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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】くさび緊結式足場における緊結装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 7/32 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
E04G7/32 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021197975
(22)【出願日】2021-12-06
【審査請求日】2021-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357468
【氏名又は名称】株式会社エムティオー近畿
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 隆司
(72)【発明者】
【氏名】芥川 真大
【審査官】津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特許第6311063(JP,B1)
【文献】特許第6271073(JP,B1)
【文献】特開2021-038609(JP,A)
【文献】特開2020-060026(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0028164(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/32
E04G 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱の外側面に固着されたソケット金具と、布材の端部に垂下状に固着されたくさび付きインサート金具とを備えている、くさび緊結式足場における緊結装置であって、
ソケット金具は、平面より見てコ字形のものであって、その中央壁が前下がり傾斜状となされており、
インサート金具は、上下方向にのびかつ支柱の外側面に沿いうる横断面形状を有する垂直壁と、垂直壁の左右側縁から後方に張り出した左右側壁と、垂直壁の下端縁から後方に張り出した底壁とを有するものであって、左右側壁の後端縁の上部が布材の端部に接合されているとともに、インサート金具の下部が、ソケット金具に上方から差し込まれる差し込み部となされて、差し込み部の先端側部分がソケット金具の下方に突出させられるようになっており、
くさびは、所定の側面形状を有する縦長板状体よりなるものであって、その長さの一部がインサート金具の内部に所定範囲で上下方向に移動可能に収容されているとともに、その後面の下部に、ソケット金具の中央壁内面に圧接しうる第1圧接部を有し、その前面の下端部に、インサート金具の底壁の後端縁に圧接しうる第2圧接部を有しており、
非緊結時のくさびは、その上部がインサート金具の上方に突出させられて、残りの部分がインサート金具内に収容されることにより、第1圧接部がソケット金具の中央壁内面に対して非圧接状態となされるとともに、第2圧接部がインサート金具の底壁の後端縁に対して非圧接状態となされる一方、
緊結時のくさびは、前記非緊結時の状態から下方に打ち込まれて、その下端部がインサート金具の下方に突出させられることにより、第1圧接部がソケット金具の中央壁内面に圧接させられるとともに、第2圧接部がインサート金具の底壁の後端縁に圧接させられており、
また、くさびは、その前面の下端部における第2圧接部の下方部分に、緊結状態のくさびが意図しない外力の作用でインサート金具に対して上方にずれた際にインサート金具の底壁の後端縁を収容してくさびの緊結状態を解除しうる逃がし溝を有しており、緊結状態が解除されたくさびの下端部がソケット金具の中央壁下端縁に当接することにより、くさび付きインサート金具がソケット金具から抜けるのが阻止されるようになっている、くさび緊結式足場における緊結装置。
【請求項2】
くさびの後面の長さ中間部に、インサート金具の底壁の後端縁が逃がし溝に収容された際に、布材の端部に下方から係り合せられて、くさびがインサート金具に対して上方に移動するのを阻止しうる係合部が設けられている、請求項1のくさび緊結式足場における緊結装置。
【請求項3】
さらに、インサート金具における垂直壁後面の上部に設けられて、くさびの上部を後方に向かって付勢することにより、くさびの非緊結状態を保持する付勢部材を備えており、
付勢部材は、圧縮コイルばねで構成されていて、その前端部が垂直壁後面の上部に形成された取付孔に嵌め込まれており、
