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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】風洞実験用模型成形装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 9/08 20060101AFI20220304BHJP
   G09B 25/04 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
G01M9/08
G09B25/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018066422
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178870
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】丸山 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】藤橋 克己
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-134119(JP,A)
【文献】特開昭63-168678(JP,A)
【文献】実開昭62-019680(JP,U)
【文献】特開2016-197038(JP,A)
【文献】特開2000-221103(JP,A)
【文献】特開平08-240511(JP,A)
【文献】特開平09-329524(JP,A)
【文献】特開平07-035641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 9/00- 9/08
G09B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上で水平方向に回転可能に支持されたターンテーブルと、
前記ターンテーブル上に昇降可能に支持された支持フレームと、
前記支持フレームを昇降させる昇降装置と、
前記支持フレームの上部に設けた模型本体と、を備え、
前記模型本体は、
板状部材に設けた複数の挿通孔と、
前記挿通孔に挿通されて、上下方向に移動可能に支持される複数の棒状部材と、
前記挿通孔の内壁に設けられ、前記棒状部材を所望の高さ位置に保持する保持部材と、
各棒状部材を個別に所望の高さ位置まで移動させる移動装置と、
を備えたことを特徴とする風洞実験用模型成形装置。
【請求項2】
前記棒状部材は、前記挿通孔よりも上方へ向かって突出するとともに隣り合う側面同士が互いに密着する模型部と、前記模型部の下部に設けられて、前記挿通孔に挿通される操作部とからなり、前記操作部の外径は前記模型部の外径よりも小さく形成されており、
前記移動装置は、各棒状部材の操作部の下端部に押し当たって各棒状部材を押し上げるとともに、上端部が凹状の係合面となった押し上げ棒と、当該押し上げ棒を上下方向に移動させる押し上げ装置と、当該押し上げ装置を移動対象となる棒状部材の位置に移動させるトラバース装置と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の風洞実験用模型成形装置。
【請求項3】
前記棒状部材の操作部の下端部には磁性体からなる吸着部を備えており、
前記押し上げ棒の上端部には電磁石を備えており、
前記電磁石を励磁することにより、前記押し上げ棒の上端部を前記棒状部材の操作部に吸着した状態として、前記棒状部材を所望の高さ位置に移動させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の風洞実験用模型成形装置。
【請求項4】
前記模型本体により成形する模型の形状データを記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された形状データに基づき前記移動装置を制御して、各棒状部材を所望の高さ位置にセットする制御装置と、
を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の風洞実験用模型成形装置。
【請求項5】
前記保持部材は、可撓性及び弾性を有するOリングからなり、当該Oリングは前記挿通孔の内壁面に設けた溝部に嵌め込まれている、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の風洞実験用模型成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風洞実験用模型成形装置に関するものであり、特に、風洞実験を行う建造物の建設地の周辺状況に応じた風洞実験用模型を容易に作成することが可能な装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模な建造物を建築する際には、当該建造物を建築した際に周辺環境に与える影響を予め認識して適切な対応を取るため、風洞実験が行われるのが一般的である。