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特許7033901気泡含有液体製造装置、気泡含有液体製造方法及び気泡含有液体製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】気泡含有液体製造装置、気泡含有液体製造方法及び気泡含有液体製造システム
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/73 20220101AFI20220304BHJP
   B01F 27/00 20220101ALI20220304BHJP
   B01F 23/23 20220101ALI20220304BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20220304BHJP
   B01F 35/75 20220101ALI20220304BHJP
【FI】
B01F7/10
B01F7/00 A
B01F3/04 B
B01F15/02 A
B01F15/02 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017237712
(22)【出願日】2017-12-12
(65)【公開番号】P2019103970
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】森 輝海
(72)【発明者】
【氏名】太田 晶久
(72)【発明者】
【氏名】吉田 太志
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-215436(JP,A)
【文献】特開2002-202632(JP,A)
【文献】特表2001-514959(JP,A)
【文献】米国特許第06444193(US,B1)
【文献】特開2011-083659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
B01F 27/00-27/96
B01F 35/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングを含み、平坦面を有する固定部材と、
前記平坦面側の第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面を有する板状の基板部と、前記第1の面に設けられ、前記第1の面から前記平坦面に向かって突出する凸部と、前記凸部と前記第1の面によって形成される凹部からなり、前記平坦面と所定の間隔を空けて対向し、前記平坦面と前記第1の面の間に流路を形成する凹凸構造とを有し、前記ケーシングに収容され、前記平坦面に対して回転可能に支持された回転体と
を具備し、
前記平坦面には、気体が送入された液体を前記流路に供給するための送入口が設けられ、
前記ケーシングは、前記ケーシング内に連通し、前記回転体の外周に対向する位置に設けられ、前記ケーシング内から液体を送出する送出口を有する
気泡含有液体製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気泡含有液体製造装置であって、
前記回転体を回転させる回転駆動源
をさらに具備する気含有液体製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の気泡含有液体製造装置であって、
前記凹凸構造は、前記第1の面に垂直な方向からみて六角形形状の複数の凹部と前記複数の凹部の周囲を囲む凸部から構成されるハニカム構造である
気泡含有液体製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の気泡含有液体製造装置であって、
前記凹部の深さの、前記凹部の対辺間の幅に対する比率は0.53以上0.57以下である
気泡含有液体製造装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の気泡含有液体製造装置であって、
前記固定部材は、前記ケーシングに固定され、前記平坦面を有する固定板を含み、前記固定板は、前記ケーシングに対して移動することで前記平坦面と前記回転体の距離を調整可能に構成されている
気泡含有液体製造装置。
【請求項6】
請求項1に記載の気泡含有液体製造装置であって、
前記回転体は、前記第1の面と前記第2の面が回転軸に垂直となる円板形状を有し、
前記ケーシングは、前記送出口に接続された送出管を有し、前記送出管の管中心は、前記回転体の接線に平行であり、前記送出管の管中心を通過する直線と前記回転体の回転中心の間の距離は、前記回転体の半径の7/10以上である
