(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】可動式温度調節装置、可動式温度調節装置の運転方法、暖房及び/又は冷房装置、ならびに、暖房及び/又は冷房装置の温度調節方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/56 20180101AFI20220304BHJP
F24F 11/50 20180101ALI20220304BHJP
F24F 11/30 20180101ALI20220304BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20220304BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
F24F11/56
F24F11/50
F24F11/30
F24F11/64
A61B5/00 102A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018092167
(22)【出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-02-19
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊哉
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-047163(JP,A)
【文献】特開2012-042073(JP,A)
【文献】特開2016-217583(JP,A)
【文献】特開2007-183032(JP,A)
【文献】特開2009-228910(JP,A)
【文献】特開2016-133266(JP,A)
【文献】特開2006-090700(JP,A)
【文献】特開2016-125664(JP,A)
【文献】特開2013-250005(JP,A)
【文献】特開平04-244533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0278593(US,A1)
【文献】国際公開第2005/054751(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/56
F24F 11/50
F24F 11/30
F24F 11/64
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房及び/又は冷房手段と、
使用者を識別するように構成される識別手段と、
前記使用者の暖房及び/又は冷房要求を示す少なくとも1つの測定数値を感知するように構成される感知手段と
暖房及び/又は冷房の選好を示す情報を前記使用者が入力できるように構成される入力手段と、
を備え、
前記使用者の前記暖房及び/又は冷房要求に基づき前記暖房及び/又は冷房手段を運転させるようになって
おり、
前記使用者の前記暖房及び/又は冷房要求を、前記使用者により入力される前記情報に基づき、好ましくは更に予め記憶された前記使用者の個人条件に基づき判断するようになっている可動式温度調節装置。
【請求項2】
集中暖房及び/又は冷房システムと通信するように、及び/又は、少なくとも1つの更なる可動式温度調節装置と通信するように構成される通信手段を更に備えた請求項
1に記載の可動式温度調節装置。
【請求項3】
暖房及び/又は冷房手段と、
使用者を識別するように構成される識別手段と、
前記使用者の暖房及び/又は冷房要求を示す少なくとも1つの測定数値を感知するように構成される感知手段と
を備え、
前記使用者の前記暖房及び/又は冷房要求に基づき前記暖房及び/又は冷房手段を運転させるようになっており、
集中暖房及び/又は冷房システムと通信するように、及び/又は、少なくとも1つの更なる可動式温度調節装置と通信するように構成される通信手段を更に備えた可動式温度調節装置。
【請求項4】
前記使用者の個人条件を記憶するように構成される記憶手段を更に備え、
前記使用者の前記暖房及び/又は冷房要求を、前記使用者の前記個人条件に基づき、及び、前記感知手段により感知される前記少なくとも1つの測定数値に基づき判断するように構成される、請求項1
~3のいずれか1項に記載の可動式温度調節装置。
【請求項5】
前記使用者の個人条件が、好適な温度、年齢、及び/又は健康状態のうちから1つ以上を備えた、請求項1
~4のいずれか1項に記載の可動式温度調節装置。
【請求項6】
前記感知手段が、温度センサ、周囲温度センサ、生体計測センサ、前記使用者の体温を感知するための体温センサ、前記使用者の皮膚温を感知するための赤外線センサ、及び/又は心拍センサ、以上のうちの1つ以上を備えた、請求項1~
5のいずれか1項に記載の可動式温度調節装置。
【請求項7】
前記可動式温度調節装置がペットロボットである、請求項1~6のいずれか1項に記載の可動式温度調節装置。
【請求項8】
前記暖房手段が電気ヒータを備えた、及び/又は、前記冷房手段が送風機及び/又はペルチェ素子を備えた、請求項1~7のいずれか1項に記載の可動式温度調節装置。
【請求項9】
前記可動式温度調節装置が、前記使用者を識別し、前記使用者の暖房及び/又は冷房要求を示す少なくとも1つの測定数値を感知し、前記使用者の前記暖房及び/又は冷房要求に基づき前記暖房及び/又は冷房手段を運転させる、請求項1~8のいずれか1項に記載の可動式温度調節装置の運転方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの可動式温度調節装置が、前記使用者の正常状態、前記使用者の正常体温、及び/又は顔写真、及び/又は心拍数を入力することにより始動する、請求項9に記載の運転方法。
【請求項11】
前記可動式温度調節装置が、温度センサを包含する箇所にて前記可動式温度調節装置に触れるよう前記使用者に促し、前記使用者が、前記温度センサを包含する前記箇所にて前記可動式温度調節装置に触れると、前記可動式温度調節装置が、前記使用者の暖房及び/又は冷房要求を示す前記測定数値のうちの1つとして体温を計測する、請求項9又は10に記載の運転方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の少なくとも1つの可動式温度調節装置ならびに集中暖房及び/又は冷房システムを包含する暖房及び/又は冷房装置であって、
