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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】包装用箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/50 20060101AFI20220304BHJP
   B65D 5/486 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B65D5/50 A
B65D5/486
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018031958
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019147570
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】森沢 亮介
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特公昭29-001340(JP,B1)
【文献】特開平10-045123(JP,A)
【文献】実開昭54-160596(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/50
B65D 5/486
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状物を収容する断面矩形状の収容空間を有する直方体状に形成され、
幅広側の一方の側壁から折り曲げられて幅広側の他方の側壁の幅方向一端側に向けて延びる仕切り板を有し、
前記仕切り板は、前記一方の側壁の長さ方向に局所的に設けられ、前記一方の側壁の幅方向の端部から離間した位置を基端として先端が前記基端を中心として移動可能に設けられ
前記仕切り板は、前記基端と前記先端との間に、前記一方の側壁の長さ方向に折り罫部を有し、
前記折り罫部は、前記他方の側壁の幅方向の他端側に向かって凸となる山折りにされていることを特徴とする包装用箱。
【請求項2】
前記仕切り板の前記基端から前記折り罫部までの長さと、前記折り罫部から前記先端までの最大長さとの和は、前記基端から前記他方の側壁の幅方向一端までの長さの90%以上、100%以下であり、
前記基端から前記折り罫部までの長さをL1とし、前記折り罫部から前記先端までの最大長さをL2とすると、L1/L2で表される値は、0.67以上、1.5以下である、請求項記載の包装用箱。
【請求項3】
前記折り罫部は、当該折り罫部の長さ方向と直交する方向に間隔をあけて複数本設けられている、請求項に記載の包装用箱。
【請求項4】
前記仕切り板の基端は、前記一方の側壁の前記幅方向中央よりも前記一端側に配置されている、請求項1からのいずれか一項に記載の包装用箱。
【請求項5】
前記他方の側壁は、前記収容空間を視認可能な窓部を有し、
前記仕切り板は、前記一方の側壁の長さ方向で前記窓部とずれた位置に配置されている、請求項1からのいずれか一項に記載の包装用箱。
【請求項6】
前記窓部は、前記幅方向の中央よりも前記一端側に偏って配置されている、請求項記載の包装用箱。
【請求項7】
前記仕切り板は、前記基端から前記先端までの長さが一定の同幅部と、前記一方の側壁の長さ方向に前記同幅部から離間するのに従って前記基端から前記先端までの長さが漸次短くなる縮幅部とを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の包装用箱。
【請求項8】
棒状物は、前記同幅部に対して前記縮幅部が配置されている側から前記収容空間に装填される、請求項記載の包装用箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棒状物である歯ブラシ等を装填する包装用箱では、包装用箱内での歯ブラシのガタつきを抑えるため、包装用箱内部に仕切り板を糊付けし固定した状態に設け、この仕切り板により区画された空間に歯ブラシを装填することが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、歯ブラシをハンドル部の方向から包装用箱内に装填する際には、ハンドル部先端が仕切り板にぶつからず、また、装填作業がしやすいように、仕切り板によって区画され歯ブラシが収容される空間は、ハンドル部の断面積よりも大きい断面積に設計されることが一般的である。
