(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】免疫グロブリンG調製物の皮内投与
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220304BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220304BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220304BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A61K39/395 Y ZMD
A61K9/08
A61K47/42
A61P37/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017003151
(22)【出願日】2017-01-12
【審査請求日】2020-01-08
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515116009
【氏名又は名称】グリフォルス・ワールドワイド・オペレーションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GRIFOLS WORLDWIDE OPERATIONS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Grange Castle Business Park,Grange Castle,Clondalkin,Dublin 22,IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクラム・アロラ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・クリスティアン・クラムライン
(72)【発明者】
【氏名】クリスチーネ・バリストランド
(72)【発明者】
【氏名】ホンビン・リ
(72)【発明者】
【氏名】トッド・ダブリュ・ウィリス
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/086773(WO,A1)
【文献】特表2014-514345(JP,A)
【文献】国際公開第2014/143909(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要としている対象における免疫不全症の処置に使用するための、IgGを含む組成物であって、針を含む除去可能な皮内(ID)送達装置を使用してID経路により投与され、前記組成物のpHが4.5から8.0までであ
り、及び、前記組成物が15%~30%(w/v)のIgG濃度を有する、組成物。
【請求項2】
前記組成物のpHが6.5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物の体積が、皮膚送達部位あたり最高10mLまでである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の体積が、皮膚送達部位あたり2mLから8mLの間である、請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の体積が、皮膚送達部位あたり4mLから6mLの間である、請求項
3に記載の組成物。
【請求項6】
1つ又は複数の追加の血漿タンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記対象が小児患者である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記対象が非小児患者である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
それを必要としている対象における疾患の処置のための、IgGを含む組成物であって、
前記組成物が、針を含む除去可能な皮内(ID)送達装置を使用してID経路により投与され、
前記組成物のpHが4.5から8.0までであ
り、及び、前記組成物におけるIgGの濃度が15%~30%(w/v)である、組成物。
【請求項10】
pHが6.5である、請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
前記対象が小児患者である、請求項
9に記載の組成物。
【請求項12】
前記対象が非小児患者である、請求項
9に記載の組成物。
【請求項13】
前記疾患が免疫不全症である、請求項
9に記載の組成物。
【請求項14】
前記免疫不全症が、原発性免疫不全症、続発性免疫不全症、又は後天性免疫不全症のうちの1つである、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
IgG分子全体、IgGの治療に有効な断片、又はそれらの組合せを含む、請求項
9に記載の組成物。
【請求項16】
1つ又は複数の追加の血漿タンパク質を含む、請求項
