IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニューラクル ジェネティクス インコーポレイテッドの特許一覧

特許7033811PD-L1結合力が増大したPD-1変異体
<>
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図1
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図2
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図3
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図4
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図5
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図6
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図7
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図8
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図9
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図10
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図11
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図12
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図13
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図14
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図15
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図16
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図17
  • 特許-PD-L1結合力が増大したPD-1変異体 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】PD-L1結合力が増大したPD-1変異体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20220304BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220304BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220304BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220304BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220304BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220304BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220304BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220304BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220304BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220304BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/705 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K38/17
A61P37/04
A61P35/00
A61P31/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020563883
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 KR2019001290
(87)【国際公開番号】W WO2019151771
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】10-2018-0013381
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0011181
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520288331
【氏名又は名称】ニューラクル ジェネティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,サン テク
(72)【発明者】
【氏名】チュン,クァン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ジ ヨン
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-157357(JP,A)
【文献】国際公開第2017/053170(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/164428(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/106592(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C12N 1/00-38
C07K 14/00-16/46
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1(Programmed death-ligand 1)結合力が増大したPD-1(Programmed cell death protein-1)変異体であって、前記PD-1変異体は、1以上のアミノ酸置換を有している配列番号61のアミノ酸配列を含み、前記1以上のアミノ酸置換が、C69T、C69Y、C69G又はC69Aを含む、PD-1変異体。
【請求項2】
前記1以上のアミノ酸置換が、S36Pをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のPD-1変異体。
【請求項3】
PD-L1(Programmed death-ligand 1)結合力が増大したPD-1(Programmed cell death protein-1)変異体であって、前記PD-1変異体は、複数のアミノ酸置換を有している配列番号61のアミノ酸配列を含み、前記複数のアミノ酸置換が、
i)F13L、N25D、C69S及びN92S;又は
ii)S36P、C69S及びL114P
を含む、PD-1変異体。
【請求項4】
前記1以上のアミノ酸置換が、L114Pをさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載のPD-1変異体。
【請求項5】
前記1以上又は複数のアミノ酸置換が、T12S、N34T、K107N、H131R、P132L及びF142Lから構成された群から選ばれる1以上のアミノ酸置換を含むことを特徴とする、請求項1又は3に記載のPD-1変異体。
【請求項6】
前記1以上のアミノ酸置換が、F13I及びM46Iをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のPD-1変異体。
【請求項7】
前記1以上のアミノ酸置換が、N1S、L17M、S36P、N50S、G79R、G100V、L114P、V127A及びA139Lから構成された群から選ばれる1以上のアミノ酸置換を含むことを特徴とする、請求項6に記載のPD-1変異体。
【請求項8】
前記複数のアミノ酸置換が、R88K、A125S及びR137Kから構成された群から選ばれる1以上のアミノ酸置換を含むことを特徴とする、請求項3に記載のPD-1変異体。
【請求項9】
前記PD-1変異体は無糖化PD-1変異体であることを特徴とする、請求項1又は3に記載のPD-1変異体。
【請求項10】
請求項1又は3のPD-1変異体をコードする核酸分子。
【請求項11】
請求項10の核酸分子を含むベクター。
【請求項12】
請求項11のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
前記宿主細胞は細菌細胞であることを特徴とする、請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項14】
請求項1若しくは3のPD-1変異体、請求項10の核酸分子又は請求項11のベクターを有効成分として含む野生型(wild type)PD-1(Programmed cell death protein-1)及びPD-L1(Programmed death-ligand 1)間の結合抑制剤。
【請求項15】
請求項1若しくは3のPD-1変異体、請求項10の核酸分子又は請求項11のベクターを有効成分として含む組成物。
【請求項16】
前記組成物は癌疾患又は感染性疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物であることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
下記の段階を含むPD-1変異体の製造方法:a)請求項1又は3のPD-1変異体をコードする核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞を培養する段階;及びb)前記宿主細胞によって発現したPD-1変異体を回収する段階。
【請求項18】