特に、高層ビルを建築する際には、ビル風の発生や日照状態に与える影響、建造物自体の耐風構造等を検討する必要がある。風洞実験用の模型は、実際の建設地の周辺状況に応じて適切に作成する必要があるが、作成工程のすべてを人手に頼っていたのでは、効率的な風洞実験を行うことができない。そこで、従来より、種々の提案がなされている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された技術は、風洞実験に用いる市街地模型をテーブル上に作成する装置に関するものである。この風洞実験用市街地模型作成装置は、テーブル下に鉛直方向に沿う多数の針状部材が水平面内に密に並ぶ層を設け、この層の下方にトラバース装置にセットしたドットマシーンを設置する。そして、事前に市街地模型として再現する市街地の平面情報及びこの平面情報に対応する高さ情報をコンピュータに入力し、平面情報に基づいてトラバース装置を駆動することにより、ドットマシーンがX-Y方向に移動しながら高さ情報に基づく高さ分だけ昇降部材を介して針状部材を所定の少数本単位でテーブル上に突出させる。これにより、市街地模型に相当する凹凸をテーブル上に再現することができるとしている。
【0004】
特許文献2に記載された技術は、建造物等の縮尺模型を作成するための立体形成装置に関するものである。この立体形成装置は、多数の挿通穴を有する支持体と、挿通穴に挿通されると共に、それぞれが、任意の高さに保持される多数の棒状体とで構成されている。また、挿通穴と棒状体の少なくとも一方には、係止部が設けられている。そして、支持体に穿設された多数の挿通穴に、それぞれ独立して移動できる多数の棒状体を挿通し、棒状体の端面に高低差を付けることにより、立体を形成させ、各種の模型や金型の原型を作成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-134119号公報
【文献】特開昭63-168678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、高層ビル等の建造物を建築する際には、建造物及び周辺地形の縮小模型を作成して、風洞実験を行うのが一般的である。そして、ある程度精緻な地形や市街地模型を成形するためには、適切な分解能が必要となるが、風洞模型のサイズ(数メートルのターンテーブル等)において模型を成形するためには膨大な数の棒などが必要となる。
【0007】
特許文献1で提案された技術を用いることにより、コンピュータに記憶された座標と高さ情報から自動的に模型を成形することができる。しかし、この技術では、押し上げた棒を保持するための機構が提案はされているが、装置構成及び制御操作が複雑であるため、実際に使用するには更なる工夫が必要である。
【0008】
また、特許文献2に記載された技術は、多数の棒状体をそれぞれ個別に手動操作しなければならず、模型を作成するには多大な労力を必要とする。このため、複雑な地形等を忠実に再現することは極めて困難であり、さらに、模型の形状を変化させながら多種多様な実験環境を作り出すことは不可能に近い。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、簡易な構造でありながら、風洞実験に使用する建造物及び周辺地形の縮小模型を容易に成形することができ、さらに、模型の形状を変化させながら多種多様な実験環境を作り出すことが可能な風洞実験用模型成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る風洞実験用模型成形装置は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る風洞実験用模型成形装置は、基台上で水平方向に回転可能に支持されたターンテーブルと、ターンテーブル上に昇降可能に支持された支持フレームと、支持フレームを昇降させる昇降装置と、支持フレームの上部に設けた模型本体とを備えている。
【0011】
また、模型本体は、板状部材に設けた複数の挿通孔と、挿通孔に挿通されて、上下方向に移動可能に支持される複数の棒状部材と、挿通孔の内壁に設けられ、棒状部材を所望の高さ位置に保持する保持部材と、各棒状部材を個別に所望の高さ位置まで移動させる移動装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
上述した風洞実験用模型成形装置において、棒状部材は、挿通孔よりも上方へ向かって突出するとともに隣り合う側面同士が互いに密着する模型部と、模型部の下部に設けられて、挿通孔に挿通される操作部とから構成することが可能である。そして、操作部の外径は模型部の外径よりも小さく形成されている。移動装置は、棒状部材を押し上げるとともに、上端部が凹状の係合面となった押し上げ棒と、押し上げ棒を上下方向に移動させる押し上げ装置と、当該押し上げ装置を移動対象となる棒状部材の位置に移動させるトラバース装置とを備えた構成とすることが可能である。
【0013】