【0004】
従って、従来の包装用箱では、包装用箱内での歯ブラシの位置は仕切り板によりある程度は規制されるが、歯ブラシの収容される空間がハンドル部断面積に対して大きいため、この空間内ではガタつきが生じる可能性がある。そのため、輸送等の振動により歯ブラシの毛先が包装用箱内側壁に接触すると毛先を傷める場合もあり、十分な歯ブラシ固定保持効果を有しているとは言えなかった。
【0005】
例えば、特許文献2には、断面形状が四角形の包装用箱内部に包装用箱の稜線部から対向する稜線部に向かう対角線に沿って仕切り板を設け、仕切り板によるバネ付勢力で歯ブラシを安定して固定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-45123号公報
【文献】実開平3-31704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された技術では、歯ブラシを収容する空間の断面積を小さめにする必要があるため、歯ブラシを装填する際にハンドル部先端が仕切り板にぶつかりやすくなり、仕切り板を破損してしまったり、装填作業がしづらくなったりするという不具合があった。特に、特許文献2に記載された仕切り板は、対角線に沿って配置されているため、仕切り板の基端部から歯ブラシとの当接部までの距離が長い。そのため、十分なバネ付勢力を得るためには、上記の断面積を小さくする必要があり、そうすると歯ブラシを装填する際に仕切り板の破損や装填不良が生じやすくなる。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、仕切り板の破損や装填不良を抑制できる包装用箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従えば、棒状物を収容する断面矩形状の収容空間を有する直方体状に形成され、幅広側の一方の側壁から折り曲げられて幅広側の他方の側壁の幅方向一端側に向けて延びる仕切り板を有し、前記仕切り板は、前記一方の側壁の長さ方向に局所的に設けられ、前記一方の側壁の幅方向の端部から離間した位置を基端として先端が前記基端を中心として移動可能に設けられていることを特徴とする包装用箱が提供される。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係る包装用箱において、前記仕切り板の前記基端から前記先端までの長さは、前記基端から前記他方の側壁の幅方向一端までの長さよりも短いことを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係る包装用箱において、前記仕切り板の前記基端から前記先端までの長さは、前記基端から前記他方の側壁の幅方向一端までの長さの75%以上、95%以下であることを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係る包装用箱において、前記仕切り板は、前記基端と前記先端との間に、前記一方の側壁の長さ方向に折り罫部を有し、前記折り罫部は、前記他方の側壁の幅方向の他端側に向かって凸となる山折りにされていることを特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の一態様に係る包装用箱において、前記仕切り板の前記基端から前記折り罫部までの長さと、前記折り罫部から前記先端までの長さとの和は、前記基端から前記他方の側壁の幅方向一端までの長さの90%以上、100%以下であり、前記基端から前記折り罫部までの長さをL1とし、前記折り罫部から前記先端までの長さをL2とすると、L1/L2で表される値は、0.67以上、1.5以下であることを特徴とする。
【0014】
また、上記本発明の一態様に係る包装用箱において、前記折り罫部は、当該折り罫部の長さ方向と直交する方向に間隔をあけて複数本設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、上記本発明の一態様に係る包装用箱において、前記仕切り板の基端は、前記一方の側壁の前記幅方向中央よりも前記一端側に配置されていることを特徴とする。
【0016】