9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、IgG調製物を、それを必要としている患者に皮内(ID)経路により投与するための方法、及びIgG調製物を患者にID経路により投与するための組成物に関連している。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリンG(IgG)は、総免疫グロブリンのおよそ80%を占める、ヒト血清において最も大量にある免疫グロブリンアイソタイプである。IgG調製物は、原発性免疫不全症、特に、先天性無ガンマグロブリン血症及び低ガンマグロブリン血症、特発性血小板減少性紫斑病、川崎病の処置及び骨髄移植におけるアジュバントとして、とりわけ小児患者におけるHIV感染処置の一環として、慢性リンパ性白血病に関連した低ガンマグロブリン血症等の様々な疾患の処置に適応される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Burton S.A.ら、Pharmaceutical Research、第28巻、第1号、31~40頁、(2011)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施形態において、IgG調製物を、それを必要としている対象にID経路により投与するための方法であって、大量のIgG調製物を、針を含む皮内(ID)送達装置に添加する工程、装置を皮膚送達部位にあてがう工程、装置を使用して、針を真皮侵入させる工程、大量のIgG調製物を皮膚送達部位において送達する工程、及び送達装置を除去する工程を含む方法が提供される。
【0005】
本方法のいくつかの実施形態において、IgG調製物は、約15%~約30%(w/v)のIgG濃度を有する。本方法のいくつかの実施形態において、IgG調製物は、約30%(w/v)又はそれ以上のIgG濃度を有する。
【0006】
本方法のいくつかの実施形態において、IgG調製物のpHは、約4.5~約8.0である。本方法のいくつかの実施形態において、IgG調製物のpHは、約6.5である。
【0007】
本方法のいくつかの実施形態において、IgG調製物の体積は、皮膚送達部位あたり最高約10mLまでである。本方法のいくつかの実施形態において、IgG調製物の体積は、皮膚送達部位あたり約2mLから約8mLの間である。本方法のいくつかの実施形態において、IgG調製物の体積は、皮膚送達部位あたり約4mLから約6mLの間である。
【0008】
本方法のいくつかの実施形態において、IgG調製物は、1つ又は複数の追加の血漿タンパク質を含む。
【0009】
本方法のいくつかの実施形態において、対象は小児患者である。本方法のいくつかの実施形態において、対象は非小児患者である。
【0010】
いくつかの実施形態において、それを必要としている対象における疾患の処置のためのIgG調製物を含む組成物が提供される。
【0011】
組成物のいくつかの実施形態において、IgG調製物におけるIgGの濃度は、約15%~約30%(w/v)である。組成物のいくつかの実施形態において、IgG調製物におけるIgGの濃度は、約30%(w/v)又はそれ以上である。
【0012】
いくつかの実施形態において、組成物は、約4.5~約8.0のpHを有する。組成物のいくつかの実施形態において、そのpHは約6.5である。
【0013】
組成物のいくつかの実施形態において、対象は小児患者である。組成物のいくつかの実施形態において、対象は非小児患者である。
【0014】
組成物のいくつかの実施形態において、疾患は、免疫不全症である、組成物のいくつかの実施形態において、免疫不全症は、原発性免疫不全症、続発性免疫不全症、又は後天性免疫不全症のうちの1つである。
【0015】
組成物のいくつかの実施形態において、IgG調製物は、IgG分子全体、IgGの治療に有効な断片、又はそれらの組合せを含む。
【0016】
組成物のいくつかの実施形態において、IgG調製物は、1つ又は複数の追加の血漿タンパク質を含む。
【0017】
本開示は、以下の図を参照して下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】IV(n=4)、SC(n=4)、及びID(n=3)経路によりIgG調製物(20mg/kg)を投与された若い家畜用ブタにおける0~24時間目での血漿ヒトIgG薬物動態の線グラフである。
【
図2】IV(n=4)、SC(n=4)、及びID(n=3)経路によりIgG調製物(20mg/kg)を投与された若い家畜用ブタにおける0~240時間目での血漿ヒトIgG薬物動態の線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
現在、多価で、ヒト抗体の広範なスペクトルを持ち、全機能(中和能、オプソニン作用、半減期が保存されている)を有し、完全な分子(結晶性Fc断片の完全性)であり、天然血漿と同一又は等価の、IgGサブクラスの正常な分布を有する免疫グロブリンG(IgG)に対する大きな需要がある。
【0020】
IgG調製物の治療的投与のための通常の経路としては、静脈内(IV)、皮下(SC)、及び筋肉内(IM)が挙げられる。加えて、IgGは、経口、経鼻(吸入)、又は局所的経路等の他の経路によって投与され得る。IV投与は、米国を含む多くの国において、IgG補充のための標準アプローチになっている。
【0021】