前記可動式温度調節装置が、前記集中暖房及び/又は冷房システムと通信するように構成される通信手段を有し、前記使用者の前記暖房及び/又は冷房要求に基づき暖房及び/又は冷房するよう、前記通信手段により前記集中暖房及び/又は冷房システムに指示するように前記可動式温度調節装置が構成される、暖房及び/又は冷房装置。
【請求項13】
請求項12に記載の暖房及び/又は冷房装置において実行され、
前記可動式温度調節装置が、使用者の暖房及び/又は冷房要求を示す少なくとも1つの測定数値を計測し、
前記可動式温度調節装置が、前記使用者の前記暖房及び/又は冷房要求に基づき前記暖房及び/又は冷房手段を運転させる、及び/又は、前記使用者の前記暖房及び/又は冷房要求に基づき前記集中暖房及び/又は冷房システムに暖房及び/又は冷房指示を送る、請求項12に記載の暖房及び/又は冷房装置において実行される温度調節方法。
【請求項14】
前記集中暖房及び/又は冷房システムが前記使用者の前記暖房及び/又は冷房要求を所定時間内に満たすことができない場合に、前記使用者の前記暖房及び/又は冷房要求が前記所定時間内に満たされるように、前記少なくとも1つの可動式温度調節装置が前記暖房及び/又は冷房手段を運転させる、請求項13に記載の温度調節方法。
【請求項15】
前記集中暖房及び/又は冷房システムの暖房及び/又は冷房効果が増加するにつれてこれらの暖房及び/又は冷房手段の暖房及び/又は冷房力が低減されるように前記可動式温度調節装置が前記暖房及び/又は冷房手段を運転させる、請求項13又は14に記載の温度調節方法。
【請求項16】
前記可動式温度調節装置が、前記可動式温度調節装置のうちの更なる少なくとも1つと通信し、
暖房の場合、前記可動式温度調節装置のうちの任意のものにより要求される温度のうちの最小温度を確立するよう、前記集中暖房及び/又は冷房システムが指示を受け、あるいは、冷房の場合、前記可動式温度調節装置のうちの任意のものにより要求される温度のうちの最高温度を確立するよう、前記集中暖房及び/又は冷房システムが指示を受け、あるいは、前記可動式温度調節装置により要求される全ての温度の平均温度である温度を確立するよう、前記集中暖房及び/又は冷房システムが指示を受け、あるいは、前記可動式温度調節装置のうちの1つの事前選択された使用者の前記暖房及び/又は冷房要求を満たす温度を確立するよう、前記集中暖房及び/又は冷房システムが指示を受ける、請求項13~15のいずれか1項に記載の温度調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房及び/又は冷房手段と、使用者を識別するように構成される識別手段と、使用者の暖房及び/又は冷房要求を示す少なくとも1つの測定数値を感知するための感知手段とを含む可動式温度調節装置であって、使用者の暖房及び/又は冷房要求に基づき暖房及び/又は冷房手段を運転させるようになっている可動式温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今後の半世紀は、急速な老化が世界的な社会傾向である。このことは日本又はイタリア等の先進国において特に顕著であるが、発展途上国においてさえ人々の年齢層が上がる傾向にある。老年人口と連動して、独身高齢者世帯及び高齢者介護施設が増えている。高齢者を対象とした心の健康管理用のペット型ロボットが既に市販されている。ペットロボットは、基本的に、年配の所有者を癒やし、孤独感を緩和する。
【0003】
欧州及び米国では、通常、暖房/冷房が、循環水式又は空気式のいずれかの集中システムにより提供される。他方で、集中システムのない部屋用に、又は使用者の近くを付加的に暖房/冷房するために、独立型の暖房/冷房装置も導入される。集中システムでは十分でないと感じてこのような付加的な局所式ヒータ又はクーラを補助的な熱源として購入する者もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術の装置は、暖房及び/又は冷房を提供するが、使用者の特定の要件に応えることができない。
【0005】
特定の使用者の要求に応じて温度を調節することのできる、可動式温度調節装置、暖房及び/又は冷房装置、ならびに、これらの装置の運転方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の可動式温度調節装置、請求項9に記載の、可動式温度調節装置の運転方法、請求項12に記載の暖房及び/又は冷房装置、ならびに、請求項13に記載の、暖房及び/又は冷房装置の温度調節方法により達成される。それぞれの従属請求項は、可動式温度調節装置、可動式温度調節装置の運転方法、暖房及び/又は冷房装置、ならびに、暖房及び/又は冷房装置の温度調節方法の、有利な実施形態を記載している。
【0007】
本発明は、可動式温度調節装置に関連する。ここで、用語「温度調節」とは、装置の或る環境において目標温度を確立するために可動式温度調節装置が暖房及び/又は冷房できることを意味する。本発明による可動式温度調節装置は、暖房及び/又は冷房手段を含む。暖房手段は、例えば電気ヒータとすることができ、冷房手段は、例えば送風機又はペルチェ素子とすることができる。
【0008】
本発明による可動式温度調節装置は、更に、使用者を識別するように構成される識別手段を含む。識別手段は、例えば、使用者の特定の特性を利用することができ、あるいは、使用者は、識別手段による識別を可能にする個別のIDを有することができる。識別手段は、例えば、顔認識手段及び/又は音声認識手段を含むことができ、それぞれその顔及び/又は音声に基づき使用者を識別することができる。別の例において、使用者はRFIDチップを所持することができ、このRFIDチップを読み出すように構成される対応する読出し回路を識別手段が含み、これによって識別手段は使用者を識別することができる。使用者を識別するためのウェアラブルなスマートデバイスとして、例えばスマートウオッチを利用することも可能である。使用者を識別する、代わりとなる多くの仕方を利用することができる。
