IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウニヴェルジテート ドゥイスブルク・エッセンの特許一覧

特許7033796複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステム
<>
  • 特許-複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステム 図1
  • 特許-複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステム 図2
  • 特許-複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステム 図3
  • 特許-複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステム 図4
  • 特許-複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステム 図5
  • 特許-複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステム 図6
  • 特許-複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステム 図7
  • 特許-複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステム 図8
  • 特許-複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20220304BHJP
   G02B 21/26 20060101ALI20220304BHJP
   G02B 21/34 20060101ALI20220304BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/26
G02B21/34
G02B21/36
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019503997
(86)(22)【出願日】2017-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017000835
(87)【国際公開番号】W WO2018019406
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2019-12-23
(31)【優先権主張番号】102016008854.0
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517352337
【氏名又は名称】ウニヴェルジテート ドゥイスブルク・エッセン
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】グンツァー マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーガ ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】オルフェン スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】グラープマイアー アントン
(72)【発明者】
【氏名】シュスター マルク
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-116735(JP,A)
【文献】特開2014-006291(JP,A)
【文献】特表2012-529025(JP,A)
【文献】特開2015-220625(JP,A)
【文献】特表2018-511815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特には好ましくはマイクロタイタープレートといった試料プレートの複数の試料ウェル(16)内の複数の試料といった、複数の画像の並行的なビデオデータ収集又はフォトデータ収集のためのシステムであって、
少なくとも、互いに平行な光軸(A)を有する顕微鏡(2、8)のアレイを含んでおり、それぞれの顕微鏡が1つの固有の撮像チップ(2)及び1つの固有の対物レンズ(8)を含んでいる、システムにおいて、
当該システムが
a.少なくとも1つの支持ボード(1)を含んでおり、当該支持ボード(1)は4つの側部を有する矩形形状であり、当該支持ボード(1)の表面に全ての撮像チップ(2)が1つのアレイで互いに並んで固定されており、
b.前記撮像チップ(2)のデータフローから画像及び画像シリーズを生成するための、画像データ処理を担う電子装置(3)を含んでおり、当該電子装置(3)が、前記撮像チップ(2)のアレイの側方に並んで、及び/又は、前記撮像チップ(2)のアレイの後方に、配設されており、
c.特には顕微鏡対物レンズ(8)といった前記対物レンズ(8)の、対応する行列配置を備えたアレイを含んでおり、それが前記光軸(A)の方向で前記撮像チップ(2)の前方に配設され、
画像データ処理を担う前記電子装置(3)が、前記支持ボード(1)の多くとも2つの側部(S1、S2又はS1、S3)で、特には向かい合う2つの側部(S1、S3)又は互いに接している2つの側部(S1、S2)で、複数の前記撮像チップ(2)の前記アレイに並んで配設されていること、及び、
複数の前記支持ボード(1)が1つの共通の固定平面内で互いに並んで配設可能であり、その際、隣り合う複数の前記支持ボード(1)が、前記電子装置から解放されているそれらの側部で、互いに隣接していること、
を特徴とするシステム。
【請求項2】
特には好ましくはマイクロタイタープレートといった試料プレートの複数の試料ウェル(16)内の複数の試料といった、複数の画像の並行的なビデオデータ収集又はフォトデータ収集のためのシステムであって、
少なくとも、互いに平行な光軸(A)を有する顕微鏡(2、8)のアレイを含んでおり、それぞれの顕微鏡が1つの固有の撮像チップ(2)及び1つの固有の対物レンズ(8)を含んでいる、システムにおいて、
当該システムが
a.少なくとも1つの支持ボード(1)を含んでおり、当該支持ボード(1)は4つの側部を有する矩形形状であり、当該支持ボード(1)の表面に全ての撮像チップ(2)が1つのアレイで互いに並んで固定されており、
b.前記撮像チップ(2)のデータフローから画像及び画像シリーズを生成するための、画像データ処理を担う電子装置(3)を含んでおり、当該電子装置(3)が、前記撮像チップ(2)のアレイの側方に並んで、及び/又は、前記撮像チップ(2)のアレイの後方に、配設されており、