下記の段階を含む、C69T、C69Y、C69G又はC69Aを維持しているPD-1変異体のスクリーニング方法:a)請求項1のPD-1変異体又はこれをコードする核酸分子にさらに無作為的な点突然変異を加えたPD-1変異体又はこれをコードする核酸分子のライブラリーを構築する段階;及びb)前記ライブラリーから野生型(wild type)PD-1(Programmed cell death protein-1)及びPD-L1(Programmed death-ligand 1)間の結合を抑制するPD-1変異体を選別する段階。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD-L1結合力が増大して野生型PD-1及びPD-L1間の結合を効果的に抑制するPD-1変異体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療のための医薬品は低分子医薬品と高分子医薬品とに大別され、特異性がないため副作用が相対的に大きい低分子医薬品に比べて、特異性のある高分子医薬品が治療剤として脚光を浴びている。
【0003】
近年、癌を治療するための方法として、免疫関門抑制タンパク質のうち、特にPD-1/PD-L1結合の遮断が癌治療に大きな効果があり、他の免疫関門抑制タンパク質に比べて副作用が少ないという結果が学界に報告された(J.Naidoo et al.(2015)Annals of Oncology,Lucia Gelao et al.(2014)Toxins,Gorge K.Philips et al(2015)International Immunology)。
【0004】
Bristol-Myers Squibbなどの大手製薬企業がPD-1/PD-L1免疫関門抑制を用いた治療用医薬品の開発のために努力しており、YERVOY(ipilimumab)、OPDIVO(nivolumab)のような抗癌目的の医薬品を抗体フォーマットを用いて開発中である。
【0005】
また、腫瘍とPD-1/PD-L1結合中であるTILs(Tumor-infiltrating lymphocytes)の結合を除去するためには細胞浸透力に優れた治療剤が必要であるが、抗体は150kDaの非常に大きい巨大分子タンパク質であり、浸透するのに不利な点がある。
【0006】
効果的な免疫関門抑制を用いた癌治療のためには、サイズがPD-L1に比べて小さくて細胞浸透力に優れたPD-1がより適していると見なされるが、既存のPD-1エンジニアリングは酵母ディスプレイ(yeast display)を用いたスクリーニングを行っており、グリカンの非均質性(heterogenity)及び多くの突然変異の誘発による免疫原性存在の可能性がある。
【0007】
一方、無糖化形態のタンパク質医薬品はバクテリアでも安価な大量生産が容易であり、また、細胞株、培養工程及び精製工程による糖化非均質性(glycan heterogenity)の問題が全くないので、生物医薬品の製造に大きなメリットがある。
【0008】
したがって、少ない突然変異を持つ無糖化形態のPD-1として、PD-L1との結合力が高い変異体の発掘が必要である。
【0009】
上記の背景技術として説明された事項は、本発明の背景に対する理解増進のためのものに過ぎず、この技術分野における通常の知識を有する者に既に知られた従来技術に該当することを認めるものとして理解してはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、PD-L1との結合力が高くて野生型PD-1及びPD-L1間の結合を効果的に抑制できるとともに、免疫原性発生の可能性を最小化できるPD-1変異体を見つけようと鋭意努力をした。その結果、野生型PD-1の一部のアミノ酸配列を他のアミノ酸配列に置換して最適化することによってPD-L1との結合力が大きくに向上し、突然変異位置の最小化及び/又は無糖化PD-1の具現によって免疫原性発生の可能性を減少させることができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0011】
したがって、本発明の目的は、PD-L1結合力が増大したPD-1変異体を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記PD-1変異体をコードする核酸分子を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、前記核酸分子を含むベクターを提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、前記ベクターを含む宿主細胞を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、前記PD-1変異体、核酸分子又はベクターを含む組成物を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、前記PD-1変異体の製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、前記PD-1変異体、核酸分子又はベクターを有効成分として含む野生型PD-1及びPD-L1間の結合抑制剤を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、前記PD-1変異体、核酸分子又はベクターを対象体に有効量投与する段階を含む野生型PD-1及びPD-L1間の結合抑制方法を提供することにある。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、前記PD-1変異体、核酸分子又はベクターを対象体に治療学的有効量投与する段階を含む癌疾患又は感染性疾患の治療方法を提供することにある。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、前記PD-1変異体のスクリーニング方法を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってより明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一態様によれば、本発明は、PD-L1結合力が増大したPD-1変異体を提供する。
【0023】
本発明者らは、PD-L1との結合力が高くて野生型PD-1及びPD-L1間の結合を効果的に抑制できるとともに、免疫原性発生の可能性を最小化できるPD-1変異体を見つけようと鋭意努力をした。その結果、野生型PD-1の一部のアミノ酸配列を他のアミノ酸配列に置換して最適化することによってPD-L1との結合力が大きく向上し、突然変異位置の最小化及び/又は無糖化PD-1の具現によって免疫原性発生の可能性を減少させることができることを確認した。
【0024】
本明細書において用語“PD-1変異体”又は“プログラム細胞死タンパク質(Programmed cell death protein)-1変異体”は、野生型(wild type)PD-1のアミノ酸配列において1又は2以上のアミノ酸が置換、欠失又は付加された形態の変異を含む変異体を意味する。
【0025】
本発明の好ましい具現例によれば、前記野生型PD-1のアミノ酸配列は、配列目録第61配列のアミノ酸配列を含む。
【0026】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-L1(Programmed death-ligand 1)結合力が増大したPD-1(Programmed cell death protein-1)変異体は、野生型(Wild type)PD-1のアミノ酸配列の一部を含み、配列目録第61配列の野生型PD-1のアミノ酸配列中の69番目のアミノ酸が野生型のアミノ酸と異なる配列に置換されたものを含む。
【0027】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、前記69番目のアミノ酸がC69S、C69T、C69Y、C69G又はC69Aに置換されたものを含む。
【0028】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、配列目録第61配列の野生型PD-1のアミノ酸配列中の36番目のアミノ酸がS36Pに置換されたものをさらに含む。
【0029】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、配列目録第61配列の野生型PD-1のアミノ酸配列中の114番目のアミノ酸がL114Pに置換されたものをさらに含む。
【0030】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、配列目録第61配列の野生型PD-1のアミノ酸配列中の12番目、34番目、92番目、107番目、131番目、132番目及び142番目のアミノ酸から構成された群から選ばれる1以上のアミノ酸が野生型のアミノ酸と異なる配列に置換されたものをさらに含む。
【0031】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、T12S、N34T、N92K、又はN92S、K107N、H131R、P132L及びF142Lから構成された群から選ばれる1以上のアミノ酸置換を含む。
【0032】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、配列目録第61配列の野生型PD-1のアミノ酸配列中の13番目のアミノ酸がF13I又はF13Lに、46番目のアミノ酸がM46Iに置換されたものをさらに含む。
【0033】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、配列目録第61配列の野生型PD-1のアミノ酸配列中の1番目、17番目、36番目、50番目、79番目、100番目、114番目、127番目及び139番目のアミノ酸から構成された群から選ばれる1以上のアミノ酸が野生型のアミノ酸と異なる配列に置換されたものをさらに含む。
【0034】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、N1S、L17M、S36P、N50S、G79R、G100V、L114P、V127A及びA139Lから構成された群から選ばれる1以上のアミノ酸置換を含む。