垂直壁の後面における取付孔の上方部分に、くさびがインサート金具に対して上方に移動させられた際に圧縮コイルばねと当接して圧縮コイルばねの前端部が取付孔から外れるのを阻止しうる後方凸部が設けられている、請求項1または2のくさび緊結式足場における緊結装置。
【請求項4】
くさびの前面の上部に、圧縮コイルばねの後端部を受ける1つまたは左右並列状の複数の垂直凸条部が設けられている、請求項3のくさび緊結式足場における緊結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、くさび緊結式足場における緊結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
くさび緊結式足場における緊結装置として、本発明者は、下記特許文献1,2記載の緊結装置を先に提案した。
これらの緊結装置は、支柱の外側面に固着された平面より見てコ字形のソケット金具と、布材の端部に垂下状に固着されたくさび付きインサート金具と、インサート金具における垂直壁内面の上部に設けられて、くさびの上部を後方に向かって付勢する付勢部材(圧縮コイルばね)とを備えている。
インサート金具は、上下方向にのびる垂直壁と、垂直壁の左右側縁から後方に張り出した左右側壁と、垂直壁の下端縁から後方に張り出した底壁とを有するものであって、左右側壁の後端縁の上部が布材の端部に接合されている。インサート金具の下部は、ソケット金具に上方から差し込まれて、先端部分がソケット金具の下方に突出させられた状態で、ソケット金具に保持される。くさびは、側面より見て前方凸状に屈曲した略く字形の縦長板状体よりなり、その後面の下部に、ソケット金具の中央壁内面に沿いうる前下がり傾斜状の圧接面が設けられている。
非緊結時のくさびは、その上部以外の部分がインサート金具の内部に収容されて、その下端部がインサート金具の底壁上面に当接または近接させられているととともに、その圧接面がソケット金具の中央壁内面から離間させられている。一方、緊結時のくさびは、前記非緊結時の状態から下方に打ち込まれることにより、その圧接面がソケット金具の中央壁内面に圧接させられるとともに、その下端部がインサート金具の下方に突出させられて同前面の下端部がインサート金具の底壁の後端縁に圧接させられるようになっている。
また、特許文献1の緊結装置では、付勢部材の付勢力によって、くさび後面の上部が布材の端面に押し付けられることにより、くさびの非緊結状態が保持されるようになっている。特許文献2の緊結装置では、付勢部材の付勢力によって、くさび後面の長さ中間部に設けられた後方突出部の頂部分が布材の端面の下部に押し付けられるとともに、くさび前面のうち長さ中間部に設けられた屈曲凸部よりも下方部分がインサート金具の垂直壁内面に押し付けられることにより、くさびの非緊結状態が保持されるようになっている。
従って、これらの緊結装置によれば、布材の端部を支柱に緊結して取り付ける際や、緊結を解除して取り外す際に、くさびがソケット金具の中央壁内面と接触するのが確実に回避され、スムーズに緊結および緊結解除の作業を行うことができる。また、これらの緊結装置によれば、非緊結状態におけるインサート金具の上端からのくさびの突出長さが一定になるため、複数本の布材を結束して梱包する作業が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6271073号公報
【文献】特許第6311063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建築・改修工事現場等に仮設された足場には様々な外力(特に振動)が作用しており、この外力が緊結装置に伝わると、緊結状態のくさびがインサート金具に対して上方にずれることがある。
上記特許文献1,2の緊結装置にあっては、緊結状態のくさびが多少上方にずれたとしても、その下端部がソケット金具の中央壁下端縁に当接することで、くさび付きインサート金具がソケット金具から外れるのを回避できるように構成されている。
ここで、振動等の外力により上方にずれたくさびは、通常、その緊結状態が解除されるようになっているが、支柱のソケット金具の寸法はメーカー等によって多少のバラツキがある上、くさび付きインサート金具にも個体差により若干の寸法のバラツキがあるため、緊結状態が維持される可能性がある。その場合、くさびへの振動等の外力の伝達がそのまま継続して、くさびが更に上方にずれることにより、くさびの下端部がインサート金具内に完全に収容され、くさび付きインサート金具がソケット金具から不用意に外れてしまう可能性が生じる。