しかしながら、IV投与は、例えば、原発性免疫不全症、又は分類不能型免疫不全症(IgG及びIgAサブクラスの欠損)、続発性若しくは後天性免疫不全症(例えば、サイトメガロウイルス、帯状疱疹、又はヒト免疫不全症等のウイルスによる感染)、及び自己免疫起源の疾患(例えば、血小板減少性紫斑病、川崎症候群)の処置のために最も有用な治療的効能を与えるものの、IgG(免疫グロブリンG)等の血漿由来タンパク質治療のIV投与経路による患者への送達は、潮紅、発熱、悪寒、及び下痢等の注入関連の有害作用を伴い得る。IV注入はまた、投与するために訓練を受け、かつ資格を有する人材を必要とする。
【0022】
IgG用の、患者へのIV投与経路に代わる現在の主な経路は、皮下(SC)経路である。しかしながら、SC経路は、ピーク血漿濃度(Tmax)への遅い進行、低い血漿曲線下面積(AUC)、加えて疼痛及び不快感を伴っている。
【0023】
経皮(transdermal)送達又は経皮(percutaneous)透過としても知られる皮内(ID)経路は、多くの薬剤及び/又は生物製剤の投与に有利な非侵襲性送達経路である。またID送達では、患者の不快感、針に対する不安、注射を施す職員への偶発的な針刺し傷害のリスク、及び先の鋭いものの廃棄を取り巻く問題を大いに減らすことにより、皮下注射に関連した難題の多くが克服されている。加えて、ID系は、自己投与を可能にし、1週間までの期間の間において薬剤及び/又は生物製剤の持続放出を提供し、患者の服薬遵守を向上させる。さらに、ID送達系は、一般的に安価である。
【0024】
これらの多くの利点にも関わらず、薬剤のID送達は、皮膚を通しての吸収に適合した分子のクラスに限定される。治療用タンパク質の送達は、伝統的なID送達で一般的に実行可能でではない。これは、皮膚が、吸収促進性賦形剤の存在下でさえも、これらの分子に対して効果的な保護バリアとなってしまうからである。例えば、高分子を送達するためにID経路を利用することは困難であった。
【0025】
加えて、ID送達のための系の開発において大きな進展はあったものの、液体製剤のID送達を提供するたいていの市販の装置は、相対的に小さい体積、典型的には200μL未満に限定されたままである。これは、何グラムというタンパク質が毎日、投与されなければならないIgG治療のための実行可能な代替法としてその皮内系を考慮することを不可能にしている。
【0026】
しかしながら、Burtonら(Burton S.A.ら、Pharmaceutical Research、第28巻、第1号、31~40頁、(2011))は、マイクロニードル送達装置を使用する、5~20分間の57mg/mLの濃度でのポリクローナル抗体を含む様々な製剤の最高1.5mLまでのブタへの皮内送達を開示した。この系で送達されるポリクローナル抗体の量(およそ85mg)は、IgG治療のための選択肢として考慮されるにはまだ非常に低い。IgG治療では、例えば筋炎を有する患者は、典型的には、5日間にわたって0.4~40gm/kgを処方され、それは4~6週間ごとに反復され得るのである。
【0027】
本開示は、一般的には血漿タンパク質、特にIgGをID投与するための方法を提供する。本開示の方法は、上述の問題及び制限を克服する。
【0028】
方法
ID経路は、IgGの自己投与を可能にするための新規な方法を提供することができる。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、IgG調製物をID経路により投与するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、IgG調製物のID経路による自己投与を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、SC経路と比較して、IgGの優れた血漿薬物動態プロフィールを提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、SC経路と比較して、より速いTmaxを有する、IgGの優れた血漿薬物動態プロフィールを提供する。
【0029】
いくつかの実施形態において、本方法は、IgGの便利な毎日の注射等の、より頻回の投与計画により、向上した定常状態のIgG血漿レベルを提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、注入に関連した疼痛及び不快感等の注入関連の有害事象を最小限にする。いくつかの実施形態において、本方法は、患者の投与の容易さ及び服薬遵守を向上させる。
【0030】
いくつかの実施形態において、IgG調製物を皮内経路により投与するための方法は以下を含む:
a)大量のIgG調製物を、針を含むID送達装置に添加する工程、
b)装置を皮膚送達部位にあてがう工程、
c)装置を使用して、針を真皮侵入させる工程、
d)大量のIgG調製物を皮膚送達部位において送達する工程、及び
e)送達装置を除去する工程。
【0031】
いくつかの実施形態において、本開示の投与方法に適した、針を含むID送達装置が提供される。
【0032】
いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、処置が望まれる場所の近位にある。いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、処置が望まれる場所の遠位にある。いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、薬剤を投与するのに都合が良い場所である。いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、薬剤を投与するのに都合が良い場所であり、かつ処置が望まれる場所の近位にある。いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、薬剤を投与するのに都合が良い場所であり、かつ処置が望まれる場所の遠位にある。いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、自己投与に都合が良い。いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、薬剤を投与する人にとって薬物投与に都合が良い。
【0033】
いくつかの実施形態において、本方法は、部位あたり最高約10mLまでの体積の投与を可能にする。いくつかの実施形態において、体積は、部位あたり約2mLから約8mLの間である。いくつかの実施形態において、体積は、部位あたり約4mLから約6mLの間である。いくつかの実施形態において、体積は、部位あたり約0.25mL、0.5mL、0.75mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、又は15mLである。
【0034】
いくつかの実施形態において、体積は、注射液の特性に依存する。いくつかの実施形態において、体積は、IgG調製物の粘度に依存する。いくつかの実施形態において、体積は、IgG調製物におけるIgG濃度に依存する。いくつかの実施形態において、体積は、選択されたID注射装置の制限に依存する。
【0035】
本方法による治療の期間は、非限定的に、疾患の性質、対象の年齢、投与の頻度、IgG調製物の用量、患者の服薬遵守、IgG調製物の品質及び有効性によって変わり得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、投与の期間及び頻度は、非限定的に、投与されるIgGの量、IgG調製物がどれくらい速く投与されるか、並びにIgG調製物の薬物動態及び薬力学に依存する。例えば、いくつかの実施形態において、処置の期間は、約1日間から約28日間までの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、処置の期間は、約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、又は28日間であり得る。いくつかの実施形態において、処置の期間は、約1週間~約52週間であり得る。いくつかの実施形態において、処置の期間は、約5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、27週間、28週間、29週間、又は30週間であり得る。いくつかの実施形態において、処置の期間は、不確定であり、例えば、患者の生涯である。いくつかの実施形態において、投与の頻度は毎日である。いくつかの実施形態において、投与の頻度は、1日あたり1回、2回、3回、又は4回である。いくつかの実施形態において、投与の頻度は、毎日であり、処置の期間は、不確定である。いくつかの実施形態において、投与の頻度は、1日あたり1回、2回、3回、又は4回であり、処置の期間は不確定である。
【0037】
本方法のいくつかの実施形態において、毎日の投与計画は、結果として、3~4週間ごとのIV注入又はSC投与と比較して、IgGのより安定的な血漿濃度を生じる。
【0038】
いくつかの実施形態において、本方法は、疾患の処置のためにIgG調製物を用いることを含む。いくつかの実施形態において、疾患は、原発性免疫不全症を含む。いくつかの実施形態において、原発性免疫不全症は、先天性無ガンマグロブリン血症及び低ガンマグロブリン血症、並びに特発性血小板減少性紫斑病を含む。いくつかの実施形態において、原発性免疫不全症は、小児原発性免疫不全症である。いくつかの実施形態において、小児原発性免疫不全症は、慢性リンパ性白血病に関連した低ガンマグロブリン血症である。いくつかの実施形態において、小児原発性免疫不全症は、小児患者のHIV感染処置の一環として、慢性リンパ性白血病に関連した低ガンマグロブリン血症である。
【0039】
