(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】合成糸用の冷却装置
(51)【国際特許分類】
D02J 13/00 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
D02J13/00 S
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017201768
(22)【出願日】2017-10-18
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】10 2016 012 512.8
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン コンラート
(72)【発明者】
【氏名】フィリプ ユングベッカー
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ミュンスターマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ラマーカース
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第04227115(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011018179(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012024853(DE,A1)
【文献】特開平09-157973(JP,A)
【文献】特開平09-316742(JP,A)
【文献】国際公開第2017/089191(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成糸用の冷却装置
であって、
縦長の冷却体(1)を備えていて、該冷却体(1)は、前記糸を案内するために、開放された冷却溝(2)を有しており、このとき該冷却溝(2)は、溝底部(4.1,4.2)における調量開口(5)を介して、冷却液を供給するための調量装置(6)に接続されている、冷却装置において、
前記冷却体(1)は、糸走入部(7)において少なくとも1つのセラミック挿入体(3.1)を有しており、該セラミック挿入体(3.1)は、波形溝を付けられた溝底部(4.1)を前記冷却溝(2)内に形成し、前記セラミック挿入体(3.1)の表面において、前記糸は接触しながら案内可能であり、このとき前記調量開口(5)は、前記セラミック挿入体(3.1)に対応配置されていることを特徴とする、合成糸用の冷却装置。
【請求項2】
前記調量開口(5)は、前記セラミック挿入体における、前記波形溝を付けられた溝底部(4.1)に前置されていて、前記冷却溝(2)の前記溝底部(4.1)の走入ゾーン(7.1)に開口している、請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却体(1)は、前記冷却溝(2)の糸走出部(8)において、前記波形溝を付けられた溝底部(4.1)を有する少なくとも1つの別のセラミック挿入体(3.2)を有し、このとき前記冷却溝(2)は、前記両方のセラミック挿入体(3.1,3.2)の間に、平滑な溝底部(4.2)を有する少なくとも1つの案内部分を有している、請求項1または2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記平滑な溝底部(4.2)を有する前記案内部分は、前記波形溝を付けられた溝底部(4.1)を有する前記セラミック挿入体(3.1,3.2)より大きな溝深さを備えている、請求項3記載の冷却装置。
【請求項5】
前記セラミック挿入体(3.1,3.2)は、10mm~60mmの範囲にある、前記冷却溝(2)の長さ部分をそれぞれ形成している、請求項1から4までのいずれか1項記載の冷却装置。
【請求項6】
前記セラミック挿入体(3.1,3.2)は、前記溝底部(4.1)が、糸走行方向に沿って300mm~1000mmの範囲の半径(R)を有する案内曲率を備えるように、前記冷却体(1)において互いに配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の冷却装置。
【請求項7】