c.特には顕微鏡対物レンズ(8)といった前記対物レンズ(8)の、対応する行列配置を備えたアレイを含んでおり、それが前記光軸(A)の方向で前記撮像チップ(2)の前方に配設され、
画像データ処理を担う前記電子装置(3)が、前記支持ボード(1)の1つの側部(S1)のみにて、複数の前記撮像チップ(2)の前記アレイに並んで配設されていること、及び、
複数の前記支持ボード(1)が1つの共通の固定平面内で互いに並んで配設可能であり、その際、隣り合う複数の前記支持ボード(1)が、前記電子装置から解放されているそれらの側部で、互いに隣接していること、
を特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシステムにおいて、
当該システムが、それぞれの個別の顕微鏡(2、8)のために複数の照明装置(9)の1つのアレイを含んでおり、特には当該顕微鏡(2、8)が前記撮像チップ(2)の前記光軸(A)の方向で前記対物レンズ(8)の前方に配設されていること、
を特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のシステムにおいて、
画像データ処理を担う前記電子装置(3)が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、同一の支持ボード(1)上に配設されており、当該同一の支持ボード(1)に前記アレイの全ての前記撮像チップ(2)が固定されていること、
を特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のシステムにおいて、
前記撮像チップ(2)から画像処理を担う前記電子装置(3)への複数のライン接続部が、前記支持ボード(1)のアレイ面領域から複数の側面のうちの一面の方向でのみ、又は、前記支持ボード(1)から後方で、外部へと案内されていること、
を特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のシステムにおいて、
画像処理を担う前記電子装置(3)が、同一のアレイの全ての前記撮像チップ(2)の画像データを処理するため、特には時間的に多重化して処理するために、調整されていること、
を特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、
少なくとも1つの多重化電子装置が、特には前記支持ボード(1)上の前記撮像チップ(2)ごとにそれぞれ1つの多重化電子装置が、前記撮像チップ(2)に対して離背する面に配設されていること、
を特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載のシステムにおいて、
異なる支持ボード(1)の、同一の行方向及び/又は列方向で互いに直接隣り合って配設されている2つの、撮像チップ(2)/対物レンズ(8)/照明装置(9)の光軸(A)の間の間隔が、1つのそれぞれの支持ボード(1)の前記アレイの、撮像チップ(2)/対物レンズ(8)/照明装置(9)の光軸(A)の間隔に、対応していること、
を特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載のシステムにおいて、
当該システムが1つの固定構造体(5a、5b、5c、5d)を含んでおり、そこに、少なくとも1つの前記支持ボード(1)、少なくとも1つの前記アレイの複数の前記撮像チップ(2)の複数の前記対物レンズ(8)、並びに、特には対応的な複数の照明装置(9)が、共同で固定されていること、
を特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載の装置にシステムにおいて、
前記固定構造体(5a、5b、5c、5d)が、ただ1つの保持フレーム(5c)を含んでおり、当該ただ1つの保持フレーム(5c)内に、全ての対物レンズ(8)が固定されていること、及び
前記固定構造体(5a、5b、5c、5d)が、特にはただ1つの保持フレーム(5d)を含んでおり、当該保持フレーム(5d)内に、前記撮像チップ(2)の少なくとも1つ前記アレイの対応的な複数の照明装置(9)が固定されていること、好ましくは複数のアレイの場合に、全てのアレイの前記対物レンズ(8)並びに特には対応的な複数の照明装置(9)が、共同で固定されていること、
を特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のシステムにおいて、
前記対物レンズ(8)のそれぞれが、前記固定構造体(5a、5b、5c、5d)内で、好ましくは保持フレーム(5c)内で、前記光軸(A)の方向で、割り当てられている前記撮像チップ(2)に対して、位置調整可能であること、特には前記固定構造体(5a、5b、5c、5d)の保持部での好ましくは連続的な回転可能性又は変位可能性によって、位置調整可能であること、
を特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載のシステムにおいて、
複数の前記対物レンズ(8)のそれぞれが、シリンダ状のパイプ部、好ましくは円筒状のパイプ部を含み、当該パイプ部がその軸方向全長に渡って同一の外側断面を有しており、好ましくは同一の外径を有しており、その際、前記パイプ内に前記対物レンズ(8)の複数のレンズが収容されていること、
を特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項9から12の何れか一項に記載のシステムにおいて、
当該システムが、特にはピエゾアクチュエータといったアクチュエータを含んでおり、当該アクチュエータを用いて、前記固定構造体(5a、5b、5c、5d)が、前記光軸(A)の方向で試料プレートの保持部に対して、相対的に移動可能であること、特には相対的に段階的に移動可能であること、
を特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載の装置にシステムにおいて、
当該システムが制御ユニットを含んでおり、
前記固定構造体(5a、5b、5c、5d)及び試料プレートの前記保持部の間で、異なる間隔を調整するために、好ましくは段階的に異なる間隔を調整するため、また、調整されたそれぞれの間隔に対して1つ又は複数の前記アレイの全ての前記撮像チップ(2)を用いて少なくとも1つの画像を撮影するために、アクチュエータを反復的に制御するように当該制御ユニットが調整されていること、
を特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載の装置にシステムにおいて、
前記制御ユニットが、それぞれの前記撮像チップ(2)のためにその都度の制御周期において撮影された複数の画像から全ての画像のうち最も鮮明な画像を更なる画像処理へと提供するように、そして、同一の制御周期におけるその他残りの画像を破棄するように、調整されていること、