【0009】
本発明による可動式温度調節装置は、更に、使用者の暖房及び/又は冷房要求を示す少なくとも1つの測定数値を感知するように構成される感知手段を含む。このような感知手段は、例えば、温度センサ、周囲温度センサ、生体計測センサ、使用者の体温を感知するための体温センサ、使用者の皮膚温を感知するための赤外線センサ、及び/又は、心拍センサのうちの1つ以上とすることができる。感知手段は、使用者が暖房及び/又は冷房要求を、例えばキーボードの使用により又は発話により入力できる入力手段を含み得るであろう。使用者の暖房及び/又は冷房要求を感知する、代わりとなる多くの仕方を利用することができる。
【0010】
可動式温度調節装置は、感知手段の結果に基づき識別された、使用者の暖房及び/又は冷房要求に基づき、暖房及び/又は冷房手段を運転させるようになっている。従って、使用者が暖房を要求していることを、感知手段により感知される少なくとも1つの測定数値が示す場合、可動式温度調節装置は暖房手段を運転させることができる。他方で、使用者が冷房を要求していることを、感知手段により感知される少なくとも1つの測定数値が示す場合、可動式温度調節装置は冷房手段を運転させることができる。
【0011】
好適な実施形態において、可動式温度調節装置は、使用者の個人条件を記憶するように構成される記憶手段を含むことができる。その際、これらの個人条件は、使用者の暖房及び/又は冷房要求を判断するために使用することができる。従って、可動式温度調節装置は、使用者の暖房及び/又は冷房要求を、使用者の個人条件に基づき、及び、感知手段により感知される少なくとも1つの測定数値に基づき、判断することができる。個人条件は、例えば、好適な温度、年齢、及び/又は健康状態のうちから1つ以上を含むことができる。例えば、記憶された個人条件が好適な温度である場合、感知手段が使用者の周辺の周囲温度を測定することができるのであり、可動式温度調節装置は、周囲温度が好適な温度よりも低い場合に使用者が暖房要求を有すると判断することができ、周囲温度が好適な温度よりも高い場合に使用者が冷房要求を有すると判断することができる。可動式温度調節装置は、例えば、感知された周囲温度を、予め記憶された平均周囲温度と比較することもできる。この平均周囲温度は、例えば使用者が非常に高齢である又は病気である場合に平均周囲温度が増加されるよう、及び、使用者が若齢である及び/又は健康である場合に平均温度が低減されるよう、使用者の年齢及び/又は使用者の健康状態により、重み付けすることができる。その後、使用者の環境において調節済み平均温度を確立するように、暖房及び/又は冷房手段を運転させることができる。
【0012】
感知手段は、例えば、温度センサ、周囲温度センサ、生体計測センサ、使用者の体温を感知するための体温センサ、使用者の皮膚温を感知するための赤外線センサ、及び/又は心拍センサ、以上のうちの1つ以上を含むことができる。これらのセンサのうちの1つ以上を使用して、使用者の暖房及び/又は冷房要求を判断することができる。
【0013】
好適な実施形態において、可動式温度調節装置は、暖房及び/又は冷房の選好又は要求を示す情報を使用者が入力できるように構成される入力手段を含むことができる。その際、可動式温度調節装置は、使用者の暖房及び/又は冷房要求を、使用者により入力される情報に基づき判断するように適合させることができる。好ましくは、使用者の暖房及び/又は冷房要求は、この入力済み選好に基づき、予め記憶された使用者の個人条件に加えて判断することができる。好ましくは、暖房及び/又は冷房要求は、入力済み選好に基づき、感知手段により感知される測定数値に加えて判断することができる。好ましくは、使用者の暖房及び/又は冷房要求は、入力済み選好、予め記憶された使用者の個人条件、及び、感知手段により得られる感知済みの測定数値に基づき判断することも可能である。
【0014】
好適な実施形態において、可動式温度調節装置は、使用者による発話入力を記録するマイクロホンを含むことができ、付加的に使用者による発話入力に基づき、暖房及び/又は冷房要求を判断するように構成することができる。
【0015】
好ましくは、可動式温度調節装置は、集中暖房及び/又は冷房システムと通信するように構成される通信手段を含むことができる。このような通信手段を使用して、可動式温度調節装置が集中暖房及び/又は冷房システムに対して暖房及び/又は冷房要求を示すことができるため、装置の暖房及び/又は冷房負荷を低減することができる。
【0016】
本発明の文脈における集中暖房及び/又は冷房システムは、例えば、HVACシステムとすることができる。
【0017】
本発明の好適な実施形態において、可動式温度調節装置は自走式とすることができる。このことにより、可動式温度調節装置は、使用者の場所を感知して、使用者に向かって移動するように及び/又は使用者の後を追うように構成することができる。可動式温度調節装置は、例えば、電気モータにより作動するホイールを有することができる。好適な実施形態において、使用者の場所の感知は識別手段により行うことができる。従って、室内に多数の人がいる場合に、可動式温度調節装置は、使用者の方へ移動する、及び使用者の後を追うことができる。
【0018】
好適な実施形態において、可動式温度調節装置は、少なくとも1つの更なる可動式温度調節装置と通信するように構成される通信手段を含むことができる。このことにより、多数の可動式温度調節装置が互いに連繋し合うことができる。このことは、可動式温度調節装置が集中暖房及び/又は冷房システムと通信できる場合には特に有利である。というのも、集中システムに暖房させるか冷房させるかについてこれらの多数の可動式温度調節装置が連繋できるからである。
【0019】
好ましくは、可動式温度調節装置はペットロボットとすることができる。
【0020】
