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特許7033860シールド掘進機のテールシール構造及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】シールド掘進機のテールシール構造及び方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
E21D11/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017142667
(22)【出願日】2017-07-24
(65)【公開番号】P2019023391
(43)【公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-04-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228811
【氏名又は名称】日本シビックコンサルタント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大塚 孝義
(72)【発明者】
【氏名】近藤 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】田家 学
(72)【発明者】
【氏名】加島 豊
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-080194(JP,U)
【文献】特公昭48-003434(JP,B1)
【文献】特開2001-159299(JP,A)
【文献】特開2001-182489(JP,A)
【文献】実開平04-082099(JP,U)
【文献】実開平04-022593(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機のテールプレートの内周面に沿って外側にバネ板を有するテールシールが取り付けられて、前記テールシールにより、前記テールプレートと前記シールド掘進機の内部で組み立てられ、前記テールプレートを通じて押し出されるセグメントリングの外周面との間の隙間をシールするシールド掘進機のテールシール構造において、
前記バネ板にフック形状を有する複数の保持具により保持されて前記テールシールを前記セグメントリングの外周面上で締め付けるリング体を備え、
前記複数の保持具は、それぞれ、前記フック形状の先端と前記バネ板との間に前記リング体を前記フック形状内に引き入れ可能な間隙を有し、前記フック形状内は前記リング体の断面形状よりも大きい中空部で、
前記リング体は、弾性を有し、かつ内径が前記セグメントリングの外径に前記テールシール及び前記バネ板の厚みを含めた寸法又はそれよりも若干小さい寸法を有し、
前記リング体は、前記バネ板の外面上の前記各保持具に前記間隙から引き入れられて、前記バネ板の外面上に取り付けられ、
前記テールプレートから押し出される前記セグメントリングを前記テールシールに通すことにより、前記バネ板の外面上で前記リング体が拡張されて生ずる前記リング体の張力により、前記テールシールを前記セグメントリングの外周面に締め付け密着させる、
ことを特徴とするシールド掘進機のテールシール構造。
【請求項2】
リング体がバネ板の外面上に複数の保持具を介して取り付けられた後、前記各保持具は変形されて、フック形状の先端と前記バネ板との間の間隙が閉じられる請求項1に記載のシールド掘進機のテールシール構造。
【請求項3】
シールド掘進機のテールプレートの内周面に沿って外側にバネ板を有するテールシールが取り付けられて、前記テールシールにより、前記テールプレートと前記シールド掘進機の内部で組み立てられ、前記テールプレートを通じて押し出されるセグメントリングの外周面との間の隙間をシールするシールド掘進機のテールシール構造において、
前記バネ板にフック形状を有する複数の保持具により保持されて前記テールシールを前記セグメントリングの外周面上で締め付けるリング体を備え、
前記複数の保持具は、それぞれ、前記フック形状の先端と前記バネ板との間に前記リング体を前記フック形状内に引き入れ可能な間隙を有し、前記フック形状内は前記リング体の断面形状よりも大きい中空部で、前記バネ板の外面に前記各保持具の前記フック形状の先端と前記バネ板との間の間隙を開閉する押え板が設けられ、
前記リング体は、弾性を有し、かつ内径が前記セグメントリングの外径に前記テールシール及び前記バネ板の厚みを含めた寸法又はそれよりも若干小さい寸法を有し、
前記リング体は、前記バネ板の外面上の前記各保持具に前記間隙の前記押え板を開いて前記間隙から引き入れられて、前記バネ板の外面上に取り付けられ、
前記テールプレートから押し出される前記セグメントリングを前記テールシールに通すことにより、前記バネ板の外面上で前記リング体が拡張されて生ずる前記リング体の張力により、前記テールシールを前記セグメントリングの外周面に締め付け密着させる、
ことを特徴とするシールド掘進機のテールシール構造。
【請求項4】
シールド掘進機のテールプレートの内周面に沿って外側にバネ板を有するテールシールが取り付けられて、前記テールシールにより、前記テールプレートと前記シールド掘進機の内部で組み立てられ、前記テールプレートを通じて押し出されるセグメントリングの外周面との間の隙間をシールするシールド掘進機のテールシール構造において、
前記バネ板にフック形状を有する複数の保持具により保持されて前記テールシールを前記セグメントリングの外周面上で締め付けるリング体を備え、
前記複数の保持具は、それぞれ、前記フック形状の少なくとも先端側を弾性変形可能に形成されて、前記フック形状の先端が前記バネ板に当接され、
前記リング体は、弾性を有し、かつ内径が前記セグメントリングの外径に前記テールシール及び前記バネ板の厚みを含めた寸法又はそれよりも若干小さい寸法を有し、
前記リング体は、前記フック形状の先端側が起こし変形され、前記各保持具の前記フック形状の先端と前記バネ板との間から前記フック形状内に引き入れられて、前記バネ板の外面上に取り付けられ、
前記テールプレートから押し出される前記セグメントリングを前記テールシールに通す ことにより、前記バネ板の外面上で前記リング体が拡張されて生ずる前記リング体の張力 により、前記テールシールを前記セグメントリングの外周面に締め付け密着させる、
ことを特徴とするシールド掘進機のテールシール構造。
【請求項5】
