(ERβ)アゴニストの前、その後、またはそれと同時に、神経栄養が投与される。幾つかの実施形態において、神経栄養は、BDNF、CNTF、GDNF、ニュートロフィン-3、ニュートロフィン-4、および/またはそれらの組み合わせである。
【0399】
脂肪酸
本明細書に開示される製剤および組成物との使用のために、耳のニューロンおよび/または有毛細胞の体化を緩和、予防、逆転、または改善する薬剤が考慮される。従って、幾つかの実施形態は脂肪酸の使用を組み込む。特定の例において、聴覚神経細胞と内耳神経を取り囲む膜は、脂肪酸を含む。特定の例において、ω-3脂肪酸における欠損の結果、聴覚刺激に対する応答の減少が生じる。特定の例において、α-リノレン酸(ALA)の母体欠損(maternal deficiency)は、子供の聴覚消失につながる。幾つかの実施形態において、脂肪酸は、限定されないが、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、またはそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、ω-3脂肪酸は、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、クルパノドン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸(ニシン酸)、またはそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態において、ω-3脂肪酸は、α-リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、またはそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態において、ω-6脂肪酸は、リノール酸、γ-リノレン酸、エイコサジエン酸、ジホモγ-リノレン酸、アラキドン酸、ドコサジエン酸、アドレン酸、ドコサペンタエン酸、カレンジン酸、またはそれらの組み合わせである。
【0400】
γ-セクレターゼ阻害剤
本明細書に開示される製剤および組成物との使用のために、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節する薬剤、および、内耳における毛の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱さ、または欠損から結果として生じる聴力損失または聴力低下を処置あるいは改善するための薬剤が、考慮される。従って、幾つかの実施形態は、Notch1シグナル伝達を阻害する薬剤の使用を組み込む。Notch1は、細胞の発達に関与する膜内外のポリペプチドである。幾つかの実施形態において、Notch1シグナル伝達を阻害する薬剤は、γ-セクレターゼ阻害剤である。特定の例において、γ-セクレターゼ阻害剤によるNotch1の阻害は、聴器毒性薬剤での処置後、耳の有毛細胞の産生を結果としてもたらす。幾つかの実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、LY450139(ヒドロキシルバレリル(hydroxylvaleryl)モノベンゾカプロラクタム)、L685458(1S-ベンジル-4R[1-[1-S-カルバモイル-2-フェネチルカルバモイル)-1S-3-メチルブチルカルバモイル]-2R-ヒドロキシ-5-フェニルペンチル}カルバミン酸tert-ブチルエステル);LY411575(N2-[(2S)-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-ヒドロキシエタノイル]-N1[(7S)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[bid]アゼピン-7イル]-L-アラニンアミド)、MK-0752(Merck)、タレンフルルビル、および/またはBMS-299897(2- [(1R)-1- [(4-クロロフェニル)スルホニル(sulfony)](2,5-ジフルオロフェニル)アミノ]エチル]-5-フルオロベンゼンプロパン酸)である。
【0401】
グルタミン酸受容体モジュレータ
本明細書に開示される製剤および組成物との使用のために、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節する薬剤、および、内耳における有毛細胞の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱さ、または欠損から結果として生じる聴力損失または聴力低下を処置あるいは改善するための薬剤が、考慮される。従って、幾つかの実施形態は、グルタミン酸受容体を調節する薬剤の使用を組み込む。幾つかの実施形態において、グルタミン酸受容体は、AMPA受容体、NMDA受容体、カイニン酸受容体、および/または、群I、II、またはIIIのmGlu受容体である。
【0402】
幾つかの実施形態において、AMPA受容体を調節する薬剤はAMPA受容体アンタゴニストである。幾つかの実施形態において、AMPA受容体を拮抗する薬剤は、CNQX(6-シアノ-7-ニトロキノキサリン-2,3-ジオン);NBQX(2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイル-ベンゾ[f]キノキサリン-2,3-ジオン;DNQX(6,7-ジニトロキノキサリン-2,3-ジオン);キヌレン酸;2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイルベンゾ-[f]キノキサリン;またはそれらの組み合わせである。
【0403】
幾つかの実施形態において、NMDA受容体を調節する薬剤はNMDA受容体アンタゴニストである。幾つかの実施形態において、NMDA受容体を拮抗する薬剤は、1-アミノアダマンタン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、イボガイン、ケタミン、エスケタミン(AM-101)、酸化窒素、フェンシクリジン、リルゾール、チレタミン、メマンチン、ジゾシルピン、アプチガネル、レマセミド、7-クロロキヌレナート、DCKA(5,7-ジクロロキヌレン酸)、キヌレン酸、1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACPC)、AP7(2-アミノ-7-ホスホノヘプタン酸)、APV(R-2-アミノ-5-ホスホノペンタノアート)、CPPene(3-[(R)-2-カルボキシピペラジン-イル]-プロプ-2-エニル-1-ホスホン酸;(+)-(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシ-フェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジノ)-1-プロ-パノール;(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリ-ジノ)-1-プロパノール;(3R,4S)-3-(4-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル-)-クロマン-4,7-ジオール;または(1R*,2R*)-1-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-(4-(4-フルオロ-フェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-プロパン-1-オール-メシレート;あるいはガシクリジン(1-[(1R,2S)-2-メチル-1-チオフェン-2-イルシクロヘキシル]ピペリジン)である。幾つかの実施形態において、NMDA受容体を拮抗する薬剤は、ガシクリジン(1-[(1R,2S)-2-メチル-1-チオフェン-2-イルシクロヘキシル]ピペリジン)である。
【0404】
特定の例において、過剰量のグルタミン酸塩の結合によるAMPAとNMDAグルタミン酸塩受容体の過剰活性化は、それらの制御下でイオンチャネルの過剰な開口をもたらす。特定の例において、この結果、ニューロンに進入する異常に高いレベルのCa2+とNa+がもたらされる。特定の例において、Ca2+とNa+のニューロンへの流入は、ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ、およびプロテアーゼを含むがこれらに限定されない複数の酵素を活性化する。特定の例において、これらの酵素の過剰活性化は、細胞骨格、原形質膜、ミトコンドリア、ニューロンのDNAに損傷を結果としてもたらす。更に、特定の例において、アポトーシス促進遺伝子および抗アポトーシス遺伝子の転写は、Ca2+レベルによって制御される。
【0405】
mGlu受容体は、AMPAおよびNMDAの受容体とは異なり、イオンチャネルを直接制御しない。しかし、特定の例において、これら受容体は、生化学的カスケードの活性化によってイオンチャネルの開口を間接的に制御する。mGlu受容体は3つの群に分けられる。特定の例において、群I、II、およびIIIのメンバーは、cAMPの形成を防ぐまたは減少させることによって、シナプス後電位を減少あるいは阻害する。特定の例において、これにより、神経伝達物質、特にグルタミン酸塩の放出の減少が引き起こされる。GRM7は、群IIIの受容体であるmGlu7受容体をコードする遺伝子である。特定の例において、mGlu7のアゴニズムは、グルタミン酸塩のシナプス濃度の減少をもたらす。これによりグルタミン酸塩の興奮毒性が改善される。
【0406】
幾つかの実施形態において、グルタミン酸塩受容体は群IIのmGlu受容体である。幾つかの実施形態において、群IIのmGlu受容体を調節する薬剤は、群IIのmGlu受容体アゴニストである。幾つかの実施形態において、群IIのmGlu受容体アゴニストは、LY389795((-)-2-チア-4-アミノビシクロ-ヘキサン-4,6-ジカルボキシラート;LY379268((-)-2-オキサ-4-アミノビシクロ-ヘキサン-4,6-ジカルボキシラート;LY354740((+)-2-アミノビシクロ-ヘキサン-2,6ジカルボキシラート);DCG-IV((2S,2’R,3’R)-2-(2’,3’-ジカルボキシシクロプロピル)グリシン);2R,4R-APDC(2R,4R-4-アミノピロリジン-2,4-ジカルボン酸、(S)-3C4HPG((S)-3-カルボキシ-4-ヒドロキシフェニルグリシン);(S)-4C3HPG((S)-4-カルボキシ-3-ヒドロキシフェニルグリシン);L-CCG-I((2S,1’S,2’S)-2-(カルボキシシクロプロピル)グリシン);および/またはそれらの組み合わせである。
【0407】
いくつかの実施形態では、mGlu受容体はグループIII mGlu受容体である。いくつかの実施形態では、グループIII mGlu受容体はmGlu7である。いくつかの実施形態では、グループIII mGlu受容体を調整する薬剤はグループIII mGlu受容体アゴニストである。いくつかの実施形態では、グループIII mGlu受容体アゴニストは、ACPT-I((1S,3R,4S)-1-アミノシクロペンタン-1,3,4-三カルボン酸);L-AP4(L-(+)-2-アミノ-4-ホスホノ酪酸);(S)-3,4-DCPG((S)-3,4-ジカルボキシフェニルグリシン);(RS)-3,4-DCPG((RS)-3,4-ジカルボキシフェニルグリシン);(RS)-4-ホスホノフェニルグリシン((RS)PPG);AMN082(,N’-ビス(ジフェニルメチル)-1,2-エタンジアミンジヒドロクロリド);DCG-IV((2S,2’R,3’R)-2-(2’,3’-ジカルボキシシクロプロピル)グリシン);および/またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、mGlu受容体はmGlu7である。いくつかの実施形態では、mGlu7のアゴニストはAMN082である。いくつかの実施形態では、mGlu受容体モジュレータは、3,5-ジメチルピロール-2,4-ジカルボン酸2-プロピルエステル4-(1,2,2-トリメチル-プロピル)エステル(3,5-ジメチルPPP);3,3’-ジフルオロベンズアルダジン(DFB)、3,3’-ジメトキシベンズアルダジン(DMeOB)、3,3’-ジクロロベンズアルダジン(DCB)、およびMol.Pharmacol.2003,64,731-740に開示されたmGluR5の他のアロステリックモジュレータ;(E)-6-メチル-2-(フェニルジアゼニル)ピリジン-3-ol(SIB 1757);(E)-2-メチル-6-スチリルピリジン(SIB 1893);2-メチル-6-(フェニルエチニル)ピリジン(MPEP)、2-メチル-4-((6-メチルピリジン-2-イル)エチニル)チアゾール(MPEP);7-(ヒドロキシイミノ)シクロプロパ[b]クロメル-1α-カルボキシラートエチルエステル(CPCCOEt)、N-シクロヘキシル-3-メチルベンゾ[d]チアゾール[3,2-a]イミダゾール-2-カルボキサミド(YM-298198)、トリシクロ[3.3.3.1]ノナニルキノキサリン-2-カルボキサミド(NPS 2390);6-メトキシ-N-(4-メトキシフェニル)キナゾリン-4-アミン(LY 456239);WO2004/058754とWO2005/009987に開示されたmGluR1アンタゴニスト;2-(4-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イルアミノ)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-2-イルチオ)エタノール;3-(5-(ピリジン-2-イル)-2H-テトラゾール-2-イル)ベンゾニトリル、2-(2-メトキシ-4-(4-(ピリジン-2-イル)オキサゾール-2-イル)フェニル)アセトニトリル;2-(4-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-2-メトキシフェニル)アセトニトリル;6-(3-メトキシ-4-(ピリジン-2-イル)フェニル)イミダゾ[2,1-b]チアゾール;(S)-(4-フルオロフェニル)(3-(3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピペリジン-1-イル)メタノン(ADX47273)、および/またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、mGlu受容体モジュレータはmGlu受容体の陽性のアロステリックモジュレータである。いくつかの実施形態では、mGlu受容体モジュレータはmGlu受容体の負のアロステリックモジュレータである。
【0408】
いくつかの実施形態では、グルタミン酸受容体モジュレータは向知性薬である。グルタミン酸受容体の活性化によってニューロンのシグナルを調整する向知性薬が、本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される。いくつかの例では、向知性薬は聴力損失(例えばNIHL)または耳鳴を処置または改善する。したがって、いくつかの実施形態は、NIHLまたは耳鳴の処置のために、限定されないが、ピラセタム、オキシラセタム、アニラセタム、プラミラセタム、フェニルピラセタム(Carphedon)、エチラセタム、レベチラセタム、ネフィラセタム、ニコラセタム、ロルジラセタム、ネブラセタム、ファサーラセタム、コールラセトアム、ジミラセタム、ブリバラセタム、セレトラセタム、および/またはロリプラムを含む向知性薬の使用を組み込む。
【0409】
<成長因子>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節し、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の生存および/または成長を促進する薬剤であり、および破壊され、発育不良の、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠けている内耳内の毛に起因する聴力損失または減少を処置または改善するための薬剤である。したがって、いくつかの実施形態は、ニューロンおよび耳の有毛細胞の生存、および/またはニューロンおよび耳の有毛細胞の成長を促進する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、耳の有毛細胞の生存を促進する薬剤は成長因子である。いくつかの実施形態では、成長因子は神経栄養性である。特定の例では、神経栄養因子は、細胞がアポトーシスを開始するのを防ぎ、損傷したニューロンと耳の有毛細胞を修復し、および/または前駆細胞における分化を誘発する成長因子である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、および/またはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PGF)、および/またはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、および/またはその組み合わせである。
【0410】
いくつかの実施形態では、成長因子は線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PGF)、および/またはそれらのアゴニストである。いくつかの実施形態では、成長因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、インスリン様成長因子(IGF)受容体、上皮成長因子(EGF)受容体、および/または血小板由来成長因子の、アゴニストである。いくつかの実施形態では、成長因子は肝細胞増殖因子である。
【0411】
いくつかの実施形態では、成長因子はグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)である。いくつかの実施形態では、成長因子はGDNF模倣物である。いくつかの実施形態では、成長因子はGDNF受容体アゴニストである。いくつかの例では、GDNF模倣物またはGDNF受容体アゴニストは、チロシン受容体キナーゼRETおよび/または神経細胞接着分子(NCAM)を活性化する。
【0412】
いくつかの実施形態では、成長因子は上皮成長因子(EGF)である。いくつかの実施形態では、EGFはヘレグリン(HRG)である。特定の例では、HRGは、卵形嚢感覚上皮の増殖を刺激する。特定の例では、HRG結合受容体は、前庭および耳の感覚上皮に見られる。いくつかの実施形態では、成長因子はHGF受容体(c-Met)アゴニストである。いくつかの実施形態では、成長因子はHGF機能を高めるジヘキサまたは他のアンギオテンシンIV由来ペプチドである。
【0413】
いくつかの実施形態では、成長因子はインスリン様成長因子(IGF)である。いくつかの実施形態では、IGFはIGF-1である。いくつかの実施形態では、IGF-1はメカセルミンである。特定の例では、IGF-1は、アミノグリコシドへの暴露によって誘発された損傷を弱める。特定の例では、IGF-1は、蝸牛神経節細胞の分化および/または成熟を刺激する。
【0414】
いくつかの実施形態では、FGF受容体アゴニストはFGF-2である。いくつかの実施形態では、IGF受容体アゴニストはIGF-1である。FGFとIGFの受容体は共に、卵形嚢上皮を含む細胞に見られる。
【0415】
いくつかの実施形態では、成長因子は肝細胞増殖因子(HGF)である。いくつかの例では、HGFは、音に誘発された損傷から蝸牛有毛細胞を保護し、音への暴露により引き起こされたABR閾値変動を減じる。
【0416】
さらに、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物に使用するために熟慮される成長因子として、エリトロポイエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、成長分化因子-9(GDF9)、インスリン様成長因子(IGF)、ミオスタチン(GDF-8)、血小板由来成長因子(PDGF)、トロンボポイエチン(TPO)、形質転換増殖因子アルファ(TGF-α)、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、血管内皮増殖因子(VEGF)、またはその組み合わせがあげられる。
【0417】
<神経栄養因子>
いくつかの実施形態において、成長因子は神経栄養性である。特定の例では、神経栄養因子は、細胞がアポトーシスを開始するのを防ぎ、損傷したニューロンと耳の有毛細胞を修復し、および/または前駆細胞における分化を誘発する成長因子である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、および/またはそれらの組み合わせである。
【0418】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はBDNFである。特定の例では、BDNFは、損傷した細胞を修復し、ROSの生成を阻害し、アポトーシスの誘発を阻害することによって、既存のニューロン(例えば蝸牛神経節ニューロン)および耳の有毛細胞の生存を促進する神経栄養因子である。特定の実施形態では、それはさらに神経と耳の有毛細胞の前駆体の分化を促進する。さらに特定の実施形態では、それは変性から脳神経VIIIを保護する。いくつかの実施形態では、BDNFは線維芽細胞増殖因子と共に投与される。いくつかの実施形態では、BDNFは、ニューロンの成長および/またはシナプス形成の促進を促す。
【0419】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はニューロトロフィン-3である。特定の実施形態では、ニューロトロフィン-3は、既存のニューロンおよび耳の有毛細胞の生存を促進し、および神経と耳の有毛細胞の前駆体の分化を促進する。さらに、特定の実施形態では、それは変性からVIII神経を保護する。いくつかの実施形態では、ニューロトロフィン-3は、ニューロンの成長および/またはシナプス形成の促進を促す。
【0420】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はCNTFである。特定の実施形態では、CNTFは、神経伝達物質の合成および神経突起の成長を促進する。いくつかの実施形態では、CNTFはBDNFと共に投与される。
【0421】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はGDNFである。特定の実施形態では、GDNF発現は、内毒性の薬剤による処置によって増加する。さらに特定の実施形態では、外因性のGDNFで処置された細胞は、未処置細胞よりも外傷後の生存率が高い。
【0422】
<免疫細胞>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節し、および破壊され、発育不良の、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠けている内耳内の毛に起因する聴力損失または減少を処置または改善する薬剤である。したがって、いくつかの実施形態は、耳の有毛細胞およびニューロンの修復に関与する細胞の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、耳の有毛細胞およびニューロンの修復に関与する細胞は、マクロファージ、小膠細胞、および/またはミクログリア様細胞である。特定の例では、マクロファージおよび小膠細胞の濃度は、内毒性の薬剤での処置により損傷した耳において、増加する。特定の例では、ミクログリア様細胞は、コルチ器官から廃棄物を除去し、および内毒性の抗生物質ネオマイシンでの処置後に有毛細胞の構造修復に関与する。
【0423】
<内毒性剤>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞を破壊する薬剤である。したがって、いくつかの実施形態は、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞において致命的損傷をもたらす、および/またはアポトーシスを誘発する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞において致命的損傷をもたらす、および/またはアポトーシスを誘発する薬剤は、アミノ配糖体抗生物質(例えばゲンタマイシンおよびアミカシン)、マクロライド系抗生物質(例えばエリスロマイシン)、グリコペプチド抗生物質(例えばバンコマイシン)、ループ利尿薬(例えばフロセミド)サリチル酸、およびニコチンである。
【0424】
<網膜芽細胞腫タンパク質調節>
本明細書に開示される製剤と組成物共に使用するために熟慮される薬剤は、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節し、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の成長を促進する薬剤であり、および破壊され、発育不良の、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠けている内耳内の毛に起因する聴力損失または減少を処置または改善するための薬剤である。さらに本明細書で熟慮されるのは、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞を破壊する薬剤である。したがって、いくつかの実施形態は、網膜芽細胞腫タンパク質(pRB)を調節する薬剤の使用を組み込む。pRBはポケットタンパク質ファミリーのメンバーである。それはRB1遺伝子によってコードされる。特定の例では、それは、転写因子のE2fファミリーに結合して不活性化することで、G1期からS期への移行を阻害する。特定の例では、それはさらに有毛細胞の分化と生存を調整する。特定の例では、pRBノックアウトマウスは、有毛細胞の増殖の増加を実証する。
【0425】
いくつかの実施形態では、pRBの1つ以上を調節する薬剤はpRBのアゴニストである。いくつかの実施形態では、pRBの1つ以上を調節する薬剤はpRBのアンタゴニストである。特定の例では、pRBを刺激するまたは拮抗する化合物が特定される(例えばハイスループットスクリーニングを使用)。いくつかの実施形態では、レポーター遺伝子がE2F結合配列の下流に位置するように、構成物を設計する。いくつかの実施形態では、結合配列はTTTCGCGCである。いくつかの実施形態では、レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、CAT、GFP、β-ラクタマーゼまたはβ-ガラクトシダーゼである。特定の例では、E2fは、レポーター遺伝子の転写と発現を引き起こす結合配列に結合する。特定の例では、pRBのアゴニストは、E2fへのpRBの結合を増加させる。特定の例では、pRBとE2fの結合の増加は、結果としてレポーター遺伝子の転写および発現の減少をもたらす。特定の例では、pRBのアンタゴニストは、E2fへのpRBの結合を減少させる。特定の例では、pRBとE2fの結合の減少は、結果としてレポーター遺伝子の転写および発現の増加をもたらす。
【0426】
いくつかの実施形態では、pRBを調節する薬剤はsiRNA分子である。特定の例では、siRNA分子は本明細書に記載される通りである。
【0427】
<サリチル酸>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節し、および破壊され、発育不良の、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠けている内耳内の毛に起因する聴力損失または減少を処置または改善する薬剤である。したがって、いくつかの実施形態はサリチル酸の使用を組み込む。特定の例では、アミノグリコシドでの処置前に投与される場合、それはアミノグリコシド耳毒性から耳の有毛細胞および蝸牛神経節ニューロンを保護する。
【0428】
<ナトリウムチャネル遮断薬>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、ニューロンおよび有毛細胞の変性を調節し、および破壊され、発育不良の、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠けている内耳内の毛に起因する聴力損失または減少を処置または改善する薬剤である。特定の例では、興奮毒性は、Na+チャネルの過度の開放を引き起こす。特定の例では、これは結果としてニューロンに入る過剰なNa+イオンをもたらす。特定の例では、ニューロンへのNa+イオンの過剰な流入は、ニューロンをより頻繁に発火させる。特定の例では、この発火の増加により、遊離ラジカルおよび炎症性化合物の急速な蓄積が起こる。特定の例では、遊離ラジカルは、細胞内の貯蔵エネルギーを使い果たし、ミトコンドリアを傷つける。さらに特定の例では、過剰なレベルのNa+イオンは、限定されないがホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ、およびプロテアーゼを含む、過剰なレベルの酵素を活性化する。特定の例では、これらの酵素の過剰な活性化は結果として、細胞骨格、形質膜、ミトコンドリア、およびニューロンのDNAに損傷を与える。したがっていくつかの実施形態は、Na+チャネルの開放に拮抗する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、ナトリウムチャネル遮断薬は本明細書に記載される通りである。
【0429】
<幹細胞および分化した耳感覚細胞>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される細胞移植は、先在するニューロンおよび/または耳の有毛細胞を補足および/または置き換える。いくつかの実施形態では、薬剤は幹細胞である。いくつかの実施形態では、薬剤は部分的にまたは完全に分化した耳感覚細胞である。いくつかの実施形態では、分化した耳感覚細胞は、ヒトドナーに由来する。いくつかの実施形態では、分化した耳感覚細胞は、幹細胞に由来し、その分化は人工的な条件下で誘発された(例えば研究所)。
【0430】
幹細胞は多数の細胞型に分化する能力のある細胞である。全能性幹細胞は、胚細胞または胚体外細胞に分化する。多能性(totipotent)細胞は、内胚葉、中胚葉または外胚葉起原のいずれかの細胞に分化する。複能性(multipotent)細胞は、密接に関連する細胞(例えば造血幹細胞)に分化する。単能性細胞は、たった1種類の細胞のみに分化するが、他の幹細胞と同様に自己再生の特性を有している。いくつかの実施形態では、幹細胞は分化全能性、多能性、複能性、または単能性である。さらに、幹細胞は、それ自体が分化することなく有糸分裂を行う(すなわち自己再生)。
【0431】
胚性幹(ES)細胞は、胚盤胞または初期段階の胚の内細胞塊の外胚葉組織に由来する幹細胞である。ES細胞は多能性である。いくつかの実施形態では、幹細胞はES細胞である。成体幹細胞(体細胞または生殖系細胞としても知られる)は、発育した生物から単離される細胞であり、該細胞は自己再生特性、および多数の細胞型に分化する能力を有する。成体幹細胞は、多能性(例えば臍帯血に見られる幹細胞)、複能性、または単能性である。
いくつかの実施形態では、幹細胞は成体幹細胞である。
【0432】
いくつかの実施形態では、幹細胞および/または分化した耳感覚細胞は、分化を刺激する薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、分化を刺激する薬剤は成長因子である。いくつかの実施形態では、成長因子は、ニューロトロフィン(例えば神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)または新しいニューロトロフィン-1(NNT1))である。いくつかの実施形態では、成長因子はFGF、EGF、IGF、PGFまたはそれらの組み合わせである。
【0433】
いくつかの実施形態では、幹細胞および/または分化した耳感覚細胞は、徐放性の薬剤として、必要とする被験体に投与される。いくつかの実施形態では、幹細胞および/または分化した耳感覚細胞は、(例えば細胞懸濁液中の)即時放出性の薬剤として、徐放性の耳感覚細胞調節薬と併用して、必要とする被験体に投与される。いくつかの実施形態では、徐放性の耳感覚細胞調節薬は、Atoh1またはBRN3遺伝子、RB1を標的とするsiRNA配列、成長因子、またはそれらの組み合わせを含むベクターである。
【0434】
いくつかの実施形態では、幹細胞および/または分化した耳感覚細胞は、蝸牛または前庭迷路に投与される。いくつかの実施形態では、幹細胞および/または分化した耳感覚細胞は、中耳内注射および/または耳後部の切開により投与される。いくつかの実施形態では、幹細胞および/または分化した耳感覚細胞は、コルチ器官、内耳神経、および/または膨大部稜と接触させられる。
【0435】
<甲状腺ホルモン受容体調節>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節し、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の成長を促進する薬剤であり、および破壊され、発育不良の、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠けている内耳内の毛に起因する聴力損失または減少を処置または改善するための薬剤である。したがって、いくつかの実施形態は、甲状腺ホルモン(TH)受容体を調節する薬剤の使用を組み込む。TH受容体は核ホルモン受容体のファミリーである。ファミリーには限定されないがTRα1とTRβが含まれる。特定の例では、TRβノックアウトマウスは、耳の刺激に対する反応性の減少、および有毛細胞内のK+電流の減少を実証する。
【0436】
いくつかの実施形態では、TH受容体の1つ以上を調節する薬剤は、1つ以上のTH受容体のアゴニストである。いくつかの実施形態では、TH受容体の1つ以上のアゴニストは、T3(3,5,3’-トリヨード-L-サイロニン);KB-141(3,5-ジクロロ-4-(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェノキシ)フェニル酢酸);GC-1(3,5-ジメチル-4-(4’-ヒドロキシ-3’-イソプロピルベンジル基)-フェノキシ酢酸);GC-24(3,5-ジメチル-4-(4’-ヒドロキシ-3’-ベンジル)ベンジルフェノキシ酢酸);ソベチロム(QRX-431);4-OH-PCB106(4-OH-2,3,3’,4’,5’-ポリ塩化ビフェニル);MB07811((2R,4S)-4-(3-クロロフェニル)-2-[(3,5-ジメチル-4-(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルベンジル)フェノキシ)メチル]-2-オキシド-[1,3,2]-ジオキサホスホナン);MB07344(3,5-ジメチル-4-(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルベンジル)フェノキシ)メチルホスホン酸);および、これらの組み合わせである。特定の例では、KB-141;GC-1;ソベチロム;およびGC-24は、TRβに対して選択的である。
【0437】
<TRPV調節>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、ニューロンおよび有毛細胞の変性を調節し、および破壊され、発育不良の、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠けている内耳内の毛に起因する聴力損失または減少を処置または改善する薬剤である。したがって、いくつかの実施形態は、TRPV受容体を調節する薬剤の使用を組み込む。TRPV(Transient Receptor Potential Channel Vanilloid)受容体は、他のイオンの中で、カルシウムに浸透する非選択的イオンチャネルのファミリーである。ファミリーの6人のメンバーが存在する:TRPV1-6。特定の例では、カナマイシンでの処置に続いて、TRPV1がアップレギュレートされる。付加的に、特定の例では、TRPV4受容体の拮抗作用はマウスを音響外傷に弱くする。さらに、特定の例では、カプサイシン、TRPV1のアゴニストは、虚血性の事象に続く自発運動の亢進を防ぐ。
【0438】
いくつかの実施形態では、TRPV受容体の1つ以上を調節する薬剤は、1つ以上のTRPV受容体のアゴニストである。いくつかの実施形態では、TRPV受容体の1つ以上のアゴニストはカプサイシン、レシニフェラトキシン、またはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、TRPV調節は、米国特許出願公開第2005/0277643号、2005/0215572号、2006/0194801号、2006/0205773号、2006/0194801号、2008/0175794号、2008/0153857号、2008/0085901号、20080015183号、2006/0030618号、2005/0277646号、2005/0277631号、2005/0272931号、2005/0227986号、2005/0153984号、2006/0270682号、2006/0211741号、2006/0205980号、および2006/0100490号に開示されるTRPVモジュレータ、および/またはそれらの組み合わせを含む。
【0439】
<感覚有毛細胞回復薬>
いくつかの例では、免疫調節薬および/または耳圧モジュレータは、ニューロンおよび/または耳感覚細胞の機能を調節する。感覚有毛細胞の存在または機能を修復するのを助ける治療薬もまた、本明細書で熟慮される。これらの治療薬は、感音難聴、老人性難聴、および過度の騒音に起因する聴力損失を含む、患者の聴力損失の処置を助ける。最近の研究で、騒音性難聴患者のための聴覚機能の回復におけるインスリン様成長因子1(IGF-1)の使用が実証された(Lee et al.Otol.Neurotol.(2007)28:976-981)。したがって、薬剤IGF-1、IGF-1アゴニスト、またはIGF-1の発現、生成、または機能をアップレギュレートする薬剤が随意、本明細書に記載される製剤に含有される。
【0440】
<アデノシンモジュレータ>
アデノシンは、β-N9グリコシド結合を介してリボフラノースに付けられたアデニンで構成される。特定の例では、アデノシンは抑制性神経伝達物質である。特定の例では、それは、4つのGPCR-アデノシン受容体A1、アデノシン受容体A2A、アデノシン受容体A2Bおよびアデノシン受容体A3のリガンドとして機能する。特定の例では、アデノシン受容体へのアデノシンの結合は、抗炎症作用に(部分的にまたは完全に)帰結する。特定の例では、アデノシン受容体へのアデノシンの結合は、血管拡張に(部分的にまたは完全に)帰結する。特定の例では、それは細胞の損傷(例えば低酸素症および虚血)に反応して生成される。例えば、耳内での脱分極および仮死は、外リンパへのアデノシンの放出を誘発し、ここで保護効果を発揮する。
【0441】
したがって、いくつかの実施形態では、アデノシンモジュレータは、蝸牛および前庭の障害の処置に使用される。いくつかの実施形態では、アデノシンモジュレータは、ATL313(4-(3-(6-アミノ-9-(5-シクロプロピルカルバモイル-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-2-イル)プロップ-2-イニル)ピペリジン-1-カルボン酸メチルエステル);GW328267X;((2R,3R,4S.5R)-2-{6-アミノ-2-[(1-ベンジル-2-ヒドロキシエチル)アミノ]-9H-プリン-9-イル}-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール);CGS21680塩酸塩(4-[2-[[6-アミノ-9-(N-エチル-b-D-リボフラヌロンアミドシル)-9H-プリン-2-イル]アミノ]エチル]ベンゼンプロパン酸塩酸塩);CV 1808(2-フェニルアミノアデノシン);p-DITC-APEC(2-[4-[2-[2-[(4-イソチオシアナトフェニル)チオカルボニルアミノ]エチルアミノカルボニル]エチル]フェネチルアミノ]-5’-N-エチルカルボキサミドアデノシン);SDZ WAG994(N-シクロヘキシル-2’-O-メチルアデノシン);CVT-3146(レガデノソン;1-(9-(3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル)-6-アミノプリン-2-イル)ピラゾール-4-イル)-N-メチルカルボキサミド);ATL-146e(4-{3-[6-アミノ-9-(5-エチルカルバモイル-3,4-ジヒドロキシ-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-9H-プリン-2-イル]-プロップ-2-イニル}-シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル);5’-n-エチル-カルボキシアミドアデノシン;テカデノソン;CVT-510(N-(3(R)-テトラヒドロフラニル)-6-アミノプリンリボシド);CCPA(2-クロロ-N6-シクロペンチルアデノシン);CPA(N6-シクロペンチルアデノシン);GR 79236;(N-[((1S、2S))-2-ヒドロキシシクロペンチル]アデノシン)2’-MeCCPA;PD 81723((2-アミノ-4,5-ジメチル-3-チエニル)-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン);PSB 36(1-ブチル-8-(ヘキサヒドロ-2,5-メタノペンタレン-3a(1H)-イル)-3,7-ジヒドロ-3-(3-ヒドロキシプロピル)-1H-プリン-2,6-ジオン);リバビリン;CHA(N6シクロヘキシルアデノシン);GW493838(GSK);(-)-N6-(2-フェニルイソプロピル)アデノシン;GW684067((2R,3R,4S,5R)-5-エチニル-2-[6-テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロフラン-3,4-ジオール);CVT-3619(2-(6-((2-ヒドロキシシクロペンチル)アミノ)プリン-9-イル)-5-((2-フルオロフェニルチオ)メチル)オキソラン-3,4-ジオール);2-Cl-IB-MECA(CF102;2-クロロ-N6-(3-ヨードベンジル)-5’-N-メチルカルバモイルアデノシン);HEMADO;IB-MECA(CF101;N6-(3-ヨードベンジル)-5’-N-メチルカルバモイルアデノシン);CP-532903(N6-(2,5-ジクロロベンジル)-3’-アミノアデノシン-5’-N-メチルカルボキサミド);CF502(Can-Fite BioPharma);LJ-529(2-クロロ-N(6)-(3-ヨードベンジル)-5’-N-メチルカルバモイル-4’--チオアデノシン);BAA(8-ブチルアミノアデノシン);6-アミノ-2-クロロプリンリボシド;2-クロロアデノシン;NECA(5’-N-エチルカルボキシアミドアデノシン);APNEA(N6-2-(4-アミノフェニル)エチルアデノシン);またはそれらの組み合わせである。
【0442】
<Atoh 1のモジュレータ>
さらなる感覚有毛細胞の回復薬は、Atoh1(atonal;ATOH)、Neurod1およびNeurog1遺伝子の生成物に対するモジュレータの方へと向けられる。Atoh1は、増殖する前駆体に典型的に発現し、門と系にわたって細胞運命の決定に関係する基本的なヘリックスループヘリックス(bHLH)遺伝子のファミリーに属している。哺乳動物では、少なくとも3つのbHLH転写因子が、耳の有毛細胞および感覚ニューロンを含む感覚ニューロンの発達に不可欠である:Atoh1、Neurod1およびNeurog1。Atoh1は有毛細胞分化に特に不可欠であり、および有糸分裂後の有毛細胞の分化因子としての役割を果たす。Bdnfと組み合わせたAtoh1の発現は、上皮起源の未分化細胞における求心性および遠心性の神経支配を形成することが、さらに研究により示されている。
【0443】
ATOHタンパク質を用いた処置は、感覚毛細胞発達におけるAtoh1の役割を支持し、蝸牛構造における新たな感覚有毛細胞の形成を誘発し、および聴力と平衡機能を修復する。Atoh1遺伝子で挿入されたベクターを使用する遺伝子治療は、感覚有毛細胞機能を促進して保持する際のATOHの役割をさらに支持する。したがって、本明細書に開示される一実施形態は、聴力と平衡障害において感覚有毛細胞の発達を誘発するための、ATOHタンパク質の使用またはAtoh1発現の操作である。
【0444】
さらなる実施形態では、神経栄養成長因子は、内耳有毛細胞の神経栄養成長因子を刺激するために、本明細書に記載される製剤と組成物を介して内耳に投与される。蝸牛神経節ニューロンに生じた損傷は、神経作用だけでなく、通常は有毛細胞によって供給される神経栄養の補助をも除去し、その欠如はアポトーシスを介して細胞死をもたらす。
【0445】
一実施形態では、神経栄養成長因子は、限定されないが、脳由来神経栄養因子、ニューロトロフィン-3、グリア由来神経栄養因子、ニューロトロフィン-4/5、神経成長因子、クロルフェニルチオ-cAMP(cptcAMP;浸透性cAMP類似体)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、またはそれらの組み合わせを含む。他の例では、感覚細胞の回復性薬剤は、脳由来神経栄養因子(BDNF)である。さらに他の例では、神経栄養成長因子はニューロトロフィン-3(NT-3)である。他の例では、神経栄養成長因子はグリア由来神経栄養因子(GDNF)である。いくつかの例では、神経栄養成長因子はペプチドまたはタンパク質である。他の実施形態では、神経栄養成長因子は蝸牛神経節ニューロンの生存を刺激する、または高める。
【0446】
<ERR/NR3B2アンタゴニスト>
受容体β/Nr3b2に関連するオーファン受容体エストロゲンの内リンパの生成の調節における役割と、それによって内リンパ液における蝸牛と前庭の圧力を媒介する役割が果たされる可能性があることを、研究はさらに示唆している(Chen et al.Dev.Cell.(2007)13:325-337)。したがって、ERR/Nr3b2発現、タンパク質生成またはタンパク質機能に拮抗する薬剤を、本明細書に開示される製剤に有用なものとして熟慮する。
【0447】
<KCNQモジュレータ>
KCNQのモジュレータもまた、本明細書に開示される実施形態の範囲内で熟慮される。KCNQタンパク質はカリウムチャネルを形成し、それは有毛細胞内でのカリウムの蓄積を防ぐことで役割を果たす。うずまき管内の流体の高電位を考慮すると、内リンパにおいてカリウム濃度は高く、次にそれは有毛細胞にカリウムを入れるための大きな駆動力を提供する。KCNQ機能は外毛細胞(OHC)の生存率と相関する;KCNQの阻害はカリウムのホメオスタシスを変化させ、やがてOHC退化をもたらす。したがって、KCNQモジュレータ、場合によっては活性化因子を用いた内耳の処置を、前庭と蝸牛の構造の両方で感覚有毛細胞の機能を保全するのに有用なものとして、本明細書に開示される実施形態の範囲内で熟慮する。
【0448】
KCNQ2/3チャネルの活性化因子は耳鳴を低減し、かつレチガビンとレチガビン類似体をKCNQ2/3活性化因子として誘導することが示されている(Kumar et al,Mol Pharm 89:667-677,2016)。したがって、KCNQ2/3チャネルの活性化因子を、本明細書に開示される製剤と共に有用な薬剤として熟慮する。
【0449】
<P2Xモジュレータ>
P2Xチャネル機能のモジュレータを、例えば蝸牛炎症および騒音性難聴などの内耳障害において、実施形態の範囲内で使用するためにさらに熟慮する。P2Xチャネルはアデノシン三リン酸塩によって開閉し、組織に広く分布して存在し、および末梢神経と中枢神経の伝達、なめらかな筋肉収縮および炎症の役割を果たすと考えられる。プリンヌクオシドは蝸牛疾患に関与し、ここでアデノシン三リン酸塩は、P2X受容体の活性化による、アポトーシスとネクローシスの両方を介して細胞傷害性の役割を果たすと考えられる。例えば、ATPを伴う外リンパ腔の慢性的潅流は、鼓室階における線維組織と骨新生(neoosterogenesis)の増殖を引き起こす。さらに、雑音への暴露と低酸素は、内リンパと外リンパの区画におけるATPの著しい上昇を引き起こし、これは場合によっては損傷に対する細胞の適応応答を表している。
【0450】
したがって、一実施形態は、聴力と平衡障害を含む蝸牛と前庭の障害の処置に、P2Xのモジュレータを使用する。P2Xチャネルへのアンタゴニストおよびアゴニストには、BzATP、TNP-ATP、α,β-meATP、A-317491、PPADS、NF279、meSuramin、リアクティブブルーII、RO-1、アダマンタンアミド、RO-3、および4,5-ジアリールイミダゾリンが含まれる。
【0451】
他の実施形態では、P2Y受容体モジュレータおよびアンタゴニストを、Wang et al Cell:163:1348-1359,2015に記載されるもの等に基づいて、本明細書に記載される製剤と共に使用するために熟慮する。
【0452】
<CNS調節薬>
いくつかの例では、免疫調節薬および/または耳圧モジュレータは、中枢神経系の活性を調節する。
【0453】
<抗コリン作用薬>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、中枢神経系(CNS)活性の局所的な調節によって、前庭障害および/または耳鳴を含む耳の障害を改善する。したがって、いくつかの実施形態は、CNSでの神経伝達物質アセチルコリンの放出を阻害する薬剤の使用を組み込む。抗コリン作用薬は、中枢および末梢の神経系においてアセチルコリンを遮断する物質である。それらは前庭小脳の経路内での伝導を抑制することにより平衡障害を処置し、それによって運動耐性を高める。
【0454】
いくつかの実施形態では、抗コリン作用薬はグリコピロレート、ホマトロピン、スコポラミンまたはアトロピンである。いくつかの実施形態では、抗コリン作用薬はグリコピロレートである。いくつかの実施形態では、抗コリン作用薬はホマトロピンである。いくつかの実施形態では、抗コリン作用薬はスコポラミンである。いくつかの実施形態では、抗コリン作用薬はアトロピンである。いくつかの実施形態では、抗コリン作用薬は、有毛細胞の退化を防ぎ、および有毛細胞機能を改善するために、アセチルコリンの退化を減らし、かつ蝸牛の輸出管のコリン作用機能を促進するアセチルコリンエステラーゼ阻害剤である。そのような化合物の例として、限定されないが、タクリン、ガランタミン、ドネペジル、リバスチグミン、フィゾスチグミン、ネオスチグミン、アンベノニウム、デマカリウム(demacarium)、フペルジンAがあげられる。
【0455】
<抗ヒスタミン薬>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、中枢神経系(CNS)活性の局所的な調節によって、前庭障害および/または耳鳴を含む耳の障害を改善する。したがって、いくつかの実施形態は、CNS中の神経伝達物質の作用を阻む薬剤の使用を組み込む。ヒスタミンはCNS中の神経伝達物質である。したがって、いくつかの実施形態は、ヒスタミン受容体(例えばH1受容体、H2受容体、H3受容体および/またはH4受容体)を調節する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、抗ヒスタミン薬は本明細書に記載される通りである。
【0456】
<カルシウムチャネル遮断薬>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、中枢神経系(CNS)活性の局所的な調節によって、前庭障害および/または耳鳴を含む耳の障害を改善する。したがって、いくつかの実施形態は、Ca+チャネルを遮断または拮抗する薬剤の使用を組み込む。カルシウムチャネルは、必須の膜タンパク質によって(他の細胞中の)ニューロンの形質膜で形成されたチャネルである。これらのチャネルは細胞の形質膜を通じてCa+を導く。ニューロンでは、Ca2+の流れは、ニューロンでの活動電位の生成と伝播を部分的に担う。それはさらに、いくつかの例では神経伝達物質の放出を担う。
【0457】
いくつかの実施形態では、カルシウムチャネルアンタゴニストはシンナリジン、フルナリジンまたはニモジピンである。いくつかの実施形態では、カルシウムチャネルアンタゴニストはシンナリジンである。いくつかの実施形態では、カルシウムチャネルアンタゴニストはフルナリジンである。いくつかの実施形態では、カルシウムチャネルアンタゴニストはニモジピンである。カルシウムチャネル遮断薬として、ベラパミル、ジルチアゼム、オメガ‐コノトキシン、GVIA、アムロジン、フェロジピン、ラシジピン、ミベフラジル、NPPB(5-ニトロ-2-(3-フェニルプロピルアミノ)安息香酸)、フルナリジン、および/またはそれらの組み合わせがあげられる。
【0458】
<GABA受容体モジュレータ>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、中枢神経系(CNS)活性の局所的な調節によって、前庭障害および/または耳鳴を含む耳の障害を改善する。したがって、いくつかの実施形態は、CNS中のGABA受容体の作用を調節する薬剤の使用を組み込む。GABA、またはγ-アミノ酪酸はCNS中の抑制性神経伝達物質である。それは、シナプス前部とシナプス後部両方のニューロンのプロセスの抑制性シナプスで作用する。その受容体(GABAA受容体、GABAB受容体およびGABAC受容体)へのGABAの結合は、結果としてイオンチャネルの開放、および細胞内へのcl-の流入および/またはニューロンからの細胞K+の流出をもたらす。結果はニューロンの過分極である。したがって、いくつかの実施形態は、GABA受容体の感受性を増減させる、またはGABAの模倣によってGABA受容体を活性化する薬剤の使用を組み込む。
【0459】
ベンゾジアゼピンクラスの治療薬は、GABAA受容体のアゴニストである。ベンゾジアゼピンがGABAA受容体に結合する場合、それは、その受容体へのGABAの親和性を高める構造変化を誘発する。GABAの結合の増加は、結果として頻度の増加をもたらし、これはニューロン中のCl-チャネルの開放を伴う。これは、神経膜の過分極を引き起こす。いくつかの実施形態では、ベンゾジアゼピンは以下からなる群から選択される:アルプラゾラム、ブロマゼパム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロプラゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、ミダゾラム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、またはそれらの組み合わせ。いくつかの実施形態では、ベンゾジアゼピンは、クロナゼパム、ジアゼパム、ロラゼパム、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ベンゾジアゼピンはジアゼパムである。
【0460】
非ベンゾジアゼピンGABAAモジュレータをさらに、本明細書に記載される製剤で使用するために熟慮する。非ベンゾジアゼピンGABAAモジュレータの例として、限定されないが、ゾルピデム、アルピデム、ザレプロン、インディプロン、ゾピクロン、パゴクロン、L-655,708、アルファキサロンおよびガナキソロンがあげられる。
【0461】
いくつかの実施形態では、GABA受容体モジュレータはループ利尿薬である。いくつかの実施形態では、ループ利尿薬はフロセミド、ブメタニドまたはエタクリン酸である。いくつかの実施形態では、ループ利尿薬はフロセミドである。いくつかの実施形態では、ループ利尿薬はブメタニドである。いくつかの実施形態では、ループ利尿薬はエタクリン酸である。フロセミドは例えばGABAA受容体に結合し、およびα6、β2およびγ2受容体のGABA誘発電流に可逆的に拮抗する。ほんの一例として、有用なループ利尿薬には限定されないがフロセミド、ブメタニドおよびエタクリン酸が含まれる。
【0462】
いくつかの実施形態では、GABA受容体のモジュレータはGABA類似体である。GABA類似体はGABAを模倣する。したがって、それらがGABA受容体に結合する場合、あたかもGABAがそれに結合しており、および受容体が活性化されているかのように受容体は作用する。いくつかの実施形態では、GABA類似体はガバペンチン、プレガバリン、ムシモールまたはバクロフェンである。いくつかの実施形態では、GABA類似体はガバペンチンである。いくつかの実施形態では、GABA類似体はプレガバリンである。いくつかの実施形態では、GABA類似体はムシモールである。いくつかの実施形態では、GABA類似体はバクロフェンである。バクロフェンは、GABAB受容体に結合し、および活性化するGABAの類似体である。ムシモールもまたGABAの類似体である。それはGABAA受容体を刺激する。
【0463】
<神経伝達物質再取り込み阻害剤>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、中枢神経系(CNS)活性の局所的な調節によって、前庭障害および/または耳鳴を含む耳の障害を改善する。したがって、いくつかの実施形態は、CNS中の神経伝達物質の再取り込みを阻害する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、神経伝達物質再取り込みモジュレータは、神経伝達物質再取り込み標的のアンタゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストまたは競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、および/またはオルソステリックアンタゴニストである。神経伝達物質再取り込み阻害剤は、CNSのシナプス前細胞への神経伝達物質の再取り込みを阻害する。これは、CNSのシナプス後部細胞を刺激することができる神経伝達物質の濃度を増加させる。
【0464】
いくつかの実施形態では、神経伝達物質再取り込み阻害剤は三環系抗うつ薬である。三環系抗うつ薬は、前シナプス細胞によって神経伝達物質ノルエピネフリンとセロトニンの再取り込みを阻害することにより作用する。これは、シナプス後部の受容体に結合することができるセロトニンおよび/またはノルエピネフリンのレベルを増加させる。いくつかの実施形態では、三環系抗うつ薬はアミトリプチリン、ノルトリプチリンまたはトリミプラミンである。いくつかの実施形態では、三環系抗うつ薬はアミトリプチリンである。いくつかの実施形態では、三環系抗うつ薬はノルトリプチリンである。いくつかの実施形態では、三環系抗うつ薬はトリミプラミンである。
【0465】
いくつかの実施形態では、神経伝達物質再取込み阻害剤は選択的セロトニン再取り込み阻害剤である。シナプス前細胞へのセロトニンの再取り込みを阻害することによって、SSRIは、セロトニンの細胞外レベルを高める。これは、シナプス後部の受容体に結合することができるセロトニンのレベルを高める。SSRIは、内耳内での新しい神経の成長を刺激すると仮定される。いくつかの実施形態では、選択的セロトニン再取り込み阻害剤はフルオキセチン、パロキセチン、またはセルトラリンである。いくつかの実施形態では、選択的セロトニン再取り込み阻害剤はフルオキセチンである。いくつかの実施形態では、選択的セロトニン再取り込み阻害剤はパロキセチンである。いくつかの実施形態では、選択的セロトニン再取り込み阻害剤はセルトラリンである。いくつかの実施形態では、神経伝達物質再取り込み阻害剤は、レボキセチンなどの選択的な非エピネフリン再取り込み阻害剤、またはミルナシプラン、ビシファジン、ベンラファキシンおよびデュロキセチンなどの2重のセロトニン/非エピネフリン再取り込み阻害剤である。
【0466】
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、中枢神経系(CNS)活性の局所的な調節によって、前庭障害および/または耳鳴を含む耳の障害を改善する。したがって、いくつかの実施形態は、ニューロキニン受容体に拮抗する薬剤の使用を組み込む。少なくとも3つのニューロキニン受容体がある:NK1、NK2およびNK3。特定の実施形態では、ニューロキニン受容体へのリガンド(例えばタキキニンペプチド、サブスタンスP、ニューロキニンAおよびニューロキニンB)の結合は、ホスホリパーゼCの活性化を誘発する。ホスホリパーゼCの活性化はイノシトール三リン酸を生成する。いくつかの実施形態では、ニューロキニン受容体は、NK1受容体、NK2受容体、NK3受容体、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ニューロキニン受容体はNK1受容体である。いくつかの実施形態では、NK1受容体のアンタゴニストはベスチピタントである。
【0467】
いくつかの実施形態では、SSRI阻害剤はニューロキニン受容体拮抗薬と併用投与される。いくつかの実施形態では、SSRIはパロキセチンであり、およびニューロキニン受容体はNK1である。いくつかの実施形態では、NK1受容体アンタゴニストはベスチピタントである。特定の実施形態では、パロキセチンとベスチピタントの同時投与は、耳鳴の症状を処置する。
【0468】
<局所麻酔薬>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、中枢神経系(CNS)活性の局所的な調節によって、前庭障害および/または耳鳴を含む耳の障害を改善する。したがって、いくつかの実施形態は、例えば細胞膜内のNa+チャネルを遮断することによって、ニューロンの脱分極と再分極の速度を減少させる薬剤の使用を組み込む。
【0469】
いくつかの実施形態では、CNSモジュレータは局所麻酔薬である。いくつかの実施形態では、局所麻酔薬は以下からなる群から選択される:ベンゾカイン、カルチカイン、シンコカイン、シクロメチカイン、リドカイン、プリロカイン、プロポキシカイン、プロパラカイン、テトラカイン、トカイニドおよびトリメカイン。いくつかの実施形態では、局所麻酔薬はリドカインである。いくつかの実施形態では、局所麻酔薬はトカイニドである。
【0470】
<ナトリウムチャネル遮断薬>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、中枢神経系(CNS)活性の局所的な調節によって、前庭障害および/または耳鳴を含む耳の障害を改善する。したがって、いくつかの実施形態は、Na+チャネルを遮断または拮抗する薬剤の使用を組み込む。ナトリウムチャネルは、必須の膜タンパク質によって(他の細胞中の)ニューロンの形質膜で形成されたチャネルである。これらのチャネルは細胞の形質膜を通じてNa+を導く。ニューロンでは、Na+の流れは、ニューロンでの活動電位の生成と伝播を部分的に担う。
【0471】
いくつかの実施形態では、ナトリウムチャネル遮断薬は、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、フェニトイン、バルプロ酸またはバルプロ酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、ナトリウムチャネル遮断薬はカルバマゼピンである。いくつかの実施形態では、ナトリウムチャネル遮断薬はオクスカルバゼピンである。いくつかの実施形態では、ナトリウムチャネル遮断薬はフェニトインである。いくつかの実施形態では、ナトリウムチャネル遮断薬はバルプロ酸である。いくつかの実施形態では、ナトリウムチャネル遮断薬はバルプロ酸ナトリウムである。
【0472】
いくつかの実施形態では、Na+チャネル遮断薬はビンポセチン((3a,16a)-エブルナメニン-14-カルボキシル酸エチルエステル);シパトリギン(2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-5-(2,3,5-トリクロロフェニル)-ピリミジン-4-アミン);アミロライド(3,5-ジアミノ-N-(アミノイミノメチル)-6-クロロピラジンカルボキサミド塩酸塩);カルバマゼピン(5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-カルボキサミド);TTX(オクタヒドロ-12-(ヒドロキシメチル)-2-イミノ-5,9:7,10a-ジメタン(o-10aH-[1,3]ジオキソシノ[6,5-d]ピリミジン-4,7,10,11,12-ペンタオール);RS100642(1-(2,6-ジメチル-フェノキシ)-2-エチルアミノプロパン塩酸塩);メキシレチン((1-(2,6-ジメチルフェノキシ)-2-アミノプロパン塩酸塩);QX-314(N-(2,6-ジメチルフェニルカルバモイルメチル)トリエチルアンモニウム臭化物);フェニトイン(5,5-ジフェニルイミダゾリジン-2,4-ジオン);ラモトリジン(6-(2,3-ジクロロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3,5-ジアミン);4030W92(2,4-ジアミノ-5-(2,3-ジクロロフェニル)-6-フルオロメチルピリミジン);BW1003C87(5-(2,3,5-トリクロロフェニル)ピリミジン-2,4-1.1エタンスルホン酸);QX-222(2-[(2,6-ジメチルフェニル)アミノ]-N,N,N-トリメチル-2-オキソエタニミニウムクロリド);アンブロキソール(trans-4-[[(2-アミノ-3,5-ジブロモフェニル)メチル]アミノ]シクロヘキサノール塩酸塩);R56865(N-[1-(4-(4-フルオロフェノキシ)ブチル)-4-ピペリジニル-N-メチル-2-ベンゾ-チアゾールアミン);ルベルゾール;アジュマリン((17R,21アルファ)-アジュマラン-17,21-ジオール);プロカインアミド(4-amno-N-(2-ジエチルアミノエチル)ベンズアミド塩酸塩);フレカイニド;リルゾール;またはそれらの組み合わせである。
【0473】
いくつかの実施形態は、例えば細胞膜内のNa+チャネルを遮断することによって、ニューロンの脱分極と再分極の速度を減少させる薬剤は、局所麻酔薬を含む。いくつかの実施形態では、局所麻酔薬は以下からなる群から選択される:ベンゾカイン、カルチカイン、シンコカイン、シクロメチカイン、リドカイン、プリロカイン、プロポキシカイン、プロパラカイン、テトラカイン、トカイニドおよびトリメカイン。いくつかの実施形態では、局所麻酔薬はリドカインである。いくつかの実施形態では、局所麻酔薬はトカイニドである。
【0474】
<甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、中枢神経系(CNS)活性の局所的な調節によって、前庭障害および/または耳鳴を含む耳の障害を改善する。したがって、いくつかの実施形態は、神経伝達物質を調節する薬剤の使用を組み込む。甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンはグルタミン酸塩に誘発されたニューロンの興奮を阻害する神経伝達物質である。いくつかの実施形態では、CNSモジュレータは甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンである。
【0475】
<抗菌薬>
耳の障害、例えば耳の炎症性疾患または耳の癌の処置に有用な抗菌薬は、本明細書に開示される製剤、組成物、および方法での使用に適している。いくつかの実施形態では、抗菌薬は、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原虫剤、および/または駆虫剤である。抗菌薬は、バクテリア、菌類、ウイルス、原虫類、および/または寄生生物を含む微生物を阻害または根絶するために作用する薬剤を含む。特定の抗菌薬は、特定の微生物と闘うために使用される。したがって当業者は、特定の微生物または発現した症状に応じて、どの抗菌薬が関係しているか、または有用であるかを知るだろう。
【0476】
いくつかの実施形態では、抗菌薬は、タンパク質、ペプチド、抗体、DNA、炭水化物、無機分子または有機分子である。特定の実施形態では、抗菌薬は抗菌性小分子である。典型的には、抗菌性小分子は、比較的低い分子量、例えば1,000未満、または600~700未満、あるいは300~700の分子量である。
【0477】
抗菌薬として、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、硫酸ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、ロラカルベフ、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロール、セファマンドール、セホキシチン、セフプロジル(defprozil)、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアクソン、セフェピム、セフトビプロール、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、アズトレオナム、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、マフェナイド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファミミリムド、スルフサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌスプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピン、チニダゾール、AL-15469A(Alcon Research)、AL-38905(Alcon Research)、およびこれらの組み合わせがあげられる。いくつかの実施形態では、抗菌薬はシプロフロキサシンである。
【0478】