【0005】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、足場に発生する意図しない外力によって緊結状態のくさびが上方にずれた場合でも、くさび付きインサート金具が支柱のソケット金具から不用意に外れるのをより確実に回避できる、くさび緊結式足場における緊結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の(1)~(4)の態様からなる。
なお、この発明を特定するに当たり、支柱と布材との位置関係において、「前」とは支柱のある側(図1,4,5,7,8の各左側)をいい、「後」とは布材のある側(図1,4,5,7,8の各右側)をいうものとする。また、「布材」には、床付き布枠の一部を構成する布材が含まれるものとする。
【0007】
1)支柱の外側面に固着されたソケット金具と、布材の端部に垂下状に固着されたくさび付きインサート金具とを備えている、くさび緊結式足場における緊結装置であって、
ソケット金具は、平面より見てコ字形のものであって、その中央壁が前下がり傾斜状となされており、
インサート金具は、上下方向にのびかつ支柱の外側面に沿いうる横断面形状を有する垂直壁と、垂直壁の左右側縁から後方に張り出した左右側壁と、垂直壁の下端縁から後方に張り出した底壁とを有するものであって、左右側壁の後端縁の上部が布材の端部に接合されているとともに、インサート金具の下部が、ソケット金具に上方から差し込まれる差し込み部となされて、差し込み部の先端側部分がソケット金具の下方に突出させられるようになっており、
くさびは、所定の側面形状を有する縦長板状体よりなるものであって、その長さの一部がインサート金具の内部に所定範囲で上下方向に移動可能に収容されているとともに、その後面の下部に、ソケット金具の中央壁内面に圧接しうる第1圧接部を有し、その前面の下端部に、インサート金具の底壁の後端縁に圧接しうる第2圧接部を有しており、
非緊結時のくさびは、その上部がインサート金具の上方に突出させられて、残りの部分がインサート金具内に収容されることにより、第1圧接部がソケット金具の中央壁内面に対して非圧接状態となされるとともに、第2圧接部がインサート金具の底壁の後端縁に対して非圧接状態となされる一方、
緊結時のくさびは、前記非緊結時の状態から下方に打ち込まれて、その下端部がインサート金具の下方に突出させられることにより、第1圧接部がソケット金具の中央壁内面に圧接させられるとともに、第2圧接部がインサート金具の底壁の後端縁に圧接させられており、
また、くさびは、その前面の下端部における第2圧接部の下方部分に、緊結状態のくさびが意図しない外力の作用でインサート金具に対して上方にずれた際にインサート金具の底壁の後端縁を収容してくさびの緊結状態を解除しうる逃がし溝を有しており、緊結状態が解除されたくさびの下端部がソケット金具の中央壁下端縁に当接することにより、くさび付きインサート金具がソケット金具から抜けるのが阻止されるようになっている、くさび緊結式足場における緊結装置。
【0008】
2)くさびの後面の長さ中間部に、インサート金具の底壁の後端縁が逃がし溝に収容された際に、布材の端部に下方から係り合せられて、くさびがインサート金具に対して上方に移動するのを阻止しうる係合部が設けられている、上記1)のくさび緊結式足場における緊結装置。
【0009】
3)さらに、インサート金具における垂直壁後面の上部に設けられて、くさびの上部を後方に向かって付勢することにより、くさびの非緊結状態を保持する付勢部材を備えており、
付勢部材は、圧縮コイルばねで構成されていて、その前端部が垂直壁後面の上部に形成された取付孔に嵌め込まれており、
垂直壁の後面における取付孔の上方部分に、くさびがインサート金具に対して上方に移動させられた際に圧縮コイルばねと当接して圧縮コイルばねの前端部が取付孔から外れるのを阻止しうる後方凸部が設けられている、上記1)または2)のくさび緊結式足場における緊結装置。
【0010】
4)くさびの前面の上部に、圧縮コイルばねの後端部を受ける1つまたは左右並列状の複数の垂直凸条部が設けられている、上記3)のくさび緊結式足場における緊結装置。
【発明の効果】
【0011】
上記1)のくさび緊結式足場における緊結装置にあっては、緊結状態のくさびが意図しない外力の作用によりインサート金具に対して上方にずれた際、くさび前面の下端部に設けられた逃がし溝にインサート金具の底壁の後端縁が収容されることにより、支柱のソケット金具やくさび付きインサート金具の寸法に多少のバラツキがあったとしても、くさびの緊結状態が解除される。この状態から、くさびに対して引き続き外力が作用したとしても、くさびの緊結状態は解除されているので、くさびが更に上方にずれることがない。
