(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B65D47/34 200
(21)【出願番号】P 2018069762
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】石塚 徹也
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-58731(JP,A)
【文献】特開2014-198309(JP,A)
【文献】特開2015-30461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で下方移動可能に構成されるとともに、内容物を吐出する押下ヘッドが取付可能なステムと、
容器本体の口部に装着される装着キャップと、
前記ステムの上下動に連係するピストンと、
前記装着キャップに取り付けられるとともに、前記ピストンが上下摺動可能に嵌合された筒状のシリンダと、
前記ピストンの内側に挿通され、前記ステムの上下動に連係するピストンガイドと、
前記シリンダの下端開口部を開閉する下部弁体と、を備え、
前記シリンダの上端部には、前記ステムの上方移動を規制する規制部が配設され
、
前記規制部は、前記ステムの下降端位置において前記押下ヘッドが係合することで、前記ステムの上方移動を規制する係合部を備え、
前記シリンダの上端部には、前記ステムの周囲を取り囲んだ状態で、前記シリンダとの間で前記規制部を上下方向に挟持する外装筒が設けられ、
前記外装筒は、破断可能な弱化部を介して前記装着キャップに連結される吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体内の内容物を吐出する吐出容器は、容器本体の口部に吐出器が装着されて構成されている。吐出器は、シリンダやステム、ピストン等を含むポンプ機構と、装着キャップと、押下ヘッドと、を備えている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
装着キャップは、シリンダに取り付けられている。吐出器(ポンプ機構)は、装着キャップを介して容器本体の口部に装着される。
押下ヘッドは、ステムの上端部に取り付けられている。ステムは、押下ヘッドを介した押下操作によって上方付勢状態で下方移動する。これにより、ピストンを介してシリンダ内が加圧されることで、ステム及び押下ヘッドを通じて内容物が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吐出器を保管するには、ポンプ機構や外装部材が組み上げられた状態、又は全てをばらした状態にしておく必要があった。
【0006】
例えば客先からの短納期又は大量注文に速やかに対応するには、ポンプ機構や外装部材が組み上げられた状態で吐出器を保管しておくことが望ましい。しかしながら、ポンプ機構や外装部材が組み付けられた状態で吐出器を保管している場合には、保管場所の圧迫に繋がる可能性がある。
また、吐出器のうち、装着キャップや押下ヘッド等の外装部材は、吐出容器の仕様(例えば、デザイン等)に応じて外観形状を変更したり、着色を施したりする要望がある。しかしながら、ポンプ機構や外装部材が組み上げられた状態で吐出器を保管している場合には、上述した要望に速やかに応えることが難しかった。
一方、吐出器をばらした状態で保管した場合には、例えば客先から注文を受けてから吐出器を組み上げることになるので、短納期又は大量注文の要望に応えることが難しい。
【0007】
本発明は、ポンプ機構をモジュール化して、例えば客先の要望に速やかに対応できる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る吐出器は、上方付勢状態で下方移動可能に構成されるとともに、内容物を吐出する押下ヘッドが取付可能なステムと、容器本体の口部に装着される装着キャップと、前記ステムの上下動に連係するピストンと、前記装着キャップに取り付けられるとともに、前記ピストンが上下摺動可能に嵌合された筒状のシリンダと、前記ピストンの内側に挿通され、前記ステムの上下動に連係するピストンガイドと、前記シリンダの下端開口部を開閉する下部弁体と、を備え、前記シリンダの上端部には、前記ステムの上方移動を規制する規制部が配設され、前記規制部は、前記ステムの下降端位置において前記押下ヘッドが係合することで、前記ステムの上方移動を規制する係合部を備え、前記シリンダの上端部には、前記ステムの周囲を取り囲んだ状態で、前記シリンダとの間で前記規制部を上下方向に挟持する外装筒が設けられ、前記外装筒は、破断可能な弱化部を介して前記装着キャップに連結される。