また、上述した風洞実験用模型成形装置において、棒状部材の操作部の下端部には磁性体からなる吸着部を備えており、押し上げ棒の上端部には電磁石を備えた構成とすることが可能である。このような構成とした場合に、電磁石を励磁することにより、押し上げ棒の上端部が棒状部材の操作部(吸着部)に吸着した状態となり、棒状部材を所望の高さ位置に移動させることが可能となる。なお、磁性体とは、例えば、磁石が吸着する鉄等の金属のことをいう。また、押し上げ棒の上端部が棒状部材の操作部に吸着した状態では、棒状部材を上下方向のいずれにも移動させることができる。
【0014】
また、上述した風洞実験用模型成形装置において、模型本体により成形する模型の形状データを記憶する記憶装置と、記憶装置に記憶された形状データに基づき移動装置を制御して、各棒状部材を所望の高さ位置にセットする制御装置とを備えた構成とすることが可能である。
【0015】
また、上述した風洞実験用模型成形装置において、保持部材は、可撓性及び弾性を有するOリングからなり、当該Oリングは挿通孔の内壁面に設けた溝部に嵌め込まれた構成とすることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る風洞実験用模型成形装置によれば、模型を成形するために、棒状部材を上下方向に移動させるという簡易な構造でありながら、保持部材により、棒状部材を所望の高さ位置で確実に保持するので、風洞実験に使用する建造物及び周辺地形の縮小模型を容易に成形することが可能となる。また、模型の形状を変化させながら多種多様な実験環境を作り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る風洞実験用模型成形装置の全体構成を示す説明図。
図2】本発明の実施形態に係る風洞実験用模型成形装置で使用する板状部材及び棒状部材の説明図。
図3】本発明の実施形態に係る風洞実験用模型成形装置で使用する棒状部材の説明図。
図4】本発明の実施形態に係る風洞実験用模型成形装置で使用する棒状部材と挿通孔の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る風洞実験用模型成形装置を説明する。図1図4は本発明の実施形態に係る風洞実験用模型成形装置を説明するもので、図1は全体構成の説明図、図2及び図3は棒状部材の説明図、図4は挿通孔と棒状部材の説明図である。また、図2において(a)は板状部材及び棒状部材を側面から見た状態、(b)は板状部材及び棒状部材を下面から見た状態、図3において(a)は棒状部材を側面から見た状態、(b)は棒状部材を下面から見て拡大した状態、図4において(a)は挿通孔及び保持部材を上面から見た状態、(b)は挿通孔及び保持部材を側面から見た状態を示している。
【0019】
<風洞実験用模型成形装置の概略>
本発明の実施形態に係る風洞実験用模型成形装置200は、図1図4に示すように、棒状部材10を主要な構成要素とする模型本体20に特徴がある。この模型本体20は、板状部材30に設けた複数の挿通孔40と、挿通孔40に挿通されて、上下方向に移動可能に支持される複数の棒状部材10と、挿通孔40の内壁に設けられ、棒状部材10を所望の高さ位置に保持する保持部材50と、各棒状部材10を個別に所望の高さ位置まで移動させる移動装置60とを備えている。
【0020】
また、模型本体20により成形した風洞実験用模型を風洞実験に供するために、種々の装置が付帯している。模型本体20に付帯する装置は、基台70上で水平方向に回転可能に支持されたターンテーブル80と、ターンテーブル80上に昇降可能に支持された支持フレーム90と、支持フレーム90を昇降させる昇降装置100である。
【0021】
<ターンテーブル>
ターンテーブル80は、風洞実験用模型を回転させて所望の回転位置とするための装置である。図示しないが、風洞実験では、送風装置を用いて気流を発生させることにより、模型に対して風を吹き付けるが、風が吹き付ける方向を変化させるためには、送風装置を移動させるよりも風の向きに対して模型の位置を変更する方が装置構成を簡易なものとすることができる。ターンテーブル80は、このための装置であり、基台70上に設けた回転基板81と、旋回ガイド82を介して回転基板81上に載置したテーブル本体83とからなる。ターンテーブル80は、手動で回転させてもよいし、駆動装置(図示せず)を取り付けて、駆動装置の駆動力により回転させてもよい。
【0022】
<支持フレーム/昇降装置>
支持フレーム90は、模型本体20及びその付帯装置を収納及び支持するフレームであり、本実施形態では、上面に板状部材30を取り付けた筺状体からなる。支持フレーム90内に収容及び支持される装置は、複数の挿通孔40を有する板状部材30と、各挿通孔40に挿通する複数の棒状部材10と、棒状部材10を所望の高さ位置に保持する保持部材50と、各棒状部材10を個別に所望の高さ位置まで移動させる移動装置60等である。
【0023】
昇降装置100は、支持フレーム90を昇降させるための装置であり、本実施形態ではターンテーブル80と支持フレーム90との間に設置した複数のジャッキにより構成される。なお、昇降装置100はジャッキに限定されるものではなく、支持フレーム90を昇降させることができればどのような装置であってもよい。
【0024】