気泡含有液体製造装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の気泡含有液体製造装置であって、
前記ケーシングは、前記ケーシング内の液体を排出するための排出口を有し、前記ケーシングの内周面は、前記排出口に向かって傾斜している
気泡含有液体製造装置。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の気泡含有液体製造装置であって、
前記液体は水であり、
前記気泡は、ウルトラファインバブルである
気泡含有液体製造装置。
【請求項9】
ケーシングを含み、平坦面を備える固定部材と、前記平坦面側の第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面を有する板状の基板部と、前記第1の面に設けられ、前記第1の面から前記平坦面に向かって突出する凸部と、前記凸部と前記第1の面によって形成される凹部からなり、前記平坦面と所定の間隔を空けて対向し、前記平坦面と前記第1の面の間に流路を形成する凹凸構造とを有し、前記ケーシングに収容され、前記平坦面に対して回転可能に支持された回転体とを具備し、前記平坦面には、気体が送入された液体を前記流路に供給するための送入口が設けられ、前記ケーシングは、前記ケーシング内に連通し、前記回転体の外周に対向する位置に設けられ、前記ケーシング内から液体を送出する送出口を有する気泡含有液体製造装置と、
前記送入口に前記液体を圧送する液圧ポンプと
を具備する気泡含有液体製造システム。
【請求項10】
請求項9に記載の気泡含有液体製造システムであって、
前記気泡含有液体製造装置は、前記回転体を回転させる回転駆動源をさらに備え、
前記回転駆動源は、前記液圧ポンプによって圧送された前記液体の流れによって前記回転体を回転させる液圧モーターである
気泡含有液体製造システム。
【請求項11】
ケーシングを含み、平坦面を備える固定部材と、前記平坦面側の第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面を有する板状の基板部と、前記第1の面に設けられ、前記第1の面から前記平坦面に向かって突出する凸部と、前記凸部と前記第1の面によって形成される凹部からなり、前記平坦面と所定の間隔を空けて対向し、前記平坦面と前記第1の面の間に流路を形成する凹凸構造とを有し、前記ケーシングに収容され、前記平坦面に対して回転可能に支持された回転体とを具備し、前記ケーシングは、前記ケーシング内に連通し、前記回転体の外周に対向する位置に設けられ、前記ケーシング内から液体を送出する送出口を有する気泡含有液体製造装置において、前記平坦面に設けられた送入口から前記流路に、気体が送入された液体を供給し、
前記回転体を前記平坦面に対して回転させる
気泡含有液体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中にウルトラファインバブル等の気泡を発生させる気泡含有液体製造装置、気泡含有液体製造方法及び気泡含有液体製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水等の液体に微小な気泡を含有させた気泡含有液体の普及が進んでいる。微小な気泡には、直径1μm以下のウルトラファインバブル(UFB:ultra fine bubble)や直径10μm以下のマイクロバブル、直径1mm以下のミリバブル等がある。特にUFBを含有するUFB水は、魚介類の鮮度維持や微生物培養、滅菌医療、各種洗浄等の分野での利用が検討されている。
【0003】
現在利用されているUFB製造装置では、液体に気体を送入した後、送液ポンプによって高圧化して気体を過剰溶解させ、圧力開放することで多量の気泡を発生させる。さらに、気液混相流体が剪断ミキサーを通過することにより気泡の微細化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-149120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなUFB製造装置では、高圧化した液体に気体を送入する必要があり、特に多量の気体を送入して多量の気泡を含有する気泡含有液体を生成させることは容易ではなかった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、低圧の液体に気体を送入し、多量の気泡を含有する気泡含有液体を生成させることが可能な気泡含有液体製造装置、気泡含有液体製造方法及び気泡含有液体製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術に係る気泡含有液体製造装置は、固定部材と回転体とを具備する。