抗ウイルス剤として、アシクロビル、ファムシクロビル、およびバラシクロビルがあげられる。他の抗ウイルス剤として、アバカビル、アシクロビル、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、ブリブジン、シドホビル、コンビビル、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、ガーダシル、イバシタビン、イソプリノシン、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロンタイプIII、インターフェロンタイプII、インターフェロンタイプIを含むインターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、MK-0518、マラビロク、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害薬、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル、テノホビル・ジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、およびそれらの組み合わせがあげられる。
【0479】
抗真菌剤として、アモロルフィン(amrolfine)、ブテナフィン(utenafine)、ナフチフィン、テルビナフィン、フルシトシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、ボリコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾール、ニッコーマイシンZ、カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン、アンフォテリシンB、リポソームニスタチン(nystastin)、ピマリシン、グリセオフルビン、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ウンデシレン酸塩、クリオキノール、およびそれらの組み合わせがあげられる。
【0480】
駆虫剤として、アミトラズ、アモスカネート、アベルメクチン、カルバドックス、ジエチルカルバマジン(diethylcarbamizine)、ジメトリダゾール、ジミナゼン、イベルメクチン、マクロフィラリサイド、マラチオン、ミタバン(mitaban)、オキサムニキン、ペルメトリン、プラジカンテル、パモ酸ピランテル(prantel pamoate)、セラメクチン、スチボグルコン酸ナトリウム、チアベンダゾール、またはそれらの組み合わせがあげられる。
【0481】
いくつかの実施形態では、耳の障害を処置するための、元となる抗菌剤の能力を保持する、上記の抗菌剤の薬学的に活性な代謝物、塩、多形体、プロドラッグ、類似体および誘導体もまた、本明細書に開示される製剤に有用である。
【0482】
いくつかの実施形態では、治療薬は抗菌薬である。いくつかの実施形態では、治療薬は抗菌剤である。いくつかの実施形態では、治療薬は抗ウイルス剤である。いくつかの実施形態では、治療薬は抗真菌剤である。いくつかの実施形態では、治療薬は駆虫剤である。
【0483】
<遊離ラジカルモジュレータ>
いくつかの例では、免疫調節薬および/または耳圧モジュレータは、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。
【0484】
<抗酸化剤>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、遊離ラジカルによって引き起こされる損傷を予防および/または改善する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、遊離ラジカルによって引き起こされる損傷を予防および/または改善する薬剤は、酸化防止剤である。
【0485】
本明細書に開示される酸化防止剤はさらに、活性酸素種の予防、毒性生成物の中和、またはアポトーシス経路の遮断により、内毒性因子に対する保護剤として有用である。レスベラトロル(3,5,4’-トリヒドロキシスチルベン)、酸化防止剤の代表的な例は、MnSODの阻害を含む様々な経路を通じてその効果を発揮し、過酸化物をH2O2に減じ、遊離ラジカルの連鎖反応を阻害し、細胞の過酸化物レベルを下げる。さらにレスベラトロルは、ニューロン細胞機能障害および細胞死の防止に関係している。他の酸化防止剤として限定されないが、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、グルタチオン、リポ酸、アルファリポ酸、尿酸、カロチン、ユビキノール、メラトニン、トコトリエノール、セレン、フラボノイド、ポリフェノール、リコピン、ルテイン、リグナン、ブチルヒドロキシトルエン、コエンザイムQ10、サリチル酸塩、またはそれらの組み合わせがあげられる。
【0486】
特定の実施形態では、ニトロンは酸化防止剤と相乗的に作用する。特定の実施形態では、ニトロンは遊離ラジカルを捕捉する。いくつかの実施形態では、ニトロン(例えば、アルファ-フェニル-tert-ブチルニトロン(PBN)、アロプリノール(allpurinol))は、酸化防止剤と同時投与される。特定の実施形態では、ニトロンと酸化防止剤の同時投与は、急性聴覚性の騒音性難聴を処置する。
【0487】
いくつかの実施形態では、酸化防止剤はN-アセチルシステイン;ビタミンE(トコフェロールとトコトリエノール);ビタミンC;ビタミンA;ルテイン;セレニウムグルタチオン;メラトニン;ポリフェノール;カロテノイド(例えばリコピン、カロチン);コエンザイムQ-10;エブセレン(2-フェニル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン(PZ51またはDR3305とも呼ばれる);L-メチオニン;アズレニル・ニトロン(例えばスチルバズレニルニトロン);L‐(+)‐エルゴチオネイン((S)‐a‐カルボキシ‐2,3‐ジヒドロ‐N,N,N‐トリメチル‐2‐チオキソ‐1H‐イミダゾール4‐エタナミニウム内塩);コーヒー酸フェニルエステル(CAPE);ジメチルチオ尿素;ジメチルスルホキシド;ディスフェントンナトリウム(NXY-059;ジナトリウム4-[(Z)-(tert-ブチル-オキシドアザニウムイリデン)メチル]ベンゼン-1,3-ジスルフォナート);ペントキシフィリン;MCI―186(3‐メチル‐1‐フェニル‐2‐ピラゾリン‐5‐オン);アンブロキソール(trans‐4‐(2‐アミノ‐3,5‐ジブロモベンジルアミノ)シクロヘキサン‐HCl;U‐83836E((-)‐2‐((4‐(2,6‐ジ‐1‐ピロリジニル‐4‐ピリミジニル)‐1‐ピペラザイニル)メチル)‐3,4‐ジヒドロ‐2,5,7,8‐テトラメチル-2H‐1‐ベンゾピラン‐6‐オール●2HCl);MITOQ(メトキノン・メシレート、Antipodean Pharmaceuticals);イデベノン(2-(10-ヒドロキシデシル)-5,6-ジメトキシ-3-メチル-シクロヘキサ-2,5-ジエン-1,4-ジオン);(+)-シアニダノール-3;またはそれらの組み合わせである。
【0488】
<グルタミン酸受容体モジュレータ>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルの生成を調節する、および/またはミトコンドリアの損傷を阻害する。したがっていくつかの実施形態は、グルタミン酸受容体を調節する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、グルタミン酸受容体はAMPA受容体、NMDA受容体、カイニン酸受容体、および/またはグループI、IIまたはIII mGlu受容体である。いくつかの実施形態では、グルタミン酸受容体モジュレータは本明細書に記載される通りである。
【0489】
<鉄キレート剤>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、遊離ラジカルによって引き起こされる損傷を予防および/または改善する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、遊離ラジカルによって引き起こされる損傷を予防および/または改善する薬剤は、鉄キレート剤である。鉄キレート化、デフェロキサミンは、ネオマイシンと同時投与される場合に、ネオマイシンでの処置に起因する耳への内毒性の損傷を防ぐ。
【0490】
いくつかの実施形態では、鉄キレート剤はデスフェリオキサミン(DFO);ヒドロキシベンジルエチレンジアミン;フラレノール-1(ピロリジンジチオカーバメート);デスフェラール;Vk-28(5-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イルメチル]-キノリン-8-オール);クリオキノール;エキノクロム;PIH(ピリドキサールイソニコチノイルヒドラゾン);デフェラシロクス;HBED(N,N’-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N’-2酢酸);SIH(サリチルアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾン);デフェリプロン;L1(1,2-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-ピリドン);コウジ酸(5-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-4-ピロン);デフェロキサミン;2,3-ジヒドロキシ安息香酸;またはそれらの組み合わせである。
【0491】
<ミトコンドリアモジュレータ>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、ミトコンドリアの活性を調節する1つ以上の薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアの活性を調節する薬剤はアセチルカルニチン;リポ酸;またはそれらの組み合わせである。
【0492】
<一酸化窒素合成酵素モジュレータ>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬物は、破壊され、発育不良の、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠けている内耳内の毛に起因する聴力損失または減少を処置または改善する。一酸化窒素(NO)は神経伝達物質である。それは、アルギニンと酸素から多数の一酸化窒素合成酵素(NOS)によって合成される。さらにそれは無機硝酸塩の還元によりから抽出される。特定の例では、それは血管拡張を誘発し、したがって血流を増加させる。特定の例では、それは蝸牛の血流を増加させる。特定の例では、NOは血管壁を傷つける。特定の例では、NOは、蝸牛の血管タンパク質漏出を改善する。特定の例では、NOは有毛細胞の感受性を高める。特定の例では、NOは遊離ラジカルペルオキシナイトライトを形成するために過酸化物と反応する。したがっていくつかの実施形態は、一酸化窒素および/または一酸化窒素合成酵素(NOS)を調節する薬剤の使用を組み込む。
【0493】
いくつかの実施形態では、NOおよび/またはNOSを調節する薬剤は、NOまたはNOSのアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、NOおよび/またはNOSのアンタゴニストは、アミノグアニジン;1-アミノ-2-ヒドロキシグアニジンp-トルエン硫酸塩;GED(グアニジノエチルジスルフィド);メシル酸ブロモクリプチン;デキサメタゾン;SDMA(対称性NG,NG-ジメチル-L-アルギニン);ADMA(非対称性NG,NG-ジメチル-L-アルギニン);L-NMMA(NG-モノメチル-L-アルギニン);L-NMEA(NG-モノエチル-L-アルギニン):D-MMA(NG-モノメチル-D-アルギニン);L-NIL(N6-(1-イミノエチル)-L-リジン酸ハイドロクロライド);L-NNA(NG-ニトロ-L-アルギニン);L-NPA(NG-プロピル-L-アルギニン);L-NAME(NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステルジヒドロクロリド);L-VNIO(N5-(1-イミノ-3-ブテニル)-l-オルニチン);ジフェニレンヨードニウムクロライド;2-エチル-2-チオプセウドウレア;ハロペリドール;L-NIO(L-N5-(1-イミノエチル)オルニチン);MEG(メチルエクゴニジン);SMT(S-メチルイソチオ尿素硫酸塩);SMTC(S-メチル-L-チオシトルリン);7-Ni(7-ニトロインダゾール);nNOS阻害剤I((4S)-N-(4-アミノ-5[アミノエチル]アミノペンチル)-N’ニトログアニジン);1,3-PBITU(S,S’-1,3-フェニレン-ビス(1,2-エタンジイル)-ビス-イソチオ尿素);L-チオシトルリン;TRIM(1-(2-トリフルオロメチルフェニル)イミダゾール);MTR-105(S-エチルイソチウロニウムジエチルホスファート);BBS-1;BBS-2;ONO-1714((1S,5S,6R,7R)-7クロロ-3-アミノ-5メチル-2-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン塩酸塩);GW273629(3-[[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]スルホニル]-L-アラニン);GW 274150((S)-2-アミノ-(1-イミノエチルアミノ)-5-チオヘプタン酸);PPA250(3-(2,4-ジフルオロフェニル)-6-{2-[4-(1H-イミダゾール-1-イルメチル)フェノキシ]エトキシ}-2-フェニルピリジン);AR-R17477([N-(4-(2-((3-クロロフェニルメチル)アミノ)エチル)フェニル)-2-チオフェンカルボキシアミジンジヒドロクロリド);AR-R18512(N(2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)-2-チオフェンカルボキシアミジン);スピロキナゾロン(spiroquinazolone);1400W(N-[[3-(アミノメチル)フェニル]メチル]-エタンイミドアミドジヒドロクロリド);またはそれらの組み合わせである。
【0494】
いくつかの実施形態では、NOおよび/またはNOSを調節する薬剤は、NOおよび/またはNOSのアゴニスト、またはNOのドナーである。いくつかの実施形態では、NOおよび/またはNOSのアゴニスト、またはNOのドナーは、S-NC(S-ニトロソシステイン);NTG(ニトログリセリン);SNP(ニトロプルシドナトリウム);タプシガルギン;血管内皮増殖因子(VEGF);ブラジキニン;ATP;スフィンゴシン-1-リン酸塩;エストロゲン;アンジオポエチン;アセチルコリン;SIN-1(3-モルホリノシドノンイミン);GEA 3162(1,2,3,4-オキサトリアゾリウム、5-アミノ-3-(3,4-ジクロロフェニル)-,塩化物);GEA 3175(3-(3-クロロ-2-メチルフェニル)-5-[[4-メチルフェニル)スルホニル]アミノ]-)ヒドロキシド);GEA 5024(1,2,3,4-オキサトリアゾリウム,5-アミノ-3-(30クロロ-2-メチル-フェニル)塩化物);GEA 5538(,2,3,4-オキサトリアゾリウム,3-(3-クロロ-2-メチルフェニル)-5-[[[シアノメチルアミノ]カルボニル]アミノ]-ヒドロキシド内塩);SNAP(S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン);モルシドミン;CNO-4(1-[(4’,5’-ビス(カルボキシメトキシ)-2’-ニトロフェニル)メトキシ]-2-オキソ-3,3,ジエチル-1-トリアゼンジカリウム塩);CNO-5([1-(4’,5’-ビス(カルボキシメトキシ)-2’-ニトロフェニル)メトキシ]-2-オキソ-3,3-ジエチル-1-トリアジンジアセトキシメチルエステル);DEA/NO、IPA/NO、SPER/NO、SULFI/NO、OXI/NO、DETA/NO;またはそれらの組み合わせである。
【0495】
<サーチュインモジュレータ>
サーチュイン(またはSir2タンパク質)は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)のクラスIIIを含む。それらはタンパク質脱アセチル化酵素として分類されているが、さらにモノ-ADP-リボシルトランスフェラーゼとして機能するものもある。各サチューインタンパク質は、250のアミノ酸の相同コア配列を有する。この配列は、多数の種の上に高度に保存される。さらに、タンパク質の脱アセチルを触媒するために、各サーチュインは補助因子としてNAD+を必要とする。ファミリーの7人のメンバーが存在する:Sirt1、Sirt2、Sirt3、Sirt4、Sirt5、Sirt6およびSirt7。Sirt1とSirt3はタンパク質脱アセチル化酵素である。Sirt2は有糸分裂に関係する。
【0496】
Sirt1のアゴニズムは、カロリー制限を行っている被験体で事前に特定された多数の有益性を生み出す。これらの有益性として限定されないが、グルコース濃度の減少とインスリン感性の改善、ミトコンドリア活性の増強、および脂肪蓄積の減少(PPAR-γのSirt1媒介抑制による)があげられる。糖尿病とアテローム動脈硬化症の両方が、老人性難聴の発症と進行の要員となる因子であるため、グルコース濃度と脂肪蓄積の減少は、老人性難聴の改善に寄与する。
【0497】
Sirt1は、前アポトーシス遺伝子のp53およびKu‐70の脱アセチルによって、アポトーシスを防ぐ。Sirt1用のさらなる基質として、限定されないが、転写因子NFκB、Fox01、Fox03a、Fox04、Fox05;転写抑制因子Hic1;および、他の細胞機能の中にあって、適応性の熱発生とグルコース代謝とトリグリセリド代謝を調節するPgc-1αがあげられる。Sirt3のアゴニズムは、細胞呼吸の増加と、活性酸素種(ROS)の生成の減少をもたらす。
【0498】
サーチュインによる脱アセチル触媒作用は、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)依存である。アセチル化タンパク質への結合に際し、サーチュインは、ニコチンアミドとADPリボースの間のグリコシド結合を壊すことによってNAD+を加水分解する。その後、アセチル化タンパク質のアセチル基はADPリボースに転写される。反応ニコチンアミドが完了すると、脱アセチルタンパク質および2’-O-アセチル-ADP-リボースが放出される。
【0499】
多数の化合物が、タンパク質のサーチュイン触媒脱アセチルを調節する。限定されないがスチルベン、カルコン、フラボン、イソフラボン、フラバノン、アントシアニジン、カテキンなどの特定のポリフェノールの投与は、結果として脱アセチル反応のKmの減少をもたらす。さらに、遊離したニコチンアミドが脱アセチル反応に拮抗するため、サーチュインへのニコチンアミドの結合を阻害する化合物は、さらにサーチュインの活性を刺激する。
【0500】
サーチュイン刺激剤レスベラトロル(trans-3,5,4’-トリヒドロキシスチルベン)の投与はアポトーシスを減少させる。それはさらにグルタミン酸の取り込みを高め、したがって興奮毒性を改善する。さらに、レスベラトロルの投与は、結果として低レベルの活性酸素種(ROS)をもたらし、したがって虚血、興奮毒性、シスプラチンとアミノグリコシドによって引き起こされた耳毒性、音響外傷および老人性難聴に起因する損傷を改善する。
【0501】
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、サーチュインが触媒する脱アセチル化反応を調節する1つ以上の薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、スチルベンである。いくつかの実施形態では、スチルベンは、trans‐スチルベン、cis-スチルベン、レスベラトロル、ピセタノール、ラポンチン、デオキシラポンチン、ブテインまたはそれらの組み合わせである。
【0502】
いくつかの実施形態では、スチルベンはレスベラトロルである。いくつかの実施形態では、スチルベンはレスベラトロルの類似体である。いくつかの実施形態では、レスベラトロルの類似体はSRT-501(RM-1821)である。レスベラトロルのさらなる類似体については、米国特許出願公開第2006/0276393号を参照されたい、これは本開示のために参照により本明細書に組込まれる。
【0503】
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、サーチュインが触媒する脱アセチル化反応を調節する1つ以上の薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、カルコンである。いくつかの実施形態において、カルコンは、カルコン(chalcon);イソリクイリチゲニン(isliquirtigen);ブテイン;4,2’,4’‐トリヒドロキシカルコン;3,4,2’,4’,6’-ペンタヒドロキシカルコン;またはそれらの組み合わせである。
【0504】
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、サーチュインが触媒する脱アセチル化反応を調節する1つ以上の薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤はフラボンである。いくつかの実施形態において、フラボンは、フラボン、モリン、フィゼチン;ルテオリン;ケルセチン;ケンフェロール;アピゲニン;ゴシペチン;ミリセチン;6‐ヒドロキシアピゲニン;5‐ヒドロキシフラボン;5,7,3’,4’,5’‐ペンタヒドロキシフラボン;3,7,3’,4’,5’‐ペンタヒドロキシフラボン;3,6,3’,4’‐テトラヒドロキシフラボン;7,3’,4’,5’‐テトラヒドロキシフラボン;3,6,2’,4’‐テトラヒドロキシフラボン;7,4’‐ジヒドロキシフラボン;7,8,3’,4’‐テトラヒドロキシフラボン;3,6,2’,3’‐テトラヒドロキシフラボン;4’‐ヒドロキシフラボン;5‐ヒドロキシフラボン;5,4’‐ジヒドロキシフラボン;5,7‐ジヒドロキシフラボン;またはそれらの組み合わせである。
【0505】
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、サーチュインが触媒する脱アセチル化反応を調節する1つ以上の薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、イソフラボンである。ある実施形態において、イソフラボンは、ダイゼイン、ゲニステインまたはそれらの組み合わせである。
【0506】
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、サーチュインが触媒する脱アセチル化反応を調節する1つ以上の薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、フラバノンである。いくつかの実施形態において、フラバノンは、ナリンゲニン;フラバノン;3,5,7,3’,4’-ペンタヒドロキシフラバノン;またはそれらの組み合わせである。
【0507】
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、サーチュインが触媒する脱アセチル化反応を調節する1つ以上の薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、アントシアニジンである。いくつかの実施形態において、アントシアニジンは、ペラルゴニンクロライド、シアニジンクロライド、デルフィニジンクロライドまたはそれらの組み合わせである。
【0508】
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、サーチュインが触媒する脱アセチル化反応を調節する1つ以上の薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態において、サーチュインに触媒された脱アセチル反応を調節する薬剤は、カテキンである。いくつかの実施形態において、カテキンは、(-)-エピカテキン(水酸基の位置:3、5、7、3’、4’);(-)-カテキン(水酸基の位置:3、5、7、3’、4’);(-)-ガロカテキン(水酸基の位置:3、5、7、3’、4’、5’)(+)-カテキン(水酸基の位置:3、5、7、3’、4’);(+)-エピカテキン(水酸基の位置:3、5、7、3’、4’);またはそれらの組み合わせである。
【0509】
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、サーチュインが触媒する脱アセチル化反応の触媒速度調節をする1つ以上の薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、サーチュインが触媒する脱アセチル化反応の触媒速度調節をする薬剤は、ジピリダモール、ZM336372(3-(ジメチルアミノ)-N-[3-[(4-ヒドロキシベンゾイル)-アミノ]-4-メチルフェニル]ベンズアミド)、カンプトテシン、クメストロール、ノルジヒドログアヤレト酸、エスクレチン、SRT-1720(Sirtris)、SRT-1460(Sirtris)、SRT-2183(Sirtris)、またはそれらの組み合わせである。
【0510】
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮される薬剤は、遊離ラジカルまたはミトコンドリアの機能障害によるニューロンおよび/または耳の有毛細胞の退化を緩和、予防、逆転、または改善する。したがっていくつかの実施形態は、サーチュインが触媒する脱アセチル化反応を調節する1つ以上の薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、サーチュインが触媒する脱アセチル反応を調節する薬剤は、ニコチンアミド結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、ニコチン酸アミド結合アンタゴニストは、イソニコチンアミドまたはイソニコチンアミドの類似体である。いくつかの実施形態では、イソニコチンアミドの類似体は、β‐1’‐5‐メチル‐ニコチン酸アミド‐2’‐デオキシリボース;β‐D‐1’‐4,5‐ジメチルニコチンアミド‐2’‐デオキシリボフラノシド;β‐1’‐4,5‐ジメチル‐ニコチンアミド‐2’‐デオキシリボース(de‐oxyribose);またはβ‐D‐1’‐4,5‐ジメチル‐ニコチンアミド‐2’‐デオキシリボフラノシドである。さらなるイソニコチンアミドの追加の類似体については、以下を参照されたい:米国特許第5,985,848号;6,066,722号;6,228,847号;6,492,347号;6,803,455号;および米国特許第2001/0019823号;2002/0061898;2002/0132783;2003/0149261;2003/0229033;2003/0096830;2004/0053944;2004/0110772;および2004/0181063、これらは本開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0511】
<イオンチャネルモジュレータ>
【0512】
<カリウムイオンチャネルモジュレータ>
本明細書に開示される製剤および化合物と共に使用するために熟慮される薬物は、破壊され、発育不良の、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠けている内耳内の毛とニューロンに起因する聴力損失または減少を処置または改善する。したがって、いくつかの実施形態は、カリウムイオン濃度を調節する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、カリウムイオン濃度を調節する薬剤はカリウムイオンチャネルのアゴニストまたはアンタゴニストである。カリウムイオンチャネルは、細胞内外へのカリウムイオンの流れを調整するチャネルである。蝸牛では、感覚細胞を通る伝達電流はカリウムイオンによって運ばれ、および内リンパのカリウムイオンの高濃度に依存する。カリウムチャネルタンパク質をコードする遺伝子の突然変異は、後天性難聴と先天性難聴の両方をもたらす。
【0513】
カリウムチャネルのKCNQファミリーは、蝸牛に見られる、遅延整流性の電位依存性カリウムチャネルのファミリーである。KCNQ1サブユニットは、前庭の暗細胞および血管条の周辺細胞内にカリウムチャネルを形成する。これらのチャネルは、内リンパ中のカリウムのレベルを調節する。KCNQ4サブユニットはチャネル有毛細胞を形成する。KCNQサブユニットノックアウトをコードする遺伝子を備えたマウスは、出生後4週間で始まる、進行性の聴力損失を示す。
【0514】
いくつかの実施形態では、カリウムチャネルを調節する薬剤は、カリウムチャネルのアゴニストである(例えばカリウムチャネル開口薬)。いくつかの実施形態では、カリウムチャネルのアゴニストはニコランジル;ミノキシジル、レブクロマカリム;レマカリム;クロマカリム;L-735,334(14-ヒドロキシCAF-603オレアート);レチガビン;フルピルチン;BMS-204352(3S)-(+)-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-1,3-ジヒドロ-3-フルオロ-6-(トリフルオロメチル)-2H-インドール-2-オン);DMP-543(10,10-ビス((2-フルオロ-4-ピリジニル)メチル)-9(10H)-アントラセンオン;またはそれらの組み合わせである。
【0515】
いくつかの実施形態では、カリウムチャネルを調節する薬剤は、カリウムチャネルのアンタゴニストである(例えばカリウムチャネル遮断薬)。いくつかの実施形態では、カリウムチャネルのアンタゴニストは、リノピルジン;XE991(10,10-ビス(4-ピリジニルメチル)-9(10H)-アントラセンオン);4-AP(4-アミノピリジン);3,4-DAP(3,4-ジアミノピリジン);E-4031(4’-[[1-[2-(6-メチル-2-ピリジル)エチル]-4-ピペリジニル]カルボニル]-メタンスルホンアニリド);DIDS(4,4’-ジイソチオシアノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸);Way123,398(N-メチル-N-(2-(メチル(1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)アミノ)エチル)-4-((メチルスルホニル)アミノ(ベンゼンスルホンアミドHCl);CGS-12066A(7-トリフルオロメチル-4-(4-メチル-1-ピペラジニル)ピロロ-[1,2-a]キノキサリン;ドフェチリド;ソタロール;アパミン;アミオダロン;アジミリド、ブレチリウム、クロフィリウム、テジサミル、イブチリド、セマチリド、ニフェカラント、タムルストキシン(tamulustoxin)、およびそれらの組み合わせである。
【0516】
<プリン受容体(Purigenic Receptor)モジュレータ>
本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟慮されるのは、イオンチャネルの調節のための薬剤である。したがって、いくつかの実施形態は、イオンの濃度を調節する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、イオンの濃度を調節する薬剤は、プリン受容体のアゴニストまたはアンタゴニストである。
【0517】
プリン受容体は形質膜結合受容体のファミリーである。ファミリーはP2X、P2YおよびP1受容体を含む。P2X受容体はイオンチャネルを含む。ATPが受容体に結合する場合、チャネルは開く。P2Y受容体は、Gタンパク質共役受容体を含む。これらの受容体のリガンドはATP、ADP、UTP、UDP、UDPグルコースである。P1受容体は、Gタンパク質共役受容体を含む。これらの受容体用のリガンドはアデノシンである。プリン受容体は、耳のイオンホメオスタシスを調節する。内リンパは、正常な聴覚伝導のために、例えば高いカリウム(K+)、低いナトリウム(Na+)および低いカルシウム(Ca2+)イオンレベルを必要とする。
【0518】
いくつかの実施形態では、プリン受容体のアゴニストはATP;ADP;UTP;UDP;UDPグルコース;アデノシン;2-MeSATP;2-MeSADP;αβmeATP;dATPαS;ATPγS;Bz-ATP;MRS2703(1-(3,4-ジメチルオキシフェニル)エズ-1-イルリン酸エステルによって遮断される、ベータリン酸基を備えた2-MeSADP);デヌホソル四ナトリウム;MRS2365([[(1R,2R,3S,4R,5S)-4-[6-アミノ-2-(メチルチオ)-9H-プリン-9-イル]-2,3-ジヒドロキシビシクロ[3.1.0]hex-1-イル]メチル]2リン酸モノエステル三ナトリウム塩);MRS2690(2リン酸1-a-D-グルコピラノシルエステル2-[(4’-メチルチオ)ウリジン-5’’-イル]エステルジナトリウム塩);PSB 0474(3-(2-オキソ-2-フェニルエチル)-ウリジン-5′-2リン酸ジナトリウム塩);またはそれらの組み合わせである。
【0519】
いくつかの実施形態では、プリン受容体のアンタゴニストは、A-317491((5-([(3-フェノキシベンジル)[(1S)-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレニル]アミノ]カルボニル)-1,2,4-ベンゼントリカルボン酸;RO-3(Roche);スラミン;PPADS(リン酸ピリドキサール6-アゾフェニル-2’,4’-二スルホン酸;PPNDS(ピリトキサル-5’-リン酸-6-(2’-ナフチルアゾ-6’-ニトロ-4’,8’-ジスルフォナート)テトラナトリウム塩);DIDS;ピリドキサール-5-リン酸塩;5-(3-ブロモフェニル)-1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾフロ-[3,2-e]-1,4-ジアゼピン-2-オン;シバクロンブルー;バシレンブルー;イベルメクチン;A-438079(3-[[5-(2,3-ジクロロフェニル)-1H-テトラゾール-1-イル]メチル]ピリジン塩酸塩);A-740003((N-(1-{[(シアノイミノ)(5-キノリニルアミノ)メチル]アミノ}-2,2-ジメチルプロピル)-2-(3,4-ジメトキシフェニル)アセトアミド);NF449(4,4’,4”,4’’’-(カルボニルビス(イミノ-5,1,3-ベンゼントリイルビス(カルボニルイミノ)))テトラキス-ベンゼン-1,3-二スルホン酸);NF110(パラ-4,4’,4”,4’’’-(カルボニルビス(イミノ-5,1,3-ベンゼントリイルビスカルボニルイミノ)))テトラキス-ベンゼンスルホン酸);MRS 2179(2’-デオキシ-N6-メチルアデノシン3’,5’-ビスリン酸テトラナトリウム塩;MRS 2211(2-[(2-クロロ-5-ニトロフェニル)アゾ]-5-ヒドロキシ-6-メチル-3-[((ホスホノオキシ)メチル)-4-ピリジンカルボキサルデヒドジナトリウム塩);MRS 2279((1R,2S,4S,5S)-4-[2-クロロ-6-(メチルアミノ)-9H-プリン-9-イル]-2-(ホスホノオキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-1-メタノール二水素リン酸塩エステル二アンモニウム塩);MRS 2500テトラナトリウム塩((1R,2S,4S,5S)-4-[2-ヨード-6-(メチルアミノ)-9H-プリン-9-イル]-2-(ホスホノオキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-1-メタノール二水素リン酸塩エステルテトラアンモニウム塩);NF157(8,8’-[カルボニルビス[イミノ-3,1-フェニレンカルボニルイミノ(4-フルオロ-3,1-フェニレン)カルボニルイミノ]]ビス-1,3,5-ナフタリントリスルホン酸ヘキサナトリウム塩);TNP-ATP;テトラメチルピラジン;Ip5I;βγ-カルボキシメチレンATP;βγ-クロロリン酸メチレンATP;KN-62(4-[(2S)-2-[(5-イソキノリニルスルホニル)メチルアミノ]-3-オキソ-3-(4-フェニル-1-ピペラジニル)プロピル]フェニルイソキノリンスルホン酸エステル);NF023(8,8’-[カルボニルビス(イミノ-3,1-フェニレンカルボニルイミノ)]ビス-1,3,5-ナフタレン-トリスルホン酸、ヘキサナトリウム塩);NF279(8,8’-[カルボニルビス(イミノ-4,1-フェニレンカルボニルイミノ-4,1-フェニレンカルボニルイミノ)]ビス-1,3,5-ナフタリントリスルホン酸ヘキサナトリウム塩);スピノルフィン;またはそれらの組み合わせである。
【0520】
<RNAi>
いくつかの実施形態では、標的の阻害またはダウンレギュレーションが望ましい場合(例えば、カリウムチャネルの構成分子をコードする遺伝子、およびプリン受容体をコードする遺伝子)、RNA干渉が随意に利用される。いくつかの実施形態では、標的を阻害またはダウンレギュレートする薬剤は、siRNA分子である。特定の例では、siRNA分子は本明細書に記載される通りである。
【0521】
<コルチコステロイド>
本明細書に記載される耳用の製剤と組成物と共に使用するために熟慮されるのは、コルチコステロイド剤であり、それは自己免疫疾患および/またはAIEDを含む炎症性障害に起因する症状または効果を減じる、または改善する。そのような自己免疫反応は、メニエール病などの耳の障害の要因である。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドは、ニューロンおよび/または耳の有毛細胞の変性を調節し、および破壊され、発育不良の、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠けている内耳内の毛に起因する聴力損失または減少を処置または改善する薬剤である。したがって、いくつかの実施形態は、聴器毒性から耳の有毛細胞を保護する薬剤の使用を組み込む。いくつかの実施形態では、聴器毒性から耳の有毛細胞を保護する薬剤はコルチコステロイドである。
【0522】
適切なコルチコステロイドの例として、限定されないが、プレドニゾロン、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸塩、ベクロメタゾン、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベータメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコート、フルクロロニド(flucloronide)、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニソロン、フルドロキシコルチド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾールハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ハイドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニソロン、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノ-酢酸塩、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル(prednival)、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、およびそれらの組み合わせがあげられる。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドはトリアムシノロンアクテノイド(actenoide)またはその適切な派生物である。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドは、デキサメタゾンまたはその適切な誘導体である。
【0523】
特定の例では、トリアムシノロンアクテノイドおよびデキサメタゾンは、酸化ストレスに応じて内耳で生成される、自然発生毒素4-ヒドロキシ-2,3-ノネナール(HNE)によって引き起こされた損傷から耳の有毛細胞を保護する。
【0524】
<切断したTrkCまたは切断したTrkBのアンタゴニスト>
本明細書に記載される耳用の製剤と組成物と共に使用するために熟慮されるのは、切断したTrkCまたは切断したTrkBのアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、アンタゴニストは、切断したTrkCまたは切断したTrkBの発現レベルまたは活性の減少を誘発し、または、切断したTrkCまたは切断したTrkBの結合パートナーとの切断したTrkCまたは切断したTrkBの相互作用を妨害する。いくつかの実施形態では、切断したTrkCまたは切断したTrkBの発現レベルまたは活性のアンタゴニストは、核酸ポリマー、ポリペプチド、または小分子である。
【0525】
ニューロトロフィンは、末梢および中枢の神経系および他の組織を調節し、神経生存およびシナプス可塑性の調節などの機能を促進する、二量体ポリペプチド成長因子である。いくつかの例では、ニューロトロフィンのファミリーは、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、およびニューロトロフィン-4(NT-4)を含む。いくつかの例では、ニューロトロフィンは、腫瘍壊死因子受容体のスーパーファミリーに属する受容体のTrkファミリーまたはp75ニューロトロフィン受容体のいずれかとの相互作用によって、その効果を媒介する。いくつかの場合では、受容体のTrkファミリーとの相互作用は、ニューロトロフィンの成長および生存反応を媒介する、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ、ホスホリパーゼC、SNT、およびRas/マイトジェン活性化プロテインキナーゼ経路などの、いくつかのシグナル伝達カスケードを活性化する。
【0526】
受容体のTrkファミリーは、3つの相同体、TrkA(NTRK1)、TrkB(NTRK2)、およびTrkC(NTRK3)を含む。NT-3成長因子受容体、神経栄養チロシンキナーゼ受容体タイプ3、またはTrkCチロシンキナーゼとしても知られている、トロポミオシン受容体キナーゼC(TrkC)は、ニューロトロフィン-3(NT-3)のための受容体である。チロシン受容体キナーゼB、BDNF/NT-3成長因子受容体、または神経栄養チロシンキナーゼ受容体タイプ2としても知られている、トロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)は、BDNF、NT-4のための、およびいくつかの例では、親和性は低いがNT-3のための受容体である。
【0527】
<切断したTrkCおよび切断したTrkBのアイソフォーム>
いくつかの実施形態では、TrkCは約20のエクソンを含む。いくつかの例では、切断したTrkCアイソフォームは、20のエクソンの1つ以上を欠くか、または1つ以上の変更されたエクソンを含む。いくつかの実施形態では、切断したTrkCは、非触媒性の切断したTrkCである。いくつかの実施形態では、切断したTrkCタンパク質は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有する。いくつかの例では、切断したTrkCタンパク質は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列から成る。いくつかの実施形態では、切断したTrkCはTrkC.T1である。いくつかの事例では、切断したTrkCは、
図2Aに例示されるような切断したTrkCである。
【0528】
いくつかの例では、TrkBは約24のエクソンを含む。いくつかの例では、切断したTrkBアイソフォームは、24のエクソンの1つ以上を欠くか、または1つ以上の変更されたエクソンを含む。いくつかの例では、切断したTrkBは、TrkB-T-TK、TrkB-T Shc、TrkB.T1(またはTrkB-T1)、TrkB.T2(またはTrkB-T2)、TrkB-N、TrkB-N-T-TK、TrkB-N-T-Shc、またはTrkB-N-T1を含む。いくつかの実施形態では、切断したTrkBは、
図2Bに例示されるような切断したTrkBである。
【0529】
いくつかの実施形態では、切断したTrkBは、非触媒性の切断したTrkBである。いくつかの実施形態では、切断したTrkBタンパク質は、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有する。いくつかの場合では、切断したTrkBタンパク質は、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列から成る。いくつかの場合では、切断したTrkBは、TrkB.T1(またはTrkB-T1)である。
【0530】
<核酸ポリマーアンタゴニスト>
いくつかの実施形態では、切断したTrkCまたは切断したTrkBの発現レベルまたは活性の低下を誘発するアンタゴニストは、核酸ポリマーである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、および核酸ポリマーは最長で100ヌクレオチドの長さであり;および薬学的に許容可能な賦形剤および/または送達媒体を含む。いくつかの例では、核酸ポリマーは、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列に対して、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する。いくつかの例では、核酸ポリマーは、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列に対して100%の配列同一性を有する。いくつかの例では、核酸ポリマーは、SEQ ID NOs:1-5から選択される核酸配列から成る。
【0531】
いくつかの場合では、核酸ポリマーは、切断したTrkCまたは切断したTrkBのmRNAの標的配列にハイブリダイズする。いくつかの場合では、核酸ポリマーは、切断したTrkCまたは切断したTrkBの発現レベルの低下を誘発する。いくつかの場合では、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列に対して少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する核酸ポリマーは、切断したTrkCの標的配列にハイブリダイズする。いくつかの場合では、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列に対して100%の配列同一性を有する核酸ポリマーは、切断したTrkCの標的配列にハイブリダイズする。いくつかの場合では、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列から成る核酸ポリマーは、切断したTrkCの標的配列にハイブリダイズする。
【0532】
いくつかの例では、核酸配列に対して少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する核酸ポリマーは、切断したTrkBの標的配列にハイブリダイズする。いくつかの例では、核酸配列に対して100%の配列同一性を有する核酸ポリマーは、切断したTrkBの標的配列にハイブリダイズする。いくつかの場合では、核酸配列から成る核酸ポリマーは、切断したTrkBの標的配列にハイブリダイズする。
【0533】
いくつかの例では、核酸ポリマーは、CCAAUC、CUCCAA、またはACUGUGから選択される結合モチーフを含む標的配列にハイブリダイズし、ここで結合モチーフは、切断したTrkCをコードする配列に位置する。いくつかの例では、核酸ポリマーは、切断したTrkC mRNAの3’UTR領域に位置する標的配列にハイブリダイズする。いくつかの場合では、核酸ポリマーは、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)分子、マイクロRNA(miRNA)分子、siRNA分子、または二本鎖RNA分子を含む。いくつかの場合では、核酸ポリマーはshRNA分子である。
【0534】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、マイクロRNA(miRNA)によって認識される切断したTrkCまたは切断したTrkBの標的配列にハイブリダイズする。いくつかの例では、miRNAは、let-7b-3p(SEQ ID NO:13)、let-7b-5p(SEQ ID NO:14)、miR-1-3p(SEQ ID NO:15)、miR-1-5p(SEQ ID NO:16)、miR-9-3p(SEQ ID NO:17)、miR-9-5p(SEQ ID NO:18)、miR-10a-3p(SEQ ID NO:19)、miR-10a-5p(SEQ ID NO:20)、miR-15a-3p(SEQ ID NO:21)、miR-15a-5p(SEQ ID NO:22)、miR-16-1-3p(SEQ ID NO:23)、miR-16-2-3p(SEQ ID NO:24)、miR-16-5p(SEQ ID NO:25)、miR-17-3p(SEQ ID NO:26)、miR-17-5p(SEQ ID NO:27)、miR-18a-3p(SEQ ID NO:28)、miR-18a-5p(SEQ ID NO:29)、miR-20a-3p(SEQ ID NO:30)、miR-20a-5p(SEQ ID NO:31)、miR-24-3p(SEQ ID NO:32)、miR-24-1-5p(SEQ ID NO:33)、miR-24-2-5p(SEQ ID NO:34)、miR-30e-3p(SEQ ID NO:35)、miR-30e-5p(SEQ ID NO:36)、miR-93-3p(SEQ ID NO:37)、miR-93-5p(SEQ ID NO:38)、miR-103a-3p(SEQ ID NO:39)、miR-103a-2-5p(SEQ ID NO:40)、miR-103b(SEQ ID NO:41)、miR-106a-3p(SEQ ID NO:42)、miR-106a-5p(SEQ ID NO:43)、miR-106b-3p(SEQ ID NO:44)、miR-106b-5p(SEQ ID NO:45)、miR-107(SEQ ID NO:46)、miR-125a-3p(SEQ ID NO:47)、miR-125a-5p(SEQ ID NO:48)、miR-125b-1-3p(SEQ ID NO:49)、miR-125b-2-3p(SEQ ID NO:50)、miR-125b-5p(SEQ ID NO:51)、miR-128-3p(SEQ ID NO:52)、miR-128-1-5p(SEQ ID NO:53)、miR-128-2-5p(SEQ ID NO:54)、miR-133a-3p(SEQ ID NO:55)、miR-133a-5p(SEQ ID NO:56)、miR-133b(SEQ ID NO:57)、miR-141-3p(SEQ ID NO:58)、miR-141-5p(SEQ ID NO:59)、miR-149-3p(SEQ ID NO:60)、miR-149-5p(SEQ ID NO:61)、miR-182-3p(SEQ ID NO:62)、miR-182-5p(SEQ ID NO:63)、miR-188-3p(SEQ ID NO:64)、miR-188-5p(SEQ ID NO:65)、miR-198(SEQ ID NO:66)、miR-200a-3p(SEQ ID NO:67)、miR-200a-5p(SEQ ID NO:68)、miR-200b-3p(SEQ ID NO:69)、miR-200b-5p(SEQ ID NO:70)、miR-204-3p(SEQ ID NO:71)、miR-204-5p(SEQ ID NO:72)、miR-206(SEQ ID NO:73)、miR-221-3p(SEQ ID NO:74)、miR-221-5p(SEQ ID NO:75)、miR-296-3p(SEQ ID NO:76)、miR-296-5p(SEQ ID NO:77)、miR-324-5p(SEQ ID NO:78)、miR-326(SEQ ID NO:79)、miR-330-3p(SEQ ID NO:80)、miR-331-3p(SEQ ID NO:81)、miR-331-5p(SEQ ID NO:82)、miR-340-3p(SEQ ID NO:83)、miR-340-5p(SEQ ID NO:84)、miR-345-3p(SEQ ID NO:85)、miR-345-5p(SEQ ID NO:86)、miR-374a-3p(SEQ ID NO:87)、miR-374a-5p(SEQ ID NO:88)、miR-374b-3p(SEQ ID NO:89)、miR-374b-5p(SEQ ID NO:90)、miR-374c-3p(SEQ ID NO:91)、miR-374c-5p(SEQ ID NO:92)、miR-384(SEQ ID NO:93)、miR-412-3p(SEQ ID NO:94)、miR-412-5p(SEQ ID NO:95)、miR-422a(SEQ ID NO:96)、miR-449a](SEQ ID NO:]97)、miR-449b-3p(SEQ ID NO:]98)、miR-449b-5p](SEQ ID NO:]99)、miR-449c-3p](SEQ ID NO:]100)、miR-449c-5p](SEQ ID NO:]101)、miR-485-3p](SEQ ID NO:]102)、miR-509-3p](SEQ ID NO:]103)、miR-509-5p](SEQ ID NO:]104)、miR-509-3-5p](SEQ ID NO:]105)、miR-617](SEQ ID NO:]106)、miR-625-3p](SEQ ID NO:]107)、miR-625-5p](SEQ ID NO:]108)、miR-765](SEQ ID NO:]109)、またはmiR-768-5pを含む。いくつかの場合では、核酸ポリマーは、let-7b-3p(SEQ ID NO13)、let-7b-5p(SEQ ID NO:]14)、miR-1-3p(SEQ ID NO:15)、miR-1-5p(SEQ ID NO:16)、miR-9-3p(SEQ ID NO:17)、miR-9-5p(SEQ ID NO:18)、miR-10a-3p(SEQ ID NO:19)、miR-10a-5p(SEQ ID NO:20)、miR-15a-3p(SEQ ID NO:21)、miR-15a-5p(SEQ ID NO:22)、miR-16-1-3p(SEQ ID NO:23)、miR-16-2-3p(SEQ ID NO:24)、miR-16-5p(SEQ ID NO:25)、miR-17-3p(SEQ ID NO:26)、miR-17-5p(SEQ ID NO:27)、miR-18a-3p(SEQ ID NO:28)、miR-18a-5p(SEQ ID NO:29)、miR-20a-3p(SEQ ID NO:30)、miR-20a-5p(SEQ ID NO:31)、miR-24-3p(SEQ ID NO:32)、miR-24-1-5p(SEQ ID NO:33)、miR-24-2-5p(SEQ ID NO:34)、miR-30e-3p(SEQ ID NO:35)、miR-30e-5p(SEQ ID NO:36)、miR-93-3p(SEQ ID NO:37)、miR-93-5p(SEQ ID NO:38)、miR-103a-3p(SEQ ID NO:39)、miR-103a-2-5p(SEQ ID NO:40)、miR-103b(SEQ ID NO:41)、miR-106a-3p(SEQ ID NO:42)、miR-106a-5p(SEQ ID NO:43)、miR-106b-3p(SEQ ID NO:44)、miR-106b-5p(SEQ ID NO:45)、miR-107(SEQ ID NO:46)、miR-125a-3p(SEQ ID NO:47)、miR-125a-5p(SEQ ID NO:48)、miR-125b-1-3p(SEQ ID NO:49)、miR-125b-2-3p(SEQ ID NO:50)、miR-125b-5p(SEQ ID NO:51)、miR-128-3p(SEQ ID NO:52)、miR-128-1-5p(SEQ ID NO:53)、miR-128-2-5p(SEQ ID NO:54)、miR-133a-3p(SEQ ID NO:55)、miR-133a-5p(SEQ ID NO:56)、miR-133b(SEQ ID NO:57)、miR-141-3p(SEQ ID NO:58)、miR-141-5p(SEQ ID NO:59)、miR-149-3p(SEQ ID NO:60)、miR-149-5p(SEQ ID NO:61)、miR-182-3p(SEQ ID NO:62)、miR-182-5p(SEQ ID NO:63)、miR-188-3p(SEQ ID NO:64)、miR-188-5p(SEQ ID NO:65)、miR-198(SEQ ID NO:66)、miR-200a-3p(SEQ ID NO:67)、miR-200a-5p(SEQ ID NO:68)、miR-200b-3p(SEQ ID NO:69)、miR-200b-5p(SEQ ID NO:70)、miR-204-3p(SEQ ID NO:71)、miR-204-5p(SEQ ID NO:72)、miR-206(SEQ ID NO:73)、miR-221-3p(SEQ ID NO:74)、miR-221-5p(SEQ ID NO:75)、miR-296-3p(SEQ ID NO:76)、miR-296-5p(SEQ ID NO:77)、miR-324-5p(SEQ ID NO:78)、miR-326(SEQ ID NO:79)、miR-330-3p(SEQ ID NO:80)、miR-331-3p(SEQ ID NO:81)、miR-331-5p(SEQ ID NO:82)、miR-340-3p(SEQ ID NO:83)、miR-340-5p(SEQ ID NO:84)、miR-345-3p(SEQ ID NO:85)、miR-345-5p(SEQ ID NO:86)、miR-374a-3p(SEQ ID NO:87)、miR-374a-5p(SEQ ID NO:88)、miR-374b-3p(SEQ ID NO:89)、miR-374b-5p(SEQ ID NO:90)、miR-374c-3p(SEQ ID NO:91)、miR-374c-5p(SEQ ID NO:92)、miR-384(SEQ ID NO:93)、miR-412-3p(SEQ ID NO:94)、miR-412-5p(SEQ ID NO:95)、miR-422a](SEQ ID NO:]96)、miR-449a](SEQ ID NO:]97)、miR-449b-3p](SEQ ID NO:]98)、miR-449b-5p](SEQ ID NO:]99)、miR-449c-3p](SEQ ID NO:]100)、miR-449c-5p](SEQ ID NO:]101)、miR-485-3p](SEQ ID NO:]102)、miR-509-3p](SEQ ID NO:]103)、miR-509-5p](SEQ ID NO:]104)、miR-509-3-5p](SEQ ID NO:]105)、miR-617](SEQ ID NO:]106)、miR-625-3p](SEQ ID NO:]107)、miR-625-5p](SEQ ID NO:]108)、miR-765](SEQ ID NO:]109)、またはmiR-768-5pによって認識される切断したTrkCまたは切断したTrkBの標的配列にハイブリダイズする。いくつかの場合には、核酸ポリマ
ーは、miR-128-3p(SEQ ID NO:52)、miR-128-1-5p(SEQ ID NO:53)、miR-128-2-5p(SEQ ID NO:54)、miR-509-3p(SEQ ID NO:103)、miR-509-5p(SEQ ID NO:104)、miR-509-3-5p(SEQ ID NO:105)、またはmiR-768-5pによって認識される、切断したTrkCまたは切断したTrkBの標的配列にハイブリダイズする。いくつかの場合には、核酸ポリマーは、miR-128-3p(SEQ ID NO:52)、miR-128-1-5p(SEQ ID NO:53)、miR-128-2-5p(SEQ ID NO:54)によって認識される、切断したTrkCまたは切断したTrkBの標的配列にハイブリダイズする。いくつかの場合には、核酸ポリマーは、miR-509-3p(SEQ ID NO:103)、miR-509-5p(SEQ ID NO:104)、miR-509-3-5p(SEQ ID NO:105)によって認識される切断したTrkCまたは切断したTrkBの上の標的配列にハイブリダイズする。いくつかの場合には、核酸ポリマーは、miR-768-5pによって認識される切断したTrkCまたは切断したTrkBの上の標的配列にハイブリダイズする。
【0535】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、最長で100ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、最長で5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、50、55、60、70、80、90、または100ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約10ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約11ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約12ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約13ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約14ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約15ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約16ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約17ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約18ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約19ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約20ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約21ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約22ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約23ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約240ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約25ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約26ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約27ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約28ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約29ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約30ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約31ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約32ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約33ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約34ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約35ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約36ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約37ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約38ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約39ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約40ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約45ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約50ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約55ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約60ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約70ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは約80ヌクレオチドの長さである。
【0536】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、約10~約80ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、約10~約70ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、約10~約60ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、約10~約55ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、約10~約50ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、約10~約45ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、約10~約40ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、約10~約35ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、約10~約30ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、約10~約25ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、約10~約20ヌクレオチドの長さである。
【0537】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)分子、マイクロRNA(miRNA)分子、またはsiRNA分子を含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、二本鎖RNA分子を形成するために補足の核酸ポリマーをさらに含む。
【0538】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーはshRNA分子である。いくつかの実施形態では、shRNA分子は、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。いくつかの例では、shRNA分子は、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有する。いくつかの例では、shRNA分子は、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列に対して100%の配列同一性を有する。いくつかの例では、shRNA分子は、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列から成る。
【0539】
いくつかの実施形態では、shRNA分子は、CCAAUC、CUCCAA、またはACUGUGから選択される結合モチーフを含む標的配列にハイブリダイズし、ここで結合モチーフは、切断したTrkCをコードする配列に位置する。いくつかの例では、標的配列は、切断したTrkC mRNAの3’UTR領域に位置する。
【0540】