<模型本体>
上述したように、模型本体20は、板状部材30に設けた複数の挿通孔40と、挿通孔40に挿通されて、上下方向に移動可能に支持される複数の棒状部材10と、挿通孔40の内壁に設けられ、棒状部材10を所望の高さ位置に保持する保持部材50と、各棒状部材10を個別に所望の高さ位置まで移動させる移動装置60とを備えている。本実施形態の板状部材30は、円盤状をなしており、挿通孔40は、中心部を避けてドーナッツ状に形成されている。このような形状の板状部材30では、中心部の上部に、実験対象となる建造物の模型(図示せず)を設置することができる。
【0025】
<挿通孔>
板状部材30には複数の挿通孔40が設けられている。挿通孔40は、模型部11と操作部12とからなる棒状部材10の上下方向の位置を規定するための孔であり、模型部11よりも下方に位置する操作部12を挿通するようになっている。本実施形態では、操作部12の断面が円形であるため、挿通孔40の断面も円形となっており、挿通孔40の内径は操作部12の外径よりも大きく設定されている。なお、挿通孔40の断面形状は円形に限定されるものではなく、棒状部材10(操作部12)の形状に合わせて適宜変更することができる。
【0026】
<棒状部材>
棒状部材10は、模型本体20において風洞実験用模型を作成するための主要部材である。この棒状部材10は、挿通孔40よりも上方へ向かって突出するとともに隣り合う側面同士が互いに密着する模型部11と、模型部11の下部に設けられて、挿通孔40に挿通される操作部12とからなる。本実施形態では、模型部11の断面は正方形となっており、操作部12の断面は円形となっている。なお、模型部11の断面は正方形に限定されるものではなく、隣り合う側面同士が互いに密着すれば、正六角形、正三角形等、どのような形状であってもよい。同様に、操作部12の断面は、挿通孔40へ挿通して保持部材50であるOリングで保持するという点で円形が好ましいが、他の形状であってもよい。
【0027】
また、操作部12の外径は模型部11の外径よりも小さく形成されている。すなわち、挿通孔40よりも上部では、突出した模型部11の側面同士が互いに密着することにより、容易に変形することがない風洞実験用模型を作成することができ、挿通孔40よりも下部では、隣り合う操作部12同士が離隔しているため、互いに干渉することがなく、目的とする棒状部材10を確実に操作することができる。
【0028】
さらに、棒状部材10の操作部12の下端部には磁性体からなる吸着部(図示せず)を設けてもよい。磁性体とは、鉄等の磁石が吸着する金属であり、操作部12の下端部に吸着部を設けるとともに、押し上げ棒61の上端部には電磁石(図示せず)を取り付ける。そして、電磁石に通電して励磁させて、押し上げ棒61の上端部が棒状部材10の操作部12に吸着した状態とすることにより、棒状部材10を確実に所望の高さ位置に移動させることができる。また、押し上げ棒61の上端部が棒状部材10の操作部12に吸着した状態では、棒状部材10を上下方向のいずれにも移動させることができる。そして、電磁石の通電を止めると、押し上げ棒61の上端部と棒状部材10の操作部12との吸着も解除され、棒状部材10の上下方向の位置が決定される。
【0029】
<保持部材>
保持部材50は、挿通孔40の内壁に設けられて棒状部材10を所望の高さ位置に保持するための部材である。本実施形態の保持部材50は、可撓性及び弾性を有するOリングからなり、当該Oリングは挿通孔40の内壁面に設けた溝部に嵌め込まれている。すなわち、挿通孔40内に挿入された操作部12は、外周面がOリングに密着して押さえつけられるため、操作部12を所望の上下位置に保持することができる。
【0030】
また、Oリングを嵌め込む溝部の幅及び深さを変更することにより、摩擦力を調整することができ、棒状部材10の材質、大きさ、重さ等に応じて、適切な摩擦力を付与することができる。Oリングは、例えば、合成ゴムや合成樹脂により形成することができる。
【0031】
<移動装置>
移動装置60は、各棒状部材10を個別に所望の高さ位置まで移動させるための装置である。この移動装置60は、各棒状部材10の操作部12の下端面に押し当たって、各棒状部材10を押し上げる押し上げ棒61と、押し上げ棒61を上下方向に移動させる押し上げ装置62と、当該押し上げ装置62を移動対象となる棒状部材10の位置に移動させるトラバース装置63とを備えている。また、図3(a)に示すように、押し上げ棒61の上端面は凹状の係合面61aとなっている。
【0032】
そして、操作部12の下端面に押し上げ棒61の上端部が押し当たって操作部12を押し上げることにより、模型部11の突出量(棒状部材10の上下方向の位置)を規定することができる。この際、挿通孔40と操作部12のクリアランスによる棒状部材10の傾きおよび操作部12の反り等に伴う曲がりのため、操作部12の下端部の中心が挿通孔40の中心に正対しているとは限らず、水平方向に多少のズレが生じる場合がある。このような場合であっても、押し上げ棒61の上端部が凹状の係合面61aとなっているため、目的とする操作部12の下端部がズレてしまう範囲内に押し上げ棒61の上端面が位置していれば、当該操作部12を確実に押し上げることができる。
