(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】加熱された糸を冷却する装置
(51)【国際特許分類】
D02J 13/00 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
D02J13/00 S
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017201765
(22)【出願日】2017-10-18
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】10 2016 012 519.5
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン コンラート
(72)【発明者】
【氏名】フィリプ ユングベッカー
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ミュンスターマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ラマーカース
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011018179(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012024853(DE,A1)
【文献】特開平03-033207(JP,A)
【文献】特開平09-316742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された糸を冷却する装置であって、冷却体(1)を備えていて、該冷却体(1)は、前記糸を案内するために縦長の冷却溝(2)を有しており、該冷却溝(2)は、冷却液を供給するために、溝底部(4.1,4.2)における調量開口(3)を介して調量装置(5)に接続されている、装置において、
前記冷却溝(2)は、波形溝を付けられた溝底部(4.1)を備えた複数の案内部分(6.1)と、平滑な溝底部(4.2)を備えた少なくとも1つの案内部分(6.2)とを有しており、前記複数の案内部分(6.1)と前記少なくとも1つの案内部分(6.2)とは、交互に相前後して形成されており、前記調量開口(3)は、前記波形溝を付けられた溝底部(4.1)を備えた前記案内部分(6.1)のうちの1つの案内部分(6.1)に、前記冷却溝(2)の走入領域(20)において前置されて
おり、
前記平滑な溝底部(4.2)を備えた前記案内部分(6.2)は、前記波形溝を付けられた溝底部(4.1)を備えた前記案内部分(6.1)よりも大きな溝深さ(t
2
>t
1
)を有しており、
前記案内部分(6.1)の前記波形溝を付けられた溝底部(4.1)はそれぞれ、複数の凹設された溝ポケット(9)と、該溝ポケット(9)の間に位置し、糸走行方向に横方向に延びる複数の案内ウェブ(10)とによって形成されている
ことを特徴とする、加熱された糸を冷却する装置。
【請求項2】
前記案内部分(6.1,6.2)はそれぞれ、10mm~60mmの範囲における、前記冷却溝(2)の長さ部分を有している、請求項1
記載の装置。
【請求項3】
前記冷却溝(2)は、前記平滑な溝底部(4.2)を備えた複数の前記案内部分(6.2)を有しており、該案内部分(6.2)はそれぞれ間に、前記波形溝を付けられた溝底部(4.1)を備えた前記案内部分(6.1)のうちの少なくとも1つの案内部分(6.1)を挟んでいる、請求項1
または2記載の装置。
【請求項4】
前記冷却溝(2)の前記案内部分(6.1,6.2)は、前記溝底部(4.1,4.2)が糸走行方向において300mm~1000mmの範囲における半径を有する案内曲率を有するように、互いに対して配置されている、請求項1から
3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記冷却溝(2)の前記案内部分(6.1,6.2)は、前記冷却体(1)の互いに相前後して配置された複数のセグメント(11.1~11.7)によって形成されており、該セグメント(11.1~11.7)は支持体(12)によって保持されている、請求項1から