本発明の好適な実施形態において、可動式温度調節装置は、この可動式温度調節装置が通信することのできる、及び/又は、使用者の環境において温度の調節に貢献するところの集中暖房及び/又は冷房システムが利用可能であるかどうかを判断することができる。好ましくは、可動式温度調節装置は、利用可能な集中暖房及び/又は冷房システムが、水式の暖房及び/又は冷房システムであるのか、又は空気式の暖房及び/又は冷房システムであるのかを判断することもできるため、装置を能動的に調節することができる。好ましくは、可動式温度調節装置は、付加的にこの判断の結果に基づき、その暖房及び/又は冷房手段を運転させるように構成することができる。好ましくは、この判断の結果に基づき暖房及び/又は冷房するよう、可動式温度調節装置は集中暖房及び/又は冷房システムに指示することもできる。
【0021】
本発明は、上述のような可動式温度調節装置を運転させるための方法にも関連する。この方法によれば、可動式温度調節装置は、使用者を識別し、使用者の暖房及び/又は冷房要求を示す少なくとも1つの測定数値を感知し、使用者の暖房及び/又は冷房要求に基づき、その暖房及び/又は冷房手段を運転させる。
【0022】
好適な実施形態において、少なくとも1つの可動式温度調節装置は、使用者の正常状態、正常体温、使用者の顔写真、及び/又は使用者の正常心拍数を入力することにより始動させることができる。その際、これらの測定数値を使用して、使用者の暖房及び/又は冷房要求を判断することができる。
【0023】
有利な実施形態において、可動式温度調節装置は、温度センサを包含する箇所にて可動式温度調節装置に触れるよう使用者に促すことができる。このようなセンサを装置の外面に配置することができる。その際、可動式温度調節装置は、使用者の暖房及び/又は冷房要求を示す測定数値のうちの1つとして、使用者の体温を計測することができる。その際、使用者が、温度センサを包含する箇所にて可動式温度調節装置に触れると、計測が実施される。
【0024】
本発明の好適な実施形態において、前記感知手段のうちの1つ以上により計測される、暖房及び/又は冷房要求を示す少なくとも1つの測定数値が、使用者の、事前に規定された状態を示す場合、可動式温度調節装置は、事前に規定された者にメッセージを送ることができる。より具体的には、計測された使用者の心拍数が医学的問題を示す場合、可動式温度調節装置は例えば医師に緊急メッセージを送ることができる。
【0025】
本発明の好適な実施形態において、可動式温度調節装置は、設定温度に向けて運転が開始された後だけでなく、設定温度を達成していない間も、使用者の暖房/冷房要求を連続的に監視することができる。最新の使用者データを感知することにより使用者の満足感が検出された場合、この装置は、設定温度を変化させ、相応に運転させることで冗長運転が低減させることができる。このことにより、例えば使用者が発熱を有するという理由での使用者の要求の迅速な変化に装置が反応することが可能である。この実施形態において、少なくとも1つの可動式温度調節装置は、以前に判断された使用者の暖房及び/又は冷房要求を満たすための運転中に使用者の暖房及び/又は冷房要求を連続的に監視し、暖房及び/又は冷房要求を、こうして判断された暖房及び/又は冷房要求に調節する。
【0026】
本発明は、更に、上述のような少なくとも1つの可動式温度調節装置ならびに例えばHVACとしての集中暖房及び/又は冷房システムを包含する暖房及び/又は冷房装置に関連する。ここで、可動式温度調節装置は、集中暖房及び/又は冷房システムと通信するように構成される通信手段を有する。この実施形態における可動式温度調節装置は、使用者の暖房及び/又は冷房要求に基づき暖房及び/又は冷房するよう、通信手段を使用して集中暖房及び/又は冷房システムに指示するように構成される。
【0027】
本発明は、このような暖房及び/又は冷房装置を使用して温度を調節するための方法にも関連する。この方法において、可動式温度調節装置は、使用者の暖房及び/又は冷房要求を示す少なくとも1つの測定数値を計測し、使用者のこの暖房及び/又は冷房要求に基づき暖房及び/又は冷房手段を運転させる。更に、可動式温度調節装置は、使用者の暖房及び/又は冷房要求に基づき、集中暖房及び/又は冷房システムに暖房及び/又は冷房指示を送る。この方法に起因して、可動式温度調節装置は集中暖房及び/又は冷房システムと協働して、使用者の目標温度を確立することができる。このような協働に起因して、目標温度は、特に、極力迅速に及び/又は極力エネルギー効率良く確立することができる。
【0028】
好適な実施形態において、集中暖房及び/又は冷房システムが使用者の暖房及び/又は冷房要求を所定時間内に満たすことができない場合、使用者の判断済み暖房及び/又は冷房要求がこの所定時間内に満たされるように、少なくとも1つの可動式温度調節装置はその暖房及び/又は冷房手段を運転させることができる。普通、集中暖房及び/又は冷房システムの方が、大きめの寸法を有し、より遠くに使用者から離して置かれるため、運転の効果が遅延する。集中暖房及び/又は冷房システムの運転が使用者の場所にて未だ完全には効果的でない時間の間、可動式温度調節装置が暖房及び/又は冷房要求を埋めることができる。
【0029】
好ましくは、集中暖房及び/又は冷房システムの暖房及び/又は冷房効果が増加するにつれて暖房及び/又は冷房手段の暖房及び/又は冷房力が低減されるように、可動式温度調節装置はその暖房及び/又は冷房手段を運転させることができる。ここで、暖房及び/又は冷房力は、暖房及び/又は冷房手段により使用される動力として判断することができる。集中暖房及び/又は冷房システムの暖房及び/又は冷房効果は、集中暖房及び/又は冷房システムにより使用者の場所にて達成される温度として判断することができる。特に、使用者の場所での集中暖房及び/又は冷房システムの暖房及び/又は冷房効果は、集中暖房及び/又は冷房システム単独の運転により維持することのできる設定温度とすることができる。集中暖房及び/又は冷房システムの慣性が高めであることに起因して、この温度は、使用者の暖房及び/又は冷房要求を満たすことになるであろう目標温度に接近するのに多少の時間を必要とする。温度が依然として目標温度と異なる時間の間、温度差を可動式温度調節装置により充足することができる。集中暖房及び/又は冷房システムにより達成される温度が目標温度に接近するにつれて、可動式温度調節装置はその暖房及び/又は冷房力を低減することができる。