【0009】
この構成によれば、シリンダ内に予め規制部を配設しておくことで、装着キャップや押下ヘッド等の外装部材が組み付けられる前の状態であっても、シリンダからのステム等の抜けを抑制できる。すなわち、吐出器のうちポンプ機構をモジュール化することができるので、外装部材が組み付けられる前の状態で、ポンプ機構を保管することができる。そのため、ポンプ機構と外装部材を組み付けた状態で保管する場合に比べて保管場所の縮小を図ることができる。
また、吐出容器の仕様変更や外装部材の着色等の要望があった場合には、要望に応じた外装部材をポンプ機構に組み付けるだけで、要望に応じた吐出器を速やかに提供できる。そのため、保管していたポンプ機構をそのまま利用できるので、廃棄ロス等を抑制できる。
そして、本発明に係る構成では、モジュール化されたポンプ機構を共通パーツとして、形状や加飾・装飾等を変更した外装部材を使用することで、様々な吐出器を容易に形成することができる。また、様々な吐出器を形成する上で、本発明のモジュール化されたポンプ機構を共通パーツとして使用することができるため、製造工程の効率化を図ることが可能になる。
さらに、ポンプ機構を組み上げた状態で保管しておくので、例えば短納期又は大量注文が入った場合であっても、速やかに対応することができる。
【0011】
また、ポンプ機構の規制部に係合部が形成されているため、外装部材の簡素化を図ることができる。
【0012】
さらに、上記本発明に係るポンプ機構を備えているため、低コストな吐出器を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポンプ機構をモジュール化して、例えば客先の要望に速やかに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る吐出容器において、ステムが下降端位置にある状態を示す部分断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る吐出容器において、ステムが下降端位置にある状態を示す部分断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る吐出器の分解断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るモジュール化されたポンプ機構の部分断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る吐出容器において、ステムが下降端位置にある状態を示す部分断面図である。
【
図6】第2実施形態に係るモジュール化されたポンプ機構の部分断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る吐出器の分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る吐出器が容器本体に取り付けられてなる吐出容器について説明する。
(第1実施形態)
図1、
図2に示す吐出容器1は、有底筒状の容器本体11と、容器本体11の口部11aに着脱可能に装着された吐出器12と、を備えている。
容器本体11は、内容物が収容可能に構成されている。なお、内容物は、例えばシャンプーやボディソープ、化粧料等の液体である。
【0016】
吐出器12は、ポンプ機構14と、ポンプ機構14に取り付けられる外装部材15と、を備えている。
図1~
図3に示すように、ポンプ機構14は、ステム21やピストン22、シリンダ23、ピストンガイド24、下部弁体25、閉塞筒26等を備えている。なお、ポンプ機構14のうち、少なくともステム21やピストン22、シリンダ23、閉塞筒26は、共通軸上に同軸に配設されている。以下、共通軸を軸線Oという。軸線O方向のうち、容器本体11の底部から吐出器12に向かう方向を上側とし、吐出器12から容器本体11の底部に向かう方向を下側とする。また、軸線O方向から見た平面視において、軸線Oに交差する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0017】