4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記波形溝を付けられた溝底部(4.1)を備えた前記案内部分(6.1)を有する、前記冷却体(1)の前記セグメント(11.1~11.7)と、前記平滑な溝底部(4.2)を備えた前記案内部分(6.2)を有する、前記冷却体(1)の前記セグメント(11.1~11.7)とは、互いに異なる材料から形成されている、請求項
5記載の装置。
【請求項7】
前記冷却体(1)は、ハウジング(13)の内部において糸入口(14)と糸出口(15)との間に配置されており、前記糸出口(15)の領域において前記ハウジング(13)に、吸込み開口(17)が形成されていて、該吸込み開口(17)は吸込み装置に接続可能である、請求項1から
6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記吸込み開口(17)は、ハウジング底部(16)において前記冷却体(1)と前記糸出口(15)との間に形成されている、請求項
7記載の装置。
【請求項9】
前記ハウジング(13)の前記糸入口(14)に、入口糸ガイド(14.1)が対応配置されていて、前記ハウジング(13)の前記糸出口(15)に、出口糸ガイド(15.1)が対応配置されている、請求項
7または
8記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載された、加熱された糸を冷却する装置に関する。
【0002】
合成糸の製造時に、溶融紡糸後に生じる平滑な糸にテクスチャリング加工プロセスにおいて巻縮加工を施すことが公知である。そのために糸においては、いわゆるテクスチャリング加工ゾーンの内部において仮撚りが生ぜしめられ、この仮撚りは、熱処理によって糸のフィラメントにおいて固定される。例えば通常、合成糸はテクスチャリング加工ゾーンにおいて最初に200℃の範囲における温度に加熱される。このときに得られた、糸材料の塑性状態によって、個々のフィラメントにおいて撚りが加えられる(einpraegen)。この糸構造を固定するために、糸は次いで直ぐに約80℃の温度に冷却される。糸の冷却は、好ましくは、空気冷却式の冷却レールによって実施され、この冷却レールの表面において糸は接触状態で案内される。しかしながらこのような冷却レールは、基本的に、糸の十分な冷却を達成するために、比較的長い冷却区間が必要であるという欠点を有している。さらに強い摩擦を回避するためには、可能な限り僅かな巻掛けで、冷却レールの早期の摩耗を阻止する糸ガイドが必要である。
【0003】
しかしながらまた従来技術において公知の、加熱された糸を冷却する別の装置では、可能な限り短い冷却区間を実現できるようにするために、糸の冷却は、冷却液を用いて実施される。本発明は、このような形式の従来技術から出発している。
【0004】
このような装置は、例えば欧州特許出願公開第0403098号明細書(EP 0 403 098 A2)に記載されている。この公知の、加熱された糸を冷却する装置では、冷却体は冷却溝を備えており、この冷却体は、冷却溝の溝底部内に、凹設された複数の溝ポケットを有している。冷却溝は、毛管を介して冷却液リザーバに連結されているので、冷却液は連続的に冷却溝内に収容されている。加熱された糸は、接触状態で冷却溝を通して案内され、冷却液によって冷却される。次いで糸は、後続の冷却レールを介して導かれる。
【0005】
公知の装置では、冷却体は、比較的短い冷却区間を形成しており、このとき余剰冷却液は、冷却体の終端部において捕集され、かつタンクに戻される。加熱された糸を冷却する、多数のこのような装置から成るテクスチャリング加工機においては、したがって冷却液を捕集しかつ冷却液損失を補充する装置が必要である。特に環境保護に対する要求を考慮すると、加熱された糸を冷却するこのような装置は、従来、確立することはできなかった。また余剰冷却液の再利用は、高い装置コストに結び付いている。
【0006】
ゆえに本発明の課題は、加熱された糸を冷却するこのような装置を、糸が可能な限り僅かな量の冷却液によって十分に冷却可能であるように改良することである。
【0007】
したがって本発明の目的はまた、加熱された糸を冷却するこのような装置を、可能な限り僅かな冷却液余剰量しか生じないように改善することである。
【0008】