を特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項9から15の何れか一項に記載のシステムにおいて、
当該システムがアクチュエータを含んでおり、当該アクチュエータを用いて前記固定構造(5a、5b、5c、5d)が、前記光軸(A)に対して直角に、特には前記撮像チップ(2)の行方向及び列方向で、試料プレートの保持部に対して移動可能であって、特にはその際、前記試料プレートの前記保持部が地球座標系に関して位置固定的に配置されていること、
を特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項1から16の何れか一項に記載のシステムにおいて、
複数の前記撮像チップ(2)及びそれらの対物レンズ(8)の行方向及び列方向での前記光軸(A)の間隔が、試料プレートの試料ウェルの同一の方向で測られた間隔に対応しており、特には9.5mmよりも狭いこと、
を特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項14から17の何れか一項に記載のシステムにおいて、
それぞれの顕微鏡(2、8)の前記撮像チップ(2)を用いて撮影されるそれぞれの単独画像に、タイムスタンプが割り当てられ、特には撮影時間に関する時間情報が割り当てられ、好ましくはその際、前記タイムスタンプが全ての画像/撮像チップ(2)にとって共通の時計に基づいていること、
を特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特には、好ましくはマイクロタイタープレートといった試料プレート(プローブプレート)の複数の試料ウェル内の試料(サンプル)の、複数の画像の同時的なビデオグラフィック的な捕捉(撮影)又はフォトグラフィック的捕捉のためのシステムであって、少なくとも、互いに平行な光軸を有する顕微鏡のアレイ(配置)を含んでおり、それぞれの顕微鏡が1つの固有の撮像チップ及び1つの固有の対物レンズを含んでいる、システムに関するものである。
【0002】
この場合顕微鏡とは、試料をその自然な大きさに対して拡大して見ること又は画像的に表示することを可能とする一般的な装置と理解され、当該装置においては、試料の像は観察者の眼において又は撮像チップにおいて拡大されている。
【背景技術】
【0003】
並んで配設された複数のカメラを備えるシステムは、従来から知られている。例えばそれぞれに1つの撮像チップ及び対物レンズを備えている一眼レフカメラ(SLR)といった複数の標準的なカメラを1つのアレイ(配列)に構成することが知られており、その配置では複数のカメラが複数の行及び列で互いに配設されている。
【0004】
その種の構成は例えば、
同一のモチーフ(構造モチーフ)を正確に同時に異なる複数の照明スペクトルを用いて捕捉出来るために、又は、同じ照明パラメータの場合に、写真的な解像度をそれぞれの個別の撮像チップの解像度を超えて増加させるために、用いられる。
【0005】
医学技術や生物学に関して、試料プレートの試料ウェル(試料チャンバ)内の複数の試料を動画的に又は静止画的に捕捉する使用法が知られている。例えば、細胞運動が記録されるべきであり、それはそこから診断的な結論を引き出すために行われる。その際好ましくは、独自に移動する生きた細胞の痕跡が視覚化されるべきである。その場合、経済的な理由から、可能な限り多くの異なる試料が設定された時間窓(タイムフレーム)内で捕捉されるべきである。
【0006】
これに関してこれまでは、静止画又は動画撮影可能な顕微鏡にして、撮像チップ及び対物レンズを含む顕微鏡を用いて、連続的に、異なる試料ウェル内のそれぞれの試料を捕捉することが提案された。それに関して、その都度の捕捉の間で、試料プレートを動かすことによって、地球座標系(地球基準系)内で静止している顕微鏡に対して、新たな試料ウェルが顕微鏡の光軸において位置決めされる。
【0007】
試料プレートの移動はこれまで、試料ウェルから試料ウェルまで、約2秒を必要としており、その結果、8秒間よりも短い記録される細胞運動の所望の時間解像度の場合には、4つの試料ウェルより多くは捕捉出来ず、それは、試料プレートが再度4つの試料ウェルのうちの最初のものへ戻されなければならないまでに、行われる。従って、工業標準(インダストリースタンダード)に対応するマイクロタイタープレートの一般的な96の試料ウェルの捕捉は、非常に時間がかかり、また、現存のシステムを用いて試料ウェル毎に8秒よりも短い時間解像度を有する撮影のためには不可能である。
【0008】
大きな時間的なコストに加えて、静止状態にある顕微鏡に対して試料プレートを動かすことによって、それぞれの試料或いはそれらに存在する細胞及びそれらを取り囲む液体が加速されまた再度減速されることが問題である。それにより発生し細胞や液体に作用する衝撃は、自然な細胞の運動に重なり得て、また、測定結果を歪曲し得る。
【0009】
1つの試料プレートの複数の試料ウェル又は全ての試料ウェルを同時に捕捉(撮影)することが出来るための、複数の個別の顕微鏡(にして撮像チップ及び対物レンズからなる顕微鏡)の1つアレイ内での理論上の並置配置は、これまでの従来技術に従えば、対物レンズ及び撮像チップ、並びに好ましくは照明装置からなる以下のような顕微鏡が存在しない点で、失敗する、すなわち、試料プレートの複数の試料ウェル又は全ての試料ウェルを同時に捕捉出来るように、それらの顕微鏡を既知の試料プレートの通常の試料ウェル間隔に対応する間隔で行及び列で並び合って位置決めすることが出来るように、コンパクトに設計されている顕微鏡が存在しない点で、失敗する、なお当該間隔は、96の試料ウェルを備えるマイクロタイタープレートの場合は例えば10mmよりも狭い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、複数の顕微鏡の1つのアレイを用いて、特にはそれぞれ撮像チップ及び顕微鏡対物レンズ、好ましくは照明装置をも有している顕微鏡のアレイを用いて、複数の画像を並行して捕捉することが出来るシステムを提供すること、好ましくはそれぞれの試料ウェルのビデオ動画の連続する画像の間の時間間隔を8秒よりも短くして、好ましくは96又は384のウェルを備えている基準に対応するマイクロタイタープレートの全ての試料ウェル(Wells)の、好ましくは1つの試料プレートの異なる試料ウェルの複数の画像を並行して捕捉することが出来るシステムを、提供することである。
【0011】
複数の異なる試料ウェルからの複数の画像の並行した捕捉(収集、撮影)とは、必ずしも、捕捉に引き続く画像評価に用いる予定の複数の画像が全て時間的に正確に同期して捕捉されていることとして、理解されるのではなく、好ましくは単に、評価のために用いる予定の全ての画像が、捕捉のために予定されている1つの時間的なインターバル内で捕捉されること、特には8秒未満の間に捕捉されることとして、理解される。