シリンダ23は、上方に位置するものほど外径が拡大する多段筒状に形成されている。具体的に、シリンダ23は、取付筒31、収容筒32、摺動筒33及び突出筒34が下方から上方に連なっている。
取付筒31には、ポンプ機構14とは別体の吸上筒41が嵌合されている。吸上筒41は、下端開口が容器本体11の底部に近接する位置まで延設されている。なお、吸上筒41をポンプ機構14と別体で用意しておくことで、容器本体11の仕様(サイズや種類)に応じて最適な吸上筒41をポンプ機構14に取り付けることができる。
収容筒32内には、下部弁体25が収容されている。
【0018】
摺動筒33の上部には、摺動筒33を径方向に貫通する導入孔33aが形成されている。摺動筒33の上端開口縁には、径方向の外側に向けてフランジ部42が突設されている。フランジ部42は、摺動筒33の全周に亘って形成されている。フランジ部42は、吐出器12が容器本体11に装着された状態において、口部11aの上端開口縁上にパッキン44を間に挟んで配置される。
【0019】
突出筒34は、フランジ部42から上方に延設されている。突出筒34の外周面には、係合突起が形成されている。
【0020】
下部弁体25は、嵌合筒45と、下方規制部46と、弁本体47と、を備えている。
嵌合筒45は、有頂筒状に形成されている。嵌合筒45の周壁部は、収容筒32の下部に嵌合されている。
下方規制部46は、収容筒32内において、嵌合筒45の頂壁部から上方に突設されている。なお、下方規制部46は、軸線Oを間に挟んで径方向で対向する一対の側板と、側板同士を連結する中板と、側板及び中板の各上端部に一体に連結された頂板と、を備える。平面視において、一対の側板及び中板は全体でH字状を呈している。頂板は、一対の側板に外接する円形状を呈する。一対の側板及び中板それぞれの軸線O方向の長さは互いに同等となっている。一対の側板及び中板それぞれの軸線O方向の位置は互いに同等になっている。
【0021】
弁本体47は、嵌合筒45(周壁部)の内周面に、弾性変形可能な連結片を介して連結されている。すなわち、弁本体47は、連結片の弾性変形に応じて嵌合筒45に対して軸線O方向に弾性変位可能に構成されている。弁本体47は、収容筒32内において、収容筒32の下端開口縁に対して上方から接離可能に構成されている。
【0022】
下部弁体25(弁本体47)は、シリンダ23内の加圧時にシリンダ23の下端開口を閉塞したままで、シリンダ23内の減圧時にシリンダ23の下端開口を開放する逆止弁である。下部弁体25は、シリンダ23内の加圧時において、シリンダ23内の内容物が収容筒32の下端開口を通じて容器本体11に戻ることが阻止される。一方、シリンダ23内の減圧時には、容器本体11内の内容物が収容筒32の下端開口を通じてシリンダ23内に流入する。
【0023】
ピストンガイド24は、シリンダ23内をステム21とともに上下動可能に構成されている。具体的に、ピストンガイド24は、栓部51と、栓部51上方に延設された装着部52と、を備えている。
【0024】
栓部51は、有頂筒状に形成されている。栓部51は、上下動に伴い、収容筒32と摺動筒33内との連通及び遮断を切り替える。具体的に、
図1に示すステム21の下降端位置において、栓部51(周壁部)の下部は、収容筒32内に嵌合されている。これにより、収容筒32内と摺動筒33内との連通が軸線O方向で遮断される。一方、
図2に示すステム21の上昇端位置において、栓部51(周壁部)の下部は、収容筒32から上方に離脱する。これにより、収容筒32内と摺動筒33内とが連通する。
【0025】
栓部51の周壁部には、径方向の外側に向けて近接突起51aが形成されている。近接突起51aは、周方向に間隔をあけて複数形成されている。近接突起51aにおける径方向の外側端面は、収容筒32の内周面よりも径方向の外側に位置し、摺動筒33の内周面よりも径方向の内側に位置している。近接突起51aは、ステム21が下降端位置に位置した状態で、収容筒32の上端開口縁に収容筒32の上方から近接又は当接する。
栓部51の頂壁部と、上述した嵌合筒45の頂壁部と、の間には付勢部材55が介在している。付勢部材55は、下部弁体25の下方規制部46を取り囲んだ状態で、ピストンガイド24を上方に付勢している。
【0026】
