(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】真空砂型による製造法
(51)【国際特許分類】
B22C 9/03 20060101AFI20220304BHJP
B22D 30/00 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B22C9/03 Z
B22D30/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017219133
(22)【出願日】2017-11-14
【審査請求日】2020-11-04
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520426313
【氏名又は名称】エム ブッシュ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】M. Busch GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Ruhrstrasse 1, 59909 Bestwig, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュトラートマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ギュル
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-264819(JP,A)
【文献】特開昭57-085636(JP,A)
【文献】特開昭62-077148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/03
B22D 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂型(1)を用いて金属から鋳造品
(3)を製造する方法であって、
負圧造型法によって鋳枠(2)内で前記砂型(1)を造型するステップと、
前記鋳枠(2)内の造型された前記砂型(1)に液状金属を充填するステップと、
前記砂型(1)と、該砂型内で凝固する前記鋳造品(3)とを冷却液(4)により冷却するステップと、を有する方法において、
前記鋳枠(2)内の、負圧下にある前記砂型(1)にまず液状金属(5)を充填し、
次いで、負圧下にある前記砂型(1)を内部に備えた前記鋳枠(2)にいっぱいに、または部分的に冷却液(4)を供給し、
前記冷却液の供給後に、または供給と同時に、または供給前に、前記鋳枠(2)の、前記冷却液
の供給が行われる個所を開放し、これにより前記冷却液(4)は、負圧下にある前記砂型(1)内に吸収され、これにより凝固する前記鋳造品(3)を急冷する、ことを特徴とする鋳造品
(3)を製造する方法。
【請求項2】
前記冷却液(4)は水である、請求項1記載の鋳造品(3)を製造する方法。
【請求項3】
前記鋳枠(2)への前記冷却液(4)の供給を、
冷却槽(6)内
で行う、請求項1または2記載の鋳造品(3)を製造する方法。
【請求項4】
前記鋳枠(2)への前記冷却液(4)の供給を行うとき、前記鋳枠(2)を部分的に、または完全に前記冷却槽(6)内に浸漬する、請求項3記載の鋳造品(3)を製造する方法。
【請求項5】
前記鋳枠(2)は鋳込み位置で水平に、または水平軸線または鉛直軸線を中心として0°~180°の角度回転された位置で、前記冷却槽(6)内に浸漬される、請求項3または4記載の鋳造品(3)を製造する方法。
【請求項6】
前記冷却槽(6)への浸漬を時間的に制御して行う、請求項5記載の鋳造品(3)を製造する方法。
【請求項7】
前記砂型(1)の形状を前記鋳枠(2)内で負圧により維持する、請求項1から
6までのいずれか1項記載の鋳造品(3)を製造する方法。
【請求項8】
前記砂型(1)を珪砂か
ら形成する、請求項1から
7までのいずれか1項記載の鋳造品(3)を製造する方法。
【請求項9】
前記砂型(1)は粘結
剤を含まない、請求項1から
8までのいずれか1項記載の鋳造品(3)を製造する方法。
【請求項10】
前記鋳枠(2)の開放を、前記鋳枠のカバーフィルム(7)の除去により、または前記鋳枠(2)に位置するスライダ(8)によって行う、請求項1から
9までのいずれか1項記載の鋳造品(3)を製造する方法。
【請求項11】
前記
鋳造品(3)を製造する方法は、真空鋳造法または重力法である、請求項1から
10までのいずれか1項記載の鋳造品(3)を製造する方法。
【請求項12】
請求項1から