上記固定部材は、ケーシングを含み、平坦面を有する。
上記回転体は、上記平坦面側の第1の面と上記第1の面とは反対側の第2の面を有する板状の基板部と、上記第1の面に設けられ、上記第1の面から上記平坦面に向かって突出する凸部と、上記凸部と上記第1の面によって形成される凹部からなり、上記平坦面と所定の間隔を空けて対向し、上記平坦面と上記第1の面の間に流路を形成する凹凸構造とを有し、上記ケーシングに収容され、上記平坦面に対して回転可能に支持されている。
上記平坦面には、気体が送入された液体を上記流路に供給するための送入口が設けられている。
【0008】
この構成によれば、気体が送入された液体は送入口から流路に送供給される。流路は、凹凸構造と平坦面によって構成されており、回転体が回転することにより、流路を通過する液体に剪断応力が印加される。これにより、液体に含まれる気体の泡は微細化され、微細化された気泡を含有する気泡含有液体が生成する。
【0009】
上記気泡含有液体製造装置は上記回転体を回転させる回転駆動源をさらに具備してもよい。
【0010】
上記凹凸構造は、上記第1の面に垂直な方向からみて六角形形状の複数の凹部と上記複数の凹部の周囲を囲む凸部から構成されるハニカム構造であってもよい。
【0011】
上記凹部の深さの、上記凹部の対辺間の幅に対する比率は0.53以上0.57以下であってもよい。
【0012】
上記固定部材は、上記ケーシングに固定され、上記平坦面を有する固定板を含み、上記固定板は、上記ケーシングに対して移動することで上記平坦面と上記回転体の距離を調整可能に構成されていてもよい。
【0013】
上記ケーシングは、上記ケーシング内に連通し、上記回転体の外周に対向する位置に設けられ、上記ケーシング内の液体を送出する送出口を有してもよい。
【0014】
上記回転体は、上記第1の面と上記第2の面が回転軸に垂直となる円板形状を有し、上記ケーシングは、上記送出口に接続された送出管を有し、上記送出管の管中心は、上記回転体の接線に平行であり、上記送出管の管中心を通過する直線と上記回転体の回転中心の間の距離は、上記回転体の半径の7/10以上であってもよい。
【0015】
上記ケーシングは、上記ケーシング内の液体を排出するための排出口を有し、上記ケーシングの内周面は、上記排出口に向かって傾斜していてもよい。
【0016】
上記液体は水であり、上記気泡は、ウルトラファインバブルであってもよい。
【0017】
上記目的を達成するため、本技術に係る気泡含有液体製造システムは、気泡含有液体製造装置と、液圧ポンプとを具備する。
上記気泡含有液体製造装置は、ケーシングを含み、平坦面を備える固定部材と、上記平坦面側の第1の面と上記第1の面とは反対側の第2の面を有する板状の基板部と、上記第1の面に設けられ、上記第1の面から上記平坦面に向かって突出する凸部と、上記凸部と上記第1の面によって形成される凹部からなり、上記平坦面と所定の間隔を空けて対向し、上記平坦面と上記第1の面の間に流路を形成する凹凸構造とを有し、上記ケーシングに収容され、上記平坦面に対して回転可能に支持された回転体とを具備し、上記平坦面には、気体が送入された液体を上記流路に供給するための送入口が設けられている。
上記液圧ポンプは、上記送入口に上記液体を圧送する。
【0018】
上記気泡含有液体製造装置は、上記回転体を回転させる回転駆動源をさらに備え、上記回転駆動源は、上記液圧ポンプによって圧送された上記液体の流れによって上記回転体を回転させる液圧モーターであってもよい。
【0019】
上記目的を達成するため、本技術に係る気泡含有液体製造方法は、ケーシングを含み、平坦面を備える固定部材と、上記平坦面側の第1の面と上記第1の面とは反対側の第2の面を有する板状の基板部と、上記第1の面に設けられ、上記第1の面から上記平坦面に向かって突出する凸部と、上記凸部と上記第1の面によって形成される凹部からなり、上記平坦面と所定の間隔を空けて対向し、上記平坦面と上記第1の面の間に流路を形成する凹凸構造とを有し、上記ケーシングに収容され、上記平坦面に対して回転可能に支持された回転体とを具備する気泡含有液体製造装置において、上記平坦面に設けられた送入口から上記流路に、気体が送入された液体を供給する。
上記回転体を上記平坦面に対して回転させる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本技術によれば、低圧の液体に気体を送入し、多量の気泡を含有する気泡含有液体を生成させることが可能な気泡含有液体製造装置、気泡含有液体製造方法及び気泡含有液体製造システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る気泡含有液体製造システムの模式図である。