前記冷却体(1)は、前記冷却溝(2)を形成するために、前記複数のセラミック挿入体(3.1,3.2)および複数の材料挿入体(11.1~11.3)を有しており、該セラミック挿入体(3.1,3.2)および該材料挿入体(11.1~11.3)は、前記冷却溝(2)の少なくとも1つの溝底部をそれぞれ形成し、かつ交互に1つの支持体(12)に保持されていて、このとき前記材料挿入体(11.1~11.3)は、前記平滑な溝底部(4.2)を有する前記案内部分をそれぞれ形成している、請求項1から6までのいずれか1項記載の冷却装置。
【請求項8】
前記材料挿入体(11.1~11.3)と前記支持体(12)とは、一体に形成されている、請求項7記載の冷却装置。
【請求項9】
前記冷却体(1)は、ハウジング(13)の内部において糸入口(14)と糸出口(15)との間に配置されていて、前記糸出口(15)の領域において前記ハウジング(13)に、吸込み開口(17)が形成されており、該吸込み開口(17)は、吸込み装置に接続可能である、請求項1から8までのいずれか1項記載の冷却装置。
【請求項10】
前記吸込み開口(17)は、ハウジング底部(16)において前記冷却体(1)と前記糸出口(15)との間に形成されている、請求項9記載の冷却装置。
【請求項11】
前記ハウジング(13)の前記糸入口(14)に、入口糸ガイド(14.1)が対応配置されていて、前記ハウジング(13)の前記糸出口(15)に、出口糸ガイド(15.1)が対応配置されている、請求項9または11記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成糸用の冷却装置、特に請求項1の上位概念に記載のテクスチャリング加工ゾーン内の撚糸用の冷却装置に関する。
【0002】
合成糸の製造の際には、溶融紡糸プロセスで製造されたマルチフィラメント糸が、紡績のための後置のプロセスにおいて巻縮されることが公知である。それによって合成糸は、天然繊維と同様の構造を得る。合成糸のさらなる処理は、複数のテクスチャリング加工機によって行われ、これらのテクスチャリング加工機は、各処理ユニットにおいてそれぞれ糸を巻縮するために、多数の加工ユニットを有している。糸の巻縮(いわゆるテクスチャリング加工とも呼ばれる)は、いわゆる仮撚り処理によって達成させることができる。このとき糸に、いわゆるテクスチャリング加工ゾーン内で熱処理される機械的な仮撚りが掛けられる。熱処理のために、撚糸は、約200℃の温度に加熱され、それに続いて再び冷却される。糸に掛けられた仮撚りは、糸走行方向と逆方向に伝播するので、糸に掛けられた撚りは、可能な限り妨げられることなく冷却装置を通過して加熱装置に入り込めるように保証されていなければならない。そのために、湾曲した冷却レールとして形成された冷却装置が通常使用される。このとき可能な限り大きな曲率半径を冷却レールに使用するので、撚糸と冷却レールの表面との間の接触摩擦を小さく保つことができる。このような冷却レールは、糸を冷却するために周囲空気のみを使用する。したがって、このような冷却装置は、比較的長い冷却区間を必要とし、この比較的長い冷却区間がゆえに、通常、テクスチャリング加工機は、多階層構造となる。
【0003】
従来技術では、糸の冷却が冷却液によって強化される冷却装置も公知である。このような形式の冷却装置は、例えば欧州特許出願公開第0403098号明細書(EP 0 403 098 A2)から公知である。このような冷却装置の場合、テクスチャリング加工ゾーン内の撚糸は、冷却体の表面に設けられた冷却溝を通って案内され、この冷却溝は、溝底部において、糸を湿潤させるための冷却液を保持している。糸の湿潤が、糸と接触レールとの間の糸の摩擦特性に有利に働くので、撚りの伝達が促進される。しかしながら、撚りが掛けられた糸構造ゆえに、冷却液の糸内部への浸透が困難である。仮撚りによって、固有のダイナミクスが生じて、糸によってただ連行されて冷却溝から出る際には飛び散る冷却液は、糸内部での付着が困難になる。特に比較的大きい番手の糸の場合は、その内部での冷却が十分なされないので、公知の冷却装置において、糸は、さらなる冷却のために引き続き冷却レールを介して案内される。
【0004】
したがって本発明の課題は、このような形式の冷却装置を改良して、糸の可能な限り強力な冷却を冷却流体の塗布によって達成させることである。