また、上記本発明の一態様に係る包装用箱において、前記他方の側壁は、前記収容空間を視認可能な窓部を有し、前記仕切り板は、前記一方の側壁の長さ方向で前記窓部とずれた位置に配置されていることを特徴とする。
【0017】
また、上記本発明の一態様に係る包装用箱において、前記窓部は、前記幅方向の中央よりも前記一端側に偏って配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、仕切り板の破損や装填不良を抑制できる包装用箱を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る包装用箱1の外観斜視図である。
図2】同包装用箱1の平面図である。
図3図2におけるA-A線視断面図である。
図4】包装用箱1を形成するブランクシート30の平面図である。
図5】外板12Aと内板12Bとを接着した状態の筒状体30Aに対して断面長方形に成形する手順を示した図である。
図6図3に示した状態の筒状体30Aにハンドル部TB2が挿入された状態の断面図である。
図7図3に示した状態の筒状体30Aに挿入されたハンドル部TB2の側面が仕切り板27に最初に当接したときの縮幅部27BにおけるY方向の位置Y2近傍を拡大した部分平面図である。
図8図3に示した状態の筒状体30Aに挿入されたハンドル部TB2の側面が仕切り板27に最初に当接したときのY方向の位置Y2よりも-Y側の位置Y3で切断した断面図である。
図9】第2実施形態の包装用箱1を仕切り板27を通りXZ平面と平行な平面で切断した断面図ある。
図10】第2実施形態に係る筒状体30Aに対して断面長方形に成形する手順を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の包装用箱の実施の形態を、図1乃至図10を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る包装用箱1の外観斜視図である。図2は、包装用箱1の平面図である。図3は、図2におけるA-A線視断面図である。図4は、包装用箱1を形成するブランクシート30の平面図である。
【0022】
包装用箱1は、図1に示されるように、内部に収容空間1aを有する略直方体形状に形成されている。包装用箱1は、収容空間1aに棒状物としての歯ブラシTBを収容する。包装用箱1は、包装用箱1の長さ方向に延びる幅広側の側壁11、12と、幅狭側の側壁13、14と、包装用箱1の長さ方向端部に配置された端壁15、16とを有している。
【0023】
側壁(他方の側壁)11と側壁(一方の側壁)12とは、収容空間1aを挟んで互いに対向配置されている。側壁13と側壁14とは、収容空間1aを挟んで互いに対向配置されている。端壁15と端壁16とは、収容空間1aを挟んで互いに対向配置されている。
【0024】
なお、以下では、包装用箱1の長さ方向をY方向とし、Y方向と直交し側壁11、12の幅方向をX方向とし、Y方向及びX方向と直交し側壁13、14の幅方向をZ方向として適宜説明する。
【0025】
側壁11は、窓部21、22を有している。窓部21、22は、側壁11に形成された開口が透明フィルム等で被覆されて設けられている。窓部21、22は、側壁11におけるX方向の中央よりも+X側に偏った状態で配置されている。窓部21は、側壁11におけるY方向の+Y側の端部近傍に配置されている。窓部22は、側壁11におけるY方向の中央付近に配置されている。窓部21、22は、透明フィルムで被覆された開口を介して収容空間1aを視認可能とする。
【0026】
図2に示すように、歯ブラシTBは、先端側に配置され植毛部TB3を有するヘッド部TB1と、ヘッド部TB1よりも後端側に配置されたハンドル部TB2とを有している。収容空間1aにおいて、ヘッド部TB1は+Y側の端部近傍に窓部21と対向する位置に配置され、ハンドル部TB2はヘッド部TB1よりも-Y側に窓部22と対向する位置に配置されている。従って、包装用箱1においては、窓部21を介してヘッド部TB1の少なくとも一部を視認可能である。また、包装用箱1においては、窓部22を介してハンドル部TB2の少なくとも一部を視認可能である。
【0027】
側壁12は、当該側壁12から折り曲げられて、収容空間1aを区画する(仕切る)仕切り板27を有している。仕切り板27は、側壁14との間で歯ブラシTBのハンドル部TB2を保持する。
【0028】