【0012】
そのようなインターバル内で、画像処理(画像加工)のため用いる予定の個々の画像は、捕捉時点(撮影時点)を有していてもよく、それらは互いに異なっている。それらの捕捉時点は、特には数秒間だけ、好ましくは8秒間よりも短い時間だけ、特に好ましくは1秒間よりも短い時間だけ、異なっている。その際、個々の画像シリーズが、好ましくは少なくとも大半で一定の撮影時点の周期(リズム)を有することが予定される。このことは好ましくは、それぞれの試料ウェルに割り当てられているビデオ動画又は割り当てられるビデオ動画の個々の画像が、互いに時間的な間隔を有しており、当該時間的な間隔は、全ての画像に関して平均された時間的な画像間隔に対して、1%未満だけ、好ましくは0.1%未満だけ変化することとして、理解される。
【0013】
好ましくは、個々の顕微鏡の配置を以下のように構成することが更なる課題である、すなわち、(光軸に対して垂直に見て)隣り合う顕微鏡の光軸の側方での間隔が、試料プレートの試料ウェルの間隔と等しいように、好ましくはマイクロタイタープレートの、また、特に好ましくはANSI工業規格に従う96ウェルマイクロタイタープレートの、試料ウェルの間隔と、等しいように、構成することが、更なる課題である。
【0014】
更に好ましくは、本発明においては試料ウェル内の試料に対する外部の運動影響が取り除かれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に従い、上記の課題は以下の措置によって解決される、すなわち、従来の冒頭に挙げた種類のシステムが少なくとも1つの支持ボードを含んでおり、支持ボードは4つの側部を有する矩形形状であり、その表面上に1つのアレイの全ての顕微鏡の全ての撮像チップが共同で1つの行列配置で互いに隣り合った状態で固定されており、また、当該システムが画像処理を担う電子装置を含んでおり、当該電子装置は撮像チップのアレイの側方及び/又は撮像チップのアレイの後方に配設されており、また、当該システムが、特には顕微鏡対物レンズといった複数の対物レンズのアレイを対応的な1つの行列配置で含み、当該アレイは光軸の方向で撮像チップの前方に配設され、画像データ処理を担う電子装置が、支持ボード(1)の多くとも2つの側部(S1、S2又はS1、S3)で、特には向かい合う2つの側部(S1、S3)又は互いに接している2つの側部(S1、S2)で、複数の撮像チップのアレイに並んで配設されていること、及び、複数の支持ボードが1つの共通の固定平面内で互いに並んで配設可能であり、その際、隣り合う複数の支持ボードが、電子装置から解放されているそれらの側部で、互いに隣接していることによって、解決される。
【0016】
好ましい発展形態には、複数の撮像チップのアレイ及び複数の顕微鏡対物レンズのアレイに加えて更に、行数及び列数に関して対応的な複数の照明装置のアレイが設けられていてもよく、特にはそれぞれの顕微鏡対物レンズに個別の照明装置が割り当てられているように設けられていてもよい。従って、それぞれの顕微鏡のために、顕微鏡画像の専用の均等な照明が行われ得る。それらの照明装置によって、この場合好ましくは、ケーラー照明又は変更されたケーラー照明が形成され得る。
【0017】
それぞれのアレイはその際好ましくは、行及び列が互いに直角に延伸するように、形成されている。
【0018】
その際に、画像評価の基礎となり得る画像及び画像シリーズ(ビデオシーケンス)を撮像チップのデータフローから作成するために、画像処理を担う電子装置が設けられていることが指摘される。この電子装置は、例えば1つの試料の複数の細胞運動追跡に関して、必ずしもそれ自体で画像評価を担わなくてもよいが、当該画像評価が企図されていてもよい。
【0019】
本発明は以下の着想に基づいている、すなわち、静止画又は動画撮影可能(フォト又はビデオ撮影可能)な複数の顕微鏡を並べた配置の近さを限定する本来の制限的な要因は、基本的にそれぞれのカメラの撮像チップではなく、それぞれの撮像チップの画像データフローを処理するために必要とされる電子装置並びに目下利用可能な顕微鏡対物レンズの外寸である、という着想に基づいている。
【0020】
従って本発明の本質は以下の考察に基づいている、すなわち、必要とされる電子装置を、それぞれの撮像チップから位置的に分離する、また更には、複数の撮像チップのために、好ましくは共通の支持ボード上に形成される1つのアレイの全ての撮像チップのために、これらに対して別々に配設する、という考察に基づいている。
【0021】
これにより、個々の撮像チップを互いに1つのアレイ配置の十分近傍に位置決めすることが出来る。その際、これらが好ましくはANSI工業規格に従う96ウェルのマイクロタイタープレートといった試料プレートの試料ウェルの配列に対して対応的であるように、撮像チップを行列配置することが出来る。好ましくは、撮像チップによって形成されるアレイ内には撮像チップの他には、複数の導電路を除いて、それ以外の電子的な構成要素は存在しない。
【0022】
電子装置を撮像チップの後方の領域に及び/又は特に好ましくは撮像チップのアレイの側方に並べて配設することによって、隣り合う撮像チップの間の領域はその種の電子装置によって占められず、また従ってそれらの配置はもはや互いに制限されない。従って、本発明の場合、唯一の制限的な要因は、撮像チップ自体の大きさのみによって生じる。
【0023】
この場合、「アレイの側方」とは、電子装置が光軸に対して直角な方向で、支持ボード上で撮像チップのアレイによって占められる面領域の側方に、配設されていることを意味している。「アレイの後方」とは、電子装置が光軸に対して平行な方向で、支持ボードの側面にして、撮像チップを取り囲む表面の反対側にある面に存在すること、を意味している。
【0024】
側方配置の可能な第1の実施においては、画像処理を担う電子装置が撮像チップのアレイの周りの4つの側部(側方、側辺部)の全てを取り囲んで配設されていることが企図され得る。
【0025】
この配置では、システムは、撮像チップの総数及び割り当てられる対物レンズに関して制限されており、それを拡張することは出来ない。この実施において又は後述の実施において形成される顕微鏡の総数及び配置が1つの試料プレートの試料ウェルの総数に対応しない場合、本発明は、試料プレート及び形成される顕微鏡のアレイを互いに変移させること、及び、複数の試料ウェルのフィールドであって形成されるアレイの大きさに対応するフィールドを連続して捕捉することを企図し得る。
【0026】