【0033】
押し上げ装置62は、シリンダーとピストンロッドとを備えたアクチュエーターにより構成されている。シリンダーとピストンロッドとを備えたアクチュエーターは、電動式、油圧式、空気圧式、磁力式等どのような構造であってもよい。また、押し上げ装置62(押し上げ棒61)を複数設置することにより、同時に複数の棒状部材10を所望の高さ位置まで移動させることができる。押し上げ装置62の設置個数は、風洞実験用模型成形装置200の形状や大きさ、棒状部材10の数等に応じて、適宜設定すればよい。
【0034】
トラバース装置63は、押し上げ装置62をX軸方向及びY軸方向に移動させるための装置である。なお、X軸方向、Y軸方向とは、水平面において互いに直交する方向のことである。トラバース装置63は、例えば、X軸方向及びY軸方向に設置した回転可能なウォーム64a、64bと、支持フレーム90に支持されて、ウォーム64a、64bと噛み合うウォームホイール(図示せず)とからなる。また、X軸方向及びY軸方向のウォーム64a、64bには、それぞれX軸モータ65a及びY軸モータ65bが連結されており、各ウォーム64a、64bを回転させることができる。なお、トラバース装置63の構成は上述したものに限られず、模型本体20を所望位置に移動させることができれば、どのような構成であってもよい。
【0035】
X軸モータ65a及びY軸モータ65bによりウォーム64a、64bを回転させると、押し上げ装置62をX軸方向及びY軸方向の所望位置に移動させることができる。そして、押し上げ装置62を所望位置に移動させた状態で、押し上げ装置62を駆動することにより、棒状部材10(模型部11及び操作部12)を所望の上下位置に移動させることができる。
【0036】
<記憶装置/制御装置>
記憶装置110は、模型本体20により成形する模型の形状データを記憶するための装置であり、例えば、HDD、SDD、DVD等の記憶媒体及び付帯機器からなる。制御装置120は、記憶装置110に記憶された形状データに基づき移動装置60を制御して、各棒状部材10を所望の高さ位置にセットするための装置である。この制御装置120は、コンピュータ及びこれに付帯する機器と、コンピュータにインストールされたソフトウェア(プログラム)により構成され、ソフトウェアがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働してその機能を発揮する。
【0037】
<模型の成形>
本実施形態では制御装置120を備えているため、制御装置120の制御により模型を成形することができる。すなわち、制御装置120は、記憶装置110に記憶された形状データに基づき移動装置60を制御して、各棒状部材10を所望の高さ位置にセットすることにより、所望形状の模型を成形する。記憶装置110に記憶されている形状データは、例えば、地盤や建物群のGIS(Geographic Information System)データや点群データである。
【0038】
また、操作部12の下端部に吸着部を設けるとともに、押し上げ棒61の上端部に電磁石を設けた場合には、一度押し上げた棒状部材10を、電磁石の吸着力により引き下げることができる。したがって、模型形状の微調整を行うことができるだけではなく、実験の推移に伴って模型形状を変化させることができる。
【0039】
<各部材の具体的数値>
本実施形態に係る風洞実験用模型成形装置200を構成する各部材の具体的数値を説明する。なお、以下に示す数値は一例であり、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。模型本体20を構成する板状部材30の厚さは50mm程度であり、この板状部材30に複数の挿通孔40を設けてある。挿通孔40の内径は、3.1mm程度であり、隣り合う挿通孔40は2.9mm程度離隔している。挿通孔40に取り付けるOリングの内径は3.0mm程度であり、Oリングを嵌め込む溝の深さは1.5mm程度、溝の幅は0.7mm程度である。
【0040】
また、棒状部材10を構成する操作部12は丸棒状となっており、模型部11は角棒状となっている。操作部12の外径は3.0mm程度、長さは200mm程度である。模型部11は6.0mm×6.0mm程度の角棒であり、長さは160mm程度である。このような風洞実験用模型成形装置200で成形される風洞実験用模型は、例えば、実物の1/400~1/500程度の大きさである。
【符号の説明】
【0041】
10 棒状部材
11 模型部
12 操作部
20 模型本体
30 板状部材
40 挿通孔
50 保持部材
60 移動装置
61 押し上げ棒
61a 係合面
62 押し上げ装置
63 トラバース装置
64a ウォーム(X軸)
64b ウォーム(Y軸)
65a X軸モータ
65b Y軸モータ
70 基台
80 ターンテーブル
81 回転基板
82 旋回ガイド
83 テーブル本体
90 支持フレーム
100 昇降装置
110 記憶装置
120 制御装置
200 風洞実験用模型成形装置
図1
図2
図3
図4