【0035】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、配列目録第61配列の野生型PD-1のアミノ酸配列中の25番目のアミノ酸がN25Dに、92番目のアミノ酸がN92S又はN92Kに置換されたものをさらに含む。
【0036】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、配列目録第61配列の野生型PD-1のアミノ酸配列中の13番目のアミノ酸がF13I又はF13Lに置換されたものをさらに含む。
【0037】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、配列目録第61配列の野生型PD-1のアミノ酸配列中の9番目、88番目、101番目、125番目及び137番目のアミノ酸から構成された群から選ばれる1以上のアミノ酸が野生型のアミノ酸と異なる配列に置換されたものをさらに含む。
【0038】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、N9D、R88K、A101V、A125S及びR137Kから構成された群から選ばれる1以上のアミノ酸置換を含む。
【0039】
本発明の好ましい具現例によれば、前記PD-1変異体は、無糖化PD-1変異体である。
【0040】
現在商用化している大部分の治療用タンパク質は動物細胞培養によって製造されているが、タンパク質を生産する時、様々な糖(carbohydrate)変異体がタンパク質に修飾され、これによる糖化非均質性(glycan heterogeniety)は治療用タンパク質の効能及び安定性に変異を誘発し、抗体製造工程において精製、分析、QC(Quality Control)に高費用が要求される。
【0041】
高価の動物細胞培養システムが要求される前記糖化タンパク質に比べて無糖化(aglycosylated)タンパク質はバクテリアで大量生産が可能であり、且つ速度及び費用の面において非常に優れる。
【0042】
本発明の他の態様によれば、本発明は、前記PD-1変異体をコードする核酸分子、これを含むベクター又は該ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0043】
本発明の好ましい具現例によれば、前記宿主細胞は細菌細胞である。
【0044】
本発明の核酸分子は単離したもの又は組み換えられたものであり得、一本鎖及び二本鎖形態のDNA及びRNAだけでなく、対応する相補性配列が含まれる。“単離した核酸”は、天然生成源泉から単離した核酸の場合、核酸が単離した個体のゲノムに存在する周辺遺伝配列から分離された核酸である。鋳型から酵素的に又は化学的に合成された核酸、例えば、PCR産物、cDNA分子、又はオリゴヌクレオチドの場合、当該手順から生成された核酸が単離した核酸分子として理解され得る。単離した核酸分子は、別個断片の形態又はより大きい核酸構築物の成分としての核酸分子を表す。核酸は他の核酸配列と機能的関係で配置されるとき、“作動可能に連結”される。例えば、前配列又は分泌リーダー(leader)のDNAは、ポリペプチドが分泌される前の形態である前タンパク質(preprotein)として発現する場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結され、プロモーター又はエンハンサーは、ポリペプチド配列の転写に影響を与える場合、コーディング配列に作動可能に連結され、又はリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されるとき、コーディング配列に作動可能に連結される。一般に、“作動可能に連結された”とは、連結されるDNA配列が隣接して位置することを意味し、分泌リーダーの場合、隣接して同一のリーディングフレーム内に存在することを意味する。しかし、エンハンサーは隣接して位置する必要はない。連結は、便利な制限酵素部位でライゲーションにより達成される。このような部位が存在していない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを通常の方法によって使用する。
【0045】
本明細書において用語“ベクター”は、核酸配列を複製できる細胞への導入のために核酸配列を挿入できる伝達体を意味する。核酸配列は外生(exogenous)又は異種(heterologous)であり得る。ベクターとしてはプラスミド、コスミド及びウイルス(例えば、バクテリオファージ)を挙げることができるが、これに制限されない。当業者は標準的な組換え技術によってベクターを構築することができる(Maniatis,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988;及びAusubel et al.,In:Current Protocols in Molecular Biology,John,Wiley & Sons,Inc,NY,1994など)。
【0046】
本明細書において用語“発現ベクター”は、転写される遺伝子産物のうち少なくとも一部分をコードする核酸配列を含むベクターを意味する。一部の場合には、その後、RNA分子がタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドに翻訳される。発現ベクターには様々な調節配列を含めることができる。転写及び翻訳を調節する調節配列の他に、ベクター及び発現ベクターには他の機能も提供する核酸配列が含まれ得る。
【0047】
本明細書において用語“宿主細胞”は真核生物及び原核生物を含み、前記ベクターを複製できるか或いはベクターによってコードされる遺伝子を発現させ得る任意の形質転換可能な生物を意味する。宿主細胞は前記ベクターによって形質感染(transfected)又は形質転換(transformed)可能であり、これは、外生の核酸分子が宿主細胞内に伝達又は導入される過程を意味する。
【0048】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の宿主細胞は、細菌(bacteria)細胞、好ましくはグラム陰性細菌細胞である。前記細胞は内膜と外膜との間に原形質膜周囲空間領域(periplasmic region)を有する点で本発明の実施に適する。本発明の好ましい宿主細胞の例としては、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、コレラ菌(Vibrio cholera)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、ヘモフィルスインフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、百日咳菌(Bordotella pertussi)、エルウィニアアミロボーラ(Erwinia amylovora)、根粒菌(Rhizobium sp.)などが含まれるが、これに制限されるものではない。
【0049】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記PD-1変異体、核酸分子又はベクターを有効成分として含む野生型(wild type)PD-1(Programmed cell death protein-1)及びPD-L1(Programmed death-ligand 1)間の結合抑制剤を提供する。
【0050】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記PD-1変異体、核酸分子又はベクターを有効成分として含む組成物を提供する。
【0051】
前記組成物は、好ましくは薬剤学的組成物、より好ましくは癌疾患又は感染性疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物である。
【0052】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記PD-1変異体、核酸分子又はベクターを対象体に有効量投与する段階を含む野生型(wild type)PD-1(Programmed cell death protein-1)及びPD-L1(Programmed death-ligand 1)間の結合抑制方法を提供する。
【0053】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記PD-1変異体、核酸分子又はベクターを対象体に有効量投与する段階を含む免疫反応増加方法を提供する。
【0054】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記PD-1変異体、核酸分子又はベクターを対象体に治療学的有効量投与する段階を含む癌疾患又は感染性疾患の治療方法を提供する。
【0055】
本発明の薬剤学的組成物は、(a)前記PD-1変異体、核酸分子又はベクター;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含むことができる。
【0056】
本発明が予防又は治療しようとする癌の種類は制限されず、白血病(leukemias)及び急性リンパ球白血病(acute lymphocytic leukemia)、急性非リンパ球白血病(acute nonlymphocytic leukemias)、慢性リンパ球白血病(chronic lymphocytic leukemia)、慢性骨髄白血病(chronic myelogenous leukemia)、ホジキン病(Hodgkin’s Disease)、非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin’s lymphomas)及び多発骨髄腫(multiple myeloma)などのようなリンパ腫(lymphomas)、脳腫瘍(brain tumors)、神経芽細胞腫(neuroblastoma)、網膜芽細胞腫(retinoblastoma)、ウィルムス腫瘍(Wilms Tumor)、骨腫瘍(bone tumors)及び軟部組織肉腫(soft-tissue sarcomas)などのような小児固形腫瘍(childhood solid tumors)、肺癌(lung cancer)、乳癌(breast cancer)、前立腺癌(prostate cancer)、尿路癌(urinary cancers)、子宮癌(uterine cancers)、口腔癌(oral cancers)、膵癌(pancreatic cancer)、黒色腫(melanoma)及びその他皮膚癌(skin cancers)、胃癌(stomach cancer)、卵巣癌(ovarian cancer)、脳腫瘍(brain tumors)、肝癌(liver cancer)、喉頭癌(laryngeal cancer)、甲状腺癌(thyroid cancer)、食道癌(esophageal cancer)及び精巣癌(testicular cancer)などのような成人の通常の固形腫瘍(common solid tumors)を含めて多数の癌を治療するように投与され得る。