11までのいずれか1項記載の方法により鋳造品(3)を製造するための鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の砂型により金属から鋳造品を製造する方法に関する。
【0002】
本発明は特に、負圧造型法によって造型される砂型による鋳造品製造に関する。金属、例えば鉄合金、アルミニウム合金、またはマグネシウム合金から鋳造品を製造する鋳造法は一般に公知である。砂型を必要とする典型的な鋳造法は、重力鋳造または低圧鋳造である。
【0003】
低圧鋳造では、真空下もしくは負圧下にある砂型を備えた鋳枠が、圧力鋳込み装置の上方に位置決めされる。次いで真空下もしくは負圧下にある砂型を備えた鋳枠は、鋳枠の湯口を介して、圧力鋳込み装置の炉出口に結合されて、これに摩擦接続的に接続される。炉内における制御された圧力上昇により、液状金属が炉上昇管を介して圧力鋳込み装置の炉出口内へと上昇し、鋳枠の湯口を介して砂型の湯口内へと流れる。砂型の湯口はゲート領域へと通じていて、ゲート領域は液状金属の流れを、通路系を介して分配し、砂型の中空室を良好に満たす。液状金属が流れるときに乱流が生じないようにするために、または後の構成部品に機械的または化学的に(酸化プロセス)ネガティブな影響を与える材料特有の臨界速度を超えないように、液状金属の流れ速度は、圧力鋳込み装置の圧力を介して制御される。鋳込み後、製造される鋳造品が十分凝固して、鋳枠から取り出すことができるようになるまで砂型は冷却される。砂型は、砂が鋳造品から離れるように、例えば揺動テーブルを介してガイドされる。
【0004】
重力鋳造の際には砂型に上方から液状金属が充填される。金属は重力により主として乱流となって砂型の湯口内へと流れ、ここでやはりゲート領域において分配通路を介して鋳型の中空室内へと分配される。砂型の湯口で相応のフィルタを使用することにより、重力鋳造の際も層状の流れを形成することもできる。フィルタは、不純物または酸化物を液状金属から濾過することもできるという付加的な利点を有している。
【0005】
記載した低圧鋳造法または重力鋳造は特に、軽金属、例えばアルミニウム合金の鋳造のために使用される。
【0006】
工業規模の鋳造に関しては、鋳造装置をできるたけ効率的に運転させるのが重要である。したがって、個々の鋳造品の製造のために短いサイクル時間が得られるのが重要である。サイクル時間に関して重要な要素は、製造される構成部品の冷却時間である。砂型若しくは鋳枠から取り出すために、鋳造品が凝固するのが、もしくは十分堅固になるのが速いほど、より効率的に鋳造装置を運転させることができる。しかしながらさらに、液状金属の急速な冷却もしくは凝固によって製造される鋳造品について改善された機械特性も得られる。すなわち、溶融物の迅速な所望の冷却により、改善された機械特性を備えた金属組織が形成される(例えば、鋳造品の焼入れ)。
【0007】
砂型の冷却を加速するために、既に先行技術による解決手段が公知である。
【0008】
米国特許第7121318号明細書には、砂型(粘結剤による砂材集合体)に液状金属を充填した後、砂型を溶剤、例えば水に接触させることが提案されている。これにより縁部区域における液状金属はより急速に冷却され、ここで凝固し始める。凝固した表面を有する鋳造品の縁部領域はこの場合、やはり溶剤に直接接触して、これによりさらに急冷される。溶剤によって砂型は冷却された領域で溶解もされる。この米国特許は、砂型を、溶剤が充填された浴に浸漬することを提案している。
【0009】
別の文献、米国特許第7216691号明細書により、鋳型のより急速な冷却のために、もしくは砂型内に含まれる鋳造品をより急速に凝固させるために、液状金属で充填された砂型に水を噴射することが、または前記砂型を水浴に浸漬させることが、提案されている。この場合、砂型の溶解も目的とされている。砂型の個々の領域に冷却剤をねらい通りに供給することにより、区域的に方向付けられた急冷も得られ、ひいては製造される鋳造品において区域的に改善された機械的特性も得られる。
【0010】
PCT出願のドイツ語翻訳第112006000627号明細書には、好適にはアルミニウム合金から成る鋳造品の製造のための、改善された放熱を行う別の方法および砂型が記載されている。砂型と中子とは珪砂から成っており、この珪砂には、この珪砂が所望の形を維持するように水溶性の粘結剤が混合されている。製造したい鋳造品において所定の個所で所望の硬化を得るために、水溶性の中子が砂型の相応の個所に装着される。鋳造プロセスが行われた後、砂型の装着された水溶性中子を備えた個所に、噴射水が吹き付けられると、水溶性の粘結剤が溶解し、中子は洗い流される。これにより、比較的短い時間で凝固された縁部区域が鋳造品に形成されるだけでなく、中子が洗い流され、噴射水が直接凝固された鋳造品表面に接触すると、鋳造品はこの個所でもさらに急速に冷却される。これにより鋳造品の局所的な硬化も起こり得る。