装着部52は、周方向に間隔をあけて配置された複数の分割周壁と、複数の分割周壁における周方向の中央部から径方向の内側に向けて各別に突出するリブと、を備えている。分割周壁の外周面は、栓部51の周壁部に対して径方向の内側に位置している。各リブにおける径方向の内側端部同士は、軸線O上で互いに連結されている。リブは、分割周壁における軸線O方向の全域にわたって配設されている。装着部52は、周方向で隣り合う分割周壁同士の間を通じて、分割周壁の内外が連通している。なお、装着部52は、周方向の全周に亘って連続して延びる筒部に、筒部を径方向に貫通する貫通孔を有する構成であってもよい。
【0027】
ステム21は、上述したピストンガイド24を介して上方付勢状態で下方移動可能に構成されている。ステム21は、下筒部61と、下筒部61よりも小径に形成された上筒部62と、を備えている。
下筒部61は、装着部52の周囲を囲繞している。下筒部61の内周面と装着部52(分割周壁)の外周面との間には、周方向の全体に亘って隙間が形成されている。下筒部61の上端開口縁には、径方向の内側に向けて段部63が形成されている。図示の例において、段部63は、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びるテーパ状に形成されている。但し、段部63は、軸線Oに対して直交する方向に突設されていてもよい。
【0028】
上筒部62は、段部63における径方向の内側端部から上方に延設されている。上筒部62の下部は、装着部52(分割周壁)に外嵌されている。上筒部62において、軸線O方向の中央部には、径方向の内側に向けて規制突起65が突設されている。規制突起65は、装着部52(分割周壁)の上端縁に装着部52の上方から当接している。これにより、ステム21に対するピストンガイド24の上方移動が規制されるとともに、付勢部材55の付勢力がピストンガイド24を介してステム21に伝達される。
【0029】
ピストン22は、外筒71と、内筒72と、外筒71及び内筒72を連結する連結部73と、を有している。
外筒71は、軸線O方向の中央部から両側に向かうに従い外径が拡大している。外筒71は、軸線O方向の両端部がシリンダ23の摺動筒33の内周面上を軸線O方向に摺動可能に構成されている。
【0030】
内筒72は、ステム21の上述した下筒部61内に軸線O方向に摺動可能に嵌合される。
連結部73は、ステム21の下方において、外筒71及び内筒72の軸線O方向の中間部分同士を周方向の全周に亘って連結している。
【0031】
図2に示すように、ピストン22は、ステム21の上昇端位置において、外筒71によって上述した導入孔33aを閉塞する。具体的に、外筒71の軸線O方向の両端部が、摺動筒33の内周面における導入孔33aに対して軸線O方向の両側に位置する部分に密接することで、導入孔33aが閉塞される。
【0032】
閉塞筒26は、ステム21(上筒部62)とシリンダ23(摺動筒33)との間に介在している。具体的に、閉塞筒26は、基筒部77と、下シール部78と、を備えている。
基筒部77は、上筒部62の上部を全周に亘って取り囲んでいる。基筒部77の内周面と、上筒部62の外周面と、の間には、上筒部62の外周面及び基筒部77の内周面の間を通じてシリンダ23内外を連通させる連通通路79を画成している。なお、基筒部77の上端開口縁は、
図1に示すステム21の下降端位置において、ステム21の上端開口縁と面一に配置されている。
【0033】
基筒部77の下端部には、接続筒80が連設されている。接続筒80は、基筒部77に対して拡径されている。接続筒80は、
図2に示すステム21の上昇端位置において、ステム21の段部63が接続筒80の下方から近接又は当接する。
【0034】
下シール部78は、軸線O方向の中央部から両側に向かうに従い外径が拡大している。下シール部78は、軸線O方向の両端部が摺動筒33の上部内周面に軸線O方向に摺動可能に嵌合している。下シール部78は、
図1に示すステム21の下降端位置において、導入孔33aを閉塞する。具体的に、下シール部78の軸線O方向の両端部が、摺動筒33の内周面における導入孔33aに対して軸線O方向の両側に位置する部分に密接することで、導入孔33aが閉塞される。一方、下シール部78の下端部は、
図2に示すステム21の上昇端位置において、上述した外筒71の上端部に当接している。
【0035】