いくつかの例では、shRNA分子は、最長で100ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNA分子は、最長で5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、50、55、60、70、80、90、または100のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNAの分子は約10~約80のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNAの分子は約10~約70のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNAの分子は約10~約60のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNAの分子は約10~約55のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNAの分子は約10~約50のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNAの分子は約10~約45のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNAの分子は約10~約40のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNAの分子は約10~約35のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNAの分子は約10~約30のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNAの分子は約10~約25のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、shRNAの分子は約10~約20のヌクレオチドの長さである。
【0541】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される核酸ポリマーは、RNA、DNAまたはその組み合わせを含む。いくつかの例では、核酸ポリマーはRNAポリマーである。いくつかの例では、核酸ポリマーは、ヌクレオシド部分で、リン酸部分で、またはその組み合わせで、さらに修飾される。いくつかの場合では、核酸ポリマーは、1つ以上の人工ヌクレオチド塩基をさらに含む。
【0542】
いくつかの実施形態では、1つ以上の人工ヌクレオチドアナログ塩基は、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、または2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)修飾された、ロックド核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、ペプチド核酸(PNA)、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、モルホリノ、メチルホスホン酸ヌクレオチド、チオールホスホン酸ヌクレオチド、または2’-フルオロ N3-P5’-ホスホラミダイトを含む。
【0543】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、ヌクレオシド部分に修飾を含む。いくつかの例では、修飾はリボース部分の2’水酸基にある。いくつかの例では、修飾は、2’-O-メチル修飾または2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)修飾である。いくつかの例では、2’-O-メチル修飾は、リボース部分の2’水酸基にメチル基を加え、他方で2’O-メトキシエチル修飾はリボース部分の2’水酸基にメトキシエチル基を加える。アデノシン分子の2’-O-メチル修飾とウリジンの2’O-メトキシエチル修飾の典型的な化学構造が以下に例示される。
【0544】
【0545】
いくつかの実施形態では、2’ヒドロキシル基の追加の修飾は、アミン基を2’酸素に結合するプロピルリンカーを含む伸長したアミン基を伴う、2’-O-アミノプロピルの糖構造(sugar conformation)を含む。いくつかの例では、この修飾は、1つの糖当たりアミン基から1つの正電荷を導入することにより、オリゴヌクレオチド分子のリン酸塩由来の全体的な負電荷を中和し、それによって、その両性イオン性により細胞の取り込み特性を改善する。2’-O-アミノプロピルヌクレオシドホスホロアミダイトの典型的な化学構造が以下に例示される。
【0546】
【0547】
いくつかの実施形態では、2’ヒドロキシル基での修飾は、ロックまたは架橋されたリボース構造(例えば、ロックド核酸またはLNA)を含み、ここで4’リボース位置もまた関係する。いくつかの実施形態では、2’炭素で結合された酸素分子は、メチレン基によって4’炭素に結合され、したがって2’-C,4’-C-オキシ-メチレン結合した二環式リボヌクレオチドモノマーが形成される。LNAの化学構造の典型的な表現が以下に例示される。左に示された表現は、LNAモノマーの化学的な結合性を強調する。右に示された表現は、LNAモノマーのフラノース環のロックされた3’-endo(3E)立体構造を強調する。
【0548】
【0549】
いくつかの実施形態では、2’ヒドロキシル基でのさらなる修飾は、糖構造をC3’-endo糖のパッカリング構造(sugar puckering conformation)へとロックする、例えば2’-4’-エチレン架橋した核酸などの、エチレン核酸(ENA)を含む。いくつかの例では、ENAは、LNAをさらに含む修飾された核酸の架橋された核酸クラスの一部である。ENAと架橋された核酸の典型的な化学構造が以下に例示される。
【0550】
【0551】
いくつかの実施形態では、2’ヒドロキシル基でのさらに他の修飾は、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、または2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)を含む。
【0552】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド類似体は、モルホリノ、ペプチド核酸(PNA)、メチルホスホネートヌクレオチド、チオールホスホネートヌクレオチド、2’-フルオロN3-P5’-ホスホラミダイト、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、またはそれらの組み合わせをさらに含む。いくつかの例では、モルホリノあるいはホスホロジアミデートモルホリノオリゴ(PMO)は、その構造が天然の核酸構造を模倣しているが正常な糖とリン酸塩構造からは逸脱している合成分子を含む。代わりに、いくつかの例では5つのメンバーリボース環は、4つの炭素、1つの窒素、および1つの酸素を含む6つのメンバーモルホリノ環で置換される。場合によっては、リボースモノマーは、リン酸基の代わりにホスホロジアミデート基によって結合される。いくつかの場合には、これらの骨格の変化は、正と負の電荷をすべて取り除いて、荷電オリゴヌクレオチドによって使用される薬剤などの細胞送達因子の力を借りることなく、モルホリノ中性分子を細胞膜と架橋することができるようにする。
【0553】
【0554】
いくつかの実施形態では、ペプチド核酸(PNA)は、糖環またはリン酸塩結合を含まない。代わりに、いくつかの例では、塩基はオリゴグリシン様分子によって付着し、かつ適切に間隔を置き、したがって骨格電荷を除去する。
【0555】
【0556】
いくつかの実施形態では、リン酸骨格の修飾は、チオールホスホナートおよびメチルホスホナートのヌクレオチドなどの、メチルまたはチオールの修飾をさらに含む。典型的なチオールホスホネートヌクレオチド(左)およびメチルホスホナートヌクレオチド(右)が、以下に例示される。
【0557】
【0558】
さらに、典型的な2’-フルオロN3-P5’-ホスホラミダイトは、以下に例示される:
【0559】
【0560】
典型的なヘキシトール核酸(または1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA))は、以下に例示される:
【0561】
【0562】
<小分子アンタゴニスト>
いくつかの実施形態では、切断したTrkCまたは切断したTrkBの発現レベルまたは活性の低下を誘発するアンタゴニストは、小分子である。いくつかの実施形態では、小分子アンタゴニストは、切断したTrkCまたは切断したTrkBの結合パートナーとの切断したTrkCまたは切断したTrkBの相互作用を妨害する。
【0563】
いくつかの実施形態では、小分子はペプチド模倣物である。いくつかの場合には、小分子は、
図3に例示されるような小分子である。いくつかの実施形態では、小分子は以下に記載される小分子アンタゴニストである:Brahimi et al.,“A peptidomimetic of NT-3 acts as a TrkC antagonist,”Peptides 30(10):1833-1839(2009);Liu et al.,“Bivalent diketopiperazine-based tropomysin receptor kinase C(TrkC)antagonists,”J.Med.Chem.53(13):5044-5048(2010);Bai et al.,“In glaucoma the upregulated truncated TrkC.T1 receptor isoform in Glia causes increased TNF-α production,leading to retinal ganglion cell death,”Inv.Ophthalm.&Visual Sci.51(12):6639-6651(2010);またはBrahimi et al.,“Combinatorial assembly of small molecules into bivalent antagonists of TrkC or TrkA receptors,”PLOS One 9(3):e89617(2014)。
【0564】
いくつかの実施形態では、小分子アンタゴニストは、切断したTrkCアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、切断したTrkCアンタゴニストは、
図3に例示されるような小分子である。いくつかの実施形態では、切断したTrkCアンタゴニストは、以下に記載されるような小分子である:Brahimi et al.,“A peptidomimetic of NT-3 acts as a TrkC antagonist,”Peptides 30(10):1833-1839(2009);Liu et al.,“Bivalent diketopiperazine-based tropomysin receptor kinase C (TrkC) antagonists,”J.Med.Chem.5044-5048(2010);53(13):Bai et al.,“In glaucoma the upregulated truncated TrkC.T1 receptor isoform in Glia causes increased TNF-α production,leading to retinal ganglion cell death,”Inv.Ophthalm.&Visual Sci.51(12):6639-6651(2010);またはBrahimi et al.,“Combinatorial assembly of small molecules into bivalent antagonists of TrkC or TrkA receptors,”PLOS One9(3):e89617(2014)。
【0565】
いくつかの例では、切断したTrkCは、非触媒性の切断したTrkCである。本明細書に別記されるように、非触媒性の切断したTrkCタンパク質は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の配列同一性を有する。いくつかの例では、切断したTrkCタンパク質はSEQ ID NO:10のアミノ酸配列から成る。いくつかの例では、切断したTrkCはTrkC.T1である。
【0566】
いくつかの実施形態では、切断したTrkBは、非触媒性の切断したTrkBである。本明細書に別記されるように、非触媒性の切断したTrkBタンパク質は、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の配列同一性を有する。いくつかの例では、切断したTrkBタンパク質はSEQ ID NO:12のアミノ酸配列から成る。いくつかの例では、切断したTrkBはTrkB.T1である。
【0567】
いくつかの実施形態では、切断したTrkC結合パートナーは、神経栄養因子またはマイクロRNA分子を含む。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、ニューロトロフィン-3(NT-3)である。いくつかの実施形態では、マイクロRNA分子は、miR-128、miR-509、またはmiR-768-5pを含む。いくつかの実施形態では、切断したTrkB結合パートナーは、神経栄養因子を含む。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、またはニューロトロフィン-4(NT-4)である。
【0568】
<ポリペプチドアンタゴニスト>
いくつかの実施形態では、切断したTrkCまたは切断したTrkBの発現レベルまたは活性の低下を誘発するアンタゴニストは、ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドアンタゴニストは、抗体またはその結合フラグメントである。いくつかの例では、抗体またはその結合フラグメントは、ヒト化抗体またはその結合フラグメント、キメラ抗体またはその結合フラグメント、モノクローナル抗体またはその結合フラグメント、直鎖抗体(linear antibody)、一本鎖抗体、二特異性抗体、抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体、タンデム抗体、ベニア抗体(veneered antibody)、一価Fab’、二価Fab2、一本鎖可変フラグメント(scFv)、二重特異性抗体、ミニボディ(minibody)、それの単一ドメインの抗体(sdAb)、rIgGフラグメント、またはラクダ抗体またはその結合フラグメントを含む。
【0569】
いくつかの実施形態では、抗体またはその結合フラグメントは、切断したTrkCまたは切断したTrkBのエピトープの1つ以上を認識する。いくつかの実施形態では、切断したTrkCのエピトープは、切断したTrkCの細胞外ドメイン内の領域を含む。いくつかの例では、切断したTrkCの細胞外ドメインは、ロイシンリッチリピート領域およびリガンド相互作用に関係するIg様ドメインを含む。いくつかの例では、切断したTrkCの細胞外ドメイン内のエピトープ領域は、1つ以上のシステイン残基を含む。いくつかの例では、切断したTrkCの細胞外ドメイン内のエピトープ領域は、ジスルフィド結合を形成することができる1つ以上のシステイン残基を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその結合フラグメントは、システイン残基の1つ以上を含むエピトープの1つ以上を認識する。
【0570】
いくつかの実施形態では、切断したTrkBのエピトープは、切断したTrkBの細胞外ドメイン内の領域を含む。いくつかの例では、切断したTrkBの細胞外ドメインは、ロイシンリッチリピート領域およびリガンド相互作用に関係するIg様ドメインを含む。いくつかの例では、切断したTrkBの細胞外ドメイン内のエピトープ領域は、1つ以上のシステイン残基を含む。いくつかの例では、切断したTrkBの細胞外ドメイン内のエピトープ領域は、ジスルフィド結合を形成することができる1つ以上のシステイン残基を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその結合フラグメントは、システイン残基の1つ以上を含むエピトープの1つ以上を認識する。
【0571】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドアンタゴニストは、切断したTrkCまたは切断したTrkBのエピトープの1つ以上を認識する抗体またはその結合フラグメントを含む。いくつかの例では、ポリペプチドアンタゴニストは、システイン残基の1つ以上を含む切断したTrkCまたは切断したTrkBのいずれかの細胞外ドメインからのエピトープの1つ以上を認識する抗体または結合フラグメントを含む。
【0572】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドアンタゴニストは、完全長TrkCまたは完全長TrkBのエピトープの1つ以上ではなく、切断したTrkCまたは切断したTrkBのエピトープの1つ以上を認識する抗体または結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドアンタゴニストは、完全長TrkCまたは完全長TrkBの細胞外ドメインからのエピトープの1つ以上ではなく、切断したTrkCまたは切断したTrkBの細胞外ドメインからのエピトープの1つ以上を認識する抗体または結合フラグメントを含む。
【0573】
いくつかの例では、切断したTrkCは、非触媒性の切断したTrkCである。本明細書に別記されるように、非触媒性の切断したTrkCタンパク質は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の配列同一性を有する。いくつかの例では、切断したTrkCタンパク質はSEQ ID NO:10のアミノ酸配列から成る。いくつかの例では、切断したTrkCはTrkC.T1である。
【0574】
いくつかの実施形態では、切断したTrkBは、非触媒性の切断したTrkBである。本明細書に別記されるように、非触媒性の切断したTrkBタンパク質は、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の配列同一性を有する。いくつかの例では、切断したTrkBタンパク質はSEQ ID NO:12のアミノ酸配列から成る。いくつかの例では、切断したTrkBはTrkB.T1である。
【0575】
<切断したTrkCまたは切断したTrkBのアンタゴニスト送達>
いくつかの実施形態では、切断したTrkCまたは切断したTrkBアンタゴニストの医薬組成物または製剤はベクターを含み、該ベクターは、本明細書に記載の核酸ポリマーを1つ以上含み、または本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体またはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、抗体またはその結合フラグメントは、ヒト化抗体またはその結合フラグメント、キメラ抗体またはその結合フラグメント、モノクローナル抗体またはその結合フラグメント、一価Fab’、二価Fab2、一本鎖可変フラグメント(scFv)、二重特異性抗体、ミニボディ(minibody)、単一ドメイン抗体(sdAb)、またはラクダ抗体またはその結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。
【0576】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、DNAまたはRNAウイルスなどの任意のウイルスから得られる。いくつかの実施形態では、DNAウイルスは、単鎖(ss)のDNAウイルス、二本鎖(ds)のDNAウイルス、またはssとdsのDNA領域の両方を含むDNAウイルスである。いくつかの実施形態では、RNAウイルスは、単鎖(ss)のRNAウイルス、または二本鎖(ds)のRNAウイルスである。いくつかの実施形態では、ssRNAウイルスは、プラス鎖RNAウイルスまたはマイナス鎖RNAウイルスにさらに分類される。
【0577】
いくつかの例では、ウイルスベクターは、以下のファミリーのdsDNAウイルスから得られる:ミオウイルス科、ポドウイルス科、シホウイルス科、アロヘルペスウイルス科、ヘルペスウイルス科、マラコヘルペスウイルス科、リポスリクスウイルス科、ルディウイルス科、アデノウイルス科、アムプラウイルス科(Ampullaviridae)、アスコウイルス科、アスファウイルス科、バキュロウイルス科、ビカウダウイルス科(Bicaudaviridae)、クラバウイルス科(Clavaviridae)、コルチコウイルス科、フセロウイルス科、グロブロウイルス科(Globuloviridae)、グッタウイルス科、ヒトロサウイルス科(Hytrosaviridae)、イリドウイルス科、マルセイユウイルス科(Marseilleviridae)、ミミウイルス科、ニマウイルス科(Nimaviridae)、パンドラウイルス科、パピローマウイルス科、フィコドナウイルス科、プラズマウイルス科、ポリドナウイルス科、ポリオーマウイルス科、ポックスウイルス科、スファエロリポウイルス科(Sphaerolipoviridae)、およびテクティウイルス科。
【0578】
ある場合には、ウイルスベクターは、以下のファミリーのssDNAウイルスから得られる:アネロウイルス科、バシラリオドナウイルス科(Bacillariodnaviridae)、ビドナウイルス科(Bidnaviridae)、サーコウイルス科(Circoviridae)、ジェミニウイルス科(Geminiviridae)、イノウイルス科、ミクロウイルス科、ナノウイルス科(Nanoviridae)、パルボウイルス科、およびスピノウイルス科(Spiraviridae)。
【0579】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、ssおよびdsのDNA領域の両方を含むDNAウイルスから得られる。いくつかの場合には、DNAウイルスはプレオリポウイルス(pleolipoviruses)属に由来する。いくつかの場合には、プレオリポウイルスには、ハロアーキュラ・ヒスパニカ(Haloarcula hispanica)多形性ウイル1ス、ハロゲオメトリクム属(Halogeometricum)多形性ウイルス1、ハロラブラム属(Halorubrum)多形性ウイルス1、ハロラブラム属多形性ウイルス2、ハロラブラム属多形性ウイルス3、およびハロラブラム属多形性ウイルス6が含まれる。
【0580】
いくつかの場合には、ウイルスベクターは、以下のファミリーのdsRNAウイルスから得られる:ビルナウイルス科(Birnaviridae)、クリソウイルス科(Chrysoviridae)、シストウイルス科、エンドルナウイルス科(Endornaviridae)、ハイポウイルス科(Hypoviridae)、メガビルナウイルス科(Megavirnaviridae)、パルティティウイルス科(Partitiviridae)、ピコビルナウイルス科(Picobirnaviridae)、レオウイルス科、ロタウイルス科およびトティウイルス科(Totiviridae)。
【0581】
いくつかの場合には、ウイルスベクターは、以下のファミリーのプラス鎖ssRNAウイルスから得られる:アルファフレキシウイルス科(Alphaflexiviridae)、アルファテトラウイルス科(Alphatetraviridae)、アルベルナウイルス科(Alvernaviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、アストロウイルス科(Astroviridae)、バルナウイルス科(Barnaviridae)、ベータフレキシウイルス科(Betaflexiviridae)、プロモウイルス科(Bromoviridae)、カリチウイルス科(Caliciviridae)、カルモテトラウイルス科(Carmotetraviridae)、クロステロウイルス科(Closteroviridae)、コロナウイルス科、ジシストロウイルス科(Dicistroviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ガンマフレキシウイルス科(Gammaflexiviridae)、イフラウイルス科(Iflaviridae)、レヴィウイルス科、ルテオウイルス科(Luteoviridae)、マルナウイルス科(Marnaviridae)、メソニウイルス科(Mesoniviridae)、ナルナウイルス科(Narnaviridae)、ノダウイルス科(Nodaviridae)、ペルムトテトラウイルス科(Permutotetraviridae)、ピコルナウイルス科、ポチウイルス科(Potyviridae)、ロニウイルス科(Roniviridae)、セコウイルス科(Secoviridae)、トガウイルス科、トンブスウイルス科(Tombusviridae)、ティモウイルス科(Tymoviridae)、およびビルガウイルス科(Virgaviridae)。
【0582】
いくつかの場合には、ウイルスベクターは、以下のファミリーのマイナス鎖ssRNAウイルスから得られる:ボルナウイルス科(Bornaviridae)、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科、ラプドウイルス科、ニアミウイルス科(Nyamiviridae)、アレナウイルス科、ブンヤウイルス、オフィオウイルス科(Ophioviridae)、およびオルソミクソウイルス科。
【0583】
いくつかの例では、ウイルスベクターは、正二十面体または複合体であるカプシド対称性を含む腫瘍溶解性DNAウイルスから得られる。場合によっては、正二十面体の腫瘍溶解性DNAウイルスは裸である、またはエンベロープを含む。腫瘍溶解性DNAウイルスの典型的なファミリーとして、アデノウイルス科(例えばゲノムサイズが36~38kbのアデノウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えばゲノムサイズが120~200kbのHSV1)、およびポックスウイルス科(例えばゲノムサイズが130~280kbのワクシニアウイルスおよびミキソーマウイルス)が含まれる。
【0584】
いくつかの場合には、ウイルスベクターは、腫瘍溶解性RNAウイルスから得られ、二十面体かまたは螺旋状のカプシド対称性を有するものが含まれる。いくつかの場合には、二十面体の腫瘍溶解性ウイルスは、エンベロープなしの裸であり、およびレオウイルス科(例えば22~27kbのゲノムがあるレオウイルス)およびピコルナウイルス科(例えばゲノムサイズが7.2~8.4kbのポリオウイルス)を含む。他の例では、螺旋状の腫瘍溶解性RNAウイルスは包まれており、およびラプドウイルス科(例えばゲノムサイズが13~16kbのVSV)およびパラミクソウイルス科(例えばゲノムサイズが16~20kbのmVおよびNDV)を含む。
【0585】
典型的なウイルスベクターとして、限定されないが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、アルファウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、またはキメラ型ウイルスベクターがあげられる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターはpLKO.1ベクターである。
【0586】
いくつかの例では、核酸ポリマーの1つ以上を含むウイルスまたは本明細書に記載のポリペプチドは、当該技術において周知の方法を使用して生成される。いくつかの例では、該方法は、1つ以上のトランスフェクション工程と1つ以上の感染工程を含む。いくつかの例では、哺乳動物細胞株、昆虫細胞株または植物細胞株などの細胞株は、ウイルスに感染し、1つ以上のウイルスを産生する。典型的な哺乳動物細胞株として以下があげられる:293A細胞株、293FT細胞株、293F細胞、293H細胞、CHO DG44細胞、CHO-S細胞、CHO-K1細胞、Expi293F(商標)細胞、Flp-In(商標)T-REx(商標)293細胞株、Flp-In(商標)-293細胞株、Flp-In(商標)-3T3細胞株、Flp-In(商標)-BHK細胞株、Flp-In(商標)-CHO細胞株、Flp-In(商標)-CV-1細胞株、Flp-In(商標)-Jurkat細胞株、FreeStyle(商標)293Fの細胞、FreeStyle(商標)CHO-S細胞、GripTite(商標)293 MSR細胞株、GS-CHO細胞株、HepaRG(商標)細胞、T-REx(商標)Jurkat細胞株、Per.C6細胞、T-REx(商標)-293細胞株、T-REx(商標)-CHO細胞株、T-REx(商標)-ヒーラー細胞株、3T6、A549、A9、AtT-20、BALB/3T3、BHK-21、BHL-100、BT、Caco-2、Chang、Clone 9、Clone M-3、COS-1、COS-3、COS-7、CRFK、CV-1、D-17、Daudi、GH1、GH3、H9、HaK、HCT-15、HEp-2、HL-60、HT-1080、HT-29、HUVEC、I-10、IM-9、JEG-2、HCT-15、HEp-2、HL-60、HT-1080、HT-29、HUVEC、I-10、IM-9、JEG-2、Jensen、K-562、KB、KG-1、L2、LLC-WRC 256、McCoy、MCF7、VERO、WI-38、WISH、XC、またはY-1。典型的な昆虫細胞株として、ショウジョウバエS2細胞、Sf9細胞、Sf21細胞、High Five(商標)、またはexpresSF+(登録商標)細胞があげられる。典型的な植物細胞株として、例えばPhaeocystis pouchetiiなどの藻類細胞があげられる。
【0587】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーまたは本明細書に記載のポリペプチドの1つ以上を含むベクターは、電気穿孔、化学的手法、マイクロインジェクション、遺伝子銃、インペールフェクション(impalefection)、流体力学ベースの送達(hydrodynamics-based delivery)、持続性の注入、または超音波処理によって送達される。いくつかの実施形態では、化学的手法はリポフェクションである。
【0588】
いくつかの実施形態では、電気穿孔は、細胞内への化学物質、薬物またはDNAの導入を可能にする細胞膜の透過性を高めるために、細胞に電場を適用する技術である。
【0589】
いくつかの実施形態では、化学的手法は、細胞膜バリアに打ち勝つために担体分子を使用するトランスフェクションの手法である。いくつかの例では、化学的手法は、リポソームを使用して遺伝物質を細胞に注入するリポフェクションである。
【0590】
いくつかの実施形態では、マイクロインジェクションは、針を介した動物細胞、組織または胚への遺伝物質の注入である。
【0591】
いくつかの実施形態では、遺伝子銃は、プラスミドDNAでコーティングされた重金属の素粒子と共に発射することにより、遺伝子情報を細胞に注入する装置である。
【0592】
いくつかの実施形態では、インペールフェクションは、ナノ物質を使用した遺伝子送達の方法である。
【0593】
いくつかの実施形態では、流体力学ベースの送達は、細胞内への物質送達を可能にする透過性を高めるための、比較的大量の溶液の血管への迅速な注入である。いくつかの例では、溶液はタンパク質、オリゴヌクレオチド、DNA、RNAまたは小分子を含む。
【0594】
いくつかの実施形態では、持続性の注入は、薬物、流体または栄養素の血管への連続した投与である。
【0595】
いくつかの実施形態では、超音波処理は、限定されないが生体物質の途絶または非活性化、またはDNA分子の断片化などの目的のために、サンプル中の粒子を撹拌するための音響エネルギーの適用である。
【0596】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、筋肉内注射、中耳内注射、静脈内注射または皮下注射などの注入で送達され、電気穿孔、化学的手法、マイクロインジェクション、遺伝子銃、インペールフェクション、流体力学ベースの送達、持続性の注入、または超音波処理などのウイルス送達法または非ウイルス送達法は必要ない。いくつかの例では、上記のベクターは、筋肉内注射、中耳内注射、静脈内注射または皮下注射などの注入で送達され、電気穿孔、化学的手法、マイクロインジェクション、遺伝子銃、インペールフェクション、流体力学ベースの送達、持続性の注入、または超音波処理などのウイルス送達法または非ウイルス送達法は必要ない。
【0597】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーおよび/または上記のベクターは、送達媒介物をさらに含む。いくつかの例では、送達媒介物は脂質ベースのナノ粒子;ペプチド(CPP)に浸透するカチオン細胞;または、線状あるいは分岐したカチオンポリマー;または、コレステロール、胆汁酸、脂質、ペプチド、ポリマー、タンパク質あるいはアプタマーなどの生体共役反応により形成された物質であり、細胞内送達のために核酸ポリマーまたは本明細書に記載のポリペプチドに共益反応した物質を含む。いくつかの例では、さらなる送達媒介物として、糖重合体、炭水化物ポリマー、またはカチオン脂質あるいはカチオン脂質ポリマーなどの脂質ポリマーが含まれる。
【0598】
<非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニスト>
本明細書に記載される耳用の製剤と組成物と共に使用するために熟慮されるのは、TrkBまたはTrkCの受容体に対する非天然のアゴニストである。いくつかの実施形態では、TrkBまたはTrkCの受容体に対する適切な非天然のアゴニストは、抗体、その結合フラグメント、変異体、および誘導体を含む。いくつかの実施形態では、TrkBまたはTrkCの受容体に対する適切な非天然のアゴニストは、神経栄養因子の化学的に修飾された類似体を含む。いくつかの実施形態では、TrkBまたはTrkCの受容体に対する適切な非天然のアゴニストは、抗体と自然発生した神経栄養因子のキメラを含む。いくつかの実施形態では、TrkBまたはTrkCの受容体に対する適切な非天然のアゴニストは、抗体と化学的に修飾された神経栄養因子の類似体のキメラを含む。
【0599】
<TrkB受容体アゴニスト抗体>
TrkBは脳内に最も広く分布するニューロトロフィン受容体の1つであり、その発現は、新皮質、海馬、線条体および脳幹等の領域において高い。それは、細胞外リガンドの結合領域、膜貫通領域、および細胞内チロシンキナーゼドメインから成る多重ドメイン膜貫通型タンパク質である。TrkBへのBDNF結合は、TrkBの自己リン酸化、続いて、細胞外シグナルで調節されたキナーゼ[分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)]、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ/Akt、ホスホリパーゼC-γ、およびそれらの下流の標的を含むいくつかのメディエータキナーゼのリン酸化を誘発する。
【0600】
いくつかの実施形態では、耳用組成物は非天然のTrkBアゴニストを含む。いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは、アゴニスト抗体、そのフラグメント、変異体、および誘導体を含む。いくつかの実施形態では、適切なアゴニスト抗体は、TrkBに選択的であり、および自然発生のNT4とBDNFポリペプチドに類似するまたはそれらより高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは、抗体1D7、TAM-163、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6または29D7である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは抗体7F5、17D11または11E1である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは、TrkB受容体のドメイン1とドメイン4に結合する。いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは、抗体1D7である。いくつかの実施形態では、抗体1D7はTrkB受容体に結合するが、神経栄養因子受容体p75NTRには結合しない。いくつかの実施形態では、抗体1D7の結合エピトープは、TrkB受容体のドメイン1とドメイン4に位置する。いくつかの実施形態では、抗体1D7は、自然発生の神経分化誘導物質BDNFによって認識されるエピトープと重複しないTrkB受容体上のTrkBエピトープを認識する。
【0601】
いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは、抗体29D7である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは抗体TAM-163である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは、抗体38B8である。いくつかの実施形態では、38B8抗体は、米国特許第20100086997号(出願番号第12/519743号)に記載されるように、ATCC寄託番号PTA-8766に寄託されたハイブリドーマ株によって生成される。いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは、アゴニスト抗体38B8の相補性決定領域(CDR)を含む抗体フラグメントである。いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは、ATCC寄託番号PTA-8766に寄託されたハイブリドーマ株によって生成された抗体の相補性決定領域(CDR)を含む抗体フラグメントである。
【0602】
いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは、TrkB受容体に選択的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは、TrkAまたはTrkCの受容体に結合しない抗体である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkBアゴニストは、神経栄養因子受容体p75NTRに結合しない抗体である。
【0603】
いくつかの実施形態では、TrkB受容体への非天然のTrkBアゴニストの結合は、リン酸化TrkB、リン酸化MAPK、リン酸化Akt、リン酸化ERK1/2、リン酸化ホスホリパーゼC-γのレベルの増加をもたらす。いくつかの実施形態では、TrkB受容体への非天然のTrkBアゴニストの結合は、神経生存の改善につながる。いくつかの実施形態では、TrkB受容体に結合する非天然のTrkBアゴニストを含む耳用組成物の投与は、神経生存の改善につながり、耳の疾病を処置または予防する。いくつかの実施形態では、TrkB受容体に結合する非天然のTrkBアゴニストを含む耳用組成物の投与は、神経生存の改善につながり、求心性知覚繊維の再連結およびリボンシナプスの修復を必要とする耳の疾病を処置または予防する。いくつかの実施形態では、TrkB受容体に結合する非天然のTrkBアゴニストを含む耳用組成物の投与は、老人性難聴(加齢性難聴)を処置または予防する。いくつかの実施形態では、TrkB受容体に結合する非天然のTrkBアゴニストを含む耳用組成物の投与は、神経生存の改善につながり、感音難聴を処置する。
【0604】
<TrkB受容体アゴニスト化合物>
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物はTrkBアゴニスト化合物を含む。
【0605】
いくつかの実施形態では、TrkBアゴニストは、7,8-ジヒドロキシフラボン、7,8,3’-トリヒドロキシフラボン、4’-ジメチルアミノ-7,8-ジヒドロキシフラボン、デオキシゲズニン、LM-22A4、TDP6、3,7-ジヒドロキシフラボン、3,7,8,2’-テトラヒドロキシフラボン、4’-ジメチルアミノ-7,8-ジヒドロキシフラボン、5,7,8-トリヒドロキシフラボン、7,3’-ジヒドロキシフラボン、7,8,2’-トリヒドロキシフラボン、N,N’,N’’トリス(2-ヒドロキシ-エチル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド、N-[2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル]-2-オキソ-3-ピペリジンカルボキサミド、N-アセチルセロトニン、およびアミトリプチリンから成る群から選択される化合物である。いくつかの実施形態では、TrkB受容体に結合するTrkBアゴニスト化合物を含む耳用の製剤または組成物の投与は、神経生存の改善につながり、耳の疾病を処置または予防する。いくつかの実施形態では、TrkB受容体に結合するTrkBアゴニスト化合物を含む耳用の製剤または組成物の投与は、神経生存の改善につながり、リボンシナプスの修復を必要とする耳の疾病を処置または予防する。いくつかの実施形態では、TrkB受容体に結合するTrkBアゴニスト化合物を含む耳用の製剤または組成物の投与は、老人性難聴(加齢性難聴)を処置または予防する。いくつかの実施形態では、TrkB受容体に結合するTrkBアゴニスト化合物を含む耳用の製剤または組成物の投与は、神経生存の改善につながり、感音難聴を処置する。
【0606】
<TrkC受容体アゴニスト抗体>
TrkCは、メディエーター、phospho-AKT、phospho-Erk、およびphospho-PLC-γを活性化する、「正の」シグナル伝達カスケードを引き起こす固有のチロシンキナーゼ触媒活性を有する膜受容体である。内耳では、TrkC受容体の活性化は、進行の間に感覚神経およびそれらの求心性繊維の成長を促進し、内耳機能にとって重要であるリボンシナプスを介する有毛細胞との適切な連結を確立する助けとなる。成人の騒音外傷後に、TrkC受容体活性化は、リボンシナプスの求心性繊維の成長および再確立を回復させる。
【0607】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、非天然のTrkCアゴニストを含む。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、アゴニスト抗体、そのフラグメント、変異体、および誘導体を含む。いくつかの実施形態では、適切なアゴニスト抗体は、TrkCに選択的であり、自然発生の神経栄養因子NT3に類似する、またはより高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkC受容体に選択的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkAまたはTrkBの受容体に結合しない抗体である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、神経栄養因子受容体p75NTRに結合しない抗体である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、完全長のTrkC受容体に結合する。いくつかの例では、非天然のTrkCアゴニストは、切断したTrkC受容体、TrkC.T1に結合しない。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは小分子である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、切断したTrkC受容体、TrkC.T1に結合しない小分子である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、完全長のTrkC受容体のみに結合する小分子である。
【0608】
いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、抗体2B7、A5、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2248、2250、2253、または2256である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、抗体A5または抗体2B7である。
【0609】
いくつかの実施形態では、米国特許公開第20140004119号(出願第13/820715号)に記載されるように、非天然のTrkCアゴニストは抗体2B7である。いくつかの実施形態では、2B7抗体は完全長のTrkCに結合する。いくつかの実施形態では、2B7抗体は、切断したTrkC受容体、TrkC.T1に結合しない。いくつかの実施形態では、2B7抗体は、ヒトTrkCの膜近傍領域近くの1つ以上の特異的なエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、2B7抗体は、ヒト、ラットまたはマウスのTrkCの膜貫通ドメインとD5ドメインとの間の領域に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、2B7抗体の結合エピトープは、TrkCの、配列ESTDNFILFDEVSPTPPI(SEQ ID NO.110)である。いくつかの実施形態では、2B7抗体は、TrkA、TrkB、またはp75NTRに結合しない。いくつかの実施形態では、抗体2B7は、モノクローナル抗体と同じエピトープに特異的に結合する、ATCC特許寄託指定090310-02を有しているハイブリドーマ、そのフラグメント、部分、変異体または誘導体によって生成される。いくつかの実施形態では、2B7抗体は、ATCC特許寄託指定090310-02を有しているハイブリドーマによって生成された抗体の相補性決定領域(CDR)および/または超可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ATCC特許寄託指定090310-02を有しているハイブリドーマまたはその抗原結合性フラグメント、部分、変異体または誘導体によって生成されたモノクローナル抗体は、ヒト化、ベニア化、またはキメラ型である。
【0610】
いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、A5抗体である。抗体A5は、欧州特許公開第EP2402756号(出願番号第EP 11183081.6号)に記載される抗体A5に対応する。いくつかの実施形態では、A5抗体は、TrkC受容体に結合する。いくつかの実施形態では、A5抗体は、TrkC受容体の1つ以上の結合エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、A5抗体は、ATCC NO.PTA-5682の寄託番号を有する宿主細胞によって生成されるポリヌクレオチドによってコードされる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、A5抗体は、ATCC NO.PTA-5683の寄託番号を有する宿主細胞によって生成されるポリヌクレオチドによってコードされる重鎖を含む。いくつかの実施形態では、A5抗体は、(a)抗体A5;(b)抗体A5のフラグメントまたは領域;(c)抗体A5の軽鎖(SEQ ID NO.8);(c)抗体A5の重鎖(SEQ ID NO.9);(d)抗体A5の軽鎖および/または重鎖からの1つ以上の可変領域;(e)抗体A5の1つ以上のCDR(1、2、3、4、5または6のCDR)、および(f)(b)から(e)のいずれか1つを含む抗体、を含む。いくつかの実施形態では、A5抗体は、(e)から(a)のいずれか1つ以上の抗体である。いくつかの実施形態では、A5抗体は、以下の突然変異を含むヒト重鎖IgG2a定常領域をさらに含む:A330P331からS330S331(野性型IgG2a配列に関連するアミノ酸No.;Eur.J.Immunol.(1999)29:2613-2624を参照);およびヒト軽鎖κ定常領域をさらに含む。
【0611】
いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)および2344(PTA-2144)から成る群から選択されるヒト抗体である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)および2256(PTA-2152)から成る群から選択されるマウス抗体である。抗体6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)、2344(PTA-2144)、2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)、および2256(PTA-2152)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7384632号に記載される抗体6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)、2344(PTA-2144)、2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)、および2256(PTA-2152)に対応する。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkC受容体のD5ドメインのエピトープを認識して結合する、6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)、2344(PTA-2144)、2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)、および2256(PTA-2152)から成る群から選択されるヒトまたはマウスの抗体である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkAまたはTrkBの受容体のいかなるエピトープも認識せず、および結合しない、6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)、2344(PTA-2144)、2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)、および2256(PTA-2152)から成る群から選択されるヒトまたはマウスの抗体である。いくつかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkC受容体のD5およびD4ドメインのエピトープを認識して結合する、6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)、2344(PTA-2144)、2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)、および2256(PTA-2152)から成る群から選択されるヒトまたはマウスの抗体である。
【0612】
いくつかの実施形態では、表1に概説されるように、本明細書に記載される抗体は、ハイブリドーマ株によって生成される。
【0613】
【0614】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体は、表2にリストされるようなアミノ酸配列を有している。
【0615】
【0616】
<神経栄養因子>
いくつかの実施形態では、TrkBまたはTrkCアゴニストは神経栄養因子である。いくつかの実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストは、TrkB受容体に選択的に結合する神経栄養因子である。いくつかの実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストは、TrkAまたはTrkCの受容体に結合しない神経栄養因子である。いくつかの実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストは、神経栄養因子受容体p75NTRに結合しない神経栄養因子である。いくつかの実施形態では、TrkBアゴニストは、神経栄養因子受容体p75NTRに結合しない神経栄養因子である。
【0617】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、組織および/またはニューロン、およびそれらのプロセスと結合、および/または耳の有毛細胞の成長を促進する薬剤である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、ニューロンとそのプロセスおよび結合の生存、および耳の有毛細胞の生存、および/またはニューロンの成長とそのプロセスおよび結合、および耳の有毛細胞の成長を促進する因子である。いくつかの実施形態では、耳の有毛細胞の生存を促進する神経栄養因子は、成長因子である。いくつかの実施形態では、成長因子は神経栄養性である。特定の例では、神経栄養因子は、細胞死を予防する、細胞損傷を予防する、損傷したニューロンおよびそのプロセスと結合および耳の有毛細胞を修復する、および/または前駆細胞における分化を誘発する成長因子である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、および/またはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、成長因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PGF)、および/またはそれらのアゴニストである。いくつかの実施形態では、成長因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、インスリン様成長因子(IGF)受容体、上皮成長因子(EGF)受容体、および/または血小板由来成長因子のアゴニストである。いくつかの実施形態では、成長因子は肝細胞増殖因子である。
【0618】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はBDNFである。いくつかの実施形態では、神経栄養因子はGDNFである。特定の例では、BDNFおよびGDNFは、損傷した細胞を修復する、ROSの産生を阻害する、および/または細胞死を阻害することによって、既存のニューロンおよびそのプロセスと結合(例えばらせん神経節ニューロン)、および耳の有毛細胞の生存を促進する神経栄養因子である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子はさらに、神経および耳の有毛細胞前駆体の分化を促進する。さらに、いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、第VIII脳神経を変性から保護する。いくつかの実施形態では、神経栄養因子BDNFは,線維芽細胞増殖因子とともに投与される。
【0619】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はニューロトロフィン-3である。いくつかの実施形態では、ニューロトロフィン-3は、既存のニューロンおよびそれらのプロセスと結合、および耳の有毛細胞の生存を促進し、神経および耳の有毛細胞前駆体の分化を促進する。さらに、いくつかの実施形態では、ニューロトロフィン-3は、第VIII脳神経を変性から保護する。
【0620】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はCNTFである。いくつかの実施形態では、CNTFは、神経伝達物質の合成および神経突起の成長を促進する。いくつかの実施形態では、CNTFは、BDNFととともに投与される。
【0621】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はGDNFである。さらに、いくつかの実施形態では、外因性のGDNFで処置された細胞は、未処置の細胞よりも外傷後により高い生存率を有する。
【0622】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子は上皮成長因子(EGF)である。いくつかの実施形態では、EGFはヘレグリン(HRG)である。いくつかの実施形態では、HRGは、卵形嚢感覚上皮の増殖を刺激する。いくつかの実施形態では、HRG結合受容体は、前庭および聴覚の感覚上皮に見られる。
【0623】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はインスリン様成長因子(IGF)である。いくつかの実施形態では、IGFはIGF-1である。いくつかの実施形態では、IGF-1はメカセルミンである。いくつかの実施形態では、IGF-1は、アミノグリコシドへの暴露によって誘発された損傷を緩和する。いくつかの実施形態では、IGF-1は、蝸牛神経節細胞の分化および/または成熟を刺激する。
【0624】
いくつかの実施形態では、FGF受容体アゴニストはFGF-2である。いくつかの実施形態では、IGF受容体アゴニストはIGF-1である。FGFとIGFの受容体は共に、卵形嚢上皮を含む細胞に見られる。
【0625】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子は肝細胞増殖因子(HGF)である。いくつかの実施形態では、HGFは、騒音により誘発された損傷から蝸牛有毛細胞を保護し、騒音への暴露で引き起こされたABR閾値変動を低減する。
【0626】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、エリトロポイエチン(EPO)、果粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、インスリン様成長因子(IGF)、ミオスタチン(GDF-8)、血小板由来成長因子(PDGF)、トロンボポイエチン(TPO)、形質転換増殖因子アルファ(TGF-α)、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)またはそれらの組み合わせから選択される。
【0627】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される神経栄養因子は、自然発生の神経栄養因子の化学的に修飾された類似体である。典型的な化学修飾として、限定されないが、非天然のアミノ酸を組み込むことによる、重いアミノ酸を組み込むことによる、D-アミノ酸を組み込むことによる、ビオチン化による、環化による、アシル化による、脱メチル化による、アミド化による、誘導体化による、担体タンパク質への結合による、またはペプチドの分枝による、セリン、トレオニン、またはチロシンの残基でのリン酸化またはスルフリル化があげられる。
【0628】
<ニューロトロフィン突然変異体>
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、非天然のTrk受容体アゴニストを含み、該アゴニストはアミノ酸修飾を含む非天然の神経栄養因子である。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)、ニューロトロフィン-5(NT-5)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、人工神経栄養因子、またはキメラ神経栄養因子に由来する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、最大で1つのアミノ酸修飾、最大で2つのアミノ酸修飾、最大で3つのアミノ酸修飾、最大で4つのアミノ酸修飾、最大で5つのアミノ酸修飾、最大で6つのアミノ酸修飾、最大で7つのアミノ酸修飾、最大で8つのアミノ酸修飾、最大で9つのアミノ酸修飾、最大で10のアミノ酸修飾、または他の適切な数の修飾を含む。
【0629】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非天然の神経栄養因子は、NGFに由来する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、NGFの前駆形態(pro-form)に由来する。いくつかの例では、非天然の神経栄養因子は、NGFの成熟形態に由来する。さらなる例では、非天然の神経栄養因子は、NGFのアイソフォームに由来する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、最大で1つのアミノ酸修飾、最大で2つのアミノ酸修飾、最大で3つのアミノ酸修飾、最大で4つのアミノ酸修飾、最大で5つのアミノ酸修飾、最大で6つのアミノ酸修飾、最大で7つのアミノ酸修飾、最大で8つのアミノ酸修飾、最大で9つのアミノ酸修飾、最大で10のアミノ酸修飾、または他の適切な数の修飾をさらに含む。いくつかの例では、修飾は突然変異である。例えば突然変異は、無極性残基、極性残基、およびと荷電残基の少なくとも1つへの突然変異である。場合によっては、突然変異は、保守的変異、半保守的変異、または非保守的変異である。
【0630】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非天然の神経栄養因子は、ニューロトロフィン-3(NT-3)に由来する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、NT-3の前駆形態(pro-form)に由来する。いくつかの例では、非天然の神経栄養因子は、NT-3の成熟形態に由来する。他の例では、非天然の神経栄養因子は、NT-3のアイソフォームに由来する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、最大で1つのアミノ酸修飾、最大で2つのアミノ酸修飾、最大で3つのアミノ酸修飾、最大で4つのアミノ酸修飾、最大で5つのアミノ酸修飾、最大で6つのアミノ酸修飾、最大で7つのアミノ酸修飾、最大で8つのアミノ酸修飾、最大で9つのアミノ酸修飾、最大で10のアミノ酸修飾、または他の適切な数の修飾をさらに含む。いくつかの例では、修飾は突然変異である。例えば突然変異は、無極性残基、極性残基、およびと荷電残基の少なくとも1つへの突然変異である。場合によっては、突然変異は、保守的変異、半保守的変異、または非保守的変異である。
【0631】
いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、PCT公開番号WO9803546に記載されるようなNT-3(1-119)またはNT-3(1-117)を含む、1つ以上の突然変異を伴う自然発生のニューロトロフィン-3を含む。
【0632】
いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、Urfer,et al.,“The binding epitopes of neurotrophin-3 to its receptors TrkC and gp75 and the design of a multifunctional human neurotrophin,”EMBO 13(24):5896-5909(1994)に記載されるNT-3突然変異体を含む、1つ以上の突然変異を伴う自然発生のニューロトロフィン-3を含む。
【0633】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非天然の神経栄養因子は、ニューロトロフィン-4(NT-4)に由来する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、NT-4の前駆形態(pro-form)に由来する。いくつかの例では、非天然の神経栄養因子は、NT-4の成熟形態に由来する。他の例では、非天然の神経栄養因子は、NT-4のアイソフォームに由来する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、最大で1つのアミノ酸修飾、最大で2つのアミノ酸修飾、最大で3つのアミノ酸修飾、最大で4つのアミノ酸修飾、最大で5つのアミノ酸修飾、最大で6つのアミノ酸修飾、最大で7つのアミノ酸修飾、最大で8つのアミノ酸修飾、最大で9つのアミノ酸修飾、最大で10のアミノ酸修飾、または他の適切な数の修飾をさらに含む。いくつかの例では、修飾は突然変異である。例えば突然変異は、無極性残基、極性残基、およびと荷電残基の少なくとも1つへの突然変異である。場合によっては、突然変異は、保守的変異、半保守的変異、または非保守的変異である。
【0634】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非天然の神経栄養因子は、ニューロトロフィン-5(NT-5)に由来する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、NT-5の前駆形態(pro-form)に由来する。いくつかの例では、非天然の神経栄養因子は、NT-5の成熟形態に由来する。他の例では、非天然の神経栄養因子は、NT-5のアイソフォームに由来する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、最大で1つのアミノ酸修飾、最大で2つのアミノ酸修飾、最大で3つのアミノ酸修飾、最大で4つのアミノ酸修飾、最大で5つのアミノ酸修飾、最大で6つのアミノ酸修飾、最大で7つのアミノ酸修飾、最大で8つのアミノ酸修飾、最大で9つのアミノ酸修飾、最大で10のアミノ酸修飾、または他の適切な数の修飾をさらに含む。いくつかの例では、修飾は突然変異である。例えば突然変異は、無極性残基、極性残基、およびと荷電残基の少なくとも1つへの突然変異である。場合によっては、突然変異は、保守的変異、半保守的変異、または非保守的変異である。
【0635】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非天然の神経栄養因子は、BDNFに由来する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、BDNFの前駆形態(pro-form)に由来する。いくつかの例では、非天然の神経栄養因子は、BDNFの成熟形態に由来する。他の例では、非天然の神経栄養因子は、BDNFのアイソフォームに由来する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、最大で1つのアミノ酸修飾、最大で2つのアミノ酸修飾、最大で3つのアミノ酸修飾、最大で4つのアミノ酸修飾、最大で5つのアミノ酸修飾、最大で6つのアミノ酸修飾、最大で7つのアミノ酸修飾、最大で8つのアミノ酸修飾、最大で9つのアミノ酸修飾、最大で10のアミノ酸修飾、または他の適切な数の修飾をさらに含む。いくつかの例では、修飾は突然変異である。例えば突然変異は、無極性残基、極性残基、およびと荷電残基の少なくとも1つへの突然変異である。場合によっては、突然変異は、保守的変異、半保守的変異、または非保守的変異である。
【0636】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非天然の神経栄養因子は、人工神経栄養因子(PNT)に由来する。いくつかの例では、人工神経栄養因子は、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、および/またはニューロトロフィン-3(NT-3)の1つ以上のドメインを組み合わせることによって操作された合成栄養素である。いくつかの例では、人工神経栄養因子はTrkA、TrkBおよびTrkCの受容体を認識する、またはそれらに結合する。いくつかの例では、人工神経栄養因子は、Ilag,et al.,“Pan-neurotrophin 1:A genetically engineered neurotrophic factor displaying multiple specificities in peripheral neurons in vitro and in vivo,”PNAS 92:607-611(1995)に記載される人工神経栄養因子1(PNT-1)である。場合によっては、人工神経栄養因子は、Ibanez,et al,“An extended surface of binding to Trk tyrosine kinase receptors in NGF and BDNF allows the engineering of a multifunctional pan-neurotrophin,”EMBO 12(6):2281-2293(1993)に記載される人工神経栄養因子である。
【0637】
いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子はPNTを含む。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、最大で1つのアミノ酸修飾、最大で2つのアミノ酸修飾、最大で3つのアミノ酸修飾、最大で4つのアミノ酸修飾、最大で5つのアミノ酸修飾、最大で6つのアミノ酸修飾、最大で7つのアミノ酸修飾、最大で8つのアミノ酸修飾、最大で9つのアミノ酸修飾、最大で10のアミノ酸修飾、または他の適切な数の修飾をさらに含む。いくつかの例では、修飾は突然変異である。例えば突然変異は、無極性残基、極性残基、および荷電残基の少なくとも1つへの突然変異である。場合によっては、突然変異は、保守的変異、半保守的変異、または非保守的変異である。
【0638】
いくつかの例では、本明細書に記載の非天然の神経栄養因子は、キメラ型ニューロトロフィンである。いくつかの例では、キメラ型ニューロトロフィンは2つ以上のTrk受容体を認識する。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子はNGFとBDNFのキメラである。いくつかの場合では、キメラ型神経栄養因子は、例えば、神経成長因子(NGF)の1つ以上のドメインおよび脳由来神経栄養因子(BDNF)の1つ以上のドメインを含む。いくつかの例では、非天然の神経栄養因子は、Ibanez,et al.,“Chimeric molecules with multiple neurotrophic activities reveal structural elements determining the specificities of NGF and BDNF,”EMBO 10(8):2105-2110,1991;Ryden et al.,“Functional analysis of mutant neurotrophins deficient in low-affinity binding reveals a role for p75LNGFR in NT-4 signalling,”EMBO 14(9):1979-1990,1995;および/またはIbanez,et al.,“An extended surface of binding to Trk tyrosine kinase receptors in NGF and BDNF allows the engineering of a multifunctional pan-neurotrophin,”EMBO 12(6):2281-2293,1993に記載される、NGFとBDNFのキメラである。
