(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】電子機器及びシャント抵抗固定構造
(51)【国際特許分類】
G01R 15/00 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
G01R15/00 500
(21)【出願番号】P 2018074851
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【氏名又は名称】伊坪 公一
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】渡部 信隆
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-025446(JP,A)
【文献】国際公開第2013/015219(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0125429(US,A1)
【文献】国際公開第2016/175116(WO,A1)
【文献】特開2018-189384(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1448936(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0090879(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0216800(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00
H01C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャント抵抗と電気的に接続されるコネクタと、
前記コネクタと電気的に接続された回路基板と、
前記回路基板を内部に収納し、かつ、シャント抵抗が載置される台座及び前記台座と離間して設けられた突出部を外部に有する筐体と、を有し、
前記突出部は、先端に第1の突起を有し、
前記台座及び前記突出部がシャント抵抗を挟持し、前記第1の突起がシャント抵抗に係合することによって、シャント抵抗が前記コネクタと接続された状態に固定される、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記突出部は、前記第1の突起がシャント抵抗に係合したときにシャント抵抗を押圧する第2の突起を有する請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記突出部からの前記第1の突起の先端の高さが前記突出部からの前記第2の突起の先端の高さより高い請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記台座及び前記突出部は、前記筐体の上面から見て互いに重ならないように配置されている請求項1~3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記筐体は、一体的に構成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記筐体は、弾性変形可能な材料によって一体的に構成されている請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記突出部は、弾性変形可能な材料によって構成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
シャント抵抗と電気的に接続されるコネクタと電気的に接続された回路基板を内部に収納する筐体に設けられたシャント抵抗固定構造であって、
シャント抵抗が載置される台座と、
前記台座と離間して設けられた突出部を外部に有する筐体と、
突出部の先端に設けられた突起と、を有し、
前記台座及び前記突出部がシャント抵抗を挟持し、前記突起がシャント抵抗に係合することによって、シャント抵抗が前記コネクタと接続された状態に固定される、
ことを特徴とするシャント抵抗固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及びシャント抵抗固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された電子制御ユニット(ECU)等の電子機器に接続されたパワーアンプ等の負荷には、ワイヤーハーネスにより電子機器に接続された常時電源により電圧が印加される。電子機器は、シャント抵抗、電流センスアンプ、マイクロコンピュータ等の素子が設けられた回路基板と、回路基板を収容する筐体と、を備える。