【0057】
本発明が予防又は治療しようとする感染性疾患の種類は制限されず、ウイルスによる感染、インフルエンザによる感染、細菌による感染及び真菌による感染を含む。
【0058】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は製剤時に通常用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適切な薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0059】
本発明の薬剤学的組成物は対象体に経口又は非経口で投与でき、好ましくは非経口投与であり、例えば、静脈内注入、局所注入及び腹腔注入などで投与することができる。
【0060】
本明細書において用語“対象体”又は“subject”とは、前記PD-1及びPD-L1間の結合抑制によって前記疾患を予防又は治療しようとする客体を意味し、好ましくは人間及び動物を含む。
【0061】
本発明の薬剤学的組成物の適度の投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、普通の熟練した医師は所望する治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は0.0001~100mg/kgである。
【0062】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって単位容量の形態で製造されたり或いは多回容量容器内に内入させて製造され得る。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0063】
本発明の薬剤学的組成物は単独の療法で用いられてもよいが、他の通常の生物学的療法、化学療法又は放射療法と共に用いられてもよく、このような併行療法を実施する場合にはより効果よく癌又は感染性疾患を治療することができる。本発明を癌の予防及び治療に用いる場合、前記組成物と共に利用可能な化学療法剤は、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、プロカルバジン(procarbazine)、メクロレタミン(mechlorethamine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、メルファラン(melphalan)、クロランブシル(chlorambucil)、ビスルファン(bisulfan)、ニトロソウレア(nitrosourea)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ブレオマイシン(bleomycin)、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン(mitomycin)、エトポシド(etoposide)、タモキシフェン(tamoxifen)、タキソール(taxol)、トランスプラチナ(transplatinum)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、ビンクリスチン(vincristin)、ビンブラスチン(vinblastin)、及びメトトレキサート(methotrexate)などを含む。本発明の組成物と共に利用可能な放射療法は、X線照射及びγ線照射などである。
【0064】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、下記の段階を含むPD-1変異体の製造方法を提供する:
a)前記PD-1変異体をコードする核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞を培養する段階;及び
b)前記宿主細胞によって発現されたPD-1変異体を回収する段階。
【0065】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、下記の段階を含むPD-1変異体のスクリーニング方法を提供する:
a)前記PD-1変異体又はこれをコードする核酸分子にさらに無作為的な点突然変異を加えたPD-1変異体又はこれをコードする核酸分子のライブラリーを構築する段階;及び
b)前記ライブラリーから野生型(wild type)PD-1(Programmed cell death protein-1)及びPD-L1(Programmed death-ligand 1)間の結合を抑制するPD-1変異体を選別する段階。
【0066】
本発明のスクリーニング方法は、蛍光標識細胞分離(FACS)スクリーニング、又は他の自動化された流細胞分析技術を用いることができる。流細胞分析を実施するための機器は当業者に公知である。当該機器の例としては、FACSAria、FACS Star Plus、FACScan及びFACSort機器(Becton Dickinson,Foster City,CA)、Epics C(Coulter Epics Division,Hialeah,FL)、MOFLO(Cytomation,Colorado Springs,Colo.)、MOFLO-XDP(Beckman Coulter,Indianapolis,IN)を挙げることができる。一般に、流細胞分析技術には液体試料中の細胞又は他の粒子の分離が含まれる。典型的には、流細胞分析の目的は分離された粒子をそれらの一つ以上の特性(例えば、標識されたリガンド又は他の分子の存在)に対して分析することである。粒子はセンサーによって一つずつ通過し、サイズ、屈折、光散乱、不透明度、粗度、形状、蛍光などに基づいて分類される。
【発明の効果】
【0067】
本発明の特徴及び利点を要約すれば次の通りである:
(i)本発明は、PD-L1結合力が増大したPD-1変異体を提供する。
【0068】
(ii)また、本発明は、前記PD-1変異体の製造方法及びスクリーニング方法を提供する。
【0069】
(iii)本発明のPD-1変異体は、野生型PD-1及びPD-L1間の結合を効果的に抑制して、既存の免疫関門抑制治療剤に比べて著しく高い透過力及び免疫細胞の癌死滅効果又は感染性疾患の治療効果を期待することができ、且つ免疫原性発生の可能性を最小化することができる。しかも、無糖化の具現による生物医薬品開発の便宜性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】動物細胞で生産されて精製された野生型PD-1と4つの糖鎖変異体PD-1のSDS-PAGE写真である。
図2】野生型PD-1と4つの変異体PD-1のPD-L1に対する結合力検証結果を示す。
図3】四量体(Tetrameric)PD-L1の製造、蛍光標識化及び活性検証結果を示す。
図4】Anti-FLAG-FITCを使用した大腸菌で無糖化PD-1の発現分析結果を示す。
図5】無糖化PD-1の活性化検証結果を示す。
図6】作られた初期ライブラリーのDNA塩基配列分析データを示す。
図7】流細胞分析機を用いたライブラリーエンリッチメント(enrichment)テスト結果を示す。
図8】無糖化PD-1変異体をディスプレイしている大腸菌細胞のPD-L1結合力分析結果を示す。
図9】無糖化PD-1変異体をディスプレイしている大腸菌細胞のanti-FLAG-FITCを使用したタンパク質発現量分析結果を示す。
図10】無糖化PD-1変異体をディスプレイしている大腸菌細胞のPD-L1結合力分析結果を示す。
図11】無糖化PD-1変異体をディスプレイしている大腸菌細胞のanti-FLAG-FITCを使用したタンパク質発現量分析結果を示す。
図12】CKJ41をベースにした新規な突然変異を持つ変異体探索結果を示す。
図13】CKJ41Tを鋳型として作られた2次ライブラリーのDNA塩基配列分析データを示す。
図14】流細胞分析機を用いたライブラリーエンリッチメントテスト結果を示す。
図15】2次スクリーニングによって見出した無糖化PD-1変異体をディスプレイしている大腸菌細胞のPD-L1結合力分析結果を示す。
図16】PD-1変異体と共通塩基配列変異体のPD-L1結合力比較検証結果を示す。
図17】精製された対照群HAC-Vと2つのPD-1変異体タンパク質のSDS-PAGE写真を示す。
図18】野生型PD-1とHAC-V、2つのPD-1変異体のPD-L1に対する結合力検証結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないということは当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0072】
実施例
実施例1:ヒトPD-L1結合に影響を与えるN-結合型糖化部位(N-linked glycosylation site)検証