ここで、シリンダ23の上端開口部内には、シリンダ23の上方から規制部90が嵌合されている。規制部90は、軸線Oと同軸のリング状に形成されている。規制部90の内周面は、閉塞筒26の軸線O方向の移動に伴い、基筒部77の外周面が摺動する。上述した下シール部78は、ステム21の上昇端位置において、規制部90の下方から規制部90に近接又は当接する。すなわち、規制部90は、シリンダ23に対するステム21の上方移動を、閉塞筒26を介して規制している。なお、規制部90は、ステム21の上方移動を規制する構成であれば、閉塞筒26以外の部材(例えば、ステム21)に連係していてもよい。また、規制部90は、シリンダ23に外嵌等される構成であってもよい。
【0036】
外装部材15は、装着キャップ81と、係合筒82と、押下ヘッド83と、を備えている。外装部材15は、吐出器12が容器本体11に装着された状態において、吐出器12の外部に露呈する部分である。
【0037】
装着キャップ81は、有頂筒状に形成されている。装着キャップ81の天壁部85には、天壁部85を軸線O方向に貫通する挿通孔85aが形成されている。挿通孔85a内には、突出筒34やステム21(上筒部62)、基筒部77が天壁部85の下方から挿通されている。天壁部85の下面は、フランジ部42の上面に当接(係合)している。なお、装着キャップ81は、例えば嵌合等、係合以外の方法によりシリンダ23(フランジ部42)に取り付けられる構成であってもよい。
【0038】
装着キャップ81の周壁部86は、天壁部85の外周縁から下方に延設されている。すなわち、装着キャップ81は、フランジ部42を上方及び径方向の外側から取り囲んでいる。周壁部86の内周面には、口部11aに螺着される雌ねじ部が形成されている。すなわち、ポンプ機構14は、装着キャップ81を介して容器本体11に着脱可能に装着される。なお、装着キャップ81は、例えばアンダーカット嵌合等、螺着以外の方法によって口部11aに装着されてもよい。
【0039】
係合筒82は、雄ねじ筒91と、連結環92と、外嵌筒93と、外装筒94と、を備えている。
雄ねじ筒91の下部は、シリンダ23内に挿入されている。雄ねじ筒91の下端部は、上述した規制部90に規制部90の上方から近接又は当接している。なお、雄ねじ筒91の下部外周面及び突出筒34の内周面には、互いに係合してシリンダ23に対する係合筒82の相対回転を規制する回り止め部が形成されている。
【0040】
雄ねじ筒91の上部(シリンダ23から上方に突出した部分)には、雄ねじ部が形成されている。なお、雄ねじ筒91の内周面及び規制部90の内周面には、溝部95が形成されている。溝部95は、雄ねじ筒91及び規制部90を軸線O方向に跨って形成されている。溝部95は、下端部が規制部90の下端開口縁上で開口し、上端部が雄ねじ筒91の上端部で終端している。
【0041】
連結環92は、雄ねじ筒91における軸線O方向の中間部分から径方向の外側に突設されている。連結環92の内周部分は、突出筒34の上端開口縁に突出筒34の上方から近接又は当接している。
外嵌筒93は、連結環92のうち突出筒34よりも径方向の外側に位置する部分から下方に延設されている。外嵌筒93は、突出筒34に打栓等によって外嵌されている。すなわち、外嵌筒93は、突出筒34を径方向の外側から取り囲んでいる。
【0042】
外装筒94は、連結環92の外周縁から下方に延設されている。外装筒94の下端開口縁は、天壁部85に天壁部85の上方から近接している。外装筒94は、ポンプ機構14に対する装着キャップ81の上方移動を規制する。
【0043】
押下ヘッド83は、操作部96と、嵌合筒97と、雌ねじ筒98と、吐出筒99と、を備えている。
操作部96は、有頂筒状に形成されている。
嵌合筒97は、操作部96の天板部から下方に延設されている。嵌合筒97の下部は、ステム21(上筒部62)内に嵌合されている。嵌合筒97の上部には、径方向の外側に向けて係合突起97aが突設されている。係合突起97aは、軸線O方向に延設されている。係合突起97aの下端縁は、上筒部62の上端開口縁に上筒部62の上方から近接又は当接している。
【0044】
雌ねじ筒98は、操作部96の天板部において、嵌合筒97よりも径方向の外側に位置する部分から下方に延設されている。雌ねじ筒98の内周面には、雌ねじ部が形成されている。雌ねじ筒98は、