【0639】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ神経栄養因子は、2つ以上のTrk受容体に結合するニューロトロフィンである。いくつかの実施形態では、キメラ神経栄養因子は2つ以上のTrk受容体に結合し、さらにp75NTRへの結合親和性が低下している。いくつかの実施形態では、キメラ神経栄養因子は2つ以上のTrk受容体に結合するが、p75NTRには結合しない。いくつかの実施形態では、キメラ神経栄養因子はさらに、非キメラ型の神経栄養因子と比較して、神経または非神経の生存、分化、成長、再生、またはそれらの組み合わせが改善していることが特徴である。いくつかの実施形態では、キメラ神経栄養因子は、非キメラ型の神経栄養因子と比較して、結合親和性、有効性、効能、またはそれらの組み合わせが増している。
【0640】
いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子はNGFとBDNFのキメラである。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、最大で1つのアミノ酸修飾、最大で2つのアミノ酸修飾、最大で3つのアミノ酸修飾、最大で4つのアミノ酸修飾、最大で5つのアミノ酸修飾、最大で6つのアミノ酸修飾、最大で7つのアミノ酸修飾、最大で8つのアミノ酸修飾、最大で9つのアミノ酸修飾、最大で10のアミノ酸修飾、または他の適切な数の修飾をさらに含む。いくつかの実施形態では、非天然の神経栄養因子は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、少なくとも2つのアミノ酸修飾、少なくとも3つのアミノ酸修飾、少なくとも4つのアミノ酸修飾、少なくとも5つのアミノ酸修飾、少なくとも6つのアミノ酸修飾、少なくとも7つのアミノ酸修飾、少なくとも8つのアミノ酸修飾、少なくとも9つのアミノ酸修飾、少なくとも10のアミノ酸修飾、または他の適切な数の修飾をさらに含む。いくつかの例では、修飾は突然変異である。例えば突然変異は、無極性残基、極性残基、およびと荷電残基の少なくとも1つへの突然変異である。場合によっては、突然変異は、保守的変異、半保守的変異、または非保守的変異である。
【0641】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される修飾は、天然または非天然のアミノ酸残基への突然変異を含む。例えば、ある場合には、修飾は、代替の天然アミノ酸残基へのアミノ酸残基の突然変異、例えばアラニンへのアルギニンの突然変異を含む。いくつかの例では、修飾は、非天然のアミノ酸残基へのアミノ酸残基の突然変異、例えばセレノ-L-シスチンへのシステインの突然変異を含む。
【0642】
本明細書で使用されるように、アミノ酸残基は、アミノ基およびカルボキシル基の両方を含む分子である。本明細書に記載の非天然の神経栄養因子に使用される適切なアミノ酸は、限定されないが、自然発生のアミノ酸のD-異性体とL-異性体の両方、および有機合成または他の代謝経路によって調製された非自然発生のアミノ酸のD-異性体およびL-異性体の両方を含む。いくつかの例では、アミノ酸はαアミノ酸、βアミノ酸、天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸類似体である。自然発生のアミノ酸は、自然に合成されたペプチドに通常見られ、および1文字の略語A、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、YおよびVで知られている、20のアミノ酸のいずれか1つを含む。
【0643】
いくつかの例では、非天然のアミノ酸残基は、アミノ酸類似体のラセミ混合物を含む。例えば、いくつかの例では、アミノ酸類似体のD異性体を使用する。場合によっては、アミノ酸類似体のL異性体を使用する。いくつかの例では、アミノ酸類似体は、RまたはS配置にあるキラル中心を含む。時として、β-アミノ酸類似体のアミノ基は、保護基、例えば、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC基)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、トシルなどで置換される。しばしば、β-アミノ酸類似体のカルボン酸官能基は、例えば、そのエステル誘導体として保護される。場合によっては、アミノ酸類似体の塩を使用する。
【0644】
いくつかの例では、修飾は、疎水性または非極性のアミノ酸残基への突然変異を含む。場合によっては、疎水性または非極性のアミノ酸は、小さな疎水性アミノ酸と大きな疎水性アミノ酸を含む。典型的な小さな疎水性アミノ酸として、グリシン、アラニン、プロリン、およびそれらの類似体があげられる。典型的な大きな疎水性アミノ酸として、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、およびそれらの類似体があげられる。いくつかの例では、本明細書に記載される非天然の神経栄養因子は、小さな疎水性アミノ酸への突然変異(例えばグリシン、アラニン、プロリン、およびこれらの類似体への突然変異)を含む。いくつかの例では、本明細書に記載される非天然の神経栄養因子は、大きな疎水性アミノ酸への突然変異(例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、およびこれらの類似体への突然変異)を含む。
【0645】
いくつかの例では、修飾は、極性アミノ酸残基への突然変異を含む。場合によっては、極性アミノ酸は、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、チロシン、およびこれらの類似体含む。いくつかの例では、本明細書に記載される非天然の神経栄養因子は、極性のアミノ酸残基への突然変異(例えば、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、チロシン、およびこれらの類似体への突然変異)を含む。
【0646】
いくつかの例では、修飾は、荷電アミノ酸残基への突然変異を含む。場合によっては、荷電アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、あるいはこれらの類似体を含む。いくつかの例では、本明細書に記載される非天然の神経栄養因子は、荷電アミノ酸残基への突然変異(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、あるいはこれらの類似体への突然変異)を含む。
【0647】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される非天然の神経栄養因子は、非必須アミノ酸への修飾を含む。いくつかの例では、非必須アミノ酸残基は、その必須の生物学的または生物化学的な活性(例えば、受容体結合あるいは活性化)を消失させる、または実質的に変化させることなく、ポリペプチドの野生型配列から変化する残基である。場合によっては、本明細書で提供される非天然の神経栄養因子は必須アミノ酸を含む。場合によっては、必須アミノ酸残基は、ポリペプチドの野生型配列から変更されると、ポリペプチドの必須の生物学的または生物化学的な活性を消失させるまたは実質的に消失させる残基である。
【0648】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される非天然の神経栄養因子は、保守的アミノ酸置換を含む。場合によっては、保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基と置換されるアミノ酸置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。こうしたファミリーは、例えば、塩基性側鎖(例えばK、R、H)、酸性側鎖(例えばD、E)、非荷電極性側鎖(例えばG、N、Q、S、T、Y、C)、無極性側鎖(例えばA、V、L、I、P、F、M、W)、ベータ分岐側鎖(例えばT、V、I)、および芳香族側鎖(例えば、Y、F、W、H))を備えたアミノ酸を含む。したがって、ポリペプチドの予測される非必須アミノ酸残基は、例えば、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基と置換される。許容可能な置換の他の例として、等価物の考察(例えばメチオニン用ノルロイシン)または他の特性(例えば、フェニルアラニン用の2-チエニルアラニン、あるいはトリプトファン用の6-Cl-トリプトファン)に基づく置換を含む。
【0649】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される非天然の神経栄養因子は、半保守的アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、半保守的アミノ酸置換は、同じ側鎖ファミリー内のアミノ酸、または側鎖が同様の立体構造(steric confirmation)を共有するアミノ酸の間の置換を含んでいる。
【0650】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される非天然の神経栄養因子は、非保守的アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、非保守的アミノ酸置換は、異なる側鎖ファミリー内のアミノ酸間の置換を含んでいる。
【0651】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される非天然の神経栄養因子は、変異誘発によって導入される修飾を含む。いくつかの実施形態では、変異誘発は無作為である。いくつかの実施形態では、変異誘発は無作為ではない。無作為ではない変異誘発の一例は、部位特異的突然変異誘発である。いくつかの実施形態では、部位特異的突然変異誘発は、カセット突然変異誘発、PCR部位特異的突然変異誘発、全プラスミド突然変異誘発、Kunkel法、またはインビボ部位特異的突然変異誘発法を利用する。いくつかの例では、変異誘発はアラニンスクリーニング突然変異誘発である。
【0652】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される非天然の神経栄養因子は、自然発生の神経栄養因子の化学的に修飾された類似体である。典型的な化学修飾として、限定されないが、セリン、トレオニンまたはチロシン残基におけるリン酸化またはスルフリル化があげられ、これは;非天然のアミノ酸を組み込むことによる;重いアミノ酸を組み込むことによる;D-アミノ酸を組み込むことによる;ビオチン化による;環化による;アシル化による;ジメチル化による;アミド化による;誘導体化による;担体タンパク質への結合による;またはペプチドの分岐による。
【0653】
<WNTモジュレータ>
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤と適合する活性薬剤には、損傷した耳感覚有毛細胞の再成長を調節する薬剤が含まれる。いくつかの例では、WNT経路の調節は、損傷した耳感覚有毛細胞の形態形成および/または再成長を促進する。WNTシグナルタンパク質は、WNT1、WNT2、WNT2B、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11、またはWNT16などの遺伝子によってコードされるタンパク質生成物を含む。いくつかの実施形態では、治療薬は、WNTのモジュレータである。WNT経路のモジュレータとして、限定されないが、2-アミノ-4-[3,4-(メチレンジオキシ)ベンジル-アミノ]-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジン、シグナル分子Cerberusなどがあげられる。いくつかの実施形態では、治療薬は2-アミノ-4-[3,4-(メチレンジオキシ)ベンジル-アミノ]-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジン、シグナル分子Cerberusなどである。
【0654】
<プロテインキナーゼCベータモジュレータ>
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、プロテインキナーゼCベータモジュレータをさらに含む。いくつかの実施形態では、プロテインキナーゼCモジュレータはプロテインキナーゼC活性化因子である。いくつかの実施形態では、プロテインキナーゼC活性化因子はプロテインキナーゼCベータ活性化因子である。プロテインキナーゼC活性化因子の例として、限定されないが、ブリオスタチン-1などのブリオスタチン、およびピコログ(picolog)などのブリオスタチン類似体があげられる。いくつかの実施形態では、プロテインキナーゼC活性化因子はブリオスタチンまたはブリオスタチン類似体である。いくつかの例では、ブリオスタチンまたはブリオスタチン類似体は、DeChristopher,et al.,Oncotarget.(2012)Jan;3(1):58-66、およびSun,M.-K.and Alkon,D.L.CNS Drug Reviews,(2006)12:1-8に記載の化合物のいずれか1つである。いくつかの例では、本明細書に記載されるニューロトロフィンのいずれか1つは、プロテインキナーゼC活性化因子と組み合わせて使用される。使用のために熟考される適切なニューロトロフィンの例として、限定されないがBDNFおよびNT-3があげられる。
【0655】
<他の治療薬>
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、SK2チャネル(カルシウム活性化カリウムチャネル)活性化因子をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、SK2チャネル(カルシウム活性化カリウムチャネル)阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、BKチャネル(カルシウム活性化カリウムチャネル)活性化因子をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、BK2チャネル(カルシウム活性化カリウムチャネル)阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、ドーパミン受容体アゴニストをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、スフィンゴシン-1-リン酸受容体モジュレータをさらに含む。
【0656】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、幹細胞性ドライバー(stemness driver)および分化阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、幹細胞性ドライバーは、Wntアゴニスト、またはWntアゴニスト派生物である。いくつかの実施形態では、幹細胞性ドライバーはBML-284またはSKL2001である。いくつかの実施形態では、分化阻害剤は、Notchアゴニスト、Notchアゴニスト派生物、ヒストン脱アセチル化(HDAC)阻害剤、またはHDAC阻害剤派生物である。いくつかの実施形態では、分化阻害剤は、バルプロ酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、またはツバスタチン(Tubastatin)Aである。いくつかの実施形態では、幹細胞性ドライバーおよび分化阻害剤をさらに含む耳用の製剤または組成物は、慢性の難聴の処置に使用される。
【0657】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、Keyzilen(登録商標)(AM-101)をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、(S)-塩酸ケタミンをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA)受容体アンタゴニストをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物はAM-111をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物はBrimapitideをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、D-JNKI-1(c-Jun N-末端キナーゼ阻害剤1のD立体異性体)、細胞内の輸送体に連結されたJNKストレスキナーゼの阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物はAM-125をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物はベタヒスチンをさらに含む。いくつかの実施形態では、Keyzilen(登録商標)(AM-101)をさらに含む耳用の製剤または組成物は、耳鳴の処置に使用される。いくつかの実施形態では、AM-111をさらに含む耳用の製剤または組成物は、急性の内耳(感音)難聴の処置に使用される。いくつかの実施形態では、AM-125をさらに含む耳用の製剤または組成物は、メニエール病の処置に使用される。いくつかの実施形態において使用される治療薬である追加の化合物の例として、限定されないが、米国特許第8,268,866号、8,507,525号、および米国特許出願公開第2005214338号、2006063802号、2010254907号、および20140017172号に記載されるものがあげられ、これらは参照により組み込まれる。
【0658】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、軸索再生阻害因子(RGMa)阻害剤またはネオゲニンの阻害剤をさらに含む。RGMaは、成長円錐の崩壊を誘発し、および軸索誘導の役割を果たすグリコシルホスファチジルイノシトール-アンカータンパク質である。ネオゲニンは、免疫グロブリンのスーパーファミリーのメンバーであり、およびRGMaの受容体である細胞表面タンパク質である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、ヒストン脱アセチル化(HDAC)阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、ヒストン脱アセチル化(HDAC)阻害剤は、ナトリウム酪酸塩、トリコスタチンA、ヒドロキサム酸、環式のテトラペプチド、トラポキシンB、デプシペプチド、ベンズアミド、求電子性ケトン、ROMIDEPSIN、脂肪族系酸化合物、フェニル酪酸、バルプロ酸、ヒドロキサム酸、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824、パノビノスタット(LBH589)、エンチノスタット(MS275)、C1994、およびモセチノスタット(MGCD0103)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤は、アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン(l-(-D-リボフラノシル)-l,2-ジヒドロピリミジン-2-オン)、プロカインアミド、プロカイン、(-)-エピガロカテキン-没食子酸塩、MG98、ヒドララジン、RG108、またはクロロゲン酸である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、プロテアソーム阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カーフィルゾミブ、NPI-0052、MLN9708、CEP-18770またはONX0912である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物はEZH2/HMT阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、EZH2/HMT阻害剤は、デアザネプラノシンA;GSK J1;GSK126;EPZ005687;E7438;Ell;EPZ-6438;GSK343;BIX-01294、UNC0638、BRD4770、EPZ004777、AZ505、またはPDB 4e47である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、Atoh-1発現を高める化合物をさらに含む。いくつかの実施形態では、Atoh-1発現を高める化合物は、PCT/US2009/033569に開示される化合物である。いくつかの実施形態では、Atoh-1発現を高める化合物は下記式の化合物である:
【0659】
【化14】
式中、置換基はPCT/US2009/033569に記載される通りである。いくつかの実施形態において治療薬として使用される追加の化合物の例として、限定されないがPCT/US2015/028035、PCT/US2011/053868、およびPCT/US2015/043976に開示されるものがあげられ、これらは参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、薬剤性の耳毒性、耳鳴、騒音性難聴、遺伝性難聴、または老人性難聴の処置に使用される。
【0660】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、Notch阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、Notch阻害剤は、4,4,4-トリフルオロ~~((2S)~1-((9-メトキシ-3,3-ジメチル-5-オキソ-2,3,5,6-テトラヒドロ-1H-berizo[fjpyrrolo[l,2-a]azepm-6-イル)arnmo)-l-オキソプロパン-2-イル)ブタンアミドである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、γセクレターゼ阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、γセクレターゼ阻害剤は、LY411575(N-2((2S)-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-ヒドロキシエタノイル)-Nl-((7S)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,d]アゼピン-7-イル)-l-アラニンアミド);RO4929097;DAPT(N-[(3,5-ジフルオロフェニル)アセチル]-L-アラニル-2-フェニル)]グリシン-l,l-ジメチルエチルエステル);L-685458((5S)-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-6-フェニル-(4R)ヒドロキシ-(2R)ベンジルヘキサノイル)-L-レウ-L-phe-アミド);BMS-708163(Avagacestat);BMS-299897(2-[(l R)-l-[[((4-クロロフェニル)スルホニル](2,5-ジフルオロフェニル)アミノ]エチル-5-フルオロベンゼンブタン酸);M-0752;YO-01027;MDL28170(Sigma);LY41 1575(N-2((2S)-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-ヒドロキシエタノイル)-N l-((7S)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,d]アゼピン-7-イル)-l-アラニンアミド);ELN-46719(LY41 1575の、2-ヒドロキシ-吉草酸アミド類似体);PF-03084014((S)-2-((S)-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-3-イルアミノ)-N-(1-(2-メチル-1-(ネオペンチルアミノ)プロパン-2-イル)-1H-イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド);化合物E((2S)-2-{[(3,5-ジフルオロフェニル)アセチル]アミノ}-N-[(3S)-l-メチル-2-オキソ-5-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-l,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロパンアミド;またはSemagacestat(LY450139;(2S)-2-ヒドロキシ-3-メチル-N-(((lS)-l-メチル-2-{[((lS)-3-メチル-2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-3-ベンズアゼピン-l-イル]アミノ}-2-オキソエチル)ブタンアミド))である。いくつかの実施形態では、γセクレターゼ阻害剤は、LY41 1575(N-2((2S)-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-ヒドロキシエタノイル)-Nl1-((7s)(5-メチル-6-0X0-6,7-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,d]アゼピン-7-イル)-l-アラニンアミドである。いくつかの実施形態において治療薬として使用される追加の化合物の例として、限定されないがPCT/US2016/040612およびPCT/US2013/058446に開示されるものがあげられ、これらは参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、聴力損失の処置に使用される。
【0661】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、内耳の感覚細胞の分化を誘発するために、CGF166、Atoh1遺伝子を運ぶアデノウイルスをさらに含む。いくつかの実施形態では、アデノウイルスは、E1、E3、-E4除去5型ヒト血清アデノベクター(Ad5)バックボーンを特色とする、GV11遺伝子送達システムを使用する。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、聴力損失と前庭の機能障害の処置に使用される。
【0662】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物はエブセレンさらに含む。エブセレンは小分子模倣物であり、および、蝸牛の有力な触媒抗酸化酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)の誘導物質である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、SPI-1005、エブセレンの経口製剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、エブセレンとアロプリノールをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、SPI-3005、エブセレンの経口製剤およびアロプリノールをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、siRNA阻害p27Kip1をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、siRNA阻害p27Kip1を含むSPI-5557をさらに含む。いくつかの実施形態では、エブセレンをさらに含む耳用の製剤または組成物は、騒音性難聴(NIHL)、軽度から中程度の聴力損失、またはメニエール病の処置に使用される。いくつかの実施形態では、エブセレンとアロプリノールをさらに含む耳用の製剤または組成物は、化学療法により誘発された耳毒性、またはアミノグリコシドにより誘発された耳毒性の処置に使用される。いくつかの実施形態では、siRNA阻害p27Kip1をさらに含む耳用の製剤または組成物は、高度から重度の聴力損失の処置に使用される。
【0663】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、AF243(dendrogenin)をさらに含む。AF243(dendrogenin)は、下記式のニューロン生存とニューロン分化を引き起こす小さな分子ステロール派生物であり:
【0664】
【化15】
PCT/EP2015/000164に規定される置換基を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、PCT/FR2015/000164に規定される置換基を有する上記式の小分子ステロール派生物をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、6β-[3-(4-アミノブチルアミノ)プロピルアミノ]-コレスタン-1,5a-ジオールをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、6β-[2-(1H-イミダゾール-4-イル―エチルアミノ]-コレスタン-33,5a-ジオールをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、6β-[3-(4-アミノブチルアミノ)プロピルアミノ]-コレスタン-3,5-ジオールをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、6β-[2-(1-イミダゾール-4-イル)-エチルアミノ]-コレスタン-5,5-ジオールをさらに含む。いくつかの実施形態において治療薬として使用される追加の化合物の例として、限定されないがPCT/FR2015/000164に開示されるものがあげられ、これは参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、AF243(dendrogenin)または小分子ステロール派生物をさらに含む耳用の製剤または組成物は、聴力損失の処置に使用される。
【0665】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物はラタノプロストをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、FPプロスタノイド受容体アゴニストをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、プロスタグランジンPGF2α類似体をさらに含む。いくつかの実施形態では、ラタノプロストまたはプロスタグランジンPGF2α類似体をさらに含む耳用の製剤または組成物は、メニエール病および騒音性耳鳴の処置に使用される。いくつかの実施形態において治療薬として使用される追加の化合物の例として、限定されないがPCT/SE2007/050075およびPCT/SE2002/000062に開示されるものがあげられ、これらは参照により組み込まれる。
【0666】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、AC-102などのβ-カルボリンをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、9-メチルl-β-カルボリンをさらに含む。いくつかの実施形態では、β-カルボリンをさらに含む耳用の製剤または組成物は、急性の聴力損失、耳鳴、耳毒性、加齢性難聴の処置に使用される。さらなるβ-カルボリンの例として、限定されないがPCT/EP2014/070840に開示されるものがあげられ、これは参照により組み込まれる。
【0667】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニストをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、ピオグリタゾン(STR001)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ピオグリタゾンをさらに含む耳用の製剤または組成物は、人工内耳手術によって引き起こされた感音難聴(SSHL)、または騒音性難聴の処置に使用される。さらなるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニストの例として、限定されないがPCT/EP2016/052787に開示されるものがあげられ、これは参照により組み込まれる。
【0668】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、WntアゴニストおよびNotch阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、WntアゴニストおよびNotch阻害剤をさらに含む耳用の製剤または組成物は、聴力損失の処置に使用される。WntアゴニストとNotch阻害剤阻害剤の例として、限定されないがProc Natl Acad Sci USA.2012 May 22;109(21):8167-72、およびProc Natl Acad Sci USA.2015 Jan 6;112(1):166-71に開示されるものがあげられ、これらは参照により組み込まれる。
【0669】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、PF-04958242などの、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)グルタミン酸陽性アロステリックモジュレータをさらに含む。いくつかの実施形態では、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)グルタミン酸陽性アロステリックモジュレータをさらに含む耳用の製剤または組成物は、加齢性の感音難聴の処置に使用される。
【0670】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、Wnt阻害剤およびTGFβ阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、Wnt阻害剤はDKK1である。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、Smad3の選択的阻害剤(SIS3)である。いくつかの実施形態では、Wnt阻害剤およびTGFβ阻害剤をさらに含む耳用の製剤または組成物は、聴力損失と平衡問題の処置に使用される。Wnt阻害剤およびTGFβ阻害剤の例として、限定されないがUS20160032240に開示されるものがあげられる。
【0671】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物はチオ硫酸ナトリウムをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、化学的な還元剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、チオ硫酸ナトリウムをさらに含む耳用の製剤または組成物は、化学療法により誘発された耳毒性の処置に使用される。
【0672】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳製剤または組成物はアンクロッドをさらに含む。アンクロッドはフィブリノゲナーゼであり、血液のフィブリノゲンを低下させ、血液粘度を減らす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、マレーマムシ(Calloselasma rhodostoma)の毒に由来する生物活性物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、アンクロッドをさらに含む耳用の製剤または組成物は、突発性の感音難聴(SSHL)および耳鳴の処置に使用される。アンクロッドを使用する例として、限定されないがDE201220100195に開示されるものがあげられ、これは参照により組み込まれる。
【0673】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、D-メチオニンをさらに含む。D-メチオニンは、直接的および間接的な酸化防止効果を備えた微量栄養素である。いくつかの実施形態では、D-メチオニンをさらに含む耳用の製剤または組成物は、騒音性難聴の処置に使用される。
【0674】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、HPN-07、およびN-アセチルシステイン(NAC)またはNHPN-1010の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、HPN-07は、4-OHPBNの構造的類似体、ジナトリウム2,4-ジスルホフェニル-N-tert-ブチルニトロンである。いくつかの実施形態では、NACは、ROSスカベンジャーとして、および細胞によって生成される主要な内因性の酸化防止剤であるグルタチオン(GSH)の基質として、作用するチオール含有アミノ酸誘導体である。いくつかの実施形態では、HPN-07とN-アセチルシステイン(NAC)の組み合わせをさらに含む耳用の製剤または組成物は、騒音性難聴またはシスプラチン誘発聴力損失の処置に使用される。
【0675】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、ヒスタミンタイプ4受容体(H4R)のアンタゴニストをさらに含む。いくつかの実施形態では、ヒスタミンタイプ4受容体(H4R)のアンタゴニストはSENS-111である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、5-HT3アンタゴニストをさらに含む。いくつかの実施形態では、5-HT3アンタゴニストはセトロン(setron)(SENS-218)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、シスプラチンの蓄積を減らす小分子をさらに含む。いくつかの実施形態では、シスプラチンの蓄積を減らす小分子はSENS-300である。いくつかの実施形態では、シスプラチンの蓄積を減らす小分子は下記式の化合物であり:
【0676】
【化16】
PCT/EP2015/067999に規定される置換基を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、R-アザセトロンベシル酸塩をさらに含む。いくつかの実施形態では、SENS-111などのヒスタミンタイプ4受容体(H4R)のアンタゴニストをさらに含む耳用の製剤または組成物は、眩暈の処置に使用される。いくつかの実施形態では、SENS-218などの5-HT3アンタゴニストをさらに含む耳用の製剤または組成物は、前庭病変の処置に使用される。いくつかの実施形態では、SENS-300などのシスプラチンの蓄積を減らす小分子をさらに含む耳用の製剤または組成物は、薬剤性の耳毒性の処置に使用される。いくつかの実施形態では、R-アザセトロンベシル酸塩をさらに含む耳用の製剤または組成物は、突発性の感音難聴の処置に使用される。類似の化合物の例として、限定されないがPCT/EP2015/067999、PCT/EP2013/061205、PCT/EP2013/053557、およびPCT/EP2013/061936に開示されるものがあげられ、これらは参照により組み込まれる。
【0677】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、Kv3カリウムチャネルモジュレータをさらに含む。いくつかの実施形態では、Kv3カリウムチャネルモジュレータはAUT00063である。いくつかの実施形態では、Kv3カリウムチャネルモジュレータは、ヒダントイン誘導体、トリアゾール、またはイミダゾリジンジオン派生物である。いくつかの実施形態では、Kv3カリウムチャネルモジュレータをさらに含む耳用の製剤または組成物は、加齢性難聴、耳鳴、騒音性難聴、人工内耳ユーザー、または統合失調症の処置に使用される。
【0678】
<治療薬の量>
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約40重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約30重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約20重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約15重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約10重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%~約1重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。
【0679】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約40重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約30重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約20重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約15重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約10重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%~約1重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。
【0680】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%~約40重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%~約30重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約20重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約15重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約10重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.10重量%~約1重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。
【0681】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約40重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約30重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約20重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約15重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約10重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%~約2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。
【0682】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.001重量%、約0.002重量%、約0.003重量%、約0.004重量%、約0.005重量%、約0.006重量%、約0.007重量%、約0.008重量%、約0.009重量%、約0.01重量%、約0.02重量%、約0.03重量%、約0.04重量%、約0.05重量%、約0.06重量%、約0.07重量%、約0.08重量%、約0.09重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、または約40重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグあるいはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.01重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.02重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.03重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.04重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.05重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.06重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.07重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.08重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.09重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.1重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.4重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.6重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.8重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.9重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約2重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約6重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約7重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約8重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約9重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約10重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約11重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約12重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約13重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約14重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約15重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約16重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約17重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約18重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約19重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約20重量%の治療薬、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩を含む。
【0683】
<併用療法>
特定の実施形態では、任意の治療薬または耳用薬剤(例えば免疫調節薬または耳圧モジュレータ)が、本明細書に記載される他の耳用活性薬剤の1つ以上と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、治療薬(耳用薬剤)は、制吐薬と共に投与される(例えば平衡障害に吐き気が伴う場合)。いくつかの実施形態では、治療薬(耳用薬剤)は、1つ以上の耳用保護剤と組み合わせて投与される(例えば細胞毒性薬の投与に耳毒性が伴う場合)。特定の実施形態では、治療薬(耳用薬剤)は、例えば制吐薬、抗菌剤、一酸化窒素合成酵素阻害剤、酸化防止剤、神経伝達物質再取込み阻害剤、耳用保護剤、ホメオスタシスモジュレータ(例えばイオン/流体(例えば水)ホメオスタシスモジュレータ)などと組み合わせて投与される。
【0684】
<EAC保護剤>
いくつかの例では、外耳孔(EAC)保護剤は、本明細書に記載される耳用の製剤と組成物と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、EAC保護剤は、外分泌腺分泌薬または抗菌剤である。
【0685】
<外分泌腺分泌薬<
外分泌腺分泌物および外分泌腺分泌薬は、本明細書に開示される製剤と共に使用するために熟考される。したがって、いくつかの実施形態は、天然の耳垢成分を模倣する、および/または抗菌特性を働かせる分泌薬の使用を組み込む。
【0686】
外分泌腺は、3つのカテゴリー、全分泌腺、部分分泌(または外分泌)腺、およびアポクリン腺に分類される。全分泌腺は、各細胞の細胞質にその分泌物を蓄積し、および管に細胞全体を放出する。皮脂腺は全分泌腺の例である。アポクリン腺は汗腺であり、例えば耳道腺がある。
【0687】
皮脂は皮脂腺から分泌される生成物である。いくつかの実施形態では、皮脂はトリグリセリド、ワックスエステル、スクワレン、コレステロールエステル、コレステロールおよび脂肪酸を含む。いくつかの実施形態では、皮脂はスクワレン、ラノステロールおよびコレステロールを含む。皮脂の一部として分泌されるスクワレンは、ラノステロールとコレステロールを含むすべての動物ステロイドの前駆体として作用する。スクワレンは、コレステロールおよび他のイソプレノイドの生成の原因であるメバロン酸経路を介して生成される。HMG-CoA(または3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムA)還元酵素はメバロン酸経路内の律速酵素である。
【0688】
いくつかの実施形態では、外分泌腺分泌薬は、トリグリセリド、ワックスエステル、スクワレン、コレステロールエステル、コレステロールおよび脂肪酸の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、外分泌腺分泌薬は、スクワレン、ラノステロールおよびコレステロールの少なくとも1つを含む。
【0689】
<抗菌性EAC保護剤>
いくつかの実施形態では、EAC保護剤には抗菌特性がある。いくつかの実施形態では、抗菌性EAC保護剤は、脂質、タンパク質および抗菌性ペプチド(AMP)を含む。いくつかの実施形態では、脂質には、脂肪酸、コレステロール、ワックス、ステロール、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドおよびリン脂質が含まれる。いくつかの実施形態では、脂肪酸には、遊離脂肪酸(FFA)、およびオレイン酸とパルミトレイン酸などの不飽和脂肪酸が含まれる。いくつかの実施形態では、AMPはhBD-1、hBD-2、hBD-3およびLL-37を含む。
【0690】
<制吐薬/中枢神経系作用薬>
制吐薬は随意に、本明細書に開示される耳用の製剤と組成物と組み合わせて使用される。制吐薬には、抗ヒスタミン薬と、抗精神病薬、バルビツル酸塩、ベンゾジアゼピンおよびフェノチアジンを含む中枢神経系作用薬が含まれる。他の制吐薬として以下があげられる:ドラセトロン、グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン、およびそれらの組み合わせを含むセロトニン受容体アンタゴニスト;ドンペリドン、プロペリドール(properidol)、ハロペリドール、クロルプロマジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、およびそれらの組み合わせを含むドーパミン拮抗薬;ドロナビノール、ナビロン、サティベックス、およびそれらの組み合わせを含むカンナビノイド;スコポラミンを含む抗コリン薬;および、デキサメタゾン、トリメトベンズアミド、エメトロール、プロポフォール、ムシモール、およびそれらの組み合わせを含むステロイド。
【0691】
随意に、中枢神経系作用薬およびバルビツル酸は、耳の自己免疫疾患に伴う悪心嘔吐症状の処置に有用である。使用される場合、適切なバルビツル酸塩および/または中枢神経系作用薬は、耳毒性を含む潜在的な副作用なく、特有の症状を緩和または改善するために選択される。さらに、上記で論じられたように、内耳の正円窓膜を薬物で標的とすることは、これらの薬物の全身投与によって引き起こされる、可能性のある副作用および毒性を低減する。中枢神経抑制薬として作用するバルビツル酸塩には、アロバルビタール、アルフェナール、アモバルビタール、アプロバルビタール、バルベキサクロン(barnexaclone)、バルビタール、ブラロバルビタール(brallobarbital)、ブタバルビタール、ブタルビタール、ブタリロナール、ブトバルビタール、コルバロール(corvalol)、クロチルバルビタール、シクロバルビタール、シクロパール(cyclopal)、エタロバルビタール、フェバルバメート、ヘプタバルビタルー、ヘキセタール、ヘキソバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、メチルフェノバルビタール、ナルコバルビタール、ネアルバルビタール(nealbarbital)、ペントバルビタール、フェノバルビタール、プリミドン、プロバルビタール、プロパリロナール(propallylonal)、プロキシバルビタール(proxibarbital)、レポサール、セコバルビタール、シグモダール(sigmodal)、チオペンタールナトリウム、タルブタール、チアルバルビタール、チアミラール、チオバルビツール、チオブタバルビタール、ツイナール、バロファン、ビンバルビタール、ビニルビタール、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0692】
本明細書に記載の耳用製剤と共に随意に使用される、他の中枢神経系作用薬は、ベンゾジアゼピンまたはフェノチアジンを含む。有用なベンゾジアゼピンとして、限定されないが、ジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼペート、ブロチゾラム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロプラゾラム、ロルメタゼパム、ミダゾラム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、およびそれらの組み合わせがあげられる。フェノチアジンの例として、プロクロルペラジン、クロルプロマジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボプロマジン、メトトリメプロマジン(methotrimepramazine)、メソリダジン、チオリダジン(thiroridazine)、フルフェナジン、パーフェナジン、フルペンチキソール、トリフルオペラジン、およびそれらの組み合わせがあげられる。
【0693】
抗ヒスタミン剤またはヒスタミンアンタゴニストは、ヒスタミンの放出または作用を阻害するために働く。H1受容体を標的とする抗ヒスタミン薬は、AIEDに関係する悪心嘔吐症状、他の自己免疫疾患、さらに抗炎症性の障害の緩和または低減に有用である。したがって、いくつかの実施形態は、ヒスタミン受容体(例えばH1受容体、H2受容体、および/またはH3受容体)を調節する薬剤の使用を組み込む。
【0694】
そのような抗ヒスタミン薬として、限定されないが、メクリジン、ジフェンヒドラミン、ロラタジンおよびクエチアピンがあげられる。他の抗ヒスタミン薬として、ピリラミン、ピペロキサン、アンタゾリン、カルビノキサミン、ドキシルアミン、クレマスチン、ジメンヒドリナート、フェニラミン、クロルフェニラミン、クロルフェニラミン、デキスクロルフェニルアミン、ブロムフェニラミン、トリプロリジン、シクリジン、クロルサイクリジン、ヒドロキシジン、プロメタジン、アリメマジン、トリメプラジン、シプロヘプタジン、アザタジン、ケトチフェン、オキサトミド、およびそれらの組み合わせがあげられる。
【0695】
いくつかの実施形態では、H1受容体アンタゴニストは塩酸メクリジンである。いくつかの実施形態では、H1受容体アンタゴニストは塩酸ブロメタジンである。いくつかの実施形態では、H1受容体アンタゴニストはジメンヒドリナートである。いくつかの実施形態では、H1受容体アンタゴニストはジフェンヒドラミンである。いくつかの実施形態では、H1受容体アンタゴニストはシンナリジンである。いくつかの実施形態では、H1受容体アンタゴニストはヒドロキシジンパモエートである。
【0696】
H3受容体を標的とする抗ヒスタミン薬として、限定されないがベタヒスチンジヒドロクロリドがあげられる。
【0697】
<抗菌薬>
抗菌薬もまた、本明細書に開示される製剤と組成物と共に有用なものとして熟考される。いくつかの実施形態では、抗菌薬は本明細書に記載される通りである。
【0698】
<コルチコステロイド>
コルチコステロイドもまた、本明細書に開示される製剤と組成物と共に有用なものとして熟考される。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドは本明細書に記載される通りである。
【0699】
<耳用保護剤>
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物(例えば、本明細書に開示される耳感覚細胞調節薬製剤)は、本明細書に記載されるような化学療法薬および/または抗生物質などの薬剤の耳毒性を低減、阻害または改善する、または過度の騒音などを含む他の環境要因の影響を弱める、阻害する、または改善する、耳用保護剤をさらに含む。耳用保護剤の例として、限定されないが、チオールおよび/またはチオール派生物および/または薬学的に許容可能な塩、またはその派生物(例えばプロドラッグ)があげられる(例えばD-メチオニン、L-メチオニン、エチオニン、ヒドロキシルメチオニン、メチオニノール、アミホスチン、メスナ(ナトリウム2-スルファニルエタンスルフォナート)、D-およびL-メチオニンの混合物、ノルメチオニン(normethionine)、ホモメチオニン、S-アデノシル-L-メチオニン、ジエチルジチオカルバメート、エブセレン(2-フェニル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン)、チオ硫酸ナトリウム、AM-111(細胞透過性JNK阻害剤(Laboratoires Auris SAS))、ロイコボリン、ロイコボリンカルシウム、デクスラゾキサン、ピラセタム、オキシラセタム、アニラセタム、プラミラセタム、フェニルピラセタム(Carphedon)、エチラセタム、レベチラセタム、ネフィラセタム、ニコラセタム、ロルジラセタム、ネブラセタム、ファサーラセタム、コールラセトアム、ジミラセタム、ブリバラセタム、セレトラセタム、ロリプラム(Rolipramand)、またはそれらの組み合わせ)。耳用保護剤は、最大中毒量より高い用量での、化学療法薬および/または抗生物質の投与を可能にする;逆に化学療法薬および/または抗生物質は、耳毒性ゆえにより低い用量で投与されるだろう。耳用保護剤は、随意に単独で投与される場合、限定されないが騒音性難聴と耳鳴を含む聴力損失および付随する効果の一因となる環境要因の効果を、さらに改善、低減または除去することを可能にする。
【0700】
内毒性の化学療法薬(例えばシスプラチン)および/または内毒性の抗生物質(例えばゲンタマイシン)に関してのモル:モル単位での、本明細書に記載される製剤中の耳保護剤の量は、約5:1~約200:1、約5:1~約100:1、または約5:1~約20:1である。内毒性の化学療法薬(例えばシスプラチン)および/または内毒性の抗生物質(例えばゲンタマイシン)に関してのモル単位での、本明細書に記載される製剤中の耳保護剤の量は、約50:1、約20:1、または約10:1である。本明細書に記載される薬剤製剤を調節する耳感覚細胞は、約10mg/mL~約50mg/mL、約20mg/mL~約30mg/mL、または約25mg/mLの耳用保護剤を含む。
【0701】
<化学療法薬>
化学療法薬もまた、本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟考される。化学療法薬は、癌細胞または微生物を殺すことにより作用し、および癌または悪性細胞を標的とする抗腫瘍薬を含む。いくつかの化学療法薬は、単独で、または組み合わせて使用され、さらに耳毒性である。例えば、シスプラチンは既知の蝸牛毒性の薬剤である。しかしながら、酸化防止剤と結合するシスプラチンの使用は、保護目的であり、および化学療法薬の内毒性の効果を減らす。いくつかの実施形態では、細胞障害性薬物の局所適用は、効き目を保ったより低量の使用、またはより短い期間での目標量の使用による全身投与によって生じ得る内毒性の効果を減らす。したがって、腫瘍成長に対する治療課程を選択する当業者は、内毒性の化合物を回避または組み合わせるための知識、または、内毒性の効果を回避または減らすために処置の量または課程を変更するための知識を有するだろう。
【0702】
本明細書に開示される製剤と組成物と組み合わせて使用される化学療法薬として、例えば限定されないが、アドリアマイシン、イミダゾールカルボキサミド、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブチル、メルファラン、ダウノルビシン、アドリアマイシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン、パクリタキセル、ドセタセル、エトポシド、テニポシド、タフルポシド、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、メルカプトプリン、メトトレキセート、チオグアニン、ブレオマイシン、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、オールトランス型レチノイン酸、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびその組み合わせがあげられる。
【0703】
<ホメオスタシスモジュレータ>
ホメオスタシスモジュレータもまた、本明細書に記載される製剤と組成物と共に有用なものとして熟考される。ホメオスタシスモジュレータは、イオンおよび流体(例えば水)のホメオスタシスモジュレータを含む。いくつかの例では、ホメオスタシスモジュレータは、本明細書に記載されるようなNa/K-ATPアーゼモジュレータ、ENaCモジュレータ、バソプレシン受容体モジュレータ、利尿薬などを含む。
【0704】
<Na/K ATPアーゼモジュレータ>
Na/K-ATPアーゼモジュレータは、本明細書に開示される製剤と組成物と共に使用するために熟考される。蝸牛のホメオスタシスは、内リンパの電解質成分に依存し、それはATPアーゼを介してNa+およびK+の活発な交換によって調節される。Na/K-ATPアーゼモジュレータの例として、限定されないが、ニモジピン(ナトリウム-カリウムアデノシン三リン酸分解酵素刺激因子)、ウアバインおよびフロセミドがあげられる。
【0705】
<装置>
さらに本明細書で熟考されるのは、本明細書に開示される医薬製剤と組成物の送達のための、または代替的に、本明細書に開示される耳用製剤の機能の測定または監視のための、装置の使用である。例えば、一実施形態では、ポンプ、浸透性装置、または医薬製剤と組成物を機械的に送達する他の手段が、本明細書に開示される医薬製剤の送達のために使用される。リザーバ装置は随意に、医薬品の薬物送達ユニットと共に随意に使用され、および薬物送達ユニットと共に耳構造の内部にあるか、または外部にあるかのいずれかである。
【0706】
他の実施形態は、聴力、平衡または他の耳の障害をモニタリングまたは調査するために、機械的装置または画像化装置の使用を熟考する。例えば、磁気共鳴画像(MRI)装置は、実施形態の範囲内で具体的に熟考され、ここでMRI装置(例えば、3 Tesla MRI装置)は、メニエール病の進行、および本明細書に開示される医薬製剤による続く処置を評価することができる。Carfrae et al.Laryngoscope 118:501-505(March 2008)を参照されたい。全身スキャナーまたは代替的に頭蓋スキャナーが熟考され、およびより高い解像度(ヒト用の7 Tesla、8 Tesla、9.5 Tesla または11 Tesla)が随意にMRIスキャンに使用される。
【0707】
<耳用製剤の可視化>
本明細書にさらに提供されるのは、いくつかの実施形態において、染料(例えばトリパンブルー染料、エバンスブルー染料)、または他のトレーサー化合物を含む耳用の製剤と組成物である。いくつかの例では、耳に適合可能な染料を、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物に加えると、耳(例えば、げっ歯類の耳および/またはヒトの耳)の中に投与された製剤または組成物を可視化する助けになる。特定の実施形態では、染料または他のトレーサー化合物を含む耳用の製剤または組成物は、内リンパおよび/または外リンパ内の薬物の濃度をモニタリングするために、動物モデルに現在使用されている侵襲的な手法を不要にする。
【0708】
いくつかの例では、鼓室内注入は、送達される薬の効果を最大化するために、専門家が必要とされ、および耳の特定部位に送達される必要のある製剤または組成物を要求する。いくつかの例では、本明細書に記載される製剤または組成物に対する可視化技術は、投与部位(例えば正円窓)の可視化を可能にし、その結果、薬は適切な位置に適用される。いくつかの例では、染料を含む製剤または組成物は、耳(例えばヒトの耳)への製剤の投与中に、製剤または組成物の可視化を可能にし、薬が意図した部位に送達されることを確実にし、かつ製剤または組成物の不正確な配置による合併症を回避する。適用される場合に、製剤または組成物の可視化を高める助けとなる染料を含有すること、およびさらなる治療介入なしに投与後に製剤または組成物の位置を視覚的に調べる能力は、動物モデルおよび/またはヒトの試験において、中耳内治療を試験するために現在利用可能な方法を越える利点を表している。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物と適合する染料は、エバンスブルー(例えば、耳用製剤の総重量の0.5%)、メチレンブルー(例えば、耳用製剤の総重量の1%)、イソスルファンブルー(例えば、耳用製剤の総重量の1%)、トリパンブルー(例えば、耳用製剤の総重量の0.15%)、および/またはインドシアニングリーン(例えば、25mg/バイアル)を含む。他の一般的な染料、例えばFD&Cレッド40、FD&Cレッド3、FD&Cイエロー5、FD&Cイエロー6、FD&Cブルー1、FD&Cブルー2、FD&Cグリーン3、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、Alexa Fluors、DyLight Fluors)、および/またはMRI、CATスキャン、PETスキャンなどの非侵襲性の撮像技術とともに可視化される染料(例えば、ガドリニウムベースのMRI色素、ヨードベースの色素、バリウムベースの色素など)もまた、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物と共に使用するために熟考される。本明細書に記載される製剤または組成物と適合する他の染料は、Sigma-Aldrichのカタログの染料の欄に列挙されている(開示のために参照により本明細書に含まれる)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤中の染料の濃度は、本明細書に記載の製剤または組成物の総重量および/または容積の2%未満、1.5%未満、1%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、または100ppm未満である。
【0709】
染料を含む、耳に適合可能な製剤または組成物の特定の実施形態では、耳の中で染料を含む耳用の製剤または組成物の徐放を可視化する性能は、ヒトへの使用に適した内耳用の製剤または組成物の開発に適用可能な適切な試験方法に対する、長年にわたる要求を満たす。染料を含む、耳に適合可能な製剤または組成物の特定の実施形態では、染料を含む耳用の製剤または組成物の徐放を可視化する性能は、ヒト臨床試験において、本明細書に記載の耳用製剤の試験を可能にする。