ヒトPD-1の糖化の存在が実際にPD-L1との結合力に重要な役割を担うということを検証するために、PD-1に存在する4個の糖化を無糖化し、それぞれの糖化が結合力に及ぼす影響をテストした。PD-1には4ケ所のN-糖化部位が存在するので、4ケ所にあるアスパラギンをそれぞれアラニンに置換した4つの遺伝体(N25A、N34A、N50A、N92A)を作ることを決定した。PD-1(Catalog number:HG10377-M)の遺伝子とプライマー(CKJ#1、CKJ#2)を用いてPD-1の外膜部位(アミノ酸配列L25-Q167)の遺伝体をベントポリメラーゼ(Vent polymerase)を用いてPCR技法で増幅した。増幅された遺伝体はBssHIIとXbaI酵素を用いて処理し、同様に同酵素で処理された動物細胞発現用ベクターであるpMazベクターにライゲーションした。ライゲーションされたプラスミドは、Jude1((F- mcrA Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)
【0073】
【化1】
80lacZΔM15 ΔlacX74 recA1 endA1 araD139 Δ(ara, leu)7697 galU galK λ- rpsL nupG)大腸菌に形質転換(transformation)し、個別コロニー分析によって塩基配列(sequence)を確認した。製造されたプラスミドに基づいてQuikChange PCRを用いた部位特異的変異導入(site-directed mutagenesis)によって容易にアスパラギンがアラニンに置換された変異体を得るためにプライマー(CKJ#3、CKJ#4、CKJ#5、CKJ#6、CKJ#7、CKJ#8、CKJ#9、CKJ#10)をデザインした。デザインされたプライマーとPfu turbo polymerase(Agilent)を用いて遺伝体を増幅した。増幅された遺伝子をJude1に形質転換して塩基配列を確認した。作られた5つの野生型PD-1(pMaz-野生型PD-1-His tag)とPD-1糖化変異体発現用ベクター(pMaz-N25A PD-1-His tag、pMaz-N34A PD-1-His tag、pMaz-N50A PD-1-His tag、pMaz-N92A PD-1-His tag)を動物細胞(HEK293F)に形質感染(transfection)して6日間培養して細胞培養液を6,000rpm、20分間遠心分離した後、上澄液を取って0.22μmフィルターで濾過した。濾過した上澄液は4℃で16時間Ni-NTAレジン(Qiagen)1mlに結合誘導した。結合されたレジンはレジンの10CV(column volume)の10mMイミダゾール(Sigma)が含まれたPBS溶液で洗浄後、10CVの20mMイミダゾール含有PBS溶液でさらに洗浄した。最後に、250mMイミダゾール含有PBS溶液で溶出液を回収した(図1)。ELISAを用いて、野生型PD-1と4つの糖化が変異されたPD-1変異体のPD-L1結合力変化を検証した。高結合96ウェルプレート(High binding 96 well plate)(Costar)にそれぞれのタンパク質を0.05M NaCO、pH9.6(Junsei)に希釈して200ng/wellの濃度で4℃で16時間結合させた。タンパク質除去後、5%スキムミルクが含まれたPBST(0.5% Tween-20が含まれたPBS)溶液にw/v 5%となるように入れた後、それぞれの96ウェルプレートを1時間常温でブロッキングした。この溶液を捨てた後、200μlのtween20 0.5%含有PBS溶液で4回洗浄した後にPD-L1テトラマーをPBS溶液に希釈し、それぞれの96ウェルプレートに1時間常温で結合させた。その後、200μlのPBST 0.5%溶液で4回洗浄した後、anti-streptavidin-HRP(Genetex)をPBSに1:2,000の比率で希釈し、それぞれの96ウェルプレートに1時間常温で結合させた。この溶液を捨てた後、200μlのPBST 0.5%溶液で4回洗浄した後、50μl TMB(Thermo Scientific)で反応を進行し、20分後に4N HSOで反応を終結させた(図2)。反応の結果、N92A変異体は、野生型PD-1との結合力に大差がなかったが、残り3つの糖化変異体は非常に大きい結合力の差を示し、N25、N34、N50の糖化はPD-L1との結合力に非常に大きい影響を及ぼすことが分かった。
【0074】
【表1】
実験に使用したプライマー
実施例2:PD-1エンジニアリングのための四量体(tetrameric)ヒトPD-L1(PD-L1-Streptavidin)クローニング
ヒトPD-L1遺伝子cDNAをSino Biotech(Catalog number:HG10084-M)社から購入後、PD-L1細胞外膜部分(アミノ酸配列F19-R238)の遺伝子をプライマー(HW#1、HW#2)とベントポリメラーゼを用いてPCRで増幅した。野生型PD-1と野生型PD-L1の結合解離定数が低いため(平衡解離定数K=約8.7μM)、効率的な無糖化PD-1変異体スクリーニングの進行のために四量化(tetramerization)によってアビディティ効果(avidity effect)を誘導することにした。四量化を誘導するためにPD-L1のC末端部分にストレプトアビジンを発現させてテトラマーを誘導することにし、ストレプトアビジンとPD-L1との間にはGSリンカーを入れてそれぞれのタンパク質の流動性を確保した。ストレプトアビジンをプライマー(HW#3、HW#4)とベントポリメラーゼ(New England Biolab)を用いて遺伝子増幅後、前に増幅されたPD-L1遺伝体とベントポリメラーゼを用いてアセンブリーPCRを行った。作られた遺伝子はBssHIIとXbaI(New England Biolab)を用いて制限酵素処理した。制限酵素処理されたPD-L1-streptavidin-His tag遺伝子は、同一の制限酵素処理された動物細胞用ベクターであるpMazベクターにライゲーションした。ライゲーションされたプラスミドはJude1大腸菌に形質転換させた後、単一クローン(single clone)を確保し、塩基配列分析によってPD-L1-streptavidin-His tagがpMazベクターに成功的に挿入されたことを確認した。
【0075】
実施例3:四量体(Tetrameric)PD-L1-ストレプトアビジンの動物細胞発現、精製及び蛍光物質ラベリング
作られた四量体PD-L1発現用ベクターを動物細胞(HEK293F)に形質感染した後、6日間培養して細胞培養液を6,000rpm、20分間遠心分離後、上澄液を取って0.22μmフィルターで濾過した。濾過した上澄液は4℃で16時間Ni-NTAレジン(Qiagen)1mlに結合誘導した。結合(Binding)したレジンは、レジンの10CVの10mMイミダゾール(Sigma)が含まれたPBS溶液で洗浄後、10CVの20mMイミダゾール含有PBS溶液でさらに洗浄した。最後に、250mMイミダゾール含有PBS溶液で溶出液を回収した。精製されたPD-L1テトラマーはAlexa-488ラベリングキットを用いて蛍光標識化した。蛍光標識した四量体PD-L1は、ELISA分析の結果、優れたPD-1結合力を示すことを確認した(図3)。
【0076】
実施例4:バクテリア細胞内膜でヒトPD-1をディスプレイするためのクローニング(野生型PD-1、HAC-V PD-1)
PD-1の外膜部位をディスプレイするためにプライマー(JY#1、JY#2)を用いてPD-1のアミノ酸(アミノ酸配列L25-Q167)のDNAをベントポリメラーゼを用いてPCRで遺伝子増幅させた後、SfiI制限酵素処理した。SfiI処理されたDNAは、タンパク質を大腸菌ペリプラスム領域(periplasmic region)側に分泌下に細胞内膜に固定化させるシグナルペプチドであるNlpAシグナルペプチドを使用するために、同様にSfiI処理されたpMopac12-NlpA-FLAGベクターにライゲーションしてpMopac12-NlpA-WTPD-1-FLAGベクターを製造した。対照群として用いるためのHAC-V変異体は遺伝子合成によって進行し、同様に、NlpAシグナルペプチドを使用するために、SfiI処理されたpMopac12-NlpA-FLAGベクターにライゲーションしてpMopac12-NlpA-HAC-V PD-1-FLAGプラスミドを準備した。その後、大腸菌Jude1に形質転換して単一クローンを確保した後、塩基配列分析によって、野生型PD-1とHAC-V PD-1がpMopac-12ベクターに成功的に挿入されたことを確認した。
【0077】
実施例5:流細胞分析機を用いたPD-1及びPD-1変異体(野生型PD-1、HAC-V PD-1)の大腸菌での発現有無及びPD-L1との結合力検証
クローニングで用意したプラスミド(pMopac12-NlpA-PD-1-FLAG、pMopac12-NlpA-HAC-V PD-1-FLAG、pMopac12-NlpA-Fc-FLAG)をそれぞれJude1細胞に形質転換した。用意したサンプルをそれぞれ、2%グルコース及び40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれたTB培地で37℃、250rpmで16時間培養した。培養された細胞を、40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれた6mlのTB培地に1:50の比率で接種した。OD600=0.5まで培養して20分間25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現させた。タンパク質が過発現した大腸菌をOD600正規化(normalize)によって同一量ずつe-tubeに入れ、14,000rpm、1分間遠心分離して細胞を回収した。残余培地を除去するために、e-tubeに入れた細胞を1mlの10mM Tris-HCl(pH8.0)を用いて再懸濁(resuspension)し、13,500rpmで1分間遠心分離して行う洗浄過程を2回反復した。細胞を1mlのSTE[0.5Mスクロース、10mM Tris-HCl、10mM EDTA(pH8.0)]溶液を用いて再懸濁し、37℃、30分間回転(rotation)によって細胞外膜を除去した。13,500rpmで1分間遠心分離によって大腸菌を集めた後、上澄液を除去した。遠心分離された大腸菌は1mlの溶液A[0.5Mスクロース、20mM MgCl、10mM MOPS pH6.8]を用いて再懸濁後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。1mlの溶液Aと50mg/mlリゾチーム溶液20μlを混合した溶液を1ml添加して遠心分離された大腸菌を再懸濁した後、37℃、15分間回転してペプチドグリカン層を除去した。遠心分離後に上澄液を除去し、1mlのPBSで再懸濁した後に300μlを取って、700μlのPBS、12.5nMの四量体PD-L1-Alexa488プローブ、及び33nMのanti-FLAG-FTIC(SIGMA)をそれぞれ入れ、常温で回転してスフェロプラストに蛍光プローブでラベリングした。ラベリング過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離した。遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで再懸濁後、Guava(Merck Millipore)装備を用いて分析した。分析の結果、無糖化PD-1は大腸菌でよく発現するが(図4)、PD-L1との結合力は示さないことが確認でき、また、無糖化HAC-V PD-1は弱いPD-L1結合力があることが確認された(図5)。