【0005】
本発明のさらなる別の目的は、残留冷却液の余剰分が可能な限りわずかであるように糸を湿潤させることである。
【0006】
このような課題は、本発明によれば、冷却体が、糸走入部において少なくとも1つのセラミック挿入体を有しており、このセラミック挿入体は、波形溝を付けられた溝底部を冷却溝内に形成し、このセラミック挿入体の、波形溝を付けられた表面において、糸は接触しながら案内可能であり、このとき調量開口が、セラミック挿入体に対応配置されていることによって達成される。
【0007】
有利な発展形態は、それぞれの従属請求項の特徴および特徴の組合せによって定義されている。
【0008】
本発明は、冷却液が、直接糸によって連行されることなく、冷却溝内で湿潤ゾーンを介して分配されている、という特別な利点を有している。このとき糸は、波形溝を付けられた溝底部を冷却溝内で形成するセラミック挿入体において、接触しながら案内される。このように糸を、強力な接触にもかかわらず糸における摩擦を制限しかつ撚りの妨げにならない複数の支持ユニットを介して案内することができる。冷却液が充填されている溝底部の溝によって、特に初期段階で発生する、糸における液体の著しい蒸発は阻止され、常時新たに糸に液体が塗布される。
【0009】
このとき冷却液の供給は、波形溝を付けられた溝底部に前置された、溝底部の走入ゾーンで行われることが好ましい。したがって調量開口は、糸が接触しながらまたは好ましくは接触せずに通り抜ける走入ゾーンに開口している。それによって、冷却溝への冷却液の連続する調量供給が可能である。
【0010】
テクスチャリング加工ゾーン内に案内された糸は、後続のテクスチャリング加工アセンブリに対応配置された冷却装置の特に糸出口において高い固有のダイナミクスを有しているので、安定した糸案内のために、本発明の発展形態が好適に実施される。この発展形態では、冷却体が、冷却溝の糸出口において、波形溝を付けられた溝底部を有する少なくとも1つの別のセラミック挿入体を備え、このとき冷却溝は、これらのセラミック挿入体の間に、平滑な溝底部を有する少なくとも1つの案内部分を備えている。したがって、許容できないような高い糸摩擦が生じることなく、糸出口においても糸が十分に接触しながら、冷却溝内で糸を案内することができる。さらに糸に発生し得る残留液体を、溝底部に留めることができる。したがって、糸が冷却溝を出た後の液体の滴下を回避することができる。
【0011】
糸走入部におけるセラミック挿入体と糸走出部におけるセラミック挿入体との間の案内部分を冷却のために使用可能にするために、案内部分の平滑な溝底部は、波形溝を付けられた溝底部を有するセラミック挿入体より大きな溝深さを有している。したがって、糸の接触が回避され、自由に案内される糸の均一な冷却が達成される。
【0012】
特に糸走入部において糸の番手に依存して調量して糸を湿潤させることを可能にするために、セラミック挿入体は、糸番手に応じて10mm~60mmの範囲にある、冷却溝の長さ部分をそれぞれ有している。例えばこのようなセラミック挿入体を、いくつか冷却溝内に互いに間隔を置いて形成してもよい。
【0013】
セラミック挿入体の、波形溝を付けられた溝底部構造に基づいて、テクスチャリング加工ゾーン内で比較的大きな糸の変向を実現することができる。例えばセラミック挿入体は、溝底部が、糸走行方向において300mm~1000mmの範囲の半径を有する案内曲率を備えるように、冷却体において互いに配置されていることが好ましい。それによって、テクスチャリング加工機内における非常にコンパクトなテクスチャリング加工ゾーンを実現することができる。
【0014】
冷却体における冷却溝の構造は、セグメント形状での実施が有利であるので、個々の冷却溝部分は、交互にセラミック挿入体または材料挿入体によって形成され、このときセラミック挿入体および材料挿入体は、共に1つの支持体に保持されている。セラミック挿入体は、糸の接触案内のために、冷却溝の案内部分を形成し、材料挿入体は、糸の非接触案内のために、平滑な溝底部を有する案内部分をそれぞれ形成している。
【0015】
しかしながら、このとき材料挿入体と支持体とを一体に形成することも可能である。
【0016】