そして、緊結状態が解除されたくさびの下端部が、ソケット金具の中央壁下端縁に当接することにより、くさび付きインサート金具がソケット金具から抜けるのが阻止されるようになっている。
従って、上記1)の緊結装置によれば、特許文献1,2記載の緊結装置と比べて、くさび付きインサート金具が支柱のソケット金具から不用意に外れるのをより確実に回避できる。
【0012】
上記2)の緊結装置によれば、インサート金具の底壁の後端縁が逃がし溝に収容された際に、くさび後面の長さ中間部に設けられた係合部が、布材の端部に下方から係り合わせられて、くさびがインサート金具に対して上方に移動するのを阻止しうるようになっているので、くさび付きインサート金具が支柱のソケット金具から不用意に外れるのを更に確実に回避できる。
【0013】
上記3)の緊結装置によれば、くさびがインサート金具に対して上方に移動させられた際に、インサート金具における垂直壁後面の上部に設けられた後方凸部が、付勢部材を構成する圧縮コイルばねと当接することにより、圧縮コイルばねの前端部が取付孔から外れるのが阻止されるようになっているので、圧縮コイルばねが所要位置に確実に保持され、動作に支障を来すおそれがない。
【0014】
上記4)の緊結装置によれば、くさび前面の上部に設けられた垂直凸条部によって、圧縮コイルばねの後端部が受けられるようになっており、従って、両者の接触面積が減少して摩擦抵抗が軽減されるので、くさびの上下移動がよりスムーズに行われ、また、くさびの移動に伴い圧縮コイルばねにズレが生じるのが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明によるくさび緊結式足場における緊結装置の実施形態を示すものであって、支柱側のソケット金具と、布材側のくさび付きインサート金具とを分離した状態の垂直断面図である。
図2】同インサート金具を示すものであって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
図3】同くさびを示すものであって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は(a)のd-d線に沿う端面図、(e)は(a)のe-e線に沿う端面図である。
図4】ソケット金具にくさび付きインサート金具が差し込まれ、くさびが打ち込まれる前の非緊結状態を示す垂直断面図である。
図5】同平面図である。
図6図4のVI-VI線に沿う断面図である。
図7】くさびが打ち込まれた緊結状態を示す垂直断面図である。
図8】(a)は、緊結状態のくさびに意図しない上向きの外力が作用して、くさびが上方にずれた時の状態を示す垂直断面図であり、(b)は(a)の状態から更に布材およびくさび付きインサート金具を上方に移動させた時の状態を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施形態を、図1図8を参照して以下に説明する。
これらの図に示す通り、この実施形態のくさび緊結式足場における緊結装置は、金属パイプ製支柱(1)の外側面(11)に固着されたソケット金具(2)と、金属パイプ製布材(3)の端部(31)に垂下状に固着されたくさび(5)付きインサート金具(4)とを備えてなる。
【0017】
ソケット金具(2)は、平面より見てコ字形のものであって、中央壁(21)と、中央壁(21)の左右側縁から前方にのびかつ前端縁が支柱(1)の外側面(11)に固着されている垂直な左右側壁(22)とよりなる。中央壁(21)は、前下がり傾斜状となされている。
【0018】
図2に詳しく示すように、インサート金具(4)は、上下方向にのびる垂直壁(41)と、垂直壁(41)の左右側縁から後方に張り出した左右側壁(42)と、垂直壁(41)の下端縁から後方に張り出した底壁(43)とを有している。
垂直壁(41)は、その水平横断面形状が支柱(1)の外側面(11)に沿いうる後方凸弧状となされている。垂直壁(41)の下端部は、正面より見て下方凸状の略半円形となされている。また、垂直壁(41)は、その下部が上部よりもやや幅狭となるように、左右側縁の高さ中間部がテーパ状となされている。
左右側壁(42)の後端縁の高さ中央部には、下向き段差(421)が形成されている。左右側壁(42)の後端縁における下向き段差(421)の上方部分には、縦長の切欠部(422)が形成されており、同切欠部(422)に布材(3)の端部(31)の左右両側部分が溶接されている。また、左右側壁(42)の後端縁における下向き段差(421)よりも下方部分(423)は前下がり傾斜状となされている。これにより、左右側壁(42)の下部が先細り状となされている。なお、図示は省略したが、インサート金具の左右側壁の上部を、布材(3)の端部(31)に嵌め被せられるように左右方向外方に膨らんだ凸弧状のものとして、布材(3)の端部(31)の外周面に溶接する構成としても構わない。