図1に示すステム21の下降端位置において、上述した雄ねじ筒91に螺着される。なお、雄ねじ筒98の下端開口縁は、係合突起97a及び操作部96の周壁部よりも下方に位置している。したがって、係合突起97aとステム21との当接部分は、雌ねじ筒98によって径方向の外側から覆われている。
【0045】
吐出筒99は、操作部96の周壁部及び雌ねじ筒98を径方向に貫き、嵌合筒97内に連通している。吐出筒99における径方向の外側開口部は、内容物を外部に吐出する吐出孔99aを構成している。
【0046】
次に、上述した吐出容器1による内容物の吐出方法について説明する。
まず、下降端位置に位置する押下ヘッド83を、係合筒82に対して軸線O回りに回転させることで、押下ヘッド83の雌ねじ筒98と、係合筒82の雄ねじ筒91と、の螺着を解除する。この際、押下ヘッド83、ステム21及びピストンガイド24が、シリンダ23に対して上昇し、ピストンガイド24の栓部51がシリンダ23の収容筒32から外れ、収容筒32内と摺動筒33内とが連通する。そして、付勢部材55の上方付勢力によって、ピストンガイド24、ステム21及び押下ヘッド83が一体に上昇する。この過程において、栓部51の頂壁部が、ピストン22の内筒72の下端部に係合することで、ピストンガイド24とともにピストン22も上昇する。
【0047】
これにより、シリンダ23内が減圧することで、下部弁体25がシリンダ23の下端開口を開放し、容器本体11内の内容物が、吸上筒41を通してシリンダ23内に流入する。また、
図2に示すように、ピストン22の外筒71の上端開口縁が、閉塞筒26における下シール部78の下端縁に係合することで、閉塞筒26を上昇させる。これにより、閉塞筒26が導入孔33aから上方に離間する一方、外筒71が導入孔33aを閉塞する。
【0048】
そして、押下ヘッド83を押下して、ステム21及びピストンガイド24を下方移動させると、まずピストンガイド24の栓部51がピストン22の内筒72から下方に離間する。これにより、シリンダ23内とステム21内とが連通するとともに、ステム21の下端部がピストン22の連結部73に当接する。
ステム21及びピストンガイド24がさらに下方移動すると、ステム21及びピストンガイド24とともにピストン22も下方移動する。これにより、ピストン22が導入孔33aから下方に離間しつつ、シリンダ23内の内容物が、ピストンガイド24における周方向で互いに隣り合う近接突起51a同士の間を通して、ステム21内に流入する。その結果、ステム21内の内容物が押下ヘッド83の吐出筒99内を通って、吐出孔99aから吐出される。
【0049】
次に、押下ヘッド83の押下を解除すると、付勢部材55の上方付勢力によって、ピストンガイド24、ピストン22、ステム21及び押下ヘッド83が上方に復元移動する。ピストンガイド24等の上方移動に伴い、上述したように容器本体11内の内容物が吸上筒41を通じてシリンダ23内に流入する。
【0050】
次に、吐出器12の組立方法について説明する。
本実施形態の吐出器12は、ポンプ機構14を組み立てるポンプ組立工程と、ポンプ機構14に対して外装部材15を組み付ける外装部材組立工程と、を有している。なお、ポンプ組立工程は、例えば客先からの受注の有無に関わらず継続的に行ってもよい。外装部材組立工程は、例えば客先からの受注に応じて行ってもよい。
【0051】
図4に示すように、ポンプ組立工程では、下部弁体25、付勢部材55、ピストンガイド24、ピストン22、ステム21及び閉塞筒26をシリンダ23の上端開口部を通じて順次挿入していく。その後、シリンダ23内に規制部90を嵌合させる。規制部90が基筒部77の外周面と摺動筒33の内周面との間に配置されることで、シリンダ23に対するステム21の上方移動が規制される。すなわち、本実施形態のポンプ機構14は、外装部材15を組み付ける前の状態であっても、シリンダ23からのステム21等の抜けが抑制されている。
【0052】
外装部材組立工程では、装着キャップ81、係合筒82及び押下ヘッド83をポンプ機構14に対して組み付ける。なお、本実施形態では、外装部材組立工程に先立って、係合筒82及び押下ヘッド83を組み付けておく。すなわち、押下ヘッド83の雌ねじ筒98を係合筒82の雄ねじ筒91に螺着しておく。但し、装着キャップ81、係合筒82及び押下ヘッド83をポンプ機構14に対して順次組み付けてもよい。
【0053】