図2】同気泡含有液体製造システムが備える気泡含有液体製造装置の模式図である。
図3】同気泡含有液体製造装置の断面図である。
図4】同気泡含有液体製造装置が備える回転体の斜視図である。
図5】同気泡含有液体製造装置が備える回転体の断面図である。
図6】同気泡含有液体製造装置が備える回転体の平面図である。
図7】同気泡含有液体製造装置が備える回転体の凹部の模式図である。
図8】同気泡含有液体製造装置の流路を流れる液体の状態を示す模式図である。
図9】同気泡含有液体製造装置の流路を流れる液体の状態を示す模式図である。
図10】同気泡含有液体製造装置のクリアランス及び回転数と剪断速度の関係を示すグラフである。
図11】同気泡含有液体製造装置の凹部の深さと圧力損失の関係を示すグラフである。
図12】同気泡含有液体製造装置の送出管の延伸方向を示す模式図である。
図13】同気泡含有液体製造装置のケーシングに設けられた傾斜を示す模式図である。
図14】同気泡含有液体製造システムが備える気泡含有液体製造装置の他の構成の模式図である。
図15】同気泡含有液体製造システムが備える気泡含有液体製造装置の他の構成の模式図である。
図16】本発明の実施形態に係る気泡含有液体製造システムの他の構成の模式図である。
図17】本発明の実施形態に係る気泡含有液体製造システムの他の構成の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の実施形態に係る気泡含有液体製造システムについて説明する。
【0023】
[気泡含有液体製造システムの構成]
図1は、本実施形態に係る気泡含有液体製造システム100の構成を示す模式図である。同図に示すように、気泡含有液体製造システム100は、循環タンク101、液圧ポンプ102、気体送入管103、気体送入ライン104、気泡含有液体製造装置105、熱交換器106及び完成タンク107を備える。
【0024】
気泡含有液体製造システム100は、微小な気泡を含有する液体(以下、気泡含有液体)を製造するシステムである。気泡には、大きさによって直径1μm以下のウルトラファインバブル(UFB:ultra fine bubble)、直径10μm以下のマイクロバブル、直径1mm以下のミリバブル等の種類がある。気泡含有液体が含有する気泡はいずれの大きさのものであってもよいが、典型的にはUFBである。
【0025】
気泡を形成する気体は特に限定されず、例えば、空気、N、O又はO等とすることができる。また、気泡含有液体は異種の気体によって形成された気泡を含有してもよい。気泡含有液体を構成する液体は特に限定されないが、典型的には水である。
【0026】
循環タンク101は、原液又は未完成の気泡含有液体を貯留する。循環タンク101には循環タンク101内の液体量を計測する液面計151が設けられている。
【0027】
循環タンク101は、配管L1によって液圧ポンプ102と接続されている。配管L1には給液弁152及び排液弁153が接続されている。
【0028】
液圧ポンプ102は、配管L2によって気体送入管103と接続されている。液圧ポンプ102は、循環タンク101から配管L1を介して供給される液体を配管L2を介して気体送入管103に圧送する。
【0029】
配管L2には圧力・流量調整弁154、流量計155、圧力計156、フィルタ157、及び圧力計158が接続されている。フィルタ157は、配管L2を流れる液体から不純物を除去するためのフィルタである。
【0030】
気体送入管103は、細径部を有する管である。配管L2から供給された液体は、細径部において流速が上昇し、その圧力が一時的に低下する。気体送入管103はベンチュリ管であってもよい。
【0031】
気体送入ライン104は、気体送入管103の細径部とガスボンベ等のガス源とを接続し、細径部を流れる液体に気体を送入する。気体送入ライン104が気体送入管103に接続されていることにより、ガスの送入圧を低減させることができる。
【0032】
気体送入管103は配管L3を介して気泡含有液体製造装置105に接続されており、気体が送入された液体を気泡含有液体製造装置105に供給する。配管L3には圧力・流量調整弁159が接続されている。
【0033】
気泡含有液体製造装置105は、配管L3から供給された液体に含まれる気体の気泡を微細化し、微細な気泡を含有する気泡含有液体を生成する。気泡含有液体製造装置105の構成については後述する。気泡含有液体製造装置105は配管L4によって熱交換器106に接続されている。配管L4には圧力・流量調整弁160、圧力計161及び温度計162が接続されている。
【0034】