【0011】
米国特許第4222429号明細書には、真空砂型のための冷却法が開示されている。 この場合、負圧下にある砂型に液状金属が充填される。吸引により砂型内に形成された負圧により、鋳造プロセスの際に、場合によっては付加的に生じるガス(気化したスチロール樹脂)が砂型から排出される。砂型の冷却のために、鋳造品の凝固に次いで、ガスを(多孔性の)鋳型からすすぎ出し、次いで再びここから吸引する。これにより鋳型および鋳造品の付加的な冷却もしくは急冷が実現される。冷却ガスとして、例えば空気が使用される。この空気はコンプレッサによって砂型内に送られる。空気の代わりに水蒸気によってすすがれてもよい。砂型をすすぐことにより、熱が排出される。冷却ガスもしくは空気によって砂型をすすぐことに加えて、砂型を外側からさらに水ですすぐことができる。
【0012】
したがって本発明の課題は、負圧造型法により造型される砂型の冷却と、この砂型内で凝固する鋳造品とを著しく改善する、鋳造品を製造する方法を提供することである。
【0013】
この課題は、請求項1に記載の鋳造品を製造する方法により解決される。
【0014】
砂型を用いて鋳造品を製造する公知の鋳造法は以下のステップ、すなわち、
負圧造型法によって鋳枠内で砂型を造型するステップと、
前記鋳枠内の造型された前記砂型に液状金属を充填するステップと、
前記砂型と、該砂型内で凝固する前記鋳造品とを冷却液(例えば、水)により冷却するステップと、を有している。
【0015】
しかしながら本発明による方法はさらに、
前記鋳枠内の、負圧下にある前記砂型にまず液状金属を充填するステップと、
次いで、負圧下にある前記砂型を内部に備えた前記鋳枠にいっぱいに、または部分的に冷却液を供給するステップと、
前記冷却液の供給後に、または供給直前に、前記鋳枠の、前記冷却液供給が行われる個所を開放し、これにより前記冷却液は、負圧下にある前記砂型内に吸収され、これにより凝固する前記鋳造品を急冷するステップと、を有している。
【0016】
本発明による方法は、公知の鋳造法に対して多数の利点を有している。負圧法で造型された砂型の使用により粘結剤は不要である(コスト削減)。砂の再利用が極めて容易である。高価で場所をとる砂再生装置は不要である。添加剤を必要としないので、本発明による製造法による砂消費は僅かであり、したがって環境負荷も少ない。負圧造型法により造型された砂型は型勾配を殆ど必要とせず、他の砂型とは異なりアンダカットも有することができる。負圧法により造型された砂型は水を含まないので、鋳造プロセスでは水蒸気が生じない。したがって、僅かな肉厚の鋳造品も鋳造可能である。これにより製造された鋳造品はさらに、小さい粒径の砂を使用することができるので、比較的高い寸法精度を有し、極めて繊細な表面を有することができる。鋳張りのない製造も可能である。鋳造品は次いで必ずしも砂吹きされる必要はない。
【0017】
本発明による製造法はさらに、全ての公知の現行の鋳造法で使用することができる。
【0018】
本発明による製造法では、水またはその他の冷却液による鋳造品の急冷を、吸引作用が生じることにより極めて高い割合で利用することができる。冷却液は極めて速く、かつ深く多孔性の砂型内に浸入するので、従来の冷却法よりも著しく高い鋳造品の急冷速度が得られる。砂型内の縁部が凝固した鋳造品が冷却液と接触することにより、熱は瞬時に排出される。卓越した冷却速度により、一次樹枝状結晶の形成および共晶凝固は極めて細かい粒となる。吸収効果は、砂粒間の中空室が粘結剤によりブロックされないことによりさらに改善される。したがって砂型は極めて多孔性であり、冷却液は負圧により砂型に瞬時に吸収され、流れが妨げられることはない。
【0019】
以下に本発明による製造法とその作用効果を実施例につき詳しく説明する。しかしながら明言しておくべきことは、本発明による方法と本発明の思想は、例に示した実施態様に限定されるものではないということである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】公知の負圧または真空造型法による砂型の造型を示す図である。
【
図2.1】負圧下にある砂型を備えた鋳枠の準備を示す図である。
【
図2.2】負圧下にある砂型を備えた鋳枠の準備を示す図であり、かつ液状金属の砂型への充填を示す図である。
【