第2の実施例において本発明は、画像処理を担う電子装置が多くとも2つの側部で撮像チップのアレイの隣に配設されていることを企図し得る、特には、互いに向かい合う2つの側部、又は互いに接する2つの側部に配設されていることを企図し得る。電子装置をそのように配置する場合、全体としてのアレイの大きさを拡張するために、それぞれにアレイを含む複数の支持ボードを2方向で互いに並べて配設することが可能である。
【0027】
格別に好ましい別の実現性においては、画像処理を担う電子装置は唯一つの側部で撮像チップのアレイの隣に配設されていてもよい。この場合は、それぞれにアレイを備える複数の支持ボードは、有効な全アレイサイズを拡張するために、3つの側部に対して互いに並んで配設され得る。
【0028】
撮像チップの後方に電子装置を配置する場合、例えば、支持ボードの背面上又はそれに平行に存在するボード上に電子装置を配置する場合、支持ボードをそれぞれの単独アレイの4つ全ての側部に対して接触並置することさえも可能であり、それが可能であるのは特には、電子装置又はそれを有しているボードがアレイ面から断面で見て光軸に対して直角に突出していない場合である。
【0029】
本発明はこれらの可能な実施形態の全てにおいて、画像処理を担う電子装置が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、アレイの全ての撮像チップが固定されている同一の支持ボード上に配設されていることを企図し得る。
【0030】
本発明は1つの実施形態において、撮像チップから上述の電子装置への複数の導電接続部(ライン接続部)が、支持ボードのアレイ面領域から、複数の側部へ向かう方向で、好ましくは2つの側部へのみ向かう方向で、特に好ましくは側部のうち一方へ向かう方向のみで、又は、支持ボードから後方へ向かって、外部へと案内されていることも企図し得る。電子装置自体は、例えば柔軟性のある配線を介して、それに続いてこれらの導体接続部に接続されていてもよい。それにより電子装置を好ましくはアレイに対してほぼ任意に位置決めすることが出来る。
【0031】
好ましい実施は、画像処理を担う電子装置が同一のアレイの全ての撮像チップの画像データを処理するために調整されていることを企図し得る。電子装置が個々の撮像チップの個別のデータフローを並行して処理出来ない場合は、本発明は、データを時間的に多重化して処理することを企図出来る。そのようなケースでは、少なくとも1つの多重化電子装置が設けられ得て、特には支持ボード上の撮像チップごとに1つの多重化電子装置が撮像チップの反対側に設けられていてもよい。
【0032】
既に上述の実施から知られているように、本発明は、1つのシステムの効率的なアレイサイズを異なる支持ボードの複数のアレイから構成することを企図することが出来る。そのために例えば、複数の支持ボードが1つの共通の固定平面において互いに並んで配設され得て、その際、隣り合う支持ボードは、電子装置から解放されている側部(電子装置によって占められていない側部)で、互いに隣接している。
【0033】
そのような配置は、光学的な捕捉面積が拡張されるだけではなく、複数の支持ボード及びそれらに配される複数の電子装置が、或いは、少なくともこれらに割り当てられている複数の電子装置が、データ技術的に並行して駆動することも企図され得るという、更なる長所を有している。その場合、それぞれの電子装置は、所望の時間内でそれぞれのアレイの撮像チップのデータフローを処理するために十分な演算能力のみを利用することが出来ればよく、その際、並行駆動に基づきその場合でも同じ時間内で形成される全体アレイの全ての撮像チップのデータフローが処理されている。従って、システム全体は内部で複数の個別のクラスタに分割されていてもよく、その際、個々のクラスタはそこに存在するアレイ上の撮像チップのデータのデータ処理のみを担う。
【0034】
上位に置かれたデータ処理及び/又はデータ評価構成部内で、個々のクラスタの処理されたデータが統合されてもよい。
【0035】
従って好ましくは、異なる支持ボードの2つの撮像チップ/対物レンズであって、同一の行方向及び/又は同一の列方向で互いに直接並び合って配設される2つの撮像チップ/対物レンズの光軸の間の間隔が、それぞれ1つの支持ボードのアレイの撮像チップ/対物レンズの光軸の間の間隔に対応するように、配置の選択が行われる。
そのようにして、例えば1つのマイクロタイタープレートの全ての試料ウェルを並行して捕捉することが出来るアレイ全体を、複数のアレイ或いは複数の支持ボードから形成することが出来る。
【0036】
上述の全ての実施形態と組み合わせ可能な発展は、システムが固定構造体を含んでいることを企図し得て、当該固定構造体には、少なくとも1つの支持ボード、好ましくは全ての支持ボード、及び、少なくとも1つのアレイの撮像チップの対物レンズ、好ましくは全てのアレイの撮像チップの全ての対物レンズ、特には全ての対物レンズ或いは撮像チップのそれぞれの照明要素もが、全体で固定されている。複数の顕微鏡から唯一の関連するユニットがもたらされ、当該ユニットは共通にまた従って全ての顕微鏡に対して等しく扱われ得る。
【0037】
その際固定構造体は、唯一つの保持フレームを含んでおり、当該保持フレームにて、複数の撮像チップの少なくとも1つのアレイの全ての対物レンズが固定されている、好ましくは、アレイが複数である場合に全てのアレイの対物レンズが共同で固定されている。そのような保持フレームは、光軸の方向で、撮像チップの前方に間隔をおいて配設されていてもよい。
【0038】
固定構造体内で、好ましくは保持フレーム内で、複数の対物レンズのそれぞれは、更に好ましくは、割り当てられた撮像チップに対して少なくとも光軸の方向で位置調整可能に設計されていてもよい。これは例えば、例えば保持フレームのネジ部といったネジ保持部での対物レンズの回転可能性によって実現され得る。
【0039】
保持フレームの凹部内での対物レンズの遊びのない光学的に軸平行な変位可能性のみが企図されてもよい。対物レンズは、位置決めの後に例えば接着(粘着)させることによって固定されてもよい。そのようにして、それぞれの対物レンズの画像平面を割り当てられた撮像チップに対して個別に調整することが可能である。
【0040】
システムの特に好ましい実施は、複数の対物レンズのそれぞれが、シリンダ状、好ましくは円筒状のパイプを含んでおり、当該パイプがその軸方向の全長に渡って同一の外側断面、好ましくは特には同一の外径を有しており、その際、パイプ内に対物レンズの複数のレンズが収容されていること、を企図し得る。これによって、並び合う複数の対物レンズの構造的に簡潔でありまた空間節約的な配置の可能性がもたらされる。
【0041】
本発明は更に、固定構造体が照明装置用のもう1つの別の保持フレームも有すること、特には、システム全体にある顕微鏡の数とちょうど同じ数の照明装置が固定されている保持フレームを有すること、を企図し得る。
【0042】