熱交換器106は、配管L4から供給された気泡含有液体を冷却する。気泡含有液体は主に気泡含有液体製造装置105の通過によって高温となっているためである。熱交換器106の構造は特に限定されない。熱交換器106は配管L5によって三方弁163に接続されている。配管L5には温度計164が接続されている。
【0035】
三方弁163は、配管L5と循環ライン165又は完成ライン166を接続する。循環ライン165は三方弁163と循環タンク101とを接続し、完成ライン166は三方弁163と完成タンク107とを接続する。
【0036】
完成タンク107は、完成した気泡含有液体を貯留する。完成タンク107には配管L6が接続され、配管L6には排液弁167が接続されている。
【0037】
[気泡含有液体製造装置の構成]
図2は気泡含有液体製造装置105を示す斜視図であり、図3は気泡含有液体製造装置105の模式的断面図である。これら図に示すように気泡含有液体製造装置105は、ケーシング121、固定板122、回転体123及び回転駆動源124を備える。
【0038】
図3に示すようにケーシング121は、固定板122と共に回転体123を収容する収容空間を形成する。ケーシング121は平板状の底面部121aと底面部121aの周縁から底面部121aに垂直な方向に延伸する円筒状の側壁部121bを備える。側壁部121bにおいて回転体123に対向する位置には、ケーシング121内に連通する送出口121cが設けられている。送出口121cには送出管121dが接続され、送出管121dは配管L4(図1参照)に接続されている。ケーシング121の材料は特に限定されないが、例えば金属からなる。
【0039】
固定板(固定部材)122は、ケーシング121に固定された平板状の部材であり、回転体123に面する平坦面122aを備える。固定板122の材料は特に限定されないが、例えば金属からなる。平坦面122aの中央部には送入口122bが設けられ、送入口122bには送入管122cが接続されている。送入管122cには配管L3(図1参照)が接続される。
【0040】
回転体123は、収容空間に収容されている。図4は回転体123の斜視図であり、図5は回転体123の断面図である。これらの図に示すように回転体123は基板部125及び凹凸構造126を有する。回転体123は回転軸127に接続され、回転軸127を回転中心としてケーシング121及び固定板122に対して回転可能に支持されている。回転体123の大きさは特に限定されないが、例えば直径100mm、厚み30mmの円柱形状とすることができる。
【0041】
基板部125は円板状であり、基板部125の表裏面のうち、平坦面122a側の面を第1の面125aとし、その反対側の面を第2の面125bとする。第1の面125a及び第2の面125bは共に回転軸127に垂直な面である。
【0042】
凹凸構造126は第1の面125a上に設けられている。図6は凹凸構造126を示す平面図であり、回転体123を第1の面125a側から見た図である。これらの図に示すように凹凸構造126は凸部126aと凹部126bから構成されている。
【0043】
凸部126aは第1の面125aから平坦面122aに向かって突出し、凸部126aと第1の面125aによって凹部126bが形成されている。凹凸構造126は、図6に示すように、第1の面125aに垂直な方向からみて六角形形状の複数の凹部126bと、複数の凹部126bを囲む凸部126aから構成されるハニカム構造とすることができる。
【0044】
図7は、一つの凹部126bを示す模式図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は断面図である。同図に示すように、凹部126bの対辺間の幅を幅a、凹部126bの深さを深さbとすると、幅aは例えば3.0mm、深さbは例えば1.6~1.7mmとすることができる。
【0045】
なお、凹部126bの大きさ及び数は各図に示すものに限られない。また、凹凸構造126はハニカム構造に限られず、凸部126aが第1の面125aに垂直な方向からみて格子状や放射状等の各種形状を有するものとすることも可能である。
【0046】
凹凸構造126と平坦面122aの間隙、即ち凸部126aと平坦面122aの間と、凹部126bの内部は気体含有液体が通過する流路として機能する。図3にこの流路を流路Fとして示す。また、同図に示すように凸部126aと平坦面122aの間隔であるクリアランスCは0.5mm以上1mm以下が好適である。
【0047】
クリアランスCは、ケーシング121に対して固定板122を移動させることによって調整することができる。また、クリアランスCは固定板122の厚みを変更することによっても調整することができる。
【0048】