図3に示すように、側壁11~14は、Z方向の長さW、X方向の長さLの断面形状が長方形の筒状体30Aを形成する。例えば、ハンドル部TB2の断面形状が楕円形であり(図6参照)、長径方向の最大長さをH1、短径方向の最大長さをH2とすると、長さWは、最大長さH1の100%以上、120%以下であることが好ましい。長さWに対する長さLの比であるL/Wとしては、1.2以上、2.0以下であることが好ましい。
【0029】
側壁12は、側壁14の-Z側端部から-X側に折り曲げられた外板12Aと、側壁13の-Z側端部から+X側に折り曲げられた内板12Bとを含む。外板12Aは、外側に露出した状態で設けられている。仕切り板27は、内板12BにおけるX方向で側壁13、14から離間した位置で、Y方向に延びる直線で折り曲げられて側壁11と側壁14との交差部の方向に向けて延びている。内板12Bは、仕切り板27を除いた領域で外板12Aの裏面(+Z側)の面に接着されている。仕切り板27が折り曲げられて起函した際には、歯ブラシTBを収容する収容空間1aは、側壁12、側壁14及び仕切り板27で囲まれた断面略三角形の空間として形成される。
【0030】
図2及び図4に示すように、仕切り板27は、X方向の長さが一定に形成された同幅部27Aと、同幅部27Aから+Y側に離間するのに従って、X方向の長さが漸次短くなる縮幅部27Bとを有する。図3は、仕切り板27における同幅部27Aを通る平面で切断した断面図を示している。仕切り板27は、Y方向に関して窓部21、22とずれた位置に配置されている。仕切り板27は、窓部22よりも-Y側に配置されている。仕切り板27は、窓部21の-Y側端部よりも10mm以上離れた位置であることが好ましい。仕切り板27は、包装用箱1のY方向中央から+Y側または-Y側の30mm以内の範囲に配置されていることが好ましい。
仕切り板27が窓部21の-Y側端部よりも10mm以上離れた位置であると、窓部21からヘッド部TB1及び植毛部TB3を視認する際に、仕切り板27が見えないため内容物の視認を邪魔することがなく、店頭陳列などの場面においても見栄えが良くなる。一方、仕切り板27が包装用箱1のY方向中央から+Y側または-Y側の30mm以内の範囲に配置されていると、仕切り板27がハンドル部TB2の長さ方向中央部付近の側面に当接可能なため、ハンドル部TB2の先端部付近の側面に当接する場合に比較して歯ブラシを安定して固定することが可能になる。
【0031】
仕切り板27は、先端28が側壁11及び側壁14と離間し非拘束状態で配置されている。仕切り板27は、内板12Bにおいて折り曲げられた位置の基端29を中心として先端28が移動可能である。
【0032】
仕切り板27の基端29と先端28との最大長さ(同幅部27Aの幅)L11は、基端29と側壁14との距離L12よりも長い(L11>L12)。基端29と側壁14との距離L12は、側壁12のX方向の長さLの1/2以下であり、ハンドル部TB2の短径方向の最大長さH2以上である。また、最大長さL11は、基端29から側壁11と側壁14との交差部までの距離L13よりも短い(L11<L13)。
【0033】
図4に戻り、ブランクシート30は、板紙で形成されている。板紙の材質としては、カード紙、コートボール紙などが適用可能である。
【0034】
ブランクシート30は、例えば、カード紙を打ち抜いて形成されている。図4に示されるように、ブランクシート30は、左側から折り線31~34を介して、外板12A、側壁14、11、13、内板12Bが順次配置されている。内板12Bは、ブランクシート30を組み立てて、包装用箱1を形成する際に外板12Aの裏面側に接着される。
【0035】
なお、図4においては、ブランクシート30に関して、包装用箱1の長さ方向であるY方向に対応する方向(図4における上下方向)をy方向とし、y方向と直交し展開された側壁11~14が並ぶ方向(図4における左右方向)をx方向とし、x方向及びy方向と直交する方向(図4における紙面と直交する方向)をz方向として適宜説明する。
【0036】
ブランクシート30は、側壁13の長さ方向(y方向)両端からそれぞれ折り線35A、35Bを介して延出する内側フラップ17A、17Bを有している。ブランクシート30は、側壁14のy方向両端からそれぞれ折り線36A、36Bを介して延出する内側フラップ18A、18Bを有している。
【0037】