【0078】
実施例6:超高速スクリーニング技法を用いるための巨大PD-1エラープローンライブラリー(PD-1 error prone library)の作製
PD-L1との高い結合力を示す無糖化PD-1を高速で探索するために、pMopac12-NlpA-PD-1-FLAGをベースに用いてPD-1の全部位にエラーが入るように両側のSfiI部位を含むプライマー(JY#3、JY#4)をデザインした。デザインしたプライマーとTaqポリメラーゼ(TAKARA)とdNTPs(Invitrogen)、MgCl、MnCl(SIGMA)を用いてライブラリーを作製するためにインサ-ト(insert)をエラープローンPCR技法を用いて遺伝体を増幅させた。増幅された遺伝体は、含むSfiI酵素処理され、同様にSfiI酵素処理されているpMopac12-NlpA-FLAGベクターに挿入してライゲーション後、Jude1細胞に形質転換した。形質転換された大腸菌はスクエアプレート(square plate)にスプレッドして37℃で16時間培養した後、グルコースが2%含まれているTBで大腸菌を回収して初期ライブラリーを確保した(図6)。
【0079】
実施例7:流細胞分離器を用いたPD-1変異体スクリーニング
グルコースが2%含まれているTB培地25mlに40μg/mlのクロラムフェニコールを添加した後、作製されたライブラリーを250mLフラスコに接種して37℃、250rpmで4時間培養し、40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれているTB培地100mlに培養された大腸菌を1:100の比率で接種した。OD600=0.5まで培養して20分間、25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現し、14,000rpm、1分間遠心分離によって細胞を回収した。残余培地を除去するために、e-tubeに入れた細胞を1mlの10mM Tris-HCl(pH8.0)を用いて再懸濁し、13,500RPMで1分間遠心分離によって行う洗浄過程を2回反復した。細胞を1mlのSTE[0.5Mスクロース、10mM Tris-HCl、10mM EDTA(pH8.0)]溶液を用いて再懸濁し、37℃、30分間回転によって細胞外膜を除去した。13,500rpmで1分間遠心分離して大腸菌を集めた後、上澄液を除去した。遠心分離された大腸菌は1mlの溶液A[0.5Mスクロース、20mM MgCl、10mM MOPS pH6.8]を用いて再懸濁後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。1mlの溶液Aと50mg/mlリゾチーム溶液20μlを混合した溶液を1ml添加して遠心分離された大腸菌を再懸濁した後、37℃、15分間回転してペプチドグリカン層を除去した。遠心分離後に上澄液を除去し、1mlのPBSで再懸濁した後に300μlを取り、700μlのPBSと12.5nMの四量体PD-L1-Alexa488プローブを共に入れて常温で回転し、スフェロプラストに蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1ml PBSで再懸濁後、S3ソーター(sorter)(Bio-Rad)装備を用いてPD-L1に高い結合力を持つ大腸菌を回収した。回収された大腸菌は、プライマー(JY#1、JY#2)を用いたPCR増幅で遺伝子を確保し、遺伝体はsfiI制限酵素処理され、同様に制限酵素処理されたpMopac12-NlpA-FLAGベクターにライゲーションした。プラスミドをJude1に形質転換した後、大腸菌はスクエアプレートにスプレッドして37℃で16時間インキュベーションした後に回収して急速冷凍庫(deep freezer)に冷凍保管した。このようなスクリーニング過程を5回さらに反復した。
【0080】
実施例8:PD-L1親和度増加PD-1変異体のエンリッチメント(enrichment)確認のための大腸菌培養
グルコースが2%含まれているTB 25mlに40μg/mlのクロラムフェニコールを添加した後、初期ライブラリー(Initial library)、1ラウンドライブラリー(1 round library)、2ラウンドライブラリー(2 round library)、3ラウンドライブラリー(3 round library)、4ラウンドライブラリー(4 round library)、5ラウンドライブラリー(5 round library)、6ラウンドライブラリー(6 round library)を250mLフラスコに入れた。37℃、250rpmで4時間培養後、40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれたTB 100mlに培養された大腸菌を1:100接種した。OD600=0.5まで培養して20分間、25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現させた。また、対照群として使用するために、グルコースが2%含まれているTB培地4mlに40μg/mlのクロラムフェニコールを添加し、野生型PD-1とHAC-V-PD-1細胞をそれぞれ接種し、37℃、250rpmで16時間培養した。培養された細胞を40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれたTB培地6mlに1:50接種した。OD600=0.5まで培養して20分間、25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現させた。大腸菌はOD600正規化によって同一量ずつe-tubeに入れ、14,000rpm、1分間遠心分離によって細胞を回収した。
【0081】
実施例9:流細胞分析機を用いたPD-L1親和度増加PD-1変異体のエンリッチメント確認
残余培地を除去するために、e-tubeに入れた細胞を1mlの10mM Tris-HCl(pH8.0)を用いて再懸濁し、13,500rpmで1分間遠心分離によって行う洗浄過程を2回反復した。細胞を1mlのSTE[0.5Mスクロース、10mM Tris-HCl、10mM EDTA(pH8.0)]溶液を用いて再懸濁し、37℃、30分間回転によって細胞外膜を除去した。13,500rpmで1分間遠心分離して大腸菌を集めた後、上澄液を除去した。遠心分離された大腸菌は1mlの溶液A[0.5Mスクロース、20mM MgCl、10mM MOPS pH6.8]を用いて再懸濁後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。1mlの溶液Aと50mg/mlリゾチーム溶液20μlを混合した溶液を1ml添加して遠心分離された大腸菌を再懸濁した後、37℃、15分間回転してペプチドグリカン層を除去した。遠心分離後に上澄液を除去し、1mlのPBSで再懸濁した後、300μlを取って700μlのPBSと12.5nMの四量体PD-L1-Alexa488プローブを共に入れて常温で回転してスフェロプラストに蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで再懸濁後、流細胞分析機(Guava,Millipore)装備を用いてPD-L1との結合力を蛍光信号値(Mean fluorescence intensity,MFI)測定を用いて分析した。スクリーニングが進行されるほど、PD-L1に結合力が高い変異体がライブラリーで増幅されることが分析できた(図7)。
【0082】
実施例10:流細胞分析機の分析を用いたPD-L1結合力の向上したPD-1変異体確保
最後のラウンドの単一コロニーを、2%グルコース及び40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれたTB培地に接種した後、37℃、250rpmで16時間培養した。培養された細胞を、40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれた6mlのTB培地に1:50希釈して接種した。OD600=0.5まで培養して20分間、25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現させた。大腸菌はOD600正規化によって同一量ずつe-tubeに入れ、14,000rpm、1分間遠心分離によって細胞を回収した。残余培地を除去するために、e-tubeに入れた細胞を1mlの10mM Tris-HCl(pH8.0)を用いて再懸濁し、13,500rpmで1分間遠心分離によって行う洗浄過程を2回反復した。細胞を1mlのSTE[0.5Mスクロース、10mM Tris-HCl、10mM EDTA(pH8.0)]溶液を用いて再懸濁し、37℃、30分間回転によって細胞外膜を除去した。13,500rpmで1分間遠心分離して大腸菌を集めた後、上澄液を除去した。遠心分離された大腸菌は1mlの溶液A[0.5Mスクロース、20mM MgCl、10mM MOPS pH6.8]を用いて再懸濁後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。1mlの溶液Aと50mg/mlリゾチーム溶液20μlを混合した溶液を1ml添加して遠心分離された大腸菌を再懸濁した後、37℃、15分間回転してペプチドグリカン層を除去した。遠心分離後に上澄液を除去し、1mlのPBSで再懸濁した後、300μlを取って700μlのPBSと12.5nMの四量体PD-L1-Alexa488プローブを共に入れて常温で回転してスフェロプラストに蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで再懸濁後、GUAVA装備を用いてPD-L1との結合力を蛍光信号値測定を用いて分析した(図8)。また、大腸菌がディスプレイしているPD-1タンパク質の発現量が蛍光強度に影響を及ぼし得るので、発現量を確認するために、PBSで再懸濁した後に残った残余大腸菌から300μlを取って700μlのPBSと1μlのanti-FLAG-FITCを共に入れて常温で回転し、スフェロプラストに蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで再懸濁後、流細胞分析機を用いてanti-FLAG-FITCとの結合力によるタンパク質の発現量を、蛍光信号値測定を用いて間接的に分析した(図9)。