蒸気が発生すること、ならびに周囲が汚れることを回避するために、本発明の発展形態によると、冷却体は、ハウジングの内部において糸入口と糸出口との間に配置されていて、糸出口の領域においてハウジングに、吸込み開口が形成されており、この吸込み開口は、吸込み装置に接続可能であることが特に好ましい。
【0017】
蒸気だけでなく可能な限りの残留液体も排出可能にするために、吸込み開口は、ハウジング底部において冷却体と糸出口との間に形成されている。したがって、冷却体と糸出口との間を自由に案内される糸部分において案内される吸い込み流を発生させることができる。
【0018】
テクスチャリング加工ゾーン内の糸案内は、ハウジングの糸入口に、入口糸ガイドが対応配置されていて、かつハウジングの糸出口に、出口糸ガイドが対応配置されていることによって、特に本発明の発展形態により改良させることができる。それによって、糸が冷却溝に入り込んで導出される導入出角度を、特に正確かつ再現可能に調節することができる。このとき繊維機械内の冷却装置の個別の調整は必要ない。
【0019】
以下、添付の図面に示された複数の実施形態に基づき、合成糸用の本発明による冷却装置を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】冷却装置の第1の実施形態を、概略的に示した縦断面図である。
【
図2】
図2.1および
図2.2は、
図1の実施形態を、概略的に示した横断面図である。
【
図3】本発明による冷却装置の別の実施形態を、概略的に示した縦断面図である。
【
図4】本発明による冷却装置の別の実施形態を、概略的に示した縦断面図である。
【0021】
図1、
図2.1および
図2.2は、本発明による冷却装置の第1の実施形態を、それぞれ異なった方向から見た図である。
図1は、本発明による冷却装置の縦断面図を概略的に示していて、
図2.1および
図2.2は、本発明による冷却装置の横断面図をそれぞれ示している。したがって図面のうちの1つを明らかに参照していない場合は、以下の記載はすべての図面について云えることである。
【0022】
本発明による冷却装置の第1の実施形態は、縦長の冷却体1から成っている。冷却体1の表面には、開放された冷却溝2が延在している。冷却溝2は、糸走入部7と糸走出部8との間を延在しており、これらの糸走入部7および糸走出部8は、冷却体1の端面部に形成されている。糸走入部7において、セラミック挿入体3.1が、冷却溝2内で冷却体1に保持されている。セラミック挿入体3.1は、冷却溝2に組み込まれていて、波形溝を付けられた(geriffelt)溝底部4.1を形成している。波形溝を付けられた溝底部4.1には、走入ゾーン7.1が前置されており、この走入ゾーン7.1は、糸走入部7を形成している。セラミック挿入体3.1の走入ゾーン7.1に、調量開口5が開口している。調量開口5は、セラミック挿入体3.1と冷却体1とを貫通する調量通路5.1を介して、調量装置6に接続されている。
【0023】
調量装置6は、流体管路6.1と調量手段6.2と容器6.3とを有している。容器6.3内に冷却液が収容されており、この冷却液は、調量手段6.2(例えば調量ポンプ)および流体管路6.1を介して、調量通路5.1に供給される。
【0024】
セラミック挿入体3.1は、冷却溝2内を、
図1で符号Lが付されている長さ部分にわたって延在している。糸の番手に応じて、セラミック挿入体3.1は、10mm~60mmの範囲にある長さ部分を有している。
【0025】
図1の図面から判るように、糸走出部8には、同様にセラミック挿入体3.2が対応配置されている。セラミック挿入体3.2は、冷却溝2に組み込まれていて、かつ波形溝を付けられた溝底部4.1を形成している。セラミック挿入体3.1,3.2の、波形溝を付けられた溝底部4.1は、ほぼ同一に形成されている。セラミック挿入体3.1,3.2をさらに説明するために、
図2.1には、波形溝を付けられた溝底部の領域におけるセラミック挿入体3.1の横断面図が示されている。
【0026】
図2.1から判るように、セラミック挿入体3.1は、冷却溝2を形成するために冷却体1に埋め込まれている。このとき波形溝を付けられた溝底部4.1は、凹設された複数の溝9および凸設された複数のウェブ10によって形成されている。ウェブ10は、好ましくは数mmの幅を有している。このとき溝9およびウェブ10は、同じ幅を有するか、または異なる幅を有していてよい。
【0027】
ウェブ10は、溝底部4.1を形成し、