図3.1】負圧下にある砂型の本発明による冷却と取り出しとを示す図である。
【
図3.2】負圧下にある砂型の本発明による冷却と取り出しとを示す図である。
【
図4.1】負圧下にある砂型の本発明による冷却と取り出しとの別の態様を示す図である。
【
図4.2】負圧下にある砂型の本発明による冷却と取り出しとの別の態様を示す図である。
【0021】
図1にはまず、負圧造型法による砂型の造型が示されている。図示した方法は先行技術であり、本発明による製造法でも使用することができる。第1図は、製造したい鋳造品形状の模型半部を有する負圧枠の準備を示している。模型半部には湯口型が取り付けられていて、この湯口を通って後に液状金属が砂型内へと流される。第2図には、砂型を造型するための第1のプロセスステップが示されている。この場合、フィルムもしくは模型フィルムが、塑性変形可能となるまで加熱される。次いで模型フィルムが上方から湯口型および模型半部の上方に降ろされる。下枠模型プレートの吸引により負圧が生じ(矢印参照)、この負圧により模型フィルムは模型半部と湯口型とに吸着される。模型半部と湯口型とには、模型フィルムの良好な吸着のために小さな孔が設けられている。模型フィルムは冷却され、象られた形に維持される。次いで付加的に、模型フィルムにさらに塗型を設けてもよい。第4図~第6図には、吸着された模型フィルムを備えた模型半部の上方で、鋳枠上方部分が位置決めされて、砂、例えば珪砂が充填されて、最後にカバーフィルムによって閉鎖される様子が示されている。鋳枠上方部分にも、そこから空気を吸引することにより(図面の矢印参照)今や負圧が形成されている。鋳枠上方部分における真空もしくは負圧はポンプにより安定的に保持されるので、鋳枠上方部分内の負圧は維持される。鋳枠上方部分は次いで、模型半部および湯口型から引き離される(第7図参照)。これにより、砂から造型された鋳型半部は、負圧を加えることにより、真空パックされた食品のように、その形に維持される。これにより生じる利点は既に上述した。下方の鋳型半部を有した鋳枠下方部分も同様に製造される。鋳枠上方部分は次いで、所属の鋳枠下方部分に接合され、互いに摩擦接続的に結合される。負圧下にある砂型を内部に有した鋳枠は今や、液状金属を充填する準備ができている(第8図参照)。液状金属が凝固して鋳造品となった後、負圧は解消されてもよく、製造された鋳造品を鋳枠から取り出すことができる(第9図参照)。
【0022】
次の両部分
図2.1および
図2.2には概略的に2つの部分から成る鋳枠2が示されている。各鋳枠半部2は、負圧下で保持される1つの砂型半部を有している。部分
図2.1にはさらに、両砂型半部が負圧により、模型フィルム12によって形成された形に保持される様子が示されている。両鋳造品型半部内の負圧はそれぞれ鋳枠2と、鋳枠カバーフィルム7と、模型フィルム12とによって保持される。概略図は、両鋳枠半部における吸引個所11を示しており、この吸引個所によって型半部から空気が吸引され負圧が形成される。鋳枠上方部分はさらに湯口10を有しており、この湯口から後続ステップで溶湯が閉じられた鋳造型内に注がれる。部分
図2.1によれば、負圧がかけられた両鋳枠半部は互いに載置されて、摩擦接続的に互いに結合される。部分
図2.2では両鋳枠半部は互いに接合されている。これらの鋳枠半部は互いに摩擦接続的に結合されているので、砂型は鋳込みプロセスの際には開かない。両鋳枠半部は実際の鋳枠2を形成する。この鋳枠2は、両砂型半部から成る接合された砂型1を内部に有している。接合された砂型1は、製造したい鋳造品の形状を有する1つの中空室13を形成している。閉じられた鋳枠2には今や溶湯、すなわち液状金属5を充填することができる。本発明は、任意の鋳造法で、例えば、前述した重力鋳造法または圧力鋳造法で使用することができる。別の行われている使用可能な鋳造法は、例えば傾斜鋳造、落下鋳造、または側方鋳造である。今や砂型1には部分
図2.2のように液状金属が充填されている。この場合、液状金属は冷却され、まずは砂型に向かう縁部区域で、ゆっくりと凝固し始める。
【0023】
両部分
図3.1および
図3.2には、本発明による方法ステップが示されている。部分凝固した液状金属が充填された、引き続きに負圧下にある砂型1を内部に備えた鋳枠2が、鋳込み装置(図示せず)から離される。したがって鋳込み装置は、次の鋳込み過程のために、即ち別の鋳枠を充填するために解放される。充填された鋳枠2はこのために、例えばロボット(図示せず)によって鋳込み装置から離されて、冷却装置の上方に旋回させられる。冷却装置は、両部分図に示されているように、大きな冷却槽もしくは浴6(例えば水浴)から成っていてもよい。実際の冷却槽6の他に、冷却装置は、冷却液供給用のノズル9も有していてもよい。ノズルは、液状金属が充填された鋳枠2に様々な方向から、例えば上方から、冷却液を吹き付ける。通常、冷却液もしくは冷却媒体として、水が使用される。