底壁(43)は、垂直壁(41)の下端部の輪郭形状に合致した正面より見て略半円弧形のリブ状となされており、左右側壁(42)との間には斜め後ろ向きの段差(44)が形成されている。
図4図8に示すように、このインサート金具(4)は、ソケット金具(2)に上方から差し込まれて、その左右側壁(42)の下向き段差(421)がソケット金具(2)の中央壁(21)上端縁に受けられることにより、ソケット金具(2)に保持されるようになっている。つまり、インサート金具(4)における下向き段差(421)よりも下方部分が、ソケット金具(2)に差し込まれる差し込み部(4a)となされている。また、差し込み部(4a)の先端側部分、つまり、インサート金具(4)の下端部は、ソケット金具(2)の下方に突出させられている。インサート金具(4)の差し込み部(4a)がソケット金具(2)に差し込まれた状態において、インサート金具(4)の左右側壁(42)の後端縁における下向き段差(421)よりも下方部分(423)と、ソケット金具(2)の中央壁(21)内面との間には、隙間が生じている(図4等参照)。
【0019】
くさび(5)は所定の側面形状を有する縦長板状体よりなる。より詳細に言うと、この実施形態のくさび(5)は、図3等に示すように、全体として前方凸状に屈曲した略く字形の側面形状を有する縦長板状体よりなる。この縦長板状体としては、好適には鋼材等の鍛造品が用いられる。
くさび(5)は、その長さの一部が、インサート金具(4)の内部に、所定範囲で上下方向に移動(摺動)可能に収容されている。また、くさび(5)は、その後面の下部に、ソケット金具(2)の中央壁(21)内面に圧接しうる第1圧接部(50a)を有しているとともに、その前面の下端部に、インサート金具(4)の底壁(43)の後端縁(431)に圧接しうる第2圧接部(50b)を有している。
非緊結時のくさび(5)は、その上部がインサート金具(4)の上方に突出させられて、残りの部分がインサート金具(4)内に収容されることにより、第1圧接部(50a)がソケット金具(2)の中央壁(21)内面に対して非圧接状態となされるとともに、第2圧接部(50b)がインサート金具(4)の底壁(43)の後端縁(431)に対して非圧接状態となされる(図4等参照)。
一方、緊結時のくさび(5)は、前記非緊結時の状態から下方に打ち込まれて、その下端部(53)がインサート金具(4)の下方に突出させられることにより、第1圧接部(50a)がソケット金具(2)の中央壁(21)内面に圧接させられるとともに、第2圧接部(50b)がインサート金具(4)の底壁(43)の後端縁(431)に圧接させられている(図7参照)。
くさび(5)の上端部には、その下側部分よりも前後方向の厚みが大きくなされた頭部(51)が設けられている。頭部(51)は、好ましくは、後方に膨出させられたものとなされている(図1,3等参照)。この頭部(51)は、くさび(5)をハンマー等で下方に打ち込む際の打撃部としての機能を有するとともに(図4参照)、くさび(5)が振動等によって下方にずれた場合に、布材(3)の端部の上側部分に当接することによって、くさび(5)がインサート金具(4)から抜け落ちるのを防止する機能を有するものである。
くさび(5)後面の長さ中間部には、横断面略山形の上側後方突出部(521)が形成されている。そして、この上側後方突出部(521)の上面側部分により、後述する係合部(50d)が構成されている。なお、図示の上側後方突出部(521)は、頂部が尖った山形(三角形)の横断面を有するものとなされているが、頂部が丸みを帯びた山形や全体がなだらかな山形(ドーム形)の横断面を有するものであってもよい。
くさび(5)の下端部(53)は、その上方部分の傾斜角度よりもやや大きな角度で後方に傾斜させられている。これに伴い、くさび(5)前面の下端寄り位置に、緩やかな下側角部(541)が形成されている。くさび(5)の下端部(53)の先端側部分は、インサート金具(4)の底壁(43)上面に沿いうるように、正面より見て下方凸状の略半円形となされている。前述した第2圧接部(50b)は、くさび(5)前面の下端部における下側角部(541)の下方部分によって構成されている。