【0030】
好適な実施形態において、可動式温度調節装置は、発話入力を行うよう使用者に促すことができる。その際、可動式温度調節装置は、使用者により行われる発話入力に基づき、暖房及び/又は冷房手段を制御することができる、及び/又は、集中暖房及び/又は冷房システムに暖房及び/又は冷房指示を送ることができる。このことにより、可動式温度調節装置及び/又は集中暖房及び/又は冷房システムを非常に都合よく制御することができる。
【0031】
好適な実施形態において、可動式温度調節装置は、上述のように構成することもできる可動式温度調節装置のうちの更なる少なくとも1つと通信することができる。この実施形態では、暖房の場合、可動式温度調節装置のうちの任意のものにより要求される最小限の温度である温度を確立するよう、集中暖房及び/又は冷房システムに指示することができる。このことにより、最低温度を求める使用者を集中暖房及び/又は冷房システム単独により満足させることができ、それより高い温度を求める他の使用者はそのそれぞれの可動式温度調節装置により、更なる暖房を受けることができる。冷房の場合、可動式温度調節装置のうちの任意のものにより要求される最高温度である温度を確立するよう、集中暖房及び/又は冷房システムに指示することもできる。このことにより、集中システムは最小限求められる冷房を提供し、それより低い温度を求める使用者は、それぞれの可動式温度調節装置により、更なる冷房を受けることができる。
【0032】
更なる有利な実施形態において、可動式温度調節装置により要求される全ての温度の平均温度である温度を確立するよう、集中暖房及び/又は冷房システムに指示することができる。可動式温度調節装置同士が互いと通信することができるため、これらの可動式温度調節装置はその平均温度を測定することができる。平均温度よりも高い温度を求める使用者はそのそれぞれの可動式温度調節装置により、更なる暖房を受けることができる。平均温度よりも低い温度を求める使用者はそのそれぞれの可動式温度調節装置により、冷房を受けることができる。
【0033】
可動式温度調節装置のうちの1つの事前選択された使用者の暖房及び/又は冷房要求を満たす温度を確立するよう、集中暖房及び/又は冷房システムに指示することが更に可能である。それより高い温度を求める使用者はその可動式温度調節装置により暖房を受けることができ、それより低い温度を求める使用者はその可動式温度調節装置により冷房を受けることができる。この構成により、周囲温度に対して特に敏感たり得る例えば高齢者又は病人としての特定の使用者に対処することが可能になる。
【0034】
集中暖房及び/又は冷房システムが最小限の冷房又は暖房を提供する上記の実施形態は、これらの実施形態が最小限のエネルギー消費によるシステムの運転を可能にするため、特に有利である。
【0035】
好適な実施形態において、集中暖房及び/又は冷房システムは、空気流を所定方向へ向けるように構成される可動式ルーバを有することができる。その際、可動式温度調節装置は、使用者の暖房及び/又は冷房要求を満たす方向に空気流が向けられるようにルーバを移動させるよう、集中暖房及び/又は冷房システムに指示することができる。例えば、強い冷房を使用者が要求する場合、集中暖房及び/又は冷房システムに、冷房するよう、及び、空気流が使用者の方に直接向けられるようにルーバを向けるよう、指示することができる。室内に2人以上の使用者及び2つ以上の可動式温度調節装置が存在する構成において、集中暖房及び/又は冷房システムがそのルーバをどこに向けるべきかを判断するために、可動式温度調節装置同士が互いと通信することができる。例えば、空気流が直接どの使用者にも向けられないように又は空気流が特定の使用者に向けられるようにそのルーバを向けるよう、集中暖房及び/又は冷房システムに指示することができる。
【0036】
従って、要するに、本発明の可動式温度調節装置は、有利なことに、自走式又は可動式ロボットとすることができる。この自走式又は可動式ロボットは、暖房及び/又は冷房用に、内蔵式暖房及び/又は冷房手段を有することができる。暖房手段は、例えば直接電気暖房とすることができるが、このような暖房に限定されるものではない。冷房手段は、例えば送風機又はペルチェ素子とすることができるが、このような素子に限定されるものではない。装置は、例えば、使用者及び可動式装置が存在する部屋における、温度、集中暖房及び/又は冷房システムの仕様、及び/又は集中暖房及び/又は冷房システムの運転状況を感知するための環境情報感知手段を有することができる。可動式装置は、視覚情報感知機能を有するものとして、例えば使用者の健康及び/又は暖房/冷房要求感知手段、例えばビデオカメラ及びプロセッサを有することもできる。装置は、例えば赤外線センサにより顔の体温を、又は熱センサにより皮膚の体温を例えば感知するよう構成された、及び/又は心拍センサである生体計測感知機能を有することもできる。装置は、好ましくは、例えばマイクロホン、スピーカ、及びプロセッサとしての音声通信機能を有することもできる。上述のように、装置は、他のロボットと、及び例えば集中暖房及び/又は冷房システムと通信する通信手段を有することができる。このことにより、装置は、温度に関する使用者の要求を理解及び処理し、集中システムに制御命令を送信することができる。好ましくは、可動式装置は、自走又は可動のための動力ユニット、ならびに充電手段を有する。前記集中暖房及び/又は冷房システムは、例えば循環水式又は空気式とすることができる。
【0037】