ブランクシート30は、側壁11のy方向両端からそれぞれ折り線37A、37Bを介して延出する外側フラップ19A、19Bを有している。外側フラップ19Aの先端には、折り線38Aを介して差し込み部20Aが+y側に延出している。外側フラップ19Bの先端には、折り線38Bを介して差し込み部20Bが-y側に延出している。側壁11は、窓部21となる開口部21aと、窓部22となる開口部22aとを有している。
【0038】
内板12Bは、包装用箱1を形成する際に外板12Aの裏面側に接着されるため、X方向の側壁12の幅よりも小さい幅に形成されている。内板12Bにおけるy方向の中央よりも端壁16側には、y方向に間隔をあけて凹部23、24が形成されている。凹部23、24は、内板12Bにおいて幅方向で折り線34とは逆側の端縁25に開口している。端縁25からの凹部23、24の最大窪み長さは同一である。内板12Bは、凹部23、24の最も窪んだ位置同士を結ぶ折り線38を有している。折り線38は、y方向に延びている。折り線38よりも端縁25側(-x側)には、仕切り板27が延出している。折り線38は、折り曲げられた仕切り板27の基端29である。
【0039】
包装用箱1の組み立ては、まず、ブランクシート30における折り線31~34を山折りし、仕切り板27を除いた内板12Bを、ホットメルト等の接着剤で外板12Aの裏面側(包装用箱1として組み立てられた際に収容空間1aに臨む面)に接着して、図5に示す筒状体30Aを形成する。
【0040】
図5は、外板12Aと内板12Bとを接着した状態の筒状体30Aを、仕切り板27(同幅部27A)を通るxz平面と平行な面で切断した概略的な断面図である。外板12Aと内板12Bとを接着した状態の筒状体30Aの起函を開始した直後は、図5(a)に示されるように、側壁11と側壁13との交差部、及び外板12Aと側壁14との交差部が鈍角となるように傾いた状態となる。
【0041】
次に、図5(b)に示されるように、鈍角で交差する上記側壁11と側壁13との交差部、及び外板12Aと側壁14との交差部が直角に近づくように筒状体30Aの起函を進める。ここで、図3に示したように、仕切り板27の最大長さ(同幅部27Aの幅)L11は、基端29と側壁14との距離L12よりも長いため、筒状体30Aの断面形状がX方向の長さL、Z方向の長さWの長方形(図3参照)になる前に仕切り板27の先端28が側壁14の内面に当接する。
【0042】
さらに、筒状体30Aの起函を進めると、先端28は側壁14の内面との当接位置が+Z側に移動しながら側壁14の内面に沿って摺動する。すなわち、筒状体30Aの起函に伴って、仕切り板27が起函する。図5(c)には、筒状体30Aの断面形状が長方形になった状態が示されている。
【0043】
筒状体30Aの断面形状が長方形になった状態で起函を解除すると、反力(スプリングバック)により、筒状体30Aは、側壁11と側壁13との交差部、及び外板12Aと側壁14との交差部が鈍角となるように傾いた状態に戻ろうとする。そのため、上記の反力(スプリングバック)で起函状態が戻ったときに筒状体30Aの断面形状が長方形になるように、図5(d)に示すように、筒状体30Aの断面形状が長方形の状態からさらに変形するように、側壁11と側壁13との交差部、及び外板12Aと側壁14との交差部が鋭角となるように傾いた状態まで起函を進めた後に起函を解除する。
【0044】
これにより、筒状体30Aは、図5(e)に示されるように、断面形状が長方形の直方体状に成形される。このとき、仕切り板27は、基端29から側壁11及び側壁14との交差部の方向に向けて延び、先端28が側壁11及び側壁14と離間した状態となる。
【0045】
この後、筒状体30Aにおける+Y側の開口から歯ブラシTBを側壁12、側壁14及び仕切り板27で囲まれた収容空間1aに装填する。収容空間1aへの歯ブラシTBの装填は、ハンドル部TB2から挿入される。
【0046】
図6は、図3に示した状態の筒状体30Aにハンドル部TB2が挿入された状態の断面図である。図6に示すように、ハンドル部TB2の断面形状は、一例として、楕円形である。また、図2に示すように、ハンドル部TB2の先端部は、-Y側に向けて先細る平面視円弧形状である。ハンドル部TB2は、側壁14に近接した状態で挿入される。-Y側から視たときに、仕切り板27は、ハンドル部TB2が挿入される前には、図6中、二点鎖線で示すように、ハンドル部TB2と重なる位置に配置されている。
【0047】