図2.1に符号t
1で示されている溝深さを有している。それに対して、溝9は、それより大きな溝深さを有して形成されており、この溝深さは、
図2.1に符号t
3で示されている。
【0028】
図1から判るように、セラミック挿入体3.1と3.2との間の中央領域の冷却溝2は、平滑な溝底部4.2を有する案内部分を備えている。このとき平滑な溝底部4.2の溝深さは、セラミック挿入体3.1,3.2における、波形溝を付けられた溝底部4.1の溝深さより大きく形成されている。平滑な溝底部4.2の溝深さは、
図1および
図2.2に符号t
2で示されている。そのようにすることによって、糸は、糸走入部7と糸走出部8でのみ、冷却溝2の、波形溝を付けられた溝底部4.1において接触しながら案内される。中央領域において、糸は、冷却溝2の平滑な溝底4.2の上側と接触せずに案内される。
【0029】
作動時には、調量装置6を介して冷却液が冷却溝2に供給される。冷却液は、セラミック挿入体3.1の走入ゾーン7.1において、調量開口5を介して流れ込む。このとき走入ゾーン7.1は、波形溝を付けられた溝底部4.1と比較すると、同一またはより大きい溝深さを有していてよい。好ましくは、走入ゾーン7.1の溝深さが、波形溝を付けられた溝底部4.1の溝深さよりわずかに大きくなるように選択される。したがって冷却溝2へ走入する際の糸の第1の接触は、波形溝を付けられた溝底部4.1において行われる。流入する冷却液の一部は、走行する糸によって吸収され、また一部は、波形溝を付けられた溝底部4.1を介して分配される。したがってセラミック挿入体3.1の長さ部分Lは、走行する糸に冷却液が供給される湿潤ゾーンを形成している。
【0030】
糸と波形溝を付けられた溝底部4.1との間の強力な接触を得るために、セラミック挿入体3.1,3.2は、糸走行方向に半径Rを有する案内曲線を形成している。これについては、半径Rが、
図1に概略的に示されている。糸を案内するための案内曲率半径Rは、通常、300mm~1000mmの範囲にある。
【0031】
そうすることによって、糸は、セラミック挿入体3.1,3.2の範囲でのみ接触しながら案内される。中央領域において、糸は、接触せずに冷却溝2内を案内され、このとき糸の周囲のすべての方向に向かって自由蒸発が可能であり、ひいては集中的な冷却が達成される。
【0032】
冷却装置の周囲が汚れることを防止するために、冷却体1は、好ましくはハウジング内に配置されている。これについて
図3には、冷却装置の別の実施形態が、概略的に縦断面図として示されている。
【0033】
図3に示された実施形態は、複数部材から成る冷却体1を有している。冷却体1は、本実施形態では、1つの支持体12と、複数のセラミック挿入体3.1と、複数の材料挿入体11.1,11.2,11.3とによって形成されている。セラミック挿入体3.1~3.4および材料挿入体11.1~11.3は、交互に支持体12上に保持されていて、それらの上面において開放された冷却溝2を形成している。そうすることによって、挿入体3.1~3.4および11.1~11.3は、それぞれが冷却溝2の一部分を形成している。
【0034】
セラミック挿入体3.1は、走入ゾーン7.1と溝底部4.1における波形溝とを有する上述の実施形態と同一に形成されている。その他のセラミック挿入体3.2,3.3,3.4は、すべて波形溝を付けられた溝底部4.1を有している。
【0035】
それに対して材料挿入体11.1,11.2,11.3は、冷却溝2内に平滑な溝底部4.2を形成している。このとき平滑な溝底部4.2は、冷却溝2内の溝深さがより大きく形成されているので、糸は、波形溝を付けられた溝底部4.1においてのみ接触しながら案内されている。
【0036】
セラミック挿入体3.1には、調量通路5.1を介して調量装置6に接続されている調量開口5が、対応配置されている。
【0037】
冷却体1は、ハウジング13内部において糸入口14と糸出口15との間を延在している。糸入口14および糸出口15は、それぞれハウジング13の端面部に形成されている。本実施形態において、糸入口14は、組み込まれた入口糸ガイド14.1によって形成され、糸出口15は、組み込まれた出口糸ガイド15.1によって形成されている。入口糸ガイド14.1および出口糸ガイド15.1は、好ましくはセラミックによって形成され、かつガイド溝を有している。基本的に糸ガイド14.1,15.1は、糸入口14および糸出口15に依存せずに、ハウジング13の内部に配置されていても、またはハウジング13の外部に配置されていてもよい。