複数の保持具はそれぞれ、バネ板の外面にテールシールに向けて略鉤状又は略環状に延びるフック形状に形成される請求項1乃至4のいずれかに記載のシールド掘進機のテールシール構造。
【請求項6】
複数の保持具はそれぞれ、バネ板に一体に又は前記バネ板と別体の部材により形成されて、前記バネ板の外面に設けられる請求項1乃至4のいずれかに記載のシールド掘進機のテールシール構造。
【請求項7】
複数の保持具は、バネ板の外面に周方向に連続的に又は間欠的に設けられる請求項1乃至4のいずれかに記載のシールド掘進機のテールシール構造
【請求項8】
シールド掘進機のテールプレートの内周面に沿って外側にバネ板を有するテールシールを取り付けて、前記テールシールにより、前記テールプレートと前記シールド掘進機の内部で組み立てられ、前記テールプレートを通じて押し出されるセグメントリングの外周面との間の隙間をシールするシールド掘進機のテールシール方法において、
弾性を有し、かつ内径が前記セグメントリングの外径に前記テールシール及び前記バネ板の厚みを含めた寸法又はそれよりも若干小さい寸法を有し、前記テールシールを前記セグメントリングの外周面上で締め付けるリング体を、前記バネ板の外面上に複数の保持具を介して取り付け、
最初のセグメントリングの押し出し方向先端に、先端から後端に向けて漸次拡径され、前記最初のセグメントリングの外径に連続するテーパ状のガイドリングを設けて、
前記シールド掘進機の発進に際し、前記テールプレートから押し出す最初のセグメントリングを前記テールシールに通すことにより、前記最初のセグメントリングの外周面上で前記リング体を拡張して、前記リング体に張力を生じせしめ、前記リング体の張力により、前記テールシールを前記最初のセグメントリング以降の各セグメントリングの外周面に締め付け密着させる、
ことを特徴とするシールド掘進機のテールシール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機のテールシール構造及び方法に関し、特に、テールシールとセグメントリングとの間の止水性及び耐久性の向上を図るシールド掘進機のテールシール構造及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法によるトンネル工事では、シールド掘進機の先端に設けられたカッターヘッドにより地山切羽を掘削しながら、シールドジャッキによりシールド掘進機を推進させ、掘削した土砂をスクリュウコンベアなどにより機内を通して機外へ搬出する。シールド掘進機を所定の距離だけ掘進させる毎にシールド掘進機の掘進動作を停止し、シールド掘進機のテールプレート内でエレクタ装置によりセグメントを組み立てて、シールドジャッキを伸長させ、組み立てられたセグメントを押して反力を取りつつ、シールド掘進機を推進し、掘削坑の内部にセグメントリングを構築していく。そして、このシールド掘進機の掘進と同時に、シールド掘進機のテールプレート外周部に設けた裏込め注入管から、あるいはシールド掘進機のテールプレート内部に設けた裏込め注入管により、あるいはセグメントのグラウトホールから、テールボイドへ裏込め材を注入充填し、掘削坑とセグメントリングの安定化を図る。
【0003】
このようなシールド工法に用いるシールド掘進機には、テールプレートの内周面とセグメントリングの外周面との間の環状の隙間から地山の土砂や地下水、あるいは、テールボイドに充填される裏込め材がテールプレートの内部に浸入するのを防止するために、テールプレートの内周面にテールシールが設けられている。
【0004】
この種のテールシールには、多数の鋼繊維の線材からなるブラシ型のテールシール(a)と、ブラシ型のテールシールの線材内にシリコンゴムなどを充填してなるテールシール(b)がある。これらのテールシールが例えば特許文献1、2などにより提案されている。
テールシール(a)、(b)は共に、ブラシ材とその外面内面を挟むバネ板とからなる複数のブラシユニットが、テールプレートの内周面に沿って環状にかつシールド掘進機の軸方向に所定の間隔をおいて複数列配列されて構成される。
この場合、ブラシ材は多数の波型(ウェーブ)を呈するバネ線材を束にしたもので、シールド掘進機の円周方向に一定の幅を持ち、全体として略L型に成形されて、テールプレートに取り付けられる取付部とテールプレートとセグメントリングとのクリアランスを遮蔽する遮蔽部とで構成される。バネ板はこのバネ線材の束の外面内面に設けられる。このようなブラシ材、バネ板からなるブラシユニットが、断面略U字形のブラシホルダーを介して、テールプレートの内周面に後端から前方に所定の間隔をおいて2列又は3列の配列にしてテールプレートの内周面に沿って円環状に取り付けられる。
ブラシ型のテールシール(a)では、ブラシのバネ線の繊維がそれぞれシールド掘進機の断面円周方向に独立して配設される。このブラシは、シールド掘進機の進行に伴い、テールプレートとセグメントリングとの間のクリアランスの範囲でシールド掘進機の軸方向に湾曲して圧縮され、セグメントリングの外周部を押圧して、テールプレートとセグメントリングとのクリアランスを遮蔽する。このクリアランスはシールド掘進機の掘進においてシールド掘進機の姿勢、曲線掘進に伴い、さまざまに変化するが、このクリアランスの変化に対して、ブラシの曲率が変化することで対応する。ところが、地下水の圧力や裏込め材の注入圧力が大きいと、地下水や裏込め材がシールド掘進機内に浸入することがある。この場合、ブラシの内側のテールシール室にシールド掘進機からテールプレート内部の充填材注入管により充填材を充填加圧することにより、地下水や裏込め材の浸入を抑止する。通常充填材の圧力は裏込め材の注入圧力や地下水の圧力より大きくしている。テールシールブラシや外面内面を挟むバネ板の力では漏出を止めることができず、このため、充填材がテールボイドへ漏出しセグメントリングの外周面に付着して、塊状に存在することがあり、これが裏込め材の品質の劣化を招き、ひいては、トンネルの品質を劣化させる恐れがある。
ブラシ内部にシリコンゴムなどを充填するテールシール(b)では、シールド掘進機の掘進に際し、予め、ブラシ型のテールシールの内部に例えばシリコンゴムのような塑性流動性のゴム材が充填固化されてブロックに成形され、そのブロックがシールド掘進機の断面円周方向に配列される。各ブロック間は接着剤で接着される。シールド掘進機の掘進中にテールプレートとセグメントリングとのクリアランスが変化すると、テールシールの遮蔽部の曲率が変化する。このときに、内部のワイヤーブラシ繊維が繊維方向に相互に変位する(ずれる)ため、ゴムが揉まれて劣化し伸縮性能が低下していく。長距離掘進では、接着部が剥離して漏水や裏込め材の浸入を招くことがある。