ここで、図2に示すように仕切り板27は、最も+Y側の位置Y1において先端28が基端29と重なり、図6に示す先端28のZ方向の位置Z1は、最も+Y側の位置Y1において基端29と同一位置になる。そのため、収容空間1aに挿入されたハンドル部TB2の先端が、位置Y1に到達した際には、図6図7からも分かるように、仕切り板27はハンドル部TB2に当接しない。
【0048】
一方、起函した状態の仕切り板27がハンドル部TB2の側面と最初に当接するときの先端28のZ方向の位置Z2は、図7に示すように、仕切り板27のうち、縮幅部27BにおけるY方向の位置Y2での先端28の位置28aにより決定される。図7は、筒状体30Aに挿入されたハンドル部TB2の側面が仕切り板27に最初に当接したときの縮幅部27BにおけるY方向の位置Y2近傍を拡大した部分平面図である。図8は、筒状体30Aに挿入されたハンドル部TB2の側面が仕切り板27と最初に当接したときのY方向の位置Y2よりも-Y側の位置Y3で切断した断面図である。
【0049】
図7に示されるように、ハンドル部TB2は、位置Y2よりも位置Y3において先細っているため、位置Y3における断面形状は位置Y2における断面形状よりも縮径している。そのため、図8に示されるように、位置Y2よりも-Y側の位置Y3においてハンドル部TB2は、仕切り板27に当接することなく、仕切り板27と側壁14との間の収容空間1aに挿入されている状態である。従って、収容空間1aに挿入されたハンドル部TB2を仕切り板27と最初に当接する位置Y2からさらに-Y側に挿入しても仕切り板27を損傷させることがない。
【0050】
ハンドル部TB2を位置Y2からさらに-Y側に挿入することにより、仕切り板27は、ハンドル部TB2の側面との当接位置が変化し、歯ブラシTB全体が筒状体30Aの収容空間1aに挿入された際には、図6に示すように、二点鎖線で示した初期位置からさらに起函(移動)した状態でハンドル部TB2の側面に当接して側壁14との間でハンドル部TB2を保持する。
【0051】
本実施形態の仕切り板27は、側壁13及び側壁14から離間した位置に基端29が配置されているため、基端29が側壁12と側壁13との交差部に配置され仕切り板が筒状体30Aの対角線に沿って配置されている場合と比較して、収容空間1aに挿入されたハンドル部TB2の側面に当接する位置までの基端29からの距離が短い。従って、ハンドル部TB2が収容空間1aに挿入される前の同幅部27Aの先端28のZ方向の初期位置から、収容空間1aに挿入されたハンドル部TB2の側面に仕切り板27が当接した際の同幅部27Aの先端28のZ方向の位置までのZ方向における移動距離が同じ場合、基端29が側壁12と側壁13との交差部に配置され仕切り板が筒状体30Aの対角線に沿って配置されている場合と比較して、基端29を中心とした仕切り板27の回転角度は大きくなる。
【0052】
すなわち、側壁13及び側壁14から離間した位置に基端29が配置された仕切り板27は、筒状体30Aの対角線に沿って配置された仕切り板よりも弾性変形量が大きい。従って、本実施形態の仕切り板27は、筒状体30Aの対角線に沿って配置された仕切り板よりも大きな弾性復元力で側壁14との間でハンドル部TB2を保持することができる。加えて、仕切り板が筒状体30Aの対角線に沿って配置されている場合と比較して、収容空間1aに挿入されたハンドル部TB2の側面に当接する位置までの基端29からの距離が短いため、収容空間1aにハンドル部TB2を挿入した際に仕切り板27自体が変形し難く、より強い力で側壁14との間でハンドル部TB2を保持することが可能である。
【0053】
ここで、基端29から側壁11と側壁14との交差部までの距離L13に対する、仕切り板27の基端29と先端28との最大長さL11の割合としては、75%以上、95%以下であることが好ましい。距離L13に対する長さL11の割合が75%未満である場合、仕切り板27の長さL11が短いことから収容空間1aを十分に区画することが困難になり、歯ブラシTBが収容空間1aに装填された際にハンドル部TB2を十分に保持できない可能性がある。距離L13に対する長さL11の割合が95%を超えた場合、仕切り板27の長さL11が長いことから側壁11に接触しやすくなり、仕切り板27の先端28の可動範囲が狭くなってしまう。そのため、ハンドル部TB2を十分に保持する観点及び仕切り板27の先端28の可動範囲を確保する観点から、距離L13に対する最大長さL11の割合としては、75%以上、95%以下であることが好ましい。