回転駆動源124は、回転軸127に接続され、回転体123を回転させる。回転駆動源124は例えば、電動モーターとすることができる。
【0049】
[気泡含有液体製造システムの動作]
気泡含有液体製造システム100の動作について説明する。
【0050】
液圧ポンプ102(図1参照)によって液体が循環タンク101から気体送入管103に圧送され、気体送入ライン104から気体が液体に送入される。気体が送入された液体はさらに気泡含有液体製造装置105に圧送され、送入管122cを介して送入口122bから流路Fに供給される(図3参照)。
【0051】
回転体123は、回転駆動源124によって回転駆動される。流路Fに供給された液体は、液圧ポンプ102によって印加される圧力及び回転体123の回転による遠心力によって回転体123の外周に向かって流れる。
【0052】
図8及び図9は、流路Fを流れる気体含有液体の状態を示す模式図である。図8に示すように気泡Bを含む液体が流路Fを矢印方向に流れると、回転する回転体123によって剪断応力が印加され、凹部126b内に気体含有液体の噴流が発生する。図8において噴流が生じる領域を線Sで示す。凹部126b内においてはこの噴流によって渦Mが発生し、気泡Bに作用する。これにより気泡Bが微細化され、気泡含有液体が生成する。
【0053】
一方、図9に示すように凹部126b内に大きな渦Mが発生すると、気泡Bが微細化されにくいため、図8に示すように多数の小さな渦Mが発生する状態が好適である。なお、図8及び図9では一つの凹部126bを例にとって説明したが、実際には上記作用が複数の凹部126bによって生じ、気泡の微細化が進行する。
【0054】
生成した気泡含有液体は、送出口121cを介して送出管121dから送出される。この際、回転駆動源124の回転数によって気泡の大きさを制御することが可能である。また、気泡の大きさは、クリアランスCを変更することによっても制御が可能である。
【0055】
気泡含有液体製造装置105から送出された気泡含有液体は、熱交換器106によって冷却され、三方弁163を介して循環タンク101又は完成タンク107に供給される。
循環タンク101に供給された気泡含有液体は、再度液圧ポンプ102によって圧送され、気泡の高密度化がなされる。
【0056】
気泡含有液体製造システム100では例えば一定時間、循環タンク101を介して液体を循環させ、気泡を高密度化させた後、三方弁163を操作して生成した気泡含有液体を完成タンク107に貯留させることができる。また、循環タンク101を利用せず、一度のサイクルのみで気泡含有液体を完成タンク107に貯留させてもよい。完成タンク107に貯留された気泡含有液体は、配管L6から排液され、利用される。
【0057】
気泡含有液体製造システム100では以上のようにして気泡含有液体を製造することができる。気体含有液体への剪断応力の印加は回転する回転体123によってなされるため、気泡含有液体製造装置105に圧送される液体の圧力はそれほど高くする必要がない。このため、気体送入ライン104から多量の気体を液体に送入することができ、気泡の高密度化が可能である。
【0058】
[剪断特性について]
図10は、クリアランスC(図3参照)及び回転数と剪断速度の関係を示すグラフである。なお、回転体123の直径は100mmである。同図に示すように、回転体123の回転数が大きくなると平均剪断速度が向上する。また、クリアランスCは小さい方が平均剪断速度が大きくなる。
【0059】
[凹部の深さについて]
図11は、凹部126bの深さと圧力損失の関係を示すグラフである。横軸は凹部126bの深さ(図7中、深さb)の凹部126bの対辺間の幅(図7中、幅a)に対する比率(即ち、b/a)である。なお、クリアランスCは0.8mm、回転体123の直径は100mmである。
【0060】
同図に示すようにこの比率が大きくなると圧力損失が大きくなり、即ち、気体含有液体に作用する仕事量が大きくなるが、一定値より大きくなると急激に圧力損失が減少する。これは、図9に示すように凹部126b内に大きな渦Mが発生することによるものである。図11から、比率(b/a)は0.53以上0.57以下が好適である。これは、幅aが3.0mmの場合、深さbが1.6mm以上1.7mm以下となる比率である。
【0061】
[送出管について]
上記のようにケーシング121の送出口121cには送出管121dが接続されている。図12は送出管121dの延伸方向を示す模式図であり、気泡含有液体製造装置105を第1の面125aに垂直な方向からみた図である。同図に示すように送出管121dの管中心を通過する線を線E1とすると、線E1は第1の面125aの接線である線E2に平行である。
【0062】