この課題は、加熱された糸を冷却する装置によって、冷却溝が、波形溝を付けられた溝底部を備えた複数の案内部分と、平滑な溝底部を備えた少なくとも1つの案内部分とを有しており、複数の案内部と少なくとも1つの案内部分とが、交互に相前後して形成されており、調量開口が、波形溝を付けられた溝底部を備えた案内部分のうちの1つの案内部分に、冷却溝の走入領域において前置されていることによって解決される。
【0009】
本発明の好適な発展形態は、それぞれの従属請求項の特徴および特徴の組合せによって定義されている。
【0010】
本発明は、冷却溝の波形溝を付けられた溝底部が冷却溝の走入領域において糸の湿潤を著しく強化するということを認識した。例えば、糸に供給された冷却液の連続的な随伴は、溝底部における波形溝によって阻止される。他方において、溝底部における波形溝は、糸に付着する蒸発しなかった残留冷却液を掻き取るため、かつ冷却溝内に留まらせるために適している。このようにして糸を、比較的長い区間にわたって均一に湿潤させることができるので、得られる冷却効果が強力になる。この冷却効果を糸冷却のために完全に利用できるようにするために、少なくとも1つの案内部分が、平滑な溝底部を備えており、この溝底部において糸は、予め供給された冷却液によって冷却される。したがって冷却溝の異なった案内部分は、最小の冷却液供給による強力な冷却を促進する。
【0011】
平滑な溝底部を備えた案内部分が、波形溝を付けられた溝底部を備えた案内部分よりも大きな溝深さを有していることによって、冷却溝の内部における冷却効果をさらに改善することができる。糸は、接触状態および非接触状態で冷却溝を通して案内することができる。平滑な溝底部を備えた案内部分においては、糸は接触しないので、冷却液だけが糸の冷却のために作用する。
【0012】
糸が冷却溝の内部において確実な案内を得るために、案内部分の波形溝を付けられた溝底部はそれぞれ、複数の凹設された溝ポケットと、該溝ポケットの間に位置する複数の案内ウェブとによって形成されている。このように構成されていると、糸は案内ウェブにおける接触状態で冷却溝を貫通走行することができる。
【0013】
冷却溝の長さは、一般的に、その都度の冷却すべき糸およびその糸番手に関連して選択される。例えば、比較的大きな糸番手を有する糸は、比較的長い冷却溝を必要とする。それぞれの糸型式において効果的な冷却のための本発明に係る作用を得るために、本発明の好適な発展形態では、案内部分はそれぞれ、10mm~60mmの範囲における、冷却溝の長さ部分を有している。
【0014】
例えば、大きな糸番手、および相応に長い冷却溝の場合には、平滑な溝底部を備えた複数の案内部分を設けることが通常である。このとき、平滑な溝底部を備えた案内部分はそれぞれ常に、波形溝を付けられた溝底部を備えた案内部分のうちの1つを挟んでいるので、冷却溝においては接触ゾーンと非接触ゾーンとが交互に連続している。
【0015】
糸が、冷却溝の比較的大きな長さにおいても、冷却溝の溝底部において確実に案内されるようにするために、さらに、冷却溝の案内部分は、溝底部が糸走行方向において300mm~1000mmの範囲における半径を有する案内曲率を有するように、互いに対して配置されている。このように構成されていると、特にテクスチャリング加工機においては、追加的に摩耗を高めることなしに比較的強い糸変向を達成することができる。
【0016】
冷却溝の案内部分は、基本的に、一体の冷却体において形成することができる。このような冷却溝を製造するために、しかしながら本発明の好適な発展形態では、冷却溝の案内部分が、冷却体の互いに相前後して配置された複数のセグメントによって形成されており、該セグメントは支持体によって保持されている。このように構成されていると、まとめられたセグメントは、糸案内のために必要な冷却溝を備えた冷却体を生ぜしめる。
【0017】
このとき特に好適であることが分かっている、本発明の発展形態では、波形溝を付けられた溝底部を備えた案内部分を有する、冷却体のセグメントと、平滑な溝底部を備えた案内部分を有する、冷却体のセグメントとは、互いに異なる材料から形成されている。このように構成されていると、冷却溝における糸接触のために必要なセグメントを、相応に耐摩耗性の材料によって形成することができる。
【0018】