【0710】
<一般的な滅菌の方法>
内耳の環境は、隔離された環境である。内リンパおよび外リンパは、静止流体であり、および循環系と連続して接触していない。血液内リンパ関門および血液外リンパ関門を含む、血液迷路関門(BLB)は、迷路空間(すなわち前庭および蝸牛の空間)における特定の上皮細胞間の密着結合から成る。BLBの存在は、内耳の隔離された微小環境への活性薬剤(例えば、免疫調節薬、耳圧モジュレータ、抗菌剤)の送達を制限する。耳有毛細胞は、内リンパまたは外リンパの流体に浸され、およびカリウムイオンの蝸牛再循環は、有毛細胞機能にとって重要である。内耳が感染すると、内リンパおよび/または外リンパへの(例えば微生物感染に応じた)白血球および/または免疫グロブリンの流入があり、内耳流体の繊細なイオン組成物は、白血球および/または免疫グロブリンの流入によって乱される。特定の例では、内耳流体のイオン組成物における変化は、難聴、平衡感覚障害および/または聴覚構造の骨化につながる。特定の例では、微量な発熱物質および/または微生物でさえも、内耳の隔離された微小環境における感染および関連する生理学的変化を引き起こし得る。
【0711】
一態様において、本明細書に提供されるのは、厳格な無菌要件で無菌化され、中耳および/または内耳への投与に適した耳用の製剤または組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、耳に適合可能な組成物である。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、発熱物質および/または微生物を実質的に含まない。
【0712】
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の耳の障害を改善する、または低減する耳用の製剤または組成物である。さらに本明細書に提供されるのは、前記耳用の製剤または組成物の投与を含む方法である。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は滅菌される。本明細書に開示される実施形態には、ヒトでの使用のための、本明細書に開示される医薬組成物の滅菌のための手段およびプロセスが含まれる。この目標は、感染症を引き起こす微生物を比較的含まない、安全な医薬製品を提供することである。アメリカ食品医薬品局は、“Guidance for Industry:Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing”として規制手引きを発行しており、http://www.fda.gov/cder/guidance/5882fnl.htmで利用可能であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。内耳の処置のための安全な医薬品に有効な特定のガイドラインはない。
【0713】
本明細書で使用されるように、滅菌は、生成物または包装に存在する微生物を破壊または除去するプロセスを意味する。対象および製剤または組成物の滅菌に利用可能な任意の適切な方法が使用される。微生物の不活性化に利用可能な方法としては、限定されないが、非常に強い熱、致死薬、あるいはγ線の適用があげられる。いくつかの実施形態では、耳用の治療製剤の調製のためのプロセスは、加熱滅菌、化学的滅菌、放射線滅菌またはろ過滅菌から選択される滅菌法に製剤をさらす工程を含む。使用される方法は、装置または滅菌される組成物の性質に大きく依存する。滅菌の多くの方法の詳細な記載は、Lippincott,Williams&Wilkinsによって公開された、Remington:The Science and Practice of Pharmacyの第40章に提供されており、この主題に関して引用により組み込まれる。
【0714】
<加熱滅菌>
激しく熱を加えることによって滅菌するために、多くの方法が利用可能である。1つの方法は飽和水蒸気オートクレーブを使用するものである。この方法では、少なくとも121℃の温度の飽和水蒸気を、滅菌される対象に接触させる。対象が滅菌される場合、熱は微生物に直接伝達され、または滅菌される水溶液の大部分を加熱することによって微生物に間接的に伝達される。この方法は、滅菌プロセスにおいて柔軟性があり、安全で、経済的であるため、広く実行される。
【0715】
乾熱滅菌は、高温で微生物を殺し、および発熱物質の除去を行う方法である。このプロセスは、滅菌プロセスのために少なくとも130~180℃の温度まで、および発熱物質の除去プロセスのために少なくとも230~250℃の温度まで、HEPAろ過した微生物のない空気を加熱するのに適した装置で行われる。濃縮製剤または粉末製剤を再構成するための水もまた、オートクレーブによって滅菌される。
【0716】
<化学的滅菌>
化学的滅菌法は、激しい熱による滅菌に耐えられない生成物のための代替法である。この方法では、酸化エチレン、二酸化塩素、ホルムアルデヒドまたはオゾンなどの殺菌特性を備えた様々な気体および蒸気が、抗アポトーシス剤として使用される。エチレンオキシドの殺菌活性は、例えば、反応性アルキル化剤として作用するその能力から生じる。したがって、滅菌プロセスでは、エチレンオキシド蒸気が、滅菌される生成物と直接接触する必要がある。
【0717】
<放射線滅菌>
放射線滅菌の1つの利点は、熱による分解または他の損傷を受けずに、多くの種類の生成物を滅菌できることである。一般に使用される放射線はベータ線であり、または代替的には60Co源からのγ線である。γ線の透過性能ゆえに、溶液、組成物、および不均質な混合物を含む多くの種類の製品の滅菌に使用することができる。照射の殺菌効果は生体高分子とのγ線の相互作用から発生する。この相互作用は、荷電種と遊離ラジカルを生成する。転位と架橋結合プロセスなどのその後の化学反応は、こうした生体高分子のための正常な機能を喪失させる。本明細書に記載される製剤もまた、ベータ照射を使用して随意に滅菌される。
【0718】
<ろ過>
ろ過滅菌は、微生物を破壊するのではなく、溶液から除去するために用いられる方法である。膜フィルタは感熱性の溶液をろ過するために使用される。そのようなフィルタは、混合セルロースエステル(MCE)、ポリフッ化ビニリデン(PVF;PVDFとしても知られる)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の薄く、強力で、均質なポリマーであり、および0.1~0.22μmの範囲の孔径を有する。様々なフィルタ膜を使用して様々な特性の溶液を、随意にろ過する。例えば、PVFとPTFEの膜は、有機溶媒のろ過に非常に適しているが、水溶液はPVFまたはMCEの膜によってろ過される。ろ過装置は、シリンジに取り付けられた単一の使用時点使い捨て可能なフィルタから、製造工場で使用される商業用スケールフィルタに至るまで、多くのスケールでの使用に利用可能である。膜フィルタはオートクレーブまたは化学的滅菌によって滅菌される。膜ろ過システムの検証は、以下の標準化されたプロトコルによって行われ(Microbiological Evaluation of Filters for Sterilizing Liquids,Vol4,No.3.Washington,D.C:Health Industry Manufacturers Association,1981)、およびBrevundimonas diminuta(ATCC 19146)などの既知数(約107/cm2)の非常に小さな微生物を膜フィルタに負荷することを含む。
【0719】
医薬製剤または組成物は、膜フィルタを通すことによって随意に滅菌される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子を含む製剤または組成物(米国特許第6,139,870号)、または多重膜小胞(Richard et al.,International Journal of Pharmaceutics(2006),312(1-2):144-50)を含む製剤または組成物は、それらの組織化された構造を破壊することなく、0.22μmのフィルタを介したろ過滅菌に適用可能である。
【0720】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、ろ過滅菌の手段によって、製剤または組成物(またはその成分)を滅菌する工程を含む。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物は粒子を含み、粒子の製剤または組成物はろ過滅菌に適している。さらなる実施形態では、前記粒子の製剤または組成物は、300nm未満のサイズ、200nm未満のサイズ、または100nm未満のサイズの粒子を含む。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、粒子の製剤または組成物を含み、粒子の滅菌性は、前駆体成分の溶液を滅菌ろ過することによって確保される。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、粒子の製剤または組成物を含み、粒子の製剤または組成物の滅菌性は、低温滅菌ろ過によって確保される。さらなる実施形態では、前記低温ろ過滅菌は、0~30℃、0~20℃、0~10℃、10~20℃、または20~30℃の温度で起こる。別の実施形態では、耳に許容可能な粒子の製剤または組成物を調製するプロセスは、以下を含む:粒子の製剤または組成物を含む水溶液を低温で滅菌フィルタに通してろ過する工程;無菌液の凍結乾燥;および投与前に滅菌水を用いて粒子の製剤または組成物を再構成する工程。
【0721】
別の実施形態では、耳用の製剤または組成物はナノ粒子の製剤または組成物を含み、ナノ粒子の製剤または組成物はろ過滅菌に適している。さらなる実施形態では、ナノ粒子の製剤または組成物は、300nm未満のサイズ、200nm未満のサイズ、または100nm未満のサイズのナノ粒子を含む。別の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、ミクロスフェアの製剤または組成物を含み、ミクロスフェアの滅菌性は、前駆体の有機溶液および水溶液を滅菌ろ過することによって確保される。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物の無菌性は、低温でのろ過滅菌によって保証される。さらなる実施形態では、低温ろ過滅菌は、0~30℃、0~20℃、0~10℃、10~20℃、または20~30℃の温度で起きる。
【0722】
特定の実施形態では、活性成分は、適切な媒介物(例えば緩衝液)に溶解され、および別々に滅菌される(例えば、熱処理、ろ過、γ線照射によって);残りの添加剤は、適切な手法(例えば、冷やした添加剤の混合物のろ過および/または照射)で別々の工程で滅菌される;別々に滅菌された2つの溶液は、その後、無菌的に混合され、最終的な耳用の製剤または組成物が提供される。
【0723】
いくつかの例では、従来より使用される滅菌方法(例えば熱処理(例えばオートクレーブ)、γ線照射、ろ過)は、製剤または組成物中の治療薬の不可逆的分解をもたらす。
【0724】
<微生物>
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の耳の障害を改善する、または低減する耳用の製剤または組成物である。さらに本明細書に提供されるのは、前記耳用の製剤または組成物の投与を含む方法である。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、微生物を実質的に含まない。許容可能な滅菌レベルは、限定されないが、米国薬局方1111章(以下参照)を含む、治療上許容可能な耳用の製剤または組成物を規定する、適用可能な基準に基づく。例えば、許容可能な滅菌レベルとしては、製剤または組成物1gあたり10コロニー形成単位(cfu)、製剤または組成物1gあたり50cfu、製剤または組成物1gあたり100cfu、製剤または組成物1gあたり500cfu、または製剤または組成物1gあたり1000cfuがあげられる。加えて、許容可能な滅菌レベルとして、特定の好ましくない微生物剤が除外されていることが挙げられる。一例として、指定された好ましくない微生物剤として、限定されないが、大腸菌(E.coli)、サルモネラ属、緑膿菌(P.aeruginosa)、および/または他の特定の微生物剤があげられる。
【0725】
耳用の製剤の無菌性は、米国薬局方61章、62章および71章に従い、滅菌保証プログラムで確認する。滅菌保証の品質管理、品質保証および検証プロセスの主要な要素は、滅菌試験の方法である。滅菌試験は、ほんの一例として、2つの方法によって行われる。第1の方法は直接接種であり、試験される製剤のサンプルを増殖培地に加え、最大で21日間までインキュベートする。増殖培地の混濁度が汚染を示す。この方法の短所として、感度を弱める小さなサンプルサイズの塊状材料、および目視観察に基づく微生物成長の検出があげられる。もう1つの方法は膜ろ過無菌試験である。この方法では、大量の生成物を小さな膜フィルタ紙に通す。その後、ろ過紙を培地に入れて微生物の成長を促す。この方法は、塊状の生成物がすべてサンプリングされるため、より感度が高いという長所を持つ。市販のMillipore Steritest無菌試験システムは、膜ろ過無菌試験による判定に随意に使用される。クリーム剤または軟膏剤のろ過試験のために、SteritestフィルタシステムNo.TLHVSL210を使用する。乳剤または粘着性生成物のろ過試験のために、SteritestフィルタシステムNo.TLAREM210またはTDAREM210を使用する。予め充填されたシリンジのろ過試験のために、SteritestフィルタシステムNo.TTHASY210を使用する。エアロゾルまたは泡として調合された物質のろ過試験のために、SteritestフィルタシステムNo.TTHVA210を使用する。アンプルまたはバイアルにおける溶解性粉末のろ過試験のために、SteritestフィルタシステムNo.TTHADA210またはTTHADV210を使用する。
【0726】
大腸菌およびサルモネラ菌のための試験は、30~35℃で24~72時間インキュベートされたラクトース培養液の使用、MacConkey寒天および/またはEMB寒天での18~24時間のインキュベーション、および/またはラパポート培地の使用を含む。緑膿菌の検出のための試験は、NAC寒天の使用を含む。米国薬局方(United States Pharmacopeia)の62章はさらに、指定された好ましくない微生物向けの試験手順を列挙している。
【0727】
特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、製剤1gあたり、微生物剤のコロニー形成単位(CFU)が約60未満、コロニー形成単位が約50未満、コロニー形成単位が約40未満、またはコロニー形成単位が約30未満である。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、内リンパおよび/または外リンパと等張となるように製剤される。
【0728】
<エンドトキシン>
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の耳の障害を改善する、または減らす耳用の製剤または組成物である。さらに本明細書に提供されるのは、前記耳用の製剤または組成物の投与を含む方法である。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、エンドトキシンを実質的に含まない。滅菌処理プロセスのさらなる態様は、副産物が微生物(以後、「生成物」)を殺さないようにすることである。発熱物質除去のプロセスはサンプルから発熱物質を取り除く。発熱物質は免疫反応を誘発する内毒素または外毒素である。内毒素の一例は、グラム陰性菌の細胞壁で見られるリポ多糖類(LPS)分子である。オートクレーブ滅菌またはエチレンオキシドでの処置などの滅菌処理は細菌を殺すが、LPS残留物は敗血症性ショックなどの炎症誘発性の免疫反応を誘発する。内毒素の分子の大きさが大きく変化するため、内毒素の存在は「内毒素単位」(EU)で表現される。1EUはE.coli LPSの100ピコグラム相当である。いくつかの場合には、ヒトは、体重の5EU/kgと同じくらいわずかな反応を示す。無菌性(sterility)は、当該技術分野で認識されている任意の単位で表わされる。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、従来の許容可能な内毒素レベル(例えば被験体の体重の5EU/kg)と比較して、より低い内毒素レベル(例えば被験体の体重の4EU/kg未満)を含んでいる。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、被験体の体重1kgにつき約5EU/kg未満を有する。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、被験体の体重1kgにつき約4EU/kg未満を有する。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、被験体の体重1kgにつき約3EU/kg未満を有する。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、被験体の体重1kgにつき約2EU/kg未満を有する。
【0729】
いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、製剤1kgにつき約5EU/kg未満を有する。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、製剤1kgにつき約4EU/kg未満を有する。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、製剤1kgにつき約3EU/kg未満を有する。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5EU/kg未満の生成物を含む。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約1EU/kg未満の生成物を含む。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約0.2EU/kg未満の生成物を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5EU/g未満の単位または生成物を有する。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4EU/g未満の単位または生成物を有する。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3EU/g未満の単位または生成物を有する。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約5EU/mg未満の単位または生成物を有する。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約4EU/mg未満の単位または生成物を有する。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約3EU/mg未満の単位または生成物を有する。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、製剤または組成物1mLにつき約1~約5EU/mLを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、製剤または組成物1mLにつき約2~約5EU/mL、製剤または組成物1mLにつき約3~約5EU/mL、または製剤または組成物1mLにつき約4~約5EU/mLを含む。
【0730】
特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、従来の許容可能なエンドトキシンレベル(例えば、製剤または組成物の0.5EU/mL)と比較した場合、より低いエンドトキシンレベルを有する(例えば、製剤または組成物の0.5EU/mL未満)。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、製剤または組成物の約0.5EU/mL未満を有する。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、製剤または組成物の約0.4EU/mLを有する。追加の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、製剤または組成物の約0.2EU/mL未満を有する。
【0731】
発熱性物質の検出は、ほんの一例として、様々な方法で行われる。無菌に適切な試験として、米国薬局方(USP)<71>無菌試験法(23rd edition,1995)に記載される試験があげられる。ウサギを用いた発熱性物質試験とカブトガニ血球抽出成分試験は共に、米国薬局方チャプター<85>および<151>に規定されている(USP23/NF 18,Biological Tests,The United States Pharmacopeial Convention,Rockville,MD,1995)。代替的な発熱性物質アッセイは、単球活性化サイトカインアッセイに基づいて開発されている。品質管理用途に適した均一の細胞株が開発されており、およびウサギを用いた発熱性物質試験とカブトガニ血球抽出成分試験に合格したサンプルの発熱性を検出する能力が実証された(Taktak et al,J.Pharm.Pharmacol.(1990),43:578-82)。追加の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、脱パイロジェンにさらされる。さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物の製造プロセスは、発熱性に関して製剤を試験する工程を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、発熱物質を実質的に含まない。
【0732】
<pHとモル浸透圧濃度>
本明細書には、外リンパおよび/または内リンパに適合可能であり、および蝸牛電位に何の変化も生じさせないイオンバランスを有する耳用の組成物または製剤が記載される。特定の実施形態では、本製剤または組成物の重量モル浸透圧濃度/オスモル濃度は、例えば、適切な塩濃度(例えばナトリウム塩の濃度)の使用、または、製剤または組成物を内リンパと適合および/または外リンパと適合(すなわち、内リンパおよび/または外リンパと等張)させる等張化剤の使用によって、調節される。いくつかの例では、内リンパと適合および/または外リンパと適合する本明細書に記載の製剤または組成物は、投与に際して、内耳の環境に最小の障害をもたらし、および哺乳動物(例えばヒト)に最小の不快感(例えば眩暈)をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤または組成物は、防腐剤を含んでおらず、および聴覚構造体に最少の障害(例えば、pHまたは重量モル浸透圧濃度の変化、炎症)しかもたらさない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤または組成物は、耳構造体に対して非刺激性の、および/または無毒な抗酸化剤を含む。
【0733】
内リンパに存在する主なカチオンは、カリウムである。加えて、内リンパは高濃度の正に荷電したアミノ酸を備える。外リンパに存在する主なカチオンはナトリウムである。特定の例では、内リンパと外リンパのイオン組成物は、有毛細胞の電気化学的刺激を調節する。特定の例では、内リンパまたは外リンパのイオンバランスの変化は、耳の有毛細胞に沿った電気化学的刺激の伝導の変化による聴力損失をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物または製剤は、外リンパのイオンバランスを崩さない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物または製剤は、外リンパと同じまたは実質的に同じイオンバランスを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物または製剤は、内リンパのイオンバランスを崩さない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物または製剤は、内リンパと同じまたは実質的に同じイオンバランスを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物または製剤は、内耳流体(例えば、内リンパおよび/または外リンパ)と適合するイオンバランスを提供するように処方される。
【0734】
内リンパおよび外リンパは、血液の生理的pHに近いpHを有する。内リンパは約7.2~7.9のpHを有し、外リンパは約7.2~7.4のpHを有する。近位の内リンパにおけるインサイチュのpHは約7.4であり、他方で遠位の内リンパのpHは約7.9である。
【0735】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物のpHは、約7.0~8.0の内リンパに適合するpH範囲、および約7.2~7.9の好ましいpH範囲に調節される(例えば緩衝剤を使用)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物のpHは、約7.0~7.6の外リンパに適合するpH、および約7.2~7.4の好ましいpH範囲に調節される(例えば緩衝剤を使用)。
【0736】
いくつかの実施形態では、有用な製剤または組成物は、1つ以上のpH調製剤または緩衝剤をさらに含む。適切なpH調節剤または緩衝剤として、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせまたは混合物があげられる。
【0737】
一実施形態では、1つ以上の緩衝剤が、本開示の製剤または組成物に使用される場合、例えば薬学的に許容可能な媒介物と組み合わせられ、例えば約0.1%~約20%、約0.5%~約10%の量で、最終的な製剤または組成物中に存在する。本開示の特定の実施形態では、製剤または組成物に含まれる緩衝液の量は、製剤または組成物のpHが身体の生来の緩衝系に干渉しないような量である。いくつかの実施形態では、約5mM~約200mMの濃度の緩衝液が製剤または組成物中に存在する。特定の実施形態では、約20mM~約100mMの濃度の緩衝液が存在する。他の実施形態では、緩衝液の濃度は、製剤または組成物のpHが3~9、5~8、または代替的に6~7になるような濃度である。他の実施形態では、製剤または組成物のpHは約7である。一実施形態では、緩衝液は弱酸性pHの酢酸塩またはクエン酸塩等である。一実施形態では、緩衝液は、約4.5~約6.5のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝液である。他の実施形態では、緩衝液は、約5.5~約6.0のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝液である。さらなる実施形態では、緩衝液は、約6.0~約6.5のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝液である。一実施形態では、緩衝液は、約5.0~約8.0のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液である。他の実施形態では、緩衝液は、約5.5~約7.0のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液である。一実施形態では、緩衝液は、約6.0~約6.5のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液である。
【0738】
いくつかの実施形態では、緩衝剤の濃度は、製剤または組成物のpHが6~9、6~8、6~7.6、および7~8になるような濃度である。他の実施形態では、製剤または組成物のpHは、約6.0、約6.5、約7、または約7.5である。一実施形態では、緩衝液はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、重炭酸塩、炭酸塩、またはわずかに塩基性pHのリン酸塩などの緩衝液である。一実施形態では、緩衝液は、約7.5~約8.5のpHを有する炭酸水素ナトリウム緩衝液である。別の実施形態では、緩衝液は、約7.0~約8.0のpHを有する炭酸水素ナトリウム緩衝液である。さらなる実施形態では、緩衝液は、約6.5~約7.0のpHを有する炭酸水素ナトリウム緩衝液である。一実施形態では、緩衝液は、約6.0~約9.0のpHを有するリン酸水素ナトリウム緩衝液である。別の実施形態では、緩衝液は、約7.0~約8.5のpHを有するリン酸水素ナトリウム緩衝液である。一実施形態では、緩衝液は、約7.5~約8.0のpHを有するリン酸水素ナトリウム緩衝液である。
【0739】
一実施形態では、希釈剤はまた、より安定した環境を提供できるため、化合物を安定させるために用いられる。(pHの制御または保持をさらに提供する)緩衝液に溶解された塩は、限定されないがリン酸緩衝食塩水を含む、当該技術分野の希釈剤として利用される。
【0740】
特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物のpHは、約6.0~約7.6、約7~約7.8、約7.0~約7.6、約7.2~約7.6、または約7.2~約7.4である。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物のpHは、約6.0、約6.5、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、または約7.6である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤または組成物のpHは、標的とする耳の構造体(例えば、内リンパ、外リンパなど)と適合するように設計される。
【0741】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、治療薬を分解することなく、製剤または組成物を滅菌することができるpHを有する(例えば、ろ過、または無菌混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ滅菌(例えば最終滅菌))。滅菌中に治療薬の加水分解および/または分解を減らすために、緩衝剤pHは、滅菌プロセス中に製剤または組成物のpHを7~8の範囲に維持するように設計される。
【0742】
特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、治療薬が分解することなく、製剤または組成物の最終滅菌(例えば、熱処理および/またはオートクレーブ滅菌)を可能にするpHを有する。例えば、オートクレーブ滅菌中に治療薬の加水分解および/または分解を減らすために、緩衝剤pHは、製剤のpHが高温で7~8の範囲を維持するように設計される。製剤または組成物に使用される治療薬に依存して任意の適切な緩衝剤が用いられる。いくつかの例では、温度がほぼ-0.03/℃で増加するにつれてTRISのpKaが減少し、温度がほぼ0.003/℃で増加するにつれてPBSのpKaが増加することから、250°F(121°C)でのオートクレーブ滅菌は、トリス緩衝液中で著しい下方へのpHの変化(つまり、より酸性)を引き起こすが、PBS緩衝液中での上方へのpH変化は比較的少なく、したがって、PBSよりもトリスS中で耳用の薬剤の加水分解および/または分解がはるかに増加した。いくつかの実施形態では、治療薬の分解は、本明細書に記載されるような緩衝剤の適切な使用によって減らされる。
【0743】
いくつかの実施形態では、約6.0~約7.6、約7~約7.8、約7.0~約7.6、約7.2~約7.6、約7.2~約7.4のpHが、本明細書に記載される製剤または組成物の滅菌に適している(例えば、ろ過、または無菌混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ滅菌(例えば最終滅菌))。特定の実施形態では、約6.0、約6.5、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、または約7.6の製剤または組成物のpHが、本明細書に記載される製剤または組成物の滅菌に適している(例えば、ろ過、または無菌混合、または熱処理。および/またはオートクレーブ滅菌(例えば最終滅菌))。
【0744】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、約3~約9、約4~8、約5~8、約6~約7、約6.5~約7、約5.5~約7.5、または約7.1~約7.7のpHを有し、および約0.1mM~約100mMの有効活性成分の濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、約5~8、約6~約7、約6.5~約7、約6.5~約7.5、約5.5~約7.5、または約7.1~約7.7のpHを有し、および約1~約100mMの有効活性成分の濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、約5~8、約6~約7、約6.5~約7、約6.5~約7.5、約5.5~約7.5、または約7.1~約7.7のpHを有し、および約50~約80mMの有効活性成分の濃度を有する。いくつかの実施形態では、有効活性成分の濃度は、約10~約100mMである。他の実施形態では、有効活性成分の濃度は、約20~約80mMである。さらなる実施形態では、有効活性成分の濃度は、約10~約50mMである。
【0745】
いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、本明細書に記載されるpHを有し、非限定的な例として、本明細書に記載されるセルロース系増粘剤などの増粘剤(例えば、粘度を高める薬剤)を含む。いくつかの例では、増粘剤の付加および本明細書に記載される製剤または組成物のpHは、耳用の製剤または組成物の実質的な分解なしに、本明細書に記載される製剤の滅菌を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物中の増粘剤の量は、製剤または組成物の全重量の約1%、5%、約10%または約15%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物中の増粘剤の量は、製剤または組成物の総重量の約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、または約5%である。
【0746】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬製剤または組成物は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約1か月間、少なくとも約2か月間、少なくとも約3か月間、少なくとも約4か月間、少なくとも約5か月間、または少なくとも約6か月間のいずれかの期間にわたってpHに関して安定している。他の実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、少なくとも約1週間、pHに関して安定している。さらに本明細書に記載されるのは、少なくとも約1か月間、pHに関して安定している製剤または組成物である。
【0747】
<等張化剤>
一般的に、内リンパは、外リンパよりも重量モル浸透圧濃度が高い。例えば、内リンパは、約304mOsm/kgのH2Oの重量モル浸透圧濃度を有しているが、一方で外リンパは約294mOsm/kgのH2Oの重量モル浸透圧濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、約250~約320mM(約250~約320mOsm/kgのH2Oの重量モル浸透圧濃度)、および好ましくは、約270~約320mM(約270~約320mOsm/kgのH2Oの重量モル浸透圧濃度)の重量モル浸透圧濃度を提供するように調剤される。特定の実施形態では、本製剤または組成物の重量モル浸透圧濃度/オスモル濃度は、例えば、適切な塩濃度(例えばナトリウム塩の濃度)の使用、または製剤または組成物に内リンパ適合性および/または外リンパ適合性(すなわち、内リンパおよび/または外リンパと等張)を与える、等張化剤の使用によって調節される。いくつかの例では、外リンパ適合性および/または内リンパ適合性の、本明細書に記載の製剤または組成物は、内耳の環境に最小限の障害しか引き起こさず、および投与時に哺乳動物に最小限の不快感(例えば、眩暈および/または吐気)しか引き起こさない。
【0748】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、外リンパと等張である。等張の製剤または組成物は、等張化剤の付加によって提供される。適切な等張化剤として、限定されないが、デキストロース、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、および他の電解質などの、薬学的に許容可能な糖、塩、またはそれらの任意の組み合わせ、または混合物があげられる。
【0749】
有用な耳用の製剤または組成物は、許容可能な範囲の重量モル浸透圧濃度をもたらすのに必要な量の1以上の塩を含む。そのような塩として、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、またはアンモニウムカチオン、および塩素アニオン、クエン酸アニオン、アスコルビン酸アニオン、ホウ酸アニオン、リン酸アニオン、重炭酸アニオン、硫酸アニオン、チオ硫酸アニオン、または重亜硫酸アニオンを有するものがあげられ;適切な塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、および硫酸アンモニウムがあげられる。
【0750】
さらなる実施形態では、等張化剤は、約100mOsm/L~約500mOsm/L、約200mOsm/L~約400mOsm/L、約250mOsm/L~約350mOsm/L、または約280mOsm/L~約320mOsm/Lの最終の重量モル浸透圧濃度の耳用の製剤または組成物を提供する量で存在する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、約100mOsm/L~約500mOsm/L、約200mOsm/L~約400mOsm/L、約250mOsm/L~約350mOsm/L、または約280mOsm/L~約320mOsm/Lの重量モル浸透圧濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤または組成物の重量モル浸透圧濃度は、標的とする耳の構造体(例えば、内リンパ、外リンパなど)と重量モル浸透圧濃度が等しくなるように設計される。
【0751】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、本明細書に記載されるようなpHと重量モル浸透圧濃度を有しており、および約1μM~約10μM、約1mM~約100mM、約0.1mM~約100mM、約0.1mM~約100nMの有効活性成分の濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、本明細書に記載されるようなpHと重量モル浸透圧濃度を有しており、および有効活性成分の濃度は、製剤または組成物の有効成分の重量の約0.01~約20%、約0.01~約10%、約0.01~約7%、約0.01~5%、約0.01~約3%、約0.01~約2%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、本明細書に記載されるようなpHと重量モル浸透圧濃度を有しており、および有効活性成分の濃度は、製剤または組成物の有効成分の容積の約0.1~約70mg/mL、約1mg~約70mg/mL、約1mg~約50mg/mL、約1mg/mL~約20mg/mL、約1mg/mL~約10mg/mL、約1mg/mL~約5mg/mL、または約0.5mg/mL~約5mg/mLである。
【0752】
<粒径>
径の減少は、表面積を増やすために、および/または製剤の溶解特性を調整するために使用される。径の減少は、本明細書に記載される製剤または組成物について、一貫した平均粒度分布(PSD)(例えば、マイクロメートルサイズの粒子、ナノメートルサイズの粒子など)を維持するために用いられる。いくつかの実施形態では、製剤または組成物はマイクロメートルサイズの粒子を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物はナノメートルサイズの粒子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、多重微粒子であり、つまり、複数の粒径(例えば、微粉化した粒子、ナノサイズの粒子、サイズのない粒子)を含み、すなわち、製剤または組成物は多重微粒子の製剤または組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、1つ以上の多重微粒子の(例えば微粉化した)治療薬を含む。微粉化は固形物質の粒子の平均直径を減らすプロセスである。微粉化した粒子は、直径でほぼマイクロメートルのサイズから直径でほぼピコメートルのサイズまでである。いくつかの実施形態では、治療薬または耳用の薬剤の多重微粒子の粒子(例えば微粉化した粒子)を用いることにより、非多重微粒子の(例えば微粉化されていない)治療薬を含む製剤または組成物と比較して、本明細書に記載される製剤からの治療薬の徐放および/または持続性放出が可能となる。いくつかの例では、多重微粒子の(例えば、微粉化された)治療薬を含む製剤または組成物は、塞がれたり詰まったりすることのない27G針を適用した1mLのシリンジから放出される。いくつかの実施形態では、治療薬は本質的に、微粉化された粒子の形態である。いくつかの実施形態では、治療薬は本質的に、マイクロザイスの粒子の形態である。いくつかの実施形態では、治療薬は本質的に、ナノサイズの粒子の形態である。
【0753】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物の粒径は、本明細書に記載される製剤または組成物の保持時間を増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物の粒径は、治療薬のゆっくりとした放出を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物の粒径は、治療薬の持続性放出を提供する。いくつかの実施形態では、粒径は、450nm未満、400nm未満、350nm未満、300nm未満、275nm未満、250nm未満、225nm未満、200nm未満のサイズ、175nm未満、150nm未満、または125nm未満、または100nm未満である。いくつかの実施形態では、粒径は300nm未満である。いくつかの実施形態では、粒径は250nm未満である。いくつかの実施形態では、粒径は200nm未満である。
【0754】
いくつかの例では、本明細書に記載される任意の製剤または組成物中の粒子は、コーティングされた粒子(例えば、コーティングされた微粉化粒子)および/またはミクロスフェアおよび/またはリポソーム粒子である。微粉化技術のほんの一例として、粉砕、摩砕(例えば、空気摩擦摩鉱(ジェットミル)、ボールミル磨砕)、コアセルベーション、高圧均質化、噴霧乾燥、および/または超臨界流体結晶化があげられる。いくつかの例では、粒子は、機械的な影響により(例えば、ハンマーミル、ボールミル、および/またはピンミルにより)大きさを決められる。いくつかの例では、粒子は、流体エネルギーにより(例えば、スパイラルジェットミル、ループジェットミル、および/または流動床ジェットミルにより)大きさを決められる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は結晶粒子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は非晶質粒子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は治療薬の粒子を含み、治療薬は治療薬の遊離塩基、塩、またはプロドラッグ、もしくはその任意の組み合わせを含む。
【0755】
いくつかの例では、治療薬および治療薬の塩の組み合わせは、本明細書に記載の手順を使用して、パルス放出型耳用製剤または組成物を調製するために使用される。いくつかの製剤では、微粉化した治療薬(および/またはその塩もしくはプロドラッグ)とコーティングした粒子(例えばナノ粒子、リポソーム、ミクロスフェア)の組み合わせを用いて、本明細書に記載される任意の手順でパルス放出型の耳用の製剤または組成物を調製する。
【0756】
いくつかの実施形態では、パルス放出型プロファイルは、シクロデキストリン、界面活性剤(例えばポロキサマー(407、338、188)、トゥイーン(80、60、20、81))、PEG硬化ヒマシ油、N-メチル-2-ピロリドン等の助溶剤などの助けを借りて、治療薬(例えば、微粉化した治療薬、またはその遊離塩基、塩ないしプロドラッグ;多重微粒子の治療薬、またはその遊離塩基または塩またはプロドラッグ)の送達用量の最大で20%を可溶化し、本明細書に記載される任意の手順を用いてパルス放出型の製剤または組成物を調製することによって、達成される。
【0757】
いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、1つ以上の微粉化した治療薬を含む。そのような実施形態のいくつかでは、微粉化した薬剤は、微粉化した粒子、(例えば持続放出型コーティングで)コーティングした微粉化した粒子、またはその組み合わせを含む。そのような実施形態のいくつかでは、微粉化した粒子、コーティングした微粉化した粒子、またはその組み合わせを含む微粉化した薬剤は、遊離塩基、塩、プロドラッグ、またはそれらの任意の組み合わせとして治療薬を含む。
【0758】
<徐放性耳用製剤>
特定の実施形態では、本明細書に記載される徐放性の耳用の製剤または組成物は、耳用薬剤の暴露を増加させ、および徐放性の耳用製剤または組成物ではない製剤または組成物と比較して、耳の体液(例えば内リンパおよび/または外リンパ)中の曲線下面積(AUC)を約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%増加させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される徐放性の耳用の製剤または組成物は、徐放性ではない耳用の製剤または組成物と比較して、治療薬の暴露を増加させ、および耳の体液(例えば内リンパおよび/または外リンパ)中のCmaxを約40%、約30%、約20%、または約10%減少させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される徐放性の耳用の製剤または組成物は、徐放性ではない耳用の製剤または組成物と比較して、Cmax対Cminの比率が変化する(例えば減少する)。特定の実施形態では、Cmax対Cminの比率は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1または1:1である。特定の実施形態では、本明細書に記載される徐放性の耳用製剤は、徐放性ではない耳用の製剤または組成物と比較して、治療薬の暴露を増加させ、および治療薬の濃度がCminを上回る時間を、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%増加させる。特定の例では、本明細書に記載される徐放性の製剤または組成物は、Cmax到達時間を遅らせる。特定の例では、薬物の安定した除放は、薬物の濃度がCminを上回っている時間を延ばす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、内耳内での薬物の滞留時間を延ばす。特定の例では、一旦、薬物の薬物暴露(例えば、内リンパまたは外リンパ中の濃度)が定常状態に達すると、内リンパまたは外リンパ中の薬物濃度は、長期間(例えば1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または1年)の間、その治療量で、またはほぼその治療量でとどまる。
【0759】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、蝸牛と前庭迷路を含む外耳、中耳、および/または内耳に活性薬剤を送達する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の局所的な耳送達は、耳構造への活性薬剤の徐放を可能にし、および全身性の投与に関する欠点を克服する(例えば、内リンパまたは外リンパ中での薬物の低いバイオアベイラビリティ、外耳、中耳および/または内耳での薬物濃度の変動)。
【0760】
徐放オプションとして、限定されないがリポソーム、シクロデキストリン、生分解性高分子、分散性ポリマー、乳剤、ミクロスフェアまたは微粒子、他の粘着性の媒体、塗料、泡、海綿状物質、リポソーム、ナノカプセル剤またはナノスフェア、およびそれらの組み合わせがあげられる;他のオプションまたは成分として、粘膜接着剤、浸透促進剤、生体付着性剤、酸化防止剤、界面活性剤、緩衝剤、賦形剤、塩および保存剤があげられる。粘度への考慮が潜在的にシリンジ/針送達システムを制限する範囲で、熱可逆性ゲル剤または投与後に粘度を増強するオプションが、ポンプ、マイクロインジェクションデバイスなどを含む代替の送達システムと共にさらに構想される。
【0761】
本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の一実施形態では、耳用の製剤または組成物は、増粘された液体製剤組成物として提供され、本明細書においてさらに「耳に許容可能な増粘された液体製剤または組成物」、「耳用の増粘された液体製剤または組成物」、またはその変形として言及される。増粘された液体製剤または組成物の成分はすべて、内耳と適合しなければならない。さらに、増粘された液体製剤または組成物は、いくつかの実施形態では内耳内の所望の部位に治療薬の徐放を提供する。いくつかの実施形態では、増粘された液体製剤または組成物はさらに、所望の標的部位に治療薬を送達するための即時的または速放性の成分を有する。
【0762】
本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の一実施形態では、耳用の製剤または組成物は、懸濁製剤組成物として提供され、本明細書においてさらに「耳に許容可能な懸濁製剤または組成物」、「耳用の懸濁製剤または組成物」、またはその変形として言及される。懸濁製剤または組成物の成分はすべて、内耳と適合しなければならない。さらに、懸濁製剤または組成物は、いくつかの実施形態では内耳内の所望の部位に治療薬の徐放を提供する。いくつかの実施形態では、懸濁製剤または組成物はさらに、所望の標的部位に治療薬を送達するための即時的または速放性の成分を有する。
【0763】
本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の一実施形態では、耳用の製剤または組成物は、溶液製剤組成物として提供され、本明細書においてさらに「耳に許容可能な溶液製剤または組成物」、「耳用の溶液製剤または組成物」、またはその変形として言及される。溶液製剤または組成物の成分はすべて、内耳と適合しなければならない。さらに、溶液製剤または組成物は、いくつかの実施形態では内耳内の所望の部位に治療薬の徐放を提供する。いくつかの実施形態では、溶液製剤または組成物はさらに、所望の標的部位に治療薬を送達するための即時的または速放性の成分を有する。
【0764】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤または組成物は、二峰性の製剤または組成物であり、および速放性成分と徐放性出成分を含む。いくつかの例では、二峰性の製剤は、速放性成分(多重微粒子の薬剤(例えば微粉化された活性薬剤))の一定の放散速度、および徐放性成分(例えば活性薬剤の放出を広げるためのデポー剤として作用するカプセル化活性薬剤)の一定の放散速度を可能にする。他の実施形態では、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、徐放性の製剤または組成物として投与され、連続的またはパルス型の方法のいずれかで、またはその両方の変化形体で放出される。さらに別の実施形態では、活性薬剤の製剤または組成物は、速放性でありかつ徐放性の製剤または組成物として、連続的またはパルス型の方法のいずれかで、またはその両方の変化形体で投与される。特定の実施形態では、製剤または組成物は、治療薬の放散速度を高める賦形剤を含む。特定の実施形態では、製剤または組成物は、治療薬の放散速度を減じる賦形剤を含む。特定の実施形態では、製剤または組成物は、耳の卵円窓または正円窓一帯への活性薬剤の送達を可能にする浸透促進剤を含む。
【0765】
いくつかの実施形態では、耳用製剤は、生分解性である。他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、正円窓の外側粘膜に付着可能なように粘膜接着性の賦形剤を含む。さらに他の実施形態では、耳用の製剤または組成物は、浸透促進賦形剤を含み、さらなる実施形態では、耳用の製剤または組成物は粘度増強剤を含む。他の実施形態では、耳用の医薬製剤または組成物は、耳に許容可能なミクロスフェアまたは微粒子を提供し、さらに別の実施形態では、耳用の医薬製剤または組成物は、耳に許容可能なリポソームを提供し、さらに他の実施形態では、耳用の医薬製剤または組成物は、耳に許容可能な塗布剤または泡状物質を提供する。他の実施形態では、耳用の医薬製剤または組成物は、耳に許容可能な海綿状物質を提供する。
【0766】
本明細書に開示される製剤または組成物は、代替的に、特定の治療薬または賦形剤、希釈剤または担体の使用により生じ得る潜在的な耳毒性の影響を中和するために、少なくとも1つの活性薬剤および/または賦形剤に加えて耳保護性の薬剤を含み、これには限定されないが酸化防止剤、αリポ酸、カルシウム(calicum)、ホスホマイシンまたは鉄キレート剤が含まれる。
【0767】
本明細書に開示される実施形態の1つの態様は、流体のホメオスタシス障害の処置のために徐放性の組成物または製剤を提供することである。本明細書に開示される組成物および/または製剤の徐放の態様は、限定されないが、内耳または他の耳構造における使用に許容可能である賦形剤、薬剤または物質を含む、様々な薬剤によって与えられる。ほんの一例として、そのような賦形剤、薬剤または物質は、耳に許容可能なポリマー、耳に許容可能な粘度増強剤、耳に許容可能なマイクロスフェア、耳に許容可能なリポソーム、耳に許容可能なナノカプセルまたはナノスフェア、またはそれらの組み合わせを含む。
【0768】
したがって、少なくとも1つの耳用治療薬および耳に許容可能な希釈剤、賦形剤、および/または担体を含む医薬製剤または組成物が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、他の薬剤または医薬品、担体、保存剤、湿潤剤、または乳化剤などのアジュバント、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝剤を含んでいる。他の実施形態では、医薬製剤または組成物はさらに他の治療物質を含有する。
【0769】
<耳に許容可能な製剤/組成物>
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、増粘された液体製剤または組成物である。本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は懸濁製剤または組成物である。本明細書に記載された耳用の製剤または組成物は溶液製剤または組成物である。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、水性の液体組成物よりも大きい粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は1cP(センチポイズ)より大きい粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、少なくとも約10cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約70cP、約80cP、約90cP、約100cP、約200cP、約300cP、約400cP、約500cP、約600cP、約700cP、約800cP、約900cP、約1,000cP、約2,000cP、約3,000cP、約4,000cP、約5,000cP、約6,000cP、約7,000cP、約8,000cP、約9,000cP、約10,000cP、約15,000cP、または約20,000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約1000cP未満の粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10000cP未満の粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約2cP~約250,000cP、約2cP~約100,000cP、約2cP~約50,000cP、約2cP~約25,000cP、約2cP~約10,000cP、約2cP~約5,000cP、約2cP~約1,000cP、約2cP~約500cP、約2cP~約250cP、約2cP~約100cP、約2cP~約90cP、約2cP~約80cP、約2cP~約70cP、約2cP~約60cP、約2cP~約50cP、約2cP~約40cP、約2cP~約30cP、約2cP~約20cP、または約2cP~約10cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、液体製剤または組成物は、約2cP、約5cP、約10cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約70cP、約80cP、約90cP、約100cP、約200cP、約300cP、約400cP、約500cP、約600cP、約700cP、約800cP、約900cP、約1,000cP、約5,000cP、約10,000cP、約20,000cP、約50,000cP、約100,000cP、または約250,000cPの粘度を有する。
【0770】
いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10cP~約20000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10cP~約10000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10cP~約5000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10cP~約1000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10cP~約500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10cP~約250cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10cP~約100cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10cP~約50cPの粘度を有する。
【0771】
いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約20cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約30cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約40cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約50cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約60cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約70cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約80cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約90cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約100cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約150cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約200cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約250cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約300cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約350cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約400cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約450cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約550cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約600cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約650cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約700cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約750cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約800cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約850cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約900cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約950cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約1000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約1500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約2000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約2500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約3000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約3500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約4000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約4500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約5000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約5500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約6000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約6500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約7000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約7500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約8000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約8500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約9000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約9500cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約10000cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は約20000cPの粘度を有する。
【0772】
いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、粘度調節剤を含まない、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、少なくとも約10cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約70cP、約80cP、約90cP、約100cP、約200cP、約300cP、約400cP、約500cP、約600cP、約700cP、約800cP、約900cP、約1000cP、約2,000cP、約3,000cP、約4,000cP、約5,000cP、約6,000cP、約7,000cP、約8,000cP、約9,000cP、約10,000cP、約15,000cP、または約20,000cPの粘度を、耳用の製剤または組成物に提供する少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約1,000cP未満の粘度を耳用の製剤または組成物に提供する少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約10,000cP未満の粘度を耳用の製剤または組成物に提供する少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、約2cP~約250,000cP、約2cP~約100,000cP、約2cP~約50,000cP、約2cP~約25,000cP、約2cP~約10,000cP、約2cP~約5,000cP、約2cP~約1,000cP、約2cP~約500cP、約2cP~約250cP、約2cP~約100cP、約2cP~約90cP、約2cP~約80cP、約2cP~約70cP、約2cP~約60cP、約2cP~約50cP、約2cP~約40cP、約2cP~約30cP、約2cP~約20cP、または約2cP~約10cPの粘度を耳用の組成物または製剤に提供する少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、耳用の製剤または組成物は、約2cP、約5cP、約10cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約70cP、約80cP、約90cP、約100cP、約200cP、約300cP、約400cP、約500cP、約600cP、約700cP、約800cP、約900cP、約1,000cP、約5,000cP、約10,000cP、約20,000cP、約50,000cP、約100,000cP、または約250,000cPの粘度を耳用の製剤または組成物に提供する少なくとも1つの粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、粘度調節剤はポロキサマーではない。いくつかの実施形態では、粘度調節剤はポロキサマーである。いくつかの実施形態では、ポロキサマーはP407である。いくつかの実施形態では、粘度調節剤はポビドンである。いくつかの実施形態では、粘度調節剤はカルボマーである。いくつかの実施形態では、粘度調節剤はポリマーである。いくつかの実施形態では、粘度調節剤は二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態では、粘度調節剤は、二酸化ケイ素、ポロキサマー、カルボマー、ポビドン、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、粘度調節剤は、デキストランまたはアルギン酸塩などの多糖類である。いくつかの実施形態では、粘度調節剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸ステアリン酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、および非晶質のセルロースなどのセルロースベースである。いくつかの実施形態では、粘度調節剤はポリビニルアルコール(PVA)である。いくつかの実施形態では、粘度調節剤はポリエチレングリコール(PEG)ベースである。いくつかの実施形態では、粘度調節剤は、二酸化ケイ素、ポロキサマー、カルボマー、ポビドン、多糖類、セルロースベース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、粘度調節剤は油である。いくつかの実施形態では、粘度調節剤は蜜ろうである。いくつかの実施形態では、粘度調節剤はワセリンである。いくつかの実施形態では、粘度調節剤はヘトロラタムである。いくつかの実施形態では、粘度調節剤は12-ヒドロキシステアリン酸である。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約80重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約50重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約20重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約15重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約10重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約9重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約8重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約7重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約6重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約4重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約3重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約2重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%から約1重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.1重量%から約80重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.1重量%から約50重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.1重量%から約20重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.1重量%から約10重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.1重量%から約5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約1重量%から約80重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約1重量%から約50重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約1重量%から約20重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約1重量%から約10重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約1重量%から約5重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%の粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%より多い、約0.05重量%より多い、約0.1重量%より多い、約0.2重量%より多い、約0.3重量%より多い、約0.4重量%より多い、約0.5重量%より多い、約0.6重量%より多い、約0.7重量%より多い、約0.8重量%より多い、約0.9重量%より多い、約1.0重量%より多い、約2重量%より多い、約3重量%より多い、約4重量%より多い、約5重量%より多い、約6重量%より多い、約7重量%より多い、約8重量%より多い、約9重量%より多い、約10重量%より多い、約11重量%より多い、約12重量%より多い、約13重量%より多い、約14重量%より多い、約15重量%より多い、約16重量%より多い、約17重量%より多い、約18重量%より多い、約19重量%より多い、約20重量%より多い、約25重量%より多い、約30重量%より多い、約35重量%より多い、約40重量%より多い、約45重量%より多い、約50重量%より多い、約55重量%より多い、約60重量%より多い、約65重量%より多い、約70重量%より多い、約75重量%より多い、約80重量%より多い、約85重量%より多い、約90重量%より多い、粘度調節剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、約0.01重量%未満、約0.05重量%未満、約0.1重量%未満、約0.2重量%未満、約0.3重量%未満、約0.4重量%未満、約0.5重量%未満、約0.6重量%未満、約0.7重量%未満、約0.8重量%未満、約0.9重量%未満、約1.0重量%未満、約2重量%未満、約3重量%未満、約4重量%未満、約5重量%未満、約6重量%未満、約7重量%未満、約8重量%未満、約9重量%未満、約10重量%未満、約11重量%未満、約12重量%未満、約13重量%未満、約14重量%未満、約15重量%未満、約16重量%未満、約17重量%未満、約18重量%未満、約19重量%未満、約20重量%未満、約25重量%未満、約30重量%未満、約35重量%未満、約40重量%未満、約45重量%未満、約50重量%未満、約55重量%未満、約60重量%未満、約65重量%未満、約70重量%未満、約75重量%未満、約80重量%未満、約85重量%未満、約90重量%未満の、粘度調節剤を含む。
【0773】
いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、水を含まない、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、10重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、9重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、8重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、7重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、6重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、5重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、4重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、3重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、2重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、1重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、0.5重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、0.1重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、約50ppm未満の水を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、約25ppm未満の水を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、約20ppm未満の水を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、約10ppm未満の水を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、約5ppm未満の水を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、約1ppm未満の水を含む。
【0774】
いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、ポロキサマーを含まない、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、ポロキサマー407を含まない、または実質的に含まない。
【0775】
いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、C1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含まない、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、C1-C6アルコールを含まない、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、C1-C6グリコールを含まない、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、10重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、9重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、8重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、7重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、6重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、5重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、4重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、3重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、2重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、1重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、0.5重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、0.1重量%未満のC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約50ppm未満のC1-C6アルコール、またはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約25ppm未満のC1-C6アルコール、またはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約20ppm未満のC1-C6アルコール、またはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約10ppm未満のC1-C6アルコール、またはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約5ppm未満のC1-C6アルコール、またはC1-C6グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約1ppm未満のC1-C6アルコール、またはC1-C6グリコールを含む。
【0776】
いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、C1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含まない、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、C1-C4アルコールを含まない、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、C1-C4グリコールを含まない、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、耳用の組成物または製剤は、10重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、9重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、8重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、7重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、6重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、5重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、4重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、3重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、2重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、1重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、0.5重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態において、耳用の組成物または製剤は、0.1重量%未満のC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約50ppm未満のC1-C4アルコール、またはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約25ppm未満のC1-C4アルコール、またはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約20ppm未満のC1-C4アルコール、またはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約10ppm未満のC1-C4アルコール、またはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約5ppm未満のC1-C4アルコール、またはC1-C4グリコールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約1ppm未満のC1-C4アルコール、またはC1-C4グリコールを含む。
【0777】
非限定的なとして、耳への投与のための薬剤を調剤する場合、以下の一般に使用される溶媒の使用は、制限され、減らされ、または除去されるべきである:アルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサン。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、アルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含まない、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約50ppm未満のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約25ppm未満のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約20ppm未満のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約10ppm未満のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約5ppm未満のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳用の組成物または製剤は、各々が約1ppm未満のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。
【0778】
いくつかの実施形態では、治療薬、または薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩は、多重微粒子である。いくつかの実施形態では、治療薬、または薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩は実質的に、微粒子化された粒子の形態をしている。いくつかの実施形態では、治療薬、または薬学的に許容可能なプロドラッグまたはその塩は、耳用の医薬製剤または組成物に実質的に溶解される。
【0779】
<ポロキサマー>
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物はポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳用の製剤または組成物は、ポロキサマーを含まない、または実質的に含まない。ポロキサマーの例として、ポロキサマー407(PF-127)があげられ、これはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーから構成される非イオン性界面活性剤である。通常使用される他のポロキサマーとして、限定されないが188(F-68グレード)、237(F-87グレード)、338(F-108グレード)があげられる。ポロキサマーの水溶液は酸、アルカリ、および金属イオンの存在下で安定している。PF-127は、13,000の平均モル質量を有する、市販のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーである。それはおよそ70%のエチレンオキシドを含んでおり、これはその親水性を説明する。それは一連のポロキサマーABAブロックコポリマーの1つであり、そのメンバーは以下に示す化学式を共有する。
【0780】
【0781】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳用の製剤または組成物は、PF-127、188(F-68グレード)、237(F-87グレード)、または338(F-108グレード)を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳用の製剤または組成物はポロキサマー407を含む。
【0782】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳用の製剤または組成物は、PF-127、188(F-68グレード)、237(F-87グレード)、または338(F-108グレード)を含まない、または実質的に含まない。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳用の製剤または組成物は、ポロキサマー407を含まない、または実質的に含まない。
【0783】
特定の実施形態において、増粘剤(即ち、粘度増強剤または粘度調節剤)も、本明細書に提供される耳用の製剤または組成物に利用される。幾つかの実施形態において、増粘剤はセルロースベースの増粘剤である。幾つかの例において、増粘剤の添加は拡散的な障壁を導入し、且つ治療薬の放出の速度を下げる。幾つかの実施形態において、増粘剤、粘度増強剤、または粘度調節剤はポロキサマーではない。幾つかの実施形態において、増粘剤、粘度増強剤、または粘度調節剤はポロキサマー407ではない。幾つかの実施形態において、増粘剤、粘度増強剤、または粘度調節剤はポロキサマーである。幾つかの実施形態において、増粘剤、粘度増強剤、または粘度調節剤はポロキサマー407である。
【0784】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳用の製剤または組成物はまた、防腐剤、助溶剤、懸濁化剤、粘度増強剤、イオン強度および重量オスモル濃度の調整剤、および他の賦形剤、加えて緩衝剤を含む。薬物送達ビヒクルで用いられる適切な水溶性防腐剤は、二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、およびその他である。これらの薬剤は、通常、約0.001重量%から約5重量%の量で、好ましくは、約0.01重量%から約2重量%の量で存在する。
【0785】
適切な水溶性緩衝剤は、アルカリ金属またはアルカリ性の土類金属の炭酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、コハク酸などであり、例えば、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびトロメタミン(TRIS)などである。これらの薬剤は、系のpHを7.4±0.2、好ましくは7.4に維持するのに十分な量で存在する。このように、緩衝剤は、幾つかの例において組成物全体の重量基準で5%と同等となり得る。
【0786】
幾つかの実施形態において、助溶剤は、薬物溶解性を増強するために使用される。しかし、幾つかの薬剤は不溶性である。
【0787】
粘膜付着性賦形剤
幾つかの実施形態において、粘膜付着特性も、カルボポール934Pなどの粘膜付着性カルボマーを組成物に組み込むことによって、本明細書に開示される耳用製剤に付与される(Majithiyaらの、AAPS PharmSciTech(2006),7(3),p.E1;EP0551626)。
【0788】
用語「粘膜付着」は、生体膜のムチン層に結合する物質のために共通して使用される。粘膜接着性ポリマーとしての機能を果たすために、ポリマーは、多くの水素結合形成基との顕著なアニオン親水性、濡れた粘液/粘膜組織表面に適した表面特性、および粘液の網目を透過するのに十分な可撓性などの、幾つかの一般的な物理化学的特徴を有している。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される粘膜付着性製剤または組成物は、正円窓および/または卵円窓および/または任意の内耳構造に付着する。
【0789】
粘膜付着性薬剤には、限定されないが、少なくとも1つの可溶性ポリビニルピロリドンポリマー(PVP);水膨潤性で繊維状の架橋されたカルボキシ官能化ポリマー;架橋されたポリ(アクリル酸)(例えば、カルボポール947P);カルボマーホモポリマー;カルボマーコポリマー;親水性の多糖ゴム、マルトデキストリン、架橋したアルギネートゴムのゲル(alignate gum gel)、水分散性のポリカルボキシル化ビニルポリマー、二酸化チタン、二酸化ケイ素、およびクレイから成る群から選択される少なくとも2つの粒子状物質要素、またはこれらの混合物が挙げられる。幾つかの実施形態において、粘膜付着性薬剤は、粘度を増大させる賦形剤と組み合わせて使用され、あるいは、組成物の粘膜層との相互作用を増大させるために単独で使用される。1つの非限定的な例において、粘膜付着性薬剤は、マルトデキストリンおよび/またはアルギネートゴムである。当業者は、製剤または組成物に付与される粘膜付着特性が、粘膜を覆う量で有効な量の組成物を例えば正円窓膜の粘膜に送達し、その後、組成物を、ほんの一例ではあるが内耳の前庭構造および/または蝸牛構造を含む影響を受けた部位に送達するのに十分なレベルになければならないことを、認識する。当業者は、本明細書で提供される組成物の粘膜付着特性を決定し、故に適正範囲を決定することができる。十分な粘膜接着性を決定するための1つの方法は、限定されないが、組成物と粘膜層との相互作用の変化をモニタリングする工程を含み、限定されないが、賦形剤の存在下および不在下にて組成物の滞留または保持時間の変化を測定する工程を含む。
【0790】
粘膜接着性薬剤は、例えば、米国特許第6,638,521号、第6,562,363号、第6,509,028号、第6,348,502号、第6,319,513号、第6,306,789号、第5,814,330号、および第4,900,552号に記載されており、その各々は、全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0791】
1つの非限定的な例において、粘膜付着性薬剤はマルトデキストリンである。マルトデキストリンは、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦、または他の植物製品由来のデンプンの加水分解によって得られる炭水化物である。マルトデキストリンは、単独で使用されるか、または、他の粘膜付着性薬剤と組み合わせて使用され、本明細書に開示される製剤または組成物に粘膜付着特性を付与する。1つの実施形態において、マルトデキストリンとカルボポールポリマーとの組み合わせは、本明細書に開示される製剤または組成物の粘膜付着特性を増大させるために使用される。
【0792】
別の非限定的な例において、粘膜付着性薬剤は、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素、および粘土から選択される少なくとも2つの粒子状物質成分であり、組成物は、投与前に液体で更に希釈されず、および二酸化ケイ素のレベルは、存在する場合、組成物の約3重量%から約15重量%である。二酸化ケイ素は、存在する場合、噴霧化された二酸化ケイ素、沈殿された二酸化ケイ素、コアセルベートされた二酸化ケイ素、ゲル二酸化ケイ素、およびそれらの混合物から成る群から選択される。粘土は、存在する場合、カオリン鉱物、セルペンチン鉱物、スメクタイト、イライト、またはそれらの混合物である。例えば、粘土は、ラポナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイト、またはそれらの混合物である。
【0793】
安定剤
1つの実施形態において、安定剤は、例えば、脂肪酸、脂肪アルコール、アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖エーテル、脂肪酸の親水性誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、炭化水素、疎水性ポリマー、吸湿性ポリマー、およびそれらの組み合わせから選択される。幾つかの実施形態において、安定剤のアミドアナログも使用される。更なる実施形態において、選択される安定剤は、製剤または組成物の疎水性を変化させ(例えば、オレイン酸、ワックス)、あるいは製剤または組成物中の様々な成分の混合を改善し(例えば、エタノール)、組成物中の水分レベルを制御し(例えば、PVPまたはポリビニルピロリドン)、相の移動度を制御し(長鎖脂肪酸、アルコール、エステル、エーテル、アミド、またはそれらの組み合わせなどの室温より高い融点を有する物質;ワックス)、および/または製剤(formula)の封入物質との適合性を改善する(例えば、オレイン酸、ワックス)。別の実施形態において、これら安定剤の幾つかは、溶媒/共溶媒(例えばエタノール)として使用される。更なる実施形態において、安定剤は、活性医薬成分の劣化を阻害するのに十分な量で存在する。そのような安定化剤の例は、限定されないが:(a)約0.5%から約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%から約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%から約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mMから約10mMのEDTA、(e)約0.01%から約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%から約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%から約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェートおよび他のヘパリノイド、(m)マグネシウムおよび亜鉛などの2価カチオン;または(n)それらの組み合わせを含む。
【0794】
幾つかの実施形態において、安定剤は二酸化ケイ素である。幾つかの実施形態において、二酸化ケイ素は懸濁製剤中の安定剤である。幾つかの実施形態において、二酸化ケイ素は固化防止剤(即ち塊の形成を防ぐ薬剤)である。幾つかの実施形態において、二酸化ケイ素は懸濁製剤を安定させる固化防止剤(即ち塊の形成を防ぐ薬剤)である。幾つかの実施形態において、安定剤は固化防止剤である。
【0795】
幾つかの実施形態において、安定剤はカルボマーである。幾つかの実施形態において、カルボマーは、正に荷電されたタンパク質のための錯化剤である。幾つかの実施形態において、錯化剤中の正に荷電されたタンパク質は、可溶性が減少され、それ故、製剤からゆっくりと放出される。
【0796】
幾つかの実施形態において、安定剤は錯化剤である。幾つかの実施形態において、安定剤は、複合体を形成するために治療薬と相互に作用する。幾つかの実施形態において、安定剤はタンパク質錯化剤である。幾つかの実施形態において、タンパク質錯化剤は、タンパク質治療薬の電荷とは反対の電荷を持つポリマーである。幾つかの実施形態において、ポリマーはカルボマーまたはアルギン酸塩である。幾つかの実施形態において、安定剤は、タンパク質治療薬の可溶性を減らすタンパク質治療薬との複合体を形成する。幾つかの実施形態において、安定剤は、タンパク質治療薬の遅延放出を提供するタンパク質治療薬との複合体を形成する。幾つかの実施形態において、安定剤は、タンパク質治療薬の持続放出を提供するタンパク質治療薬との複合体を形成する。
【0797】
幾つかの実施形態において、安定剤は中性ポリマーである。中性ポリマーの例は、ポビドン、ポロキサマー、およびHMPCを含むがこれらに限定されない。幾つかの実施形態において、中性ポリマーは、治療薬を封入し且つ治療薬の遅延放出を提供する、ポリマーマトリクスを形成する。幾つかの実施形態において、中性ポリマーは、治療薬を封入し且つ治療薬の持続放出を提供する、ポリマーマトリクスを形成する。
【0798】
付加的な有用な耳に許容可能な製剤または組成物は、タンパク質凝集の速度を下げることにより耳用の製剤または組成物の安定性を高めるために、1つ以上の抗凝集添加剤を含む。選択される抗凝集添加剤は、治療薬、または耳用薬剤、例えば抗TNF抗体が曝露される疾病の性質に依存する。例えば、撹拌および熱応力を受ける特定の製剤または組成物は、凍結乾燥および再構成を受ける製剤とは異なる抗凝集添加剤を要求する。有用な抗凝集性添加剤としては、ほんの一例ではあるが、尿素、塩化グアニジン、グリシンまたはアルギニンなどの単純なアミノ酸、糖、多価アルコール、ポリソルベート、ポリエチレングリコールおよびデキストランなどのポリマー、アルキルグリコシドなどのアルキルサッカライド、および界面活性剤が挙げられる。
【0799】
他の有用な製剤または組成物には、必要な場合に化学安定性を増強するための1つ以上の抗酸化剤が挙げられる。適切な抗酸化剤は、ほんの一例ではあるが、アスコルビン酸および二亜硫酸ナトリウムを含む。1つの実施形態において、抗酸化剤は、金属キレート剤、チオール含有化合物、および他の一般的な安定剤から選択される。
【0800】
また他の有用な製剤または組成物は、物理的安定性を増強するため、または他の目的のための1つ以上の界面活性剤を含む。適切な非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油;および、例えばオクトキシノール10、オクトキシノール40などのポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテルを含む。
【0801】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬製剤または組成物は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約1か月間、少なくとも約2か月間、少なくとも約3か月間、少なくとも約4か月間、少なくとも約5か月間、または少なくとも約6か月間の任意の期間にわたって、化合物の劣化に関して安定している。他の実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、少なくとも約1週間の期間にわたって、化合物の劣化に関して安定している。本明細書には、少なくとも約1か月の期間にわたって、化合物の劣化に関して安定する製剤または組成物も記載される。
【0802】
他の実施形態において、付加的な界面活性剤(共界面活性剤(co-surfactant))および/または緩衝剤は、本明細書で以前に記載される1つ以上の薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされ、それにより界面活性剤および/または緩衝液は、安定性のために最適なpHに生成物を維持する。最適な共界面活性剤は、限定されないが、以下を含む:a)天然および合成の親油性薬物、例えばリン脂質、コレステロール、コレステロール脂肪酸エステル、およびその誘導体);b)非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエステル、ソルビタン脂肪酸エステル(Spans)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート(Tween80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20)、および他のTween)、ソルビタンエステル、グリセリンエステル、例えばMyrjおよびグリセリントリアセタート(トリアセチン)、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート80、ポロキサマー、ポロキサミン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えばCremophor(登録商標)RH40、Cremphor(登録商標)A25、Cremphor(登録商標)A20、Cremophor(登録商標)EL)、および他のCremophor(登録商標)、スルホサクシネート、アルキル硫酸塩(SLS);PEG-8グリセリルカプリル酸塩/カプリン酸塩(Labrasol)、PEG-4グリセリルカプリル酸塩/カプリン酸塩(Labrafac Hydro WL 1219)、PEG-32グリセリルラウリン酸(Gelucire 444/14)、PEG-6グリセリルモノオレアート(Labrafil M 1944 CS)、PEG-6グリセリルリノール酸塩(Labrafil M 2125 CS)などのPEGグリセリル脂肪酸エステル;プロピレングリコールラウリン酸塩、プロピレングリコールカプリル酸塩/カプリン酸塩などのプロピレングリコールモノおよびジ脂肪酸エステル;Brij(登録商標)700、アスコルビル-6-パルミチン酸塩、ステアリルアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリセロールトリイリシンオレアート(triiricinoleate)、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物;c)陰イオン界面活性剤、限定されないが、カルシウムカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、スルホコハク酸ナトリウム、ジオクチル、アルギン酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル酸カリウム、胆汁塩、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物;およびd)陽イオン性界面活性剤、例えば、第四級アンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム。
【0803】
更なる実施形態において、1つ以上の共界面活性剤が本開示の製剤または組成物に利用されると、これらは、例えば薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされ、および、例えば、約0.1%から約20%の範囲、約0.5%から約10%の範囲の量で最終製剤に存在する。1つの実施形態において、界面活性剤は、0から20のHLB値を有する。更なる実施形態において、界面活性剤は、0から3、4から6、7から9、8から18、13から15、10から18のHLB値を有する。
【0804】
防腐剤
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳用製剤または防腐剤を含まない。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳用の製剤または組成物は防腐剤を含む。本明細書に開示される製剤または組成物での使用に適切な耳に許容可能な防腐剤には、安息香酸、ホウ酸、p-ヒドロキシベンゾエート、ベンジルアルコール、低級アルキルアルコール(例えば、エタノール、ブタノールなど)、第四級化合物、安定化された二酸化塩素、水銀、例えばメルフェンおよびチオメルサール、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示される製剤との使用に適切な防腐剤は聴器毒性ではない。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳用の製剤または組成物は、聴器毒性である防腐剤を含まない。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含まない。
【0805】
特定の実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物には、0.5EU/kg未満、0.4EU/kg未満、または0.3EU/kg未満の内毒素レベルがある。特定の実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、製剤または組成物1gあたり、約60未満のコロニー形成単位(CFU)、約50未満のコロニー形成単位、約40未満のコロニー形成単位、または約30未満のコロニー形成単位の微生物剤を有する。特定の実施形態において、本明細書に記載される制御放出製剤または組成物は、実質的に発熱物質を含まない。
【0806】
更なる実施形態において、防腐剤は、本明細書に提示される製剤または組成物内で、ほんの一例ではあるが抗菌剤である。1つの実施形態において、製剤または組成物は、ほんの一例としてメチルパラベンなどの防腐剤を含む。別の実施形態において、メチルパラベンは、約0.05%から約1.0%、約0.1%から約0.2%の濃度である。特定の実施形態において、本明細書に記載される耳適合性の製剤に利用される防腐剤は、抗酸化剤(例えば、本明細書に記載されるようなブチルヒドロキシトルエン(BHT)など)である。特定の実施形態において、酸化防止の防腐剤は、無毒であり、および/または内耳環境に刺激を引き起こさない。
【0807】
担体
本明細書に記載される製剤または組成物での使用に適切な担体は、限定されないが、薬学的に許容可能な溶媒を含む。例えば、適切な溶媒は、限定されないがポリエチレングリコール(PEG)などのポリアルキレングリコール、およびその任意の組み合わせまたは混合物を含む。他の実施形態において、基剤は、薬学的に許容可能な界面活性剤および溶媒の組み合わせである。
【0808】
幾つかの実施形態において、他の賦形剤は、フマル酸ステアリルナトリウム、ジエタノールアミンセチル硫酸、イソステアレート、ポリエトキシ化ヒマシ油、塩化ベンザルコニウム、ノンオキシル10、オクトキシノール9、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル(モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン)、レシチン、リン脂質、ホスファチジルコリン(c8-c18)、ホスファチジルエタノールアミン(c8-c18)、ホスファチジルグリセロール(c8-c18)、それらの薬学的に許容可能な塩、並びにそれらの組み合わせまたは混合物を含む。
【0809】
更なる実施形態において、担体はポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、分子量の変動を伴う様々なグレードで利用可能である。例えば、ポリエチレングリコールは、PEG200;PEG300;PEG400;PEG500(ブレンド);PEG600;PEG900;PEG1000;PEG1450;PEG1540;PEG2000;PEG3000;PEG3350;PEG4000;PEG4600およびPEG8000として利用可能である。本開示の目的のために、ポリエチレングリコールの全てのグレードが、本明細書に記載される製剤の調製での使用のために考慮される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤を調製するために使用されるポリエチレングリコールは、PEG300である。
【0810】
他の実施形態において、担体はポリソルベートである。ポリソルベートは、ソルビタンエステルの非イオン性の界面活性剤である。本開示における有用なポリソルベートとしては、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80(Tween 80)およびそれらの任意の組み合せまたは混合物が挙げられるが、これらに限定されない。更なる実施形態において、ポリソルベート80は、薬学的に許容可能な担体として利用される。
【0811】
幾つかの実施形態において、有効医薬成分の割合は、全体の医薬製剤または組成物の重量または容量の、約0.01%から約20%、約0.01%から約10%、約0.01%から約5%、またはそれ以上の範囲で変動する。幾つかの実施形態において、治療に有用な製剤または組成物それぞれにおける化合物の量は、適切な用量が化合物の与えられた単位投与量で獲得されるように、調製される。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品有効期間などの要因、および他の薬学的な検討事項が本明細書中で考慮され、そのような医薬製剤または組成物の調製は本明細書で提示される。
【0812】
懸濁化剤
1つの実施形態において、薬学的に許容可能な製剤中の有効医薬成分であって、製剤または組成物は少なくとも1つの懸濁化剤を含む。
【0813】
1つの実施形態において、少なくとも1つの細胞毒性剤は、薬学的に許容可能な粘度を増強した製剤または組成物に含まれ、製剤または組成物は少なくとも1つの懸濁化剤を更に含み、懸濁化剤は製剤または組成物に制御放出特性を付与することを補助する。幾つかの実施形態において、懸濁化剤はまた、耳に許容可能な細胞毒性剤の製剤または組成物の粘度を増加させる機能を果たす。
【0814】
懸濁化剤は、ほんの一例として、ポリビニルピロリドン、例えばポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、ポリエチレングリコール、例えば、約300~6000、約3350~約4000、または約7000~約5400の分子量を有するポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースアセテートステアレート、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ガム、例えばトラガカントガム、アカシアガム、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタン、糖、セルロース化合物、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリソルベート-80、アルギン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン硬化ソルビタンモノラウリンレート、ポビドンなどの化合物を含む。幾つかの実施形態において、有用な水溶性懸濁液は、懸濁化剤として1つ以上のポリマーを含む。有用なポリマーは、セルロースポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性ポリマー、および、架橋カルボキシル含有ポリマーなどの非水溶性ポリマーを含む。
【0815】
幾つかの実施形態において、製剤または組成物は、賦形剤、他の医療薬剤または医薬品、担体、アジュバント、例えば防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、および塩を含む。幾つかの実施形態において、賦形剤、担体、アジュバントは、薬学的に許容可能な製剤または組成物を形成するのに有用である。幾つかの実施形態において、製剤または組成物は安定剤を更に含む。別の実施形態において、製剤または組成物は可溶化剤を含む。更なる実施形態において、製剤または組成物は発泡防止剤を含む。また更なる実施形態において、製剤または組成物は酸化防止剤を含む。また別の実施形態において、製剤または組成物は分散剤を含む。1つの実施形態において、製剤または組成物は界面活性剤を更に含む。また別の実施形態において、製剤または組成物は湿潤剤を含む。
【0816】
粘度増強剤
1つの実施形態において、粘度増強剤を含まないまたは実質的に含まない製剤または組成物がある。1つの実施形態において、少なくとも1つの有効医薬成分および増粘剤(viscosity agent)を含む製剤または組成物がある。本明細書にはまた、粘度増強剤を含まないまたは実質的に含まない制御放出製剤または組成物も記載される。本明細書にはまた、治療薬および粘度増強剤を含む制御放出製剤または組成物も記載されている。幾つかの実施形態において、適切な粘度増強剤はポロキサマーを含まない。適切な粘度増強剤には、ほんの一例として、増粘剤および懸濁化剤が挙げられる。1つの実施形態において、粘度が増強した製剤または組成物は、薬学的に許容可能なバッファーを含まない。他の実施形態において、粘度が増強した製剤または組成物は、薬学的に許容可能なバッファーを含む。必要ならば、等張性を調節するために、塩化ナトリウムまたは他の等張化剤が随意に使用される。
【0817】
本明細書には、有効医薬成分と増粘剤を含む製剤または組成物が記載される。適切な増粘剤には、ほんの一例として懸濁化剤が挙げられる。1つの実施形態において、増粘させた製剤または組成物は、薬学的に許容可能なバッファーを含まない。別の実施形態において、増粘させた製剤または組成物は、薬学的に許容可能なバッファーを含む。
【0818】
ほんの一例として、耳に許容可能な増粘剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、硫酸コンドロイチンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。本明細書に記載される医薬組成物に使用される他の増粘剤には、限定されないが、アカシア(アラビアゴム)、寒天、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ヒバマタ、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、カルボポール、キサンタン、セルロース、微結晶性セルロース(MCC)、セラトニア、ツノマタ、デキストロース、ファーセレラン、ゼラチン、ガティゴム、グアーガム、ヘクトライト、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、ハチミツ、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、アラヤガム、キサンタンガム、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 200-4500)、トラガカントガム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリル酸塩)、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、炭酸プロピレン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体(PVM/MA)、ポリ(メトキシエチルメタクリル酸塩)、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリル酸塩)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、二酸化ケイ素、Splenda(登録商標)(デキストロース、バクガデキストリン、およびスクラロース)、またはそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態において、粘度を増強する賦形剤は、メチルセルロース(MC)とCMCの組み合わせである。別の実施形態において、粘度増強剤は、カルボキシメチル化キトサン、またはキチン、およびアルギン酸塩の組み合わせである。キチンおよびアルギンの、本明細書に開示されるCNSモジュレータとの組み合わせは、制御放出製剤として作用し、製剤からのCNSモジュレータの拡散を制限する。更に、カルボキシメチル化キトサンおよびアルギン酸塩の組み合わせは、正円窓膜を通る本明細書に記載される有効成分の透過性を増やすことを補助するために随意に使用される。
【0819】
更なる実施形態において、耳用の製剤または組成物は、約10~1,000,000センチポアズ、約100~1,000,000センチポアズ、約500~1,000,000センチポアズ、約750~1,000,000センチポアズ;約1000~40,000センチポアズ;約2000~35,000センチポアズ;約3000~30,000センチポアズ;約4000~25,000センチポアズ;約5000~20,000センチポアズ;または約6000~15,000センチポアズの粘度を提供するのに十分な、粘度増強剤または粘度調節剤を含む。
【0820】
更なる実施形態において、耳用の製剤または組成物は、約2cP~約250,000cP、約2cP~約100,000cP、約2cP~約50,000cP、約2cP~約25,000cP、約2cP~約10,000cP、約2cP~約5,000cP、約2cP~約1,000cP、約2cP~約500cP、約2cP~約250cP、約2cP~約100cP、約2cP~約90cP、約2cP~約80cP、約2cP~約70cP、約2cP~約60cP、約2cP~約50cP、約2cP~約40cP、約2cP~約30cP、約2cP~約20cP、または約2cP~約10cPの粘度を提供するのに十分な、粘度増強剤または粘度調節剤を含む。幾つかの実施形態において、製剤または組成物は、約2cP、約5cP、約10cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約70cP、約80cP、約90cP、約100cP、約200cP、約300cP、約400cP、約500cP、約600cP、約700cP、約800cP、約900cP、約1,000cP、約5,000cP、約10,000cP、約20,000cP、約50,000cP、約100,000cP、または約250,000cPの粘度を有する。
【0821】
幾つかの実施形態において、本明細書に提示される耳用の製剤または組成物の粘度は、本明細書に記載される任意の手段で測定される。例えば、特定の実施形態において、LVDV-II+CP Cone PlateViscometerおよびCone Spindle CPE-40が、本明細書に記載される製剤の粘度を算出するために使用される。他の実施形態において、Brookfield(スピンドルおよびカップ)粘度計が、本明細書に記載される製剤または組成物の粘度を算出するために使用される。幾つかの実施形態において、本明細書で言及される粘度範囲は、室温で測定される。他の実施形態において、本明細書で言及される粘度範囲は、体温で測定される。
【0822】
耳に許容可能な浸透促進剤
別の実施形態において、製剤または組成物は、1つ以上の浸透促進剤を更に含む。生体膜への浸透は浸透促進剤により増強される。浸透促進剤は、生体膜をわたる共投与された物質の輸送を促進する化学物質である。浸透促進剤は化学構造に従って分類される。イオン性と非イオン性の両方の界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテル、ラウレス-9、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル(PLE)、Tween80、ノニルフェノキシポリエチレン(NP-POE)、ポリソルベートなどが、浸透促進剤として機能する。胆汁塩(グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムなど)、脂肪酸および誘導体(オレイン酸、カプリン酸、モノ-グリセリドおよびジ-グリセリド、ラウリル酸、アシルコリン、カプリル酸、アシルカルニチン、カプリル酸ナトリウムなど)、キレート剤(EDTA、クエン酸、サリチル酸塩など)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシドなど)、およびアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、プロパンジオールなど)も、浸透促進剤として機能する。加えて、開示のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,151,191号、第6,221,367号、および第5,714,167号に記載のペプチド様浸透促進剤は、付加的な実施形態として考慮される。これら浸透促進剤は、アミノ酸およびペプチド誘導体であり、膜または細胞間の密着結合の完全性に影響を与えることなく、受動的な細胞間拡散による薬物吸収を可能にする。幾つかの実施形態において、浸透促進剤はヒアルロン酸である。
【0823】
幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は界面活性剤である。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキルグリコシドおよび/またはアルキルエステルサッカライドを含む界面活性剤である。本明細書で使用されるように、「アルキル-グリコシド」は、疎水性アルキルに結合した親水性サッカライド(例えばグルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、またはグルコース)を含む化合物を意味する。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは、アミド結合、アミン結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、グリコシド結合、チオグリコシド結合、および/またはウレイド結合によって疎水性アルキル(例えば、約6~25の炭素原子を含むアルキル)に結合した糖を含む。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、オクタデシルα-D-マルトシドまたはβ-D-マルトシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルα-D-グルコシドまたはβ-D-グルコシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルα-D-スクロシドまたはβ-D-スクロシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ドデシル-、トリデシル-、およびテトラデシルβ-D-チオマルトシド;ヘプチル-またはオクチル-1-チオα-D-グルコピラノシドまたはβ-D-グルコピラノシド;アルキルチオスクロース;アルキルマルトトリオシド;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;アミド結合によってアルキル鎖に結合したパラチノースまたはイソマルトアミンの誘導体、尿素によってアルキル鎖に結合したイソマルトアミン誘導体;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイド、およびスクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドを含む、界面活性剤である。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは、グリコシド結合によって炭素原子が9~16個のアルキル鎖に結合するマルトース、スクロース、グルコース、またはこれらの組み合わせである(例えば、ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルスクロシド;ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルグルコシド;ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルマルトシド)。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは、ドデシルマルトシド、トリデシルマルトシド、およびテトラデシルマルトシドである。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは、テトラデシル-β-D-マルトシドである。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは少なくとも1つのグルコースを有する二糖類である。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、α-D-グルコピラノシル-β-グルコピラノシド、n-ドデシル-4-O-α-D-グルコピラノシル-β-グルコピラノシド、および/またはn-テトラデシル-4-O-α-D-グルコピラノシル-β-グルコピラノシドを含む界面活性剤である。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは、純水中または水溶液中で、約1mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシド内の酸素原子は硫黄原子で置換される。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、βアノマーであるアルキル-グリコシドを含む界面活性剤である。幾つかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキル-グリコシドを含む界面活性剤であり、アルキル-グリコシドは、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.5%、または99.9%のβアノマーを含む。
【0824】
特定の例において、浸透促進剤はヒアルロニダーゼである。特定の例において、ヒアルロニダーゼは、ヒトまたはウシのヒアルロニダーゼである。幾つかの例において、ヒアルロニダーゼは、ヒトのヒアルロニダーゼ(例えば、ヒトの精子に見出されるヒアルロニダーゼ、PH20(Halozyme)、Hyelenex(登録商標)(Baxter International,Inc.))である。幾つかの例において、ヒアルロニダーゼは、ウシのヒアルロニダーゼ(例えば、ウシの睾丸のヒアルロニダーゼ、Amphadase(登録商標)(Amphastar Pharmaceuticals)、Hydase(登録商標)(PrimaPHarm,Inc.))である。幾つかの例において、ヒアルロニダーゼは、ヒツジのヒアルロニダーゼ、Vitrase(登録商標)(ISTA Pharmaceuticals)である。特定の例において、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼは、組み換え型ヒアルロニダーゼである。幾つかの例において、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼは、ヒト化された組み換え型ヒアルロニダーゼである。幾つかの例において、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼはペグ化されたヒアルロニダーゼ(例えば、PEGPH20(Halozyme))である。
【0825】
フォームおよびペイント
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳用治療薬は、耳に許容可能なペイントとして分配される。本明細書で使用されるように、ペイント(塗膜形成要素としても知られる)は、溶媒、モノマーまたはポリマー、活性薬剤および随意に1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤から成る溶液である。組織への適用後、溶媒は蒸発して、後にモノマーまたはポリマー、および活性薬剤から成る薄いコーティングを残す。コーティングは、活性薬剤を保護し、且つそれを適用部位に固定された状態に維持する。これにより、失われる活性薬剤の量は減少し、対照的に被験体に送達される量は増加する。非限定的な例として、ペイントは、コロジオン(例えば弾性コロジオン、USP)、および糖類シロキサン共重合体および架橋剤を含む溶液を含んでいる。コロジオンは、ピロキシリン(ニトロセルロース)を含むエチルエーテル/エタノール溶液である。適用後、エチルエーテル/エタノール溶液は、後にピロキシリンの薄膜を残して蒸発する。糖類シロキサン共重合体を含む溶液において、糖類シロキサン共重合体は、溶媒の蒸発が糖類シロキサン共重合体の架橋を始めた後、コーティングを形成する。ペイントに関する付加的な開示については、全体が本明細書に組み込まれるRemington: The Science and Practice of Pharmacyを参照。本明細書で使用のために予期されるペイントは、耳を介する圧縮波の伝播と干渉しないように、可撓性である。更に、ペイントは、液体(即ち、溶液、懸濁液、またはエマルジョン)、半固体(即ち、ゲル、フォーム、ペースト、またはゼリー)、あるいはエアロゾルとして適用される。
【0826】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳用治療薬は制御放出フォームとして分配される。本明細書に開示される組成物に使用するのに適切なフォーム化可能な担体の例は、限定されないが、アルギン酸塩およびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、コラーゲン、例えば、デキストラン、デキストラン誘導体、ペクチン、デンプン、付加的なカルボキシル基および/またはカルボキサミド基を有している、および/または親水性の側鎖を有しているデンプンなどの加工デンプン、セルロースおよびその誘導体、寒天およびその誘導体、例えばポリアクリルアミドで安定させた寒天を含む、多糖、ポリエチレンオキシド、メタクリル酸グリコール、ゼラチン、キサンタン(xanthum)、グアー、カラヤ、ゲラン、アラビア、トラガカント、およびローカストビーンガムなどのガム、またはそれらの組み合わせを含む。前述の担体の塩、例えばアルギン酸ナトリウムも適切である。製剤は随意に、起泡剤を更に含み、これは、界面活性剤または外部推進薬を含むフォームの形成を促進する。適切な起泡剤の例は、セトリミド、レシチン、石鹸、シリコーンなどを含む。Tween(登録商標)などの市販の界面活性剤も適切である。
【0827】
耳に許容可能な海綿状物質
内耳または中耳における海綿状物質の使用も、本実施形態の範囲内で考慮される。幾つかの実施形態において、海綿状物質は、ヒアルロン酸またはその誘導体から形成される。海綿状物質は、望ましい耳用治療剤をしみ込ませられ、且つ、内耳内に耳用治療剤の制御放出を提供するように内耳内にはいされ、あるいは、内耳への耳用治療剤の制御放出を提供するように正円窓膜に接触される。幾つかの実施形態において、海綿状物質は生物分解性である。
【0828】
シクロデキストリン製剤/組成物
特異的な実施形態において、製剤または組成物は代替的にシクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、6、7、または8のグルコピラノースユニットを含む環状オリゴ糖であり、それぞれα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、またはγ-シクロデキストリンと呼ばれている。シクロデキストリンは医薬製剤または組成物に特に有用であると分かっている。シクロデキストリンは、水溶性を増強する親水性の外部と、空洞を形成する疎水性の内部とを備える。水性の環境下で、他の分子の疎水性部分は頻繁に、シクロデキストリンの疎水性空洞に入り込み、包接化合物を形成する。加えて、シクロデキストリンはまた、疎水性空洞内部に無い分子との非結合性の相互作用も可能である。シクロデキストリンは、それぞれのグルコピラノシルユニットに3つの遊離水酸基、またはα-シクロデキストリン上に18の水酸基、β-シクロデキストリン上に21の水酸基、およびγ-シクロデキストリン上に24の水酸基を備える。これら水酸基のうち1つ以上は、多くの試薬のうちいずれかと反応し、多くの様々なシクロデキストリン誘導体を形成する。シクロデキストリンのより一般的な誘導体のうち幾つかは、ヒドロキシプロピルエーテル、スルホン酸塩、およびスルホアルキルエーテルである。β-シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)の構造を以下に示す。
【0829】
【0830】
シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体は薬物の溶解度を改善するために頻繁に使用されるため、医薬製剤または組成物におけるシクロデキストリンの使用は当該技術分野で周知である。増強された溶解度の多くの場合、包接化合物が含まれており;しかし、シクロデキストリンと不溶性化合物との他の相互作用も溶解度を改善する。ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)は、発熱物質を含まない製品(pyrogen free product)として市販で入手可能である。これは、水に容易に溶ける非吸湿性の白い粉末である。HPβCDは、熱的に安定しており、中性PHでは分解しない。故に、シクロデキストリンは、組成物または製剤中の治療薬の溶解度を改善する。従って、幾つかの実施形態において、シクロデキストリンは、本明細書に記載される製剤または組成物内で、治療薬あるいは耳に許容可能な耳用薬剤の溶解度を増加させることが挙げられる。他の実施形態において、シクロデキストリンを加えると、本明細書に記載される製剤または組成物の中で制御放出賦形剤として機能する。
【0831】
使用に好ましいシクロデキストリン誘導体は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン、硫酸β-シクロデキストリン、硫酸α-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを含む。
【0832】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される組成物および方法に使用されるシクロデキストリンの濃度は、生理学的性質、薬物動態的性質、副作用または有害事象、製剤または組成物の濃度、あるいは、治療薬、またはその塩またはプロドラッグに関連する他の要因に従って変動する。製剤または組成物中の他の賦形剤の特性は、幾つかの例においても重要である。故に、本明細書に開示される製剤、組成物、および方法に従って使用されるシクロデキストリンの濃度または量は、幾つかの実施形態において変動する。
【0833】
特定の実施形態において、組成物または製剤は更に、必要な場合、分散剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolilidone)、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、硫酸コンドロイチンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどの適切な増粘剤を含む。ポリソルベート80、ポリソルベート20、チロキサポール、Cremophor、HCO 40などの非イオン性界面活性剤が随意に使用される。特定の実施形態において、調製物は随意に、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、トリスなど適切な緩衝化システムを含み、および、水酸化ナトリウムおよび塩酸などのpH調節剤も随意に本開示の製剤に使用される。必要ならば、等張性を調節するために、塩化ナトリウムまたは他の等張化剤も使用される。
【0834】
耳許容可能なミクロスフェアおよびナノスフェア
本明細書に開示される耳用薬剤および/または他の医薬品は随意に、制御放出粒子、脂質複合体、リポソーム、ナノ粒子、ミクロスフェア、ナノカプセル、または耳用薬剤の局所輸送を増強または容易にする他の薬剤の中に組み込まれる。幾つかの実施形態において、単一の製剤または組成物が使用され、そこには少なくとも1つの有効医薬成分が存在し、一方で他の実施形態において、2つ以上の別個の製剤または組成物の混合物を含む医薬製剤または組成物が使用され、そこには少なくとも1つの有効医薬成分が存在する。特定の実施形態において、製剤または組成物は、製剤または組成物の特性を変更または改善するために1つ以上の薬剤によって架橋される。
【0835】