いくつかの実施形態において、免疫不全症は、分類不能型免疫不全症である。いくつかの実施形態において、分類不能型免疫不全症は、IgGサブクラスの欠損である。いくつかの実施形態において、免疫不全症は、続発性又は後天性免疫不全症である。いくつかの実施形態において、続発性又は後天性免疫不全症は、例えばサイトメガロウイルス、帯状疱疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス等のウイルスによる、感染に起因する。いくつかの実施形態において、続発性又は後天性免疫不全症は、自己免疫起源の疾患、例えば、血小板減少性紫斑病、川崎症候群に起因する。いくつかの実施形態において、IgG調製物は、川崎病の処置及び骨髄移植におけるアジュバントとして用いることができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、本方法は、患者における免疫不全症の処置を含む。いくつかの実施形態において、免疫不全症は、原発性免疫不全症である。いくつかの実施形態において、免疫不全症は、小児患者における原発性免疫不全症である。原発性免疫不全症を処置するための方法のいくつかの実施形態において、IgGの濃度は、約15%~約30%(w/v)である。原発性免疫不全症を処置するための方法のいくつかの実施形態において、IgGの濃度は、約15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、又は30%(w/v)である。原発性免疫不全症を処置するための方法のいくつかの実施形態において、IgGの濃度は、約30%(w/v)又はそれ以上である。本方法のいくつかの実施形態において、IgG調製物は、約4.5~約8.0のpHを有する。本方法のいくつかの実施形態において、IgG調製物は、約6.5のpHを有する。本方法のいくつかの実施形態において、IgG調製物は、約4.5、4.75、5.0、5.25、5.5、5.75、6.0、6.25、6.5、6.75、7.0、7.25、7.5、7.75、又は8.0のpHを有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、対象の年齢は、約10歳、15歳、又は18歳から、約20歳、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、又は70歳までである。いくつかの実施形態において、対象の年齢は、約10歳未満である。いくつかの実施形態において、対象の年齢は、約70歳より上である。いくつかの実施形態において、本方法は、小児患者の処置を可能にする。いくつかの実施形態において、小児患者の年齢は、約1日齢から約18歳までの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、対象の性別は男性である。いくつかの実施形態において、対象の性別は女性である。
【0042】
いくつかの実施形態において、本方法は、病院、養護施設、老人ホーム、又は小児医療機関において実施することができる。いくつかの実施形態において、本方法は、自宅で実施することができる。いくつかの実施形態において、本方法は、自己投与、医療従事者による投与、又は家族の一員による投与を含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、本開示は、治療用血漿タンパク質の、それを必要としている患者への送達のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、治療用血漿タンパク質は、IgG全体である。いくつかの実施形態において、治療用血漿タンパク質は、IgGの治療的断片である。いくつかの実施形態において、本開示は、治療用血漿タンパク質を自己投与するための方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、原発性免疫不全症を有する患者は、治療用血漿タンパク質のIV投与のために診療所へ行くよりむしろ、自宅でIgG等の治療用血漿タンパク質を自己投与することができる。本方法は、便利で、かつ他の投与経路と比較してより痛みが少ない投与経路を提供し、したがって、より高い患者の服薬遵守をもたらすことができる。
【0044】
組成物
いくつかの実施形態において、組成物は、IgG調製物である。いくつかの実施形態において、組成物はIgG溶液である。いくつかの実施形態において、IgGの濃度は約15%から約30%(w/v)の間であり得る。いくつかの実施形態において、濃度は約7%~約14%である。いくつかの実施形態において、濃度は約23%~約30%である。いくつかの実施形態において、濃度は、約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、又は30%(w/v)である。いくつかの実施形態において、濃度は約30%又はそれ以上である。
【0045】
いくつかの実施形態において、組成物は、IgG分子全体を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、治療的に有効であるIgG断片を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、IgM、IgA、又はそれらの組合せ等の追加の抗体型を含み得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、組成物は、免疫不全症の処置を必要としている患者における免疫不全症の処置のためのIgGを含む。いくつかの実施形態において、免疫不全症を処置するための組成物は、約15%~約30%(w/v)のIgG濃度を有する。いくつかの実施形態において、免疫不全症を処置するための組成物は、約30%(w/v)又はそれ以上のIgG濃度を有する。いくつかの実施形態において、免疫不全症を処置するための組成物は、約4.5~約8.0のpHを有する。いくつかの実施形態において、免疫不全症を処置するための組成物は、約6.5のpHを有する。いくつかの実施形態において、免疫不全症は、原発性免疫不全症である。いくつかの実施形態において、免疫不全症は、小児患者における原発性免疫不全症である。