【0005】
さらに、従来より、テールプレートとセグメントリングとの間の止水効果を高めるためのテールシール構造が提案されており、その一例が特許文献3、4により開示されている。
【0006】
特許文献3はシールド機の止水装置に関するもので、この文献3の止水装置は、シールド機のスキンプレートに一端を固定され他端をスキンプレートの内周側に配置されるセグメントにその弾性力によって密着されスキンプレート及びセグメント間をシールするテールシールと、テールシール内に連結された締付紐体と、締付紐体をシールド内に設けた一対のウインチでこの締付紐体を引っ張って締付紐体に張力を発生させる張力発生手段とを備える。このようにしてテールシールのセグメントに対する密着度を維持して、所望のシール機能を保持する。
【0007】
特許文献4はテールシール構造に関するもので、この文献4のテールシール構造は、シールド掘進機フレームのテール部にその内周部に沿って周方向に連続的に取り付けられる短冊状のワイヤーブラシの先端部を、トンネル内に構築されるセグメントの外周部に接触させてテール部とセグメントとの間をシールするもので、このシール構造では、特に、各ワイヤーブラシ内に、テール部に一端部が固定支持された弾性部材を設けるとともに相隣接する弾性部材を、ワイヤーブラシの先端部をセグメントの外周部に押し付けるべく連結部材で互いに連結する。このようにしてワイヤーブラシにセグメントを締め付けようとする締付け力を発生させて、ワイヤーブラシによる止水性能を高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-61035号公報
【文献】特開平11- 50794号公報
【文献】実開平4- 82099号公報
【文献】実開平4- 22593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3の止水装置では、次のような問題がある。
(1)テールシールを締め付けるための締付紐体を適宜引っ張って締付紐体に張力を発生させる張力発生手段として、シールドの内部にウインチ、さらに、スキンプレートの内部後端に1対の滑車及びシールド機内に1対の滑車を必要とし、全体として構造が複雑になる。
(2)スキンプレート後端の滑車やその取付機構に裏込め材や地下水、土砂が浸入する恐れがあり、このため、止水パッキンなどが必要で、構造が複雑となり、故障の原因にもなり、コストが増大する。
(3)セグメントの外周部にテールシールを介して巻き付けられたワイヤーが滑車によりシールド掘進機の軸方向に方向を変えられるため、ワイヤーが引っ張られると、ワイヤーの方向を変えられた部分でテールシールを前方に引っ張ることになるので、テールシールを緊張するワイヤーをセグメントに対して直角に作用させることが難しく、緊張力をテールシールに均一に作用させることができない。
(4)特許文献3の第1図及び第2図の記載から、ワイヤーはテールシールの外側ではなく、テールシールの中に配置される。そして、滑車はこのテールシール内に囲繞されるワイヤーの前方に位置していることから、ワイヤーが交差する付近でワイヤーはテールシールの内部から外側(表面)に露出して、この露出点付近でワイヤーは滑車に向けて方向を変える。つまり、ワイヤーの緊張力の方向が変わり、ワイヤーの露出点付近でテールシールに力が加えられるので、この部分の補強が必要になる。また、特許文献3の実用新案登録請求の範囲や実施例の説明の中に「テールシールに連結された締付紐体…」と記載されていることから、テールシールとワイヤーは連結、つまり、一体化されているものとみられる。シールド機内のウインチでワイヤーによりセグメントを緊結するが、これは同時にセグメント全体を上方へ持ち上げかつシールド機前方へ引っ張る作用となる。逆に、セグメントはトンネル覆工体をなすので、シールド機の動きを拘束することにもなる。つまり、ワイヤーをシールド機から引っ張ることで、シールド機の掘進方向を偏向させている。さらに引っ張る方向が均一ではなく偏在している。テールシールとワイヤーが連結されていることから、ワイヤーが緊張するとワイヤーの伸びなどの変形がテールシールにも受けるので、円周方向の強度も必要になり、この補強によりコストが増大する。また、ワイヤーの露出点付近ではテールシールが外径方向に力を受けるので、テールシールの止水性が悪くなる。
【0010】
また、特許文献4のテールシール構造では、次のような問題がある。
(1)特許文献4の第5頁第9行目に「…各ワイヤーブラシ内に、上記テール部に一端部が固定支持された弾性部材を設けると共に相隣接する弾性部材を、ワイヤーブラシの先端部をセグメントの外周部に押付けるべく連結部材で互いに連結してなる…」と記載されている。図2に示すように、弾性部材21、板材片22、連結部材23、連結ワイヤー24はいずれもワイヤーブラシ11内に設置されている。以上から連結部材で連結された弾性部材はワイヤーブラシ内に存在していることは明らかである。このようなワイヤーブラシ内のワイヤー挿通部25に連結ワイヤー25を通すことは極めて困難な作業となる。この点について特許文献4には技術的な説明は何らなされていない。
(2)この構造では、連結ワイヤー24の両端部を結ぶときに、その連結する手段・機構を、全周に隙間なく設置された外側防護部材13及び内側防護部材12の間で非常に密に設置されたワイヤーブラシ11内に設置することになり、機械作業の場合でも手作業の場合でも、その作業は非常に危険でもあり、又、困難である。また、この場合、連結ワイヤーに適正な張力を付与することも難しい。特許文献4にはこの点について技術的な説明は何らなされていない。
(3)ワイヤーブラシ11内部に連結ワイヤー4が配されているため、連結ワイヤーの緊張力は環状に形成された連結ワイヤーの内部にのみ作用する。つまり、ワイヤーブラシ11内部のステンレス金網17より内側のワイヤーブラシに当該緊張力が作用するものの、その外側のワイヤーブラシ11には緊張力が作用しない。
(4)シールドテール部2の全周に亘り、弾性部材21として板材片22、ワイヤー挿通部25がワイヤーブラシ11の内部に存在するので、この部分にはワイヤーブラシ11が配設されていない(配設できない)ことになる。つまり、弾性部材21とワイヤーブラシ挿通部25とステンレス金網17により形成される断面三角形の空間となり、ここにはワイヤーブラシが配設されない。このため、この断面三角形の空間に後方の地山から裏込め材や地下水などの浸入が容易になる。これについても技術的説明はない。