くさび(5)の後面下部には、上側後方突出部(521)と下端部(53)との間の部分に、横断面略三角形の下側後方突出部(522)が形成されている。下側後方突出部(522)の下側面は、ソケット金具(2)の中央壁(21)内面に沿いうる縦長の前下がり傾斜面となされており、同傾斜面が第1圧接部(50a)を構成している。なお、第1圧接部は、くさび(5)の後面下部に形成した横断面略山形の下側後方突出部の頂部等によって構成することもできるが、圧接面積を大きくして緊結強度を高めるためには、図示のような前下がり傾斜面によって構成されているのが好ましい。
また、くさび(5)の後面における上側後方突出部(521)と下側後方突出部(522)との間の部分には、低い階段状凸部(523)が形成されている。
くさび(5)の後面上部には、頭部(51)と上側後方突出部(521)との間の部分に、左右両側面に開口した溝状の切欠部(524)が形成されている。この切欠部(524)により、くさび(5)がインサート金具(4)内を所定範囲で上下移動させられる際、布材(3)の端部(31)上側部分との干渉が回避されて移動がスムーズに行われる。なお、切欠部の横断面形状は、図示のものに限られず、適宜変更可能である。また、くさびに上記のような切欠部を設けなくてよい場合もある。
くさび(5)の前面には、下側角部(541)から中間屈曲凸部(542)にかけての部分に、インサート金具(4)の垂直壁(41)後面に沿いうる凹弧面部(543)が形成されている。
また、くさび(5)前面の上部、より詳細には、中間屈曲凸部(542)と頭部(51)との間の部分に、垂直凸条部(50e)が設けられている。図示のくさび(5)の場合、2つの垂直凸条部(50e)が左右並列状に設けられている。これらの垂直凸条部(50e)によって、後述する圧縮コイルばね(6)(付勢部材)の後端部(62)が受けられるようになっている。なお、垂直凸条部(50e)は、1つまたは3つ以上設けられていてもよいが、圧縮コイルばね(6)(付勢部材)の後端部(62)との接触面積を極力低減するとともに同後端部(62)を安定して受けられるようにするためには、図示のように2つ設けられているのが好ましい。
【0020】
図4図6は、支柱(1)のソケット金具(2)にくさび(5)付きインサート金具(4)が差し込まれ、くさび(5)が打ち込まれる前の非緊結状態を示すものである。
これらの図に示すように、非緊結時のくさび(5)は、その上部がインサート金具(4)の上方に突出させられて、残りの部分がインサート金具(4)内に収容されることにより、第1圧接部(50a)がソケット金具(2)の中央壁(21)内面に対して離間した非緊結状態となされ、第2圧接部(50b)がインサート金具(4)の底壁(43)の後端縁(431)に対して離間した非圧接状態となされている。
【0021】
図7は、くさび(5)が打ち込まれた緊結状態を示すものである。
緊結時のくさび(5)は、前記非緊結状態から下方に打ち込まれる、すなわち、その頭部(51)がハンマー等で上から叩かれることにより、くさび(5)に対して図4に矢印(A)で示す下向きの大きな外力が加えられると、図7に示すように、その第1圧接部(50a)がソケット金具(2)の中央壁(21)内面に圧接させられるとともに、くさび(5)の下端部(53)がインサート金具(4)の下方に突出させられて、第2圧接部(50b)がインサート金具(4)の底壁(43)の後端縁(431)に圧接させられる。つまり、緊結状態では、くさび(5)がソケット金具(2)およびインサート金具(4)に対して圧接させられ、それによって両金具(2)(4)どうしの緊結、ひいては支柱(1)と布材(3)との緊結が強固に行われるようになっている。なお、図示は省略したが、くさび(5)の緊結状態において、第1圧接部(50a)および第2圧接部(50b)以外の所定箇所、例えば、くさび(5)前面の中間屈曲凸部(542)をインサート金具(4)の垂直壁(41)内面に圧接させる態様とすることも可能である。
【0022】
くさび(5)による緊結を解除する場合、くさび(5)の下端部(53)をハンマー等で下から叩くことにより、くさび(5)に対して図7に矢印(B)で示す上向きの大きな外力を作用させると、くさび(5)は、その下端部(53)がインサート金具(4)内に収まるように上方に移動して、図4図6に示す非緊結状態となる。これにより、くさび(5)付きインサート金具(4)をソケット金具(2)から簡単に引き抜くことができる。
【0023】
この実施形態の緊結装置は、さらに、インサート金具(4)における垂直壁(41)後面の上部に設けられて、くさび(5)の上部を後方に向かって付勢することにより、くさび(5)の非緊結状態を保持する付勢部材(6)を備えている。付勢部材は、圧縮コイルばね(6)により構成されている。