【0047】
いくつかの実施形態において、IgG溶液のpHは、約4.5から約8.0の間であり得る。いくつかの実施形態において、そのpHは、約4.5、4.75、5.0、5.25、5.5、5.75、6.0、6.25、6.5、6.75、7.0、7.25、7.5、7.75、又は8.0である。いくつかの実施形態において、そのpHは約6.5である。IgG調製物のpHは、投与部位において皮膚の痂皮を引き起こさず、かつ耐容性が良い。
【0048】
いくつかの実施形態において、組成物は、処置が望まれる場所の近位にある皮膚送達部位で送達される。いくつかの実施形態において、組成物は、処置が望まれる場所の遠位にある皮膚送達部位で送達される。いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、薬剤を投与するのに都合が良い場所である。いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、薬剤を投与するのに都合が良い場所であり、かつ処置が望まれる場所の近位にある。いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、薬剤を投与するのに都合が良い場所であり、かつ処置が望まれる場所の遠位にある。いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、自己投与に都合が良い。いくつかの実施形態において、皮膚送達部位は、薬剤を投与する人にとって薬物投与に都合が良い。
【0049】
いくつかの実施形態において、組成物は、部位あたり最高約10mLまでの体積で投与される。いくつかの実施形態において、体積は、部位あたり約2mLから約8mLの間である。いくつかの実施形態において、体積は、部位あたり約4mLから約6mLの間である。いくつかの実施形態において、体積は、部位あたり約0.25mL、0.5mL、0.75mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、又は15mLである。
【0050】
いくつかの実施形態において、体積は、注射液の特性に依存する。いくつかの実施形態において、体積は、IgG調製物の粘度に依存する。いくつかの実施形態において、体積は、IgG調製物におけるIgG濃度に依存する。いくつかの実施形態において、体積は、選択されたID注射装置の制限に依存する。
【0051】
いくつかの実施形態において、組成物の投与の期間及び頻度は、非限定的に、投与されるIgGの量、IgG調製物がどれくらい速く投与されるか、並びにIgG調製物の薬物動態及び薬力学に依存する。例えば、いくつかの実施形態において、処置の期間は、約1日間から約28日間までの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、処置の期間は、約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、又は28日間であり得る。いくつかの実施形態において、処置の期間は、約1週間~約52週間であり得る。処置の期間は、約5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、27週間、28週間、29週間、又は30週間であり得る。いくつかの実施形態において、処置の期間は、不確定であり、例えば、患者の生涯である。いくつかの実施形態において、投与の頻度は毎日である。いくつかの実施形態において、投与の頻度は、1日あたり1回、2回、3回、又は4回である。いくつかの実施形態において、投与の頻度は、毎日であり、処置の期間は、不確定である。いくつかの実施形態において、投与の頻度は、1日あたり1回、2回、3回、又は4回であり、処置の期間は不確定である。
【0052】
いくつかの実施形態において、組成物は、疾患の処置のためのIgG調製物を含む。いくつかの実施形態において、疾患は、原発性免疫不全症を含む。いくつかの実施形態において、原発性免疫不全症は、先天性無ガンマグロブリン血症及び低ガンマグロブリン血症、並びに特発性血小板減少性紫斑病を含む。いくつかの実施形態において、原発性免疫不全症は、小児原発性免疫不全症である。いくつかの実施形態において、小児原発性免疫不全症は、慢性リンパ性白血病に関連した低ガンマグロブリン血症である。いくつかの実施形態において、小児原発性免疫不全症は、小児患者におけるHIV感染処置の一環として、慢性リンパ性白血病に関連した低ガンマグロブリン血症である。
【0053】