(5)弾性部材21とワイヤーブラシ挿通部25とステンレス金網17との間が断面三角形の空間とならないことも考えられるが、この場合、この空間の下、ステンレス金網17側からワイヤーブラシの鋼繊維がステンレス金網とともに当該空間へ押し込まれることになる。その結果、金網が変形し、ワイヤーブラシも押し込まれるため、不均一な状態になり、いずれにしても、裏込め材や地下水の浸入が容易となる。
【0011】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種のテールシール構造及び方法において、特に、テールシールとセグメントリングとの間に構造を簡単にして安全で、簡潔な方法により高い止水性及び耐久性を確保すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明(1)は、
シールド掘進機のテールプレートの内周面に沿って外側にバネ板を有するテールシールが取り付けられて、前記テールシールにより、前記テールプレートと前記シールド掘進機の内部で組み立てられ、前記テールプレートを通じて押し出されるセグメントリングの外周面との間の隙間をシールするシールド掘進機のテールシール構造において、
前記バネ板にフック形状を有する複数の保持具により保持されて前記テールシールを前記セグメントリングの外周面上で締め付けるリング体を備え、
前記複数の保持具は、それぞれ、前記フック形状の先端と前記バネ板との間に前記リング体を前記フック形状内に引き入れ可能な間隙を有し、前記フック形状内は前記リング体の断面形状よりも大きい中空部で、
前記リング体は、弾性を有し、かつ内径が前記セグメントリングの外径に前記テールシール及び前記バネ板の厚みを含めた寸法又はそれよりも若干小さい寸法を有し、
前記リング体は、前記バネ板の外面上の前記各保持具に前記間隙から引き入れられて、前記バネ板の外面上に取り付けられ、
前記テールプレートから押し出される前記セグメントリングを前記テールシールに通すことにより、前記バネ板の外面上で前記リング体が拡張されて生ずる前記リング体の張力により、前記テールシールを前記セグメントリングの外周面に締め付け密着させる、
ことを要旨とする。
この場合、リング体がバネ板の外面上に複数の保持具を介して取り付けられた後、前記各保持具は変形されて、フック形状の先端と前記バネ板との間の間隙が閉じられるようにしてもよい。
この場合、複数の保持具はそれぞれ、バネ板の外面にテールシールに向けて略鉤状又は略環状に延びるフック形状に形成されることが好ましい。
この場合、複数の保持具はそれぞれ、バネ板に一体に又は前記バネ板と別体の部材により形成されて、前記バネ板の外面に設けられることが好ましい。
この場合、複数の保持具は、バネ板の外面に周方向に連続的に又は間欠的に設けられことが好ましい。
上記目的を達成するために、本発明(2)は、
シールド掘進機のテールプレートの内周面に沿って外側にバネ板を有するテールシールが取り付けられて、前記テールシールにより、前記テールプレートと前記シールド掘進機の内部で組み立てられ、前記テールプレートを通じて押し出されるセグメントリングの外周面との間の隙間をシールするシールド掘進機のテールシール構造において、
前記バネ板にフック形状を有する複数の保持具により保持されて前記テールシールを前記セグメントリングの外周面上で締め付けるリング体を備え、
前記複数の保持具は、それぞれ、前記フック形状の先端と前記バネ板との間に前記リング体を前記フック形状内に引き入れ可能な間隙を有し、前記フック形状内は前記リング体の断面形状よりも大きい中空部で、前記バネ板の外面に前記各保持具の前記フック形状の先端と前記バネ板との間の間隙を開閉する押え板が設けられ、
前記リング体は、弾性を有し、かつ内径が前記セグメントリングの外径に前記テールシール及び前記バネ板の厚みを含めた寸法又はそれよりも若干小さい寸法を有し、
前記リング体は、前記バネ板の外面上の前記各保持具に前記間隙の前記押え板を開いて前記間隙から引き入れられて、前記バネ板の外面上に取り付けられ、
前記テールプレートから押し出される前記セグメントリングを前記テールシールに通すことにより、前記バネ板の外面上で前記リング体が拡張されて生ずる前記リング体の張力により、前記テールシールを前記セグメントリングの外周面に締め付け密着させる、
ことを要旨とする。
この場合、複数の保持具はそれぞれ、バネ板の外面にテールシールに向けて略鉤状又は略環状に延びるフック形状に形成されることが好ましい。
この場合、複数の保持具はそれぞれ、バネ板に一体に又は前記バネ板と別体の部材により形成されて、前記バネ板の外面に設けられることが好ましい。
この場合、複数の保持具は、バネ板の外面に周方向に連続的に又は間欠的に設けられることが好ましい。
上記目的を達成するために、本発明(3)は、
シールド掘進機のテールプレートの内周面に沿って外側にバネ板を有するテールシールが取り付けられて、前記テールシールにより、前記テールプレートと前記シールド掘進機の内部で組み立てられ、前記テールプレートを通じて押し出されるセグメントリングの外周面との間の隙間をシールするシールド掘進機のテールシール構造において、
前記バネ板にフック形状を有する複数の保持具により保持されて前記テールシールを前記セグメントリングの外周面上で締め付けるリング体を備え、
前記複数の保持具は、それぞれ、前記フック形状の少なくとも先端側を弾性変形可能に形成されて、前記フック形状の先端が前記バネ板に当接され、
前記リング体は、弾性を有し、かつ内径が前記セグメントリングの外径に前記テールシール及び前記バネ板の厚みを含めた寸法又はそれよりも若干小さい寸法を有し、
前記リング体は、前記フック形状の先端側が起こし変形され、前記各保持具の前記フック形状の先端と前記バネ板との間から前記フック形状内に引き入れられて、前記バネ板の外面上に取り付けられ、
前記テールプレートから押し出される前記セグメントリングを前記テールシールに通す ことにより、前記バネ板の外面上で前記リング体が拡張されて生ずる前記リング体の張力 により、前記テールシールを前記セグメントリングの外周面に締め付け密着させる、
ことを要旨とする。
この場合、複数の保持具はそれぞれ、バネ板の外面にテールシールに向けて略鉤状又は略環状に延びるフック形状に形成されることが好ましい。
この場合、複数の保持具はそれぞれ、バネ板に一体に又は前記バネ板と別体の部材により形成されて、前記バネ板の外面に設けられることが好ましい。
この場合、複数の保持具は、バネ板の外面に周方向に連続的に又は間欠的に設けられることが好ましい。