【0024】
今や鋳枠2は例えば部分的に冷却槽6内に浸漬されて、上方からはノズル9によって冷却液を吹き付けられる。鋳枠2を完全に冷却槽6内に浸漬させることもでき、この場合は付加的なノズルは不要である。引き続き負圧下にある砂型1を備えた鋳枠2は今や本発明によれば完全に、または冷却液を供給された個所でのみ、開放される。これは、鋳枠カバーフィルム7が除去されることにより行われる。本発明は負圧(通常は0.6~0.8bar)の吸引作用を利用している:カバーフィルム7を除去することにより、水が瞬間的に砂型1内に吸収され、この水により鋳造品3は瞬間的に急冷される。砂型1は、砂、すなわち珪砂から成っていて、ブロックする粘結剤(例えばベントナイト)またはその他の微細成分を含んでいないので、水は、存在している負圧・真空により極めて急速かつ深く多孔性の砂型内に、すなわち個々の砂粒の間に浸入する。砂型は極めてコンパクトであるが、実際には多孔性であって、砂粒の間に、全砂型体積の33%になり得る理論上の型中空室を有している。これにより、本発明による冷却または急冷作用は、公知の冷却法と比較して極めて高い。
【0025】
本発明による方法が、添加剤が加えられている負圧砂型によっても使用されることは勿論、除外されてはいない。上述した説明からわかるようにこの場合、使用される添加剤は、砂型の多孔性に、もしくは冷却液の透過性に悪影響を与えない、または少なくとも大きな悪影響を与えないことに注意しなければならない。したがって、ベントナイトは添加剤/粘結剤としては好適には使用されるべきではない。なぜならばこれは水に接触すると、砂粒間の中空室を閉鎖し、ひいては砂型が水に対して透過性ではなくなってしまうからである(負圧にも関わらず、水は殆ど、または全く砂型内に吸収されない)。
【0026】
鋳枠のカバーフィルム7が除去された後、鋳枠2が冷却槽6内により深く浸漬されることも考えられる。冷却槽6内に鋳枠2を浸漬することにより、浸漬過程を制御しながらもしくは調整しながら行うことができるという付加的な利点が得られる。すなわち、冷却過程に浸漬方向および浸漬速度により影響を与えることができる。したがって鋳枠を、例えば鋳込み位置で水平に、または斜めに、または水平軸線または鉛直軸線を中心として180°回転させて浸漬させることができる。したがって、鋳造品の所定の領域を浸漬方向および/または浸漬速度を介してより速く急冷することができる。
【0027】
部分
図4.1および
図4.2には本発明による方法の別の変化実施例が示されている。この場合、鋳枠におけるカバーフィルム7が除去される前に、液状金属が充填された鋳枠2が完全に水浴6に浸漬される。この場合、液状の、または部分的に既に縁部が凝固された鋳造品3の、冷却液による急冷のための吸収作用がさらに効果的に利用される。部分
図4.1および
図4.2に示したように、鋳枠はカバーフィルム7の代わりにスライダ8を有していてもよい。この場合、このスライダ8がカバーフィルムの機能を果たす。用途と鋳枠サイズによっては、カバーフィルムの使用よりも、例えば鋳枠下面におけるスライダの使用の方が有利な場合もある。スライダは簡単に再利用できる。
【0028】
上記説明では、鋳枠を冷却液供給後にカバーフィルムまたはスライダの除去により開放することが説明された。しかしながら、本発明の思想は、冷却液供給の前に、もしくは直前に、または冷却液供給と同時に鋳枠を(部分)開放する可能性も勿論含んでいる。すなわち鋳枠を、(好適には冷却液供給が行われる個所でのみ)冷却液供給の前または後に開放することができる。本発明により使用される吸収作用、ひいては冷却作用は勿論、砂型が冷却液のみを、または殆ど冷却液のみを吸収し、周囲の空気(ずっと少ない熱容量)を吸収しない場合に、最も効果的に利用される。したがって好適には、鋳枠は冷却液供給後に初めてカバーフィルムまたはスライダの除去により開放されるのが好ましい。
【0029】
本発明は、上記明示した可能性と実施形態に限定されるものではない。この実施例はむしろ、当業者に本発明の思想を最も理解し易くするきっかけとして考えてもらいたい。
【符号の説明】
【0030】
1 砂型
2 鋳枠、鋳枠半部
3 鋳造品
4 冷却液、水
5 液状金属
6 冷却槽、水浴
7 鋳枠カバーフィルム
8 鋳枠スライダ
9 冷却液供給用のノズル
10 湯口
11 吸引個所砂型
12 模型フィルム
13 砂型中空室