照明装置用の保持フレーム及び対物レンズ用の保持フレームは互いに、両方の保持フレームの間で試料プレートが位置決め可能であるように、固定構造体内に配設されていてもよい。固定構造体はそのため、両方の保持フレームと共に、試料プレートを取り囲むことが出来るU字形状(コの字形状)を形成していてもよい。両方の保持フレームはその際好ましくはU字形状の脚部分(縦棒部分)を形成する。この配置によって、両方の保持フレームは互いに固定的に接続されている。
【0043】
これにより、透過光装置を作ることが出来る、特に、当該透過光装置では、複数の照明装置の光が上方から来て、試料ウェルを透光通過して、また試料ウェルの底部の下方にある顕微鏡へ至る。
【0044】
それぞれの顕微鏡のそれぞれの照明装置は、光ファイバーによって形成され得て、それらの光放射側端部は保持フレーム内で保持されている。保持フレームは、ケーラー照明を形成するために、可能な構成において、それぞれの光ファイバーのために光線方向で光ファイバーの光出力端部の後方に、レンズアパチャーシステムを有していてもよい。しかしながらそのようなレンズアパチャーシステムは、光ファイバーの光入力側に、すなわち光線方向で光ファイバーの光入力面の前方に、設けられていてもよい。
【0045】
光ファイバーはそれぞれに、例えば発光ダイオード(LED)、好ましくは白色発光ダイオード(白色LED)といった、専用の光源を有していてもよい。
【0046】
しかしながら本発明は、全ての光ファイバーが1つの共通の光源によって供給を受けることも企図出来る。その種の共通の光源もまた発光ダイオードであり得る。
【0047】
好ましい実施形態は、共通の光源として、積分球を用いることを企図し得て、当該積分球内へ例えば発光ダイオードといった複数の個別の光源がその光を入射している。それぞれの光ファイバーの光を入力するためのそれぞれの端部は従って、積分球の周囲面における開口部に接続されている。この場合、全ての光ファイバーが、同一の共通の開口部に接続されていてもよい。
【0048】
接続はこの場合、ケーラー照明を形成するための光線形成が光ファイバーの光入力側で実現されている限り、レンズ絞りシステムを介して間接的に行われてもよい。
【0049】
光源として積分球を用いる場合、複数の発光ダイオード又はその他の複数の発光物が接続されていることが企図され得て、それらを用いて異なるスペクトルの組み合わせの光が積分球内へ入射され得る。従って、光線経路を変更することなく照明スペクトルを変更することが可能である。
【0050】
光源についての上述の全ての実施例に関連して、試料ウェル内の試料への「照明負荷」を画像が捕捉される時点に制限するために、本発明は複数のLEDを断続的(周期的)に稼働させることを企図出来る。
【0051】
本発明の発展形態では、システムが、特にはピエゾアクチュエータといったアクチュエータを含んでおり、当該アクチュエータを用いて、固定構造体が少なくとも光軸(Z)の方向で、また好ましくはそれに対して垂直な1つの平面(XY)内でも、試料プレートの保持部に対して移動可能であること、また従って、そこに収容される試料プレートに対しても移動可能であること、が企図され得る。それにより従って、(撮像チップ及び対物レンズまた場合によっては照明装置からなる)個々の顕微鏡の焦点位置を、捕捉(撮影)される試料に関連付けてシステムの全てのカメラのために同時に変更することが可能である。従って複数の個々のフォーカシング装置は省略することが可能であり、それはシステムを構造的及び電子工学的に簡素化する。
【0052】
通常は試料ウェル内の捕捉される試料は全てが同一の焦点位置を有するわけではないので、このことは、1つ又は複数の顕微鏡が正しく合焦(フォーカシング)されており、また1つ又は複数の顕微鏡は正しく合焦されていない、すなわち、それぞれの試料に対して不鮮明に合焦されて調整されていることを導き得る。
【0053】
この問題を解決するために、発展形態は以下のことを企図し得る、すなわち、システムが制御ユニットを含み、当該制御ユニットを用いて上述のアクチュエータは反復的に制御されることを企図し得る、当該制御は、ある制御期間内に、試料プレートの保持部及び固定構造体の間で或いは保持された試料プレート及び固定構造体の間で(光軸の方向で見た)様々な間隔を、好ましくは段階的に、連続して調整するために、そして、調整されたそれぞれの間隔に対して1つ又は複数のアレイの全ての撮像チップを用いて少なくとも1枚の画像が撮影するために、行われる。
【0054】
従って、それぞれの制御期間内に複数の画像が、好ましくはステップ数(段階数)に対応する数の画像が、それぞれ異なる合焦状態で撮影され、その結果、鮮明な画像と同様に不鮮明な画像も撮影されるが、その理由は特にはそのような制御期間の間にそれぞれの顕微鏡で理想的な焦点位置を通り過ぎるように調節が行われているからである。
【0055】
本発明に従い、個々の撮像チップに対して、それぞれの制御期間に撮影された複数の画像から、全ての画像のうちの最も鮮明(明確、シャープ)な画像が選択され、そして、この最も鮮明な画像のみが更なる画像評価へ提供され、そして、同一の制御期間におけるその他の画像は破棄される。この画像処理は電子装置によって担われ得て、当該電子装置は支持ボードに配設されているか、又は、少なくとも1つの個々のアレイに割り当てられている。
【0056】
これに関しては、制御期間内にそれぞれの間隔で撮影される画像をその画像鮮明度に関して事前に撮影された又は事前に保存された画像と比較すること、鮮明度(ピント)が悪化している場合は現在の画像を破棄しまたこれまでの画像を再度保存し、或いは、鮮明度が改善している場合は現在の画像を後続の比較のために保存しまたこれまでの画像を破棄すること、が企図され得る。従って、この実施においては、制御期間の複数画像をフルセットで保存する必要はない。
【0057】
本発明は更に、システムがアクチュエータを含んでおり、当該アクチュエータを用いることで固定構造体は光軸に対して直角に移動可能であること、特には撮像チップの行方向及び列方向で、試料プレートの保持部に対してまた従って保持されている試料プレートに対して、移動可能であることを企図出来る。この移動可能性は、総数及び配置に関して試料プレート全体の試料ウェル(Wells)の総数よりも少ない顕微鏡のアレイを用いた、試料プレートのフィールドごとの捕捉(撮影)を可能とする。この様態で、例えばフィルムシーケンスを、好ましくはそれぞれの試料ウェルのビデオ動画の連続する画像の間の時間的な間隔を8秒未満で作成することが出来る、好ましくはANSI工業規格に従う384ウェルマイクロタイタープレートといった1つのマイクロタイタープレートの全ての試料ウェル(Wells)における作成することが出来る。
【0058】