以下に、使用者の暖房及び/又は冷房要求を判断する有利な方法を記載する。上述のように、視覚データ、生体計測データ、及び/又は口頭データを使用者から得、解析することができる。例えば、データを、登録データ及び/又は履歴データと比較することにより解析し、使用者が暑いのか又は適度であるのか又は涼しいのかを推断することができる。その際、視覚データ及び/又は生体計測データを統合することができ、これによって、使用者が暑いのか又は適度であるのか又は涼しいのかを判断することができる。最終的に、使用者の発話入力をどのように解釈するかに関して、予め記憶された情報を使用して、口頭データ解析結果を統合することができる。例えば、人は年齢を重ねるにつれて温度の認知がさほど正確でなくなると推測することができる。従って、若齢者については、解析は口頭データをより優先することができるが、高齢者については解析は生体計測データ及び/又は視覚データをより優先することができる。年齢境界値は例えば60歳として設定することができる。この年齢境界値は、線形重み係数として又は使用者の履歴データの解析に基づき考慮に入れることもできる。使用者データを統合する結果として、冷房、弱冷房、何もしない、弱暖房、又は暖房のいずれが求められるのかを判断することができる。使用者の選好に応じて、室温と比較した或る温度を設定することができ、暖房又は冷房を活性化させることができる。
【0038】
好適な実施形態において、可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段を利用して、急速な暖房及び/又は急速な冷房を提供することができる。急速な暖房は、例えば直接電気暖房装置を用いて達成することができ、急速な冷房は、例えば送風機を用いて達成することができる。可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段は、集中暖房及び/又は冷房システムが目標温度を維持できるまで、使用者の要求温度と使用者の環境における現在温度との間の温度を補償するように運転させることができる。
【0039】
可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段は、集中暖房及び/又は冷房システムに依存して別様に運転させることができる。集中暖房及び/又は冷房システムが水式の場合、これらのシステムは、空気式システムよりも緩慢に反応し、部屋を暖房又は冷房するのにかかる時間が多くなるため、可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段が運転する期間が長くなることがある。好ましくは、運転により、使用者により要求される温度が極力早期に長時間にわたり達成されるべきである。
【0040】
本発明の好適な実施形態において、暖房及び/又は冷房装置の全エネルギー消費を測定することができる。このために、好ましくは、可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段の、及び集中暖房及び/又は冷房システムの、全エネルギー消費を算定することができる。この算定結果に基づき、最もエネルギー効率の良い運転でどのように要求温度を達成し維持できるのかを判断することができる。例えば、暖房の場合、可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段により設定される温度を、初めは要求温度よりも少し高くすることができ、集中暖房及び/又は冷房システムが要求温度を達成するまで次第に減少させることができる。一方、最初は十分過ぎるほどの暖房が提供されることから、集中暖房及び/又は冷房システムの温度を要求温度よりも少し低く設定することができる。このことにより、或る期間以上に暖房が提供される場合にはエネルギー消費が少なくなる。冷房の場合、システムは、例えば内蔵式送風機又はペルチェ素子を使用して同様に運転させることができる。この場合、可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段は、要求温度よりも少し低い温度に設定することができ、結果として、集中暖房及び/又は冷房システムは、目標温度よりも高い温度に設定することができる。
【0041】
好適な実施形態において、可動式温度調節装置は、好ましくは、他の使用者に属する又は室内で他の使用者に割当てられる、同じ部屋における他の可動式温度調節装置を検出又は認識するように構成することができる。多数の可動式温度調節装置が存在するこの場合、好ましくは、これらの可動式温度調節装置同士が互いと通信することができる。例えば、これらの可動式温度調節装置はそのそれぞれの要求温度がいくらであるかを互いと共有することができる。異なる装置が、これらの要求温度を比較し、暖房に予定されている最低温度、又は冷房に予定されている最高温度を採用することができる。可動式温度調節装置のうち、このようにして設定された温度とその温度が異なるものは、そのそれぞれの使用者の暖房及び/又は冷房要求を満たすようにその暖房及び/又は冷房手段を運転させることができる。
【0042】
更なる有利な実施形態において、可動式温度調節装置は、使用者による発話入力を記録するマイクロホンを含むことができる。この可動式温度調節装置は、付加的に使用者による発話入力に基づき、暖房及び/又は冷房要求を判断するように構成することができる。
【0043】
更なる有利な実施形態において、可動式温度調節装置は自走式とすることができるのであり、可動式温度調節装置は、使用者の場所を感知するように構成することができる、及び、使用者の後を追うように構成することができる。
【0044】
更なる実施形態において、可動式温度調節装置は、集中暖房及び/又は冷房システムが利用可能であるかどうか、及び/又は、利用可能な集中暖房及び/又は冷房システムが水式の暖房及び/又は冷房システムであるのか又は空気式の暖房及び/又は冷房システムであるのかを判断するように構成することができ、付加的にこの判断の結果に基づき暖房及び/又は冷房手段を運転させるように、及び/又はこの判断の結果に基づき暖房及び/又は冷房するよう集中暖房及び/又は冷房システムに指示するように、更に構成することができる。
【0045】
好適な実施形態において、前記感知手段のうちの1つ以上により計測される、暖房及び/又は冷房要求を示す少なくとも1つの測定数値が、事前に規定された使用者の状態を示す場合、可動式温度調節装置は、事前に規定された者にメッセージを送ることができる。