【0003】
シャント抵抗は、負荷に流れる電流の値を監視するために常時電源と負荷との間に配置されている(例えば、特許文献1)。電流センスアンプは、負荷に流れる電流の値に対応するシャント抵抗の両端の電圧を増幅し、増幅した電圧をマイクロコンピュータに出力する。マイクロコンピュータは、電流センスアンプによって増幅された電圧を所定の制御パラメータとして使用する。
【0004】
近年、電子機器の小型化の要求がますます高くなっている。シャント抵抗を回路基板に設ける代わりに、シャント抵抗と電気的に接続されるコネクタを回路基板に設けるとともにシャント抵抗をねじで固定することによって電子機器を小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シャント抵抗をねじで固定する場合、ねじの座面をシャント抵抗に設ける必要があるために電子機器のサイズが大きくなるので、電子機器の小型化が困難になる。また、シャント抵抗をねじで固定する際にがたつきが生じることによってシャント抵抗とコネクタとの接点がずれるためにシャント抵抗の抵抗値のばらつきが生じるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、小型化が容易であるとともにシャント抵抗の抵抗値のばらつきが生じない電子機器及びシャント抵抗固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電子機器は、シャント抵抗と電気的に接続されるコネクタと、コネクタと電気的に接続された回路基板と、回路基板を内部に収納し、かつ、シャント抵抗が載置される台座及び台座と離間して設けられた突出部を外部に有する筐体と、を有し、突出部は、先端に第1の突起を有し、台座及び突出部がシャント抵抗を挟持し、第1の突起がシャント抵抗に係合することによって、シャント抵抗がコネクタと接続された状態に固定される、ことを特徴とする。
【0009】
好適には、突出部は、第1の突起がシャント抵抗に係合したときにシャント抵抗を押圧する第2の突起を有する。
【0010】
好適には、突出部からの第1の突起の先端の高さが突出部からの第2の突起の先端の高さより高い。
【0011】
好適には、台座及び突出部は、筐体の上面から見て互いに重ならないように配置されている。
【0012】
好適には、筐体は、一体的に構成されている。
【0013】
好適には、筐体は、弾性変形可能な材料によって一体的に構成されている。
【0014】
好適には、突出部は、弾性変形可能な材料によって構成されている。
【0015】
本発明によるシャント抵抗固定構造は、シャント抵抗と電気的に接続されるコネクタと電気的に接続された回路基板を内部に収納する筐体に設けられたシャント抵抗固定構造であって、シャント抵抗が載置される台座と、台座と離間して設けられた突出部を外部に有する筐体と、突出部の先端に設けられた突起と、を有し、台座及び突出部がシャント抵抗を挟持し、突起がシャント抵抗に係合することによって、シャント抵抗がコネクタと接続された状態に固定される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小型化が容易であるとともにシャント抵抗の抵抗値のばらつきが生じない電子機器及びシャント抵抗固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明によるシャント抵抗固定構造を有する電子機器1の分解斜視図である。
【
図2】
図1の下蓋4、台座5及び爪6の斜視図である。
【
図3】
図1の下蓋4、台座5及び爪6の上面図である。
【
図4】本発明によるシャント抵抗固定構造からシャント抵抗7を取り外した電子機器1の斜視図である。
【
図5】本発明によるシャント抵抗固定構造にシャント抵抗7を取り付けた電子機器1の斜視図である。
【
図8】本発明によるシャント抵抗固定構造へのシャント抵抗7の取り付けを説明するための図である。
【
図9】本発明によるシャント抵抗固定構造へのシャント抵抗7の取り付けを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による電子機器及びシャント抵抗固定構造の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。本実施の形態において、発明による電子機器は、ECU等の電子機器として実現される。