顕微鏡の総数が試料プレートの試料ウェルの総数に対応するシステムにおいては、光軸に対して垂直(直角)に固定構造体を移動させるためのアクチュエータは基本的に排除することが出来るが、この場合でも好ましくは、検査されるべき試料プレートに対する顕微鏡の少なくとも一度の側方調整を簡潔化するために設けられていてもよい。従って好ましくは、光軸に対して平行に固定構造体を移動させるためのアクチュエータ、及び、光軸に対して垂直に固定構造体を移動させるためのアクチュエータは、共に本発明に従うシステム内で実現される。
【0059】
試料プレートの保持部が地球座標系内で位置固定的に配設されている場合の実施、すなわち、顕微鏡のアレイ及び好ましくは照明装置のアレイが地球座標系内で、特には全てのアレイのための共通の固定構造体の上で、移動される場合の実施が特に有利である。それにより、今までの従来技術の場合にそうであったように、移動の衝撃が試料に作用することはない。
【0060】
好ましくは本発明は、それぞれの顕微鏡の撮像チップを用いて撮影されるそれぞれの画像に、特には捕捉時点についての時間情報といった時間スタンプを割り当てることを企図しており、好ましくはその際、タイムスタンプは全ての画像/撮像チップのための共通の時計に基づいている。従って、個々の顕微鏡の複数の画像の間の時間的な間隔、並びに同様に、異なる顕微鏡の複数の画像の間の時間的な間隔を、検出することが可能である、また場合によっては記録することが可能である。そのために用いられる時計は、例えば共通の電子装置内に組み込まれていてもよく、当該共通の電子装置は、支持ボード上に配設されているか、少なくともそれに接続されている。
【0061】
以下においては本発明の実施例が図面を用いて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本発明の第1の実施例の上面図を示す。
図2】本発明の代替的な実施例を示す。
図3】本発明の別の代替的な実施例を示す。
図4】本発明の好ましい実施例を示す。
図5】クラスタと称されるユニットを詳細に示す。
図6】支持ボード1での相互配置を概略的に上面図で示す。
図7】構造的な詳細と共に8x12の顕微鏡を備えるアレイ全体を示す。
図8】固定構造体が保持フレーム5c及び5dを含んでいる実施例を示す。
図9】本発明に従う複数の顕微鏡のそれぞれの好ましい作動原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は本発明の第1の実施例の上面図を示しており、そこでは支持ボード1が撮像チップ2のアレイ(配列)を有しており。この場合、チップは4x4のマトリックスで配置されている。これに関して、図1には図示されていないが、全体で顕微鏡アレイを形成するために、対物レンズの対応的なアレイ、及び好ましくは照明装置の対応的なアレイが配設されている。
【0064】
側方でアレイを取り囲んで、電子装置3が配設されており、当該電子装置3は従って図1では4つの側部(側方、側辺部)全てに対してアレイを取り囲んでいる。
【0065】
この装置を用いれば、例えば、1つのマイクロタイタープレートの試料ウェル内の16個の試料を、並行して捕捉することが出来る。より多くの試料が測定されるべきである場合、図1に示されている装置は光軸に対して垂直にスライドされなければならず、そのためにはアクチュエータが設けられていてもよい。
【0066】
図2は、本発明の代替的な実施例を示しており、そこではボード1は同様に撮像チップ2の4x4アレイを含んでいる。図2では電子装置3は2つの側部に対してのみ、すなわち側部S1及び側部S2にてアレイの隣に配設されている。これは、その種の4枚のボードを4つの正方形で互いに並べて配設し、8x8サイズの全体アレイを形成することを可能にする。それぞれの支持ボードは、この実施例及び後述の実施例においては、例えばFPGAといったその電子装置と共に、自立した1つのクラスタを形成することが可能であり、当該クラスタは、そのアレイの撮像チップのデータを処理するようにそしてインターフェースにて画像評価部へ送るように、調整されている。図面は象徴的に理解されるべきものであって、寸法的に正しいものではない。
【0067】
図3は別の代替的な実施例を示しており、そこでは電子装置が支持ボード1上で向かい合う側部S1及びS3に対してアレイの隣に配設されている。この場合、ボード1を側部S4又はS2に互いに並べることも可能である。図面は象徴的に理解されるべきものであって、寸法的に正しいものではない。
【0068】
好ましい実施例が図4に示される。4x4サイズのアレイは図4では、3つの側部S2、S3及びS4が電子装置から開放されたままであり(電子装置によって占められていないままであり)、従って、これらの側部に別の同様のボードを並べることが出来る。電子装置はこの場合、側部S1に対してのみアレイの隣に配設されている。
【0069】
好ましくは、図1から図4の実施の並置可能性が達成されるのは、ボードが電子装置によって占められていない側部にてそこに配置されている撮像チップを超えて突出していない場合、又は、ボードがそのような側部で並べる際に異なる2つのボードの2つの撮像チップの光軸の間隔或いはそれらの対物レンズの光軸の間隔が、正確に、個々の個別のボードにおいてそれらのアレイの内部に存在する間隔を占めることも出来る程度しか突出していない場合である。従って、個々のアレイ全てから形成されるアレイ全体において、ボードを包括的に、光軸の等距離の間隔を達成することが出来る。図面は象徴的に理解されるべきものであって、寸法的に正しいものではない。
【0070】
図5は先にクラスタと称したユニットをより詳細に図示しており、当該ユニットは以下のような支持ボード1を含んでいる、すなわち、その上で複数の撮像チップ2が、図5の場合では4x4配置として、1つの行列配置で位置決めされているような、支持ボード1を含んでいる。本発明はこの具体的な配置に限定されるものではなく、むしろアレイは一般にn x m配置(n掛けるmの配置)で形成することが可能であり、その際n及びmは2以上である。
【0071】
図5では、アレイの隣で側部S1に向かって、電子装置3が配設されており、当該電子装置3も同様に支持ボード1によって支持される。その際、電子装置3は撮像チップ2とは別の平面に配設されていてもよい。更に、支持ボード1が側部S1にインターフェース4を有していることも見て取れ、当該インターフェース4にて、全ての撮像チップ2によって集められる画像データを上位に置かれた画像評価部へ伝送することが出来る。
【0072】
示されている図面へ限定することなく、本発明は一般的な有用性と共に、以下のことを企図出来る、すなわち、それぞれの撮像チップのその都度の新しい画像を、特には上述のインターフェース4を介して、画像評価ユニットへ伝送した後で、このそれぞれの撮像チップに関連する画像が、その都度のビデオにして、それぞれの撮像チップ2に対して複数の画像から形成されるビデオに、付加(アタッチ)されこと、を企図出来る。