いくつかの実施形態において、免疫不全症は、分類不能型免疫不全症である。いくつかの実施形態において、分類不能型免疫不全症は、IgGサブクラスの欠損である。いくつかの実施形態において、免疫不全症は、続発性又は後天性免疫不全症である。いくつかの実施形態において、続発性又は後天性免疫不全症は、例えばサイトメガロウイルス、帯状疱疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス等のウイルスによる、感染に起因する。いくつかの実施形態において、続発性又は後天性免疫不全症は、自己免疫起源の疾患、例えば、血小板減少性紫斑病、川崎症候群に起因する。いくつかの実施形態において、IgG調製物は、川崎病の処置及び骨髄移植におけるアジュバントとして用いることができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、組成物は、患者における免疫不全症の処置を含む。いくつかの実施形態において、免疫不全症は、原発性免疫不全症である。いくつかの実施形態において、免疫不全症は、小児患者における原発性免疫不全症である。いくつかの実施形態において、組成物は、原発性免疫不全症を処置するためのものであり、IgGの濃度は、約15%~約22%(w/v)である。いくつかの実施形態において、組成物は、原発性免疫不全症を処置するためのものであり、IgGの濃度は、約15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、又は30%(w/v)である。原発性免疫不全症を処置するための組成物のいくつかの実施形態において、IgGの濃度は、約30%(w/v)又はそれ以上である。組成物のいくつかの実施形態において、IgG調製物は、約4.5~約8.0のpHを有する。組成物のいくつかの実施形態において、IgG調製物は、約6.5のpHを有する。組成物のいくつかの実施形態において、IgG調製物は、約4.5、4.75、5.0、5.25、5.5、5.75、6.0、6.25、6.5、6.75、7.0、7.25、7.5、7.75、又は8.0のpHを有する。
【0055】
いくつかの実施形態において、対象の年齢は、約18歳から約70歳までである。対象の年齢は、10歳、15歳、20歳、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、又は70歳であり得る。いくつかの実施形態において、対象の年齢は、約18歳未満である。いくつかの実施形態において、対象の年齢は、約70歳より上である。いくつかの実施形態において、組成物は、小児患者の処置を可能にする。いくつかの実施形態において、小児患者の年齢は、約1日齢から約18歳までの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、対象の性別は男性である。いくつかの実施形態において、対象の性別は女性である。
【0056】
いくつかの実施形態において、組成物は、病院、養護施設、老人ホーム、又は小児医療機関において投与することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、自宅で投与することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、自己投与され得、医療従事者により投与され得、又は家族の一員により投与され得る。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
IgG調製物の、IV、SC、及びID経由によるブタへの投与
若い家畜用ブタ(20~25kg)に、IgG(20mg/kg)をIV(n=4)、SC(n=4)、及びID(n=3)経路により投与した。イムノアッセイによるヒト特異的IgGの測定のために、静脈血試料を、IgG投与後2分目、30分目、及び60分目、3時間目及び6時間目、その後、10日間、毎日、採取した。
【0058】
図1に示されているように、ID経路は、SC経路と比較してIgGの血漿コンパートメントへの取り込みがより速かった。IgGの血漿濃度は、ID経路により投与後1時間以内にC
maxに達したが、SC経路についてのC
maxは、24時間の間に達成されなかった。
図1及び
図2は、IV、ID、及びSC経路による投与後の血漿IgGの時間経過を示す。その血漿薬物動態データが、0~24時間について(
図1)、及び圧縮されたX軸上に10日間にわたって(
図2)、示されている。明らかに、この実験モデルにおいて24時間目以降、IgGの血漿レベルは、投与経路に関係なく、類似している。したがって、全ての3つの経路の排出半減期(T
1/2)は非常に類似している。
【0059】
(実施例2)
IgG調製物pHの送達部位への影響
IgG調製物pHの送達部位への影響を評価するために、2mLのGamunex(登録商標)及びIGSC 20% IgG製剤(Grifols Therapeuctics Inc.社、USA)どちらもpH4.0、並びにIGIM-S/D(Grifols Therapeuctics Inc.社、USA)pH6.5を若い家畜用ブタに投与した。
【0060】
IgGの2mLの投与から3日後、低いpHでの投与が、投与部位における皮膚の痂皮を引き起こすが、中性pHのIgGは、良い耐容性を示すようである。
【0061】
(実施例3)
小児処置
本開示による方法は、原発性免疫不全症を有する小児患者を処置するために用いることができる。患者の体重は、約25kgである。そのような患者についての典型的な用量範囲は、約4週間にわたって、約300~約800mg/kg体重である。この用量は、約2mL又は約4mLの濃縮されたIgG調製物の1回のID投与で本方法を用いて達成することができる。濃縮されたIgG調製物は、約16.5%又は約20%(w/v)のIgGの濃度を有する。