【0046】
別の有利な実施形態において、可動式温度調節装置は、発話入力を行うよう使用者に促すことができ、使用者により行われた発話入力に基づき、可動式温度調節装置は、暖房及び/又は冷房手段を制御する、及び/又は、集中暖房及び/又は冷房システムに暖房及び/又は冷房指示を送ることができる。
【0047】
好適な実施形態において、集中暖房及び/又は冷房システムは、空気流を所定方向に向けるように構成される可動式ルーバを有することができ、可動式温度調節装置は、使用者の暖房及び/又は冷房要求を満たす方向に空気流が向けられるようにルーバを移動させるよう集中暖房及び/又は冷房システムに指示する。
【発明の効果】
【0048】
本発明の可動式温度調節装置、可動式温度調節装置の運転方法、暖房及び/又は冷房装置、ならびに、暖房及び/又は冷房装置の温度調節方法によれば、特定の使用者の要求に応じて温度を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】可動式温度調節装置の例としてのペットロボットを示す。
【
図2】可動式温度調節装置の例示的な実施形態の図解を示す。
【
図4】水式の集中暖房システムにおける、可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段、ならびに集中暖房及び/又は冷房システムの、目標温度を達成することへの貢献を示す。
【
図5】空気式の集中暖房システムの場合の、可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段、及び集中暖房及び/又は冷房システムの貢献を示す。
【
図6】可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段のみを運転させる場合の温度設定を示す。
【
図7】使用者の視覚データ、生体計測データ、及び発話入力データがどのように解析されるかの例を示す。
【
図8】可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段が、集中暖房及び/又は冷房システムと共に、最もエネルギー効率の良い運転を達成するための運転の例を示す。
【
図9】多数の可動式温度調節装置の処理の例を示す。
【
図10】
図9において考慮に入れられている可動式温度調節装置のうちの1つの暖房及び/又は冷房手段の、及び集中暖房及び/又は冷房システムの貢献を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下で、幾つかの図を参照して本発明を例として記載する。
【0051】
図1は、本発明による可動式温度調節装置として利用することのできるペットロボットの例を示す。
【0052】
図2は、このような可動式温度調節装置1の構成の概略見取図を示す。装置は、使用者を識別するように構成される識別手段2を有することができる。可動式温度調節装置1が使用者の後を追うことができることが所望される場合、好ましくは、識別手段2は、使用者を探すように構成することもできる。可動式温度調節装置1は、更に、可動式温度調節装置の環境において暖房及び/又は冷房を提供することのできる暖房及び/又は冷房手段3を含む。
【0053】
装置1は、更に、例えば可動式温度調節装置1が存在する部屋における、集中暖房及び/又は冷房システムの環境温度及び/又は存在、仕様、及び/又は運転状況を検出することのできる環境センサを含むことができる。環境センサ4は感知手段5と見做すこともできる。装置1は、更に、使用者の暖房及び/又は冷房要求を示す少なくとも1つの測定数値を感知するように構成される感知手段5を含むことができる。このような感知手段5は、例えば、視覚情報感知機能、生体計測感知機能、及び/又は音声通信機能を含むことができる。
【0054】
可動式温度調節装置1は、更に、他の可動式温度調節装置と通信することのできる、及び/又は、集中暖房及び/又は冷房システムのシステム制御器と通信することのできる通信手段6を含むことができる。
【0055】
好ましくは、装置1は、装置が自由に移動できるようにする動力源7を含む。一方、ケーブル結合による解決策も可能である。装置1は、装置1が使用者の方へ移動できるような又は使用者の後を追えるような、例えば推進式ホイールとしての移動手段8を含むことができる。
【0056】
図3は、本発明の可動式温度調節装置1により実行することのできる運転のフローチャートの例を示す。この例において、最初のステップS1では、登録された使用者が認識されているかどうかが判断される。認識されている場合には、ステップS2において、可動式温度調節装置1が使用者に接近する。その後、ステップS3において、例えば使用者の視覚データ及び/又は生体計測データ及び/又は環境データが得られたかどうかが判断される。これらのデータが存在する場合、得られたデータが登録データと比較されて使用者の暖房及び/又は冷房要求が判断されるステップS4が実行される。更に、ステップS5において、使用者が健康であるかどうかを判断することができる。健康でないと判断される場合、ステップS6において、健康管理アドバイスを発行することができる。他方で、使用者が健康である場合、ステップS7において、装置1は、使用者に例えば暑いか又は寒いかを質問することができる。その後、ステップS8において、答えが得られたかどうかを判断することができ、得られた場合、ステップS9において、例えば使用者の年齢を考慮に入れつつ使用者の総合的な暖房又は冷房要求が何であるかを推定することができる。その後、ステップS10において、内蔵式暖房及び/又は冷房手段を制御することにより適正な暖房及び/又は冷房を提供することができる。ステップS11において、例えば視覚データ、生体計測データ、及び/又は口頭データを送ることにより使用者の状態を連続的に監視することも可能である。最終ステップS12において、要求が達成されたかどうかを判断することができる。達成されたと判断されれば、運転を終了することができるし、運転を初めから開始し、要求温度を長時間維持することもできる。
【0057】