図1は、本発明によるシャント抵抗固定構造を有する電子機器の分解斜視図である。
図1において、電子機器1は、回路基板2と、上蓋3と、下蓋4と、台座5と、二つの爪6と、シャント抵抗7と、を備える。下蓋4は、筐体の一例であり、爪6は、突出部の一例である。
【0019】
回路基板2は、矩形であり、下蓋4の内部に収納され、回路基板2の一方の面の端部がねじ8を介して下蓋4に固定される。本実施の形態では、回路基板2は、電流センスアンプ、マイクロコンピュータ等の素子(図示せず)と、ケーブルの先端に設けられた相手側コネクタを抜き差しするためのコネクタ2aと、シャント抵抗7が挿入されたときにシャント抵抗と7電気的に接続されるコネクタ2bとが設けられている。
【0020】
コネクタ2aは、回路基板2に設けられた素子と電気的に接続するための端子を保持する。コネクタ2bには、シャント抵抗7が挿入されたときにシャント抵抗7を電流センスアンプと電気的に接続する。
【0021】
上蓋3は、アルミダイカスト等の金属材料又は樹脂等の弾性変形可能な材料で構成され、ねじ9によって下蓋4に固定され、下蓋4と共に回路基板2の収容空間を形成する。
【0022】
図2は、
図1の下蓋4、台座5及び爪6の斜視図であり、
図3は、
図1の下蓋4、台座5及び爪6の上面図である。
図2及び
図3に示すように、下蓋4は、台座5及び爪6を外部に有し、台座5にはシャント抵抗7が載置され、爪6は、台座5と離間して設けられる。下蓋4、台座5及び爪6は、樹脂等の弾性変形可能な材料によって一体的に構成されている。台座5及び爪6は、
図3に示すように、下蓋4の上面から見て互いに重ならないように配置されている。
【0023】
本実施の形態では、爪6は、略L字形状を有する。爪6の一端は、下蓋4に結合され、シャント抵抗7がコネクタ2bに挿入されたときにシャント抵抗7に係合するフック形状の突起6aが他端に形成される。すなわち、爪6は、一端が下蓋4に結合されるとともに高さ方向(+z方向)に延伸する第1の延伸部分と、第1の延伸部分の他端に一端が結合するとともに他端に突起6aが形成され、下蓋4の側部から外側に向かう方向(-x方向)に延伸する第2の延伸部分と、を有する。他端は、先端の一例である。爪6は、シャント抵抗7がコネクタ2bに挿入されたときに台座5と共にシャント抵抗7を挟み込む。すなわち、台座5及び爪6は、シャント抵抗7がコネクタ2bに挿入されたときにシャント抵抗7を挟持し、突起6aがシャント抵抗7に係合することによって、シャント抵抗7がコネクタ2bと接続された状態に固定される。突起6aは、第1の突起の一例である。
【0024】
シャント抵抗7は、接続部7a,7bと、開口7c,7dが形成された露出部7eと、を有する。接続部7aは、シャント抵抗7がコネクタ2bに挿入されたときに電流センスアンプの一方の入力端子に電気的に接続する。接続部7bは、シャント抵抗7がコネクタ2bに挿入されたときに電流センスアンプの他方の入力端子に電気的に接続する。開口7cは、常時電源(図示せず)に接続されたワイヤーハーネス(図示せず)が接続される。開口7dは、負荷(図示せず)に接続されたワイヤーハーネス(図示せず)が接続される。負荷は、例えば、オーディオ装置、ナビゲーション装置等のパワーアンプである。露出部7eは、シャント抵抗7がコネクタ2bに挿入されたときにコネクタ2bから露出する。
【0025】
シャント抵抗7は、コネクタ2bに挿入されたときに常時電源と負荷との間に配置され、電流センスアンプは、負荷に流れる電流の値に対応するシャント抵抗の両端の電圧を増幅し、増幅した電圧をマイクロコンピュータに出力する。そして、マイクロコンピュータは、負荷に流れる電流の値を監視するために、電流センスアンプによって増幅された電圧を所定の制御パラメータとして使用する。
【0026】
図4は、本発明によるシャント抵抗固定構造からシャント抵抗7を取り外した電子機器1の斜視図であり、
図5は、本発明によるシャント抵抗固定構造にシャント抵抗7を取り付けた電子機器1の斜視図であり、
図6は、
図5のI-I断面図であり、
図7は、
図5のII-II断面図である。
【0027】
図7に示すように、爪6は、シャント抵抗7がコネクタ2bに挿入されて突起6aがシャント抵抗7に係合したときにシャント抵抗7を押圧する略円錐形状の突起6bを有し、コネクタ2bには、シャント抵抗7が挿入されたときに電流センスアンプと電気的に接続するための接点2b’が内部に形成されている。突起6bは、第2の突起の一例である。また、
図7に示すように、シャント抵抗7が台座5に沿ってガイドされながらコネクタ2bに挿入されると、爪6は、シャント抵抗7がコネクタ2bに挿入されたときに弾性変形の反力により生じた付勢力Fによって台座5と共にシャント抵抗7を挟み込み、突起6bは、シャント抵抗7に点接触する。また、