【0054】
歯ブラシTB全体が筒状体30Aの収容空間1aに挿入されると、内側フラップ17A及び内側フラップ18Aが折り曲げられて外側から外側フラップ19Aが接合され、差し込み部20Aが側壁12(内板12B)の内側に+y側から差し込まれることにより端壁15が形成される。また、内側フラップ17B及び内側フラップ18Bが折り曲げられて外側から外側フラップ19Bが接合され、差し込み部20Bが側壁12(内板12B)の内側に-y側から差し込まれることにより端壁16が形成される。
これにより、収容空間1aに歯ブラシTBが装填された包装用箱1が形成される。
【0055】
以上のように、本実施形態の包装用箱1においては、仕切り板27の先端28が拘束されておらず、仕切り板27自体が基端29を中心として移動可能であるため、収容空間1aを小さくして歯ブラシTBのがたつきを抑えた場合においても、装填時に歯ブラシTBのハンドル部TB2が仕切り板27に当接した際にも仕切り板27が移動することにより、仕切り板27に変形や破損が生じることを抑制できる。さらに、本実施形態の包装用箱1においては、側壁12から折り曲げられ側壁11の+X側端部に向けて延びる仕切り板27が側壁13及び側壁14と離間して配置された基端29を中心として先端28が移動可能に設けられているため、基端29が側壁12と側壁13との交差部に配置されている場合と比較して、大きな弾性復元力で側壁14との間でハンドル部TB2を保持することができる。特に、本実施形態の包装用箱1においては、基端29の位置を側壁12のX方向中央よりも+X側に配置しているため、収容空間1aに挿入されたハンドル部TB2の側面に当接する位置までの基端29からの距離をより短くすることができ、より大きな弾性復元力で側壁14との間でハンドル部TB2を保持することが可能になる。
【0056】
また、本実施形態の包装用箱1においては、仕切り板27の長さL11が、基端29から側壁14までの距離L12よりも長いため、筒状体30Aの断面形状を長方形に成形する工程で仕切り板27を起函することが可能である。そのため、本実施形態の包装用箱1においては、仕切り板27を起函するための工程を別途設ける必要がなくなり、製造効率の向上に寄与できる。
【0057】
また、本実施形態の包装用箱1においては、窓部21、22とずれた位置に仕切り板27が配置されているため、歯ブラシTBに対する視認性が仕切り板27によって阻害されることを抑制できる。さらに、本実施形態の包装用箱1においては、窓部21、22がX方向の中央よりも側壁14側に偏って配置されているため、ヘッド部TB1及びハンドル部TB2を含む歯ブラシTBに対する視認性を確保しつつ、窓部21、22を設けることで生じる包装用箱1の強度低下を抑制することができる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、包装用箱1の第2実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。
これらの図において、図1乃至図8に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
第2実施形態と上記の第1実施形態とが異なる点は、仕切り板27である。
【0059】
図9は、第2実施形態の包装用箱1を仕切り板27を通りXZ平面と平行な平面で切断した断面図ある。
図9に示すように、第2実施形態の仕切り板27は、Y方向に延びる折り罫部27Cを有している。折り罫部27Cは、起函後に-X側が凸となる山折りにされている。
【0060】
仕切り板27における基端29から折り罫部27Cまでの長さL1と、折り罫部27Cから先端28までの長さL2との和は、基端29から側壁11と側壁14との交差部までの距離L13(図3参照)の90%以上、100%以下であることが好ましい。また、長さL2に対する長さL1の割合(L1/L2で表される値)は、0.67以上、1.5以下であることが好ましい。
【0061】
L1/L2で表される値が0.67未満または1.5を超える場合は、後述する筒状体30Aの起函時に折り罫部27Cの折れ不良(例えば、-X側が凹となる谷形状)となる可能性がある。また、長さL1と、長さL2との和が、距離L13の90%未満の場合には、折り罫部27Cにおける折れ量が少なくなり、折り罫部27Cにおける折れによって生じるハンドル部TB2の収容空間1aの広がりが十分に得られなくなる可能性がある。長さL1と、長さL2との和が、距離L13の100%を超える場合には、後述する筒状体30Aの起函時(特に、筒状体30Aの断面形状が長方形となったとき)に、上述した折り罫部27Cの折れ不良が生じやすくなる。