図4は、可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段により設定される、ならびに集中暖房及び/又は冷房システムにより設定される、経時的な温度を示す。ここで、集中暖房及び/又は冷房システムが水式とした場合、このシステムが非常に緩慢に反応することが想定される。
図4は、可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段により設定されるものとしての温度を上側曲線41として示し、集中暖房及び/又は冷房システムにより設定されるものとしての温度を下側曲線42として示す。
図4は暖房運転を示す。一方、冷房運転であれば同じように見えるが目標温度が開始温度よりも低いはずである。ここでは、線41及び42を比較することにより、可動式温度調節装置1の内蔵式暖房及び/又は冷房手段が、集中暖房システムよりもずっと速く目標温度を達成できることを見ることができる。目標温度を極力早期に達成するために、まず、内蔵ヒータが環境を目標温度まで暖房することができ、そうすれば、集中暖房システムにより提供される温度の増加に伴って、内蔵式暖房及び/又は冷房手段の暖房力を低減することができる。
【0058】
図5は、
図4に示すものと同様の線図を示す。ただし空気式の集中暖房についてのものである。線42として示すような、集中暖房システムにより設定される温度が、
図4に示すような水式の集中暖房システムの場合よりもずっと速く目標温度に到達することを見ることができる。従って、線41と線42との間の網掛け領域がより小さいことに見ることができるように、可動式温度調節装置1の内蔵式暖房及び/又は冷房手段を運転させる時間を、より短くすることができる。
【0059】
図6は、集中暖房及び/又は冷房システムが利用可能でない例を示す。ここでは、可動式温度調節装置の暖房及び/又は冷房手段が、開始温度から開始し、目標温度に向かって部屋を暖房する。内蔵式暖房及び/又は冷房手段がオフにされると温度は再度低下する。
【0060】
図7は、使用者の視覚データ及び生体計測データが得られ、更に使用者が発話入力として口頭データを挿入する例を示す。ここでは、簡素化するために、生体計測データ、視覚データ、及び口頭データは、使用者が暑い又は適度である又は寒い、のいずれかを示すことを想定する。
図7の左側の表は、生体計測データ解析及び視覚データ解析のみに基づき、使用者が暑いのか又は適度であるのか又は寒いのかを判断するために使用することができる。垂直方向に生体計測データ解析を示し、水平方向に視覚データ解析を示す。両方のデータ値が使用者の同じ状態を示す場合、この状態が使用者の実際の状態と判断される。他方で、生体計測データが視覚データとは反対の状態を示す場合、使用者が適度であることが想定される。使用者が適度であることを1種類のデータが示し、使用者が適度でないことを1種類のデータが示す場合、使用者は適度でない状態にあることが想定される。
【0061】
次に、
図7の右側は、左側の表の結果と口頭入力の解析とを統合したものを示す。ここでは、左側の表の結果を垂直方向に示し、発話入力の結果を水平方向に示す。上側の表は若齢の使用者についてであり、下側の表は高齢の使用者についてである。より若齢の使用者では、発話入力である口頭データが優先することを見ることができる。従って、使用者が暑いと入力すると或る冷房を受けることになり、寒いと入力すると或る暖房を受けることになる。一方、生体計測データ及び視覚データが使用者の発話入力と矛盾する場合、暖房及び/又は冷房は弱くなる。
【0062】
他方で、高齢者の場合、右側の下側の表に示すように、左側の表の結果が優先される。従って、使用者の発話入力が生体計測データ及び視覚データと矛盾する場合、温度は、生体計測データ及び視覚データにより示すような方向に、弱いやり方で調節されることになる。
【0063】
図8は、最もエネルギー効率の良い運転の例を示す。
図4及び
図5におけるように、上側曲線41は、可動式温度調節装置1の内蔵式暖房及び/又は冷房手段3により設定される温度を示し、下側曲線42は、集中暖房及び/又は冷房システムにより設定されるものとしての温度を示す。内蔵式暖房及び/又は冷房手段3が実際の目標値よりも高い値まで設定温度を増加させていることを見ることができる。このことに起因して、
図8の右側に見ることができるように、集中暖房システムにより設定される温度42は目標温度よりも低くしておくことができる。この運転の全体的なエネルギー効率は、例えば
図4に示すようなものよりも良好になる。
【0064】
図9は、室内に2つ以上の可動式温度調節装置1が存在する場合の室温の処理の例を示す。ここで、表91は、列A、B、及びCに、処理前のそれらの装置の3つの要求温度を示す。ここでは、室温は17℃である。下側の表92は、装置A、B、及びCにより実際に設定された処理後の温度を、その際の室温である19℃と共に示す。処理前、装置Aは19℃を要求し、装置Bは21℃を要求し、装置Cは20℃を要求している。室温は17℃である。この例において、装置A、B、及びCは、最低温度を設定室温として決定するよう処理する。設定室温は、例えば、集中暖房及び/又は冷房システムにより設定することができる。ここでは、最低要求温度は19℃である。従って、表92に示すように、室温は19℃に設定される。従って、装置Aの内蔵式暖房及び/又は冷房手段3はオフにすることができる。装置B及びCの集中暖房及び/又は冷房手段3は、19℃という設定室温よりも高いその要求温度までそれらの環境を暖房するように運転する。
【0065】
図10は、
図9の装置Bについての、
図4及び
図5に示すような線図を示す。装置Bは、19℃という設定室温よりも高い21℃という温度を要求する。従って、集中暖房は、装置Bの目標温度よりも低い線42で示す温度を設定する。従って、装置Bはその内蔵式暖房及び/又は冷房手段3を使用して目標温度を達成する。このことを線41で示す。
【符号の説明】
【0066】
1 可動式温度調節装置
2 識別手段
3 暖房及び/又は冷房手段
4 環境センサ
5 感知手段
6 通信手段
7 動力源
8 移動手段