また、回転体123の回転中心Pと線E1の距離Qは、第1の面125aの半径の7/10以上が好適であり、例えば第1の面125aの半径が50mmの場合、距離Qは35mm以上が好適である。距離Qを第1の面125aの半径の7/10以上することにより、収容空間Rから気泡含有液体が送出されやすくなる。
【0063】
[ケーシング内周面の傾斜について]
ケーシング121には送出口121cとは別に、収容空間内の液体を排出するための排出口が設けられてもよい。図13は、排出口121eを示す模式図である。同図に示すように排出口121eは側壁部121bのうち鉛直下方となる位置に設けられている。
【0064】
また、側壁部121bの内周面は、排出口121eに向かって傾斜が設けられている。排出口121eには配管L7が接続され、配管L7には図示しない開閉弁が設けられている。
【0065】
この開閉弁を閉じた状態で気泡含有液体の製造の行われ、気泡含有液体の製造終了後にはこの開閉弁を開放して収容空間R内に残存する液体を排出することができる。側壁部121bの内周面に、排出口121eに向かう傾斜が設けられているため、残存する液体を確実に排出させることが可能となる。
【0066】
[固定板について]
固定板122はケーシング121の内部に固定されてもよい。図14はケーシング121の内部に設けられた固定板122を有する気泡含有液体製造装置105の模式図である。同図に示すように固定板122はケーシング121に対してネジ等の支持部材128によって固定されている。
【0067】
この構造では送入管122cはケーシング121に接続され、液体はケーシング121に設けられた送入口121f及び固定板122に設けられた送入口122bを介して流路Fに供給される。
【0068】
支持部材128によってケーシング121と固定板122の間隔を調整し、クリアランスCを変更することが可能である。また、固定板122の厚みを変更することによってクリアランスCを調整してもよい。
【0069】
また、固定板122の代わりにケーシング121を利用してもよい。図15は固定板122を有しない気泡含有液体製造装置105の模式図である。同図に示すように、回転体123に面するケーシング(固定部材)121の内面を平坦面122aとして利用することも可能である。
【0070】
[回転駆動源について]
上記説明において、回転駆動源124は電動モーターを利用できるとしたが、液圧によって回転動力を発生させる液圧モーターを利用することも可能である。図16及び図17は、液圧モーターを回転駆動源124として利用する気泡含有液体製造システム100の模式図である。
【0071】
図16に示すように、液圧ポンプ102と気体送入管103を接続する配管L2には、液圧モーターである回転駆動源124が接続されている。また、配管L2には、圧力・流量調整弁168が接続されている。
【0072】
液圧ポンプ102によって循環タンク101から液体が圧送されると、液体は配管L2を介して回転駆動源124に到達する。回転駆動源124は圧送された液体の流れによって回転動力を発生させ、回転軸127を回転させる。回転駆動源124を通過した液体は、フィルタ157を介して気体送入管103に供給される。
【0073】
回転駆動源124に起因する不純物はフィルタ157によって除去される。液圧モーターは液体中に配設することが可能であるため、液圧モーターを利用することにより回転駆動源124の配設場所の自由度が得られる。
【0074】
また、図17に示すように、配管L2に配管L8を接続し、配管L8を回転駆動源124に接続してもよい。配管L8には圧力・流量調整弁169が接続されている。液圧ポンプ102によって循環タンク101から液体が圧送されると、液体の一部は配管L8を介して回転駆動源124に到達し、回転軸127を回転させる。回転駆動源124を通過した液体は、廃棄される。
【0075】
この構造では、液圧ポンプ102を通過した液体の一部は廃棄されるが、回転駆動源124に起因する不純物が系内に流入しないため、フィルタ157の交換頻度を低くすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
100…気泡含有液体製造システム
101…循環タンク
102…液圧ポンプ
103…気体送入管
104…気体送入ライン
105…気泡含有液体製造装置
106…熱交換器
107…完成タンク
121…ケーシング
122…固定板(固定部材)
122a…平坦面
123…回転体
124…回転駆動源
125…基板部
126…凹凸構造
126a…凸部
126b…凹部
127…回転軸
128…支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17