直接的な機械周囲に対して負荷を加えないようにするために、本発明の特に好適な本発明に係る発展形態では、冷却体は、ハウジングの内部において糸入口と糸出口との間に配置されており、糸出口の領域においてハウジングに、吸込み開口が形成されていて、該吸込み開口は吸込み装置に接続可能である。このように構成されていると、糸の冷却時に発生する蒸気が妨げられずに周囲に流出することが、阻止される。
【0019】
なお生じ得る残留冷却液をも蒸気と一緒に排出するために、さらに、吸込み開口は、ハウジング底部において冷却体と糸出口との間に形成されている。このように構成されていると、ハウジングからの流出前における自由に案内される糸部分に対して吸込み作用を及ぼすために、吸込み流を好適に利用することができる。
【0020】
糸を冷却する装置を、可能な限りフレキシブルに機械フレームもしくは糸走路に組み込むことができるようにするために、本発明の好適な発展形態では、ハウジングの糸入口に、入口糸ガイドが対応配置されていて、ハウジングの糸出口に、出口糸ガイドが対応配置されている。このように構成されていると、再現可能な糸ガイドを好適に生ぜしめることができる。繊維機械の内部における冷却体の特別な方向付けは、不要である。
【0021】
したがって本発明に係る装置は、複数の加工ユニットを備えたテクスチャリング加工機において使用するために、特に適している。各加工ユニットにおいて、本発明に係る装置によって、等しい処理、ひいては均一な冷却を実施することができる。
【0022】
次に、加熱された糸を冷却する本発明に係る装置を、添付の図面を参照しながら複数の実施形態について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る装置の第1実施形態を概略的に示す縦断面図である。
【
図2】
図2.1は
図1に示した実施形態の概略的な横断面図であり、
図2.2は
図1に示した実施形態の別の概略的な横断面図である。
【
図3】本発明に係る装置の別の実施形態を概略的に示す縦断面図である。
【0024】
図1、
図2.1および
図2.2には、加熱された糸を冷却する本発明に係る装置の第1実施形態が、複数の図面で概略的に示されている。
図1には、本実施形態が縦断面図で示され、
図2.1および
図2.2には、本実施形態の2つの横断面図が示されている。したがって図面のうちの1つを明瞭に参照しない場合には、以下の記載は両方の図面に対するものである。
【0025】
本実施形態は、縦長の冷却体1を有している。この冷却体1の上側には、開放した冷却溝2が延びている。冷却溝2は、冷却体1の両端面部に到るまで延びている。したがって冷却溝2は、一方の端面部において糸走入部7を形成し、かつ反対側に位置する端面部において糸走出部8を形成している。
【0026】
糸を糸走入部7と糸走出部8との間で冷却溝2の内部において案内するために、冷却溝2は、波形溝を付けられた(geriffelt)溝底部4.1を備えた複数の案内部分6.1と、平滑な溝底部4.2を備えた複数の案内部分6.2とを有している。これらの案内部分6.1,6.2は、糸走行方向において冷却溝2内に交互に形成されている。
【0027】
糸走入部7には、波形溝を付けられた溝底部4.1を備えた第1の案内部分6.1が対応配置されている。第1の案内部分6.1の、波形溝を付けられた溝底部4.1には、走入領域20が前置されており、この走入領域20において調量開口3が開口している。調量開口3は、冷却体の内部における調量通路を介して流体管路5.1に接続されている。流体管路5.1は、調量装置5に連結されており、この調量装置5は、調量手段5.2および容器5.3を有している。調量手段5.2は、好ましくは調量ポンプとして形成されており、このとき容器5.3内には冷却液が収容されている。
【0028】
図1、
図2.1および
図2.2の図面から分かるように、案内部分6.1,6.2は、それぞれの溝底部4.1,4.2において異なった溝深さを有している。
【0029】
図2.1には、波形溝を付けられた溝底部4.1を備えた案内部分6.1の横断面が示されている。波形溝を付けられた溝底部4.1は、深く形成されて配置された複数の溝ポケット9と複数の案内ウェブ10とによって形成され、これらの案内ウェブ10は、溝ポケット9の間において隆起している。案内ウェブ10は、符号t
1で示された溝深さを有している。溝ポケット9は、冷却体1内に深く形成されていて、
図2.1において符号t