【0062】
続いて、図10を参照して、外板12Aと内板12Bとを接着した状態の筒状体30Aを、長方形の断面形状に成形する手順について説明する。図10においては、長さL1と長さL2との和が基端29から側壁11と側壁14との交差部までの距離L13と同一(長さL1と、長さL2との和が、距離L13の100%)である場合について説明する。
【0063】
外板12Aと内板12Bとを接着した状態の筒状体30Aの起函を開始した直後は、図10(a)に示されるように、側壁11と側壁13との交差部、及び外板12Aと側壁14との交差部が鈍角となるように傾いた状態となる。
【0064】
次に、図10(b)に示されるように、鈍角で交差する上記側壁11と側壁13との交差部、及び外板12Aと側壁14との交差部が直角に近づくように筒状体30Aの起函を進める。これにより、仕切り板27の先端28が側壁14の内面に当接する。
【0065】
さらに、筒状体30Aの起函を進めると、先端28は側壁14の内面との当接位置が+Z側に移動しながら側壁14の内面に沿って摺動する。図10(c)には、筒状体30Aの断面形状が長方形になった状態が示されている。このとき、仕切り板27の先端28は、側壁11と側壁14との交差部に当接した状態となる。
【0066】
続いて、スプリングバックによる起函の過度の戻りを回避するために、図10(d)に示すように、筒状体30Aの断面形状が長方形の状態からさらに変形するように、側壁11と側壁13との交差部、及び外板12Aと側壁14との交差部が鋭角となるように傾いた状態まで起函を進めた後に起函を解除する。このとき、仕切り板27は、先端28が側壁11と側壁14との交差部に押圧されることにより、折り罫部27Cにおいて-X側が凸となる山折りに折れ曲がる。
【0067】
起函を解除することにより、筒状体30Aは、図10(e)に示されるように、断面形状が長方形の直方体状に成形される。このとき、仕切り板27は、折り罫部27Cにおいて折れ曲がり、折り罫部27Cから側壁11及び側壁14との交差部の方向に向けて延び、先端28が側壁11及び側壁14と離間した状態となる。
【0068】
この後、側壁14と仕切り板27との間の収容空間1aにハンドル部TB2を挿入するが、仕切り板27が折り罫部27Cにおいて-X側が凸となる山折りに折れ曲がっているため、第1実施形態で示したように、仕切り板27が平板である場合と比較して側壁14と仕切り板27との間の収容空間1aを広げることになり、ハンドル部TB2の挿入性が向上する。
【0069】
収容空間1aに歯ブラシTBを装填した後に、さらに、端壁15及び端壁16を形成する。
これにより、収容空間1aに歯ブラシTBが装填された包装用箱1が形成される。
【0070】
本実施形態の包装用箱1においては、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、折り罫部27Cが折れ曲がり収容空間1aが広がるため、ハンドル部TB2の挿入性が向上する。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態では、軸状物として歯ブラシTBを例示したが、この構成に限定されず、他の軸状物であっても適用可能である。
【0073】
また、上記第2実施形態では、折り罫部27Cを一本設ける構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、折り罫部27Cの長さ方向と直交する方向に間隔をあけて複数本設けられている構成であってもよい。折り罫部27Cを複数本設けることにより、起函時に複数の折り罫部27Cの内のいずれかが必ず折れて、折り罫部27C以外の部位が誤って折れてしまうという不具合を回避し易くなるため、起函不良が生じ難くなる。
【符号の説明】
【0074】
1…包装用箱、 11…側壁(他方の側壁)、 12…側壁(一方の側壁)、 21、22…窓部、 27…仕切り板、 27A…同幅部、 27B…縮幅部、 TB…歯ブラシ(棒状物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10