【0038】
本実施形態において、入口糸ガイド14.1および出口糸ガイド15.1は、冷却溝2の糸走入部7および糸走出部8に対して短い間隔を置いて配置されている。このとき糸ガイド14.1,15.1のガイド溝は、糸案内のために冷却溝2内のセラミック挿入体3.1,3.4と共働する。
【0039】
糸出口15の領域には、吸込み開口17が、ハウジング13の内部でハウジング底部16に形成されている。吸込開口17は、冷却体1の端面部と出口糸ガイド15.1との間に配置されている。吸込み開口17は、吸込み管路18を介して、ここには詳しく示されていない吸込み装置に連結されている。
【0040】
その反対側の走入領域において、ハウジング13は、空気開口19を有している。空気開口19は、入口糸ガイド14.1と冷却体1の端面部との間の領域に形成されている。空気開口19は、ハウジング13の周囲において開口している。
【0041】
冷却液の供給は、ハウジング13の外側に配置された調量装置6によって保証される。そのために調量装置6は、例えば調量ポンプのような調量手段6.2と、冷却液によって満たされた容器6.3とを有している。調量手段6.2は、流体管路6.1を介して、冷却体の調量通路5.1に接続されている。
【0042】
作動時に、調量装置6は、所定の量の冷却液を冷却体1に連続的に圧送し、調量された冷却液は、走入ゾーン7.1の調量開口5を介して冷却溝2に供給される。加熱された糸を冷却するために、合成糸(特にテクスチャリング加工プロセスで撚りが掛けられた糸)は、冷却溝2を通って案内される。糸は、セラミック挿入体3.1,3.2,3.3,3.4の表面において接触しながら冷却溝2を通り抜ける。このとき、液体が溝底部4.1の波形溝構造体に分配されているセラミック挿入体3.1において、糸を湿潤させる。
【0043】
糸の冷却の際に生じる蒸気は、ハウジング13内に集められ、吸込み開口17を介して排出される。このとき連続した新鮮空気流が、空気開口19を介してハウジング13の内部に導入される。このように糸走行方向において均一な空気流が生じ、この空気流は、冷却溝2上側における蒸気の排出を促進する。さらに糸出口側で、この空気流は、冷却体1と出口糸ガイド15.1との間を自由に案内される糸部分において、依然としてルーズに付着する残留冷却液を糸から吸い取るために使用される。そうすることによって、ハウジング13からの残留液の漏出が回避される。
【0044】
図3に示す実施形態において、冷却体は、種々様々な挿入体を有する、複数部材から成る構造を有している。冷却体1の構造を、挿入体によって形成された、平滑な溝底部を有する冷却溝部分が互いに接続しているようにすることも可能である。
【0045】
図4には、本発明による冷却装置の実現可能な別の実施形態が示されている。
図4に示される実施形態は、
図3の実施形態と実質的に同一であるので、ここでは相違点のみを説明する。
【0046】
図4に示す実施形態において、冷却体1は、支持体12および複数のセラミック挿入体3.1,3.2,3.3,3.4から形成される。そのために支持体12は、セラミック挿入体3.1~3.4の間に配置された、冷却溝2の複数の案内部分を有している。そうすることによって、冷却溝2の平滑な溝底部4.2は、支持体12と一体化されている。支持体12は、例えば、セラミック挿入体3.1~3.4が保持された、プラスチックから成る注型品または金属から成る鋳造品として形成されていてもよい。
【0047】
図4に示す実施形態において、ハウジング13は、その端面部に糸入口14および糸出口15をそれぞれ有している。このとき糸は、糸入口14を通って、糸ガイドなしで冷却体1に直接案内される。同様に出口側では、糸出口15に出口糸ガイドが対応配置されていない。このとき糸は、糸走入部7にセラミック挿入体3.1を介して直接案内され、糸走出部8にセラミック挿入体3.4によって案内される。
【0048】
糸を冷却する機能は、
図3に示す実施形態と同一であるので、ここではこれ以上の説明を省略する。
【0049】
本発明による冷却装置は、多数の処理ユニットを有するテクスチャリング加工機における使用に特に適している。