3で示された比較的大きな溝深さを有している。案内ウェブ10は、ほんの数mmであるウェブ幅を備えて形成されている。同様に溝ポケットは、数mmの小さな幅を有している。
【0030】
図2.2には、平滑な溝底部4.2を備えた案内部分6.2の横断面が示されている。平滑な溝底部4.2は、
図2.2に符号t
2によって示された溝深さを有している。平滑な溝底部4.2の溝深さt
2は、波形溝を付けられた溝底部4.1の溝深さt
1よりも幾分大きく形成されている。したがってt
2>t
1という関係が成り立つ。
【0031】
図1の図面から分かるように、冷却溝2の案内部分6.1,6.2は互いに、溝底部4.1,4.2が糸走行方向において半径Rを有する案内曲率を形成するように配置されている。冷却溝2もしくは冷却体1の長さに関連して、および糸番手に関連して、案内曲率の半径Rは、300mm~1000mmの範囲にある。これによって糸走入部7と糸走出部8との間においては、確実な糸案内が達成される。このとき糸は、波形溝を付けられた溝底部4.1を備えた案内部分6.1においてしか接触して案内されない。平滑な溝底部4.2を備えた案内部分6.2において糸は、接触なしに案内される。これによって糸案内時に冷却溝の内部においては、接触ゾーンと非接触ゾーンとが生じる。
【0032】
作動中には、調量装置5を介して少量の冷却液が調量されて、糸走入部7の領域において案内部分6.1に供給される。走行する糸によって、冷却液は部分的に直に受け止められ、かつ溝底部4.1の波形溝を付けられた構造を介して分配される。これによって、糸を湿潤させるための比較的長い接触ゾーンが得られる。案内部分6.1はそのために、長さ部分L1を有しており、この長さ部分L1は、糸番手に応じて20mm~60mmの範囲を有している。
【0033】
冷却溝2のさらなる延在領域において、非接触ゾーン続いており、この非接触ゾーンにおいて糸は、案内部分のうちの1つの案内部分6.2において接触なしに案内される。この案内部分において、塗布された液体は糸を冷却するために作用する。案内部分6.2は同様に、冷却溝2の長さ部分を有しており、この長さ部分は、糸番手に応じて等しい長さを有している。この長さ部分は、
図1では符号L
2によって示されていて、10mm~60mmの範囲にある。
【0034】
冷却溝2のさらなる延在領域において、波形溝を付けられた溝底部4.1を備えた接触ゾーンと、平滑な溝底部4.2を備えた非接触ゾーンと、波形溝を付けられた溝底部4.1を備えた、糸走出部8に対応配置された別の案内部分6.1とが続いている。波形溝を付けられた溝底部4.1を備えた中央の案内部分6.1は、一方では、余剰冷却液を糸から除去し、かつ同時に湿潤を均一化させ、これによってさらなる冷却を得ることができる。糸走出部8における最後の案内部分6.1において、糸はほぼ、付着する余剰冷却液なしに冷却溝2から導出される。
【0035】
波形溝を付けられた溝底部4.1と平滑な溝底部4.2とが交互に組み合わせられていることによって、糸の強力な冷却が、最小の冷却液使用量によって達成される。これによって余剰冷却液を好適に回避することができる。
【0036】
冷却時に発生する蒸気を機械周囲に放出しないようにするために、冷却体は、通常ハウジング内にカプセル化されている。そのために
図3には、加熱された糸を冷却する本発明に係る装置の別の実施形態が、縦断面図で概略的に示されている。
図3に示された実施形態において、冷却体1は複数のセグメント11.1~11.7によって形成されており、これらのセグメント11.1~11.7は、その表面にそれぞれ、開放した冷却溝2の部分領域を有している。セグメント11.1~11.7は、相前後して配置されていて、支持体12によって保持されている。このときセグメント11.1~11.7のそれぞれは、波形溝を付けられた溝底部4.1を備えた案内部分6.1、また平滑な溝底部4.2を備えた案内部分6.2を形成している。セグメント11.1~11.7によって形成された案内部分6.1または6.2は、横断面において、
図2.1および
図2.2に示した実施形態と同一に形成されている。したがって糸は、セグメント11.1,11.3,11.5,11.7において接触して案内される。セグメント11.2,11.4,11.6は、平滑な溝底部4.2を有しているので、糸はここでは接触なしに案内される。
【0037】