また、上記目的を達成するために、本発明(4)は、
シールド掘進機のテールプレートの内周面に沿って外側にバネ板を有するテールシールを取り付けて、前記テールシールにより、前記テールプレートと前記シールド掘進機の内部で組み立てられ、前記テールプレートを通じて押し出されるセグメントリングの外周面との間の隙間をシールするシールド掘進機のテールシール方法において、
弾性を有し、かつ内径が前記セグメントリングの外径に前記テールシール及び前記バネ板の厚みを含めた寸法又はそれよりも若干小さい寸法を有し、前記テールシールを前記セグメントリングの外周面上で締め付けるリング体を、前記バネ板の外面上に複数の保持具を介して取り付け、
最初のセグメントリングの押し出し方向先端に、先端から後端に向けて漸次拡径され、前記最初のセグメントリングの外径に連続するテーパ状のガイドリングを設けて、
前記シールド掘進機の発進に際し、前記テールプレートから押し出す最初のセグメントリングを前記テールシールに通すことにより、前記最初のセグメントリングの外周面上で前記リング体を拡張して、前記リング体に張力を生じせしめ、前記リング体の張力により、前記テールシールを前記最初のセグメントリング以降の各セグメントリングの外周面に締め付け密着させる、
ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明(1)、(2)、(3)のシールド掘進機のテールシール構造によれば、弾性を有し、かつ内径がセグメントリングの外径にテールシール及びバネ板の厚みを含めた寸法又はそれよりも若干小さい寸法を有し、テールシールをセグメントリングの外周面上で締め付けるためのリング体を、バネ板の外面上の各保持具にフック形状の先端とバネ板との間から引き入れて、バネ板の外面上に取り付け、テールプレートから押し出すセグメントリングをテールシールに通すことにより、バネ板の外面上でリング体を拡張して、このリング体に張力を生じせしめ、このリング体の張力により、テールシールをセグメントリングの外周面に締め付け密着させるようにしたので、テールシールとセグメントリングとの間のシール構造を簡単な構造にして簡潔な方法(手順)で安全に構成することができ、高い止水性及び耐久性を確保することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
本発明(4)のシールド掘進機のテールシール方法によれば、弾性を有し、かつ内径がセグメントリングの外径にテールシール及びバネ板の厚みを含めた寸法又はそれよりも若干小さい寸法を有し、テールシールをセグメントリングの外周面上で締め付けるためのリング体を、バネ板の外面上に複数の保持具を介して取り付け、最初のセグメントリングの押し出し方向先端に、先端から後端に向けて漸次拡径され、最初のセグメントリングの外径に連続するテーパ状のガイドリングを設けて、テールプレートから押し出すセグメントリングをテールシールに通すことにより、バネ板の外面上でリング体を拡張して、このリング体に張力を生じせしめ、このリング体の張力により、テールシールをセグメントリングの外周面に締め付け密着させるようにしたので、テールシールとセグメントリングとの間のシール構造を簡単な構造にして簡潔な方法(手順)で安全に構成することができ、高い止水性及び耐久性を確保することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す要部断面図
図2図1のP-P線断面図
図3図1の(a)部を拡大して示す断面図
図4図3のM-M線断面図
図5】第1の実施の形態において特にリング体でテールシールをセグメントリングに締め付け密着させる過程を示す図
図6】本発明の第2の実施の形態を示す要部断面図
図7】本発明の第3の実施の形態を示す要部断面図
図8】本発明の第4の実施の形態を示す要部断面図
図9】本発明の第5の実施の形態を示す要部断面図
図10】本発明の第6の実施の形態を示す要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1乃至図4に第1の実施の形態を示している。
図1図2に示すように、このシールド掘進機のテールシール構造は、シールド掘進機MのテールプレートM1の内周面に沿ってテールシールM10が取り付けられ、このテールシールM10によりテールプレートM1とシールド掘進機Mの内部で組み立てられるセグメントリングSの外周面との間の環状の隙間をシールするもので、この構造では、特に、テールシールM10の外面先端側に略鉤状又は略環状に形成され周方向に連続的に又は間欠的に配列設置される複数の保持具Fはバネ板の外側に設けられており、テールシールM10をセグメントリングSの外周面上で締め付け可能に所定の弾性と径を有し、テールシールM10とは別体のテールシールM10の外面に各保持具Fに通し保持されてリング状に配置されるリング体Rとを備えて構成される。
このようにしてシールド掘進機Mの発進に際し、テールプレートM1から押し出される最初のセグメントリングSがテールシールM10に通されることにより、最初のセグメントリングSの外周面上でテールシールM10の外面に配置されたリング体Rが拡張されて、リング体Rに張力を生じせしめ、このリング体Rの張力によりテールシールM10が最初のセグメントリングS以降の各セグメントリングSの外周面に締め付け密着される。リング体Rは長さ調整機能を有する継手機構を有してもよい。また、保持具Fはバネ板12と同一幅である必要はないことは勿論のことである。
【0016】
図1図2にシールド掘進機のテールシール方法を併せて示している。
図1図2に示すように、このシールド掘進機のテールシール方法は、シールド掘進機MのテールプレートM1の内周面に沿ってテールシールM10を取り付けて、このテールシールM10によりテールプレートM1とシールド掘進機Mの内部で組み立てられるセグメントリングSの外周面との間の環状の隙間をシールするもので、この方法では、特に、テールシールM10の外面先端側に略鉤状又は略環状を呈する複数の保持具Fを周方向に連続的に又は間欠的に配列設置し、テールシールM10をセグメントリングSの外周面上で締め付け可能に所定の弾性と径を有するリング体Rを、テールシールM10の外面に各保持具Fに通し保持してリング状に配置して、シールド掘進機Mの発進に際し、テールプレートM1から押し出される最初のセグメントリングSをテールシールM10に通すことにより、最初のセグメントリングSの外周面上でテールシールM10の外面に配置したリング体Rを拡張して、リング体Rに張力を生じせしめ、このリング体Rの張力によりテールシールM10を最初のセグメントリングS以降の各セグメントリングSの外周面に締め付け密着させる。