【0083】
【表2】
PD-L1結合力の向上したPD-1変異体
実施例11.追加の対照群であるPD-1変異体との比較のためのクローニング(PD-1S.6.8.3、S.5.1T)
追加の対照群として使用するためのS.6.8.3とS.5.1T変異体は、プライマーアセンブリーPCRを用いてクローニングした。まず、プライマー(S.6.8.3:JY#5、6、7、8、9、10、11、12/S.5.1T:JY#13、14、15、16、17、18、19、20)を用いてベントポリメラーゼでプライマーアセンブリーPCRをした後、増幅(Amplify)PCRを用いて正しくアセンブリーされた遺伝子を増幅させた。増幅させた遺伝子をSfiI処理した後、同様にSfiI処理されたpMopac12-NlpA-FLAGベクターにライゲーションしてpMopac12-NlpA-PD-1S.6.8.3-FLAG及びpMopac12-NlpA-PD-1S.5.1T-FLAGベクターを製造した。その後、大腸菌Jude1に形質転換して単一クローンを確保した後、塩基配列分析によって成功的に挿入されたことを確認した。
【0084】
【表3】
追加の実験に使用したプライマー
実施例12.流細胞分析機の分析を用いた、見出したPD-1変異体と対照群とのPD-L1結合力比較
結合力の高いPD-1変異体と追加の対照群とのPD-L1結合力を比較するために、野生型PD-1と対照群であるPD-1HAC-V、S.6.8.3、S.5.1TとCKJ49及びCKJ50の総6つをそれぞれ、2%グルコース及び40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれたTB培地に接種した後、37℃、250rpmで16時間培養した。培養された細胞を、40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれた6mlのTB培地に1:100希釈して接種した。OD600=0.5まで培養して20分間、25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現させた。大腸菌はOD600正規化によって同一量ずつe-tubeに入れ、14,000rpm、1分間遠心分離によって細胞を回収した。実施例5で明示されたスフェロプラスト方法と同一に実験し、これによって作られたスフェロプラストに12.5nMの四量体PD-L1-Alexa488プローブを共に入れて常温で回転して蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで再懸濁後、GUAVA装備を用いてPD-L1との結合力を蛍光信号値測定を用いて分析した(図10)。また、大腸菌がディスプレイしているPD-1タンパク質の発現量が蛍光強度に影響を及ぼし得るので、発現量を確認するために、PBSで再懸濁した後に残った残余大腸菌から300μlを取って700μlのPBS及び1μlのanti-FLAG-FITCを共に入れて常温で回転し、スフェロプラストに蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで再懸濁後、流細胞分析機を用いてanti-FLAG-FITCとの結合力によるタンパク質の発現量を、蛍光信号値の測定を用いて間接的に分析した(図11)。
【0085】
実施例13.新規な突然変異を持つ変異体探索のためのクローニング
見出した変異体のうち、最も新規な突然変異を持つとともに高い結合力を持つCKJ41を基準に、より新規な突然変異を持つ変異体を見出すために、CKJ41のC69Sを種々のアミノ酸(C、T、Y、A、G)に置換した。このために、デザインしたプライマーとPfu turbo polymerase(Agilent)を用いてQuikchange PCR技法で遺伝体を増幅した。増幅された遺伝子をJude1に形質転換して塩基配列を確認した。
【0086】
実施例14.流細胞分析機の分析を用いた新規な突然変異を持つ変異体探索
CKJ41と対照群であるHAC-V変異体、CKJ41の69番目のアミノ酸が変わったCKJ41C、CKJ41T、CKJ41Y、CKJ41A、CKJ41Gをそれぞれ、2%グルコース及び40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれたTB培地に接種した後、37℃、250rpmで16時間培養した。培養された細胞を、40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれた6mlのTB培地に1:100希釈して接種した。OD600=0.5まで培養して20分間、25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現させた。大腸菌はOD600正規化によって同一量ずつe-tubeに入れ、14,000rpm、1分間遠心分離によって細胞を回収した。実施例5で明示されたスフェロプラスト方法と同一に実験し、これによって作られたスフェロプラストに12.5nMの四量体PD-L1-Alexa488プローブを共に入れて常温で回転して蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで再懸濁後、GUAVA装備を用いてPD-L1との結合力を蛍光信号値測定を用いて分析した(図12)。
【0087】
実施例15.結合力が増加したPD-1変異体を確保するための2次PD-1エラープローンライブラリー作製
PD-L1とのより高い結合力を示すPD-1を高速で探索するために、突然変異数は少ないながらも高い蛍光値を有するpMopac12-NlpA-PD-1CKJ41T-FLAGをベースにして全ての部位にエラーが入るようにインサート(insert)を準備した。両側のSfiI部位を含むプライマー(JY#3、JY#4)及びTaqポリメラーゼ(TAKARA)とdNTPs(Invitrogen)、MgCl、MnCl(SIGMA)を用いてエラープローンPCR技法を用いて遺伝体を増幅させてライブラリーを作製しようとした。増幅された遺伝体はSfiI酵素処理され、同様にSfiI酵素処理されているpMopac12-NlpA-FLAGベクターに挿入してライゲーション後、Jude1細胞に形質転換した。形質転換された大腸菌はスクエアプレートにスプレッドして37℃で16時間培養した後、グルコースが2%含まれているTBで大腸菌を回収して初期ライブラリーを確保した(図13)。
【0088】
実施例16.流細胞分離器を用いたPD-1変異体2次スクリーニング
グルコースが2%含まれているTB培地25mlに40μg/mlのクロラムフェニコールを添加した後、作製されたライブラリーを250mLフラスコに接種し、37℃、250rpmで4時間培養し、40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれたTB培地100mlに培養された大腸菌を1:100比率で接種した。OD600=0.5まで培養して20分間、25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現させ、14000rpm、1分間遠心分離によって細胞を回収した。実施例5で明示されたスフェロプラスト方法と同一に実験し、これによって作られたスフェロプラストに12.5nMの四量体PD-L1-Alexa488プローブを共に入れて常温で回転して蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1ml PBSで再懸濁後、S3ソーター(Bio-Rad)装備を用いてPD-L1へのより高い結合力を持つ大腸菌を回収した。回収された大腸菌はプライマー(JY#3、JY#4)を用いたPCR増幅で遺伝子を確保し、遺伝体はsfiI制限酵素処理され、同様に制限酵素処理されたpMopac12-NlpA-FLAGベクターにライゲーションした。プラスミドをJude1に形質転換した後、大腸菌はスクエアプレートにスプレッドして37℃に16時間インキュベーションした後に回収して急速冷凍庫に冷凍保管した。このようなスクリーニング過程を、プローブの濃度を漸次減らしながら3回さらに反復した。
【0089】
実施例17.PD-L1親和度増加2次PD-1変異体のエンリッチメント(enrichment)確認のための大腸菌培養
グルコースが2%含まれているTB25mlに40μg/mlのクロラムフェニコールを添加した後、初期ライブラリー(Initial library)、1ラウンドライブラリー(1 round library)、2ラウンドライブラリー(2 round library)、3ラウンドライブラリー(3 round library)、4ラウンドライブラリー(4 round library)を250mLフラスコに入れた。37℃、250rpmで4時間培養後、40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれたTB 100mlに培養された大腸菌を1:100接種した。OD600=0.5まで培養して20分間、25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現させた。また、対照群として使用するために、グルコースが2%含まれているTB培地4mlに40μg/mlのクロラムフェニコールを添加し、野生型PD-1及びHAC-V-PD-1細胞をそれぞれ接種し、37℃、250rpmで16時間培養した。培養された細胞を、40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれたTB培地6mlに1:100接種した。OD600=0.5まで培養して20分間、25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現させた。大腸菌はOD600正規化によって同一量ずつe-tubeに入れ、14,000rpm、1分間遠心分離によって細胞を回収した。