支持体12とセグメント11.1~11.7とによって形成された冷却体1は、ハウジング13の内部に配置されている。ハウジング13は、冷却体1を取り囲んでおり、このとき冷却体1は、ハウジング13の内部において糸入口14と糸出口15との間に配置されている。本実施形態において糸入口14は、入口糸ガイド14.1によって形成され、糸出口15は出口糸ガイド15.1によって形成される。基本的に、糸ガイド14.1,15.1は、糸入口14および糸出口15とは無関係に、ハウジング13の内部に配置されていても、またはハウジング13の外部に配置されていてもよい。
【0038】
本実施形態において入口糸ガイド14.1および出口糸ガイド15.1は、冷却体1の端面部に対して短い間隔をもって配置されている。このとき糸ガイド14.1,15.1の案内溝は、糸案内のために冷却溝2の溝底部4.1と共働する。
【0039】
糸出口15の領域には、ハウジング13の内部においてハウジング底部16に吸込み開口17が形成されている。この吸込み開口17は、冷却体1の端面部と出口糸ガイド15.1との間に配置されている。吸込み開口17は、吸込み管路18を介して、ここには詳しく示されていない吸込み装置に連結されている。
【0040】
ハウジング13は、反対に位置する側において走入領域に、空気開口19を有している。空気開口19は、入口糸ガイド14.1と冷却体1の端面部との間の領域において形成されている。空気開口19は、ハウジング13の周囲に対して開口している。
【0041】
冷却液の供給は、ハウジングの外側に配置された調量装置5によって保証される。調量装置5はそのために、調量手段、例えば調量ポンプと容器5.3とを有しており、この容器5.3は、冷却液によって満たされている。調量手段5.2は、流体管路5.1を介して、冷却体1の第1のセグメント11.1内において調量通路3.1に接続されている。
【0042】
作動中、調量装置5は予め確定された量の冷却液を連続的に、調量開口3を介して冷却溝2の走入領域20内に圧送する。そのために走入領域20は、第1のセグメント11.1において案内部分6.1に前置されている。冷却溝2における走入領域20は、このとき、波形溝を付けられた溝底部4.1に対してほぼ同一の溝深さを有している。
【0043】
加熱された糸を冷却するために、糸はプロセス開始時にハウジング13内に挿通される。糸はこのとき、入口糸ガイド14.1および出口糸ガイド15.1によって、冷却溝2を通して案内される。糸は、案内部分6.1の、波形溝を付けられた溝底部4.1との接触状態で、冷却溝2を通過走行する。本実施形態では、糸を接触状態で冷却溝2において案内するために、全部で4つのセグメント11.1,11.3,11.5,11.7が設けられている。このとき糸は、冷却液によって湿潤され、かつ冷却液の蒸発によって冷却される。このときに発生する蒸気は、ハウジング13内において集められ、吸込み開口17を介して排出される。このとき連続的な新鮮空気流が、空気開口19を介してハウジング13の内部に導入される。糸走行方向においては均一な空気流が発生し、この空気流は、冷却溝2の上側における蒸気の排出を促進する。さらに糸出口側において空気流は、冷却体1と出口糸ガイド15.1との間において自由に案内される糸部分にルーズに付着する残留冷却液を、糸から吸い取るのに使用される。これによって、ハウジング13からの残留液の侵出を回避することができる。
【0044】
加熱された糸を冷却する本発明に係る装置は、互いに並んで位置する複数の加工ユニットを備えたテクスチャリング加工機において使用するために、特に適している。例えば、1つのテクスチャリング加工機において、複数のこのような装置を使用することができる。冷却液による糸の強力な冷却にもかかわらず、テクスチャリング加工機において周囲に対する負荷は発生しない。極めて僅かな残留液量に基づいて、糸の冷却後における冷却液の捕集および再利用(Aufbereiten)は不要である。
【0045】
図示の実施形態において、冷却溝の異なった案内部分の数は一例である。糸案内のために、冷却溝の少なくとも糸走入部および糸走出部において、波形溝を付けられた溝底部を備えた1つの案内部分が必要になる。このような場合に冷却溝は、平滑な溝底部を備えたただ1つの案内部分だけを中央領域に有することになる。異なった案内部分の長さは、等しく形成されていても、または異なった長さで形成されていてもよい。