【0017】
図3図4に示すように、この構造及び方法では、テールシールM10はブラシ型のテールシールが採用され、ブラシ材11とその外面を覆うバネ板12とからなる複数のブラシユニット1が、テールプレートM1の内周面に沿って連続的に環状にかつシールド掘進機Mの軸方向に所定の間隔をおいて複数列配列されて構成される。
なお、ここでは、テールシールM10をブラシ型のテールシールとしたが、テールシールM10はブラシ型のテールシールに限定されるものではなく、ブラシ材内にシリコンゴムなどの流動性ゴムを充填してなるテールシールやゴム材により全体が断面略L字形の略円環状に一体成型されてなるテールシールなどにも同様に適用可能である。
【0018】
この場合、ブラシ材11は多数のバネ線材を束にしたもので、シールド掘進機Mの円周方向に一定の幅を有し、全体として略L型に成形されて、テールプレートM1に取り付けられる取付部111とテールプレートM1とセグメントリングSとのクリアランスを遮蔽する遮蔽部112とを備える。
【0019】
また、この場合、バネ板12はテールシールM10の外面(裏込め材が充填される側、テールボイド側)を全周に亘って覆い裏込め材から防護するためのもので、ブラシ材11と同様に、テールプレートM1に取り付けられる取付部121とテールプレートM1とセグメントリングSとのクリアランスを遮蔽する遮蔽部122とを備え、ブラシ材11の外面に覆設される。このバネ板12はバネ鋼板からなり、一定の幅を有し、長さは概ねテールシールM10(ブラシ材11)の遮蔽部112の長さ程度又はそれより少し短い程度が好適である。なお、このバネ板12は、鋼板、ステンレス板などで代替え可能である。
【0020】
このようなブラシ材11、バネ板12からなる複数のブラシユニット1が、固定板2を介して、皿ねじ又は溶接により、テールプレートM1の内周面に後端から前方に所定の間隔をおいて2列又は3列の配列にしてテールプレートM1の内周面に沿って円環状に取り付けられる。
【0021】
図3図4に示すように、この構造及び方法では、各保持具Fは、各バネ板12の先端に略鉤形又は略環状のフック形状にして設けられ、テールシールM10の全周に亘って連続的あるいは間欠的に設けられる。
この場合、保持具Fはバネ板12の先端側を外向き(図1では、上部は上向き、下部は下向きに示される)に略鉤形のフック形状に折り返されて形成され、このフック形状内に後述するリング体Rを通し収容する中空部F10が形成されて、リング体Rの外れ止め、抜け防止の機能を有する。なお、このフック形状内の中空部F10にはリング体Rを十分に収容可能な広さが確保されることが好ましい。また、この保持具Fの場合、フック形状に折り返された先端がバネ板12の先端寄りの中間部に向けて折り返されるが、この先端とバネ板12の先端寄りの中間部との間にリング体Rを中空部F10に引き入れ設置可能に一定の間隙F11が設けられる。この間隙F11はリング体Rをフック形状の中空部F10に装着するための入口となる。装着後間隙F11は変形させて閉じてもよい。
また、この場合、保持具Fは各バネ板12に形成されてテールシールM10の全周に亘って連続的に設けられているが、この保持具FはテールシールM10の全周を覆う複数のバネ板12に例えば一つおき、二つおきなど一定の間隔をおいて形成されてテールシールM10の全周に間欠的に設けられてもよい。
なお、この保持具Fの場合、バネ板12の先端を略鉤形に折り返してテールシールM10の一部として一体的に形成しているが、バネ板12とは別に略鉤形又は略環状のフック形状部材を形成し、この別体のフック形状部材をバネ板12の先端側に固着してもよい。
【0022】
また、この構造及び方法では、リング体Rは弾性(伸縮性)を有する紐状又は帯状又は管状の部材によりテールシールM10をセグメントリングSの外周面上で締め付け可能にリング状(環状又は輪状)に形成され、テールシールM10の外面に各保持具F(フック形状内の中空部F10)に収容保持されてリング状に配置される。
この場合、リング体Rの素材として、ワイヤーロープ、鋼線、ピアノ線、螺旋バネ、炭素繊維ロープ、ガラス繊維ロープ、天然ゴムベルト、合成ゴムベルトなど、さらに、例えば芳香族ポリアミド系の繊維「商標名ケプラー」と他の繊維・樹脂を組み合わせてなる高強度・高弾性ロープが使用可能であり、この中から適宜選定される。また、リンク体Rは、例えば、炭素繊維ロープとワイヤーロープを交互に繋ぎ合わせて形成されたものなど、複数の異なる材質の素材から形成されるものであってもよい。リング体Rはまた、単数のリング体から構成されてもよく複数のリング体から構成されてもよい。複数のリング体とする場合は、小断面の紐状のリング体を複数設置することで構成できる。さらに、リング体Rは、紐状又は帯状又は管状の部材が継手を介して繋いでリング状に形成されてもよい。
また、この場合、リング体Rは、直径(内径)をセグメントリングSの直径(外径)とテールシールM10(バネ板12を含む)の厚みを含む寸法程度もしくは若干小さい寸法とする円環状に形成される。この時、テールシールM10の圧縮による厚みの変形も考慮して設計される。既述のように、リング体Rが紐状又は帯状又は管状の部材を継手を介して繋いでリング状に形成される場合、継手に長さを調整可能なものを使用することで、リング体Rの直径の調整が容易となり好適である。
そして、発進する直前にリング体RはテールシールM10の外面に各保持具Fを介して円環状に配置される。
かくしてリング体RはテールシールM10の外面(バネ板12の外面)に配置されることで、セグメントリングSのテールシールM10の通過により、テールシールM10の外面先端部位でリング体Rが拡張して一定の伸び(伸長)を付与され、リング体Rが緊張してリング体Rに一定の張力が発生し、この張力により、テールシールM10先端部位をセグメントリングRの外周面上に常に一定の圧力で押し付け密着させる構造を有する。なお、リング体Rの伸長は弾性限界内(弾性域内)で対応し、リング体Rの直径の変化にも、その弾性域内で対応することが好ましく、リング体Rの素材に適切な弾性係数を有することが望ましい。しかし、このテールシール構造及び方法は、リング体Rの伸長が弾性限界内のみで適用されるものではなく、許容応力度から降伏点までの範囲で、適用が可能である。
【0023】