装着キャップ81をポンプ機構14(シリンダ23)に組み付けるには、装着キャップ81の挿通孔85a内に、装着キャップ81の下方からステム21等を挿入する。この際、シリンダ23のフランジ部42が天壁部85の下面に突き当たるように、ステム21等を挿入する。これにより、装着キャップ81がシリンダ23に取り付けられる。
【0054】
続いて、係合筒82及び押下ヘッド83をポンプ機構14に組み付ける。具体的には、係合筒82の外嵌筒93をシリンダ23の突出筒34に外嵌するとともに、押下ヘッド83の嵌合筒97をステム21内に嵌合させる。これにより、係合筒82がシリンダ23に取り付けられるとともに、押下ヘッド83がステム21に取り付けられる。
以上により、本実施形態の吐出器12が完成する。
【0055】
このように、本実施形態では、押下ヘッド83が取付可能なステム21と、装着キャップ81が取付可能なシリンダ23と、を備え、シリンダ23の上端開口部にステム21の上方移動を規制する規制部90が配設された構成とした。
この構成によれば、シリンダ23内に予め規制部90を配設しておくことで、外装部材15が組み付けられる前の状態であっても、シリンダ23からのステム21等の抜けを抑制できる。すなわち、吐出器12のうちポンプ機構14をモジュール化することができるので、外装部材15が組み付けられる前の状態で、ポンプ機構14を保管することができる。そのため、ポンプ機構14と外装部材15を組み付けた状態で保管する場合に比べて保管場所の縮小を図ることができる。
また、吐出容器1の仕様変更や外装部材15の着色等の要望があった場合には、要望に応じた外装部材15をポンプ機構14に組み付けるだけで、要望に応じた吐出器12を速やかに提供できる。そのため、保管していたポンプ機構14をそのまま利用できるので、廃棄ロス等を抑制できる。
そして、本実施形態では、モジュール化されたポンプ機構14を共通パーツとして、形状や加飾・装飾等を変更した外装部材15を使用することで、様々な吐出器12を容易に形成することができる。また、様々な吐出器12を形成する上で、本実施形態のモジュール化されたポンプ機構14を共通パーツとして使用することができるため、製造工程の効率化を図ることが可能になる。
さらに、ポンプ機構14を組み上げた状態で保管しておくので、例えば短納期又は大量注文が入った場合であっても、速やかに対応することができる。
【0056】
本実施形態では、ステム21の下降端位置において、押下ヘッド83が係合することで、ステム21の上方移動を規制する係合筒82が、シリンダ23の突出筒34に取付可能に構成されている。
この構成によれば、外装部材15をポンプ機構14に組み付けるにあたり、係合筒82及び押下ヘッド83を予め組み付けておくことができる。これにより、押下ヘッド83をステム21に組み付けた後に押下ヘッド83を係合筒82に組み付ける場合と異なり、ステム21を介した上方付勢力が押下ヘッド83に付与されることなく、係合筒82と押下ヘッド83とを組み付けることができる。そのため、組立効率の向上を図ることができる。
また、係合筒82は、ステム21が少なくとも上昇端位置にあるとき、外部に露呈する外装部材15である。そのため、係合筒82をポンプ機構14に対して後付けすることで、吐出容器1の仕様に応じた押下ヘッド83や装着キャップ81の変更に合わせて係合筒82を変更できる。
【0057】
本実施形態の吐出器12は、上述したポンプ機構14を備えているため、低コストな吐出器12を提供できる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図5、
図6に示すポンプ機構14において、規制部100は、筒本体101と、フランジ部102と、を備えている。
筒本体101は、軸線Oと同軸に配置されている。筒本体101の下端部は、シリンダ23内において、基筒部77の外周面と摺動筒33の内周面との間に嵌合されている。筒本体101の下部外周面及び突出筒34の内周面には、互いに係合してシリンダ23に対する規制部100の相対回転を規制する回り止め部が形成されている。
【0059】
筒本体101の上部には、雄ねじ部(係合部)が形成されている。すなわち、筒本体101の上部には、ステム21が下降端位置にあるとき、押下ヘッド83の雌ねじ筒98が螺着可能とされている。なお、筒本体101の内周面には、溝部105が形成されている。溝部105は、軸線O方向に延在している。溝部105は、下端部が筒本体101の下端開口縁上で開口し、上端部が筒本体101の上端部で終端している。