ミクロスフェアは、参照により本明細書に組み込まれる次の引用文献に記載されている:Luzzi, L. A., J. Pharm. Psy. 59:1367 (1970);米国特許第4,530,840号; Lewis, D. H., “Controlled Release of Bioactive Agents from Lactides/Glycolide Polymers” in Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems, Chasin, M. and Langer, R., eds., Marcel Decker (1990);米国特許第4,675,189号;Beck et al., “Poly(lactic acid) and Poly(lactic acid-co-glycolic acid) Contraceptive Delivery Systems,” in Long Acting Steroid Contraception, Mishell, D. R., ed., Raven Press (1983);米国特許第4,758,435号;米国特許第3,773,919号;米国特許第4,474,572号; G. Johns et al. “Broad Applicability of a Continuous Formation Process,” Drug Delivery Technology vol. 4 (Jan./Feb. 2004)。これらはそれぞれ開示のために参照により本明細書に組み込まれる。ミクロスフェアとして製剤されるタンパク質治療薬の例は、米国特許第6,458,387号;米国特許第6,268,053号;米国特許第6,090,925号;米国特許第5,981,719号;および米国特許第5,578,709号を含み、これらは開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0836】
ミクロスフェアは通常球形であるが、不規則に形作られた微小粒子も可能である。ミクロスフェアは、サブミクロンから1000ミクロンまでの直径に及ぶ大きさで変動する。好ましくは、サブミクロンから250ミクロンの直径のミクロスフェアが望ましく、これにより標準のゲージ針での注射による投与が可能になる。ミクロスフェアは故に、注射可能な製剤または組成物での使用に許容可能なサイズの範囲で、ミクロスフェアを産生する任意の方法によって調製される。注射は、液体製剤または組成物の投与のために使用される標準ゲージ針で遂行される。
【0837】
高分子マトリクス材料の適切な例には、ポリ(グリコール酸)、ポリ-d,l-乳酸、ポリ-l-乳酸、前述のもののコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸カプロラクトン)、ポリジオキサノン(polydioxonene)、ポリ無水物、ポリホスファゼン(polyphosphazines)、および、アルブミン、カゼイン、並びにグリセロールモノステアラートおよびジステアラートなどの幾つかのワックスなどを含む天然ポリマーが挙げられる。様々な市販で入手可能なポリ(ラクチド-co-グリコリド)材料(PLGA)は、本明細書に開示の方法に使用される。例えば、ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコール酸)は、Boehringer-Ingelheimから、RESOMER RG 503として市販で入手可能である。この生成物は、50%のラクチドと50%のグリコリドのモルパーセントの組成物である。これらコポリマーは、幅広い範囲の分子量、およびグリコール酸に対する乳酸の比率で、利用可能である。使用に好ましいポリマーは、ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)である。そのようなコポリマーにおけるグリコリドに対するラクチドの分子比は、約95:5から約50:50の範囲にあることが好ましい。他の実施形態において、ポリエチレングリコール(PEG)を備えたPLGAコポリマーは、本明細書に開示される製剤に適切な高分子マトリクスである。例えば、PEG-PLGA-PEGブロックポリマーは、結果として生じる製剤の高い機械的安定度をもたらす、生物分解性マトリクスである。PEG-PLGA-PEGブロックポリマーを使用する製剤の機械的安定度は、インビトロで1か月より長い間維持されている。幾つかの実施形態において、異なる物理的性質を備えた細胞毒性剤の放出速度を制御するために、PEG-PLGA-PEGブロックポリマーが使用される。特に、幾つかの実施形態において、親水性細胞毒性剤がより迅速に放出され、例えば薬物の約50%が24時間後に放出され、残りは約5日かけて放出され、一方で疎水性薬剤はよりゆっくりと放出され、例えば約80%が8週間後に放出される。
【0838】
高分子マトリクス材料の分子量は、ある程度重要である。分子量は、良好なポリマーコーティングを形成するように、即ちポリマーが優れた塗膜形成要素となるように、十分に高くなければならない。通常、良好な分子量は、5,000~500,000ダルトンの範囲である。ポリマーの分子量はまた、分子量がポリマーの生分解速度に影響を及ぼすという観点から重要である。薬物放出の拡散機構のために、薬物の全てが微小粒子から放出され、その後分解されるまで、ポリマーは完全なままでなければならない。薬物はまた、重合体の賦形剤の生体分解(bioerodes)として微小粒子から放出される。ポリマー材料の適切な選択によって、結果として生じるミクロスフェアが拡散放出と生分解放出の両方の性質を示すように、ミクロスフェア製剤が形成される。これは、多相放出パターンを与えるのに役立つ。
【0839】
化合物をミクロスフェアに封入する様々な方法が知られている。これらの方法において、有効医薬成分は通常、壁を形成する材料を含有する溶媒において、スターラー、アジテーター、または他の動力学的な混合技術を用いて、分散または乳化される。その後、溶媒はミクロスフェアから除去され、次いでミクロスフェア生成物が得られる。
【0840】
1つの実施形態において、制御放出製剤または組成物は、耳用薬剤および/または他の医薬品のエチレン酢酸ビニルコポリマーマトリクスへの取り込みを介して作られる。(開示目的のために本明細書に組み込まれる米国特許第6,083,534号を参照)。別の実施形態において、耳用薬剤は、ポリ(乳酸-グリコール酸)またはポリ-L-乳酸ミクロスフェアに取り込まれる。また別の実施形態において、耳用薬剤はアルギン酸塩のミクロスフェアに封入される。(開示目的のために本明細書に組み込まれる米国特許第6,036,978号を参照)。耳用薬剤または組成物を封入するための生体適合性のメタクリル酸ベースのポリマーは、本明細書で開示される製剤および方法に随意に使用される。幅広い範囲のメタクリル酸ベースのポリマー系として、Evonikより市販されているEUDRAGITポリマーなどが市販で入手可能である。メタクリル酸ポリマーの1つの有用な態様は、製剤の特性が様々なコポリマーを取り込むことによって変化するというものである。例えば、ポリ(アクリル酸-co-メチルメタクリル酸塩)微小粒子は、ポリ(アクリル酸)中のカルボン酸基がムチンとの水素結合を形成すると、粘膜付着特性の増強を示す(Park et al, Pharm. Res.(1987)4(6):457-464)。アクリル酸とメチルメタクリル酸モノマーとの比率の変動は、コポリマーの特性を調節するのに役立つ。メタクリル酸ベースの微小粒子はまた、タンパク質の治療製剤にも使用されている(Naha et al,Journal of Microencapsulation 04 February, 2008(オンライン公開))。1つの実施形態において、本明細書に記載される高粘度の耳に許容可能な製剤は、耳用薬剤のミクロスフェアを含み、ミクロスフェアはメタクリル酸ポリマーまたはコポリマーから形成される。付加的な実施形態において、本明細書に記載される高粘度製剤は耳用薬剤のミクロスフェアを含み、ミクロスフェアは粘膜付着性である。他の制御放出系は、ポリマーの材料またはマトリクスの、耳用薬剤を含有する固形または中空のスフェアへの取り込みまたは沈着を含んでおり、本明細書に開示される実施形態内でも明示的に考慮される。耳用薬剤の活性を著しく失うことなく利用可能な制御放出系のタイプは、本明細書に開示される教示、実施例、および原理を用いて決定される。
【0841】
医薬調製物に関する従来のマイクロカプセル化プロセスの例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,737,337号に示される。封入または埋め込まれる物質は、(分散の準備段階で)振動器および高速スターラーなどを含む従来の混合器を用いて、ポリマーの有機溶液(相A)中に溶解または分散される。溶液または懸濁液中にコア材料を含有する相(A)の分散は、高速混合器、振動混合器、またはスプレーノズルなどの従来の混合器を再び用いて水相(B)において行われ、この場合、ミクロスフェアの粒子の大きさは、相(A)の濃度だけではなく、エマルカート(emulsate)またはミクロスフェアのサイズによって決定される。有効医薬成分のマイクロカプセル化のための従来の技術を用いて、活性薬剤およびポリマーを含有する溶媒が、頻繁に比較的長時間にわたり、撹拌、振盪、振動、または他の幾つかの動力学的な混合技術によって不混和溶液中で乳化または分散すると、ミクロスフェアが生じる。
【0842】
ミクロスフェアを構築するための従来の方法は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号に記載される。望ましい薬剤は適切な溶媒に溶解または分散する。薬剤を含有する培地に、望ましい活性薬剤が充填された生成物を与える有効成分に相対する量で、ポリマーマトリクス材料が加えられる。随意に、ミクロスフェア生成物の成分の全てが溶媒培地中で共に混合される。薬剤およびポリマーマトリクス材料に適切な溶媒は、アセトン、クロロホルムや塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化芳香族炭化水素化合物、環状エーテル、アルコール、酢酸エチルなどの有機溶媒を含む。
【0843】
幾つかの実施形態において、制御放出の耳に許容可能なミクロスフェアは、制御放出の耳に許容可能な高粘度の製剤または組成物において組み合わせられる。
【0844】
本明細書に開示される耳に許容可能な治療薬との使用に適切な制御放出の耳に許容可能なミクロスフェアの例は、CHRONIJECT(商標)、即ちPLGAベースの制御放出の注射可能な薬物送達システムを含む。Chronijectのミクロスフェアは、疎水性および親水性両方の耳用治療薬に有用であり、放出の達成された持続時間は、1週間ほどの短さから1年ほどの長さにまでおよぶ。ミクロスフェアの放出特性は、ポリマーおよび/またはプロセスの条件を修正することにより達成され、耳用治療薬の最初の放出または破裂(burst)も利用可能である。製造プロセスは、製品の直接的な治療用途を可能にする無菌条件に適応可能である。Chronijectの製品は、開示のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,945,126号、第6,270,802号、および第63,361,798号に記載される。
【0845】
幾つかの実施形態において、溶媒中の成分の混合物は、連続相処理培地において乳化され;連続相処理培地により、示された成分を含む微小液滴の分散液が、連続相培地において形成される。必然的に、連続相処理培地および有機溶媒は不混和でなければならず、最も一般的には水であるが、キシレンおよびトルエン、並びに、合成油および天然油などの非水系の培地が使用可能である。通常、界面活性剤は、微小粒子が凝集するのを妨げ、且つ、エマルジョン中の溶媒微小液滴のサイズを制御するために、連続相処理培地に加えられる。好ましい界面活性剤分散培地の組み合わせは、水混合物中で1~10重量%のポリビニルアルコールである。分散液は、混合材料の機械的な振盪によって形成される。エマルジョンはまた、連続相処理培地に、活性薬剤の壁を形成する材料の溶液を少滴加えることによって形成される。エマルジョンの形成中の温度は、特に重要ではないが、場合によっては、微粒子のサイズと品質、および連続相中の薬物の可溶性に影響を与える。連続相には可能な限り薬剤がないことが望ましい。更に、使用される溶媒と連続相処理培地に依存して、温度は低すぎてはならず、または、溶媒と処理培地が凝固したり、若しくは処理培地が実用の目的のために粘性になりすぎたり、または、温度が高すぎると、処理培地が蒸発したり、若しくは、液体処理培地が維持されなくなる。更に、培地の温度は、ミクロスフェアに取り込まれている特定の薬剤の安定性が不利に影響を受けるほど高くなってはならない。従って、分散プロセスは、安定な操作条件を維持する温度で行われ、好ましい温度は、選択された薬物と賦形剤に依存して、約30℃~60℃である。
【0846】
幾つかの実施形態において、形成される分散液は、安定なエマルジョンであり、この分散液から、有機溶媒の不混和流体が、溶媒除去プロセスの第1工程において随意に部分的に除去される。溶媒は、加熱、減圧の適用、またはその両方の組み合わせなどの一般的な技術によって容易に除去される。微少滴から溶媒を蒸発させるために利用される温度は重要ではないが、与えられた微小粒子の調製に使用される薬剤を分解するほど高すぎてはならず、また、壁を形成する材料に欠陥を引起こすような急速な速度で溶媒を蒸発させるほど高くてはならない。通常、溶媒の5~75%が、第1の溶媒除去工程で除去される。
【0847】
幾つかの実施形態において、第1段階の後、溶媒不混和流体培地中の分散した微小粒子は、任意の従来の分離手段によって流体培地から分離される。従って、例えば流体は、ミクロスフェアからデカントされ、または、ミクロスフェアの懸濁液が濾過される。分離技術のまた他の様々な組み合わせが、望ましい場合に使用される。
【0848】
幾つかの実施形態において、連続相処理培地からのミクロスフェアの分離後、ミクロスフェア中の溶媒の残りは、抽出によって除去される。この段階で、ミクロスフェアは、界面活性剤があるまたは界面活性剤が無い、1工程で使用された同じ連続相処理培地の中で、または別の液体の中で、懸濁される。抽出培地は、ミクロスフェアから溶媒を除去し、そしてまた、ミクロスフェアを溶解しない。抽出の間、溶解された溶媒を含む抽出培地は、随意に除去され、新しい抽出培地と交換される。これは継続的に最も良く行われる。明らかに、与えられたプロセスの抽出培地の速度は変動可能であり、これはプロセスが行われている時に容易に決定され、それ故、速度に対する正確な制限は予め決定すべきではない。溶媒の大部分がミクロスフェアから除去された後、ミクロスフェアは、空気にさらすことによって、または、真空乾燥や乾燥剤による乾燥などの、他の従来の乾燥技術によって乾燥される。最大80重量%、好ましくは最大60重量%のコア充填(core loadings)が得られるため、このプロセスは薬剤を封入する際に非常に効果的である。
【0849】
幾つかの実施形態において、有効医薬品を含む制御放出ミクロスフェアは、静的なミキサーの使用により調製される。静的または静止型のミキサーは、多くの静的な混合剤を受ける導管またはチューブから成る。静的ミキサーは、比較的短い長さの導管の中で、且つ、比較的短時間で、均質な混合を提供する。静的ミキサーを用いると、ブレードなどのミキサーの一部が液体を通って移動するのではなく、液体がミキサーを通って移動する。
【0850】
幾つかの実施形態において、静的ミキサーは、エマルジョンを作るために使用される。エマルジョンを形成するために静的ミキサーを使用する時、混合される様々な溶液または相の密度および粘度、相の容積比、相間の界面張力、静的ミキサーのパラメータ(導管の直径;ミキシングエレメントの長さ;ミキシングエレメントの数)、および静的ミキサーを介しての線形速度を含む、幾つかの要素がエマルジョンの粒径を決定する。温度は、密度、粘度、および界面張力に影響するため、変更可能である。制御の変動は、線形速度、ずり速度(sheer rate)、および静的ミキサーのユニット当たりの圧力降下である。
【0851】
有効医薬品を含むミクロスフェアを作成するために、有機相と水相が幾つか実施形態において組み合わせられる。有機相と水相は、ほとんどまたは実質的に不混和であり、水相はエマルジョンの連続相を構成している。有機相は、壁を形成するポリマーまたはポリマーマトリクス材料の他、有効医薬品を含む。幾つかの実施形態において、有機相は、有機溶媒または他の適切な溶媒に有効医薬品を溶かすことにより、あるいは活性薬剤を含む分散液またはエマルジョンを形成することにより調製される。有機相と水相は、2つの相が静的ミキサーを介して同時に流れるようにポンプで送り込まれ、それにより、ポリマーマトリクス材料に封入される有効医薬品を含有するミクロスフェアを含むエマルジョンが形成される。有機相と水相は、有機溶媒を抽出または除去するために、大量のクエンチ液(quench liquid)の中に静的ミキサーを介してポンプで送り込まれる。有機溶媒は、クエンチ液の中で洗浄または撹拌されている間に、ミクロスフェアから除去される。ミクロスフェアは、クエンチ液の中で洗浄された後、ふるいによって分離され、乾燥される。
【0852】
幾つかの実施形態において、静的ミキサーを用いてミクロスフェアが調製されるプロセスは、活性薬剤を封入するために使用される様々な技術のために随意に実行される。幾つかの実施形態において、プロセスは、上記で議論される溶媒抽出技術に限定されず、他の封入技術と共に使用される。例えば、このプロセスは、幾つかの例において相分離封入技術と共に使用される。そうするために、ポリマー溶液中に懸濁または分散される有効医薬品を含む有機相が、調製される。非溶剤型の第2相は、ポリマーおよび活性薬剤に対する溶媒を含まない。好ましい非溶剤型の第2相は、シリコンオイルである。有機相と非溶剤型の相は、ヘプタンなどの非溶剤型のクエンチ液の中に、静的ミキサーを介してポンプで送り込まれる。半固体の粒子は、クエンチされ、完全に固化され、そして洗浄される。マイクロカプセル化のプロセスはまた、噴霧乾燥、溶媒蒸発、蒸発と抽出の組み合わせ、および溶解押出を含む。
【0853】
別の実施形態において、マイクロカプセル化工程は、単一の溶媒を含む静的ミキサーの使用を含む。このプロセスは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第08/338,805号に詳細に記載されている。代替的なプロセスは、共溶媒を含む静的ミキサーの使用を含む。このプロセスにおいて、生物分解性ポリマー結合剤と有効医薬品を含む生物分解性ミクロスフェアを調製するために、ハロゲン化炭化水素を含まない少なくとも2つの実質的に無毒の溶媒の混合物が使用され、薬剤とポリマーの両方を溶解させる。溶解した薬剤とポリマーを含む溶媒の混合物は、少滴を形成するために水溶液中に分散される。次いで、結果として生じるエマルジョンは、好ましくは混合物の少なくとも1つの溶媒を含む水性抽出培地に加えられ、それによって、各溶媒の抽出速度は制御され、その上、薬学的に活性な薬剤を含む生物分解性のミクロスフェアが形成される。このプロセスには、水中の1つの溶媒の溶解性が他とは実質的に独立しており、且つ溶媒選択が増えることから、抽出培地があまり必要とされないという利点があり、特に、溶媒は抽出が困難である。
【0854】
ナノ粒子は、約100nm以下のサイズの物質構造である。溶媒との粒子表面の相互作用が密度の違いを克服するほど十分強いことから、医薬製剤におけるナノ粒子の使用の1つは、懸濁液の形成である。ナノ粒子は滅菌濾過にさらされるほど十分に小さいことから、ナノ粒子懸濁液は滅菌される(米国特許第の6,139,870号)。ナノ粒子は、界面活性剤、リン脂質、または脂肪酸の溶液または水溶性分散液中で乳化される、少なくとも1つの疎水性で、水に溶けない、そして水に分散しない(water-indispersible)ポリマーまたはコポリマーを含む。有効医薬成分はポリマーまたはコポリマーでナノ粒子へと導入される。
【0855】
脂質ナノ粒子は制御放出構造として作用し、その上、正円窓膜を貫通し、そして内耳の標的に到達するために、本明細書でまた考慮されている。Zou et al. J. Biomed. Materials Res., online pub. (April 24, 2008)を参照。脂質ナノ粒子は、1.028gのカプリン酸およびカプリル酸トリグリセリド(LABRAFAC WL1349;平均分子量(avg.mw)512)、0.075gの大豆レシチン(LIPOID S75-3;69%のホスファチジルコリンおよび他のリン脂質)、0.846gの界面活性剤(SOLUTOL HS15)、ポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレートおよび遊離ポリエチレングリコール660;0.089gのNaClと2.962gの水を乳化させることによって形成される。この混合物は、室温で撹拌されることで、水中にオイルエマルジョンをもたらす。磁気撹拌の下、4℃/分の速度で徐々に加熱した後、70℃近くで短期間の透明化が起こり、そして、85℃で逆相(オイルの中に水の小滴)が得られる。次いで、冷却と加熱が、85℃と60℃の間で、4℃/分の速度で3サイクル行われ、0℃近くの温度で冷水の中で急速に希釈されて、ナノカプセルの懸濁液が生成される。内耳の活性薬剤を封入するために、この薬剤は冷水での希釈の直前に加えられる。
【0856】
幾つかの例において、薬剤は、内耳の活性薬剤の水溶性ミセル溶液と共に、90分間インキュベートすることによって脂質ナノ粒子に入れられる。懸濁液はその後、15分毎にボルテックスされ(vortexed)、次いで1分間氷槽中でクエンチされる。
【0857】
適切な界面活性剤は、ほんの一例として、コール酸またはタウロコール酸の塩である。タウロコール酸は、コール酸とタウリンから形成される複合体であり、完全に代謝可能なスルホン酸の界面活性剤である。タウロコール酸のアナログであるタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)は、自然に形成される胆汁酸であり、タウリンとウルソデオキシコール酸(UDCA)の複合体である。他の自然に生じる陰イオン性の界面活性剤(例えば、硫酸ガラクトセレブロシド)、中性の界面活性剤(例えば、ラクトシルセラミド)、または双性イオン性の界面活性剤(例えば、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、パルミトイルカルニチン)は、ナノ粒子を調製するためにも使用され得る。
【0858】
リン脂質は、例として、天然の、合成の、または半合成のリン脂質から選択され;精製した卵または大豆レシチン(レシチンE100、レシチンE80およびホスホリポン、例えば、ホスホリポン90)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルグリセロホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、およびホスファチジン酸、またはそれらの混合物が特によく使用される。
【0859】
脂肪酸は、例として、ラウリン酸、ミリスチン酸(mysristic acid)、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラギジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸から選ばれる。
【0860】
適切な界面活性剤は、好ましくは既知の有機および無機の薬学的賦形剤から選択される。そのような賦形剤は、様々なポリマー、低分子量のオリゴマー、天然物、および界面活性剤を含む。好ましい界面改質剤は、非イオン性およびイオン性の界面活性剤を含む。2つ以上の表面改質剤は、幾つかの実施形態では組み合わせで使用される。
【0861】
界面活性剤の代表的な例は、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(リン脂質)、デキストラン、グリセロール、アラビアガム、コレステロール、トラガント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール、ドデシルトリメチル臭化アンモニウム、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、HPC-SL、およびHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタラート、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドを備えた4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル(tetaamethylbutyl))-フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオン(superione)、およびトリトンとしても知られる)、ポロキサマー、ジミリストイルホスファチジルグリセロールなどの荷電リン脂質、ジオクチルスルホスクシナート(DOSS);Tetronic 1508、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、Duponol P、Tritons X-200、Crodestas F-110、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)、Crodestas SL-40.RTM.(Croda, Inc.);およびSA9OHCO(C18H37CH2(CON(CH3)-CH2(CHOH)4(CH2OH)2である(Eastman Kodak Co.);デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-へキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイルβ-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;などを含む。
【0862】
これらの界面活性剤の大半は医薬賦形剤として知られており、アメリカ薬剤師会(American Pharmaceutical Association)とイギリス薬学会(Pharmaceutical Society of Great Britain)によって共同で出版された、医薬賦形剤のハンドブック(the Handbook of Pharmaceutical Excipeints)に詳細に記載されており(The Pharmaceutical Press、1986)、これは参照により具体的に組み込まれている。
【0863】
疎水性、非水溶性、および水に分散しないポリマーまたはコポリマーは、例えば乳酸ポリマーまたはグリコール酸ポリマーおよびそれらのコポリマー、またはポリ乳酸/ポリエチレン(またはポリプロピレン)オキシドコポリマー、好ましくは、1000~200000の分子量を持つもの、ポリヒドロキシブチル酸ポリマー、少なくとも12個の炭素原子を含む脂肪酸のポリラクトン、またはポリ酸無水物などの生体適合性且つ生物分解性のポリマーから選択される。
【0864】
1つの実施形態において、ナノ粒子は、疎水性有効成分との使用に適している。幾つかの実施形態において、有効成分は、ヒトまたは獣医学での使用のために主な分類の薬剤から選択される。幾つかの実施形態において、有効成分は、化粧品、農業食品産業、またはスポーツ医学における使用のための成分(principles)から、あるいは診断用薬から選択される。一例として、医薬品産業での対象である有効成分は、非限定的な様式で、抗リウマチ剤、非ステロイド剤、抗炎症剤(例えばNSAID)、鎮痛剤、鎮咳剤および向精神薬、ステロイド、バルビツール酸塩、抗菌剤、抗アレルギー剤、抗喘息薬、鎮痙剤、抗分泌性および心血管作動薬、脳血管拡張薬、大脳および肝臓の保護剤、胃腸管の治療薬、抗癌剤または抗ウイルス剤、ビタミン、避妊薬、ワクチンなどから選択される。
【0865】
ナノ粒子は、中に活性な有効成分と疎水性で、非水溶性で、且つ水中に分散しないポリマーまたはコポリマーを含む不混和性の有機相が加えられる、リン脂質の水性の分散液または溶液、あるいはオレイン酸塩の水性分散液または溶液から、溶媒の蒸発の技術によって得られる。その混合物は、予め乳化され、その後、均質化され、有機溶媒が蒸発され、非常に小さなサイズのナノ粒子の水性懸濁液が得られる。
【0866】
ナノ粒子を作り上げるための様々な方法が利用される。これらの方法は、自由噴流拡大、レーザー蒸発、放電加工、電気爆発(electro explosion)、および化学蒸着などの気化方法;機械的な研磨(例えば「パールミリング(pearlmilling)」技術、 Elan Nanosystems)、超臨界CO2、および溶媒置換後の界面沈着を含む物理的方法を含む。1つの実施形態において、溶媒置換方法が使用される。この方法により生成されたナノ粒子のサイズは、有機溶媒中のポリマーの濃度;混合速度;およびプロセスに利用される界面活性剤に敏感である。連続管路撹拌装置は、小さな粒径を確保するために必要な乱流をもたらす。ナノ粒子を調製するために使用される連続管路撹拌装置の1つのタイプが記載されている(Hansen et al. J Phys Chem 92,2189-96,1988)。他の実施形態において、超音波装置、流水式(flow through)ホモジナイザーまたは超臨界CO2装置が、ナノ粒子を調製するために使用される。
【0867】
適切なナノ粒子の均質性が直接合成によって得られる場合、サイズ排除クロマトグラフィーが、それらの作成に関与する他の成分を含まない、高度に均一な薬物を含有する粒子を生成するために使用される。ゲル濾過クロマトグラフィーなどのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)技術は、遊離薬物から粒子に結合された薬物を分離する、あるいは薬物含有ナノ粒子の適切なサイズ範囲を選択するために使用される。Superdex 200、Superose 6、およびSephacryl 1000などの様々なSEC媒体が市販されており、且つ混合物のサイズに基づく作成のために当業者に容易に利用される。加えて、ナノ粒子は、遠心分離、膜濾過によって、および、他の分子ふるい装置、架橋したゲル/物質、および膜の使用によって精製される。
【0868】
幾つかの実施形態において、耳用薬剤の製剤または組成物を封入するために、リポソームまたは脂質粒子も利用される。水溶性培地中に穏やかに分散したリン脂質は多層の小胞(vesicles)を形成し、捕捉された水溶性媒体は脂質の層を分離する。これら多層の小胞の超音波処理または乱流撹拌は、一般的にリポソームと称される、約10~1000nmのサイズの単一層の小胞の形成を結果としてもたらす。これらリポソームは、薬物運搬体として多くの利点を持つ。これらは、生物学的に不活性であり、生物分解性で、無毒で、且つ非抗原性である。リポソームは、様々な大きさで、且つ、様々な組成および表面特性と共に形成される。加えて、これらは、広範囲の小分子薬物を捕捉し、且つリポソーム崩壊の部位にて薬物を放出することができる。
【0869】
本組成物での使用に適切なリン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、エタノールアミン、およびセリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、プラズマロゲン、ホスファチジン酸、およびセレブロシド、具体的には、非毒性で薬学的に許容可能な有機溶媒においてピロキシカムと共に溶解可能なものである。好ましいリン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロールなど、およびそれらの混合物、具体的にはレシチン、例えば大豆レシチンの混合物である。本製剤に使用されるリン脂質の量は、約10%から約30%、好ましくは約15%から約25%におよび、具体的には約20%である。
【0870】
親油性の添加剤は、リポソームの性質を選択的に改変するために有効に利用される。そのような添加剤の例は、例えば、ステアリルアミン、ホスファチジン酸、トコフェロール、コレステロール、コレステロールヘミコハク酸、およびラノリン抽出物を含む。使用される親油性の添加剤の量は0.5から8%、好ましくは1.5から4%におよび、具体的には約2%である。通常、リン脂質の量に対する親油性の添加剤の量の比率は、約1:8から約1:12におよび、具体的には約1:10である。前記リン脂質、脂溶性添加物、および有効成分ピロキシカムは、前記成分を溶解する非毒性の薬学的に許容可能な有機溶媒系と共に用いられる。前記溶媒系は有効医薬成分を完全に溶解するだけでなく、安定した単一の二層のリポソームの製剤を可能としなければならない。溶媒系は、約8から約30%の量のジメチルイソソルビドおよびテトラグリコール(グリコフロル(glycofurol)、テトラヒドロフルフリル(tetrahydrofurfuryl)アルコールポリエチレングリコールエーテル)を含む。前記溶媒系において、テトラグリコールの量に対するジメチルイソソルビドの量の比率は、約2:1から約1:3、具体的には約1:1から約1:2.5におよび、好ましくは約1:2である。従って、最終の組成物中のテトラグリコールの量は、5から20%、具体的には5から15%におよび、好ましくは約10%である。最終の組成物中のジメチルリソソルビドの量は、3から10%、具体的には3から7%におよび、好ましくは約5%である。
【0871】
以降に使用される用語「有機成分」は、リン脂質、親油性の添加剤、および有機溶媒を含む混合物を指す。
【0872】
有効医薬成分は有機成分中で溶解する。有効成分の微粉化形態を使用してその溶解を容易にすることが、都合がよい。最終製剤中の有効成分の量は0.1から5.0%におよぶ。加えて、抗酸化物などの他の成分は有機成分に加えられる。例として、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、アスコルビルパルミテート(ascorbyl palmitate)、アスコルビルオレアート(ascorbyl oleate)などが挙げられる。
【0873】
幾つかの実施形態において、本製剤の水性成分は主に水を含み、電解液、緩衝系、防腐剤などの様々な添加剤を随意に含む。適切な電解液は、金属塩、具体的にアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、例えば塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、好ましくは塩化ナトリウムを含む。幾つかの例において、電解液の濃度は広範囲にわたり変動し、最終製剤中の成分の各々の性質および濃度に依存し、且つ、リポソーム膜を安定させるのに十分でなければならない。本組成物において、塩化ナトリウムの量は0.05から0.2%におよぶ。緩衝系は、リン酸、コハク酸、または好ましくはクエン酸などの酸、および具体的には水酸化ナトリウムなどの塩基の適正量の混合物を含む。前記緩衝系は、3から9の範囲内、代替的には6から8の範囲内、あるいは5~7の範囲間で製剤のpHを維持しなければならない。微生物による分解を防ぐために本組成物に利用される防腐剤は、幾つかの実施形態において、安息香酸、メチルパラベン、およびプロピルパラベンを含む。
【0874】
リポソーム製剤は、(a)血管中で約60-80℃にリン脂質および有機溶剤系を加熱し、有効成分を溶解し、次いで追加の製剤化剤を加え、完全な溶解が得られるまで混合物を撹拌することによって;(b)第2の血管中で90-95℃に水溶液を加熱し、その中に防腐剤を溶解させ、混合物を冷却し、次いで補助的な製剤化剤の残りおよび水の残りを加え、完全な溶解が得られるまで混合物を撹拌し、それにより水性成分を調製することによって;(c)有機相を直接水性成分へと移し、一方で高機能の混合装置、具体的には高剪断力のミキサーを用いて組み合わせを均質化することによって;および(d)結果として生じる混合物に増粘剤を加え、一方で更に均質化することによって随意に調製される。好ましくは、水性成分は、ホモジナイザーを備えた適切な容器に入れられ、均質化は、有機成分の注入中に大きな乱流を作ることによって達成される。混合物に高剪断力を及ぼす任意の混合手段またはホモジナイザーが使用される。通常、約1,500から20,000rpmまでの、具体的には約3,000から約6,000rpmまでの速度が可能なミキサーが使用される。プロセスの工程(d)で使用するのに適切な増粘剤は、例えば、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはそれらの混合物、好ましいセルロース誘導体である。増粘剤の量は、他の成分の性質と濃度に依存し、通常は約0.5から1.5%におよび、具体的には約1.5%である。リポソーム製剤の調製中に使用される物質の分解を防げるために、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスで全ての溶液をパージし、不活性雰囲気下で全ての工程を行うことが、都合が良い。上述の方法によって調製されたリポソームは通常、脂質二重層中で結合される有効成分の大半を含み、封入されていない物質からのリポソームの分離は必要とされない。
【0875】
耳に許容可能な脂質製剤/組成物
幾つかの実施形態において、薬物送達の製剤または組成物は、脂質ベースの製剤または組成物である。幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、脂肪乳剤(例えば、マイクロエマルジョンおよび水中油型エマルション)、脂質小胞(例えば。リポソーム、ミセル、およびトランスファーソーム)、またはそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、リポソームである脂質小胞である。幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、リン脂質ベースの製剤または組成物である。幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、リン脂質ベースの製剤または組成物であり、天然または合成のリン脂質は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾリン脂質、卵または大豆のリン脂質、あるいはそれらの組み合わせである。リン脂質は、随意に塩化または脱塩され、水素化または部分的に水素化され、天然、合成、あるいは半合成である。幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達製剤は、リン脂質ベースの製剤(例えば、水素化または非水素化リン脂質、レシチン、ホスファチジルコリン(C8-C18)、ホスファチジルエタノールアミン(C8-C18)、ホスファチジルグリセロール(C8-C18))であり、リン脂質は、ホスホリポン90H(1,2-ジア-シル-SN-グリセロ-3-ホスファチジルコリン)、卵のリン脂質P123、リポイドE80;ホスホリポン80H(登録商標)、80G(登録商標)、90H(登録商標)、および100H(登録商標)、またはその組み合わせである。
【0876】
幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、水溶性防腐剤(即ち、微生物が実質的に増殖且つ繁殖するのを防ぐ成分)を含む。幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、水溶性防腐剤を含み、防腐剤は、ベンゼトニウム塩(例えば塩化ベンゼトニウム)、安息香酸、および/またはベンジルコニウム塩(例えば塩化ベンジルコニウム)である。本明細書で使用されるように、水溶性は、成分が約100μg/mL(0.01%)から約0.01mg/mL(0.1%)の水中での溶解性を持つことを意味する。
【0877】
幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、脂溶性抗酸化物を含む。幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、ビタミンEを含む。
【0878】
幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、約2%w/w未満、約1.5%未満、約1.0%未満、約0.5%未満、または約0.25%未満の粘度増強剤を含む。
【0879】
幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、メチルセルロースまたは他の粘度増強剤の存在無しに、全て58℃で、少なくとも約10,000センチポアズ、少なくとも約20,000センチポアズ、少なくとも約30,000センチポアズ、少なくとも約40,000センチポアズ、少なくとも約50,000センチポアズ、少なくとも約60,000センチポアズ、または少なくとも約70,000センチポアズの粘度を持つ。幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、膜貫通を増強するためにオレイルアルコールを含む。
【0880】
幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、浸透促進剤(例えば、単独でまたは組み合わせで、低分子量アルコール(例えばエタノール、オレイルアルコール)、アルキルメタノールスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、脂肪族アミン(例えばオレイルアミン)、脂肪酸(例えばオレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸)、グルコン酸(C-1におけるアルデヒド基のカルボキシル基への酸化によりグルコースから導かれるヘキソン酸)およびその誘導体、例えばグルコノラクトン(特にグルコノ-D-ラクトン、グルコースの酸化により生成されるキレート剤)、アゾン(azone)、およびプロピレングリコール)を含む。幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、プロピレングリコールである浸透促進剤であり、単独で、あるいはオレイン酸またはエタノールなどの別の増強剤と共に1:1の比率で用いられる。幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、グルコノラクトン(例えば、グルコノ-D-ラクトン))である浸透促進剤であり、単独で、またはプロピレングリコールなどの別の増強剤と共に1:1の比率で用いられる。
【0881】
幾つかの実施形態において、脂質ベースの薬物送達の製剤または組成物は、約25%v/v以下の1つ以上の化学浸透促進剤、最も好ましくは約2%から15%v/vを含むが、正確な製剤または組成物は、中に含まれる賦形剤、防腐剤、水、pHモジュレータなどの存在および量に依存して変動する。
【0882】
幾つかの実施形態において、本明細書中の聴覚圧力モジュレータで充填された調製リポソームは、粘度、粘膜付着剤、または吸収浸透促進剤と共に優しく混合される。例えば、リポソームに充填された聴覚圧力モジュレータは、キトサン-グリセロリン酸の組成物と混合される。リポソームのサイズは随意に、制御放出粒子の放出動態を調整するために増大または減少される。付加的な態様において、放出動態は、上述のようなリポソームの脂質組成の変更によって変更される。
【0883】
本明細書に記載される製剤または組成物は、任意の適切な形態で投与される。非限定的な例として、製剤は、耳用滴剤として、中耳内注射剤として、フォームとして、あるいは耳用ペイントとして投与される。製剤または組成物は、カニューレおよび/または注射を介して、滴剤ディスペンサーを介して、外耳道中の噴霧として、あるいは綿棒を介したペイントとして投与される。
【0884】
制御放出の動態
全ての薬物送達技術の目標は、治療利益を得るために正しい時間で作用部位に適量の薬物を送達することである。概して、制御放出型薬物製剤は、体内の放出部位および放出時間に関し、薬物の放出に関する制御を付与する。本明細書で議論されるように、制御放出は、単独での即時放出以外の任意の放出を指す。幾つかの例において、制御放出は、遅延放出、持続放出、徐放、および/またはパルス放出(例えば持続放出と即時放出の組み合わせ)、あるいはそれらの組み合わせである。多くの利点が、制御放出によって提供される。第1に、医薬品の制御放出により、頻繁な投与が少なくなり、これにより反復処置が最小化される。第2に、制御放出処置によって、薬物の利用が更に効果的になり、残留物として残る化合物が減る。第3に、制御放出によって、疾患部位に送達デバイスまたは製剤を配置することによって、局所的な薬物送達の可能性が提供される。また更に、制御放出によって、1個の投薬単位を用いることによりそれぞれ固有の放出プロファイルを持つ2つ以上の異なる薬物を投与および放出し、あるいは同じ薬物を異なる速度または異なる持続時間で放出させる機会が与えられる。
【0885】
特異的な実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、全身曝露を伴わない疾患部位において、治療上有効な量の少なくとも1つの有効医薬成分を提供する。追加の実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、検出可能な全身曝露を伴わない疾患部位において、治療上有効な量の少なくとも1つの有効医薬成分を提供する。
【0886】
特定の実施形態において、製剤または組成物は、治療薬の放出速度を上げる賦形剤を含む。特定の実施形態において、製剤または組成物は、治療薬の放出速度を下げる賦形剤を含む。
【0887】
製剤または組成物は、最大数週間の期間を含む、望ましい期間にわたる薬物送達を提供するように設計される。そのため患者は、薬物の繰り返しの投与を必要とせず、あるいは、最小の、より少ない、およびあまり頻繁でない投与しか必要としない。
【0888】
内耳に送達される薬物は一般に、経口経路、静脈内経路、または筋肉内経路を介して全身投与されている。しかし、内耳に起因する病理学に関する全身投与は、全身の毒性および副作用の可能性を増大させ、薬物の非生産的な分布を作成する。この分布において、高レベルの薬物が血清に見出され、それに対応して低レベルの薬物が内耳に見出される。
【0889】
1つの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は付加的に、製剤または組成物から、または1分、5分、10分、15分、30分、60分、あるいは90分以内の、治療薬または耳用薬剤の即時放出を提供する。他の実施形態において、治療上有効な量の少なくとも1つの治療薬、または耳用薬剤は、即時に、または1分、5分、10分、15分、30分、60分、または90分以内に製剤または組成物から放出される。製剤または組成物の付加的な実施形態はまた、本明細書に含まれる製剤の粘度を増大させる薬剤も含む。
【0890】
即時または迅速な放出の選択は、異なる粘度増強ポリマー、多成分製剤または組成物、およびナノスフェア(またはサブミクロンスフェア)の使用を含む。加えて、ミクロスフェアは、即時放出成分および制御放出成分で随意に覆われる。
【0891】
特定の実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの有効医薬成分の即時放出を提供する。製剤または組成物の付加的な実施形態はまた、本明細書に含まれる製剤または組成物を増大させる増粘剤も含む。他の実施形態において、増粘させたものは、少なくとも1つの有効医薬成分の即時放出を提供するリポソーム製剤または組成物を含む。特定の他の実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの有効医薬成分の即時放出を提供するシクロデキストリン含有製剤または組成物を含む。付加的な実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの有効医薬成分の即時放出を提供するミクロスフェア製剤または組成物を含む。付加的な実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの有効医薬成分の即時放出を提供するナノ粒子製剤または組成物を含む。
【0892】
他のまたは更なる実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの治療薬、あるいは耳用薬剤の制御放出製剤または組成物を提供する。特定の実施形態において、製剤または組成物からの少なくとも1つの耳用薬剤の拡散は、5分、または15分、または30分、または1時間、または4時間、または6時間、または12時間、または18時間、または1日、または2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日、または10日、または12日、または14日、または18日、または21日、または25日、または30日、または45日、または2か月、または3か月、または4か月、または5か月、または6か月、または9か月、または1年を超える期間にわたり生じる。他の実施形態において、治療上有効な量の少なくとも1つの耳用薬剤が、5分、または15分、または30分、または1時間、または4時間、または6時間、または12時間、または18時間、または1日、または2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日、または10日、または12日、または14日、または18日、または21日、または25日、または30日、または45日、または2か月、または3か月、または4か月、または5か月、または6か月、または9か月、または1年を超える期間にわたり、製剤または組成物から放出される。
【0893】
他の実施形態において、製剤または組成物は、治療薬、あるいは耳用薬剤の即時放出および持続放出の両方の製剤または組成物を提供する。また他の実施形態において、製剤または組成物は、0.25:1の比率、0.5:1の比率、1:1の比率、1:2の比率、1:3の比率、1:4の比率、1:5の比率、1:7の比率、1:10の比率、1:15の比率、または1:20の比率の即時放出および持続放出の製剤または組成物を含む。更なる実施形態において、製剤または組成物は、即時放出の第1の耳用薬剤、および、持続放出の第2の耳用薬剤または他の治療薬を提供する。また他の実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも1つの耳用薬剤、および少なくとも1つの治療薬それぞれの、即時放出および持続放出の製剤または組成物を提供する。幾つかの実施形態において、製剤または組成物は、0.25:1の比率、0.5:1の比率、1:1の比率、1:2の比率、1:3の比率、1:4の比率、1:5の比率、1:7の比率、1:10の比率、1:15の比率、または1:20の比率の、第1の耳用薬剤および第2の耳用薬剤それぞれの即時放出および持続放出の製剤または組成物を提供する。
【0894】
特異的な実施形態において、製剤または組成物は、基本的に全身曝露を伴わない疾患部位において、治療上有効な量の少なくとも1つの耳用薬剤を提供する。付加的な実施形態において、製剤または組成物は、基本的に検出可能な全身曝露を伴わない疾患部位において、治療上有効な量の少なくとも1つの耳用薬剤を提供する。他の実施形態において、製剤または組成物は、基本的に検出可能な全身曝露を少しだけまたは全く伴わない疾患部位において、治療上有効な量の少なくとも1つの耳用薬剤を提供する。
【0895】
幾つかの例において、従来の耳用の製剤または組成物(例えばバッファー中のDSP)の投与後(例えば、中耳内注入)、個体の外リンパにおける薬物の濃度は、急激に上昇し(約1-2時間でのCmax)、次にCminより下に小さくなる(taper off)。幾つかの例において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の投与は、Cminに対するCmaxの比率を小さくし、Cminに基づいた持続性のPKプロファイルをより大きな曲線下面積(AUC)に提供する。特定の例において、本明細書に記載される制御放出製剤または組成物は、Cmaxまでの時間を遅延させる。特定の例において、薬物の制御安定性放出は、薬物の濃度が最小治療濃度(即ち、Cmin)以上である時間を延長する。幾つかの例において、本明細書に記載される製剤または組成物により提供される耳用薬剤の制御放出は、少なくとも1日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日、3週、1か月、または6か月の期間にわたり、Cminより大きな濃度で耳用薬剤の放出を可能にする。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、内耳における薬物の滞留時間を延長する。特定の例において、一旦薬物の薬物曝露(例えば、外リンパ中の濃度)が定常状態に達すると、外リンパ中の薬物濃度は、長期間(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、1か月、または6か月)の間、その治療量で、あるいはその治療量付近にとどまる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、耳の構造(例えば、内耳、内リンパ、および/または外リンパ)における薬物の生物学的利用能および/または定常状態レベルを増大させる。
【0896】
幾つかの例において、本明細書に記載される制御放出の耳用の製剤または組成物(例えば、抗炎症剤(例えば抗TNF剤)を含む製剤)の投与後、1つ以上の耳用受容体(例えば、コルチコイド受容体、NMDA受容体、グルタミン酸受容体など、あるいはそれらの任意の組み合わせ)の結合定数に対する薬物濃度は、生物学的に有意なPKプロファイルまたは治療効果に必要な活性薬剤の最低濃度を判定することに関連する。幾つかの例において、本明細書に記載される制御放出の耳用の製剤または組成物の投与後、ほんの一例としてミネラルコルチコイド受容体(MR)およびグルココルチコイド受容体(GR)などの2つの受容体の結合定数に対する薬物濃度は、Cmin、または生物学的に最も有意なPKプロファイルを判定することに関連する。幾つかの例において、薬物は、最初に第1の受容体(例えばGR)を飽和させ、次に第2の受容体(例えばMR)を飽和させ、そして、第1の受容体が飽和され且つ第2の受容体が未だに飽和されない場合には治療利益が存在する。幾つかの例において、第2の受容体の飽和に関する薬物濃度はCminとほぼ同じである。このような例のうち幾つにおいて、例えば、薬物濃度が第2の受容体の飽和レベルおよび/またはCminより下に低下すると、次の投与量が投与される。
【0897】
即時放出、遅延放出、および/または持続放出の耳用組成物または製剤の組み合わせは、賦形剤、希釈剤、安定剤、等張化剤、および本明細書中に開示される他の組成物だけでなく、他の医薬品とも組み合わされる。このように、使用される耳用薬剤、望ましい濃さおよび粘度、または選択される送達の方法に依存して、本明細書に開示される実施形態の代替的な態様は、従って、即時放出、遅延放出および/または持続放出の実施形態と結び付けられる。
【0898】
特定の実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物の薬物動態は、試験動物(ほんの一例として、モルモット、チンチラ、またはラットを含む)の正円窓膜またはその近辺に、製剤を注射することによって決定される。決定された期間(例えば、1または2週間の期間にわたり製剤または組成物の薬物動態を試験するために、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、および14日)において、試験動物は屠殺され、内耳を取り除かれ、耳用薬剤の存在について試験される。必要な場合、耳用薬剤のレベルは他の器官において測定される。加えて、耳用薬剤の全身レベルは、試験動物から血液サンプルを採取することによって測定される。製剤または組成物が聴覚を妨害するか否かを判定するために、試験動物の聴覚が随意に試験される。
【0899】
代替的に、内耳が(試験動物から取り除かれる時に)提供され、耳用薬剤の移動が測定される。また別の代案として、正円窓膜のインビトロのモデルが提供され、耳用薬剤の移動が測定される。
【0900】
保持時間
幾つかの実施形態において、製剤または組成物は、約5分、約15分、約30分、約1時間、約4時間、約6時間、約12時間、約18時間、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約10日、約12日、約14日、約18日、約21日、約25日、約30日、約45日、約2か月、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約9か月、または約1年の、耳における保持時間を持つ。幾つかの実施形態において、製剤または組成物は、少なくとも5分、少なくとも15分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも10日、少なくとも12日、少なくとも14日、少なくとも18日、少なくとも21日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも45日、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、または少なくとも1か月の、耳における保持時間を持つ。
【0901】
幾つかの実施形態において、耳は外耳、中耳、または内耳である。幾つかの実施形態において、耳は中耳である。幾つかの実施形態において、耳は内耳である。幾つかの実施形態において、耳は外耳である。幾つかの実施形態において、外耳は、外耳道、鼓膜の外面、またはそれらの組み合わせである。
【0902】
耳の投与の形態
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、外耳道へと、または、耳の前庭内に投与される。例えば、前庭と蝸牛器(cochlear apparatus)へのアクセスは、正円窓膜、卵円窓/アブミ骨底板と、輪状靱帯を含む中耳を通じて、および、耳のカプセル/側頭骨を通じて生じる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物の耳への投与は、活性薬剤の全身投与に関連する毒性(例えば、肝毒性、心臓毒性、胃腸の副作用、および肝臓毒性)を回避する。幾つかの例において、耳の中での局在化された投与は、活性薬剤の全身投与を伴うことなく、活性薬剤が標的器官(例えば内耳)に達することを可能にする。幾つかの例において、耳への局所投与によって、投与量制限の全身毒性を持つ活性薬剤に関する治療指標がより高くなる。
【0903】
本明細書には、本明細書に記載される耳の障害を改善または減らす、耳用の製剤または組成物のための処置の形態が提供される。内耳に送達される薬物は、経口経路、静脈内経路、または筋肉内経路を介して全身投与されている。しかし、内耳に起因する病理学に関する全身投与は、全身への毒性および副作用の可能性を増大させ、薬物の非生産的な分布を作成する。この分布において、高レベルの薬物が血清に見出され、それに対応して低レベルの薬物が内耳に見出される。
【0904】
本明細書には、中耳内注射を介した正円窓膜またはその付近での前記耳用の製剤または組成物の投与を含む方法が提供される。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、正円窓または蝸牛窓稜の領域あるいはそれらの付近への、耳介後部の切開および外科的処置を介した進入を通じて、正円窓または蝸牛窓稜あるいはそれらの付近に投与される。代替的に、本明細書に開示される製剤または組成物は、シリンジおよび針を介して適用され、針は挿入されると鼓膜を通り、正円窓または蝸牛窓稜の領域へと導かれる。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物はその後、局所的な処置のために、正円窓または蝸牛窓稜あるいはそれらの付近に配される。他の実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は、患者に移植されるマイクロカテーテルを介して適用され、また更なる実施形態において、本明細書に開示される組成物は、ポンプ装置を介して正円窓膜またはその付近に投与される。また更なる実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は、マイクロインジェクション装置よって正円窓膜またはその付近に投与される。また他の実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は鼓室で適用される。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は鼓膜で適用される。また他の実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は耳道の上または中に適用される。本明細書に記載される製剤または組成物、およびそれらの投与形態はまた、内耳区画の直接的な滴下または灌流の方法に適用可能である。従って、本明細書に記載される製剤または組成物は、非限定的な例として、蝸牛形成術(cochleostomy)、内耳手術(labyrinthotomy)、乳突削開術、アブミ骨切除術、内リンパ球形嚢手術(endolymphatic sacculotomy)などを含む外科手術に有用である。
【0905】
中耳内注射
幾つかの実施形態において、注射製剤を送達するためにマイクロポンプが使用される。幾つかの実施形態において、任意の適切な方法(例えばフェノール、リドカイン、およびキシロカインの使用)により、鼓膜に麻酔がかけられる。幾つかの実施形態において、鼓膜の前部上方および後部下方の四分円に麻酔がかけられる。
【0906】
幾つかの実施形態において、鼓膜の後ろに気体を放つために、鼓膜に穿刺穴が空けられる。幾つかの実施形態において、鼓膜の後ろに気体を放つために、鼓膜の前部上方の四分円に穿刺穴が空けられる。幾つかの実施形態において、穿刺穴は針(例えば25ゲージ針)で空けられる。幾つかの実施形態では、穿刺穴はレーザー(例えばCO2レーザー)で空けられる。1つの実施形態において、送達システムは、鼓膜を貫通し且つ正円窓膜または内耳の蝸牛窓稜に直接アクセス可能な、シリンジおよび針の装置である。
【0907】
1つの実施形態において、針は、製剤の即時送達に用いられる皮下注射針である。皮下注射針は、一回用の針または使い捨て針である。幾つかの実施形態において、シリンジは、本明細書に開示される薬学的に許容可能な耳用薬剤を含有する組成物の送達のために利用され、シリンジはプレスフィット(Luer)またはツイストオン(Luer-lock)フィッティングを有する。1つの実施形態において、シリンジは皮下注射シリンジである。別の実施形態において、シリンジはプラスチックまたはガラスで作られる。また別の実施形態において、皮下注射シリンジは一回用のシリンジである。更なる実施形態において、ガラスシリンジは滅菌可能である。また更なる実施形態において、滅菌はオートクレーブによって行われる。別の実施形態において、シリンジは円筒状シリンジ本体を備え、製剤は使用前に保管される。他の実施形態において、シリンジは、円筒状シリンジ本体を備え、本明細書に開示されるような薬学的に許容可能な耳用の製剤または組成物は使用前に保存され、この使用は適切な薬学的に許容可能なバッファーとの混合を都合良く可能にする。他の実施形態において、シリンジは、中に含まれる耳用薬剤または他の医薬化合物を安定させる、または安定的に保存するために、他の賦形剤、安定剤、懸濁化剤、希釈剤、またはこれらの組み合わせを含む。
【0908】
幾つかの実施形態において、シリンジは、円筒状シリンジ本体を備え、ここで本体は、各区画が耳に許容可能な耳用製剤の少なくとも1つの化合物を保管することが可能となるように区画化される。更なる実施形態において、区画化された本体を有するシリンジは、中耳または内耳への注射の前に成分の混合を可能にする。他の実施形態において、送達システムは、多数のシリンジを備え、多数のシリンジの各シリンジはゲル製剤の少なくとも1の成分を含有し、その結果、各成分は注射前に予め混合され、あるいは注射後に混合される。更なる実施形態において、本明細書に開示されるシリンジは、少なくとも1つのリザーバーを備え、少なくとも1つのリザーバーは、耳用薬剤、あるいは薬学的に許容可能なバッファー、粘度増強剤、またはそれらの組み合わせを備える。中耳内注射を行うために、シリンジバレルを有する既製のプラスチックシリンジ、針を有する針アセンブリ、プランジャーロッドを有するプランジャー、および保持フランジとして最も単純な形態で、市販の注射デバイスが随意に使用される。
【0909】
幾つかの実施形態において、針は、本明細書に記載される製剤または組成物を送達するために使用される。幾つかの実施形態において、針は、鼓膜の後部下方の四分円を穿刺する。幾つかの実施形態において、針は標準ゲージの針である。幾つかの実施形態において、針は細いゲージの針である。幾つかの実施形態において、針は18ゲージより幅広い針である。別の実施形態において、針のゲージは約18ゲージから約30ゲージである。幾つかの実施形態において、針のゲージは約20ゲージから約30ゲージである。幾つかの実施形態において、針のゲージは約25ゲージから約30ゲージである。幾つかの実施形態において、針のゲージは、約18ゲージ、約19ゲージ、約20ゲージ、約21ゲージ、約22ゲージ、約23ゲージ、約24ゲージ、約25ゲージ、約26ゲージ、約27ゲージ、約28ゲージ、約29ゲージ、または約30ゲージである。更なる実施形態において、針は25ゲージの針である。本明細書に開示される製剤または組成物の濃さまたは粘度に依存して、シリンジまたは皮下注射針のゲージの水準は適宜変更される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は液体であり、細いゲージの針またはカニューレ(例えば、22ゲージの針、25ゲージの針、あるいはカニューレ)を介して投与され、投与後の鼓膜の損傷を最小限にする。本明細書に記載される製剤または組成物は、患者に対する不快感を最小限にして投与される。
【0910】
幾つかの実施形態において、正円窓膜を視覚化するために耳内視鏡(otoendoscope)(例えば直径約1.7mm)が使用される。幾つかの実施形態において、正円窓膜への閉塞(例えば、誤った正円窓膜メンブレン、太い栓、繊維組織)が取り除かれる。
【0911】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は正円窓膜に注入される。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される0.1~0.5ccの製剤または組成物が正円窓膜に注入される。
【0912】
幾つかの実施形態において、鼓膜の穿刺穴は自然治癒するように放置される。幾つかの実施形態において、紙パンチ鼓膜形成術(paper patch myringoplasty)は訓練された医師により行なわれる。幾つかの実施形態では、鼓室形成術は訓練された医師により行なわれる。幾つかの実施形態において、個体が水を避けるように助言される。幾つかの実施形態において、水および他の環境要因に対する障害物として、ワセリンに浸された綿ボールが利用される。
【0913】
他の送達経路
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は、外耳道、鼓膜の外面、またはそれらの組み合わせなどの外耳に局所投与される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、鼓膜を介して投与されない。
【0914】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は内耳に投与される。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は、アブミ骨底板での切開を介して内耳に投与される。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は蝸牛形成術を介して蝸牛に投与される。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は、前庭器(例えば三半規管または前庭)に投与される。
【0915】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物はシリンジおよび針を介して適用される。他の実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物は、患者に差し込まれるマイクロカテーテルを介して適用される。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物はポンプデバイスを介して投与される。また更なる実施形態において、本明細書に開示される製剤または組成物はマイクロインジェクション装置を介して適用される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、人工装具、人工内耳、持続注入ポンプ、または芯を介して投与される。
【0916】
幾つかの実施形態において、送達デバイスは、中耳および/または内耳への治療薬の投与のために設計された装置である。ほんの一例として、GYRUS Medical Gmbhは、正円窓小窩の視覚化および正円窓小窩への薬物送達のためのマイクロオトスコープを提供する。Arenbergは、米国特許第5,421,818号、第5,474,529号、および第5,476,446号において、内耳構造へ流体を送達するための処置デバイスを記載しており、その各々は開示目的のために参照により本明細書に組み込まれる。開示目的のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第08/874,208号は、内耳へ治療薬を送達するための流体移動導管を埋め込むための外科的方法について記載している。開示目的のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開2007/0167918は、内耳内の流体サンプリングおよび薬剤の提供のための、組み合わされた耳用アスピレーターと医薬ディスペンサーについて更に記載している。