図5にシールド掘進機Mの発進に際し、テールプレートM1から押し出される最初のセグメントリングSをテールシールM10に通すことにより、最初のセグメントリングSの外周面上でテールシールM10の外面に配置したリング体Rを拡張して、リング体Rに張力を生じせしめ、このリング体Rの張力によりテールシールM10を最初のセグメントリングS以降の各セグメントリングSの外周面に締め付け密着させる状態を示している。
図5に示すように、シールド掘進機MのテールプレートM1内でシールドジャッキJを伸長させて、最初のセグメントリングSを押して反力をとりつつ、シールド掘進機Mを推進させて、テールプレートM1からまずガイドリングGが押し出されて前列のテールシールM10に入っていく。この場合、ガイドリングGのテールシールM10側の端部の外径がセグメントリングSの外径よりも小径なので、ガイドリングGはテールシールM10にスムーズに入ることができる。このガイドリングGが前列のテールシールM10に入ると、ガイドリングGのテーパ状の外周面によりスムーズにガイドリングGの先端方向に案内され、ガイドリングGのテーパ状の外周面上で前列のテールシールM10の先端側が徐々に拡径し圧縮されるとともにリング体Rが徐々に拡径し拡張されてリング体Rに徐々に伸びが付与されていく。ガイドリングGが前列のテールシールM10の通過と同時に、今度はテールプレートM1から押し出される最初のセグメントリングSが前列のテールシールM10にスムーズに入っていく。最初のセグメントリングSが前列のテールシールM10に入ると、最初のセグメントリングSの外周面上でテールシールM10の外面に配置されたリング体Rが最初のセグメントリングSの外径にテールシールM10の厚さを含めた外径まで拡張して、リング体Rに一定の伸び(伸長)を付与し、リング体Rを緊張させてリング体Rに一定の高い張力を生じせしめる。このリング体Rの高い張力により、テールシールM10先端部位をセグメントリングSの外周面上に常に一定の高い圧力で押圧して締め付け密着させる。このようにしてリング体Rをバネ板12の外側にある保持具Fに安全、簡潔に取付けることができる。この前列のテールシールM10に続く後列のテールシールM10においてもリング体RとともにガイドリングG、最初のセグメントリングSの外周面に対して同様に作用する。そして、シールド掘進機Mの掘進とともに最初のセグメントリングSに続く次のセグメントリングS以降の各セグメントリングSについても同様の動作が繰り返される。このようにして例えばシールド掘進機Mが発進坑口(図示を省略)から発進し、発進坑口から出た段階で、同様にして、テールプレートM1内でセグメントリングSを組み立て、テールプレートM1から押し出すことを繰り返しながら、シールド掘進機Mを推進させていき、各セグメントリングSの外周面上では前後各列のテールシールM10の外面に配置されたリング体Rが最初のセグメントリングSの外径にテールシールM10の厚さを含めた寸法まで拡径されたまま緊張して一定の高い張力を維持し続け、これらリング体Rの高い張力により、これらリング体RとセグメントリングSの外周面との間でテールシールM10の先端部位に押圧力が発生し、このテールシールM10の押圧力により、テールシールM10先端部位はセグメントリングSの外周面上を圧迫又は押圧し、テールシールM10の先端部位がテールシールM10自身の持つ密着性を大きく上回る高い密着性で、セグメントリングSの外周面に圧着する。このようにしてテールシールM10先端部位をセグメントリングSの外周面上に常に一定の高い圧力で締め付け密着させる。かくしてテールシールM10に高い止水性及び耐久性が確保される。
なお、本発明では「発進」とは、発進立坑、中間立坑からシールド掘進機が坑口から地中に掘進を開始する場合、及び掘進途中でシールド掘進機が一旦停止し、機内からテールシールを交換した後に、掘進を再開する場合を含むものである。
【0024】
また、既述のとおり、(図1参照)地下水の圧力や裏込め材の注入圧力が大きい場合、地下水や裏込め材がシールド掘進機M内に浸入することがある。この場合は、テールシールM10の内側のテールシール室M11にシールド掘進機MからテールプレートM1内部の充填材注入管(図示省略)により充填材を充填加圧することにより、地下水や裏込め材の浸入を抑止するが、通常、充填材の圧力は裏込め材の注入圧力や地下水の圧力より大きくするため、充填材がテールボイドへ漏出しセグメントリングSの外周面に付着して、塊状に存在することもあり、これが裏込め材の品質の劣化を招き、ひいては、トンネルの品質を劣化させる恐れがある。
これに対して、この構造及び方法では、リング体Rにより、テールシールM10先端部位を本セグメントリングSの外周面上に常に一定の高い圧力で締め付け密着させるので、裏込め材の注入圧力がテールシールM10と本セグメントリングSの外周面との接触面に作用することを防ぐことが可能となり、これにより、裏込め注入圧力がテールシールM10の外面に有効に作用し、高い止水性が確保される。また、この場合、充填材に地下水圧力や裏込め注入圧力以上の圧力を付与する必要がない。あるいはほとんど不要となる。テールシール室M11に充填材(テールシーラーともいう。)を充填する場合、シールド掘進機MとセグメントリングSとの相対的位置などに係らず、リング体Rが伸び変形により発生する張力によってセグメントリングSに強く締め付け密着するので、充填材7の漏出を防ぎ、セグメントリングSの裏込め材の付着による品質の低下を防止することができる。
【0025】
このようにこのテールシール構造及び方法では、テールシールM10の外面先端側に略鉤状又は略環状を呈する複数の保持具Fを周方向に連続的に又は間欠的に配列設置し、テールシールM10をセグメントリングSの外周面上で締め付け可能に所定の弾性と径を有するリング体Rを、テールシールM10の外面に各保持具Fに通し保持してリング状に配置して、シールド掘進機Mの発進に際し、テールプレートM1から押し出される最初のセグメントリングSをテールシールM10の外周面に配設することにより、当該セグメントリングSの外周面上でテールシールM10の外面に配置したリング体Rを拡張して、リング体Rに張力を生じせしめ、このリング体Rの張力によりテールシールM10を最初のセグメントリングS以降の各セグメントリングSの外周面に締め付け密着させるようにしたので、テールプレートM1に設けたテールシールM10に高い止水性と耐久性を確保することができる。このテールシール構造及び方法によれば、土被りが大きく地下水位の高い地盤にシールド型TBMなどによりトンネルを構築するときでも、テールシールにセグメントに対する高い止水性と耐久性を長期に亘り確保することができる。
【0026】