圧縮コイルばね(6)は、図示のように、後端に向かうにつれて次第にコイル径が大きくなる円錐状の圧縮コイルばねであるのが好ましい。このような円錐状の圧縮コイルばね(6)を使用すれば、そのばね弾性力が、くさび(5)の上部に伝わりやすく、後述する作用効果がより確実に得られるようになる。
圧縮コイルばね(6)は、その小径側の前端部(61)がインサート金具(4)の垂直壁(41)上部に設けられた取付孔(411)に嵌め入れられることにより、垂直壁(41)に後方突出状に取り付けられている。取付孔(411)は、図示のような貫通孔とする他、後方に開口した有底孔とすることも可能である。
圧縮コイルばね(6)の大径側の後端部(62)は、くさび(5)の前面に押し付けられているが、打込時や引抜時のくさび(5)の上下方向の移動を妨げるものではない。特に、この実施形態では、くさび(5)の前面上部に設けられた垂直凸条部(50e)が、圧縮コイルばね(6)の後端部(62)と小さい面積で接触させられるようになっているので、摩擦抵抗の低減によりくさび(5)の上下移動がスムーズに行われ、また、くさび(5)の移動に伴って圧縮コイルばね(6)の前端部(61)が取付孔(411)から外れ難くなっている。
さらに、この実施形態では、インサート金具(4)の垂直壁(41)後面の上部における取付孔(411)の上方部分に、後方凸部(412)が設けられている。緊結状態を解除するために、くさび(5)がインサート金具(4)に対して上方に移動させられた際、この後方凸部(412)が、圧縮コイルばね(6)と当接することにより、圧縮コイルばね(6)の前端部(61)が取付孔(411)から外れるのがより確実に阻止されるようになっている。後方凸部(412)は、例えば、インサート金具(4)の垂直壁(41)上部に段差加工を施すことによって形成することができる。
なお、くさび(5)を後方に向かって付勢する付勢部材としては、圧縮コイルばね(6)の他、例えば板ばね等を使用することも可能である。
【0024】
非緊結時には、圧縮コイルばね(6)のばね弾性力によって、くさび(5)後面の所定部分、具体的には、くさび(5)後面の長さ中間の階段状凸部(523)が、布材(3)の端部(31)の下側部分に押し付けられるとともに、その反作用で、くさび(5)前面の凹弧面部(543)が、インサート金具(4)の垂直壁(41)後面に押し付けられる。これにより、くさび(5)の非緊結状態が確実に保持されるようになっている(図1および図4参照)。なお、くさび(5)後面の長さ中間において、非緊結時に布材(3)の端部(31)の下側部分に押し付けられる部分の形状は、図示のような階段状凸部(523)には限定されず、適宜変更可能である。
上記態様によれば、布材(3)の端部(31)を支柱(1)に緊結して取り付ける際や、緊結を解除して取り外す際に、くさび(5)がソケット金具(2)の中央壁(21)内面と接触するのが確実に回避され、スムーズに緊結および緊結解除の作業を行うことができる。また、上記態様によれば、非緊結状態におけるインサート金具(4)上端からのくさび(5)の突出長さが一定になるため、複数本の布材(3)を結束して梱包する作業が容易となる(図1参照)。
また、図1および図4に示すように、非緊結状態においては、くさび(5)後面の上部に形成された切欠部(524)内に、布材(3)の端部(31)の上側部分が非接触状に配置されている。つまり、くさび(5)の後面は、階段状凸部(523)のみが、圧縮コイルばね(6)のばね弾性力によって、布材(3)の端部(31)の下側部分に押し付けられている。
圧縮コイルばね(6)は、その中心軸線とくさび(5)後面の階段状凸部(523)との距離ができるだけ大きくなるように、インサート金具(4)の垂直壁(41)の上端部に取り付けられているのが好ましい。上記態様によれば、圧縮コイルばね(6)のばね弾性力をくさび(5)の上部に大きな力で作用させることができる。従って、くさび(5)は、圧縮コイルばね(6)のばね弾性力により、階段状凸部(523)を支点として、上部側が後方に倒れるように傾動させられ、その結果、くさび(5)の下端部(53)がインサート金具(4)の内部に引き込まれやすくなる。また、くさび(5)前面の凹弧面部(543)が、インサート金具(4)の垂直壁(41)内面に強く押し付けられるので、両者の間に比較的大きな摩擦力が生じ、緊結時や緊結解除時の振動等によって、くさび(5)がインサート金具(4)に対して上下方向にずれ難くなり、くさび(5)の非緊結状態がより確実に保持される。
【0025】
図8は、緊結状態のくさび(5)に対して意図しない振動等の外力が作用することにより、くさび(5)が上方にずれた時の状態を示すものである。