【0917】
用量
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳用の製剤または組成物は、制御放出製剤であり、ケアの現行基準と比べて少ない投与頻度で投与される。特定の例において、耳用の製剤または組成物が鼓室内注射を介して投与された時、低減された投与頻度は、中耳および/または内耳の疾患、障害、疾病の処置を受ける個体における、複数回の鼓室内注射によって引き起こされる不快感を和らげる。特定の例において、鼓室内注射の低減された投与頻度は、鼓膜に対する消えない傷(例えば、穿孔)のリスクを低減する。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤または組成物は、一定速度、除放速度、持続速度、遅延速度、またはパルス速度での活性薬剤の内耳環境への放出をもたらし、それ故、耳の障害の処置において薬物曝露における変動を回避する。
【0918】
本明細書に記載される化合物を含む製剤または組成物は、予防的および/または治療的な処置のために投与される。治療的用途において、製剤または組成物は、疾患、疾病、または障害に既に苦しんでいる患者へと、疾患、疾病、または障害の症状を治癒するあるいは少なくとも部分的に止めるのに十分な量で投与される。この使用に効果的な量は、疾患、障害、または疾病の重症度および経過、以前の治療、患者の健康状態および薬物に対する反応、並びに処置する医師の判断による。
【0919】
このような量に相当する、与えられた薬剤の量は、特定の化合物、疾患の状態およびその重症度などの要因に依存して変動するが、それにもかかわらず、例えば、投与される特定の薬剤、投与経路、処置される疾病、および処置される被験体または宿主を含む、症例を取り囲む特定の状況に従って、当該技術分野で既知の様式で慣例的に決定される。しかし、成人のヒトの処置に用いられる投与量は典型的に、1回の投与につき0.02~50mg、好ましくは1回の投与につき1~15mgの範囲にある。幾つかの実施形態において、望ましい投与量は、1回の投与量、あるいは、同時に(または短期間にわたり)または適切な間隔で分割投与量で慣習的に提供される。
【0920】
投与の頻度
患者の疾病が改善しない場合、医師の判断に基づき、化合物の投与は、患者の疾患または疾病の症状を寛解、あるいは制御または制限するために、慢性的に、即ち、患者の寿命の間を含む長期間にわたり行なわれる。
【0921】
患者の状況が改善する場合、医師の判断に基づき、化合物の投与が連続的に与えられ;代替的に、投与される薬物の投与量は、一定の長さの時間にわたり一時的に減らされ、あるいは一時的に中止される(即ち、「休薬期間」)。休薬期間の長さは、2日から1年の間で変動し、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、および365日を含む。休薬期間中の投与量減少は、10%-100%であり、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%を含む。
【0922】
一旦患者の疾病の改善が生じると、必要ならば維持量が投与される。その後、投与の量または頻度、あるいはその両方が、症状に応じて、疾患、障害、または疾病の改善が保持されるレベルに減らされる。しかし、患者は、幾つかの実施形態において症状の再発後、断続的な処置を長期的に必要とする。
【0923】
幾つかの実施形態において、最初の投与は特定の製剤の投与であり、その次の投与は異なる製剤または有効医薬成分の投与である。
【0924】
耳の外科的手術およびインプラント
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬製剤または組成物は、インプラント(例えば蝸牛インプラント)(例えば、その移植、短期使用、長期使用、または取り外し)と組み合わせて使用される。本明細書で使用されるように、インプラントは内耳または中耳の医療デバイスであり、その例として、人工内耳、聴力付与デバイス、聴力改善デバイス、短絡電極、微小装具(micro-prostheses)またはピストン様装具;針;幹細胞移植物(transplants);薬物送達デバイス;任意の細胞ベースの治療薬;などが挙げられる。幾つかの例において、インプラントは、聴力損失を経験する患者に使用される。幾つかの例において、聴力損失は誕生時にもたらされる。幾つかの例において、聴力損失は、AIED、細菌性髄膜炎などの疾病に関連付けられ、これらは、蝸牛構造の急速な閉塞および広範囲の聴力損失を伴う骨壊死および/または神経損傷をもたらす。
【0925】
幾つかの例において、インプラントは、耳における免疫細胞または幹細胞の移植物である。幾つかの例において、インプラントは小型の電子デバイスであり、該デバイスは、耳の後ろに配される外側部分、および、ほとんど耳が聞こえないまたはひどく聴力が低下した人に音の感覚をもたらすのを補助する、皮膚の下に外科的に配される第2の部分を備えている。
ほんの一例として、そのような蝸牛医療デバイスは、耳の損傷部分を避けて聴神経を直接刺激する。幾つかの例において、人工内耳は、片側の聴覚喪失において使用される。幾つかの例において、人工内耳は、両耳の聴覚喪失のために使用される。
【0926】
幾つかの実施形態において、耳介入処置(例えば中耳内注射、アブミ骨切除手術、医療デバイスの埋込み、または細胞ベースの移植)と組み合わせた、本明細書に記載される製剤、組成物、またはデバイスの投与は、耳構造に対する損傷、例えば、外部耳介入処置(例えば、耳における外部デバイスおよび/または細胞の設置)によって引き起こされる、刺激、細胞損傷、細胞死、骨新生(osteoneogeneis)、および/または更なる神経退化を遅らせる、または予防する。幾つかの実施形態において、インプラントと組み合わせた本明細書に記載される製剤またはデバイスの投与は、インプラント単独と比較して、聴力損失のより有効な回復を可能にする。
【0927】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤、組成物、またはデバイスの投与は、基礎となる疾病(例えば、細菌性髄膜炎、自己免疫性耳疾患(AIED))によって引き起こされる蝸牛の構造に対する損傷を減らして、蝸牛デバイスの移植の成功を可能にする。幾つかの実施形態において、耳の外科手術、医療デバイスの埋め込み、および/または細胞移植と共に、本明細書に記載される製剤、組成物、またはデバイスの投与は、耳の外科手術、医療デバイスの埋め込み、および/または細胞移植に関連した細胞損傷および/または細胞死(例えば、耳感覚毛細胞の死滅および/または損傷)を減らす、あるいは予防する。
【0928】
幾つかの実施形態において、人工内耳または幹細胞移植と共に、本明細書に記載される製剤、組成物、またはデバイス(例えば、成長因子を含む組成物またはデバイス)の投与は、栄養作用(例えば、細胞の健全な成長、および/または埋め込みまたは移植を促進する)を有する。幾つかの実施形態において、栄養作用は、耳の外科手術の間、または中耳内介入処置の間が望ましい。幾つかの実施形態において、栄養作用は、医療デバイスの設置、または細胞移植の後が望ましい。そのような実施形態の幾つかにおいて、本明細書に記載される製剤、組成物、またはデバイスは、蝸牛への直接注入によって、鼓室階切開によって、または正円窓膜上への沈着によって投与される。
【0929】
幾つかの実施形態において、抗炎症性または免疫抑制製の製剤または組成物(例えば、コルチコステロイドなどの免疫抑制剤を含む製剤または組成物)の投与は、耳の外科手術、医療デバイスの埋め込み、または細胞移植に関連した炎症および/または感染を減らす。幾つかの例において、本明細書に記載される製剤での手術領域のかん流は、手術後および/または埋め込み後の合併症(例えば、炎症、有毛細胞の損傷、神経退化、骨新生など)を減らす、あるいは排除する。幾つかの例において、本明細書に記載される製剤または組成物での手術領域のかん流は、手術後または埋め込み後の回復時間を短くする。幾つかの実施形態において、医療デバイスは、耳における埋め込み前に本明細書に記載される製剤または組成物で覆われる。
【0930】
1つの態様において、本明細書に記載される製剤または組成物、およびそれらの投与の形態は、内耳区画の直接的なかん流の方法に適用可能である。故に、本明細書に記載される製剤または組成物は、耳の介入処置と組み合わせて有用である。幾つかの実施形態において、耳の介入処置は、移植手順(例えば、蝸牛での聴力デバイスの移植)である。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳の介入処置には、非限定的な例として、蝸牛形成術、内耳手術、乳突削開術、アブミ骨切除術、内リンパ球形嚢手術、鼓膜切開術などを含む手術が挙げられる。幾つかの実施形態において、内耳の区画は、耳の介入処置の前、その間、その後、あるいはその組み合わせで、本明細書に記載される製剤または組成物でかん流される。
【0931】
幾つかの実施形態において、かん流が耳介入処置と組み合わせて実行されると、製剤または組成物は即時放出組成物である。そのような実施形態の幾つかにおいて、本明細書に記載される即時放出製剤は、持続放出成分を実質的に含まない。
【0932】
キットおよび他の製品
本開示はまた、哺乳動物における疾患または障害の症状を予防、処置、または改善するためのキットも提供する。そのようなキットは、本明細書に開示されるような薬学的に許容可能な組成物の1つ以上、およびキットを使用するための説明書を含む。本開示はまた、内耳障害を抱えている、抱えている疑いがある、あるいはそれを進行させる危険があるヒトなどの動物における疾患、機能障害、または障害の症状を処置、緩和、減少、または改善するための薬剤の製造における、製剤または組成物の1つ以上の使用を考慮する。
【0933】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示されるキットは、鼓膜および/または正円窓を貫通する針を備える。幾つかの実施形態において、本明細書に開示されるキットは更に、浸透促進剤(例えば、アルキルグリコシドおよび/または糖類アルキルエステル)を含むヒドロゲルを備える。
【0934】
幾つかの実施形態において、キットは、バイアルやチューブなどの1つ以上の容器を受けるように区画化された運搬体、パッケージ、または容器を備えており、容器の各々は本明細書に記載される方法で使用される別個の要素のうち1つを含む。適切な容器として、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。他の実施形態において、容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成される。
【0935】
本明細書で提供される製品は、包装材料を含む。医薬品を包装する際に使用するための包装材料が本明細書で示される。例えば、米国特許第5,323,907号、第5,052,558号、および第5,033,252号を参照。医薬の包装材料としては、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、ボトル、および、選択された製剤に、並びに投与および処置の意図した様式に適切な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。多様な化合物の製剤または組成物、および本明細書で提供される製剤または組成物は、内耳への治療薬の持続放出投与によって利益を得る、任意の疾患、障害、または疾病の様々な処置として考慮されている。
【0936】
幾つかの実施形態において、キットは典型的に、1以上の追加の容器を備え、その各々は、本明細書に記載される製剤または組成物の使用のための商業上およびユーザーの観点から望ましい1以上の様々な材料(随意に濃縮された形態での試薬、および/またはデバイス)を備える。そのような材料の非限定的な例には、バッファー、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ;運搬体、パッケージ、容器、内容物および/または使用説明を列挙するバイアルおよび/またはチューブのラベル、並びに使用説明を含む添付文書が挙げられるが、これらに限定されない。1セットの説明書も典型的に含まれる。
【0937】
更なる実施形態において、ラベルは、容器の上にあり、または容器に付随されている。また更なる実施形態において、ラベルを形成する文字、数字、または他の表示が、容器自体に貼り付けられ、成形され、あるいは刻まれる時、ラベルは容器の上にある。例えば添付文書として、容器を同様に保持するレセプタクルまたは運搬体内に存在する時、ラベルは容器に付随する。他の実施形態において、ラベルは、内容物が特定の治療用途に用いられるべきであることを示すために用いられる。また別の実施形態において、ラベルはまた、本明細書に記載される方法などでの内容物の使用に関する方向性を示す。
【0938】
特定の実施形態において、医薬製剤または組成物は、本明細書で提供される化合物を含有する1つ以上の単位投与量を含むパックまたはディスペンサーデバイスにおいて、提供される。別の実施形態において、パックは例えば、ブリスター包装などの金属またはプラスチック箔を含む。更なる実施形態において、パックまたはディスペンサーデバイスには、投与の説明書が添付される。また更なる実施形態において、パックまたはディスペンサーには、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形態で容器に付随する通知書も添付され、この通知書は、ヒトまたは動物の投与に関する薬物の形態についての、政府機関の承認を反映するものである。別の実施形態において、このような通知書は、例えば、処方薬または承認された生成物の挿入に関する、米国食品医薬品局により承認されたラベルである。また別の実施形態において、適合可能な医薬担体において製剤される、本明細書で提供される化合物を含む組成物も、示された疾病の処置のために調製され、適切な容器に配され、ラベルを付けられる。
【実施例】
【0939】
実施例A1
TrkC.T1の選択的阻害剤の開発
TrkC.T1 mRNAの特有の3’配列を特異的に標的とする短いヘアピンのRNA(shRNA)を設計する。TrkC.T1を標的とするshRNA配列、またはスクランブルされた対照を、pLKO.1レンチウイルスshRNA-発現ベクターへとクローン化する。pLKO.1scrambledおよびpLKO.1TrkC-T1レンチウイルスを精製し、HEK293-TrkC.T1またはHEK293-TrkC-FL(TrkC.T1またはTrkC-FL cDNAでトランスフェクトされた細胞)の感染により試験する。PLKO.1TrkC.T1での感染はTrkC-FL mRNAに影響を及ぼすことなくTrkC.T1 mRNAを減少させるが、一方で対照ウイルスPLKO.1Scrambledでの感染には、TrkC.T1またはTrkC-FL mRNAの何れに対しても効果が無かった。同じ細胞の溶解産物中のタンパク質発現を調べることでデータを検証する。多数の実験において、培養物中のTrkC.T1タンパク質発現は~80%から97%減少する。TrkC.T1の減少が生物学的な影響を持つかどうか評価するために、TNF-αの産生を、TrkC.T1活性の機能的なエンドポイントとして使用する。
【0940】
実施例A2
表3はshRNA配列を例示する。
【0941】
【0942】
表4は、TrkCとTrkBの完全長および切断型のアイソフォームの配列を例示する。
【0943】
【0944】
【0945】
表5はmiRNA配列を例示する。
【0946】
【0947】
【0948】
【0949】
【0950】
実施例1-中鎖トリグリセリド製剤-デキサメタゾン
MCT中のデキサメタゾン
6%のデキサメタゾン(0.4um)の無菌製剤を以下のように調製した。熱滅菌したデキサメタゾン粉末を、穏やかな混合によって滅菌濾過されたMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)の中に分散した。その後、懸濁液をMicrofluidizerで均質化し、粒径を0.4umに小さくした。その後、0.05%または2%の熱滅菌したSiO2粉末を懸濁液に加えた。徹底的な混合後、均一な懸濁液を形成した。デキサメタゾンをMCTの中に懸濁させ、60mg/ml(6.0%)の濃度に到達させた。
【0951】
6%のデキサメタゾン(5um)の無菌製剤を以下のように調製した。熱滅菌したデキサメタゾン粉末を、穏やかな混合によって滅菌濾過されたMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)の中に分散した。その後、0.05%または2%の熱滅菌したSiO2粉末を懸濁液に加えた。徹底的な混合後、均一な懸濁液を形成した。デキサメタゾンをMCTの中に懸濁させ、60mg/ml(6.0%)の濃度に到達させた。
【0952】
6%のデキサメタゾン(5um)のオートクレーブ(Autoclave)製剤を以下のように調製した。デキサメタゾン粉末を、穏やかな混合によってMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)の中に分散した。その後、0.05%または2%のSiO2粉末を懸濁液に加えた。徹底的な混合後、均一な懸濁液を形成した。その後、懸濁液を投与前にオートクレーブ滅菌した(121Cで20分間)。デキサメタゾンをMCTの中に懸濁させ、60mg/ml(6.0%)の濃度に到達させた。
【0953】
薬物動態
デキサメタゾン製剤の薬物動態を、実施例6に記載される手順に従い判定した。
【0954】
分析法
デキサメタゾン濃度の判定を、質量分析検出(MS)と組み合わせた高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して実行した。酢酸エチル/アセトニトリル(2/3、v/v)を使用する液-液抽出によりサンプルを抽出し、次いでボルテックスし、遠心分離した。上清を集め、蒸発乾固させて、その後、0.1%のギ酸を含有するアセトニトリル/水(30/70、v/v)で再構成させた。2.5分の分析時間で、0.6ml/minの流速で、Phenomenex Synergi Polar-RP 100Aカラム(50x2.0mm、2.5μm)を使用する逆相HPLC(1200シリーズ、Agilent)によって、サンプルを分析した。勾配法を使用した:移動相Aは0.2:100(ギ酸:水、v/v)の水における2mMのギ酸アンモニウムで構成され、移動相Bは0.2:5:95(ギ酸:水:アセトニトリル、v/v/v)における2mMのギ酸アンモニウムで構成される。勾配は初めに30%のBから成り、1.25分で95%のBへと進み(stepped)、その後、30%のBに戻って、カラムを再平衡化した。デキサメタゾン-d4を内部標準(IS)として使用した。Turbo IonSprayのソースを備えたAB Sciex API 5500トリプル四重極MSを使用して、質量分析を実行した。ESI質量スペクトルを、デキサメタゾンに関してはm/z393.20からm/z373.30、およびデキサメタゾン-d4に関してはm/z397.10から377.10m/zの質量転移と共に、正のMRMモードで獲得した。デキサメタゾンのピーク面積を、Analyst1.5(Applied Biosystems)を使用して判定した。線形回帰分析(1/濃度2)を使用して、分析物/内部標準(IS)のピーク面積比率および標準濃度に適合させることによって、較正曲線を得た。その後、サンプルのデキサメタゾン濃度を、ソフトウェアAnalyst1.5(Applied Biosytems)から導かれるピーク面積比率を使用して、較正曲線から導かれる方程式を用いて補間した。
【0955】
図4A、
図4B、および
図4Cは、6%のデキサメタゾン(0.4um)無菌MCT、6%のデキサメタゾン(5um)無菌MCT、および6%のデキサメタゾン(5um)のオートクレーブ滅菌したMCT製剤それぞれに関する、投与後の外リンパにおけるデキサメタゾンの濃度を示す。
【0956】
実施例2-中鎖トリグリセリド製剤-ガシクリジン
MCT中のガシクリジン
MCT-0.3%または3%のGYC製剤を、以下のように調製した。0.3%または3%ガシクリジン(GYC)をMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)に溶かした。溶液を0.2μmのフィルタに通して濾過した。ガシクリジンをMCTに溶かし、3mg/ml(0.3%)から30mg/ml(3%)に及ぶ濃度に到達させた。
【0957】
MCT-3%のGYC HCl製剤を以下のように調製した。3%のガシクリジンHCL(GYC HCl)を、振盪によって滅菌濾過したMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)に分散させた。ガシクリジンHClをMCTの中に懸濁させ、30mg/ml(3%)の濃度に到達させた。
【0958】
薬物動態
ガシクリジン製剤の薬物動態を、実施例6に記載される手順に従い判定した。
【0959】
分析法
サンプルをタンパク質沈殿により抽出し、次いでボルテックスし、遠心分離した。上清を集め、2倍の水で希釈した。0.8mL/minの流速で、Water Acquity UPLC BEH C18カラム(2.1x50mm、1.7μm)を使用する逆相HPLC(1200シリーズ、Agilent)によりサンプルを分析し、カラム温度は55℃であり、分析時間は4.5分であった。勾配法を使用した:移動相Aは95%の水:5%のアセトニトリル:0.1%のギ酸(v/v/v)で構成され、移動相Bは、50%のアセトニトリル:50%のメタノール:0.1%のギ酸(v/v/v)で構成される。勾配は初めに50%のBから成り、2.30分で95%のBへと進み、その後、50%のBに戻って、カラムを再平衡化した。
【0960】
カルバマゼピンをラセミ体のための内部標準(I.S.)として使用した。Turbo IonSprayのソースを備えたAB Sciex API 5500 Triple Quad MSを使用して、質量分析を実行した。ESI質量スペクトルを、ガシクリジンに関してはm/z264.300からm/z86.000、およびカルバマゼピンに関してはm/z237.100からm/z194.100の質量転移と共に、正のMRMモードで獲得した。GCYのピーク面積を、Analyst1.5(Applied Biosystems)を使用して判定した。線形回帰分析(1/濃度2)を使用して、分析物/内部標準(IS)のピーク面積比率および標準濃度に適合させることによって、較正曲線を得た。その後、サンプルのGCY濃度を、ソフトウェアApplied Biosytemsから導かれるピーク面積比率を使用して、較正曲線から導かれる方程式を用いて補間した。
【0961】
図5Aは、0.3%のガシクリジンMCT製剤に関する投与後の外リンパにおけるガシクリジンの濃度を示す。
図5Bは、3%のガシクリジンMCT製剤および3%のガシクリジンHCL MCT製剤に関する投与後の外リンパにおけるガシクリジンの濃度を示す。
【0962】
実施例3-中鎖トリグリセリド製剤-ガシクリジン
MCTにおけるガシクリジン遊離塩基
ガシクリジン遊離塩基の適正量を量り、標的量のMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)に加えた。完全な溶解が観察されるまで、製剤を混合した。製剤された溶液の滅菌を0.22umのフィルタに通す濾過によって実行し、濾過した溶液をバイアルに入れた。
【0963】
SiO2を備えたMCTにおけるガシクリジンHCl塩/PVP
ガシクリジンHCl塩およびPVP(1:4w/wの比率)を水に溶かした。製剤された溶液の滅菌を0.22umのフィルタに通す濾過によって実行し、濾過した溶液をバイアルに移した。バイアル中の溶液を凍結乾燥し、結果として生ずる凍結乾燥ケーキ(lyo cake)を、適正量の滅菌濾過したMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)に分散した。混合物中の粒径をビードブラスティングにより小さくした。標的量の二酸化ケイ素(3%)を懸濁液に加え、均一になるまで混合した。
【0964】
SiO2を備えたMCTにおけるパモ酸ガシクリジン(Gacyclidine pamoate)塩
パモ酸ガシクリジン塩を、適正量の滅菌濾過したMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV))に分散した。混合物中の粒径をビードブラスティングにより小さくした。標的量の二酸化ケイ素(3%)を懸濁液に加え、均一になるまで混合した。
【0965】
ガシクリジン製剤の薬物動態を、実施例6に記載される手順に従い判定した。
【0966】
分析法
サンプルをタンパク質沈殿により抽出し、次いでボルテックスし、遠心分離した。上清を集め、2倍の水で希釈した。0.8mL/minの流速で、Water Acquity UPLC BEH C18カラム(2.1x50mm、1.7μm)を使用する逆相HPLC(1200シリーズ、Agilent)によりサンプルを分析し、カラム温度は55℃であり、分析時間は4.5分であった。勾配法を使用した:移動相Aは95%の水:5%のアセトニトリル:0.1%のギ酸(v/v/v)で構成され、移動相Bは、50%のアセトニトリル:50%のメタノール:0.1%のギ酸(v/v/v)で構成される。勾配は初めに50%のBから成り、2.30分で95%のBへと進み、その後、50%のBに戻って、カラムを再平衡化した。
【0967】
カルバマゼピンをラセミ体のための内部標準(I.S.)として使用した。Turbo IonSprayのソースを備えたAB Sciex API 5500 Triple Quad MSを使用して、質量分析を実行した。ESI質量スペクトルを、ガシクリジンに関してはm/z264.300からm/z86.000、およびカルバマゼピンに関してはm/z237.100からm/z194.100の質量転移と共に、正のMRMモードで獲得した。GCYのピーク面積を、Analyst1.5(Applied Biosystems)を使用して判定した。線形回帰分析(1/濃度2)を使用して、分析物/内部標準(IS)のピーク面積比率および標準濃度に適合させることによって、較正曲線を得た。その後、サンプルのGCY濃度を、ソフトウェアApplied Biosytemsから導かれるピーク面積比率を使用して、較正曲線から導かれる方程式を用いて補間した。
【0968】
図6は、0.16%のガシクリジン遊離塩基MCT製剤、0.5%のガシクリジン遊離塩基MCT製剤、および1.5%のガシクリジン遊離塩基MCT製剤に関する投与後の外リンパにおけるガシクリジンの濃度を示す。
図7は、MCT/SiO2製剤中の1.5%のガシクリジンHCl/PVPおよびMCT/SiO2製剤中の1.5%のパモ酸ガシクリジンに関する投与後の外リンパにおけるガシクリジンの濃度を示す。
【0969】
実施例4-中鎖トリグリセリド製剤-ヒトIgG
MCTにおけるヒトIgG
MCT/SiO2(0.5%または3%)の製剤を、以下のように調製した。IgGを含有する凍結乾燥ケーキを、ボールミル粉砕により懸濁液としてMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)に分散し、次いで0.5%または3%いずれかのSiO2粒子を上記懸濁液に加えた。振盪による徹底的な混合後、均一な懸濁液を得た。最終懸濁液中のヒトIgG濃度は10mg/ml(1.0%)であった。
【0970】
MCT/PVP(2%、4%、または10%)/SiO2(0.5%または3%)の製剤を以下のように調製した。IgGを含有する凍結乾燥ケーキを、0.2、0.25、または0.5%のIgG濃度で水に溶かした。その後、PVPをIgG溶液に加え、0.5または2%のPVP濃度で溶かし、その結果、PVPに対するIgGの比率(重量比(weight by weight))は、1:2、1:4、または1:10であった。その後、IgG/PVP溶液を凍結乾燥し、凍結乾燥ケーキを、ボールミル粉砕により懸濁液としてMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)に分散した。0.5%または3%いずれかのSiO2粒子を上記懸濁液に加えた。振盪による徹底的な混合後、均一な懸濁液を得た。最終懸濁液中のヒトIgG濃度は10mg/ml(1.0%)であった。
【0971】
MCT/カルボマー(1%または2%)/SiO2(0.5%または3%)の製剤を、以下のように調製した。IgGを含有する凍結乾燥ケーキを、0.05%のIgG濃度で水に溶かした。その後、カルボマーをIgG溶液に加え、0.05または0.1%のカルボマー濃度で溶かし、その結果、カルボマーに対するIgGの比率(重量比)は、1:1または1:2であった。その後、IgG/カルボマー溶液を凍結乾燥し、凍結乾燥ケーキを、ボールミル粉砕により懸濁液としてMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)に分散した。0.5%または3%いずれかのSiO2粒子を上記懸濁液に加えた。振盪による徹底的な混合後、均一な懸濁液を得た。最終懸濁液中のヒトIgG濃度は10mg/ml(1.0%)であった。
【0972】
MCT/P407(4%または10%)/SiO2(0.5%または3%)の製剤を、以下のように調製した。IgGを含有する凍結乾燥ケーキを、0.5%または1%のIgG濃度で水に溶かした。その後、P407をIgG溶液に加え、2%または10%のP407の濃度で溶かし、その結果、PVPに対するIgGの比率(重量比)は、1:4または1:10であった。その後、IgG/P407溶液を凍結乾燥し、凍結乾燥ケーキを、ボールミル粉砕により懸濁液としてMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)に分散した。0.5%または3%いずれかのSiO2粒子を上記懸濁液に加えた。振盪による徹底的な混合後、均一な懸濁液を得た。最終懸濁液中のヒトIgG濃度は10mg/ml(1.0%)であった。
【0973】
薬物動態
ヒトIgG製剤の薬物動態を、実施例6に記載される手順に従い判定した。
【0974】
分析法
外リンパサンプル中のIgGの濃度を、市販で入手可能なELISAキットを使用して判定した。
【0975】
図8Aは、IgG MCT/0.5%のSiO2製剤に関する投与後の外リンパにおけるヒトIgGの濃度を示す。
図8Bは、IgG MCT/3%のSiO2製剤に関する投与後の外リンパにおけるヒトIgGの濃度を示す。
【0976】
図9Aは、IgG MCT/PVP/0.5%のSiO2製剤に関する投与後の外リンパにおけるヒトIgGの濃度を示す。
図9Bは、IgG MCT/PVP/3%のSiO2製剤に関する投与後の外リンパにおけるヒトIgGの濃度を示す。
【0977】
図10Aは、IgG MCT/カルボマー/0.5%のSiO2製剤に関する投与後の外リンパにおけるヒトIgGの濃度を示す。
図10Bは、IgG MCT/カルボマー/3%のSiO2製剤に関する投与後の外リンパにおけるヒトIgGの濃度を示す。
【0978】
図11Aは、IgG MCT/P407/0.5%のSiO2製剤に関する投与後の外リンパにおけるヒトIgGの濃度を示す。
図11Bは、IgG MCT/P407/3%のSiO2製剤に関する投与後の外リンパにおけるヒトIgGの濃度を示す。
【0979】
実施例5-中鎖トリグリセリド製剤-デキサメタゾン
SiO2を備えたおよびSiO2を備えないMCTにおけるデキサメタゾン
デキサメタゾンの適正量を量り、標的量のMCT(CRODAMOL、GTCC-LQ-(MV)、PhEur)に加えた。デキサメタゾンの粒径を、高エネルギーボールミル粉砕プロセスを使用して約0.2um(D50)に小さくした。その後、いずれかのMCTを加えて、製剤を最終容量にし、あるいは、適正量のSiO2を製剤に加え、その後、MCTを使用して製剤を最終容量にした。その後、均質になるまで製剤を混合し、結果として生ずる懸濁液をバイアルに入れた。
【0980】
薬物動態
デキサメタゾン製剤の薬物動態を、実施例6に記載される手順に従い判定した。
【0981】
分析法
この実験のために使用される分析法は実施例1に記載される方法と同じである。
【0982】
図12は、6%のデキサメタゾン(0.2um)MCT、6%のデキサメタゾン(0.2um)MCT/0.05%のSiO2、および6%のデキサメタゾン(0.2um)MCT/2%のSiO2製剤それぞれに関する、投与後の外リンパにおけるデキサメタゾンの濃度を示す。
【0983】
実施例6-中鎖脂肪酸トリグリセリド製剤の薬物動態
約12-16週齢の体重200-300gのメスのラット(Charles River)を被験体として使用した(1つの群につきN=4)。処置の前に、腹腔内経路を介して最大1時間にわたり、キシラジン(10mgkg)およびケタミン(90mg/kg)の組み合わせを用いて、動物に麻酔をかけた。必要な場合、術中の追加免疫(intraoperative booster)を、本来の投与量の3分の1で腹腔内投与した。
【0984】
鼓室内注射-正円窓小窩への注射に好ましい角度に頭部を傾けるように、各動物を位置付けた。簡潔に、手術用顕微鏡による可視化の下で、25G(ゲージ)11/2の針を使用し、鼓膜を介して、上方の後部四分円へと、20μlの製剤を注射した。2μL/秒の速度でかん流ポンプを使用して、製剤を送達した。動物を臥位にすることにより30分間、正円窓膜との接触を維持した。処置中、および回復するまで、動物を、温度調節した(40℃)ヒーティングパッド上に置き、その後意識を取り戻したら、動物を施設に戻した。
【0985】
外リンパのサンプリング手順-麻酔をかけたラットの耳の後ろの皮膚を削り取り、ポビドンヨードで消毒した。次いで耳の後ろに切り込みを入れ、筋肉を水疱の上から注意深く収縮させた。中耳が露出し且つアクセス可能となるように、歯科用バーを用いて水疱に穴を空けた。蝸牛と正円窓膜を、ステレオ外科用顕微鏡の下で視覚化した。水疱の基底回転を小さな綿ボールを使用してきれいにした。正円窓に隣接する蝸牛の骨質の殻(蝸牛カプセル剤)に、特有の微小穴を手で空けた。その後、蝸牛の鼓室階に挿入したマイクロキャピラリーを使用して、外リンパ(約2μl)を集めた。外リンパサンプルを、18μLの水を含有するバイアルに入れ、分析まで-80℃で保管した。
【0986】
実施形態
実施形態1:耳用医薬製剤であって、
a)治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩;および
b)中鎖脂肪酸を含むトリグリセリド
を含んでおり;ここでトリグリセリドは、耳への注入のために治療薬を安定させるのに十分な量で存在し、耳用医薬製剤は少なくとも約50重量%のトリグリセリドを含む、耳用医薬製剤。
【0987】
実施形態2:トリグリセリドは、耳において十分な保持時間を提供するのに十分な量で存在する、実施形態1の耳用医薬製剤。
【0988】
実施形態3:トリグリセリドは、治療薬の徐放を提供するのに十分な量で存在する、実施形態1または2の耳用医薬製剤。
【0989】
実施形態4:トリグリセリドは、細いゲージ針を介した製剤の送達を可能するのに十分な量で存在する、実施形態1乃至3のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【0990】
実施形態5:トリグリセリドはグリセロールと中鎖脂肪酸に由来する、実施形態1乃至4のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【0991】
実施形態6:中鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に6~12の炭素原子を含む、実施形態5の耳用医薬製剤。
【0992】
実施例7:中鎖脂肪酸はそれぞれ独立して、炭素鎖中に8~12の炭素原子を含む、実施形態5の耳用医薬製剤。
【0993】
実施形態8:中鎖脂肪酸は飽和した中鎖脂肪酸、不飽和の中鎖脂肪酸、またはそれらの組み合わせである、実施形態5の耳用医薬製剤。
【0994】
実施形態9:中鎖脂肪酸は、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ウンデシレン酸(ウンデカ-10-エン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、またはそれらの組み合わせである、実施形態5の耳用医薬製剤。
【0995】
実施形態10:中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドは、バラッサ油、ヤシ油、コフネヤシ油、パーム核油、ホシダネヤシ油、またはそれらの組み合わせである、実施形態1乃至4のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【0996】
実施形態11:耳用医薬製剤は、約50重量%から約99.99重量%のトリグリセリドを含む、実施形態1乃至10のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【0997】
実施形態12:耳用医薬製剤は、約55重量%から約99.99重量%のトリグリセリドを含む、実施形態1乃至10のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【0998】
実施形態13:耳用医薬製剤は、約60重量%から約99.99重量%のトリグリセリドを含む、実施形態1乃至10のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【0999】
実施形態14:耳用医薬製剤は、約65重量%から約99.99重量%のトリグリセリドを含む、実施形態1乃至10のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1000】
実施形態15:耳用医薬製剤は、約70重量%から約99.99重量%のトリグリセリドを含む、実施形態1乃至10のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1001】
実施形態16:耳用医薬製剤は、約75重量%から約99.99重量%のトリグリセリドを含む、実施形態1乃至10のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1002】
実施形態17:耳用医薬製剤は、約80重量%から約99.99重量%のトリグリセリドを含む、実施形態1乃至10のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1003】
実施形態18:耳用医薬製剤は、約85重量%から約99.99重量%のトリグリセリドを含む、実施形態1乃至10のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1004】
実施形態19:耳用医薬製剤は、約90重量%から約99.99重量%のトリグリセリドを含む、実施形態1乃至10のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1005】
実施形態20:耳用医薬製剤は、約95重量%から約99.99重量%のトリグリセリドを含む、実施形態1乃至10のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1006】
実施形態21:耳用医薬製剤は少なくとも1つの粘度調節剤を更に含む、実施形態1乃至20のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1007】
実施形態22:少なくとも1つの粘度調節剤は二酸化ケイ素、ポビドン、カルボマー、ポロキサマー、およびそれらの組み合わせから選択される、実施形態1乃至21のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1008】
実施形態23:粘度調節剤は二酸化ケイ素である、実施形態22の耳用医薬製剤。
【1009】
実施形態24:粘度調節剤は二酸化ケイ素とポビドンである、実施形態22の耳用医薬製剤。
【1010】
実施形態25:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約20重量%のポビドンを含む、実施形態24の耳用医薬製剤。
【1011】
実施形態26:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約15重量%のポビドンを含む、実施形態24の耳用医薬製剤。
【1012】
実施形態27:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約10重量%のポビドンを含む、実施形態24の耳用医薬製剤。
【1013】
実施形態28:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約7重量%のポビドンを含む、実施形態24の耳用医薬製剤。
【1014】
実施形態29:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約5重量%のポビドンを含む、実施形態24の耳用医薬製剤。
【1015】
実施形態30:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約3重量%のポビドンを含む、実施形態24の耳用医薬製剤。
【1016】
実施形態31:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約2重量%のポビドンを含む、実施形態24の耳用医薬製剤。
【1017】
実施形態32:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約1重量%のポビドンを含む、実施形態24の耳用医薬製剤。
【1018】
実施形態33:粘度調節剤は二酸化ケイ素とカルボマーである、実施形態22の耳用医薬製剤。
【1019】
実施形態34:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約20重量%のカルボマーを含む、実施形態33の耳用医薬製剤。
【1020】
実施形態35:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約15重量%のカルボマーを含む、実施形態33の耳用医薬製剤。
【1021】
実施形態36:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約10重量%のカルボマーを含む、実施形態33の耳用医薬製剤。
【1022】
実施形態37:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約7重量%のカルボマーを含む、実施形態33の耳用医薬製剤。
【1023】
実施形態38:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約5重量%のカルボマーを含む、実施形態33の耳用医薬製剤。
【1024】
実施形態39:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約3重量%のカルボマーを含む、実施形態33の耳用医薬製剤。
【1025】
実施形態40:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約2重量%のカルボマーを含む、実施形態33の耳用医薬製剤。
【1026】
実施形態41:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約1重量%のカルボマーを含む、実施形態33の耳用医薬製剤。
【1027】
実施形態42:粘度調節剤は二酸化ケイ素とポロキサマーである、実施形態22の耳用医薬製剤。
【1028】
実施形態43:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約20重量%のポロキサマーを含む、実施形態42の耳用医薬製剤。
【1029】
実施形態44:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約15重量%のポロキサマーを含む、実施形態42の耳用医薬製剤。
【1030】
実施形態45:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約10重量%のポロキサマーを含む、実施形態42の耳用医薬製剤。
【1031】
実施形態46:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約7重量%のポロキサマーを含む、実施形態42の耳用医薬製剤。
【1032】
実施形態47:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約5重量%のポロキサマーを含む、実施形態42の耳用医薬製剤。
【1033】
実施形態48:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約3重量%のポロキサマーを含む、実施形態42の耳用医薬製剤。
【1034】
実施形態49:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約2重量%のポロキサマーを含む、実施形態42の耳用医薬製剤。
【1035】
実施形態50:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約1重量%のポロキサマーを含む、実施形態42の耳用医薬製剤。
【1036】
実施形態51:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約10重量%の二酸化ケイ素を含む、実施形態22乃至50のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1037】
実施形態52:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約7重量%の二酸化ケイ素を含む、実施形態22乃至50のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1038】
実施形態53:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約5重量%の二酸化ケイ素を含む、実施形態22乃至50のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1039】
実施形態54:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約3重量%の二酸化ケイ素を含む、実施形態22乃至50のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1040】
実施形態55:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約2重量%の二酸化ケイ素を含む、実施形態22乃至50のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1041】
実施形態56:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約1重量%の二酸化ケイ素を含む、実施形態22乃至50のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1042】
実施形態57:耳用医薬製剤は、約10cPから約10000cPの粘度を持つ、実施形態1乃至56のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1043】
実施形態58:耳用医薬製剤は、約10cPから約5000cPの粘度を持つ、実施形態1乃至56のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1044】
実施形態59:耳用医薬製剤は、約10cPから約1000cPの粘度を持つ、実施形態1乃至56のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1045】
実施形態60:耳用医薬製剤は、約10cPから約500cPの粘度を持つ、実施形態1乃至56のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1046】
実施形態61:耳用医薬製剤は、約10cPから約250cPの粘度を持つ、実施形態1乃至56のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1047】
実施形態62:耳用医薬製剤は、約10cPから約100cPの粘度を持つ、実施形態1乃至56のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1048】
実施形態63:耳用医薬製剤は、約10cPから約50cPの粘度を持つ、実施形態1乃至56のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1049】
実施形態64:治療薬は、免疫調節剤、耳圧調節剤、コルチコステロイド、抗菌剤、耳用神経栄養因子、切断型TrkCまたは切断型TrkBのアンタゴニスト、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニスト、あるいはWNTモジュレータである、実施形態1乃至63のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1050】
実施形態65:免疫調節剤は、抗TNF剤、カルシニューリン阻害剤、IKK阻害剤、インターロイキン阻害剤、TNF変換酵素(TACE)阻害剤、またはトール様受容体阻害剤である、実施形態64の耳用医薬製剤。
【1051】
実施形態66:耳圧調節剤は、アクアポリンのモジュレータ、エストロゲン関連受容体βモジュレータ、ギャップ結合タンパク質モジュレータ、NMDA受容体アンタゴニスト、浸透圧利尿剤、プロゲステロン受容体モジュレータ、プロスタグランジンモジュレータ、またはバソプレシン受容体モジュレータである、実施形態64の耳用医薬製剤。
【1052】
実施形態67:NMDA受容体アンタゴニストは、1-アミノアダマンタン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、イボガイン、ケタミン、エスケタミン(AM-101)、酸化窒素、フェンシクリジン、リルゾール、チレタミン、メマンチン、ジゾシルピン、アプチガネル、レマセミド、7-クロロカイヌレナート(chlorokynurenate)、DCKA(5,7-ジクロロキヌレン酸)、キヌレン酸、1-アミノシクロプロパンカルボキシル酸(ACPC)、AP7(2-アミノ-7-ホスホノヘプタン酸)、APV(R-2-アミノ-5-ホスホノペンタノアート)、CPPene(3-[(R)-2-カルボキシピペラジン-4-イル]-プロプ-2-エニル-1-ホスホン酸);(+)-(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシ-フェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジノ)-1-プロ-パノール;(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリ-ジノ)-1-プロパノール;(3R,4S)-3-(4-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル-)-クロマン-4,7-ジオール;または(1R*,2R*)-1-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-(4-(4-フルオロ-フェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-プロパン-1-オール-メシル酸塩、あるいはガシクリジン(1-[(1R,2S)-2-メチル-1-チオフェン-2-イルシクロヘキシル]ピペリジンである、実施形態66の耳用医薬製剤。
【1053】
実施形態68:治療薬は、コルチコステロイド、抗菌剤、またはNMDA受容体アンタゴニストである、実施形態64乃至67のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1054】
実施形態69:治療薬はデキサメタゾン、シプロフロキサシン、またはガシクリジンである、実施形態68の耳用医薬製剤。
【1055】
実施形態70:耳用神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、繊維芽細胞成長因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PGF)、およびそれらの組み合わせから選択される、実施形態64の耳用医薬製剤。
【1056】
実施形態71:耳用神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニュートロフィン-3、およびそれらの組み合わせから選択される、実施形態70の耳用医薬製剤。
【1057】
実施形態72:
切断型TrkCまたは切断型TrkBのアンタゴニストは、SEQ ID NO:1-5から選択される核酸配列に対して100%の配列同一性を含む核酸ポリマーである、実施形態64の耳用医薬製剤。
【1058】
実施形態73:非天然のTrkCアゴニストは、2B7、A5、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2248、2250、2253、および2256から成る群から選択された抗体である、実施形態64の耳用医薬製剤。
【1059】
実施形態74:非天然のTrkBアゴニストは、1D7、TAM-163、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、および29D7から成る群から選択された抗体である、実施形態64の耳用医薬製剤。
【1060】
実施形態75:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約20重量%の治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグを含む、実施形態1乃至74のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1061】
実施形態76:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約15重量%の治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグを含む、実施形態1乃至74のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1062】
実施形態77:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約10重量%の治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグを含む、実施形態1乃至74のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1063】
実施形態78:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約7重量%の治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグを含む、実施形態1乃至74のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1064】
実施形態79:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約5重量%の治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグを含む、実施形態1乃至74のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1065】
実施形態80:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約3重量%の治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグを含む、実施形態1乃至74のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1066】
実施形態81:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約2重量%の治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグを含む、実施形態1乃至74のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1067】
実施形態82:耳用医薬製剤は、約0.01重量%から約1重量%の治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグを含む、実施形態1乃至74のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1068】
実施形態83:耳における製剤の保持時間は少なくとも1日である、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1069】
実施形態84:耳における製剤の保持時間は少なくとも2日である、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1070】
実施形態85:耳における製剤の保持時間は少なくとも3日である、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1071】
実施形態86:耳における製剤の保持時間は少なくとも4日である、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1072】
実施形態87:耳における製剤の保持時間は少なくとも5日である、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1073】
実施形態88:耳における製剤の保持時間は少なくとも6日である、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1074】
実施形態89:耳における製剤の保持時間は少なくとも7日である、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1075】
実施形態90:耳における製剤の保持時間は少なくとも14日である、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1076】
実施形態91:治療薬は、少なくとも1日の期間にわたり製剤から放出される、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1077】
実施形態92:治療薬は、少なくとも2日の期間にわたり製剤から放出される、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1078】
実施形態93:治療薬は、少なくとも3日の期間にわたり製剤から放出される、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1079】
実施形態94:治療薬は、少なくとも4日の期間にわたり製剤から放出される、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1080】
実施形態95:治療薬は、少なくとも5日の期間にわたり製剤から放出される、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1081】
実施形態96:治療薬は、少なくとも6日の期間にわたり製剤から放出される、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1082】
実施形態97:治療薬は、少なくとも7日の期間にわたり製剤から放出される、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1083】
実施形態98:治療薬は、少なくとも14日の期間にわたり製剤から放出される、実施形態1乃至82のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1084】
実施形態99:耳用医薬製剤は増粘させた液体組成物である、実施形態1乃至98のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1085】
実施形態100:耳用医薬製剤は聴覚に許容可能な製剤である、実施形態1乃至99のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1086】
実施形態101:治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩は多重微粒子である、実施形態1乃至100のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1087】
実施形態102:治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩は、実質的に微粒子の形態である、実施形態1乃至101のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1088】
実施形態103:治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩は、実質的にナノ粒子の形態である、実施形態1乃至101のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1089】
実施形態104:
治療薬、あるいはその薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩は、耳用医薬製剤の中で実質的に溶解される、実施形態1乃至100のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1090】
実施形態105:耳用医薬製剤は、水、C1-C6アルコールまたはC1-C6グリコール、C1-C4アルコールまたはC1-C4グリコール、あるいはそれらの組み合わせを含まない、または実質的に含まない、実施形態1乃至104のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1091】
実施形態106:耳用医薬製剤は水を含まない、または実質的に含まない、実施形態1乃至105のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1092】
実施形態107:耳用医薬製剤はC1-C6アルコールまたはC1-C6グリコールを含まない、または実質的に含まない、実施形態1乃至105のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1093】
実施形態108:耳用医薬製剤はC1-C4アルコールまたはC1-C4グリコールを含まない、または実質的に含まない、実施形態1乃至105のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1094】
実施形態109:針とシリンジ、ポンプ、マイクロインジェクション装置、芯、海綿状材料、およびそれらの組み合わせから選択される薬物送達装置を更に含む、実施形態1乃至108のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1095】
実施形態110:抗酸化物質を更に含む、実施形態1乃至109のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1096】
実施形態111:粘膜付着性賦形剤を更に含む、実施形態1乃至110のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1097】
実施形態112:浸透促進剤を更に含む、実施形態1乃至111のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1098】
実施形態113:防腐剤を更に含む、実施形態1乃至112のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1099】
実施形態114:キレート化剤を更に含む、実施形態1乃至113のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1100】
実施形態115:抗微生物薬を更に含む、実施形態1乃至114のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1101】
実施形態116:治療薬の放出速度を上げる賦形剤を更に含む、実施形態1乃至115のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1102】
実施形態117:治療薬の放出速度を下げる賦形剤を更に含む、実施形態1乃至115のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1103】
実施形態118:耳用製剤は治療上有効な量の治療薬を提供する、実施形態1乃至117のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1104】
実施形態119:注射は外耳に行なわれる、実施形態1乃至118のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1105】
実施形態120:注射は中耳に行なわれる、実施形態1乃至118のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1106】
実施形態121:注射は内耳に行なわれる、実施形態1乃至118のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1107】
実施形態122:耳における十分な保持時間は外耳のためのものである、実施形態2乃至121のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1108】
実施形態123:耳における十分な保持時間は中耳のためのものである、実施形態2乃至121のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1109】
実施形態124:耳における十分な保持時間は内耳のためのものである、実施形態2乃至121のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1110】
実施形態125:治療薬の徐放は外耳におけるものである、実施形態3乃至124のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1111】
実施形態126:治療薬の徐放は中耳におけるものである、実施形態3乃至124のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1112】
実施形態127:治療薬の徐放は内耳におけるものである、実施形態3乃至124のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1113】
実施形態128:外耳、中耳、および/または内耳に関連する耳の疾患または疾病の処置に使用するための、実施形態1乃至127のいずれか1つの耳用医薬製剤。
【1114】
実施形態129:耳の疾患または疾病は、耳垢症あるいは耳の疾患または疾病に関連する耳垢症、耳そう痒症、外耳炎、耳痛、耳鳴、眩暈、耳閉感、聴力損失、メニエール病、感音性難聴、騒音性難聴、加齢性難聴(老人性難聴)、自己免疫性耳疾患、耳鳴、聴器毒性、興奮毒性、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイハント症候群、前庭ニューロン炎、または微小血管の圧迫症候群、聴覚過敏、加齢性平衡障害、中枢性聴覚情報処理障害、聴覚神経障害、人工内耳の性能の改良、あるいはそれらの組み合わせである、実施形態128の耳用医薬製剤。
【1115】
実施形態130:耳の疾患または疾病は、耳垢症、あるいは耳の疾患または疾病に関連する耳垢症である、実施形態129の耳用医薬製剤。
【1116】
実施形態131:耳の疾患または疾病は、耳そう痒症、外耳炎、耳痛、耳鳴、目眩、耳閉感、聴力損失、またはそれらの組み合わせである、実施形態129の耳用医薬製剤。
【1117】
実施形態132:耳の疾患または疾病は、メニエール病、感音性難聴、騒音性難聴、加齢性難聴(老人性難聴)、自己免疫性耳疾患、耳鳴、聴器毒性、興奮毒性、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイハント症候群、前庭ニューロン炎、微小血管圧迫症候群、聴覚過敏症、加齢性平衡障害、中枢性聴覚情報処理障害、聴覚神経病、または人工内耳の性能の改良である、実施形態129の耳用医薬製剤。
【1118】
実施形態133:必要とする被験体の耳の疾患または疾病を処置する方法であって、実施形態1乃至132のいずれか1つに記載の耳用医薬製剤を被験体に投与する工程を含む、方法。
【1119】
本開示の好ましい実施形態が本明細書に示され且つ記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものである。本明細書に記載される実施形態の様々な代案が随意に利用される。以下の特許請求の範囲は本開示の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内の方法および構成は、それによって包含されることが、意図される。
【配列表】