図7に示すように、爪6(爪6の上記第2の延伸部分)からの突起6aの先端の高さが爪6(爪6の上記第2の延伸部分)からの突起6bの先端の高さより高い。さらに、
図7に示すように、突起6aがシャント抵抗7に係合したときの台座5のシャント抵抗7が載置される面からの突起6aの先端の高さが台座5のシャント抵抗7が載置される面からの突起6bの先端の高さより低い。
【0028】
図8及び
図9は、本発明によるシャント抵抗固定構造へのシャント抵抗7の取り付けを説明するための図である。
図8に示すようにシャント抵抗7が台座5に沿って(矢印A方向に沿って)ガイドされると、
図9に示すように爪6の上記第2の延伸部分が高さ方向(z方向)に弾性変形し、その後、
図7に示すようにシャント抵抗7がコネクタ2bに取り付けられる。この際、爪6の上記第1の延伸部分は、シャント抵抗7をコネクタ2bに取り付ける際のストッパの役割を果たす。
【0029】
本実施の形態によれば、シャント抵抗7がコネクタ2bに挿入されたときに台座5及び爪6がシャント抵抗7を挟持し、突起6aがシャント抵抗7に係合することによって、シャント抵抗7がコネクタ2bと接続された状態に固定される。すなわち、シャント抵抗7と電気的に接続されるコネクタ2bと電気的に接続された回路基板2を内部に収納する下蓋4に設けられたシャント抵抗固定構造が構成され、当該シャント抵抗固定構造は、下蓋4、台座5及び爪6を有し、台座5及び爪6がシャント抵抗7を挟持し、突起6aがシャント抵抗7に係合することによって、シャント抵抗7がコネクタ2bと接続された状態に固定される。したがって、シャント抵抗7をねじで固定しないので、ねじの座面をシャント抵抗7に設ける必要がなくなり、電子機器1の小型化が容易になる。また、シャント抵抗7をねじで固定しないので、シャント抵抗7をねじで固定する際のがたつきが生じない。したがって、シャント抵抗7と接点2b’とのずれによるシャント抵抗7の抵抗値のばらつきが生じなくなる。また、シャント抵抗7の固定のためにねじを用いる場合よりも電子機器1のコストを削減できるとともに電子機器1を軽量にすることができる。また、ねじの座面をシャント抵抗7に設ける必要がなくなるので、シャント抵抗7の固定のためにねじを用いる場合よりもシャント抵抗7を小型化するとともに軽量にすることができる。
【0030】
突起6aと共に突起6bを設けることによって、シャント抵抗7の固定を更に強固にすることができる。また、爪6(爪6の上記第2の延伸部分)からの突起6aの先端の高さが爪6(爪6の上記第2の延伸部分)からの突起6bの先端の高さより高いので、シャント抵抗7がコネクタ2bから抜けるのを更に有効に防止することができる。
【0031】
台座5及び爪6が下蓋4の上面から見て互いに重ならないように配置することによって、シャント抵抗7がコネクタ2bに取り付けられたときのがたつきを防止する。また、台座5及び爪6が下蓋4の上面から見て互いに重ならないように配置することによって、下蓋4、台座5及び爪6を成形するための金型のスライド構造を省略することができる。
【0032】
また、下蓋4、台座5及び爪6を一体的に構成することによって電子機器1の部品点数が削減されるので、コスト及び組立工数を削減することができる。また、下蓋4、台座5及び爪6を弾性変形可能な材料によって構成することによって、シャント抵抗7がコネクタ2bに挿入されたときに弾性変形の反力により生じた付勢力Fによって台座5と共にシャント抵抗7を挟み込むことができる。
【0033】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。例えば、電子機器1からシャント抵抗7を省略してもよい。また、爪6の数を一つ又は三つ以上としてもよい。また、突起6bの形状を、三角錐、四角錐等の角錐のようなシャント抵抗7と点接触する任意の形状としてもよい。
【0034】
さらに、下蓋4と台座5の少なくとも一方を弾性変形可能でない材料で構成するとともに爪6を弾性変形可能な材料によって構成してもよい。この場合も、シャント抵抗7がコネクタ2bに挿入されたときに弾性変形の反力により生じた付勢力Fによって台座5と共にシャント抵抗7を挟み込むことができる。
【符号の説明】
【0035】
1 電子機器
2 回路基板
2a,2b コネクタ
2b’ 接点
3 上蓋
4 下蓋
5 台座
6 爪
6a,6b 突起
7 シャント抵抗
7a,7b 接続部
7c,7d 開口
7e 露出部
8,9 ねじ