図6に第2の実施の形態を示している。
図6に示すように、この実施の形態では、テールシールM10の保持具Fを有する各バネ板12上に保持具Fを覆う押え板13を設けている。この押え板13は一端をバネ板12の遮蔽部122上の取付部121側の端部に溶接又はボルトナット又はねじにより固定され、他端が可動端で保持具Fの外面上にバネ弾性により当接される。この押え板13により、保持具Fの間隙F11から裏込め材が入り込んで保持具Fのフック形状が変形してめくり上がるのを防止することができる。また、押え板13はバネ弾性により変形可能、つまり、押え板13の他端が弾性的に傾動可能で、押え板13の他端を保持具Fの外面から引き離すことにより、リング体Rを保持具Fに組み込み可能である。リング体Rの組み込み後、押え板13の他端は弾性復帰により保持具Fの外面に当接されて、保持具Fが押え板13により上から覆われる。
【0027】
図7に第3の実施の形態を示している。
図7に示すように、この実施の形態ではまた、テールシールM10の保持具Fを有する各バネ板12上に保持具Fを覆う押え板13を設けている。この押え板13では一端がバネ板12の遮蔽部122上の取付部121側の端部に溶接又はボルトナット又はねじにより固定され、他端が可動端で保持具Fの先端、この場合、間隙F11側の端部にバネ弾性により当接される。この押え板13により、保持具Fの間隙F11から裏込め材が入り込んで保持具Fのフック形状が変形してめくり上がるのを防止することができる。また、押え板13はバネ弾性により変形可能、つまり、押え板13の他端が弾性的に傾動可能で、押え板13の他端を保持具Fの先端から離間させることにより、リング体Rを保持具Fに組み込み可能である。リング体Rの組み込み後、押え板13の他端は弾性復帰により保持具Fの先端に当接されて間隙F11が閉じられる。
【0028】
図8に第4の実施の形態を示している。
図8に示すように、この実施の形態では、バネ板12上に留めバネ板13´を設け、この留めバネ板13´に保持具Fを設けている。この場合、バネ板12は取付部121と遮蔽部122とからなり、保持具Fは設けられていない。留めバネ板13´は取付部131と遮蔽部132とからなり、遮蔽部132の先端を略鉤形(又は略環状)に折り返してテールシールM10の一部として一体的に形成される。この留めバネ板13´は取付部131をテールプレートM1の後端に溶接又はボルト又はビスなどにより固定されてバネ板12(遮蔽部122)上に設置される。このようにして、第1の実施の形態と同様に、リング体Rを装着することができる。
なお、この場合、各バネ板12に各留めバネ板13´が設けられて保持具Fが各留めバネ板13´に形成されてテールシールM10の全周に亘って連続的に設けられてもよいが、各留めバネ板13´がテールシールM10の全周を覆う複数のバネ板12に例えば一つおき、二つおきなど一定の間隔をおいて設けられて保持具Fを有する留めバネ板13´がテールシールM10の全周に間欠的に設けられてもよい。
また、この場合、保持具Fを留めバネ板13´の先端を略鉤形(又は略環状)に折り返してテールシールM10の一部として一体的に形成しているが、バネ板12とは別に略鉤形又は略環状のフック形状部材を形成し、この別体のフック形状部材を留めバネ板13´の先端側に固着してもよい。リング体Rを装着した後、保持具Fの先端の間隙を閉じてもよい。
【0029】
図9に第5の実施の形態を示している。
図9に示すように、この実施の形態では、留めバネ板13´の幅をバネ板12の幅よりも小さくしている。この場合、各留めバネ板13´は各留めバネ板13´間に所定の間隔130ができるように幅を小さくして形成される。このようにすると、既述のとおり、リング体Rが紐状又は帯状又は管状の部材を継手を介して繋いでリング状に形成される場合に、リング体Rの継手を留めバネ板13´の間に配置することができ、好適である。また、この場合、保持具F先端の間隙F11を無くして全体を環状に形成し、環状内の中空部F10にリング体Rを貫通して設置するようにしてもよい。
【0030】
図10に第6の実施の形態を示している。
図10に示すように、この実施の形態では、バネ板12先端の保持具Fの形状を長円形にしている。保持具Fは単円形でもよいが、長円形にしてもよい。この場合、保持具Fはバネ板12の先端側が所定の径で外向きの環形に折り返され、さらにその先端が折り返し側の径よりも小さい環形に折り曲げられて全体として先端に小径の環形部123を有する長円(卵形)に形成され、折り返し側の大径の環形部124と先端の小径の環形部123とを有する。また、この場合、小径の環形部123の先端はフック形状となってバネ板12の先端寄りの中間部に当接される。この小径の環形部123の先端はバネ板12の先端寄りの中間部に接触し溶接などにより接合されてもよいが、バネ板12の先端寄りの中間部に弾性的に接触されるだけでもよい。前者の場合、リング体Rが保持具Fの環形部124内部からテールボイドへの抜出しを確実に防止することができる。後者の場合、小径の環形部123付近を弾性限界内で起こし変形させても元に戻すことが可能であるので、小径の環形部123を変形させてリング体Rを環形部124内に装着することができ、小径の環形部123の弾性復帰によりリング体Rの抜出しを防止することができる。
【0031】
なお、上記各実施の形態では、テールシールM10とは別体にテールシールM10の外面先端側に略鉤状又は略環状を呈する複数の保持具Fを周方向に連続的に又は間欠的に配列設置して、リング体Rを、テールシールM10の外面に各保持具Fに通し保持してリング状に配置したものとしたが、リング体RはテールシールM10の先端側に内蔵してテールシールM10と一体にして設けられてもよい。このようにしても上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0032】
M シールド掘進機
M1 テールプレート
M10 テールシール
1 ブラシユニット
11 ブラシ材
111 取付部
112 遮蔽部
12 バネ板
121 取付部
122 遮蔽部
123 小径の環形部
124 大径の環形部
13 押え板
13´ 留めバネ板
130 間隔
131 取付部
132 遮蔽部
2 固定板
M11 テールシール室
S セグメントリング
S(t) 仮セグメントリング
G ガイドリング
F 保持具
F10 中空部
F11 間隙
R リング体
T 発進立坑
T1 発進坑口
T2 反力構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10