この発明の実施形態による緊結装置にあっては、くさび(5)前面の下端部における第2圧接部(50b)の下方部分に、逃がし溝(50c)が形成されている。図8(a)に示すように、逃がし溝(50c)は、緊結状態のくさび(5)が意図しない振動等の外力の作用でインサート金具(4)に対して上方にずれた際に、インサート金具(4)の底壁(43)の後端縁(431)を収容して、くさび(5)の緊結状態を解除しうるように構成されている。この状態から、くさび(5)に対して引き続き振動等の外力が作用したとしても、くさび(5)の緊結状態は解除されているので、くさび(5)が更に上方にずれることがない。
図示の逃がし溝(50c)は、底壁(43)の後端縁(431)の輪郭形状に合わせて、正面より見て下方凸弧状のものとなされている。逃がし溝(50c)の形状、寸法および配置は、支柱(1)のソケット金具(2)やくさび(5)付きインサート金具(4)に個体差等に起因して寸法のバラツキが生じることを考慮して、くさび(5)の緊結状態を確実に解除しうるように設定されているのが好ましい。
また、この実施形態に係る緊結装置の場合、インサート金具(4)の底壁(43)の後端縁(431)が逃がし溝(50c)に収容された際に、くさび(5)後面の長さ中間部に設けられた係合部(50d)(上側後方突出部(521)の上面側部分)が、布材(3)の端部(31)の下側部分に下方から係り合せられるようになっている。これにより、くさび(5)がインサート金具(4)に対して上方に移動するのが、より確実に阻止される。特に、この実施形態の場合、圧縮コイルばね(6)のばね弾性力がくさび(5)の上部に作用することで、係合部(50d)が布材(3)の端部(31)に確実に係り合わせられる。
さらに、この実施形態の緊結装置は、図7に示すように、くさび(5)の緊結状態において、ソケット金具(2)の下端の前後開口幅(W)に対して、インサート金具(4)の垂直壁(41)内面からのくさび(5)の下端部(53)の水平方向突出長さ(L)の方が大きくなるように構成されている。
従って、図8(a)に示す状態の緊結装置において、例えば、薄鋼板製の床付き布枠を使用してこれに下方から風圧が加わった場合や、クレーンで足場を引っ張り上げる場合のように、布材(3)に対して比較的大きな引抜力が作用しとしても、くさび(5)の下端部(53)がソケット金具(2)の中央壁(21)下端縁に当接させられるので(図8(b)参照)、それによって、くさび(5)付きインサート金具(4)がソケット金具(2)から抜けるのが阻止され、ひいては、布材(3)の端部(31)が支柱(1)から外れるのが確実に防止される。
以上の通り、この実施形態の緊結装置によれば、くさび(5)付きインサート金具(4)が支柱(1)のソケット金具(2)から不用意に外れるのをより確実に回避することができ、きわめて優れた安全性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、くさび緊結式足場において、支柱と布材とを緊結するための緊結装置として好適に用いられるものである。
【符号の説明】
【0027】
(1):支柱
(11):支柱の外側面
(2):ソケット金具
(21):中央壁
(3):布材
(31):布材の端部
(4):インサート金具
(4a):差し込み部
(41):垂直壁
(411):取付孔
(412):後方凸部
(42):左右側壁
(43):底壁
(431):底壁の後端縁
(5):くさび
(50a):第1圧接部
(50b):第2圧接部
(50c):逃がし溝
(50d):係合部
(50e):垂直凸条部
(53):くさびの下端部
(6):圧縮コイルばね(付勢部材)
(61):圧縮コイルばねの前端部
(62):圧縮コイルばねの後端部
【要約】
【課題】緊結状態において振動等の意図しない外力によりくさびがインサート金具に対して上方にずれた場合でも、くさび付きインサート金具が支柱のソケット金具から不用意に抜けるおそれがなく、安全性に優れた、くさび緊結式足場における緊結装置を提供する。
【解決手段】緊結装置は、支柱1の外側面11に固着されたソケット金具2と、布材3の端部31に垂下状に固着されたくさび5付きインサート金具4とを備えている。くさび5は、その前面の下端部における第2圧接部57の下方部分に、緊結状態のくさび5が意図しない外力の作用でインサート金具4に対して上方にずれた際にインサート金具4の底壁43の後端縁431を収容してくさび5の緊結状態を解除しうる逃がし溝50cを有している。緊結状態が解除されたくさび5の下端部53が、ソケット金具2の中央壁21下端縁に当接することにより、くさび5付きインサート金具4がソケット金具2から抜けるのが阻止される。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8