【0090】
実施例18.流細胞分析機を用いたPD-L1親和度増加PD-1変異体のエンリッチメント確認
実施例5で明示されたスフェロプラスト方法と同一に実験し、これによって作られたスフェロプラストに4nMの四量体PD-L1-Alexa488プローブを共に入れ、常温で回転して蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで再懸濁後、流細胞分析機(Guava,Millipore)装備を用いてPD-L1との結合力を蛍光信号値(Mean fluorescence intensity,MFI)測定を用いて分析した。スクリーニングが進行されるほど、PD-L1に結合力が高い変異体がライブラリーで増幅されることが分析できた(図14)。
【0091】
実施例19.流細胞分析機の分析を用いた、PD-L1結合力がより向上したPD-1変異体の追加確保
最後のラウンドの単一コロニー(APD1-CKJ41T:CKJ41Tの無糖化形態、APD1-JY101:JY101の無糖化形態)と野生型PD-1、HAC-Vをそれぞれ、2%グルコース及び40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれたTB培地に接種した後、37℃、250rpmで16時間培養した。培養された細胞を、40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれた6mlのTB培地に1:100希釈して接種した。OD600=0.5まで培養して20分間、25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現させた。大腸菌はOD600正規化によって同一量ずつe-tubeに入れ、14,000rpm、1分間遠心分離によって細胞を回収した。実施例5で明示されたスフェロプラスト方法と同一に実験し、これによって作られたスフェロプラストに4nMの四量体PD-L1-Alexa488プローブを共に入れ、常温で回転して蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで再懸濁後、GUAVA装備を用いてPD-L1との結合力を蛍光信号値測定によって分析した(図15)。
【0092】
実施例20.見出したPD-1変異体の突然変異座の比較検証のための変異体クローニング
CKJ49、CKJ50の重複する突然変異を持つ変異体PD-1_LDSSをクローニングし、LDSSにCKJ49、50の新規の突然変異アミノ酸が導入された時に結合力に影響を及ぼす否かを確認しようとした。PD-1_LDSSを作るためにCKJ49ベクターを鋳型にしてQuikchange PCR技法を用いた。このために、デザインされたプライマー(JY#21、JY#22)とPfu turbo polymerase(Agilent)を用いて遺伝体を増幅した。増幅された遺伝子をJude1に形質転換して塩基配列を確認した。
【0093】
実施例21.流細胞分析機の分析を用いたPD-1変異体と共通塩基配列変異体のPD-L1結合力比較検証
野生型PD-1、対照群であるHAC-V変異体、CKJ49、CKJ50、LDSSをそれぞれ、2%グルコース及び40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれたTB培地に接種した後、37℃、250rpmで16時間培養した。培養された細胞を40μg/mlのクロラムフェニコールが含まれた6mlのTB培地に1:100希釈して接種した。OD600=0.5まで培養して20分間、25℃、250rpmで冷却過程を経た後、1mM IPTGを添加して25℃、250rpm、5時間タンパク質を過発現させた。大腸菌はOD600正規化によって同一量ずつe-tubeに入れ、14,000rpm、1分間遠心分離によって細胞を回収した。実施例5で明示されたスフェロプラスト方法と同一に実験し、これによって作られたスフェロプラストに12.5nMの四量体PD-L1-Alexa488プローブを共に入れ、常温で回転して蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで再懸濁後、GUAVA装備を用いてPD-L1との結合力を蛍光信号値測定を用いて分析した(図16)。また、大腸菌がディスプレイしているPD-1タンパク質の発現量が蛍光強度に影響を及ぼし得るので、発現量を確認するために、PBSで再懸濁した後に残った残余大腸菌から300μlを取って700μlのPBSと1μlのanti-FLAG-FITCを共に入れ、常温で回転してスフェロプラストに蛍光プローブをラベリングした。ラベリングの過程を1時間経た後、13,500rpmで1分間遠心分離をした。上澄液を捨て、遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで1回洗浄した後、さらに13,500rpmで1分間遠心分離をした。遠心分離された大腸菌を1mlのPBSで再懸濁後、流細胞分析機を用いてanti-FLAG-FITCとの結合力によるタンパク質の発現量を、蛍光信号値の測定を用いて間接的に分析した(図16)。
【0094】
【表4】
さらに見出されたPD-L1結合力の向上したPD-1変異体
実施例22.PD-1変異体の動物細胞発現、精製及び結合力検証
PD-1変異体を動物細胞に発現、精製して結合力を検証するために、まずクローニングを行った。対照群であるHAC-V、見出した変異体であるCKJ49、CKJ50遺伝子をプライマー(CKJ#1、CKJ#2)及びベントポリメラーゼを用いてPCRで増幅した。増幅された遺伝体はBssHIIとXbaI酵素を用いて処理し、同様に同一の酵素で処理された動物細胞発現用ベクターであるpMazベクターにライゲーションした。ライゲーションされたプラスミドはJude1大腸菌に形質転換し、個別コロニー分析によって塩基配列を確認した。作られたPD-1糖化変異体発現用ベクター(pMaz-PD1HAC-V-His tag、pMaz-PD1CKJ49-His tag、pMaz-PD1CKJ50-His tag)を動物細胞(HEK293F)に形質感染して6日間培養後、細胞培養液を6,000rpm、20分間遠心分離した後、上澄液を取って0.22μmフィルターで濾過した。濾過した上澄液は4゜Cで16時間Ni-NTAレジン(Qiagen)1mlに結合誘導した。結合されたレジンは、レジンの10CV(column volume)の10mMイミダゾール(Sigma)が含まれたPBS溶液で洗浄後、10CVの20mMイミダゾール含有PBS溶液でさらに洗浄した。最後に、250mMイミダゾール含有PBS溶液で溶出液を回収した(図17)。ELISAによって野生型PD-1と対照群、2つの変異体(GPD1-CKJ49:CKJ49の糖化形態、GPD1-CKJ50:CKJ50の糖化形態)間のPD-L1結合力変化を検証した。高結合96ウェルプレート(Costar)にそれぞれのタンパク質を0.05M NaCO、pH9.6(Junsei)に希釈して200ng/wellの濃度で4℃で16時間結合した。タンパク質除去後、5%スキムミルクが含まれたPBST(0.5% Tween-20が含まれたPBS)溶液にw/v5%となるように入れた後、それぞれの96ウェルプレートを1時間常温でブロッキングした。この溶液を捨てた後、200μlのtween20 0.5%含まれたPBS溶液で4回洗浄した後、PD-L1テトラマーをPBS溶液に希釈し、それぞれの96ウェルプレートに1時間常温で結合させた。その後、200μlのPBST 0.5%溶液で4回洗浄した後、anti-streptavidin-HRP(Genetex)をPBSに1:2,000の比率で希釈し、それぞれの96ウェルプレートに1時間常温で結合した。この溶液を捨てた後、200μlのPBST 0.5%溶液で4回洗浄した後、50μl TMB(Thermo Scientific)で反応を進行し、20分後4N HSOで反応を終結させた。反応の結果、糖化されることによってPD-L1に対する結合力に変化が発生したが、CKJ49が最も優れた結合力を有することが確認された(図18)。
【0095】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は好ましい具現例に過ぎず、これに本発明の範囲が制限されない点は明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は添付の請求項とその等価物によって定義されるといえよう。
【0096】
[この発明を支援した国家研究開発事業]
[課題固有番号]1711053534
[部処名]科学技術情報通信部
[研究管理専門機関]韓国研究財団
[研究事業名]新進研究支援事業
[研究課題名]抗原結合無糖化Fc変異体を用いたタンパク質治療剤及び二重抗体開発
[寄与率]1/2
[主管機関]国民大学校産学協力団
[研究期間]2017.06.01~2018.03.31
[この発明を支援した国家研究開発事業]
[課題固有番号]1711058394
[部処名]科学技術情報通信部
[研究管理専門機関]韓国研究財団
[研究事業名]新薬開発パイプライン管理事業
[研究課題名]血中持続型FcベースのエンドセリンGPCR標的次世代抗癌抗体発掘
[寄与率]1/2
[主管機関]国民大学校産学協力団
[研究期間]2017.06.30~2018.03.29
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
0007033811000001.app