【0060】
フランジ部102は、筒本体101における軸線O方向の中間部分から径方向の外側に突設されている。フランジ部102は、突出筒34の上端開口縁に突出筒34の上方から当接している。すなわち、フランジ部102は、シリンダ23に対する規制部100の下方移動を規制する。
【0061】
外装部材110は、装着キャップ81と、外装筒111と、押下ヘッド83と、を備えている。
【0062】
外装筒111は、外嵌筒120と、内フランジ部121と、を備えている。
外嵌筒120は、突出筒34に打栓等によって外嵌されている。すなわち、外嵌筒120は、突出筒34を径方向の外側から取り囲んでいる。
【0063】
内フランジ部121は、外嵌筒120の上端縁から径方向の内側に突設されている。内フランジ部121は、フランジ部102上に配置されている。内フランジ部121は、突出筒34の上端開口縁との間に上述したフランジ部102を軸線O方向で挟持している。なお、
図7に示すように、外装筒111の下端開口縁は、ポンプ機構14への組付前において、天壁部85の内周縁(挿通孔85aの開口縁)に破断可能な弱化部125を介して連結されている。すなわち、装着キャップ81及び外装筒111は、ポンプ機構14への組付前において、キャップユニット130として一体化されている。
【0064】
次に、吐出器12の組立方法について説明する。
本実施形態では、ポンプ組立工程において、第1実施形態と同様に閉塞筒26までをシリンダ23内に挿入した後、シリンダ23内に規制部100を嵌合させる。これにより、シリンダ23に対するステム21の上方移動が規制される。
【0065】
外装部材組立工程では、キャップユニット130及び押下ヘッド83をポンプ機構14に対して順次組み付ける。キャップユニット130を組み付けるには、装着キャップ81の挿通孔85a内に、装着キャップ81の下方からステム21等を挿入する。この際、シリンダ23のフランジ部42が天壁部85の下面に突き当たる位置まで、ステム21等を挿入する。すると、天壁部85がフランジ部42に突き当たる前に、外装筒111が突出筒34に組み付けられる。具体的には、外嵌筒120が突出筒34に外嵌されるとともに、内フランジ部121が突出筒34との間にフランジ部102を軸線O方向で挟持する。これにより、キャップユニット130のうち、ポンプ機構14に対する外装筒111の下方移動が規制される。
【0066】
その後、さらにキャップユニット130をポンプ機構14に対して下方に移動させる。すると、弱化部125が破断されることで、ポンプ機構14及び外装筒111に対して装着キャップ81のみが下方に移動する。これにより、天壁部85がフランジ部42に突き当たる。その結果、外装筒111及び装着キャップ81が、シリンダ23にそれぞれ取り付けられる。
【0067】
続いて、第1実施形態と同様に、押下ヘッド83をステム21に組み付けることで、本実施形態の吐出器12が完成する。
【0068】
本実施形態では、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏することに加え、以下の作用効果を奏する。
すなわち、ポンプ機構14の規制部100に雄ねじ部が形成されているため、外装部材15の簡素化を図ることができる。そのため、例えば装着キャップ81と外装筒111とをキャップユニット130として一体化する等、組付効率の向上も図ることができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、装着キャップ81や係合筒82、押下ヘッド83、外装筒111が外装部材15を構成したが、この構成のみに限られない。外装部材15としては、少なくとも装着キャップ81及び押下ヘッド83を有していればよい。
なお、外装部材15のポンプ機構14への取付方法は、嵌合に限らず、適宜変更が可能である。
【0070】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0071】
11…容器本体
11a…口部
12…吐出器
14…ポンプ機構
21…ステム
22…ピストン
23…シリンダ
24…ピストンガイド
25…下部弁体
34…突出筒
42…フランジ部
81…装着キャップ
82…係合筒
83…押下ヘッド
90…規制部
100…規制部