そうすれば、ビデオへ画像を付け加えた直後に画像評価を行うことが可能であるので、例えば、観察された自ら動く試料の軌道追跡を行うことが出来るので、従ってその結果、新たに加えられた個々の画像に対しても画像評価が行われて、またそれはビデオ全体の作成後に初めて行われるわけではない。
【0073】
図6は、8x12の顕微鏡を備えるアレイ全体に対する図4或いは図5の支持ボード1の相互配置を概略的に上面図で示している。これにより、96の試料ウェルを備えるマイクロタイタープレートを全ての試料ウェルに対して並行して捕捉することが出来る。好ましくはそのために、それぞれの個別のアレイ及び形成されるアレイ全体にて、小型顕微鏡の全ての光軸は、マイクロタイタープレートの試料ウェルの間隔に対応する間隔を有しており、それは特にはこの場合は具体的には9.1mmである。異なるマイクロタイタープレートは、特には外寸が同じ96ウェルプレートは、複数の試料ウェル(Wells)の間に実際に若干異なる間隔を有していることがあり得るので、本発明は好ましくは、アレイ内での光軸の間隔を少なくとも9.5mmよりも短く選択することを企図しており、それは特にそれによって全ての間隔バリエーションを網羅することを目的としている。
【0074】
図7はより多くの構造的な詳細と共にその種の装置を示している。図7では、固定構造体5a、5b、5cが設けられており、それらを介して個々のボード1が全体アレイを形成するために互いに並んで位置固定的に固定されることが見て取れる。
【0075】
並置されたボード1に加えて、より底部の平面に更に別の複数のボード6が配設されていてもよく、それらのボード6は、別の平面における冒頭上げた電子装置3、及び/又は、データ処理電子装置、及び/又は、画像評価電子装置を含んでおり、また、それらには柔軟な接続部(フレキシブルライン)7を介してデータや信号が伝送される。
【0076】
本発明にとって、この実施では、電子装置の具体的に示された配置とは無関係に、固定構造体が保持フレーム5cを含んでいること、そして当該保持フレーム5cが1つの平面内で光軸Aの方向で撮像チップ2の上方に配置されており、また、当該保持フレーム5cがそれぞれにアレイの撮像チップ2のうちの1つが割り当てられている全ての顕微鏡対物レンズ8を保持していること、が重要である。複数の対物レンズ8は、互いにそして固定構造体に対して、位置固定的に取り付け可能であるので、その結果、ここで示されている配置は、全体で、複数の(ここでは96の)顕微鏡を備える1つの顕微鏡ユニットを形成しており、それらの複数の顕微鏡は全てユニット共に、ここでは図示されていないマイクロタイタープレートに対して移動可能である。
【0077】
それぞれの対物レンズ8はこの実施例においては、円形断面を有しており複数のレンズを含んでいるシリンダによって、形成されており、当該シリンダは好ましくは9mmよりも小さい外径を有しており、更に好ましくは8mmよりも小さい外径を有している。
【0078】
図7に示されているユニットは、複数の試料に対する全ての顕微鏡2、8のフォーカシングを同時に調節するために、アクチュエータを用いて全体で光軸Aの方向に移動可能であってもよい。
【0079】
図8は、固定構造体が対物レンズ8用の保持フレーム5cに加え、複数の照明装置9用の保持フレーム5dをも含んでいる実施例を示しており、当該照明装置9はこの図面では複数の光ファイバー9として形成されている。保持フレーム5c、5dの間には、透過光構造内で顕微鏡を稼働させるために、図示していない試料プレートを配置することが出来る。図8には本発明に従う1つの装置が示されており、当該装置は図7の場合のように相互配置(並置)によって顕微鏡の総数について増加することが出来る。図8の装置は、図5に固定構造体を追加したものに対応している。
【0080】
図9は、本発明に従う実施例の複数の対物レンズのうちのそれぞれの対物レンズの好ましい動作原理を示している。撮像チップ2及び顕微鏡対物レンズ8は、上述の図面に示された装置の複数の顕微鏡のうちの1つを形成しており、それを用いて、試料ウェル16の下部底部側から、そこに存在する試料が観察される。ボード及び固定構造体は、図9には図示されていないが、好ましくはそれらは上述の図面に関して説明されたようなそれぞれの実施に対応するものである。
【0081】
顕微鏡の照明装置は、図8について説明されたような光ファイバー9によって形成される。これらの光ファイバーのためのまたその他の各々の光ファイバーのための光源は、この好ましい実施においては、積分球10によって形成される。図9では複数のLEDであるが、異なるスペクトルの光を放出する複数の光発生部11を用いて、代替的に又は組み合わせで、選択的に積分球の内部を照らすことが出来る。内部散乱によって、積分球の空間全体に渡る均質な光分布がもたらされ、当該光分布は、選択された1つの光発生部11のスペクトルと共に、又は、同時に駆動される複数の光発生部11の複数のスペクトルからなる混合スペクトルと共に、もたらされる。所謂ケーラー照明を獲得するために、積分球の1つの開口部12には、レンズアパチャーシステム13を介して光ファイバー9が間接的に連結されている。このシステム13では、視野絞りを、開口絞り又は暗視野絞り(中心遮光板)と選択的に組み合わせることが出来る。
【0082】
対物レンズ8の前方又は後方に選択的に配設されているフィルタ14によって、分析されるべき1つの波長を、光源10のスペクトルから選択することが出来る、又は、複数の試料のうちの1つにより例えば蛍光によって放出される変質された1つの波長を、撮像チップによる観察のために、選択することが出来る。フィルタ14を変位及び/又は回転させることによって、異なる様態で波長選択的に作用するフィルム14の領域を、選択することが出来る。
【0083】
制御ユニット15は、画像が捕捉(撮影)される時にのみ試料の照明が行われるように、光発生部を制御する。好ましくは生体試料の光負荷を低減させるために、又は、蛍光色素の分解を減らすために、画像捕捉工程の間は、光源は好ましくは切られている(OFFにされている)。
【符号の説明】
【0084】
1 支持ボード
2 撮像チップ
3 電子装置
4 インターフェース
5c 保持フレーム
5d 保持フレーム
6 更なるボード
7 柔軟な接続部(フレキシブルコネクタ)
8 対物レンズ
9 光ファイバー
10 積分球
11 光発生部(光源)
12 開口部
13 レンズアパチャーシステム
14 フィルタ
15 制御ユニット
A 光軸
S1、S2、S3、S4 支持ボード1の側部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9